説明

塗装装置

【課題】 空気圧調節手段の閉鎖状態から全開状態までの間の空気圧の調整範囲が広く且つ容易で、特にブロック部とボカシ部の乾燥状態を同じにすることが容易で、初心者でも簡単にボカシ塗装ができるようにする。
【解決手段】 本発明の空気圧調節手段11は、圧縮空気供給通路に配設された弁部16、連結部17、エア制限部18からなる弁本体と、この弁本体が収納される弁座本体14、コイルばね13および弁棒21から構成される。
引き金部34を掴んで把持部8側に引寄せると弁部16は弁座部15から離れ、弁部16が開き始める。弁部16に隣接してエア制限部18が設けられているため、弁部16が開き始めて大きなエア圧力が出されても圧力を適宜減圧をするので半クラッチ状態での塗装に極めて好都合である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置に係り、より詳しくは、例えば、車両の車体等のボカシ塗装するのに用いて好適な塗装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両における車体の塗装は、圧縮空気と塗料を同時に噴射し、塗料を霧化させて塗装を行う方法がとられる。この塗装には、スプレーガンと称される塗装装置が好適に用いられる。
スプレーガンは、その名のとおり、概ね小型拳銃のような形をしており、塗料を供給する塗料供給部と、圧縮空気を供給する圧縮空気供給部と、塗料の噴射口となる塗料噴射ノズルと、塗料噴射ノズルから噴射する塗料の量を調節する引き金部と、これらを取付けるスプレーガン本体とにより構成されている。
この塗料噴射ノズル内部には、一端が先細に形成され、他端がばね等の弾性部材と連結された棒状の弁が挿通されている。この棒状の弁は、先細に形成された端部を有し、塗料噴射ノズル内をスライドすることにより噴射口を開閉する。
また、ニードル弁のスライド運動は、弾性部材が噴射口を閉鎖する方向に付勢されているため、引き金部により付勢方向と反対方向にニードルを移動させることによってなされる。
【0003】
すると、閉鎖されていた噴射口が開放され、塗料供給部から供給される塗料と、圧縮空気供給部から供給される圧縮空気とが同時的に噴射口から噴射される。すると、塗料は圧縮空気により霧化され、被塗装面に付着する。塗料が霧化されることにより、塗装面の乾燥が速く、且つ均一な塗装面を得ることができる。
ところで、塗装の種類には被塗装面を均一に塗装するブロック塗装と、被塗装面と旧塗装面とが混在する中両塗装面が均一となるように塗装を行うぼかし塗装等がある。
このぼかし塗装は、新たに塗装を行う被塗装面と以前の塗装が残っており新たな塗装は必要のない旧塗装面との境目をぼかすように塗装を行う塗装技法である。
このような基本的な構成よりなるスプレーガンにおいて、噴出材料である塗料等の多様化により、一部の材料に対し、詰り易かったり、分断し易いものが出てきており、その機能を十分に果たし得ない状況、即ち、例えばカーボン繊維が混入されている塗料を使用した場合、ニードル弁のテーパ面と塗料噴出口内部のシート部に塗料中に溶け込まれていない一部の混入物成分が塗膜またはかたまりとなって積層し、シール漏れや詰りを生ずるという問題がある。
【0004】
このような問題を解消するために、実開平2−104856号公報において、噴射口内面に弁座を形成し、該弁座に、先端テーパー状のニードル弁を当接離間して開閉するニードル弁において、円筒状に形成した噴射口の内側に、第1、第2のテーパ面を形成し、この第1と第2のテーパ面の境界部に線接触し、第1のテーパ角度と第2のテーパ面角度の中間の角度で、前記ニードル弁のテーパ面を形成したスプレーガン用ニードル弁装置が提案されている(特許文献1)。
また、上述したぼかし塗装をスプレーガンにて行うには、習熟した技術が要求される。
なぜなら、上述したようなスプレーガンは、引き金部の操作を開始した時点における圧縮空気の流量と噴射口の開口面積と塗料の量とを適当なバランスで調節することができなかったからである。即ち、引き金部の操作を開始した直後における、圧縮空気の噴出速度は低速であるが、塗料噴射ノズル内には所定量の塗料が供給されてしまう。そのため、噴出された塗料は、粒子径が大きいまま、すなわち完全に霧化されずに噴射されてしまっていた。塗料が完全に霧化されずに噴射されると、塗膜厚さが厚くなったり、塗装面に塗料が吸着し難いという問題が生じてしまう。
【0005】
このような問題に対処してなされた発明として、国際公開WO2002−10553に記載された塗装装置がある(特許文献2)。
即ち、この特許文献2には、
圧縮空気と塗料を混合し塗料を霧化して被塗装面に塗布する塗装装置であって、
前記塗装装置は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路および塗料を供給する塗料供給通路が設けられた塗装装置本体と、
前記塗装装置本体に設けられ、塗料を噴射する噴射口を有する塗料噴射ノズルと、
前記噴射口を開閉し塗料の噴射量を調節する塗料調節手段と、
を備え、
前記塗料調節手段は、前記塗料噴射ノズル内部でスライド自在なニードル弁であり、前記ニードル弁は、先細に形成された先端部を前記噴射口側に位置させ、前記塗料噴射ノズルの内部側に、前記先端部と連続し所定長さを有し異なる傾斜を呈する第2および第3のテーパ部を備え、
前記ニードル弁の前記先端部および前記2つのテーパ部に対応した前記塗料噴射ノズル内壁の所定位置には、前記噴射口を端部として第一テーパ部および第二テーパ部が連続して設けられており、
前記第一テーパ部は、前記噴射口から前記塗料噴射ノズルの内部に向かって小径となるテーパであり、
前記第二テーパ部は、前記第一テーパ部との境界線から前記塗料噴射ノズルの内部に向かって径大となるテーパ部とされた塗装装置が記載されている。
【0006】
そのため、特許文献2に係る塗装装置は、引き金部を引いた直後(俗に「半クラッチ」状態)における塗料の噴射量は、第二テーパ部とテーパ部との空隙により調節される。
ところで、スプレーガンの使用方法には、ブロック塗装とボカシ塗装が主なものである。
このうち、ブロック塗装におけるスプレーガンと作業者の問題点は然程ではないが、ボカシ作業における技術上の問題は大きなものがある。
また、車両の塗装に使用されている塗料のうち、エナメル系のソリッドタイプの場合は、比較的ボカシ作業がし易いといえるが、アルミ顔料などは、反射、吸収、透過の特性が複雑にからむため、その塗料を用いてボカシ作業を行う場合、色の塗り込み状態の塗膜により乾燥性が変化する。
そのため、中心部の色味の変化が生じ、作業者にとって極めて難しい作業となっている。いわゆる、ボカシ部分の黒ずみがその代表的な例である。
このような黒ずみの発生を抑制するためには、中心部とボカシ部の塗膜の乾燥性が同一条件となるようにすることが必要であり、そのため、ボカシ部における半開き状態(以下「半クラッチ状態」ということがある)でのエア圧力と中心部のエア圧力の差を作り出すことであると考えられる。
【0007】
ところで、上述した特許文献1および2には、噴射ノズルの内部側に複数のテーパ面を持ったニードル弁と、このニードル弁のテーパ部に対応したテーパ面を持った塗料噴射ノズルとを備えたスプレーガン用ニードル弁装置が記載されているが、塗膜の乾燥性および中心部とボカシ部の粒子の微粒化に関する考慮が何ら払われていない。
即ち、特許文献1においては、シール性の向上および流路の詰り防止を図っているだけである。また、特許文献2においては、塗料の噴霧状態を良好にすること、および塗料の無駄の排除および塗装操作の容易化を図っているに止まっている。
例えば、ニードル弁の開き始めの段階では、エア圧力が零から急激に増加し、その圧力の調整範囲は、極めて限られた狭い範囲でしか行えず、しかも、所望の圧力を生じさせることは至難のわざであった。そのため、ニードル弁を半開きした、いわゆる半クラッチ状態において、塗料噴射量が減少したにも拘らず、エア圧力が高いままの状態となるため、乾燥性が高くなり黒ずみを生じてしまうという致命的な欠陥がある。
従って、熟練の塗装技能者によっても中心部と、ボカシ部の乾燥状態を同じくしつつ、中心部からボカシ部に徐々に塗装膜が滑らかになるようにすることは至難のわざであった。
【0008】
【特許文献1】実開平2−104856号公報
【特許文献2】国際公開番号WO2002/100553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、空気圧調節手段の閉鎖状態から、全開状態に至るまでの間の空気圧の調整範囲が広く、且つ調整が容易で、塗料調節手段の塗料の噴射量の調整の容易化と相俟って、特に、ブロック部(中心部)とボカシ部の乾燥状態を同じにすることが容易で、中心部からボカシ部に徐々に塗装膜厚が滑らかに形成し得る塗装装置を提供することにある。
しかも、必ずしも熟練した塗装技能者に限らず、比較的初心者においても黒ずみのない塗装を行い得る塗装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載した発明は、圧縮空気と塗料を混合し塗料を噴霧化して被塗装面に塗布する塗装装置であって、
前記塗装装置は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路および塗料を供給する塗料供給通路が設けられた塗装装置本体と、
前記塗装装置本体に設けられ、塗料を噴霧する噴射口を有する塗料噴射ノズルと、
前記圧縮空気供給通路を開閉し且つ、圧縮空気圧を調節する空気圧調節手段と、
前記噴射口を開閉し塗料の噴射量を調節する塗料調節手段と、
を備え、
前記空気圧調節手段は、前記圧縮空気供給通路の断面積を零から所定量に亘り連続的に変化可能な弁部と、前記圧縮空気供給通路の断面積を所定量減少させて減圧させるエア制限部とからなり、前記塗料調節手段と、前記空気調節手段とを連動して作動させるように構成したことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載した発明に係る前記空気圧調節手段は、前記弁部が前記圧縮空気供給通路の内部側に形成されたテーパ部に接離する円錐台状を呈し、前記エア制限部が、円板状を呈していることを特徴としている。
請求項3に記載した発明に係る前記塗料調節手段は、前記塗料噴射ノズル内部でスライド自在なニードル弁であり、前記ニードル弁は、先細に形成された先端部を前記噴射口側に位置させ、前記塗料噴射ノズルの内部側に前記先端部と連続し一定の遊び量を付加した所定長さで同一径を有する噴射量制限部と、さらに前記噴射量制限部と連続し前記ノズルの内部に向って緩やかな傾斜で径大となる開閉弁部と、前記開閉弁部と連続し、軸方向の摺動を規制する軸部とから構成されていることを特徴としている。
請求項4に記載した発明に係る前記空気圧調節手段および前記塗料調節手段は、それぞれ弾性部材により、前記圧縮空気供給通路および前記噴射口を閉鎖する方向に付勢されており、前記弾性部材の付勢力に抗して引き金部を引寄せる動作に伴って、開口する方向に移動されることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載した発明は、前記引き金部を途中まで引き寄せ、前記空気圧調節手段および前記塗料調節手段を共に半開状態としたとき、前記塗料の噴出量と、前記圧縮空気供給通路の圧力とを適合させるように前記塗料調節手段と前記空気圧調節手段とを設定したことを特徴としている。
請求項6に記載した発明は、圧縮空気と塗料を混合し塗料を噴霧化して被塗装面に塗布する塗装装置であって、
前記塗装装置は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路および塗料を供給する塗料供給通路が設けられた塗装装置本体と、
前記塗装装置本体に設けられ、塗料を噴霧する噴射口を有する塗料噴射ノズルと、
前記圧縮空気供給通路を開閉し且つ圧縮空気圧を調節する空気圧調節手段と、
前記噴射口を開閉し塗料の噴射量を調節する塗料調節手段と、
を備え、
前記塗料調節手段および前記空気圧調節手段は、前記塗料噴射ノズル内部でスライド自在なニードル弁の同一軸上にそれぞれ設けられ、
前記ニードル弁は、先細に形成された先端部を前記噴射口側に位置させ、
前記塗料噴射ノズルの内部側に、前記先端部と連続し一定の遊び量を付加した所定長さを有し且つ同一径の噴射量制限部と、さらに前記噴射量制限部と連続し前記ノズル内部に向って緩やかな傾斜で径大となる開閉弁部が設けられ、さらにこの開閉弁部と同軸に、前記圧縮空気の供給路の断面積を所定量減少させるエア制限部と、これに連続し、前記圧縮空気供給通路の断面積を零から所定量に亘り連続的に変化可能な弁部とが、一連に設けてなることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載した発明に係る前記空気圧調節手段は、前記弁部が前記圧縮空気供給通路の内部側に形成されたテーパ部に接離する円錐台状を呈し、前記エア制限部が前記圧縮空気供給通通路の内壁との間に所定の間隙を存して設けられた円環状を呈していることを特徴としている。
請求項8に記載した発明に係る前記ニードル弁と前記塗料噴射ノズルは、少なくとも前記引き金部による移動ストロークのほぼ前半の移動段階では、塗料の噴射量が連続的に変化し、残りの移動段階では塗料の噴射量がほぼ同一か微小な変化となるように設定し、ボカシ塗装作業に好適な構成とされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、圧縮空気と塗料を混合し塗料を噴霧化して被塗装面に塗布する塗装装置であって、
前記塗装装置は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路および塗料を供給する塗料供給通路が設けられた塗装装置本体と、
前記塗装装置本体に設けられ、塗料を噴霧する噴射口を有する塗料噴射ノズルと、
前記圧縮空気供給通路を開閉し且つ、圧縮空気圧を調節する空気圧調節手段と、
前記噴射口を開閉し塗料の噴射量を調節する塗料調節手段と、
を備え、
前記空気圧調節手段は、前記圧縮空気供給通路の断面積を零から所定量に亘り連続的に変化可能な弁部と、前記圧縮空気供給通路の断面積を所定量減少させて減圧させるエア制限部とからなり、前記塗料調節手段と、前記空気調節手段とを連動して作動させるようにしたので、空気圧調節手段の弁部を閉じた状態から全開に至るまでの中間段階の範囲が従来より広く且つ緩やかな圧力変化をもたらすため塗料調節手段によりいわゆる半クラッチ状態として塗料の噴射量を絞った状態に見合った圧力に調整することが可能となり、旧塗装面と被塗装面との境目をぼかす、ぼかし塗装が極めて行い易く、特にぼかし面の乾燥性や微細化を旧塗装面と同程度にすることができ、従来装置では避けることが困難であったぼかし部分の黒ずみの発生を防止し得る塗装装置を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、前記空気圧調節手段は、前記弁部が前記圧縮空気供給通路の内部側に形成されたテーパ部に接離する円錐台状を呈し、前記エア制限部が、円板状を呈しているので、小型で且つ簡素な機構であり、装置本体内に容易に組み込むことができ、製造コストも殆ど上昇させることのない塗装装置を提供することができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、前記塗料調節手段は、前記塗料噴射ノズル内部でスライド自在なニードル弁であり、前記ニードル弁は、先細に形成された先端部を前記噴射口側に位置させ、前記塗料噴射ノズルの内部側に前記先端部と連続し一定の遊び量を付加した所定長さで同一径を有する噴射量制限部と、さらに前記噴射量制限部と連続し前記ノズルの内部に向って緩やかな傾斜で径大となる開閉弁部と、前記開閉弁部と連続し、軸方向の摺動を規制する軸部とから構成されているので、塗料調節手段を閉じ状態から全開状態に至る中間領域、いわば半クラッチ状態の領域で従来のものより緩やかに噴射塗料を噴射させることができ、噴霧化を確実に実現し得ると共に、上述した空気圧調節手段での半クラッチ状態とがその構造上適合し得る塗装装置を提供することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、前記空気圧調節手段および前記塗料調節手段は、それぞれ弾性部材により、前記圧縮空気供給通路および前記噴射口を閉鎖する方向に付勢されており、前記弾性部材の付勢力に抗して引き金部を引寄せる動作に伴って、開口する方向に移動されるように構成されているので、引き金部を引寄せる初期の状態、いわゆる半クラッチ状態では弾性部材の付勢力が弱く、微妙なストロークを空気調節手段および塗料調節手段に与えることができ、請求項1の発明との相互作用により、ボカシ塗装に好適な塗装装置を提供することができる。
請求項5に記載の発明によれば、前記引き金部を途中まで引き寄せ、前記空気圧調節手段および前記塗料調節手段を共に半開状態としたとき、前記塗料の噴出量と、前記圧縮空気供給通路の圧力とを適合させるように前記塗料調節手段と前記空気圧調節手段とを設定したので、例えばボカシ塗装の際に被塗装面と旧塗装面との均一化が図られ、特に乾燥性をほぼ同一にすることができ、ボカシ部分の黒ずみの発生を抑制し得る塗装装置を提供することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、圧縮空気と塗料を混合し塗料を噴霧化して被塗装面に塗布する塗装装置であって、
前記塗装装置は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路および塗料を供給する塗料供給通路が設けられた塗装装置本体と、
前記塗装装置本体に設けられ、塗料を噴霧する噴射口を有する塗料噴射ノズルと、
前記圧縮空気供給通路を開閉し且つ圧縮空気圧を調節する空気圧調節手段と、
前記噴射口を開閉し塗料の噴射量を調節する塗料調節手段と、
を備え、
前記塗料調節手段および前記空気圧調節手段は、前記塗料噴射ノズル内部でスライド自在なニードル弁の同一軸上にそれぞれ設けられ、
前記ニードル弁は、先細に形成された先端部を前記噴射口側に位置させ、
前記塗料噴射ノズルの内部側に、前記先端部と連続し一定の遊び量を付加した所定長さを有し且つ同一径の噴射量制限部と、さらに前記噴射量制限部と連続し前記ノズル内部に向って緩やかな傾斜で径大となる開閉弁部が設けられ、さらにこの開閉弁部と同軸に、前記圧縮空気の供給路の断面積を所定量減少させるエア制限部と、これに連続し、前記圧縮空気供給通路の断面積を零から所定量に亘り連続的に変化可能な弁部とが、一連に設けた構成としたので、塗料調節手段と空気圧調節手段とが塗料噴射ノズル内部でスライドするニードル弁の同一軸上に設けられている形式の塗装装置においても、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られる上、構造が簡素化され、部品点数の削減、組立工数の削減が図られ、しかも塗料調節手段と空気圧調整手段の作動タイミングを部品加工時に調整管理することができ、高度な技術を習得せずとも、被塗装面の塗装、特にボカシ塗装を容易にし得る塗装装置を提供することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、前記空気圧調節手段は、前記弁部が前記圧縮空気供給通路の内部側に形成されたテーパ部に接離する円錐台状を呈し、前記エア制限部が前記圧縮空気供給通通路の内壁との間に所定の間隙を存して設けられた円環状を呈しので、小型で且つ簡素な機構であり、装置本体内に容易に組込むことができ、製造コストも殆ど上昇させることのなく、上記請求項6に記載の発明の効果を奏し得る塗装装置を提供することができる。
請求項8に記載の発明によれば、前記ニードル弁と前記塗料噴射ノズルは、少なくとも前記引き金部による移動ストロークのほぼ前半の移動段階では、塗料の噴射量が連続的に変化し、残りの移動段階では塗料の噴射量がほぼ同一か微小な変化となるように設定し、ボカシ塗装作業に好適な構成としたので、従来困難であった半クラッチ状態でのボカシ塗装が高度な技術を習得せずとも、容易に行い得る塗装装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る塗装装置を実施の形態に基づき、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗装装置の正面中央縦断面図であり、図2は、図1の塗装装置に組み込まれている空気圧調節手段の部分の拡大縦断面図であり、図3は、空気圧調節手段の中の空気弁を示す正面図で、このうち(a)は、従来の空気弁、(b)は、本発明に係る空気弁、図4は、図1の塗装装置に組み込まれているニードル弁の先端側と噴射ノズルの部分の拡大縦断面図であり、図5は、図4のニードル弁の全体を拡大して示す正面図である。
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。尚、本発明の塗装装置は、一つの実施の形態であって、例えば遠隔制御を行う自動低圧スプレーガン本体に本発明を組み合わせたり、手動のスプレーガンに組み合わせたり等、様々な形態があるが、本実施の形態では、塗装装置をスプレーガンとして説明を行う。そのため、以下、本発明の塗装装置をスプレーガンと称する。
【0020】
先ず初めに、第1の実施の形態におけるスプレーガンの構成について説明する。本発明におけるスプレーガン1は、圧縮空気と塗料とを混合し、塗料を圧縮空気により噴霧化して被塗装面に塗布する装置である。
そして、この第1の実施の形態におけるスプレーガン1は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路2および塗料を供給する塗料供給通路3が設けられたスプレーガン本体4と、このスプレーガン本体4に設けられた、塗料を噴射する噴射口5を有する塗料噴射ノズル6と、噴射口5を開閉し塗料の噴射量を調節するニードル弁7とを備えている。
さらに詳細に説明する。小型拳銃状に形成されたスプレーガン1は、スプレーガン1を把持する把持部8と、把持部8に連続して設けられ塗料および圧縮空気を噴射する噴射口5を有する銃身部9とに形成されている。
また、スプレーガン本体4内部には、把持部8の下部から噴射口5まで圧縮空気が通る圧縮空気供給通路2が設けられている。
そして、把持部8の下部には、圧縮空気の供給元と接続する空気ニップル10が設けられている。さらに、この空気ニップル10から把持部8の上方へ向って圧縮空気供給通路2が設けられており、把持部8と銃身部9の境目付近には、把持部8に対してほぼ垂直に位置し圧縮空気供給通路2の開閉を行う空気圧調節手段11が設けられている。
【0021】
この空気圧調節手段11は、スプレーガン本体4の圧縮空気供給通路2に直交するように穿設された有底状の装着穴12に装着されている。この空気圧調節手段11は、弁座本体14と、この弁座本体14のテーパ状に形成された弁座部15に当接離反する弁部16と、この弁部16の小径端側に細径の連結部17を介して連設されたコマ状(または円板状)を呈するエア制限部18と、弁部16の大径端に連設されたばね受け19と、このばね受け19に一端が嵌装され、他端が装着穴12の内端に当接されたたコイルばね13とから、構成されている。
弁座本体14は、ねじ部20が装着穴12の開口端内周に形成された雌ねじ部に螺合されることによってスプレー本体4に装着される。
この弁座本体14の弁座部15には、円錘台形状を呈する弁部16が当接したとき、空気の流動を止める弁作用を果たし図2中、弁棒21が右方に押されると、弁部16が弁座部15から離反し、圧縮空気供給通路2を開放する。
この弁部16の小径端部側には、細径の連結部17を介して大径とされたエア制限部18が連設され、弁部16と共に装着穴12の軸方向に沿って移動する。これら弁部16と連結部17とエア制限部18、弁棒21およびばね受け19は、一体に形成されており、コイルばね13により図2において常時左方、即ち、弁部16で弁座部15を閉鎖する方向、換言すれば、圧縮空気供給通路を閉鎖する方向に付勢されている。
【0022】
弁座本体14の中間部、即ち、エア制限部18よりも左側とは、弁座部15を通過し、エア制限部18の制御を受けた空気が吐出するように円形の穴が複数個、この場合4個の開口部22が穿設されている。
また、弁座本体14の最奥部の外周には、環状溝23が形成され、この環状溝23にはOリング24が嵌合されており、これにより、弁部16が閉鎖されているときに、圧縮空気が、装着穴12側から、弁座本体14の外周と、スプレーガン本体4の内壁との間から下流の圧縮空気供給通路2へ洩れないようにしている。
弁座本体14の空気室25の内壁の直径は、6.8mmであるのに対し、エア制限部18の外径D1は、この本発明の効果確認のために、
D1A=6.4mm
D1B=6.5mm
D1C=6.6mm
D1D=6.7mm
の4種類の試作品を作製し、所定の確認試験を行った。他の部分の寸法は、図3(b)に示したとおりである。
【0023】
この確認試験の結果は、実施例の項において図6を用いて説明する。
尚、弁部16に、樹脂などの弾性部材を用いることにより、弁部16が圧縮空気供給通路2を閉鎖した際、圧縮空気の出入りを確実に阻止することができる。
また、この空気圧調節手段11の上方(上段)には、塗料の噴射を調節するニードル弁7と塗料噴射ノズル6が配設されている。
このニードル弁7は、噴射口5側の一端に、先細に形成された先端部26を有し、他端に、ニードル弁7の動きを制御するニードル弁ガイド27を介したコイルばね28を有している。このコイルばね28は、噴射口5を閉鎖する方向に付勢されている。さらに、ニードル弁ガイド27の前方には、塗料漏れをシールするためのニードルパッキン29がパッキン調節ねじ30によって押えられている。パッキン調節ねじ30は、塗料漏れを防ぎ、且つニードル弁7がスムーズに作動する為に、適当な強さに締められてねじ込まれている。
また、ニードル弁7の中央付近には、塗料供給元に接続する塗料ジョイント31を付設した塗料案内路32が位置している。
【0024】
さらに、噴射口5側の前記ニードル弁ガイド27および弁棒21の端部は、銃身部9に回転中心33を有し、把持部8と略平行に設けられた引き金部34と当接している。そのため、引き金部34を把持部8側に引寄せると、空気圧調節手段11の弁座部15に設けられたコイルばね13と、ニードル弁7に設けられたコイルばね28とが圧縮される。
この空気圧調節手段11に設けられたコイルばね13が圧縮されると、空気圧調節手段11に設けられている弁部16がコイルばね13側へ移動する為、圧縮空気供給通路2を開放する。すると、銃身部9に設けられた圧縮空気供給通路2に従って圧縮空気は噴射口5まで供給される。
このとき、圧縮空気は、空気圧調節手段11の弁部16と便座本体14の弁座部15との隙間から弁座本体14の空気室25側へ流れ込もうとするが、弁部16と連続して設けられた円板状のエア制限部18の外周縁と、空気室25の内周壁との間に形成された隙間に流動を制限される。その結果、弁部16と弁座部15との間隙が大きくなっても、エア制限部18により、流量が制限されて、圧縮空気供給通路2の下流部分の圧力、換言すれば噴射口5から吐出される空気圧が所定圧となるよう規制される。
【0025】
このようにして、ニードル弁7の端部に設けられたコイルばね28が圧縮されると、筒状のニードル弁ガイド27と共にニードル弁7がスライドする。
すると、噴射口5を閉鎖していたニードル弁7が噴射口5内部に引きこもる為、噴射口5が開放され塗料が噴出される。
尚、ニードル弁7に比べて弁部16の方が若干早く移動し、圧縮空気を噴射するように設計されているため、塗料噴射より、僅か先に圧縮空気が送られるようになっているが、圧縮空気の圧力の調節機能については、後に詳しく説明する。
次に、この第1の実施の形態のスプレーガン1の先端構造の詳細な説明を行う。図4は、スプレーガン1の先端を拡大した断面図であり、図5はスプレーガン1におけるニードル弁7の拡大正面図である。尚、説明の便宜を図る為、図1で説明した構成部品については同一符号を付して説明する。
先ず、図4に基づいてスプレーガン1の先端構造の説明を行う。スプレーガン1は、噴射口5に空気キャップ35が螺嵌されている。この空気キャップ35は、中心に設けられた貫通孔36の周辺に、ほぼ前方に向けて複数の小孔である37a〜37dが設けられており、さらに空気キャップ35の中心から離れた個所には、斜め内方に向けて穿設された複数の小孔37e〜37hが設けられている。この貫通孔36からは主に塗料が噴出され、周辺に設けられた小孔37a〜37dからは圧縮空気が噴射される。
【0026】
そして、塗料は噴出された圧縮空気により拡散される。このように、液体を噴霧して微粒子化することを霧化という。
また、貫通孔36の内部には、塗料噴射ノズル6が位置している。この塗料噴射ノズル6は、噴射口5から塗料噴射ノズル6内部に向うに従い小径に形成された第一テーパ部38と、この第一テーパ部38から更に内部へ向うに従い大径となる第二テーパ部39と、この第二テーパ部39から更に内部へ向うに従い大径となる第三テーパ部40とにより構成されている。
さらに、塗料噴射ノズル6の内部には、図5に示すような棒状の弁であるニードル弁7が挿通されている。このニードル弁7は、先細に形成された先端部26と先端部26に連続した同一径よりなる噴射量制限部41と、これに連続した開閉弁部42とにより構成されている。この噴射量制限部41は、噴射ノズル6の内部側に先端部26と連続し、一定の遊び量(1〜2mm)を付加した所定長さで同一径を有している。
また、開閉弁部42は、第三テーパ部40よりも小さい角度のテーパ角を有し、噴射口5から塗料噴射ノズル6の内方に向うに従って大径に形成されている。
【0027】
また、この第1の実施の形態における先端部26は、円錘状であり、先端部26を形成する、先端部26の母線の長さrを0.5mmとし、先端感度αを80〜85度とするとよい。特に、先端角度αを83度とすると塗料の噴射状態が極めて向上する。
【0028】
また、図1に示すように、この第1の実施の形態におけるニードル弁は、互いにばね係数の異なる第一コイルばね16aと第二コイルばね16bとを組み合わせて構成されている。
尚、本実施の形態における第一コイルばね28aは第二コイルばね28bよりばね係数が低いものとする。但し、この第一コイルばね28aは、第二コイルばね28bよりもばね係数が高いコイルばねとしてもよいし、勿論その逆であってもよい。
そして、第一コイルばね28aは、ニードル弁ガイド27と接触しており、第二コイルばね28bは一端が第一コイルばね28aに接続され、他端がガイド室43の内壁に当接されている。このガイド室43は、ニードル弁ガイド27の基端側と、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28bとを収容するものである。
【0029】
そして、図1の状態から、引き金部34をFという力で引くと、第一コイルばね28aは後方にスライドしたニードル弁ガイド27により押される。また、ニードル弁ガイド27のスライドに伴い、ガイド室43の内壁に当接した第二コイルばね28bにも力Fが伝達する。すると、この力Fがガイド室43の内壁に伝わり、その反力F′が第二コイルばね28bに作用する。したがって、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28bの双方が圧縮される。この際、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28bには、同一の力が作用するが、両コイルばねの弾性率が異なるため、引き金部34の最終段階に至るまでの操作においては、第一コイルばね28aと第二コイルばね28bの圧縮率(圧縮する長さ)は異なる。
すなわち、本実施の形態におけるコイルばね28は、引き金部34を引いて主に第一コイルばね28aを圧縮する第一段階と、引き金部34を引いて第一コイルばね28aの圧縮と共にこの段階において主に第二コイルばね28bを圧縮する第二段階と、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28b双方を完全に圧縮する第三段階(最終段階)との三段階の操作段階を経ると考えることができる。
【0030】
そのため、第一コイルばね28aを主に圧縮させた当初の段階では圧縮空気のみを噴射させ、その後、第一コイルばね28aに加え、第二コイルばね28bを途中まで圧縮させたときは圧縮空気量と塗料の量に規制を持たせ所定量を噴射させ、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28bを最後まで圧縮させたときには圧縮空気量と塗料の量を最大にし噴射させる、というような操作を行うことが可能となる。
まさに、引き金部34の初期段階から中期段階の操作は、比較的小さい力でニードル弁7の微調整を容易に行える、所謂「半クラッチ状態」ということができ、この状態があることにより被塗装面と旧塗装面との境目をぼかす塗装を容易に行うことができるようになる。
引き金部34を引くとそれに伴いニードル弁7がニードル弁ガイド27内へスライドし塗料噴射ノズル6の噴射口5が開放されるものである。
更に詳細に説明すると、引き金部34を操作することにより、上述したように空気圧調節手段11の弁部16が開放され圧縮空気が噴射されると略同時に、主に第一コイルばね28aが圧縮される。そのときニードル弁7は、スライドして塗料噴射ノズル6内に入り込む。
【0031】
すると、これまでニードル弁7における開閉弁部42のテーパ部と塗料噴射ノズル6の第二テーパ部39との双方のテーパが適宜に嵌め合っていた状態がずれて、双方のテーパの間に僅かなクリアランスが生じる。このとき、ニードル弁7の噴射量制限部41は塗料噴射ノズル6の第一テーパ部38内に位置している。
このとき、ニードル弁7と第一コイルばね28aが上述した第1の状態であるとき、噴射口5からは圧縮空気が噴射され始まる。
さらに引き金部34を操作し続け、第二コイルばね28bも圧縮され始めると、ニードル弁7はさらに塗料噴射ノズル6内部にあるニードル弁ガイド27内部へスライドする。すると、噴射量制限部41と第二テーパ部39とのクリアランスはさらに広くなる。この状態のとき、噴射口5からは適宜な量の塗料と圧縮空気が噴射される。
加えて、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28bが完全に圧縮された状態になると、ニードルの先端部26は、完全に塗料噴射ノズル6内部に収容された状態となる。
このとき噴射口5からは、圧縮空気および塗料、双方が最大量噴射される状態となる。
【0032】
次に、上述した第1の実施の形態におけるスプレーガン1の噴射原理を動作説明と共に行う。
先ず、初めに、第1の実施の形態におけるスプレーガン1を利用してぼかし塗装を行う場合、作業者は、噴射口5を被塗装面に向け、把持部8を持って構える。このとき、噴射口5は、旧塗装面(中心部)と被塗装面との境目に位置させる。そして、引き金部34を把持部8側へ、コイルばね13および28の付勢力に抗して引寄せると、先ず、引き金部34が空気圧調節手段11の弁棒21に当接し、その若干の遅れをもってニードル弁ガイド27に当接する。
そして、先ず、引き金部34に、空気圧調節手段11の弁棒21が当接したときを境に弁棒21→エア制限部18→連結部17を順次介して弁部16が内部(図2では右方側)に移動する。すると弁部16と弁座部15との接触状態が離れ、両者の間にできた間隙を介して、図中、下方から送られてきた圧縮空気は、空気室25側に流出する。このとき、空気室25の内周壁と、エア制限部18の外周面との間が規制されているため、エアコンプレッサから送出され本スプレーガン1の圧縮空気供給通路2に導入された圧力は、所定量減圧され、開口部22を介して、下流の圧縮空気供給通路2へと送出される。
【0033】
圧縮空気は、弁部16が開口直後(半クラッチ状態)には、制限された圧力が安定して供給される。
一方、ニードル弁ガイド27が引き金部34に当接したときを境にニードル弁7がスライドし、内部へ進入する。
すなわち、噴射口5を閉鎖していたニードル弁7が銃身部9内に引き籠もる。
それに伴い、閉鎖されていた噴射口5が開放される。
また、塗料案内路32内の塗料が噴射口5から噴出される。このとき、前述したように、減圧された圧縮空気の方が僅かに先に噴射されるため、塗料は、初めから適正な量の圧縮空気にて霧化される。
しかも、本実施の形態の空気圧調節手段11のエア制限部18の作用により、弁部16の開口動作の直後からぼかし塗装に適する圧力まで低減させ且つ引き金部34の引き寄せ動作に応じて緩やかに圧力を上昇させることができるため、これが塗料調節手段による塗料供給とのバランスが良好となるのである。
【0034】
即ち、塗料噴射ノズル6およびニードル弁7は、塗料噴射ノズル5の第二テーパ部とニードル弁7の噴射量制限部41とは、同一の傾斜面(テーパ面)ではないが、噴射量制限部41の外径は、同一径であるため、ニードル弁7が塗料噴射ノズル6内部へ引き籠まれても、第二テーパ部39と、噴射量制限部41との間隙は、略一定となる。
【0035】
そのため、空気キャップ35に設けられた小孔37a、37b、37c、37dおよび小孔37e、37f、37g、37hから夫々供給される圧縮空気は、噴射量制限部41によって、上記した圧縮空気の流量に見合った分の塗料を噴出することができる。
すると、従来のように、噴射直後において塗料が完全に霧化されず、大きな粒子のまま噴射されてしまうといった虞がなくなる。
また、特に、特許文献1では、上記ニードル弁7と、塗料噴射ノズル6との点について、改良を施してはいるが、圧縮空気調節手段については何らの配慮がなされていない。そのため、引き金部34を浅く引く寄せ手、いわゆる半クラッチ状態でぼかし塗装をしようとすると、ニードル弁7テーパ部と、塗料噴射ノズルとの間で、噴射量を微妙にコントロールすることができても、空気圧調節手段が引き金部による調整が不能、即ち、引き金部を引寄せた途端に大きな圧縮空気が吐出され、逆に、これを絞ろうとして、引き金部を引き離すように操作すると、途端に圧縮空気量が急激にゼロに近くなるため、空気量と噴射量とのバランスがとれなかったところ、本発明は、この空気量と塗料の噴出量とを適正にバランスすることができるのである。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る塗装装置について、図8、図10を参照して、以下説明する。
上述した第1の実施の形態とこれから述べる第2の実施の形態との大きな相違点は、第1の実施の形態のスプレーガン1は、空気圧調節手段11が、塗料調節手段とは、上下2段の位置に配置されているのに対し、第2の実施の形態のスプレーガン51は、空気圧調節手段61が、塗料調節手段と同一軸上にあり、ニードル弁58と圧縮空気供給通路を開閉あるいは調節する手段とが、一体的に構成されていることである。
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る塗装装置の正面中央縦断面図であり、図9は、図8の塗装装置に組み込まれている空気圧調節手段の断面図であり、図10は、空気圧を調節する弁部の構成を示す正面図であり、このうち、図10の(a)は、従来の弁部を示し、図10の(b)は、図9の空気圧調節手段に組み込まれている弁部とエア制限部の部分を示す正面図である。
この第2の実施の形態におけるスプレーガン51は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路52および塗料を供給する塗料供給通路53が設けられたスプレーガン本体54と、このスプレーガン本体54に設けられた、塗料を噴射する噴射口55を有する塗料噴射ノズル56と、噴射口55を開閉し塗料の噴射量を調節するニードル弁57とを備えている。
【0037】
さらに詳細に説明する。小型拳銃状に形成されたスプレーガン51は、スプレーガン51を把持する把持部58と、把持部58に連続して設けられ塗料および圧縮空気を噴射する噴射口55を有する銃身部59とに形成されている。
また、スプレーガン本体54内部には、把持部58の下部から噴射口55まで圧縮空気が通る圧縮空気供給通路52が設けられている。
そして、把持部58の下部には、圧縮空気の供給元と接続する空気ニップル60が設けられている。さらに、この空気ニップル60から把持部58の上方へ向って圧縮空気供給通路52が設けられており、把持部58と銃身部59の境目付近には、把持部58に対してほぼ垂直に位置し圧縮空気供給通路52の開閉を行う空気圧調節手段61が設けられている。
この空気圧調節手段61は、スプレーガン本体54の圧縮空気供給通路52に直交するように穿設された装着穴62に装着されている。この空気圧調節手段61は、弁座本体64と、この弁座本体64のテーパ状に形成された弁座部65に当接離反する弁部66と、この弁部66の小径端側に連設されたコマ状(または円筒状)を呈するエア制限部68と、弁部66の大径端に連設されたカラー部67と、このカラー部67に一端が嵌装され、他端がキャップ部材94の内端に当接されたたコイルばね78と、キャップ部材94に螺合され、ニードル弁の後退位置を任意に設定し得るニードル弁ストッパ95と、このニードル弁ストッパ95の内部に付勢されたコイルばね63とから構成されている。
【0038】
弁座本体64は、ねじ部70が装着穴62の開口端内周に形成された雌ねじ部に螺合されることによってスプレー本体54に装着される。
この弁座本体64の弁座部65には、略円錘台形状を呈する弁部66が当接したとき、空気の流動を止める弁作用を果たし、図8中、ニードル弁57が右方に押されると、弁部66が弁座部65から離反し、圧縮空気供給通路52を開放する。
この弁部66の小径端部側には、空気室75の内周壁との間に若干の間隙を存するエア制限部68が連設され、弁部66と共に弁座本体64の内空間の軸方向に沿って移動する。
空気圧調節手段61は、貫通孔を有する弁座本体64と、弁部66、エア制限部68、カラー部67よりなる弁本体と、塗料調節手段の一部を構成するニードル弁57の一部と、弁座本体64の雌ねじに螺合するキャップ部材94と、このキャップ部材94の雌ねじに螺合するニードル弁ストッパ95と、弁座本体64内において弁部66とキャップ部材94の底部との間に圧縮された状態で収容されたコイルばね63とから構成されている。
【0039】
ニードル弁57は、弁部66やエア制限部68よりなる弁本体およびキャップ部材94に対し、自由に摺動可能であるが、ニードル弁ストッパ95の締付け位置を変えることによって引き込み位置、即ち、塗料の噴射量を変化させることができる。
弁本体部は、コイルばね78によって、常時弁部66を弁座部65に押し付け、圧力空気供給通過路52を閉鎖するようになっている。
また、ニードル弁57は、コイルばね63によって図9において常時左方に押圧され、噴射口55を閉鎖する方向に付勢されている。
尚、弁部66に、樹脂などの弾性部材を用いることにより、弁部66が圧縮空気供給通路52を閉鎖した際、圧縮空気の出入りを確実に阻止することができる。
また、この空気圧調節手段61の左方同軸上には、塗料の噴射を調節するニードル弁57と塗料噴射ノズル56が配設されている。
【0040】
このニードル弁57は、噴射口55側の一端に、先細に形成された先端部76を有し、他端側に、ニードル弁57の動きを制御するニードル弁ストッパ95に当接されたコイルばね63を有している。このコイルばね63は、噴射口55を閉鎖する方向に付勢している。さらに、ニードル弁57の中間部には、塗料漏れをシールするためのニードルパッキン79がパッキン調節ねじ80によって押えられている。パッキン調節ねじ80は、塗料漏れを防ぎ、且つニードル弁57がスムーズに作動する為に、適当な強さに締められてねじ込まれている。
また、ニードル弁57の中央よりやや前方には、塗料供給元に接続する塗料ジョイント81を付設した塗料案内路82が位置している。
さらに、噴射口55側の前記ニードル弁ガイド77の端部は、銃身部59に回転中心83を有し、把持部58と略平行に設けられた引き金部84と当接している。そのため、引き金部84を把持部58側に引き寄せると、先ず、空気圧調節手段61の弁部66に設けられたコイルばね78と、ニードル弁57の係合部73に当てられたコイルばね63とが共に圧縮される。
【0041】
この空気圧調節手段61に設けられたコイルばね78が圧縮されると、空気圧調節手段61に設けられている弁部66がコイルばね78側へ移動する為、弁部66が弁座部65から離間し、圧縮空気供給通路52を開放する。すると、開口部72から銃身部59に設けられた圧縮空気供給通路52に従って圧縮空気は噴射口55まで供給される。
即ち、圧縮空気は、空気圧調節手段61の弁部66と弁座本体64の弁座部65との隙間から弁座本体64の空気室75側へ流れ込もうとするが、弁部66と連続して設けられた円筒状(あるいはコマ状)のエア制限部68の外周面と空気室75の内周壁との間に形成された隙間により流動を制限される。その結果、弁部66と弁座部65との間隙が大きくなっても、エア制限部68により、開口部72から吐出される流量が制限されて、圧縮空気供給通路52の下流部分の圧力、換言すれば噴射口55から吐出される空気圧が所定圧となるよう規制される。
【0042】
このようにして弁部66が弁座部65を開口する動作とほぼ平行して、弁部66に連設したカラー部67の先端(右側)がニードル弁57と一体の係合部73を右方に押動する。
【0043】
このようにして、ニードル弁57の係合部73の端部に設けられたコイルばね63が圧縮されると、筒状のニードル弁ガイド77と共にニードル弁57が右方にスライドし、塗料噴射ノズル56内に移動する。
すると、噴射口55を閉鎖していたニードル弁57が噴射口55内部に引きこもる為、噴射口55が開放され塗料が噴出される。
尚、ニードル弁57に比べて弁部66の方が若干早く移動し、圧縮空気を噴射するように設計されているため、塗料噴射より、僅か先に圧縮空気が送られるようになっているが、圧縮空気の圧力の調節機能より、遅れて吐出する塗料の噴射量とのバランスがとられている。
次に、この第2の実施の形態のスプレーガン51の先端構造の説明を行うが、第1の実施の形態とほぼ共通性があるので、省略して説明する。
先ず、図8に基づいてスプレーガン51の先端構造の説明を行う。スプレーガン51は、噴射口55に空気キャップ85が螺嵌されている。この空気キャップ85は、中心に設けられた貫通孔86の周辺に、図4に詳細に示すように、複数の小孔が設けられている。この貫通孔86からは主に塗料が噴出され、周辺に設けられた小孔からは圧縮空気が噴射される。
【0044】
そして、塗料は、噴出された圧縮空気により拡散される。
また、貫通孔86の内部には、塗料噴射ノズル56が位置している。この塗料噴射ノズル56は、噴射口55から塗料噴射ノズル56内部に向うに従い小径に形成された第一テーパ部と、この第一テーパ部から更に内部へ向うに従い大径となる第二テーパ部と、この第二テーパ部から更に内部へ向うに従い大径となる第三テーパ部とにより構成されている。
さらに、塗料噴射ノズル56の内部には、図9に示すような棒状の弁であるニードル弁57が挿通されている。このニードル弁57は、先細に形成された先端部76と、噴射量制限部91と、開閉弁部92とにより構成されている。この噴射量制限部91は、塗料噴射ノズル56の内部側に先端部76と連続し、一定の遊び量(1〜2mm)を付加した所定長さで同一径を有している。
また、開閉弁部92は、第三テーパ部よりも小さい角度のテーパ角を有し、噴射口55から塗料噴射ノズル56の内方に向うに従って大径に形成されている。
【0045】
また、この第2の実施の形態における先端部76は、円錘状であり、先端部76を形成する、先端部76の母線の長さrを0.5mmとし、先端角度αを80〜85度とするとよい。特に、先端角度αを83度とすると塗料の噴射状態が極めて向上する。
尚、この第2の実施の形態におけるコイルばね78はコイルばね63よりばね係数が低いものとする。但し、このコイルばね78は、コイルばね63よりもばね係数が高いコイルばねとしてもよいし、勿論その逆であってもよいし、さらには同じであってもよい。
そして、コイルばね78は、弁部66とキャップ部材94との間に内装され、コイルばね63は、係合部73とニードル弁ストッパ95との間に、圧縮された状態で内装されている。
そして、図2の状態から、引き金部84をFという力で引くと、コイルばね78は後方にスライドしたニードル弁ガイド77と弁座本体64により押される。また、コイルばね63は、ニードル弁ガイド77と弁座本体64のスライドに伴い、弁座本体64のカラー部67を順次介して係合部73により押される。
【0046】
すると、この力Fがキャップ部材94およびニードル弁ストッパ95の内壁に伝わり、その反力F′がコイルばね78および63に作用する。したがって、コイルばね78およびコイルばね63の双方が圧縮される。この際、コイルばね78およびコイルばね63には、同一の力が作用するが、両コイルばねの弾性率が異なるため、引き金部84の最終段階に至るまでの操作においては、コイルばね78とコイルばね63の圧縮率(圧縮する長さ)は異なる。
引き金部84を引くとそれに伴いニードル弁ガイド77によりニードル弁57が内方へスライドし塗料噴射ノズル56の噴射口55が開放されるものである。
更に詳細に説明すると、引き金部84を操作することにより、上述したように空気圧調節手段61の弁部66が弁座部65を開放し圧縮空気が噴射されるのと略同時に、主に第一コイルばね63が圧縮される。そのときニードル弁57は、スライドして塗料噴射ノズル56内に入り込む。
すると、これまでニードル弁57における開閉弁部92のテーパ部と塗料噴射ノズル56の第二テーパ部との双方のテーパが適宜に嵌め合っていた状態がずれて、双方のテーパの間に僅かなクリアランスが生じる。このように、ニードル弁57の噴射量制限部91が、塗料噴射ノズル56の第一テーパ部内に位置している。第1の状態であるとき、噴射口55からは圧縮空気が噴射され始まる。
【0047】
さらに引き金部84を操作し続け、コイルばね63も圧縮され始めると、ニードル弁57はさらに塗料噴射ノズル56内方へスライドする。すると、噴射量制限部91と第二テーパ部とのクリアランスはさらに広くなる。この状態のとき、噴射口55からは適宜な量の塗料と圧縮空気が噴射される。
加えて、コイルばね78およびコイルばね63が完全に圧縮された状態になると、ニードルの先端部76は、完全に塗料噴射ノズル56内部に収容された状態となる。
このとき噴射口55からは、圧縮空気は最大空気量とされ且つ塗料は最大量噴射される状態となる。
次に、上述した第2の実施の形態におけるスプレーガン51の噴射原理を動作説明と共に行う。
先ず、初めに、第2の実施の形態におけるスプレーガン51を利用してぼかし塗装を行う場合、作業者は、噴射口55を被塗装面に向け、把持部58を持って構える。このとき、噴射口55は、旧塗装面(中心部)と被塗装面との境目に位置させる。そして、引き金部84を把持部58側へ、コイルばね78および63の付勢力に抗して引寄せると、先ず、引き金部84がニードル弁ガイド77に当接する。そのニードル弁ガイド77は、エア制限部68に当接している。
【0048】
そして、先ず、引き金部84に、ニードル弁ガイド77を介して空気圧調節手段61のエア制限部68が押動されたときを境にエア制限部68を介して弁部66が内部(図8では右方側)に移動する。すると弁部66と弁座部65との接触状態が離れ、両者の間にできた間隙を介して、図中、下方から送られてきた圧縮空気は、弁座本体64に開けられた開口から入り、弁部66と弁座部65との間隙を通り空気室75側に流出する。このとき、空気室75の内周壁と、エア制限部68の外周面との間が規制されているため、エアコンプレッサから送出され本スプレーガン51の圧縮空気供給通路52に導入された圧力は、所定量減圧され、開口部72を介して、下流の圧縮空気供給通路52へと送出される。
このため、圧縮空気は、弁部66が開口直後(半クラッチ状態)からは、制限された圧力が安定して供給される。
一方、ニードル弁ガイド77が引き金部84に押動されると、ニードル弁ガイド77→弁本体部(エア制限部68、弁部66、カラー部67)→係合部73を順に介して、ニードル弁57が右方スライドする。
【0049】
すなわち、噴射口55を閉鎖していたニードル弁57が銃身部59内に引き籠もる。
それに伴い、閉鎖されていた噴射口55が開放される。
また、塗料案内路82内の塗料が噴射口55から噴出される。このとき、前述したように、減圧された圧縮空気の方が僅かに先に噴射されるため、塗料は、初めから適正な量の圧縮空気にて霧化される。
しかも、第2の実施の形態の空気圧調節手段61のエア制限部68の作用により、弁部66の開口動作の直後からぼかし塗装に適する圧力まで低減させ且つ引き金部84の引き寄せ動作に応じて緩やかに圧力を上昇させることができるため、これが塗料調節手段による塗料供給とのバランスが良好となるのである。
即ち、塗料噴射ノズル56の第二テーパ部とニードル弁57の噴射量制限部91とは、同一の傾斜面(テーパ面)ではないが、噴射量制限部91の外径は、同一径であるため、ニードル弁57が塗料噴射ノズル56内部へ引き籠まれても、第二テーパ部と、噴射量制限部91との間隙は、略一定となる。
そのため、空気キャップ85に設けられた小孔から夫々供給される圧縮空気は、噴射量制限部91によって、上記した圧縮空気の流量に見合った分の塗料を噴出することができる。
【0050】
すると、従来のように、噴射直後において塗料が完全に霧化されず、大きな粒子のまま噴射されてしまうといった虞がなくなる。
また、特に、特許文献1では、上記ニードル弁57と、塗料噴射ノズル56との点について、改良を施してはいるが、圧縮空気調節手段については何らの配慮がなされていない。そのため、引き金部84を浅く引く寄せ手、いわゆる半クラッチ状態でぼかし塗装をしようとすると、ニードル弁57のテーパ部と、塗料噴射ノズルとの間で、噴射量を微妙にコントロールすることができても、空気圧調節手段が引き金部84による調整が不能、即ち、引き金部84を引寄せたとたんに大きな圧縮空気が吐出され、逆に、これを絞ろうとして、引き金部を引き離すように操作すると、途端に圧縮空気量が急激にゼロに近くなるため、空気量と噴射量とのバランスがとれなかったところ、本発明は、この空気量と塗料の噴出量とを適正にバランスすることができたものである。
【実施例】
【0051】
実施例1
図3(b)に第1の実施の形態を基に、空気調節手段11のうちの弁本体部を構成する弁棒21、エア制限部18、連結部17、弁部16、ばね受け19を、図面中の具体的寸法に形成した実施例を示す。また、弁座本体14の空気室25の内壁(二点鎖線で示す部分)の寸法は、6.8mmに設定した。
この図3(b)のうち、符号D1は、エア制限部18の直径の寸法であるが、第1の実施例においては、これを6.7mmに設定し、第2の実施例においては、6.6mmに設定した。
また、図5に、ニードル弁7のうちの噴射量制限部41の具体的寸法、即ちその長さLと、外径D2をそれぞれ具体的に示す。この寸法のうち、第1の実施例においては、外径D2を1.1mm、長さLを2.5mmに設定してあり、第2の実施例においては、外径D2を1.1mm、長さLを2.0mmに設定した。
【0052】
本発明者は、このような構成からなる第1の実施例と第2の実施例と、従来のエアスプレーガン(恵広製作所製、GR−310)とについて、確認試験を行った。その試験結果のデータを表1〜表4に示し、これをグラフ化したものを図6(a)〜(d)にそれぞれ示す。
各図において、系列1とは、エアトランスホーマの圧力(元圧)値、系列2とは、エアトランスホーマから内径6mmで長さ10mのエアホースを介して供給されるエアスプレーガンにおける手元圧力値、系列3とは、引き金部34を中間まで引いた、いわゆる半クラッチ状態のときの圧力値、系列4とは、引き金部34を最大に引いた、いわゆる弁部16の全開時の圧力値を示すものであり、それぞれの単位はMpaである。
また、この検証試験におけるニードル弁の開き条件、即ちニードル弁調節ノブ71の全閉状態からの回転数としては、図6の(a)においては、3回転、(b)においては3回転、(c)において、2回転、(d)においては、1回転に設定したものである。
【0053】
このような条件において、空気圧調節手段11における弁部の開き量と圧力との関係を検証した結果を、以下、表1〜表4に示すと共にこの表1〜表4をグラフ化したものを図6の(a)〜(d)にそれぞれ示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
上記の表1〜表4と図6の(a)〜(d)のグラフのうち、先ず、表3、図6(c)に示すように、従来のエアスプレーガン(ニードル調節ノブ71を2回転した場合)においては、トランスホーマの圧力(系列1)が0.35Mpaのとき、半クラッチ状態(系列3)ではその圧力が0.22Mpaに減少し、弁部の全開状態(系列4)では0.18と約半分に減少している。
逆に、本発明に係る第1の実施例におけるエアスプレーガンにおいては、表1、図6(a)に示すようにトランスホーマの圧力(系列1)が0.35Mpのとき、半クラッチ状態(系列3)では0.3Mpaとなり、弁部の全開状態(系列4)では、0.25にとどまりトランスホーマの圧力に対し0.1Mpaの開きしかなく、半クラッチと弁部の全開までの差が滑らかに0.05の減少で推移していることが分る。
一方、表3、図6の(c)に示すように、従来のエアスプレーガンでは、トランスホーマの圧力から半クラッチ状態とすると、0.13Mpa低下し、半クラッチ状態から全開状態となると、0.04Mpa低下してしまう。
このようなことから、従来のエアスプレーガンにおいては、引き金部の半クラッチ状態の幅が狭く、引き金部を離す過程で、急激にエア圧力が低下してしまうことを示しており、換言すれば、半クラッチ状態を維持することの難しさを物語っていることにほかならない。このような傾向は、表4および図6(d)の見ても同様である。
逆に、表1と図6(a)および表2と図6の(b)にて分るように、第1および第2の実施例によるエアスプレーガンによれば、いわゆる半クラッチ状態でのエア圧力を広範囲に亘り、微妙な変化をさせることが、極めて容易に行うことができる。
尚、上述したエア制限部18の外径D1については、6.4mm〜6.7mmの範囲につき検討し、また、ニードル弁7の噴射量制限部41の外径D2については、1.1mm〜1.2mmの範囲につき検証し、上記ニードル弁7の噴出量制限部41の長さLについては、2mm〜2.5mmの範囲につき検証したところ、第1、第2の実施例と同等の効果が得られた。
次に、本発明の第1の実施例、第2の実施例および従来のスプレーガンにおいて、いわゆる半クラッチ状態での塗料噴出量の状況とニードル弁の全開での塗料噴出量の状況と、さらに従来の塗料噴出量の状況を確認した。
即ち、表5および図7において、条件1とは、第1の実施例でエア弁部を全開としたとき、条件2とは、第1の実施例でエア弁部を半クラッチとしたとき、条件3とは、従来のスプレーガンでエア弁部を全開としたとき、条件4とは、第2の実施例でエア弁部を全開としたとき、条件5とは、第2の実施例でエア弁部を半クラッチとしたとき、をそれぞれ表わしている。
また、ニードル弁調節ノブ回転数とは、閉じた状態からの回転数で、例えば0.75とは全閉状態から3/4回転をしたことを意味する。
また、各条件の欄に記載されている数値は、70gの塗料をすべて噴射しきるまでの時間(秒数)を表わしている。
また、スプレーガンの手元には、トランスホーマから出力される3Mpaの圧縮空気が内径6mmで長さ10mのエアホースを介して2.8Mpaの圧力の圧縮空気が供給された状態で検証を行った。
また、第1の実施例において、上述した通り、エア制限部18の外径D1は、6.7mmであり、噴射量制限部41の外径D2は、1.1mmであり、長さは2.5mmである。
また、第2の実施例において、エア制限部18の外径D1は、6.6mmであり、噴射量制限部41の直径は、1.1mmであり、長さLは2.0mmである。
このような条件下で行った検証結果を表5および表5をグラフ化した図7にて示す。
【0059】
【表5】

【0060】
表5において、従来のスプレーガン(条件3)では、ニードル弁調節ノブを3/4(0.75)回転開けたところで塗料(溶剤)を70g噴出させるのに115秒かかっていたものが、1.5回転開けたところで51秒、2回転開けたところで39秒といった具合であり、ここで急激に塗料噴出量が増大している。
つまり、従来のエアスプレーガンでは、塗料の噴出量は、最初は少なく、ある点を越えると急に増大するという、特性があり、見方を変えれば、全開状態から半開状態として噴出量を減らしていくと急に噴出量が減少してしまうことになる。
これに対し、本発明の第1の実施例および第2の実施例によれば、条件1および条件4(エア弁部を全開)でみると、3/4回転から1回転ニードル弁を開けたところまでは急に噴出量が増えるが、その後1.5回転、2回転、3回転、そして3.5回転までは徐々に噴出量が減っていくことが表5および図7から読み取ることができる。
【0061】
表5(条件3)および図7(条件3)から、従来のスプレーガンは、塗料噴出量の格差があり過ぎ、噴出量を調節できる間隔が余りにも短いので、半クラッチ操作が極めてやりにくいということがデータに如実に現れている。
そのため、従来のエアスプレーガンにおいて、中心部からボカシ部分にかけてボカシ塗装を行おうとすると、塗布膜厚が急に傾斜してしまうことになる。
上手にグラデーションを描くように塗布することがボカシのテクニックの1つである。
このような塗膜形態を実現するためには、図7から分るように塗料の噴出量がニードル弁調節ノブを開ける度合いに応じて全開まで滑らかに推移するようにすることがボカシ操作がやりやすいということになる。
上述した第1、第2の実施例は、ニードル弁調節ノブの1回転から全開に至るまで、滑らかな形で塗料が噴出されていることを図7が物語っており、このような状態であれば半クラッチ操作が容易になることを意味している。
【0062】
また、表5および図7の条件2および条件5の場合、即ち、半クラッチ状態での塗料噴出量の推移をみると、条件1および条件4の場合、即ち全開の状態よりさらに塗料の噴出量の推移が滑らかになっていることが理解できる。
つまり、このことは、ボカシ塗装において中心部とボカシ部の乾燥性に重要な要素となるのである。
一般に、エアスプレーガンでボカシ塗装をする場合、中心部とボカシ部は、連続したガン操作の流れで行われており、これは避けられない作業である。
このような連続したガン操作をしながら、中心部とボカシ部の塗膜の乾燥性が同一条件になるようにすることが必要である。
【0063】
本発明者は、この課題を解決するためボカシ部における半クラッチ状態でのエア圧力と中心部のエア圧力の差を作り出し、中心部よりボカシ部のエア圧力を下げることにより塗膜の乾燥性を遅くすることを着想した。
しかし、ボカシ際は、塗膜が薄く滑らかにすることが必要であり、塗膜は同一条件(エア圧力)で同じ状態で塗布すると乾燥性が早くなるため、特許文献1を含め、従来のエアスプレーガンでは、その作業を同一の条件下で、演出(再現)することは不可能である。
これに対し、本発明においては、上記条件を満足するように、スプレーガン操作を同一の流れの中で連続してエア圧力を低下させる機能、つまり半クラッチ状態でのエア圧力の連続した低下機能をつくり出したものである。
このことは、本発明のスプレーガンは、圧縮空気供給路の断面積を所定量減少させるエア制限部(即ち、エアレギュレータバルブ)の構造をスプレーガン本体の中に機能として持たせたものである。
【0064】
図10(a)、(b)は、弁本体の外観構成を示す正面図で、このうち(a)は従来の弁本体であり、(b)は本発明の第3の実施例の形状を示す。
従来の弁本体は、弁部66´とカラー部67´のみから成っているが、第3の実施例では、カラー部67、弁部66、エア制限部68および逃げ部68aから構成されている。
特に、第3の実施例においては、エア制限部68が嵌入する弁座本体64の部分の内径を8mmに設定し、エア制限部68の外径D2は、7.5mm、7.6mm、7.7mm、7.8mm、7.9mmの5種類について試作し且つ確認試験を行ったところ、いずれも半クラッチでのエア圧力が制限されて、塗料噴出量とバランスよくマッチングされていることが確認できた。
尚、この第3の実施の形態によれば、弁本体部のうち、少なくともエア制限部を付設するだけで、エアレギュレータの機能を付加させることができ、コスト的にも、殆ど上昇せずとも製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る塗装装置の正面中央縦断面図である。
【図2】図1の塗装装置に組み込まれている空気圧調節手段の部分の拡大縦断面図である。
【図3】空気圧調節手段の中の空気弁を示す正面図で、このうち(a)は、従来の空気弁、(b)は、本発明に係る空気弁の外観構成を示すそれぞれ正面図である。
【図4】図1の塗装装置に組み込まれているニードル弁の先端側と噴射ノズルの部分の拡大縦断面図である。
【図5】図4のニードル弁の全体を拡大して示す正面図である。
【図6】第1、第2の実施例と従来のスプレーガンにおける弁部の圧力の状態を示すもので、このうち、図6の(a)は、第1の実施例、(b)は第2の実施例、(c)、(d)は、異なる従来のスプレーガンのそれぞれ特性図である。
【図7】本発明の第1の実施例、第2の実施例および従来のスプレーガンの塗料噴射量比較特性図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る塗装装置の構成を示す、正面中央縦断面図である。
【図9】図8の塗装装置に組み込まれた弁座本体、弁部、ニードル弁等の部分の構成を示す断面図である。
【図10】本発明の第3の実施例の弁部の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 スプレーガン
2 圧縮空気供給通路
3 塗料供給通路
4 スプレーガン本体
5 噴射口
5 塗料噴射ノズル
6 塗料噴射ノズル
7 ニードル弁
8 把持部
9 銃身部
10 空気ニップル
11 空気圧調節手段
12 装着穴
13 コイルばね
14 弁座本体
15 弁座部
16 弁部
16a 第一コイルばね
16b 第二コイルばね
17 連結部
18 エア制限部
19 ばね受け
20 ねじ部
21 弁棒
22 開口部
23 環状溝
24 Oリング
25 空気室
26 先端部
27 ニードル弁ガイド
28 コイルばね
28a 第一コイルばね
28b 第二コイルばね
29 ニードルパッキン
30 パッキン調節ねじ
31 塗料ジョイント
32 塗料案内路
33 回転中心
34 引き金部
35 空気キャップ
36 貫通孔
37a、37b、37c、37d 小孔
37e、37f、37g、37h 小孔
38 第一テーパ部
39 第二テーパ部
40 第三テーパ部
41 噴射量制限部
42 開閉弁部
43 ガイド室
51 スプレーガン
52 圧縮空気供給通路
53 塗料供給通路
54 スプレーガン本体
55 噴射口
55 塗料噴射ノズル
56 塗料噴射ノズル
57 ニードル弁
58 ニードル弁
58 把持部
59 銃身部
60 空気ニップル
61 空気圧調節手段
62 装着穴
63 コイルばね
64 弁座本体
65 弁座部
66 弁部
67 カラー部
68 エア制限部
68a 逃げ部
70 ねじ部
71 ニードル弁調節ノブ
72 開口部
73 係合部
75 空気室
76 先端部
77 ニードル弁ガイド
78 コイルばね
79 ニードルパッキン
80 パッキン調節ねじ
81 塗料ジョイント
82 塗料案内路
83 回転中心
84 引き金部
85 空気キャップ
86 貫通孔
91 噴射量制限部
92 開閉弁部
94 キャップ部材
95 ニードル弁ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気と塗料を混合し塗料を噴霧化して被塗装面に塗布する塗装装置であって、
前記塗装装置は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路および塗料を供給する塗料供給通路が設けられた塗装装置本体と、
前記塗装装置本体に設けられ、塗料を噴霧する噴射口を有する塗料噴射ノズルと、
前記圧縮空気供給通路を開閉し且つ、圧縮空気圧を調節する空気圧調節手段と、
前記噴射口を開閉し塗料の噴射量を調節する塗料調節手段と、
を備え、
前記空気圧調節手段は、前記圧縮空気供給通路の断面積を零から所定量に亘り連続的に変化可能な弁部と、前記圧縮空気供給通路の断面積を所定量減少させて減圧させるエア制限部とからなり、前記塗料調節手段と、前記空気調節手段とを連動して作動させるように構成したことを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記空気圧調節手段は、前記弁部が前記圧縮空気供給通路の内部側に形成されたテーパ部に接離する円錐台状を呈し、前記エア制限部が、円板状を呈していることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記塗料調節手段は、前記塗料噴射ノズル内部でスライド自在なニードル弁であり、前記ニードル弁は、先細に形成された先端部を前記噴射口側に位置させ、前記塗料噴射ノズルの内部側に前記先端部と連続し一定の遊び量を付加した所定長さで同一径を有する噴射量制限部と、さらに前記噴射量制限部と連続し前記ノズルの内部に向って緩やかな傾斜で径大となる開閉弁部と、前記開閉弁部と連続し、軸方向の摺動を規制する軸部とから構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記空気圧調節手段および前記塗料調節手段は、それぞれ弾性部材により、前記圧縮空気供給通路および前記噴射口を閉鎖する方向に付勢されており、前記弾性部材の付勢力に抗して引き金部を引寄せる動作に伴って、開口する方向に移動されることを特徴とする請求項1〜3に記載の塗装装置。
【請求項5】
前記引き金部を途中まで引き寄せ、前記空気圧調節手段および前記塗料調節手段を共に半開状態としたとき、前記塗料の噴出量と、前記圧縮空気供給通路の圧力とを適合させるように前記塗料調節手段と前記空気圧調節手段とを設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗装装置。
【請求項6】
圧縮空気と塗料を混合し塗料を噴霧化して被塗装面に塗布する塗装装置であって、
前記塗装装置は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路および塗料を供給する塗料供給通路が設けられた塗装装置本体と、
前記塗装装置本体に設けられ、塗料を噴霧する噴射口を有する塗料噴射ノズルと、
前記圧縮空気供給通路を開閉し且つ圧縮空気圧を調節する空気圧調節手段と、
前記噴射口を開閉し塗料の噴射量を調節する塗料調節手段と、
を備え、
前記塗料調節手段および前記空気圧調節手段は、前記塗料噴射ノズル内部でスライド自在なニードル弁の同一軸上にそれぞれ設けられ、
前記ニードル弁は、先細に形成された先端部を前記噴射口側に位置させ、
前記塗料噴射ノズルの内部側に、前記先端部と連続し一定の遊び量を付加した所定長さを有し且つ同一径の噴射量制限部と、さらに前記噴射量制限部と連続し前記ノズル内部に向って緩やかな傾斜で径大となる開閉弁部が設けられ、さらにこの開閉弁部と同軸に、前記圧縮空気の供給路の断面積を所定量減少させるエア制限部と、これに連続し、前記圧縮空気供給通路の断面積を零から所定量に亘り連続的に変化可能な弁部とが、一連に設けてなることを特徴とする塗装装置。
【請求項7】
前記空気圧調節手段は、前記弁部が前記圧縮空気供給通路の内部側に形成されたテーパ部に接離する円錐台状を呈し、前記エア制限部が前記圧縮空気供給通通路の内壁との間に所定の間隙を存して設けられた円環状を呈していることを特徴とする請求項6に記載の塗装装置。
【請求項8】
前記ニードル弁と前記塗料噴射ノズルは、少なくとも前記引き金部による移動ストロークのほぼ前半の移動段階では、塗料の噴射量が連続的に変化し、残りの移動段階では塗料の噴射量がほぼ同一か微小な変化となるように設定し、ボカシ塗装作業に好適な構成とされていることを特徴とする請求項6〜7のいずれか1項に記載の塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−14912(P2007−14912A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201005(P2005−201005)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(305021786)株式会社ウエノコーポレーション (6)
【Fターム(参考)】