説明

塩化水素の気相酸化による塩素の製造用の触媒および方法

本発明は、塩化水素の接触酸化により塩素を製造するための触媒と、方法に関する。この触媒は、少なくともウラニウムまたはウラニウム化合物を含む活性成分と、担体材料を含む。この触媒は、貴金属と比較して低コストで安定性および活性が高いことにより注目に値する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塩化水素の気相酸化により塩素を製造するための触媒および方法に関する。この触媒は、少なくともウラニウムまたはウラニウム化合物を含む活性成分と、担体材料を含む。この触媒は、貴金属と比較して低コストであることと組み合わさって、安定性および活性が高いことにより注目に値する。
【背景技術】
【0002】
大きな工業的な関心の集まる反応は、1868年にDeaconにより開発された、酸素により塩化水素を接触酸化するための方法である。
4HCl+O=2Cl+2H
【0003】
過去には、クロールアルカリ電解は、Deacon法の工業的適用を傍流の立場に完全に押しやった。塩素製造は殆ど全部塩化ナトリウム水溶液の電解によるものであった(非特許文献1)。しかしながら、塩素に対する世界的な需要は、NaCl電解の共生成物である水酸化ナトリウム溶液に対する需要よりも急速に伸びつつあるので、Deacon法の魅力は、最近、再び増大した。この展開は、塩化水素の酸化による塩素の製造法にとって有利であり、水酸化ナトリウム溶液の製造から切り離されたものとなる。更には、塩化水素前駆体は入手が容易であり;例えば、ホスゲン化反応、例えばイソシアネート製造において共生成物として大量に得られる。
【0004】
塩化水素の塩素への酸化は平衡反応である。平衡位置は、温度の上昇と共に所望の最終生成物から離れる方向にシフトする。それゆえ、最大活性を持つ触媒を使用することが有利であり、このことによってこの反応が低温で進行するのが可能となる。
【0005】
ルテニウムの触媒活性成分を含む塩化水素の酸化用の第1の触媒は、すでに1965年に(特許文献1)で述べられており、この場合にはRuClを出発とするものである。
【0006】
酸化ルテニウムまたは混合酸化ルテニウムからなる活性成分を含む更なるRuベースの触媒は、(特許文献2)に述べられている。この場合、酸化ルテニウムの含量は0.1重量%から20重量%であり、酸化ルテニウムの平均粒子直径は1.0nmから10.0nmである。
【0007】
酸化チタンまたは酸化ジルコニウムに担持された更なるRu触媒は(特許文献3)により既知である。二酸化チタンおよび二酸化ジルコニウムからの少なくとも1つの化合物を含む、そこで述べられている塩化ルテニウム触媒を作製するために、一連のRu出発化合物、例えばルテニウム−カルボニル錯体、無機酸のルテニウム塩、ルテニウム−ニトロシル錯体、ルテニウム−アミン錯体、有機アミンのルテニウム錯体またはルテニウム−アセチルアセトナート錯体が示されている。好ましい態様においては、ルチル形の二酸化チタンが担体として使用された。
【0008】
既知のRu触媒は既にかなり高い活性を有するが、塩化水素の酸化における工業的用途には良好な長期安定性と組み合わされた活性の更なる増強が望ましい。反応温度の増大はRu触媒の活性を増強することができるが、比較的高い温度で焼結と、したがって不活性化を起こす傾向がある。
【0009】
ウラニウム酸化物が一連の完結的かつ選択的な酸化の酸化触媒として好適であるということは既知である。ウラニウムをベースとする触媒の使用の典型的な例は、例えば(非特
許文献2)により述べられたようにCOのCOへの酸化である。ウラニウム含有混合酸化物により接触される更なる既知の酸化は、例えばイソブテンのアクロレインへの酸化(非特許文献3)、(非特許文献4)およびプロピレンのアクロレインおよびアクリロニトリルへの酸化((特許文献4)および(特許文献5)である。加えて、U上でのVOC(揮発性有機化合物)の全酸化も既知であり、特に(非特許文献5)Hutchingsら(非特許文献5)により研究された。しかしながら、酸素による塩化水素接触へのウラニウム化合物の適合性は、この関連では開示されていない。
【0010】
(特許文献6)は、カオリン、シリカゲル、珪藻土または軽石からなる不活性担体上に存在する銀、ウラニウムまたはトリウムの塩または酸化物を含む触媒を開示している。生成する触媒をカ焼するということは開示されず、その結果として、開示されている触媒の安定性は低いことが予期される。いつも開示されているのは、銀および希土類の塩または酸化物の存在を必要とする組成物である。したがって、更なる開示を欠いているために、この技術的教示が個別の触媒活性成分の相互作用においてのみ転化を可能とさせる共触媒効果を目的としているものであるということを仮定しなければならない。
【0011】
このことは、銀、希土類の塩または酸化物の両方を使用することによって、この触媒がこれらの成分を含まない代替物と比較して経済的に不利となるという理由で有利でない。特に、銀の使用は、この貴金属の価格が連続的に上昇していることに鑑みると、特に不利であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】DE 1 567 788
【特許文献2】DE−A 197 48 299
【特許文献3】DE−A 197 34 412
【特許文献4】米国特許第3,308,151号
【特許文献5】米国特許第3,198,750号
【特許文献6】DE 1 078 100
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】[Ullmann Encyclopedia of Industrial Chemistry,seventh release,2006,p3]
【非特許文献2】Campbell et al.J.Molec.Cat.A:Chem.、(2006)、245(1−2)、62−68.
【非特許文献3】Corberan et al.Ind.Eng.Chem.Prod.Res.Dev.,(1984),24,546
【非特許文献4】Corberan et al.Ind.Eng.Chem.Prod.Res.Dev.,(1985),24,62
【非特許文献5】Hutchings et.al.Nature,(1996),384,p341
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、良好な長期安定性と最低コストであることと組み合わさって、高活性で塩化水素の酸化を行う触媒を提供することである。本発明の更なる目的は、このような触媒を用いて酸素により塩化水素を接触気相酸化するための方法を提供することである。驚くべきことには、ウラニウムをベースとする触媒は、塩化水素の塩素への酸化のために良好な長期安定性であることと組み合わさって、高活性を有するということが見出された。同時に、ウラニウムをベースとした触媒は、先行技術で慣用的に使用され
る物質よりも安価なので経済的な利点をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0015】
それゆえ、本発明は、触媒活性成分として少なくともウラニウムまたはウラニウム化合物と、担体材料を含むことを特徴とする、塩化水素を接触酸化するための触媒を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
触媒に好適な担体材料は、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム(例えばαもしくはγ多形の)、二酸化チタン(ルチル、アナターゼなどの形の)、二酸化スズ、二酸化ジルコニウム、二酸化セリウム、カーボンナノチューブまたはこれらの混合物である。
【0017】
好適なウラニウム化合物は、例えば酸化ウラニウム、ウラニウム塩化物、およびウラニウムオキシ塩化物である。好適な酸化ウラニウムは、例えば限定ではないが、UO、UO、UOまたはこの混合物から得られる非化学量論的相、例えばU、U、U、U、Uおよび/またはU1334である。
【0018】
ウラニウム酸化物またはUO2.1からUO2.9の化学量論的組成のウラニウム酸化物の混合物が好ましい。
【0019】
ウラニウム酸化物またはウラニウム酸化物の混合物を触媒として含むこれらの好ましい触媒は、驚くべきことには酸化反応に対して例外的に高い活性と安定性を有するので特に有利である。
【0020】
好ましい態様においては、ウラニウム酸化物に使用される前駆体は、塩化物化合物またはオキシ塩化物化合物(UOCl)でもあり得る。
【0021】
ウラニウムまたはウラニウム化合物は単独もしくは更なる触媒活性成分と一緒に使用可能である。好適な更なる触媒活性成分は、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金、レニウム、ビスマス、コバルト、鉄、アンチモン、スズ、マンガン、およびクロムを含む一群から選択されるものである。同様に、一群中の上記の少なくとも1つを含むこれらの混合物または化合物が好適である。好ましい態様においては、ルテニウム、金、ビスマス、セリウムまたはZrおよびこれらの化合物が使用される。極めて好ましい態様においては、ルテニウムは酸化物の形で、もしくは塩化物化合物またはオキシ塩化物化合物として使用される。
【0022】
通常、活性成分の比率は、活性成分と担体材料の全重量基準で0.1から90重量%の範囲、好ましくは1から60重量%の範囲、更に好ましくは1から50重量%の範囲にある。活性成分は種々の方法により担体材料に適用可能である。例えば、溶液中に存在する好適な出発化合物または液体もしくはコロイドの形の出発化合物による担体の湿式含浸、沈澱および共沈澱法と、またイオン交換および気相被覆(CVD、PVD)も使用することが可能である。例えば担体材料にウラニウムまたはウラニウム化合物を適用し、次に乾燥するか、もしくは乾燥およびカ焼することにより、好適な触媒を得ることができる。
【0023】
活性成分を水溶液または懸濁液の形で担体材料に適用し、次に、溶剤を除去する触媒が好ましい。
【0024】
含浸し、以降に乾燥/カ焼し、または還元性物質(好ましくは水素、水素化物またはヒドラジン化合物)またはアルカリ性物質(好ましくはNaOH、KOHまたはアンモニア)により沈澱させることの組み合わせが特に好ましい。
【0025】
更なる態様においては、活性成分を非酸化物の形で担体材料に適用することができ、反応の過程で酸化形に転化することができる。
【0026】
ウラニウムハライド、酸化物、水酸化物またはオキシハロゲン化物、ウラニルハライド、酸化物、水酸化物、オキシハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩またはアセチルアセトナートの水溶液または懸濁液として触媒活性成分を各々の場合単独でもしくは任意の混合物で担体に適用し、次に溶剤を除去することを特徴とする触媒が特に好ましい。
【0027】
触媒は更なる成分として促進剤を含み得る。有用な促進剤は塩基性金属(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属)を含み;アルカリ金属、特にNaおよびCs、およびアルカリ土類金属が好ましく;アルカリ土類金属、特にSrおよびBa、および希土類金属Ceが特に好ましい。更なる活性成分に加えて存在するいかなる促進剤も、限定ではないが、含浸およびCVD法により触媒に適用し得;特に好ましくは更なる触媒活性成分の適用後の含浸が好ましい。
【0028】
触媒は、活性成分の分散を安定化するための化合物を更なる成分として含み得る。好適な分散安定剤は、例えばスカンジウム化合物、マンガン酸化物、およびランタン酸化物である。分散液を安定化するための化合物は、好ましくは含浸および/または沈澱により活性成分と一緒に適用される。
【0029】
この触媒は標準圧力下、好ましくは減圧下で窒素、アルゴンまたは空気雰囲気下において40から200℃で乾燥可能である。乾燥時間は好ましくは10分間から6時間である。
【0030】
この触媒を非カ焼形またはカ焼形で使用することができる。このカ焼は還元性、酸化性もしくは不活性な相中で行うことができ;空気流または窒素流中でのカ焼が好ましい。カ焼は、通常、酸素を排除して150から100℃の温度範囲、好ましくは200から1100℃の範囲で行われる。カ焼は、酸化性ガスの存在において150から1500℃の温度範囲内、好ましくは200から1100℃の範囲で行われる。
【0031】
本発明の好ましい更なる展開においては、ウラニウムまたはウラニウム化合物を含む触媒を前処理にかけることができる。
【0032】
この前処理は、通常、この触媒の使用の工程条件下での前処理である。この明細書で開示される触媒は、好ましくは酸素によるHClの酸化において使用されるので、酸素とHClの化学量論的混合物による前処理が好ましい。少なくとも400℃、好ましくは少なくとも500℃でのHClと酸素の化学量論的混合物による前処理が特に好ましい。この前処理は、通常、少なくとも10時間、好ましくは少なくとも50時間、更に好ましくは少なくとも100時間行われる。
【0033】
この前処理はいかなる温度であれ所望する時間だけ行うことができる。比較的長時間で比較的高温の前処理が比較的短時間で比較的低温の前処理よりも良好であるということが判った。比較的短時間で比較的低温の前処理も考えられる。これは、増強された活性に反映される前処理における出費の増加が活性の利得によりどの程度埋め合わせ可能であるかを考える問題である。それゆえ、このように特定されている温度範囲および期間は、技術的な制約としてでなく、妥当な勧告として理解されるべきである。
【0034】
上記で得られる触媒は、低い温度で塩化水素を酸化する活性が高いために注目に値する。理論に拘束されるのではないが、酸化ウラニウムが酸素欠陥格子サイトを形成し、した
がって還元酸化サイクル(redox cycle)を活発に促進することができるということが想定される。同時に、酸化ウラニウムは塩化水素に対して高安定性を有する。これは、特に好ましいウラニウム酸化物またはUO2.1からUO2.9の化学量論的組成のウラニウム酸化物の混合物について特に当てはまる。
【0035】
本発明は、活性成分がウラニウムまたはウラニウム化合物を含むことを特徴とする、活性成分と担体材料を含む触媒の存在において塩化水素の接触酸化により塩素を製造するための方法を更に提供する。
【0036】
本発明の方法を行うと、塩化水素は、上述の触媒の存在において発熱的平衡反応で酸素により塩素に酸化され、水蒸気を与える。反応温度は、通常、150から750℃であり;慣用の反応圧力は1から25バールである。これは平衡反応なので、触媒がなお充分な活性を有する最低の温度において動作させることが適切である。更には、酸素を塩化水素に対して超化学量論的量で使用することが適切である。例えば、2倍から4倍の酸素過剰が慣用的である。いかなる選択性の損失のリスクもないので、比較的高い圧力と、それに対応して標準の圧力と比較して長い滞留時間で作業することが経済的に有利である。
【0037】
この塩化水素の接触酸化は、断熱的、もしくは好ましくは等温的もしくはほぼ等温的に、バッチ式、好ましくは流動床もしくは固定床法、好ましくは固定床法の連続式により、更に好ましくは管束反応器中で、不均質触媒上で180から750℃の、好ましくは200から650℃の、更に好ましくは220から600℃の反応器温度、および1から25バール(1000から25000hPa)の、好ましくは1.2から20バールの、更に好ましくは1.5から17バール、特に2.0から15バールの圧力において実施可能である。
【0038】
塩化水素の接触酸化を行う慣用の反応装置は、固定床もしくは流動床の反応器を含む。塩化水素の接触酸化は好ましくは複数の段階でも行うことができる。
【0039】
断熱的、等温的もしくはほぼ等温的な運転方式においては、中間的な冷却と共に直列に接続された複数の、すなわち2から10基の、好ましくは2から6基の、更に好ましくは2から5基の、特に2から3基の反応器を使用することも可能である。塩化水素を第1の反応器の上流で酸素と一緒に完全に添加するか、もしくは異なる反応器に分割することができる。個別の反応器のこの直列接続を1つの装置中で合体することもできる。
【0040】
この方法に好適な装置の更なる好ましい態様は、触媒活性が流れ方向で上昇する構造化された触媒床を使用することにある。触媒床のこのような構造化は、触媒担体を活性組成物により別々に含浸することにより、もしくは触媒を不活性材料で異なる希釈を行うことにより達成可能である。使用される不活性材料は、例えば、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムまたはこれらの混合物、酸化アルミニウム、ステアタイト、セラミック、ガラス、グラファイトまたはステンレススチールの環、円筒または球であり得る。賦型触媒体の好ましい使用の場合には、不活性材料は好ましくは類似の外形寸法を有しなければならない。
【0041】
好適な賦型触媒体は、いかなる形状の賦型体も含み;錠剤、環、円筒、星形、馬車の車輪または球が好ましく;形状として球、環、円筒もしくは星形の押し出し物が特に好ましい。
【0042】
担体材料の含浸の後、好ましくは前にこの触媒を賦型することができる。
【0043】
1回の通過での塩化水素の転化率を好ましくは15から90%、好ましくは40から8
5%、更に好ましくは50から70%に制限することができる。除去後、未転換の塩化水素を塩化水素の接触酸化の中に部分的もしくは完全に再循環することができる。反応器入口における塩化水素:酸素の容積比は、好ましくは1:1と20:1の間、好ましくは2:1と8:1の間、更に好ましくは2:1と5:1の間にある。
【0044】
有利なこととしては、塩化水素の接触酸化の反応熱を使用して、高圧水蒸気を発生させることができる。これは、ホスゲン化反応器および/または蒸留塔、特にイソシアネート蒸留塔の運転に使用可能である。
【実施例】
【0045】
以下の実施例により本発明を例示するが、本発明をこれに限定するものでない。
【0046】
実施例1:スズ(IV)担体上の酸化ウラニウム触媒
ビーカー中で2gの酸化スズ(IV)球(Saint−Gobain、BET表面積44.6m/g)に酢酸ウラニル二水和物(Riedel−de−Haen)のほぼ10重量%水溶液を噴射により含浸し、引き続いて秤量して、転化することによりにより担体上2重量%のUの装填量を得た。60分の待ち時間の後、この触媒を空気流中で80℃で2時間乾燥した。以降の焼成を空気流中で800℃で4時間行い、酸化スズ(IV)上に担持された酸化ウラニウム触媒を得た。
【0047】
実施例2:TiO担体上の酸化ウラニウム触媒
ビーカー中で2gの二酸化チタン(Saint−Gobain、BET表面積8.8m/g)に酢酸ウラニル二水和物(Riedel−de−Haen)のほぼ10重量%水溶液を実施例1と同様に含浸し、転化することによりにより担体上2重量%のUの装填量を得た。60分の待ち時間の後、この触媒を空気流中で80℃で2時間乾燥した。以降の焼成を空気流中で800℃で4時間行い、酸化チタン(IV)上に担持された酸化ウラニウム触媒を得た。
【0048】
実施例3:アルファ−Al担体上の酸化ウラニウム触媒
ビーカー中で2gのアルファ−Al(Saint−Gobain、BET表面積0.02m/g)に酢酸ウラニル二水和物(Riedel−de−Haen)のほぼ10重量%水溶液を実施例1と同様に含浸し、転化することによりにより担体上2重量%のUの装填量を得た。60分の待ち時間の後、この触媒を空気流中で80℃で2時間乾燥した。以降の焼成を空気流中で800℃で4時間行い、アルファ−酸化アルミニウム上に担持された酸化ウラニウム触媒を得た。
【0049】
実施例4:ガンマ−Al担体上の酸化ウラニウム触媒
ビーカー中で2gのガンマ−Al(Saint−Gobain、BET表面積260m/g)に酢酸ウラニル二水和物(Riedel−de−Haen)のほぼ10重量%水溶液を実施例1と同様に含浸した。1時間の作用時間の後、残存水を空気流中で80℃で2時間除去した。12重量%のウラニウムが賦型体上に存在するまで、この手順を繰り返した。引き続いて、この賦型体を空気流中で800℃で4時間焼結した。
【0050】
実施例5:800℃で焼成したAl担体上の酸化ウラニウム触媒と分析
実施例4と同様に、40gのガンマ−Al(BET200m/g、Saint−Gobain)の賦型体にウラニウムを含浸し、焼成した。XRD(SIEMENS D5000シータ/シータ反射回折計)による分析はガンマ−Alの存在と、Uの存在も示した。
【0051】
実施例6−8:実施例1−3からの触媒の500℃でのHCl酸化における使用
実施例1−3により得られる0.2gの触媒を磨砕し、1gの珪砂(100−200μm)との混合物として石英反応管(直径〜10mm)の中に導入した。
【0052】
石英反応管を500℃まで加熱し、次にこの温度で運転した。
【0053】
80ml/分HClと80ml/分酸素のガス混合物を石英反応管に通した。30分後、生成物ガス流を16重量%のヨウ化カリウム溶液の中に10分間通し、形成されるヨウ素を0.1Nチオ硫酸塩溶液により逆滴定して、導入された塩素の量を求めた。
【0054】
500℃での触媒の生産性を得、表1に示す。
【0055】
実施例9:実施例4からの触媒の540℃でのHCl酸化における使用
実施例4による触媒について、石英反応管を540℃まで加熱し、次にこの温度で運転したということを除いて、実施例6−8のそれに同様の実験を行った。
【0056】
540℃での触媒の生産性を得、表2に示す。
【0057】
実施例10:実施例4からの触媒の600℃でのHCl酸化における使用
実施例4による触媒について、石英反応管を600℃まで加熱し、次にこの温度で運転したということを除いて、実施例6−8のそれに同様の実験を行った。
【0058】
600℃での触媒の生産性を得、表2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒が触媒活性成分として少なくともウラニウムまたはウラニウム化合物と担体材料を含むことを特徴とする、塩化水素を接触酸化するための触媒。
【請求項2】
担体がUO、UO、UOまたはU、U、U、U、U、U1334などのこれらの種の混合物から得られる非化学量論的相を含むことを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
ウラニウムまたはウラニウム化合物が酸化ウラニウムまたはUO2.1からUO2.9の化学量論的組成のウラニウム酸化物の混合物の形で存在することを特徴とする、請求項1もしくは2に記載の触媒。
【請求項4】
ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金、レニウム、ビスマス、コバルト、鉄、アンチモン、スズ、マンガン、およびクロムを含む一群から選択される、触媒活性成分として好適な更なる物質またはこれらの混合物または上記の一群中の元素の少なくとも1つを含む化合物が存在することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の触媒。
【請求項5】
担体材料が二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化スズ、二酸化ジルコニウム、二酸化セリウム、カーボンナノチューブまたはこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の触媒。
【請求項6】
活性成分がウラニウムまたはウラニウム化合物を含むことを特徴とする、活性成分と担体材料を含む触媒の存在において塩化水素を接触酸化することにより塩素を製造するための方法。
【請求項7】
ウラニウムまたはウラニウム化合物が酸化ウラニウムまたはUO2.1からUO2.9の化学量論的組成のウラニウム酸化物の混合物の形で存在することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
活性成分の比率が活性成分と担体材料の全重量基準で0.1から90重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項6もしくは7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
反応温度が150から750℃であることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
反応圧力が1から25バールであることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
工程が等温的もしくは断熱的に、連続的にならびに固定床法として行われることを特徴とする、請求項6から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
工程が中間的な冷却と共に直列に連結された、2から10の、好ましくは2から6の、更に好ましくは2から5の、特に2から3の反応器中で2つ以上の段階で行われることを特徴とする、請求項6から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
反応器入口における塩化水素:酸素の容積比が1:1と20:1の間、好ましくは2:1と8:1の間、更に好ましくは2:1と5:1の間にあることを特徴とする、請求項6から12のいずれか一つに記載の方法。

【公表番号】特表2010−533059(P2010−533059A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515386(P2010−515386)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005353
【国際公開番号】WO2009/010182
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(507212506)バイエル・テクノロジー・サービシズ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (18)
【Fターム(参考)】