説明

塩化ビニル系樹脂成形品

【課題】本発明は、電線被覆材、パッキンに適した強度、圧縮残留歪が得られ、生産性よく製造可能で、高いK値が得られる、塩化ビニル系樹脂成形品を提供する。
【解決手段】 塩化ビニル系モノマーと、下記一般式で表される重合性反応基を1分子あたり少なくとも2個有する、重量平均分子量が3,000以上25,000以下であるアクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステルを主鎖とするマクロモノマーとを共重合させ、共重合樹脂中のTHF不溶分が10%以下であり、かつJISK7367−2に従って測定したK値が80以上であり、該共重合樹脂100重量部に対し、可塑剤を80〜200重量部配合して得られる、圧縮残留歪が30%以下の塩化ビニル系樹脂成形品
−OC(O)C(R)=CH (I)
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塩化ビニル系樹脂成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂は安価であり、機械的物性、化学的物性に優れ、また可塑剤量の調整により硬質から軟質までの成形体が得られるため種々の用途に使用されており、平均重合度に換算されるK値を様々に設定して使用用途に適した重合体を製造している。特にK値の高い高重合度の塩化ビニル系重合体は、電線被覆材、パッキン等のシール材に使用されることが知られている。
【0003】
工業的に製造する方法として、重合温度を下げて重合させる低温重合法が知られているが、K値が80を超える重合体を得るには、一般的に重合温度が30℃のような低温で重合するため、重合速度が遅く工業的に有利な方法ではない。そこで、活性の高い重合開始剤を従来の開始剤と併用使用することが知られているが、活性の高い重合開始剤の早い失活時間、反応速度の制御が難しいという課題があった(特許文献1)。一方、ジビニル化合物、ビニルアリル化合物、ジアリル化合物のような分子量が1,000以下の低分子量の架橋剤をごく少量共重合させて高いK値を得る方法が知られているが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)で測定して得られる重合度分布が広くなることから低いK値の樹脂が多く混在することや、架橋剤の添加量によっては高いTHF不溶分(ゲル)が生成することから、物性が得られにくい課題があった(特許文献2)。分子量が1,000以上の高分子量の架橋剤として、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が知られているが、主に塩化ビニル樹脂に配合添加することで、成形時に後架橋させる方法が採用されることが多く、この場合均一に架橋させることが難しく物性の再現性が得られにくいことが知られている。
【0004】
また、請求項1の一般式で表される重合性反応基を1分子あたり1個有する、アクリル酸エステルを主鎖とするマクロモノマーを共重合させて塩化ビニル系共重合体を作製することは既に知られているが、得られる塩化ビニル系共重合体の重合度は通常の塩化ビニル重合体と変わらない課題があった(特許文献3)。
【特許文献1】特公昭56−050892号公報
【特許文献2】特公昭43−013985号公報
【特許文献3】特開2005−206815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電線被覆材、パッキンに適した強度、圧縮残留歪が得られ、生産性よく製造可能で、高いK値が得られる塩化ビニル系樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究の結果、分子量分布や重合性反応基の制御されたマクロモノマーを使用することで、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、塩化ビニル系モノマーと下記一般式(1)で表される重合性反応基を1分子あたり少なくとも2個有し、重量平均分子量が3,000以上25,000以下であるアクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステルを主鎖とするマクロモノマーとを共重合させてなる塩化ビニル系共重合樹脂であって、共重合樹脂中のTHF不溶分が10%以下であり、かつJISK7367−2に従って測定したK値が80以上であり、該共重合樹脂100重量部に対し、可塑剤を80〜200重量部配合して得られ、圧縮残留歪が30%以下の塩化ビニル系樹脂成形品である。
【0007】
−OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す)
また、前記塩化ビニル系共重合樹脂は、前記塩化ビニル系モノマー95〜99.9重量%と前記マクロモノマー0.1〜5重量%とを共重合させてなるものが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高いK値による電線被覆材、パッキンに適した強度、圧縮残留歪が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用される塩化ビニル系モノマーとしては、例えば塩化ビニルモノマー、酢酸ビニルモノマーまたはこれらの混合物を使用する。
【0010】
本発明で使用されるマクロモノマーは、重合体の末端に反応性の官能基を有するオリゴマー分子である。本発明で使用される、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーは、反応性官能基として下記一般式(1)から選ばれる重合性の炭素−炭素二重結合を有する基を、少なくとも1分子あたり2個、分子末端に有する。
【0011】
−OC(O)C(R)=CH (1)
式中、Rの具体例としては、−H、−CH、−CHCH、−(CHCH(nは2〜19の整数を表す)、−C、−CHOH、−CNの中から選ばれる基が好ましく、更に好ましくは−H、−CHを用いることができる。マクロモノマーを使用することで、塩化ビニル系モノマーに溶解或いは分散することができ、樹脂中或いは成形体中においてもマクロモノマーが微分散したモルホロジー構造が得られやすくなるため、高強度が得られやすくなり好ましい。
【0012】
また、本発明で使用されるマクロモノマーの主鎖である、アクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステル重合体は、ラジカル重合によって製造される。特に、重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られるリビングラジカル重合法から得られた重合体を使用すると、分子量分布の狭い重合体が得られ、架橋部分のポリマー長が揃うことで、高物性が得られやすくなるため好ましい。更に好ましくは、原子移動ラジカル重合法(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)で得られた重合体を使用すると、末端に特定の官能基を有するビニル系重合体を高収率で得られやすくなり、未反応の架橋剤による物性低下が少なくなり好ましい。
【0013】
また本発明で使用されるマクロモノマーの主鎖が有する、アクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステル重合体としては特に制約はなく、各種のものを用いることができる。例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸系モノマーから得られる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を共重合させても構わない。中でも生成物の物性等から、アクリル酸エステルモノマーが好ましく、アクリル酸ブチルが圧縮残留歪の低下に優れるため最も好ましい。ここで、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸或いはアクリル酸を意味するものである。2種以上のモノマーを共重合させる場合は、マクロモノマー全体に占めるこれらの好ましいモノマーが、重量比で40重量%以上含まれることが好ましい。
【0014】
また、本発明の塩化ビニル系モノマーと共重合可能なマクロモノマーは1種のみを用いてもよく、構成するエチレン性不飽和モノマーが異なるマクロモノマーを2種以上併用してもよい。
【0015】
本発明における二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーのガラス転移温度は、単独、或いは2種以上のマクロモノマーを併用する場合、少なくとも1種は、0℃以下であることが好ましい。より好ましくはガラス転移温度が−20℃以下であり、最も好ましくは−50℃以下である。マクロモノマーを2種以上併用する場合は、−50℃以下のマクロモノマーの重量比が全マクロモノマーの50重量%以上含まれることが好ましい。
【0016】
本発明の二重結合を含有するアクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステルを主鎖に有するマクロモノマーの数平均分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)で測定した重量平均分子量が3,000〜25,000の範囲が好ましく、更に好ましくは、6,000〜24,000であり、最も好ましくは12,000〜24,000である。この範囲のマクロモノマーを用いると、塩化ビニル系モノマーと均一混合が可能で、共重合により均一な高分子量体が得られることができる。分子量が3,000以上であると、塩化ビニルに対する添加部数が少なくても容易に高分子量化できるという観点から好ましく、また、25,000以下であると、マクロモノマーの粘度が高くなるものの、塩化ビニル系モノマーにも十分溶解し高分子量化が可能であり、マクロモノマーのセグメントによる圧縮残留歪の低下効果が得られやすいという観点から好ましい。本発明におけるGPC測定の際には、Waters社製GPCシステム(製品名510)を用い、クロロホルムを移動相として、昭和電工(株)製Shodex K−802.5及びK−804(ポリスチレンゲルカラム)を使用し、室温環境下で測定した。
【0017】
本発明における塩化ビニル系共重合樹脂は、塩化ビニル系モノマー95〜99.9重量%および重量平均分子量が3,000以上25,000以下であるアクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステルを主鎖とするマクロモノマー0.1〜5重量%、からなる共重合体であることが望ましい。この範囲の塩化ビニル系共重合樹脂においては、重合中および重合終了後において安定な重合体として存在することができ、このように生産された共重合樹脂は高いK値を有することができる。
【0018】
本発明の塩化ビニル系共重合樹脂は、JIS K 7367−2に従って測定した可溶分樹脂のK値が80以上であることが好ましい。更にK値が90以上であると通常塩化ビニル樹脂の重合時間よりも短縮が可能となり好ましく、K値が100以上であると通常塩化ビニル樹脂の重合では得られないため、特に好ましい。
【0019】
塩化ビニル系樹脂成形品の柔軟性を調整するために、適宜可塑剤を添加することもできる。例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP),ジ−n−オクチルフタレート,ジイソノニルフタレート(DINP),ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸エステル系可塑剤;トリクレジルフォスフェート(TCP),トリキシリルホスフェート(TXP),トリフェニルフォスフェート(TPP)等のリン酸エステル系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DEHA),ジ−2−エチルヘキシルセバケート等の脂肪酸エステル系可塑剤、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸−n−ブチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸−n−ブチル共重合体等のポリアクリル系可塑剤等から選ばれる一種または二種以上の可塑剤が使用できる。
【0020】
可塑剤量として、塩化ビニル系樹脂成形品の圧縮残留歪が30%以下とするために、本発明の塩化ビニル系共重合樹脂100重量部に対し、80〜200重量部の範囲で使用することが好ましい。可塑剤が100〜180重量部の範囲で使用されると塩化ビニル系樹脂成形品の強度も得られやすくなることから好ましく、120〜150重量部の範囲であると塩化ビニル系樹脂成形品の。
【0021】
本発明における塩化ビニル系共重合樹脂を用いた組成物は、必要に応じて、充填剤、熱安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、強化剤、改質剤、顔料等を必要に応じて配合することができる。
【0022】
また、塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性を調整するために適宜熱安定剤を用いることができる。そのような熱安定剤としては、例えばジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム−亜鉛系安定剤;バリウム−亜鉛系安定剤;カドミウム−バリウム系安定剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に制約はないが、本発明の塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ビニル系樹脂からなる塩化ビニル樹脂100重量部に対し0〜5重量部の範囲で使用されることが好ましい。
【0023】
さらに安定化助剤としては、特に限定されないが、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、燐酸エステル等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に制約はない。
【0024】
充填剤としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、カオリングレー、石膏、マイカ、タルク、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、硼砂等を挙げることができる。充填剤の使用量についても、特に制約はないが、透明用途から強化剤として使用する適量の範囲で用いることができ、一般的に本発明の塩化ビニル系共重合樹脂100重量部に対して、0〜500重量部使用することが好ましい。より好ましくは、0〜200重量部の範囲で使用され、最も好ましくは0〜100重量部の使用範囲である。
【0025】
塩化ビニル樹脂組成物の製造方法には特に限定はなく、本発明の塩化ビニル系共重合樹脂と、必要に応じて使用される各種添加剤(熱安定剤、滑剤、安定化助剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、可塑剤等)を配合したものを、例えばヘンシェルミキサー等の混合機等を用いて、ホットブレンドまたはコールドブレンド等の常法によって均一に混合するなどの方法で製造すれば良い。その際の配合順序等には特に限定はないが、例えば塩化ビニル系共重合樹脂及び各種添加剤を一括して配合する方法、液状の添加剤を均一に配合する目的で先に塩化ビニル系共重合樹脂及び粉粒体の各種添加剤を配合したのち液状添加剤を配合する方法等を用いることができる。
【0026】
このようにして製造された塩化ビニル樹脂組成物を電線被覆材或いはパッキンに成形加工する方法としては、特に限定はないが、例えば押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、プレス成形法等の、通常の塩化ビニル系樹脂の加工法が挙げられる。
【0027】
また、本発明の塩化ビニル系共重合樹脂の使用用途としては、高耐熱性を要求される押出・射出成形体等にも効果があり好ましく、具体的な用途を例示すれば、合成レザー、床材、ホース・チューブ等にも使用することができる。
【実施例】
【0028】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。ここで、特に断りのない限り、実施例中の「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
【0029】
(製造例1)
ジャケット及び攪拌機を備えた内容量25リットルのステンレス鋼製重合機に、鹸化度約80モル%、平均重合度約2000の部分鹸化ポリビニルアルコール0.1部、平均分子量が約450万のポリエチレンオキサイド0.005部、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート0.05部、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート0.025部を仕込み、脱気後に塩化ビニルモノマー99部及び重量平均分子量24,000の両末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマー1部を仕込んだのち60℃の温水120部を仕込み、重合温度40℃で約13時間重合した。重合機内の未反応モノマーを回収したのち重合機を冷却し、スラリーを払い出した。スラリーを吸引濾過することで脱水し、得られた樹脂ケーキを55℃の熱風式乾燥機で12時間乾燥することで塩化ビニル系共重合樹脂(A)を得た。
【0030】
(製造例2)
製造例1において、塩化ビニルモノマーを99.5部、重量平均分子量3,000の両末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを0.5部とした以外は、製造例1と同じ方法で、塩化ビニル系共重合樹脂(B)を得た。
【0031】
(製造例3)
製造例1において、塩化ビニルモノマーの初期仕込量を27部として、重量平均分子量3,000の両末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを3部添加、製造例1と同じ方法で重合開始後、重合機内温が40℃に到達した時点から13時間の間、塩化ビニルモノマー70部を一定量連続して投入することにより、塩化ビニル系共重合樹脂(C)を得た。
【0032】
(製造例4)
製造例1において、塩化ビニルモノマーを97部、重量平均分子量12,000の両末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを3部とした以外は、製造例1と同じ方法で、塩化ビニル系共重合樹脂(D)を得た。
【0033】
(製造例5)
製造例1において、塩化ビニルモノマーを90部として、重量平均分子量12,000の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを10部添加したこと以外は製造例1と同じ方法で塩化ビニル系共重合樹脂(E)を得た。
【0034】
(製造例6)
製造例1において、塩化ビニルモノマーを99.5部、両末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーの替わりに、架橋剤としてアリルメタクリレート0.3部、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.2部を添加し、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート0.05部を0.03部へ、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート0.025部をt−ブチルパーオキシネオデカノエート0.03部へ変更し、重合温度40℃で約13時間重合して塩化ビニル系共重合樹脂(F)を得た。但しこの樹脂(F)は樹脂単独では成形品が得られなかった。
【0035】
(製造例7)
製造例3において、塩化ビニルモノマーの初期仕込み量を25部として、両末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーの替わりに、架橋剤として両末端アクリロイル基ポリオキシエチレングリコール(14mol)5部を添加し、製造例1と同じ方法で重合開始後、重合機内温が40℃に到達した時点から13時間の間、塩化ビニルモノマー70部を一定量連続して投入することにより、塩化ビニル系共重合樹脂(G)を得た。
【0036】
(製造例8)
製造例1において、塩化ビニルモノマーを99.7部として、両末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーの代わりにDAP(ジアリルフタレート)を0.3部添加したこと以外は製造例1と同じ方法で塩化ビニル系共重合樹脂(H)を得た。
【0037】
(製造例9)
製造例1において、塩化ビニルモノマーを90部として、重量平均分子量24,000の両末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを10部添加したこと以外は製造例1と同じ方法で塩化ビニル系共重合樹脂(I)を得た。
この樹脂(I)は樹脂単独では成形体が得られなかった。
【0038】
(塩化ビニル樹脂組成物 物性評価)
得られた塩化ビニル系樹脂成形品を以下の方法で評価・測定した。
【0039】
(イ)樹脂中のゲル分率測定
重合で得られた架橋樹脂乾燥体1gを精秤し、THF50gの中に攪拌添加し、50℃で30min攪拌して塩化ビニル樹脂を可溶化させる。遠心分離20,000rpm、30minを行い、ゲル分を沈降させ上澄みをデカンテーションする。沈降したゲル分にTHFを50g添加して、再度50℃で30min攪拌し、同条件の遠心分離を施す。
ガラスフィルターでゲル分を濾過し、乾燥重量を測定することでゲル重量を得、採取した樹脂中の重量分率をゲル分率として計算した。ゲル分率が20%以下であると、物性への影響も少なく好ましい。
【0040】
(ロ)THF可溶分塩化ビニル重合度(K値)
(イ)で得られた塩化ビニル樹脂を含むTHF溶液に5倍量のメタノールを攪拌添加して塩化ビニル樹脂を析出させ、濾過・乾燥したものをJISK7367−2に従ってK値を測定した。
【0041】
(ハ)引張試験
シート試験片をJIS K7113に準じ2号ダンベル試験片に抜き、引張速度50mm/minにて破断強度、100%モジュラスを測定した。
【0042】
(ニ)圧縮残留歪
シート試験片を重ねて、195℃×10min間×10MPaのプレス条件で、5mm厚の成形体を得、成形体平均厚みの75%となるように挟み、70℃×22時間熱処理を行う。荷重を取り除いた後、室温23℃、50%湿度の状態下で30min放置して回復させ、次式より圧縮残留歪を求めた。
圧縮残留歪(%)=(t0−t1)/(t0−ts)×100
t0:試験前の試験片の平均厚み、t1:試験後の試験片の平均厚み
ts:歪みを与えた試験片の厚み
圧縮残留歪は、低いほど 形状保持性が良いため好ましいが、一般的に圧縮残留歪が30%以下であれば他のエラストマー素材と同等であり好ましい。
【0043】
(実施例1〜4、比較例1〜5)
製造例1〜9の塩化ビニル系共重合樹脂(樹脂A〜I)100部、可塑剤(DINP;ジェイプラス製)120部、ステアリン酸バリウム1部、ステアリン酸亜鉛1部、ステアリン酸0.5部をヘンシェルミキサーで混合し、2本ロール190℃、回転数20回/分で5min間ロール混練して、シート成形体を得た。これらの塩化ビニル系樹脂成形品の(イ)〜(二)の評価結果を表1又は2に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
(実施例5)
製造例1の塩化ビニル系共重合樹脂100部、可塑剤(TOTM;ジェイプラス製)80部、ステアリン酸バリウム1部、ステアリン酸亜鉛1部、ステアリン酸0.5部をヘンシェルミキサーで混合し、2本ロール200℃、回転数20回/分で5min間ロール混練して、シート成形体を得た。この塩化ビニル系樹脂成形品の評価結果を表1に示した。
【0047】
(実施例6)
製造例2の塩化ビニル系共重合樹脂100部、可塑剤としてTOTM75部、DINA(ジェイプラス製)70部、ステアリン酸バリウム1部、ステアリン酸亜鉛1部、ステアリン酸0.5部をヘンシェルミキサーで混合し、2本ロール170℃、回転数20回/分で5min間ロール混練して、シート成形体を得た。この塩化ビニル系樹脂成形品の評価結果を表1に示した。
【0048】
(比較例6)
製造例2の塩化ビニル系共重合樹脂100部、可塑剤としてTOTM250部、ステアリン酸バリウム1部、ステアリン酸亜鉛1部、ステアリン酸0.5部をヘンシェルミキサーで混合し、2本ロール160℃、回転数20回/分で5min間ロール混練して、シート成形体を得た。この塩化ビニル系樹脂成形品の評価結果を表2に示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系モノマーと下記一般式で表される重合性反応基を1分子あたり少なくとも2個有し、重量平均分子量が3,000以上25,000以下であるアクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステルを主鎖とするマクロモノマーとを共重合させてなる塩化ビニル系共重合樹脂であって、共重合樹脂中のTHF不溶分が10%以下であり、かつJISK7367−2に従って測定したK値が80以上であり、該共重合樹脂100重量部に対し、可塑剤を80〜200重量部配合して得られ、圧縮残留歪が30%以下の塩化ビニル系樹脂成形品。
−OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
【請求項2】
前記塩化ビニル系共重合樹脂が、前記塩化ビニル系モノマー95〜99.9重量%と前記マクロモノマー0.1〜5重量%とを共重合させてなるものである、請求項1記載の塩化ビニル系樹脂成形品。

【公開番号】特開2009−144040(P2009−144040A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322255(P2007−322255)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】