説明

塗装金属体の塗装法

【課題】金属基材へ蛍光塗料や光反射塗料、蓄光塗料などを長期間の耐用強度に富む密着被膜として塗装することにより、決して剥離しないように工夫した。
【解決手段】ステンレス鋼や鉄、アルミニウム、その他の金属基材(M)の表面へ、塗装下地層となる黒色クロムメッキ処理やレイデント処理、その他の電気分解による多孔質の黒色化成被膜(10)を形成し、その後その黒色化成被膜(10)の表面へ白色の下塗り被膜(11)と、その下塗り被膜(11)の表面へ蛍光塗料や蓄光塗料、光反射塗料、その他の光を受けて発光し得る発光塗料から成る中塗り被膜(12)と、その中塗り被膜(12)の表面へ透明の上塗り被膜(13)とを順次塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装金属体の塗装法に係り、例えば道路のガードレールや交通標識、街路灯のポール、建物の内外装材、腕時計の外装材、手動作業工具、その他の金属体へ、蛍光塗料や光反射塗料、蓄光塗料、その他の光を受けて発光する塗料を、長期間の耐用強度に富む密着被膜として塗装することにより、決して剥離しないように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
特開平11−48399号公報(特許文献1)に記載されている蛍光塗装金属体が、金属体(1)の表面へ粉体塗装した樹脂塗膜(2)を介して、蛍光塗料による外層(3)を形成しており、蛍光性を長期間持続させ得るようになっている点で、本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−48399号公報
【特許文献2】特開平5−76835号公報
【特許文献3】特開平8−229502号公報
【特許文献4】特開2004−122409号公報
【特許文献5】特開2004−160757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、鉄や非鉄金属、合金鋼、その他の金属基材の表面へ、コーティング材から成る被膜(塗装膜)を長年月に亘って強固に密着させることは難かしい。上記特許文献1に開示されている蛍光塗装金属体の構成では、蛍光塗料による外層(塗装膜)の下地層が、たとえ1回の塗装で肉厚化できる樹脂塗膜であるとしても、その樹脂塗膜は金属体の表面へ粉体塗装(静電塗装)されているため、その塗膜の密着力に劣り、早期に剥離して、金属体の発錆するおそれがある。
【0005】
特に、金属基材がステンレス鋼である場合、その表面には緻密過ぎる結晶の強固な酸化被膜が生成しているため、上記問題は顕著となり、半永久的な装飾効果や耐蝕性などを確保することができない。
【0006】
この点、ステンレス基材の表面に塗装するための下地層(第1層)として、クロメート処理による化成被膜を形成することが、上記特許文献2〜5に開示されているが、このクロメート処理にる化成被膜はたとえ黒色であっても、電気分解により析出された多孔質の黒色化成被膜と異なって、未だ塗膜の密着力が弱く、殊更折り曲げ部分からクラックを生じやすく、上記装飾効果や耐蝕性などを半永久的に維持するための塗装下地層としては役立たない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1ではステンレス鋼や鉄、アルミニウム、その他の金属基材の表面へ、塗装下地層となる黒色クロムメッキ処理やレイデント処理、その他の電気分解による多孔質の黒色化成被膜を形成し、
【0008】
その後、その黒色化成被膜の表面へ白色の下塗り被膜と、その下塗り被膜の表面へ蛍光塗料や蓄光塗料、光反射塗料、その他の光を受けて発光し得る発光塗料から成る中塗り被膜と、その中塗り被膜の表面へ透明の上塗り被膜とを順次塗装することを特徴とする。
【0009】
請求項2ではステンレス鋼や鉄、アルミニウム、その他の金属基材における表面の一部分へ、電気分解用の絶縁性がある第1マスキングテープを貼り付けた上、その金属基材の表面に残る露出部分へ、塗装下地層となる黒色クロムメッキ処理やレイデント処理、その他の電気分解による多孔質の黒色化成被膜を形成し、
【0010】
その後、上記第1マスキングテープを塗装用の熱変形しない第2マスキングテープと貼り替えた上、上記黒色化成被膜の表面へ白色の下塗り被膜と、その下塗り被膜の表面へ蛍光塗料や蓄光塗料、光反射塗料、その他の光を受けて発光し得る発光塗料から成る中塗り被膜と、その中塗り被膜の表面へ透明の上塗り被膜とを順次塗装して、
【0011】
最後に、上記第2マスキングテープを剥ぎ取ることにより、金属基材から自身の光沢に富む材質感と、上記中塗り被膜の発光性とを発揮させることを特徴とする。
【0012】
請求項3ではステンレス鋼や鉄、アルミニウム、その他の金属基材の表面へ、文字や図形、記号又はこれらの結合から成る標章の輪郭となる抜き穴が加工された電気分解用兼塗装用のマスキングシートを貼り付けた上、そのマスキングシートの抜き穴を通じた金属基材の表面露出部分へ、塗装下地層となる黒色クロムメッキ処理やレイデント処理、その他の電気分解による多孔質の黒色化成被膜を形成し
【0013】
その後、その黒色化成被膜と上記マスキングシートとの表面全体へ白色の下塗り被膜と、その下塗り被膜の表面へ蛍光塗料や蓄光塗料、光反射塗料、その他の光を受けて発光し得る発光塗料から成る中塗り被膜と、その中塗り被膜の表面へ透明の上塗り被膜とを順次塗装して、
【0014】
最後に、上記マスキングシートを剥ぎ取ることにより、金属基材から自身の光沢に富む材質感と、上記中塗り被膜における標章の発光性とを発揮させることを特徴とする。
【0015】
更に、請求項4では電気分解による多孔質の黒色化成被膜が、無数の黒色クロム微粒子から成る1μm〜2μmの薄肉なレイデント処理被膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の上記構成によれば、中塗り被膜が蛍光塗料や蓄光塗料、光反射塗料、その他の光を受けて発光し得る塗料から成るため、その塗装金属体に夜間や暗い場所での発光性(視認性)と、これに基く安全性を与えることができる。
【0017】
しかも、上記中塗り被膜の表面を透明の上塗り被膜によってマスキングしているため、その塗装金属体の使用中に傷付きを生じるおそれがなく、耐擦性や耐摩耗性に優れる。
【0018】
特に、金属基材の表面には塗装下地層として、黒色クロムメッキ処理やレイデント処理などの電気分解による多孔質の黒色化成被膜が形成されており、その化成被膜の表面に黒色を一旦隠蔽する白色の下塗り被膜が塗装されているため、その下塗り被膜と中塗り被膜並びに上塗り被膜の剥離するおそれはなく、長年月に亘る強固な密着力と耐蝕性(防錆力)を得られ、延いては視認しやすい発光性を永く維持できる効果がある。
【0019】
又、請求項2の構成によれば、黒色クロムメッキ処理やレイデント処理などの電気分解による多孔質の黒色化成被膜を金属基材の表面一部分へ、そのための電気絶縁性がある第1マスキングテープを貼り付け使用することによって、容易に支障なく形成することができ、その後第1マスキングテープを塗装用の第2マスキングテープと貼り替えることにより、上記多孔質黒色化成被膜の表面へ光を受けて発光し得る塗料から成る中塗り被膜と、これをマスキングする透明の上塗り被膜とを順次塗装することができるのであり、作業性に優れる。
【0020】
その場合、金属基材の第1、2マスキングテープを貼り付けない表面露出部分へ、塗装下地層となる上記多孔質黒色化成被膜の形成と、引き続く下塗り被膜並びに中塗り被膜の塗装を行なって、その中塗り被膜の上記発光塗料による発光性(視認性)を与えている一方、上記第1、2マスキングテープを貼り付けていた表面被覆部分(非露出部分)は、その最終的な第2マスキングテープの剥ぎ取りによって、金属基材自身の光沢に富む材質感を表出することになるため、その組合せの優美な化粧効果を得られるのであり、特にステンレス鋼から成る金属基材に有効と言える。
【0021】
更に、請求項3の構成によれば、電気分解作用(電気化学反応)と塗装との何れにも耐えることができ、しかも希望の標章(画像)が姿抜き加工されたマスキングシートを使用しているため、その貼り付け後の金属基材に対する黒色クロムメッキ処理やレイデント処理などの電気分解作用と、その電気分解作用による多孔質な黒色化成被膜の形成と、その黒色化成被膜と上記マスキングシートとの表面全体に対する下塗り被膜と中塗り被膜並びに上塗り被膜の塗装とを、非常に能率良く実行することができ、そのマスキングシートの最終的な剥ぎ取りによって、やはり金属基材自身の光沢に富む材質感と、上記発光塗料から成る中塗り被膜の発光性(視認性)とを得られる効果がある。
【0022】
請求項1〜3に記載された何れの塗装法にあっても、請求項4の構成を採用するならば、そのレイデント処理被膜は通常の化学反応と異なるマイナス温度(低温)での電気分解作用(電気化学反応)により、金属基材の表面に析出された無数のアモルファス(非結晶性)クロム微粒子から成る1μm〜2μmの多孔質な黒色化成被膜であるため、その無数の微細孔にコーティング材(塗料)があたかも毛細血管の網状に絡らみ付き浸透する如く、その下塗り被膜と中塗り被膜並びに上塗り被膜の2次密着性に優れた塗装下地層を形作り、金属基材を折り曲げても、その折り曲げ部からクラックが発生するおそれもない。
【0023】
しかも、上記レイデント処理被膜の一部は母材である金属基材の内部に拡散して、拡散層(合金層)を形成するため、優れた密着力と防錆力(耐蝕性)を発揮し、その結果上記中塗り被膜からの発光性も長年月に亘って保持し得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の塗装金属体として、道路のガードレールを示す斜面図である。
【図2】本発明の塗装金属体として、手動作業工具(モンキーレンチ)を示す平面図である。
【図3】本発明の塗装金属体として、駐車場表示板を示す正面図である。
【図4】本発明の塗装金属体として、腕時計の見返しリングを示す正面図である。
【図5】本発明の塗装金属体として、ゴルフのフラッグピンを示す斜面図である。
【図6】本発明の塗装金属体として、ゴルフクラブのシャフトを示す斜面図である。
【図7】本発明に係る塗装法の第1実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明に係る塗装法の第2実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明に係る塗装法の第3実施形態を示す断面図である。
【図10】図9の塗装法により完成した塗装金属体(交通標識板)を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜6は本発明の塗装金属体として、道路のガードレールや手動作業工具、駐車場表示板、腕時計の見返しリング、ゴルフのフラッグピン、ゴルフクラブのシャフトを例示しており、又図7はステンレス鋼板(SUS304)を金属基材(M)の代表例として、その塗装工程を示す断面図であるが、その金属基材(M)の表面は図示のフラット面のみに限らず、曲面や凹凸面などもあり得る。
【0026】
そこで、図7(I)〜(IV)に基いて本発明に係る塗装法の第1実施形態を詳述すると、次のとおりである。即ち、金属基材(M)の表面に付着している油脂分や汚れ、不純物などを除去するため、予じめシンナーやアルコール、各種酸類による洗浄や脱脂処理などを行なっておく。
【0027】
そして、先ず第1工程として金属基材(M)の表面へレイデント処理(本出願人の所要する登録商標)を施し、図7(I)のように塗装下地層となる多孔質の黒色化成被膜を形成する。茲に、レイデント処理とは本出願人の技術開発した特殊な金属表面処理を意味し、主としてクロム酸水溶液に適宜触媒成分を添加し、約マイナス5℃〜約マイナス10℃の冷温(低温)下において直流電解(例えば約6V〜約12Vで約5分〜約60分)を行なうことにより、金属表面にクロム微粒子群の多孔質黒色被膜を約1μm〜約2μmの厚みだけ析出させる方法である。
【0028】
このようなレイデント処理による多孔質の薄い黒色化成被膜は、その一部が母材である金属基材(M)の内部へ境界面なく拡散して、約1μmの拡散層(合金層)を形成することになるため、優れた密着力と防錆力を発揮し、長年月に亘って剥離や発錆などを生じるおそれがなく、耐久性に富む。
【0029】
しかも、上記サブミクロン級のアモルファス状クロム微粒子が集積し、無数のピンホールやマイクロクラックを有する多孔質の被膜として、後述するコーティング材(塗料)との接触表面積が著しく広大であるため、その被膜へコーティング材(塗料)があたかも毛細血管の隅々まで網状に波及・浸透する如く、その塗装膜の2次密着性に優れた下地層を形作ることができるのである。
【0030】
但し、上記母材の金属基材(M)に対する密着力と防錆力を期待でき、塗装膜の2次密着性に優れた下地層(塗装下地層)を形成し得る限りでは、上記レイデント処理による多孔質の薄肉な黒色化成被膜に代えて、黒色クロムメッキ処理やその他の電気分解により析出される多孔質の黒色化成被膜を採用しても良い。図7の符号(10)はこのようなレイデント処理や黒色クロムメッキ処理、その他の電気分解により金属基材(M)の表面に形成された多孔質の黒色化成被膜を示しており、これが後述の塗装下地層になる。
【0031】
上記電気分解による多孔質の黒色化成被膜(10)を形成できたならば、次に図7(II)の第2工程に示す如く、その多孔質黒色化成被膜(10)の表面へ刷毛塗装やスプレー塗装、ロール塗装などの適当な塗装法を用いて、白色の下塗り被膜(11)を形成する。
【0032】
その下塗り被膜(11)の塗料としてはウッドシーラー(JIS K 5533)、就中白色の顔料が添加された一液反応硬化型水系ウレタン樹脂塗料(大日本塗料の商品名「DNT ビューウレタン」)を使って塗装し、その固化後の膜厚を約15μm〜約25μm、殊更約20μmに設定することが好ましい。
【0033】
茲に、下塗り被膜(11)を白色に設定した所以は、先の電気分解による多孔質化成被膜(10)の黒色を、その白色の下塗り被膜(11)により一旦隠蔽して、後述する中塗り被膜の発色が暗くなることを予防するためである。
【0034】
その意味から言えば、下塗り被膜(11)の厚みとしても15μmより薄いと、塗装下地層の上記黒色化成被膜(10)が灰色に表出するおそれなしとせず、他方25μmよりも厚くすることは、その後の中塗り被膜と上塗り被膜を考慮した場合、下塗り被膜(11)として厚肉に過ぎ、不必要・不経済でもある。そのため、上記した約20μmの膜厚に形成することが最も好ましい。
【0035】
何れにしても、上記下塗り被膜(11)が所要温度と所要時間での乾燥により固化したならば、次に図7(III)の第3工程から明白なように、その下塗り被膜(11)の表面へやはり刷毛塗りやスプレー塗装、浸漬塗装、ロール塗装、フローコーター塗装などの適当な方法を用いて、発光塗料を塗装し、光を受けて発光し得る中塗り被膜(12)を形成する。その中塗り被膜(12)における固化後の膜厚は、約30μmに設定することが好ましい。
【0036】
茲に、発光塗料としては水性又は溶剤型の蛍光塗料や蓄光塗料、透明の塗料と反射球(ガラスビーズ)を組み合わせた光反射塗料などを採用することができ、これらには蛍光材や蓄光材以外の色材となる着色剤(顔料及び染料)が含まれることもある。
【0037】
そして、このような発光塗料から形成された中塗り被膜(12)が、所要温度と所要時間での乾燥によって固化したならば、最後に図7(IV)の第4工程に示す如く、その中塗り被膜(12)の表面へやはりスプレー塗装や浸漬塗装、ロール塗装、刷毛塗りなどの方法を用いて、上塗り用のクリヤーラッカーを塗装し、その透明塗料から成る上塗り被膜(13)を形成する。その上塗り被膜(13)における固化後の膜厚としては、約5μm〜約10μmあれば良い。
【0038】
そうすれば、外部から光が透明の上塗り被膜(13)を通じて、上記中塗り被膜(12)に与えられることとなり、その結果蛍光塗料や蓄光塗料、光反射塗料などの発光塗料が発光し、上記金属基材(M)から成る道路のガードレールや街路灯のポール、交通標識、腕時計、ゴルフのフラッグピン、ゴルフクラブのシャフト、建物の内・外装材、その他の各種塗装金属体について、夜間や暗い場所での視認性(安全性)を確保することができる。
【0039】
特に、上記光を受けて発光する発光塗料から成る中塗り被膜(12)と、その白色下塗り被膜(11)との塗装下地層が、黒色クロムメッキ処理やレイデント処理、その他の電気分解よる多孔質の黒色化成被膜(10)として形作られているため、長年月に亘る強固な密着力と耐蝕性(防錆力)を発揮させることができ、剥離するおそれはない。
【0040】
本発明の上記した第1実施形態では、光を受けて発光し得る発光塗料から成る中塗り被膜(12)とその白色の下塗り被膜(11)並びに透明の上塗り被膜(13)を、金属基材(M)の表面全体へ被覆状態に形成するようになっているが、図8(I)〜(VI)の第2実施形態に示す如く、金属基材(M)の表面へ同様な塗装を部分的に行なって、上記中塗り被膜(12)の発光性と金属基材(M)自身の光沢に富む材質感とを発揮させることができるように定めて良い。
【0041】
即ち、本発明の第2実施形態としては先ず図8(I)に示すように、金属基材(M)の光沢に富む材質感を残したい表面の非発光部分(a)へ、上記黒色クロムメッキ処理やレイデント処理、その他の電気分解作用(電気化学反応)に耐え得る電気絶縁性や非化学反応性があるビニールテープなどの第1マスキングテープ(T1)を被覆状態に貼り付ける。
【0042】
そして、次に図8(II)から明白なように、上記金属基材(M)の表面が露出している部分(後述の発光部分)(b)へ、黒色クロムメッキ処理や好ましくは上記したレイデント処理を行ない、その電気分解による多孔質の黒色化成被膜(10)を形成し、その後図8(III)に示す如く、上記第1マスキングテープ(T1)を金属基材(M)の表面から剥離して、その代りの塗装用となる紙製テープやその他の熱変形しない第2マスキングテープ(T2)を、上記金属基材(M)における表面の非発光部分(a)へ貼り付ける。
【0043】
このような第2マスキングテープ(T2)の貼り付けにより、やはり金属基材(M)における表面の非発光部分(a)を被覆した状態のもとで、上記電気分解による多孔質黒色化成被膜(10)の表面へ、図8(III)のように刷毛塗りやスプレー塗装、浸漬塗装、ロール塗装などの適当な方法を用いて、上記第1実施形態と同じ下塗り塗料による白色の下塗り被膜(11)を形成する。
【0044】
上記下塗り被膜(11)が所要温度と所要時間での乾燥により固化したならば、引き続き図8(IV)から明白なように、その下塗り被膜(11)の表面へやはり刷毛塗りやスプレー塗装、浸漬塗装、ロール塗装などの適当な方法を用いて、上記第1実施形態と同じ発光塗料を塗装することにより、光の照射を受けて発光し得る中塗り被膜(12)を形成する。
【0045】
そして、このような発光塗料から成る中塗り被膜(12)が、所要温度と所要時間での乾燥により固化したならば、図8(V)から明白なように、その中塗り被膜(12)の表面へ刷毛塗りやスプレー塗装、浸漬塗装、ロール塗装などの適当な方法によって、上記第1実施形態と同様なクリヤーラッカー(JIS K 5531)を塗装し、透明の上塗り被膜(13)を形成するのである。
【0046】
その上塗り被膜(13)が乾燥固化したならば、最後に上記した塗装用の第2マスキングテープ(T2)を剥離する。そうすれば、図8(VI) の断面図に示すような塗装金属体が完成し、その金属基材(M)における表面の上記発光部分(b)を占める中塗り被膜(12)が、光の照射を受けて発光すると同時に、残る非発光部分(a)から金属色(地肌)の光沢が表出し、その金属基材(M)自身の光沢に富む材質感と発光性とを得られることになる。
【0047】
更に、図9(I)〜(VI)は本発明の第3実施形態に係る塗装工程を示す断面図であり、図10はその塗装金属体として完成した交通標識板を例示している。
【0048】
図8(I)〜(VI)に基いて説明した上記第2実施形態の塗装工程ては、電気分解用の絶縁性がある第1マスキングテープ(T1)と、塗装用の熱変形しない第2マスキングテープ(T2)との2種を用意して、その2種を貼り替えるようになっている。
【0049】
又、金属基材(M)における光沢に富む材質感(地肌)を残したい表面の非発光部分(a)へ、上記第1、2マスキングテープ(T1)(T2)を貼り付け使用して、これらが貼り付けられない表面露出部分(発光部分)(b)に、塗装下地層となる上記多孔質黒色化成被膜(10)の形成と、白色下塗り被膜(11)と発光性中塗り被膜(12)並びに透明中塗り被膜(12)の塗装とを順次行なっている。
【0050】
これに比して、図9(I)〜(VI)に示す第3実施形態の塗装工程では、上記電気分解作用(電気化学反応)と塗装に耐え得ることにより、貼り替えることが不要な一種のマスキングシート(耐熱性のプラスチックフィルム)(S)に、金属基材(M)の発光部分(b)と成る抜き穴(14)を型抜き加工しており、しかもその抜き穴(14)が図10に例示するような文字、図形、記号又はこれらの結合から成る任意な標章(画像)(15)の輪郭形状を区成しているのである。
【0051】
そして、先ず図9(I)のように、上記マスキングシート(S)を金属基材(M)の表面へ貼り付け、次いで図9(II)から明白なように、そのマスキングシート(S)の抜き穴(14)を通じた金属基材(M)の表面露出部分(発光部分)(b)へ、上記レイデント処理や黒色クロムメッキ処理、その他の電気分解による多孔質の黒色化成被膜(10)を形成し、これを塗装下地層として準備する。
【0052】
それから図9(III)のように、上記金属基材(M)の表面を被覆した状態にあるマスキングシート(S)と、上記電気分解による多孔質黒色化成被膜(10)との表面全体へ、表側からスプレー塗装や刷毛塗り、ロール塗装、フローコーター塗装、その他の適当な塗装法を用いて、希望の標章(画像)(15)となる白色の下塗り被膜(11)を形成する。
【0053】
又、上記下塗り被膜(11)が乾燥固化したならば、次に図9(IV)から明白なように、その下塗り被膜(11)の表面へ刷毛塗りやスプレー塗装、その他の適当な塗装法を用いて、蛍光塗料や蓄光塗料、光反射塗料、その他の光を受けて発光する塗料から成る中塗り被膜(12)を形成する。
【0054】
更に、このような中塗り被膜(12)が乾燥固化したならば、その中塗り被膜(12)の表面へ引き続いて図9(V)のように、やはりスプレー塗装やロール塗装などの適当な方法により、上塗り用のクリヤーラッカー(JIS K 5531)を塗装して、透明の上塗り被膜(13)を形成する。
【0055】
そして、その上塗り被膜(13)が乾燥固化したならば、最後に上記金属基材(M)の表面に貼り付けられていたマスキングシート(S)を剥離するのである。そうすれば、図9(VI)と図10から明白なように、そのマスキングシート(S)の表面に搭載していた上記下塗り被膜(11)と中塗り被膜(12)並びに上塗り被膜(13)の合計3層も、一緒に剥離されることとなる結果、その他の上記多孔質黒色化成被膜(10)を塗装下地層として、これの表面に搭載していた下塗り被膜(11)と中塗り被膜(12)並びに上塗り被膜(13)だけが、金属基材(M)の表面上に残存して、その当初のマスキングシート(S)における抜き穴(14)と対応位置して縁取り区成された希望の標章(画像)(15)が、金属基材(M)から表出する。
【0056】
その希望する標章(画像)(15)が上記発光塗料から成る中塗り被膜(12)の性能に基いて、金属基材(M)における表面の発光部分(b)から発光するに比し、上記マスキングシート(S)の非抜き加工部分により被覆されていた金属基材(M)の表面は非発光部分(a)として、そのマスキングシート(S)の剥離により露出するため、この非発光部分(a)からは金属基材(M)自身の光沢に富む材質感を得られることになる。
【0057】
尚、図8、9の第2、3実施形態におけるその他の構成は、図1〜7の上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図8、9に図1〜7との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0058】
(10)・多孔質黒色化成被膜
(11)・下塗り被膜
(12)・中塗り被膜
(13)・上塗り被膜
(14)・抜き穴
(15)・標章(画像)
(M)・金属基材
(S)・マスキングシート
(T1)・第1マスキングテープ
(T2)・第2マスキングテープ
(a)・非発光部分
(b)・発光部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼や鉄、アルミニウム、その他の金属基材(M)の表面へ、塗装下地層となる黒色クロムメッキ処理やレイデント処理、その他の電気分解による多孔質の黒色化成被膜(10)を形成し、
その後、その黒色化成被膜(10)の表面へ白色の下塗り被膜(11)と、その下塗り被膜(11)の表面へ蛍光塗料や蓄光塗料、光反射塗料、その他の光を受けて発光し得る発光塗料から成る中塗り被膜(12)と、その中塗り被膜(12)の表面へ透明の上塗り被膜(13)とを順次塗装することを特徴とする塗装金属体の塗装法。
【請求項2】
ステンレス鋼や鉄、アルミニウム、その他の金属基材(M)における表面の一部分(a)へ、電気分解用の絶縁性がある第1マスキングテープ(T1)を貼り付けた上、その金属基材(M)の表面に残る露出部分(b)へ、塗装下地層となる黒色クロムメッキ処理やレイデント処理、その他の電気分解による多孔質の黒色化成被膜(10)を形成し、
その後、上記第1マスキングテープ(T1)を塗装用の熱変形しない第2マスキングテープ(T2)と貼り替えた上、上記黒色化成被膜(10)の表面へ白色の下塗り被膜(11)と、その下塗り被膜(11)の表面へ蛍光塗料や蓄光塗料、光反射塗料、その他の光を受けて発光し得る発光塗料から成る中塗り被膜(12)と、その中塗り被膜(12)の表面へ透明の上塗り被膜(13)とを順次塗装して、
最後に、上記第2マスキングテープ(T2)を剥ぎ取ることにより、金属基材(M)から自身の光沢に富む材質感と、上記中塗り被膜(12)の発光性とを発揮させることを特徴とする塗装金属体の塗装法。
【請求項3】
ステンレス鋼や鉄、アルミニウム、その他の金属基材(M)の表面へ、文字や図形、記号又はこれらの結合から成る標章(15)の輪郭となる抜き穴(14)が加工された電気分解用兼塗装用のマスキングシート(S)を貼り付けた上、そのマスキングシート(S)の抜き穴(14)を通じた金属基材(M)の表面露出部分(b)へ、塗装下地層となる黒色クロムメッキ処理やレイデント処理、その他の電気分解による多孔質の黒色化成被膜(10)を形成し
その後、その黒色化成被膜(10)と上記マスキングシート(S)との表面全体へ白色の下塗り被膜(11)と、その下塗り被膜(11)の表面へ蛍光塗料や蓄光塗料、光反射塗料、その他の光を受けて発光し得る発光塗料から成る中塗り被膜(12)と、その中塗り被膜(12)の表面へ透明の上塗り被膜(13)とを順次塗装して、
最後に、上記マスキングシート(S)を剥ぎ取ることにより、金属基材(M)から自身の光沢に富む材質感と、上記中塗り被膜(12)における標章(15)の発光性とを発揮させることを特徴とする塗装金属体の塗装法。
【請求項4】
電気分解による多孔質の黒色化成被膜(10)が、無数の黒色クロム微粒子から成る1μm〜2μmの薄肉なレイデント処理被膜であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の塗装金属体の塗装法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−217983(P2012−217983A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90101(P2011−90101)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(596086044)レイデント工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】