説明

壁部材、建物、および貯湯システム

【課題】建物の壁の強度を確保しつつ壁の内部に貯湯空間を設けること。
【解決手段】建物の壁となる壁部材であって、温水を貯湯する貯湯空間を内部に有し、貯湯空間は、壁部材の壁面と略平行な第1の側面と、第1の側面に対向する第2の側面とを有し、第1の側面と第2の側面とを連結し、かつ貯湯空間を複数の部分空間に分割する連結部材を備える。連結部材は略水平に設けられており、当該連結部材の上方に位置する部分空間の下部と、当該連結部材の下方に位置する部分空間の上部とを連通する連通口を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁部材、建物、および貯湯システムに関する。特に本発明は、温水を貯湯する壁部材、建物、貯湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池発電システムにおいては、改質装置、燃料電池、制御系、補機、電力変換装置などが一つの外装ケース内に収容され、当該ケースが各家庭の屋外などに設置されている(例えば、特許文献1参照。)。また、燃料電池による発電の過程で発生した熱を利用して市水から温水を生成し、当該温水を屋外に設置された貯湯タンクに蓄える。
【特許文献1】特開2003-199254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、集合住宅においては、燃料電池システムを設置することができる屋外のスペースはベランダなどに限られる。このため、集合住宅の貴重なベランダなどの屋外スペースの一部が貯湯タンクによって占有されてしまう。この場合、集合住宅の壁など、構造物の内部に貯湯タンクを設置したりして、集合住宅の屋外のスペースを住民が自由に利用することができるのが望ましい。また、一戸建て住宅においても、住宅の壁など、住宅の構造物の内部に貯湯タンクを設置することで、住居から離れた庭先などの場所に設置した場合に比べて、貯湯タンクの温水を住居内に導く配管の長さを短くすることができる。これにより、外部への熱の損失量を低減することができる。しかし、例えば住宅の壁の内部に貯湯タンクを設置すると壁の強度が低下する。壁の強度を確保すべく壁の厚さを厚くすると、居住空間を圧迫してしまう。
【0004】
そこで本発明は、上記の課題を解決することができる建物を提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の形態によると、建物の壁となる壁部材であって、温水を貯湯する貯湯空間を内部に有し、貯湯空間は、壁部材の壁面と略平行な第1の側面と、第1の側面に対向する第2の側面とを有し、第1の側面と第2の側面とを連結し、かつ貯湯空間を複数の部分空間に分割する連結部材を備える。
【0006】
連結部材は、当該連結部材の上方に位置する部分空間の下部と、当該連結部材の下方に位置する部分空間の上部とを連通する連通口を有する。
【0007】
第1の側面及び第2の側面は矩形状であり、連結部材は、貯湯空間において第1の側面または第2の側面の矩形の対角を結ぶ方向に設けられてよい。
【0008】
本発明の第2の形態によると、温水を貯湯する貯湯空間を内部に含む壁を備える建物であって、貯湯空間は、壁の壁面と略平行な第1の側面と、第1の側面に対向する第2の側面とを有し、壁は、第1の側面と第2の側面とを連結し、かつ貯湯空間を複数の部分空間に分割する連結部材を有する。
【0009】
本発明の第3の形態における貯湯システムは、温水を貯湯すべく建物の壁の内部に設けられ、壁の壁面と略平行な第1の側面と、第1の側面に対向する第2の側面とを有する貯湯空間と、第1の側面と第2の側面とを連結し、かつ貯湯空間を複数の部分空間に分割する連結部材とを備える。
【0010】
連結部材は略水平に設けられ、連結部材の上方に位置する部分空間は、連結部材の下方に位置する部分空間より高い温度の温水を貯湯する。
【0011】
複数の部分空間のうち、一の部分空間に貯湯される温水を、当該一の部分空間よりも下方に位置する部分空間よりも先に熱源からの熱量を用いて加温し、当該一の部分空間に貯湯される温水を加温した後に、当該一の部分空間よりも下方に位置する部分空間を加温する制御部を更に備える。複数の部分空間は、燃料電池によって排出される排熱を用いて加温された温水を貯湯する。
【0012】
なお上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となりうる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、建物の壁の強度を確保しつつ壁の内部に貯湯空間を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る建物110を示す。本実施形態の建物110は、燃料電池収納室74、排気部52、燃料電池40、貯湯空間48、および連結部材66を備える。
【0016】
燃料電池収納室74は、燃料電池40を内部に収納すべく設けられている。具体的には、燃料電池収納室74は、建物110のテラス68の内部に設けられる。燃料電池40は燃料電池収納室74の内部に設置される。なお、ここでいうテラス68とは、バルコニー、ベランダなどを含む構造物であってよい。
【0017】
燃料電池40は水素を消費して発電する。具体的には、燃料電池40は、固体高分子形燃料電池(PEFC)であってよい。また、燃料電池40は、都市ガス、プロパンガスなどを改質して水素ガスを生成する改質器から供給される水素ガスを燃料として発電してよく、また外部から供給される水素ガスを燃料として発電してもよい。そして、燃料電池40は、アノードにおいて発電に利用されずに排出された水素を含むガス、または当該ガスを改質器で燃焼させることによって生成される燃焼ガスを、排気口54から排ガスとして排気する。なお、燃料電池40は、改質器を含む燃料電池であってよく、改質器を含まない燃料電池であってもよい。
【0018】
排気部52は、燃料電池40からの排ガスを建物110の外部に直接排気すべく、燃料電池40からの排ガスを排気する排気口54に対向する位置に設けられ、排気口54に連結されている。図1の例では、排気部52はテラス68の腰壁72の壁面に設けられる。
【0019】
このため、燃料電池40の排ガスを建物110から外部に適切に排気することができる。したがって、燃料電池40の排ガスが居住空間に侵入することを防ぐことができる。なお、排気部52の下方には、建物110の外部から空気を取り入れて燃料電池40に給気する給気部53が設けられている。給気部53を排気部52の下方に設けることによって、排気部52からの排ガスが燃料電池40に吸入される量を低減することができる。
【0020】
なお、排気部52および給気部53のそれぞれには、雨水等の水が外部から浸入することを防ぐウェザーカバー51が、建物110の外部への開口部から外に向かって延設されている。また、排気部52は、燃料電池40の排ガスに含まれる水蒸気等によって排気部52の排気経路の壁面に発生した露を建物110の外部に排出する構造を有している。例えば、排気部52の底部は、排気口54から建物110の外部に向けて下り勾配で傾斜している。他にも、排気部52の排気経路全体が、建物110の外部に向けて下り勾配で傾斜していてもよい。また、排気部52における排気経路の壁面は、排気部52の底部に露が集まる形状、例えば円筒形状になっている。そして、排気部52と排気口54との接続部分には、排気口54から燃料電池40への水の流入を防止する逆流防止板55が設けられている。このため、外部から雨水等の水が排気部52または給気部53を通って燃料電池40に浸入したり、排気部52の内壁に付着した露が燃料電池40に浸入したりすることによって燃料電池40が故障する確率を低減することができる。
【0021】
また、燃料電池40は、発電に伴って発電セルから発熱する。また、燃料電池40が改質器を有する場合には、燃料電池40は改質器において利用されなかった熱を排出する。貯湯空間48は、燃料電池40の排熱によって加温された温水を貯湯すべく、建物110の壁の内部に設けられる。具体的には、排熱配管86は燃料電池40および貯湯空間48に接続され、燃料電池40を冷却する冷却水として貯湯空間48の温水を通流させる。そして排熱配管86の温水は、排熱ポンプ99によって貯湯空間48と燃料電池40との間を循環する。
【0022】
以上説明した建物110によれば、燃料電池40の排熱によって加温された温水を貯湯する貯湯空間48および燃料電池40を内部に収納するので、燃料電池40および貯湯空間48は住民の活動の邪魔にならない位置に設置することができる。
【0023】
なお、燃料電池収納室74は、貯湯空間48に貯湯される温水の下面よりも更に下方に燃料電池40を設置することができる位置に設けられる。具体的には、燃料電池収納室74は、建物110のテラス68の床面73の下部に設けられる。このため、貯湯空間48に熱量を供給する排熱ポンプ99が動作を停止した場合でも、貯湯空間48の下部の水によって燃料電池40を冷却することができる。
【0024】
そして、貯湯空間48は、壁の壁面と略平行な第1の側面62aと、第1の側面62aに対向する第2の側面62bとを有する。そして、連結部材66は、第1の側面62aと第2の側面62bとを連結し、かつ貯湯空間48を複数の部分空間(46aおよび46b)に分割する。このため、連結部材66によって腰壁72の強度を保ちつつ、腰壁72の内部に貯湯空間48を設けることができる。なお、貯湯空間48には、複数の連結部材66が設けられてもよい。そして、連結部材66は、当該連結部材66の上方に位置する部分空間46aの下部と、当該連結部材66の下方に位置する部分空間46bの上部とを連通する連通口42を有する。
【0025】
貯湯空間48に温水を貯湯すると、貯湯される温水が高温部と低温部とに分かれて両者の比重差により温度境界層が生じる。この温度境界層の厚さは、貯湯空間48の横長、縦長にかかわらず略同一となる。したがって、貯湯空間が横長になると、水平方向の断面積が大きい分、温度境界層の容積が大きくなる。そして、この温度境界層を通して高温部から低温部への熱移動により高温部の温度低下も大きくなるので、蓄熱効率が低下してしまう。しかし、本実施形態の建物110における貯湯空間48においては、連結部材66は連通口42を有することによってより縦長の空間を形成することができる。このため、腰壁72の強度を確保しつつ蓄熱効率をより高めることができる。
【0026】
なお、連結部材66は、具体的には略水平に設けられる。そして、連結部材66の上方に位置する部分空間46aは、連結部材66の下方に位置する部分空間46bより高い温度の温水を貯湯する。具体的には、複数の部分空間46のうち、部分空間46aに貯湯される温水を、部分空間46aよりも下方に位置する部分空間46よりも先に熱源からの熱量を用いて加温し、部分空間46aに貯湯される温水を加温した後に、部分空間46aよりも下方に位置する部分空間46bを加温する。例えば、部分空間46bの下部の温水を、燃料電池40を冷却する冷却水として燃料電池40に供給する。そして、燃料電池40において加温されて得られる温水を部分空間46aの上部から供給する。
【0027】
なお、貯湯空間48は、貯湯空間48の外部と断熱されているのが望ましい。例えば、貯湯空間48は、貯湯空間48と貯湯空間48の外部とを断熱する建築部材によって形成されてよい。他にも、貯湯空間48と貯湯空間48の外部とを断熱する断熱材が、貯湯空間48の周囲に設けられてもよい。
【0028】
以上説明したように、建物110の内部に燃料電池40を収納するとともに、燃料電池40の排熱を用いて生成された温水を建物110の内部に効率よく貯湯することができる。なお、燃料電池収納室74は、建物110の床下、天井、階段の下方の空間などであってよい。
【0029】
図2は、建物の壁となる壁部材64の一例を示す。壁部材64は、例えば図1において説明した腰壁72などの、建物110の建造に用いられる部材であってよい。壁部材64は、貯湯空間48、連結部材66、および断熱材60を備える。貯湯空間48は、壁部材64の内部に設けられ、温水を貯湯する。貯湯空間48の周囲には、断熱材60が設けられている。
【0030】
貯湯空間48は、壁部材64の壁面と略平行な第1の側面62aと、第1の側面62aに対向する第2の側面62bとを有する。そして、連結部材66は、第1の側面62aと第2の側面62bとを連結し、かつ貯湯空間48を複数の部分空間(46aおよび46b)に分割する。
【0031】
なお、連結部材66は略水平に設けられている。また、連結部材66は、当該連結部材66の上方に位置する部分空間46aの下部と、当該連結部材66の下方に位置する部分空間46bの上部とを連通する連通口42を有する。本実施形態においては、連結部材66は連通口42を有することによって、連通口42を有しない場合に比べて縦長の貯湯空間48を形成することができる。このため、腰壁72の強度を確保しつつ、蓄熱効率をより高めることができる。
【0032】
また、断熱材60は、建物110を断熱する部材として機能するとともに、貯湯空間48を断熱する部材としても機能させることができる。また、内部に水が蓄えられる壁部材64を建物110の壁として用いることによって、建物110の耐火性をより高めることができる。
【0033】
図3は、壁部材64の変形例を示す。本変形例における壁部材64は、貯湯空間48、連結部材66、および断熱材60を備える。貯湯空間48は、壁部材64の壁面と略平行な第1の側面62aと、第1の側面62aに対向する第2の側面62bとを有する。なお、本変形例における断熱材60は、図2で説明した断熱材60と同一の機能を有するので説明を省略する。
【0034】
本変形例の壁部材64においては、第1の側面62aおよび第2の側面62bは矩形状である。そして、連結部材66は、貯湯空間48において第1の側面62aまたは第2の側面62bの矩形の対角を結ぶ方向に設けられる。連結部材66により、貯湯空間48は複数の部分空間(46aおよび46b)に分割される。そして、連結部材66は、部分空間46aおよび部分空間46bを連結する連通口42を有する。なお、連結部材66は、本変形例の壁部材64が壁となる建物を補強する筋交いであってよい。
【0035】
本変形例の壁部材64によると、第1の側面62aおよび第2の側面62bをより強固に連結することができる。したがって、壁部材64の強度をより高めることができる。また、本変形例の壁部材64における連結部材66には、壁部材64が壁となる建物を補強する筋交いとしての機能を持たせることができる。
【0036】
図4は、壁部材64の更なる変形例を示す。本変形例における壁部材64は、貯湯空間48、連結部材66、および断熱材60を備える。貯湯空間48および断熱材60は、図2で説明した貯湯空間48および断熱材60と同一の機能を有するので説明を省略する。本変形例の壁部材64においては、連結部材66は壁部材64として一体に形成されるものであり、第1の側面62aと第2の側面62bとを連結し、かつ貯湯空間48を複数の部分空間(46aおよび46b)に分割する。
【0037】
図5は、貯湯システム100の構成の一例を示す。本実施形態の貯湯システム100は、第1の貯湯部44a、第2の貯湯部44b、接続配管43、第1の断熱材60a、第2の断熱材60b、温水加温部58、加温配管(56a〜c)、貯湯ポンプ90、排熱配管88、排熱ポンプ98、バルブ92、バルブ94、給湯配管82、燃料電池40、および制御部50を備える。なお、燃料電池40は、図1で説明した燃料電池40と同様の動作をするので説明を省略する。そして、本実施形態の貯湯システム100は、例えば図1で説明した建物110に温水を貯湯する貯湯システム、または図2から図4にかけて説明した壁部材64に温水を貯湯する貯湯システムとして機能してもよい。
【0038】
第1の貯湯部44aおよび第2の貯湯部44bは、熱源からの熱量を受け取ることによって加温される温水を貯湯する。具体的には、第1の貯湯部44aおよび第2の貯湯部44bは、燃料電池40によって排出される排熱によって加温された温水を貯湯する。第1の断熱材60aは第1の貯湯部44aの周囲に設けられている。また、第2の断熱材60bは第2の貯湯部44bの周囲に設けられている。
【0039】
第2の貯湯部44bは、第1の貯湯部44aより低い断熱性を持つ。ここでいう断熱性とは、第1の貯湯部44aおよび第2の貯湯部44bから、それぞれ第1の断熱材60aおよび第2の断熱材60bの外部の空間への熱貫流抵抗の値を指標とするものであってよい。
【0040】
具体的には、第2の断熱材60bは、第1の断熱材60aの断熱性より低い断熱性を持っている。例えば、第2の断熱材60bの厚さは、第1の断熱材60aの厚さよりも薄くてよい。また、第2の断熱材60bは、第1の断熱材60aよりも低い熱貫流抵抗を持つ部材を含んでもよい。他にも、第1の貯湯部44aは、外部に断熱材を有しており、第2の貯湯部44bは、外部に断熱材を含まなくてもよい。例えば第2の貯湯部44bの周囲に第2の断熱材60bが設けられていなくてもよいし、第2の貯湯部44bの周囲の第2の断熱材60bの少なくとも一部に、断熱材が設けられていない部分領域があってもよい。他にも、第2の貯湯部44bの内部に貯湯される温水の体積に対する表面積の比を、第1の貯湯部44aの内部に貯湯される温水の体積に対する表面積の比よりも大きくてもよい。
【0041】
なお、第1の貯湯部44aは、第2の貯湯部44bに貯湯される温水よりも高温の温水を貯湯する。具体的には、第1の貯湯部44aは、第2の貯湯部44bより上方に設けられており、第1の貯湯部44aの下部と第2の貯湯部44bの上部とは接続配管43によって接続されている。そして、第1の貯湯部44aは、第2の貯湯部44bよりも優先的に熱量を受け取ることによって加温された温水を貯湯する。
【0042】
具体的には、温水加温部58は、燃料電池40の排熱を受け取った熱媒体と、第1の貯湯部44aおよび/または第2の貯湯部44bに貯湯される温水との熱交換によって、第1の貯湯部44aおよび/または第2の貯湯部44bに貯湯される温水を加温する。そして、温水加温部58は、第1の貯湯部44aに貯湯された温水を第2の貯湯部44bよりも先に加温し、第1の貯湯部44aに貯湯された温水を加温した後に第2の貯湯部44bに貯湯された温水を加温する。
【0043】
具体的には、燃料電池40から排熱を受け取って冷却する冷却水が、排熱ポンプ98によって排熱配管88を通って循環している。そして、温水加温部58には、第2の貯湯部44bの下部から温水を取り出す加温配管56aと排熱配管88とが接続されている。そして、加温配管56aの温水は、貯湯ポンプ90によって温水加温部58に供給され、排熱配管88を流れる冷却水の熱量を温水加温部58において受け取って加温されて、第1の貯湯部44aに供給される。
【0044】
また、制御部50は、第1の貯湯部44aに温水を更に貯湯できないことを条件として、第2の貯湯部44bに貯湯された温水を加温配管56aに取り出して、温水加温部58により加温させる。例えば、制御部50は、第1の貯湯部44aに温水を更に貯湯できる場合には、バルブ94を用いて加温配管56bを加温配管56aに連通させることによって、第1の貯湯部44aの下部の温水を加温配管56bから取り出して温水加温部58に導く。そして、温水加温部58において加温された温水は、第1の貯湯部44aの上部から供給される。
【0045】
このとき、制御部50は、第1の貯湯部44aの下部の温水の温度を逐次計測して、当該温水の温度が予め定めた温度以上となったことを条件として、第2の貯湯部44bの温水を温水加温部58により加温させる。具体的には、第2の貯湯部44bの下部から加温配管56aに取り出された温水を温水加温部58に導いて加温する。そして、温水加温部58において加温された温水は、第1の貯湯部44aの上部から第1の貯湯部44aに供給される。なお、制御部50は、バルブ92を制御して第2の貯湯部44bの上部に接続される加温配管56cとを連通させて、温水加温部58において加温された温水を第2の貯湯部44bの上部に供給してもよい。
【0046】
なお、第1の貯湯部44aおよび第2の貯湯部44bは独立した貯湯槽であってよい。例えば、集合住宅の複数の階に貯湯槽が設けられている場合において、一の階に設けられた貯湯槽を貯湯システム100の第1の貯湯部44aとして機能させ、当該貯湯槽よりも下の階に設けられた貯湯槽を貯湯システム100の第2の貯湯部44bとして機能させてよい。
【0047】
なお、第1の貯湯部44aに貯湯された温水は、給湯配管82によって給湯需要に給湯される。また、給湯需要によって温水が消費された場合、消費された量の市水が第2の貯湯部44bの下部から供給される。
【0048】
本実施形態の貯湯システム100によれば、例えば第1の貯湯部44aが規定温度の温水で満杯になった場合など、第1の貯湯部44aに燃料電池40の排熱を提供できない場合でも、燃料電池40の排熱を第2の貯湯部44bに提供することができる。したがって、排熱配管88を流れる冷却水が第1の貯湯部44aの温水によって十分に冷却されない場合でも、第2の貯湯部44bの温水によって冷却水を冷却することができる。したがって、燃料電池40の冷却不足によって燃料電池40の運転が停止される頻度を低減することができる。
【0049】
図6は、貯湯システム100の変形例を示す。本変形例の貯湯システム100は、第1の貯湯部44a、第2の貯湯部44b、接続配管43、第1の断熱材60a、第2の断熱材60b、温水加温部58、加温配管(57aおよび57b)、貯湯ポンプ(91aおよび91b)、排熱配管88、排熱ポンプ98、給湯配管82、燃料電池40、および制御部50を備える。加温配管57aは第1の貯湯部44aの下部と第1の貯湯部44aの上部とを接続する。また、加温配管57bは、第2の貯湯部44bの下部と第2の貯湯部44bの上部とを接続する。なお、本変形例の貯湯システム100の構成要素のうち、図5における貯湯システム100の構成要素と同一の符号が付された構成要素は、当該同一の符号が付された構成要素と同一の機能を有するので説明を省略する。
【0050】
そして、加温配管57aは温水加温部58に接続されており、第1の貯湯部44aの下部から取り出された温水を、貯湯ポンプ91aによって温水加温部58を通過させて加温した後に第1の貯湯部44aの上部から供給する。また、加温配管57bは温水加温部58に接続されており、第2の貯湯部44bの下部から取り出された温水を、貯湯ポンプ91bによって温水加温部58を通過させて加温した後に、第2の貯湯部44bの上部から供給する。このとき、温水加温部58は、排熱配管88を通流する冷却水の熱量を加温配管57bの温水よりも先に加温配管57aの温水に提供する。
【0051】
本変形例の貯湯システム100によれば、例えば第1の貯湯部44aが温水で満杯になった場合など、第1の貯湯部44aに燃料電池40の排熱を提供できない場合には、燃料電池40の排熱は自動的に第2の貯湯部44bに提供される。そして、排熱配管88を流れる冷却水が温水加温部58において第1の貯湯部44aの下部の温水によって十分に冷却されない場合でも、第2の貯湯部44bの下部の温水によって冷却水を冷却することができる。したがって、燃料電池40の冷却不足によって燃料電池40が運転を停止する頻度を低減することができる。
【0052】
図7は、貯湯システム100の更なる変形例を示す。貯湯システム100は、第1の貯湯部44a、第2の貯湯部44b、接続配管43、第1の断熱材60a、第2の断熱材60b、温水加温部(58aおよび58b)、排熱配管88、排熱ポンプ98、および給湯配管82を備える。なお、本変形例の貯湯システム100の構成要素のうち、図5の貯湯システム100において同一の符号が付された構成要素は、当該同一の符号が付された構成要素とそれぞれ同一の機能を有するので説明を省略する。
【0053】
温水加温部58aは、第1の貯湯部44aに貯湯された温水を加温すべく、第1の貯湯部44aの下部に設けられている。また、温水加温部58bは、第2の貯湯部44bに貯湯された温水を加温すべく、第2の貯湯部44bの下部に設けられている。そして、排熱配管88は、温水加温部58aおよび温水加温部58bを直列的に接続している。排熱配管88の内部においては、燃料電池40の排熱により加温された熱媒体が排熱ポンプ98によって循環している。そして、排熱配管88は、燃料電池40の排熱により加温された熱媒体を、第1の貯湯部44aに設けられた温水加温部58aに導いて第1の貯湯部44aに貯湯される温水を加温した後に、第2の貯湯部44bに設けられた温水加温部58bに導いて第2の貯湯部44bに貯湯される温水を加温する。
【0054】
本変形例の貯湯システム100によれば、例えば第1の貯湯部44aが温水で満杯になった場合など、第1の貯湯部44aに燃料電池40の排熱を提供できない場合には、燃料電池40の排熱は自動的に第2の貯湯部44bに提供される。また、排熱配管88を流れる冷却水が第1の貯湯部44aの下部の温水によって十分に冷却されない場合でも、第2の貯湯部44bの下部の温水によって冷却水を冷却することができる。したがって、燃料電池40の冷却不足によって燃料電池40が運転を停止する頻度を低減することができる。
【0055】
なお、図5から図7にかけて説明した貯湯システム100は、図1で説明した建物110に温水を貯湯する貯湯システム、または図2から図4にかけて説明した壁部材64に温水を貯湯する貯湯システムとして機能させてもよい。例えば、図5から図6にかけて説明した貯湯システム100における第1の貯湯部44a、第2の貯湯部44b、および接続配管43を、それぞれ図1から図4にかけて説明した建物110または壁部材64における部分空間46a、部分空間46b、および連通口42として機能させてよい。また、貯湯システム100における第1の断熱材60aおよび第2の断熱材60bを、図2から図4にかけて説明した壁部材64における断熱材60として機能させてもよい。
【0056】
図8は、建物110における燃料電池収納室74の配置の他の一例を示す。本例の建物110は、燃料電池収納室74、燃料電池40、および排気部52の位置を除いて図1で説明した建物110と同一である。燃料電池収納室74は、建物110のテラス68の壁面に設けられており、燃料電池収納室74内に燃料電池40が設置されている。そして、テラス68の壁面に設けられた排気部52は、燃料電池40からの排ガスを建物110の外部に直接排気すべく、燃料電池40からの排ガスを排気する排気口54に対向する位置に設けられ、かつ、排気口54に連結されている。なお、燃料電池収納室74は、テラス68の壁面の他に、建造物の基礎の壁面などに設けられてもよい。なお、燃料電池収納室74は、例えば建物110の基礎で囲まれる床下空間であってもよい。
【0057】
図9は、建物110の変形例を示す。本変形例における建物110は、内部に燃料電池収納室74が設けられる塀70である。本変形例における塀70の各構成要素のうち、図1の建物110において同一の符号が付された構成要素は、図1の建物110において同一の符号が付された構成要素とそれぞれ同一の機能を有するので説明を省略する。また、建物110は他にも、建造物の壁であってよい。また、壁部材64は、当該建造物の壁、塀70などの、建造物の構造物に用いられる部材であってよい。
【0058】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることができる。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】建物110の一例を示す図である。
【図2】壁部材64の一例を示す図である。
【図3】壁部材64の変形例を示す図である。
【図4】壁部材64の更なる変形例を示す図である。
【図5】貯湯システム100の構成の一例を示す図である。
【図6】貯湯システム100の変形例を示す図である。
【図7】貯湯システム100の更なる変形例を示す図である。
【図8】燃料電池収納室74の配置の他の一例を示す図である。
【図9】建物110の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
40 燃料電池
42 連通口
43 接続配管
44a 第1の貯湯部
44b 第2の貯湯部
46 部分空間
48 貯湯空間
50 制御部
51 ウェザーカバー
52 排気部
53 給気部
54 排気口
55 逆流防止板
56 加温配管
57 加温配管
58 温水加温部
60 断熱材
60a 第1の断熱材
60b 第2の断熱材
62a 第1の側面
62b 第2の側面
64 壁部材
66 連結部材
68 テラス
70 塀
72 腰壁
73 床面
74 燃料電池収納室
82 給湯配管
86 排熱配管
88 排熱配管
98 排熱ポンプ
99 排熱ポンプ
100 貯湯システム
110 建物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁となる壁部材であって、
温水を貯湯する貯湯空間を内部に有し、
前記貯湯空間は、前記壁部材の壁面と略平行な第1の側面と、前記第1の側面に対向する第2の側面とを有し、
前記第1の側面と前記第2の側面とを連結し、かつ前記貯湯空間を複数の部分空間に分割する連結部材
を備える壁部材。
【請求項2】
前記連結部材は、当該連結部材の上方に位置する部分空間の下部と、当該連結部材の下方に位置する部分空間の上部とを連通する連通口を有する請求項2に記載の壁部材。
【請求項3】
前記第1の側面及び前記第2の側面は矩形状であり、
前記連結部材は、前記貯湯空間において前記第1の側面または前記第2の側面の矩形の対角を結ぶ方向に設けられる請求項1に記載の壁部材。
【請求項4】
温水を貯湯する貯湯空間を内部に含む壁を備える建物であって、
前記貯湯空間は、前記壁の壁面と略平行な第1の側面と、前記第1の側面に対向する第2の側面とを有し、
前記壁は、前記第1の側面と前記第2の側面とを連結し、かつ前記貯湯空間を複数の部分空間に分割する連結部材
を有する建物。
【請求項5】
温水を貯湯すべく建物の壁の内部に設けられ、前記壁の壁面と略平行な第1の側面と、前記第1の側面に対向する第2の側面とを有する貯湯空間と
前記第1の側面と前記第2の側面とを連結し、かつ前記貯湯空間を複数の部分空間に分割する連結部材と
を備える貯湯システム。
【請求項6】
前記連結部材は略水平に設けられ、
前記連結部材の上方に位置する部分空間は、前記連結部材の下方に位置する部分空間より高い温度の温水を貯湯する請求項5に記載の貯湯システム。
【請求項7】
前記複数の部分空間のうち、一の部分空間に貯湯される温水を、当該一の部分空間よりも下方に位置する部分空間よりも先に熱源からの熱量を用いて加温し、当該一の部分空間に貯湯される温水を加温した後に、当該一の部分空間よりも下方に位置する部分空間を加温する制御部
を更に備える請求項6に記載の貯湯システム。
【請求項8】
前記複数の部分空間は、燃料電池によって排出される排熱を用いて加温された温水を貯湯する請求項7に記載の貯湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−274748(P2006−274748A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98955(P2005−98955)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【Fターム(参考)】