説明

塵芥収集車

【課題】塵芥収容箱における塵芥が積み込まれる空間の容積を大きくし、且つ排出板に大きな推力を作用させる。
【解決手段】塵芥収容箱11内に積み込まれた塵芥を開口部14を介して排出するための塵芥排出装置30が、塵芥収容箱11内を塵芥が積み込まれる出入口14側の空間32とその反対側の奥側空間33とに区画し、該塵芥収容箱11内を奥行方向に移動可能に設けられた排出板31と、奥側空間33に設けられ、伸長により排出板31を出入口14側へ移動させる排出シリンダ34と、奥側空間33に設けられた補助シリンダ38とを備え、補助シリンダ38の伸長により、補助シリンダ38の出力が排出板31に開口部14側への推力として付与される構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収容箱内の塵芥を排出するための塵芥排出装置を備える塵芥収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭ごみや産業廃棄物等の塵芥を収集するため、車体上に塵芥収集装置を搭載した塵芥収集車が広く利用されている。塵芥収集装置は、収集した塵芥が投入される塵芥投入箱の前部に塵芥収容箱が連設されて構成され、塵芥収容箱の後部には塵芥を積込/排出用の出入口が形成されている。塵芥投入箱には、投入された塵芥を出入口を介して塵芥収容箱内に積み込む塵芥積込装置が装備され、塵芥収容箱には、積み込まれた塵芥を出入口を介して外部に排出する塵芥排出装置が装備されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の塵芥排出装置は、塵芥収容箱内で前後に移動可能な排出板を有し、この排出板によって塵芥収容箱の内部空間が出入口側の塵芥収容空間とその反対側の奥側空間とに区画されている。奥側空間には排出シリンダが設けられており、排出シリンダの伸縮により排出板が前後に移動して塵芥収容空間の容積が変化する。
【0004】
積込動作の初期には、排出シリンダのストロークを最大にして排出板を可動範囲の後端に位置させて塵芥収容空間の容積を最小にしておく。出入口を介して積み込まれる塵芥は、順次この塵芥収容空間に収容されて排出板を前方に押圧する。この押圧力に基づき排出シリンダが収縮して排出板が前方に移動し、塵芥収容空間の容積が拡大される。排出シリンダのストロークが最小となって排出板が可動範囲の前端まで移動すると、塵芥収容空間の容積が最大となり、塵芥収容箱内に塵芥が満載された状態となる。
【0005】
排出動作においては、排出シリンダが伸長して排出板が後方に移動する。これにより塵芥収容空間の容積が縮小し、塵芥収容箱内の塵芥が出入口を介して外部に排出される。
【特許文献1】実登2560578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この排出動作において排出シリンダの出力を排出板の推力に有効活用するには、排出シリンダが前後に水平に延設されて排出板の移動方向である前後方向に伸縮可能になっていることが好ましい。しかし、このように配置すると、排出板の奥側空間に確保すべき排出シリンダの配置スペースが前後方向に大きくなり、排出板の可動範囲が縮まる。このため、塵芥収容空間の最大容積が小さくなり、塵芥収集装置における塵芥の収容能力が低下する。
【0007】
このような配置のまま収容能力を向上させるには、塵芥収容箱自体を前後方向に大きくしなければならない。大型となった塵芥収容箱を車体上に搭載するには、例えば軸距を大型にする必要が生じるなど、塵芥収集車全体の大型化を招く。
【0008】
ここで、排出シリンダの一端を塵芥収容箱に揺動可能に取り付けて他端を排出板の前面側に揺動可能に取り付け、排出シリンダを水平面に対して傾斜させて配置すると、配置スペースが前後方向に小さくなり、収容能力の低下を避けることができる。このように配置した場合には、排出シリンダの出力のうち水平方向の分力が排出板の推力となる。
【0009】
しかし、収容能力を向上させるべく水平面に対する排出シリンダの傾斜角を大きくすればするほど、排出シリンダの出力に対する水平方向の分力が小さくなり、排出板の推力を得にくくなる。これにより、排出板の移動速度の低下や排出シリンダの負荷の増大を招き、塵芥を効率的に排出することが困難になる。
【0010】
また、このように配置すると、排出シリンダのストロークが短いときほど、揺動支点同士が前後方向に近づき水平面に対する排出シリンダの傾斜角が大きくなる。排出板が可動範囲のうち奥側に位置している排出動作の初期には、この排出シリンダの傾斜角が大きくなっている上、排出すべき塵芥の重量が大きく、排出板に大きな推力を付与する必要がある。このため、特に動作初期においては塵芥を効率的に排出することが困難となる。
【0011】
そこで、本発明は、塵芥の収容能力の向上と効率的な塵芥の排出とを両立可能な塵芥収集車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る塵芥収集車は、車体上に搭載された塵芥収容箱と、該塵芥収容箱の後方開口部に傾動自在に連設された塵芥投入箱と、複数の油圧アクチュエータにより駆動されて前記塵芥投入箱内に投入された塵芥を前記後方開口部を介して前記塵芥収容箱内に積み込む塵芥積込装置と、該塵芥収容箱内に積み込まれた塵芥を前記後方開口部を介して排出する塵芥排出装置とを備える塵芥収集車であって、前記塵芥排出装置は、前記塵芥収容箱内を塵芥が積み込まれる開口部側の空間とその反対側の奥側空間とに区画し、該塵芥収容箱内を奥行方向に移動可能に設けられた排出板と、前記奥側空間に設けられ、伸長により前記排出板を開口部側へ移動させる排出シリンダと、前記奥側空間に設けられた補助シリンダとを備え、該補助シリンダの伸長により、該補助シリンダの出力が前記排出板に開口部側への推力として付与される構成であることを特徴としている。
【0013】
かかる構成によれば、補助シリンダの出力が排出板の推力として活用されるため、排出シリンダを排出板の移動方向に対して従来に比べて大きく傾斜させても排出板を開口部側にスムーズに移動させることができ、効率的に塵芥を排出することができるようになる。このように排出シリンダを配置することにより、奥側空間に確保すべき排出シリンダの配置スペースが塵芥収容箱の奥行方向に小さくなり、排出板の可動範囲を奥側に広げることができる。このため、塵芥が積み込まれる開口部側の空間の最大容積を大きくすることができ、塵芥収容箱を大型化させずに塵芥の収容能力を向上させることができる。
【0014】
前記補助シリンダの基端部は前記塵芥収容箱の奥部に固定され、前記補助シリンダの先端部は前記排出板に接離可能になっている。かかる構成によれば、補助シリンダの取付構造を簡易にして補助シリンダによる推力付与を実現できる。
【0015】
前記排出シリンダのストロークが最小の状態から所定長となるまで伸長する間に、前記補助シリンダが伸長して前記補助シリンダの先端部が前記排出板の奥側の面を押圧することによって、前記排出板に開口部側への推力が付与される構成となっている。かかる構成によれば、開口部側の空間が最大容積となって塵芥が満載されている状態から所定距離だけ排出板を開口部側へ移動させるまでの間の排出動作の初期に、補助シリンダによる推力付与が行われて排出板をスムーズに移動させ、効率的に塵芥を排出することができる。
【0016】
前記排出板が開口部側に向けて傾斜する傾斜部を有し、前記排出板が可動範囲のうち奥側の可動限界に位置している状態において該傾斜部の奥側に形成される空間内に、前記補助シリンダが収容されていてもよい。かかる構成によれば、従来同様傾斜部を有し、開口部側の空間内に満遍なく塵芥を積み込むことができる。この傾斜部の奥側に形成される塵芥を収容できない空間を利用して補助シリンダを配置しているため、補助シリンダの配置スペースを確保するために奥側空間を塵芥収容箱の奥行方向に大きくする必要がない。すなわち、補助シリンダの設置にあたって塵芥の収容能力の低下を防ぐことができる。
【0017】
前記傾斜部の奥側に形成される空間内に、前記補助シリンダがストロークを最小にして収容されていてもよい。かかる構成によれば、補助シリンダの全ストロークにおいて排出板に推力を付与することができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明に係る塵芥収集車によれば、塵芥収容箱を大型化させずに塵芥の収容能力を向上させることができるとともに、塵芥の排出を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。以下の説明における方向の概念は、車両の前後方向、左右方向及び上下方向と一致している。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係る塵芥収集車を示す左側面図である。図1に示すように、塵芥収集車1は、前部にキャブ2を有したトラック車両をベースに構成されている。キャブ2の下部からは後方へと車体フレーム5が延びており、この車体フレーム5の上に塵芥収集装置10が架装されている。キャブ2内には塵芥収集装置10を作動操作するためのスイッチ類を備えた前部操作ユニット51が設けられ、塵芥収集装置10の後部には同様のスイッチ類を備えた後部操作ユニット52が設けられている。
【0021】
車体フレーム5上にはメインフレーム6が設けられ、塵芥収集装置10は、メインフレーム6上の塵芥収容箱11の後部に塵芥投入箱12が連設されて構成される。塵芥収容箱11は略直方体状に形成され、キャブ2の直後からサブフレーム6の後端に至るまでを前後方向に延在している。塵芥投入箱12は塵芥収容箱11の後上端部に傾動可能に取り付けられている。塵芥収容箱11と塵芥投入箱12の間には左右一対の回動シリンダ13が連結され、この回動シリンダ13の伸縮により、塵芥投入箱12が塵芥収容箱11の後部を覆う閉鎖位置(実線参照)と、上方へ引き上げられた開放位置(二点鎖線参照)との間で傾動する。
【0022】
図2は図1に示す塵芥収集装置10の内部構造を示す左側面図である。図2に示すように、塵芥収容箱11の後面には、塵芥を積込/排出するための出入口(後方開口部)14が開口している。塵芥投入箱12の後面には、塵芥を投入するための投入口15が形成されている。塵芥投入箱12の内下部には投入された塵芥を貯留可能な貯留室16が形成され、塵芥投入箱12の前面には貯留室16を前方に開放する前面開口17が形成されている。塵芥投入箱12が図示する閉鎖位置にあるとき、貯留室16は前面開口17及び出入口14を介して塵芥収容箱11内に連通する。
【0023】
また、塵芥投入箱12には、貯留室16内の塵芥を塵芥収容箱11内に積み込むための塵芥積込装置20が装備されている。塵芥積込装置20は、塵芥投入箱12の両側壁に設けられた左右一対のガイドレール21を備えている。このガイドレール21は溝形鋼からなり、前方上部から後方下部に向かって傾斜している。ガイドレール21の溝内には摺動板22の上下左右の各端部に取り付けられたガイドローラ23が転動自在に嵌合されており、ガイドローラ23が溝内で転動することによって摺動板22がガイドレール21に沿って塵芥投入箱12内で昇降可能になっている。
【0024】
摺動板22の背面上部には、ブラケットを介して左右一対の枢軸24が設けられている。これら枢軸24は、塵芥投入箱12の両側壁に形成された図示しないスリットを介して塵芥投入箱12の外側に突出しており、塵芥投入箱12の外側には、ロッド部がこの枢軸24の外側端部に連結されてヘッド部が塵芥投入箱12の外面側に連結された左右一対の昇降シリンダ25が配設されている(図1も参照)。この昇降シリンダ25の伸縮により摺動板22がガイドレール21に沿って昇降する。
【0025】
摺動板22の下端部には、塵芥投入箱12の幅方向全体に亘って延在する押込板26が揺動可能に連結されている。押込板26は塵芥を圧縮するための圧縮面27を有し、その背面側に支持片28が突出している。塵芥投入箱12の内部には、ヘッド部がこの支持片28に連結されてロッド部が前述した枢軸24の内端部に連結された押込シリンダ29が配設されている。この押込シリンダ29の伸縮により、押込板26は、支持片28が下方に押し下げられて圧縮面27を前方に向けた圧縮限界位置と、支持片28が上方に引き上げられて圧縮面27を下方に向けた反転限界位置との間で揺動する。
【0026】
この塵芥積込装置20により、貯留室16内に投入された塵芥は後述するように塵芥収容箱11内に積み込まれる。
【0027】
塵芥収容箱11には、塵芥積込装置20により内部に積み込まれた塵芥を出入口14を介して外部に排出するための塵芥排出装置30が装備されている。この塵芥排出装置30は、塵芥収容箱11の内部空間の横幅及び上下高さと略同一寸法に形成された排出板31を備えている。この排出板31により、塵芥収容箱11の内部空間は、出入口14に面した塵芥収容空間32とその反対側の奥側空間33とに区画される。塵芥投入箱12側からの塵芥は、この塵芥収容空間32内に積み込まれていくこととなる。
【0028】
塵芥収容箱11の内底面11aには、前後方向に延びる左右一対のガイドレール(図示略)が設けられており、排出板31はこのガイドレールに支持されて前後方向に水平移動可能になっている。排出板31を駆動するため、奥側空間33の左右中央部には1本の排出シリンダ34が設けられている。本実施形態では排出シリンダ34は4段式のテレスコープ型油圧シリンダを例示しており、ヘッド部34aと、第1乃至第4ロッド部34b,34c,34d,34eとを備えている。但し、排出シリンダ34は4段式に限らず、塵芥収容箱11の前後長等に応じて3段式にする等、適宜その段数を変更可能である。
【0029】
排出板31の下部には後方下部に向けて傾斜する傾斜板(傾斜部)31aが設けられており、排出シリンダ34のヘッド部34aはこの傾斜板31aの前面下端部に取り付けられたブラケット35に揺動可能に連結されている。排出シリンダ34の第4ロッド部34eは塵芥収容箱11の最奥部に取り付けられたブラケット36に揺動可能に連結されている。ヘッド部34a側の揺動支点34fと、ロッド部34e側の揺動支点34gとは、互いに所定距離だけ上下に離れて配置されているため、排出シリンダ34は全ストロークにおいて水平面に対して傾斜した姿勢をとるようになっている。
【0030】
排出シリンダ34が伸長すると、排出板31が後方へ移動し、塵芥収容空間32の容積が小さくなる。二点鎖線で示すように、排出シリンダ34のストロークが最長となると、排出板31が可動範囲の後方限界位置に位置して出入口14の直前に配され、塵芥収容空間32の容積が最小となる。このとき、排出シリンダ34の水平面に対する傾斜角が最小となる。逆に排出シリンダ34が収縮すると、排出板31が前方へ移動して塵芥収容空間32の容積が大きくなる。実線で示すように、排出シリンダ34のストロークが最短になると、排出板31が可動範囲の前方限界位置に位置して塵芥収容箱11の内奥面11bの直前に配され、塵芥収容空間32の容積が最大となる。このとき、排出シリンダ34の水平面に対する傾斜角が最大となる。
【0031】
排出板31がこの前方限界位置にあるとき、奥側空間33の一部として、傾斜板31aの前側に塵芥を収容できない側面視三角形状のデッド空間37が形成される。このデッド空間37内には1本の補助シリンダ38が収容されている。補助シリンダ38は、デッド空間37内で排出シリンダ34と干渉しないように配置されていればよく、例えば排出シリンダ34と並んで配置されてもよいし平面視で重なるように配置されてもよい。
【0032】
補助シリンダ38のヘッド部38aは塵芥収容箱11の内奥面11aに当接して固定され、補助シリンダ38のロッド部38bはこの内奥面11bから後方に延びて自由端をなしており、簡易な構造により補助シリンダ38の取り付けが行われている。補助シリンダ38は、排出板31が前方限界位置にあるときにデッド空間38内でストロークが最小となるよう収縮した状態で収容されている。このとき、ロッド部38bの先端に嵌着されたシリンダ保護用のキャップ39が、前方限界位置にある排出板31の傾斜板31aの前面に当接する。
【0033】
図3は図2に示す塵芥積込装置20及び塵芥排出装置30を作動させるための油圧回路図である。図3に示すように、オイルリザーバT内の作動油は、PTO4により取り出された走行用エンジン3の動力により駆動される油圧ポンプPより吐出される。油圧ポンプPが吐出した圧油は、各油圧アクチュエータ25,29,34,38に対する圧油の給排を制御するバルブアセンブリVに供給される。
【0034】
バルブアセンブリVは、昇降シリンダ25を作動させるための昇降制御弁V1、押込シリンダ29を作動させるための押込制御弁V2、及び排出シリンダ34を作動させるための排出制御弁V3を備える。これら制御弁V1〜V3は油圧ポンプPに対して直列に接続された3位置電磁方向切換弁であり、昇降制御弁V1はソレノイドSOLa,SOLbを、押込制御弁V2はソレノイドSOLc,SOLdを、排出制御弁V3はソレノイドSOLe,SOLfを夫々有している。
【0035】
また、バルブアセンブリVは、第1乃至第3リリーフ弁PR1,PR2,PR3を備えている。第1リリーフ弁PR1は、押込シリンダ29の背圧側油室40と押込制御弁V2とを接続する油路41に接続され、この背圧側油室40に作用する圧力が所定の第1リリーフ圧(例えば約30MPa)に達すると圧油をオイルリザーバTに解放し、押込シリンダ29の安全弁として機能する。第2リリーフ弁PR2は、排出シリンダ34の背圧側油室42と排出制御弁V3とを接続する油路43に接続され、この背圧側油室42に作用する圧力が所定の第2リリーフ圧(例えば約17MPa)に達すると圧油をオイルリザーバTに解放し、排出シリンダ34の安全弁として機能する。第3リリーフ弁PR3は、この油路43に絞り44を介して接続され、排出シリンダ34の背圧側油室42に作用する圧力が第2リリーフ圧より低圧の第3リリーフ圧(例えば約7MPa)に達すると圧油をオイルリザーバTに解放し、後述するように排出板31の前方移動を制御する。
【0036】
この油路43には、分岐油路45を介して補助シリンダ38のロッド側油室46が接続されており、排出制御弁V3と排出シリンダ34のロッド側油室47とを接続する油路48には、分岐油路49を介して補助シリンダ38のピストン側油室50が接続されている。このため、補助シリンダ38は、排出制御弁V3や第2及び第3リリーフ弁PR2,PR3の動作に基づいて排出シリンダ34と共に作動する。
【0037】
以下、図3を参照しつつ図4〜図6に基づいて塵芥収集装置10の動作を説明する。
【0038】
図4(a)〜(d)は塵芥積込装置20による積込動作の説明図である。図4(a)に示すように、塵芥積込装置20の初期状態においては、昇降シリンダ(図4(a),(b)では図示せず)及び押込シリンダ29が伸長しているため、摺動板22が上昇限界位置に、押込板26が圧縮限界位置にある。前部操作ユニット51(図1参照)には、積込と排出のいずれの動作を行うのか選択する切換スイッチが設けられており、まず、図示しない作業者によりこの切換スイッチが積込側に選択操作される。その後投入口15を介して貯留室16内に塵芥が投入され、後部操作ユニット52(図1参照)に設けられた塵芥積込装置20の始動スイッチが押圧操作される。
【0039】
始動スイッチが操作されると、ソレノイドSOLcが通電されて押込制御弁V2の位置が切り替わる。これにより、押込シリンダ29が収縮して押込板26が反転限界位置まで揺動する。
【0040】
図4(b)に示すように押込板26が反転限界位置に達すると、ソレノイドSOLcへの通電が解除されて押込制御弁V2が中立位置に戻り、ソレノイドSOLaが通電されて昇降制御弁V1の位置が切り替わる。これにより、昇降シリンダが収縮して摺動板22が下降限界位置まで下降する。この下降行程において、投入された塵芥が、押込板26の圧縮面27と貯留室16の底面との間で押し潰される。
【0041】
図4(c)に示すように押込板26が下降限界位置に達すると、ソレノイドSOLaへの通電が解除されて昇降制御弁V1が中立位置に戻り、ソレノイドSOLdが通電されて押込制御弁V2の位置が切り替わる。これにより、押込シリンダ29が伸長して押込板26が圧縮限界位置まで揺動する。この圧縮行程において、下降行程で押し潰された塵芥が、押込板26の圧縮面27と貯留室16の前面との間で二次的に圧縮される。
【0042】
図4(d)に示すように押込板26が圧縮限界位置に達すると、ソレノイドSOLdへの通電が解除されて押込制御弁V2が中立位置に戻り、ソレノイドSOLbが通電されて昇降制御弁V1の位置が切り替わる。これにより、圧縮面27が前方を向いたまま昇降シリンダ25が伸長して摺動板22が上昇限界位置まで上昇する。この押込行程において、圧縮行程で圧縮された塵芥は、前方を向いた圧縮面27により貯留室16の前面に沿って上方へ押し上げられ、前面開口17及び出入口14を介して塵芥収容箱11の塵芥収容空間32内に積み込まれる。この押込行程が終了すると、図4(a)に示すように塵芥積込装置20が初期状態に戻り、この一連の積込動作が終了する。
【0043】
図5(a)〜(c)は塵芥排出装置30による収容動作の説明図である。図5(a)に示すように、塵芥排出装置30の初期状態においては、排出シリンダ34が伸長して排出板31が後方限界位置にあり、塵芥収容空間32の容積が最小となっている。また、補助シリンダ38のストロークも最大となっている。排出板31の下部には後方に傾斜する傾斜板31aが設けられているため、後方から積み込まれた塵芥はこの傾斜板31aの傾斜に沿って上方へと案内される。
【0044】
このため、図5(b)に示すように、塵芥収容空間32には、塵芥が上下に満遍なく積み込まれていく。塵芥が積み込まれ続けると、塵芥収容空間32内の塵芥によって排出板31が前方へと押圧される。この塵芥からの押圧力は排出シリンダ34によって支持されており、積み込まれる塵芥量が大きくなるに連れて押圧力が増大すると、排出シリンダ34の背圧側油室42内の圧力が増加する。この圧力が上記第3リリーフ圧を超えると第3リリーフ弁PR3が動作して背圧側油室42内の圧油がオイルリザーバTに解放され、排出シリンダ34が収縮して排出板31が前進する。これにより塵芥収容空間32の容積が拡大され、塵芥から排出板31に作用する押圧力が小さくなる。背圧側油室42内の圧力が第3リリーフ圧以下になると圧油の解放が停止して、排出シリンダ34の前方移動が停止する。この第3リリーフ弁PR3の動作に伴い、補助シリンダ38も同様にして背圧側油室46内の圧油が解放されて収縮する。
【0045】
図5(c)に示すように排出シリンダ34及び補助シリンダ38が全縮状態となるまで排出板31は前方へ移動可能であり、このように排出板31が前方限界位置にあるときには、塵芥収容空間32の容積が最大となり、塵芥収容箱11内に塵芥が満載された状態となる。
【0046】
図6(a)〜(c)は塵芥排出装置30による排出動作の説明図である。ここでは、塵芥収容箱11内に塵芥が満載された状態からその塵芥を排出する場合を例示する。まず、キャブ2内の前部操作ユニット51(図1参照)に設けられた切換スイッチが排出側に選択操作され、塵芥投入箱12が開放位置まで傾動して塵芥収容箱11の出入口14が開放される。前部操作ユニット51(図1参照)には排出シリンダ34の伸縮を操作する排出操作スイッチが設けられており、次いでこの排出操作スイッチが伸長側に選択操作される。
【0047】
排出操作スイッチがこのように操作されると、ソレノイドSOLfが通電されて排出制御弁V3の位置が切り替わる。これにより、油圧ポンプPが油路43と接続されると共に油路48がオイルリザーバTと接続され、排出シリンダ34及び補助シリンダ38が伸長する。
【0048】
図6(a)に示すように、排出シリンダ34は、排出板31が前方限界位置にあるときにおいてその軸線が傾斜角θmxだけ水平面に対して傾斜しているため、この傾斜方向に出力Fを発生する。このため、排出シリンダ34からはこの出力Fの水平方向の分力Fcosθmxが排出板31に対する推力として付与される。また、補助シリンダ38は、ロッド部38bの伸長方向である後方に出力F′を発生する。このため、排出板31にはこの補助シリンダ38の出力F′がそのまま推力として付与される。このように排出板31に対してはこれらの合力が推力として付与されるため、塵芥が満載されたときであっても排出動作の初動が円滑に行われる。
【0049】
そして、図6(b)に示すように補助シリンダ38が全伸状態となると、その後は、排出シリンダ34の出力のうち水平方向の分力のみが排出板31に後方への推力として付与される。但し、排出シリンダ34が伸長する分だけ、排出シリンダ34の軸線の水平面に対する傾斜角θが小さくなるため、排出シリンダ34のストロークが長くなるほどその出力Fに応じた分力Fcosθが大きくなる。また、排出板31が後方へ移動する分だけ積み込まれていた塵芥が出入口14を介して外部に排出されるため、塵芥収容空間32内に残る塵芥の量も小さくなっている。このため、ある程度排出板31が後方へ移動した後は、補助シリンダ38からの出力が排出板31を後方へ移動させる推力として付与できなくなっても、排出シリンダ34からの出力Fのみに基づいて排出板31を円滑に後方へ移動させることができる。なお、補助シリンダ38は排出板31の移動方向である後方に伸長するよう取り付けられているため、補助シリンダの出力F′を排出板31の推力として有効に活用することができる。
【0050】
図6(c)に示すように、排出シリンダ34のストロークが最長となって排出板31が前方限界位置に達すると、塵芥収容箱11内に積み込まれていた塵芥が全て排出され、排出作業が終了する。
【0051】
このように、本実施形態によれば、排出シリンダ34の出力Fに対する水平方向の分力Fcosθmxが小さくても、すなわち、シリンダ軸線の傾斜角θmxを大きくして排出シリンダ34を起立するよう配置しても、補助シリンダ38の出力F′により排出板31を円滑に後方へ移動させることができる。このため、排出動作を効率よく行うことができ、且つ、奥側空間33に確保すべき排出シリンダ34の配置スペースを小型化して塵芥収容空間32の最大容量を大きくすることができる。このため、塵芥の収容能力を向上させるために塵芥収容箱11の前後長を大きくする必要がなく、塵芥収集車1全体の大型化も避けることができる。
【0052】
この補助シリンダ38は、排出板31の傾斜板31aの奥側に形成されるデッド空間37内に収容されている。このため、補助シリンダ38を新たに設けるにあたり、補助シリンダ38の配置スペースを奥側空間33に確保する必要がなく、塵芥の収容能力が低下しない。そして、補助シリンダ38は、デッド空間38内にストロークが最小の状態で収容されるため、補助シリンダ38の全ストローク(すなわち図6(a)に示す状態から図6(b)に示す状態となるまでの間)において排出板31に対して推力を付与することができるようになる。
【0053】
また、補助シリンダ38は、排出シリンダ34を作動させるために設けられた排出制御弁V3、第2及び第3リリーフ弁PR2,PR3によって駆動される。このため、補助シリンダ38を新たに設けるにあたり、バルブアセンブリVの構成が複雑にならない。なお、排出シリンダ34と補助シリンダ38は共に奥側空間33内に配置されるため、分岐油路45,49の取り回しもコンパクトになる。一方、補助シリンダ38には新たに専用の制御弁を設け、排出シリンダ34とは別に動作制御を行うようにしてもよい。
【0054】
上記実施形態は本発明の範囲を逸脱しない限り適宜変更可能である。例えば補助シリンダ38は単動型でもよいしその本数も1本に限らない。また、ここでは排出板31がその可動範囲のうち奥側にあって排出シリンダ34のストロークが最短の状態から所定長伸長するまでの間において、補助シリンダ38による推力付与を行う構成を例示したが、補助シリンダ38が排出板31の全可動範囲において排出板31に対して推力を付与可能に構成してもよい。また、塵芥積込装置20は上記のように所謂圧縮型に限らず、所謂回転型やスクリュー型でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、排出板及び排出シリンダを備える塵芥排出装置を有した塵芥収集車に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係る塵芥収集車を示す左側面図である。
【図2】塵芥収集装置の構成を示す左側面図である。
【図3】塵芥積込装置及び塵芥排出装置を作動させるための油圧回路図である。
【図4】塵芥積込装置による積込動作の説明図であり、(a)は初期状態及び押込行程、(b)は反転行程、(c)は下降行程、(d)は圧縮行程を示している。
【図5】塵芥排出装置による収容動作の説明図であり、(a)は初期状態、(b)は塵芥が排出板を前方へ押圧する状態、(c)は塵芥が満載された状態を示している。
【図6】塵芥排出装置による排出動作の説明図であり、(a)は排出シリンダ及び排出シリンダが全縮した状態を例とする初期状態、(b)は補助シリンダが全伸した状態、(c)は排出シリンダが全伸した状態を示している。
【符号の説明】
【0057】
1 塵芥収集車
5 車体フレーム(車体)
10 塵芥収集装置
11 塵芥収容箱
12 塵芥投入箱
14 出入口(後方開口部)
20 塵芥積込装置
30 塵芥排出装置
31 排出板
31a 傾斜板(傾斜部)
32 塵芥収容空間
33 奥側空間
34 排出シリンダ
37 デッド空間
38 補助シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に搭載された塵芥収容箱と、該塵芥収容箱の後方開口部に傾動自在に連設された塵芥投入箱と、複数の油圧アクチュエータにより駆動されて前記塵芥投入箱内に投入された塵芥を前記後方開口部を介して前記塵芥収容箱内に積み込む塵芥積込装置と、該塵芥収容箱内に積み込まれた塵芥を前記後方開口部を介して排出するための塵芥排出装置とを備える塵芥収集車であって、
前記塵芥排出装置は、
前記塵芥収容箱内を塵芥が積み込まれる開口部側の空間とその反対側の奥側空間とに区画し、該塵芥収容箱内を奥行方向に移動可能に設けられた排出板と、
前記奥側空間に設けられ、伸長により前記排出板を開口部側へ移動させる排出シリンダと、
前記奥側空間に設けられた補助シリンダとを備え、
該補助シリンダの伸長により、該補助シリンダの出力が前記排出板に開口部側への推力として付与される構成であることを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
前記補助シリンダの基端部は前記塵芥収容箱の奥部に固定され、前記補助シリンダの先端部は前記排出板に接離可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項3】
前記排出シリンダのストロークが最小の状態から所定長となるまで伸長する間に、前記補助シリンダが伸長して前記補助シリンダの先端部が前記排出板の奥側の面を押圧することによって、前記排出板に開口部側への推力が付与される構成となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塵芥収集車。
【請求項4】
前記排出板が開口部側に向けて傾斜する傾斜部を有し、
前記排出板が可動範囲のうち奥側の可動限界に位置している状態において該傾斜部の奥側に形成される空間内に、前記補助シリンダが収容されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塵芥収集車。
【請求項5】
前記傾斜部の奥側に形成される空間内に、前記補助シリンダがストロークを最小にして収容されていることを特徴とする請求項4に記載の塵芥収集車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−234769(P2009−234769A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85396(P2008−85396)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】