説明

増幅用光ファイバ、及び、それを用いた光ファイバ増幅器及び共振器

【課題】 高次モードが励振された場合においても、良好なビーム品質の光を出力することができる増幅用光ファイバ、及び、それを用いた光ファイバ増幅器を提供する。
【解決手段】 増幅用光ファイバ50は、コア51と、コア51を被覆するクラッド52とを有し、コア51は、所定の波長の光を少なくともLP01モード、及び、LP02モード、及び、LP03モードで伝播し、コア51には、LP01モード及びLP02モード及びLP03モードをパワーで規格化する場合における、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域の少なくとも一部において、活性元素が、コアの中心部よりも高い濃度で添加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅用光ファイバ、及び、それを用いた光ファイバ増幅器及び共振器に関し、特に、ビーム品質を向上することができる増幅用光ファイバ、及び、それを用いた光ファイバ増幅器及び共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
加工機や、医療機器等において使用されるファイバレーザ装置の一つとして、レーザ発振器(MO:Master Oscillator)等の種光源により発生される光を、増幅器(PA:Power Amplifier)で増幅して出力するMO−PA(Master Oscillator−Power Amplifier)型のファイバレーザ装置が知られている。この増幅器に用いられる増幅器の一つとして、増幅用光ファイバによって光を増幅する光ファイバ増幅器が知られている。
【0003】
この増幅用光ファイバにおいては、一般的にコアに希土類元素等の活性元素が添加されたダブルクラッドファイバが用いられている。このダブルクラッドファイバには、コアがシングルモード光のみを伝播するダブルクラッドファイバと、コアがマルチモード光を伝播するダブルクラッドファイバとがある。そして、コアがシングルモード光のみを伝播するダブルクラッドファイバにおいては、コアの断面積が小さいため、高出力のレーザ出力を得ようとするとコアを伝播する光の密度が高くなり過ぎる場合がある。この場合、非線形光学効果により光のエネルギーが所望でない波長に移行してしまい、期待したレーザ出力が得られないことがある。そこで、近年の光ファイバ増幅器の高出力化の要求に伴い、コアがマルチモード光を伝播するダブルクラッドファイバを用いた光ファイバ増幅器が注目されている。
【0004】
ところで、光ファイバ増幅器においては、伝播する光の内LP01モードが増幅され、他の高次モードが増幅されないことが、出力される光のビーム品質を向上させる観点から好ましい。下記特許文献には、このような光ファイバ増幅器の一例が記載されている。この光ファイバ増幅器においては、光のLP01モードのみを励振するようなモードコンバータを配することで、マルチモード光を伝播する増幅用ダブルクラッドファイバにおいてもLP01モードを中心に増幅できることが示されている。さらに、特許文献1においては、ダブルクラッドファイバのコアの中心部に活性元素が添加され、コアの外周部に活性元素が添加されていない増幅用光ファイバを用いることで、利得導波なる効果でLP01モードが高次モードに比べて効果的に増幅されることが示唆されている。
【0005】
また、特許文献2には、ダブルクラッドファイバのコアの中心部に活性元素が添加され、さらにコアの外周部に光を吸収する吸収元素が添加されている増幅用光ファイバを用いることで、不要な高次モードを減衰させるアイデアが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,818,630号明細書
【特許文献2】米国特許第5,121,460号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光がマルチモード伝播できるダブルクラッドファイバを増幅用光ファイバとして用いると、伝播する光においてLP01モード(基本モード)以外に、LP02モード等の高次モードが励振されてしまう。このような高次モードの存在は、出力される光が集光されづらくなる等、出力される光のビーム品質を低下させてしまう。
【0008】
また、特許文献1に記載されているモードコンバータを用いて、LP01モードのみを励振するためには、入力される種光のモードフィールドの形状と、増幅用ダブルクラッドファイバを伝播する光のLP01モードのモードフィールドの形状とを一致させる必要がある。本発明者らの知見によると、高次モードの中でも非対称モードであるLP11モードを励振させないことは比較的容易であるが、軸対称モードであるLP02モードやLP03モードは励振され易い。そして、LP02モードやLP03モード等の高次モードは、入力時において僅かなパワーである場合や、増幅用光ファイバ内で発生する場合においても、一般的にLP01モードよりも増幅される比率が高いため、出力する光において高い比率を占めてしまうことを本発明者らは見いだした。そして、光の増幅率が高い場合程、高次モードが増幅される比率が高くなり、出力する光のビーム品質が低下する傾向にあることが分かった。
【0009】
また、特許文献2に記載されているような光ファイバ増幅器を用いれば、軸対称の高次モードが励振される場合でも、そのモードが減衰することが予想されるが、増幅媒体に減衰物質を加えるために、LP01モードの利得も下がってしまい、十分な出力を得ることができないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、高次モードが励振された場合においても、良好なビーム品質の光を出力することができる増幅用光ファイバ、及び、それを用いた光ファイバ増幅器及び共振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、LP01モード、及び、LP02モード、及び、LP03モードを含む光が、光ファイバのコアを伝播する場合、LP01モード、LP02モード、LP03モードが、コアの径方向においてどのように分布して増幅されるのかを鋭意検討した。その結果、LP02モード、LP03モードは、コアの中心部において、LP01モードよりも強度が強いということを見出した。従って、コアの径方向に対して均一に活性元素を添加したり、コアの中心部に活性元素を高い濃度で添加してしまうと、上記の様にLP02モードや、LP03モードが高い増幅率で増幅されてしまう。このため、出力光のビーム品質が悪くなってしまうという結論に至った。そこで本発明者らは、更に鋭意検討を重ねて本発明をするに至った。
【0012】
すなわち、本発明の増幅用光ファイバは、コアと、前記コアを被覆するクラッドとを有する増幅用光ファイバであって、前記コアは、所定の波長の光を少なくともLP01モード、及び、LP02モード、及び、LP03モードで伝播し、前記コアには、前記LP01モード及び前記LP02モード及び前記LP03モードをパワーで規格化する場合における、前記LP01モードの強度が、前記LP02モード及び前記LP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域の少なくとも一部において、前記所定の波長の光を誘導放出する活性元素が、前記コアの中心部よりも高い濃度で添加され、下記式1及び式2の少なくとも一方を満たすことを特徴とするものである。
【数1】

(ただし、rは、前記コアの径方向における中心からの距離であり、I01(r)は、前記LP01モードの前記コアの径方向における中心から距離rにおける強度であり、I02(r)は、前記LP02モードの前記コアの径方向における中心から距離rにおける強度であり、I03(r)は、前記LP03モードの前記コアの径方向における中心から距離rにおける強度であり、n(r)は、前記コアの径方向における中心から距離rにおける活性元素の添加濃度であり、bは前記コアの半径である。)
【0013】
本発明においては、LP01モードがLP02モード及びLP03モードの少なくとも一方よりも強い領域において、活性元素がコアの中心部よりも高い濃度で添加される。この活性元素がコアの中心部よりも高い濃度で添加させる領域においては、光が、コアの中心部よりも高い増幅率で増幅される。このように、LP02モード及びLP03モードの強度がLP01モードの強度よりも強いコアの中心部よりも、LP01モードの強度がLP02モード及びLP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域において、高い増幅率で光が増幅されることにより、少なくとも、LP02モード及びLP03モードの一方よりも、LP01モードを高い増幅率で増幅することができる。さらに、上記式1及び式2の少なくとも一方を満たすため、ファイバ全体としても、LP02モード及びLP03モードの一方よりも、LP01モードを高い増幅率で増幅することができるので、出力する光のビーム品質を良好にすることができる。
【0014】
また、上記増幅用光ファイバにおいて、前記コアには、前記LP01モード及び前記LP02モード及び前記LP03モードをパワーで規格化する場合における、前記LP01モードの強度が、前記LP02モードの強度よりも強い領域の少なくとも一部、及び、前記LP01モードの強度が、前記LP03モードの強度よりも強い領域の少なくとも一部において、前記活性元素が、前記コアの中心部よりも高い濃度で添加され、前記式1及び前記式2の両方を満たすことが好ましい。
【0015】
このような増幅用光ファイバにおいては、LP01モードの強度が、LP02モードの強度よりも強い領域において、LP01モードがLP02モードよりも高く増幅され、更に、LP01モードの強度が、LP03モードの強度よりも強い領域において、LP01モードがLP03モードよりも高く増幅される。そして、上記式1、及び、式2を満たすことにより、全体として、LP01モードがLP02モード及びLP03モードの両方よりも高い増幅率で増幅される。こうして、ビーム品質をより良好にすることができる。
【0016】
さらに、上記増幅用光ファイバにおいて、前記コアには、前記LP01モード及び前記LP02モード及び前記LP03モードをパワーで規格化する場合における、前記LP01モードの強度が前記LP02モードの強度及び前記LP03モードの強度よりも強い領域の少なくとも一部において、前記活性元素が、前記コアの中心部よりも高い濃度で添加されていることが好ましい。
【0017】
このような増幅用光ファイバによれば、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの双方の強度よりも強い領域の少なくとも一部に活性元素を添加すれば良いため、LP01モードが、LP02モード及びLP03モードの双方よりも高い増幅率で増幅されるように、効率的に活性元素を添加することができる。
【0018】
さらに、上記増幅用光ファイバにおいて、前記コアには、前記LP01モード及び前記LP02モード及び前記LP03モードをパワーで規格化する場合における、前記LP01モードの強度が前記LP02モードの強度及び前記LP03モードの強度よりも強い領域の全てにおいて、前記活性元素が、前記コアの中心部よりも高い濃度で添加されていることが好ましい。
【0019】
このような増幅用光ファイバによれば、ビーム品質を更に良好にすることができる。
【0020】
また、上記増幅用光ファイバにおいて、前記コアには、前記LP01モード及び前記LP02モード及び前記LP03モードをパワーで規格化する場合における、前記LP01モードの強度が、前記LP02モード及び前記LP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域の全てにおいて、前記活性元素が、前記コアの中心部よりも高い濃度で添加され、前記式1及び前記式2の両方を満たすことが好ましい。
【0021】
このような光ファイバによれば、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの少なくとも一方よりも強い領域の全てにおいて、LP01モードがより高い増幅率で増幅される。従って、出力する光のビーム品質をより良好にすることができる。
【0022】
また、上記増幅用光ファイバにおいて、前記コアの前記中心部には、前記活性元素が添加されていないことが好ましい。
【0023】
このような増幅用光ファイバによれば、LP02モードやLP03モードの強度がLP01モードの強度よりも強いコアの中心部において、光が増幅されないため、出力する光のビーム品質をより良好にすることができる。
【0024】
また、上記増幅用光ファイバにおいて、前記コアの外周部においては、前記コアの中心部よりも活性元素が高い濃度で添加される領域よりも、前記活性元素の濃度が低くされていることが好ましい。
【0025】
本発明者らは、上記検討において、LP02モード、及び、LP03モードは、コアの外周部において、LP01モードよりも強度が強いということを更に見出した。従って、このような増幅用光ファイバによれば、LP01モードの強度よりもLP02モード及びLP03モードの強度が強い外周部において、LP02モード、及び、LP03モードの増幅率をLP01モードの増幅率よりも低く抑えることができるため、出力する光のビーム品質をより良好にすることができる。
【0026】
さらに、上記増幅用光ファイバにおいて、前記コアの前記外周部には、活性元素が添加されていないことが好ましい。
【0027】
このような増幅用光ファイバによれば、出力する光のビーム品質を更に良好にすることができる。
【0028】
また、本発明の光ファイバ増幅器は、上記の増幅用光ファイバと、LP01モードを含む種光を前記増幅用光ファイバに入力させる種光源と、前記増幅用光ファイバの前記活性元素を励起する励起光を出力する励起光源と、を備えることを特徴とするものである。
【0029】
このような光ファイバ増幅器によれば、LP02モードや、LP03モードが励振される場合においても、LP01モードをより高い増幅率で増幅するため、良好なビーム品質の光を出力することができる。
【0030】
さらに、上記光ファイバ増幅器において、前記増幅用光ファイバに入力する種光は、前記増幅用光ファイバの軸対称のモードのみを励振することが好ましい。
【0031】
このような光ファイバ増幅器によれば、増幅用光ファイバにおいて、非軸対称の高次モードが伝播しないため、非軸対称の高次モードが増幅されて出力することがないので、集光が行いやすい良好なビーム品質の光を出力することができる。
【0032】
また、上記光ファイバ増幅器において、前記増幅用光ファイバに入力する種光は、シングルモード光であることが好ましい。
【0033】
このような光ファイバ増幅器によれば、マルチモード光を伝播する増幅用光ファイバにおいて、非軸対称の高次モードや高次モードの光が励振しにくいため、集光が行いやすい良好なビーム品質の光を出力することができる。
【0034】
また、本発明の共振器は、上記に記載の増幅用光ファイバと、前記増幅用光ファイバの前記活性元素を励起する励起光を出力する励起光源と、前記増幅用光ファイバの一方側に設けられ、前記励起光により励起された前記活性元素が放出する光の少なくとも一部の波長の光を反射する第1FBG(Fiber Bragg Grating)と、前記増幅用光ファイバの他方側に設けられ、前記第1FBGが反射する光と同じ波長の光を前記第1FBGよりも低い反射率で反射する第2FBGと、を備えることを特徴とするものである。
【0035】
このような共振器によれば、光の共振において、増幅用光ファイバのコアを光が伝播するときに、LP01モードがLP02モード及びLP03モードより強く増幅されるので、活性元素の濃度がコアに均一に添加されたファイバを用いる場合と比較して、LP02モード及びLP03モードの強度に対するLP01モードの強度が強い、良好なビーム品質の光を出力することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明によれば、高次モードが励振された場合においても、良好なビーム品質の光を出力することができる増幅用光ファイバ、及び、それを用いた光ファイバ増幅器及び共振器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光ファイバ増幅器を示す図である。
【図2】図1の増幅用光ファイバの長手方向に垂直な断面における構造を示す図である。
【図3】図2の増幅用光ファイバのコアの様子を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る増幅用光ファイバのコアの様子を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る増幅用光ファイバのコアの様子を示す図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る増幅用光ファイバのコアの様子を示す図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る共振器を示す図である。
【図8】実施例1、2、及び、比較例1における出力光のビーム品質を示す図である。
【図9】実施例3、4、及び、比較例2における出力光のビーム品質を示す図である。
【図10】実施例5、6、及び、比較例3における出力光のビーム品質を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る増幅用光ファイバ、及び、光ファイバ増幅器及び共振器の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光ファイバ増幅器を示す図である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態における光ファイバ増幅器1は、種光となる光を出力する種光源10と、励起光を出力する励起光源20と、種光及び励起光が入力する光コンバイナ30と、光コンバイナ30から出力される種光及び励起光が入力し、励起光により励起される活性元素が添加された増幅用光ファイバ50とを主な構成として備える。
【0041】
種光源10は、例えば、半導体レーザ装置や、ファブリペロー型やファイバリング型のファイバレーザ装置から構成されている。この種光源10は、LP01モードを含む光を光ファイバから出力するように構成されている。また、種光源10から出力される種光は、LP01モードを含む光である限りにおいて、特に制限されるものではないが、波長は、増幅用光ファイバ50に添加される活性元素が誘導放出できる波長であり、例えば、活性元素をイッテルビウム(Yb)とした場合には、波長が1070nmのレーザ光とされる。
【0042】
また、種光源10の出力光は、コア、及び、コアを被覆するクラッドから構成されるシングルモードファイバ15から出力される。このシングルモードファイバ15は、種光源10から出力される光を、LP01モードのシングルモード光として伝播する。このシングルモードファイバ15の構成は特に制限されるものではないが、例えば、種光の波長が上記のように1070nmである場合には、コアの直径が10μmとされ、コアとクラッドとの比屈折率差が0.13%とされる。
【0043】
励起光源20は、複数のレーザダイオード21から構成され、レーザダイオード21は、本実施形態においては、例えば、GaAs系半導体を材料としたファブリペロー型半導体レーザであり、中心波長が915nmの光を出力する。また、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21は、マルチモードファイバ22に接続されており、レーザダイオード21から出力される励起光は、マルチモードファイバ22をマルチモード光として伝播する。
【0044】
マルチモードファイバ22及びシングルモードファイバ15が接続される光コンバイナ30は、シングルモードファイバ15を中心としてその周りにマルチモードファイバを配置した部分が溶融延伸されて一体化することにより構成されており、増幅用光ファイバ50に光学的に接続されている。
【0045】
図2は、増幅用光ファイバ50の長手方向に垂直な断面における構造を示す図である。図2に示すように増幅用光ファイバ50は、コア51と、コア51を被覆するクラッド52と、クラッド52を被覆する外部クラッド53とから構成される。クラッド52の屈折率はコア51の屈折率よりも低く、外部クラッド53の屈折率はクラッド52の屈折率よりも低くされる。例えば、本実施形態において、コア51とクラッド52との比屈折率差は、0.32%とされる。また、コア51の直径は、例えば30μmとされ、クラッド52の外径は、例えば420μmとされ、外部クラッド53の外径は、例えば440μmとされる。また、コア51を構成する材料としては、例えば、石英の屈折率を上昇させるアルミニウム等の元素が添加される石英が挙げられ、コア51の少なくとも一部の領域には、励起光源20から出力される励起光により励起状態とされる活性元素であるイッテルビウム(Yb)が添加される。なお、このような活性元素としては、イッテルビウム(Yb)の他に、例えばネオジウム(Nd)やエルビウム(Er)等の希土類元素を挙げることができる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)やクロム(Cr)等が挙げられる。また、クラッド52を構成する材料としては、例えば、ドーパントが添加されない石英が挙げられ、外部クラッド53を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0046】
上記のようなコア51とクラッド52との屈折率差により、コア51には種光源からの所定の波長の光が閉じ込められて伝播する。このコア51を伝播する光のモードとしては、基本モードであるLP01モードの他に、高次のモードとして、LP02モードやLP03モードが存在する。本実施形態に係る増幅用光ファイバ50においては、LP04以上の高次モードは伝播しないように、種光源の光の波長、コア51並びにクラッド52の寸法、及びコア51とクラッド52との比屈折率差を設定している。このようにLP04モード以上の高次モードが伝播されないように設定するには、例えば、上述のように、種光の波長が1070nmであり、コア51の直径が30μmで、コア51とクラッド52との比屈折率差が0.32%となるようにすれば良い。
【0047】
次に増幅用光ファイバ50のコア51について、さらに詳しく説明する。図3は、図2に示す増幅用光ファイバ50のコア51の様子を示す図である。具体的には、図3のAは、増幅用光ファイバ50の長手方向に対して垂直な断面におけるコア51の構造を示す図である。また、図3のBは、コア51を伝播するLP01モード及びLP02モード及びLP03モードにおける規格化した単位面積当たりの強度の分布を示す図である。また、図3のCは、コア51を伝播するLP01モード及びLP02モード及びLP03モードの強度を面積で積分し、規格化したパワーの分布を示す図である。また、図3のDは、コア51に添加されている活性元素の濃度分布の様子を示す図である。
【0048】
図3のBに示すように、それぞれのモードは、コア51の中心で最も強くなる強度分布を有している。この中心における強度は、LP03モードが最も大きく、次いでLP02モードであり、LP01モードの強度が最も小さい。そして、コア51の中心から径方向に離れると、LP01モードの強度が、LP03モードの強度よりも大きくなる。ここで、図3に示すように、コア51の中心から、LP01モードの強度が、LP03モードの強度よりも大きくなるまでの径方向における領域を領域Aとする。更にコア51の中心から径方向に離れると、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度よりも大きくなる。ここで、領域Aの外周側でLP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度よりも大きくなるまでの領域を領域Bとする。そして、更にコア51の中心から径方向に離れると、一時的にLP03モードの強度がLP01モードの強度よりも大きくなる。ここで、領域Bの外周側で、一時的にLP03モードの強度がLP01モードの強度よりも大きくなるまでの領域を領域Cとして、一時的にLP03モードの強度がLP01モードの強度よりも大きくなっている領域を領域Dとする。そして、更にコア51の中心から径方向に離れると、領域Dの外周側において、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度よりも大きくなっている。この領域Dの外周側で、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度よりも大きくなっている領域を領域Eとする。更に領域Eの外周側において、LP02モードの強度がLP01モードの強度よりも大きくなり、更に、外周側においては、LP01モードの強度は、LP02モード及びLP03モードの強度よりも小さくなる。この領域Eの外周側で、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度よりも小さくなるまでの領域を領域Fとし、領域Fの外周側の領域を領域Gとする。
【0049】
このようにそれぞれの領域を定義する場合に、領域Aは、コア51の長さ方向に垂直な断面における形状が、円形となり、他の領域B〜Gは、それぞれリング状に分布する。そして、コア51の直径が、例えば、上述のように、30μmである場合に、中心から領域Aと領域Bとの境界までの距離は、約3μmであり、中心から領域Bと領域Cとの境界までの距離は、約4μmであり、中心から領域Cと領域Dとの境界までの距離は、約7μmであり、中心から領域Dと領域Eとの境界までの距離は、約8.5μmであり、中心から領域Eと領域Fとの境界までの距離は、約10μmであり、中心から領域Fと領域Gとの境界までの距離は、約12μmとなる。
【0050】
そして、領域A、及び、領域Gにおいては、LP01モードの強度は、LP02モード及びLP03モードの強度よりも小さくなる。そして、領域B、領域C、領域Fにおいては、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度の一方よりも大きくなる。そして、領域C及び領域Eにおいては、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードよりも大きくなる。
【0051】
このようなLP01モード、LP02モード、LP03モードの強度の関係は、図3のCに示す分布においても同様となる。
【0052】
そして、コア51には、LP01モード及びLP02モード及びLP03モードをパワーで規格化する場合における、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域の少なくとも一部において、活性元素が、コアの中心部よりも高い濃度で添加されている。つまり、上記領域のB〜Fの少なくとも一部のリング状の領域において、活性元素の一つであるYbがコア51の中心部よりも高い濃度で添加されている。
【0053】
更に、この活性元素の添加は、下記式1及び式2のいずれも満たすように添加されている。
【数2】

【0054】
ただし、rは、コア51の径方向における中心からの距離であり、I01(r)は、図3のBに示すLP01モードのコア51の径方向における中心から距離rにおける強度であり、I02(r)は、図3のBに示すLP02モードのコア51の径方向における中心から距離rにおける強度であり、I03(r)は、図3のBに示すLP03モードのコア51の径方向における中心から距離rにおける強度であり、n(r)は、コア51の径方向における中心から距離rにおける活性元素の添加濃度であり、bはコア51の半径である。なお、rの単位は、(m)であり、I01(r)、I02(r)I03(r)の単位は、(W/m)であり、n(r)の単位は、(個/m)であり、bの単位は、(m)である。
【0055】
そして、本実施形態においては、図3のAに示すように、コア51中心を含む中心領域55に活性元素Ybを8×1025(個/m)添加し、この中心領域55の外側の外周領域57に活性元素Ybを16×1025(個/m)添加している。この中心領域55と外周領域57との境界は、領域Cに含まれる。
【0056】
すなわち、LP01モード及びLP02モード及びLP03モードをパワーで規格化する場合における、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度よりも強い領域である領域C及び領域Eにおける活性元素Ybの添加濃度は、活性コアの中心部の中心領域55における活性元素Ybの添加濃度より高い。
【0057】
また、この中心領域55における活性元素Ybの添加濃度と外周領域57における活性元素Yb添加濃度は、式1及び式2の関係を満たすように設定されている。すなわち、コア51内の活性元素の添加濃度分布は、式1及び式2の関係を満たすものであれば、LP02モード及びLP03モードよりも、LP01モードを高い増幅率で増幅することができ、出力する光のビーム品質を良好にすることができる。
【0058】
このように、本発明において特徴的な点は、式1及び式2の関係を満たすために、LP01モード及びLP02モード及びLP03モードをパワーで規格化する場合における、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域の少なくとも一部において、活性元素をコアの中心部よりも高い濃度で添加したということである。
【0059】
次に、光ファイバ増幅器1の動作について説明する。
【0060】
まず、種光源10から種光がシングルモードファイバ15から出力される。この種光の波長は、例えば、上述のように1070μmとされる。このとき上述のシングルモードファイバ15の構成により、LP01モードのみが伝播する。そして、シングルモードファイバ15を伝播するLP01モードの光は、光コンバイナ30に入力する。
【0061】
また、励起光源20からは、増幅用光ファイバ50のコア51に添加されている活性元素Ybを励起する励起光が出力される。このときの波長は、上述のように、例えば915μmの波長とされる。そして、励起光源20から出力された励起光は、マルチモードファイバ22を伝播して、光コンバイナ30に入力する。
【0062】
光コンバイナ30に入力した種光及び励起光は、増幅用光ファイバ50に入力して、種光は、増幅用光ファイバ50のコア51を伝播し、励起光は、増幅用光ファイバ50のクラッド52とコア51とを伝播する。種光は、主としてLP01モードとして入力するが、増幅用光ファイバ50のコア51は、種光の波長の光に対して、LP01モードおよびLP02モード及びLP03モードとして伝播し得るため、LP01モードが入力されるとLP02モード及びLP03モードが励振され、LP01モードおよびLP02モード及びLP03モードとして伝播する。そして、励起光がコア51を通過する際、コア51に添加されている活性元素Ybが励起される。励起された活性元素Ybは、種光により誘導放出を起こして、この誘導放出によりLP01モードおよびLP02モード及びLP03モードの種光は増幅される。
【0063】
このとき、コア51の外周領域57における活性元素Ybの濃度が、コア51の中心部を含む中心領域55における活性元素Ybの濃度よりも高くされ、上記式1及び式2を満たしている。このため、コア51全体として、LP01モードは、LP02モード及びLP03モードよりも高い増幅率で増幅される。特にLP02モード及びLP03モードの強度が、LP01強度よりも強い領域Aにおいては、活性元素Ybが低い濃度で添加されているため、LP02モード及びLP03モード光の増幅が抑制される。
【0064】
こうして、コア51全体として、LP02モード及びLP03モードよりもLP01モードが高い増幅率で増幅された種光は、増幅用光ファイバ50から出力光として出力する。従って、出力光においては、LP02モード及びLP03モードのパワーが低く抑えられており、LP01モードのパワーが高くされている。こうして、ビーム品質の良好な出力光が出力される。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の増幅用光ファイバ50においては、LP02モードやLP03モードの強度が強いコア51の中心部において、活性元素が低い濃度で添加されているため、LP02モードやLP03モードの増幅が抑制される。そして、コア51の中心部よりも高い濃度で活性元素Ybが添加される外周領域57においては、光がコア51の中心部よりも強く増幅される。この光が強く増幅される領域は、LP01モードがLP02モード及びLP03モードの少なくとも一方よりも強い領域をより多く含み、全体として、式1及び式2を満たすように、中心領域と外周領域との境界およびそれぞれの領域における添加濃度分布が設定されているため、コア51全体として、LP01モードは、LP02モード及びLP03モードよりも高い増幅率で増幅される。このようにLP01が高い増幅率で増幅されるため、出力する光のビーム品質を良好にすることができる。
【0066】
すなわち、本実施形態に係る増幅用光ファイバ50は、活性元素Ybの濃度がコア51に均一に添加されたファイバと比較して、LP02モード及びLP03モードの強度に対するLP01モードの強度が強い、良好なビーム品質の光を出力することができる。従って、このような増幅用光ファイバ50を用いた本実施形態の光ファイバ増幅器1からは良好なビーム品質の光を出力することができる。
【0067】
また、本実施形態の光ファイバ増幅器1においては、増幅用光ファイバ50にLP01モードから成るシングルモード光を種光として入力しているため、励振されるLP02モード及びLP03モードのパワーを小さく抑えることができ、LP01モードをより大きく増幅することができる。従って、良好なビーム品質の光を出力することができる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図4は、本発明の第2実施形態に係る増幅用光ファイバのコアの様子を示す図であり、第1実施形態における図3に相当する図である。
【0069】
図4のAに示すように、本実施形態における増幅用光ファイバは、第1実施形態における増幅用光ファイバ50のコア51に代えて、コア51aが用いられている。このコア51aは、第1実施形態のコア51が中心領域55、外周領域57に区切られているのと同様に、中心領域55a、外周領域57aに区切られている。そして、外周領域57aは、図4のDに示すように、第1実施形態におけるコア51の外周領域57と同様の濃度で活性元素が添加されている。しかし、本実施形態の増幅用光ファイバのコア51aは、中心領域55aに活性元素が添加されていない点において、第1実施形態の増幅用光ファイバ50のコア51と異なる。そして、コア51aの活性元素の添加は、第1実施形態と同様に上記式1及び式2の関係を満たすように設定されている。
【0070】
本実施形態の増幅用光ファイバにおいては、コア51aの中心領域55aに活性元素が添加されていないため、LP02モード及びLP03モードの強度が強い領域Aを含む中心領域55aにおいて、LP02モード及びLP03モードが増幅されない。そして、第1の実施形態と同様に、LP02モード及びLP03モードの強度よりもLP01モードの強度が強い領域である領域Cの一部、及び、領域E、及び、LP02モード及びLP03モードの一方よりもLP01モードの強度が強い領域である領域及び領域Fを含む外周領域57aにおいて、光が増幅される。そして、上述のように、コア51aには、上記式1及び式2を満たすように活性元素が添加されているため、コア51a全体として、LP02モード及びLP03モードよりもLP01モードが高い増幅率で増幅される。
【0071】
本実施形態の増幅用光ファイバによれば、LP02モード及びLP03モードの強度が強いコアの中心部に活性元素が添加されていないため、コアの中心部においてLP02モード及びLP03モードが増幅されない。従って、コア51a全体として、LP02モード及びLP03モードよりも、LP01モードをより高い増幅率で増幅することができるので、出力する光のビーム品質をより良好にすることができる。従って、本実施形態の増幅用光ファイバを用いることにより、ビーム品質のより良好な光を出力することができる光ファイバ増幅器とすることができる。
【0072】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図5を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図5は、本発明の第3実施形態に係る増幅用光ファイバのコアの様子を示す図であり、第1実施形態における図3に相当する図である。
【0073】
図5のAに示すように、実施形態における増幅用光ファイバは、第1実施形態における増幅用光ファイバ50のコア51に代えて、コア51bが用いられている。このコア51bは、第1実施形態のコア51が中心領域55外周領域57に区切られているのに対し、中心領域55aと外周領域57bとの間に中間領域56bが設けられている。そして、中心領域55bは、直径や添加さえる活性元素の濃度が、第1実施形態の中心領域55と同様とされている。従って、中心領域55bと中間領域56bとの境界は、第1実施形態と同様に領域Cに含まれる。また、中間領域56bは、図5のDに示すように、第1実施形態におけるコア51の外周領域57と同様の濃度で活性元素が添加されており、中間領域56bと外周領域57bとの境界は、領域Eと領域Fとの境界と略等しくされている。そして、本実施形態の増幅用光ファイバのコア51bは、外周領域57bの活性元素の添加濃度が、第1実施形態の外周領域57の活性元素の添加濃度よりも低くされている。従って、外周領域57bは、中間領域56bよりも活性元素の濃度が低くされている。なお、本実施形態においては、この外周領域57bにおける活性元素の添加濃度が、中心領域55bにおける活性元素の添加濃度と同様とされている。こうして、LP01モード及びLP02モード及びLP03モードをパワーで規格化する場合における、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度よりも強い領域である領域C及び領域Eにおける活性元素Ybの添加濃度は、活性コアの中心部の中心領域55b、及び、コアの外周部を含む外周領域における活性元素Ybの添加濃度より高くされている。
【0074】
そして、このように活性元素が添加されることにより、本実施形態においても、コア51bは、式1及び式2の関係を満たすように設定されている。
【0075】
本実施形態の増幅用光ファイバにおいては、LP02モードやLP03モードがLP01モードよりも強いコア51bの中心領域55b及び外周領域57bにおける活性元素の濃度が低く抑えられているため、LP02モード及びLP03モードの強度が強い領域A及び領域Gを含む中心領域55b及び外周領域57bにおいて、LP02モード及びLP03モードの増幅が抑制される。そして、第1の実施形態と同様に、LP02モード及びLP03モードの強度よりもLP01モードの強度が強い領域である領域Cの一部及び領域E、及び、LP02モードの強度よりもLP01モードの強度が強い領域である領域Dを含む中間領域56bにおいて、LP01モードが高い増幅率で増幅される。
【0076】
本実施形態の増幅用光ファイバによれば、中心領域55b及び外周領域57bにおいて、LP02モード及びLP03モードの増幅を抑制することができ、上述のように、コア51bには、上記式1及び式2を満たすように活性元素が添加されているため、コア51b全体として、LP02モード及びLP03モードよりも、LP01モードをより高い増幅率で増幅することができるので、出力する光のビーム品質をより良好にすることができる。従って、本実施形態の増幅用光ファイバを用いることにより、ビーム品質のより良好な光を出力することができる光ファイバ増幅器とすることができる。
【0077】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図6を参照して詳細に説明する。なお、第3実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図6は、本発明の第4実施形態に係る増幅用光ファイバのコアの様子を示す図であり、第1実施形態における図3に相当する図である。
【0078】
図6のAに示すように、実施形態における増幅用光ファイバは、第3実施形態における増幅用光ファイバのコア51bに代えて、コア51cが用いられている。このコア51cは、第3実施形態のコア51bが中心領域55b、中間領域56b、外周領域57bに区切られているのと同様に、中心領域55c、中間領域56c、外周領域57cに区切られている。そして、中間領域56cは、図6のDに示すように、第3実施形態におけるコア51bの中間領域56bと同様の濃度で活性元素が添加されている。しかし、本実施形態の増幅用光ファイバのコア51cは、中心領域55c及び外周領域57cに活性元素が添加されていない点において、第3実施形態のコア51bと異なる。従って、LP01モード及びLP02モード及びLP03モードをパワーで規格化する場合における、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度よりも強い領域である領域C及び領域Eにおける活性元素Ybの添加濃度は、活性コアの中心部の中心領域55b、及び、コアの外周部である外周領域における活性元素Ybの添加濃度より高くされている。
【0079】
そして、このように活性元素が添加されることにより、本実施形態においても、コア51cは、式1及び式2の関係を満たすように設定されている。
【0080】
本実施形態の増幅用光ファイバにおいては、LP02モードやLP03モードがLP01モードよりも強いコア51cの中心領域55c及び外周領域57cにおいて活性元素が添加されていないため、LP02モード及びLP03モードの強度が強い領域A及び領域Gを含む中心領域55c及び外周領域57cにおいて、LP02モード及びLP03モードの増幅がされない。そして、第3の実施形態と同様に、LP02モード及びLP03モードの強度よりもLP01モードの強度が強い領域である領域Cの一部及び領域E、及び、LP02モードの強度よりもLP01モードの強度が強い領域である領域Dを含む中間領域56cにおいて、LP01モードが高い増幅率で増幅される。
【0081】
本実施形態の増幅用光ファイバによれば、中心領域55c及び外周領域57cにおいて、LP02モード及びLP03モードの増幅がされなく、上述のように、コア51cには、上記式1及び式2を満たすように活性元素が添加されているため、コア51c全体として、LP02モード及びLP03モードよりも、LP01モードをより高い増幅率で増幅することができるので、出力する光のビーム品質をより良好にすることができる。従って、本実施形態の増幅用光ファイバを用いることにより、ビーム品質のより良好な光を出力することができる光ファイバ増幅器とすることができる。
【0082】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図7を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図7は、本発明の第5実施形態に係る共振器を示す図である。
【0083】
図7に示すように、本実施形態の共振器2は、励起光源20と、増幅用光ファイバ50と、光コンバイナ30と、増幅用光ファイバ50と光コンバイナ30との間に設けられるダブルクラッドファイバ65と、ダブルクラッドファイバ65に設けられる第1FBG61と、増幅用光ファイバ50のダブルクラッドファイバ65側と反対側に設けられるマルチモードファイバ66と、マルチモードファイバ66に設けられる第2FBG62とを主な構成として備える。
【0084】
ダブルクラッドファイバ65は、長手方向に垂直な断面の構造が増幅用光ファイバと同様であり、コアと、コアを被覆するクラッドと、クラッドを被覆する外部クラッドとから構成される。ダブルクラッドファイバ65のコア、クラッド、及び、外部クラッドの外径や屈折率等は、増幅用光ファイバ50のコア、クラッド、及び、外部クラッドと略同様であるが、ダブルクラッドファイバ65のコアには、活性元素が添加されていない。そして、第1実施形態において、増幅用光ファイバ50が光コンバイナ30に接続されるのと同様にして、ダブルクラッドファイバ65の一端が、光コンバイナ30に接続されて、マルチモードファイバ22のコアとダブルクラッドファイバ65のクラッドとが光学的に接続されている。また、ダブルクラッドファイバ65の他端は、増幅用光ファイバ50に接続され、ダブルクラッドファイバ65のコアと増幅用光ファイバ50のコア51とが接続され、ダブルクラッドファイバ65のクラッドと増幅用光ファイバ50のクラッド52とが接続されている。
【0085】
また、ダブルクラッドファイバ65のコアには、第1FBG61が設けられている。こうして第1FBG61は、増幅用光ファイバ50の一方側に設けられている。第1FBG61は、ダブルクラッドファイバ65の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、この周期が調整されることにより、励起状態とされた増幅用光ファイバ50の活性元素が放出する光の少なくとも一部の波長を反射するように構成されている。第1FBG61は、上述のように活性元素がYbである場合、例えば1070nmにおいて反射率が、例えば100%とされる。
【0086】
また、増幅用光ファイバ50のダブルクラッドファイバ65側と反対側に設けられるマルチモードファイバ66は、増幅用光ファイバ50と同様にLP01モード、LP02モード、LP03モードを伝播するように、コアの直径や、コア及びクラッドの屈折率が設定されている。そして、マルチモードファイバ66は、一端が増幅用光ファイバ50に接続されて、他端には何も接続されず自由端となっており、増幅用光ファイバ50のコア51とマルチモードファイバ66のコアとが接続されている。
【0087】
また、マルチモードファイバ66のコアには、第2FBG62が設けられている。こうして第2FBG62は、増幅用光ファイバ50の他方側に設けられている。第2FBG62は、マルチモードファイバ66の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、第1FBG61が反射する光と同じ波長の光を第1FBG61よりも低い反射率で反射するように構成され、例えば、第1FBG61が反射する光と同じ波長の光を50%の反射率で反射するように構成されている。
【0088】
このような共振器2においては、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21から励起光が出力されると、この励起光が光コンバイナ30において、ダブルクラッドファイバ65のクラッドに入力して、ダブルクラッドファイバ65のクラッドから、増幅用光ファイバ50のクラッドに入力する。そして、第1実施形態と同様にして、増幅用光ファイバ50のコア51に添加されている活性元素を励起状態とする。そして励起状態とされた活性元素は、特定の波長の自然放出光を放出する。このときの自然放出光は、例えば、中心波長が1070nmで一定の帯域を有する光である。この自然放出光は、増幅用光ファイバ50のコア51を伝播して、ダブルクラッドファイバ65のコアに設けられている第1FBG61により反射され、反射された光が、第2FBG62で反射されて、光の共振が生じる。そして、光が、増幅用光ファイバ50のコア51を伝播するときに増幅されて、一部の光が第2FBGと透過して、マルチモードファイバ66から出力される。
【0089】
本実施形態においても、増幅用光ファイバ50のコア51を光が伝播するときに、LP01モードがLP02モードの光より強く増幅されるので、活性元素Ybの濃度がコア51に均一に添加されたファイバを用いる場合と比較して、LP02モードの光強度に対するLP01モード光強度が強い、良好なビーム品質の光を出力することができる。
【0090】
なお、本実施形態においては、増幅用光ファイバとして、第1実施形態の増幅用光ファイバ50を用いた例で説明したが、第2実施形態〜第4実施形他で説明した増幅用光ファイバ50を用いても良い。
【0091】
以上、本発明について、第1〜第5実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
例えば、上述のそれぞれの本実施形態においては、コア内の活性元素の添加濃度分布は、式1及び式2の関係を満たすものとしたが、式1及び式2の関係のいずれか一方を満たすものであれば、LP02モード及びLP03モードのいずれかよりも、LP01モードを高い増幅率で増幅することができ、従来と比較して、LP01モードとLP02モード及びLP03モードとの比のいずれかを高めることができるので、コアの全体に均一に活性元素が添加された従来の増幅用光ファイバと比較して、出力する光のビーム品質を良好にすることができる。
【0093】
また、上述のそれぞれの実施形態に係る増幅用光ファイバ50では、中心領域、中間領域、外周領域において、活性元素Yb添加濃度は、2段階に設定するものとしたが、式1及び式2の関係を満たすものであれば、2段階に異なるものでなく、3段階以上に変化する分布であっても良いし、連続的に変化する分布であっても良い。
【0094】
また、第3実施形態において、外周領域57bに活性元素が添加されていないものとしても良く、或いは、第3実施形態において、中心領域55bに活性元素が添加されていないものとしても良い。このように構成する場合においても、入力される光のうちLP02モード及びLP03モードよりもLP01モードの方が高い増幅率で増幅されるので、良好なビーム品質の光を出力することができる。
【0095】
また、第3実施形態において、式1及び式2の少なくとも一方を満たす限りにおいて、中心領域55b及び外周領域57bに添加される活性元素を互いに異なる濃度としても良い。
【0096】
また、第1〜第5実施形態においては、中心領域55、55a、55b、55c及び中間領域56b、56c及び外周領域57、57a、57b、57cを基準に活性元素の添加の濃度を変化させた。しかし、本発明においては、例えば、LP01モード及びLP02モード及びLP03モードをパワーで規格化する場合における、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域の少なくとも一部において、活性元素が、コアの中心部よりも高い濃度で添加され、式1及び式2の少なくとも一方を満たすこととしても良い。すなわち、式1及び式2の少なくとも一方を満たすこと限りにおいて、領域B〜Fの少なくとも一部に活性元素が、コアの中心よりも高い濃度で添加されることとしても良い。この場合においても、LP02モード及びLP03モードの少なくとも一方よりもLP01モードが高い増幅率で増幅されるので、コアの全体に均一に活性元素が添加される場合と比べて、出力される光のビーム品質を良好にすることができる。
【0097】
また、本発明においては、上記式1及び式2を満たす限りにおいて、コアには、LP01モード及びLP02モード及びLP03モードをパワーで規格化する場合における、LP01モードがLP02モード及びLP03モードの両方よりも強度が強い領域の全てにおいて、活性元素が、コアの中心部よりも高い濃度で添加されていることしても良い。すなわち、上記実施形態において、領域C及び領域Eの全てにおいて、コアの中心部よりも高い濃度で活性元素を添加することとしても良い。このように活性元素を添加することにより、LP01モードをLP02モード及びLP03モードよりも更に高い増幅率で増幅することができる。この場合において、LP01モードがLP02モード及びLP03モードの両方よりも強度が強い領域における活性元素の濃度を、それ以外の全ての領域における活性元素の濃度よりも高くすることとしても良く、さらに、それ以外の全ての領域においては、活性元素を添加しなくても良い。すなわち、領域C及び領域Eにおける活性元素の濃度を、領域C及び領域E以外の領域における活性元素よりも高くすることとしても良く、さらに、領域C及び領域E以外の領域においては、活性元素を添加しなくても良い。このように活性元素を添加することで、LP01モードがLP02モード及びLP03モードよりもより高い増幅率で増幅することができる。従って、出力される光のビーム品質をより高くすることができる。
【0098】
また、本発明においては、上記式1及び式2を満たす限りにおいて、コアには、LP01モード及びLP02モード及びLP03モードをパワーで規格化する場合における、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域の全てにおいて、活性元素が、コアの中心部よりも高い濃度で添加されることとしても良い。すなわち、領域B〜Fの全てにおいて、コアの中心よりも高い濃度で活性元素が添加されることとしても良い。この場合において、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域以外の領域においては、活性元素を添加しなくても良い。すなわち、領域B〜F以外の領域(領域A、領域G)においては、活性元素を添加しなくても良い。このように活性元素を添加することで、常にLP01モードがLP02モード及びLP03モードよりも高い増幅率で増幅することができる。従って、出力される光のビーム品質を最も高くすることができる。
【0099】
また、第1〜第4実施形態において、増幅用光ファイバは、コアに入力される光のうちLP03以上の高次モードを伝播しない構成としたが、LP03モード以上の高次モードを伝播する構成としても良い。
【0100】
また、第1〜第5実施形態において、励起光を増幅用光ファイバの出力端側と反対側の端面から入力する前方励起構成を例に説明したが、励起光用の光コンバイナを増幅用光ファイバの出力端側に設け、励起光を増幅用光ファイバの出力端側端面から入力する後方励起構成としてもよい。
【0101】
また、種光源10に接続される光ファイバとして、マルチモードファイバを用いて、増幅用光ファイバにマルチモード光を入力しても良い。このとき、光コンバイナの種光伝播用のファイバにマルチモードファイバを用い、種光源に接続されるマルチモードファイバの中心軸と、光コンバイナの種光伝播用のファイバの中心軸とを概略一致させて融着接続する。こうすることで、このマルチモードファイバは、軸対称のモードを伝播し、増幅用光ファイバに入力する種光が軸対称のモードから成る光とされる。こうすることで、増幅用光ファイバに入力される種光は、LP01モードの他に、軸対称の高次モードのみとなる。このため、増幅用光ファイバに入力される種光に非軸対称の高次モードが含まれる場合と比べて、集光を行いやすい良好なビーム品質の光を出力することができる。このようなマルチモードファイバの一例として、LP01モード及びLP02モード及びLP03モードを伝播し、LP04モード以上の高次モードを伝播しないマルチモードファイバが挙げられる。このようなマルチモードファイバとしては、コアを伝播する光が、1070μmである場合に、コアの直径を30μmとし、コアとクラッドとの比屈折率差を0.32%とすれば良い。
【0102】
なお、上記実施形態で説明した光ファイバ増幅器1や共振器2は、そのままファイバレーザ装置として用いられることができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0104】
(実施例1)
出力されるビーム品質の検証をシミュレーションにより行うために、第2実施形態と同様の増幅用光ファイバを想定した。本実施例における増幅用光ファイバは、コアの直径が30μmで、クラッドの外径が420μmで、外部クラッドの外径が440μmとした。そして、コアとクラッドとの比屈折率差は、0.32とした。なお、以降の実施例を通して、最大の励起光パワー条件において最も増幅効率が高くなるように、それぞれの増幅用光ファイバの長さを設定した。
【0105】
そして、第2実施形態と同様に、コアの径方向において、コアの中心を中心とした直径が10μmの中心領域と、中心領域を囲み、外周面までの外周領域に分けて、外周領域にYbを16×1025(個/m)添加して、中心領域には何ら活性元素を添加しないものとした。
【0106】
次に、この増幅用光ファイバに光を入射するシングルモードファイバを想定した。このシングルモードファイバにおいては、コアの直径が10μmで、コアΔが0.16%で、クラッドの外径が125μmとした。このようなシングルモードファイバを伝播する光における各モードのパワーの比率は、LP01モードが62%であり、LP02モードが31.5%であり、LP03モードが6.5%である。
【0107】
そして、このシングルモードファイバから増幅用光ファイバに光を入射した。このときのLP01モード及びLP02モード及びLP03モードのプロファイルは、図4のB、Cと略同様になった。従って、Ybを添加した中間領域及び外周領域は、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域を含んでいた。さらに、この増幅用光ファイバは、上記の式1及び式2の関係を満たしていた。
【0108】
(実施例2)
第4実施例と同様にしてコアの径方向において、第1実施形態と同様の通信領域と、中心領域を囲んで、外径が20μmの中間領域と、中間領域から外周面までの外周領域に分けて、中間領域にYbを16×1025(個/m)添加して、中心領域及び外周領域には何ら活性元素を添加しないものとしたこと以外は、実施例1の増幅用光ファイバと同様の増幅用光ファイバを想定し、更に、実施例1のシングルモードファイバと同様のシングルモードファイバを想定した。
【0109】
そして、第1実施形態と同様にして、シングルモードファイバから増幅用光ファイバに光を入射した。このときのLP01モード及びLP02モード及びLP03モードのプロファイルは、第1実施形態と同様であり、従って、Ybを添加した中間領域は、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域を含んでいた。さらに、この増幅用光ファイバは、上記の式1及び式2の関係を満たしていた。
【0110】
(比較例1)
コア全体に均一にYbを16×1025(個/m)添加するものとしたこと以外は、実施例1と同様の増幅用光ファイバを想定し、更に、実施例1のシングルモードファイバと同様のシングルモードファイバを想定した。
【0111】
そして、実施例1と同様にして、シングルモードファイバから増幅用光ファイバに光を入射した。この増幅用光ファイバは、上記の式1及び式2の関係を満たしていなかった。
【0112】
次に実施例1、2、及び、比較例1のシングルモードファイバから増幅用光ファイバに入力される光のパワーを200mWの強度として、増幅用光ファイバのクラッドに励起光を入力して、この励起光のパワーを10W、30W、50W、70Wと変化させた場合の出力光の出力パワー及びビーム品質Mを計算により求めた。このビーム品質Mは、波長λ、及び、出力光の拡がり角Θ、及び、ビーム径Dにより下記の式のように定義される。
【数3】

【0113】
その結果を図8に示す。図8に示すように、実施例1は、どの励起光のパワーにおいても比較例1よりもビーム品質を示すMが低い数値となり、良好なビーム品質の光が出力されることが示された。そして、実施例2は更に良好なビーム品質の光が出力される結果となった。なお、どの励起光のパワーにおいても、実施例1、2及び比較例1において、出力パワーに差は生じなかった。
【0114】
(実施例3)
実施例1の増幅用光ファイバと同様の増幅用光ファイバを想定し、更に、実施例1におけるシングルモードファイバの代わりに、コアの直径が15μmで、コアΔが0.07%で、クラッドの外径が125μmのシングルモードファイバを想定した。このようなシングルモードファイバを伝播する光における各モードのパワーの比率は、LP01モードが89.8%であり、LP02モードが9.8%であり、LP03モードが0.4%である。
【0115】
そして、実施例1と同様にして、シングルモードファイバから増幅用光ファイバに光を入射した。このときのLP01モード及びLP02モード及びLP03モードのプロファイルは、図4のB、Cと略同様になった。したがって、Ybを添加した外周領域は、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域を含んでいた。さらに、この増幅用光ファイバは、上記の式1及び式2の関係を満たしていた。
【0116】
(実施例4)
実施例2の増幅用光ファイバと同様の増幅用光ファイバを想定し、更に、実施例2におけるシングルモードファイバの代わりに、実施例3のシングルモードファイバと同様のシングルモードファイバを想定した。
【0117】
そして、実施例2と同様にして、シングルモードファイバから増幅用光ファイバに光を入射した。このときのLP01モード及びLP02モード及びLP03モードのプロファイルは、実施例3と略同様になった。したがって、Ybを添加した中間領域は、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度よりも強い領域を含んでいた。さらに、この増幅用光ファイバは、上記の式1及び式2の関係を満たしていた。
【0118】
(比較例2)
コア全体に均一にYbを16×1025(個/m)添加するものとしたこと以外は、実施例3と同様の増幅用光ファイバを想定し、実施例3のシングルモードファイバと同様のシングルモードファイバを想定した。
【0119】
そして、実施例3と同様にして、シングルモードファイバから増幅用光ファイバに光を入射した。この増幅用光ファイバは、上記の式1及び式2の関係を満たしていなかった。
【0120】
次に実施例3、4、及び、比較例2のシングルモードファイバから増幅用光ファイバに入力される光のパワーを200mWの強度として、増幅用光ファイバのクラッドに励起光を入力して、この励起光のパワーを10W、30W、50W、70Wと変化させた場合の出力光の出力パワー及びビーム品質(M)を計算により求めた。
【0121】
その結果を図9に示す。図9に示すように、実施例3は、どの励起光のパワーにおいても比較例2よりもビーム品質を示すMが低い数値となり、良好なビーム品質の光が出力されることが示された。そして、実施例4は更に良好なビーム品質の光が出力される結果となった。なお、どの励起光のパワーにおいても、実施例3、4及び比較例2において、出力パワーに差は生じなかった。
【0122】
(実施例5)
実施例1の増幅用光ファイバと同様の増幅用光ファイバを想定し、更に、実施例1におけるシングルモードファイバの代わりに、コアの直径が20μmで、コアΔが0.04%で、クラッドの外径が125μmのシングルモードファイバを想定した。このようなシングルモードファイバを伝播する光における各モードのパワーの比率は、LP01モードが99.4%であり、LP02モードが0.4%であり、LP03モードが0.2%である。
【0123】
そして、実施例1と同様にして、シングルモードファイバから増幅用光ファイバに光を入射した。このときのLP01モード及びLP02モード及びLP03モードのプロファイルは、図4のB、Cと略同様になった。したがって、Ybを添加した外周領域は、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度よりも強い領域を含んでいた。さらに、この増幅用光ファイバは、上記の式1及び式2の関係を満たしていた。
【0124】
(実施例6)
実施例2の増幅用光ファイバと同様の増幅用光ファイバを想定し、更に、実施例2におけるシングルモードファイバの代わりに、実施例5のシングルモードファイバと同様のシングルモードファイバを想定した。
【0125】
そして、実施例2と同様にして、シングルモードファイバから増幅用光ファイバに光を入射した。このときのLP01モード及びLP02モード及びLP03モードのプロファイルは、実施例5と略同様になった。したがって、Ybを添加した中間領域は、LP01モードの強度が、LP02モード及びLP03モードの強度よりも強い領域を含んでいた。さらに、この増幅用光ファイバは、上記の式1及び式2の関係を満たしていた。
【0126】
(比較例3)
コア全体に均一にYbを16×1025(個/m)添加するものとしたこと以外は、実施例5の増幅用光ファイバと同様の増幅用光ファイバを想定し、実施例5のシングルモードファイバと同様のシングルモードファイバを想定した。
【0127】
そして、実施例5と同様にして、シングルモードファイバから増幅用光ファイバに光を入射した。この増幅用光ファイバは、上記の式1及び式2の関係を満たしていなかった。
【0128】
次に実施例5、6、及び、比較例3のシングルモードファイバから増幅用光ファイバに入力される光のパワーを200mWの強度として、増幅用光ファイバのクラッドに励起光を入力して、この励起光のパワーを10W、30W、50W、70Wと変化させた場合の出力光の出力パワー及びビーム品質(M)を計算により求めた。
【0129】
その結果を図10に示す。図10に示すように、実施例5は、どの励起光のパワーにおいても比較例3よりもビーム品質を示すMが低い数値となり、良好なビーム品質の光が出力されることが示された。そして、実施例6は更に良好なビーム品質の光が出力される結果となった。なお、どの励起光のパワーにおいても、実施例5、6及び比較例3において、出力パワーに差は生じなかった。
【0130】
以上の結果より、本発明の様にLP02モードやLP03モードの強度が強いコア51の中心において、活性元素が添加されず、上記式1及び上記式2を満たす増幅用光ファイバによれば、LP02モード及びLP03モードの増幅が抑制され、LP01モードが高い増幅率で増幅されるため、出力する光のビーム品質を良好にすることができることが分かった。そして、外周部において活性元素が添加されない増幅用光ファイバにおいては、更に、光のビーム品質が良好にすることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明によれば、高次モードが励振された場合においても、良好なビーム品質の光を出力することができる増幅用光ファイバ、及び、それを用いた光ファイバ増幅器及び共振器が提供される。
【符号の説明】
【0132】
1・・・光ファイバ増幅器
2・・・共振器
10・・・種光源
11・・・レーザダイオード
13・・・希土類添加ファイバ
15・・・シングルモードファイバ
20・・・励起光源
21・・・レーザダイオード
22・・・マルチモードファイバ
30・・・光コンバイナ
50・・・増幅用光ファイバ
51、51a、51b、51c・・・コア
52・・・クラッド
53・・・外部クラッド
55、55a、55b、55c・・・中心領域
56b、56c・・・中間領域
57、57a、57b、57c・・・外周領域
61・・・第1FBG
62・・・第2FBG

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアを被覆するクラッドとを有する増幅用光ファイバであって、
前記コアは、所定の波長の光を少なくともLP01モード、及び、LP02モード、及び、LP03モードで伝播し、
前記コアには、前記LP01モード及び前記LP02モード及び前記LP03モードをパワーで規格化する場合における、前記LP01モードの強度が、前記LP02モード及び前記LP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域の少なくとも一部において、前記所定の波長の光を誘導放出する活性元素が、前記コアの中心部よりも高い濃度で添加され、
下記式1及び式2の少なくとも一方を満たす
ことを特徴とする増幅用光ファイバ。
【数1】

(ただし、rは、前記コアの径方向における中心からの距離であり、I01(r)は、前記LP01モードの前記コアの径方向における中心から距離rにおける強度であり、I02(r)は、前記LP02モードの前記コアの径方向における中心から距離rにおける強度であり、I03(r)は、前記LP03モードの前記コアの径方向における中心から距離rにおける強度であり、n(r)は、前記コアの径方向における中心から距離rにおける活性元素の添加濃度であり、bは前記コアの半径である。)
【請求項2】
前記コアには、前記LP01モード及び前記LP02モード及び前記LP03モードをパワーで規格化する場合における、前記LP01モードの強度が、前記LP02モードの強度よりも強い領域の少なくとも一部、及び、前記LP01モードの強度が、前記LP03モードの強度よりも強い領域の少なくとも一部において、前記活性元素が、前記コアの中心部よりも高い濃度で添加され、
前記式1及び前記式2の両方を満たすことを特徴とする請求項1に記載の増幅用光ファイバ。
【請求項3】
前記コアには、前記LP01モード及び前記LP02モード及び前記LP03モードをパワーで規格化する場合における、前記LP01モードの強度が前記LP02モードの強度及び前記LP03モードの強度よりも強い領域の少なくとも一部において、前記活性元素が、前記コアの中心部よりも高い濃度で添加されていることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記コアには、前記LP01モード及び前記LP02モード及び前記LP03モードをパワーで規格化する場合における、前記LP01モードの強度が前記LP02モードの強度及び前記LP03モードの強度よりも強い領域の全てにおいて、前記活性元素が、前記コアの中心部よりも高い濃度で添加されていることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記コアには、前記LP01モード及び前記LP02モード及び前記LP03モードをパワーで規格化する場合における、前記LP01モードの強度が、前記LP02モード及び前記LP03モードの少なくとも一方の強度よりも強い領域の全てにおいて、前記活性元素が、前記コアの中心部よりも高い濃度で添加され、
前記式1及び前記式2の両方を満たすことを特徴とする請求項1に記載の増幅用光ファイバ。
【請求項6】
前記コアの前記中心部には、前記活性元素が添加されていないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の増幅用光ファイバ。
【請求項7】
前記コアの外周部においては、前記コアの中心部よりも活性元素が高い濃度で添加される領域よりも、前記活性元素の濃度が低くされていることを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載の増幅用光ファイバ。
【請求項8】
前記コアの前記外周部には、活性元素が添加されていないことを特徴とする請求項7に記載の増幅用光ファイバ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の増幅用光ファイバと、
LP01モードを含む種光を前記増幅用光ファイバに入力させる種光源と、
前記増幅用光ファイバの前記活性元素を励起する励起光を出力する励起光源と、
を備えることを特徴とする光ファイバ増幅器。
【請求項10】
前記増幅用光ファイバに入力する種光は、前記増幅用光ファイバの軸対称のモードのみを励振することを特徴とする請求項9に記載の光ファイバ増幅器。
【請求項11】
前記増幅用光ファイバに入力する種光は、シングルモード光であることを特徴とする請求項10に記載の光ファイバ増幅器。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか1項に記載の増幅用光ファイバと、
前記増幅用光ファイバの前記活性元素を励起する励起光を出力する励起光源と、
前記増幅用光ファイバの一方側に設けられ、前記励起光により励起された前記活性元素が放出する光の少なくとも一部の波長の光を反射する第1FBGと、
前記増幅用光ファイバの他方側に設けられ、前記第1FBGが反射する光と同じ波長の光を前記第1FBGよりも低い反射率で反射する第2FBGと、
を備えることを特徴とする共振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−99649(P2012−99649A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246360(P2010−246360)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【特許番号】特許第4667535号(P4667535)
【特許公報発行日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】