説明

塗装金属ロープ

【課題】車の運転者からみて夜間におけるガードケーブルなどの存在を確認しやすく、夜間でもロープが容易に視認できるように夜間の視認性を向上させ、また耐食性も向上させ、ロープの寿命も向上しえる塗装金属ロープを提供する。
【解決手段】1本毎にその表面全周に樹脂塗装した素線を複数本撚り合わせてなる金属ロープにおいて、当該樹脂塗装素線のうちの1本以上が蛍光顔料又は蓄光顔料を配合した樹脂で塗装されるか、または、樹脂塗装ストランドの1本以上が蛍光顔料、又は蓄光顔料を配合した樹脂で塗装されていている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属ロープとりわけ道路安全施設関係のロープなどに使用されるのに好適な夜間視認性の向上されたロープに関する。
【背景技術】
【0002】
道路分離用のガードケーブル等においては夜間では視認性が低下し、車の衝突事故の危険性が高い。ガードケーブルにおいては耐食性をもたせるためにその鋼素線表面に亜鉛めっきや亜鉛・アルミニウムめっき等の表面処理が施されているが、車の運転者から夜間確認しやすい処理は施されていない。また、撚り線の表面に耐腐食性や耐候性を向上するために鋼撚り線の表面に飽和ポリエステルのような熱可塑性樹脂を粉体塗装によって被覆することは先行技術におい開示されているが、夜間の視認性を向上させ、夜間における衝突事故などを抑制させる点ついては有効な手段が開示されていなかった。
【特許文献1】特開2006−122808号公報
【特許文献2】特開2006−167662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、車の運転者からみて夜間におけるガードケーブルなどの存在を確認しやすく、夜間でもロープが容易に視認できるように夜間の視認性を向上させ、また耐食性も向上させ、ロープの寿命も向上しえる塗装金属ロープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため本発明は、塗装手段として、太陽光や白熱灯などの光を吸収して一時的に蓄え、これを徐々に放出して夜間等の暗いところで発光して見える蓄光顔料や、光などのエネルギーにより励起され、そのエネルギーを特定波長の光として放出する蛍光顔料を用いるものである。
【0005】
具体的には金属ロープに樹脂塗装を施し、その一部又は全部に蛍光顔料や蓄光原料を配合した樹脂の塗装を施すもので、表面全周に樹脂塗装した素線の複数本を撚り合わせたロープにおいて、そのうちの1本以上の素線に蛍光顔料又は蓄光顔料を配合した樹脂塗装を施した素線を混入させるものである。すなわち、1本毎にその表面全周に樹脂塗装した素線を複数本撚り合わせてなる金属ロープにおいて、当該樹脂塗装素線のうちの1本以上が蛍光顔料又は蓄光顔料を配合した樹脂で塗装されていることを特徴とする。(請求項1)
この発明において、素線1本以上に蛍光顔料を配合した樹脂を塗装し、また他の素線1本以上に蓄光顔料を配合した樹脂を塗装し、これら素線を撚り合わせてなる態様を含んでいる。
【0006】
また、本発明は、複数本の素線を撚り合わせてなるストランドに樹脂塗装し、更にこのストランドの複数本を撚り合わせてなる金属ロープにおいて、当該ストランド1本以上に蛍光顔料或いは蓄光顔料を配合した樹脂塗装を施したストランドを混入させるものである。すなわち、複数本の素線を撚り合わせてなるストランドの表面全周に樹脂塗装した後、当該ストランドを複数本撚り合わせてなる金属ロープにおいて、当該樹脂塗装ストランドの1本以上が蛍光顔料、又は蓄光顔料を配合した樹脂で塗装されていることを特徴としている(請求項3)。
【0007】
この発明は、ストランド1本以上に蛍光顔料を配合した樹脂を塗装し、またストランドの1本以上に蓄光顔料を配合した樹脂を塗装し、これらを撚り合わせる態様を含んでいる。更に、上記の素線或いはストランドに蛍光顔料を配合した樹脂塗装或いは蓄光顔料を配合した樹脂塗装を施し、この双方とも入れ込んだ塗装ロープとするものである。
【発明の効果】
【0008】
ロープの一部又は全部に蛍光顔料を配合した樹脂塗装を、或いは蓄光顔料を配合した樹脂塗装を施すことにより蛍光部或いは蓄光部を含むため、または蛍光顔料を配合した樹脂塗装と蓄光顔料を配合した樹脂塗装を施すことにより蛍光部と蓄光部の双方を含むようにしているため、夜間における視認性を著しく向上することができる。当該ロープは樹脂塗装されるため、同時に耐食性も向上することができる。
【0009】
これらのうち、特に同一ロープの中に蛍光部と蓄光部の双方を含んでいるものは、夜間においては車のライトで蛍光部が光り、ライトが当たらない暗いところでは蓄光部が光る。
即ち、夜間車のライトが当たる場合と当たらない場合のいずれの状況においても蛍光部か蓄光部のどちらかが光るので、視認性を確実に良好にすることができるものである。
【0010】
なお、本発明は、ロープに加えて金具類に適用してもよい。例えば、複数の部品からなるロープの引き留め金具等において、部品の一部を蛍光樹脂塗装し、他の一部に蓄光塗装を行ってもよい。
なお、場合によっては金属ロープの素線の一部又はストランドの一部のみに蛍光又は蓄光或いはその両方を塗装し、他の素線やストランドは塗装されていないものでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
粉体樹脂に蛍光顔料或いは蓄光顔料を適量配合し、この粉体塗料をロープの素線或いはストランドに焼付け塗装する。好ましくは、下地に白系の樹脂を焼きつけ塗装し、続いて蛍光顔料或いは蓄光顔料を配合した樹脂塗料をその上に焼きつけ塗装するのがよいが、下地塗装せずに直接塗装してもよい。なお、特に蛍光顔料においてはその紫外線劣化を抑えるため、好適には、これらの塗装の上に紫外線吸収剤を配合した無色樹脂塗装を行ってカバーする。
【実施例1】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を説明すると、図1は3×7構造のストランド型ワイヤロープであるが、以下の手順の連続処理で粉体焼付け塗装を行った。直径2.86mmの亜鉛めっきを施した鋼素線1a、2a、3aの表面に、前処理としてショットブラスト処理を行った後、高周波加熱装置を用いて蛍光顔料又は蓄光顔料を配合した飽和ポリエステル樹脂粉体塗料の溶融点以上の温度に素線を加熱し、続いて飽和ポリエステル樹脂粉体の流動槽中を通過させて粉体を表面に付着させてこれを溶融させ、その溶融状態において適度な直径のダイス孔を通過させて圧着させた後、水冷固化させて塗装を行った。この塗膜厚は約80μmであった。
このように塗装した蛍光塗装素線7本を撚り合わせてストランド1、2、3とし、更にこのストランド3本1、2、3を撚り合わせて直径18mmの3×7構造のワイヤロープ4を製造した。
【0013】
この塗装工程の概略は図4に示す通りであり、即ち、サプライ装置5から鋼素線を引き出し、ショットブラスト装置6で素線表面を清浄化、梨地化及び活性化させた後、高周波加熱装置7で加熱し、これを蛍光顔料又は蓄光顔料を配合した粉体塗料の流動槽8に浸漬して塗料を素線に付着溶融させ、続いて所定の孔径のダイスを通過させて塗料を圧着させた後、水槽10を通して水冷固化して、巻取り装置11で巻き取るものである。
【実施例2】
【0014】
直径2.86mmの表面に亜鉛めっきを施した鋼素線表面にショットブラストを施した後、下地塗装として白系飽和ポリエステル樹脂粉体塗料を、静電塗装装置を用いて素線表面に吹き付け電着させた後、高周波加熱装置を用いて粉体の溶融温度以上に素線を加熱して付着粉体を溶融させ、続いて蛍光顔料又は蓄光顔料を配合した同樹脂粉体塗料をその上に静電塗装装置を用いて付着させ、残熱で溶融焼付けした後、水冷固化させて塗装した。この下地塗膜厚は約90μmで蛍光又は蓄光塗膜厚は約50μmであった。
【0015】
この実施例の塗装工程の概略は図5に示されており、即ち、サプライ装置5から鋼素線を引き出し、まず、ショットブラスト装置6で表面を清浄化、梨地化及び活性化させた後、第一静電塗装装置7Aで白系樹脂粉体を電着付着させた後、高周波加熱装置8で所定温度に加熱して付着樹脂を溶融させ、次に、この溶融状態で第二静電塗装装置7Bにおいて蛍光顔料又は蓄光顔料を配合した粉体樹脂を吹き付け付着させ、これを溶融させた後、水槽10で水冷固化させて巻取り機11で巻き取るものである。
このようにして得た塗装素線7本を撚り合わせてストランドとし、更に当該ストランド3本を撚り合わせて直径18mmの3×7構造のロープにした。
【0016】
蛍光顔料配合塗装と蓄光顔料配合塗装の組み合わせは以下の通りである。
1)ストランドを構成している7本の素線のうち3本の素線4aを蛍光塗装線又は蓄光塗装線とし、芯線以外の他の3本の素線4bは蛍光塗料又は蓄光塗料を含まない通常樹脂塗料での塗装線とし、これを撚り合わせて3×7構造のロープとした。(図2参照)
2)3本のストランドのうち1本のストランド1を蛍光塗装線で構成し、他の2本ストランド2,3を蓄光塗装線で構成し、これらを撚り合わせて3×7構造のロープとした。(図3参照)
3)ストランドを構成している7本の素線のうち3本の素線4aを蛍光塗装線とし、芯線以外の他の3本の素線4bは蓄光塗装線とし、これを撚り合わせて3×7構造のロープとした。
【実施例3】
【0017】
以下の手順で連続処理にて粉体焼付け塗装を行った。すなわち、亜鉛めっきを施した直径2.86mmの鋼素線を7本撚り合わせてなる直径9mmのストランドの表面にショットブラストを行って表面処理を施した後、白系顔料を基本配合した飽和ポリエステル樹脂粉体塗料を静電塗装装置でストランド表面に電着させ、続いて高周波加熱装置で当該塗料の溶融点以上の温度に加熱して溶融させて下地塗装とし、更にこれが溶融しているうちに蛍光顔料又は蓄光顔料を配合した飽和ポリエステル粉体樹脂塗料を別の静電塗装装置を用いてストランド表面に吹き付けて残熱で溶融させた後、水冷固化させて塗装した。この塗装において、下地塗装厚は約100μmで、蛍光又は蓄光塗膜厚は約60μmであった。
【0018】
塗装工程の概略は図6に示すが、実施例2の図5とほぼと同じである。異なるのはショットブラスト装置の前に予備加熱用の高周波加熱装置8aを設けた点である。これは高周波加熱装置8で本加熱を行ったときに、ストランドの山部と谷部での加熱ムラを抑えるため、予め、粉体樹脂の溶融温度より低い温度で加熱しておくためのものである。
このようにして塗装したストランド3本を撚り合わせて、3×7構造の直径18mmのロープとした。
【0019】
なお、実施例2、3において、蛍光顔料配合塗装では下地塗装を行わず、直接粉体樹脂に蛍光顔料を配合した粉体塗装を行ってもよい。この場合、更に塗装中の蛍光顔料の紫外線劣化を抑制するため、図5の方法で第一静電塗装装置により蛍光塗装を行った後、第二静電塗装装置で、樹脂(透明)に紫外線吸収剤を配合した粉体を塗装することが好ましい。
勿論、下地塗装粉体の加熱後、その溶融状態において蛍光塗装粉体と更に紫外線吸収剤を配合した粉体を吹き付けて溶融させ塗装(3層塗装)してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は本発明の塗装に適用した金属ロープの側面図、(b)は断面図である。
【図2】本発明の実施例を示す塗装金属ロープの側面図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す塗装金属ロープの側面図である。
【図4】本発明の塗装工程の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の塗装工程の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明の塗装工程の更なる他例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0021】
1〜3 ロープを構成するストランド
1a、2a、3a、4a 素線
4 ロープ本体
7、7A、7B 静電塗装装置
8 高周波加熱装置
9 粉体流動槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本毎にその表面全周に樹脂塗装した素線を複数本撚り合わせてなる金属ロープにおいて、当該樹脂塗装素線のうちの1本以上が蛍光顔料又は蓄光顔料を配合した樹脂で塗装されていることを特徴とする塗装金属ロープ。
【請求項2】
素線1本以上に蛍光顔料を配合した樹脂を塗装し、また素線1本以上に蓄光顔料を配合した樹脂を塗装し、これら素線を撚り合わせてなることを特徴とする請求項1に記載の塗装金属ロープ。
【請求項3】
複数本の素線を撚り合わせてなるストランドの表面全周に樹脂塗装した後、当該ストランドを複数本撚り合わせてなる金属ロープにおいて、当該樹脂塗装ストランドの1本以上が蛍光顔料、又は蓄光顔料を配合した樹脂で塗装されていることを特徴とする塗装金属ロープ。
【請求項4】
ストランド1本以上に蛍光顔料を配合した樹脂を塗装し、またストランドの1本以上に蓄光顔料を配合した樹脂を塗装し、これらを撚り合わせてなることを特徴とする請求項3に記載の塗装金属ロープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−215688(P2009−215688A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183960(P2008−183960)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000003528)東京製綱株式会社 (139)
【Fターム(参考)】