説明

塵埃除去機能付きスタッカークレーン

【課題】スタッカークレーンにより搬送される被搬送体間でのクロスコンタミネーションを抑えることができる技術を提供すること。
【解決手段】被搬送体の載せ降ろしを行う受け渡し手段を壁面に沿って移動させ、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送体の受け渡しを行うスタッカークレーンにおいて、前記受け渡し手段及び被搬送体を収容する密閉された収容空間を形成する筺体と、この筺体に設けられた、被搬送体の受け渡しのために設けられた開閉手段と、前記収容空間に収容された被搬送体にエアを吐出し、被搬送体に付着した塵埃を除去するためのエアノズルと、このエアノズルよりもエア流路の上流側に設けられた塵埃除去用のフィルタと、その一端が収容空間に臨む吸引口をなす吸引路と、この吸引路に設けられた吸引手段と、を備えるようにスタッカークレーンを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送体の載せ降ろしを行う受け渡し手段を壁面に沿って移動させ、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送体の受け渡しを行う塵埃除去機能付きスタッカークレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医薬品の製造工場においては、例えば粉体である製剤原料に対して秤量、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)及び検査などの夫々異なる処理を行う処理部を備えた多数の処理室が複数階に亘って、且つ各階において横方向に複数並んで設けられている。製剤原料は、外部から搬入され、開封されて所定の搬送用容器内に移されて中間保管室に保管され、ここから各処理室に順次搬送されると共に、一の処理室で処理を終えた処理物は一旦中間保管室に保管された後、次の処理室に搬送されるといった製造ラインにより順次処理が行われて医薬品が製造される。
【0003】
前記中間保管室、各処理室間の容器の搬送はスタッカークレーンを介して行われる。即ち工場内には壁面で囲まれた偏平直方体状のスタッカークレーンの移動空間である通路(「スタッカーシャフト」などと呼ばれる)が形成されており、壁面には各処理室あるいは中間保管室との間で容器の受け渡しを行うための、ドアにより開閉される受け渡し口が形成されている。
【0004】
図10を用いて処理室及びスタッカークレーンの構成の一例について説明する。図中11は、スタッカークレーン1が移動する通路と処理室とを仕切る壁面である。図中12は、搬送用容器Cの受け渡し口であり、ドア13により開閉自在に構成されている。図中14は、容器Cが載置される載置部であり、15は各層を仕切る床である。なお各処理室は図示しない壁及び前記床15により互いに仕切られ、クリーンルームとして構成されている。
【0005】
スタッカークレーン1は、移動空間の底面に形成された水平軌道に沿って移動する基部16と、この基部16に設けられた柱部17,17を介して上下に移動するリフト18を備えている。このリフト18には前記移動空間の幅方向に移動し、各受け渡し口12を介して処理室内に進入して、前記載置部14との間で搬送用容器Cを受け渡すことができるように構成された搬送台19が設けられている。
【0006】
各処理室は、例えばその処理室の処理部(不図示)と載置部14との間で搬送用容器Cの受け渡しを行う搬送機構を備えており、当該搬送機構を介してスタッカークレーン1と前記処理部との間で搬送用容器Cの受け渡しを行うことができるように構成される。
【0007】
ところでこのような医薬品製造工場においては複数種類の製品が扱われ、夫々異なる医薬品の製剤原料が収容された搬送用容器Cが搬送されることが多く、また例えば処理室の雰囲気に存在する製剤原料の粉体が、搬送用容器Cの表面に塵埃として付着し、そのような状態で搬送用容器Cが搬送される場合がある。この場合、前記製剤原料の粉体は、例えばスタッカークレーン1やスタッカークレーン1を介して搬送される他の搬送用容器Cに付着することで工場内に広がり、さらに他の固形製剤原料が収容された容器C内に混入することにより、ある種の製剤を製造する際に他の種類の製剤が混入する、いわゆるクロスコンタミネーションが起きる場合がある。
【0008】
従来、搬送用容器Cに粉体が付着しないように様々な工夫がなされてきたが、完全に付着を防ぐことは難しく、従ってクロスコンタミネーションを抑えるために、例えば搬送用容器Cを所定の処理室から次の処理室へ搬送する間に、作業員が待機する領域に容器Cを搬送し、その作業員が手作業で容器Cの表面を清掃し、付着した粉体を除去する場合があった。この除去方法は、手作業によるものであるため清掃残しが発生する場合があったり、また清掃の再現性がなかったが、このような作業員による清掃が行われた上で、たとえクロスコンタミネーションが起こり、医薬品製剤に予定されていない製剤原料の粉体が混入しても、その混入量は微量であり、従ってその薬剤活性も小さいものと考えられ、問題にされなかったのが実情であった。
【0009】
しかし近年、医薬品の品質及び安全性をより高める要請から、クロスコンタミネーションをより確実に抑えることについて検討されており、例えば容器Cを収容する筺体と、その筺体内に配置された多数のノズルとを備え、各ノズルから収容された容器Cにエアを吐出し、付着した塵埃を除去するエアシャワー装置を各処理室の受け渡し口に設けて、この装置により容器Cから塵埃を除去することが検討されている。しかしこのエアシャワー装置については1台あたりの設置に要するコストがかなり高く、各受け渡し口に設ける場合、非常にコストが高くなってしまうという問題がある。
【0010】
なお、特許文献1には人体及び衣服の塵埃除去を行うガスシャワーを備えた、多層階を移動するエレベータ装置について記載されているが、上記のようにスタッカークレーンを用いて被搬送体を搬送する場合に起こる問題については記載されていない。
【特許文献1】特開平9−20479(段落0023)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、スタッカークレーンにより搬送される被搬送体間でのクロスコンタミネーションを抑えることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のスタッカークレーンは、被搬送体の載せ降ろしを行う受け渡し手段を壁面に沿って移動させ、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送体の受け渡しを行うスタッカークレーンにおいて、前記受け渡し手段及び被搬送体を収容する密閉された収容空間を形成する筺体と、この筺体に設けられた、被搬送体の受け渡しのために設けられた開閉手段と、前記収容空間に収容された被搬送体にエアを吐出し、被搬送体に付着した塵埃を除去するためのエアノズルと、このエアノズルよりもエア流路の上流側に設けられた塵埃除去用のフィルタと、その一端が収容空間に臨む吸引口をなす吸引路と、この吸引路に設けられた吸引手段と、を備えている。なお筺体に設けられた開閉手段とは、ドアにより構成される他に例えば筺体を台とその台上に設けられたカバーとにより構成し、そのカバーを前記台に対して昇降させるような手段として構成してもよい。
【0013】
前記吸引路は、他端側が前記エアノズルに連通してエアの循環路を構成していてもよく、また前記エアノズルまたはエア流路には、イオナイザーが組み合わされて設けられていもよい。なお被搬送体は、例えば固形物を収納するための容器であり、その場合例えば固形物は固形製剤原料である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスタッカークレーンは、被搬送体の受け渡し手段及び当該被搬送体を収容する密閉された収容空間を形成する筺体と、前記収容空間に収容された被搬送体にエアを吐出し、被搬送体に付着した塵埃を除去するためのエアノズルと、このエアノズルよりもエア流路の上流側に設けられた塵埃除去用のフィルタと、その一端が収容空間に臨む吸引口をなす吸引路と、この吸引路に設けられた吸引手段と、を備えている。このように構成することによって例えば、被搬送体が各受け渡し口を移動する間に、密閉された前記収容空間内に気流が形成され、その気流に乗って被搬送体に付着した塵埃が除去される。本発明は、特に被搬送体として各々異なる固形製剤原料を含んだ複数の容器が搬送され、各原料から夫々異なる製品が製造されるような化学工場や医薬品工場などに適用されることで、塵埃つまり固形製剤原料の付着が抑えられた状態で搬送用容器を受け渡し口に受け渡すことができるため、各受け渡し口にエアシャワー装置を設けるような場合に比べて安価に、搬送用容器間のクロスコンタミネーションを抑えることができ、各製品の品質の低下を抑えることができる。
また本発明によれば作業員が手作業で被搬送体に付着した塵埃を清掃し、除去する必要がなくなるため、受け渡し口間を搬送する間に作業員がその清掃を行う領域に被搬送体を搬送する必要がなくなる結果として、工場の稼動効率の向上に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明のスタッカークレーンを適用した医薬品製造工場2の一例を示す概略斜視図である。図中鎖線部は工場2の外壁21であり、この外壁21内は例えば床22により上下2層に区画されている。また外壁21内にはスタッカークレーンシャフトと呼ばれる、後述のスタッカークレーンが移動する偏平な直方体状の通路(移動空間)23が設けられており、この通路23は、工場2内の上下各層に跨り、横方向(図中X軸方向)に沿って、各層を前後方向(図中Y軸方向)に分けるように設けられており、その周囲は壁(壁面)24に囲まれている。この通路23は、所定の清浄度に保たれている。
【0016】
各層において通路23(壁24)を挟んで左右両側又は片側には、製剤原料に対して所定の処理を行う、多数の処理室や中間保管室が、当該通路23の長さ方向に沿って設けられている。これらの処理室は、搬送用容器Cが搬送される搬送領域を含み、例えば製剤原料の秤量及び秤量した原料の容器Cへの充填や、その容器C中の製剤原料の造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)、成形物(製品)の検査などの製剤原料及びその原料から作られた製品に対して夫々異なる処理を行う処理部(不図示)を備えている。
【0017】
この医薬品製造工場2では、複数種類の医薬品を製造するためにこれらの各処理部を含んだ処理室が複数設けられ、後述するように異なる製剤原料を含んだ搬送用容器Cが所定のシーケンスフローに従って各処理室間を夫々異なる搬送経路で受け渡される。なお図が煩雑になるのを防ぐために記載を省略しているが、各層の処理室は壁により互いに区画され、所定の清浄度に保たれている。
【0018】
図中25は、前記容器Cが載置される載置部であり、各処理室において通路23付近に設けられている。この載置部25は、例えば、間隔をおいて配列された逆U字型に折り曲げられた2本の対となる角材等により構成されており、それらの上部に前記容器Cが載置される。また各処理室内には、製剤原料あるいは中間品に対して夫々所定の処理を行う不図示の処理部と、当該処理部と載置部25との間で容器Cを受け渡すための不図示の搬送機構とが設けられている。
【0019】
前記搬送機構によりスタッカークレーン3から搬送用容器Cを受け取って処理部に受け渡し、また処理部で処理された処理物の入った容器Cをスタッカークレーン3に受け渡すことができる。なお実際には一の処理部は2階に上下に分かれていて、上の階(層)で受け取った原料あるいは中間品を下の階に落下させ、下の階にて処理物を容器に移してスタッカークレーンに戻すシステムを採用する場合がある。
【0020】
通路を区画する壁24には、被搬送体(搬送用容器)を受け渡すための受け渡し口が形成され、この受け渡し口はドア26により開閉自在に構成される。これらの各ドア26により壁24内の通路23と各処理室とが仕切られている。各ドア26は、後述するようにスタッカークレーン3と処理室及び中間保管室との間で容器Cの受け渡しが行われる場合を除いて閉じられている。
【0021】
次に図2及び図3を参照しながら、通路23内を移動するスタッカークレーン3の構成を説明する。図中31はスタッカークレーン3の基部であり、基部31上には、各々間隔をおいて天井へ向かう2本の柱部32,32が設けられている。図中33は、柱部32に沿って昇降自在なリフトであり、リフト33上にはエアシャワー部4が設けられている。
【0022】
エアシャワー部4は、リフト33を覆うように形成された例えばその前後(図中Y軸方向)で対称な角形の筺体41を備えており、その筺体41の内部には容器Cが収容される収容空間Sが形成されている。また筺体41の前後の各面には開口部42が各々設けられており、各開口部42は夫々左右方向にスライドするシャッタ43,43により開閉自在に構成されている。処理室に容器Cを受け渡す場合を除いてシャッタ43,43は閉じられ、収容空間Sは密閉される。
【0023】
収容空間Sには容器Cが載置される搬送台34が設けられている。搬送台34は受け渡し手段として構成され、通路23の前後方向に移動する。搬送台34は、処理室のドア26及び前後いずれかの、前記処理室に対応する側のシャッタ42,42が開くと、前記載置部25を構成する角材と角材との間へ進入し、この搬送台34の動作とリフト33の昇降との組み合わせにより、載置部25と当該搬送台34との間で容器Cの受け渡しが行われる。
【0024】
図中35は、通路23の床に設けられたレールであり、通路23の長さ方向に沿って敷設されている。図中36は、前記基部31に設けられた車輪であり、この車輪36を介して基部31は、リフト33及びエアシャワー部4を伴い、通路23をレール35に沿って横方向に移動する。
【0025】
続いて図4及び図5を参照しながらエアシャワー部4の構成についてさらに詳しく説明する。図4、図5は夫々エアシャワー部4の縦断正面図、縦断側面図である。エアシャワー部4は、例えば左右対称に構成されており、筺体41の左右の側壁から各々間隔をおいてその側壁に並行する内壁51が設けられ、内壁51と収容空間の前記側壁とに囲まれる領域は、収容空間Sと区画されている。各内壁51には、収容空間Sにエアを吐出する多数のエアノズル6が各々間隔をおいて設けられており、図中61はノズルの吐出孔である。このノズル6については後述する。
【0026】
内壁51の下部には処理空間Sに面するように開口部が形成されており、この開口部を塞ぐようにメッシュ52が設けられている。メッシュ52の各孔は特許請求の範囲でいう吸引口を構成しており、その各孔を介して処理空間Sと、既述の処理空間Sの左右の区画領域とが連通している。各区画領域にはその区画領域におけるエアの流れを規制して、エアの流路Rを構成する複数枚の仕切り板が設けられており、その流路Rの一端は各エアノズル6に、他端は前記メッシュ52の各孔に接続されている。流路Rは特許請求の範囲でいうエア流路及び吸引路を構成する。
【0027】
流路Rの上流側から下流側に向けて吸引手段であるファン53、フィルタ54がこの順に介設されており、ファン53はメッシュ52を介して処理空間Sにおけるエアを吸引し、吸引したエアをエアノズル6へ供給する。フィルタ54は、流路Rにおいてエアノズル6向かう途中のエアに含まれる塵埃を除去する。
【0028】
続いて図6を参照しながらエアノズル6について説明する。このエアノズル6はイオナイザーが組み込まれている。イオナイザーは除電器とも呼ばれ、基本的にプラスのエアイオンとマイナスのエアイオンとを等量発生させるものであり、帯電物と同極性を持ったエアイオンはその帯電物と反発する一方、逆極性を持ったエアイオンはその帯電物に吸引され、イオン結合が起こり、電荷が中和される結果、帯電物が除電される。
【0029】
処理室において容器Cに対して処理が行われたり、容器Cがスタッカークレーン3により処理室間を受け渡されたりする間に容器Cの表面に静電気が発生し、この静電気により例えば処理室の雰囲気に存在する製剤原料の粉体などが塵埃として容器Cに付着した場合であっても、その静電気を除去することで付着した塵埃を容易に容器Cから除去することを目的として、このようなイオナイザーが組み込まれる。
【0030】
図中62はノズル本体であり、このノズル本体62にはイオナイザーを構成する電極63が設けられており、この電極63は給電路をなすケーブル64を介して直流電源65に接続されている。電極63の形状としては、ノズル本体62内を通るエアに効率良く接触するように、複数の棒状電極を流路Rと交差するように配列したものを用いることができる。この電極63に高電圧が印加されると、電極63の周囲に不平等電界が形成される。このように電界が形成された状態で流路Rからエアノズル6にエアが供給されると、供給されたエアは前記電界に接触してイオン化し、ノズル本体62の吐出孔61から収容空間Sに収容された容器Cに向けて吐出される。
【0031】
吐出されたエアは、既述のように容器Cに向けて吐出された後、再びファン53によりメッシュ52を介して流路Rに吸引されてエアノズル6に供給され、エアノズル6から収容空間Sに吐出される、つまりエアは流路Rと収容空間Sとを繰り返し循環するようになっている。このエアの吐出及び吸引により、搬送用容器Cの周囲に例えば図4に矢印で示すような気流が形成され、容器Cに付着していた塵埃がその気流に乗ってフィルタ54で捕集され、当該容器Cから除去される。
【0032】
続いて上記のスタッカークレーン3が複数種類の医薬品製剤を製造する際に各搬送用容器Cを搬送する様子を図7〜図9を参照して説明する。始めに一の中間保管室における医薬品の製剤原料の粉体が搬送用容器C(便宜上、以降C1と表記する)を介して順次処理室に運ばれる。例えばスタッカークレーン3が、中間保管室あるいは処理室のドア26の前に移動すると共にスタッカークレーン3のリフト33が、そのドア26に対応する高さに移動した後、壁24のドア26及びそのドア26に向かうスタッカークレーン3のエアシャワー部4のシャッタ42,42が開かれ、搬送台34がその処理室(中間保管室)に向けて移動し、搬送台34に容器C1が受け渡される(図7(a))。なお図7においては載置部25の表示は省略している。
【0033】
その後、容器C1を保持したまま搬送台34が後退し、容器C1がエアシャワー部4の収容空間Sに収容されると、前記ドア26及びシャッタ42,42が閉じられ、収容空間Sが密閉空間となり、スタッカークレーン3は、次に容器C1の製剤原料に対して処理を行う処理室の前に向けて移動する。
【0034】
シャッタ42,42が閉じられ、エアノズル6の電極62に電圧が印加されると共にファン53が作動し、収容空間Sのエアがメッシュ52を介して流路Rに吸引され、流路Rに吸引されたエアはフィルタ54を通過し、エア中の塵埃が除去された状態でエアノズル6に供給される。エアノズル6に供給されたエアは、電極62により形成された電界の作用を受けてイオン化した状態で収容空間Sに吐出される。
【0035】
ノズル6から吐出されたエアは、メッシュ52を介して吸引されることにより、例えば図4に矢印で示したような気流が容器C1の周囲に形成される。容器C1の表面の静電気が、前記エアの気流に含まれるイオンにより中和されて弱まると、容器Cに付着する塵埃の容器C1への付着力が弱まり、こうして付着力が弱まった塵埃は気流に乗って容器C1から除去される。このように塵埃を含んだエアは再度流路Rに流入し、フィルタ54を通過する際にその含まれていた塵埃が除去され、その後再びエアノズル6から収容空間Sに吐出される。
【0036】
図7(b)に示すようにスタッカークレーン3が、例えば次に容器C1の製剤原料に対して処理を行う処理室の前に位置すると共にリフト33がその処理室のドア26の前に移動すると、エアノズル6の電極62への電圧の印加及びファン53の動作が停止し、収容空間Sにおけるエアの吐出が停止する。
【0037】
エアの吐出が停止すると、処理室のドア26及びクレーン3のエアシャワー部4におけるその処理室に向かうシャッタ42,42が開かれ、搬送台34がその処理室に向けて移動し、処理室の載置部25に容器C1が受け渡される(図7(c))。その後、搬送台34が後退すると共にドア26及びシャッタ42,42が閉じられ、容器C1は処理室内の搬送機構により処理部へ搬送され、その容器C1内の製剤原料が所定の処理を受ける。
【0038】
このように容器C1を所定の処理室に搬送した後、続けてスタッカークレーン3は、例えば次に容器C1とは異なる成分の粉体を含んだ医薬品の製剤原料が充填された容器C(便宜上、以降C2と表記する)に対して処理を行う処理室あるいはその容器C2が保管される中間保管室の前に移動すると共にリフト33が、その処理室(中間保管室)のドア26に対応する高さに移動する。その後、処理室(中間保管室)のドア26が開くと共に容器C1が受け渡される場合と同様にクレーン3の各部が動作し、スタッカークレーン3の搬送台34に容器C2が受け渡される(図8(a),(b))。
【0039】
その後、容器C2がエアシャワー部4の収容空間Sに収容され、ドア26が閉じられると共にシャッタ42,42が閉じて収容空間Sが密閉空間となると、スタッカークレーン3は、次に容器C2の製剤原料に対して処理を行う処理室の前に向けて移動する。この移動が開始されると、容器C1を搬送する場合と同様に、エアノズル6の電極62に電圧が印加されると共にファン53が作動し、容器C2の周囲に気流が形成され、容器C2に付着した塵埃が除去される。
【0040】
図8(c)に示すように前記処理室の前にスタッカークレーン3が位置すると共にリフト33がその処理室のドア26の前に移動すると、エアノズル6の電極62への電圧の印加及びファン53の動作が停止し、収容空間Sにおけるエアの吐出が停止した後、処理室のドア26が開かれ、スタッカークレーン3のエアシャワー部4から処理室に容器C2が受け渡される(図9)。
【0041】
このようにスタッカークレーン3は、夫々所定の搬送経路に従って中間処理部と処理室との間あるいは処理室間において容器C1,C2の受け渡しを行い、この受け渡しを行う間に収容空間S内に気流が形成されて容器C1,C2に付着した塵埃の除去が行われる。
【0042】
上記実施形態によれば、スタッカークレーン3は、搬送台34及び搬送用容器Cを収容する密閉された収容空間Sを形成する筺体41と、前記収容空間Sに収容された搬送用容器Cにエアを吐出し、搬送用容器Cに付着した塵埃を除去するためのエアノズル6と、このエアノズル6よりも流路Rの上流側に設けられた塵埃除去用のフィルタ54と、メッシュ52の各孔を介して収容空間Sのエアを吸引し、流路Rの上流側に供給するファン53とを備えている。このように構成することによって例えば、搬送用容器Cが処理室間を移動する間に密閉された前記収容空間S内に気流が形成され、その気流に乗って各搬送用容器Cに付着した医薬品の製剤原料などの粉体が除去される。従って製剤原料の付着が抑えられた状態で搬送用容器Cを処理室に受け渡すことができるため、各処理室の受け渡し口にエアシャワー装置を設けるような場合に比べて安価に、搬送用容器C間でクロスコンタミネーションを抑えることができ、各製品の品質の低下を抑えることができる。なお製剤原料の粉体の他にそれ以外の塵埃も除去されるため、受け渡し口及び処理室がそれらの塵埃により汚染され、製品の品質が低下することを抑えることができる。
【0043】
また上記実施形態においてはエアノズル6にイオナイザーを組み合わせて設けて、当該ノズル6からイオン化したエアを吐出しているため、容器Cの表面における静電気の量を抑えることができる結果として、より確実に当該容器Cに付着した塵埃の除去を行うことができる。なおイオナイザーは流路Rに組み合わせて設けられていてもよい。
【0044】
なお上記実施形態において、通路23は所定の清浄度に保たれている、つまりクリーンルームとして構成されているが、上述のように通路23を搬送中に容器Cにエアが吐出され、また各処理室の受け渡し口とスタッカークレーン3との受け渡しをクリーンな環境で行うことができるのならば、通路23はこのようにクリーンルームとして構成することに限られず、またその清浄度を下げてもよい。
【0045】
また上記実施形態ではエアに高電圧を印加するイオナイザーの例を示したが、これはイオナイザーの一例であり、イオン化源は高電圧に限られるものではなく、本発明にはイオナイザーとして軟X線、低エネルギー電子線、紫外線を利用したもの等、種々の方式を採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のスタッカークレーンが設けられた工場の斜視図である。
【図2】前記スタッカークレーンの斜視図である。
【図3】前記スタッカークレーンと前記工場の処理室との間で搬送用容器が受け渡される様子を示した説明図である。
【図4】前記スタッカークレーンに設けられたエアシャワー部の縦断正面図である。
【図5】前記スタッカークレーンに設けられたエアシャワー部の縦断側面図である。
【図6】前記エアシャワー部に設けられたノズルの構成を示した説明図である。
【図7】前記スタッカークレーンにより搬送用容器が搬送される工程を示した工程図である。
【図8】前記スタッカークレーンにより搬送用容器が搬送される工程を示した工程図である。
【図9】前記スタッカークレーンにより搬送用容器が搬送される工程を示した工程図である。
【図10】従来のスタッカークレーン及び前記スタッカークレーンとの間で搬送用容器を受け渡す処理室の構成を示した説明図である。
【符号の説明】
【0047】
24 壁
25 載置部
26 ドア
3 スタッカークレーン
31 基部
32 柱部
33 リフト
34 搬送台
4 エアシャワー部
41 筺体
53 ファン
54 フィルタ
6 エアノズル
C 搬送用容器
R 流路
S 収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送体の載せ降ろしを行う受け渡し手段を壁面に沿って移動させ、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送体の受け渡しを行う塵埃除去機能付きスタッカークレーンにおいて、
前記受け渡し手段及び被搬送体を収容する密閉された収容空間を形成する筺体と、
この筺体に設けられた、被搬送体の受け渡しのために設けられた開閉手段と、
前記収容空間に収容された被搬送体にエアを吐出し、被搬送体に付着した塵埃を除去するためのエアノズルと、
このエアノズルよりもエア流路の上流側に設けられた塵埃除去用のフィルタと、
その一端が収容空間に臨む吸引口をなす吸引路と、
この吸引路に設けられた吸引手段と、
を備えたことを特徴とする塵埃除去機能付きスタッカークレーン。
【請求項2】
吸引路は、他端側が前記エアノズルに連通してエアの循環路を構成していることを特徴とする請求項1記載の塵埃除去機能付きスタッカークレーン。
【請求項3】
前記エアノズルまたはエア流路には、イオナイザーが組み合わされて設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の塵埃除去機能付きスタッカークレーン。
【請求項4】
被搬送体は、固形物を収納するための容器であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の塵埃除去機能付きスタッカークレーン。
【請求項5】
固形物は固形製剤原料であることを特徴とする請求項4記載の塵埃除去機能付きスタッカークレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−50141(P2008−50141A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229641(P2006−229641)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】