説明

塩化ビニル組成物とニトリルゴム組成物の積層体

【課題】ニトリルゴムとポリ塩化ビニルとの接着に溶剤系セメントを使用しない、ニトリルゴムとポリ塩化ビニルとの積層体。
【解決手段】ニトリルゴム組成物(a)からなるゴム層(A)1の表面にポリ塩化ビニル組成物(b)からなる樹脂層(B)2を直接積層し、ニトリルゴム組成物(a)の加硫条件で加硫し、さらに樹脂層(B)2の表面にポリ塩化ビニル組成物(c)からなる樹脂層(C)3を直接積層し、樹脂層(B)2と樹脂層(C)3とを加熱融着して得られる積層体100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物と熱可塑性樹脂組成物とを積層してなる積層体に関する。また、本発明は、ゴム組成物と熱可塑性樹脂組成物とを積層してなるホースに関する。
【背景技術】
【0002】
ニトリルゴム(NBR)組成物は、耐油性および加工性に優れるが、耐侯性、耐オゾン性、屈曲き裂抵抗性、着色性または耐摩耗性に劣る。
一方、ポリ塩化ビニル(PVC)組成物は、耐侯性、着色性、耐摩耗性、耐オゾン性、着色性、屈曲き裂抵抗性および耐摩耗性に優れる。
かかるNBR組成物の欠点を補うべく、NBR組成物からなる層にPVC組成物からなるPVCを積層した積層体(以下、「NBR/PVC積層体」という。)とすることは従来行われている。
ここで、NBR/PVC積層体としては、例えば、ガスホース等を挙げることができる。
ガスホースとしてのNBR/PVC積層体にとって、PVC組成物が有する着色性に優れるという特徴は、ホースの耐侯性、耐摩耗性等の性能を確保するために必須というわけではないが、ホースの用途をホースの色によって識別する方式を採用する場合には、その用途識別機能を担保するために有用である。
【0003】
一般に、NBR層の表面にPVCを被覆してなる積層ホース(以下、「NBR/PVC積層ホース」という。)の製造は、加硫したNBR層の上に溶剤系セメントを塗布し、その上にPVCを被覆することによって行われている。溶剤系セメントに含有される溶剤としては、例えば、トルエン、メタノール、ブタノール、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、酢酸エチル、n−ヘキサン、n−ヘプタン等を挙げることができる。
【0004】
ところが、近年、環境負荷軽減のため、企業活動において脱VOC(揮発性有機化合物)化を推進することが求められているため、NBR/PVC積層ホースの製造工程においても、溶剤系セメントを使用しない無溶剤系接着技術を使用することが必要となった。
【0005】
例えば、公知の無溶剤系接着技術としては、未加硫NBR層の上に直接PVCを積層して、120〜160℃で加硫し、NBR層とPVCを加硫接着する方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−169191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、無溶剤系接着技術が溶剤系接着技術に代替するためには、溶剤(揮発性有機化合物(VOC))を実質的に使用しないことは当然であるが、従来得られていた性能・機能を損なわないことも要求される。
これに対し、特許文献1に記載された接着技術は、NBR層とPVCとの接着性は十分であるが、本来PVCが有すべき柔軟性、耐侯性、耐摩耗性、機械的強度等を十分に発揮しない場合がある。この原因の一つとして、最外層のPVCに配合された化合物が加硫時に劣化した可能性が考えられる。
さらに、特許文献1に記載された接着技術は、PVCに変色が生じる場合がある。この原因の一つとして、加硫時に、PVC組成物に配合された色素等が変質したか、またはNBR組成物に配合された添加剤等がPVCに移行して悪影響を及ぼした可能性が考えられる。
こうしてみると、特許文献1に記載された接着技術は、NBR/PVC積層ホースの製造において使用される従来の溶剤系接着技術を完全に代替できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、未加硫のニトリルゴム(NBR)組成物(a)からなるゴム層(A)の表面にポリ塩化ビニル(PVC)組成物(b)からなる樹脂層(B)を直接積層し、加硫し、その後、樹脂層(B)の表面に、さらにPVC組成物(c)からなる樹脂層(C)を直接積層し、加熱融着すると、各層間の強い接着力を得られることを知得した。
【0009】
さらに、樹脂層(C)が加硫条件下に曝されず、PVC本来の柔軟性、耐侯性、耐摩耗性、機械的強度等の性能が確保されること、および、用途識別機能等の機能も損なわれないことを知得した。
【0010】
すなわち、本発明は以下のものである。
〔1〕ニトリルゴム組成物(a)からなるゴム層(A)を表層に有する未加硫ゴム積層体(X)の表面に、ポリ塩化ビニル組成物(b)からなる樹脂層(B)を直接積層し、ニトリルゴム組成物(a)の加硫条件で加硫をして得られる加硫ゴム積層体(Y)の、樹脂層(B)の表面にポリ塩化ビニル組成物(c)からなる樹脂層(C)を直接積層し、樹脂層(B)と樹脂層(C)とを加熱融着・一体化して得られる積層体(Z)。
〔2〕ニトリルゴム組成物(a)が、結合アセトニトリル量中心値が18〜45質量%であるニトリルゴムを20〜100質量%含有し、かつ、塩化ビニル組成物(b)および(c)が、重合度300〜4000の範囲である塩化ビニル樹脂を10〜100質量%含有する、〔1〕に記載の積層体(Z)。
〔3〕ゴム層(A)と樹脂層(B)とが加硫接着される、〔1〕または〔2〕に記載の積層体(Z)。
〔4〕前記加硫が130〜180℃の範囲の温度で行われる、〔1〕または〔2〕のいずれかに記載の積層体(Z)。
〔5〕樹脂層(B)と樹脂層(C)との加熱融着が、非接触型ヒータを使用して樹脂層(B)の表面温度を150〜200℃に加熱して行われる、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の積層体(Z)。
〔6〕ニトリルゴム組成物(a)に含まれるポリ塩化ビニル組成物(b)に可溶性の化合物が、ゴム層(A)から樹脂層(C)に浸透しない、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の積層体(Z)。
〔7〕塩化ビニル組成物(c)が顔料によって着色され、ニトリルゴム組成物(a)に含まれる組成物による変色が起こらない、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の積層体(Z)。
〔8〕ニトリルゴム組成物(a)からなるゴム層(A)を表層に有する未加硫ゴム積層体(X)の表面に、ポリ塩化ビニル組成物(b)からなる樹脂層(B)を直接積層し、ニトリルゴム組成物(a)の加硫条件で加硫して得られる加硫ゴム積層体(Y)の、樹脂層(B)の表面にポリ塩化ビニル組成物(c)からなる樹脂層(C)を直接積層し、樹脂層(B)と樹脂層(C)とを加熱融着・一体化する、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の積層体(Z)の製造方法。
〔9〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の積層体がホースであり、前記ニトリルゴム組成物(a)からなるゴム層(A)が該ホースの外層であるホース。
【発明の効果】
【0011】
従来の溶剤系接着技術に代えて本発明に係る無溶剤系接着技術を使用することによって、NBR/PVC積層ホースの製造工程において脱VOC化を推進することができる。しかも、性能および機能において、従来と同等以上のホースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の積層体の一態様を表す斜視図である。
【図2】図2は、本発明のホースの一態様を表す斜視図である。
【図3】図3は、本発明のホースの別の一態様を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
[構造および製造方法]
〈構造〉
本発明の積層体は、ゴム層(A)、樹脂層(B)および樹脂層(C)がこの順に積層されてなる3層構造を有する積層体であって、ゴム層(A)、樹脂層(B)、樹脂層(C)は、それぞれ、ニトリルゴム組成物(a)、ポリ塩化ビニル組成物(b)、ポリ塩化ビニル組成物(c)からなる。
【0014】
より詳細には、加硫前のニトリルゴム組成物(a)からなるゴム層(A)の表面に、ポリ塩化ビニル組成物(b)からなる樹脂層(B)を積層し、ニトリルゴム組成物(a)の加硫条件で加硫をし、その後、樹脂層(B)の表面にポリ塩化ビニル組成物(c)からなる樹脂層(C)を積層し、樹脂層(B)と樹脂層(C)とを加熱融着して得られる積層体である。
【0015】
本発明の積層体は、ゴム層(A)の樹脂層(B)とは反対側の面に、さらに層を積層してもよい。
また、本発明の積層体は、樹脂層(C)の樹脂層(B)とは反対側の面に、さらに層を積層してもよい。
そのようなさらに積層される層は、単層であってもよいし、多層であってもよい。
具体的には、例えば、ゴム層(A)の樹脂層(B)とは反対側の面にさらにゴム層が積層されていてもよいし、補強層およびゴム層が積層されていてもよい。
【0016】
また、本発明の積層体は、上述した積層構造を有していれば良く、全体としての形状は特に限定されない。例えば、シート形状またはプレート形状であってもよいし、チューブ形状またはホース形状であってもよく、さらには、スフィア形状としてもよい。
【0017】
以下、図1〜3に基づいて、本発明の積層体または積層ホースの構造を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定して理解されるべきものではないことは言うまでもない。
【0018】
図1は、本発明の積層体の一態様を例示するものである。
積層体100は、ゴム層(A)1の表面に樹脂層(B)2が積層され、樹脂層(B)2のゴム層(A)1側とは反対側の表面に樹脂層(C)3が積層されてなる積層体である。
【0019】
図2は、本発明のホースの一態様を例示するものである。
ホース101は、ゴム層(A)1の表面に樹脂層(B)2が積層され、樹脂層(B)2の表面にさらに樹脂層(C)3が積層されてなるホースである。
【0020】
図3は、本発明のホースの別の一態様を例示するものである。
ホース102は、ゴム層(A)1の表面に樹脂層(B)2が積層され、樹脂層(B)2の表面にさらに樹脂層(C)3が積層されてなるホースであって、ゴム層(A)1の内側面にさらにゴム層(D)4が積層されてなるホースである。
【0021】
〈製造方法〉
《積層》
ゴム層(A)に樹脂層(B)を積層する方法、樹脂層(B)に樹脂層(C)を積層する方法は、種々の公知方法を使用することができる。例えば多層押出成形、多層射出成形(多色射出成形、インサート成形)、多層インフレーション成形、多層ブロー成形等の各種の成形加工方法が挙げられる。
【0022】
例えば、積層体をチューブ形状またはホース形状とする場合には、押出成型によることが好ましい。押出成型による製造方法としては、例えば、タンデム押し出し(ゴム層(A)と樹脂層(B)の多層押し出し)工法や、ニトリルゴム組成物をチューブ状に成型した後、ポリ塩化ビニル組成物を巻き付け、加硫し、さらにその上から直接塩化ビニル組成物(c)からなる樹脂層(C)を、例えばクロスヘッドダイ等を用いて被覆押出成型する等しても得られる。押出成型は連続成型に適しており、長いチューブまたはホースを連続的に製造できるからである。
【0023】
《加硫》
加硫の条件は、ニトリルゴム組成物(a)の加硫条件であれば特に限定されないが、130〜180℃の温度範囲、0.02〜10MPaの圧力、30〜120分間の時間が好ましく、135〜165℃の温度範囲、0.5〜5MPaの圧力、30〜60分間の時間がより好ましい。例えば、150℃、1MPa、45分間の加硫条件で行うと、NBR組成物(a)が適度に加硫され、弾力性および強度に優れる。また、同時にゴム層(A)と樹脂層(B)との加硫接着を十分に行うことができる。
【0024】
《加熱融着》
加熱融着の方法は、ポリ塩化ビニル組成物(b)とポリ塩化ビニル組成物(c)の熱融着が可能であれば特に限定されず、熱プレス、高周波ウェルダー、ヒートシール、インパルスシール、超音波接合等に例示される公知の方法により加熱融着をすることができる。
例えば、樹脂層(B)の表面を非接触型ヒータで150〜200℃、好ましくは180〜200℃の温度に加熱し、その上に溶融したポリ塩化ビニル組成物(c)を押出成型して樹脂層(C)を成型することができる。この方法であれば、樹脂層(C)の成型と加熱融着を同時に行える利点がある。
【0025】
[組成物]
〈ニトリルゴム組成物(a)〉
ニトリルゴム(NBR)は、耐油性、成型性、加工性等に優れ、また、耐薬品性、耐熱性が高いという長所を有するが、耐光性・耐オゾン性、屈曲き裂抵抗性、着色性、耐摩耗性が劣り、極性溶剤に弱いという短所も有する。
ニトリルゴム組成物(a)に含有されるNBRとしては、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が35〜85のものが好ましく、また、結合アクリロニトリル量中心値としては、18〜45質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。耐久性、成型性が優れるからである。
また、ニトリルゴム組成物(a)中のNBR含有量は、20〜100質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、40〜60質量%がさらに好ましい。
【0026】
ニトリルゴム組成物(a)は、本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤を必要に応じて配合することができる。
添加剤としては、例えば、充填剤、軟化剤、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、加硫助剤、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、接着助剤、ポリマー等が挙げられる。
充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、珪藻土等が挙げられる。
【0027】
加硫剤(架橋剤)としては、イオウ系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
イオウ系加硫剤としては、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が例示される。その添加量は例えば、ニトリルゴム成分100重量部に対して0.1〜5.0重量部を用いることが好ましい。
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えばニトリルゴム成分100重量部に対して1〜15重量部程度を用いればよい。
さらにフェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合加硫系等が例示さる。
【0028】
加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤が挙げられる。
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(H)等;グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、ジフェニルグアニジン等;チオウレア系加硫促進剤としては、例えば、エチレンチオウレア等;チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびそのZn塩等;チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジサルファイド(TT)、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等;ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、例えば、Na−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等がそれぞれ挙げられる。
【0029】
加硫助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらのZn塩等が挙げられる。
【0030】
上記加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤の含量は、ニトリルゴム成分100質量部に対し、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。0.1質量部未満では、加硫が不十分で、3次元架橋密度が低くなり、10質量部を超えると、3次元架橋密度が高くなる。
【0031】
可塑剤としては、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等;等が挙げられる。
軟化剤としては、各種パラフィン系オイル等の通常用いられるものを使用でき、具体的には、プロセスオイル等が挙げられる。
可塑剤、軟化剤は、本発明の積層体の用途からみて一般的な含量で配合すればよい。
【0032】
老化防止剤としては、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、スチレン化フェノール(SP)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
老化防止剤、酸化防止剤は、本発明の積層体の用途からみて一般的な含量で配合すればよい。
【0033】
帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
難燃剤としては、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイドーポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
帯電防止剤、難燃化剤は、本発明の積層体の用途からみて一般的な含量で配合すればよい。
【0034】
接着助剤としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、6−ブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール等のトリアジンチオール系化合物、ナフテン酸コバルト、レゾルシン、クレゾール、レゾルシン−ホルマリンラテックス、モノメチロールメラミン、モノメチロール尿素、エチレンマレイミド等が挙げられる。
接着助剤は、ホースに通常用いられる含量で配合すればよい。
【0035】
上記ニトリルゴム以外のポリマーとしては、本発明で使用されるニトリルゴム組成物(a)に要求される物性等に応じて通常用いられる樹脂、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。
【0036】
本発明の組成物では、上記の各種添加剤を、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0037】
〈ポリ塩化ビニル組成物(b)、(c)〉
本発明のポリ塩化ビニル組成物(b)および(c)は、それぞれ独立に、塩化ビニル(PVC)含有重合体であり、例えば塩化ビニル単独重合体、塩素化塩化ビニル重合体、塩化ビニル単量体と共重合し得る単量体の1種以上と塩化ビニル単量体とのランダム共重合,グラフト共重合もしくはブロック共重合して得られる塩化ビニル共重合体またはこれら重合体の2種以上の混合物を挙げることができる。
また、ポリ塩化ビニル組成物(b)および(c)は、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。同一であると、特に相溶性に優れ、強力に加熱融着されるからである。
【0038】
塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン−1、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、シアン化ビニリデン、メチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;メトキシスチレン等のアリールエーテル類;ジメチルマレイン酸等のジアルキルマレイン酸類;フマル酸ジメチルエステル等のフマル酸エステル類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルシラン類、アクリル酸ブチルエステル等のアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチルエステル等のメタクリル酸アルキルエステル類等を挙げることができる。
【0039】
ポリ塩化ビニル組成物(b)に含まれるポリ塩化ビニルの重合度は、特に制限はなくいかなるものも用いることができるが、特に生産性に優れることから、好ましくは300〜4000の、より好ましくは1300〜4000の、さらに好ましくは1300〜2500の範囲のものが用いられる。
【0040】
ポリ塩化ビニル組成物(c)に含まれるポリ塩化ビニルの重合度は、特に制限はなくいかなるものも用いることができるが、特に生産性に優れることから、好ましくは300〜4000の、より好ましくは1300〜4000の、さらに好ましくは1300〜2500の範囲のものが用いられる。
【0041】
本発明で用いるポリ塩化ビニル組成物(b)および(c)は、それぞれ独立に、10〜100質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%のポリ塩化ビニルを含有する。
【0042】
ポリ塩化ビニル組成物は、その性能を極端に低下させない程度に、通常添加される安定剤(例えば、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸、ラウリン酸錫等の有機錫系安定剤、テトラフェニルポリプロピレングリコールジフォスファイト等のフォスファイト系安定剤、過塩素酸処理ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイト系安定剤が挙げられる。)、滑剤(例えば、n−ブチルステアレート等の脂肪酸エステル系ワックス;炭化水素系ワックス、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等が挙げられる。)、アクリル系加工助剤(例えば、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体等のメチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体が挙げられる。)、着色剤、炭酸カルシウム、タルク等に代表される無機充填材、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛に代表される難燃剤などを、必要に応じて添加することができる。
【0043】
塩化ビニル組成物は、可塑剤として、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−ヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−イソノニル、フタル酸ジ−イソデシル、フタル酸ジ−イソオクチル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ−メチルシクロヘキシル、イソフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等のフタル酸系可塑剤;アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの脂肪族エステル系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリデシル等のトリメリット酸系可塑剤;リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリ−キシレニル等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ系大豆油等のエポキシ系可塑剤、ポリエステル系高分子可塑剤等の可塑剤を本発明の目的を逸脱しない限りにおいて添加したものであってもよい。
【0044】
本発明の積層体は、種々の製品に使用することができるが、耐油性および/または耐候性を求められる製品に使用することが好ましく、さらにそれに加えて動的に使用される部材ではない製品に使用することがより好ましい。
本発明の積層体は、例えば、以下に例示する物に使用することができる。ただし、これらに限定されないことはいうまでもない。
【0045】
具体的には、本発明の積層体は、例えば、編み上げホース、布巻きホース、高圧ホース、サクションホース、ダクトホース、スプレーホース、送排水用ホース、耐圧補強ホース、静電気防止ホース等のホース類;化粧シート、静電防止シート、ルーフィング用シート等のシート;携帯電話のケース、電化製品等のリモコンケース等のパッキン積層体、防水材;Oリング、ガスケット等の固定用シール;レインウェア、エアバッグ、エアータイト、スぺーサー、グロメット、インシュレーター、チューブ等に使用できる。
【0046】
本発明に係るホースは、種々の用途に使用できるものであり、例えば、ガソリン、ディーゼル、アルコール、LPガス、天然ガス、水素及びこれらの混合物に使用するためのホースとして使用することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるべきものではない。
【0048】
[試験サンプル]
1.試験サンプルの作製
ゴム層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(C)の3層からなる積層体(以下、「A/B/C3層積層体」という。)サンプルまたはゴム層(A)/樹脂層(B)の2層からなる積層体(以下、「A/B2層積層体」という。)サンプルを作製した。
〈1〉ゴムシートの作製
《1−1》NBRシート
アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)(Nipol 1042,日本ゼオン社製)100質量部、カーボンブラック(GPFカーボン、新日化カーボン社製)40質量部、ステアリン酸(ビーズステアリン酸NY、日本油脂社製)2質量部、老化防止剤(ノクラック224、大内新興化学工業社製)2質量部、および加硫剤(油処理イオウ,軽井沢精錬所社製)5質量部を、バンバリーミキサーを用いて100℃で混練し、ニトリルゴム組成物(以下、「NBR組成物(a)」という。)を調製した。
前述のようにして調製したNBR組成物(a)を、熱プレスを用いて、100℃の条件下で厚さ2mmのシート状にした。
得られたシートを縦150mm×横150mmのサイズで切り出した(この切り出されたシートを、以下「NBRシート」という。)。
《1−2》SBRシート
スチレンブタジエンゴム(SBR)(Nipol 1502,日本ゼオン社製)100質量部、カーボンブラック(GPFカーボン、新日化カーボン社製)40質量部、ステアリン酸(ビーズステアリン酸NY、日本油脂社製)2質量部、老化防止剤(ノクラック224、大内新興化学工業社製)2質量部、および加硫剤(油処理イオウ,軽井沢精錬所社製)5質量部を、バンバリーミキサーを用いて100℃で混練し、スチレンブタジエンゴム組成物(以下、「SBR組成物(a´)」という。)を調製した。
前述のようにして調製したSBR組成物(a´)を、熱プレスを用いて、100℃の条件下で厚さ2mmのシート状にした。
得られたシートを縦150mm×横150mmのサイズで切り出した(この切り出されたシートを、以下「SBRシート」という。)。
【0049】
〈2〉樹脂シートの作製
《2−1》PVCシートα
ポリ塩化ビニル組成物(b):ゼオンコンパウンドSE2943(ゼオン化成社製)を使用した。
前述のポリ塩化ビニル組成物(b)を、熱プレスを用いて180℃の条件下で加熱成形を行い、厚さ1mmのシート状にした。
室温に冷却後、脱型して得られたシートを縦150mm×横150mmのサイズで切り出した(この切り出されたシートを、以下「PVCシートα」という。)。
《2−2》PVCシートβ
ポリ塩化ビニル組成物(c):ゼオンコンパウンドSE2943(ゼオン化成社製)を使用した。
前述のポリ塩化ビニル組成物(c)を、熱プレスを用いて180℃の条件下で加熱成形を行い、厚さ1mmのシート状にした。
室温に冷却後、脱型して得られたシートを縦150mm×横150mmのサイズで切り出した(この切り出されたシートを、以下「PVCシートβ」という。)。
【0050】
〈3〉実施例用試験サンプルの作製
《3−1》実施例1
ステップ1) NBRシート(150mm×150mm×2mm)とPVCシートα(150mm×150mm×1mm)を貼り合わせた。
ステップ2) 150℃で45分間、加硫処理を行い、加硫接着させた。
ステップ3) 室温に冷却後、脱型して、加硫積層体を得た。
ステップ4) 加硫積層体のPVCシートαの表面にPVCシートβを貼り合せた。
ステップ5) シート作成時と同様の手順にて、195℃で2分間の条件で熱プレスを行い、PVCシートαとPVCシートβとを加熱融着させた。
ステップ6) 室温に冷却後、型より取出し、NBRシート/PVCシートα/PVCシートβの3層からなる積層体を得た。
ステップ7) 前記積層体を25mm幅に切り出し、3層積層体試験サンプルとした。
《3−2》実施例2
実施例1のステップ5において、熱プレスを180℃で2分間の条件で行った他は、実施例1と同様である。
《3−3》実施例3
実施例1のステップ5において、熱プレスを150℃で2分間の条件で行った他は、実施例1と同様である。
【0051】
〈4〉比較例用試験サンプルの作製
《4−1》比較例1
実施例1のステップ5において、熱プレスを130℃で2分間の条件で行った他は、実施例1と同様である。
《4−2》比較例2
ステップ1) NBRシート(150mm×150mm×2mm)とPVCシートα(150mm×150mm×1mm)を貼り合わせた。
ステップ2) 150℃で45分間、加硫処理を行い、加硫接着させた。
ステップ3) 室温に冷却後、脱型して、NBRシート/PVCシートαの2層からなる加硫積層体を得た。
ステップ4) 前記加硫積層体を25mm幅に切り出し、2層積層体試験サンプルとした。
《4−3》比較例3
比較例2のステップ1において、NBRシートをSBRシートに変更した他は、比較例3と同様である。
【0052】
2.接着力評価試験
[試験方法]
前述のとおりにして得た試験サンプルを用いて、23℃および50%RHの環境下、測定器具として引張試験機(オートグラフAGS−5kNG,(株)島津製作所製)を用いて、つかみ具移動速度50mm/分の条件で、接着力評価用サンプルの180度はく離試験(JIS K 6854−2:1999)を行い、はく離強さを測定した。
実施例1〜3および比較例1については、3層積層体試験サンプルのゴム層(A)と樹脂層(B)との間(以下、単に「A/B間」という。)のはく離強さおよび樹脂層(B)と樹脂層(C)との間(以下、単に「B/C間」という。)のはく離強さを測定した。
比較例2および3については、2層積層サンプルのA/B間のはく離強さを測定した。
接着力の判定は、はく離強さ3N/mm以上を極めて優良(◎)、1N/mm以上を優良(○)、1N/mm未満を不良(×)とした。
【0053】
[試験結果]
試験サンプルの接着力評価試験の結果を、第1表に示す。
《実施例1》 A/B間のはく離強さは2.5N/mmであり、優良な接着力を示した。また、B/C間のはく離強さは4N/mmであり、極めて優良な接着力を示した。
《実施例2》 A/B間のはく離強さは2.5N/mmであり、接着力は優良であった。また、B/C間のはく離強さは3.1N/mmであり、接着力は極めて優良であった。
《実施例3》 A/B間のはく離強さは2.5N/mmであり、接着力は優良であった。また、B/C間のはく離強さは1.1N/mmであり、接着力は優良であった。
《比較例1》 A/B間のはく離強さは2.5N/mmであり、接着力は優良であった。しかし、B/C間のはく離強さは0.1N/mmであり、接着力は不良であった。
《比較例2》 A/B間のはく離強さは2.5N/mmであり、優良な接着力を示した。
《比較例3》 A/B間のはく離強さは0.1N/mmであり、接着力は不良であった。
【0054】
[結果の評価]
《A/B間の接着力について》
比較例3では、実施例1〜3および比較例1、2から、NBRをSBRに変更しただけであるが、それらと比較して明らかに接着力が劣っていた。この結果は、ゴム層(A)としては、NBR組成物(a)からなるものが好ましいことを示唆する。
《B/C間の接着力について》
実施例1〜3では、B/C間の加熱融着を150〜195℃で行い、接着力が優良または極めて優良であったが、比較例1では加熱融着を130℃で行い、接着力が不良であった。
この結果は、B/C間の加熱融着温度を150〜200℃の温度範囲とすると、強い接着力が得られることを示唆する。
【0055】
3.変色試験
[試験方法]
前述のとおりにして得た試験サンプルについて、外層(樹脂層(B)または樹脂層(C))が変色しているか否かを肉眼で見た。変色が生じていない場合には「○」、変色が生じている場合には「×」で判定した。
[試験結果]
試験サンプルの変色試験の結果を、第1表に示す。
《実施例1〜3》 外層(樹脂層(C))に変色は見られず、「○」と判定した。
《比較例1》 外層(樹脂層(C))に変色は見られず、「○」と判定した。
《比較例2、3》 外層(樹脂層(B))が茶褐色に変色し、「×」と判定した。
[結果の評価]
加硫(ステップ2)後、A/B/C3層積層体試験サンプル(実施例1〜3、比較例1)では変色が生じなかったが、A/B2層積層体試験サンプル(比較例2、3)では変色が生じた。
この結果は、樹脂層(B)の表面にさらに樹脂層(C)を積層することが、積層体の変色を防ぐために有効であることを示唆する。
【0056】
【表1】

【0057】
4.ホース製造試験
45mm径ゴム用押出機に、クロスヘッドダイを取り付け、10mm径のゴムマンドレル上に未加硫ニトリルゴム(NBR)組成物を厚さ2.0mmにて押出した(ヘッド温度は90℃)。その後、45mm径樹脂用押出機にクロスヘッドダイを取り付け、該未加硫NBR組成物からなるNBR層の上にポリ塩化ビニル(PVC)組成物を厚さ1.0mmに押出成形した(ヘッド温度170℃)。
次に、加硫槽の中で加硫した(150℃×45分)。
加硫終了後、冷却槽を通して冷却した後、45mm径樹脂用押出機にクロスヘッドダイを取り付け、PVC組成物からなるPVCの上にPVC組成物を厚さ1.0mmに押し出し被覆成形した(ヘッド温度190℃)。
かくしてニトリルゴム組成物とポリ塩化ビニル組成物とを積層してなるホースを製造した。
【符号の説明】
【0058】
1 ゴム層(A)
2 樹脂層(B)
3 樹脂層(C)
4 ゴム層(D)
100 積層体
101,102 ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリルゴム組成物(a)からなるゴム層(A)を表面に有する未加硫ゴム積層体(X)の表面に、ポリ塩化ビニル組成物(b)からなる樹脂層(B)を直接積層し、ニトリルゴム組成物(a)の加硫条件で加硫して得られる加硫ゴム積層体(Y)の樹脂層(B)の表面に、さらにポリ塩化ビニル組成物(c)からなる樹脂層(C)を直接積層し、樹脂層(B)と樹脂層(C)とを加熱融着・一体化して得られる積層体(Z)。
【請求項2】
前記ニトリルゴム組成物(a)の加硫条件が、130〜180℃の温度範囲、0.02〜10MPaの圧力および30〜120分間の時間で行われる、請求項1に記載の積層体(Z)。
【請求項3】
樹脂層(B)と樹脂層(C)と熱融着が150〜200℃の範囲の温度で行われる、請求項1〜2のいずれかに記載の積層体(Z)。
【請求項4】
樹脂層(B)と樹脂層(C)との加熱融着が、非接触型ヒータを使用して樹脂層(C)の表面温度を150〜200℃に加熱して行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体(Z)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の積層体がホースであり、前記ポリ塩化ビニル組成物(c)からなる樹脂層(C)が該ホースの外層である積層ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−269576(P2010−269576A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125609(P2009−125609)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】