説明

変位計、伸び計および材料試験機

【課題】試験片の変位を検出するためには、標点と差動コイルの可動鉄芯とを機械的に接続しなければならなかった。
【解決手段】試験片TPには磁性体4を予め貼付しておく。透明なプラスチックボビン2の内側に試験片4を挿入する。2つの差動コイルCC,CDの中間部に磁性体4が位置するよう試験片4を上下に調節する。上つかみ具38および下つかみ具40により試験片TPを把持し、図示しない負荷機構により引張力を作用させる。駆動コイルCA,CBに駆動電流を流し、差動コイルCC,CDの出力から磁性体4の変位を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片の変位を非接触の形態で検出する変位計、伸び計および材料試験機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属・プラスチック・繊維などの試験片について、負荷時における変位量を測定する装置が知られている。その測定装置の一つとして、差動トランスを用いることにより試験片の変位を検出することが知られている。この差動トランスは、周知の如く、磁界を発生させるための1次巻線と、その磁界内に載置した可動鉄芯の変位量を差動出力電圧として検出するための2次巻線とを備えている。
【0003】
こういった差動トランスは、小型軽量化が困難であることから、特許文献1では、プリント配線技術等を用いて小型のヘルムホルツコイルを作成し、このヘルムホルツコイルにより平等磁界を発生させる差動コイルについて、提案がなされている。
【特許文献1】特開2001−66103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、差動トランス自体を小型軽量化したとしても、試験片の変位を検出するためには、標点と差動コイルの可動鉄芯とを機械的に接続しなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1による変位計は、所定の交流磁界を発生させる磁界発生用コイルと、試験片の標点に取り付けた磁性体を前記交流磁界中に置いたとき、前記磁性体の変位量を差動電圧として出力する差動コイルとを備え、前記試験片に作用された引張力または圧縮力に応じた変位を前記差動コイルの出力から非接触にて検出する。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の変位計において、前記磁界発生用コイルおよび前記差動コイルは、透明なボビン上に巻回されたコイルであり、前記ボビンの開口端部を通して挿入した前記試験片の設置位置を視認可能としたものである。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の変位計において、前記磁界発生用コイルとしてヘルムホルツコイルを用いる。
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の変位計において、前記磁界発生用コイルは、ボビンの所定長にわたり一定密度で一様に巻回されたコイルである。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の変位計において、前記試験片の標点に取り付けた磁性体は、前記試験片に貼付した円形磁性体である。
請求項6による伸び計は、試験片の2つの標点にそれぞれ磁性体を取り付け、各々の磁性体に対して請求項1ないし4のいずれか一項に記載の磁界発生用コイルおよび差動コイルを対応させることにより、標点間の伸び量を非接触にて検出する。
請求項7による材料試験機は、請求項6に記載の伸び計と、試験片に対して負荷を作用させる負荷機構とを備えるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、差動トランスと試験片とを機械的に連結することなく、非接触にて安価かつ正確に変位または伸びを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0008】
<実施の形態1>
図1は、本発明を適用した非接触型伸び計の主要部を模式的に示した説明図である。本図において、2および2’は透明なプラスチックボビンであり、これらボビン上に4つのコイルCA,CB,CC,CDおよびCA’,CB’,CC’,CD’をそれぞれ巻回することにより空芯の複巻トランスを構成している。これらコイルの巻き方および結線方法については、図2を参照して後に詳述する。
【0009】
図1(A)において、プラスチックボビン2および2’の左側に描いてあるTPは試験片である。本実施の形態では、一例として、極めて折れ曲がり易い薄膜状試験片(例えば、プラスチックフィルム、布)を用いる場合について説明していく。試験片TPの2つの標点には、円形平板状の磁性体4および4’を予め貼り付けておく。この貼り付け法としては、試験片TPの材質に適合した接着剤を使用するほか、試験片TPの裏側まで貫通するピン(図示せず)を用いて固着することも可能である。なお、磁性体4および4’の直径,厚さ,透磁率は、ボビン2および2’の直径,各コイルの巻数,検出感度などに応じて、適宜選択すべき設計事項である。
【0010】
図1(B)は、磁性体4および4’の取り付けられた試験片TPを透明なプラスチックボビン2および2’の内側に挿入した状態を示している。
2つのコイルCC,CDの中間部(コイルCA,CBの中間部でもある)、ならびに、2つのコイルCC’,CD’の中間部(コイルCA’,CB’の中間部でもある)には、磁性体4および4’が位置するよう試験片TPを上下に調節する。実際には、後に図4を参照して詳細に説明するが、上つかみ具38および下つかみ具40により試験片TPを把持する。本実施の形態では、所謂ぺらぺらな薄膜状の試験片TPを試験しているので、上つかみ具38および下つかみ具40には平板つかみ具を使用し、図示しない負荷機構により引張力を作用させる(試験片TPに対する負荷制御についても、図4を参照して詳述する)。勿論、剛性ある試験片TPを用いて圧縮試験を行う場合には、圧縮力を作用させることにより、磁性体4および4’の変位を検出すればよい。
【0011】
以上述べたプラスチックボビン2および2’と、4つのコイルCA,CB,CC,CDおよびCA’,CB’,CC’,CD’と、試験片TPに貼付した磁性体4および4’とにより、本実施の形態による伸び計6を構成する。
【0012】
次に、図2を参照して、4つのコイルCA,CB,CC,CDおよびCA’,CB’,CC’,CD’について詳細に説明する。
但し、本実施の形態による伸び計においては、コイルCA,CB,CC,CDと、コイルCA’,CB’,CC’,CD’は形状も機能も同じであるので、一方のコイルCA,CB,CC,CDおよび一方の磁性体4についてのみ説明をしていく。後に説明する図3および図4についても、同様である。
【0013】
図2(A)は、透明プラスチックボビン2に巻回した4つのコイルに流れる電流の向きを示している。本実施の形態では、コイルCAとコイルCBによりヘルムホルツコイルを形成しているので、これら2つのコイルの間隔Rは各コイルの半径と等しくなる。したがって、コイルCAにより発生されるボビン内磁界と、コイルCBにより発生されるボビン内磁界が加算されるよう、両コイルには同じ方向に励磁電流を流す。図2(B)は、コイルCAとコイルCBが直列に接続されていることを示している。T1およびT2は、磁界発生用コイルCAおよびCBの駆動入力端を示す。
【0014】
以下、コイルCAを駆動コイルCA、コイルCBを駆動コイルCBと呼ぶ。
【0015】
2次コイルに相当するコイルCC,CDは、距離Rをほぼ3等分する位置に巻回してあるが、この巻回位置は磁性体4の変位範囲を予め想定して決定する設計事項である。したがって、図2(A)に例示した状態ではS≒R/3となる。しかし、磁性体4の変位範囲が極わずかであるとき(例えば1mm以下のとき)には、距離Sをより短く設定する。距離Sは、短く設定するほど検出感度が上がる。距離S内の領域全てが磁性体4の検出可能領域となるのではなく、コイルCC,CDの直径あるいは巻数などに応じて広狭が変化する。
【0016】
これらコイルCCおよびCDの出力端T3,T4からは交流の差動出力電圧が得られるよう、図2(A)に示すように、各コイルに流れる電流の方向を逆向きにする。図2(B)は差動結線状態を示しており、コイルCCおよびCDからはそれぞれ逆向きの誘起電圧E,Eが得られる。その結果、差動出力電圧はEout=E−Eとなる。かくして、試験片TPの標点が変位するのに伴って磁性体4も変位し、その変位量に応じた差動出力電圧Eoutが得られる。
【0017】
以下、コイルCCを差動コイルCC、コイルCDを差動コイルCDと呼ぶ。
【0018】
図3は、駆動コイルCAおよびCBを励磁するための交流電圧を発生するコイル駆動回路と、差動コイルCCおよびCDから出力された差動出力電圧Eoutを変位量に変換するための検出回路とを示す。本実施の形態では、これらコイル駆動回路および検出回路を一体化して、コイル駆動・検出回路8を構成する。
【0019】
図3において、T3およびT4は、図2(B)に示した差動コイルCCおよびCDの出力端である。10はプリアンプ、12はアンチ・エリアシング・フィルタ、14はA/D変換器である。ここまでがアナログ信号処理系であり、後段の信号処理を安定化し且つ小型回路化するために、これ以降はデジタル信号処理系を用いる。本実施の形態では、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いてデジタル信号処理系を構成する。
【0020】
次に、このデジタル信号処理系について説明する。16は、サイン波sin ωtおよびコサイン波cosωtを発生させる正弦波発生器である。18および20は、サイン波sin ωtおよびコサイン波cosωtと、A/D変換器14で量子化された差動出力とをそれぞれ掛け合わせる乗算器である。
【0021】
22は位相検波器であり、各乗算器18,20から出力された乗算結果を正弦波1周期分だけ積算する。すなわち、コサイン波cosωtと差動出力とを乗算した結果を1周期分積算した値をX座標値として算出し、且つ、サイン波sin ωtと差動出力とを乗算した結果を1周期分積算した値をY座標値として算出する。所謂、畳込み積分(コンボリューション)処理を実行する。ここで、プラスチックボビン2の内側に配置した磁性体4(図1(B)参照)が変位すると空芯の透磁率が実質的に変化することになるので、X座標値およびY座標値も共に変化することになる。すなわち、磁性体4の変位に伴って、X座標値およびY座標値により特定される座標は、ある範囲内で一定の軌跡を描くことになる。いま、2次元座標(X,Y)に対応した極座標(r,θ)を想定すると、この(r,θ)をある角度だけ回転させてから磁性体4を変位させた場合には、Y座標値だけを変化させることができる。そこで、このY座標値を磁性体4の位置として位相検波器22から出力する。
【0022】
換言すると、2次元座標(X,Y)では、r=(X+Y1/2であり、θ=tan−1(Y/X)であるから、このθを差動コイルの位相と呼ぶことができる。そこで、アナログ信号処理系での信号位相遅れ、および、デジタル信号処理系のクロック遅延などに起因して生じる遅れを補償するために、2次元座標(X,Y)を所定の回転行列に入力し、変位計で必要とされるY座標値を演算する。このようにして位相検波器22の出力端からは、磁性体4の変位量(すなわち、標点の変位量)に対応した信号のみが出力される。なお、演算したX座標値については変位計として不要であるので、位相検波器22から出力しない。
【0023】
24はゲイン調整器である。位相検波器22から出力される信号は磁性体4の変位に対応した信号ではあるが、上記のY座標値は長さの次元を持っていない。そこで、位相検波器22から出力される信号の大きさを「ミリメートル」などの長さ単位に変換するために、所定の定数(=ゲイン)を乗算する。したがって、ゲイン調整器24からは、磁性体4の変位を長さとして表すデジタル信号が出力される。
【0024】
2つのゲイン調整器24および24’から出力された信号は伸び量演算器29に入力され、各磁性体間の伸び量(すなわち標点間の伸び量)が算出される。
【0025】
伸び量演算器29から出力される検出結果はそれ自体で意味のある検出結果であるが、本実施の形態では材料試験機(図4において詳述する)の制御盤に帰還入力する。この帰還入力により、試験片4に作用させる引張力(または圧縮力)を所定のシーケンスに従って制御する。より具体的に述べるならば、標点間距離が目標値になるよう帰還制御すること、あるいは、試験力が目標値になるよう帰還制御することを行わせる。さらに制御盤は、制御盤に接続されているモニタ類の表示制御を行う。
【0026】
また、デジタル信号処理系の正弦波発生器16から出力されたサイン波sin ωtは、D/A変換器26を介して、出力増幅器28にも入力される。出力増幅器28の出力端は、駆動コイルCA,CBを励磁するために、駆動コイルCA,CBの入力端T1,T2(図2(B)参照)に接続されている。
【0027】
図4は、図3に示したコイル駆動・検出回路8を用いた材料試験機を示す全体構成図である。本図において、30Aおよび30Bは一対の支柱であり、その内部には図示しないモータにより回転されるボールねじ(図示せず)が内装されている。32はクロスヘッドであり、上記ボールねじの回転に応じて上下に移動する。34は基台、36はクロスヨークである。38は上つかみ具であり、図示しないロードセルを介してクロスヘッド32に接続されている。40は下つかみ具であり、基台34に接続されている。42は制御盤であり、図示しない負荷機構の制御のみならず、表示機・各種インタフェースならびに各種データ処理を行うための演算回路(いずれも図示せず)を備えている。以上の各構成要素により、本実施の形態による材料試験機44を構成する。
【0028】
図4では、透明プラスチックボビン2の内側に挿入した試験片TPを上つかみ具38および下つかみ具40で把持し、差動コイルCCおよびCDの出力端T3,T4(図2(B)参照)から得られた差動出力Eoutをコイル駆動・検出回路8(図3参照)に入力している。そして、コイル駆動・検出回路8から出力された検出結果を、制御盤42に帰還入力している。このことにより、制御盤42中の制御回路(図示せず)は、試験片TPに貼付した磁性体間の伸び量が所定値になるよう負荷機構を制御する等の制御を行う。また、コイル駆動・検出回路8から出力されたコイル駆動用出力(図3に示した出力増幅器28の出力)を、駆動コイルCA,CBの入力端T1,T2(図2(B)参照)に供給する。
【0029】
−実施の形態1による作用効果−
実施の形態1によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
【0030】
(1)試験片として所謂ぺらぺらなラップ等のフィルム状超薄板を用いる場合にも、試験片に対して機械的負担をかけることなく、1つの標点の変位を1つの差動トランスで検出することができる。すなわち、差動トランスの可動鉄芯に対して機械的連結を行う必要がなくなるので、差動トランスを使って非接触に変位を検出することが可能となる。その結果として、たとえば、フィルム状超薄板のポアソン比を非接触にて正確に測定することができる。
(2)透明なボビンとヘルムホルツコイルを使っているので、ボビン内部を目視することが可能となる。その結果、試験片に取り付けた磁性体の位置合わせを極めて容易に行うことができる。
(3)差動トランスを使っているので、極めて小さな測定分解能を実現することができる。例えば1ミリメートル以下の標点間伸び量を測定する際に、従来では試験片自体の形状・硬さによって試験不能な場合があったが、本実施の形態によれば、正確な変位検出が可能となる。特に、ポアソン比などの測定にも数ミクロン単位の測定分解能を、非接触にて実現することができる。
(4)試験片の標点にマークを付けて光学的にマークの変位を検出するのではなく、差動トランスを使用することができるので、より安価に正確な伸び計を作製することができる。例えば、撮像装置を用いて標点の変位を検出する方式では、サンプリングレート・撮像素子自体に起因する撮像分解能などに起因して、変位量の測定分解能を上げることが困難なばかりでなく、装置自体も高価なものとなるが、本実施の形態によれば安価に極めて正確な測定をすることができる。
(5)ボビンの直径、ボビンの色、駆動コイルの太さおよび巻数、差動コイルの太さおよび巻数を変えた種々の差動トランスを予め用意しておくことにより、さまざまな試験片に対応した測定を迅速に行うことが可能になる。
【0031】
−変形例−
実施の形態1における各構成要素は、以下に列挙するよう変形することができる。
(1)ヘルムホルツコイルを形成する駆動コイルCA,CBは、透明なプラスチックボビン上に巻回してあるが、ボビンを使用することなく、それぞれのコイルを自立させたボビンレスコイルとすることも可能である。また、被覆された銅線を使う替わりに、プリント配線技術を利用して平等磁界を発生させることも可能である。
(2)実施の形態1では透明なプラスチックボビンを採用しているが、透明でないボビンを用いる場合には、ボビンの中央部近辺に窓あるいはスリットを開けることにより、コイル内部の状態を目視することが可能になる。また、透明なプラスチックボビンの替わりに、非磁性体のメッシュ板を円筒状に加工して用いることも可能である。
(3)実施の形態1によるコイル駆動・検出回路8(図3)には、アナログ回路とデジタル回路が混在しているが、差動コイルCC,CDからの差動出力を予めデジタル信号化しておき、そのデジタル信号化した差動出力を処理するための専用LSIとしてもよい。
(4)実施の形態1では、試験片に取り付ける磁性体として、円形平板状の磁性体を用いる場合について説明してきたが、磁性体の形状は円形平板に限定されるものではない。例えば四角形の平らな磁性体を用いる場合には、その貼り付け角度(すなわち、回転角度)により検出感度が変化するおそれがあるが、材料試験の形態に応じて円形平板以外の形状を採り得ることは勿論である。同様に、平板の磁性体のみならず、立体形状の磁性体を取り付けることも可能である。また、非常に薄い試験片の片側に磁性体を貼付したとき、試験片自体がたわむなどの不都合が生じた場合には、試験片の両側に磁性体を貼付することも可能である。さらに、磁性体として磁性体粉末を含有した接着剤を用いることも可能である。
(5)ヘルムホルツコイルを用いる最大の利点は、2つのコイルをコイル半径分だけ離してあることから、コイルの内部を目視するための隙間が空くことである。しかし、非接触検出を行うために磁界を発生させるという観点からみれば、図5に示すように、一定の密度で一様に巻回した1次コイルC1を用いて磁界を発生させることも可能である。この場合には、差動コイルCC,CDを1次コイルC1の上に重ねて巻回する。ただし、図5のようなコイル構成を採った場合には、コイルの内部を目視することができないので、予め試験片の一部にマークを付けておき、外部から磁性体の位置を推測できるようにしておく必要がある。
【0032】
<実施の形態2>
図6は、本発明を適用した変位計50を示す説明図である。本実施の形態では、試験片TPの1箇所の標点に磁性体4を貼付してある。磁性体4の外周部には、図2に示したコイル(すなわち、透明プラスチックボビン2上に巻回した4つのコイルCA,CB,CC,CD)を配置してある。
【0033】
上つかみ具38および下つかみ具40により試験片TPを把持する点は、実施の形態1と同じである。また、薄膜状の試験片TPを試験する際には、上つかみ具38および下つかみ具40として平板つかみ具を使用し、図示しない負荷機構により引張力を作用させる点も、実施の形態1と同じである。
【0034】
図7は、駆動コイルCAおよびCBを励磁するための交流電圧を発生するコイル駆動回路と、差動コイルCCおよびCDから出力された差動出力電圧Eoutを変位量に変換するための検出回路とを示す。本実施の形態では、これらコイル駆動回路および検出回路を一体化して、コイル駆動・検出回路8’を構成する。
【0035】
図7において、T3およびT4は、図2(B)に示した差動コイルCCおよびCDの出力端である。10はプリアンプ、12はアンチ・エリアシング・フィルタ、14はA/D変換器である。ここまでがアナログ信号処理系である。これ以降はデジタル信号処理系を用いる。本実施の形態においても、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いてデジタル信号処理系を構成する。デジタル信号処理系の動作については、実施の形態1で述べた通りであるので、説明は省略する。
【0036】
ゲイン調整器24からは、磁性体4の変位量を長さとして表すデジタル信号が出力される。ゲイン調整器24の出力信号は、その信号自体で意味ある検出結果であるが、本実施の形態では材料試験機(図4において詳述する)の制御盤に帰還入力する。この帰還入力により、試験片4に作用させる引張力(または圧縮力)を所定のシーケンスに従って制御する。より具体的に述べるならば、試験片TPに負荷する力を制御したり、磁性体4が所定位置に変位するまで負荷機構(図示せず)を制御するほか、制御盤に接続されているモニタ類の表示制御を行わせる。
【0037】
デジタル信号処理系の正弦波発生器16から出力されたサイン波sin ωtは、D/A変換器26を介して、出力増幅器28にも入力される。出力増幅器28の出力端は、駆動コイルCA,CBを励磁するために、駆動コイルCA,CBの入力端T1,T2(図2(B)参照)に接続されている。
【0038】
図4に示した材料試験機44を用いて引張試験(あるいは圧縮試験)を行い得ることも、実施の形態1と同じである。
【0039】
−実施の形態2による作用効果−
実施の形態2においても、図2を参照して説明した実施の形態1と同じコイル(2つの駆動コイルと2つの差動コイル)を用いているので、実施の形態1について述べた作用効果と同様の作用効果を奏することができる。但し、実施の形態2では特定の標点の変位量を測定している点が、標点間の伸びを測定する実施の形態1とは異なっている。
かくして、実施の形態1によれば、試験片の材質に拘わり無く、標点の変位を非接触にて検出することができる。
【0040】
−変形例−
実施の形態2における各構成要素については、実施の形態1と同様の変形を行うことができる。
【0041】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上述した実施の形態および変形例に限定されるものではない。また、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0042】
特許請求の範囲に記載した構成要素と、実施の形態との対応関係は次に示す通りである。
請求項1に記載した磁界発生用コイルは図2のコイルCAおよびCBに対応し、試験片の標点に取り付けた磁性体を交流磁界中に置いたときとは図1(B)の状態に対応し、磁性体の変位量を差動電圧として出力する差動コイルは図2のコイルCCおよびCDに対応する。
なお、本発明を解釈する上で上記の対応関係は何ら限定とならない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を適用した伸び計の主要部を模式的に示した説明図である。
【図2】図1に示した4つのコイルCA,CB,CC,CDを詳細に説明するための図である。
【図3】駆動コイルCAおよびCBを励磁するための交流電圧を発生するコイル駆動回路と、差動コイルCCおよびCDから出力された差動出力電圧Eoutを変位量に変換するための検出回路とを示す回路図である。
【図4】図3に示したコイル駆動・検出回路8を用いた材料試験機を示す全体構成図である。
【図5】実施の形態1における変形例を示す図である。
【図6】本発明を適用した非接触型の変位計を示す説明図である。
【図7】図6に示した変位計の1次コイルを駆動する回路、および、2次コイルの差動出力から変位量を求める回路を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
TP 試験片
2 透明プラスチックボビン
4 磁性体
CA,CB 磁界発生用駆動コイル
CC,CD 変位検出用差動コイル
38 上つかみ具
40 下つかみ具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の交流磁界を発生させる磁界発生用コイルと、
試験片の標点に取り付けた磁性体を前記交流磁界中に置いたとき、前記磁性体の変位量を差動電圧として出力する差動コイルとを備え、
前記試験片に作用された引張力または圧縮力に応じた変位を前記差動コイルの出力から非接触にて検出することを特徴とする変位計。
【請求項2】
請求項1に記載の変位計において、
前記磁界発生用コイルおよび前記差動コイルは、透明なボビン上に巻回されたコイルであり、
前記ボビンの開口端部を通して挿入した前記試験片の設置位置を視認可能としたことを特徴とする変位計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の変位計において、
前記磁界発生用コイルとしてヘルムホルツコイルを用いることを特徴とする変位計。
【請求項4】
請求項1に記載の変位計において、
前記磁界発生用コイルは、ボビンの所定長にわたり一定密度で一様に巻回されたコイルであることを特徴とする変位計。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の変位計において、
前記試験片の標点に取り付けた磁性体は、前記試験片に貼付した円形磁性体であることを特徴とする変位計。
【請求項6】
試験片の2つの標点にそれぞれ磁性体を取り付け、各々の磁性体に対して請求項1ないし4のいずれか一項に記載の磁界発生用コイルおよび差動コイルを対応させることにより、標点間の伸び量を非接触にて検出することを特徴とする伸び計。
【請求項7】
請求項6に記載の伸び計と、試験片に対して負荷を作用させる負荷機構とを備えることを特徴とする材料試験機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−156680(P2009−156680A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334181(P2007−334181)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】