説明

変位検出装置

【課題】機械的な駆動機構を排除してメンテナンスの負担を軽減することができる変位検出装置を提供する。
【解決手段】磁気リングガイドパイプ10内に、磁気リングガイドパイプ10の軸方向に所定所定間隔をもって配設された複数の磁気センサ20と、磁気リングガイドパイプ10に軸方向に移動自在として外挿され、磁気リングガイドパイプ10の側壁を介して対向した磁気センサ20により検出される第1の磁気リング15aと、第1の磁気リング15aを検出した磁気センサ20を、他の磁気センサ20から識別して認識することにより、第1の磁気リング15aの変位(=河川の水底の変位)を検出する変位検出手段30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定範囲内における被検出体の位置の変化を検出する変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変位検出装置として、例えば図5に示したように、河川の橋脚Aの基礎B付近の水底Yの位置GLを検出するものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。なお、図中、Xは水面、WLは水位を示している。図5に示した変位検出装置は、磁性体材料で形成されて水に沈むリング部材112が外挿された計測パイプ100を河底に立て込んで設置される。また、計測パイプ100の途中箇所には、原点磁石113が嵌め込まれている。
【0003】
そして、計測パイプ100内に、測定器111と目盛り付きのケーブル121を介して接続された磁気センサ120が、計測パイプ100の軸方向に移動自在に内挿されている。磁気センサ120は、測定者(河川の管理者等)の手動操作によりケーブル121の繰り出しと巻き上げを行う巻上げ機構122により、接続ケーブル121を介して計測パイプ100内を上下動する。
【0004】
測定器111は、測定者がケーブル121の目盛りを読み取るための目盛り指示部130と、ケーブル121とスリップリング123を介して接続されて磁気センサ120の検出信号を入力するセンサインターフェース131と、磁気センサ120により原点磁石113が検出されたとき及び磁気センサ120によりリング部材112が検出されたときにランプ表示を行う検出報知部132とを備えている。
【0005】
ここで、洪水時等に橋脚Aの周辺の水底Yが洗掘されると、それに応じてリング部材112が下降する。そこで、測定者は、巻上げ機構122を手動操作して、磁気センサ120によりリング部材112が検出されたことが検出報知部132により確認できるまで、磁気センサ120を下げる。
【0006】
測定者は、磁気センサ120によりリング部材112が検出されたときのケーブル121の目盛りを目盛り指示部130で読み取ることによって、予め読み取った原点磁石113の装着位置を基準とした水底Yの変位を検出することができる。そして、水位Yの変位が予め設定された基準値を超えたときに、測定者は、防災警報を出す等の対処をする。
【0007】
ここで、現地での手動測定には多大な労力を要するため、自動測定が望まれていた。しかし、図5に示した変位検出装置においては、巻上げ機構122にモータ駆動装置を備える必要があり、機械的な駆動機構である巻上げ機構122の異常を検出するためのセンサを備える必要があるため、装置構成が複雑になるという不都合があった。また、機械的な駆動機構である巻上げ機構122の安定動作を維持するために、定期的なメンテナンスが不可欠となるという管理面での煩わしさがあった。
【非特許文献1】福井次郎、外3名,「橋梁基礎の洗掘監視装置の開発」,2000年土木学会年次学術講演会講演概要集,平成12年9月,第55巻,図1−図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記背景を鑑みてなされたものであり、機械的な駆動機構を排除してメンテナンスの負担を軽減することができる変位検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、所定方向に所定間隔をもって配置された複数個の磁気センサと、各磁気センサによる被検出物の検出の有無を示す磁気検出信号を出力する磁気検出信号出力手段とを有する複数枚の磁気センサ基板と、非磁性体により形成され、前記複数枚の磁気センサ基板を前記所定方向に直列に接続して構成された基板モジュールを、前記所定方向を軸方向に合わせて収容した中空の棒状体と、該棒状体に該棒状体の軸方向に移動自在に外挿され、該棒状体の側壁を介して対向した前記磁気センサにより検出可能な磁性体部分を有するリング部材と、該リング部材を検出した磁気センサを、他の磁気センサから識別して認識することにより、該リング部材の変位を検出する変位検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
かかる本発明によれば、前記棒状体に外挿された前記リング部材が前記棒状体に沿って移動すると、その移動位置に応じて、前記複数の磁気センサのいずれかにより前記リング部材が検出される。そのため、前記変位検出手段は、前記リング部材を検出した磁気センサを他の磁気センサから識別して認識することにより、前記リング部材の変位を検出することができる。そして、この場合、前記複数の磁気センサは予め前記棒状体内に配設されているため、前記磁気センサを移動させるための駆動機構を備える必要がない。したがって、簡易な構成によりメインテナンスを不要とした変位検出装置を提供することができる。そして、上記背景技術で説明した従来の変位検出装置のように、磁気センサを移動させる時間が不要となるので、リアルタイムに変位を検出することができる。さらに、本発明によれば、前記基板モジュールを構成する磁気センサ基板の枚数を増減することによって、前記変位検出手段により検出可能な前記リング部材の変位の範囲を容易に拡張/縮小することができる。
【0011】
また、前記磁気センサ基板は、非磁性体により形成されて前記棒状体の内径よりも外径が小さいパイプ部材内に、前記所定方向を該パイプ部材の軸方向に合わせて固定して収容され、該磁気センサ基板が収容された複数のパイプ部材を、該パイプ部材を軸方向を一致させて直列に接続するために該パイプ部材に設けられた第1の位置決め部を介して直列に接続したパイプ部材連結体を、該パイプ部材連結体と前記棒状体の軸方向を一致させるために前記棒状体又は前記パイプ部材に設けられた第2の位置決め部を介して、前記棒状体内に収容されていることを特徴とする。
【0012】
かかる本発明によれば、前記磁気センサ基板が前記パイプ部材内に、前記所定方向を前記パイプ部材の軸方向に合わせて固定して収容されている。そして、前記パイプ部材を前記第1の位置決め部を介して直列に接続することにより、各パイプ部材に収容された前記磁気センサ基板に搭載された磁気センサは、前記所定方向に沿って配置されることになる。そして、その上で、前記パイプ部材連結体を、前記第2の位置決め部を介して前記棒状体に収容することで、前記磁気センサ基板に搭載された磁気センサが前記棒状体の軸方向に沿って配置される。このように、本発明によれば、前記磁気センサ基板を前記所定方向を前記パイプ部材の軸方向に合わせて前記パイプ部材に収容すれば、後は前記第1の位置決め部と前記第2の位置決め部の作用により、前記磁気センサ基板に搭載された磁気センサを、前記棒状体の軸方向に沿って配置することができる。そのため、変位の検出範囲を、前記磁気センサ基板を収容した前記パイプ部材の接続個数を変更することにより、容易に設定・変更することができる。
【0013】
また、前記棒状体は、前記磁気センサ基板が前記所定方向を軸方向に合わせて収容された複数のパイプ部材を、軸方向を一致させて直列に接続して構成されていることを特徴とする。
【0014】
かかる本発明によれば、直列に接続する前記パイプ部材の個数を変更することによって、前記リング部材の変位の測定範囲を容易に設定・変更することができる。そのため、要求される前記リング部材の変位の測定範囲に過不足なく対応した前記棒状体を、容易に構成することができる。
【0015】
また、前記棒状体は、軸を水位方向として、一端を水底に埋設して設置され、前記リング部材は水に沈み、前記変位検出手段は、該水に沈むリング部材を検出した磁気センサを認識することにより、水底の変位を検出することを特徴とする。
【0016】
かかる本発明によれば、前記棒状体が埋設された水底が洗掘されると、水に沈んで水底に接している前記リング部材が下降し、前記リング部材を検出する磁気センサが、より下方に配設されたものに切り換わる。そのため、前記変位検出手段は、前記リング部材を検出した磁気センサを認識することによって、水底の変位を検出することができる。
【0017】
また、前記棒状体は、軸を水位方向として、予め設定された水位の検出範囲が前記複数の磁気センサが配設された範囲内となるように水面付近に設置され、前記リング部材は水に浮き、前記変位検出手段は、該水に浮くリング部材を検出した磁気センサを認識することにより、水面の変位を検出することを特徴とする。
【0018】
かかる本発明によれば、前記棒状体が設置された河川等の水位が上下すると、それに応じて水面に浮かぶ前記リング部材が上下し、前記リング部材を検出する磁気センサが切り換わる。そのため、前記変位検出手段は、前記リング部材を検出した磁気センサを認識することによって、水面の変位を検出することができる。
【0019】
また、前記棒状体は、軸を水位方向として、一端が水底に埋設され、且つ、予め設定された水位の検出範囲が前記複数の磁気センサが配設された範囲内となるように設置され、前記リング部材として、水に沈む第1のリング部材と水に浮く第2のリング部材とを、該第1のリング部材を水底側に配置して備え、前記変位検出手段は、前記第1のリング部材を検出した前記磁気センサを認識することにより水底の変位を検出すると共に、前記第2のリング部材を検出した前記磁気センサを認識することにより水面の変位を検出することを特徴とする。
【0020】
かかる本発明によれば、水底の洗掘に応じて水に沈む前記第1のリング部材が下降し、また、水位の変化に応じて水に浮かぶ前記第2のリング部材が上下に移動する。そのため、上記変位検出手段は、前記第1のリング部材を検出した磁気センサを認識することで水底の変位を検出することができると共に、前記第2のリング部材を検出した磁気センサを認識することで水面の変位を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態における変位検出装置の構成図、図2は図1に示した磁気リングガイドパイプ内の構成図、図3はパイプ部材に複数枚の磁気センサ基板を収容する場合の構成図、図4は本発明の第2の実施形態における変位検出装置の構成図である。
【0022】
[第1の実施形態]先ず、図1〜図3を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1を参照して、第1の実施形態の変位検出装置は、橋脚A付近の河底Yの変位を検出するものであり、センサユニット1と測定器2とをケーブル3で接続して構成されている。
【0023】
センサユニット1は、SUS製の磁気リングガイドパイプ10(本発明の非磁性体により形成された棒状体に相当する)内に、直列に接続された磁気センサ基板11a,11b及び制御基板12を収容して構成され、磁気リングガイドパイプ10には、磁性体材料で形成されて水に沈む第1の磁気リング15aが、磁気リングガイドパイプ10の軸方向に移動自在に外挿されている。
【0024】
磁気センサ基板11a,11bには、基板の長辺方向(本発明の所定方向に相当する)に、変位検出の分解能に応じた間隔(本発明の所定間隔に相当する)をもって複数個(例えば200個)の磁気センサ20が搭載されている。そして、各磁気センサ20は、磁気リングガイドパイプ10の側壁を介して第1の磁気リング15aと対向しているときはON状態(磁気検出状態)となり、第1の磁気リング15aと対向していないときにはOFF状態(磁気非検出状態)となる。なお、磁気センサ基板11a,11bを直列に接続した構成が、本発明の基板モジュールに相当する。
【0025】
そして、各磁気センサ基板11a,11bには、各磁気センサ20のON/OFF状態を示す磁気検出信号を制御基板12に出力する磁気検出信号出力手段(図示しない)が備えられ、制御基板12は、該磁気検出信号の入力により、各磁気センサ基板11a,11bに搭載された磁気センサ20のうち、第1の磁気リング15aを検出した磁気センサ20を認識する。
【0026】
また、測定器2には、コントローラ30と、モデム31と、携帯電話32とが備えられている。コントローラ30と制御基板12とは、ケーブル3を介して双方向のシリアル通信を行い、制御基板12は、第1の磁気リング15aを検出した磁気センサ20の識別データをコントローラ30に送信する。これにより、コントローラ30は、第1の磁気リング15aが水底側から何番目の磁気センサ20で検出されたかを認識して、第1の磁気リング15aの位置GL(=水底の位置)を検出することができる。
【0027】
そして、コントローラ30は、水底Yの洗掘がされて第1の磁気リング15aが下降し、第1の磁気リング15aの検知位置GLが基準位置(例えば、センサユニット1を設置したときの第1の磁気リング15aの位置)から所定レベル以上下がって変位したときに、モデム31及び携帯電話32を介して、別の場所にいる河川の管理者等に防災警報を送信する。なお、このように、コントローラ30によって、第1の磁気リング15aの変位を検出する構成が、本発明の変位検出手段に相当する。
【0028】
次に、図2を参照して、センサユニット1の内部構成について説明する。図2(a)はセンサユニット1の縦断面図であり、磁気センサ基板11aは、円筒形状のSUS製のパイプ部材40a内に、長辺方向をパイプ部材40aの軸方向に合わせてモールド封止により固定されている。
【0029】
同様に、磁気センサ基板11bは、円筒形状のSUS製のパイプ部材40b内に、長辺方向をパイプ部材40bの軸方向に合わせてモールド封止により固定されている。また、、制御基板12は、SUS製の円筒形状のパイプ部材41内に、長辺方向をパイプ部材41の軸方向に合わせてモールド封止により固定されている。
【0030】
なお、別の実施形態として、円柱形状を作るための雌型の中央に磁気センサ基板11a,11bを配置して、該雌型に樹脂モールド剤を流し込み、樹脂モールド剤が固まった後に該雌型を外すことにより、パイプ部材40a,40bを形成してもよい。
【0031】
また、磁気センサ基板11bの下端部と最下部に配置された磁気センサとの間隔A(数mm)と、磁気センサ基板11aの上端部と最上部に配置された磁気センサとの間隔B(数mm)は、これらの間隔の合計が、磁気センサ基板11a,11bにおける磁気センサの配置間隔Cと同一となるように(C=A+B)構成されている。これにより、磁気センサ基板11a,11bの連結箇所における磁気センサの間隔が上記Cとなり、磁気リング15aの測定範囲の全域に亘って磁気センサの配置間隔が一定に保たれるようにしている。
【0032】
そして、パイプ部材41のつば部47aとパイプ部材40bのつば部46bとが、Oリング60cによりシーリングされてボルト53で固定され、パイプ部材40bのつば部46aとパイプ部材40aのつば部45bとが、Oリング60bによりシーリングされてボルト50で固定されている。また、パイプ部材40aのつば部45aは、Oリング60aによりシーリングされて底板48にボルト51で固定され、これにより、パイプ部材41、パイプ部材40b、及びパイプ部材40a内が防水されている。
【0033】
図2(c)は、図2(a)のA−A矢視図であり、パイプ部材40bのつば部46aには位置決めピン61a,61bが設けられている。そして、パイプ部材40aのつば部45bには、位置決めピン61a、61bに設置位置に対応した位置決め穴が穿設されており、位置決めピン61a,61bを該位置決め孔に挿入することで、つば部46aとつば部45bのボルト穴が位置決めされると共に、パイプ部材40aの軸方向とパイプ部材40bの軸方向とが合致する。
【0034】
なお、位置決めピン61a,61b及びこれらに対応した位置決め穴が、本発明の第1の位置決め部に相当する。また、パイプ部材41のつば部47aとパイプ部材40bのつば部46bについても、同様にして、ボルト穴と軸方向が位置決めされる。
【0035】
ここで、つば部45a,45b,46a,46b,47aの外径は、磁気リングガイドパイプ10の内径よりも若干小さく設定されている。そのため、連結された状態のパイプ部材40a,40b,41(本発明のパイプ部材連結体に相当する)を、磁気リングガイドパイプ10に挿入したときに、つば部45a,45b,46a,46b,47aの外周が磁気リングガイドパイプ10の内壁で規制され、これにより、パイプ部材40a,40b,41の軸方向が磁気リングガイドパイプ10の軸方向と合致する。
【0036】
そして、パイプ部材40a,40bに固定された磁気センサ基板11a,11bは、長辺方向がパイプ部材40a,40bの軸方向に合致しており、磁気センサ基板11a,11bに搭載された磁気センサ20は、磁気センサ基板11a,11bの長辺方向に配置されている。そのため、各磁気センサ20は、磁気リングガイドパイプ10内で、磁気リングガイドパイプ10の軸方向に配置された状態となる。なお、この場合、つば部45a,45b,46a,46bは、本発明の第2の位置決め部に相当する。
【0037】
そして、図2(b)に示した第1のリング部材15aが磁気リングガイドパイプ10に外挿されて、センサユニット1(図1参照)が構成される。なお、リング部材15aの内径αは、磁気リングガイドパイプ10の外径βよりも大きく設定され、これにより、リング部材15aは磁気リングガイドパイプ10の軸方向に移動自在とされている。また、第1のリング部材15aは、磁気リングガイドパイプ10の端部のボルト52により抜け止めされている。
【0038】
また、図3(a)に示したように、磁気センサ20を長辺方向に所定間隔で複数個(例えば40個)配列して搭載した磁気センサ基板13a〜13eを、コネクタ14により接続した基板モジュールを、図3(b)に示したように、パイプ部材70に挿入して固定するようにしてもよい。この場合、図3(b)に示したパイプ部材70を、つば部71a,71bにより複数個接続して磁気リングガイドパイプ10に挿入し、センサユニット1を構成することにより、変位の測定範囲を容易に拡張することができる。
【0039】
[第2の実施形態]次に、図4を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上述した第1の実施態様と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。第2の実施形態の変位検出装置は、磁気センサ基板11bにさらに磁気センサ基板11cを接続して磁気センサ20による検出範囲を拡大した点と、第1の磁気リング15aの他に、水に浮く第2の磁気リング15bを備えている点が、前記第1の実施形態の変位検出装置と相違する。
【0040】
第2の磁気リング15bは、水に浮く点で第1の磁気リング15aと相違するが、外形は第1の磁気リング15aと同様であり、磁気リングガイドパイプ10の側壁を介して対向した磁気センサ20により検出される。そして、磁気リングガイドパイプ10に移動自在に外挿されている。そのため、水面Xの水位WLが変化すると、それに応じて第2の磁気リング15bの位置が上下し、第2の磁気リング15bを検出する磁気センサ20が切り換わる。
【0041】
磁気センサ基板11cの構成は、上述した磁気センサ基板11a,11bと同様であり、磁気センサ基板11cに搭載された各磁気センサ20のON/OFF状態を示す磁気検出信号が制御基板12に入力される。そして、制御基板12からコントローラ30に対して、第2の磁気リング15bを検出した磁気センサ20の識別データとを送信する。
【0042】
これにより、コントローラ30は、該識別データから河川の水位WLの変位を検出することができる。コントローラ30は、河川の水位WLが上昇して、基準位置からの水位WLの変位が予め設定された上限水位を超えたときに、モデム及び携帯電話32を介して、別の場所にいる河川の管理者等に防災警報を送信する。
【0043】
このように、第2の実施の形態の変位検出装置によれば、第1の磁気リング15aの位置を検出して河床の変位を検出することができると共に、第2の磁気リング15bの位置を検出して水面の変位を検出することができる。なお、第1の磁気リング15aは第2の磁気リング15bの下方に配置されているため、ON状態となった2個の磁気センサ20のうち、上方の磁気センサ20が第2の磁気リング15bの位置を示し、下方の磁気センサ20が第1の磁気リング15aの位置を示す。
【0044】
なお、本第2の実施の形態でも、図3(a),図3(b)に示したように、複数枚の磁気センサ基板13a〜13eを収容したパイプ部材70を、複数個接続してセンサユニット1を構成してもよい。
【0045】
また、本第2の実施の形態では、河川の河床の変位及び河川の水面の変位を検出する変位検出装置を示したが、第2の磁気リング15bのみを備えることにより、河川の水面の変位のみを検出する構成とすることもできる。
【0046】
また、前記第1の実施の形態では、河川の水底の変位を検出する変位検出装置を示し、前記第2の実施の形態では、河川の水面の変位を検出する変位検出装置を示したが、本発明の変位検出装置による検出対象はこれらに限られず、1方向に変位する対象物であれば、本発明を適用して変位を検出することができる。
【0047】
また、前記第1の実施形態では2枚の磁気センサ基板11a,11bを直列に接続し、前記第2の実施形態では3枚の磁気センサ基板11a,11b,11cを直列に接続したが、接続する磁気センサ基板の枚数を増やすことによって、変位の検出範囲をさらに拡大することができる。
【0048】
また、第1の磁気リング15a及び第2の磁気リング15bは、必ずしも全体を磁性体材料で形成する必要はなく、例えば、内周壁の一部に磁性体を埋め込んで磁気センサ20により検出されるようにしてもよい。
【0049】
また、図2(a)に示したパイプ部材40a,40b,41は、つば部45b,46a,46b,47aにより連結されているが、パイプ部材40a,40b,41の連結部の構造はこれに限られず、他の構造により、例えば、連結したときにパイプ部材の連結箇所の外周面がストレートとなる構造としてもよい。このように、パイプ部材の連結箇所の外周面をストレートとした場合には、パイプ部材の連結体を磁気リング15aを直動させるガイドとして作用させることができるため、磁気リングガイドパイプ10を不要とすることができる(この場合、パイプ部材の連結体が本発明の棒状体に相当する)。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態における変位検出装置の構成図。
【図2】図1に示した磁気リングガイドパイプ内の構成図。
【図3】パイプ部材に複数枚の磁気センサ基板を収容する場合の構成図。
【図4】本発明の第2の実施形態における変位検出装置の構成図。
【図5】従来の変位検出装置の構成図。
【符号の説明】
【0051】
1…センサユニット、2…測定器、3…ケーブル、10…磁気リングガイドパイプ(棒状体)、11a,11b,11c…磁気センサ基板、12…制御基板、15a…第1の磁気リング(第1のリング部材)、15b…第2の磁気リング(第2のリング部材)、20…磁気センサ、30…コントローラ、31…モデム、32…携帯電話

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に所定間隔をもって配置された複数個の磁気センサと、各磁気センサによる被検出物の検出の有無を示す磁気検出信号を出力する磁気検出信号出力手段とを有する複数枚の磁気センサ基板と、
非磁性体により形成され、前記複数枚の磁気センサ基板を前記所定方向に直列に接続して構成された基板モジュールを、前記所定方向を軸方向に合わせて収容した棒状体と、
該棒状体に該棒状体の軸方向に移動自在に外挿され、該棒状体の側壁を介して対向した前記磁気センサにより検出可能な磁性体部分を有するリング部材と、
該リング部材を検出した磁気センサを、他の磁気センサから識別して認識することにより、該リング部材の変位を検出する変位検出手段とを備えたことを特徴とする変位検出装置。
【請求項2】
前記磁気センサ基板は、非磁性体により形成されて前記棒状体の内径よりも外径が小さいパイプ部材内に、前記所定方向を該パイプ部材の軸方向に合わせて固定して収容され、該磁気センサ基板が収容された複数のパイプ部材を、該パイプ部材を軸方向を一致させて直列に接続するために該パイプ部材に設けられた第1の位置決め部を介して直列に接続したパイプ部材連結体が、該パイプ部材連結体と前記棒状体の軸方向を一致させるために前記棒状体又は前記パイプ部材に設けられた第2の位置決め部を介して、前記棒状体内に収容されていることを特徴とする請求項1記載の変位検出装置。
【請求項3】
前記棒状体は、前記磁気センサ基板が前記所定方向を軸方向に合わせて収容された複数のパイプ部材を、軸方向を一致させて直列に接続して構成されていることを特徴とする請求項1記載の変位検出装置。
【請求項4】
前記棒状体は、軸を水位方向として、一端を水底に埋設して設置され、
前記リング部材は水に沈み、前記変位検出手段は、該水に沈むリング部材を検出した磁気センサを認識することにより、水底の変位を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項記載の変位検出装置。
【請求項5】
前記棒状体は、軸を水位方向として、予め設定された水位の検出範囲が前記複数の磁気センサが配設された範囲内となるように水面付近に設置され、
前記リング部材は水に浮き、前記変位検出手段は、該水に浮くリング部材を検出した磁気センサを認識することにより、水面の変位を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項記載の変位検出装置。
【請求項6】
前記棒状体は、軸を水位方向として、一端が水底に埋設され、且つ、予め設定された水位の検出範囲が前記複数の磁気センサが配設された範囲内となるように設置され、
前記リング部材として、水に沈む第1のリング部材と水に浮く第2のリング部材とを、該第1のリング部材を水底側に配置して備え、
前記変位検出手段は、前記第1のリング部材を検出した前記磁気センサを認識することにより水底の変位を検出すると共に、前記第2のリング部材を検出した前記磁気センサを認識することにより水面の変位を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項記載の変位検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−108135(P2007−108135A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301902(P2005−301902)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000151520)株式会社東京測器研究所 (29)
【Fターム(参考)】