説明

塩酸サルポグレラート含有錠剤

【課題】塩酸サルポグレラートを長期間安定に含有することができる錠剤を提供すること。
【解決手段】塩酸サルポグレラートと製剤上の添加物を造粒機に投入し、これに結合剤と水を混合した結合液を添加して造粒後、乾燥して得られた顆粒を滑沢剤とともに混合した後、打錠してなる錠剤において、滑沢剤としてステアリン酸カルシウムを用いることを特徴とする錠剤を提供する。
この錠剤は、コーティング機に投入し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、タルク、エタノール及び水からなる混合液を噴霧し、被覆層を形成した被覆錠としてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩酸サルポグレラート(日本医薬品一般的名称)を長期間安定に含有することができる錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
塩酸サルポグレラートは、慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感等の虚血性諸症状改善のために使用される有用な医薬であるが、その分子構造中にエステル結合があるため、空気中の湿気の影響を受けて加水分解し易い性質を有している。
【特許文献1】特公昭63−13427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、塩酸サルポグレラートを長期間安定に含有することができる錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、塩酸サルポグレラートの錠剤化に関する検討過程で、滑沢剤として繁用されているステアリン酸マグネシウムを使用すると、塩酸サルポグレラートが予想外に高い比率で加水分解されることを見出した。ところが驚くべきことに、ステアリン酸マグネシウムに代えてステアリン酸カルシウムを使用すると、顕著にその加水分解が抑えられ、長期保存可能な塩酸サルポグレラート含有錠剤を得ることができることを見出した。そこで本発明者は、さらに検討を加え、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明によれば、
[1]塩酸サルポグレラートと製剤上の添加物を造粒機に投入し、これに結合剤と水を混合した結合液を添加して造粒後、乾燥して得られた顆粒を滑沢剤とともに混合した後、打錠してなる錠剤において、滑沢剤としてステアリン酸カルシウムを用いることを特徴とする錠剤、
[2]製剤上の添加物がD−マンニトール及びカルボキシメチルセルロースであり、結合剤がポリビニルアルコール(部分けん化物)である前記[1]に記載の錠剤、
[3]前記[1]又は[2]に記載の錠剤をコーティング機に投入し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、タルク、エタノール及び水からなる混合液を噴霧し、被覆層を形成してなる被覆錠を提供することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の錠剤によれば、安定性に問題がある塩酸サルポグレラートを長期間安定に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において用いられる塩酸サルポグレラートの原末は、錠剤化後の適度な溶出速度を得るために、平均粒子径(光散乱法による測定値)が5μm〜100μmのものが好ましく、より好ましくは20μm〜50μmである。
本発明において使用される製剤上の添加物としては、賦形剤としてD−マンニトール、乳糖、トウモロコシ澱粉、バレイショ澱粉、白糖、ショ糖、ブドウ糖等が挙げられ、なかでもD−マンニトールが好ましく、また、崩壊剤として
カルボキシメチルセルロース、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられ、なかでもカルボキシメチルセルロースが好ましい。さらには、安定化剤としてクエン酸等を添加してもよい。
本発明において顆粒剤を製造するに際し、使用する結合剤としては、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン等が挙げられ、なかでもポリビニルアルコール(部分けん化物)が好ましく、滑沢剤としてはステアリン酸カルシウムを使用する。
【0008】
本発明の錠剤は、光遮断効果をもたらす酸化チタンを前記の結合剤やタルク等とともにエタノールや水に懸濁した混合液とし、これを用いて定法にしたがって被覆することにより、塩酸サルポグレラートをより安定に長期間保持できる。
【実施例1】
【0009】
(1)素錠
ポリビニルアルコール(部分けん化物)66gを精製水1242gに加え、加温下で撹拌し溶解させた。これにクエン酸12gと精製水120gの混合溶液を加え、撹拌して結合液1440gを調製した。
次に平均粒子径が26μm(光散乱法)の塩酸サルポグレラート2000g、D−マンニトール2014g及びカルボキシメチルセルロース220gを流動層造粒乾燥機に投入して、先に調製した結合液1440gを噴霧して造粒し、乾燥後、造粒顆粒を得た。この顆粒とステアリン酸カルシウム88gとをタンブラー混合機に投入し、混合後、ロータリー式打錠機で圧縮成型して1錠当たり220mgの素錠を得た。
【0010】
(2)被覆錠
ヒドロキシプロピルメチルセルロース168gをエタノール945gと精製水945gの混合液に加え、撹拌し溶解させた。これに酸化チタン33gとタルク9gを加え、撹拌してコーティング液を調製した。
次に(1)で製造した素錠(1錠当たり220mg)をコーティング機に投入し、先に調製したコーティング液を噴霧することにより、被覆錠を得、乾燥させた(1錠当たり227mg)。
【0011】
[比較例1]ステアリン酸カルシウムに代えてステアリン酸マグネシウムを等量用いた他は実施例1(1)及び(2)に記載のとおりの塩酸サルポグレラート及び基材を用いて、比較試験用の被覆錠を製造した。
【0012】
[試験例1](実施例1の被覆錠と比較例1の被覆錠との過酷試験)
(1)試験方法
実施例1及び比較例1で得た各錠剤30錠をそれぞれ開放した硝子瓶に収容し、恒温槽に入れ、温度60℃、相対湿度75%の条件下に保存した。保存2日後、各錠剤中の塩酸サルポグレラート残存量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、結果を表1に示した。
【表1】

(2)以上の結果から、本発明に係る実施例1の錠剤は、参考例1の錠剤と比べ、塩酸サルポグレラートを極めて効果的に安定に保持し得ることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明によれば、慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感等の虚血性諸症状改善のために使用される有用な医薬であるが、安定性に問題がある塩酸サルポグレラートを、長期間安定に保持した安全な錠剤を医療現場に提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸サルポグレラートと製剤上の添加物を造粒機に投入し、これに結合剤と水を混合した結合液を添加して造粒後、乾燥して得られた顆粒を滑沢剤とともに混合した後、打錠してなる錠剤において、滑沢剤としてステアリン酸カルシウムを用いることを特徴とする錠剤。
【請求項2】
製剤上の添加物がD−マンニトール及びカルボキシメチルセルロースであり、結合剤がポリビニルアルコール(部分けん化物)である請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の錠剤をコーティング機に投入し、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、タルク、エタノール及び水からなる混合液を噴霧し、被覆層を形成してなる被覆錠。

【公開番号】特開2007−145733(P2007−145733A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339638(P2005−339638)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(593030071)大原薬品工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】