壁面異常検出装置
【課題】建物の壁面全体の異常をリアルタイムに検出することのできる壁面異常検出装置を提供する。
【解決手段】壁面異常検出装置は、建物の近傍に固定され、建物の壁面をこの壁面に対して水平方向に撮像して建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる撮像画像を生成するカメラ1と、カメラ1により生成された撮像画像に含まれる建物部分の領域と建物以外の部分の領域との境界に基づいて壁面の異常を検出する異常検出部3とを備える。
【解決手段】壁面異常検出装置は、建物の近傍に固定され、建物の壁面をこの壁面に対して水平方向に撮像して建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる撮像画像を生成するカメラ1と、カメラ1により生成された撮像画像に含まれる建物部分の領域と建物以外の部分の領域との境界に基づいて壁面の異常を検出する異常検出部3とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁面の異常を検出する壁面異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンション等の建物の老朽化による壁面の剥離が問題となっている。このような壁面の異常を検出する方法としては、建物の壁面の各部位を叩いて局所的な壁面の異常を検出する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−178905号公報
【特許文献2】特開2003−14711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法は、局所的な壁面の異常を通じて全体を評価するものである。すなわち、壁面全体の異常をリアルタイムに検出することはできなかった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、建物の壁面全体の異常をリアルタイムに検出することのできる壁面異常検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の本発明の壁面異常検出装置は、建物の近傍に固定され、建物の壁面をこの壁面に対して水平方向に撮像して建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる撮像画像を生成するカメラと、前記カメラにより生成された撮像画像に含まれる建物部分の領域と建物以外の部分の領域との境界に基づいて壁面の異常を検出する異常検出部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
第2の本発明の壁面異常検出装置は、前記異常検出部が、前記建物以外の部分の長方形領域のうち前記建物部分の直線領域と接している辺において異物を示す輪郭が存在するかどうかを調べることで壁面の異常を検出することを特徴とする。
【0008】
第3の本発明の壁面異常検出装置は、前記カメラが、下から上に向かって鉛直方向に壁面を撮像することを特徴とする。
【0009】
第4の本発明の壁面異常検出装置は、前記カメラと対向する位置に固定され、前記カメラに向けて光を照射する照明部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る壁面異常検出装置によれば、建物の壁面全体の異常をリアルタイムに検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態における壁面異常検出装置の構成図である。
【図2】第1実施形態におけるカメラの設置状態を示す正面図、側面図、平面図である。
【図3】第1実施形態における画像処理部の処理内容の説明図である。
【図4】第1実施形態における異常検出部の処理内容の説明図である。
【図5】第1実施形態における壁面異常検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態における撮像画像の説明図である。
【図7】第1実施形態におけるカメラの別の設置状態を示す正面図、側面図、平面図である。
【図8】第2実施形態における壁面異常検出装置の構成図である。
【図9】第2実施形態における異常検出部の処理内容の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における壁面異常検出装置の構成図である。この壁面異常検出装置は、図1に示すように、カメラ1と画像処理部2と異常検出部3とを備えている。カメラ1は、建物の近傍に固定され、建物の壁面を撮像して撮像画像を生成する。この撮像画像には、建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる。画像処理部2は、カメラ1により生成された撮像画像に含まれる建物部分の領域と建物以外の部分の領域との境界を抽出する。異常検出部3は、画像処理部2により抽出された境界に基づいて壁面の異常を検出する。
【0014】
図2は、カメラ1の設置状態の説明図である。具体的には、図2(A)は正面図、図2(B)は側面図、図2(C)は平面図である。この図に示すように、カメラ1は、建物10の近傍に固定された状態で、下から上に向かって鉛直方向に建物10の壁面を撮像するように設置されている。
【0015】
ここで、カメラ1により生成された撮像画像のうち、建物外領域(建物以外の部分の領域)は空となる。通常、空は青色や白色を基調とした明るい色で構成されている。一方、カメラ1により生成された撮像画像のうち、対象階領域(異常の検出対象階の部分の領域)は、建物10の壁面における窓枠や壁面端等の水平方向の直線図形成分が重なったものである。これら直線図形成分それぞれは異なる色の直線であったとしても、光の色の性質により重なることで対象階領域は黒色に近づく。また、カメラ1により生成された撮像画像のうち、異物領域(異物の部分の領域)は、カメラ1が異物を逆光で見ることになるので暗灰色や黒色となる。このように、建物外領域は明るい色で、対象階領域や異物領域は暗い色で構成されることになる。
【0016】
図3は、画像処理部2の処理内容の説明図である。図3(A)(B)(C)の順に、カメラ1を設置する位置が建物10に近くなっている。この図からも明らかなように、カメラ1を設置する位置が建物10に近いほど、異常の検出対象階11の部分は、撮像画像Iにおいて単純な幾何学図形である細長い長方形領域(1)となっていく。この細長い長方形領域(1)は、カメラ1を設置する位置が建物10に十分近くなると、図3(C)に示すように、向かい合った長辺が重なって太い直線となる。通常、建物10の壁面には窓枠や壁面端等の水平方向の直線図形成分があるので、この太い直線は単なる領域ではなく可視図形となる。
【0017】
図4は、異常検出部3の処理内容の説明図である。既に説明した通り、カメラ1は、建物10の近傍に固定された状態で、下から上に向かって鉛直方向に建物10の壁面を撮像するように設置されている。これにより、壁面が正常な場合、撮像画像Iは、図4(A)に示すように、長方形の建物外領域E1と、直線の対象階領域E2と、長方形の対象階外領域E3とからなる。一方、何らかの理由で壁面を越えて異物12が存在しているような異常な場合、撮像画像Iは、図4(B)に示すように、対象階領域E2から建物外領域E1に異物12の影が突き出した画像となる特性をもつ。
【0018】
図5は、第1実施形態における壁面異常検出装置の動作を示すフローチャートであり、図6は、この動作時における撮像画像Iの説明図である。以下、図5および図6を用いて、第1実施形態における壁面異常検出装置の構成をその動作とともに説明する。
【0019】
まず、カメラ1は、建物10の壁面を撮像して撮像画像Iを生成し(S11)、図6(A)に示すように、生成した撮像画像Iを画像処理部2に送る。
【0020】
次いで、画像処理部2は、図6(B)に示すように、カメラ1から送られた撮像画像Iを画像処理し、太い直線領域を対象階領域E2として抽出する(S12)。そして、抽出した直線領域を境界とし、あらかじめ決められた側の長方形領域を建物外領域E1として決定する(S13)。ここでは、カメラ1は、下から上に向かって鉛直方向に建物10の壁面を撮像している。従って、この場合は、図6(C)に示すように、撮像画像Iの境界より上側の長方形領域を建物外領域E1として決定することになる。このように建物外領域E1を決定した画像処理部2は、図6(D)に示すように、建物外領域E1である長方形領域のうち対象階領域E2である直線領域と接している辺の部分を抽出して異常検出部3に送る(S14)。
【0021】
次いで、異常検出部3は、画像処理部2から送られた辺の部分の画像に異物12を示す輪郭が存在するかどうかを調べる(S15)。そして、図6(E)に示すように、異物12を示す輪郭が存在しない場合は正常と判断する(S16)。一方、図6(F)に示すように、異物12を示す輪郭が存在する場合は異常と判断する(S17)。なお、異物12を示す輪郭は、何らかの物体の輪郭であればよく、その形状は特に限定されるものではない。
【0022】
以上のように、第1実施形態における壁面異常検出装置によれば、カメラ1により撮影した壁面全体の画像をリアルタイムに画像処理するので、建物10の壁面全体の異常をリアルタイムに検出することができる。従って、異常を検出した場合は、建物10の居住者等にいち早く警報を出して知らせることが可能である。
【0023】
また、建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる撮像画像を生成するようにしているので、画像処理部2による処理は、幾何学図形処理のうちでも単純な直線抽出処理となり、異常検出部3による処理は、画像上の単純な輪郭有無判断処理となる。すなわち、処理が単純化されるので、装置のコストダウンや小型化を図ることが可能である。
【0024】
また、壁面から突き出した任意の物体が検出されるので、建物10の老朽化による壁面の剥離だけでなく、様々な異常を検出することができる。例えば、集合住宅のバルコニー等から過失により落下しそうな物体や、集合住宅のバルコニー等から突出している物体を検出することも可能である。このような物体は、落下した場合に危険であることはもちろん、落下しない場合でも景観上の問題があるため、いち早く検出することが重要である。
【0025】
また、カメラ1を設置すると、居住者がプライバシーを侵害されていると感じる虞があるが、対象階領域E2は太い直線領域となるので、居住者の様子は認識することができない。すなわち、居住者のプライバシーに配慮しつつ壁面の異常を検出することが可能である。
【0026】
また、下から上に向かって鉛直方向に撮像するようにしているので、図5のステップS12やS15の処理は、色判別することなく単純なコントラスト差の検出のみとなる。すなわち、処理が単純化されるので、装置のコストダウンや小型化を図ることが可能である。しかも、カメラ1には、カラーカメラではなく、より安価な白黒カメラを用いることも可能である。
【0027】
なお、前記の説明では、カメラ1は、下から上に向かって鉛直方向に壁面を撮像することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、上から下に向かって鉛直方向に壁面を撮像するように設置することも可能である。また、建物10の形状によっては、鉛直方向ではない他の方向に壁面を撮像するようにしてもよい。すなわち、壁面に対して水平方向に撮像して建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる撮像画像を生成することができれば、建物10の壁面全体の異常をリアルタイムに検出することができる。
【0028】
また、前記の説明では特に言及しなかったが、建物10の上端や下端に壁面から数cmまでカメラ1を近づけて設置することができれば、対象階外領域E3は、カメラ1の位置から2〜3m程度の範囲となる。すなわち、カメラ1の設置階以外の壁面の異常を検出することができるので、中層・高層建築物であれば、ほぼ全壁面の異常を検出することが可能となる。
【0029】
また、前記の説明では特に言及しなかったが、カメラ1のレンズが魚眼レンズ等である場合は、撮像画像全体が円形になる。このような場合でも、図5のステップS14で抽出された画像は長方形近似されるので、前記した画像処理の手法で異常を検出することが可能である。
【0030】
(第2実施形態)
ところで、壁面の異常は夜間に発生することもある。そこで、第2実施形態では、壁面の異常が夜間に発生した場合でも、それを正確に検出することができる構成を採用している。以下、第2実施形態を前記第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0031】
図8は、第2実施形態における壁面異常検出装置の構成図である。この壁面異常検出装置は、図8に示すように、カメラ1と画像処理部2と異常検出部3に加え、照明部4を備えている。照明部4は、カメラ1と対向する位置に固定され、カメラ1に向けて光を照射する。このような照明部4としては各種の照明装置を採用することができるが、タイマーや照明センサ等により自動的に点灯・消灯するものが好ましい。
【0032】
図9は、第2実施形態における異常検出部3の処理内容の説明図である。ここでは、カメラ1は、下から上に向かって鉛直方向に建物10の壁面を撮像するように設置されている。この場合、照明部4は、建物10の上端近傍に固定され、上から下に向かって光を照射するように設置されている。
【0033】
第2実施形態における撮像画像Iも、図9に示すように、長方形の建物外領域E1と、直線の対象階領域E2と、長方形の対象階外領域E3とからなる。ただし、建物外領域E1には、夜本来の暗い部分E1_1と、照明部4や散乱光により照らされた明るい部分E1_2とが存在する。もちろん、暗い部分E1_1と明るい部分E1_2に明確な境はなく、連続的に明るさが変化している。ここで、明るい部分E1_2は、異物12を検出することができる程度に明るくなった領域という意味である。すなわち、第2実施形態でも、カメラ1は異物12を逆光で見ることになるので、異物領域は暗灰色や黒色となり、明るい部分E1_2とのコントラスト差のみで検出することができる。
【0034】
以上のように、第2実施形態における壁面異常検出装置によれば、光を照射する照明部4を備えているので、夜間でも正確に壁面の異常を検出することができる。しかも、照明部4は、建物10の上端近傍に固定され、上から下に向かって鉛直方向に光を照射している。このように照明部4を設置すれば、建物10の中央部13には窓からの拡散光があるので、照明部4の光量が少なくて済むという効果もある。
【0035】
なお、照明部4は、建物10の上端近傍に固定され、上から下に向かって光を照射することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、カメラ1が上から下に向かって鉛直方向に壁面を撮像する場合、照明部4は、建物10の下端近傍に固定され、下から上に向かって光を照射すればよい。すなわち、カメラ1と対向する位置に固定され、カメラ1に向けて光を照射する以上、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 カメラ
3 異常検出部
4 照明部
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁面の異常を検出する壁面異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンション等の建物の老朽化による壁面の剥離が問題となっている。このような壁面の異常を検出する方法としては、建物の壁面の各部位を叩いて局所的な壁面の異常を検出する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−178905号公報
【特許文献2】特開2003−14711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法は、局所的な壁面の異常を通じて全体を評価するものである。すなわち、壁面全体の異常をリアルタイムに検出することはできなかった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、建物の壁面全体の異常をリアルタイムに検出することのできる壁面異常検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の本発明の壁面異常検出装置は、建物の近傍に固定され、建物の壁面をこの壁面に対して水平方向に撮像して建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる撮像画像を生成するカメラと、前記カメラにより生成された撮像画像に含まれる建物部分の領域と建物以外の部分の領域との境界に基づいて壁面の異常を検出する異常検出部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
第2の本発明の壁面異常検出装置は、前記異常検出部が、前記建物以外の部分の長方形領域のうち前記建物部分の直線領域と接している辺において異物を示す輪郭が存在するかどうかを調べることで壁面の異常を検出することを特徴とする。
【0008】
第3の本発明の壁面異常検出装置は、前記カメラが、下から上に向かって鉛直方向に壁面を撮像することを特徴とする。
【0009】
第4の本発明の壁面異常検出装置は、前記カメラと対向する位置に固定され、前記カメラに向けて光を照射する照明部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る壁面異常検出装置によれば、建物の壁面全体の異常をリアルタイムに検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態における壁面異常検出装置の構成図である。
【図2】第1実施形態におけるカメラの設置状態を示す正面図、側面図、平面図である。
【図3】第1実施形態における画像処理部の処理内容の説明図である。
【図4】第1実施形態における異常検出部の処理内容の説明図である。
【図5】第1実施形態における壁面異常検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態における撮像画像の説明図である。
【図7】第1実施形態におけるカメラの別の設置状態を示す正面図、側面図、平面図である。
【図8】第2実施形態における壁面異常検出装置の構成図である。
【図9】第2実施形態における異常検出部の処理内容の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における壁面異常検出装置の構成図である。この壁面異常検出装置は、図1に示すように、カメラ1と画像処理部2と異常検出部3とを備えている。カメラ1は、建物の近傍に固定され、建物の壁面を撮像して撮像画像を生成する。この撮像画像には、建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる。画像処理部2は、カメラ1により生成された撮像画像に含まれる建物部分の領域と建物以外の部分の領域との境界を抽出する。異常検出部3は、画像処理部2により抽出された境界に基づいて壁面の異常を検出する。
【0014】
図2は、カメラ1の設置状態の説明図である。具体的には、図2(A)は正面図、図2(B)は側面図、図2(C)は平面図である。この図に示すように、カメラ1は、建物10の近傍に固定された状態で、下から上に向かって鉛直方向に建物10の壁面を撮像するように設置されている。
【0015】
ここで、カメラ1により生成された撮像画像のうち、建物外領域(建物以外の部分の領域)は空となる。通常、空は青色や白色を基調とした明るい色で構成されている。一方、カメラ1により生成された撮像画像のうち、対象階領域(異常の検出対象階の部分の領域)は、建物10の壁面における窓枠や壁面端等の水平方向の直線図形成分が重なったものである。これら直線図形成分それぞれは異なる色の直線であったとしても、光の色の性質により重なることで対象階領域は黒色に近づく。また、カメラ1により生成された撮像画像のうち、異物領域(異物の部分の領域)は、カメラ1が異物を逆光で見ることになるので暗灰色や黒色となる。このように、建物外領域は明るい色で、対象階領域や異物領域は暗い色で構成されることになる。
【0016】
図3は、画像処理部2の処理内容の説明図である。図3(A)(B)(C)の順に、カメラ1を設置する位置が建物10に近くなっている。この図からも明らかなように、カメラ1を設置する位置が建物10に近いほど、異常の検出対象階11の部分は、撮像画像Iにおいて単純な幾何学図形である細長い長方形領域(1)となっていく。この細長い長方形領域(1)は、カメラ1を設置する位置が建物10に十分近くなると、図3(C)に示すように、向かい合った長辺が重なって太い直線となる。通常、建物10の壁面には窓枠や壁面端等の水平方向の直線図形成分があるので、この太い直線は単なる領域ではなく可視図形となる。
【0017】
図4は、異常検出部3の処理内容の説明図である。既に説明した通り、カメラ1は、建物10の近傍に固定された状態で、下から上に向かって鉛直方向に建物10の壁面を撮像するように設置されている。これにより、壁面が正常な場合、撮像画像Iは、図4(A)に示すように、長方形の建物外領域E1と、直線の対象階領域E2と、長方形の対象階外領域E3とからなる。一方、何らかの理由で壁面を越えて異物12が存在しているような異常な場合、撮像画像Iは、図4(B)に示すように、対象階領域E2から建物外領域E1に異物12の影が突き出した画像となる特性をもつ。
【0018】
図5は、第1実施形態における壁面異常検出装置の動作を示すフローチャートであり、図6は、この動作時における撮像画像Iの説明図である。以下、図5および図6を用いて、第1実施形態における壁面異常検出装置の構成をその動作とともに説明する。
【0019】
まず、カメラ1は、建物10の壁面を撮像して撮像画像Iを生成し(S11)、図6(A)に示すように、生成した撮像画像Iを画像処理部2に送る。
【0020】
次いで、画像処理部2は、図6(B)に示すように、カメラ1から送られた撮像画像Iを画像処理し、太い直線領域を対象階領域E2として抽出する(S12)。そして、抽出した直線領域を境界とし、あらかじめ決められた側の長方形領域を建物外領域E1として決定する(S13)。ここでは、カメラ1は、下から上に向かって鉛直方向に建物10の壁面を撮像している。従って、この場合は、図6(C)に示すように、撮像画像Iの境界より上側の長方形領域を建物外領域E1として決定することになる。このように建物外領域E1を決定した画像処理部2は、図6(D)に示すように、建物外領域E1である長方形領域のうち対象階領域E2である直線領域と接している辺の部分を抽出して異常検出部3に送る(S14)。
【0021】
次いで、異常検出部3は、画像処理部2から送られた辺の部分の画像に異物12を示す輪郭が存在するかどうかを調べる(S15)。そして、図6(E)に示すように、異物12を示す輪郭が存在しない場合は正常と判断する(S16)。一方、図6(F)に示すように、異物12を示す輪郭が存在する場合は異常と判断する(S17)。なお、異物12を示す輪郭は、何らかの物体の輪郭であればよく、その形状は特に限定されるものではない。
【0022】
以上のように、第1実施形態における壁面異常検出装置によれば、カメラ1により撮影した壁面全体の画像をリアルタイムに画像処理するので、建物10の壁面全体の異常をリアルタイムに検出することができる。従って、異常を検出した場合は、建物10の居住者等にいち早く警報を出して知らせることが可能である。
【0023】
また、建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる撮像画像を生成するようにしているので、画像処理部2による処理は、幾何学図形処理のうちでも単純な直線抽出処理となり、異常検出部3による処理は、画像上の単純な輪郭有無判断処理となる。すなわち、処理が単純化されるので、装置のコストダウンや小型化を図ることが可能である。
【0024】
また、壁面から突き出した任意の物体が検出されるので、建物10の老朽化による壁面の剥離だけでなく、様々な異常を検出することができる。例えば、集合住宅のバルコニー等から過失により落下しそうな物体や、集合住宅のバルコニー等から突出している物体を検出することも可能である。このような物体は、落下した場合に危険であることはもちろん、落下しない場合でも景観上の問題があるため、いち早く検出することが重要である。
【0025】
また、カメラ1を設置すると、居住者がプライバシーを侵害されていると感じる虞があるが、対象階領域E2は太い直線領域となるので、居住者の様子は認識することができない。すなわち、居住者のプライバシーに配慮しつつ壁面の異常を検出することが可能である。
【0026】
また、下から上に向かって鉛直方向に撮像するようにしているので、図5のステップS12やS15の処理は、色判別することなく単純なコントラスト差の検出のみとなる。すなわち、処理が単純化されるので、装置のコストダウンや小型化を図ることが可能である。しかも、カメラ1には、カラーカメラではなく、より安価な白黒カメラを用いることも可能である。
【0027】
なお、前記の説明では、カメラ1は、下から上に向かって鉛直方向に壁面を撮像することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、上から下に向かって鉛直方向に壁面を撮像するように設置することも可能である。また、建物10の形状によっては、鉛直方向ではない他の方向に壁面を撮像するようにしてもよい。すなわち、壁面に対して水平方向に撮像して建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる撮像画像を生成することができれば、建物10の壁面全体の異常をリアルタイムに検出することができる。
【0028】
また、前記の説明では特に言及しなかったが、建物10の上端や下端に壁面から数cmまでカメラ1を近づけて設置することができれば、対象階外領域E3は、カメラ1の位置から2〜3m程度の範囲となる。すなわち、カメラ1の設置階以外の壁面の異常を検出することができるので、中層・高層建築物であれば、ほぼ全壁面の異常を検出することが可能となる。
【0029】
また、前記の説明では特に言及しなかったが、カメラ1のレンズが魚眼レンズ等である場合は、撮像画像全体が円形になる。このような場合でも、図5のステップS14で抽出された画像は長方形近似されるので、前記した画像処理の手法で異常を検出することが可能である。
【0030】
(第2実施形態)
ところで、壁面の異常は夜間に発生することもある。そこで、第2実施形態では、壁面の異常が夜間に発生した場合でも、それを正確に検出することができる構成を採用している。以下、第2実施形態を前記第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0031】
図8は、第2実施形態における壁面異常検出装置の構成図である。この壁面異常検出装置は、図8に示すように、カメラ1と画像処理部2と異常検出部3に加え、照明部4を備えている。照明部4は、カメラ1と対向する位置に固定され、カメラ1に向けて光を照射する。このような照明部4としては各種の照明装置を採用することができるが、タイマーや照明センサ等により自動的に点灯・消灯するものが好ましい。
【0032】
図9は、第2実施形態における異常検出部3の処理内容の説明図である。ここでは、カメラ1は、下から上に向かって鉛直方向に建物10の壁面を撮像するように設置されている。この場合、照明部4は、建物10の上端近傍に固定され、上から下に向かって光を照射するように設置されている。
【0033】
第2実施形態における撮像画像Iも、図9に示すように、長方形の建物外領域E1と、直線の対象階領域E2と、長方形の対象階外領域E3とからなる。ただし、建物外領域E1には、夜本来の暗い部分E1_1と、照明部4や散乱光により照らされた明るい部分E1_2とが存在する。もちろん、暗い部分E1_1と明るい部分E1_2に明確な境はなく、連続的に明るさが変化している。ここで、明るい部分E1_2は、異物12を検出することができる程度に明るくなった領域という意味である。すなわち、第2実施形態でも、カメラ1は異物12を逆光で見ることになるので、異物領域は暗灰色や黒色となり、明るい部分E1_2とのコントラスト差のみで検出することができる。
【0034】
以上のように、第2実施形態における壁面異常検出装置によれば、光を照射する照明部4を備えているので、夜間でも正確に壁面の異常を検出することができる。しかも、照明部4は、建物10の上端近傍に固定され、上から下に向かって鉛直方向に光を照射している。このように照明部4を設置すれば、建物10の中央部13には窓からの拡散光があるので、照明部4の光量が少なくて済むという効果もある。
【0035】
なお、照明部4は、建物10の上端近傍に固定され、上から下に向かって光を照射することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、カメラ1が上から下に向かって鉛直方向に壁面を撮像する場合、照明部4は、建物10の下端近傍に固定され、下から上に向かって光を照射すればよい。すなわち、カメラ1と対向する位置に固定され、カメラ1に向けて光を照射する以上、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 カメラ
3 異常検出部
4 照明部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の近傍に固定され、建物の壁面をこの壁面に対して水平方向に撮像して建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる撮像画像を生成するカメラと、
前記カメラにより生成された撮像画像に含まれる建物部分の領域と建物以外の部分の領域との境界に基づいて壁面の異常を検出する異常検出部と、
を備えたことを特徴とする壁面異常検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の壁面異常検出装置において、
前記異常検出部は、前記建物以外の部分の長方形領域のうち前記建物部分の直線領域と接している辺において異物を示す輪郭が存在するかどうかを調べることで壁面の異常を検出する
ことを特徴とする壁面異常検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の壁面異常検出装置において、
前記カメラは、下から上に向かって鉛直方向に壁面を撮像する
ことを特徴とする壁面異常検出装置。
【請求項4】
請求項1記載の壁面異常検出装置において、
前記カメラと対向する位置に固定され、前記カメラに向けて光を照射する照明部を備えた
ことを特徴とする壁面異常検出装置。
【請求項1】
建物の近傍に固定され、建物の壁面をこの壁面に対して水平方向に撮像して建物部分の領域および建物以外の部分の領域が含まれる撮像画像を生成するカメラと、
前記カメラにより生成された撮像画像に含まれる建物部分の領域と建物以外の部分の領域との境界に基づいて壁面の異常を検出する異常検出部と、
を備えたことを特徴とする壁面異常検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の壁面異常検出装置において、
前記異常検出部は、前記建物以外の部分の長方形領域のうち前記建物部分の直線領域と接している辺において異物を示す輪郭が存在するかどうかを調べることで壁面の異常を検出する
ことを特徴とする壁面異常検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の壁面異常検出装置において、
前記カメラは、下から上に向かって鉛直方向に壁面を撮像する
ことを特徴とする壁面異常検出装置。
【請求項4】
請求項1記載の壁面異常検出装置において、
前記カメラと対向する位置に固定され、前記カメラに向けて光を照射する照明部を備えた
ことを特徴とする壁面異常検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−203041(P2011−203041A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69455(P2010−69455)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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