説明

塩素化及び/又はフッ素化プロペン、並びにより高級なアルケンを製造するプロセス

塩素化及び/又はフッ素化アルカン、並びに塩素化及び/又はフッ素化アルケンから、塩素化及び/もしくはフッ素化プロペン、又はより高級なアルケンを製造するための連続気相フリーラジカルプロセスであって、該プロセスによって生成されたいずれかの中間沸点副生成物の少なくとも一部が当該プロセスから除去される、連続気相フリーラジカルプロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化及び/又はフッ素化プロペン、並びにより高級なアルケンを製造するための連続気相フリーラジカルプロセスであって、プロセスの効率が高められるものに関する。
【背景技術】
【0002】
冷却、エアコンディショニング、発泡体発泡を含む多くの用途において、そして医療用エアロゾル機器を含むエアロゾル製品のための噴射剤として、ヒドロフルオロカーボン(HFC)製品は幅広く利用されている。HFCは、代替物となるクロロフルオロカーボン及びヒドロクロロフルオロカーボン製品よりも気候に優しいことが判ってはいるものの、相当な地球温暖化係数(GWP)を示すことが今や発見されている。
【0003】
現在のフッ化水素製品に代わる、より許容し得る製品を模索することによって、ヒドロフルオロ−オレフィン(HFO)製品が出現した。先行のものと比較して、HFOは、オゾン層に及ぼす影響があまり有害でなく、またGWPが概ね低いという点で、大気に及ぼす影響が少ないと予想される。有利なことに、HFOはまた可燃性が低く、毒性も低い。
【0004】
HFOの環境上、ひいては経済上の重要性が高まるのにともなって、これらの製造に利用される前駆体が必要になっている。多くの望ましいHFO化合物、例えば2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234yf)又は1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234ze)を典型的には、塩素化プロペン原料を利用して製造することができる。
【0005】
残念ながら、これらの塩素化プロペンは、商業的な利用可能性が制限されており、そして/又は潜在的に著しく高いコストでしか利用可能でない場合がある。これらの商業性障壁は少なくとも部分的には、コンベンショナルな塩素化及び/又はフッ素化プロペン製造法において固有の、しかし連続気相フリーラジカル・ハロゲン化反応に対して独特の難題に少なくとも起因する。ハロゲン化プロペン、及びより高級なアルケンの製造に関与する化学的性質が独自のものであるので、コンベンショナルな連続気相フリーラジカル・ハロゲン化反応において直面する難題にとって有用であることが予想される解決手段が、これらのプロセスには適用できないことがある。
【0006】
従って、塩素化及び/又はフッ素化プロペン、並びにより高級なアルケン、例えばHFOの合成に有用となることができプロセスのような、改善された製造プロセスを提供することが望ましい。より具体的には、このようなプロセスは、もしこれらが材料においてだけではなく、時間の消費においてもより低コストであるならば、技術現況を凌ぐ改善をもたらすことになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンベンショナルなプロセスと比較して高められた効率を示す、塩素化及び/又はフッ素化プロペン、又はより高級なアルケンを製造するための改善されたプロセスを提供する。より具体的には、これらのプロセスは、中間沸点副生成物をプロセスから除去するのを可能にするので、プロセス能力は維持され、反応器の汚れ(fouling)、又は汚れの影響を低減することができる。このように、中間沸点副生成物が除去されない場合よりも長い時間にわたって、反応器の所望のスループットを実質的に維持することができる点で、時間及びコストが削減される。さらに、いくつかの態様の場合、本発明のプロセスは、中間沸点副生成物又は他の副生成物を、他のプロセス又は販売において用いるために精製することによって利用する。他の副生成物を含む反応成分を、所望の場合には再循環してもよく、これにより、本発明のプロセスにさらなるコスト削減がもたらされる。
【0008】
本発明の1つの態様において、塩素化及び/又はフッ素化プロペン、並びにより高級なアルケンを製造するための連続気相フリーラジカルプロセスが提供される。このプロセスは、プロセスによって発生し得る中間沸点副生成物の少なくとも一部をプロセスから除去することを含む。いくつかの態様の場合、プロセスの効率は、i)プロセス中の汚れを低減し、及び/又は生じ得るいかなる汚れの影響も最小化する工程、ii)任意の未反応の反応体、生成物、他の副生成物、及び/又は希釈剤の少なくとも一部を再循環させる工程、並びに/又はiii)少なくとも1種の生成物及び/又は反応の副生成物の精製、のうちの1つ又は2つ以上によってさらに高められる。これらのうちの2つ又は3つ全部の組み合わせを利用することができる。この場合、それぞれの利点を、相乗的にではないにせよ少なくとも相加的に活用することができる。
【0009】
本明細書中に記載されたプロセスは、塩素化及び/もしくはフッ素化プロペン又はより高級なアルケンを製造するために利用されると、特定の利点を提供することが予想され、そして別の態様では、本発明はこのような利点を提供する。本発明のプロセスを利用して有利に製造される具体的な塩素化及び/又はフッ素化プロペン又はより高級なアルケンは、例えば1,1,2,3−テトラクロロプロペン、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、1,1,2,3−テトラフルオロプロペン、及び1,1,2−トリクロロ−3−フルオロプロペンを含む。本発明によって提供される利点は、塩素化及び/又はフッ素化プロペン又はより高級なアルケンを利用して、下流生成物、例えば2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234yf)又は1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234ze)をさらに製造することにより、進展させることができる。
【0010】
添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めば、本発明のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点がより良く理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンの示差走査熱量測定(DSC)分析の結果を示すグラフである。
【0012】
【図2】図2は、固定温度におけるペルフルオロエチレン転化に対するHCl、塩化メチレン、及びクロロホルムの影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書は、本発明をより良く定義づけ、そして本発明の実施において当業者を案内するために定義及び方法を提供する。特定の用語又は成句に対する定義の但し書き又は但し書きが無いことは、何らかの具体的な重要性の有無を誤って示すことにはならない。むしろ、そして特に断りのない場合には、これら用語は当業者によって従来の慣用法に従って理解されるべきである。
【0014】
本明細書中に使用される「第1」、及び「第2」等はいかなる順番、量、又は重要性をも示すものではなく、1つの要素を別の要素から区別するために使用される。また、“a”及び“an”という用語は、量の制限を意味するのではなく、言及されたものの少なくとも1つの存在を意味するものであり、そして「前」、「後ろ」、「下」、及び/又は「上」という用語は、特に断りのない場合、説明の便宜上使用するにすぎず、記載の部分を、いずれか1つの位置又は空間的方向に限定するものではない。
【0015】
範囲が開示される場合、同じ成分又は特性に関する全ての範囲の終点は包括的であり、独立して組み合わせ可能である(例えば「最大約25wt%、より具体的には約5wt%〜約20wt%」という範囲は、約5wt%〜約25wt%の範囲の終点及び全ての中間値を含める、など)。量との関連において使用される修飾語「約」は、言及された値を含み、そして文脈によって決定づけられる意味を有する(例えば、具体的な量の測定に関連するある程度の誤差を含む)。本明細書中に使用される転化率パーセント(%)は、入って来る流れに対する、反応器内の反応体のモル流又は質量流の変化を示すのに対して、選択率パーセント(%)は、反応体のモル流量の変化に対する反応器内の生成物のモル流量の変化を意味する。
【0016】
明細書全体を通して「1つの態様」又は「態様」と言う場合には、これは、或る態様との関連において記載された具体的な構成要件、構造、又は特徴が少なくとも1つの態様内に含まれることを意味する。このように、「1つの態様」又は「態様」という成句が明細書全体を通して種々の場所に現れる場合には、これは同じ態様を必ずしも意味しない。さらに、具体的な構成要件、構造、又は特徴は、1つ又は2つ以上の態様において任意の好適な形で組み合わされる場合もある。
【0017】
本明細書全体を通して、本明細書中で教示された概念の具体例を提供するために、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを提供するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの反応、1,1,2−クロロ−3−フルオロ−プロペンを提供するためのフッ化メチルとペルクロロエチレンとの反応、又は、式:CH2-c-gClcg=CH1-d-hCldh−CH3-e-fClef(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2である一方、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)に従った化合物を提供するための、式:CH4-a-bClab(式中、a及びbはそれぞれ独立して0〜3であり、そして4−a−bは0を上回る)を有するクロロメタン、フルオロメタン、又はクロロフルオロメタンを含むメタンと、塩素原子数が少なくとも1のクロロエチレン又はクロロフルオロエチレンとの反応を参照することがある。しかし、これらの参照事項は一例に過ぎず、本明細書中に記載された反応器及び概念を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0018】
本発明は、塩素化及び/もしくはフッ素化プロペン、又はより高級なアルケンを製造するための改善されたプロセスを提供する。本発明のプロセスによって製造される好ましいアルケンは、炭素原子数が約3〜約6であるものを含む。具体的な模範的反応は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを提供するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの反応、1,1,3,3−テトラクロロプロピレンを提供するための塩化メチレンとトリクロロエチレンとの反応、1,1,2,3−テトラフルオロプロピレンを提供するためのフッ化メチルとクロロトリフルオロエチレンとの反応、及び1,1,2−クロロ−3−フルオロ−プロペンを提供するためのフッ化メチルとペルクロロエチレンとの反応を含む。しかしながら、これらの反応は一例に過ぎず、本明細書中に記載された概念を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0019】
コンベンショナルなハロゲン化反応、すなわちハロゲンを提供する化合物が限定試薬であり、100%転化させられる反応、例えば塩化アリルを製造するためのプロピレンの熱塩素化反応とは異なり、塩素化及び/又はフッ素化プロペン、並びにより高級なアルケンの製造プロセスは、80%、又は40%未満、又は20%未満の質量転化率もしくはモル転化率を示す1種又は2種以上の限定試薬を有することがある。このような相違によって、とりわけ、コンベンショナルな気相フリーラジカル・ハロゲン化反応において直面すると予想される難題は、プロペン又はより高級なアルケンの気相フリーラジカル塩素化又はフッ素化においては直面しないし、又はその逆も同様である。一方のプロセスにおいて有用であると予想される解決手段は、従って、他方では有用であると必ずしも予想されるわけではない。
【0020】
例えば、塩素化及び/又はフッ素化プロペンを製造するプロセスは、副生成物がもし形成されるとしても顕著な量が形成されるわけではないコンベンショナルなハロゲン化法よりも大量の反応副生成物を形成するのが典型的である。すなわち、コンベンショナルなフリーラジカル・ハロゲン化反応において、ジェット攪拌型反応器によって提供されるような、反応器で促進される逆混合又は再循環は、副生成物形成量を同時に増大させることなしに、プロセスの生産性を高めると典型的には考えられている[Liu他, Chemical Engineering Science 59 (2004) 5167-5176]。本発明のプロセスでは、このような逆混合又は再循環は結果として、許容できない量の副生成物の形成をもたらすおそれがある。
【0021】
大量の副生成物の形成は、プロセス能力及び転化率に不都合な影響を及ぼすだけでなく、他の理由から問題をはらむおそれがある。その最たるものは、反応器の汚れを引き起こし得ることである。反応器の汚れは、実施されるべき所望の反応のために利用可能な反応器容積を事実上低減するおそれがある。商業的に許容し得るスループットがもはや可能でない程度にまで汚れた反応器のために必要とされるクリーニングによって、望ましくない時間又は費用がこのプロセスに追加されることもある。
【0022】
塩素化及び/又はフッ素化プロペン、並びにより高級なアルケンを製造するための本発明の改善されたプロセスは、このように、プロセスによって生成されるか又はプロセス中に導入された或る特定の副生成物の少なくとも一部を除去することを可能にする。より具体的には、或る特定の副生成物を有利に再循環して反応器に戻すことができ、この場合、汚れを最小化し、しかも反応速度を高め、ひいては反応器能力を改善することが予想されるものの、他の副生成物がシステム内に堆積することがあり、プロセス能力を著しく且つすぐに低下させ、ひいてはプロセスを不経済にするおそれがあることも現在判っている。他面において、2種の反応体の沸点の間に沸点を有するいくつかの副生成物を再循環させて戻すと、これらの副生成物は望ましいことに、プロセスからパージ又は除去されることにより、プロセス能力が維持されることも判っている。さもなければ、これらの中間沸点副生成物(IBBs:intermediate boiler byproducts)は、0.1wt%未満という低い量の反応流出物の形で形成されるとはいえ、系内に蓄積するおそれがあり、そしてプロセス能力を著しく且つすぐに低下させ、ひいてはプロセスを不経済なものにしてしまうことがある。
【0023】
例えば、1,1,2,3−テトラクロロプロピレンを製造するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの模範的な反応において、副生成物は塩化水素、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロブテン、ヘキサクロロエタン、ヘキサクロロプロペン、及びより重質の副生成物を含み得る。副生成物であるヘキサクロロエタン、及びヘキサクロロプロペンは反応器に再循環されてよく、これらは反応速度を高めることにより、反応器能力を改善することが予想される。塩化水素は、反応器ゾーン内、及び塩化水素が蒸発器温度を低くすることができることから使用される任意の蒸発器内の汚れを最小化するために希釈剤として使用することもできる。他面において、沸点がそれぞれ39.8℃及び61℃である塩化メチレン及びクロロホルムは、それぞれの沸点が−24.2℃及び121℃である反応体塩化メチル及びペルクロロエチレンに対する中間沸点副生成物である。塩化メチレン及びクロロホルムは、塩化メチルと開始剤との副反応の結果として、反応器流出物中0.1wt%未満の少ない量で形成されるものの、これらは反応体再循環流においてプロセス中に蓄積することになる。本発明のプロセスでは、プロセスによって生成された、又はプロセス中に導入された塩化メチレン及び/又はクロロホルムの少なくとも一部が除去されることになる。
【0024】
所望の中間沸点副生成物は、プロセス能力の改善を可能にすることが予想される任意の量で、本発明のプロセスから除去することができるが、少量でも有益であることが予想される。もちろん、除去されるべき具体的な量は、実施される特定のプロセスに依存することになる。大まかに言えば、1,1,2,3−テトラクロロプロピレンを製造するために塩化メチルとペルクロロエチレンとを反応させるプロセスの態様に関して、塩化メチレン及び/又はクロロホルムは、フィード流の最大約0.5又は1又は2又は5モル%の量で反応器に再循環させてよい。
【0025】
中間沸点副生成物は、当業者に知られた任意の好適な方法によって除去することができる。好適な方法の一例としては、蒸留、濾過、系内の副生成物の蓄積を防ぐのに十分に反応体再循環流の一部をバージすること、活性炭床内への吸着、サイクロン分離器、遠心分離器、沈降、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい態様の場合、反応体再循環流の一部をパージすること、及び/又は隔壁塔を利用することを介して、このような中間沸点副生成物の少なくとも一部をプロセスから望ましく除去する。
【0026】
任意の中間沸点副生成物の少なくとも一部を除去するためにパージを使用するのが望ましい場合には、中間沸点副生成物を反応体再循環塔内で、塔からのサイド・ドローとしてパージしてよい。或いは、中間沸点副生成物が反応器内に蓄積しないように、反応体再循環流をパージしてもよい。いずれのパージ法においても、パージ速度は、反応器の生産力に対する中間沸点副生成物の影響を最小化するのに十分であるべきである。
【0027】
隔壁塔は化学工学分野の当業者によく知られており、これらは、2つ又は3つ以上の塔を使用する代わりに単一の塔内で、除去された中間沸点副生成物を分離して精製し得るという利点をもたらす。隔壁塔、及び製造プロセスにおけるこれらの使用は、“Dividing Wall Columns Find Greater Appeal", Gerald Parkinson, Chemical Engineering Progress, May 2007に記載されている。この文献はあらゆる目的のためにその全体を参照することにより、本明細書中に組み込まれる。
【0028】
1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの模範的な反応の場合、塩化水素、及び除去される塩化メチルよりも軽い軽沸分の大部分を有する反応器流出物を、蒸留を介して隔壁塔に提供することにより、塩化メチル、塩化メチレン、及びクロロホルムを、隔壁塔を利用して除去することができる。隔壁塔は流出物を、塔上側部分から回収される塩化メチルと、塔中央部分から回収される塩化メチレン及びクロロホルムと、塔底部分から回収される未反応ペルクロロエチレン及び1,1,2,3−テトラクロロプロペン、及び他の重沸分又は高沸点物質とに分離することが予想される。
【0029】
隔壁塔の適切な動作条件は、塔内で望ましく行われる分離に依存し、化学工学分野の当業者ならば、これを容易に決定することができる。塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、ペルクロロエチレン、及び1,1,2,3−テトラクロロプロペンが分離されるのが望ましい、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの模範的な反応の場合、隔壁塔に適した動作条件は、フィード流の圧力が約266psia、温度が約91℃であり、塔頂の圧力が約63psia、温度が約16℃であり、そして塔底の圧力が約68psia、温度が約186℃である。
【0030】
プロセスから副生成物の少なくとも一部を除去することに加えて、本発明のプロセスは、生成される副生成物、又は生成される副生成物の影響を低減することによって、所望の範囲内で転化を達成することができる。例えば、いくつかの態様の場合、所望の選択率が見られるように、転化率の増大が5%未満、又は約2%未満、又は約1%未満になるようにすることができる。別の言い方をすれば、少なくとも約5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも約15%、又は少なくとも約20%の限定試薬転化率では、所望の生成物への選択率は、約70%、又は約75%、又は約80%、又は約85%以上もの高さであることが可能である。
【0031】
いくつかの態様の場合、このことは、実質的な有害反応又は反応の劣化が生じないように、プロセス中で利用される熱感受性の成分、例えば反応体、生成物、触媒、又は副生成物をさえ保護することにより達成することができる。コスト削減がもたらされるように、反応成分、すなわち希釈剤、反応体、生成物、副生成物(中間沸点副生成物以外の副生成物、又は中間沸点副生成物の最大約2wt%)、及び/又は開始剤のうちの1種又は2種以上を再循環させることにより、本発明のプロセスは、さらなる効率を提供する。いくつかの態様の場合、再循環される成分は、本発明のプロセスに対する、又は成分が使用され得る下流プロセスにおける、成分中の汚染物質の影響を低減又は排除するように精製することができる。過剰な反応器汚れによって必要とされることのあるプロセス停止を回避することにより、コスト及び時間を節減することもできる。
【0032】
より具体的には、塩素化及び/もしくはフッ素化プロペン、又はより高級なアルケンを製造するための本発明の連続気相フリーラジカルプロセスは、i)プロセス中の汚れを低減し、且つ/又は生じ得るいかなる汚れの影響も最小化する工程、ii)任意の反応成分、すなわち未反応の反応体、希釈剤、生成物、副生成物、及び/又は開始剤の少なくとも一部を再循環させる工程、並びに/又はiii)少なくとも1種の生成物及び/又は反応の副生成物の精製、のうちの1つ又は2つ以上によって、効率を高めることができる。
【0033】
本発明のプロセスは、プロセス中の汚れを低減し、又はさもなければ生じ得るいかなる汚れの影響も最小化する種々様々な方法を提供する。1つの態様の場合、例えば本発明のプロセスは、プロセスに希釈剤を組み込むことにより、プロセス中の汚れを最小化することができる。プロセスにおいて利用されるいずれの希釈剤も、発生する反応熱の少なくとも一部を吸収することができ、これにより反応器内部の所望の温度を維持するのを助けるようになることが望ましい。所望の温度を維持することによって、副生成物を生成する反応を最小化することにより、又はこのような副生成物を生成するような、より高い温度で発生し得る熱感受性成分分解を防止することで、副生成物生成量を低減することができる。
【0034】
したがって、好適な希釈剤は、i)所望の反応温度、ii)相当量の副生成物が形成されるようになる温度、及び/又はiii)プロセス中で利用される熱感受性成分が劣化するようになる温度、よりも低い沸点を有する希釈剤を含む。好適な希釈剤は沸点が、プロセスによって利用又は生成される少なくとも1種又は多種の成分よりも低いので、有利なことには、反応器流出物から直ちに容易に分離することができる。そして、好適な希釈剤は望ましいことに、プロセス中で実質的に不活性となり、すなわち反応成分のいずれかと反応することがなく、或いは、行われるのが望ましい反応をほとんど妨害することがない。これらのことを考慮に入れて、好適な希釈剤の一例としては、塩化水素、窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。1,1,2,3−テトラクロロプロペンを提供するための塩化メチルとペルクロロエチレンとを反応させる本発明の態様の場合、塩化水素の使用が好ましい。それというのも、これは反応の副生成物であるからである。
【0035】
所望の希釈剤は、任意の時点でプロセスに添加することができ、望ましくは、熱吸収特性を十分に利用できるように、すなわち、反応ゾーンの少なくとも手前で添加するのが望ましい。典型的には、このような希釈剤は、他の反応体供給材料と同じ地点、すなわち、反応器入口又は反応器入口に流体接続されたミキサーのところで添加されてよく、そしてこのような態様の場合、これらの他の反応体供給材料の蒸発温度を低くすることが予想される。さらに、任意の好適な希釈剤が別個の供給材料として、すなわち、別個の温度・流量制御装置を含む別個の入口を通して提供されてよく、或いは、1種又は2種以上の反応体供給材料、又は再循環反応体供給材料との組み合わせで提供されてよい。この場合、温度及び流量制御装置はまた、反応体供給材料のための制御装置と組み合わされる。
【0036】
もちろん、所望の希釈剤がプロセス中に使用される具体的なプロセスパラメータは、選択された希釈剤、及び希釈剤が望ましく使用されるプロセスに依存することになり、化学工学分野の当業者であればこれを決定することができる。1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの模範的な反応において、約200℃〜約500℃の温度、及び反応器へ供給される供給材料の約5モル%〜約30モル%で、塩化水素が添加されてよい。このような反応において、HClは、所望の場合には、塩化メチル又はペルクロロエチレンの供給材料との組み合わせで添加されてよい。
【0037】
プロセス中に発生するおそれのあるいずれの汚れの影響も、中間沸点副生成物に加えてプロセスから形成され得る任意の中間体、汚染物質、及び/又は副生成物を除去することによって、本発明のプロセスのいくつかの態様において最小化することができる。このことが所望される態様の場合には、中間体、汚染物質、及び/又は副生成物を、当業者に知られた任意の好適な方法によって除去することができる。好適な方法の一例としては、蒸留、濾過、システム内の副生成物の蓄積を防ぐのに十分に反応体リサイクル流の一部をバージすること、活性炭床内への吸着、サイクロン分離器、遠心分離器、沈降、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい態様の場合、このような中間体、汚染物質、及び/又は副生成物の少なくとも一部を、濾過、上記のように隔壁塔を利用することを介して、プロセスから望ましく除去する。
【0038】
濾過を使用することが望ましい場合には、除去するのが望ましい固形不純物の少なくとも一部が通過して流れる、プロセスにおける任意の時点に、適切なフィルタを設けることができる。例えば1μm以上のサイズの粒子を排除することができるフィルタを、プロセス流内に、プロセス中の任意の時点、例えば反応器への流入前、又は反応器からの流出後、及び任意のさらなる処理設備、例えば蒸留塔又は再沸騰器への流入前に、配置することができる。このようなフィルタは、プロセス中に生成された任意の固形の副生成物及び炭素質粒子の少なくとも一部を除去するのに効果的である。
【0039】
模範的プロセス中の流体の中間体、汚染物質、及び/又は副生成物は、プロセス中に隔壁塔を組み込むことにより除去することもできる。このような態様の場合、隔壁塔は、例えば反応器流出物を受容するように、反応器に対して操作可能に配置されてよく、そして塔上側部分から低沸点物質の分離留分を、塔中央部分から中沸点物質の分離留分を、そして塔底部分から高沸点副生成物の分離留分を提供することが予想され得る。
【0040】
いくつかの態様の場合、プロセスから除去されたこのような不純物にはいずれも、これを販売するか、他の製造プロセスで利用するか、又は反応器に再循環させることができるように、1種又は2種以上の精製プロセスを施すことができる。このような態様は、1つのプロセスにおける不純物が別のプロセスでは有用であり得ることを認識しており、従って有用な状態にあるようにこのような不純物を処理することにより、コストを削減し、また他の効率をもたらす。
【0041】
プロセス中の汚れを低減する上記方法は極めて効果的であると予想されるものの、本発明のプロセスの他の態様の場合、それにもかかわらず発生することのあるいずれの汚れの影響をも低減する方法が提供される。例えば、2つ又は3つ以上の反応器を用いてプロセスを実行することにより、プロセス中に発生し得る汚れの影響を低減することができ、そして望ましくは排除することができる。このような態様の場合、何らかの汚れが発生した場合、汚れが生じた反応器を停止させ、そしてプロセス全体を停止させることなしに反応器をクリーニングすることができる。
【0042】
このことが望まれる態様の場合、第2の反応器を第1の反応器と並流関係になるように配置し、そして第1の反応器が停止させられる前に第2の反応器を始動させ、ひいては中断なしの動作を可能にすることが望ましい。同様に、汚れを最小化するためにより穏やかな(より低い温度)条件を用いて、生産要求に見合うように一度に2つ運転することができる3つ又は4つ以上の反応器を有することもできる。2つの反応器を異なる時点で作動させることが望ましく、これにより、発生する汚れをそれぞれの反応器内で異なる度合いにすることができる。生産を妨害する汚れが発生する場合、汚れが生じた反応器をクリーニングのために停止させる前に、第3の反応器を作動させることができる。
【0043】
他の態様の場合、任意の反応成分、すなわち未反応の反応体、希釈剤、生成物、開始剤、及び/又は副生成物(中間沸点副生成物以外の副生成物、又は中間沸点副生成物の最大約2wt%)の少なくとも一部を再循環させることにより、本発明のプロセスの効率を高めることができる。本発明のプロセスにコスト削減がこうしてもたらされる。このように所望される場合、反応体、希釈剤、生成物、副生成物、及び/又は開始剤を再循環させて反応器に戻すことができ、他の下流プロセス又は無関係なプロセスにおいて使用するために再循環させることができ、或いは、完成製品として販売するために再循環させることすらできる。
【0044】
再循環される反応体、希釈剤、生成物、副生成物、及び/又は開始剤は、所望の場合には再循環前に精製することができる。これが望まれる態様では、いかなる好適な精製法を利用してもよく、方法は、何を精製するのかに応じて選択されることになり、これは当業者によって容易に決定することができる。模範的な好適な精製法の一例としては、極低温塔の使用が挙げられる。極低温塔は当業者に知られており、大まかに言えば、低温を用いて低沸点生成物又は副生成物を除去する多段蒸留塔を含む。このような塔及びその使用は米国特許第5,372,009号明細書に記載されており、この文献は、あらゆる目的のためにその全体を参照することにより、その教示内容が本発明の教示内容と矛盾しない程度まで本明細書中に組み込まれる。
【0045】
1,1,2,3−テトラクロロエチレンを製造するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの模範的な反応において、極低温塔を利用してよく、この極低温塔は、例えば、供給材料が約50℃の温度及び約267psiaの圧力で提供される場合には、塔頂の温度が約−14℃、圧力が約259psia、そして塔底の温度が約91℃、圧力が約266psiaである状態で、希釈剤塩化水素及び未反応塩化メチルを除去するのに十分な段を有するトレイを備えていてよい。所望の場合には、例えば少なくとも54の理論段を有する段又はパッキングを備えた塔を使用して、又は段効率70%と仮定して76のトレイを使用して、未反応のペルクロロエチレンを分離して再循環させることができる。このような塔は、塔頂における温度約117℃、圧力約15psiaの塔頂において約95wt%のペルクロロエチレン及び約5wt%の四塩化炭素を提供する一方、塔底の温度は約192℃、圧力が約26psiaに設定されると予想される。
【0046】
上述のように、本発明のプロセスは、塩素化及び/又はフッ素化アルケンを製造するために用いることができる。好ましいアルケンの炭素原子数は3〜6である。具体的には塩素化及び/又はフッ素化プロペンは本発明の連続法によって有利に製造することができ、これらの具体例は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを提供するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの反応、1,1,2−クロロ−3−フルオロ−プロペンを提供するためのフッ化メチルとペルクロロエチレンとの反応、1,1,3,3−テトラクロロプロピレンを提供するための塩化メチレンとトリクロロエチレンとの反応、及び1,1,2,3−テトラフルオロプロピレンを提供するためのフッ化メチルとクロロトリフルオロエチレンとの反応、を含む。
【0047】
このような態様の場合、本明細書中に提供された利点は、プロセス反応温度500℃未満、又は約450℃未満、又は約400℃未満、又は約350℃未満、又はこれよりも低い温度を利用することにより、さらに活用することができる。コンベンショナルな1,1,2,3−テトラクロロプロペン製造法は典型的には、より高い温度で実施される。このことは本発明のプロセスと比較してコスト的に不利になるだけでなく、副生成物の生成量及び/又は反応器汚れを増大させ、ひいては選択率及びプロセス収率を低下させるおそれもある。つまり、1,1,2,3−テトラクロロプロペン自体は熱的に不安定であるだけでなく、反応体及び/又は他の副生成物とさらに反応することによりさらに他の副生成物を形成しやすい。
【0048】
より具体的には、1,1,2,3−テトラクロロプロペンは、370℃で塩化メチル及びペルクロロエチレンと極めて高い反応性を有し、400〜500℃で熱的に不安定であり、そしてコンベンショナルな反応条件である約500℃〜約750℃で特に不安定である。続いて生じる望まれない反応及び/又は分解は、高濃度の不純物をもたらし、そして最終的にはより高い温度で熱コークス化を招く。連続フィード型の工業用反応器の場合、コークス化は、時間とともに反応器生産能力のさらなる損失をもたらすことがよく知られており、しばしばクリーニング及びメンテナンスのために反応器を停止することを必要とする。本発明がそのように限定されているわけではないが、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造するための反応、並びに同様の熱感受性を有する反応体、生成物、希釈剤、又は副生成物を含む他の同様の反応が、本明細書中に開示された原理を適用することから特定の利益を見いだすことができる反応の例である。
【0049】
より低い動作温度によってもたらされる利点をいくつかの態様においてさらに活用するために、より高い圧力、すなわち周囲圧力よりも高い圧力を、1,1,2,3−テトラクロロプロペンの製造のための模範的な反応において利用することもできる。具体的なこのような1つの態様は、少なくとも約200psig、又は約300psig、又は約400psigの反応圧力、約500℃未満、又は約450℃未満、又は約400℃未満、又は約350℃未満の反応温度を利用することができる。触媒/開始剤、例えば塩素を含むもの、例えば塩素ガス、四塩化炭素、又はヘキサクロロエタン又はこれらの組み合わせが、利用される具体的な開始剤に応じて約5ppm〜約100000ppm、又は約10ppm〜約50000ppm、又は約20ppm〜約10000ppmの濃度で使用される。
【0050】
本発明は任意の好適な反応器内で実施することができる。望ましくは、利用される反応器は、反応条件が所望の通りに直ちに且つ容易に変えられる反応器となる。これらの反応器は、熱移動流体を利用することにより所望の温度を達成できる近等温シェル及び多管式反応器を含むことが予想される。円筒形又は管状の反応器を用いた断熱装置及び/又は断熱栓流を使用してもよく、そして使用する場合には、これらの反応器は、所望の反応温度への予熱が可能である限り、長さと直径との所望のアスペクト比を有することができる。或いは、各反応器内部の所望の温度上昇を維持しながら、所望の全体的な転化率を得るために、少なくとも1つの中間冷却器が操作可能に配置された一連の断熱反応器を使用することもできる。
【0051】
本発明のプロセスによって提供される効率はさらに、反応器内で生成された塩素化及び/又はフッ素化プロペン、又はより高級なアルケンをさらなる下流プロセスへ提供することによって、さらに活用することができる。例えば、本発明のプロセスによって生成された1,1,2,3−テトラクロロプロペン又は1,1,2−クロロ−3−フルオロ−プロペンを、ヒドロフルオロオレフィン、例えば2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234yf)又は1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234ze)を含む下流生成物をさらに提供するように処理することができる。ヒドロフルオロオレフィン、2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234yf)又は1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234ze)の改善された製造プロセスもこうしてここに提供される。
【0052】
ヒドロフルオロオレフィンを提供するための塩素化及び/又はフッ素化プロペン、並びにより高級なアルケンの転化は大まかに言えば、式:C(X)mCCl(Y)n(C)(X)mの化合物をフッ素化して、式:CF3CF=CHZの少なくとも1つの化合物にすることを伴う単独反応、又は2つ又は3つ以上の反応を含むことができる(式中、それぞれX,Y及びZは独立して、H,F,Cl,I又はBrであり、そしてそれぞれのmは独立して1,2又は3であり、そしてnは0又は1である)。より具体的な例は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンの原料を触媒気相反応においてフッ素化することによって、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのような化合物を形成する多工程プロセスを伴ってもよい。2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパンを次いで触媒気相反応を介して脱塩化水素することによって、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンにする。
【実施例】
【0053】
本発明を具体的に示す目的で下記例を示す。ただしこれらの例は本発明を何らかの形で限定しようとするものではない。本発明の範囲に含まれる例の種々様々な代替形及び変更形は当業者には明らかであろう。特に、本発明の説明及び例は塩化メチルとペルクロロエチレンとの反応に具体的に言及しているが、本明細書中の教示内容、及びこれによりもたらされる利点を、当業者であれば、望ましくは塩素ラジカル触媒/開始剤を使用した、気相中で行われるのが望ましい任意のフリーラジカル型反応にすぐに且つ容易に当てはめるものと予想される。
【0054】
例1.
式:CH2-c-gClcg=CH1-d-hCldh−CH3-e-fClefに基づく塩素化及び/又はフッ素化プロペンを製造するための、式:CH4-a-bClabを有する2種の塩素化及び/又はフッ素化アルカン、並びに塩素化及び/又はフッ素化アルケンの反応
10インチ長及び1インチ直径の空のHasteloy管を使用して、反応を実施する。式:CH4-a-bClab(a及びbはそれぞれ独立して0〜3であり、そして4−a−bは少なくとも1である)を有する2種の塩素化及び/又はフッ素化アルカン、並びに塩素化及び/又はフッ素化アルケンの一定の流れ、そして四塩化炭素流を反応器に提供し、そして反応器内で維持する一方、反応器への所望のモルパーセントの流量を得るために、副生成物流量を変化させた。
【0055】
反応器管を外部から加熱することにより、反応温度を得る。供給材料を典型的には325℃まで予熱し、そして反応器温度を400℃〜430℃で変化させることができる。CH4-a-bClab転化に対する副生成物の存在の影響を、固定された温度及び滞留時間で調べる。
【0056】
例2.
塩素化及び/又はフッ素化プロペンである1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造するための塩素化及び/又はフッ素化アルカン、並びに塩素化及び/又はフッ素化アルケンである塩化メチルとペルクロロエチレンとの反応
10インチ長及び1インチ直径の空のHasteloy管を使用して、反応を実施する。一定の塩化メチル、ペルクロロエチレン、及び四塩化炭素の流れを反応器に提供し、そして反応器内で維持する一方、副生成物である塩化水素、塩化メチレン、及びクロロホルムの流量を変化させた。より具体的には、HCl流量を0モル%から20モル%へ、塩化メチレン流量を0モル%から1.2モル%へ、そしてクロロホルム流量を0モル%から0.8モル%へ、反応器へのフィード流中で変化させる。
【0057】
反応器管を外部から加熱することにより、反応温度を得る。供給材料を典型的には325℃まで予熱し、そして反応器温度を400℃〜430℃で変化させることができる。ペルクロロエチレン転化に対する副生成物、塩化水素、塩化メチレン、及びクロロホルムの存在の影響を、固定された温度及び滞留時間で調べる。この例において得られるデータを図2に示す。
【0058】
20モル%のN2をHClで置き換えると、HClは、反応器生産力又は転化率を改善することに対して影響を及ぼさないことが判った。すなわち、HClは反応系内部で不活性希釈剤として作用する。また、塩化メチレン(M2)を再循環させることにより反応器効率が有利に増大することはなく、これに対して、四塩化炭素/ペルクロロエチレン(M4/Perc)供給材料中最大2wt%のクロロホルム(M3)を反応器内に再循環させることにより、反応器生産力を約15%増大させることができる。
【0059】
例3.
塩素化及び/又はフッ素化プロペンである1,1,2−クロロ−3−フルオロ−プロペンを製造するための塩素化及び/又はフッ素化アルカン、並びに塩素化及び/又はフッ素化アルケンであるフッ化メチルとペルクロロエチレンとの反応
10インチ長及び1インチ直径の空のHasteloy管を使用して、反応を実施する。一定のフッ化メチル、ペルクロロエチレン、及び四塩化炭素の流れを反応器に提供し、そして反応器内で維持する一方、副生成物である塩化水素、クロロフルオロメタン、及びクロロホルムの流量を変化させることにより、反応器へのフィード流の特定モルパーセントを得る。より具体的には、HCl流量を0モル%から20モル%へ、クロロフルオロメタン流量を0モル%から1.5モル%へ、そしてクロロホルム流量を0モル%から0.8モル%へ、反応器へのフィード流中で変化させる。この例では、クロロフルオロメタン及びクロロホルムが、中間沸点副生成物である。
【0060】
反応器管を外部から加熱することにより、反応温度を得る。供給材料を典型的には325℃まで予熱し、そして反応器温度を400℃〜430℃で変化させることができる。ペルクロロエチレン転化に対する副生成物である塩化水素、クロロフルオロメタン、及びクロロホルムの存在の影響を、固定された温度及び滞留時間で調べる。
【0061】
HClは、反応器生産力又は転化率を改善することに対してほとんど又は全く影響を及ぼさないと予想される。すなわち、HClは反応系内部で不活性希釈剤として作用すると予想される。また、クロロフルオロメタンを再循環させることにより反応器効率が有利に増大することはなく、これに対して、四塩化炭素/ペルクロロエチレン供給材料中最大2wt%のクロロホルムを反応器内に再循環させることにより、反応器生産力を約15%増大させ得ることが予想される。
【0062】
例4.
塩素化及び/又はフッ素化プロペンである1,1,3,3−テトラクロロプロペンを製造するための塩素化及び/又はフッ素化アルカン、並びに塩素化及び/又はフッ素化アルケンである塩化メチレンとトリクロロエチレンとの反応
10インチ長及び1インチ直径の空のHasteloy管を使用して、反応を実施する。一定の塩化メチル、トリクロロエチレン、及び四塩化炭素の流れを反応器に提供し、そして反応器内で維持する一方、副生成物である塩化水素、及びクロロホルムの流量を変化させることにより、反応器へのフィード流の特定モルパーセントを得る。より具体的には、HCl流量を0モル%から20モル%へ、クロロホルム流量を0モル%から0.8モル%へ、反応器へのフィード流中で変化させる。この例では、クロロホルムだけが、中間沸点副生成物である。
【0063】
反応器管を外部から加熱することにより、反応温度を得る。供給材料を典型的には325℃まで予熱し、そして反応器温度を400℃〜430℃で変化させることができる。トリクロロエチレン転化に対する副生成物である塩化水素、及びクロロホルムの存在の影響を、固定された温度及び滞留時間で調べる。
【0064】
HClは、反応器生産力又は転化率を改善することに対してほとんど又は全く影響を及ぼさないと予想される。すなわち、HClは反応系内部で不活性希釈剤として作用すると予想される。また、四塩化炭素/トリクロロエチレン(M4/TCE)供給材料中最大2wt%のクロロホルム(M3)を反応器内に再循環させることにより、反応器生産力を約15%増大させ得ることが予想される。
【0065】
例5.
塩素化及び/又はフッ素化プロペンである1,1,2,3−テトラフルオロプロペンを製造するための塩素化及び/又はフッ素化アルカン、並びに塩素化及び/又はフッ素化アルケンであるフッ化メチルとクロロトリフルオロエチレンとの反応
10インチ長及び1インチ直径の空のHasteloy管を使用して、反応を実施する。一定のフッ化メチル、クロロトリフルオロエチレン、及び四塩化炭素の流れを反応器に提供し、そして反応器内で維持する一方、副生成物である塩化水素、クロロフルオロメタン、及びクロロホルムの流量を変化させることにより、反応器へのフィード流の特定モルパーセントを得る。より具体的には、HCl流量を0モル%から20モル%へ、クロロフルオロメタン流量を0モル%から1.5モル%へ、そしてクロロホルム流量を0モル%から0.8モル%へ、反応器へのフィード流中で変化させる。この例では、クロロフルオロメタン及びクロロホルムが、中間沸点副生成物である。
【0066】
反応器管を外部から加熱することにより、反応温度を得る。供給材料を典型的には325℃まで予熱し、そして反応器温度を400℃〜430℃で変化させることができる。クロロトリフルオロエチレン転化に対する副生成物である塩化水素、クロロフルオロメタン、及びクロロホルムの存在の影響を、固定された温度及び滞留時間で調べる。
【0067】
HClは、反応器生産力又は転化率を改善することに対してほとんど又は全く影響を及ぼさないと予想される。すなわち、HClは反応系内部で不活性希釈剤として作用すると予想される。また、クロロフルオロメタンを再循環させることにより反応器効率を有利に増大させることはないのに対して、四塩化炭素/クロロトリフルオロエチレン供給材料中最大2wt%のクロロホルム(M3)を反応器内に再循環させることにより、反応器生産力を約15%増大させ得ることが予想される。
【0068】
例6
例1〜4に従って調製された塩素化及び/又はフッ素化プロペンから、当業者に知られているいくつかの方法のうちのいずれかによって、ヒドロフルオロオレフィンを調製する。例えば、クロム/コバルト系触媒とともにHFを使用して、1,1,2,3−テトラクロロプロペンをHFO−1234yfに転化することは、国際公開第2008/054781号パンフレットに記載された方法に従って行うことができる。国際公開第2009/003084号パンフレットには、1,1,2,3−テトラクロロプロペンの原料を液相中で触媒なしで、続いて触媒気相反応においてフッ素化することによって、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)を形成する多工程プロセスが記載されている。このプロセスも好適である。米国特許出願公開第2009/0030244号明細書には、HCFC−1233xfを中間体として、HFによる触媒プロセスを用いて、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを使用してHFO1234yfを生成することが記載されている。このプロセスを用いてもよい。最後に米国特許出願公開第2009/0099396号明細書には、HFC−245ebを中間体として、1,1,2,3−テトラクロロプロペンをHVと好適に液相触媒反応させ、続いて気相反応させることが記載されている。これらの特許明細書は、あらゆる目的のためにその全体を参照することによって、ここに組み込まれる。
【0069】
本発明の特定の特徴だけを例示して説明してきたが、当業者には数多くの改変形及び変更形が明らかであろう。従って言うまでもなく、添付の請求項は、本発明の真の思想の中に含まれるような改変形及び変更形全てに範囲が及ぶものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化及び/又はフッ素化アルカン、並びに塩素化及び/又はフッ素化アルケンから、塩素化及び/又はフッ素化プロペン、並びにより高級なアルケンを製造するための連続気相フリーラジカルプロセスであって、該プロセスによって生成されたいずれかの中間沸点副生成物の少なくとも一部が当該プロセスから除去される、連続気相フリーラジカルプロセス。
【請求項2】
該塩素化及び/又はフッ素化アルカン、並びに塩素化及び/又はフッ素化アルケンが、式:CH4-a-bClab(式中、a及びbはそれぞれ独立して0〜3であり、そして4−a−bは少なくとも1である)を有している、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
該塩素化及び/又はフッ素化アルカン、並びに塩素化及び/又はフッ素化アルケンが塩化メチル、フッ化メチル、又は塩化メチレンを含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
該塩素化及び/もしくはフッ素化プロペン又はより高級なアルケンが、式:CH2-c-gClcg=CH1-d-hCldh−CH3-e-fClef(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2であるが、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
該塩素化及び/もしくはフッ素化プロペン又はより高級なアルケンが、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、1,1,3,3−テトラクロロプロピレン、1,1,2,3−テトラフルオロプロピレン、又は1,1,2−クロロ−3−フルオロ−プロペンを含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
i)プロセス中の汚れを低減し、及び/又は生じ得るいかなる汚れの影響も最小化する工程、ii)いずれかの未反応の反応体、生成物、副生成物、及び/又は希釈剤の少なくとも一部を再循環させる工程、並びに/又はiii)少なくとも1種の生成物及び/又は反応の副生成物の精製、のうちの1つ又は2つ以上をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
i)プロセス中の汚れを低減し、及び/又は生じ得るいかなる汚れの影響も最小化する工程、ii)いずれかの未反応の反応体、生成物、副生成物、及び/又は希釈剤の少なくとも一部を再循環させる工程、並びに/又はiii)少なくとも1種の生成物及び/又は反応の副生成物の精製、のうちの少なくとも3つを含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項1のプロセスによって調製された塩素化及び/又はフッ素化プロペン、並びにより高級なアルケンを利用して、下流生成物を調製するプロセス。
【請求項9】
請求項6に記載のプロセスによって調製された1,1,2,3−テトラクロロプロペンを2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234yf)又は1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234ze)に転化することを含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234yf)又は1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234ze)を製造するプロセス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−507396(P2013−507396A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533374(P2012−533374)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/052107
【国際公開番号】WO2011/044536
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】