説明

壁面養生板の支持方法並びに支持装置

【課題】壁面養生板の支持方法及び支持装置であって、テープ跡が残らず、しかも従来のスタンド台のようにスペースの制約がなく、手狭なスペースでも簡単かつ迅速に養生板を施工できる壁面養生板の支持方法並びに支持装置を提供する。
【解決手段】養生板50の支持装置10,100は、屈曲可能な長尺バネ材20,20Aと、長尺バネ材20,20Aの両端部に取り付けられるホルダ30とから構成される。壁面41,43,45に養生板50を立て掛け、長尺バネ材20をアーチ状に屈曲操作した状態で両端部のホルダ30を養生板50に固着することで、長尺バネ材20,20Aが元の形状に復帰する際の反発力がホルダ30に作用し、養生板50が壁面41,43,45に押し付けられるため、壁面41,43,45に対して養生板50を簡単かつ手際良く施工することができ、テープ跡が残らず、しかもスペースや設置箇所の制限がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具等の引越し荷物を運搬する際に、家屋内の壁面を予め養生するために使用する壁面養生板の支持方法並びに支持装置に関するもので、特に、壁面の確実な保護を図るとともに、施工スペースに制約がなく、簡単かつ迅速に養生板の施工が行なえる壁面養生板の支持方法並びに支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、引越し業者等では、荷物を運搬する際に、家屋内の壁面を保護してその傷付きを防止するために、図14に示されるように、壁面1の表面に養生板2を立て掛けると共に、その上縁部と壁面1もしくは下縁部と床面4とに跨るようにして粘着テープ3を貼り付け、養生板2を壁面1及び床面5に固定する、と言った養生板の支持方法が採用されている。
【0003】
しかし、粘着テープ3は使い捨てであるため、テープ代が嵩むとともに、粘着テープ3を貼付した箇所には粘着剤が付着するため、保護すべき壁面1にテープ跡が残るという欠点があった。そのため、最近では、壁面に立て掛けた養生板を複数のL字状のスタンド台で支持するという養生板の支持方法が試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
同方法を室内壁に適用した例が図15に示されている。同図において、室内の壁面1aの表面に立て掛けられた養生板2,2・・・は、その前面側に配置された複数のL字状のスタンド台5,5,・・・によって支持される。
【0005】
同方法を廊下を挟んで対向する壁面に適用した例が図16に示されている。同図に示されるように、廊下6を挟んで対向する壁面1b,1bには、養生板2,2が立て掛けられ、それらの前面側に配置された複数のL字状のスタンド台5,5により支持される。
【0006】
同方法を廊下突き当たり壁に適用した例が図17に示されている。同図に示されるように、廊下6を挟んで対向する壁面1b,1bには、養生板2,2が立て掛けられ、同様にして、突き当たり壁1cにも養生板2が立て掛けられ、それらの前面側に配置された複数のL字状のスタンド台5,5により支持される。
【特許文献1】特開2000−213084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の養生板2の支持方法においては、粘着テープ3を使用する方法では、テープ代が嵩み、かつ壁面1にテープ跡が残るという問題点があるとともに、スタンド台5を使用する方法では、スタンド台5が廊下5側に出っ張るため、有効スペース(図16,17中に符号Lで示す)が制限され、荷物類の運搬に支障を来すという欠点が指摘されている。
【0008】
更に、スタンド台5を使用する養生板2の支持方法にあっては、フロア面が傾斜面である場合や、階段等、スタンド台5を設置するスペースが確保できない場合には、養生板2を施工することができず、養生板2の施工箇所に制約を受けるという欠点が指摘されている。
【0009】
この発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、壁面にテープ跡等が残らず、壁面を確実に保護することができ、しかもスタンド台のように設置スペースに制約を受けることもなく、階段の両側壁面や狭いスペース、あるいは傾斜フロア面等、どのような壁面であっても手際良く養生板を施工できる壁面養生板の支持方法並びに支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の養生板の支持方法は、湾曲させた状態にある長尺バネ材の両端部を、対向又は交叉する壁面のそれぞれに立て掛けられた2枚の養生板のそれぞれの適所に固定し、湾曲させた長尺バネ材の反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面に押し付けて支持することを特徴とするものである。
【0011】
このような構成によれば、湾曲させた長尺バネ材の反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面に押し付けて支持すると言う構成であるから、長尺バネ材の全長やバネ力を適切に設定しさえすれば、各養生板と壁面や床面とを粘着テープ等で固定せずとも、各養生板をその背後に位置する壁面に対して確実に固定することができる。
【0012】
加えて、長尺バネ材と養生板との固定箇所は養生板上の任意の高さ位置に設定可能であると共に、湾曲カーブの空間的な向き乃至姿勢を適切に設定することにより作業者の通過域を十分に確保できるから、床面上に荷物運搬の邪魔となる障害物が出現することもなくなり、引っ越し時の荷物運搬作業を阻害することがない。
【0013】
しかも、養生板を支持するための道具としては、基本的には長尺バネ材だけで済むため、復帰状態乃至復元状態において直線状乃至弓状の形態を有するものを採用すれば、多数を束ねても嵩張って場所を取ることもなく、運搬や収納にも便利である。
【0014】
なお、長尺バネ材と養生板との固定手段としては、簡易的には粘着テープを使用することもできるし、後述するように、ホルダを介して簡単に着脱自在としてもよい。
【0015】
好ましい実施の形態にあっては、本発明の養生板の支持方法は、天井側へと湾曲させた状態にある長尺バネ材の両端部を、廊下を挟んで対向する2つの壁面に立て掛けられた2枚の養生板の適所に固定することにより、天井側へ湾曲させた状態にある長尺バネ材の反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面に押し付けて支持するようにしてもよい。
【0016】
このような構成によれば、湾曲された長尺バネ材は、廊下を挟んで相対峙する壁と壁との間にアーチ状に架け渡されることとなるため、この天井に向けて屈曲された湾曲カーブの下にあって、引っ越し作業に際する作業者や家具等の移動をスムーズに行わせることができる。
【0017】
なお、この場合、真上のみならず斜め上に長尺バネ材を湾曲させることにより、長尺バネ材の長さと各家屋の天井までの高さとのバラツキを適当に吸収することができ、養生材支持具としての長尺バネ材は定尺もので済むこととなる。
【0018】
好ましい実施の形態にあっては、本発明の養生板の支持方法は、廊下突き当たり壁に立て掛けられた養生板側へと略水平面内で湾曲させた長尺バネ材の両端部を、廊下を挟んで対向する2つの壁面に立て掛けられた2枚の養生板の適所に固定することにより、湾曲させた状態にある長尺バネ材の元の形状に戻ろうとする反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面に押し付けて支持するようにしてもよい。
【0019】
このような構成によれば、湾曲された長尺バネ材は、廊下を挟んで相対峙する壁と壁とを支点として廊下突き当たり壁側へと湾曲されるため、対向する一対の壁に立て掛けられた養生板のみならず、対向する相手方の存在しない突き当たり壁に立て掛けられた養生板についても、確実に支持することができる。
【0020】
好ましい他の実施の形態にあっては、本発明の養生板の支持方法は、湾曲させた状態にある長尺バネ材の両端部を、階段の各ステップを挟んで対向する2つの壁面に立て掛けられた2枚の養生板のそれぞれの適所に、階段天井までの距離に応じた仰角を持たせて固定することにより、湾曲された長尺バネ材の反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面に押し付けて支持するようにしてもよい。
【0021】
このような構成によれば、階段の各ステップの左右に立て掛けられる養生板は、その下端部がステップの上に位置するため、養生板自体も階段の各ステップに併せて階段状に段差が生ずる一方、一般家屋の階段の天井は一定高さであるから、各ステップ毎に天井までの距離が異なることとなるのであるが、支持具を構成する長尺バネ材の長さは一定であっても、上向き湾曲の仰角を各ステップ毎に変更することにより、上述の天井までの距離の差を吸収して、定尺の長尺バネ材によっても、階段の全てのステップ両側の養生板についての支持固定が可能となるのである。
【0022】
好ましい実施の形態にあっては、本発明の養生板の支持方法は、2つの壁面が交叉するコーナー側へと湾曲させた状態にある長尺バネ材の両端部を、コーナーを介して隣接する2つの壁面に立て掛けられた2枚の養生板のそれぞれの適所に固定することにより、コーナー側へと湾曲された長尺バネ材の反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面に押し付けて支持するようにしてもよい。
【0023】
このような構成によれば、相対向する相手方の壁が存在しない場合にあっても、コーナーを介して隣接する隣の壁との間に略水平方向へと湾曲された長尺バネ材を架け渡すことにより、当該行き止まりの壁に立て掛けた養生板をその背後の壁に押し付けて確実に支持することができる。この場合、長尺バネ材を湾曲させてなる湾曲カーブは、2つの壁が交差するコーナー部に向けて湾曲することとなるが、こうして出現する湾曲カーブはコーナーに添って這うものであるから、廊下通路の邪魔になることはなく、引っ越し作業に支障を来すことはない。
【0024】
好ましい他の実施の形態にあっては、本発明の養生板の支持方法は、長尺バネ材の両端部にはホルダが取り付けられており、このホルダを介して長尺バネ材の両端部は養生板に固定されるようにしてもよい。
【0025】
このような構成によれば、長尺バネ材の両端部はホルダにより保持されることとなる一方、ホルダ自体に着脱可能な固定機構を組み込むことにより、粘着テープ等の簡易固定手段に頼ることなく、長尺バネ材と養生板との固定が可能となるのである。
【0026】
一方、本発明の養生板の支持装置は、家屋内の壁面を養生する養生板を支持するものであって、湾曲させることが可能な長尺バネ材と、この長尺バネ材の両端部に取り付けられ、養生板に固定するためのホルダとから構成されていることを特徴とするものである。
【0027】
このような構成によれば、湾曲させた状態にある長尺バネ材の両端部を、対向又は交叉する壁面のそれぞれに立て掛けられた2枚の養生板のそれぞれの適所にホルダを介して固定し、湾曲させた長尺バネ材の反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面にホルダを介して押し付けて支持することができる。このとき、長尺バネ材の両端部はホルダにより保持されることとなる一方、ホルダ自体に着脱可能な固定機構を組み込むことにより、粘着テープ等の簡易固定手段に頼ることなく、長尺バネ材と養生板との固定が可能となるのである。
【0028】
好ましい実施の形態にあっては、本発明の養生板の支持装置は、前記ホルダの固定機構としては吸着盤が使用され、この吸着盤が固定されるべき養生板の吸着箇所は非通気性面とされていてもよい。
【0029】
このような構成によれば、吸着盤(吸盤)と対向する相手方が非通気性面となっているため、吸着盤内の真空状態乃至負圧状態は長期に亘り永続することとなり、これによりホルダを養生板に対して確実に固定することができる一方、吸着盤の周縁部をめくり上げる等の操作で吸着盤内の負圧状態を解消することで、簡単に離脱させることもできる。
【0030】
「非通気性面」としては、樹脂フィルムの貼付、樹脂の塗布等で容易に実現することができ、しかも比較的に広い面積を非通気性面とすれば、固定箇所に関する冗長性を持たせることもできる。なお、ホルダと養生板との間には、水平にずらそうとする力は作用しても、それらを引き離そうとする力は殆ど作用しないから、吸着盤としては必ずしも強力な吸着力は必要とされない。
【0031】
好ましい他の実施の形態にあっては、本発明の養生板の支持装置は、前記ホルダの固定機構としてはマグネットが使用され、このマグネットが固定されるべき養生板の吸着箇所は磁性面とされていてもよい。
【0032】
このような構成によれば、マグネットの磁力を適切に設定することで、ホルダを養生板に対して確実に固定することができる一方、マグネットの周縁部をめくり上げる等の操作で、磁気吸引力を低減させ簡単に離脱させることもできる。
【0033】
「磁性面」としては、磁性体(鉄等)である金属薄板を貼り付けたり、磁性粉末の混入されたゴム板を張り付けたりする等により容易に実現することができ、しかも比較的に広い面積を磁性面とすれば、固定箇所に関する冗長性を持たせることもできる。なお、ホルダと養生板との間には、水平にずらそうとする力は作用しても、それらを引き離そうとする力は殆ど作用しないから、マグネットとしては必ずしも強力な吸引力は必要とされない。
【0034】
好ましい他の実施の形態にあっては、前記ホルダの固定機構としては面ファスナーが使用され、ホルダと養生板とが固定されるべき対向面のそれぞれには、雄側面ファスナーと雌側面ファスナーとが相互に係着可能に設けられていてもよい。
【0035】
このような構成によれば、面ファスナー作用を介して、ホルダを養生板に対して確実に固定すると共に、適当な力で簡単に引き離すことができる。このとき、比較的に広い面積を磁性面とすれば、固定箇所に関する冗長性を持たせることもできる。なお、ホルダと養生板との間には、水平にずらそうとする力は作用しても、それらを引き離そうとする力は殆ど作用しないから、面ファスナーとしては必ずしも強力な吸着力は必要とされない。
【0036】
好ましい他の実施の形態にあっては、前記ホルダは、長尺バネ材に対して取付ベースを介して取り付けられており、この取付ベースは、長尺バネ材の軸方向に沿ってスライド自在で、かつ所定位置でロック可能とされていてもよい。
【0037】
このような構成によれば、養生板上の固定箇所と天井高さ等との距離に併せて、長尺バネ材の長さ調整が可能となり、引っ越し業者等のように、構造の異なる様々な家屋に関する壁養生を必要とする業者に便利な道具となる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明した通り、本発明に係る壁面養生板の支持方法並びに支持装置は、屈曲可能な長尺バネ材からなる支持装置を使用して、長尺バネ材をアーチ状に屈曲操作して、その両端を養生板に固着し、長尺バネ材が原型に復帰しようとする反発力を養生板に加えて、長尺バネ材の反発力を壁面への押圧力に転嫁させるというものであるから、従来の粘着テープ方式による養生方法に比べ、壁面にテープ跡が残るという不具合がなく、保護すべき壁面を確実に保護することができる。また、スタンド台による養生方法に比べ、設置箇所に制約を受けることがなく、屋内のあらゆる壁面を対象として、手際良く養生板を施工することができ、施工作業を円滑に行なうことができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明に係る壁面養生板の支持方法並びに支持装置の好適な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を示すに過ぎない。
【実施例1】
【0040】
図1乃至図7は本発明の第1実施例を示すもので、図1は本発明方法に使用する壁面養生板の支持装置の構成説明図、図2は同支持装置を使用して養生板を支持する方法の原理を示す説明図、図3は養生板と支持装置のホルダの作用を示す説明図、図4は家屋内の廊下を挟んだ壁面に養生板を養生した状態を示す説明図、図5は同支持装置におけるホルダの変形例の構成を示す説明図、図6,図7は同支持装置におけるホルダの他の変形例を示す説明図である。
【0041】
図1に示されるように、本発明方法に使用する支持装置10は、屈曲可能な長尺バネ材20の両端部(図では、両端近傍)に、長尺バネ材20を保持するホルダ30を取り付けて構成されている。なお、この例では、長尺バネ材20の原型は、直線状乃至弓形状とされており、湾曲状態から開放されると元の形状に復帰するようになっている。
【0042】
長尺バネ材20としては、この例では、例えば断面円形又は多角形状のバネ性長尺ロッド(例えば、直径3mm〜7mm程度、好ましくは5mm程度のグラスファイバロッド等)が使用されている。もっとも、長尺バネ材20としては、アーチ状に屈曲操作した際に、両端部が原型に復帰しようとする適度の反発力が生ずる構造のものであればよく、素材及び構造は特に限定されない。
【0043】
ホルダ30は、この例にあっては、バネ材20を挿通させるシリンダ状の取付ベース32と、この取付ベース32に取り付けられた吸着盤31とから構成されている。吸着盤31は、この例にあっては、軟質塩ビ、サーモプラスチックエラストマー等の軟質樹脂を素材とし、射出成形等により所要形状(例えば、腕状乃至漏斗状)に成形したものが使用されている。
【0044】
図1に示す支持装置を使用した壁面養生板の支持方法を示す原理図が図2に示されている。同図に示されるように、廊下の床面40の左側及び右側に位置する互いに対向する壁面41,41を養生する場合、対向する壁面41,41のそれぞれに添わせて養生板50,50を立て掛ける。
【0045】
しかるのち、支持装置10における長尺バネ材20を天井面42に向けてアーチ状に湾曲乃至屈曲させて、長尺バネ材20の両端近傍に取り付けられたホルダ30を養生板50の適所(この例では上端部)に宛う。
【0046】
すると、図2中矢印方向に示す長尺バネ材20の反発力が作用して、養生板50の上端部はホルダ30を介して壁面41に強固に押し付けられ、これにより養生板50はその背後に位置する壁面41,41にしっかりと支持され、倒れかかることはなくなる。同時に、吸着盤31の真空吸着作用を介して、ホルダ30は養生板50に対してしっかりと固定され、垂直方向へとずれることはなくなる。
【0047】
この実施例では、養生板50としては、軽量で取扱性に優れ、かつパネル形状を維持できる程度の剛性を有する発泡樹脂板(ポリエチレン発泡樹脂板)が使用されている。もっとも、養生板50としては、合成樹脂板やベニヤ板を使用することもできる。
【0048】
吸着盤31を養生板50に確実に固着させるためには、養生板50の表面に樹脂フィルムを貼付する等して、図3に示されるように、非通気性面51を形成することが好ましい。この非通気性面51に対して吸着盤31を図3中矢印で示されるように押圧すれば、吸着盤31とシール面51との間の気密性が良好であるから、吸着盤31を長期間に亘り養生板50に真空吸着作用を介して確実に固定させることができる。このとき、養生板50上の非通気性面51のエリアを大きく取れば、ホルダ30の固定ポイントに冗長性を付与することができる。
【0049】
図1に示す支持装置を使用した養生板の施工例を示す説明図が図4に示されている。同図に示されるように、この施工例にあっては、廊下の床面40を挟んだ両側の壁面41,41には、複数枚(図示例では3枚)の養生板50,50,50が隣接して立て掛けられており、それらの養生板50,50,50は3本の支持装置10,10,10を使用して固定されている。尚、図4では、非通気性面51の図示は省略されている。
【0050】
図から明らかなように、この施工例によれば、床面40には何ら障害となる台座等は存在しないことに加え、支持装置10を構成する長尺バネ材20についても天井面に届くように大きくアーチ状に屈曲乃至湾曲されているので、廊下等の床面40の幅並びに天井面の高さを最大限有効に利用することができ、引っ越し作業における大型荷物の移動等を円滑に行うことができる。
【0051】
このように、本実施例における養生板50の支持方法によれば、従来の粘着テープによる養生方法に比べ、テープ代並びに使用済みのテープの廃棄コストが嵩んだりすることがなく、また、粘着テープの使用跡が壁面に残ることもないので、壁面のテープ跡を洗浄する手間が省けるとともに、スタンド台を使用する養生方法に比べ、長尺バネ材を屈曲操作して、ホルダ30を養生板50に固定するだけで簡単に養生板50の施工が完了するため、スペースの制約を受けたり、また、スタンド台の搬送や収容に手間取ることがなく、施工作業を簡単かつ迅速に行なうことができる。
【0052】
図1に示す支持装置におけるホルダの詳細構成を示す説明図が図5に示されている。この例にあっては、天井の高さや廊下の幅の大小に対応して、長尺バネ材20に対するホルダ30の取付位置を変更可能としている。
【0053】
すなわち、図5(a)に示されるように、吸着盤31を支持する取付ベース32は長尺バネ材20が挿通されるシリンダ状に形成され、かつ図5(b)に示されるように、ヒンジ部32aを支点として口開き可能に構成されており、口開き状態では、長尺バネ材20に対して図5(a)中矢印方向にスライド自在であり、図5(c)に示すように、取付ベース32の開口縁に設けたロック片33aと受け溝33bとを係合させることにより、所望の位置で長尺バネ材20に対してロック可能になされている。
【0054】
尚、ロック構造としては、上述した構成以外にも、例えば、長尺バネ材20と取付ベース32との間でラチェット構造を採用することもできる。また、取付ベース32のロック機能を強化するには、取付ベース32の材質として、硬質樹脂を使用するのが好ましい。その場合には、軟質樹脂からなる吸着盤31と、硬質樹脂からなる取付ベース32とを2色成形により一体成形すれば良い。
【0055】
図1に示す支持装置におけるホルダの変形例を示す説明図が図6に示されている。同図に示されるように、長尺バネ材20の両端部に取り付けるホルダ30として、マグネット板34を取り付け、このマグネット板34に対して養生板50の表面所定位置に磁性体である金属面52を設置することで、磁性吸引力により長尺バネ材20の両端部に取り付けたホルダ30を養生板50に固着させることもできる。この場合も、金属面52のエリアを大きめに設定すれば、ホルダ30の固着ポイントも拡大でき、養生板50の施工作業も円滑に行なえる。
【0056】
図1に示す支持装置におけるホルダの他の変形例を示す説明図が図7に示されている。同図に示されるように、この例にあっては、長尺バネ材20の両端部に取り付けられるホルダ30を雌側パイル35で構成するとともに、養生板50側は雄側パイル53で構成し、雌側パイル35と雄側パイル53との間の係着作用、すなわち、面ファスナー作用により、ホルダ30を養生板50に係脱自在に固着するようにしいる。
【実施例2】
【0057】
図8乃至図10は本発明の第2実施例を示すもので、図8は第2実施例における壁面養生板の支持装置10を示す外観図、図9はコーナー部を介して隣接する壁面同士を養生する説明図、図10は壁面を養生する養生板の使用形態を示す説明図である。
【0058】
図8に示す壁面養生板の支持装置100は、屈曲可能な薄板状の長尺バネ材20Aと、その両端部に固定されるホルダ30とから構成されている。すなわち、第1実施例では、ロッド状の長尺バネ材20を使用したが、この第2実施例では、薄板状の長尺バネ材20Aを使用している。従って、ホルダ30の構成についても、偏平板状の長尺バネ材20Aに対応して吸着盤31の取付ベース32が直方体状に設定されている。
【0059】
図8に示す支持装置を使用した壁面養生板の支持方法を示す説明図が図9に示されている。同図に示されるように、廊下のの突き当たりポイントの壁面43Aとそれに隣接する壁面43B,43Cの3面を養生する場合、それらの3面のそれぞれに養生板50を立て掛ける。しかるのち、それらの養生板50,50,50を支持装置100を使用して固定する。
【0060】
すなわち、この第2実施例においても、支持装置100における長尺バネ材20Aを水平方向に突き当たり壁(43A)に向けてアーチ状に湾曲操作して、各壁面43A,43B,43Cのうち、43Bと43Cの2面に立て掛けた養生板50にホルダ30を図10に示すように固着して、養生板50を支持固定する。この時、長尺バネ材20Aからの反発力が図9で示すように、3方向に加わる。特に、ホルダ30には、長尺バネ材20Aの復帰力が作用するとともに、薄肉状に設定された長尺バネ材20Aが中央の壁面(突き当たり壁)43Aに立て掛けた養生板50に広い当接面積で接触して保持するため、ロッド状の長尺バネ材20に比べ薄板状の長尺バネ材20Aを使用したほうが廊下突き当たりの壁面43Aに立て掛けた養生板50を保持する効果がより大きい。
【実施例3】
【0061】
図11,図12は本発明の第3実施例を示すもので、階段の両側壁面を養生する形態が示されており、図11は階段養生の原理図、図12は階段養生時の状態を示す説明図である。この第3実施例で使用する支持装置10は、第1実施例と同一のものを使用するため、支持装置10の構成についてはここでは省略する。
【0062】
図11に示す原理図のように、階段44の各ステップ44A,44B,44C,44Dをフロア面として、これらのフロア面の上に、養生板50A,50B,50C,50Dが階段44の両側壁面45に立て掛けられる。
【0063】
この時、各養生板50A,50B,50C,50Dの高さ位置が相違するため、ホルダ30の設置高さ位置を可変させる必要があるが、天井面42との間のスペースに応じて、図示するように長尺バネ材20の取付姿勢(仰角)を適宜選択することで、ホルダ30の固着高さを変更することができる。
【0064】
また、本発明に係る支持装置10は、図12に示すように、狭いスペースに設けられた階段44の両側壁面45,45を養生するのにより有効である。この場合、支持装置10の屈曲姿勢は、第1実施例と第2実施例を併用している。すなわち、天井面42に向けて長尺バネ材20を屈曲操作するものや、水平方向に長尺バネ材20を屈曲操作するもの等、手狭なスペースに応じて支持装置10の取付姿勢を適切に選択することで、簡単かつ確実な養生板施工が可能となる。
【0065】
また、特に、図12に示される例にあっては、符号10Aに示されるように、2つの壁面が交叉するコーナー側へと湾曲させた状態にある長尺バネ材の両端部を、コーナーを介して隣接する2つの壁面に立て掛けられた2枚の養生板50d,50eのそれぞれの適所に固定することにより、コーナー側へと湾曲された長尺バネ材10Aの元の形状に戻ろうとする反発力により、各養生板のそれぞれ50d,50eをその背後に位置する壁面に押し付けて支持する壁面養生板の支持方法も示されている。
【0066】
なお、以上の実施例では、廊下の両側壁面41を養生する養生板50並びに階段44の両側壁面45を養生する養生板50を支持するために、ロッド状の長尺バネ材20からなる支持装置10を使用し、廊下の突き当たり等の壁面43A,43B,43Cを養生するために薄板状の長尺バネ材20Aからなる支持装置100を使用したが、支持装置10,100を交換して、各壁面41,43,45を養生することも可能である。また、薄板状の長尺バネ材20Aにホルダ30をスライド自在に取り付ける構成を採用することもできる。
【0067】
また、以上の実施例では、廊下を挟む両側壁面41、廊下の突き当たりの壁面43、階段の両側壁面45について説明したが、本発明方法の使用形態としては、玄関戸口やコーナー柱等、家屋内の壁面全般に適用することができる。
【0068】
さらに、以上の実施例では、長尺バネ材20として、ロッド状及び薄肉板状のものを示したが、長尺バネ材20とてしは、より幅広の薄板状乃至短冊状のもの、複数本のロッドを平行に束ねたもの、等々様々な構成を採用することができる。
【0069】
なお、以上の実施例では、長尺バネ材20の両端部に取り付られたホルダ30を介して、長尺バネ材20の両端部を養生板50の適所に固着したが、簡易的な方法としては、ホルダ30を取り付けることなく、図13に示されるように、ガムテープ等の着脱可能な粘着テープ60により、長尺バネ材20の両端部を養生板50の適所に直に固着してもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明方法は、屈曲可能な長尺バネ材からなる支持装置を使用して、長尺バネ材をアーチ状に湾曲操作して、その両端部を養生板に固着し、長尺バネ材が原型に復帰しようとする反発力を養生板に加えて、長尺バネ材の反発力を壁面への押圧力に転嫁させるというものであるから、従来の粘着テープ方式による養生方法に比べ、壁面にテープ跡が残るという不具合がなく、保護すべき壁面を確実に保護することができる。また、スタンド台による養生方法に比べ、設置箇所に制約を受けることがなく、屋内のあらゆる壁面を対象として、手際良く養生板を施工することができ、施工作業を円滑に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る壁面養生板の支持装置における第1実施例の構成を示す側面図である。
【図2】図1に示す支持装置を使用した壁面養生板の支持方法を示す原理図である。
【図3】図1に示す支持装置を使用した壁面養生板の支持方法を示す説明図である。
【図4】図1に示す支持装置を使用した養生板の施工例を示す説明図である。
【図5】図1に示す支持装置におけるホルダの構成を示す(a)側面図、(b)アンロック時の断面図、(c)ロック時の断面図である。
【図6】図1に示す支持装置におけるホルダの変形例を示す説明図である。
【図7】図1に示す支持装置におけるホルダの変形例を示す説明図である。
【図8】本発明に係る壁面養生板の支持装置の第2実施例の構成を示す斜視図である。
【図9】図8に示す支持装置による養生板の支持方法を示す説明図である。
【図10】図8に示す支持装置を使用した養生板の施工例を示す説明図である。
【図11】本発明に係る支持装置を使用して階段の両側壁面を養生する壁面養生板の支持方法を示す原理図である。
【図12】本発明に係る支持装置を使用して階段の両側壁面を養生する養生板の施工例を示す説明図である。
【図13】図1に示す支持装置を使用した養生板の他の施工例を示す説明図である。
【図14】従来の粘着テープによる壁面養生方法を示す説明図である。
【図15】スタンド台を使用した養生板の支持方法の従来例を示す説明図である。
【図16】従来のスタンド台を使用した養生板の支持方法を示す説明図である。
【図17】従来のスタンド台を使用した養生板の支持方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0072】
10,100 支持装置
20,20A 長尺バネ材
30 ホルダ
31 吸着盤
32 取付ベース
33a ロック片
33b 受け溝
34 マグネット板
35 雌側パイル
40 床面
41 壁面
42 天井面
43 壁面
44 階段
45 壁面
50 養生板
51 非通気性シール面
52 金属シール面
53 雄側パイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲させた状態にある長尺バネ材の両端部を、対向又は交差する壁面のそれぞれに立て掛けられた2枚の養生板のそれぞれの適所に固定し、湾曲させた長尺バネ材の元の形状に戻ろうとする反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面に押し付けて支持することを特徴とする壁面養生板の支持方法。
【請求項2】
天井側へと湾曲させた状態にある長尺バネ材の両端部を、廊下を挟んで対向する2つの壁面に立て掛けられた2枚の養生板の適所に固定することにより、天井側へ湾曲させた状態にある長尺バネ材の元の形状に戻ろうとする反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面に押し付けて支持することを特徴とする請求項1に記載の壁面養生板の支持方法。
【請求項3】
廊下突き当たり壁に立て掛けられた養生板側へと略水平面内で湾曲させた長尺バネ材の両端部を、廊下を挟んで対向する2つの壁面に立て掛けられた2枚の養生板の適所に固定することにより、湾曲させた状態にある長尺バネ材の元の形状に戻ろうとする反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面に押し付けて支持することを特徴とする請求項1に記載の壁面養生板の支持方法。
【請求項4】
湾曲させた状態にある長尺バネ材の両端部を、階段の各ステップを挟んで対向する2つの壁面に立て掛けられた2枚の養生板のそれぞれの適所に、階段天井までの距離に応じた仰角を持たせて固定することにより、湾曲された長尺バネ材の元の形状に戻ろうとする反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面に押し付けて支持することを特徴とする請求項1に記載の壁面養生板の支持方法。
【請求項5】
2つの壁面が交叉するコーナー側へと湾曲させた状態にある長尺バネ材の両端部を、コーナーを介して隣接する2つの壁面に立て掛けられた2枚の養生板のそれぞれの適所に固定することにより、コーナー側へと湾曲された長尺バネ材の元の形状に戻ろうとする反発力により、各養生板のそれぞれをその背後に位置する壁面に押し付けて支持することを特徴とする請求項1に記載の壁面養生板の支持方法。
【請求項6】
長尺バネ材の両端部にはホルダが取り付けられており、このホルダを介して長尺バネ材の両端部は養生板に固定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の壁面養生板の支持方法。
【請求項7】
家屋内の壁面を養生する養生板を支持する養生板の支持装置であって、湾曲させることが可能な長尺バネ材と、この長尺バネ材の両端部に取り付けられ、養生板への固定手段を有するホルダとから構成されていることを特徴とする壁面養生板の支持装置。
【請求項8】
前記ホルダの固定手段としては吸着盤が使用され、この吸着盤が固定されるべき養生板の吸着箇所は非通気性面とされていることを特徴とする請求項7に記載の壁面養生板の支持装置。
【請求項9】
前記ホルダの固定手段としてはマグネットが使用され、このマグネットが固定されるべき養生板の吸着箇所は磁性面とされていることを特徴とする請求項7に記載の壁面養生板の支持装置。
【請求項10】
前記ホルダの固定手段としては面ファスナーが使用され、ホルダと養生板とが固定されるべき対向面のそれぞれには、雄側面ファスナーと雌側面ファスナーとが相互に係着可能に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の壁面養生板の支持装置。
【請求項11】
前記ホルダは、長尺バネ材に対して取付ベースを介して取り付けられており、この取付ベースは、長尺バネ材の軸方向に沿ってスライド自在で、かつ所定位置でロック可能とされていることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の壁面養生板の支持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2006−348475(P2006−348475A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172239(P2005−172239)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(505220756)有限会社YSKサポート (3)
【出願人】(592075079)株式会社アサヒ (6)
【Fターム(参考)】