説明

増強された合成活性を有する変異エンドグリコセラミダーゼ

本発明は、その加水分解活性が実質的に低下または排除され、従って単糖またはオリゴ糖およびセラミドからの糖脂質の合成に有用な、新規なエンドグリコセラミダーゼに関する。より詳細には、エンドグリコセラミダーゼは、好ましくは酵素の活性部位または求核性部位内の変異誘発を含む、より好ましくは活性部位または求核性部位内のGlu残基の置換変異誘発を含む、天然に存在するエンドグリコセラミダーゼの変異形態である。変異エンドグリコセラミダーゼを作成する方法、およびこの変異酵素を使用した糖脂質の酵素的合成方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年6月1日出願の米国仮特許出願第60/576,316号;2004年11月10日出願の米国仮特許出願第60/626,791号;および2005年3月29日出願の米国仮特許出願第60/666,765号の恩典を主張し、これらの出願それぞれの開示が、すべての趣旨で全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の参照
配列番号:1:ロドコッカスsp.(Rhodococcus sp.)M-777由来の野生型エンドグリコセラミダーゼの核酸配列。GenBankアクセッション番号U39554。
【0003】
配列番号:2:ロドコッカスsp.M-777由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号AAB67050。
【0004】
配列番号:3:ロドコッカスsp.C9由来の野生型エンドグリコセラミダーゼの核酸配列。GenBankアクセッション番号AB042327。
【0005】
配列番号:4:ロドコッカスsp.C9由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号BAB17317。
【0006】
配列番号:5:プロピオン酸菌(Propionibacterium acnes)KPA171202由来の野生型エンドグリコセラミダーゼの核酸配列。GenBankアクセッション番号gi50839098:2281629。
【0007】
配列番号:6:プロピン酸菌KPA171202由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号YP_056771。
【0008】
配列番号:7:プロピオン酸菌KPA171202由来の野生型エンドグリコセラミダーゼの核酸配列。GenBankアクセッション番号gi50839098:c709797-708223。
【0009】
配列番号:8:プロピオン酸菌KPA171202由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号YP_055358。
【0010】
配列番号:9:ユウレイクラゲ(Cyanea nozakii)由来の野生型エンドグリコセラミダーゼの核酸配列。GenBankアクセッション番号AB047321。
【0011】
配列番号:10:ユウレイクラゲ由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号BAB16369。
【0012】
配列番号:11:ユウレイクラゲ由来の野生型エンドグリコセラミダーゼの核酸配列。GenBankアクセッション番号AB047322。
【0013】
配列番号:12:ユウレイクラゲ由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号BAB16370。
【0014】
配列番号:13:チクビヒドラ(Hydra magnipapillata)由来の野生型エンドグリコセラミダーゼの核酸配列。GenBankアクセッション番号AB179748。
【0015】
配列番号:14:チクビヒドラ由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号BAD20464。
【0016】
配列番号:15:日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)由来の野生型エンドグリコセラミダーゼの核酸配列。GenBankアクセッション番号AY813337。
【0017】
配列番号:16:日本住血吸虫由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸。GenBankアクセッション番号AAW25069。
【0018】
配列番号:17:キイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)由来の推定野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号EAL72387。
【0019】
配列番号:18:ストレプトミセス属放線菌str.(Streptomyces avermitilis str.)MA-4680由来の推定野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号BAC75219。
【0020】
配列番号:19:レプトスピラ・インテロガンス血清型コペンハーゲンStr.(Leptospira interrogans serovar Copenhageni str.) Fiocruz L1-130由来の推定野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号YP_003582。
【0021】
配列番号:20:アカパンカビ(Neurospora crassa)由来の推定野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号XP_331009。
【0022】
配列番号:21:AAB67050(E233A)に由来する変異エンドグリコセラミダーゼAのアミノ酸配列。
【0023】
配列番号:22:AAB67050(E233S)に由来する変異エンドグリコセラミダーゼAのアミノ酸配列。
【0024】
配列番号:23:AAB67050(E233G)に由来する変異エンドグリコセラミダーゼAのアミノ酸配列。
【0025】
配列番号:24:AAB67050(E233D)に由来する変異エンドグリコセラミダーゼAのアミノ酸配列。
【0026】
配列番号:25:AAB67050(E233AQ)に由来する変異エンドグリコセラミダーゼAのアミノ酸配列。
【0027】
配列番号:26:5' PCRプライマー:5'Copt
【0028】
配列番号:27:3' PCRプライマー:3'Asp PstI
【0029】
配列番号:28:3' PCRプライマー:3'Gln PstI
【0030】
配列番号:29:3'PCRプライマー:3'Ala PstI-11-1
【0031】
配列番号:30:3'PCRプライマー:3'Gly PstI-11-1
【0032】
配列番号:31:3'PCRプライマー:3'Ser PstI-11-1
【0033】
配列番号:32:ロドコッカスEGC-E351A-フォワードプライマー
【0034】
配列番号:33:ロドコッカスEGC-E351A-リバースプライマー
【0035】
配列番号:34:ロドコッカスEGC-E351D-フォワードプライマー
【0036】
配列番号:35:ロドコッカスEGC-E351D-リバースプライマー
【0037】
配列番号:36:ロドコッカスEGC-E351G-フォワードプライマー
【0038】
配列番号:37:ロドコッカスEGC-E351G-リバースプライマー
【0039】
配列番号:38:ロドコッカスEGC-E351S-フォワードプライマー
【0040】
配列番号:39:ロドコッカスEGC-E351S-リバースプライマー
【0041】
配列番号:40:GenBankアクセッション番号U39554に由来し、変異エンドグリコセラミダーゼHisE351Sをコードする核酸配列。
【0042】
配列番号:41:GenBankアクセッション番号AAB67050に由来し、変異エンドグリコセラミダーゼHisE351Sをコードするアミノ酸配列。
【0043】
配列番号:42:モチーフAを同定しているエンドグリコセラミダーゼ。
【0044】
配列番号:43:酸−塩基配列領域を含むモチーフBを同定しているエンドグリコセラミダーゼ。
【0045】
配列番号:44:モチーフCを同定しているエンドグリコセラミダーゼ。
【0046】
配列番号:45:求核性グルタミン酸残基を含むモチーフDを同定しているエンドグリコセラミダーゼ。
【0047】
配列番号:46:求核性カルボキシラートグルタミン酸またはアスパラギン酸残基を含むモチーフEを同定しているエンドグリコセラミダーゼ。
【0048】
配列番号:47:ロドコッカスsp.M-777に由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号AAB67050。X= Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0049】
配列番号:48:ロドコッカスsp.C9に由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号BAB17317。X= Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0050】
配列番号:49:プロピオン酸菌KPA171202に由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号YP_056771。X= Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0051】
配列番号:50:プロピオン酸菌KPA171202に由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号YP_055358。X= Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0052】
配列番号:51:ユウレイクラゲに由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号BAB16369。X= Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0053】
配列番号:52:ユウレイクラゲに由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号BAB16370。X= Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0054】
配列番号:53:チクビヒドラに由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号BAD20464。X= Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0055】
配列番号:54:日本住血吸虫に由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号AAW25069。X= Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0056】
配列番号:55:キイロタマホコリカビに由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号EAL72387。X= Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0057】
配列番号:56:ストレプトミセス属放射菌str.MA-4680に由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号BAC75219。X= Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0058】
配列番号:57:レプトスピラ・インテロガンス血清型コペンハーゲンStr.Fiocruz LI-130に由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号YP_003582。X= Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0059】
配列番号:58:アカパンカビに由来する変異エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号XP_331009。X=Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVal。
【0060】
配列番号:59:ロドコッカスsp.M-777由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのための予測されたN末端シグナル配列。GenBankアクセッション番号AAB67050。
【0061】
配列番号:60:ロドコッカスsp.C9由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのための予測されたN末端シグナル配列。GenBankアクセッション番号BAB17317。
【0062】
配列番号:61:プロピオン酸菌KPA171202由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのための予測されたN末端シグナル配列。GenBankアクセッション番号YP_056771。
【0063】
配列番号:62:プロピオン酸菌KPA171202由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのための予測されたN末端シグナル配列。GenBankアクセッション番号YP_055358。
【0064】
配列番号:63:ユウレイクラゲ由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのための予測されたN末端シグナル配列。GenBankアクセッション番号BAB16369およびBAB16370。
【0065】
配列番号:64:チクビヒドラ由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのための予測されたN末端シグナル配列。GenBankアクセッション番号BAD20464。
【0066】
配列番号:65:日本住血吸虫由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのための予測されたN末端シグナル配列。GenBankアクセッション番号AAW25069。
【0067】
配列番号:66:キイロタマホコリカビ由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのための予測されたN末端シグナル配列。GenBankアクセッション番号EAL72387。
【0068】
配列番号:67:ストレプトミセス属放線菌str.MA-4680由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのための予測されたN末端シグナル配列。GenBankアクセッション番号BAC75219。
【0069】
配列番号:68:アカパンカビ由来の野生型エンドグリコセラミダーゼのための予測されたN末端シグナル配列。GenBankアクセッション番号XP_331009。
【0070】
発明の分野
本発明は、サッカライドの合成、特に糖脂質、例えばグリコスフィンゴ脂質の製造に使用する合成の分野に関する。より詳細には、本発明は、単糖またはオリゴ糖と、アグリコンとの間のグリコシド結合の形成を触媒して様々な糖脂質を形成するために使用し得る合成活性を有する、変異エンドグリコセラミダーゼを作製するための新規なアプローチに関する。
【背景技術】
【0071】
発明の背景
アグリコンに結合した糖鎖(単糖またはオリゴ糖)から構成されている両親媒性化合物の群である糖脂質は、例えば細胞間認識、抗原性、および細胞増殖の調節のような生理学的プロセスを仲介する様々な細胞事象に関与することが知られている重要な細胞膜成分である(Hakomori, Annu. Rev. Biochem., 50:733-764,1981(非特許文献1); Makita and Taniguchi, Glycolipid (Wiegandt, ed.) pp59-82, Elsevier Scientific Publishing Co., New York, 1985(非特許文献2))。サッカリル残基をアグリコン(例えば、セラミドまたはスフィンゴシン)に普遍的に転移できる公知の酵素は存在しないため、糖脂質の合成は、通常、高コストおよび低収率といった不都合を有する多数のステップからなる複雑な工程を必要とする。
【0072】
ロドコッカス(Rhodococcus)株の放線菌(Actinomycetes)から最初に単離された酵素であるエンドグリコセラミダーゼ(EC3.2.1.123) (Horibata, J. Biol. Chem. May 2004 10.1094/jbc.M401460200(非特許文献3); Ito and Yamagata, J. Biol. Chem., 261:14278-14282, 1986(非特許文献4))は、糖脂質内の糖鎖とセラミド間のグリコシド結合を加水分解して、無傷の単糖またはオリゴ糖およびセラミドを生成する。今日まで、さらに数種のエンドグリコセラミダーゼが単離され、特徴付けられている(例えば、Li et al., Biochem. Biophy. Res. Comm., 149: 167-172, 1987(非特許文献5); Ito and Yamagata, J. Biol. Chem., 264: 9510-9519, 1989(非特許文献6); Zhou et al., J. Biol.Chem., 264: 12272-12277, 1989(非特許文献7); Ashida et al., Eur. J. Biochem., 205:729-735, 1992(非特許文献8); Izu et al., J. Biol. Chem., 272: 19846-19850, 1997(非特許文献9); Horibata et al., J. Biol. Chem., 275:31297-31304, 2000(非特許文献10); Sakaguchi et al., J.Biochem., 128: 145-152, 2000(非特許文献11); および米国特許第5,795,765号(特許文献1)を参照されたい)。エンドグリコセラミダーゼの活性部位は、Sakaguchiら、Biochem. Biophy. Res. Comm., 260: 89-93、1999(非特許文献12)により、Asn-Glu-Proの三つのアミノ酸からなるセグメントを含むとして記載されており、なかでもGlu残基は、酵素活性に最も重要であると思われる。
【0073】
エンドグリコセラミダーゼは、加水分解活性よりもはるかに弱いさらなるトランスグリコシル化活性も有することが公知である(Li et al., J. Biol. Chem., 266:10723-10726, 1991(非特許文献13); Ashida et al., Arch. Biochem. Biophy., 305: 559-562, 1993(非特許文献14); Horibata et al., J. Biochem., 130:263-268, 2001(非特許文献15))。このトランスグリコシル化活性は、酵素のはるかに強い加水分解活性が、新たに作製された糖脂質を素早く加水分解することによってその合成活性が相殺されるため、未だ糖脂質の合成に利用されていない。
【0074】
グリコスフィンゴ脂質を化学合成する現在の方法の不足を鑑みると、合成エンドグリコセラミダーゼの基質特異性に依存した方法は、サッカライド(糖脂質)合成の分野にて相当の進歩を遂げていると思われる。本発明は、そのような合成エンドグリコセラミダーゼ(「エンドグリコセラミドシンターゼ」)と、この新しい酵素を使用するための方法を提供する。
【0075】
【特許文献1】米国特許第5,795,765号
【非特許文献1】Hakomori, Annu. Rev. Biochem., 50:733-764,1981
【非特許文献2】Makita and Taniguchi, Glycolipid (Wiegandt, ed.) pp59-82, Elsevier Scientific Publishing Co., New York, 1985
【非特許文献3】Horibata, J. Biol. Chem. May 2004 10.1094/jbc.M401460200
【非特許文献4】Ito and Yamagata, J. Biol. Chem., 261:14278-14282, 1986
【非特許文献5】Li et al., Biochem. Biophy. Res. Comm., 149: 167-172, 1987
【非特許文献6】Ito and Yamagata, J. Biol. Chem., 264: 9510-9519, 1989
【非特許文献7】Zhou et al., J. Biol.Chem., 264: 12272-12277, 1989
【非特許文献8】Ashida et al., Eur. J. Biochem., 205:729-735, 1992
【非特許文献9】Izu et al., J. Biol. Chem., 272: 19846-19850, 1997
【非特許文献10】Horibata et al., J. Biol. Chem., 275:31297-31304, 2000
【非特許文献11】Sakaguchi et al., J.Biochem., 128: 145-152, 2000
【非特許文献12】Sakaguchiら、Biochem. Biophy. Res. Comm., 260: 89-93、1999
【非特許文献13】Li et al., J. Biol. Chem., 266:10723-10726, 1991
【非特許文献14】Ashida et al., Arch. Biochem. Biophy., 305: 559-562, 1993
【非特許文献15】Horibata et al., J. Biochem., 130:263-268, 2001
【発明の開示】
【0076】
発明の概要
本発明は、サッカライドと、例えばセラミドまたはスフィンゴシンなどのアグリコンとを組み合わせて糖脂質またはその成分を形成する合成活性を有する、変異エンドグリコセラミダーゼ酵素を提供する。本発明の酵素は、酵素反応の優れた選択制を利用して、糖脂質の合成を単純化する。
【0077】
第一の局面において、本発明は、変更された求核性カルボキシラート(すなわち、GluもしくはAsp)残基を有する変異エンドグリコセラミダーゼまたはその対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの保存的な異種を提供し、ここで、該求核性カルボキシラート残基は、

配列(配列番号:46またはモチーフE)内に存在し、ここで、該変異エンドグリコセラミダーゼは、ドナー基質からアクセプター基質(例えば、アグリコン)へのサッカライド部分の転移を触媒する。典型的に、Glu/Asp残基は、Glu/Asp残基以外のアミノ酸残基、例えば、Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはValで置換される。所定の態様において、変異エンドグリコセラミダーゼは、配列番号:47-58のアミノ酸配列のいずれか一つを含む。
【0078】
関連する局面において、本発明は、以下を特徴とする変異エンドグリコセラミダーゼを提供する:
i)エンドグリコセラミダーゼが、その天然型において、配列番号:2(ロドコッカス)、4(ロドコッカス)、6(プロピオン酸菌(Propionibacterium acnes))、8(プロピオン酸菌)、10(ユウレイクラゲ(Cyanea nozakii))、12(ユウレイクラゲ)、14(チクビヒドラ(Hydra magnipapillata))、16(日本住血吸虫(Schistosoma japonicum))、17(キイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum))、18(ストレプトミセス属放線菌(Streptomyces avermitilis))、19(レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans))、および20(アカパンカビ(Neurospora crassa))のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含み;
ii)対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列(配列番号:46)内の求核性カルボキシラート(すなわち、GluまたはAsp)残基が、Glu/Asp以外のアミノ酸に変更されている。
【0079】
別の局面において、本発明は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼと比較して増強された合成活性を有する変異エンドグリコセラミダーゼを作製する方法を提供する。該方法は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの求核性カルボキシラート(すなわち、GluまたはAsp)残基を変更することを含み、ここで求核性Glu/Asp残基は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列(配列番号:46)内に存在する。
【0080】
別の局面において、本発明は、糖脂質またはアグリコンを合成する方法を提供する。本方法は、サッカライド部分を含むドナー基質およびアクセプター基質を、変更された求核性カルボキシラート残基(すなわち、GluまたはAsp)を有する変異エンドグリコセラミダーゼと接触させる工程を含み、ここで求核性Glu/Asp残基は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列(配列番号:46またはモチーフE)内に存在し、該接触工程は該エンドグリコセラミダーゼがドナー基質からアクセプター基質へのサッカライド部分の転移を触媒して、それにより糖脂質またはアグリコンを生成する条件下で行われる。
【0081】
さらなる局面において、本発明は、変異エンドグリコセラミダーゼポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターと;発現ベクターを含む宿主細胞と、ならびに変異エンドグリコセラミダーゼポリペプチドの発現のために適切な条件下で宿主細胞を増殖させることにより、本明細書に記載する変異エンドグリコセラミダーゼポリペプチドを作製する方法を提供する。
【0082】
本発明の他の目的、局面および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0083】
定義
「糖脂質」は、グリコシル部分と、例えばアグリコンのような本発明の変異エンドグリコセラミダーゼの基質との間の共有結合複合体である。例示的な「糖脂質」は、本発明の変異エンドグリコセラミダーゼにより形成された、グリコシル部分とアグリコンとの間の共有結合複合体である。「糖脂質」という用語は、全グリコスフィンゴ脂質を包含し、それらは、糖鎖部分(単糖、オリゴ糖、またはその誘導体)とアグリコン(すなわち、セラミド、スフィンゴシン、またはスフィンゴシン類似体)とから構成されている両親媒性化合物の群である。この用語は、セレブレオシドおよびガングリオシドの両方を包含する。所定の態様において、糖脂質は、非還元糖および非配糖体に複合したアグリコン(非糖質アルコール(OH)または(SH))である。
【0084】
本明細書において言及する「アグリコン」は、アクセプター基質であって、本発明の変異エンドグリコセラミダーゼは、グリコシルドナーから該グリコシルドナーの基質であるグリコシル部分をアクセプター基質上に転移する。グリコシルドナーは、活性化または不活性化サッカライドであり得る。例示的なアグリコンは、例えば、下に示す式Ia、式Ibまたは式IIの構造を有するヘテロアルキル部分である。
【0085】

【0086】
式Ia及び式Ibにおいて、記号Zは、OH、SHまたはNR4R4'を表す。R1およびR2は、NHR4、SR4、OR4、OCOR4、OC(O)NHR4、NHC(O)OR4、OS(O)2OR4、C(O)R4、NHC(O)R4、検出可能な標識および標的部分より独立して選択されるメンバーである。。記号R3、R4およびR4'、R5、R6ならびにR7は、各々、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキルより独立して選択されるメンバーである。
【0087】

【0088】
式IIにおいて、Z1は、O、SおよびNR4より選択されるメンバーであり;R1およびR2は、NHR4、SR4、OR4、OCOR4、OC(O)NHR4、NHC(O)OR4、OS(O)2OR4、C(O)R4、NHC(O)R4、検出可能な標識および標的部分より独立して選択されるメンバーである。記号R3、R4、R5、R6およびR7は、各々、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキルより独立して選択されるメンバーである。式IIは、アグリコン部分がさらなる基質成分、例えば脱離基または固体支持体に複合した所定の態様を表す。
【0089】
次の略語が本明細書において使用される:
Ara=アラビノシル;
Cer=セラミド;
Fru=フルクトシル;
Fuc=フコシル;
Gal=ガラクトシル;
GalNAc=N-アセチルガラクトサミニル;
Glc=グルコシル;
GlcNAc=N-アセチルグルコサミニル;
Man=マンノシル;および
NeuAc=シアリル(N-アセチルノイラミニル)。
【0090】
「シアル酸」または「シアル酸部分」という用語は、9個の炭素からなるカルボキシル化糖のファミリーの任意のメンバーを指す。シアル酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N-アセチル-ノイラミン酸(2-ケト-5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-D-ガラクトノヌロピラノス(galactononulopyranos)-1-オニック酸(度々Neu5Ac、NeuAc、またはNANAと略される)である。このファミリーの第二のメンバーは、NeuAcのN-アセチル基がヒドロキシル化されたN-グリコリル-ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)である。第三のシアル酸ファミリーのメンバーは、2-ケト-3-デオキシ-ノヌロソン酸(KDN)である(Nadano et al. (1986) J. Biol. Chem. 261: 11550-11557; Kanamori et al., J. Biol. Chem. 265: 21811-21819 (1990))。9-O-ラクチル-Neu5Acまたは9-O-アセチル-Neu5Acのような9-O-C1-C6アシル-Neu5Ac、9-デオキシ-9-フルオロ-Neu5Acおよび9-アジド-9-デオキシ-Neu5Acなどの、9-置換シアル酸も含む。シアル酸ファミリーの概要のために、例えばVarki, Glycobiology 2: 25-40 (1992); Sialic Acids: Chemistry, Metabolism and Function, R. Schauer, Ed.(Springer-Verlag, New York (1992))を参照されたい。シアル酸付加の手順におけるシアル酸化合物の合成および使用については、1992年10月1日出版の国際特許出願公開公報第WO 92/16640号に開示されている。
【0091】
本明細書において使用される「セラミド」という用語は、従来定義されているようにすべてのセラミドおよびスフィンゴシンを包括する。例えば、Bergら、Biochemistry、2002年、第5版、W. H. Freeman and Co.を参照されたい。
【0092】
「スフィンゴシン類似体」という用語は、スフィンゴシンと化学的に類似するが、極性頭部、および/または疎水性炭素鎖が変更された脂質部分を指す。本発明の方法において、アクセプター基質として有用なスフィンゴ脂質類似体部分は、同時係属中の特許出願第PCT/US2004/006904号(これは米国仮特許出願60/452,796号の優先権を主張する);米国特許出願第10/487,841号;米国特許出願第10/485,892号;第10/485,195号および第60/626,678号に記載されているものを含むが、それに限定されるわけではなく、これらの出願それぞれの開示がすべての趣旨で全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0093】
一般には、上記に引用した出願に記載されているスフィンゴシン類似体は、式:

を有する化合物であり、
式中、Zは、O、S、C(R2)2およびNR2から選択されたメンバーであり;Xは、H、-OR3、-NR3R4、-SR3、およびCHR3R4から選択されたメンバーであり;R1、R2、R3およびR4は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、-C(=M)R5、-C(=M)-Z1-R5、-SO2R5、およびSO3から独立して選択されるメンバーであり;ここで、MおよびZ1は、O、NR6またはSから独立して選択されるメンバーであり;Yは、H、-OR7、-SR7、-NR7R8、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルより選択されるメンバーであり、ここで、R5、R6、R7およびR8は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーであり;ならびにRa、Rb、RcおよびRdは、各々、独立してH、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキルである。
【0094】
野生型エンドグリコセラミダーゼまたは変異エンドグリコセラミダーゼの「アクセプター基質」は、特定のエンドグリコセラミダーゼのアクセプターとして作用し得る任意のアグリコン部分である。アクセプター基質を、対応するエンドグリコセラミダーゼおよび糖ドナー基質、ならびに他の必要な反応混合物成分と接触させ、かつ反応混合物を十分な時間インキュベートした場合、エンドグリコセラミダーゼは、糖ドナー基質から糖残基をアクセプター基質に転移する。アクセプター基質は、特定の異なる種類のエンドグリコセラミダーゼに関して変更され得る。従って、「アクセプター基質」という用語は、特定の用途のための関心対象の特定のエンドグリコセラミダーゼまたは変異エンドグリコセラミダーゼで成文化される。エンドグリコセラミダーゼおよび変異エンドグリコセラミダーゼのアクセプター基質は、本明細書に記載されている。
【0095】
野生型および変異エンドグリコセラミダーゼの「ドナー基質」は、天然のグリコシド結合と逆のアノマー配置である任意の活性化グリコシル誘導体を含む。本発明の酵素は、α-修飾またはβ-修飾グリコシルドナー、通常はα-修飾グリコシルドナーを、グリコシドアクセプターと連結するために使用される。好ましいドナー分子は、フッ化グリコシルであるが、適度に小さく、かつ比較的良好な脱離基として機能する他の基を有するドナーを使用してもよい。他のグリコシルドナー分子の例は、塩化グリコシル、臭化グリコシル、酢酸グリコシル、メシル酸グリコシル、プロピン酸グリコシル、ピバル酸グリコシル、および置換フェノールで修飾されたグリコシル分子を含む。α-修飾またはβ-修飾グリコシルドナーの中で、α-ガラクトシル、α-マンノシル、α-グルコシル、α-フコシル、α-キシロシル、α-シアリル、α-N-アセチルグルコサミニル、α-N-アセチルガラクトサミニル、β-ガラクトシル、β-マンノシル、β-グルコシル、β-フコシル、β-キシロシル、β-シアリル、β-N-アセチルグルコサミニルおよびβ-N-アセチルガラクトサミニルがもっとも好ましい。ドナー分子は、単糖であり得るか、またはそれ自身が複数の糖部分(オリゴ糖)を含有してもよい。特定の方法において使用されたドナー基質については、米国特許第6,284,494号;第6,204,029号;第5,952,203号;および第5,716,812号に記載されたそれらに含まれており、これらの出願の開示がすべての趣旨で全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0096】
「接触させる」という用語は、本明細書において、以下の用語と交換可能に使用される:と組み合わせる、に加える、と混合する、に通過させる、と共にインキュベートする、を通して流す等。
【0097】
本明細書で使用する「エンドグリコセラミダーゼ」は、その未変性または野生型が、酸性または中性の糖脂質の単糖またはオリゴ糖と、セラミド(またはスフィンゴシン)との間のグリコシド結合を切断して、無傷の単糖またはオリゴ糖およびセラミドを生成する主要な活性を有する酵素を指す(登録番号:EC3.2.1.123)。この酵素の野生型は、単糖またはオリゴ糖とアグリコン(すなわちセラミドまたはスフィンゴシン)間のグリコシド結合の形成を触媒して、様々な糖脂質を形成する第二の活性も有し得る。野生型エンドグリコセラミダーゼは、酸-塩基領域

またはモチーフBもしくは配列番号:43)、および求核領域

を含む、少なくとも二つの識別可能な保存されたモチーフを有している。
【0098】
野生型エンドグリコセラミダーゼの構造または酵素活性を変更するという文脈にて使用される「変異された」または「変更された」という用語は、エンドグリコセラミダーゼをコードするポリヌクレオチド配列、または野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列の、各々任意のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を、得られたエンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列の、一つまたは複数のアミノ酸残基が変更されているように、化学的、酵素的、または任意の他の手段によって、削除、挿入、または置換することを指す。活性を変更するそのような変異のための部位は、エンドグリコセラミダーゼの活性部位内を含む酵素内のどこにでも位置してもよいが、特に酸−塩基配列領域のAsn-Glu-Proサブ配列のグルタミン酸残基に関連している。当業者は、このGlu残基を、例えば配列番号:2の233位、および配列番号:4の224位にて容易に見つけるであろう。一旦変異されると、エンドグリコセラミダーゼの酵素活性を変更し得る他のGlu残基の例は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

モチーフ内のカルボキシラート(すなわち、GluまたはAsp)求核性Glu/Asp残基(太字)を含む。
【0099】
従って、本発明の「変異エンドグリコセラミダーゼ」または「変更されたエンドグリコセラミダーゼ」は、少なくとも一つの変異または変更されたアミノ酸残基を含む。他方、そのコード配列が変異エンドグリコセラミダーゼを生成するように変更された野生型エンドグリコセラミダーゼは、本出願にて「対応する未変性または野生型エンドグリコセラミダーゼ」と称する。本発明の例示的な変異エンドグリコセラミダーゼの一つは、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

モチーフ内の求核性カルボキシラートGlu/Asp残基(太字)の削除または置換を含む。本発明の例示的な変異エンドグリコセラミダーゼの一つは、活性部位内の変異、例えば酸−塩基配列領域のAsn-Glu-Proサブ配列内のGlu残基の削除または置換を含む。変異エンドグリコセラミダーゼは、変更された酵素活性、例えば野生型の対応物と比較して高い糖脂質合成活性を示す。増大した糖脂質合成活性を証明された変異エンドグリコセラミダーゼは、「エンドグリコセラミドシンターゼ」とも称される。
【0100】
「酸−塩基配列領域」という用語は、保存されたAsn-Glu-Proサブ配列を含む、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼ内の保存された

配列(配列番号:43)を指す。酸−塩基グルタミン酸残基は、保存されたAsn-Glu-Proサブ配列内の、例えば、ロドコッカスsp.M-777の233位;ロドコッカスsp.C9の224位;プロピオン酸菌EGCaの229位;プロピオン酸菌EGCbの248位;ユウレイクラゲの238位;チクビヒドラの229位;タマホコリカビ(Dictyostelium)の234位;住血吸虫属(Schistosoma)の214位;レプトスピラの241位;ストレプトミセス(Streptomyces)の272位;およびアカパンカビ(Neurosporassa)の247位に位置する(図15参照)。三アミノ酸セグメントAsn-Glu-Proをコードする保存配列は、以前にエンドグリコセラミダーゼの活性部位内で確認され、そのセグメント内のGlu残基は、エンドグリコセラミダーゼの加水分解活性に関連していると考えられた(Sakaguchi et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 1999, 260: 89-93)。
【0101】
「求核性残基」または「求核性モチーフ」という用語は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

モチーフ(配列番号:46)内のカルボキシラートアミノ酸残基を指す。求核性残基は、グルタミン酸またはアスパラギン酸であり得、通常はグルタミン酸である。求核性グルタミン酸残基は、例えば、ロドコッカスsp.M-777の351位;、ロドコッカスsp.C9の343位;プロピオン酸菌EGCaの342位;プロピオン酸菌EGCbの360位;ユウレイクラゲの361位;およびチクビヒドラの349位;タマホコリカビの354位;住血吸虫属の351位;レプトスピラの461位;ストレプトミセスの391位;およびアカパンカビの498位に位置する(図15参照)。
【0102】
本発明の組換え融合タンパク質は、タンパク質の精製を促進する分子「精製タグ」を一方の端部に有する融合タンパク質として構成および発現され得る。このようなタグは、糖脂質合成反応中に、関心対象のタンパク質を固定化するためにも使用され得る。例示的な精製タグは、MalE、6またはそれより多い連続したヒスチジン残基、セルロース結合タンパク質、マルトース結合タンパク質(malE)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ラクトフェリンおよびSumo融合タンパク質切断配列(Life Sensors、Malvern、PAおよびEMD Biosciencesから市販されている)を含む。適切なタグは、抗体により特異的に認識されるタンパク質配列である「エピトープタグ」を含む。エピトープタグは、一般に融合タンパク質内に組み込まれて、容易に市販されている抗体を使用して融合タンパク質を明確に検出または単離することを可能にする。「FLAGタグ」は通常使用されるエピトープタグであり、配列

からなるモノクローナル抗FLAG抗体、またはその実質的に同一の異種により特異的に認識される。本発明に使用し得る他のエピトープタグは、例えば、mycタグ、AU1、AU5、DDDDK(EC5)、Eタグ、E2タグ、Glu-Glu、6残基ペプチド、ポリオーマ中間Tタンパク質由来のEYMPME、HA、HSV、IRS、KT3、Sタグ、Slタグ、T7タグ、V5タグ、VSV-G、β-ガラクトシダーゼ、Gal4、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、タンパク質C、タンパク質A、セルロース結合タンパク質、GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)、ステップ-タグ、Nus-S、PPI-アーゼ、Pfg27、カルモジュリン結合タンパク質、dsbAおよびその断片、ならびにグランザイムBを含む。エピトープペプチド、およびエピトープ配列に対して特異的に結合する抗体は、例えば、Covance Research Products, Inc.; Bethyl Laboratories, Inc.; Abcam Ltd.; and Novus Biologicals, Inc.より市販されている。
【0103】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、および一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のそのポリマーを指す。特に限定しない限り、本用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、また天然に存在するヌクレオチドと同様に代謝される、天然ヌクレオチドの公知の類似体を含む核酸を包含する。別に示さない限り、特定の核酸配列は、その保存的に変更された異種(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オーソロガス遺伝子、SNPおよび相補的な配列、ならびに明示的に示された配列も明確に包含する。詳細には、縮重コドン置換は、一つまたは複数の選択された(または全部の)コドンの三番目の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成してもよい(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260: 2605-2608 (1985); and Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。「核酸」という用語は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によりコードされるmRNAと交換可能に使用される。
【0104】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAのセグメントを意味する。遺伝子は、コード領域に先行するおよび後続する領域(リーダーおよびトレーラー)、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)間に介在する配列(イントロン)を含み得る。
【0105】
「操作可能に結合した」という用語は、(例えば、プロモーター、シグナル配列、または転写因子結合部位の配列のような)核酸発現制御配列と、第二の核酸配列との間の機能的な結合であって、ここで、発現制御配列が第二の配列に対応する核酸の転写および/または翻訳に影響を与える結合を指す。
【0106】
「組換え発現カセット」、または単に「発現カセット」は、その配列に適合可能な宿主内で構造遺伝子の発現に影響を及ぼすことができる、組換えまたは合成により生成された、核酸要素を含む核酸構造である。発現カセットは、少なくともプロモーターと、任意で転写終結シグナルを含む。典型的に、組換え発現カセットは、転写されるべき核酸(例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸)、およびプロモーターを含んでいる。発現の実施に必要なまたは役立つさらなる要素を、本明細書に記載のように使用してもよい。例えば、発現カセットは、発現したタンパク質の宿主細胞からの分泌を導くシグナル配列をコードするヌクレオチド配列を含んでいてもよい。遺伝子発現に影響する転写終結シグナル、エンハンサー、および他の核酸配列を、発現カセット内に含めることもできる。
【0107】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体、およびアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるもの、ならびに後に変更されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、および0-ホスホセリン等である。
【0108】
「アミノ酸類似体」は、天然に存在するアミノ酸と同一の基本化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基、および例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム等のR基に結合したα炭素を有する化合物を指す。このような類似体は、変更されたR基(例えば、ノルロイシン)、または変更されたペプチドバックボーンを有するが、天然に存在するアミノ酸と同一の基本化学構造を維持している。
【0109】
「非天然アミノ酸」は遺伝暗号によりコードされおらず、天然に存在するアミノ酸と同一の基本構造を有し得るが、必ずしも有するわけではない。非天然アミノ酸は、アゼチジンカルボン酸、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、β-アラニン、アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、第3-ブチルグリシン、2,4-ジアミノイソ酪酸、デスモシン、2,2'-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ホモプロリン、ヒドロキシリジン、アロ‐ヒドロキシリジン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ-イソロイシン、N-メチルアラニン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルペンチルグリシン、N-メチルバリン、ナフトアラニン、ノルバリン、オルニチン、ペンチルグルシン、ピペコリン酸およびチオプロリンをふくむが、それらに限定されるわけではない。
【0110】
「アミノ酸模倣体」は、アミノ酸の通常の化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物を指す。
【0111】
本明細書において、アミノ酸は、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨されている、一般に知られた三文字記号、および一文字記号のいずれかにて称されてよい。同様に、ヌクレオチドもその一般に容認された一文字コードにて称されてよい。
【0112】
「保存的に変更された異種」は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的に変更された異種」とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は、本質的に同一の配列を指す。遺伝暗号の縮重のために、機能的に同一の多数の核酸が、任意の所定のタンパク質をコードする。例を挙げると、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸のアラニンをコードしている。従って、アラニンがコドンで特定される全位置で、コドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載した対応する任意のコドンに変更することができる。このような核酸のバリエーションは「サイレントバリエーション(silent variations)」であり、保存的に変更されたバリエーションの一種である。本明細書でポリペプチドをコードする各核酸配列は、全ての可能な核酸のサイレントバリエーションも含む。当業者は、核酸内の各コドンは(通常メチオニンのみのコドンであるAUG、および通常トリプトファンのみのコドンであるTGGを除いて)機能的に同一な分子を与えるよう変更し得ることを理解するであろう。従って、記載した配列の各々に、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレントバリエーションが潜在する。
【0113】
アミノ酸配列に関して、コード化された配列内の1個のまたは少ない割合のアミノ酸を変更、追加または削除する核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個々の置換、削除または追加は「保存的に変更された異種」であり、ここで、変更は、アミノ酸を化学的に類似したアミノ酸(すなわち、疎水性、親水性、正荷電、中性、負荷電)に置換することを、当業者は理解するであろう。例示的な疎水性アミノ酸は、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、およびトリプトファンを含む。例示的な芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンを含む。例示的な脂肪族アミノ酸は、セリンおよびスレオニンを含む。例示的な塩基性アミノ酸は、リシン、アルギニンおよびヒスチジンを含む。カルボキシラート側鎖を有する例示的なアミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。カルボキサミド側鎖を有する例示的なアミノ酸は、アスパラギンおよびグルタミンを含む。機能的に類似したアミノ酸を提供する同類置換表は周知である。そのような保存的に変更された異種は、本発明の多型異種、種間ホモログ、および対立遺伝子に加えられ、これらを除外するものではない。
【0114】
下記8つの群はそれぞれ、互いに同類置換であるアミノ酸を含有する:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照されたい)。
【0115】
本明細書において、アミノ酸は、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨されている、一般に知られた三文字記号、および一文字記号のいずれかにて称され得る。同様に、ヌクレオチドもその一般に容認された一文字コードにて称されてよい。
【0116】
本明細書において、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体を指すために交換可能に使用される。三つの用語の全ては、アミノ酸残基の一つまたは複数が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な模倣化合物であるアミノ酸重合体、天然に存在するアミノ酸重合体、および天然に存在しないアミノ酸重合体に適用される。本明細書にて使用されるように、この用語は、アミノ酸残基が共有ペプチド結合により連結されている、完全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含する。
【0117】
本願にて使用される「異種ポリヌクレオチド」、「異種核酸」または「異種ポリペプチド」は、外来源を由来として特定の宿主細胞に導入されているもの、または同一源に由来する場合、その元の形態が変更されているものを意味する。従って、原核生物の宿主細胞内の異種エンドグリコセラミダーゼ遺伝子は、特定の宿主細胞の内因性エンドグリコセラミダーゼ遺伝子であるが、変更されているものを含む。異種配列の変更は、例えばDNAを制限酵素で処理して、プロモーターに操作可能に結合することが可能なDNA断片を生成することによって起こり得る。異種配列の変更には、例えば部位特異的突然変異などの技術も有用である。
【0118】
「サブ配列」は、各々より長い核酸またはアミノ酸の配列(例えば、ポリペプチド)の一部を含む、核酸またはアミノ酸の配列を指す。
【0119】
二つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、「同一の」または「同一性」パーセントという用語は、BLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを以下に記載する初期設定パラメータと共に使用して、または手動アラインメントおよび目視検査により測定して、同一であるか、または同一のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの特定の割合(すなわち、例えば比較ウィンドウまたは指定領域にわたって最大に一致するように比較および整合した場合に、特定の領域、例えば少なくとも約25、50、75、100、150、200、250、500、1000、またはそれより多い核酸もしくはアミノ酸領域にわたって、完全長配列まで、約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い同一性)を有する、二つまたはそれ以上の配列またはサブ配列を指す(例えば、NCBIウエブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/または同様物を参照されたい)。このような配列は、「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、テスト配列の補足物を指すか又それに適用し得る。この定義はまた、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有する配列を含む。以下に説明するように、好ましいアルゴリズムは、ギャップ等の原因となる。同一性は、好ましくは少なくとも約25アミノ酸もしくはヌクレオチド長、またはより好ましくは50〜100アミノ酸もしくはヌクレオチド長の領域に亘り存在する。
【0120】
配列比較に関して、典型的には一配列が参照配列の役割をして、これとテスト配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する際には、テスト配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要であればサブ配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。好ましくは、初期設定プログラムパラメータを使用し得るか、または代替的なパラメータを指定し得る。次に、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対するテスト配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0121】
本明細書において使用される「比較ウィンドウ」は、20〜600、一般的には約50〜約200、より一般的には約100〜約150からなる群より選択される任意の数の連続位置のセグメントに対する参照を含み、ここで、二つの配列が最適にアラインされた後、配列は同一数の連続位置の参照配列と比較され得る。比較のための配列のアラインメント法は、当技術分野において周知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988)の同様の方法の探索によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化導入によって(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)、あるいは手動アラインメントおよび目視検査によって、実行し得る(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al., eds. 1995 supplement)を参照されたい)。
【0122】
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定する際に適切なアルゴリズムの好ましい例は、各々BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschulら、Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1977) およびAltschulら、J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST2.0は、本願に記載されるパラメータと共に使用されて、本発明の核酸およびタンパク質の配列同一性パーセントを決定する。BLAST解析を実施するためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公に入手可能である。このアルゴリズムでは、最初に、クエリー配列内の長さWの短い単語を同定することによって高いスコアの配列対(HSP)を同定し、これはデータベース配列内の同一長の単語とアラインされた場合に、正値の閾値スコアTに一致するかまたはいくつかを満たす。Tは、近隣単語スコア閾値と称される(Altschul et al.、前記)。これら最初の近隣単語ヒットは、それらを含むより長いHSPを見つけるサーチを開始するための種として機能する。単語ヒットは、累積アラインメントスコアが増加できる限り、各配列に沿って両方の方向に伸張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致する残基対の報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基のペナルティスコア;常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列については、累積スコアはスコアマトリクスを使用して計算される。単語ヒットの各方向における伸張は、累積アラインメントスコアが、最大達成値から量Xだけ低下した場合;累積スコアが、一つまたは複数の負スコアの残基アラインメントの蓄積によって、ゼロまたはそれ未満になった場合、またはいずれかの配列が終点に到達した場合に停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列のための)は、初期設定として単語長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列のためには、BLASTPプログラムは初期設定として単語長3、および期待値(E)10、ならびにBLOSUM62スコアマトリクス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915 (1989)を参照されたい)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。
【0123】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という表現は、核酸が典型的には核酸の複合混合物中でその標的サブ配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件のことを意味する。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる環境においては異なるであろう。より長い配列は、より高温で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションの広範な手引きについては、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology?Hybridization with Nucleic Probes, 「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993)に見い出せる。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度pHにおいて、特定の配列の熱融解点(Tm)よりも約5〜10℃低いように選択される。Tmは、(規定されたイオン強度、pH、および核酸濃度下で)標的に相補的なプローブの50%が、平行状態にて標的配列にハイブリダイズする温度である(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは平行状態にてプローブの50%が占有する)。ストリンジェントな条件とは、pH7.0〜8.3にて塩濃度が約1.0Mのナトリウムイオン濃度より低くく、一般に約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン(または他の塩)濃度の状態であり、温度は短い核酸配列(例えば、10〜50ヌクレオチド)で少なくとも約30℃であり、長い核酸配列(例えば、50ヌクレオチドを越える)では少なくとも約60℃であると思われる。ストリンジェントな条件はまた、例えばホルムアミドのような不安定化剤を添加することにより達成してもよい。選択的または特異的ハイブリダイゼーションに関しては、正シグナルが少なくともバックグラウンドの二倍、好ましくはバックグラウンドの十倍のハイブリダイゼーションである。例示的な「高度にストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミド、5×SSC、および1% SDSを含有する緩衝液中で42℃でのハイブリダイゼーション、または5×SSCおよび1% SDSを含有する緩衝液中で65℃でのハイブリダイゼーションであり、双方とも65℃での0.2×SSCおよび0.1% SDSによる洗浄を伴う。例示的な「中度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1M NaCl、および1% SDSの緩衝液中で37℃でのハイブリダイゼーション、および1×SSC中で45℃での洗浄を伴う。
【0124】
「アルキル」という用語は、他に記述のない限り、それ自体で、または他の置換基の一部として、完全飽和、モノもしくはポリ不飽和であってもよい直鎖もしくは分岐鎖、もしくは環式炭化水素基、またはその組み合わせを意味する。これらは、指定された炭素原子数を有する一価、二価および多価基を含んでもよい(すなわち、C1-C10は、1〜10個の炭素を意味する)。飽和アルキル基の例は、メチル、メチレン、エチル、エチレン、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、同族体および異性体である基(例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル等)を含むが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は、一つまたは複数の二重結合または三重結合を有する基である。不飽和アルキル基の例は、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびにより高級な同族体および異性体を含むが、これらに限定されない。「アルキル」という用語は、他に記載のない限り、「アルキレン」、かつ「ヘテロアルキル」など以下により詳細に定義されたアルキルの誘導体を含む。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル」と称される。
【0125】
「ヘテロアルキル」という用語は、他に記述のない限り、それ自体で、または他の用語と組み合わされて、規定された数の炭素原子と、O、N、SiおよびSからなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とからなる、安定な直鎖もしくは分岐鎖、もしくは環式炭化水素基、またはその組み合わせを意味する。ここで窒素および硫黄原子は、任意で酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意で四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、NおよびSならびにSiは、ヘテロアルキル基の内部の任意の位置、またはアルキル基が分子の残りの部分に対して結合した位置に配置されてもよい。例として

が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。二つまでのヘテロ原子が、例えば-CH2-NH-OCH3およびCH2-O-Si(CH3)3のように連続していてもよい。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体で、または他の置換基の一部として、例として-CH2-CH2-S-CH2-CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-が挙げられるが、これらに限定されるわけではないヘテロアルキルから誘導された二価基を意味する。ヘテロアルキレン基に関しては、ヘテロ原子は鎖の一方または両方の末端を占有してもよい(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ等)。またさらに、アルキレンおよびヘテロアルキレンの結合基に関しては、結合基の向きは、その結合基が描かれる式の方向によって示されない。
【0126】
上記の各用語(例えば、「アルキル」および「ヘテロアルキル」)は、指定した基の置換または非置換の両方の形態を含むものとする。各種の基の好ましい置換基を、以下に提供する。
【0127】
アルキルおよびヘテロアルキル基(多くの場合、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと称される基を含む)は、0から(2m'+1)の範囲の数字で、

より選択される1または複数の種々の基であり得、これらに限定されるわけではなく、ここでm'は、そのような基の炭素原子の総数である。R'、R''、R'''およびR''''は各々、好ましくは独立して水素、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、例えば1-3ハロゲンで置換されたアリール、置換または非置換アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。本発明の化合物が一つより多いR基を含む場合、例えば、各R基は、R'、R''、R'''およびR''''基が一つより多く存在する場合、それらが各々R'、R''、R'''およびR''''基であるように独立して選択される。R'およびR''が同一窒素原子に結合している場合、これらは窒素原子と一緒になって5-、6-、または7-員環を形成していてもよい。例えば、-NR'R''は、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことを意味するが、これらに限定されるわけではない。上記の置換基の説明から、当業者は用語「アルキル」が、水素基以外の基と結合した炭素原子を有する基、ハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)およびアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3等)などを含むことを意味することを理解する。
【0128】
「アリール」という用語は、他に記述のない限り、単環または互いに縮合または共有結合し得る多環(好ましくは1〜3個の環)であり得る、ポリ不飽和の芳香族炭化水素置換基を意味する。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、およびSより選択される1〜4個のヘテロ原子を含むアリール基(すなわち環)を指し、ここで窒素および硫黄原子は任意で酸化され、窒素原子(1個または複数)は四級化されていてもよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合され得る。アリールおよびヘテロアリール基の限定されない例は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリルおよび6-キノリルを含む。上記アリールおよびヘテロアリール環系のそれぞれの置換基は、下記の許容される置換基の群より選択される。
【0129】
アルキル基について記載された置換基と同様に、アリール基およびヘテロアリール基の置換基は各種あり、かつ例えば以下より選択される:0から芳香族環系上の確定していない原子価の総数の範囲の数の、ハロゲン、OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、OC(O)R'、-C(O)R', CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、NR' C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、NR-C(NR'R''R''')=NR''''、NRC(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、NRSO2R'、-CNおよび-NO2、-R'、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキシならびにフルオロ(C1-C4)アルキル。本発明の化合物が一つより多いR基を有する場合、例えば、各R基は、R'、R''、R'''およびR''''基が一つより多く存在する場合、それらが各々R'、R''、R''およびR''''基であるように独立して選択される。
【0130】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の二つの置換基は、式-T-C(O)-(CRR')q-U-の置換基と代替されてもよく、ここでTおよびUは、独立して-NR-、-O-、-CRR'-または単結合であり、qは、0〜40の整数である。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の二つの置換基は、式-A(CH2)rB-の置換基と代替されてもよく、ここでAおよびBは、独立して-CRR'-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、S(O)2、-S(O)2NR'-または単結合であり、rは1〜40の整数である。そのように形成された新しい環の単結合の一つは、二重結合で代替されてもよい。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の二つの置換基は、式-(CRR')s-X-(CR''R''')d-の置換基と代替されてもよく、ここでsおよびdは、独立して0〜40の整数であり、Xは、-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、またはS(O)2NR'-である。置換基R、R'、R"およびR'''は、好ましくは水素または置換もしくは非置換の(C1-C40)アルキルから独立して選択される。
【0131】
「検出可能な標識」という用語は、それが結合した分子を、化学的、酵素的、免疫学的または放射線学的手段を含む様々な機構により検出可能にする部分を指す。検出可能な標識のいくつかの例は、蛍光放射または酵素で触媒される化学反応の生成物に基づく検出を可能にする、蛍光分子(例えばフルオレセイン、ローダミン、Texas Redおよびフィコエリトリンなど)、および酵素分子(例のような西洋ワサビ過酸化酵素、アルカリフォスファターゼおよびβ-ガラクトシダーゼなど)を含む。3H、125I、35S、14C、または32Pなどの様々な同位元素を含む放射性標識も、適切な分子に結合させて、オートラジオグラフィーなどの、放射活性を記録する任意の適切な方法によって検出することができる。例えば、Tijssen, "Practice and Theory of Enzyme Immunoassays, "Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Burdon and van Knippenberg Eds., Elsevier (1985), pp. 9-20を参照されたい。標識、標識化手順および標識の検出への導入も、Polak and Van Noorden, Introduction to Immunocytochemistry, 2d Ed., Springer Verlag, NY (1997);かつHaugland, Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、Molecular Probes, Inc.(1996)出版の併用手引書およびカタログに見出し得る。
【0132】
本明細書にて使用される「標的部分」という用語は、身体の特定の組織または領域内に選択的に局在すると思われる種を指す。局在化は、分子決定因子の特異的認識、標的薬剤または複合物の分子サイズ、イオン相互作用、疎水性相互作用等によって仲介される。特定の組織または領域に薬剤を標的させる他の機構は、当業者に公知である。例示的な標的部分は、抗体、抗体断片、トランスフェリン、HS-グリコタンパク質、凝固因子、血清タンパク質、β-グリコタンパク質、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、EPO、サッカライド、レクチン、受容体、受容体のリガンド、BSA等のタンパク質を含む。標的基は、非ペプチドおよびペプチドの両方を含むことを意図した小分子であってもよい。
【0133】
結合として使用されるか、または結合に直交するように表示される記号

は、表示部分が、分子、固体支持体等の残りの部分に結合されている地点を示す。
【0134】
本明細書にて使用される「増大」という用語は、標準と比較した場合のパラメータの量の検出可能な正の変化を指す。この正の変化のレベルは、例えば、その対応する野生型エンドグリコセラミダーゼから変異エンドグリコセラミダーゼへの合成活性では、好ましくは少なくとも10%または20%、より好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%または80%、最も好ましくは少なくとも100%である。
【0135】
「低下」または「減少」という用語は、標準と比較した場合のパラメータの量の検出可能な負の変化として定義する。この負の変化のレベルは、例えば、その対応する野生型エンドグリコセラミダーゼから変異エンドグリコセラミダーゼへの加水分解活性では、好ましくは少なくとも10%または20%、より好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、80%、90%、最も好ましくは少なくとも100%である。
【0136】
詳細な説明
序論
各々がサッカライド部分およびヘテロアルキル部分、例えば、式Ia、式Ib、式IIまたは式IIIからなる糖脂質は、細胞膜の重要な成分である。膜表面から外方向に突出する多様な糖基により、糖脂質は、細胞の増殖および分化を仲介し、ホルモンおよび細菌毒を認識し、抗原性を決定し;そのいくつかは癌関連抗原として認識される(Hakomori, Annu. Rev. Biochem., 50:733-764,1981; Marcus, Mol. Immunol. 21:1083-1091, 1984)。本発明は新規な酵素、および実質的に任意の構造を有するサッカリル部分を含む糖脂質を製造する方法を開示し、これらの重要な分子の研究と、治療薬、例えば所定の糖脂質を標的とする抗癌剤の開発を可能にする。
【0137】
変異エンドグリコセラミダーゼ
本発明は、サッカライド部分を含有するドナー基質をアクセプター基質(アグリコン)に結合させる合成活性が、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼと比較して増強されている、「エンドグリコセラミドシンターゼ」とも称される、変異エンドグリコセラミダーゼを提供する。変異エンドグリコセラミダーゼはまた、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼと比較して低下された糖脂質に対する加水分解活性を有し得る。対応する野生型エンドグリコセラミダーゼは、酸−塩基領域

、および求核性領域

とを含む、少なくとも二つの識別可能な保存されたモチーフを有し、糖脂質内の糖鎖と脂質部分との間のグリコシド結合を加水分解する。
【0138】
構造的に、本発明は、変更された求核性カルボキシラートGlu/Asp残基を有する変異エンドグリコセラミダーゼを提供し、ここで該求核性Glu/Aspは、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列(配列番号:46)内に存在し、該変異エンドグリコセラミダーゼはドナー基質からアクセプター基質へのサッカライド部分の転移を触媒する。
【0139】
さらなる局面において、本発明は、サブ配列Asn-Glu-Pro内に変更されたGlu残基を有する変異エンドグリコセラミダーゼを提供し、ここで該サブ配列は、対応する野生型タンパク質の

配列の酸−塩基配列領域内に存在し、該変異エンドグリコセラミダーゼはドナー基質からアクセプター基質へのサッカライド部分の転移を触媒する。
【0140】
関連した局面において、本発明は、以下を特徴とする変異エンドグリコセラミダーゼを提供する:
i)エンドグリコセラミダーゼが、その天然型において、配列番号:2(ロドコッカス)、4(ロドコッカス)、6(プロピオン酸菌)、8(プロピオン酸菌)、10(ユウレイクラゲ)、12(ユウレイクラゲ)、14(チクビヒドラ)、16(日本住血吸虫)、17(キイロタマホコリカビ)、18(ストレプトミセス属放線菌)、19(レプトスピラ)および20(アカパンカビ)の任意の一つのアミノ酸配列を含み;ならびに
ii)対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列の求核性Glu/Asp残基が、Glu/Asp以外のアミノ酸に変更されていること。
【0141】
さらなる局面において、本発明は、以下を特徴とする変異エンドグリコセラミダーゼを提供する:
i)エンドグリコセラミダーゼが、その天然型において、配列番号:2(ロドコッカス)、4(ロドコッカス)、6(プロピオン酸菌)、8(プロピオン酸菌)、10(ユウレイクラゲ)、12(ユウレイクラゲ)、14(チクビヒドラ)、16(日本住血吸虫)、17(キイロタマホコリカビ)、18(ストレプトミセス属放線菌)、19(レプトスピラ)および20(アカパンカビ)の任意の一つのアミノ酸配列を含み;ならびに
ii)対応する野生型タンパク質の酸−塩基配列領域

のサブ配列Asn-Glu-Pro内のGlu残基が、Glu以外のアミノ酸に変更されていること。
【0142】
典型的に、本発明の変異エンドグリコセラミダーゼは、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼのAsn-Glu-Proサブ配列内に、変更された求核性Glu/Asp残基、および/または変更された酸−塩基配列領域Glu残基を含む。Glu残基の一方または両方は、削除されているか、または変異酵素が合成活性を有するようにタンパク質の全体的な構造を保持する他の化学的部分(chemical moiety)で代替されている。例えば、求核性および/または酸−塩基配列領域内(すなわち、Asn-Glu-Proサブ配列領域内)のGlu残基の一つまたは複数は、Glu以外のL-アミノ酸残基、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣体等で代替され得る。通常、Glu残基の一つまたは複数は、他のGlu以外のL-アミノ酸、例えば、Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはValで置換される。
【0143】
機能的に、本発明は、グリコシル部分とアグリコン基質とを結合させて糖脂質を形成する合成活性を有する変異エンドグリコセラミダーゼを提供する。変異エンドグリコセラミダーゼはまた、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼと比較して糖脂質に対する低下した加水分解活性を有し得る。本発明の変異エンドグリコセラミダーゼは、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの合成活性よりも大きい合成活性を有する。好ましくは、合成活性は、アッセイにおいて、その分解(すなわち、加水分解)活性よりも大きい。変異エンドグリコセラミダーゼの合成活性のためのアッセイは、該変異エンドグリコセラミダーゼのグリコシルドナー基質からグリコシル部分を、アグリコン(すなわち、アクセプター基質)に転移する工程を含む。合成活性は、該変異による糖脂質の合成速度、または酵素により合成された生成物の量を検出するよう構成されているアッセイで容易に測定し得る。
【0144】
概して、本発明の好ましい変異エンドグリコセラミダーゼは、それらの野生型類似体と比較して、少なくとも約1.5倍、より好ましくは少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、およびより好ましくはさらに、少なくとも約100倍、合成的により活性である。合成的により活性とは、酵素による出発物質の変換速度が、対応する野生型酵素と比較して速い、および/または選択された時間中に生成される生成物の量が、同様の時間中に対応する野生型酵素によって生成される量よりも多いことを意味する。酵素合成活性を決定する際に有用なアッセイは、該変異のグリコシルドナー基質からグリコシル部分をアグリコンに転移する工程を含む。
【0145】
対応する野生型エンドグリコセラミダーゼは、原核生物(例えば、ロドコッカス、プロピオン酸菌、ストレプトミセス、またはレプトスピラ(Leptospira))または真核生物(例えば、キアネア(Cyanea)、ヒドラ(Hydra)、住血吸虫属、タマホコリカビ、アカパンカビ(Neurospora))を由来とし得る。例えば、対応する野生型または未変性エンドグリコセラミダーゼは、ロドコッカス、プロピオン酸菌、またはストレプトミセスを含む放射菌(Actinobacteria)を由来とし得る。対応する野生型または未変性エンドグリコセラミダーゼはまた、キアネア、ヒドラ、もしくは住血吸虫属を含む後生動物(Metazoan)、またはキアネアもしくはヒドラを含む刺胞動物(Cnidaria)を由来とし得る。対応する野生型または未変性エンドグリコセラミダーゼはまた、動菌類(Mycetozoa)(例えば、タマホコリカビ)、スピロヘータ(Spirochete)(例えば、レプトスピラ)、または例えば子嚢菌(Ascomycete)(例えば、アカパンカビ)のような真菌を由来とし得る。一態様において、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼは、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、17、18、19、または20の任意の一つのアミノ酸配列を有する。一態様において、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼは、配列番号:l、3、5、7、9、11、13、または15の任意の一つの核酸配列によりコードされる。
【0146】
対応する野生型エンドグリコセラミダーゼは、任意の公知のエンドグリコセラミダーゼ配列、または未だ決定されていない任意のエンドグリコセラミダーゼ配列を由来とし得る。さらなる対応する野生型エンドグリコセラミダーゼは、配列データベースおよび配列アラインメントアルゴリズム、例えばインターネット上でncbi.nlm.nih.govにより利用可能な、公に利用可能なGenBankデータベースおよびBLASTアラインメントアルゴリズムを使用して同定することができる。さらなる対応する野生型エンドグリコセラミダーゼはまた、ハイブリダイゼーション、および組換え遺伝学の日常的な技術を使用しても見出すことができる。本発明における使用の一般方法を開示する基本教本は、Sambrook and Russell, Molecular Cloning, A Laboratory Manual(3rd ed. 2001); Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990); およびAusubelら、編者、Current Protocols in Molecular Biology (1994)を含む。関心対象の未変性または野生型エンドグリコセラミダーゼは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号:1、3、5、7、9、11、13、または15の一つまたは複数にハイブリダイズした核酸配列でコードされたものを含む。関心対象の未変性または野生型エンドグリコセラミダーゼはまた、一つまたは複数の保存的に置換されたアミノ酸を有するもの、または配列番号:2、4、6、8、10、12、14、または16〜20の一つまたは複数に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するものを含む。
【0147】
野生型および変異エンドグリコセラミダーゼは、さらにN-末端から酸−塩基配列領域までに位置する

モチーフ(モチーフAまたは配列番号:42)、およびC-末端から酸−塩基配列領域までに位置するC-末端

モチーフ(モチーフCまたは配列番号:44)により特徴付けられる。例えば、

モチーフは、ロドコッカスsp.M-777の131-140残基;ロドコッカスsp.C9の129-138残基;プロピオン酸菌EGCaの136-145残基;プロピオン酸菌EGCbの153-162残基;ユウレイクラゲの130-139残基;およびチクビヒドラの121-130残基に位置する。

モチーフは、ロドコッカスsp.M-777の259-264残基;ロドコッカスsp.C9の250-255残基;プロピオン酸菌EGCaの262-267残基;プロピオン酸菌EGCbの280-285残基;ユウレイクラゲの272-277残基;およびチクビヒドラの263-268残基に位置する。
【0148】
細菌宿主細胞の可溶性の分画で変異エンドグリコセラミダーゼの発現を増強させるために、変異エンドグリコセラミダーゼは典型的に、対応する野生型酵素内に発現する自然N-末端シグナルペプチド配列を除去している。シグナルペプチド配列は、典型的に、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼのN-末端15、20、25、30、35、40、40、45、50または55アミノ酸残基内に見出される。ロドコッカス、プロピオン酸菌、キアネア、ヒドラ、住血吸虫属、タマコホリカビ、ストレプトミセスおよびアカパンカビ種からの野生型エンドグリコセラミダーゼの予測される自然N-末端シグナルペプチド配列は、配列番号:59-68に示される。
【0149】
変異エンドグリコセラミダーゼを含むアミノ酸配列に加えて、本発明は、変異エンドグリコセラミダーゼをコードする核酸配列、そのような核酸配列を含む発現ベクター、およびそのような発現ベクターを含む宿主細胞も含む。
【0150】
野生型エンドグリコセラミダーゼをコードする配列のクローニングおよびサブクローニング
野生型エンドグリコセラミダーゼをコードする多数のポリヌクレオチド配列、例えば、GenBankアクセッション番号U39554が決定されており、合成し得るか、または例えばBlue Heron Biotechnology(Bothell、WA)のような供給業者から得ることができる。
【0151】
ゲノム情報の研究の急速な進歩はクローニングのアプローチを可能にした。このアプローチでは、以前に同定されたエンドグリコセラミダーゼをコードする配列など、公知のヌクレオチド配列に対して所定の割合の配列相同性を有する任意の遺伝子セグメントについて、生命体のDNA配列データベースを探すことができる。続いて、そのように同定された任意のDNA配列を、化学合成および/または例えばオーバーラップ・エクステンション方法などのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術により得ることができる。短い配列については完全にデノボ合成で十分であり得る一方;より大きい遺伝子を得るためには、さらに合成プローブを使用したヒトcDNAまたはゲノムライブラリーからの完全長コード配列の単離が必要であり得る。
【0152】
または、エンドグリコセラミダーゼをコードする核酸配列は、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの標準的なクローニング技術を使用して単離することができる。ここで、多くの場合、相同性をベースとするプライマーは、エンドグリコセラミダーゼをコードする公知の核酸配列を由来とし得る。この目的において最も一般的に使用されている技術は、標準的な教本、例えば前記、Sambrook and Russellに記載されている。
【0153】
野生型エンドグリコセラミダーゼをコードする配列を得るために適切なcDNAライブラリーは、市販されているか、または構成することができる。mRNAの単離、逆転写によるcDNAの形成、組換えベクター内へのcDNAの連結、組換え宿主内へのトランスフェクトおよび増殖、スクリーニング、およびクローニングの一般的な方法は、周知である。(例えば、Gubler and Hoffman, Gene, 25: 263-269 (1983); 前記、Ausubel et al.を参照されたい)。PCRによって、ヌクレオチド配列の増幅されたセグメントを得た後、セグメントはさらにプローブとして使用されて、cDNAライブラリーから野生型エンドグリコセラミダーゼをコードする完全長ポリヌクレオチド配列を単離し得る。適切な手順の一般的な説明は、前記、Sambrook and Russellに見出すことができる。
【0154】
同様の手順に従って、野生型エンドグリコセラミダーゼをコードする完全長配列をゲノムライブラリーから得ることができる。ゲノムライブラリーは市販されており、または当技術分野で認められている様々な方法に従って構成し得る。概して、ゲノムライブラリーを構成する際には、まずエンドグリコセラミダーゼを見出す可能性の高い生命体からDNAを抽出する。次いで、DNAを機械的に剪断するかまたは酵素で消化して、約12-20kb長の断片を得る。次いで、勾配遠心分離によって、断片を望ましくないサイズのポリヌクレオチド断片から分離して、バクテリオファージλベクター内に挿入する。これらのベクターおよびファージをインビトロでパッケージングする。組換えファージは、Benton and Davis, Science, 196: 180-182 (1977)に記載されているようにプラークハイブリッド形成法により分析される。コロニーハイブリダイゼーション法は、Grunsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 72: 3961-3965 (1975)に記載されているように実施される。
【0155】
配列相同性に基づいて、縮重オリゴヌクレオチドをプライマーセットとして設計し、適切な条件下でPCRを実行して、(例えば、White et al., PCR Protocols: Current Methods and Applications, 1993; Griffin and Griffin, PCR Technology, CRC Press Inc. 1994を参照されたい)cDNAまたはゲノムライブラリーからのヌクレオチド配列のセグメントを増幅する。増幅したセグメントをプローブとして使用して、野生型エンドグリコセラミダーゼをコードする完全長核酸を得る。市販されていないオリゴヌクレオチドは、例えば最初にBeaucage & Caruthers, Tetrahedron Lett. 22: 1859-1862 (1981), using an automated synthesizer, as described in Van Devanter et. al., Nucleic Acids Res. 12: 6159-6168 (1984)に記載された固相ホスホロアミダイトトリエステル方法に従って化学合成し得る。オリゴヌクレオチドの精製は、例えば未変性アクリルアミドゲル電気泳動またはPearson & Reanier, J. Chrom. 255: 137-149 (1983)に記載されているような陰イオン交換HPLCなどの、当技術分野にて認められている任意の手法を使用して実施し得る。
【0156】
野生型エンドグリコセラミダーゼをコードする核酸配列が獲得されたら、コード配列を、ベクター、例えば発現ベクター内にサブクローニングして、得られた構造物から組換えエンドグリコセラミダーゼを生成し得る。次いで、酵素の特質を変更するために、野生型エンドグリコセラミダーゼをコードする配列に対してさらなる変更、例えばヌクレオチド置換を行ってもよい。
【0157】
変異エンドグリコセラミダーゼの作製方法
一局面において、本発明は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼと比較すると、サッカライドと基質とを連結して糖脂質を形成する合成活性を有する、変異エンドグリコセラミダーゼを生成する方法を提供する。変異エンドグリコセラミダーゼは、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼと比較して糖脂質に対する低下した加水分解活性も有する。本方法は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの合成活性を選択的に付与する、および/または加水分解活性を破壊することを含む。合成活性は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの求核性カルボキシラートアミノ酸残基(すなわち、GluまたはAsp)を変更することにより付与し得る。
【0158】
従って、一局面において、本発明は対応する野生型エンドグリコセラミダーゼと比較して増強した合成活性を有する変異エンドグリコセラミダーゼを作製する方法を提供する。本方法は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの求核性カルボキシラートアミノ酸残基を変更することを含み、ここで求核性カルボキシラートアミノ酸残基は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列(配列番号:46)内に存在している。
【0159】
変異エンドグリコセラミダーゼを産生する方法を実行する際には、対応するエンドグリコセラミダーゼの求核性カルボキシラートアミノ酸残基(すなわち、GluまたはAsp)の一方もしくは両方、および/または、酸−塩基配列領域Glu残基を削除するか、あるいは変異酵素が合成活性を有するようにタンパク質の全体的な構造を保持する他の化学的部分と代替し得る。例えば、求核性および/または加水分解性のGluまたはAsp残基の一つまたは複数は、GluまたはAsp以外のL-アミノ酸残基、D-アミノ酸残基(D-GluまたはD-Aspを含む)、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣体等で代替し得る。通常、一つまたは複数のGluまたはAsp残基は、GluまたはAsp以外の他のL-アミノ酸、例えば、Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Glu、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVaIで置換される。
【0160】
エンドグリコセラミダーゼをコードする配列内への変異導入
エンドグリコセラミダーゼの酵素活性を変える変更は、ポリヌクレオチドをコードする配列内の様々な位置にて行うことができる。しかしながら、このような変更のための好ましい位置は、酵素の求核性部位および酸−塩基配列領域内である。構造または未変性の酵素活性に重要な残基を含む可能性が高い保存領域は、異なる生命体からの野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列をアラインすることによって同定し得る。そのようなアミノ酸配列は、GenBankを含む公的なデータベース上で容易に入手することができる。エンドグリコセラミダーゼ配列の、求核性残基が同定されたエンドグリコセラミダーゼ配列とのアラインメントにより、続く配列内の求核性残基の同定が可能となる。または、求核性残基は、フッ化糖標識手法を介して同定(または確認)することができる(米国特許第5、716、812号を参照されたい)。
【0161】
コードされた核酸配列から野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列、例えば、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16-20を推定して、求核性領域または酸−塩基領域の存在を確認することができる。好ましくは、変異は、求核性領域または酸−塩基領域内に導入される。例えば、酸−塩基配列領域の3-アミノ酸断片Asn-Glu-Proの中央に位置するGlu残基を、削除または他のアミノ酸残基による置換などの変異のための標的とし得る。加えて、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

モチーフ内の求核性カルボキシラート(すなわち、GluまたはAsp)残基(太字)も、エンドグリコセラミダーゼの酵素活性を変更するための変異導入の標的である。当業者は、以下に詳細に説明する周知の突然変異方法の任意の一つを使用して、標的のGlu残基を変異させる目的を達成し得る。配列番号:21-25に示すような他のアミノ酸残基と代替することにより例示的な変更が導入される。
【0162】
変更は、野生型または変異エンドグリコセラミダーゼをコードする核酸配列、あるいはエンドグリコセラミダーゼ酵素の一つまたは複数のアミノ酸に行い得る。典型的に、変更は、求核性部位および酸−塩基配列領域の一方または両方をコードする一つまたは複数の核酸コドンに行う。例えば、酸−塩基配列領域内のGlu残基をコードするコドン内の一つまたは複数の核酸が、コドンがGlu以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVaIをコードするように変更される。他の例では、求核性部位内のGlu残基をコードするコドン内の一つまたは複数の核酸が、コドンがGlu以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVaIをコードするように変更される。野生型または変異エンドグリコセラミダーゼの核酸配列に対する部位特異的な変更は、オーバーラッピングPCRまたはオーバーラップ・エクステンションPCRを含む周知の方法を使用して導入され得る(例えば、 Aiyar, et al., Methods Mol Biol (1996) 57:177-91; and Pogulis, et al., Methods Mol Biol (1996) 57:167-76を参照されたい)。適切なPCRプライマーは、GenBankまたは他のソースに提供されている配列情報を使用して当業者により決定され得る。所望の配列の大規模な部位特異的変異誘発のためのサービスは、例えば、GeneArt of Toronto、Canadaから商業的に入手可能である。
【0163】
加えて、多様性を生じさせるプロトコルの種類は、同分野に確立され記載されている。例えば、Zhangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94: 4504-4509 (1997); およびStemmer, Nature, 370: 389-391 (1994)を参照されたい。手順は、別個に、または組み合わせて使用して、核酸の一組の異種、引いてはコード化ポリペプチドの異種を製造し得る。変異誘発のためのキット、ライブラリー構成、および他の多様性生成方法は、市販されている。
【0164】
多様性を生成する変異方法は、例えば部位特異的変異誘発(Botstein and Shortle, Science, 229: 1193-1201 (1985))、ウラシル含有鋳型を使用する変異誘発(Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 488-492 (1985))、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発(Zoller and Smith, Nucl. Acids Res., 10: 6487-6500 (1982))、ホスホロチオエート修飾DNA変異誘発(Taylor et al., Nucl. Acids Res., 13: 8749-8764 and 8765-8787 (1985))、およびギャップ二重DNAを使用する変異誘発(Kramer et al., Nucl. Acids Res., 12: 9441-9456(1984))を含む。
【0165】
変異を発生する他の可能な方法は、ポイントミスマッチ修復(Kramer et al., Cell, 38: 879-887 (1984))、修復欠損宿主株を使用する変異誘発(Carter et al., Nucl. Acids Res., 13: 4431-4443(1985))、欠損変異誘発(Eghtedarzadeh and Henikoff, Nucl. Acids Res., 14: 5115 (1986))、制限選択および制限精製(Wells et al., Phil. Trans. R. Soc. Lond. A, 317: 415-423 (1986))、全遺伝子合成による変異誘発(Nambiar et al., Science, 223: 1299-1301 (1984))、二本鎖切断修復(Mandecki, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83: 7177-7181 (1986))、ポリヌクレオチド鎖終結法による変異誘発(米国特許第5,965,408号)ならびにエラープローンPCR(Leung et al., Biotechniques, 1:11-15 (1989))を含む。
【0166】
修飾が完了した後、変異エンドグリコセラミダーゼをコードする配列を適切なベクター内にサブクローニングして、野生型遺伝子と同様の方法で組換え生成物を形成し得る。
【0167】
宿主生命体内における好ましいコドン使用のための核酸修飾
エンドグリコセラミダーゼ(野生型および変異のいずれか)をコードするポリヌクレオチド配列を、特定の宿主の好ましいコドン使用に適合するよう変更し得る。例えば、微生物の一株の好ましいコドン使用を、本発明の変異エンドグリコセラミダーゼをコードするポリヌクレオチドの誘導に使用し得て、この株に好ましいコドンを含ませる。宿主細胞が示す好ましいコドン使用の頻度は、宿主細胞により発現される大多数の遺伝子の好ましいコドン使用の頻度を平均して計算することができる(例えば、算出サービスは、Kazusa DNA Research Institute, Japanのweb siteから利用できる)。この分析は好ましくは、宿主細胞により高度に発現された遺伝子に限定される。例えば米国特許第5,824,864号は、双子葉植物および単子葉植物により示される高度に発現した遺伝子によって、コドン使用の頻度を提供している。特定の所望の生命体(例えば、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物)の細胞内での発現を最適化するための、好ましいコドン使用の核酸配列を形成するサービスは、例えばBlue Heron Biotechnology、Bothell、WAから購入し得る。
【0168】
クローン化エンドグリコセラミダーゼ遺伝子配列、合成ポリヌクレオチド配列、および変更されたエンドグリコセラミダーゼ遺伝子の配列は、Wallaceら、Gene 16:21-26(1981)に記載されているように、例えば鎖終結法により二本鎖鋳型を配列決定することによって確証することができる。
【0169】
エンドグリコセラミダーゼの発現
配列による同定に続いて、本明細書に開示したポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に応じた組換え遺伝学分野の日常的技術を使用して、野生型または本発明の変異エンドグリコセラミダーゼを作製することができる。
【0170】
発現系
野生型または本発明の変異エンドグリコセラミダーゼをコードする核酸を高いレベルで発現させるために、一般に、エンドグリコセラミダーゼをコードするポリヌクレオチドを、転写を誘く強力なプロモーター、転写/翻訳ターミネーター、および翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含む発現ベクター内にサブクローニングする。適切な細菌のプロモーターは、当技術分野において周知であり、例えば、前記、Sambrook and Russell、および前記、Ausubelらに記載されている。野生型または変異エンドグリコセラミダーゼ発現のための細菌発現系は、例えば大腸菌(E.coli)、桿菌(Bacillus sp)、サルモネラ菌(Salmonella)、およびカウロバクター(Caulobacter)内で入手可能である。このような発現系のためのキットは市販されている。哺乳動物細胞、酵母、および昆虫細胞のための真核細胞発現系は当技術分野において周知であり、同様に市販されている。例えば、ピキア(Pichia)およびバキュロウイルス(Baculovirus)の発現系は、Invitrogen (Carlsbad, CA)から購入し得る。ピキア発現系は、またResearch Corporation Technologies of Tucson, AZからも購入可能である。異種ポリペプチド発現のための哺乳動物細胞は、American Type Culture Collection (ATCC) in Manassas, VAから購入し得、かつ発現系は、例えばNew England Biolabs, Beverly, MAから市販されている。一態様では、真核生物発現ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ関連ベクターまたはレトロウイルスベクターである。
【0171】
宿主細胞は、好ましくは例えば酵母細胞、細菌細胞、または糸状真菌細胞などの微生物である。適切な宿主細胞の例は、他の多くの中でも例えば、アゾトバクター(Azotobacter sp.)(例えば、グラム陰性細菌(A.vinelandii))、緑膿菌(Pseudomonas sp.)、根粒菌(Rhizobium sp.)、エルビニア菌(Erwinia sp.)、エシャリキア(Escherichia sp.)(例えば、大腸菌)、桿菌、緑膿菌、プロテウス(Proteus)、サルモネラ菌、セラシア(Serratia)、赤痢菌(Shigella)、根粒菌、ビトレオシラ(Vitreoscilla)、脱窒菌(Paracoccus)およびクレブシエラ菌(Klebsiella sp.)を含む。細胞は、サッカロミセス(Saccharomyces)(例えば、出芽酵母(S.cerevisiae))、カンジダ菌(Candida)(例えば、トルラ酵母(C.utilis)、パラプシローシス(C.parapsilosis)、クルセイ(C.krusei)、バーサティリス(C.versatilis)、リポリティカ(C.lipolytica)、ゼイラノイデス(C.zeylanoides)、グイリモルモンジイ(C.guilliermondii)、アルビカンス(C.albicans)、およびフミコラ(C.humicola))、ピキア属(例えば、ファリノーサ(P.farinosa)およびオーメリ(P.ohmeri))、トフロプシス(Torulopsis)(例えば、カンジダ(T.Candida)、スフェリカ(T.sphaerica)、キシリヌス(T.xylinus)、ファマータ(T.famata)およびバーサティリス(T.versatilis))、デバリオミセス(Debaryomyces)(例えば、サブグロボサス(D.subglobosus)、(カンタレリイ)(D.cantarellii)、グロボサス(D.globosus)、ハンセニイ(D.hansenii)およびヤポニクス(D.japonicus))、ザイゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)(例えば、ルーキシ(Z.rouxii)およびバイリイ(Z.bailii))、クルイベロミセス(Kluyveromyces)(例えば、マルキシアヌス(K.marxianus))、ハンゼヌラ(Hansenula)(例えば、アノマラ(H.anomala)およびジャジニイ(H.jadinii))ならびにブレタノミセス(Brettanomyces)(例えば、ラビカス(B.lambicus)およびアノマルス(B.anomalus))を含む、数個の属のいずれかであり得る。有用な細菌の例は、エシャリキア、エンテロバクター(Enterobacter)、アゾトバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsielia)、桿菌、緑膿菌、プロテウス、およびサルモネラ菌を含むが、これらに限定されるわけではない。発現のための適切な哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞およびNIH 3T3細胞を含む。
【0172】
適切な宿主細胞内に配置された際にポリヌクレオチドの発現を駆動する、遺伝子発現制御シグナルに操作可能に結合した関心対象のポリヌクレオチドを含む構造物は、「発現カセット」と称される。典型的な発現カセットは、概して野生型または変異エンドグリコセラミダーゼをコードする核酸配列に操作可能に結合したプロモーター、および転写物の十分なポリアデニル化に必要なシグナル、リボソーム結合部位、および翻訳終結領域を含む。従って、本発明は、宿主細胞内での高いレベルの発現のために、融合タンパク質をコードする所望の核酸が内部に組み込まれる、発現カセットを提供する。エンドグリコセラミダーゼをコードする核酸配列は、典型的に、切断可能なシグナルペプチド配列に結合されて、形質転換細胞によるエンドグリコセラミダーゼの分泌を促進する。このようなシグナルペプチドは、とりわけ、組織プラスミノゲン活性化因子、インシュリン、および神経細胞増殖因子、ならびにヘリオチス・ビレスケンス(Heliothis virescens)の幼弱ホルモンエステラーゼからのシグナルペプチドを含む。カセットのさらなる要素は、エンハンサー、および、もし構造遺伝子としてゲノムDNAが使用される場合、機能的スプライスドナーおよびアクセプター部位を有するイントロンを含み得る。
【0173】
典型的に、野生型または変異エンドグリコセラミダーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、所望の宿主細胞内で機能するプロモーターの制御下に置かれる。非常に様々なプロモーターが周知であり、特定の用途に応じて、本発明の発現ベクターに使用され得る。通常、プロモーターはプロモーターが活性化される細胞に応じて選択される。他の発現制御配列、例えばリボソーム結合部位、転写終結部位等も、任意で含まれる。
【0174】
特定の宿主細胞内で使用するのに適した発現制御配列は、多くの場合、細胞内で発現する遺伝子をクローニングすることによって得ることができる。本明細書で転写開始のためのプロモーターを任意でオペレーターおよびリボソーム結合部位配列と共に含むと定義されている、通常使用される原核生物制御配列は、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プロモーター系(Change et al., Nature (1977) 198: 1056)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al., Nucleic Acids Res. (1980) 8: 4057)、tacプロモーター(DeBoer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1983) 80:21-25);ならびにλ-誘導PLプロモーターおよびN-遺伝子リボソーム結合部位(Shimatake et al., Nature (1981) 292: 128)のような通常使用されるプロモーターを含む。特定のプロモーター系は本発明にとって重要ではなく、原核生物内で機能する任意の市販されているプロモーターを使用することができる。
【0175】
大腸菌以外の宿主細胞内でのエンドグリコセラミダーゼタンパク質の発現のためには、特定の原核生物種内で機能するプロモーターを必要とする。そのようなプロモーターは、その種からクローン化された遺伝子から得るか、または異種プロモーターを使用し得る。例えば、ハイブリッドtrp-lacプロモーターは大腸菌に加えて桿菌内でも機能する。
【0176】
リボソーム結合部位(RBS)は、本発明の発現カセット内に都合よく含まれる。大腸菌内のRBSは、例えば、開始コドンの3-11ヌクレオチド上流に位置する3-9ヌクレオチド長のヌクレオチド配列からなる(Shine and Dalgarno, Nature (1975) 254: 34; Steitz, In Biological regulation and development: Gene expression (ed. R.F. Goldberger), vol.1, p.349, 1979, Plenum Publishing, NY)。
【0177】
酵母内のエンドグリコセラミダーゼタンパク質の発現のために、都合よいプロモーターは、GALl-10を含む(Johnson and Davies (1984) Mol. Cell. Biol. 4:1440-1448) ADH2 (Russell et al. (1983) J. Biol. Chem. 258:2674-2682), PH05(EMBO J. (1982) 6:675-680)、およびMFα(Herskowitz and Oshima (1982) in The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces (eds. Strathem, Jones, and Broach) Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, N.Y., pp. 181-209)。酵母内で使用するためのさらなる適切なプロモーターは、Cousensら、Gene 61:265-275(1987)に記載されているADH2/GAPDHハイブリッドプロモーター、およびPichia株内で使用するAOXlプロモーターを含む。糸状菌、例えば真菌アスペルギルス(Aspergillus)株(McKnight et al., 米国特許第4,935,349号)のための有用なプロモーターの例は、アスペルギルス・ニジュランス(nidulans )解糖系遺伝子、例えばADH3プロモーター(McKnight et al., EMBO J. 4: 2093 2099 (1985))およびtpiAプロモーターに由来するものを含む。酵母の選択可能なマーカーは、ツニカマイシンに対する耐性を付与するADE2、HIS4、LEU2、TRP1およびALG7;G418に対する耐性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子;ならびに酵母の銅イオン存在下での増殖を可能にするCUPl遺伝子を含む。適切なターミネーターの例は、ADH3ターミネーターである(McKnight et al.)。酵母宿主細胞内での組換えタンパク質発現は、当技術分野において周知である。例えば、Pichia Protocols, Higgins and Cregg、eds.,1998,Humana Press; Foreign Gene Expression in Fission Yeast: Schizosaccharomyces Pombe、Giga-Hama and Kumagai eds.,1997, Springer Verlagを参照されたい。酵母のピキア株(メタノール資化酵母(Pichia pastoris)、ピキアメタノリカ(Pichia methanolica)およびピキアシフェリ(Pichia ciferrii)を含む)内での異種タンパク質の発現は、また米国特許第6,638,735号;第6,258,559号;第6,194,196号;第6,001,597号;および第5,707,828号に記載されており、これらの出願の開示が、すべての趣旨で全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0178】
本発明には、恒常的または調節プロモーターのいずれも使用し得る。調節プロモーターは、エンドグリコセラミダーゼタンパク質の発現が誘導されるに先だって、宿主細胞が高密度で増殖し得るため有利であり得る。ある場合に、異種タンパク質の高いレベルの発現が、細胞増殖を遅延させる。誘導性プロモーターは、発現レベルが、例えば温度、pH、嫌気性または好気性条件、光、転写因子および化学物質などの環境的または発達的要因によって変更可能な場合に、遺伝子発現を指示するプロモーターである。このようなプロモーターは、本明細書では「誘導性」プロモーターと称し、それによりエンドグリコセラミダーゼタンパク質発現のタイミングを制御することができる。大腸菌および他の細菌宿主細胞に関しては、誘導性プロモーターは当業者に公知である。これらは、例えば、lacプロモーター、バクテリオファージλPLプロモーター、ハイブリッドtrp-lacプロモーターを含む。(Amann et al. (1983) Gene 25: 167; de Boer et al. (1983) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 80: 21)、およびバクテリオファージT7プロモーター(Studier et al. (1986) J. Mol. Biol.; Tabor et al. (1985) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 82: 1074-8)。これらプロモーターおよびそれらの使用は、前記、Sambrook et alに説明されている。原核生物内での発現に好ましい誘導性プロモーターの一つは、ガラクトース代謝に関与する酵素をコードする遺伝子から得られたプロモーター成分に結合したtacプロモーター成分を含むデュアルプロモーターである(例えば、UDPガラクトース4-エピメラーゼ遺伝子(galE)からのプロモーター)。デュアルtac-galプロモーターについては、PCT特許出願公開番号第W098/20111号に記載されている。
【0179】
遺伝子情報の細胞内への輸送に使用される特定の発現ベクターは、特に重要ではない。真核生物または原核生物細胞内での発現に使用される従来の任意のベクターを使用してもよい。標準的な細菌発現ベクターは、例えばpBR322ベースのプラスミド、pSKF、pUCベースのプラスミド、pETベースのプラスミド(すなわち、Novagen/EMD Biosciencesから市販されているpET23D、pET28A)のようなプラスミド、およびGSTおよびLacZなどの融合発現系を含む。例えば、c-mycなどのエピトープタグを組換えタンパク質に加えて、都合よい単離方法を提供し得る。酵母では、ベクターは、酵母組み込みプラスミド(例えば、YIp5)および酵母複製プラスミド(一連のYRpプラスミド)ならびにpGPD-2を含む。
【0180】
典型的に、真核生物ウイルスからの調整要素を含有する発現ベクター、例えば、SV40ベクター、乳頭腫ウイルスベクター、およびエプスタイン-バー(Epstein-Barr)ウイルス由来のベクターが真核生物発現ベクターに使用される。他の典型的な真核生物ベクターは、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、および、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス(Rous)肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核生物細胞内での発現に有効であることが示された他のプロモーターの指示の下でタンパク質を発現し得る任意の他のベクターを含む。哺乳動物細胞内での発現は、pSV2、pBC12BIおよびp91023、かつ溶菌ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、およびバキュロウイルス)、エピソームウイルスベクター(例えば、ウシ乳頭腫ウイルス)、かつレトロウイルスベクター(例えば、マウスレトロウイルス)を含む市販されている様々なプラスミドを使用して達成し得る。異種ポリペプチドの発現のための適切な哺乳動物宿主細胞は、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞およびNIH3T3細胞を含む。哺乳動物発現系内での異種ポリペプチドの発現は、Makrides, Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells: New Comprehensive Biochemistry, 2003, Elsevier Science Ltd.に概説されている。
【0181】
数個の発現系は、例えばチミジンキナーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼおよびジヒドロ葉酸リダクターゼのような遺伝子増幅を提供するマーカーを有する。または、ポリヘドリンプロモーターまたは他の強力なバキュロウイルスプロモーターの指示下での、変異エンドグリコセラミダーゼをコードするポリヌクレオチド配列を有する昆虫細胞内のバキュロウイルスベクターのような、遺伝子増幅に関係しない高収率発現系もまた適切である。
【0182】
典型的に、発現ベクター内に含まれる要素は、大腸菌内で機能する、抗生物質耐性をコードして組換えプラスミドを保持する細菌の選択を可能にする遺伝子であるレプリコン、かつ真核生物配列の挿入を可能にするプラスミドの非必須領域内の唯一の制限酵素認識部位も含む。選択される特定の構成物質耐性遺伝子は重要ではなく、当技術分野において公知の任意の多数の耐性遺伝子が適切である。原核生物配列は、任意で、必要であればそれらが真核生物細胞内のDNAの複製を妨害しないよう選択される。
【0183】
発現を高めるために、翻訳共役を使用してもよい。この手法では、翻訳系に固有の高発現遺伝子に由来する、プロモーターの下流に配置された短い上流のオープンリーディングフレーム、かつ終結コドンから数個のアミノ酸コドンが後に続くリボソーム結合部位を使用する。終結コドンの直前に第二のリボソーム結合部位が存在し、終結コドンの後に翻訳開始のための開始コドンが存在する。この系はRNA内の第二の構造を分解して、翻訳の十分な開始を可能にする。Squiresら (1988), J. Biol. Chem. 263: 16297-16302を参照されたい。
【0184】
エンドグリコセラミダーゼポリペプチドは、細胞内で発現され得るか、または細胞から分泌され得る。細胞内での発現は、高収率となる場合が多い。必要であれば、可溶で、活性な融合タンパク質の量は、リフォールディング手法を実行することによって増加することができる。(例えば、前記、Sambrook et al.; Marston et al., Bio/Technology (1984) 2: 800; Schoner et al., Bio/Technology (1985) 3: 151を参照されたい)。エンドグリコセラミダーゼポリペプチドが細胞からペリプラズム内または細胞外媒体内のいずれかに分泌される態様において、DNA配列は切断可能なシグナルペプチド配列に結合されている。シグナル配列は、融合タンパク質の細胞膜を通った移動を誘導する。プロモーターシグナル配列単位を含む、大腸菌内で使用される適切なベクターの例は、pTA1529であり、これは大腸菌phoAプロモーターおよびシグナル配列を有している(例えば、前記、Sambrook et al.; Oka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 82: 7212; Talmadge et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77: 3988; Takahara et al., J. Biol. Chem. (1985) 260: 2670を参照されたい)。他の態様では、融合タンパク質は、タンパク質A、またはウシ血清アルブミン(BSA)のサブ配列に融合して、例えば精製、分泌または安定性を促進する。
【0185】
本発明のエンドグリコセラミダーゼポリペプチドは、さらに他の細菌タンパク質に結合し得る。このアプローチは、正常な原核生物制御配列が転写および翻訳を導くため、高収率の場合が多い。大腸菌内では、多くの場合、異種ポリペプチドの発現にlacZ融合が使用される。適切なベクターは、pUR、pEX、およびpMR100シリーズなど、簡単に入手可能である(例えば、前記、Sambrook et al.を参照されたい)。所定の用途では、精製後に融合タンパク質から非エンドグリコセラミダーゼを切断することが望ましいと思われる。このことは、臭化シアン、プロテアーゼまたはFactor Xaによる切断を含む当技術分野において公知の任意の数種の方法により実行され得る(例えば、前記、Sambrook et al.; Itakura et al., Science (1977) 198: 1056; Goeddel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1979) 76: 106; Nagai et al., Nature (1984) 309: 810; Sung et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1986) 83: 561を参照されたい)。融合タンパク質のための遺伝子の所望の切断点内に切断部位を操作し得る。本発明はさらに、変異エンドグリコセラミダーゼを含む融合タンパク質を含むベクターを包含する。
【0186】
一つの発現ベクター内に多数の転写カセットを配置することにより、または、各発現ベクターにクローニング手法に使用される選択可能な異なるマーカーを使用することにより、一つの宿主細胞内で二種以上の組換えタンパク質を発現してもよい。
【0187】
N-末端の完全性を保持する、大腸菌から組換えタンパク質を得るための適切な系は、Millerら、Biotechnology 7:698-704(1989)に記載されている。この系では、関心対象の遺伝子は、ペプチド切断部位を含む酵母ユビキチン遺伝子の最初の76残基に対するC-末端融合物として産生される。二つの部分の接合点を切断すると、存在する無傷の本物のN-末端を有するタンパク質が産生される。
【0188】
上述したように、当業者は、エンドグリコセラミダーゼの合成活性を依然として保持しながら、任意の野生型または変異エンドグリコセラミダーゼ、またはそのコード配列に対して様々な保存的置換を実施し得ることを認識するであろう。さらに、ポリヌクレオチドをコードする配列の変更は、得られるアミノ酸配列を変更することなく、特定の発現宿主内での好ましいコドン使用を適応するようなされてもよい。
【0189】
細菌内で組換えにより過剰発現した場合、野生型および変異エンドグリコセラミダーゼは、不溶性タンパク質凝集体を形成し得る;続く精製手順の間、相当の量の組換えタンパク質が不溶性部分中に存在するであろう。不溶性封入体中での組換えエンドグリコセラミダーゼの発現は、例えば、誘導性プロモーター(例えば、lac、T7)からの発現、低濃度のインデューサー(例えば、IPTG)の追加、非誘導タンパク質発現を抑制する細菌発現株(例えば、BL21 pLysS)の使用、インデューサーの濃度に高い感受性を有する細菌発現株(例、Novagen/EMD Biosciences、San Diego、CAからのTuner(商標)宿主細胞)、発現した組換えタンパク質のジスルフィド形成を嗜好する細菌発現株(例、NovagenからのOrigami(商標)宿主細胞)、最小限の媒体の使用(例えば、M9)、誘導温度の変更(例えば、16〜37℃)、ペリプラズム内への分泌を誘導するシグナル配列の追加(例えば、pelB)を含む、当業者に公知の数種の手法の一つまたは複数を使用することによって最小にし得る。
【0190】
トランスフェクト法
標準的なトランスフェクト法を使用して、大量の野生型または変異エンドグリコセラミダーゼを発現する細菌、哺乳動物、酵母または昆虫細胞ラインを産生し、それらは、次いで、標準的な技術により精製される(例えば、Colley et al., J. Biol. Chem. 264: 17619-17622 (1989); Guide to Protein Purification, in Methods in Enzymology, vol. 182 (Deutscher, ed., 1990)を参照されたい)。真核細胞および原核細胞の形質転換は、標準的技術(例えば、Morrison, J. Bact. 132: 349-351 (1977)を参照されたい; Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology 101: 347-362(Wu et al., eds, 1983)に従って実施する。
【0191】
外来ヌクレオチド配列を宿主細胞内に導入するための任意の周知の手順を使用してもよい。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム、微量注入、プラズマベクター、ウイルスベクター、かつクローン化ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、または外来遺伝子材料を宿主細胞内に導入する他の周知の任意の方法が含まれる(例えば、前記、Sambrook and Russellを参照されたい)。使用する特定の遺伝子操作手順は、野生型または変異エンドグリコセラミダーゼを発現できる少なくとも一つの遺伝子を宿主細胞内に上手く導入できれば十分である。
【0192】
組換えエンドグリコセラミダーゼ発現の検出
発現ベクターが適切な宿主細胞内に導入された後、トランスフェクト細胞は、野生型または変異エンドグリコセラミダーゼの発現に好適な条件下で培養される。次いで、細胞は組換えポリペプチドの発現をスクリーニングされ、続いて標準的な技術を用いて培地から回収される。(例えば、Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (1982);前記、米国特許第4,673,641号; Ausubel et al.; および前記、Sambrook and Russellを参照されたい)。
【0193】
遺伝子発現をスクリーニングする一般的な数種の方法が当業者に周知である。第一に、遺伝子発現は核酸レベルで検出され得る。核酸ハイブリダイゼーション技術を用いた特定のDNAおよびRNA測定の様々な方法が、一般に使用されている(例えば、前記、Sambrook and Russell)。いくつかの方法は、電気泳動的な分離(例えば、DNAを検出するサザンブロット、およびRNAを検出するノーザンブロット)に関与するが、DNAまたはRNAの検出は、電気泳動なしで実施し得る(ドットブロットなど)。トランスフェクト細胞内のエンドグリコセラミダーゼをコードする核酸の存在はまた、配列特異的プライマーを使用したPCRまたはRT-PCRにより検出し得る。
【0194】
第二に、遺伝子発現はポリペプチドレベルで検出され得る。当業者により様々な免疫学的アッセイが日常的使用されて、特に例えば配列番号:21-25のアミノ酸配列を有するポリペプチドなど、野生型または本発明の変異エンドグリコセラミダーゼと特異的に反応するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を使用して、遺伝子生成物のレベルが測定される。(例えば、Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, 1998; Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Chapter 14, Cold Spring Harbor, 1988; Kohler and Milstein, Nature, 256: 495-497 (1975))。このような技術は、組換えポリペプチドまたはその抗原部分に対して高い特異性を有する抗体を選択することによる、抗体の調製が必要である。ポリクロナールおよびモノクロナール抗体を産生する方法は、十分に確立され、それらの説明は文献に見つけることができ、前記、例えば、前記、Harlow and Laneを参照されたい;Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol., 6: 511-519 (1976)。本発明の変異エンドグリコセラミダーゼに対する抗体の調製、および変異エンドグリコセラミダーゼを検出する免疫学的アッセイの実施に関するより詳細な説明は、後の節にて提供する。
【0195】
加えて、機能的アッセイを実施して、トランスフェクト細胞内の組換えエンドグリコセラミダーゼを検出してもよい。組換えエンドグリコセラミダーゼの加水分解または合成活性を検出するためのアッセイは、後の節にて説明する。
【0196】
組換えエンドグリコセラミダーゼの精製
可溶化
トランスフェクト宿主細胞内での組換えエンドグリコセラミダーゼの発現が確認されたら、次に、組換え酵素を精製する目的で、宿主細胞を適当なスケールにて培養する。
【0197】
一般に、プロモーター誘導後、本発明のエンドグリコセラミダーゼが組換えによってトランスフェクト細菌により大量に産生されたら、発現は恒常的であり得るが、タンパク質は不溶性凝集体を形成するかもしれない。タンパク質封入体を精製するのに適切な数種のプロトコルが存在する。例えば、凝集体タンパク質(本明細書で封入体と称する)の精製は、典型的に、例えばリゾチーム約100〜150μg/mlおよび0.1% Nonidet P40、非イオン性洗浄剤の緩衝液中でインキュベートすることによる細菌細胞の破壊による封入体の抽出、分離および/または精製を含む。細胞懸濁液はPoiytronグラインダー(Brinkman Instruments、Westbury、NY)を使用して粉砕し得る。または、細胞は氷上にて超音波で分解され得る。細菌を溶解する代替的な方法は、両方とも前記のAusubelらおよびSambrook and Russellに記載されており、当業者に明らかであろう。
【0198】
細胞懸濁液は、一般に遠心分離され、封入体を含むペレットを、封入体を溶解せず洗浄する、例えば20mM Tris-HCl (pH7.2)、1mM EDTA、150mM NaClおよび2% Triton-X100、負イオン洗浄剤からなる緩衝液中に再懸濁させる。洗浄ステップを繰り返して可能な限り多量の細胞破片を除去する必要があるだろう。封入体の残留ペレットは、適切な緩衝液(例えば、20mMリン酸ナトリウム、pH6.8、150mM NaCl)中に再懸濁させてもよい。他の適切な緩衝液は当業者に明らかであろう。
【0199】
洗浄ステップの後、封入体は強力な水素アクセプターおよび強力な水素ドナーの両方である(または、これらの一つの性質を有する各溶媒の組み合わせである)溶媒を加えることにより可溶化される。次いで、封入体を形成するタンパク質は、適合可能な緩衝液で希釈または透析することによって、再生されてもよい。適切な可溶化溶媒には、尿素(約4M〜約8M)、ホルムアミド(容積/容積ベースで少なくとも約80%)、塩酸グアニジン(約4M〜約8M)、ならびにN-ラウリルサルコシン(サルコシル)、3-(シクロヘキシルアミノ)-l-プロパンスルホン酸(CAPS)、3-[(3-クロロアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-l-プロパンスルホネート(CHAPS)およびラウリルマルトシドを含む洗浄剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。凝集体形成タンパク質を可溶化することが可能な数種の溶媒、例えばSDS(硫酸ドデシルナトリウム)および70%ホルミル酸は、免疫原性、および/または活性の欠如、ならびにタンパク質の不可逆的変性の可能性を有することから、この手順に使用するに不適切でろう。塩酸グアニジンおよび類似した薬剤は変性剤であるが、この変性は不可逆性ではなく、変性剤の排除(例えば透析により)または希釈により再生が生じて、免疫学的および/または生物学的に活性な関心対象のタンパク質が再形成されうる。可溶化の後、タンパク質は、標準的な分離技術により他の細菌タンパク質から分離されてもよい。
【0200】
または、組換えポリペプチド、例えば変異エンドグリコセラミダーゼは、細菌ペリプラズムから精製することが可能である。組換えタンパク質が細菌のペリプラズム内に輸送されている場合、細菌のペリプラズム部分は、当業者公知の他の方法に加えて、冷却浸透圧ショック法により単離することができる。(例えば、前記、Ausubel et al参照されたい)。組換えタンパク質をペリプラズムから単離するには、細菌細胞を遠心分離してペレットを形成する。20%ショ糖を含有する緩衝液中にペレットを再懸濁する。細胞を溶解するために、細菌を遠心分離し、ペレットを氷冷5mM MgSO4中に再懸濁し、氷浴内で約10分間保持する。細胞懸濁液を遠心分離し、上澄み液をデカントして保存する。上澄み液中に存在する組換えタンパク質は、当業者周知の標準的な分離技術により、宿主タンパク質から分離し得る。ペリプラズム空間内に輸送されたタンパク質は、尚、封入体を形成し得る。
【0201】
タンパク質リフォールディング
封入体から精製した野生型または変異エンドグリコセラミダーゼは、可溶化の後、一般にリフォールディングする必要がある。封入体内の、組換えにより発現したエンドグリコセラミダーゼの存在は最小となり得、ジスルフィド結合の形成を好む細菌株内の酵素の発現により、続く適切なリフォールディングが最大となり得る。(例えば、Origami(商標) Novagen/EMD Biosciencesからの宿主細胞)。または、不対システイン、シグナルペプチド配列を組換え配列から、例えば切断および部位特異的変異誘発技術を使用して除去し得る。封入体内の組換え的に発現した酵素の存在はまた、マルトース結合ドメインとの融合タンパク質としてエンドグリコセラミダーゼを発現させることにより最小となり得る。(例えば、Sachdev and Chirgwin, Protein Expr Purif. (1998) 1:122-32を参照されたい)。最終的に封入体から精製された酵素は、可溶化され得た後、酸化還元対、例えば還元グルタチオン/酸化グルタチオン(GSH/GSSH)、またはシステイン/シスタミンを含有するリフォールディング緩衝液にさらされる。第PCT/US05/03856号に記載されており、これは、米国仮特許出願第60/542,210号;第60/599,406号;および第60/627,406号の優先権を主張し、これらの出願それぞれの開示が、すべての趣旨で全体として参照により本明細書に組み入れられる。タンパク質リフォールディングキットは、例えばNovagen/EMD Biosciencesから市販されている。(Frankel, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1991) 88:1192-1196も参照されたい)。タンパク質濃度、極性添加剤(例えば、アルギニン)の追加、pH、酸化還元環境の可能性(酸化還元対の存在)、イオン強度、ならびに洗浄剤、カオトロープ、二価カチオン、浸透圧調節物質(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))、非極性添加剤(例えば、糖類)の種および濃度を含む、特定のエンドグリコセラミダーゼの適切なリフォールディングのための生化学的変数の最適化は、Armstrongら、Protein Science (1999) 8:1475-1483に記載されている、一部実施要因スクリーニングにより評価し得る。一部実施要因タンパク質リフォールディング最適化スクリーニングを実施するためのキットは、例えばHampton Research、Laguna Niguel、CAから市販されている。
【0202】
タンパク質の精製
精製タグ
本発明の組換え融合タンパク質は、その一端に、タンパク質の精製を促進する、分子「精製タグ」を有する融合タンパク質として構成および発現され得る。このようなタグは、グリコシル化反応中の関心対象のタンパク質の固定化にも使用され得る。例示的な精製タグは、MalE、6またはそれより多いヒスチジン残基、セルロース結合タンパク質、マルトース結合タンパク質(malE)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ラクトフェリン、およびSumo融合タンパク質切断可能な配列(LifeSensors、Malvern、PA and EMD Biosciencesから市販されている)を含む。精製タグ配列を有するベクターは、例えば、Novagen EMD Biosciencesから市販されている。適切なタグは、抗体により特異的に認識されるタンパク質配列である「エピトープタグ」を含む。エピトープタグは、一般に融合タンパク質に組み込まれて、容易に市販されている抗体を使用した融合タンパク質の明白な検出または単離を可能にする。「FLAGタグ」は、モノクローナル抗FLAG抗体により特異的に認識される、通常使用されるエピトープタグであり、配列AspTyrLysAspAspAspAspLysからなり、またはその異種と実質的に同一である。本発明に使用し得る他のエピトープタグは、例えばmycタグ、AUl、AU5、DDDDK(EC5)、Eタグ、E2タグ、Glu-Glu、6残基ヒスチジンペプチド、ポリオーマ中間Tタンパク質由来のEYMPME、HA、HSV、IRS、KT3、Sタグ、Slタグ、T7タグ、V5タグ、VSV-G、β-ガラクトシダーゼ、Gal4、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、タンパク質C、タンパク質A、セルロース結合タンパク質、GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)、ステップ-タグ、Nus-S、PPI-アーゼ、Pfg27、カルモジュリン結合タンパク質、dsbAおよびその断片、ならびにグランザイムBを含む。エピトープペプチドおよびエピトープ配列に特異的に結合する抗体は、例えば、Covance Research Products, Inc.; Bethyl Laboratories, Inc.; Abcam Ltd.; and Novus Biologicals, Inc.から市販されている。
【0203】
タグとして使用するに適切な他のハプテンは当業者に公知であり、例えばthe Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(6th Ed., Molecular Probes, Inc., Eugene OR)に記載されている。例えば、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン、バルビツール酸塩(例えば米国特許第5,414,085号参照されたい)、および数種の蛍光化合物がハプテンとして有用であり、またこれら化合物の誘導体も同様である。ハプテンおよび他の部分を、タンパク質および他の分子に連結するためのキットが市販されている。例えば、ハプテンがチオールを含む場合、SMCCなどのヘテロ二官能性リンカーを使用して、捕獲試薬上に存在するリシン残基にタグを取り付け得る。
【0204】
精製のための標準的なタンパク質分離技術
組換えポリペプチド、例えば本発明の変異エンドグリコセラミダーゼが宿主細胞内にて可溶形態で発現した場合、その精製は、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含む当技術分野において公知の標準的なタンパク質精製手順に従って実施し得る。(一般的に、R. Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y. (1982), Deutscher, Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification., Academic Press, Inc. N.Y. (1990)を参照されたい)。少なくとも約70、75、80、85、90%の均一性を有する実質的に純粋な組成物が好ましく、92、95、98から99%またはそれ以上の均一性を有する実質的に純粋な組成物が最も好ましい。精製タンパク質は、抗体生産のための免疫原としても使用してもよい。
【0205】
可溶性分画
多くの場合、最初のステップとして、およびタンパク質混合物が複合体の場合、最初の塩分画により、望ましくない宿主細胞タンパク質(または細胞培養液由来のタンパク質)の多数を、関心対照の組換えタンパク質、例えば本発明の変異エンドグリコセラミダーゼから分離することができる。好ましい塩は、硫酸アンモニウムである。硫酸アンモニウムは、タンパク質混合物から水の量を効果的に低下させることにより、タンパク質を沈殿させる。次いでタンパク質は、その可溶性に基づき沈殿する。疎水性タンパク質が多ければ多い程、より低い硫酸アンモニウム濃度で沈殿する可能性が高くなる。典型的なプロトコルは、得られた硫酸アンモニウム濃度が20〜30%であるように、タンパク質溶液に飽和硫酸アンモニウムを添加する。これにより殆どの疎水性タンパク質が沈殿するであろう。沈殿を廃棄し(関心対象のタンパク質が疎水性でない場合)、関心対象のタンパク質が沈殿する公知の濃度まで、上澄み液に硫酸アンモニウムを追加する。次いで沈殿を緩衝液中で可溶化し、必要であれば、透析またはダイアフィルトレーションにより過剰の塩を除去する。冷エタノール沈殿などの、タンパク質の可溶性に依存する他の方法が、当業者に周知であり、複合体タンパク質混合物の分画に使用することができる。
【0206】
サイズ差異濾過
計算された分子量に基づいて異なる孔サイズの薄膜(例えば、AmiconまたはMillipore薄膜)を介した限外濾過により、より大きいまたは小さいサイズのタンパク質を単離し得る。第一のステップとして、関心対象のタンパク質、例えば変異エンドグリコセラミダーゼの分子量よりも低い分画分子量を有する孔サイズの薄膜を介して、タンパク質混合物を限外濾過する。次いで、非透過物を、関心対象のタンパク質の分子量よりも大きい分画分子量を有する薄膜に対して限外濾過する。組換えタンパク質は薄膜を通って濾液中に入るであろう。次いで、濾液を以下に説明するようにクロマトグラフィーにかけ得る。
【0207】
カラムクロマトグラフィー
関心対象のタンパク質(例えば本発明の変異エンドグリコセラミダーゼ)はまた、そのサイズ、総表面電荷、疎水性、またはリガンドに対する親和性に基づいて、他のタンパク質から分離され得る。加えて、エンドグリコセラミダーゼに対する抗体は、カラムマトリクスおよび免疫精製されたエンドグリコセラミダーゼに複合し得る。酵素が精製タグを伴って融合タンパク質として発現した場合、精製タグと特異的に結合する樹脂、例えばニッケル、セルロース、マルトース、抗−ラクトフェリン抗体またはグルタチオンに複合した樹脂を充填したカラムを使用する。これら方法の全ては、当業者に周知である。
【0208】
当業者には、クロマトグラフィー技術は任意のスケールにて、多数の異なる製造業者(例えば、Pharmacia Biotech)からの装置を使用して実施し得ることが明らかであろう。
【0209】
エンドグリコセラミダーゼに対する抗体の生成、およびエンドグリコセラミダーゼ発現を検出するイムノアッセイ
組換えエンドグリコセラミダーゼの生成を確認するために、免疫学的アッセイが、サンプル中のエンドグリコセラミダーゼの発現の検出に有用であり得る。免疫学的アッセイは、組換え酵素の発現レベルの定量にも有用である。
【0210】
エンドグリコセラミダーゼに対する抗体の生成
関心対象の免疫原と特異的に反応するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を生成する方法は、当業者に公知である(例えば、Coligan, Current Protocols in Immunology Wiley/Greene, NY, 1991; Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, NY, 1989; Stites et al. (eds.) Basic and Clinical Immunology (4th ed.) Lange Medical Publications, Los Altos, CA, and references cited therein; Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed.) Academic Press, New York, NY, 1986; and Kohler and Milstein Nature 256:495-497, 1975を参照されたい)。このような技術は、ファージまたは類似したベクターの組換え抗体のライブラリから、抗体の選択による抗体調製を含む(Huse et al., Science 246: 1275-1281, 1989; and Ward et al., Nature 341: 544-546, 1989を参照されたい)。
【0211】
所望の特異性を有する抗体を含む抗血清を生成するために、関心対象のポリペプチド(例えば、本発明の変異エンドグリコセラミダーゼ)またはその抗原性断片を使用して、適切な動物、例えばネズミ、ウサギ、または類人猿を免疫する。標準的な免疫プロトコルに従って、例えばフロイントアジュバントのような標準的なアジュバントを使用し得る。または、その特定のポリペプチドから誘導した合成抗原ペプチドをキャリアタンパク質に複合した後、抗原として使用し得る。
【0212】
免疫原の調製に対する動物の免疫反応は試験血液を採取することによりモニターされ、関心対象の抗原に対する反応性の力価を決定する。抗原に対する抗体の適度に高い力価が得られたら、動物から血液を収集して抗血清を調製する。さらに、抗原に特異的に反応する抗体を増大させる抗血清の分画、および抗体の精製が続いて行われる。例えば、前記、Harlow and Laneを参照されたい。またタンパク質精製の一般的な説明は上記に提供した。
【0213】
モノクローナル抗体は当業者に馴染みのある様々な技術を使用して得られる。典型的に、所望の抗原で免疫した動物からの脾臓細胞を、通常、骨髄腫細胞と融合させて不死化する。(Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol. 6:511-519, 1976を参照されたい)。不死化の代替的な方法は、例えばエプスタイン・バー・ウイルス、腫瘍遺伝子、またはレトロウイルスによる形質転換、あるいは当業者公知の他の方法を含む。一つの不死化細胞から発生したコロニーを、所望の特異性を有する抗体の生成、および抗原に対する親和性についてスクリーニングし、その細胞により生成されるモノクローナル抗体の収率は、脊椎動物の宿主の腹膜腔内への注射を含む様々な技術により向上するであろう。
【0214】
加えて、モノクローナル抗体はまた、所望の特異性を有する抗体をコードする核酸配列の同定、または前記、Huseらに概略された一般的なプロトコルに従って、ヒトB細胞cDNAライブラリーをスクリーニングして、そのような抗体の断片を結合させることにより、組換え的に作製することができる。上述した組換えプリペプチド作製の一般的な原理および方法は、組換え法による抗体生産に適用可能である。
【0215】
必要であれば、本発明の変異エンドグリコセラミダーゼを特異的に認識できる抗体の、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼに対する交差反応を試験して、野生型酵素に対する抗体と区別することができる。例えば、変異エンドグリコセラミダーゼで免疫された動物から得られた抗血清を、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼが固定化されたカラムに通過させ得る。カラムを通過した抗血清部分は、変異エンドグリコセラミダーゼのみを認識し、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼは認識しない。同様に、変異エンドグリコセラミダーゼに対するモノクローナル抗体は、野生型エンドグリコセラミダーゼではなく変異エンドグリコセラミダーゼのみを認識する際に、排他性のためにスクリーニングされることができる。
【0216】
本発明の変異エンドグリコセラミダーゼを特異的に認識するが、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼを認識しない、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、例えばサンプルを固体支持体上に固定した変異エンドグリコセラミダーゼ特異性ポリクローナルまたはモノクローナル抗体と共にインキュベートすることにより、野生型エンドグリコセラミダーゼから変異酵素を単離する際に有用である。
【0217】
エンドグリコセラミダーゼ発現を検出するためのイムノアッセイ
本発明のエンドグリコセラミダーゼに特異的な抗体が入手可能となったら、サンプル、例えば細胞溶解物中のポリペプチド量を、当業者に定性的および定量的結果を提供する様々なイムノアッセイ方法により測定し得る。一般の免疫学的手順およびイムノアッセイ手順の概要のために、前記、Stitesを参照されたい;米国特許第4,366,241号;第4,376,110号;第4,517,288号:および第4,837,168号。
【0218】
イムノアッセイにおける標識化
イムノアッセイでは、多くの場合、抗体と標的タンパクとで形成された結合複合体に特異的に結合し標識する、標識剤を使用する。標識剤はそれ自体、抗体/標的タンパク質複合体を含む部分の一つであるか、または第三の部分、例えば抗体/標的タンパク質複合体に特異的に結合する別の抗体の一つであってよい。標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出可能であり得る。例には、電磁ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、Texas red、ローダミン等)、放射標識(例えば、3H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素(例えば、ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼおよび酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で通常用いられる他の方法)、ならびに金コロイドまたは着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス、その他)ビーズなどの比色分析標識を含むが、これらに限定されない。
【0219】
場合によって、標識剤は、検出可能な標識を支持する第二の抗体である。または、第二の抗体は、標識を欠くが、代わりに、第二の抗体が由来する種の抗体に特異的な、標識された第三の抗体に結合され得る。第二の抗体は検出可能な部分、例えばビオチンで修飾され得、そこに例えば酵素で標識されたストレプトアビジンのような第三の標識分子が特異的に結合し得る。
【0220】
免疫グロブリン定常領域に対して特異的に結合することが可能な他のタンパク質、例えばタンパク質Aまたはタンパク質Gも、標識剤として使用し得る。これらタンパク質は、連鎖球菌の細胞壁の正常成分である。これらは様々な種からの免疫グロブリン定常領域と強力な非免疫原性の反応性を示す。(一般的に、Kronval, et al. J. Immunol., 111: 1401-1406 (1973); and Akerstrom, et al., J. Immunol., 135: 2589-2542 (1985)を参照されたい)。
【0221】
イムノアッセイのフォーマット
サンプルからの関心対象の標的タンパク質(例えば、組換えエンドグリコセラミダーゼ)を検出するイムノアッセイは、競合的または非競合的のいずれかであってよい。非競合的イムノアッセイは、捕獲した標的タンパク質の量を直接測定するアッセイである。一つの好ましい「サンドイッチ」アッセイでは、例えば、標的タンパク質に特異的な抗体は、固体基質に直接結合し得、そこで抗体が固定される。これは次いで試験サンプル中の標的タンパク質を捕獲する。固定された抗体/標的タンパク質複合体は、次に、上述した標識を有する第二または第三抗体のような標識剤により結合される。
【0222】
競合アッセイでは、サンプル中の標的タンパク質の量は、サンプル中に存在する標的タンパク質によって、標的タンパク質に特異的な抗体から置き換えられた(または競合により排除された)、添加された(外因性)標的タンパク質の量を測定することにより間接的に測定される。このようなアッセイの典型的な例にて、抗体は固定されて、外因性標的タンパク質が標識される。抗体に結合する外因性標的タンパク質の量は、サンプル中に存在する標的タンパク質の濃度に反比例するため、サンプル中の標的タンパク質のレベルは、抗体に結合して固定化された外因性標的タンパク質の量に基づいて決定され得る。
【0223】
場合によって、ウエスタンブロット(イムノブロット)分析を使用して、サンプル中の野生型または変異エンドグリコセラミダーゼの存在を検出および定量し得る。この技術は、一般に、分子量に基づいてゲル電気泳動によりサンプルタンパク質を分離し、分離したタンパク質を適切な固体支持体(ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルターまたは誘導体化ナイロンフィルターなど)に転写し、標的タンパク質に特異的に結合する抗体と共に、サンプルをインキュベートする。これらの抗体を直接標識してもよく、または代替的に、その後エンドグリコセラミダーゼに対する抗体に特異的に結合する、標識した抗体(例えば、標識した羊抗マウス抗体)を使用して検出してもよい。
【0224】
他のアッセイフォーマットは、特定の分子(例えば、抗体)に結合して、封入された試薬またはマーカーを放出するよう設計されたリポソームを使用する、リポソームイムノアッセイ(LIA)を含む。次いで放出された化学物質を、標準的な技術に従って検出する(Monroe et al., Amer. Clin. Prod. Rev., 5: 34-41 (1986)を参照されたい)。
【0225】
変異エンドグリコセラミダーゼを使用した糖脂質合成のための方法
本発明はまた、糖脂質またはアグリコンを合成する方法も提供する。本方法は、グリコシル基を含むグリコシルドナーとアグリコンとを、該グリコシル基が該アグリコンに転移するのに適切な条件下で、本発明の変異エンドグリコセラミダーゼと接触させることを含む。
【0226】
一局面において、本発明は、糖脂質またはアグリコンを合成する方法を提供する。本方法は、エンドグリコセラミダーゼがドナー基質からアクセプター基質へのサッカライド部分の転移を触媒することにより糖脂質またはアグリコンを生成する条件下で、サッカライド部分を含むドナー基質とアクセプター基質とを、変更された求核性カルボキシラート(すなわち、GluまたはAsp)残基を有する変異エンドグリコセラミダーゼと接触させることを含み、ここで求核性Glu/Aspは、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列内に存在する。
【0227】
さらなる局面において、本発明は、糖脂質またはアグリコンを合成する方法を提供する。本方法は、エンドグリコセラミダーゼがドナー基質からアクセプター基質へのサッカライド部分の転移を触媒することにより糖脂質またはアグリコンを生成する条件下で、サッカライド部分を含むドナー基質とアクセプター基質とを、Asn-Glu-Proのサブ配列内に変更されたGlu残基を有する変異エンドグリコセラミダーゼと接触させることを含み、ここでサブ配列は、対応する野生型タンパク質の

配列の酸−塩基配列領域内に存在する。
【0228】
糖脂質合成の方法を実施する際には、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの求核性カルボキシラートアミノ酸残基(すなわち、GluまたはAsp)および/または酸−塩基配列領域のGlu残基の一方または両方を、削除または変異酵素が合成活性を有するようにタンパク質の全体的な構造を保持する他の化学的部分と代替し得る。例えば、求核性カルボキシラートアミノ酸残基(GluまたはAsp)および/または酸−塩基配列領域のGlu残基の一つまたは複数を、GluまたはAsp以外のL-アミノ酸残基、D-アミノ酸残基(D-GluまたはD-Aspを含む)、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣体等で代替し得る。通常、カルボキシラートアミノ酸残基(GluまたはAsp)の一つまたは複数を、他のGluまたはAsp以外のL-アミノ酸、例えば、Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Glu、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuまたはVaIで置換する。
【0229】
一態様において、本発明の変異酵素は、限定された試薬に基づき、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、70%、80%または90%の出発物質を、所望の糖脂質に変換する。他の好ましい態様において限定試薬の糖脂質への変換は事実上定量的であり、少なくとも約90%、またより好ましくは少なくとも約92%、94%、96%、98%、またさらに好ましくは少なくとも約99%の変換を得る。
【0230】
別の例示的な一態様において、グリコシルドナーおよびアクセプター基質(すなわち、アグリコン)は約1:1のモル比で存在し、かつ触媒的に作用する本発明の酵素は、二つの試薬を、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、70%、または80%の収率で糖脂質に変換する。さらに典型的な態様において、変換は、上述したように本質的に定量的である。
【0231】
一態様において、合成された糖脂質は、非還元糖および非グリコシドに複合したアグリコン(非糖質アルコール(OH)または(SH))である。
【0232】
ドナー基質
野生型および変異エンドグリコセラミダーゼのドナー基質は、天然グリコシド結合とは逆のアノマー配置の任意の活性化グリコシル誘導体を含む。本発明の酵素は、α-修飾またはβ-修飾グリコシルドナー、通常はα-修飾グリコシルドナーを、グリコシドアクセプターと結合させる際に使用される。好ましいドナー分子は、フッ化グリコシルであるが、適度に小さく、比較的良好な脱離基として機能する他の基を有するドナーも使用し得る。他のグリコシルドナー分子の例は、グリコシルクロリド、ブロミド、アセタート、メシラート、プロピオナート、ピバロアートおよび置換フェノールによって修正されるグリコシル分子を含む。そのうち、α-修飾またはβ-修飾グリコシルドナー、α-ガラクトシル、α-マンノシル、α-グルコシル、α-フコシル、α-キシロシル、α-シアリル、α-N-アセチルグルコサミニル、α-N-アセチルガラクトサミニル、β-ガラクトシル、β-マンノシル、β-グルコシル、β-フコシル、β-キシロシル、β-シアリル、β-N-アセチルグルコサミニルおよびβ-N-アセチルガラクトサミニルが最も好ましい。さらなるドナー基質は、例えば、下の表2に列挙したガングリオシド頭部基、および図1〜13に記載したものを含む。従って、一態様において、ドナー基質は、

からなる群より選択される一つまたは複数のガングリオシドグリコシル頭部基であり得る。ドナー分子は、単糖であっても、それ自体が多数の糖部分を含んでいてもよい(オリゴ糖)。特別な方法において使用されたドナー基質は、米国特許第6,284,494号;第6,204,029号;第5,952,203号;および第5,716,812号に記載されているそれらに含まれる。
【0233】
フッ化グリコシルは、遊離糖から、最初に糖をアセチル化し、次いでHF/ピリジンで処理することにより調製され得る。この工程は、熱力学的に最も安定な保護(アセチル化)フッ化グリコシルのアノマーを生成するであろう。より安定性の低いアノマーを所望する場合、該アノマーはパーアセチル化糖をHBr/HOAcまたはHCLで変換してアノマー臭化物、またはアノマー塩化物を生成して調製してもよい。この中間体を、例えばフッ化銀のようなフッ化塩と反応させて、フッ化グリコシルを作成する。アセチル化フッ化グリコシルは、メタノール(例えば、NaOMe/MeOH)中の弱い(触媒)塩基と反応させて脱保護してもよい。加えて、多数のフッ化グリコシルを含むグリコシルドナー分子は、購入可能である。従って、本発明の方法を使用する際には、幅広いドナー分子を入手することが可能である。
【0234】
アクセプター基質
適切なアクセプター基質は、変異エンドセラミダーゼがサッカライド部分と複合できる任意のアグリコンを含む。例えば、変異エンドグリコセラミドシンターゼは、サッカライドと下記式Ia、式Ib、式IIまたは式IIIに示す構造のヘテロアルキル基質とを連結することにより、糖脂質またはアグリコンを合成することが可能である:

【0235】
式Iaおよび式Ibにおいて、記号Zは、OH、SH、またはNR4R4'を表す。R1およびR2は、NHR4、SR4、OR4、OCOR4、OC(O)NHR4、NHC(O)OR4、OS(O)2OR4、C(O)R4、NHC(O)R4、検出可能な標識および標的部分から独立して選択されたメンバーである。記号R3、R4およびR4'、R5、R6ならびにR7は、各々、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立して選択されたメンバーである。

【0236】
式IIにおいて、Z1は、O、S、およびNR4から選択されたメンバーであり;R1およびR2は、NHR4、SR4、OR4、OCOR4、OC(O)NHR4、NHC(O)OR4、OS(O)2OR4、C(O)R4、NHC(O)R4、検出可能な標識および標的部分から独立して選択されたメンバーである。記号R3、R4、R5、R6およびR7は各々、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立して選択されたメンバーである。式IIは、アグリコン部分がさらなる基質成分、例えば脱離基または固体支持体と複合した所定の態様を表す。
【0237】
所定の態様において、例えば下の表1に示すようなアクセプター基質を、変異エンドグリコセラミダーゼを使用した糖脂質またはアグリコンの合成方法に使用する。
(表1)グリコシンターゼ合成反応のための代表的なアクセプター基質

【0238】
ある態様では、アクセプター基質は、スフィゴシン、スフィゴシン類似体またはセラミドである。ある態様では、アクセプター基質は、同時係属特許出願の第PCT/US2004/006904号(これは、米国仮特許出願第60/452,796号の優先権を主張する);米国特許出願第10/487,841号;米国特許出願第10/485,892号;第10/485,195号および第60/626,678号に記載のそれらを含む、一つまたは複数のスフィゴシン類似体である。
【0239】
一般に、上記に引用した出願に記載されたスフィンゴシン類似体は、式

を有する化合物であり、
式中、Zは、O、S、C(R2)2およびNR2より選択されるメンバーであり;Xは、H、-OR3、-NR3R4、-SR3、およびCHR3R4より選択されるメンバーであり;R1、R2、R3およびR4は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、-C(=M)R5、-C(=M)-Z1-R5、-SO2R5、およびSO3から独立して選択されるメンバーであり;ここでMおよびZ1は、O、NR6またはSから独立して選択されるメンバーであり;Yは、H、-OR7、-SR7、-NR7R8、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択されたメンバーであり、ここでR5、R6、R7およびR8は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーであり;Ra、Rb、RcおよびRdは、各々、独立してH、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキルである。
【0240】
ある態様において、アクセプター基質は、D-エリスロ-スフィンゴシン、D-エリスロ-スフィンガニン、L-スレオ-スフィンゴシン、L-スレオ-ジヒドロスフィンゴシン、D-エリスロ-フィトスフィンゴシンまたはN-オクタノイル-D-エリスロ-スフィンゴシンを含む一つまたは複数のスフィンゴシン類似体であり得る。
【0241】
糖脂質の生成
野生型および変異エンドグリコセラミダーゼポリペプチドを使用して、インビトロ反応混合物中で、またはインビボ反応により、例えばエンドグリコセラミダーゼポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む組換え微生物の発酵増殖により、糖脂質生成物を形成し得る。
【0242】
A. インビトロ反応
野生型および変異エンドグリコセラミダーゼポリペプチドを使用して、インビトロ反応混合物中で、シアリル化生成物を形成することができる。インビトロ反応混合物は、野生型または変異エンドグリコセラミダーゼポリペプチドを含む透過性微生物、一部精製エンドグリコセラミダーゼポリペプチド、または精製エンドグリコセラミダーゼポリペプチド;ならびにドナー基質、アクセプター基質および適切な反応緩衝液を含み得る。インビトロ反応では、組換え野生型または変異エンドグリコセラミダーゼタンパク質、アクセプター基質、ドナー基質および他の反応混合物成分を、水性反応媒体中で混ぜ合わせて化合させる。所望の糖脂質最終生成物に応じて、さらなるグリコシルトランスフェラーゼを、エンドグリコセラミダーゼポリペプチドと組み合わせて使用し得る。媒体は、一般に約5〜約8.5のpH値を有する。媒体の選択は、pH値を所望のレベルに維持する能力に基づいている。従って、いくつかの態様では、媒体は約7.5のpH値に緩衝される。緩衝液を使用しない場合、媒体のpHは、特定のエンドグリコセラミダーゼおよび使用される他の酵素に応じて、約5〜8.5に維持される必要がある。
【0243】
酵素の量または濃度を活性単位として表し、これは触媒の初期速度の基準である。1活性単位は、所定の温度(一般に37℃)およびpH値(一般に7.5)にて、1分間で生成物1μmolの形成を触媒する。従って、酵素10単位は、基質10μmolが、温度37℃およびpH値7.5にて1分間で生成物10μmolに変換される、その酵素の触媒量である。
【0244】
反応混合物は、二価金属カチオン(Mg2+、Mn2+)を含有し得る。反応媒体はまた、必要であれば、可溶化洗浄剤(例えば、TritonもしくはSDS)、および/または例えばメタノールもしくはエタノールのような有機溶媒を含有してもよい。酵素は、溶液中で遊離状態にて、または例えば重合体のような支持体に結合した状態で使用され得る。従って、開始時に反応混合物は実質的に均質であるが、反応中幾分かの沈殿が形成され得る。
【0245】
上記のプロセスが実施される温度は、凍結温度の丁度上の温度から、殆どの感受性酵素が変性する温度の間にわたり得る。温度範囲は、好ましくは約O℃〜約45℃、より好ましくは約20℃〜約37℃である。
【0246】
このようにして形成された反応混合物は、所定の糖脂質決定因子を所定の高収率で得るに十分な時間だけ保持される。大規模調製では、反応は多くの場合、約0.5〜240時間、より一般的には約1〜18時間進行されるであろう。
【0247】
好ましくは、活性化ドナー基質および酵素の濃度は、アクセプター基質が消費されるまで、グリコシル化が進行するように選択される。
【0248】
各酵素は、触媒量で存在する。特定の酵素の触媒量は、その酵素の基質の濃度、ならびに例えば温度、時間およびpH値のような反応条件に従って変動する。予め選択された基質濃度における所与の酵素の触媒量を決定する手段は、当業者に周知である。
【0249】
B. インビボ反応
変異エンドグリコセラミダーゼポリペプチドを使用して、インビボ反応、例えば、エンドグリコセラミダーゼポリペプチドを含む組換え微生物の発酵性増殖により、糖脂質生成物を形成することができる。組換え微生物の発酵性増殖は、アクセプター基質およびドナー基質またはドナー基質の前駆体を含有する媒体の存在下で起こり得る。例えば、Priemら、Glycobiology 12:235-240(2002)を参照されたい。微生物生命体はアクセプター基質およびドナー基質またはドナー基質の前駆体を取り込み、生細胞内でドナー基質のアクセプター基質への付加が行われる。微生物生命体は、例えば、糖輸送タンパク質を発現することによって、アクセプター基質の取り込みを促進するよう変更され得る。
【0250】
インビトロで実施されるグリコシルトランスフェラーゼでは、プロセス中で使用される反応物の濃度または量は、温度およびpH値などの反応条件、ならびにグリコシル化されるアクセプターサッカライドの選択および量を含む多数の要因に依存する。グリコシル化プロセスは、触媒量の酵素の存在下で、活性化ヌクレオチドおよび活性化されたドナー糖の再生、および生成されたPPiの除去を可能にするため、該プロセスは以前に説明した化学量論的な基質の濃度または量により制限される。本発明の方法に従って使用し得る反応物の濃度の上限は、そのような反応物の溶解度により決定される。
【0251】
エンドグリコセラミダーゼの機能的アッセイ
免疫学的アッセイに加えて、酵素アッセイを使用して本発明のエンドグリコセラミダーゼの存在および/または活性を検出することができる。これら酵素アッセイは、野生型および本発明の変異エンドグリコセラミダーゼの明確な機能的特徴を確立するのに有用である。糖脂質最終生成物の形成は、例えば所望の生成物が形成されたことを測定、または基質、アクセプター基質などの基質が枯渇したことを決定することにより監視することができる。当業者は、ガングリオシドまたはグリコスフィンゴ脂質類似体を含む糖脂質最終生成物は、紙もしくはTLCプレートを使用したクロマトグラフィーなどの技術、または例えばMALDI-TOF分光法、もしくはNMR分光法のような質量分析等の技術を使用して確認できることを理解するであろう。
【0252】
加水分解活性のアッセイ
糖脂質を基質として使用して、野生型または変更された酵素のいずれかのエンドグリコセラミダーゼの加水分解活性を試験することができる。基質(例えば、lyso-GM2、GM2、またはGM3)をエンドグリコセラミダーゼと共に、適切な条件下でをインキュベートした後、オリゴ糖およびアグリコン(例えば、C-18セラミド)などの、エンドグリコセラミダーゼが加水分解的に活性であることを示す加水分解生成物の存在を検出するアッセイを行う。加水分解生成物の検出を容易にするために、加水分解アッセイのための基質を検出可能な部分、例えば蛍光標識もしくは放射性標識で標識してもよい。加水分解で蛍光を放出する、または発色団(すなわち、ジニトロフェニル、p-ニトロフェニルまたはメチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)グリコシド)を生じる糖を使用して、加水分解活性を試験することもできる。加水分解生成物を検出する好ましいアッセイフォーマットは、例えば薄層クロマトグラフィー(TLC)等の様々なクロマトグラフ法を含む。
【0253】
変異エンドグリコセラミダーゼの活性レベルを、野生型エンドグリコセラミダーゼと比較して評価できるように、各加水分解活性アッセイに適切な対照を含めることが好ましい。
【0254】
合成活性のアッセイ
エンドグリコセラミダーゼ、特に変異エンドグリコセラミダーゼ(または「エンドグリコセラミドシンターゼ」)の合成活性を試験するために、基質として、オリゴ糖および例えば式Iおよび式IIのヘテロアルキル基質を使用し得る。二つの基質を適切な条件下で「エンドグリコセラミドシンターゼ」と共にインキュベートした後、「エンドグリコセラミドシンターゼ」が合成的に活性であることを示す、オリゴ糖とヘテロアルキル基質、例えばセラミドまたはスフィンゴシンを含むアグリコンとの間の反応により形成された糖脂質の存在を検出するアッセイを行う。合成プロセスにおける検出を容易にするために、合成アッセイの二つの基質の少なくとも一方が、検出可能な部分、例えば蛍光または放射性標識で標識してもよい。加水分解生成物を検出するTLCなどの同一のアッセイフォーマットを、合成生成物の検出に使用することができる。
【0255】
エンドグリコセラミドシンターゼの活性レベルを、野生型エンドグリコセラミダーゼと比較して評価できるように、各アッセイに適切な対照を含めることが好ましい。
【0256】
変異エンドグリコセラミドシンターゼを使用した糖脂質合成
合成的に活性な変異エンドグリコセラミダーゼを同定して、この酵素を、ヘテロアルキル基質の異なる組み合わせに基づいて、非常に多様な糖脂質の生成に使用し得る。特定の関心対象の最終生成物は、グリコシル化スフィンゴシン、グリコシル化スフィンゴシン類似体、およびグリコシル化セラミド(すなわち、セレブレオシドおよびガングリオシド)を含むグリコシル化アグリコンである。本発明の方法は、任意の多数のガングリオシドおよび関連した構造を形成するのに有用である。関心対象の多数のガングリオシドは、Oettgen、H.F., ed., Gangliosides and Cancer, VCH, Germany, 1989, pp.10-15、および本明細書に引用される参照に記載されている。最終生成物は、グリコシルスフィンゴシン、グリコスフィンゴ脂質、セレブレオシドまたはガングリオシドであり得る。例示的なガングリオシド最終生成物は、下の表2に列挙されているものを含む。従って、一態様において、合成された糖脂質は、

の一つもしくは複数、またはポリシアリル化されたラクトースであり得る。
【0257】
(表2)例示的ガングリオシドの式および略語

糖脂質命名法、IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature (Recommendations 1997); Pure Appl. Chem. (1997) 69: 2475-2487; Eur. J. Biochem (1998) 257: 293-298) (worldwide web at chem.qmw.ac.uk/iupac/misc/glylp.htmlを参照されたし)。
【0258】
例示的な最終生成物は、さらに図1〜13に示すものを含む。本発明の変異エンドグリコセラミダーゼを使用して製造され得るさらなる最終生成物糖脂質は、同時係属特許出願の第PCT/US2004/006904号(これは、米国仮特許出願第60/452,796号の優先権を主張する);米国特許出願第10/487,841号;米国特許出願第10/485,892号;第10/485,195号および第60/626,678号に開示されているグリコスフィンゴ脂質、グリコシルスフィンゴシンおよびガングリオシド誘導体を含む。
【0259】
本発明のエンドグリコセラミドシンターゼを使用して合成した糖脂質に、さらなる修飾を行うことができる。本発明を使用して生成しさらに変化させた糖脂質の例示的方法は、第WO03/017949号;第PCT/US02/24574;第US2004063911号に記載されている(各々もっぱらペプチドのグリコシル部分による修飾に関するが、そこに開示された方法は、糖脂質、および本明細書に記載されている糖脂質の製造方法にも同様に適用可能である)。さらに、本発明の糖脂質組成物は、第WO03/031464号およびその後続出願に開示されている糖複合を受けることができる(各々もっぱらペプチドのグリコシル部分による修飾に関するが、そこに開示された方法は、糖脂質および本明細書に記載されている糖脂質の製造方法にも同様に適用可能である)。
【実施例】
【0260】
以下の実施例は例示として提供するものであり、限定的なものではない。当業者は変更または修正し得る様々な重要でないパラメータによって、本質的に類似した結果が得られることを容易に理解するであろう。
【0261】
実施例I:変異エンドグリコセラミダーゼの生成
Blue Heron Biotechnology(EGCasel395)により合成エンドグリコセラミダーゼ遺伝子を作成した。続いて、この遺伝子をpT7-7発現ベクターにサブクローニングした(図14)。ロドコッカスsp.M-777由来のエンドグリコセラミダーゼのGlu233をコードするヌクレオチドの一つ(GenBankアクセッション番号AAB67050、配列番号:2)における変異を、PCRベースの方法により、同一の5'プライマーを5個の異なる3'プライマーと組み合わせることにより、5個のプライマーセットを使用して、EGCase遺伝子内に導入した:
5'プライマー:

3'プライマー:

【0262】
変異を作成する際に使用したPCRプログラムは、本質的に以下のようなものであった:最初に鋳型およびプライマーを95℃で5分間インキュベートし、次いでVent DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を加え、続いて94℃で1分間、55℃で1分間、および72℃で2分間の30サイクルの増幅を行った。
【0263】
PCR生成物をNdelおよびPstlで消化し、pT7-7ベクターをNdel、EcoRI、およびPstlで消化した。消化生成物の0.8% TAEアガロースゲルからの精製後、ライゲーション反応を介してPCR生成物をpT7-7ベクター内にサブクローニングした。ライゲーション反応が完了した後、LacZ遺伝子をテトラサイクリンまたはカナマイシン耐性遺伝子(Neose Technologies, Inc.にて作成)で破壊することにより、ライゲーションの生成物をBL21DE3細胞(William Studier, Brookhaven National Laboratories, Upton, NY)から調製したBL21DE3 LacZ-細胞内に電気穿孔した。PCR生成物挿入に関してコロニーがスクリーニングされた。全部のEGCase変異を配列決定により確認した。
【0264】
実施例II:加水分解アッセイ
例示的な加水分解反応は、50μLの容積を有し、基質20μg(予め乾燥したlyso-GM2、GM2、またはGM3、Neose Technologies、Inc.にて作成)、タウロデオキシコール酸25μg (Sigma、Cat#T-0875)、酢酸ナトリウム(pH5.2) 50mM、および野生型または変異EGCaseを含有する粗細胞溶解物5〜10μLを含んでいた。加水分解混合物を、37℃で10〜120分間インキュベートした。
【0265】
実施例III:合成アッセイ
例示的な合成反応は、50μLの容積を有し、MgCl2 5mM、洗浄剤0.5%、セラミド-C-18(予め乾燥した)0.3mM、Tris-HCl(pH7.5) 20mM、および3'シアリル化フッ化ラクトース0.36mM (3'SLF)を含んでいた。反応に使用した洗浄剤は、Triton-XIOO (0.5%)、タウロデオキシコール酸(25μg)、NP-40 (0.5%)、Tween-80 (0.5%)、3-14両性洗浄剤(0.5%)およびTriton-CF54 (0.5%)であった。反応時間は、pH5.2〜8.0の範囲内の様々な緩衝液中で、2〜16時間の範囲にわたった。
【0266】
実施例IV:TLC分析
加水分解物または合成反応物5μLを、TLCプレート上にスポットした。次いでプレートを低温のヘアドライアーセットで乾燥した。このプレートを適切な溶媒系(溶媒A:クロロホルム/メタノール95:5v/v、溶媒B:1-ブチルアルコール/酢酸/H2O 2:1:1v/v、溶媒C:クロロホルム/メタノール/H20/水酸化アンモニウム60:40:5:3)で移動させた。次いでプレートを乾燥して、アニスアルデヒドで染色した。続いてTLCプレートを加熱プレートセット上で3にて加熱して発色させた。
【0267】
実施例V
以下の実施例に、ロドコッカスM-777(配列番号:2)由来のエンドグリコセラミダーゼII酵素上に選択的変更を行うことによって、3'-フッ化シアリルラクトシルと、様々な脂質アクセプターとの間の十分なグリコシド結合を形成できるグリコシンターゼ酵素の生成の成功例を記述する。
【0268】
例示的な変異エンドグリコセラミダーゼE351Sのクローニング
ロドコッカスからの野生型EGCase遺伝子のDNA配列を鋳型として使用して、構造物を設計した。オーバーラッピングPCR手法を使用して、野生型酵素に関してアミノ酸351位グルタミン酸のセリンによるアミノ酸置換、コード化配列内に操作した(プライマー配列配列番号:32〜39参照されたい)。最終コード配列も野生型酵素に関してアミノ酸29にて切断して、分泌中に通常生成される成熟酵素を模倣した(配列番号:40および41)。制限酵素認識部位をコード化配列の末端上に操作して(各々、NdelおよびXhol)、pET28Aベクター(Novagen/EMD Biosciences、San Diego CA)からの6個のhisタグとインフレームで対応する部位に連結した。この構造物は、制限および配列分析により正確であることが確認され、次に50mcg/mlカナマイシン選択を使用して大腸菌株BL21(DE3)(Novagen)を形質転換する際に使用した。個々のコロニーを使用してMaritone-50mcg/mlカナマイシンの培地に播種し、これを37℃で16時間インキュベートした。培地のサンプルを混合して20%グリセロールを達成し、アリコートを-80℃で冷凍して、保存バイアルと称した。
【0269】
変異エンドグリコセラミダーゼ(EGC)の発現および精製
野生型EGCおよび以下のEGC変異;E351A、E351D、E351D、E351GおよびE351Sを首尾よく発現および精製した。EGC異種の発現レベルは非常に高く、従って細胞培地50mlを使用して酵素を作製した。
【0270】
-80℃の冷凍保存品からの細胞を、50ml Typブロス中に直接播種して、37℃で飽和まで増殖させた。次いで、温度を20℃に低下させ、IPTGを0.1mMまで加えることによりタンパク質の生成を誘導した(可溶性の問題により、IPTG濃度0.05mMにてE351G変異を発現させて、凝集を防止した)。8〜12時間後、細胞を遠心分離により回収して、ペレットをBugBusterタンパク質抽出試薬(Novagen) 2.5ml中に再懸濁させた。細胞溶解を20分間進行させた後、細胞破片を遠心分離により除去した。
【0271】
次いで、細胞溶解物を1ml Ni-NTAカラム(Amersham)にかけた後、二カラム容積の結合緩衝液(pH7.0、0.5M NaClを含有する20mMリン酸ナトリウム)で洗浄した。EGCをイミダゾールの段階的な添加により溶出して、最終濃度0.5M (EGCは0.2〜0.3Mイミダゾールで溶出)とした。EGCを含有する画分を、SDS-PAGEで同定した。精製によって、一ステップ後に>95%純度のタンパク質が得られた。例示的なロドコッカスEGC変異E351Sの発現および精製を、図16に示す。
【0272】
EGCを含有する画分をプールし、Amiconの遠心式限外濾過装置(MWCO=10,000Da)を使用して、緩衝液を0.2% Triton X-100を含む25mM NaOAc、pH5.0に変更した。この時間において、タンパク質は最終容積約2mlに濃縮された。
【0273】
Bradford方法を使用してタンパク質濃度を評価した。精製によっておおむね約10mgのEGC(発現培地1リットル当たり180〜200mg)が得られた。酵素は、この形態で少なくとも3ヶ月間安定であった。
【0274】
変異EGC酵素によるlyso-GM1の酵素合成
反応は0.1〜0.2% Triton X-100を含有する25mM NaOAc (pH5.0)中で実施した。典型的な反応混合物は、全反応容積50μl中、フッ化GMl糖ドナー(GMl-F)約50mg/ml、アクセプタースフィンゴシン15mg/ml、および適切なEGC変異2.0mg/mlを含有していた。これらの条件下で、反応は、TLC分析により、37℃で12時間内に>90%完了まで進行した。アセトニトリル(ACN)中0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)からH2O中0.1% TFAの溶離液を用いた、Chromolith RP-8eカラム上でのHPLC逆相法を使用して、フッ化GMl糖ドナーの転移を監視した。ロドコッカスE351S変異のグリコシンターゼ反応のHPLC監視の結果の例を、図17に示す。
【0275】
変異EGC酵素によるlyso-GM3の酵素合成
反応は0.2% Triton X-100を含有する25mM NaOAc(pH5.0)中で実施した。典型的な反応混合物は、全反応容積100μl中、3'-フッ化シアリルラクトシル(3'-SLF)約10mM、アクセプターD-エリスロ-スフィンゴシン2OmM、および適切なEGC変異0.5mg/mlを含有していた。これらの条件下で、反応は、TLC分析により、37℃で12時間内に>90%完了まで進行した。D-エリスロ-スフィンゴシンに加えて、上記の表1に、3'-SLFによるグリコシンターゼ反応に使用した他のアクセプター種の構造を示す。
【0276】
本質的に全部の3'-SLFが、酵素反応中にD-エリスロ-スフィンゴシンにより消費された。従って、この反応は3'-SLFに関して最小90%の代謝回転という控えめな評価を提供した。移動溶媒は、CHCl3/MeOH/0.2% CaCl2(5:4:1)であり、オルシノール-H2SO4染色で検出した。lyso-GM3生成物は、順相および逆相SepPakカートリッジ(Waters)の組み合わせを使用して精製した。lyso-GM3としての生成物の確認は質量分析およびNMRにより支持された
【0277】
実施例VI:野生型ロドコッカスM-777エンドグリコセラミダーゼの動態パラメータ
2,4-ジニトロフェニルラクトシドを基質として使用して、ロドコッカスM-777EGC酵素は、約2mMのKm、および90S-1のkcatを有していた(図18)。活性の洗浄剤濃度に対する依存性も検討された。洗浄剤が不在の場合、加水分解速度は非常に遅いことが見出された。Triton X-1OOを0.1%まで添加すると、kcat/Kmは劇的に増大し、さらに洗浄剤を添加すると徐々に減少した。洗浄剤濃度に対するkcat/Kmの依存性は、0.5%より高い濃度にて安定した。洗浄剤濃度の増大により、kcatおよびKmの両方が濃度1%(図19a〜図19c)まで規則的に上昇した。加水分解活性のpH依存性も検討した。予想通り、最大kcat/KmはpH5(図20)付近で見られた。
【0278】
実施例VII:大腸菌内での野生型プロピオン酸菌エンドグリコセラミダーゼの発現
プロピオン酸菌EGC酵素の発現レベルは極めて高く、200mg/1を越えると思われた。しかしながら、様々な条件下で、発現したタンパク質はもっぱら封入体を形成した。封入体を形成するこの傾向は、ロドコッカス酵素についても観察されるが、Tuner細胞を低い誘導温度(<20℃)および低いIPTG(0.1mM)濃度と併せて用いて最小にすることができる。これらの方策はプロピオン酸菌酵素では不成功であることが判明した。さらに、プロピオン酸菌酵素はIPTGの不在下でも、誘導前の増殖期の間の封入体の形成を伴って非常に高いレベルで発現することが見出された。
【0279】
少なくとも数種のタンパク質を可溶画分内に導入することを試みるため、以下を含む一連の実験を実施した:
−[IPTG](0〜0.1mM)の変動を伴う誘導温度(16〜37℃)の変動;
−バックグラウンド発現のレベルを低下させるための、室温における誘導前増殖;
−上述した様々な条件によるBL21 pLysS内への形質転換(バックグラウンド発現を抑制するため);
−上記のバリエーションを伴う、T7系ではなくlacプロモーターからの発現;
−誘導前の細胞の熱ショック(別個の実験にて42℃および60℃で2分間)によるシャペロン発現の誘導;
−ペリプラズム内への分泌を誘導するpelBシグナル配列の追加;ならびに
−カオトロピック剤としての尿素(8M)またはグアニジニウムHCL(2M)のいずれかを用いた変成と、その後の透析または最初のNi-NTAカラム上へのタンパク質の吸収と、それに次ぐ直線勾配を使用した変成濃度の低下による変成の排除のいずれかによる封入体の再可溶化の試みも実施した。
【0280】
Tuner細胞を使用して、0.1mM IPTGの存在下、M9最少培地中で18℃にて一夜誘導する増殖および誘導ステップを行い可溶プロピオン酸菌EGCを得た(リッチ(rich)ではなく最少培地を使用した以外は、本質的に、ロドコッカスに使用したものと同一の条件)(図21、レーン6)。発現株としてBL21pLysSを使用した同時実験では、おそらくは最少培地中でも発現が非常に高速で進行するレベルに内部IPTG濃度を増大させる際ラクトースパーミアーゼの作用により、封入体が形成された。以下の三つの方策を同時に使用して、タンパク質生成の速度を十分に低下させて可溶プロピオン酸菌EGC酵素を得る一方で、Hisタグを保持した:(i)増殖および発現用の最少培地、(ii)非常に低いIPTG濃度、ならびに(iii)ラクトースパーミアーゼを欠いたTuner細胞内での発現。これらの条件下で、細胞抽出物中の2,4-ジニトロフェニルラクトシドおよびGM3ガングリオシドの両方に対する加水分解活性を検出した。
【0281】
野生型配列と平行して、E319S変異EGCのための遺伝子構造物を調製した。この変異酵素は、グリコシンターゼ反応も触媒した。
【0282】
本明細書に記載した実施例および態様は、例示のみを目的とし、当業者にはそれらに照らした様々な修正または変更が示唆され、これらは本出願および添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれるべきことが理解される。本明細書に引用した全ての刊行物、特許、および特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0283】
(配列表)

















【図面の簡単な説明】
【0284】
【図1】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図2】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図3】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図4】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図5】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図6】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図7】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図8】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図9】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図10】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図11】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図12】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図13】本発明の酵素を使用して作製し得る化合物を示す。
【図14】制限酵素部位を示す、発現ベクターpT7-7の概略図。
【図15】ロドコッカス、プロピオン酸菌、キアネアおよびヒドラからの野生型エンドグリコセラミダーゼのアミノ酸配列アラインメント。
【図16】EGCase精製のSDS-PAGE分析。レーン:1)不溶ペレット画分;2)溶解物可溶画分;および3)精製した画分。
【図17】12時間後のLyso-GM3の合成を示す、HPLCによる反応分析。上部パネル:対照移動。下部パネル:反応物移動。
【図18】2,4-ジニトロフェニルラクトシドを基質として使用した、野生型ロドコッカスEGCのMichaelis-Menten曲線。
【図19】洗浄剤濃度の増大に伴う、野生型ロドコッカスEGCのkcat、Kmおよびkcat/Kmの変動。
【図20】野生型ロドコッカスEGCのpHの速度プロファイル。触媒グルタミン酸残基の概算pKa値は、3.2および6.5である。
【図21】様々な条件下での、大腸菌内におけるプロピオン酸野生型EGCの発現。3つのレーンの各連続にて、第一はプレインキュベーション発現レベル、第二は誘導後の全細胞画分、および第三は細胞溶解物の可溶画分を示す。全ての場合にて、誘導は18℃で実施した。レーン1〜3:BL21pLysS、0.1mM IPTG、M9培養液。レーン4〜6:Tuner、0.1mM IPTG、M9。レーン7〜9:BL21pLysS、0.01mM IPTG、Typ培養液。レーン10〜12:Tuner、0.1mM IPTG、Typ培養液。レーン14:分子量基準。
【図1−1】

【図1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
変更された求核性カルボキシラートアミノ酸残基を有する変異エンドグリコセラミダーゼであって、該求核性カルボキシラートアミノ酸残基が、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列(モチ-フEまたは配列番号:46)内に存在し、該変異エンドグリコセラミダーゼは、ドナー基質からアクセプター基質へのサッカライド部分の転移を触媒する、変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項2】
求核性カルボキシラートアミノ酸残基が、

配列(モチ-フDまたは配列番号:45)内に存在するGluである、請求項1記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項3】
合成活性が、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの合成活性と比較して増大している、請求項1記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項4】
加水分解活性が、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼと比較して低下している、請求項1記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項5】
求核性Glu残基がGlu以外のアミノ酸で置換される、請求項2記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項6】
求核性Glu残基が、Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuおよびVaIからなる群より選択されるアミノ酸で置換される、請求項5記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項7】
酵素により自然のシグナルペプチド配列が除去されている、請求項1記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項8】
対応する野生型エンドグリコセラミダーゼが、ロドコッカス(Rhodococcus)エンドグリコセラミダーゼ、プロピオン酸菌(Propionibacterium)エンドグリコセラミダーゼ、タマホコリカビ(Dictyostelium)エンドグリコセラミダーゼ、キアネア(Cyanea)エンドグリコセラミダーゼ、ヒドラ(Hydra)エンドグリコセラミダーゼ、ストレプトミセス(Streptomyces)エンドグリコセラミダーゼ、住血吸虫属(Schistosoma)エンドグリコセラミダーゼ、レプトスピラ(Leptospira)エンドグリコセラミダーゼおよびアカパンカビ(Neurospora)エンドグリコセラミダーゼからなる群より選択される、請求項1記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項9】
対応する野生型エンドグリコセラミダーゼが、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16〜20のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項2記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項10】
変異エンドグリコセラミダーゼが融合タンパク質の一部である、請求項1記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項11】
アミノ酸タグをさらに含む、請求項1記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項12】
N-末端

モチ-フ(モチ-フAまたは配列番号:42)およびC-末端

モチ-フ(モチ-フCまたは配列番号:44)をさらに含む、請求項1記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項13】
請求項1記載の変異エンドグリコセラミダーゼをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項14】
請求項13記載の核酸配列を含む、発現ベクター。
【請求項15】
請求項14記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
変異エンドグリコセラミダーゼを製造する方法であって、該変異エンドグリコセラミダーゼの発現に適切な条件下で、請求項15記載の宿主細胞を増殖させる工程を含む、方法。
【請求項17】
配列番号:47〜58のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む、変異エンドグリコセラミダーゼ。
【請求項18】
対応する野生型エンドグリコセラミダーゼと比較して増強した合成活性を有する変異エンドグリコセラミダーゼを作製する方法であって、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの求核性カルボキシラートアミノ酸残基を変更する工程を含み、該求核性カルボキシラート残基は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列(配列番号:46)内に存在する、方法。
【請求項19】
求核性カルボキシラートアミノ酸残基が、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列(配列番号:45)内に存在するGluである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
求核性Glu残基は、該求核性Glu残基をコードするコドンを、Glu以外のアミノ酸をコードするコドンで代替することにより変更される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
求核性Glu残基をコードする核酸コドンが、Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuおよびValからなる群より選択されるアミノ酸残基をコードする核酸コドンで代替される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
糖脂質を合成する方法であって、サッカライド部分を含むドナー基質とアクセプター基質とを、変更された求核性カルボキシラートアミノ酸残基を有する変異エンドグリコセラミダーゼと接触させる工程を含み、該求核性カルボキシラート残基は、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列(配列番号.46)内に存在し、該接触工程は該エンドグリコセラミダーゼがドナー基質からアクセプター基質へのサッカライド部分の転移を触媒して、それにより糖脂質を生成する条件下で行われる、方法。
【請求項23】
求核性カルボキシラートアミノ酸残基が、対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列(配列番号:45)内に存在するGluである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
ドナー基質が、天然グリコシド結合の逆であるアノマー配置のα-修飾グリコシルドナーである、請求項22記載の方法。
【請求項25】
ドナー基質がフッ化グリコシルである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
アクセプター基質が、式Ia、Ib、IIまたはIIIのアグリコンである、請求項22記載の方法。
【請求項27】
アクセプター基質が、スフィンゴシンまたはスフィンゴシン類似体である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
スフィンゴシンが、D-エリスロ-スフィンゴシン、D-エリスロ-スフィンガニン、L-スレオ-スフィンゴシン、L-スレオ-ジヒドロスフィンゴシン、D-エリスロ-フィトスフィンゴシン、N-オクタノイル-D-エリスロ-スフィンゴシンからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
アクセプター基質がセラミドである、請求項26記載の方法。
【請求項30】
糖脂質が、グリコスフィンゴ脂質、ガングリオシドおよびセレブロシドからなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項31】
糖脂質が、

およびポリシアリル酸化ラクトース(polysialyated lactose)からなる群より選択されるガングリオシドである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
請求項1記載の変異エンドグリコセラミダーゼ、サッカライド部分を含むドナー基質、およびアクセプター基質を含む、反応混合物。
【請求項33】
アクセプター基質が、セラミド、スフィンゴシンまたはスフィンゴシン類似体である、請求項32の反応混合物。
【請求項34】
i)エンドグリコセラミダーゼが、その天然型において配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16〜20のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含み、および
ii)対応する野生型エンドグリコセラミダーゼの

配列内の求核性Glu残基が、Glu以外のアミノ酸に変更されることを特徴とする、変異エンドグリコセラミダーゼ:。
【請求項35】
求核性Glu残基が、Gly、Ala、Ser、Asp、Asn、Gln、Cys、Thr、Ile、LeuおよびVaIからなる群より選択されるアミノ酸に変更される、請求項34記載の変異エンドグリコセラミダーゼ。

【図2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10−1】
image rotate

【図10−2】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12−1】
image rotate

【図12−2】
image rotate

【図12−3】
image rotate

【図13−1】
image rotate

【図13−2】
image rotate

【図13−3】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図15C】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公表番号】特表2008−502329(P2008−502329A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515585(P2007−515585)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/019451
【国際公開番号】WO2005/118798
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(506400328)ネオス テクノロジーズ インコーポレイティッド (4)
【出願人】(506401082)ザ ユニバーシティー オブ ブリティッシュ コロンビア ユニバーシティー−インダストリー リエゾン オフィス (2)
【Fターム(参考)】