説明

塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物及びその製造方法

【課題】 本発明は、塩化ビニリデン系樹脂への着色剤として好適な塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物、これにより着色した塩化ビニリデン系樹脂組成物からなるフィルム、繊維、シート等の成形品、更には塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の製造方法を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 顔料と分散剤とを混練した組成物を粉砕し、その粉砕物と、塩化ビニリデン系共重合体樹脂とを混合して構成した塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニリデン系樹脂を着色する為に用いられる組成物であって、顔料分散性に優れ、且つ、樹脂との混合性に優れた塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物、これにより着色した塩化ビニリデン系樹脂組成物からなるフィルム、繊維、シート等の成形品、更には塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニリデン系樹脂に着色剤を混合し、フィルム、繊維、シート等に成形することは従来から知られている。これらは主に顔料を直接添加、もしくは塩化ビニリデン系樹脂の可塑剤として用いられている液状物と混練して得られるペースト状の加工顔料を添加することが多い。
【0003】
また、他の製造方法として、塩化ビニリデン系樹脂内に顔料を予め混練するマスターバッチ法が考えられる。
【0004】
更に別の製造方法としては、顔料、樹脂に分散剤を加えて高速撹拌し、摩擦熱により分散剤を溶融させて顔料を樹脂に付着させる方法もある。
【0005】
【特許文献1】特許第2682522号公報
【特許文献2】特許第2866049号公報
【特許文献3】特開平04−353524号公報
【特許文献4】特許第3297529号公報
【特許文献5】特開平10−204243号公報
【特許文献6】特開2000−080231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の従来例において、顔料を直接添加する方法では、混合過程で顔料同士の凝集を防止できないので、押出性が低下したり、製品に色斑を生じたり、品質が低下する。特に成形品がフィルムの場合、そのフィルムを高周波シールする時に、シール不良を起こすことがある。また、塩化ビニリデン系樹脂の可塑剤として用いられている液状物と混練して得られるペースト状の加工顔料を添加する場合は、混合機を使用し、塩化ビニリデン系樹脂と高速撹拌する一次処理が必要である為、工数の増加、混合機内の汚染、自動計量に適さない等の問題がある。
【0007】
また、マスターバッチ法による従来の製造方法では、混練による剪断発熱で樹脂の劣化が進み、使用に耐えないため、他樹脂を使用するか別の製造方法をとるのが望ましい。他の樹脂を使用した場合は、押出機内での相分離が生じる等の押出安定性において劣り、フィルム状に成形した場合、色斑や白化現象が発生したり、塩化ビニリデン系樹脂の特徴であるガスバリア性を低下させる場合がある。また、着色剤の粒子径が均一でなく、塩化ビニリデン系樹脂と形状が異なるため、分級が起こり易いという問題がある。
【0008】
また、顔料、樹脂に分散剤を加えて高速撹拌し、摩擦熱により分散剤を溶融させて顔料を樹脂に付着させる方法では、顔料分散不良による異物、色斑が顕著に現れるという問題があった。
【0009】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、塩化ビニリデン系樹脂への着色剤として好適な塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物、これにより着色した塩化ビニリデン系樹脂組成物からなるフィルム、繊維、シート等の成形品、更には塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明に係る塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の第1の構成は、顔料、分散剤、塩化ビニリデン系共重合体樹脂を含有する塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物であって、顔料、エチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂を含む分散剤からなる組成物と、塩化ビニリデン系共重合体樹脂との混合物であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の第2の構成は、前記第1の構成において、前記顔料の含有量が1重量%〜60重量%、前記分散剤の含有量が1重量%〜30重量%、前記塩化ビニリデン系共重合体樹脂の含有量が15重量%〜98重量%であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る成形品の構成は、前記第1、第2の構成の塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物で着色した塩化ビニリデン系樹脂組成物からなるフィルム、繊維、シート等の成形品であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の製造方法は、顔料、分散剤、塩化ビニリデン系共重合体樹脂を含有する塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の製造方法であって、顔料とエチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂を含む分散剤とを混練した組成物を粉砕し、その粉砕物と、塩化ビニリデン系共重合体樹脂とを混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、予め分散剤に顔料を混練しておくことにより顔料の分散性を向上させ、塩化ビニリデン系共重合体樹脂と混合した際に顔料の再凝集を防止することが出来る。
【0015】
特に有機顔料の場合、平均粒子径が0.01μm〜0.10μmの小粒子径顔料を用いることで、顔料分散性を向上させ、更には分散剤を用いて再凝集を防ぎ、それら混合物を混練、粉砕してできる組成物と、塩化ビニリデン系共重合体樹脂とを60℃以下で均一に混合させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物、これにより着色した塩化ビニリデン系樹脂組成物からなるフィルム、繊維、シート等の成形品、更には塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の製造方法について具体的に説明する。
【0017】
本発明で用いる顔料としては、塩化ビニリデン系樹脂の着色に使用されている公知の顔料が使用できる。例えば酸化チタン、カーボンブラック、コバルトブルー、酸化マグネシム、ゼオライト、炭酸カルシム、硫酸バリウム、タルク、二酸化珪素、アルミナ等で代表される無機顔料、不溶性モノアゾ系顔料、不溶性ジスアゾ系顔料等の不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料等で代表される有機顔料等を単独で、または混合して用いることができる。これらの顔料の平均粒子径は、0.01μm〜1.00μmが好ましく、顔料分散性の観点から0.01μm〜0.10μmがより好ましい。
【0018】
本発明において、顔料の含有量(濃度)は、塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物に対して1重量%〜60重量%とすることが好ましい。顔料の含有量(濃度)が60重量%を超えると、顔料の凝集防止効果が期待できなくなる場合がある。また、顔料の含有量(濃度)を1%未満にすることは可能であるが、顔料含有量が低いことで、着色ポリマー製作時に着色用組成物の使用量が相対的に高まることを意味するので、それに伴い、低分子量の分散剤の増加で、着色成形品の品質(バリヤー性等)の低下をきたすことがある。このような場合は、塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物中の顔料の含有量(濃度)は1重量%以上に高めておくことが望ましい。
【0019】
本発明で用いる分散剤は、エチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂を含む。具体的には、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ワックスタイプのEVA等が挙げられる。ワックスタイプのEVAは低分子量のエチレン酢酸ビニル共重合体で、減粘効果、流動性向上効果などワックス的な作用があり、顔料やフィラーの分散剤として使用できる。また、極性基を有する事から、ポリエチレンワックス(一般重合型、変性型)に比べて各種樹脂との相溶性に優れることを特徴とする。同時に使用できる分散剤は、例えば、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウムのような金属石鹸、ポリオレフィンのような熱可塑性樹脂、ポリオレフィンワックス、モンタンワックスのようなワックス、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、エチレンビスステアリルアマイドのような高級脂肪酸アミドから選ばれた1又は2以上のもの、ジブチルセバケート、アセチルトリブチルサイトレートのような可塑剤が使用できる。分散剤の組合せとしては、エチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂と金属石鹸を含むことが好ましく、エチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂、金属石鹸、高級脂肪酸アミドの3種を含むことが更に好ましい。中でも、ワックスタイプのEVA、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアリルアマイドの組合せが最も好ましい。本発明で使用する分散剤の含有量(濃度)は、塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物に対して1重量%〜30重量%とすることが好ましい。分散剤の含有量(濃度)が30重量%を超えると、成形品が白化したり、シール不良(接着不良)を起こすことがある。
【0020】
本発明で用いる塩化ビニリデン系共重合体樹脂とは、重量平均粒子径が100μm〜500μm、好ましくは150μm〜300μmの範囲の塩化ビニリデン系共重合体粒子であり、かつ塩化ビニリデンの含有量が50重量%〜99重量%と、塩化ビニリデンと重合可能な単量体(例えば、塩化ビニル、メチルアクリレート、ブチルアクリレート等が望ましい)の合計含有量が50重量%〜1重量%(単量体の総重量)との共重合体である。中でも成形時の熱安定性を保持する観点からは、塩化ビニリデンの含有量が70重量%〜95重量%、塩化ビニリデンと重合可能な単量体の合計含有量が30重量%〜5重量%である共重合体がより好ましい。
【0021】
本発明の塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物中の塩化ビニリデン系共重合体樹脂の含有量(濃度)は15重量%〜98重量%であることが好ましい。塩化ビニリデン系共重合体樹脂の含有量(濃度)を15重量%未満にすることも可能であるが、顔料と分散剤からなる組成物の割合が増えることで、着色時に、原料の塩化ビニリデン系樹脂との分級が起こることがある。
【0022】
本発明が前述の従来技術と相違するところは、顔料と分散剤とを混練した組成物を例えば周面速度が異なるローラ対からなるミキサー等により粒径1mm程度に粉砕し、その粉砕物と、塩化ビニリデン系共重合体樹脂とを60℃以下で攪拌機等により均一に混合するという製造方法であり、顔料と分散剤との混練時に塩化ビニリデン系共重合体樹脂が存在しないことで、塩化ビニリデン系共重合体樹脂の熱分解による劣化の心配がない。従って、塩化ビニリデン系共重合体樹脂の重量平均分子量は、0.5万〜14万の広範囲の分子量を任意に選択して使用することができる。
【0023】
本発明の塩化ビニリデン系共重合体樹脂は、例えば以下の方法で製造できる。まず重合機の中にイオン交換水と懸濁剤としてメチルセルロース等のセルロース誘導体、重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の有機過酸化物を入れ、その中に塩化ビニリデンモノマーを50重量%〜95重量%と、共重合させるモノマーを5重量%〜50重量%とをイオン交換水と約同量(重量)仕込んで投入し、その混合液を強くかき混ぜる。
【0024】
その後、50℃〜80℃の温度に加熱しながら、約5時間〜20時間かけて重合を行う。また所望に応じて、重合が終了した後にスラリーミックスタンクに移送し、得られたものに脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族エステル等の可塑剤、エポキシ化植物油類、縮合リン酸塩類、ステアリン酸アルキル類等で代表される熱安定剤等の添加剤を樹脂総量に対して0.1重量%〜10重量%添加する場合もある。
【0025】
その後に濾過、水洗を行い、脱水機に移送してある程度脱水した後、熱風乾燥機で完全に水分が抜けるまで乾燥させる。このようにして得られた塩化ビニリデン系共重合体樹脂は、樹脂溶融粘度として、島津製作所製のフローテスターCFT−500型を用いて、180℃の温度で荷重392N(40kgf)、ダイサイズ1mmφ−2mmLの条件での低温試験による見掛け溶融粘度(単位:poise)を測定した場合に、約500poise〜9000poiseの範囲にあるものがより望ましい。平均粒子径として、ベックマンコールター社製コールターカウンターマルチサイザー(TM)III型を用いて測定した場合に、重量平均粒子径が150μm〜300μmの範囲にあるのが望ましい。
【0026】
本発明の塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物は、顔料、分散剤からなる配合物を、多軸加熱ローラー、ニーダー等の加熱混練機で均一混練する。好ましい加熱温度は130℃〜160℃、混練時間は顔料の分散状況から決められる。次いで、例えば3本ロールミルの場合、加熱混練配合物を40℃〜60℃になるように冷却しながら、薄片状に取り出し、その後、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速回転混合機又は、ピンミル、フェザーミル、アトマイザー等の公知の衝撃微粉砕機で粉砕し、24メッシュ〜80メッシュの篩(ふる)いを通して粉末状の組成物が得られる。必要に応じて冷凍粉砕法も採用できる。その後、得られた粉末状組成物と塩化ビニリデン系共重合体樹脂とを60℃以下で均一に混合させることで塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物が得られる。
【0027】
本発明の塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物は、従来公知の塩化ビニリデン系樹脂の着色に用いられる。該塩化ビニリデン系樹脂は、安定した押出成形性の点から例えば塩化ビニリデン含有量が50重量%〜99重量%であり、塩化ビニリデンと重合可能な単量体(例えば具体的には塩化ビニル、メチルアクリレート、ブチルアクリレート等が望ましい)の合計含有量が50重量%〜1重量%である共重合体で、その重量平均分子量は9万〜14万の範囲のものが最適である。
【0028】
本発明の塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物による塩化ビニリデン系樹脂の着色は、予め原料樹脂を着色する際に、コニカルブレンダー等によるドライブレンド法が可能であり、更には押出機の原料供給部に着色剤の自動混合機を設置するインラインブレンド法での着色も可能である。
【0029】
塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の塩化ビニリデン系樹脂に対する添加割合は着色塩化ビニリデン系樹脂フィルムの色、用途によって決められるが、一般的には樹脂中の顔料濃度成分として0.01重量%〜10重量%であり、0.05重量%〜5重量%が好ましい添加量である。本発明の塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物には、本発明の効果に支障のない範囲であれば、その必要に応じて滑り剤、安定剤、可塑剤、梨地剤等の一般的に知られている各種添加剤を添加することができる。
【0030】
このように製造された塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物で着色した塩化ビニリデン系樹脂組成物を成形してフィルム、繊維、シート等の成形品を成形することが出来る。
【実施例】
【0031】
次に、実施例及び参考例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本発明で用いる評価方法及び算出方法は次の通りである。
【0032】
(1)塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の製法と加工性評価
[3本ロールミル分散法]
原料を秤量混合し予備溶融混合した後、3本ロールミルで分散加工を行い、冷却固化させながら薄片状に取り出した。その後、高速ミキサーで薄片状材料を粉砕し、32メッシュで篩通しを行い着色用組成物を得た。
【0033】
[ミキサー分散法]
原料を秤量混合した後、高速ミキサーで攪拌し昇温溶融した上記分散剤をバインダーとし、顔料を樹脂に付着させた後、32メッシュで篩通しを行い、着色用組成物を得た。
【0034】
[3本ロールミル分散+ミキサー混合法]
ベース樹脂を除く原料を秤量混合し予備溶融混合した後、3本ロールミルで分散加工を行い、冷却固化させながら薄片状に取り出した。その後、高速ミキサーで薄片状材料を粉砕し、マスターパウダーベースを得た。規定量のマスターパウダーベースとベース樹脂を秤量混合し、再び高速ミキサーで混合し32メッシュで篩通しを行い、本発明の塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物を得た。
【0035】
[各評価項目とその評価尺度]
(a)分散評価
上記加工で分散をするにあたり、作業性も良く加工し易い場合を○、加工は可能だが作業性が悪い場合を△、分散が困難な場合を×とした。
【0036】
(b)粉砕評価
上記加工で粉砕をするにあたり、作業性も良く加工し易い場合を○、加工は可能だが作業性が悪い場合を△、粉砕が困難な場合を×とした。
【0037】
(2)塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の分散性評価
[塩化ビニリデン系樹脂の着色]
塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン/塩化ビニル=88重量%/12重量%、重量平均分子量12万)に塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物(以下、「着色剤」という)を顔料濃度0.1%になるなるように添加し、コニカルブレンダー(実混合容量10kg)を用いて30分間のドライブレンドを実施し、各々10kgの塩化ビニリデン系樹脂(以下、「着色ポリマー」という)を用意した。
【0038】
[着色ポリマーのフィルム化]
上記の着色ポリマーを、その先端にスリット1.1mmで径10mmの円型ダイを取り付けた口径40mm、L(長さ)/D(直径)=21の押出機に供給し、着色ポリマーを管状に押出した。この管状体を過冷却後、インフレーション2軸延伸法を用いて流れ方向3倍、巾方向4倍の2軸延伸を行って管状フィルムとし、この管状フィルムをピンチロールで折り畳んで、目標厚み40μmの折巾が約55mmの平坦長尺状のダブルプライフィルムを作製した。
【0039】
[各評価項目とその評価尺度]
(a)異物評価
上記方法でフィルムを連続押出成形を行うに当たり、フィルムに混入する塩化ビニリデン系樹脂の熱分解物及び、顔料凝集物をイメージセンサー方式の異物検査機を用いて検出した。押出成形を開始してから外径が0.5mm以上の異物をイメージセンサー方式の異物検査機を用いて検出した。55mm巾×100mのフィルムに発生する50μm角以上の異物点数が20点未満の場合を○、20点以上50点未満を△、50点以上を×とした。
【0040】
(b)色斑評価
55mm巾×20mフィルムに発生する色斑(顔料分散不良により発生する色の濃淡筋)点数を目視により調査し、55mm巾×100m当たりに換算し評価した。○:0〜5点、△:6〜10点、×:11点以上とした。
【0041】
(c)透明性評価
ASTM−D−1003に準拠して、日本電色製のNDH−300Aを用いてフィルムのHAZEを測定し、12%未満の場合を○、12%以上20%未満を△、20%以上を×とした。
【0042】
(3)塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の実用性評価
上記[塩化ビニリデン系樹脂の着色]方法の10倍スケールアップして着色した着色ポリマーを用いて、その先端にスリット1.5mmで内径178mmの円型ダイを取り付けた口径90mm、L(長さ)/D(直径)=19の押出機に供給し、着色ポリマーを管状に押出した。この管状体を過冷却後、インフレーション2軸延伸法を用いて流れ方向3倍、巾方向4倍の2軸延伸を行って管状フィルムとし、この管状フィルムをピンチロールで折り畳んで、目標厚み40μmの折巾が約1mの平坦長尺状のダブルプライフィルムを作成した。
【0043】
(a)押出性評価
押出機負荷変動の有無、異物検査機による異物点数評価(1m巾×1500m当たり100点以上の発生を不可とした)、1時間毎の色斑(ASTM−D−1003に準拠して、日本電色製のZ−300Aを用いてLab値を測定し、ΔEab>3を不可とした)評価をし、上記3項目全てを満たす場合を○、一つ満たさない場合を△、二つ以上満たさない場合を×とした。但しΔEabはΔEab=[(ΔL)+(Δa)+(Δb) ]1/2と定義される。
【0044】
(b)高周波シール時のスパーク発生率(充填時)
上記フィルムを巻きほどきながら巾80mmに細断して、再度巻き取った原反を用いて自動充填包装機による高周波シール性評価を実施した。主な条件は、高周波溶着の電流値が70mA、電極面圧が650g、フィルムの走行速度が46m/分、包装体の製品長(両端の結紮用クリップ間の長さ)の設定が180mm、内容物は水とし、包装体1000本作成する間のスパーク発生回数を観察した。
【0045】
(c)包装体の破袋率(加圧加熱殺菌後)
得られた包装体の1000本について、加熱缶内ゲージ圧が2.5kg/cm、温度が120℃で20分間の条件で加熱加圧殺菌を行い、その後缶内圧力を25℃まで加圧冷却したした後で、圧力を開放し加熱缶から取り出して最終包装体とした。得られた最終包装体のシール部分から破袋した本数を調査した。
【0046】
〔実施例1〕
Pig.Red166の顔料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「CROMOPHTAL Scarlet RT」;粉砕微粒子化顔料)を塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物に対して16重量%とワックスタイプのEVA(数平均分子量3000、密度0.920、酢酸ビニル含有量13%)を4重量%、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアリルアマイドを各々5重量%混合し、予備溶融混合した後、3本ロールミルで分散加工を行い、冷却固化させながら薄片状に取り出した。その後、高速ミキサーで薄片状材料を粉砕した組成物と、塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン/塩化ビニル=88重量%/12重量%、重量平均分子量12万、重量平均粒子径が250μm)65重量%を再び高速ミキサーで混合し、32メッシュで篩通しを行い、本発明の塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物を得た。
【0047】
〔比較例1〕
Pig.Red166の顔料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「CROMOPHTAL Scarlet RT」;粉砕微粒子化顔料)を塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物に対して16重量%とステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアリルアマイドを各々6重量%混合し、予備溶融混合した後、3本ロールミルで分散加工を行い、冷却固化させながら薄片状に取り出す。その後、高速ミキサーで薄片状材料を粉砕した組成物と、塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン/塩化ビニル=88重量%/12重量%、重量平均分子量12万、重量平均粒子径が250μm)66重量%を再び高速ミキサーで混合し、32メッシュで篩通しを行い、比較例の着色用組成物を得た。
【0048】
〔比較例2〕
Pig.Red166の顔料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「CROMOPHTAL Scarlet RN」)を塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物に対して50重量%とポリエチレンワックス(一般重合型)を21重量%、ポリエチレンワックス(変性型)を11重量%、エチレン酢酸ビニル樹脂(数平均分子量9000、酢酸ビニル含有量20%)を8重量%、ジブチルセバケートを10重量%混合し、予備溶融混合した後、3本ロールミルで分散加工を行い、冷却固化させながら薄片状に取り出す。その後、高速ミキサーで薄片状材料を粉砕し、32メッシュで篩通しを行い、比較例の着色用組成物を得た。
【0049】
〔比較例3〕
Pig.Red166の顔料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「CROMOPHTAL Scarlet RN」)を塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物に対して21重量%とワックスタイプのEVA(数平均分子量3000、密度0.920、酢酸ビニル含有量11%)を8重量%、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアリルアマイドを各々3重量%、ポリ塩化ビニル樹脂(平均重合度800)を62重量%を高速ミキサーで攪拌し、昇温溶融した上記分散剤をバインダーとし、顔料を樹脂に付着させた後、32メッシュで篩通しを行い、比較例の着色用組成物を得た。
【0050】
〔比較例4〕
Pig.Red166の顔料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「CROMOPHTAL Scarlet RN」)を塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物に対して16重量%とワックスタイプのEVA(数平均分子量3000、密度0.920、酢酸ビニル含有量6%)を4重量%、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアリルアマイドを各々5重量%、塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン/塩化ビニル=88重量%/12重量%、重量平均分子量12万、重量平均粒子径が250μm)を65重量%を高速ミキサーで攪拌し、昇温溶融した上記分散剤をバインダーとし、顔料を樹脂に付着させた後、32メッシュで篩通しを行い、比較例の着色用組成物を得た。
【0051】
〔比較例5〕
顔料としてPig.Red166の顔料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「CROMOPHTAL Scarlet RT」;粉砕微粒子化顔料)を使用すること以外は、前記比較例4と同様にして比較例の着色用組成物を得た。
【0052】
上記実施例1及び比較例1〜5の加工性評価及び分散性評価結果を以下の表1に示す。なお、表中の略号は次のとおりである。EVAWax:ワックスタイプのEVA、PEWax(一般重合型):一般重合型のポリエチレンワックス、PEWax(変性型):変性型のポリエチレンワックス、StCa:ステアリン酸カルシウム、StMg:ステアリン酸マグネシウム、EBStAm:エチレンビスステアリルアマイド、DBS:ジブチルセバケート、EVA:エチレン酢酸ビニル共重合体、PVDC:ポリ塩化ビニリデン系共重合体樹脂、PVC:ポリ塩化ビニル。
【0053】
【表1】

【0054】
次に、上記実施例1、比較例2及び比較例5の実用評価結果を以下の表2に示す。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の活用例として、塩化ビニリデン系樹脂を着色する為に用いられる組成物であって、顔料分散性に優れ、且つ、樹脂との混合性に優れた塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物、これにより着色した塩化ビニリデン系樹脂組成物からなるフィルム、繊維、シート等の成形品、更には塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の製造方法に適用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、分散剤、塩化ビニリデン系共重合体樹脂を含有する塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物であって、
顔料、エチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂を含む分散剤からなる組成物と、塩化ビニリデン系共重合体樹脂との混合物であることを特徴とする塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物。
【請求項2】
前記顔料の含有量が1重量%〜60重量%、前記分散剤の含有量が1重量%〜30重量%、前記塩化ビニリデン系共重合体樹脂の含有量が15重量%〜98重量%であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物で着色した塩化ビニリデン系樹脂組成物からなるフィルム、繊維、シート等の成形品。
【請求項4】
顔料、分散剤、塩化ビニリデン系共重合体樹脂を含有する塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の製造方法であって、顔料とエチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂を含む分散剤とを混練した組成物を粉砕し、その粉砕物と、塩化ビニリデン系共重合体樹脂とを混合することを特徴とする塩化ビニリデン系樹脂着色用組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−63418(P2008−63418A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241764(P2006−241764)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【出願人】(593149926)レジノカラー工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】