説明

増大した前眼部クリアランス速度を有するα−2アドレナリン受容体アゴニストを用いる眼科治療

【課題】眼科用組成物、およびα−2アドレナリン受容体作用物質の、その作用物質が投与される眼への持続放出をもたらすドラッグデリバリーシステム、並びに、例えば眼の症状の1またはそれ以上の症状を処置または低減して患者の視力を改善もしくは維持するための、そのような組成物およびシステムを製造および使用する方法の提供。
【解決手段】α2アドレナリン受容体アゴニストは、液体を含有する製剤および/または生分解性および/または非生分解性ポリマーインプラントおよび微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、それら全体で参照として組み込まれる米国特許出願第60/679、771号(出願日2004年5月10日)の利益を主張する。
【0002】
本発明は一般的には、前眼部排出のα−2アドレナリン受容体作用物質の、患者の眼を処置するための使用に関し、より具体的には眼科用組成物、およびα−2アドレナリン受容体作用物質の、その作用物質が投与される眼への持続放出をもたらすドラッグデリバリーシステム、並びに、例えば眼の症状の1またはそれ以上の症状を処置または低減して患者の視力を改善もしくは維持するための、そのような組成物およびシステムを製造および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
眼科治療では、αアゴニスト(例えば、αアドレナリン受容体のアゴニスト)が、房水生成を減少させるため、および繊維柱帯を経由する房水流出を増大させるために用いられている。繊維柱帯を経由する流出は眼の体液排出の約90%を占め、残りの約10%は、繊維柱帯のすぐ下の毛様体筋へ流れるブドウ膜強膜房水流出によってもたらされる。眼科治療に用いられるαアゴニストの2つの例に、アプラクロニジン(IOPIDINE)とブリモニジン−P(ΑGAN−P)がある。
【0004】
ブリモニジン、5−ブロモ−6−(2−イミダゾリジニリデンアミノ)キノキサリンは、α−2選択性アドレナリン受容体アゴニストであり、房水生成を減少し、ブドウ膜強膜房水流出を増すことにより、開放隅角緑内障を処置するのに有効である。アプラクロニジンは一般にα−1およびα−2の混合型刺激活性を有する。ブリモニジンは、2つの化合物形、酒石酸ブリモニジンおよびブリモニジン遊離塩基として、入手できる。酒石酸ブリモニジン(Alphagan P(登録商標))は、緑内障治療用にAllerganから市販されている。局所投与眼用ブリモニジン製剤、0.15%Alphagan P(登録商標)(カリフォルニア州Irvine、Allergan)は、開放隅角緑内障の治療のために、現在市販されている。酒石酸ブリモニジンの水への溶解度は、34mg/mLであり、ブリモニジン遊離塩基の水への溶解度は、非常に小さい。
【0005】
最近の研究によれば、ブリモニジンは、網膜および/または視神経においてα−2アドレナリン受容体を活性化することにより、損傷された網膜神経節神経細胞の生存を促進することができるとされている。例えば、ブリモニジンは、虚血および緑内障の数種のモデルにおいて、損傷されたニューロンを更なる損傷から保護できる。
【0006】
緑内障誘発神経節細胞変性は、失明の主要な原因である。このことは、ブリモニジンが、神経防護作用および眼圧低下が治療計画の重要な成果である緑内障管理に対する新しい治療手段に使用できることを示している。しかしながら、ブリモニジンにより視神経を保護するためには、ブリモニジンが、後眼部領域に治療レベルで接近する必要がある。ブリモニジンを後房に投与するのに現在使用できる技術は、この問題に対しては十分でない。
【0007】
患者の眼の硝子体へ投与される物質は、繊維柱帯流出やブドウ膜強膜流出を介するような、房水を介するクリアランスにより毛様小帯後隙への拡散(前眼部クリアランス)によって、または網膜を介する排出(後眼部クリアランス)によって、硝子体から排出される。比較的親水性〜適度に親油性である大部分の化合物は、それら化合物について輸送を促進または活性化するメカニズムが存在していなければ前者の経路(前眼部クリアランス)を利用する一方、極めて親油性である化合物や網膜を介する輸送メカニズムを伴う化合物は後者(即ち網膜を介して排出される)を利用する。例えば、巨大分子やペプチド(抗体を含む)は、しばしば前眼部経路を介して排出される。対して、存在するα2アドレナリン受容体アゴニストは、後眼部経路を介して排出される。これは外側血液網膜関門である網膜色素上皮における有機カチオン輸送メカニズムの結果である可能性が高い。残念ながら、網膜を介して排出される化合物は、硝子体における半減期が極めて短い。しかも、これらの化合物は、定常状態での房水/硝子体液濃度比が極めて低い傾向にある。このことは、そのような化合物の後眼部への投与からして、前眼部組織の処置に劇的な影響が及ぶ。
【0008】
治療物質の硝子体内送達は、液体を含んだ組成物を硝子体内に注射する、またはインプラントや微粒子等のポリマードラッグデリバリーシステムを硝子体内に入れることによって行うことができる。眼内に入れるための生体適合性インプラントの例は、米国特許第4,521,210号;同第4,853,224号;同第4,997,652号;同第5,164,188号;同第5,443,505号;同第5,501,856号;同第5,766,242号;同第5,824,072号;同第5,869,079号;同第6,074,661号;同第6,331,313号;同第6,369,116号;および同第6,699,493号等の数多くの特許に開示されている。
【0009】
他の眼科治療として、患者の眼周囲への点眼が挙げられる。眼の周囲の領域内への直接の薬物の侵入は血液網膜関門によって制限される。この血液網膜関門は、内側と外側の血液関門に解剖学的に分けられる。眼周囲部から眼内構造内への溶質または薬物の移動は、外側血液網膜関門である網膜色素上皮(RPE)によって制限される。この構造の細胞は、閉鎖帯細胞間結合により接合している。RPEは、RPEを透過する溶質の傍細胞輸送を制限する強固なイオン輸送関門である。血液網膜関門を通る大部分の化合物の透過性は非常に低い。非常に親油性である化合物(クロラムフェニコールおよびベンジルペニシリン等)は、血液網膜関門を通過することができ、全身投与後、相当の硝子体液内濃度に達する。化合物の親油性は、その化合物の透過率と相関し、細胞の受動拡散と一致している。しかし、血液網膜関門は、極性または荷電性の化合物に対しては、輸送メカニズムの非存在下では不透性である。親水性〜中程度に親油性である薬物は、虹彩毛様体内へ拡散し得るが、達する後房または虹彩基部濃度は非常に低い。房水の前眼部の大きな流れは、後眼部での薬物の排出と拮抗する。RPEを受動的に通過できないが、網膜を介して排出される化合物については、微分速度プロセス(differential rate processes)が関与するため合理的な用量では薬物が治療濃度に達するのが非常に困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、眼の症状を処置するために用いることができ、従来の物質とは異なった薬物動態学的特性を有する新しい作用物質が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
液体を含有する組成物やポリマードラッグデリバリーシステム等の眼科治療物質としては、その物質が投与される人の前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを含有する治療組成物が挙げられる。このα2アドレナリン受容体アゴニストは、約3時間よりも長い硝子体内半減期を有していてもよい。本発明物質は、前眼部、または前眼部分および後眼部が影響を受けている眼の症状を処置するのに効果的である。本発明物質は、硝子体内または眼周囲投与に好適であり、持続的な薬物送達をもたらすことができ、その物質が投与されている患者に治療効果を提供することができる。本α2アドレナリン受容体アゴニストは、液体を含有する製剤および/または生体内分解性のおよび/または非生体内分解性のポリマーインプラントおよび微粒子において提供される。本発明物質を製造および使用する方法についてもまた記載する。
【0012】
本明細書の開示にしたがい、眼科治療物質は、該アゴニストが投与される眼の前房からのアゴニストの排出をもたらすのに効果的な構造を有するα2アドレナリン受容体アゴニストの治療上有効量を含有する治療成分を含有する。
【0013】
本発明物質である前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストは、アゴニストまたはα−1アドレナリン受容体等の他のタイプのアドレナリン受容体と比較してα−2アドレナリン受容体を選択的に活性化する(例えば、α−2アドレナリン受容体に結合することにより)作用物質であってよい。選択的活性化は、種々の条件下で達成され得るが、好ましくは、選択的活性化は、ヒトまたは動物患者の眼に関連する状態等の生理学的条件下で決まる。
【0014】
本発明の眼科治療物質を製造する方法には、約3時間よりも長い硝子体半減期を有するα2アドレナリン受容体アゴニストを選択すること;
および該選択されたα2アドレナリン受容体アゴニストを液体担体成分またはポリマー成分と組み合わせて眼への投与に適した物質を形成すること
が含まれる。
【0015】
1またはそれ以上の眼の症状を処置する方法には、本発明物質を患者の眼へ投与する工程を含んでなる。本発明物質は硝子体内投与および/または眼周囲投与することができる。ドラッグデリバリーシステムを前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストの送達に用いる場合、持続的送達と長時間の治療効果が得られる。
【0016】
本発明に従うキットは、1またはそれ以上の本発明物質、および該物質を使用するための説明書を含んでなる。例えば、該説明書には、該物質の患者への投与方法および該物質により治療が可能な状態の種類について説明されている。
【0017】
本明細書に記載された各々のおよびすべての特徴、およびそのような特徴の2またはそれ以上の各々のおよびすべての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が相互に矛盾しない限りにおいて、本発明の範囲に含まれる。さらに、任意の特徴または特徴の組合せを、本発明の任意の態様から具体的に除外してもよい。
【0018】
本発明のさらなる態様および利点は、以下の実施例および請求の範囲に、特に考慮する場合添付の図面と併せて、記載される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、ウサギ(n=4)の眼の硝子体へのブリモニジン928ngの硝子体内投与後の時間に対するブリモニジンの硝子体濃度のグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ヒトまたは動物等の個体の前眼部および/または後眼部の障害または疾患等の眼の症状の有効な処置をもたらす眼科治療物質および方法を発明した。本眼科治療物質は、α2アドレナリン受容体アゴニストを含有する治療成分を含有する。本発明物質のα2アドレナリン受容体アゴニストは、本アゴニストの眼からの前眼部クリアランスまたは排出に有効な構造を有する。例えば、本発明物質のα2アドレナリン受容体アゴニストは、その物質が投与される後眼部の経路または網膜を経由する経路と比較して、前眼部の経路または前房を経由して排出を可能にするのに有効な構造を有する。即ち、本発明物質は、前眼症状、後眼症状、および前眼症状および後眼症状の組み合わせの処置のための1またはそれ以上の治療効果を提供することができる。例えば、本発明物質は、眼の眼球内圧の上昇を低減することができ、神経保護作用をもたらし、および緑内障を処置し、および/または眼球内圧を減少し且つ神経保護作用をもたらすことができる。
【0021】
定義
本発明の説明のために、用語の文脈が異なる意味を示す場合を除いて、このセクションで定義されるように以下の用語を使用する。
【0022】
本明細書において使用する場合、「眼内ドラッグデリバリーシステム」は、眼に配置されるように構成され、サイズ設定され、またはその他の設計を施された器具または要素を意味する。本ドラッグデリバリーシステムは、一般に、眼の生理学的条件に生体適合性であり、受け入れ難いまたは望ましくない副作用を生じない。本ドラッグデリバリーシステムは、視力を損なわずに眼に配置しうる。本ドラッグデリバリーシステムは、微粒子等の複数の粒子の形態であってよいか、または本微粒子のサイズよりも大きいインプラントの形態であってよい。本明細書に記載する眼内ドラッグデリバリーシステムはポリマー成分が含まれる。
【0023】
本明細書において使用される「組成物」は、個体の眼に対する投与に適した物質を意味する。所望であれば、組成物には、ポリマードラッグデリバリーシステムを含んでもよい。組成物は液体担体を含有してもよく、組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン等の物質を指す。
【0024】
本明細書において使用する場合、「治療成分」は、眼の医学的症状を治療するのに使用される1つまたはそれ以上の治療物質、活性成分、または眼の医学的状態を処置するために用いる物質を含有するドラッグデリバリーシステムまたは組成物の部分を意味する。治療成分は、眼内インプラントの個別の領域であってもよく、またはインプラント、粒子または組成物全体に均一に分布させてもよい。治療成分の治療薬は、一般に、眼科的に許容され、眼科治療物質を眼に配置した際に不利な反応を生じない形態で使用される。
【0025】
本明細書において使用する場合、「付随する」は、混合するか、分散するか、カップリングするか、共有結合するか、覆うか、または包囲することを意味する。
【0026】
本明細書において使用する場合、「眼の領域」または「眼の部位」は、眼の前の部分および後の部分を含む眼球の任意領域を一般に意味し、かつ、眼球に見出される任意の機能的(例えば、視覚用)または構造的組織、または眼球の内部または外部に部分的にまたは完全に並んだ組織または細胞層を一般に包含するが、それらに限定されない。眼領域における眼球領域の特定の例は、前房、後房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、網膜下腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内隙、角膜上隙、強膜、毛様体輪、外科的誘導無血管領域、網膜黄斑および網膜である。
【0027】
本明細書において使用する場合、「眼の症状」は、眼、または眼の部分または領域の1つを冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。一般的に言えば、眼は、眼球、および眼球を構成している組織および流体(体液)、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球の中かまたは眼球に近接した視神経の部分を包含する。
【0028】
前眼症状は、水晶体包の後壁または毛様体筋の前方に位置する、前眼(即ち、眼の前方)領域または部位、例えば、眼周囲筋、眼瞼または眼球組織または流体を冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。従って、前眼症状は、結膜、角膜、前房、虹彩、後房(虹彩の後ろであるが、水晶体包の後壁の前)、水晶体または水晶体包、および前眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している。
【0029】
従って、前眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;眼乾燥症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視。緑内障も前眼症状と考えられるが、その理由は、緑内障治療の臨床目的が、前房における水性液の高圧を減少させる(即ち、眼内圧を減少させる)ことでありうるからである。
【0030】
後眼症状は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁全体にわたる平面の後方位置)、硝子体、硝子体腔、網膜、網膜色素上皮、ブルッフ膜、視神経(即ち、視神経円板)、ならびに後眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している疾患、不快または症状である。
【0031】
従って、後眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:急性斑状視神経網膜疾患;ベーチェット病;脈絡膜新生血管形成;糖尿病性ブドウ膜炎;ヒストプラスマ症;感染症、例えば、真菌またはウイルスによる感染症;黄斑変性、例えば、急性黄斑変性、非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性;浮腫、例えば、黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫;多病巣性脈絡膜炎;後眼部位または領域に影響を及ぼす眼の外傷;眼腫瘍;網膜障害、例えば、網膜中心静脈閉鎖、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉鎖性疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患;交感性眼炎;フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群;ブドウ膜拡散;眼のレーザー治療によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光ダイナミック療法によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光凝固、放射線網膜症、網膜上膜疾患、網膜枝静脈閉鎖、前虚血性視神経症(anterior ischemic optic neuropathy)、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、色素性網膜炎および緑内障。緑内障は、その治療目標が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または欠損による視力低下を予防するか、または視力低下の発生を減少させること(即ち、神経保護)であるので、後眼症状と考えることができる。
【0032】
「生分解性ポリマー」という用語は、生体内で分解する1つまたはそれ以上のポリマーを意味し、1つまたはそれ以上のポリマーの侵食は、治療薬の放出と同時かまたはそれに続いて経時的に起こる。「生分解性」および「生体内分解性」という用語は、同意義であり、本明細書において互換的に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または3種類以上のポリマー単位を有するポリマーであってよい。
【0033】
本明細書において使用する場合、「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、眼症状、眼の傷害または損傷の減少または回復または予防、または傷害または損傷を受けた眼組織の治癒を促進することを意味する。
【0034】
本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、眼または眼領域に有意な負のまたは不利な副作用を生じずに、眼症状を治療するか、眼傷害または損傷を減少させるかまたは予防するのに必要とされる薬剤のレベルまたは量を意味する。
【0035】
本明細書に記載の本発明物質としては、液体を含有する組成物(例えば製剤)およびポリマードラッグデリバリーシステムが挙げられるがこれに限定されない。本発明の組成物には、溶液、懸濁液、エマルジョン等(他の眼科治療に用いられる液体を含有する組成物等)が含まれると理解される。ポリマードラッグデリバリーシステムはポリマー成分を含んでなり、生分解性のインプラント、非生分解性のインプラント、生分解性の微粒子(生分解性のマイクロスフェア)等が含まれると解される。本発明のドラッグデリバリーシステムはまた、錠剤、ウエハ、棒状、シート状等の形態のエレメントが含まれると解される。ポリマードラッグデリバリーシステムは、固体、半固体、または粘弾性であってよい。
【0036】
本発明物質のアゴニストとは、細胞表面に発現した受容体等の標的の受容体と結合または相互作用し、その標的の受容体を活性化する作用物質を意味する。本明細書において用いる場合、α2アドレナリン受容体アゴニストは、α2アドレナリン受容体と選択的に相互作用する作用物質を意味する。例えば、本発明物質のα2アドレナリン受容体アゴニストは、典型的には、α−1アドレナリン受容体と比較してα−2アドレナリン受容体を選択的に活性化する作用物質である。ある特定の物質においては、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、α−2アドレナリン受容体のサブタイプを選択的に活性化または刺激する。例えば、アゴニストは、生理学的条件等の特定の条件下で、α−2a、α−2bまたはα−2c受容体の1またはそれ以上を選択的に活性化することができる。本アゴニストは、α2アドレナリン受容体を部分的にまたは完全に活性化することができる。さらに、本アゴニストは、修飾または操作されて本明細書に記載の所望の前眼部クリアランスを有する慣用のまたは公知のα2アドレナリン受容体アゴニストのような、修飾されたまたは操作されたα2アドレナリン受容体アゴニストを包含すると解される。修飾または操作されたα2アドレナリン受容体アゴニストはα2アドレナリン受容体と相互作用して受容体を活性化するが、少なくとも、そのようなアゴニストの眼からのクリアランスが他のα2アドレナリン受容体アゴニストと異なる。便宜上、本発明物質のα2アドレナリン受容体アゴニストは、「前眼部排出α2アドレナリン受容体アゴニスト」とも称する。
【0037】
本発明物質の特定の態様は、後眼部と比較して前眼部から優先的に排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを含む治療成分を含む。あるいは、別の言い方をすれば、α2アドレナリン受容体アゴニストは、眼の網膜を経由して排出されるのとは対照的に、眼の前房および/または後房に存在する房水内で混合することによってあるいは虹彩毛様体を介して排出される。ある特定の態様では、α2アドレナリン受容体アゴニストは、後眼部クリアランス速度と比較して少なくとも30%大きい前眼部クリアランス速度を有する。例えば、α2アドレナリン受容体アゴニストは、後眼部クリアランス速度よりも少なくとも約40%、約40%、約50%、約60%、約70%または約90%大きい前眼部クリアランス速度を有することができる。従って、本α2アドレナリン受容体アゴニストは、網膜を介して排出される他のα2アドレナリン受容体アゴニストよりも大きい前眼部クリアランス速度/後眼部クリアランス速度比を有する。さらに、α2アドレナリン受容体アゴニストは、高い房水/硝子体液濃度比を有する。α2アドレナリン受容体アゴニストを後眼部内、眼の硝子体等へ眼内投与した場合、およびα2アドレナリン受容体アゴニストを眼周囲に投与した場合、例えば以下の領域の1またはそれ以上に投与した場合:眼球後方領域、結膜下領域、テノン嚢下領域、脈絡膜上領域および強膜内領域、に増大した前眼部クリアランスを観察することができる。多くの場合において、α2アドレナリン受容体アゴニストは、隅角または濾角(filtration angle)の繊維柱帯を介して前房を通過することにより眼から排出される。
【0038】
別の態様では、α2アドレナリン受容体アゴニストは実質的に等しい前眼部および後眼部クリアランス速度を有する。重要なことに、本発明物質は、測定可能な前眼部クリアランスを有するα2アドレナリン受容体アゴニストを含んでなる。例えば、眼の硝子体に投与したときに、一定時間後に個体から得られた房水のサンプルが測定可能な量のα2アドレナリン受容体アゴニストを含む。対照的に、存在するα2アドレナリン受容体アゴニスト(ブリモニジン等)は、本明細書において記載するように、硝子体内または眼周囲に投与した場合に、房水中に検出されないかまたは算出できない。
【0039】
上に記載するように、本発明物質の治療成分には、修飾または操作されたα−2アドレナリン作動薬が含まれる。例えば、修飾または操作されたα−2アドレナリン作動薬は、α−2アドレナリン受容体と相互作用または該受容体を活性化するのに効果的な基本構造、およびそれらを有しない同一の基本構造を比較して増大した前眼部クリアランスをもたらす該基本構造に付随するバルク剤または修飾成分を含んでいてもよい。バルク剤または修飾成分は、基本構造とカップリングするかまたは共有結合させることができる。例えば、バルク剤または修飾成分は直接基本構造と共有結合させることができるか、または1またはそれ以上の連結剤を介して間接的にカップリングすることができる。バルク剤または修飾成分によって、基本構造の親水性または親油性を改変して所望の前眼部クリアランスを達成することができる。好ましくは、バルク剤または修飾成分は、基本構造とα−2アドレナリン受容体との相互作用を実質的に妨害しない。
【0040】
修飾または操作されたα−2アドレナリン受容体アゴニストのいくつかは、特定の条件下で基本構造から解離することが可能なように基本構造と会合したバルク剤または修飾成分を含んでいてもよい。例えば、バルク剤は基本構造と一時的に結合することができ、ある所定の時間が経過した後にその結合が開裂し、基本構造がバルク剤から放出される。その結合は、眼を介する光の通過に感受性であってもよいし、または眼に一時的に適用される1またはそれ以上の化学物質に対して感受性であってもよい。あるいは、この基本構造はバルク剤または修飾成分と複合体を形成してもよく、該複合体は眼の硝子体において時間とともに解離してもよい。
【0041】
相対的に長い硝子体半減期を有する修飾または操作されたα−2アドレナリン受容体アゴニストの1つの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)とカップリングしたα−2アドレナリン受容体アゴニストである。例えば、PEG試薬を、PEG試薬上の化学的に反応性である基を介してα−2アドレナリン受容体アゴニストに存在するアミノまたはスルフヒドリル基と共有結合させることができる。得られた修飾または操作されたα−2アドレナリン受容体アゴニストは、直鎖状でも分岐した構造でもよい。ある特定の態様では、PEG試薬の分子量は約30kDa〜約60kDa、例えば約40kDaまたは約50kDaである。
【0042】
相対的に長い硝子体内半減期を有する修飾または操作されたα−2アドレナリン受容体アゴニストの第2の非限定的な例は、1またはそれ以上の親油性成分を含むα−2アドレナリン受容体アゴニストである。例えば、α−2アドレナリン受容体アゴニストを1またはそれ以上の疎水基を含む疎水性炭化水素とカップリングすることができる。そのような試薬の一例として、ヒドロキシ含有炭化水素が挙げられる。そのような試薬は、疎水基と親水基の両方を提供するのに有効であり、それによりα−2アドレナリン作動薬の硝子体半減期が変わる。修飾または操作されたα−2アドレナリン受容体アゴニストの1つの具体例としては、α−2アドレナリン受容体アゴニストとカップリングしたアルキルプロパンジオールである。さらなる例としては、1−O−ヘキサデシルプロパンジオール以外のアルキルプロパンジオールが挙げられる。1−O−ヘキサデシルプロパンジオールは、ガンシクロビルのウサギの眼の硝子体内への放出を遅延することにおいて効果的であることが示されている(Cheng et al., "Treatment or prevention of herpes simplex virus retinitis with intavitreally injectable crystalline 1-O-hexadecylpropanediol-3-phospho-ganciclovir", (2002) Investigative Ophthalmology & Visual Science, 43(2):515-521)。
【0043】
好適なバルク剤または修飾成分の別の例は、当業者に知られている常套法を用いて同定することができ、得ることができる。したがって、本治療成分のα2アドレナリン受容体アゴニストは、上記に記載の方法を用いて、硝子体半減期、房水/硝子体液濃度比等の所望の薬物動態学的特性についてその試薬をスクリーニングすることにより同定することができる。次いで、スクリーニングされたまたは選択されたα2アドレナリン受容体アゴニストを、本組成物およびドラッグデリバリーシステムの1またはそれ以上の成分または成分前駆体と組み合わせることができる。
【0044】
バルク剤または修飾成分は、α2アドレナリン受容体アゴニストの分子量の増大に有効であり得る。増大した分子量によって、α2アドレナリン受容体アゴニストは、眼からの減少した後眼部クリアランス速度を示し得、および/または眼からの増大した前眼部クリアランスを示し得る。修飾されたα2アドレナリン受容体アゴニストの一例としては、ポリエチレングリコールとカップリングまたは会合したブリモニジン基本構造が挙げられる。本治療成分のα−2アドレナリン作動薬は、ブリモニジン等の他のα−2アドレナリン受容体アゴニストと比較してより大きい房水/硝子体液濃度比とより長い硝子体半減期を有する。
【0045】
相対的に長い硝子体半減期を有する修飾または操作されたα−2アドレナリン受容体アゴニストのさらなる例は、有機カチオントランスポーターによるRPE輸送を阻止するα−2アドレナリン受容体アゴニストである。生理学的pHで、α2アドレナリン受容体アゴニストの大部分は正に荷電している。有機カチオンの輸送は、基質特異的な、ナトリウム依存型トランスポーターと特異性の低いナトリウム非依存型トランスポーターによって媒介され得る。有機カチオントランスポーターの2つの主要なファミリー:有機カチオントランスポーター(OCT)および有機カチオン/カルニチントランスポーター(OCTN)が同定されている。OCTトランスポーターは、網膜色素上皮(外側血液網膜関門)において同定されている。さらに、既知のOCTファミリーとは別個の、新規の有機カチオントランスポーターがRPEにおいて同定されている。
【0046】
ブリモニジンは、結膜に存在する有機カチオントランスポーターの基質である。網膜/RPEを通過するブリモニジンの排出は、有機カチオントランスポーターの結果である可能性がある。ブリモニジンのイミダゾール窒素のpKaは7.78である。
【0047】
したがって、本α2アドレナリン受容体アゴニストは、有機カチオントランスポーターの基質となることなくα2アドレナリン受容体を活性化する有効な作用物質である。そのようなアゴニストは、上記のようなバルク剤を含む必要がない。例えば、N-Mannich塩基プロドラッグを製造することにより、有機カチオントランスポーターの基質でない化合物を作製することができる。有機カチオン輸送が減少する本α−2アドレナリン受容体アゴニストのさらなる例としては、ブリモニジンのスルホニルプロドラッグが挙げられる。これらの化合物は、減少した網膜経由の排出と長い硝子体半減期を有すると考えられる。これら化合物の合成は当業者にとって容易である。
【0048】
したがって、本α2アドレナリン受容体アゴニストの特定の態様は、眼内のpHのような生理学的pHで非カチオン性である。言い換えれば、本アゴニストは、眼内では、電気的に中性かまたはアニオン性の分子として存在する。ある特定の態様では、本アゴニストは、約6.0〜約7.8のpHで非カチオン性である。例えば、本アゴニストは、約7.0〜約7.4のpHで非カチオン性である。ある特定の態様では、本アゴニストは約7.2、または約7.3、または約7.4のpHで非カチオン性である。ある特定の態様では、組成物および/またはドラッグデリバリーシステムにおける本アゴニストの大部分は、記載されたpHまたはpH範囲で非カチオン性である。例えば、アゴニストの約90%、または約80%、または約70%、または約60%、または約50%が、記載されたpHまたはpH範囲で非カチオン性である。
【0049】
本α2アドレナリン受容体アゴニストが有機カチオン(例えば、一時的または永続的に正の正味荷電を有する有機分子)である場合、そのアゴニストはpKaが約7未満で塩基性の官能基を有する。ある特定のアゴニストは、pKaが約6.5、または約6、または約5.5または約5である。
【0050】
本開示に従うさらなるα2アドレナリン受容体アゴニストとしては、イオン化する基を有しないα2アドレナリン受容体アゴニストが挙げられる。他のさらなるα2アドレナリン受容体アゴニストは、塩基性の官能基と比較して酸性の官能基のみを有する。酸性の官能基は、1またはそれ以上の酸性部分をα2アドレナリン受容体アゴニスト基本構造とカップリグさせるか会合させることによって得ることができる。
【0051】
N-Mannich塩基プロドラッグの1例を、化合物Aとして以下に記載する。
【化1】

【0052】
このN-Mannich塩基プロドラッグのpKaは6.9となり、非荷電の画分がより高い収率で得られる。ブリモニジンを生じる化学分解が起こる。ブリモニジンへ分解される速度を最適化することにより、適当な硝子体半減期が得られる。
【0053】
スルホニルプルドラッグの例を化合物Bとして以下に記載する。
【化2】

【0054】
ブリモニジンを生じるスルホニルプロドラッグの化学的加水分解の速度は、スルホニル基部分の賢明な選択により最適化することができる。スルホニルプロドラッグのpKaは5であり生理学的pHでは非荷電となる。
【0055】
本α2アドレナリン受容体アゴニストのさらなる例としては、α2アドレナリン受容体を活性化し、生理学的pHで中性である作用物質が挙げられる。例えば、α2アドレナリン受容体アゴニストは、ヒトの眼内のpHのような生理学的pHでカチオンではない。そのようなアゴニストの1例を、化合物Cとして以下に記載する。
【化3】

【0056】
そのようなα2アドレナリン受容体アゴニストのさらなる例を、化合物Dとして以下に記載する。
【化4】

【0057】
そのようなα2アドレナリン受容体アゴニストのさらなる例を、化合物Eとして以下に記載する。
【化5】

【0058】
前眼部排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストは、当業者には常套的な標準的な薬物動態学的実験と慣用の方法を用いて同定し得ることができる。例えば、有望な前眼部排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストは、慣用の化学合成法、例えば慣用のα2アドレナリン受容体アゴニスト(例えば、ブリモニジン、キシラジン、メデトミジン、ケタミン、クロニジン、アプラクロニジン等)の製造に好適な方法を用いて製造することができる。所望であれば、上記のようにα2アドレナリン受容体アゴニストを修飾または操作することができる。慣用のα2アドレナリン受容体アゴニストを試験するための慣用のスクリーニングアッセイを用いてα2アドレナリン受容体アゴニスト活性を試験することができる。そのようなスクリーニングアッセイは当業者には常套的である。
【0059】
有望なアゴニストをウサギの硝子体に注射することにより、有望な前眼部排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストをスクリーニングすることができる。硝子体液および房水を時間毎にサンプリングして、硝子体および房水における有望なアゴニストの量を測定することができる。有望なアゴニストの硝子体濃度を時間に対してプロットし、標準的な薬物動態学的技術を用いて、該有望なアゴニストの硝子体半減期とクリアランスを算出する。同様に、その有望なアゴニストの房水濃度を時間に対してプロットし、標準的な薬物動態学的技術を用いて該アゴニストの前眼部クリアランスを求める。所望の硝子体半減期を有し、および/または房水において測定可能である物質を本発明物質において用いる。例えば、約3時間よりも長い硝子体半減期を有する物質を本眼科治療物質に選択することができる。
【0060】
短い硝子体半減期(例えば、約3時間よりも短い)を有する化合物は、網膜を通る後眼部経路を介して眼から排出されると考えられる(Cunha-Vaz et al., "The active transport of fluoroscein by the retinal vesselsおよびthe retina", J. Physiol., 191:467-486 (1967); Barza et al., "The effects of infectionおよびprobenecid on the transport of carbenicillin from the rabbit vitreous humor", Invest Ophthalmol Vis. Sci., 22:720-726 (1982); Miller et al., "Fleroxacin pharmacokinetics in aqueousおよびvitreous humors determination by using complete concentration-time data from individual rabbits", Antimicrob. Agents. Chemother., 36:32-38 (1992); Cunha-Vaz, "The blood-ocular barriers", Surv. Ophthalmol., 5:279-296 (1979); Maurice et al., "Handbook of Experimental Pharmacology: Pharmacology of the Eye", Sears, Eds., Vol. 69, (Springer-Verlag, Berlin-Heidelberg), 19-116 (1986);およびLesar et al., "Antimicrobial drug delivery to the eye", Drug Intell Clin. Pharm., 19:642-654 (1985))。
【0061】
大きな表面が硝子体と血漿の間の交換に利用可能な網膜にあるために、分子の厳密な前眼部の拡散は網膜および網膜色素上皮(RPE)を通過することができる化合物について起こらない。そのかわり、化合物は網膜を通る硝子体からの排出(例えば、網膜経由または後眼部排出経路)を受けて初期の濃度分布から容易に拡散する。したがって、化合物の低い房水/硝子体液濃度比は、そのような化合物の排出の網膜を経由するメカニズムのさらなる証拠である(Maurice, "The exchange of sodium between the vitreous body and the blood and humor ", J. Physiol, 137:119-125 (1957); and Maurice, "Protein dynamics in the eye studied with labelled proteins", Am J Ophthalmol, 49:361-367 (1959))。
【0062】
対照的に、眼前房経路から排出される化合物は、それらの分子量とよく相関する房水/硝子体液濃度比を示す(Maurice et al., "Handbook of Experimental Pharmacology: Pharmacology of the Eye", Sears, Eds., Vol. 69, (Springer-Verlag, Berlin-Heidelberg), 19-116 (1986))。前眼部経路により排出される化合物の例としては、アルブミン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、スルファセタミド、トブラマイシン、カナマイシン、並びに他の巨大分子およびペプチドが挙げられる。重要なことに、そのような化合物はα2アドレナリン受容体化合物でない。
【0063】
上記に鑑み、本発明の一態様は、治療上有効量のα2アドレナリン受容体アゴニストであって、該アゴニストが投与される眼の前房からのアゴニストの排出をもたらすのに効果的な構造を有するα2アドレナリン受容体アゴニストを含む治療成分を含有する眼科治療物質に関する。例えば、眼科治療物質は、専ら後眼部経路を介する(例えば、網膜を介する)排出と比較して、前眼部経路を介して(例えば、繊維柱帯流出および/またはブドウ膜強膜流出を介して)排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを含有する。
【0064】
本発明物質のα2アドレナリン受容体アゴニストは、1またはそれ以上の治療効果をもたらすのに有効な量で提供される。例えば、物質は、前眼部から排出される量の、眼の神経に対する神経保護、眼圧上昇の低減、およびそれらの組合せをもたらすα2アドレナリン受容体アゴニストを含むことができる。別の例としては、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストは、緑内障の処置に有効である量で提供することができる。本明細書に記載のポリマードラッグデリバリーシステムのような特定の物質においては、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストは、治療上有効な量でドラッグデリバリーシステムから放出させることができる。
【0065】
本発明物質のいくつかは、溶液投与後の硝子体内半減期が約3時間を超えるα2アドレナリン受容体アゴニストを含有する。例えば、特定の物質は、4時間、または5時間、または10時間、または15時間、またはそれ以上の硝子体内半減期を有する、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを含有する。そのようなアゴニストの半減期は、本明細書の記載にしたがって決定することができる。
【0066】
本発明物質のα2アドレナリン受容体アゴニストは、本明細書に記載するバルク剤と組み合わせてもよい。例えば、α2アドレナリン受容体アゴニストをポリエチレングリコール(PEG)とカップリングすることができる。特定の態様では、α2アドレナリン受容体アゴニストは、眼の後眼部(例えば、網膜経路)から排出される異なるα2アドレナリン受容体アゴニストの分子量よりも大きい分子量を有する。
【0067】
本明細書に記載するように、本発明物質のα2アドレナリン受容体アゴニストは、前眼部クリアランス速度と後眼部クリアランス速度が実質的に等しい、または後眼部クリアランス速度に対して前眼部クリアランス速度が大きい。いくつかの物質では、前眼部クリアランス速度は後眼部クリアランス速度よりも小さいが、α2アドレナリン受容体アゴニストの前眼部クリアランス速度は、α2アドレナリン受容体アゴニストを、それが投与される眼の房水における測定限界値より上で測定することができるものである。
【0068】
本発明物質は眼科的に許容し得るものである。従って、本発明物質を、実質的な否定的または有害な副作用なしに個人の眼に投与することができる。特定の物質では、該物質を眼に投与する際には、α2アドレナリン受容体アゴニストは前房、後房、または前房および後房に送達される。
【0069】
本明細書に記載するように、本発明物質を様々な方法によって製造することができる。一態様では、眼科治療物質は、約3時間を超える硝子体半減期を有するα2アドレナリン受容体アゴニストを選択する工程を含んでなる製造方法によって製造された治療成分を含有する。そのようなアゴニストの硝子体半減期を測定する方法は本明細書に記載されている。他の態様は、約4時間、または5時間、または10時間、または15時間、またはそれ以上の硝子体半減期を有するアゴニストの選択を含んでなる。
【0070】
特定の態様では、本発明物質は、患者の眼に対するα−2アドレナリン受容体アゴニストを投与すること;硝子体または硝子体液および/または房水におけるα−2アドレナリン受容体アゴニストの濃度を時間に対して測定すること;α−2アドレナリン受容体アゴニストの硝子体半減期および/またはクリアランスを測定すること;およびα−2アドレナリン受容体アゴニストを、α−2アドレナリン受容体アゴニストの半減期が約3時間を超えるならば本発明物質に有用な少なくとも1つの他の成分と組み合わせること、を含んでなるプロセスによって製造された治療成分を含んでなる。モデル化手法を用いることができる状況では、治療成分を製造するために用いた上記の工程のいくつかを変更または省略してもよい。従って、治療成分は、α−2アドレナリン受容体アゴニストの半減期が約3時間よりも長いかどうかについて決定すること;およびそうである場合α−2アドレナリン受容体アゴニストを、組成物またはポリマードラッグデリバリーシステムの1またはそれ以上の成分または成分前駆体と組み合わせることを含んでなるプロセスによって製造することができる。半減期は、具体的にはα−2アドレナリン受容体アゴニストの溶液投与後の硝子体内半減期であると解される。
【0071】
さらに、本発明物質は、好適であれば、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストの塩または他の治療剤を含むことができる。製薬的に許容し得る酸付加塩は、製薬的に許容し得るアニオンを含む非毒性の付加塩を形成する酸から形成する塩、例えば塩酸塩、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩または硫酸水素塩、リン酸塩または過リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、サッカラートおよびp−トルエンスルホン酸塩である。
【0072】
本明細書に記載するように、本発明物質は液体を含有する組成物であると理解することができる。従って、特定の本発明物質は、硝子体内投与および/または眼周囲投与による患者に対する投与に適した組成物の形態で、治療成分と組み合わせて液体の担体成分を含むことができる。本明細書において用いられるように、眼周囲投与は、治療成分の眼球後方部、結膜下領域、テノン嚢下領域、脈絡膜上領域または脈絡膜上腔;および/または強膜内領域または強膜内腔への投与を意味する。例えば、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを水、生理食塩水、リン酸緩衝液または他の眼科的に許容し得る液体担体と組み合わせてよい。本液体を含有する組成物は好ましくは注射可能な形態である。言い換えれば、組成物を眼内投与、例えば硝子体内注射により、注射器や針または他の同様のデバイス(例えば、米国特許公開第2003/0060763号)を用いて、または組成物を注射デバイスを用いて眼周囲投与することができる。
【0073】
本組成物の治療成分は、組成物の約1%以下〜約5%または約10%または約20%または約30%またはそれ以上(w/vまたはw/w)の範囲の量で存在し得る。硝子体内投与される組成物については、相対的に高い濃度または量の治療成分を本組成物において提供することは、他の組成物と比較して、眼の後方部において同じ量またはそれ以上の治療成分を提供するために眼の後方部へと配置または注射すべき組成物の量が減るという点で有益であろう。
【0074】
特定の態様では本発明物質はさらに賦形剤成分を含む。賦形剤成分には、可溶化剤、増粘剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤等が含まれると理解される。
【0075】
本組成物のいくつかの態様では、可溶化剤はシクロデキストリンであってよい。言い換えれば、本発明物質はシクロデキストリン成分を、組成物の約0.1%(w/v)〜約5%(w/v)の量で含むことができる。さらなる態様では、シクロデキストリンは、本明細書に記載するように約10%(w/v)までの特定のシクロデキストリンを含む。さらなる態様では、シクロデキストリンは、本明細書に記載するように約60%(w/v)までの特定のシクロデキストリンを含む。本組成物の賦形剤成分は、1またはそれ以上の種類のシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体、例えばα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンおよびそれらの誘導体を含むことができる。当業者が理解するとおり、シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンとして機能するに十分なシクロデキストリンの特徴的な化学構造を有する、例えば、治療剤の溶解度および/または安定性を増大するため、および/または治療剤の好ましくない副作用を減少するためおよび/または治療剤との包括的複合体を形成するために、置換または修飾された任意の化合物を意味する。
【0076】
本発明物質の増粘剤としては、組成物における治療成分の安定化に有効なポリマーが挙げられるがこれに限定されない。増粘剤は、組成物の粘度を増大させる、有利には実質的に増大させるに有効な量で存在する。本組成物の増大した粘度は、治療成分粒子を含め、治療成分を、本組成物において実質的に均一な懸濁液中で長期間(例えば、再懸濁を必要とすることなく少なくとも約1週間)維持する本組成物の能力を増大する。本組成物の相対的に高い粘度はまた、例えば、そのような治療成分を実質的に均一な懸濁液中で長期間維持する一方で、本組成物が、本明細書に記載した治療成分の増大した量または濃度を有する能力を有するように補助するというさらなる利点を提供する。
【0077】
任意の適当な増粘成分、例えば、眼科的に許容し得る増粘成分、を本組成物に用いることができる。多くのそのような増粘成分が、提案されおよび/または眼にまたは眼内に用いられる眼科組成物に用いられている。増粘成分は所望の粘度を本組成物に与えるのに効果的な量で存在する。有利には、増粘剤は、組成物の約0.5%または約1.0%〜約5%または約10%または約20%(w/vまたはw/w)の範囲の量で存在する。用いる増粘成分の具体的な量は、例えば、用いる具体的な増粘成分、用いられる増粘成分の分子量、製造および/または使用される組成物にとって所望の粘度等が挙げられるがこれに限定されない数多くの要因に依存する。
【0078】
増粘成分は、好ましくはポリマー成分および/また少なくとも1つの粘弾性物質、例えば眼科外科手術に有用である物質等である。有用な増粘成分の例としては、ヒアルロン酸、カルボマー、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、多糖類、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、それらの誘導体および混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0079】
有用な増粘成分の分子量は、約10,000ダルトンまたはそれ以下〜2,000,000ダルトンまたはそれ以上の範囲である。特に有用な態様では、増粘成分の分子量は、約100,000ダルトンまたは約200,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンまたは約1,500,000ダルトンである。また、本発明に従って有用な増粘成分の分子量は、用いる成分、および対象となる本組成物の所望の最終粘度、並びに1またはそれ以上の他の要因を含め、粘度のタイプに基づいて実質的な範囲にわたって変更することができる。
【0080】
所望であれば、緩衝剤は、組成物のpHをコントロールするのに有効な量で提供することができる。等張化剤は組成物の張力または浸透圧をコントロールするのに有効な量で提供することができる。特定の本組成物は、緩衝成分と等張化剤成分の両方を含有し、これには本明細書に記載した1またはそれ以上の糖アルコール類(マンニトール糖)、塩類(塩化ナトリウム等)が含まれ得る。緩衝成分および等張化成分は慣用のものおよび眼科分野で周知のものから選択することができる。そのような緩衝成分の例としては、酢酸バッファー、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、ホウ酸バッファー等およびそれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。リン酸バッファーが特に有用である。有用な等張化成分としては、塩類、具体的には塩化ナトリウム、塩化カリウム、眼科的に許容し得る任意の他の適当な等張化成分およびそれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。
【0081】
用いられる緩衝成分の量は、好ましくは、組成物のpHを約6〜約8、より好ましくは約7〜約7.5の範囲に維持するのに十分な量である。用いられる等張化成分の量は、好ましくは、組成物の浸透圧を約200〜約400mOsmol/kg、より好ましくは約250〜約350mOsmol/kgの範囲に維持するのに十分な量である。有利には、本組成物は実質的に等張である。
【0082】
本発明物質に用いることのできる保存剤としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベンおよびエチルパラベン、ヘキセチジン、亜塩素酸成分、例えば安定化二酸化塩素等、金属クロライト等、眼科的に許容し得る他の保存剤等およびそれらの混合物が挙げられる。保存成分が存在する場合、本組成物における濃度は、本組成物の保存に有効な濃度であり、本組成物の約0.00001%〜約0.05%または約0.1%(w/v)の範囲である。
【0083】
本組成物は、当業者に知られている慣用法を用いて製造することができる。例えば、治療成分を液体担体と混合することができる。組成物を滅菌してもよい。保存剤を含まない態様のようなある特定の態様では、組成物を滅菌し、単位用量にパッケージングしてよい。組成物は、組成物の単位用量を単独投与した後に廃棄することのできる眼内ディスペンサーにパッケージングすることができる。
【0084】
本組成物は、好適な混合/加工技術、例えば1またはそれ以上の慣用的な混合技術を用いて製造することができる。その製造過程は、ヒトまたは動物の硝子体または眼周囲への配置または眼内注射に有用な形態で本組成物を提供するように選択される。1つの有用な態様では、濃縮された治療成分の分散液を、治療成分と水を混合し、最終の組成物内に添加剤(増粘成分以外の)を加えることによって製造する。成分を混合して治療成分を分散させた後、オートクレーブする。増粘成分は、無菌のものを購入するか慣用の方法(例えば、希釈溶液を濾過し凍結乾燥して滅菌粉末を得る)により滅菌する。無菌の増粘成分を水と混合して水溶性の濃縮液を調製する。濃縮治療成分分散液を混合し、増粘成分濃縮液のスラリーに加える。水を十分子量(q.s.)加えて所望の濃度にし、組成物が均一になるまで混合する。
【0085】
一態様では、投与に適した無菌の粘稠な懸濁液を、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを用いて製造する。そのような組成物の製造方法は、バルク配合(bulk compounding)および無菌充填を含んでなる。
【0086】
本発明物質のさらなる態様は、単独投与後の長期間、持続的に薬物の送達をもたらすことが可能なポリマードラッグデリバリーシステムの形態である。例えば、本発明のドラッグデリバリーシステムは、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを、少なくとも約1ヶ月、または約3ヶ月、または約6ヶ月、または約1年、または約5年間またはそれ以上放出することができる。従って、本発明物質のそのような態様は、硝子体内投与および眼周囲投与の少なくとも1つによる患者への投与に適したポリマードラッグデリバリーシステムの形態で、ポリマー成分を治療成分と組み合わせて含んでなる。
【0087】
ポリマードラッグデリバリーシステムは、生分解性ポリマーインプラント、非生分解性ポリマーインプラント、生分解性ポリマー微粒子、およびそれらの組合せの形態であってよい。インプラントは、棒、ウエハ、シート、フィラメント、球等の形態であってよい。粒子は、本明細書に記載のインプラントよりも小さく、形も変更することができる。例えば、本発明の特定の態様は、実質的に球形の粒子を用いる。これらの粒子は、微粒子であると理解することができる。他の態様では、ランダムに構成された粒子、例えば1またはそれ以上のフラットまたは平面(planar)の表面を有する粒子、を用いることができる。ドラッグデリバリーシステムは、そのような粒子の予め決められたサイズ分布の集団を含むことができる。例えば、集団の主要な部分には所望の直径を有する粒子が含まれ得る。
【0088】
本明細書に記載するように、本発明のドラッグデリバリーシステムのポリマー成分は、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマー、生分解性コポリマー、非生分解性コポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含むことができる。特定の態様では、ポリマー成分は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)ポリマー(PLGA)を含む。別の態様では、ポリマー成分は、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ−ラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファジン)、ポリ(リン酸エステル)、ポリカプロラクトン、ゼラチン、コラーゲン、それらの誘導体およびそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む。ポリマー成分を治療成分と組み合わせて、固形インプラント、半固形インプラント、および粘弾性インプラントからなる群から選択されるインプラントを形成することができる。
【0089】
前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストは、粒状または粉末形態であってよく、生分解性ポリマーマトリックスに閉じ込めうる。一般に、眼内インプラントにおいて、前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニスト粒子は、約3000ナノメートル未満の有効平均粒度を有する。但し、別の態様では、粒子は約3000ナノメートルよりも大きい最大平均粒径を有する。ある特定のインプラントでは、粒子は、約3000ナノメートル未満のオーダーの有効平均粒度を有しうる。例えば、粒子は、約500ナノメートル未満の有効平均粒度を有しうる。他のインプラントにおいて、粒子は、約400ナノメートル未満の有効平均粒度、さらに他の態様においては、約200ナノメートル未満の粒度を有しうる。さらに、そのような粒子をポリマー成分と組み合わせる場合は、得られるポリマーの眼内粒子を、所望の治療効果をもたらすために用いることができる。
【0090】
本システムの前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストは、好ましくは、該ドラッグデリバリーシステムの重量に対して約1%〜90%である。より好ましくは、前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストは、該システムの重量に対して約20%〜約80%である。好ましい態様において、前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストは、該システムの重量の約40%(例えば、30%〜50%)を占める。他の態様において、前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストは、該システムの重量の約60%を占める。
【0091】
ドラッグデリバリーシステムに使用される好適なポリマー物質または組成物は、眼に適合性、即ち生体適合性であり、それによって、眼の機能または生理機能に実質的障害を生じない物質を包含する。そのような物質は、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは実質的に完全に生分解性または生体内分解性であるポリマーを含む。
【0092】
上記に加え、有用なポリマー物質の例は、有機エステルおよび有機エーテルから誘導され、かつ/またはそれらを含有する物質であって、分解した際に、生理学的に許容される分解生成物を生じる物質(モノマーを含む)であるが、それらに限定されない。無水物、アミド、オルトエステル等から誘導され、かつ/またはそれらを含有するポリマー物質を、単独で、または他のモノマーと組み合わせて、使用してもよい。ポリマー物質は、付加または縮合重合体、好都合には縮合重合体であってよい。ポリマー物質は、架橋または非架橋、例えば軽架橋以下であってよく、例えば、ポリマー物質の約5%未満または約1%未満が架橋されている。多くの場合、炭素および水素の他に、ポリマーは、酸素および窒素の少なくとも1つ、好都合には酸素を含有する。酸素は、オキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えば非オキソ−カルボニル、例えばカルボン酸エステル等として存在しうる。窒素は、アミド、シアノおよびアミノとして存在しうる。制御薬剤送達のための被包形成を記載しているHeller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 第1巻, CRC Press, Boca Raton, FL 1987, p.39-90に示されているポリマーを、本発明のドラッグデリバリーシステムに使用しうる。
【0093】
他に関心がもたれるものは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)、および多糖類である。関心がもたれるポリエステルは、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せのポリマーを包含する。一般に、L−ラクテートまたはD−ラクテートを使用することによって、ゆっくり侵食されるポリマーまたはポリマー物質が得られ、一方、ラクテートラセミ体を使用することによって、侵食が実質的に促進される。
【0094】
有用な多糖類の例は、アルギン酸カルシウム、および官能化セルロース、特に、水不溶性であることを特徴とし、分子量が例えば約5kD〜500kDの、カルボキシメチルセルロースエステルであるが、それらに限定されない。
【0095】
関心がもたれる他のポリマーは、生体適合性であり、かつ生分解性および/または生体内分解性の場合もある、ポリエステル、ポリエーテルおよびそれらの組合せであるが、それらに限定されない。
【0096】
本発明のシステムに使用されるポリマーまたはポリマー物質のいくつかの好ましい特徴は、生体適合性、治療成分との適合性、本発明の薬剤送達システムの製造におけるポリマーの使い易さ、少なくとも約6時間の、好ましくは約1日より長い、生理環境における半減期、硝子体の粘度を有意に増加させないこと、および水不溶性を包含しうる。
【0097】
マトリックスの形成のために含有される生分解性ポリマー物質は、酵素的または加水分解的に不安定になりやすいことが望ましい。水溶性ポリマーを、加水分解的または生分解的に不安定な架橋で架橋させて、有用な水不溶性ポリマーが得られる。安定性の程度は、モノマーの選択、ホモポリマーまたはコポリマーを使用するか、ポリマー混合物の使用、ポリマーが末端酸根を有するか、に依存して広く変化させることができる。
【0098】
また、本ドラッグデリバリーシステムに使用されるポリマー組成物の相対平均分子量も、ポリマーの生分解性、従ってインプラントの長時間放出プロフィールを調節するのに重要である。種々の分子量の同じかまたは異なるポリマーの組成物を、本システムに含有させて、放出プロフィールを調節しうる。特定のインプラントにおいて、ポリマーの相対平均分子量は、約9〜約64kD、一般に約10〜約54kD、より一般的には約12〜約45kDである。
【0099】
いくつかのドラッグデリバリーシステムにおいて、グリコール酸と乳酸のコポリマーを使用し、生分解速度をグリコール酸/乳酸の比率によって調節する。最も急速に分解されるコポリマーは、ほぼ同量のグリコール酸および乳酸を含有する。ホモポリマー、または等しくない比率を有するコポリマーは、分解に対してより抵抗性である。グリコール酸/乳酸の比率は、本システムの脆性にも影響を与え、より大きい形状には、より柔軟性のシステムまたはインプラントが望ましい。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマーにおけるポリ乳酸のパーセントは、0〜100%、好ましくは約15〜85%、より好ましくは約35〜65%にすることができる。いくつかのシステムにおいて、50/50PLGAコポリマーが使用される。
【0100】
本システムの生分解性ポリマーマトリックスは、2つまたはそれ以上の生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。例えば、本システムは、第一の生分解性ポリマーおよび異なる第二の生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーは、末端酸根を有してよい。
【0101】
分解性ポリマーからの薬剤放出は、いくつかのメカニズム、またはメカニズムの組合せの結果である。これらのメカニズムのいくつかは、インプラント表面からの脱離、溶解、水和ポリマーの多孔流路からの拡散、および侵食である。侵食は、本体または表面、またはその両方の組合せであることができる。本システムのポリマー成分は治療成分と組み合わされ、治療成分の眼への放出は、拡散、浸食、溶解および浸透の1またはそれ以上によるものであると理解され得る。本明細書に記載するように、眼内ドラッグデリバリーシステムのマトリックスは、眼への移植から1週間より長い期間にわたって、所定量の前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を持続させるのに有効な速度で、薬剤を放出しうる。ある特定のシステムでは、治療有効量の前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストは、約1ヶ月、さらには約12ヶ月またはそれ以上にわたって放出される。例えば、治療成分は、本システムを眼の内部に入れた後、約90日間〜約1年の期間にわたって放出される。
【0102】
生分解性ポリマーマトリックスを含有するドラッグデリバリーシステムからの前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出は、初期放出バースト、次に、放出される前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストの量の漸増を含む場合があり、または該放出は、前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストの初期放出遅延、次に、放出増加を含む場合もある。インプラントが実質的に完全に分解した場合、放出された前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストのパーセントは、約100である。
【0103】
ドラッグデリバリーシステムの寿命にわたって、本システムからの治療剤の比較的定速の放出を与えることが望ましい場合がある。例えば、前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストが、本システムの寿命にわたって、1日当たり約0.01μg〜約2μgの量で放出されることが望ましい場合がある。しかし、放出速度は、生分解性ポリマーマトリックスの配合に依存して変化して、増加するかまたは減少する場合もある。さらに、前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出プロフィールは、1つまたはそれ以上の直線部分および/または1つまたはそれ以上の非直線部分を含みうる。一旦、本システムが分解または侵食しはじめたら、放出速度はゼロより大きいことが好ましい。
【0104】
眼内インプラントのようなドラッグデリバリーシステムは、モノリシックである(即ち、1つまたはそれ以上の活性剤がポリマーマトリックス全体に均一に分散されている)か、または被包され、その場合、活性剤の貯留部がポリマーマトリックスによって被包されている。製造容易性により、モノリシックインプラントが、被包形態より一般に好ましい。しかし、被包された貯留部型インプラントによって得られるより優れた調節は、前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストの治療レベルが狭い幅内にあるいくつかの状況において有利な場合もある。さらに、本明細書に記載された治療剤を含め、治療成分を、マトリックス中に不均質に分散させてもよい。例えば、ドラッグデリバリーシステムは、該システムの第二部分に対してより高い濃度の前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストを有する部分を含有してよい。
【0105】
本明細書に開示するポリマーインプラントは、針での投与用に、約5μm〜約2mm、または約10μm〜約1mmの大きさ、外科的移植による投与用に、1mmより大、または2mmより大、例えば3mm〜10mmの大きさであってよい。ヒトの硝子体腔は、例えば1〜10mmの長さを有する種々の形状の比較的大きいインプラントを収容することができる。インプラントは約2mm×0.75mm直径の寸法を有する円筒形ペレット(例えばロッド)であってよい。または、インプラントは、長さ約7mm〜約10mm、直径約0.75mm〜約1.5mmの円筒形ペレットであってもよい。
【0106】
インプラントは、眼、例えば硝子体へのインプラントの挿入、およびインプラントの収容の両方を容易にするように、少なくとも幾分柔軟性であってもよい。インプラントの全重量は、一般に約250〜5000μg、より好ましくは約500〜1000μgである。例えば、インプラントは約500μg、または約1000μgであってよい。しかし、眼に投与する前に、より大きなインプラントを形成し、さらに加工してもよい。さらに、相対的により大量の前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストをインプラントに入れる場合には、より大きなインプラントが望ましいであろう。非ヒト個体に関しては、インプラントの寸法および全重量は、個体の種類に依存してより大きいかまたはより小さくてよい。例えば、ウマの約30mLおよびゾウの約60〜100mLと比較して、ヒトは約3.8mLの硝子体容量を有する。ヒトに使用される大きさのインプラントを、他の動物に応じて大きくするかまたは小さくし、例えばウマ用のインプラントは約8倍大きくし、または、例えばゾウ用のインプラントは26倍大きくしうる。
【0107】
中心が1つの物質で形成され、表面が同じかまたは異なる組成物の1つまたはそれ以上の層を有し、層が架橋しているか、または異なる分子量、異なる密度または多孔率等であるドラッグデリバリーシステムを製造することができる。例えば、前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストの初期ボーラスを急速に放出することが望ましい場合、中心が、ポリラクテート−ポリグリコレートコポリマーで被覆されたポリラクテートであってよく、それによって初期分解速度を増加しうる。または、中心が、ポリラクテートで被覆されたポリビニルアルコールであってもよく、それによって、外側のポリラクテートの分解時に、中心が溶解し、眼から急速に流れ出るようにしうる。
【0108】
本ドラッグデリバリーシステムは、繊維、シート、フィルム、微小球、球体、円板、プラク等を包含する任意の形状であってよい。システムの大きさの上限は、システムに関する許容性(toleration for the system)、挿入時の大きさ制限、取扱い容易性等のような要因によって決定される。シートまたはフィルムを使用する場合、シートまたはフィルムは、取扱い容易性のために、少なくとも約0.5mm×0.5mm、一般に約3〜10mm×5〜10mm、厚さ約0.1〜1.0mmである。繊維を使用する場合、繊維の直径は、一般に約0.05〜3mmであり、繊維の長さは一般に約0.5〜10mmである。球体は、直径約0.5μm〜4mmであり、他の形状の粒子に匹敵する容量を有しうる。
【0109】
システムの大きさおよび形は、放出速度、治療期間、および移植部位における薬剤濃度を調節するために使用することもできる。例えば、より大きいインプラントは、比例的により高い投与量を送達するが、表面積/質量比に依存して、より遅い放出速度を有する場合もある。移植部位に適合させるために、システムの特定の大きさおよび形状を選択する。
【0110】
治療剤、ポリマーおよび任意の他の調節剤の比率は、例えば、そのような成分の種々の比率でいくつかのインプラントを処方することによって経験的に決定しうる。USP承認の溶解または放出試験方法を使用して、放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995), p.1790-1798)。例えば、無限沈下法(infinite sink method)を使用して、秤量したインプラント試料を、水中に0.9%NaClを含有する測定容量の溶液に添加すると、該溶液容量は、放出後の薬剤濃度が飽和の5%未満であるような容量になる。混合物を37℃に維持し、ゆっくり撹拌して、インプラントを懸濁状態に維持する。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々方法、例えば、分光光度的に、HPLC、質量分析等によって、吸収が一定になるまでか、または90%を超える薬剤が放出されるまで、追跡しうる。
【0111】
治療成分に加えて、および本明細書に記載の成分と同様に、本明細書に開示したポリマードラッグデリバリーシステムは、添加剤成分を含みうる。添加剤成分には、可溶化剤、増粘剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤等が含まれると理解することができる。
【0112】
さらに、米国特許第5869079号に記載されているような放出調節剤もドラッグデリバリーシステムに含有させてよい。使用される放出調節剤の量は、所望の放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下の治療剤の放出プロフィールに依存する。電解質、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムも、本システムに含有させてよい。緩衝剤または促進剤が親水性である場合、それは放出促進剤としても作用しうる。親水性添加剤は、薬剤粒子を囲んでいる物質のより速い溶解(これは、露出した薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤の生体内分解速度を増加させる)によって、放出速度を増加させる作用をする。同様に、疎水性緩衝剤または促進剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤の生体内分解速度を遅くする。
【0113】
種々の方法を使用して、本明細書に開示するドラッグデリバリーシステムを製造しうる。有用な方法は、溶媒蒸発法、相分離法、界面法、成形法、射出成形法、押出法、同時押出法、カーバープレス(carver press)法、ダイ打抜き法、熱圧縮法、それらの組合せ等であるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0114】
具体的な方法が、米国特許第4997652号に記載されている。押出法を使用して、製造における溶媒の必要性を回避しうる。押出法を使用する場合、ポリマーおよび薬剤は、製造に必要とされる温度(一般に、低くとも約85℃)において安定であるように選択される。押出法は、約25℃〜約150℃、より好ましくは約65℃〜約130℃の温度を使用する。インプラントは、薬剤/ポリマー混合のために、約0〜1時間、0〜30分間、または5〜15分間にわたって、温度を約60℃〜約150℃、例えば約130℃にすることによって製造しうる。例えば、時間は、約10分間、好ましくは約0〜5分間であってよい。次に、インプラントを、約60℃〜約130℃、例えば約75℃の温度で押し出す。
【0115】
さらに、インプラントを同時押出してもよく、それによってインプラントの製造の間に、コア領域に被膜を形成しうる。
【0116】
圧縮法を使用してドラッグデリバリーシステムを製造してもよく、圧縮法は、一般に、押出法より速い放出速度のエレメントを生じる。圧縮法は、約50〜150psi、より好ましくは約70〜80psi、さらに好ましくは約76psiの圧力を使用し、約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を使用する。
【0117】
本発明のある特定の態様では、徐放性の眼内ドラッグデリバリーシステムを製造する方法は、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストとポリマー物質を混合して、個体の眼に配置するのに適したドラッグデリバリーシステムを形成することを含む。得られたドラッグデリバリーシステムは、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを長期間眼内へ放出するのに有効である。本方法は、微粒子状の前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストおよびポリマー物質を押し出して、繊維、シート等の押出組成物を形成することを含んでなる。
【0118】
ポリマー粒子が所望である場合は、本方法は、本明細書に記載されているように、押出組成物をポリマー粒子の集合またはインプラントの集合に形成することを含んでなる。そのような方法は、押出組成物の切断、押出組成物の粉砕等の1またはそれ以上の工程を含んでなる。
【0119】
本明細書に記載するように、ポリマー物質には、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマーまたはそれらの組合せが含まれる。ポリマーの例にはポリマーおよび上記に示した物質の各々が挙げられる。
【0120】
本発明の態様はまた、本発明のドラッグデリバリーシステムを含む組成物にも関する。例えば、および一態様では、組成物は本発明のドラッグデリバリーシステムおよび眼科的に許容し得る担体成分を含むことができる。そのような担体成分は、水性の組成物、例えば生理食塩水またはリン酸緩衝液であってよい。
【0121】
本発明のさらなる態様は、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストに関する。そのようなアゴニストは、それが投与される眼からのアゴニストの前眼部クリアランスをもたらすのに効果的である化学的または物理的構造を有する。そのようなアゴニストは、硝子体内または眼周囲投与により眼に投与することができる。そのようなアゴニストは、緑内障等の1またはそれ以上の眼の症状を処置するための医薬の製造において用いることができる。ある特定の態様では、眼の前方部および後方部に影響が及んでいる状態を処置するための医薬においてアゴニストを用いることができる。
【0122】
別の態様は、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを含んでなる眼科治療物質を製造する方法に関する。広い態様では、本方法は、約3時間よりも長い硝子体半減期を有するα2アドレナリン受容体アゴニストを選択する工程;選択したα2アドレナリン受容体アゴニストを液体の担体成分またはポリマー成分と混合して眼に対する投与に適した物質を形成する工程を含んでなる。あるいは別の言い方をすれば、本発明物質を製造する方法は、高い房水/硝子体液濃度比および長い硝子体内半減期を有するα2アドレナリン受容体アゴニストを選択する工程を含むことができる。
【0123】
本方法はさらに、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストの選択に典型的に用いられる以下の工程の1またはそれ以上を含むことができる:α2アドレナリン受容体アゴニストを患者の眼に投与し、硝子体液および房水の少なくとも1つにおけるα2アドレナリン受容体アゴニストの濃度を時間に対して測定する;およびα2アドレナリン受容体アゴニストを患者の眼に投与し、α2アドレナリン受容体アゴニストの硝子体半減期および眼からのクリアランスの少なくとも1つを測定する。
【0124】
本方法において形成される物質は液体を含有する組成物、生分解性ポリマーインプラント、非生分解性ポリマーインプラント、ポリマー微粒子またはそれらの組合せであってよい。本明細書に記載するように、この物質は固形インプラント、半固形インプラント、および粘弾性インプラントの形態であってよい。ある特定の態様では、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストをポリマー成分と組み合わせて混合物を形成し、この方法はさらにその混合物を押し出すことを含んでなる。
【0125】
本発明のさらなる態様は、患者の視力を改善または維持する方法に関する。一般に、本方法は、本眼科治療物質をそれを必要とする個体の眼に投与することを含んでなる。本発明物質の硝子体内または眼周囲投与等の、投与は前眼部の症状、後眼部の症状またはそれらの組合せの処置に有効である。例えば、ある特定の本発明物質を患者に投与して、視神経細胞に対する神経保護をもたらし、上昇した眼圧を下げることができる。本発明物質は特に緑内障の処置に有用であり得る。本発明物質の投与は、眼球血管膜、硝子体、網膜、脈絡膜、網膜色素上皮を含む、後眼部構造の少なくとも1つへα2アドレナリン受容体アゴニストを送達するのに有効である。
【0126】
本組成物およびドラッグデリバリーシステムは、上記のように、後眼部内または眼周囲に眼内投与した場合に、前眼部に影響が及んでいる症状または疾患等の、前眼部症状の処置に有効である(眼の前房および後房を含む)さらに、本組成物およびドラッグデリバリーシステムは、後眼部(眼の網膜を含む)に影響が及んでいる症状または疾患等の後眼部症状を処置するのにも有効である。
【0127】
さらなる態様では、本組成物およびドラッグデリバリーシステムを1またはそれ以上の局所用眼科組成物と組み合わせて患者に投与することができる。例えば、本組成物およびドラッグデリバリーシステムを、患者の眼の眼圧(IOP)を下げるのに有効な組成物と組み合わせて投与することができる。この組合せ療法により、本組成物およびドラッグデリバリーシステムの治療剤の前眼部クリアランスが増大し得る。例えば、患者のIOPを低減することにより(例えば約5mmHg)治療剤の前眼部への移動が増進され得る。局所作用ブナゾシン溶液をラットの眼に適用してIOPを低減すると、FITC−デキストリンの硝子体から液体への移動が増大したことが提示されている(Sugiura et al., "Effects of intraocular pressure change on movement of FITC-dextran across vitreous-aqueous interface", (1989), Jpn J. Ophthalmol, 33(4):441-450)。
【0128】
他の組合せ療法としては、IOPの低減を目的とする外科手術と本組成物および/またはドラッグデリバリーシステムの投与が挙げられる。例えば、本組成物および/またはドラッグデリバリーシステムを、レーザーまたは機械的な外科技術を用いる繊維柱帯手術を受けているまたは受けることになっている患者に投与することができる。
【0129】
有機カチオンは、例えば生理学的pHでの一過性のまたは永続的な正の正味電荷を有する有機分子であると理解され得る。有機カチオンの例としては、抗コリン作用薬、アドレナリン作動薬、抗新生物薬、交感神経様作用薬、抗ヒスタミン薬、生体異物、いくつかのビタミン、および種々の内因性アミン(例えばコリン、エピネフリン、ドーパミン、およびグアニジン)が挙げられる。そのような有機カチオンは、有機カチオントランスポーターによって関門または膜を通過して輸送され得る。競争的阻害および非競争的阻害を含む阻害は、有機カチオントランスポーターを用いる有機カチオンの輸送を減少させ得る。
【0130】
従って、さらなる組合せ療法としては、本組成物および/またはドラッグデリバリーシステムと、RPE有機カチオントランスポーター阻害物質の投与の組み合わせが挙げられる。例えば、RPE有機カチオントランスポーター阻害物質の投与は、本α2アドレナリン受容体アゴニストの後眼部輸送速度を減少させ、それによりα2アドレナリン受容体アゴニストの硝子体内半減期の増大とおよび付随する前眼部クリアランス速度における増大または強化がもたらされる。好適なRPE有機カチオントランスポーター阻害物質の例としては、代謝阻害剤および有機カチオンが挙げられる。代謝阻害剤の例としては、カルボニルシアニド−p−(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン、2,4−ジニトロフェノール、NaN3、ロテノン、およびHgCl2が挙げられるがこれに限定されない。競争阻害は有機カチオンと起きる。有機カチオンの例としては、キナクリン、ピリラミン、キニジン、バリノマイシン、ジプリベフリン、カルバコール、ジフェニルヒドラミン、ジルチアゼム、チモロール、プロプラノロールおよびベラパミルが挙げられるがこれに限定されない。そのような阻害物質は、ヒトRPE細胞系におけるベラパミルの輸送の阻害に有用である(Han et al., "Characterization of a Novel Cationic Drug Transporter in Human Retinal Pigment Epithelial Cells", Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 296(2): 450-457, 2001)。他の阻害剤としては、有機カチオントランスポーター2(OCT2)の高親和性阻害物質であるシメチジン、およびOCT1の高親和性阻害物質であるチロシンが挙げられる。ある特定の態様では、生理学的pHでカチオンとして存在するα2アドレナリン受容体アゴニストと組み合わせて本α2アドレナリン受容体アゴニストを患者の眼に投与することができる。例えば、本α2アドレナリン受容体アゴニストはブリモニジンと組み合わせて投与することができる。そのようなカチオン性α2アドレナリン受容体アゴニストは、本α2アドレナリン受容体アゴニストの有機カチオントランスポーターを競争的に阻害する。
【0131】
RPE有機カチオントランスポーター阻害物は、本α2アドレナリン受容体アゴニストと別々に投与する、あるいは本アゴニストとともに投与することができる。従って、組合せ療法には、本α2アドレナリン受容体アゴニストおよび1またはそれ以上のRPE有機カチオントランスポーター阻害剤を含有する、単一の組成物またはポリマードラッグデリバリーシステムの投与が含まれる。
【0132】
注射器を本発明物質の投与に用いる場合、注射器は適当なサイズの注射針、例えば27ゲージまたは30ゲージの注射針、を含みうる。そのような注射器は本発明物質を、ヒトまたは動物の後眼部または眼周囲に注入するのに有効である。注射針は、取り外した後に開口部が自然に密閉されるよう十分に小さくてよい。
【0133】
本方法は、後眼部への単独注射または例えば、約1週間または約1ヶ月または約3ヶ月から約6ヶ月または約1年または以上の期間にわたって反復して注射することを含みうる。
【0134】
本発明物質は、好ましくは滅菌された形態で患者に投与される。例えば、本発明物質を保存する際に滅菌することができる。任意の常套的な好適な滅菌方法を用いて物質を滅菌することができる。例えば、本発明物質を放射線により滅菌することができる。好ましくは、この滅菌法は、本システムの治療剤の活性または生物学的または治療的活性を減少させない。
【0135】
本発明物質はガンマ線により滅菌することができる。一例として、ドラッグデリバリーシステムは2.5〜4.0ミリラドのガンマ線により滅菌され得る。ドラッグデリバリーシステムは、投与デバイス、例えば注射アプリケータ、を含むその最終的な一次包装システムにおいて最終的に滅菌することができる。あるいは、ドラッグデリバリーシステムを単独で滅菌した後、アプリケータシステム中で無菌的に包装することができる。この場合、アプリケータシステムは、ガンマ線照射、エチレンオキシド(ETO)、加熱またはその他の手段によって滅菌することができる。ドラッグデリバリーシステムは、低い温度にてガンマ線照射により滅菌して安定性を改善する、またはアルゴン、窒素もしくは他の手段で覆うことにより酸化を除くことができる。ベータ線照射または電子線もまた、紫外線照射と同じようにインプラントの滅菌に用いることができる。任意の照射源からの照射量はドラッグデリバリーシステムの初発バイオバーデンに依存して減らし、2.5〜4.0ミリラドより遙かに少ない量にすることができる。ドラッグデリバリーシステムは、無菌の出発物質から無菌状態下で製造してもよい。出発物質は、加熱、照射(ガンマ線、ベータ線、紫外線)、ETOまたは滅菌濾過により滅菌することができる。半固形ポリマーまたはポリマーの溶液は、ドラッグデリバリーシステムの組立および前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを入れる前に、滅菌濾過または加熱により前に滅菌することができる。滅菌されたポリマーは、無菌のドラッグデリバリーシステムを無菌的に製造するために用いることができる。
【0136】
上記に開示した本眼科治療物質に入れられる前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストに加え、本発明物質には、1またはそれ以上のさらなる眼科的に許容し得る治療剤を加えることができる。例えば、眼科治療物質は、1またはそれ以上の抗ヒスタミン薬、1またはそれ以上の抗生物質、1またはそれ以上のベータブロッカー、1またはそれ以上のステロイド、1またはそれ以上の抗新生物薬、1またはそれ以上の免疫抑制剤、1またはそれ以上の抗ウイルス剤、1またはそれ以上の抗酸化剤およびそれらの混合物を含むことができる。
【0137】
本発明の物質に使用しうるさらなる薬理学的または治療的薬剤の例は、米国特許第4474451号第4〜6欄、および同第4327725号第7〜8欄に開示されている薬剤を包含するが、それらに限定されない。
【0138】
抗ヒスタミン薬の例は、ロラダチン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニルアミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、デクスブロムフェニラミン、メトジラジン、およびトリメプラジン、ドキシラミン、フェニラミン、ピリラミン、キオルシクリジン、トンジラミン、ならびにそれらの誘導体であるが、それらに限定されない。
【0139】
抗生物質の例は、セファゾリン、セフラジン、セファクロール、セファピリン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフォテタン、セフトキシム(cefutoxime)、セフォタキシム、セファドロキシル、セフタジジム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セフォキシチン、セフォニシド、セフォラニド、セフトリアキソン、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシム、シクロスポリン、アンピシリン、アモキシリン、シクラシリン、アンピリシン、ペニシリンG、ペニシリンVカリウム、ピペラシリン、オキサシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、チカルシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メチシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、塩酸シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、リンコマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメテート、コリスチン、アジスロマイシン、オーグメンチン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、ガチフロキサシン、オフロキサシンおよびそれらの誘導体であるがそれらに限定されない。
【0140】
ベータブロッカーの例は、アセブトロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、およびそれらの誘導体である。
【0141】
ステロイドの例は、コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ロテプレドノール、フルアザコート、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、リアムシノロンヘキサカトニド、酢酸パラメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、トリアムシノロン、トリアムシノロン・アセトニド、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物である。
【0142】
抗新生物薬の例は、アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ジュアノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキソールおよびその誘導体、タキソテールおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファン、シクロホスファミド、およびフルタミド、ならびにそれらの誘導体である。
【0143】
免疫抑制薬の例は、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体である。
【0144】
抗ウイルス薬の例は、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、バルシクロビル、ジデオキシシチジン、ホスホノ蟻酸、ガンシクロビルおよびそれらの誘導体である。
【0145】
酸化防止剤の例は、アスコルベート、α−トコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタザンチン(astazanthin)、リコペン、N−アセチル−システイン、カルノシン、γ−グルタミルシステイン、ケルセチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、シトレート、イチョウエキス、茶カテキン、ビルベリーエキス、ビタミンEまたはビタミンEのエステル、レチニルパルミテート、およびそれらの誘導体である。
【0146】
他の治療薬は、スクアラミン、炭酸脱水酵素阻害薬、αアゴニスト、プロスタミド、プロスタグランジン、駆虫薬、抗真菌薬、およびそれらの誘導体を包含する。
【0147】
本発明物質は、緑内障等の眼の症状の症状を処置または低減するのに有効な前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストの量を放出するように構成する。
【0148】
本明細書に開示する物質は、下記のような疾患または症状の治療に有効でありうる前記の他の治療薬を送達するように構成してもよい。
【0149】
黄斑症/網膜変性:
非滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性斑状視神経網膜疾患、中心性漿液性脈絡網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫。
【0150】
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:
急性多発性斑状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット網膜脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多病巣性脈絡膜炎、多発一過性白点症候群(MEWDS)、眼類肉腫症、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト−コヤナギ−ハラダ症候群。
【0151】
血管疾患/滲出性疾患:
コーツ病、傍中心窩(parafoveal)毛細管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分岐血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常ヘモグロビン症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症。
【0152】
外傷性/外科性:
交感神経性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固、手術時低灌流、放射線性網膜症、骨髄移植性網膜症。
【0153】
増殖性疾患:
増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症、未熟児網膜症(水晶体後線維形成性)。
【0154】
感染性疾患:
眼ヒストプラスマ症候群、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片側性亜急性視神経網膜炎、ハエウジ病。
【0155】
遺伝性疾患:
網膜ジストロフィー関連全身性疾患、先天性停在夜盲症、錐体ジストロフィー、黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー(Pattern Dystrophy of the Retinal Pigmented Epithelium)、X染色体性網膜分離、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性同心性黄斑症、ビエッティ結晶性ジストロフィー(Bietti’s Crystalline Dystrophy)、弾性線維性仮性黄色腫、Osler Weber症候群。
【0156】
網膜断裂/円孔:
網膜剥離、斑状円孔、巨大網膜断裂。
【0157】
腫瘍:
腫瘍に関連する網膜疾患、充実性腫瘍、腫瘍転移、良性腫瘍、例えば血管腫、神経繊維腫、トラコーマ、化膿性肉芽腫、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ系腫瘍。
【0158】
その他:
点状内脈絡膜症、急性後多発性斑状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎、眼の炎症および免疫障害、眼の血管異常、角膜移植拒絶反応、血管新生緑内障等。
【0159】
本発明の他の態様において、下記を含んで成る眼疾患治療用キットを提供する:a)本明細書に記載の前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストを含有する容器、例えば注射器または他のアプリケータ;およびb)使用説明書。使用説明書は、本発明の物質の取扱い方法、眼領域への本発明物質の挿入方法、および本発明物質の使用により予期される事柄を含みうる。容器は、単回用量の前眼部から排出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストを含み得る。
【実施例】
【0160】
以下に記載する非限定的な実施例は、当業者に具体的な好ましいドラッグデリバリーシステム、そのようなシステムの製造方法および本発明の範囲に含まれる状態を処置する方法を提供する。以下の実施例は本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0161】
実施例1
ブリモニジンの硝子体内クリアランス
白ウサギにおけるブリモニジンの硝子体内クリアランスについて調べた。ウサギの両目に928ngのブリモニジンを含む溶液50μLを硝子体内注射した。所定の時間に硝子体液のサンプルを採取し、硝子体液中のブリモニジン濃度を測定した。
【0162】
図1に示すとおり、ブリモニジンの硝子体内濃度は、投与後0.5時間後の608±116ng/mLから10時間後の9.68±6.48 ng/mLへ指数関数的に変化した。推定されるブリモニジンの硝子体半減期(t12)は1.45時間と算出された。硝子体クリアランス速度の推定値は0.487mL/hourと算出された。
【0163】
これらの結果に基づき、ブリモニジンは網膜を通る経路によって硝子体から排出されると結論付けられた。これらの結果は、後眼部からのクリアランスが網膜を通る経路である親水性〜中程度に親油性であるα2アドレナリン受容体アゴニストが、硝子体内投与による眼の前房および/または後房へ効果的に送達することができないことを示している。
【0164】
実施例2
ブリモニジン硝子体内インプラントの薬物動態学的特性
ブリモニジンを含有する生分解性ポリマーインプラントを本明細書に記載の方法にしたがって調製した。インプラントはポリ乳酸(PLA)から製造し、ブリモニジン200mgを入れた。これらのブリモニジンインプラントをウサギの眼の硝子体へ投与した。硝子体液および房水サンプルを種々の時間に採取し、サンプル中のブリモニジンの量を以下のTable1に示すとおり測定した。

Table1
【表1】

Table1中、NCは、平均に寄与する濃度の50%以上がBLQ(定量下限値以下)であったため「算出不可能」であったことを意味する。データは、平均±SEM(N=4(眼)およびN=2(血漿);各サンプリング時間毎)で示す。さらに、a、b、c、およびdなる文字の定義は以下のとおり。
a:N=4、1個のサンプルがBLQであった(0として平均値の計算に組み入れた)。
b:N=4、2個のサンプルがBLQであった(0として平均値の計算に組み入れた)。
c:N=3、1個のサンプルが検出不能(ND)であった。
d:N=2、2個のサンプルが定量限界より上であった(括弧内は推定平均値)。
【0165】
別の分析系において、α2アドレナリン受容体を活性化するブリモニジンのEC50は約2nMであった。標的濃度(Css)としてこれを2倍することおよび硝子体クリアランス(Cl)に基づき、次式:Ro=Css*Clを用いて、2.5μgのブリモニジンの0.57ng/時間(Ro)の一定の送達が、所望の定常状態の薬物レベルを6ヶ月間にわたって維持するための硝子体内インプラントデバイスに望ましい。
【0166】
予想外にも、Table1に示すとおり、ブリモニジンインプラントを硝子体内に移植したとき、インプラントは、ブリモニジンの高い硝子体および網膜濃度でブリモニジンを長期間持続して放出したが、房水におけるブリモニジンの量は低いかまたは検出レベル以下であった。従って、ブリモニジンインプラントは、ブリモニジンレベルが網膜においては神経保護の治療レベルであったが、前房においてはそうではなかった。従って、硝子体内投与したとき、ブリモニジンは神経保護作用をもたらすが、前眼部における効果に付随する眼圧の低下はもたらさない。
【0167】
実施例3
ブリモニジン結膜下投与の薬物動態学的特性
ブリモニジンをNew Zealand白ウサギの結膜下に、250μgのブリモニジンを含有するポリ乳酸(PLA)ウエハ、ブリモニジン200μgを含有するポリ−オルト−エステル(POE)ロッド、または単回注射により20μgまたは200μgのブリモニジンPLA微粒子を含む100μL液を移植した。100μL注射は、10μg/mLの、固有粘度0.6dl/gのPLAポリマー98%(w/w)(即ちPLA980μg)およびブリモニジン遊離塩基2%(w/w)(即ち20μg)を含有する微粒子を含有した。
100mg/mLまたは200mg/mLの微粒子の100μLまたは200μL以下の注射はそれぞれ(ブリモニジン200μg)、固有粘度0.6dl/gのPLAポリマー98%(w/w)(即ちPLA9.8mg)およびブリモニジン遊離塩基2%(w/w)(即ち200μg)を含有した。250μgブリモニジンを含有する水1mgは、PLA(R206)ポリマー75%(w/w)(750μg)およびブリモニジン酒石酸塩25%(w/w)(250μg)を含有した。250μgブリモニジンを含有するロッド1mgは、APF255POE(APF94)ポリマー80%(w/w)(800μg)およびブリモニジン20%(w/w)(200μg)を含有した。200μgブリモニジンを含有するロッド1mgは、APF260POE(APF99)ポリマー80%(w/w)(800μg)およびブリモニジン20%(w/w)(200μg)を含有した。200μgブリモニジンを含有するロッド1mgは、APF423POE(APF162)ポリマー80%(w/w)(800μg)およびブリモニジン20%(w/w)(200μg)を含有した。
【0168】
30群のウサギ(1群当たり2匹)を用いた。5群ずつ6つのセクションに分けた。1つのセクションには10mg/mLの微粒子(20μgのブリモニジンを含有)、1つのセクションには100mg/mLの微粒子(200μgのブリモニジンを含有)、1つのセクションには1mgのPOE−AP94インプラント(200μgのブリモニジンを含有)、1つのセクションには1mgのPOE−AP99インプラント(200μgのブリモニジンを含有)、1つのセクションには1mgのPOE−AP162インプラント(200μgのブリモニジンを含有)および1つのセクションには1mgのPLAウエハ(250μgのブリモニジンを含有)を投与した。各セクションにおいて、1群は投与後5日目(DAD)に眼科観察を行った後、8日目に安楽死させ、1群は投与後5日目および29日目に眼科観察を行った後、31日目に安楽死させ、1群は投与後5日目、29日目、54日目に眼科観察を行った後、60日目に安楽死させ、1群は投与後5日目、29日目、54日目、86日目に眼科観察を行った後、93日目に安楽死させ、1群は投与後5日目、29日目、54日目、86日目に眼科観察を行った後、93日目に安楽死させた。眼神経保護をもたらすのに少なくとも2nMのブリモニジンが必要であるため、ドラッグデリバリーシステムを標的濃度10〜20nM(3−6ng/mL)ブリモニジンをもたらすよう処方した。
【0169】
ブリモニジンの用量は、硝子体クリアランス速度0.487ml/日とブリモニジンの目的治療濃度に基づいた。関係式Css=Ro/Cl(式中、Ro=送達速度、Css=定常状態での濃度およびCl=硝子体クリアランス)に基づき、3ヶ月間の放出速度を約1.46〜2.92ng/日と算出した。10mg/mLおよび100mg/mLの微粒子の60日間の放出速度は1.4および14μg/日であった。APF255、APF260、およびAPF423の放出速度は、それぞれ約2.2、2.6、および2.5μg/日であった。PLAウエハの放出速度は、約5μg/日(30日間)および1.25μg/日(90日間)であった。1個のインプラントは十分であり、慣用の方法を眼内および全身の薬物動態学を測定するために用いた。
【0170】
1%トロピカミド2滴および塩酸フェニレフリン2.5%2滴の局所適用による外科手術のために眼を準備した。ベタジンを適用し、眼から洗浄し、1〜2滴の0.5%塩酸プロパラカインをそれぞれの眼に投与した。結膜を縁および側面から直筋へ3mm切開した後、結膜下にブリモニジンドラッグデリバリーシステムの1回注射かまたは移植を行った。ロッドとウエハは鉗子を用いて投与した。結膜を縫合して閉じ、眼用潤滑剤を投与した。結膜下注射は、鉗子を用いて背側部4分の1の眼球結膜を上げることにより行った。注射は結膜下腔内に行った。
【0171】
肉眼的眼検査を週1回行い、最初の1週間の間はより綿密な検査を行った(細隙灯検査および間接検眼法)。検査には、まぶた、結膜、角膜、前房、虹彩、水晶体、硝子体、および網膜の観察を含めた。準備したウサギをMedtronic Solan, Model 30 classic pneumatonometerを用いて眼内圧(IOP)を、午前8時、正午、および午後4時に記録した。涙組織、房水組織および残りの組織を採取し保存した。
【0172】
眼の肉眼検査に基づけば、結膜充血、腫れまたは眼漏は観察されなかった。
【0173】
細隙灯検査および間接検眼法に基づけば、少数の眼が結膜充血を示した。少数の眼に白内障が認められたがこれは薬物に関連性のものではないと結論付けられた。結膜色素沈着がいくつかの眼において観察されたが、毒性学的有意性はないと考えられた。同様に、いくつかの眼が血管新生の増加を示したが、毒性学的有意性はないと考えられた。
【0174】
14日目に、APF423POEインプラント(200μgブリモニジン)で処置した眼の平均IOPは、午前8時の時点での基底値のIOPよりも有意に高かった。APF423で処置した眼について、7、14、56および89/90日目にも午後4時に高いIOPが観察された。
【0175】
30日目、APF255POEインプラント(200μgブリモニジン)で処置した眼の平均のIOPは午前8時および正午のプラセボで処置した眼の基底のIOPの平均よりも有意に低かった。56日目に、APF255で処置した眼の平均のIOPは午前8時および正午での基底のIOPの平均よりも有意に低かった。
【0176】
30日目、APF260POEインプラント(200μgブリモニジン)で処置した眼の平均のIOPは午前8時の基底のIOPの平均よりも有意に低く、正午の基底のおよびプラセボで処置した眼のIOPの平均よりも低かった。
【0177】
56日目、PLGA1206_01微粒子(20μgブリモニジン)で処置した眼の午前8時、正午および午後4時のIOPの平均は、基底のIOPの平均よりも有意に低かった。
【0178】
APF255POE、APF260POEまたはAPF423POEロッドの結膜下移植を両目に1回行った後、検出されたブリモニジンは、APF255POEインプラントで処置した8日目の水晶体組織を除いて、移植後91日目までのすべての時間ですべての眼組織において定量限界レベルよりも低かった。BF9ウエハの1回の結膜下移植の後、検出されたブリモニジンはすべての眼組織において定量限界値よりも低かった。100μL微粒子の1回の結膜下注射の後、検出されたブリモニジンは、8日目および33日目の虹彩毛様体および8日目および33日目の水晶体を除いて、移植後91日目までのすべての時間ですべての組織において定量限界レベルよりも低かった。
【0179】
血漿ブリモニジン濃度は、すべてのサンプルで定量下限値よりも低かった。観察されたブリモニジンの濃度を以下のTable 2〜7に示す。
【0180】
Table2−20μgブリモニジンを含む100μL微粒子の結膜下注射後のブリモニジン濃度
【表2】

Table2中、NC=算出不能。aはN=4であり、1つのサンプルが定量下限値以下であったことを意味し、bはN=4であり、2つのサンプルが定量下限値以下であったことを意味し、cはN=2であり、1つのサンプルが定量下限値以下であったことを意味する。
【0181】
Table3−200μgブリモニジンを含有する100μL微粒子の結膜下注射後のブリモニジン濃度
【表3】

Table3中、NC=算出不能。aはN=4であり、1つのサンプルが定量下限値以下であったことを意味し、およびbはN=4であり、2つのサンプルが定量下限値以下であったことを意味する。
【0182】
Table4−200μgブリモニジンを含有するAPF255POEの結膜下移植後のブリモニジン濃度
【表4】

Table4中、NC=算出不能。aはN=4であり、2つのサンプルが定量下限値以下であったことを意味する。
【0183】
Table5−200μgブリモニジンを含有するAPF260POEの結膜下移植後のブリモニジン濃度
【表5】

Table5中、NC=算出不能。aはN=2であり、1つのサンプルが定量下限値以下であったことを意味する。
【0184】
Table6−200μgブリモニジンを含有するAPF423POEインプラントの結膜下移植後のブリモニジン濃度
【表6】

Table6中、NC=算出不能。aはN=2であり、1つのサンプルが定量下限値以下であったことを意味する。
【0185】
Table7−250μgブリモニジンを含有するウエハの結膜下移植後のブリモニジン濃度
【表7】

Table7中、NC=算出不能。aはN=2であり、1つのサンプルが定量下限値以下であったことを意味する。
【0186】
上記において、水性の硝子体液サンプルについて10ng/mL、血漿サンプルについて0.05ng/mL、虹彩毛様体サンプル、水晶体サンプルおよび網膜サンプルについて0.5ngの定量下限を有するLC−MS/MS法を用いてサンプルを定量した。
【0187】
要約すれば、20〜250μgのブリモニジンを含有するポリマードラッグデリバリーシステムの結膜下投与では、IOPを低減するために房水へ十分な量のブリモニジンを送達することができない。これらのドラッグデリバリーシステムおよび送達方法を用いては、ブリモニジンの治療的な眼内濃度が観察されなかった。
【0188】
実施例4
前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストおよび生分解性ポリマーマトリックスを含有するドラッグデリバリーシステムの製造および試験
ステンレススチールモーターを用いて、前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを生分解性ポリマー組成物と混合することにより、生分解性ドラッグデリバリーシステムを製造する。96RPMにて15分間にセットしたTurbulaシェーカーにより組成物を混合した。混合した粉末をモーターの壁からそぎ落とし、再度15分間混合した。混合した粉末を半溶融状態になるまで所定の温度で計30分間加熱し、ポリマー/薬物溶融物を形成した。
【0189】
9ゲージのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)管を使用してポリマー/薬物溶融物をペレット化し、ペレットをバレルに装填し、物質を所定コア押出温度でフィラメントに押し出すことによって、ロッドを製造する。次に、フィラメントを、約1mgサイズのインプラントまたは薬剤送達システムに切る。ロッドは、約2mm長さ×0.72mm直径の寸法を有する。ロッドインプラントは、約900μg〜1100μgの重さである。
【0190】
所定温度においてCarverプレスでポリマー溶融物を平板化し、該平板物質を、それぞれ約1mgのウエハに切ることによって、ウエハを形成する。ウエハは、直径約2.5mm、厚さ約0.13mmである。ウエハインプラントは、約900μg〜約1100μgの重さである。
【0191】
生体外放出試験を、インプラント(ロッドまたはウエハ)の各ロットについて行うことができる。各インプラントを、37℃において、リン酸緩衝生理食塩水10mLと共に、24mLのネジ蓋バイアルに入れ、第1、4、7、14、28日およびその後2週間ごとに、1mLアリコートを取り、等容量の新しい媒質と交換することができる。
【0192】
薬物アッセイは、HPLC(Waters 2690 Separation Module(または2696)、およびWaters 2996 Photodiode Array Detectorから成る)によって行ってよい。30℃に加熱したUltrasphere, C-18(2), 5μm;4.6×150mmカラムを分離に使用し、検出器は264nmに設定し得る。移動相は、流速1mL/分および合計実行時間12分/試料の(10:90)MeOH緩衝移動相とし得る。緩衝移動相は、(68:0.75:0.25:31)13mM 1−ヘプタンスルホン酸、ナトリウム塩−氷酢酸−トリエチルアミン−メタノールを含んで成ってよい。放出速度は、時間の経過に伴って、所定容量の媒質に放出された薬剤量(μg/日)を算出することによって求めた。
【0193】
インプラント用に選択されるポリマーは、例えば、Boehringer IngelheimまたはPurac Americaから得ることができる。ポリマーの例としては、RG502、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLG(50/50)が挙げられる。RG502は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、RG752は、(75:25)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、R202Hは、酸末端基または末端酸根を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、R203およびR206は両方とも100%ポリ(D,L−ラクチド)である。Purac PDLG(50/50)は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG502、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLGの固有粘度は、それぞれ、0.2、0.2、0.2、0.3、1.0および0.2dL/gである。RG502、RG752、R202H、R203、R206およびPurac PDLGの平均分子量は、それぞれ、11700、11200、6500、14000、63300および9700ダルトンである。
【0194】
実施例5
前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストインプラントによる緑内障の処置
緑内障と診断された58歳の男性を、各々の眼に生分解性ドラッグデリバリーシステムを投与して治療する。約500μgのPLGAおよび約500μgの前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを含有する1mgの硝子体インプラントを、患者の左眼の視力を妨げない位置で移植した。同様のインプラントを患者の右眼の結膜下に投与した。右眼におけるより速い眼圧低下はインプラントの位置に起因すると思われる。術後約3ヶ月目、患者の眼圧は許容し得るレベルに一定に維持され、視神経の変性も減少したように思われた。
【0195】
実施例6
前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニスト組成物による緑内障の治療
緑内障と診断された62歳の女性を、約20μgの前眼部から排出されるα2アドレナリン受容体アゴニストを含有する溶液の硝子体内注射により処置した。患者は、眼圧上昇における許容し得る減少および神経変性の減少を示した。この患者は、生活の質が全体的に改善されたと報告した。
【0196】
本明細書に引用されている全ての文献、論文、刊行物、特許および特許出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0197】
本発明を、種々の特定の実施例および態様に関して記載したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲内において様々に実施しうるものと理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効量のα2アドレナリン受容体アゴニストを含有する治療成分を含んでなる眼科治療物質であって、該アゴニストが、それが投与される前房からの該アゴニストの排出に効果的な構造を有する、眼科治療物質。
【請求項2】
硝子体内投与および眼周囲投与の少なくとも1つによって患者に投与するのに適した組成物の形態で、前記治療成分と組み合わせて液体担体成分を含有する請求項1記載の物質。
【請求項3】
硝子体内投与および眼周囲投与の少なくとも1つによって患者に投与するのに適したポリマードラッグデリバリーシステムの形態で、治療成分と組み合わせてポリマー成分をさらに含有する請求項1記載の物質。
【請求項4】
ポリマードラッグデリバリーシステムが、生分解性ポリマーインプラント、非生分解性ポリマーインプラント、生分解性ポリマー微粒子およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項3記載の物質。
【請求項5】
ポリマー成分がポリ(ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーを含んでなる請求項3記載の物質。
【請求項6】
ポリマー成分が、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ−ラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファジン)、ポリ(リン酸エステル)、ポリカプロラクトン、ゼラチン、コラーゲン、それらの誘導体およびそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含んでなる、請求項3記載の物質。
【請求項7】
治療成分およびポリマー成分が、固形インプラント、半固形インプラント、および粘弾性インプラントからなる群から選択されるインプラントの形態で組み合わされている、請求項3記載の物質。
【請求項8】
α2アドレナリン受容体アゴニストが、神経保護、眼圧低下およびそれらの組合せからなる群から選択される治療効果をもたらす量で提供される、請求項1記載の物質。
【請求項9】
溶液投与後のα2アドレナリン受容体アゴニストの硝子体内半減期が約3時間よりも長い、請求項1記載の物質。
【請求項10】
バルク剤とともにアドレナリン受容体アゴニストを含んでなる請求項1記載の物質。
【請求項11】
α2アドレナリン受容体アゴニストがポリエチレングリコールとカップリングしている請求項1記載の物質。
【請求項12】
α2アドレナリン受容体アゴニストが、個体の眼の後眼部から排出される異なるα2アドレナリン受容体アゴニストの分子量よりも大きい分子量を有する請求項1記載の物質。
【請求項13】
α2アドレナリン受容体アゴニストが、実質的に等しい前房および後眼部からの排出速度をもたらすのに効果的な構造を有する、請求項1記載の物質。
【請求項14】
α2アドレナリン受容体アゴニストが、後眼部排出速度と比較してより大きい前眼部排出速度をもたらすのに効果的な構造を有する、請求項1記載の物質。
【請求項15】
前記物質が眼に対する投与に適しており、α2アドレナリン受容体アゴニストを前房、後房またはそれらの組合せからなる群から選択される眼の領域へ送達する、請求項1記載の物質。
【請求項16】
賦形剤成分をさらに含んでなる請求項1記載の物質。
【請求項17】
前記治療成分が、約3時間よりも長い硝子体半減期を有するα2アドレナリン受容体アゴニストを選択することを含んでなるプロセスによって製造される、請求項1記載の物質。
【請求項18】
α2アドレナリン受容体アゴニストが約7未満のpKaを有する有機カチオンである、請求項1記載の物質。
【請求項19】
α2アドレナリン受容体アゴニストが眼の内部で非カチオン性物質である請求項1記載の物質。
【請求項20】
眼科治療物質の製造方法であって、
約3時間よりも長い硝子体半減期を有するα2アドレナリン受容体アゴニストを選択すること;および
該選択されたα2アドレナリン受容体アゴニストを液体の担体成分またはポリマー成分と組み合わせて眼に対する投与に適した物質を形成すること
を含んでなる製造方法。
【請求項21】
以下からなる群:
α2アドレナリン受容体アゴニストを患者の眼に投与し、硝子体液および房水の少なくとも1つにおけるα2アドレナリン受容体アゴニストの濃度を時間に対して測定すること;および
α2アドレナリン受容体アゴニストを患者の眼に投与し、眼からのα2アドレナリン受容体アゴニストの硝子体半減期およびクリアランスの少なくとも1つを測定すること
から選択される少なくとも1つのステップをさらに含んでなる、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記物質が、液体を含有する組成物、生分解性ポリマーインプラント、非生分解性ポリマーインプラント、およびポリマー微粒子からなる群から選択される請求項20に記載の製造方法。
【請求項23】
前記物質が、固形インプラント、半固形インプラント、および粘弾性インプラントからなる群から選択される請求項20に記載の製造方法。
【請求項24】
α2アドレナリン受容体アゴニストをポリマー成分と組み合わせて混合物を形成し、混合物を押し出すことをさらに含んでなる、請求項20に記載の製造方法。
【請求項25】
請求項1の物質を個体の眼に投与する工程を含んでなる、患者の眼の視力を改善または維持する方法。
【請求項26】
前記方法が前眼症状、後眼症状およびそれらの組合せからなる群から選択される眼の症状を処置するのに有効である請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、視神経細胞に対する神経保護および上昇した眼圧の低減をもたらすのに有効である請求項25記載の方法。
【請求項28】
緑内障を処置するのに有効である請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記物質が、眼内投与、眼周囲投与およびそれらの組合せからなる群から選択されるステップによって投与される、請求項25記載の方法。
【請求項30】
前記物質が、眼内への前記物質の硝子体内注射によって投与される請求項25記載の方法。
【請求項31】
前記投与が、α2アドレナリン受容体アゴニストを、眼球血管膜、硝子体、網膜、脈絡膜、網膜色素上皮およびそれらの組合せからなる群から選択される後眼部の構造へ送達するための結膜下投与または眼周囲投与を含んでなる、請求項25記載の方法。
【請求項32】
前房、後房、およびそれらの組合せからなる群から選択される眼内の位置に前記物質を投与することを含んでなる、請求項25記載の方法。
【請求項33】
前記物質を眼に投与するために注射器またはトロカールの使用を含んでなる請求項25記載の方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−46530(P2012−46530A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−209152(P2011−209152)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【分割の表示】特願2008−511301(P2008−511301)の分割
【原出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】