説明

変動可能な合成ガス組成物を製造する方法

ガス化による変動可能な合成ガス組成物の生成のためのプロセスを開示する。少なくとも2つのガス化装置(2,3)を有するガス化ゾーン(1)内で2つ以上の原合成ガス流を生成し、原合成ガスの一部を共通の水性ガスシフト反応ゾーン(20)に通して、水素量に富む少なくとも1つのシフト合成ガス(23)および少なくとも1つの非シフト合成ガス流(10)を生成する。シフト合成ガス流および非シフト合成ガス流(10,23)を水性ガスシフトゾーンの下流で種々の比率で混合して、混合合成ガス流(25)および非混合合成ガス流(26)を、時間ごとに少なくとも1つの下流合成ガスの要求に応じて変動しうる体積および/または組成で生成する。該プロセスは、ピークおよびオフピークの電力需要の期間を通じた電気および化学品の変動可能な共生成のための複数のガス化装置から合成ガスを供給するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の背景
天然ガスおよび石油の高価格および逓減する供給は、化学産業および電力産業が化学品の製造および電気の発生のための代替の原材料を探求する要因となってきた。一方、石炭および他の固体炭素質燃料,例えば石油コークス、バイオマス、紙パルプ化廃棄物等、は非常に豊富で、そして比較的安価であり、かつ代替の原材料由来として調査する分野に対して理にかなった材料である。石炭および他の固体炭素質材料は、ガス化,すなわち酸素で部分的に燃焼させて合成のガス(以後、「合成ガス(syngas)」ともいう)を生成することができ、これは清浄化でき、そしてこれを用いて種々の化学品を製造でき、または電力を発生させるために燃焼させることができる。ガス化プロセスは、典型的には、H2のCOに対するモル比が約0.4/1から1.2/1の合成ガスを、より少ない体積のCO2、H2S、メタンおよび他の不活性物とともに生成する。
【0002】
しかし、合成ガス原料を効率的に利用するために、異なる用途は異なるH2/CO比を必要とする。例えば、フィッシャートロプシュおよびメタノールの反応のストイキオメトリーは、H2/COの2/1モル比を必要とし、合成天然ガスの生成は3/1を必要とし、酢酸の合成は1/1を必要とし、アンモニアまたは水素の生成のための合成ガスは水素のみを必要とする。この比は、当該分野で公知の手段によって,例えば、一酸化炭素が水と反応して水素と二酸化炭素とを生成する水性ガスシフト反応を経て調整できる。しかしこの手法は、合成ガスに対して複数の異なる下流の要求が存在する場合には満足できるものではない。例えば、化学品および電力の共生成設備において見出されるような、H2/CO比の要求を変動させながら合成ガスを生成するための統合プロセスを設計する際には、全ての合成ガスをガス化ゾーンから要求H2/CO比が最高のところにシフトさせること,すなわちガスの幾つかの分画をオーバーシフトさせることが1つの手法である。しかし、オーバーシフト手法は、水素の炭素に対するモル比が高い合成ガスを必要としないこれらのプロセスに対するエネルギー損失に影響する。水性ガスシフト反応は発熱反応であり、シフト反応の間に、合成ガス中の一部の化学エネルギー(水性ガスシフト反応の反応エンタルピーと等価)が熱エネルギーに変換されるからである。従って、電力生成は、非シフトガスの利用によって最大化される。例えば、2/1 H2/COモル比にシフトさせることは、非シフトガスと比べて、化学エネルギーの約3〜12%の損失をもたらす可能性がある。損失の量は、合成ガスの初期のH2/COモル比に左右される。よって、モルに対するモルで、シフトガスは非シフトガスよりも低いエネルギー量を有する。
【0003】
統合ガス化複合サイクル(本明細書で「IGCC」と略す)の電力プラントは、典型的には、燃料(通常石炭または石油コークス)ガス化ブロックおよび組合されたサイクルの電力ブロックからなる。組合せサイクルおよび電力のブロックは、天然ガス燃料で用いるものと本来的には等しい。しかし、ガス化プロセスからの合成ガスの発生および利用は、天然ガスパイプラインから燃料を引込むよりも大幅に複雑である。IGCCに関連する、固体粉砕および調製、ガス化、灰処理、ガス冷却、および硫黄除去のステップは、大きな資本を必要とし、そして操業停止および起動を頻繁にすることが困難かつコスト高である。IGCC電力プラントは、制限されたターンダウン能力で連続的に操業するように設計され、そして本質的には、実質的に連続なベース負荷運転に有利に働く。パイプライン系天然ガスと同じくらい容易にガス化ブロックを停止させることができたとしても、ガス化装置ブロックのアイドリングは、電力生成において、長所を生かしかつ経済的不利益の予防をもたらすことになる。従って、組合せサイクルブロックの変動可能な電力生成能力とガス化ブロックの必要なベース負荷運転との間には不釣合いが存在する。IGCCユニットは当該分野においてベース負荷ユニットとして考えられて(これらが中間ロード要素に送り出す能力を有さないことを意味する)いる。多くの電力市場において、電力の価格は、ピーク電力需要期間と低電力需要の期間との間、例えば夜間と昼間との間等の2以上の要素によって変動しうる。ベース負荷運転への依存性は、IGCCを介した電力生成の経済的な実施可能性を深刻に制限する場合がある。実際、最も経済的な解決は、オフピーク期間の間に電力を一切生成しないことであろう。よって、オフピーク電力時間の間に入手できる合成ガスによる電気よりも高価値の製品を生成できるIGCCプロセスに対する要求が存在する。
【0004】
化学品と電力との共生成の潜在的な利益は、例えば、“Clean Coal Technology:Coproduction of Power,Fuels,and Chemicals”,Topical Report 21,September, 2001,U.S.Department of Energy,ならびにGrayおよびTomlinson,“Coproduction:A Green Coal Technology”,Mitretek Technical Report MP 2001−28,March,2001においてよく検討および議論されてきた。化学品と電力との共生成の問題を扱うための多くの変形が先行技術において提案されてきた。一般的な手法は、ガス化ブロックを本質的に一定のベース負荷能力係数で運転することである。よって、発生した粗合成ガスを清浄化して硫黄化合物および他の不純物の大部分を除去し、続いて、清浄化した合成ガスをいわゆる部分変換「貫流(once-through)」(ガスリサイクルなし)化学合成反応に供給するが、未変換の合成ガスは直接ベース負荷発電のために燃焼させる。合成した化学品を貯蔵し、ピーク需要期間の間にガスタービン−スチームタービン組合せサイクルのための燃料として後で使用するか、または過剰の時に販売する。当該分野で例示される、共生成される化学品は、アンモニア、メタノール、ジメチルエーテル、およびフィッシャートロプシュ炭化水素である。
【0005】
化学品の共生成を伴うこのような部分変換プロセスの例は、例えば、米国特許第4,566,267号においてアンモニア共生成について、米国特許第5,392,594号においてメタノールについて、米国特許第3,986,349号および4,092,825号においてフィッシャートロプシュ炭化水素についてならびに米国特許第4,341,069号においてジメチルエーテル共生成について記載されている。化学品と電力との共生成の更なる議論は、例えば、Weberら“Methanol Coproduction:Strategies for Effective Use of IGCC Power Plants”,Proceedings of the American Power Conference (1988),50,pp.288−93に見出せる。しかし「貫流」化学プロセスは、比較的少量の化学品の生成を可能にする。例えば、「貫流」メタノールプロセスは典型的には一酸化炭素/水素供給ガスの約12〜30%を利用し、これにより、入手可能な合成ガス原材料を効率的に使用しない。共生成されうる化学製品の量は制限され、かなりのベース負荷電力運転が依然として要求される。さらに、このような「貫流」プロセスは、化学品生成のためのスケールの経済性に欠け、そしてしばしば高い資源コストをもたらす。
【0006】
化学合成のための非シフト合成ガスの利用は、実現できる最大化学品生成をしばしば深刻に制限する。例えば、メタノール、ジメチルエーテルおよびフィッシャートロプシュ炭化水素の合成は、COの1モル毎にH2を2モル消費し、そして、H2変換が完全であるとしても、このストイキオメトリーの要求が非シフト合成ガス流の変換を制限することになることが容易に明らかである。入手できる水素の制限された割合のみ、典型的には約50%が、貫流合成モードで変換されるため、プロセスは、最大、入手できる合成ガスの約25%のみを化学製品に変換することになる。化学平衡および化学速度論の制限は、潜在的に実現可能な変換を、実際に反応を実施する組成、温度および圧力で更に制約する。
【0007】
上記の欠陥に加えて、上記の当該分野における方法およびプロセスは、下流合成ガスの要求,例えば化学品および電力の共生成等(ここで各要素のために必要な合成ガスの体積および/または組成が時間とともに変動する場合がある)のために複数の合成ガス組成物を生成するという問題を適切に処理しない。化学反応のストイキオメトリー的な制限により、連続的な貫流の化学品および電力の共生成に依拠する構想は、実質的なベース負荷運転を常に必要とし、そして高度な資源の要求をもたらす可能性がある。化学品および電力の共生成のために、電力生成に対するエネルギー損失が最小化され、資源コストが低減され、そして電力生成の間に電力サイクルの最も高い熱効率が維持される一方で、使用されなかった合成ガス燃料を、化学品の生成において、最も高いストイキオメトリー効率および資源効率で化学品に変換するように、共生成の期間の間にシフトされる合成ガスの量を最適化する変動可能な電力生成方法が求められている。最後に、複数ガス化装置構成を有する共生成の構想のために必要なシフト反応器容積を最小化するための方法が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
2つ以上のガス化装置を用いて原合成ガスを中央の水性ガスシフトゾーンに供給し、原合成ガスの一部をシフトさせ、そして、1つ以上の下流合成ガスの要求に合致させるための適切な割合で、水性ガスシフトゾーンの下流のシフトガス流および非シフトガス流を混合することによって、時間変化する組成および体積を有する複数の合成ガス流を効率的に生成できることを我々は見出した。従って、本発明は、変動可能な合成ガス組成物を製造する方法であって、
(a)少なくとも2つのガス化装置を含むガス化ゾーン内でオキシダント流と炭素質材料とを反応させて、一酸化炭素、水素、二酸化炭素および硫黄含有化合物を含む少なくとも2つの原合成ガス流を生成すること;
(b)ステップ(a)で得た原合成ガス流の少なくとも1つの一部を、共通の水性ガスシフト反応ゾーンに通して、水素量に富む少なくとも1つのシフト合成ガス流(i)、および、原合成ガス流の残部を含む少なくとも1つの非シフト合成ガス流(ii)を生成すること;および
(c)シフト合成ガス流(i)と非シフト合成ガス流(ii)の一部とを混合して、少なくとも1つの混合合成ガス流(iii)と非シフト合成ガス流(ii)の残部を含む少なくとも1つの非混合合成ガス流(iv)とを生成し、混合合成ガス流を、少なくとも1つの下流合成ガスの要求に応じて変動する体積および/または組成で生成すること
を含む方法を提供する。
【0009】
本発明は、共通すなわち共有の水性ガスシフト反応ゾーンに接続する少なくとも2つのガス化装置であって、これらのガス化装置で得た原合成ガスの一部が、水素量に富む少なくとも1つのシフト合成ガス流、および原合成ガス流の残部を含む少なくとも1つの非シフトガス流の生成に導かれることができるものを提供する。本発明の他の側面は、シフト合成ガス流と、ガス化ゾーンおよび水性ガスシフト反応ゾーンの下流の非シフト合成ガス流の全部または一部とを混合して混合または非混合の合成ガス流を生成することである。余剰ガス冷却ゾーンおよび酸ガス除去ゾーンは、最大スケールが可能な系列サイズで一定の変動可能な組成のシフトおよび非シフトの合成ガス流が、ガス化ゾーンおよび水性ガスシフト反応ゾーンの下流の合成ガスヘッダーシステムを介して該ゾーンに供給できるように与えられる。これらの合成ガス流の組成は、時間ごとに、少なくとも1つの下流合成ガスの要求,例えば少なくとも1つの化学プロセスの原材料要求、少なくとも1つの電力プラントの燃料要求またはこれらの組合せ等に従って変動させることができる。
【0010】
本発明の一態様において、例えば、混合合成ガス流がメタノールまたはジメチルエーテルの生成ゾーンを通ることができ、そして非混合合成ガス流が電力生成ゾーンを通って電気を生成できる。水性ガスシフト反応ゾーンからは、シフト合成ガス流からの熱回収によりスチームを形成でき、そして該スチームの一部を原合成ガスと組合せて、水性ガスシフト反応のための湿潤合成ガスを与えることができる。よって、本発明はまた、変動可能な合成ガス組成物を製造するプロセスを提供し、該プロセスは:
(a)少なくとも2つのガス化装置を含むガス化ゾーン内でオキシダント流と石炭(coal)または石油コークスとを反応させて、一酸化炭素、水素、二酸化炭素および硫黄含有化合物を含む少なくとも2つの原合成ガス流を生成すること;
(b)ステップ(a)で得た原合成ガス流の少なくとも1つの一部を共通の水性ガスシフト反応ゾーンに通して、水素の一酸化炭素に対するモル比が1:1から20:1である少なくとも1つのシフト合成ガス流(i)と、原合成ガス流の残部を含む少なくとも1つの非シフト合成ガス流(ii)とを生成すること;
(c)水性ガスシフト反応ゾーン内で、シフト合成ガス流(i)からの熱の回収によりスチームを発生させること;
(d)ステップ(c)で得たスチームの一部と1つ以上の原合成ガス流の一部とを、水性ガスシフト反応ゾーンに通す前に組合せること;
(e)シフト合成ガス流(i)と非シフト合成ガス流(ii)の一部とを混合して、少なくとも1つの混合合成ガス流(iii)と非シフト合成ガス流(ii)の残部を含む少なくとも1つの非混合合成ガス流(iv)とを生成すること;ならびに
(f)混合ガス流(iii)をメタノールまたはジメチルエーテルの生成ゾーンに通し、そして非混合ガス流(iv)を電力生成ゾーンに通すこと
を含む。
【0011】
混合合成ガス流および非混合合成ガス流は、メタノール生成ゾーンおよび電力生成ゾーンに通すことができ、そしてピークおよびオフピークの電力需要に応じて変動する体積で生成できる。よって、我々の発明の他の態様は、変動可能な量の電力およびメタノールを製造するプロセスであって、該プロセスは:
(a)少なくとも2つのガス化装置を含むガス化ゾーン内でオキシダント流と石炭または石油コークスとを反応させて、一酸化炭素、水素、二酸化炭素および硫黄含有化合物を含む少なくとも2つの原合成ガス流を生成すること;
(b)ステップ(a)で得た原合成ガス流の少なくとも1つの一部を共通の水性ガスシフト反応ゾーンに通して、水素量に富む少なくとも1つのシフト合成ガス流(i)と、原合成ガス流の残部を含む少なくとも1つの非シフト合成ガス流(ii)とを生成すること;
(c)シフト合成ガス流(i)と非シフト合成ガス流(ii)の100体積パーセント以下とを混合して、少なくとも1つの混合合成ガス流(iii)と非シフト合成ガス流(ii)の残部とを生成すること;
(d)ステップ(c)で得た混合ガス流(iii)をメタノール生成ゾーンに通すことによってメタノールを生成すること;ならびに
(e)非シフト合成ガス流(ii)の残部を電力生成ゾーンに通して電気を生成すること
を含み;混合合成ガス流は、電力生成ゾーンのピークおよびオフピークの電力需要の期間に応じて変動する体積で生成される。合成ガスは、合成ガスの要求が周期的かつ実質的にずれた位相で変動するメタノール生成ゾーン内および電力生成ゾーン内で消費される。一態様において、例えばオフピークの電力需要の期間の間、非シフト合成ガスの100パーセント以下がシフト合成ガスと混合され、メタノールを生成するために使用される少なくとも1つの混合合成ガスを生成する。これに代えて、ピーク電力需要の期間の間、原合成ガスはそれほどシフトせず、そして電力プラントに導かれて電気を生成できる。
【0012】
図面の簡単な説明
図1は、変動可能な組成および体積の合成ガスを生成するための一態様についての概略フロー図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
詳細な説明
本発明は、共通すなわち共有の水性ガスシフト反応ゾーンに接続した少なくとも2つのガス化装置を提供する。ここで、これらのガス化装置からの原合成ガスの一部を導いて、水素量に富む少なくとも1つのシフト合成ガス流、および、原合成ガス流の残部を含む少なくとも1つの非シフトガス流を生成できる。シフト合成ガスおよび非シフト合成ガスの残部は、水性ガスシフト反応ゾーンの下流で混合して混合合成ガス流および非混合合成ガス流を生成できる。よって、一般的態様において、本発明は、変動可能な合成ガス組成物を製造するプロセスを提供し、該プロセスは:
(a)少なくとも2つのガス化装置を含むガス化ゾーン内でオキシダント流と炭素質材料とを反応させて、一酸化炭素、水素、二酸化炭素および硫黄含有化合物を含む少なくとも2つの原合成ガス流を生成すること;
(b)ステップ(a)で得た前記原合成ガス流の少なくとも1つの一部を共通の水性ガスシフト反応ゾーンに通して、水素量に富む少なくとも1つのシフト合成ガス流(i)と、前記原合成ガス流の残部を含む少なくとも1つの非シフト合成ガス流(ii)とを生成すること;ならびに
(c)前記シフト合成ガス流(i)と前記非シフト合成ガス流(ii)の一部とを混合して、少なくとも1つの混合合成ガス流(iii)と非シフト合成ガス流(ii)の残部を含む少なくとも1つの非混合合成ガス流(iv)とを生成すること;
を含み、前記混合合成ガス流を、少なくとも1つの下流合成ガスの要求に応じて変動する体積および/または組成で生成する。混合合成ガス流および非混合合成ガス流の体積および組成は、時間ごとに変動させて、1つ以上の下流合成ガスの要求,例えばメタノールプラントのための原材料要求、電力プラントのための燃料またはこれらの組合せ等を満足させることができる。我々の発明に従い、1つ以上のガス化装置内で炭素質材料と酸素とを連続的に反応させて、実質的に一定速度で合成ガスを生成することができる。本明細書で用いる用語「実質的に一定速度」は、中断しない方法かつ一定レベルでガスが連続的に提供されることを意味するものと理解される。しかし、「実質的に一定速度」は、例えばメンテナンス、起動、または予定の操業停止の期間によって生じる場合がある通常の中断を排除することを意図しない。本発明の目的のために、用語「硫黄」および「硫黄含有化合物」は、同義であって、本来的に有機または無機であるいずれの任意の硫黄含有化合物も意味する。このような硫黄含有化合物の例は、硫化水素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫酸、元素状硫黄、硫化カルボニル、メルカプタン等によって例示される。二酸化炭素、一酸化炭素および水素を含む本発明の合成ガスは、当該分野で公知の多くの方法,例えば天然ガスもしくは石油派生物等の炭素質材料のスチームまたは二酸化炭素の再形成等の任意のものによって提供できるが、炭素質材料,例えば石油残渣、瀝青、亜瀝青、ならびに無煙炭およびコークス、褐炭、オイルシェール、油砂、泥炭、バイオマス、石油精製残渣またはコークス等の一部酸化またはガス化によって好ましく得られる。
【0014】
別に特記しない限り、以下の説明および添付の特許請求の範囲において記載する数値パラメータは近似値であり、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変動しうる。最低でも、各数値パラメータは、少なくとも記録される有効数字の数の観点で、通常の丸め技術を適用して解釈すべきである。更に、本開示および特許請求の範囲において記載される範囲は、1つまたは複数の端点のみでなく全範囲を具体的に包含することが意図される。例えば、0から10と記載される範囲は、0から10の間の全ての整数,例えば1,2,3,4等、0から10の間の全ての分数,例えば1.5,2.3,4.57,6.113等、そして端点0および10を開示することが意図される。また、化学置換基に関連する範囲,例えば「C1からC5の炭化水素」は、C1およびC5の炭化水素ならびにC2,C3およびC4の炭化水素を具体的に包含および開示することが意図される。
【0015】
本発明の広い範囲を説明する数値の範囲およびパラメータが近似値であることに関わらず、具体例において説明する数値は、可能な限り厳密に記録される。しかし、任意の数値は、これらのそれぞれの試験測定において見られる標準偏差によってもたらされる不可避的な所定の誤差を本質的に含む。
【0016】
詳細な説明および添付の特許請求の範囲において用いる単数形"a" "an" "the"は、文脈から別であることが明確でない限りこれらの複数の指示対象を包含する。例えば、a "syngas stream(合成ガス流)"、またはa "gasifier(ガス化装置)"への言及は、1つ以上の合成ガス流またはガス化装置を包含することを意図する。"an" ingredient(含有成分)または"a" step(ステップ)を含有または包含する組成物またはプロセスの言及は、名称を挙げたものに加えて他の含有成分または他のステップをそれぞれ包含することを意図する。
【0017】
"comprising(含む)"または"containing(含有する)"または"including(包含する)"により、少なくとも名称を挙げた化合物、元素、粒子または方法ステップ等が組成物または物品または方法において存在することを我々は意味する。しかし、他の化合物、触媒、材料、粒子、方法ステップ等の存在は、他のこのような化合物、材料、粒子、方法ステップ等が名称を挙げたものと同一の機能を有する場合でも、特許請求の範囲において明示的に排除していない限りは排除するものではない。
【0018】
1つ以上の方法ステップの言及が、組合せの列挙されたステップの前または後の追加の方法ステップまたは明示的に規定されるそれらのステップの間に介在する方法ステップの存在を排除しないこともまた理解すべきである。更に、プロセスステップまたは含有成分の文字は、個々の活性または含有成分を規定するための便宜的な手段であり、そして列挙される文字は特記がない限り任意の順序に並べることができる。
【0019】
本発明のプロセスは、少なくとも2つのガス化装置を含むガス化ゾーン内でオキシダント流と炭素質材料とを反応させて、一酸化炭素、水素、二酸化炭素および硫黄含有化合物を含む少なくとも2つの原合成ガス流を生成することを包含する。典型的には、2つ以上のガス化装置が、電力生成ゾーンの最大容量燃料要求の少なくとも90%を供給するサイズとされる。幾つかの公知のガス化プロセスの任意の1つを、本発明の方法に組み込める。これらのガス化プロセスは、一般的に、“Gasification”,(C.Higman and M.van der Burgt,Elsevier,2003)の第5章に提示される広い範疇に入る。例は、移動床ガス化装置,例えばLurgi乾式灰化プロセス、British Gas/Lurgiスラッギングガス化装置、Ruhr 100ガス化装置等;流動床ガス化装置,例えばWinklerおよび高温Winklerプロセス、Kellogg Brown and Root(KBR)移送ガス化装置、Lurgi循環流動床ガス化装置、U−Gas塊状流動床プロセス(agglomerating fluid bed process)、およびKellogg Rust Westinghouse塊状流動床プロセス;ならびに噴流ガス化装置,例えばTexaco,Shell,Prenflo,Noell,E−Gas(またはDestec),CCP,Eagle,およびKoppers−Totzekプロセスである。プロセスにおける使用のために検討されるガス化装置は、1から103絶対bar(本明細書で“bara”と略す)および400℃から2000℃の間の圧力および温度の範囲に亘って、21から83baraおよび500℃から1500℃の間の温度の範囲の好ましい値で運転できる。その中で用いる炭素質または炭化水素質の原材料およびガス状の一酸化炭素、二酸化炭素および水素を発生させるために利用するガス化装置の種類に応じて、原材料の準備は、粉砕、および、粉砕された原材料の好適な流体(例えば、水、有機液体、超臨界または液体の二酸化炭素)中での乾燥、スラリー化のうち1つ以上の単位操作を含むことができる。酸化されて合成ガスを生成できる典型的な炭素質材料としては、これらに限定するものではないが、石油残渣、瀝青、亜瀝青、ならびに無煙炭およびコークス、褐炭、オイルシェール、油砂、泥炭、バイオマス、石油精製残渣、石油コークス等が挙げられる。
【0020】
オキシダント流は、純粋な分子酸素または分子酸素の相当量を含有する他の好適なガス状流を含むことができ、炭素質または炭化水素質の原材料とともにガス化装置に充填する。オキシダント流は、当該分野で公知の任意の方法,例えば空気の低温蒸留、圧力スイング吸着、膜分離、またはこれらにおける任意の組合せによって調製できる。オキシダント流の純度は、典型的には酸素が少なくとも85体積%であり;例えば、オキシダント流は、酸素を少なくとも95体積%、または、他の例では酸素を少なくとも98体積%含むことができる。
【0021】
オキシダント流および調製した炭素質または炭化水素質の原材料を、少なくとも2つのガス化装置内に導入し、ここで該オキシダントは消費され、原材料は、一酸化炭素、水素、二酸化炭素、水および種々の不純物(例えば硫黄含有化合物等)を含む少なくとも2つの合成のガス(合成ガス)流に実質的に変換される。原合成ガス流が含有しうる不純物の例としては、原材料の由来およびガス化装置の種類に応じて、硫化水素、硫化カルボニル、メタン、アンモニア、シアン化水素、塩化水素、水銀、ヒ素、および他の金属が挙げられる。少なくとも2つのガス化装置に加え、ガス化ゾーンは、高温ガス冷却設備、灰/スラグ処理設備、ガスフィルター、およびスクラバーを含むことができる。オキシダントおよび原材料をガス化装置内に導入する緻密な様式は当該分野の技術の範囲内である;しかし典型的には、ガス化装置は、連続的にかつ実質的に一定速度で運転することになる。
【0022】
水性ガスシフト反応を採用して、合成ガスの水素の一酸化炭素に対するモル比を変え、そして化学品生成のための水素と一酸化炭素との正しいストイキオメトリーを与えることができる。よって、本発明のプロセスは、原合成ガス流の少なくとも1つをガス化ゾーンから共通の水性ガスシフト反応ゾーンに通して、水素量に富む少なくとも1つのシフト合成ガス流(i)、および、原合成ガス流の残部を含む少なくとも1つの非シフト合成ガス流(ii)を生成することを含む。原合成ガスに関して本明細書で用いる用語「一部」は、単一の原合成ガス流の一部分または一画分、2つ以上の原合成ガス流の一部分、または、例えば中央のガスヘッダーまたはマニホールドで複数の原合成ガス流を混合した後または組合せた後等の、ガス化ゾーンからの原合成ガス産出物全体の一部分を意味するものと理解される。例えば、合成ガス流の総体積基準で、原合成ガス流の1つ以上の1から100体積%を、共通の水性ガスシフト反応ゾーンに導くことができる。他の例では、ガス化ゾーンからの複数の原合成ガス流を、中央のガスヘッダーまたはマニホールドにおいて組合せることができ、そして、組合された流れの総体積基準で、組合された流れの1から90体積%を、共通の水性ガスシフト反応ゾーンに通すことができる。本明細書で用いる用語「共通」は、各ガス化装置が、その合成ガス産出物を加工するために別個の水性ガスシフトゾーンを有するのとは逆に、水性ガスシフト反応ゾーンが少なくとも2つのガス化装置によって接続されかつ共有されているという意味を意図するが、1つより多い水性ガスシフト反応ゾーンが存在してもよい。従って、本発明の一側面において、我々のプロセスは複数の水性ガスシフト反応ゾーンを包含でき、そして水性ガスシフト反応ゾーンの少なくとも1つが少なくとも2つのガス化装置によって接続されかつ共有されている。
【0023】
原合成ガス流の少なくとも1つの一部は、合成ガスが平衡限界の水性ガスシフト反応を受ける共通の水性ガスシフト反応ゾーンに導かれ、一酸化炭素は水と反応して水素と二酸化炭素とを生成する。
【0024】
CO+H2O←→CO2+H2
典型的には、水性ガスシフト反応は、触媒様式にて当該分野で公知の方法により達成される。有利には、水性ガスシフト触媒は耐硫黄性である。例えば、このような耐硫黄性の触媒としては、これらに限定するものではないが、コバルト−モリブデン触媒が挙げられる。運転温度は典型的には250℃から500℃である。
【0025】
水性ガスシフト反応は、発熱反応の放熱を制御するための当該分野で公知の任意の反応器形式で達成できる。好適な反応器形式の例は、単段の断熱固定床反応器;段間冷却、スチーム発生またはコールドショット(cold-shotting)を伴う多段の断熱固定床反応器;スチーム発生または冷却を伴う管状固定床反応器;および流動化床である。典型的には一酸化炭素の約80〜90%が単段断熱反応器内で平衡限界により二酸化炭素と水素とに変換されることになる。より多い変換が必要な場合(すなわち水素生成のために)には、出口ガス温度がより低い追加の段階を用いることができる。
【0026】
水性ガスシフト反応の高度に発熱性の性質に起因して、シフト合成ガス流(i)からの熱を、これが水性ガスシフト反応ゾーンから出るのに従い、かつこれが非シフト合成ガス流(ii)と混合される前に回収することにより、水性ガスシフト反応ゾーン内でスチームを発生させることができる。水性ガスシフト反応ゾーン内で発生したスチームは、共通のスチームヘッダーに導いて一般的な実用スチームとして用いることができる。しかし、ガス化によって生成する原合成ガスは、水性ガスシフト反応を所望の変換まで実施するのに十分な水をしばしば含有しない。これに代えて、スチームの一部をガス化ゾーンからの1つ以上の原合成ガス流の一部と組合せて少なくとも1つの湿潤合成ガス流を生成し、そして該湿潤合成ガス流を水性ガスシフト反応ゾーンに通すことによって、水性ガスシフト反応ゾーンに入る原合成ガスに十分な水を添加するために、水性ガスシフト反応ゾーン内で発生するスチームを用いることができる。典型的には、湿潤合成ガス流における水の一酸化炭素に対するモル比は1.5:1から3:1である。更なる例の、生成できる水:一酸化炭素のモル比は、2:1および2.5:1である。
【0027】
シフト合成ガス流(i)を非シフト合成ガス流(ii)の一部と混合して、少なくとも1つの混合合成ガス流(iii)、および、非シフト合成ガス流(ii)の残部を含む少なくとも1つの非混合合成ガス流(iv)を生成できる。我々の発明に関し、混合合成ガス流および非混合合成ガス流、それぞれ(iii)および(iv)の体積および組成は、水性ガスシフト反応ゾーンに導かれる原合成ガスの部分、水性ガスシフト反応ゾーン内のCOの変換、およびシフト合成ガス流(i)と混合される非シフト合成ガス流(ii)の部分等の1つ以上のパラメータを変えることによって容易かつ迅速に調整できる。シフトガス流および非シフトガス流の混合は、当業者に公知の任意の手段によって、例えば組合されたガス流にスタティックミキサーを通過させること等によって達成できる。混合合成ガス流および非混合合成ガス流,それぞれ(iii)および(iv)の体積、ならびに/または混合合成ガス流(iii)の組成は、時間ごとに、少なくとも1つの下流の要求,例えば少なくとも1つの化学プロセスの原材料要求、少なくとも1つの電力プラントの燃料要求、またはこれらの組合せ等に応じて変動させることができる。例えば、混合合成ガス流(iii)および非混合合成ガス流(iv)は、少なくとも1つの下流合成ガスの要求に応じて周期的に変動する体積で生成できる。本明細書で用いる用語「周期的に」は、その一般的に受入れられる意味「時間間隔または期間に関連しまたは生じる」を有するものと理解される。期間または時間間隔は、例えば24時間毎に1回等の規則的に、または不規則に生じることができる。
【0028】
一態様において、例えば、本発明のプロセスは、混合合成ガス流(iii)を化学品生成ゾーンに通し、そして非混合合成ガス流(iv)を電力生成ゾーンに通すことを更に含み、これらは同時または循環的かつ実質的にずれた位相で運転できる。電力生成ゾーンは、合成ガス供給物における化学的および動力学的なエネルギーを電気的または機械的なエネルギーに変換するための手段,典型的には少なくとも1つのターボエキスパンダー(以後「燃焼タービン」ともいう)の形状のものを含む。典型的には、電力生成ゾーンは、組合された循環システムを、合成ガス中のエネルギーを電気エネルギーに変換するための最も効率的な方法として含むことになり、発電のためのBraytonサイクルおよびCarnotサイクルを含む。組合された循環運転において、ガス状燃料を、酸素含有ガスと組合せ、燃焼させ、そして1つ以上の燃焼タービンに供給されて電気的または機械的なエネルギーを発生させる。1つまたは複数の燃焼タービンからの高温排出ガスを、1つ以上の熱回収スチーム発生器(HRSG)に供給し、ここで高温排出ガス中の熱エネルギーの何分の一かをスチームとして回収する。1つ以上のHRSGからのスチームおよびプロセスの他の区分で発生する任意のスチーム(すなわち化学反応の発熱の回収による)を1つ以上のスチームターボエキスパンダーに供給して、凝縮手段に排出するタービン内の任意の残りの低レベルの熱の排除前に電気的または機械的なエネルギーを発生させる。基本的な組合された循環運転における多くの変形が当該分野で公知である。例は、HAT(湿り空気タービン)サイクルおよびTophatサイクルである。本発明の電力生成ゾーン内で制限なく使用するために全てが好適である。例えば、本発明の他の態様において、電力生成ゾーンは、統合ガス化複合サイクル(本明細書で「IGCC」と略す)の電力プラントを含むことができる。
【0029】
本発明の他の側面において、混合合成ガス流および非混合合成ガス流は、電力生成ゾーンのピークおよびオフピークの電力需要に応じて変動する体積で生成できる。例えば、オフピーク電力需要の期間の間、電気を生成する燃焼タービンの1つ以上を操業停止できる。燃焼タービンが操業停止することにより、燃焼タービンによって消費された、ステップ(a)で得た原合成ガスの部分が代わりに水性ガスシフト反応ゾーンに送られて、増大した体積のシフト合成ガス流(i)および混合合成ガス流(iii)ならびにそれほど多くない非シフト合成ガス流(ii)および非混合合成ガス流(iv)を生成する。非シフト合成ガス流(ii)の一部は、シフト合成ガス流(ii)と混合して、化学品生成ゾーンに対して好適な水素:一酸化炭素のモル比を有する少なくとも1つの混合合成ガス流(iii)を生成する。例えば、水素:一酸化炭素のモル比約2:1は、メタノール生成に必要である。次いで、混合合成ガス流(iii)は、化学品生成ゾーンに導かれる。しかし、ピーク電力需要の期間の間、この手順は逆になり、そして共通の水性ガスシフト反応ゾーンに導かれる原合成ガスの体積を低減させ、かつより大きい体積の非混合合成ガス(iv)を生成して燃焼タービンに送る。この様式においては、合成ガスの処理量を実質的にベース負荷値に維持して、高価な合成ガス発生設備を完全に利用する一方、循環的かつ変動可能な電力負荷要素を送って発電に不要な合成ガスを用いた化学品生成を最大化する。このような新規な組合せは、発電運転に著しい柔軟性を提供し、実質的な経済的利点を提供し、そして、電気生産者が直面する現在の電力変動の要求に特に反応性が良い。このことは、発電設備が不経済な負荷追従能力のベース負荷モードで運転される従来のIGCC電力プラント設計と直接対比される。例えば、本発明の一態様において、電力プラントは、日中のピーク電力需要で、その最大電力生成能力の100%で運転でき、そして合成ガスによって完全に燃料供給できる。
【0030】
本発明の内容の範囲内において本明細書で用いる「ピーク電力需要」は、既定の24時間の期間内での電力生成ゾーンの最大電力需要を意味する。本明細書で用いる語句「ピーク電力需要の期間」は、電力生成ゾーンの電力需要が最大電力需要の少なくとも90%である、上記24時間の期間内における時間の1つ以上の間隔を意味する。本明細書で用いる「オフピーク電力需要の期間」は、電力生成ゾーンの電力需要が上記で規定したピーク電力需要の90%未満である、既定の24時間の期間内の時間の1つ以上の間隔を意味する。
【0031】
化学品生成ゾーンは、合成ガス原材料から効率的に得られる任意の化学品,例えばメタノール、アルキルホルメート、オキソアルデヒド、アンモニア、ジメチルエーテル、水素、フィッシャートロプシュ(Fischer-Tropsch)生成物、メタン、またはこれらの化学品の1種以上の組合せ等を生成するために使用できる。例えば、本発明の一態様において、化学品生成ゾーンはメタノール生成ゾーンである。
【0032】
メタノール生成ゾーンは、当業者に周知の任意の種類のメタノール合成プラントを含むことができ、そしてこれらの多くが商業ベースで広く実施されている。最も商業的なメタノール合成プラントは、気相中で圧力範囲25から140baraで、用いる技術に応じて種々の銅系の触媒系を用いて運転する。メタノールを合成するための多数の種々の最先端技術,例えばICI(Imperial Chemical Industries)プロセス、Lurgiプロセス、Haldor−Topsoeプロセス、およびMitsubishiプロセス等が公知である。液相プロセスもまた当該分野で周知である。よって、本発明に係るメタノールプロセスは、固定床または液体スラリー相のメタノール反応器を含むことができる。
【0033】
合成ガス流は、典型的には、採用するプロセスに応じ、圧力25から140baraでメタノール反応器に供給する。次いで、合成ガスは、触媒上で反応してメタノールを形成する。反応は発熱的である;従って、熱除去が通常必要である。次いで、原すなわち不純のメタノールを凝縮させ、精製してエタノール、プロパノール等の高級アルコール等の不純物を除去することができ、または精製せずに燃料として燃焼させることができる。未反応の合成ガス原材料を含む凝縮されていない蒸気相は、典型的にはメタノールプロセス供給物にリサイクルする。
【0034】
電力生成と化学品生成との間の切替えは、本発明の他の検討事項である。例えば、気相反応によってメタノールを生成する際およびメタノール生成がない期間の間には、メタノール反応器への流れを大幅に低減または停止できる。反応器をバルブで閉め、反応性合成ガス成分がメタノール生成の平衡限界に迅速に到達するように反応器内にガス状成分を収容することができる。反応器は、このアイドル状態に無期限に維持できる。しかし、メタノール生成が合成ガス流の開放再導入を直ちに開始するように、例えば200℃超に反応器温度を維持することが好ましい。驚くべきことに、触媒および反応器自体の熱質量が、温度を所望範囲よりも高温に数時間,典型的には4から10時間、更なる加熱なしで維持することになることを見出した。しかし、アイドル状態とされた反応器内に追加の熱注入を与えることが必要である場合がある。追加の熱は、本発明で用いる反応器形式に応じて、反応器を経る高温不活性ガス(例えば窒素)の循環、または伝熱媒体(例えば高温の水またはスチーム)を反応器の伝熱表面(例えば固定床管状反応器の管壁)に接触させることによって与えることができる。
【0035】
液相スラリー反応器については、メタノール反応器がアイドルモード,すなわちピーク電力需要の期間の間にある時に触媒を液体中に懸濁させて維持することが有利である。触媒の沈降を防止するような速度および体積で、不活性ガス,例えば窒素を反応性合成ガスに代えて反応器に供給する。触媒の懸濁の確保に必要な流速を算出するための方法は当該分野で周知である。メタノール生成を再開すべき時には、窒素流を低減させるにつれて合成ガスを流し始める。初期に高くすることができる反応器からのパージは、窒素の量が下降するのに従い通常レベルに低減させる。
【0036】
スラリー流体、反応容器、および/または触媒の熱質量は、温度を所望範囲よりも高く数時間、典型的には4から10時間、更なる加熱なしで維持することになる。しかし、アイドル状態とされた反応器に追加の熱注入を与えることが必要な場合がある。追加の熱は、本発明で用いる反応器形式に応じて、反応器を経る高温不活性ガス(例えば窒素)の循環、または伝熱媒体(例えば高温の水またはスチーム)を反応器の伝熱表面に接触させることによって与えることができる。例えば、合成ガス流の少なくとも1つの一部を、ピーク電力需要の期間の間にメタノール生成ゾーンに通し、少量のメタノールの生成を通してメタノール生成ゾーンを高温に維持することができる。次いで、ピーク電力需要の期間の間の追加燃料として、メタノール生成物の全てをメタノール生成ゾーンから電力生成ゾーンに通すことができる。
【0037】
ステップ(b)で得た合成ガス流(i)および(ii)の各々またはステップ(c)で得た合成ガス(iii)および(iv)の各々に、1つ以上の別個のガス冷却ゾーンを通過させることができ、ここで合成ガスの温度が低減される。ガス冷却および合成ガスからの熱エネルギーの回収は、当該分野で公知の任意の手段によって達成できる。例えば、ガス冷却ゾーンは、以下の、スチーム発生熱交換器(すなわちボイラー)(ここで熱は合成ガスから移動して水を沸騰させる);ガス−ガス交流器;ボイラー供給水交換器;強制空気交換器;水冷却交換器;直接接触水交換器;またはこれらの熱交換器の1つ以上の組合せから選択される種類の熱交換器の少なくとも1つを含むことができる。より低圧のスチームレベルを上手く生成できる複数のスチーム発生熱交換器の使用は、本発明の範囲内となるよう達成される。ガス冷却ゾーン内で発生したスチームおよび凝縮物は、異なる圧力の1つ以上のスチーム生成物を実現できる。ガス冷却ゾーンは、微量不純物,例えばアンモニア、塩化水素、シアン化水素、および微量金属,例えば水銀、ヒ素等の除去のための他の吸収、吸着、または凝縮のステップを任意に含むことができる。
【0038】
我々の新規なプロセスは、ステップ(b)で得た合成ガス流(i)および(ii)の各々またはステップ(c)で得た合成ガス流(iii)および(iv)の各々に、別個の酸ガス除去ゾーン(ここで、酸性ガス,例えば硫化水素または二酸化炭素等が除去されるか、またはこれらの濃度が低減される)を通過させることを更に含むことができる。例えば、酸ガス除去ゾーン内の合成ガス中に存在する硫黄含有化合物を除去して、化学合成にガスが用いられる際の任意の触媒の被毒を防止すること、または電力生成のためにガスを用いる際の硫黄の環境への放出を低減させることがしばしば好ましい。従って、本発明に従い、酸ガス除去ゾーンは、硫黄含有化合物のガス状流からの除去のための当該分野で公知の多数の方法のうち任意のものを採用できる硫黄除去ゾーンを含むことができる。硫黄化合物は、化学吸収法によって,例示的には、苛性ソーダ、炭酸カリウムもしくは他の無機塩基、またはアルカノールアミンを用いることによって、合成ガス供給物から硫黄除去ゾーンに回収できる。本発明のための好適なアルカノールアミンの例としては、全体で10個以下の炭素原子を含み、標準沸点が250℃未満である1級、2級および3級のアミノアルコールが挙げられる。具体例としては、1級アミノアルコール,例えばモノエタノールアミン(MEA)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、1−アミノブタン−2−オール、2−アミノブタン−1−オール、3−アミノ−3−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−エチル−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−3−ペンタノール、2−アミノ−2−メチル−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−ペンタノール、3−アミノ−3−メチル−1−ブタノール、3−アミノ−3−メチル−2−ブタノール、2−アミノ−2,3−ジメチル−1−ブタノール、2級アミノアルコール,例えばジエタノールアミン(DEA)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2−(メチルアミノ)エタノール(MAE)、2−(プロピルアミノ)エタノール、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、2−(ブチルアミノ)エタノール、1−(エチルアミノ)エタノール、1−(メチルアミノ)エタノール、1−(プロピルアミノ)エタノール、1−(イソプロピルアミノ)エタノール、および1−(ブチルアミノ)エタノール、ならびに3級アミノアルコール,例えばトリエタノールアミン(TEA)、およびメチルジエタノールアミン(MDEA)が挙げられる。
【0039】
これに代えて、酸ガス除去ゾーンへの合成ガス供給物中の硫黄は、物理的な吸収方法によって除去できる。好適な物理的な吸収剤溶媒の例は、メタノールおよび他のアルカノール、プロピレンカーボネートおよび他のアルキルカーボネート、グリコール単位2から12のポリエチレングリコールのジメチルエーテル、およびこれらの混合物(Selexol(商標)溶媒の商標名で一般的に公知のもの)、n−メチルピロリドン、ならびにスルホランである。物理的および化学的な吸収方法は、スルホランおよびアルカノールアミンを吸収剤として用いるSulfinol(商標)プロセス、またはアミンとメタノールとの混合物を吸収剤として用いるAmisol(商標)プロセスに例示されるように併せて用いることができる。
【0040】
硫黄含有化合物は、チタン酸亜鉛、亜鉛フェライト、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅、酸化セリウム、またはこれらの混合物により例示される固体の固定床、流動化床、または移動床を用いた固体収着法によってガス状供給物から硫黄除去ゾーンに回収できる。化学合成の要求のために必要な場合には、化学的もしくは物理的な吸収プロセスまたは固体収着プロセスに、最終的な硫黄除去のための追加の方法を続けることができる。最終的な硫黄除去プロセスの例は、酸化亜鉛、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、および酸化コバルトへの吸着である。
【0041】
典型的には、合成ガス流(i)および(ii)または(iii)および(iv)において存在する硫黄含有化合物全体の少なくとも90モルパーセント、より典型的には少なくとも95モルパーセント、および更により典型的には少なくとも99モルパーセントが、硫黄除去ゾーンにおいて除去される。典型的には、化学品生成のために用いる合成ガスは、化学合成触媒の不活性化を防ぐために、より厳しい硫黄除去、すなわち少なくとも99.5%の除去を必要とし、より典型的には、硫黄除去ゾーンからの排ガスが含む硫黄が5体積5ppm未満であることを必要とする。
【0042】
酸ガス除去ゾーン内では、シフト合成ガス流および混合合成ガス流(i)または(iii)を化学品生成ゾーンに通す前に、硫黄に加え、存在する二酸化炭素の一部も除去できる。二酸化炭素の除去または低減は当該分野で公知の多数の方法のうち任意のものを含むことができる。ガス状供給物中の二酸化炭素は、苛性ソーダ、炭酸カリウムもしくは他の無機塩基、またはアルカノールアミンを用いることにより例示される化学的な吸収方法によって除去できる。本発明のために好適なアルカノールアミンの例としては、全体で10個以下の炭素原子を含み、標準沸点が250℃未満である1級、2級および3級のアミノアルコールが挙げられる。具体例としては、1級アミノアルコール,例えばモノエタノールアミン(MEA)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、1−アミノブタン−2−オール、2−アミノブタン−1−オール、3−アミノ−3−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−エチル−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−3−ペンタノール、2−アミノ−2−メチル−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−ペンタノール、3−アミノ−3−メチル−1−ブタノール、3−アミノ−3−メチル−2−ブタノール、2−アミノ−2,3−ジメチル−1−ブタノール、ならびに2級アミノアルコール,例えばジエタノールアミン(DEA)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2−(メチルアミノ)エタノール(MAE)、2−(プロピルアミノ)エタノール、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、2−(ブチルアミノ)エタノール、1−(エチルアミノ)エタノール、1−(メチルアミノ)エタノール、1−(プロピルアミノ)エタノール、1−(イソプロピルアミノ)エタノール、および1−(ブチルアミノ)エタノール、ならびに3級アミノアルコール,例えばトリエタノールアミン(TEA)、およびメチルジエタノールアミン(MDEA)が挙げられる。
【0043】
これに代えて、ガス状供給物中の二酸化炭素は、物理的な吸収方法によって除去できる。好適な物理的な吸収剤溶媒の例は、メタノールおよび他のアルカノール、プロピレンカーボネートおよび他のアルキルカーボネート、グリコール単位2から12のポリエチレングリコールのジメチルエーテル、およびこれらの混合物(Selexol(商標)溶媒の商標名で一般的に公知のもの)、n−メチルピロリドン、ならびにスルホランである。物理的および化学的な吸収方法は、スルホランおよびアルカノールアミンを吸収剤として用いるSulfinol(商標)プロセス、またはアミンとメタノールとの混合物を吸収剤として用いるAmisol(商標)プロセスに例示されるように併せて用いることができる。化学合成の要求のために必要な場合には、化学的もしくは物理的な吸収プロセスに、最終的な二酸化炭素除去のための追加の方法を続けることができる。最終的な二酸化炭素除去プロセスの例は、圧力または温度スイング吸着プロセスである。
【0044】
特定の化学合成プロセスに必要な場合、供給物ガス中の二酸化炭素の、典型的には少なくとも60%、より典型的には少なくとも80%を、酸ガス除去ゾーン内で除去できる。例えば、本発明のプロセスは、合成ガスをメタノール生成ゾーンに通す前に、シフト合成ガス流または混合合成ガス流(i)または(iii)から二酸化炭素を除去して、合成ガス流中のガスの総モル基準で0.5から10モル%の二酸化炭素濃度を与えることを更に含むことができる。他の例において、二酸化炭素を合成ガス流(i)または(iii)の少なくとも1つから濃度2から5モル%まで除去することができる。硫黄および二酸化炭素の除去技術の多くは、硫黄および二酸化炭素の両者の除去が可能である。よって、硫黄および二酸化炭素の除去ステップを一緒に統合して、硫黄と二酸化炭素とを各々選択的に(すなわち、実質的に別個の生成物流で)、または非選択的に(すなわち、1つの組合された生成物流として)、当該分野で周知の手段によって同時に除去することができる。
【0045】
ここに用いる特定の酸ガス除去技術によって必要とされるように粗合成ガスの温度を低減させるために、酸ガス除去ゾーンには前述したようなガス冷却ゾーンが先立つことができる。合成ガスからの熱エネルギーは、当該分野で公知の手段によって、冷却系列におけるスチーム発生を経て回収できる。ガス冷却ゾーンは、微量不純物,例えばアンモニア、塩化水素、シアン化水素、微量金属,例えば水銀、ヒ素等の除去または反応のための他の吸収、吸着、または凝縮のステップを任意に含むことができる。ガス冷却ゾーンは、任意に、水との反応を介して硫化カルボニルを硫化水素および二酸化炭素に変換するための反応ステップを含むことができる。
【0046】
我々の発明の他の態様は、変動可能な合成ガス組成物を製造するプロセスであって、該プロセスは:
(a)少なくとも2つのガス化装置を含むガス化ゾーン内でオキシダント流と石炭または石油コークスとを反応させて、一酸化炭素、水素、二酸化炭素および硫黄含有化合物を含む少なくとも2つの原合成ガス流を生成すること;
(b)ステップ(a)で得た原合成ガス流の少なくとも1つの一部を共通の水性ガスシフト反応ゾーンに通して、水素の一酸化炭素に対するモル比が1:1から20:1である少なくとも1つのシフト合成ガス流(i)と、該原合成ガス流の残部を含む少なくとも1つの非シフト合成ガス流(ii)とを生成すること;
(c)水性ガスシフト反応ゾーン内で、シフト合成ガス流(i)からの熱の回収によりスチームを発生させること;
(d)ステップ(c)で得たスチームの一部と1つ以上の原合成ガス流の一部とを、水性ガスシフト反応ゾーンに通す前に組合せること;
(e)シフト合成ガス流(i)と非シフト合成ガス流(ii)の一部とを混合して、少なくとも1つの混合合成ガス流(iii)と非シフト合成ガス流(ii)の残部を含む少なくとも1つの非混合合成ガス流(iv)とを生成すること;ならびに
(f)混合ガス流(iii)をメタノールまたはジメチルエーテルの生成ゾーンに通し、そして非混合ガス流(iv)を電力生成ゾーンに通すこと
を含む。
【0047】
上記のプロセスは、上述したようなガス化装置、合成ガス流、スチーム発生、オキシダント流、炭素質材料、電力生成ゾーン、酸−ガス除去ゾーン、およびガス冷却ゾーンの種々の態様を含むことが理解される。例えば、該プロセスは、ステップ(b)で得た合成ガス流(i)および(ii)の各々またはステップ(e)で得た合成ガス流(iii)および(iv)の各々に、別個のガス冷却ゾーンを通過させることを更に含むことができる。合成ガス流(i)および(ii)または(iii)および(iv)の各々には、硫黄除去ゾーン、二酸化炭素除去ゾーンまたはこれらの組合せを含む別個の酸ガス除去ゾーンを通過させることもできる。該プロセスは、合成ガス流(i)および(ii)または(iii)および(iv)中に存在する硫黄含有化合物全体の少なくとも95モルパーセントを硫黄除去ゾーン内で、ならびに/または、二酸化炭素の一部を合成ガス流(iii)から二酸化炭素除去ゾーン内で、除去することを更に含むことができる。
【0048】
混合合成ガス流は、メタノールプロセスまたはジメチルエーテルプロセスのいずれかを含むことができる化学品生成ゾーンに通すことができ、そして前述したように非混合ガスを電力生成ゾーンに通して電気を生成することができる。例えば、混合合成ガス流および非混合合成ガス流(iii)および(iv)は、電力生成ゾーンのピークおよびオフピークの電力需要に応じて変動する体積で生成できる。この態様において、例えば、混合合成ガス流(iii)の体積がオフピーク電力需要の期間の間に増大し、メタノールまたはジメチルエーテルを生成するために使用される一方、非混合合成ガス流(iv)の体積は減少する。逆に、ピーク電力需要の期間の間は、非混合合成ガス流(iv)の体積が増大して電力生成ゾーンのための燃料として使用され、一方混合合成ガス流(iii)の体積は減少する。
【0049】
我々の発明はまた、変動可能な量の電力およびメタノールを製造するプロセスを提供し、該プロセスは:
(a)少なくとも2つのガス化装置を含むガス化ゾーン内でオキシダント流と石炭または石油コークスとを反応させて、一酸化炭素、水素、二酸化炭素および硫黄含有化合物を含む少なくとも2つの原合成ガス流を生成すること;
(b)ステップ(a)で得た原合成ガス流の少なくとも1つの一部を共通の水性ガスシフト反応ゾーンに通して、水素量に富む少なくとも1つのシフト合成ガス流(i)と、原合成ガス流の残部を含む少なくとも1つの非シフト合成ガス流(ii)とを生成させること;
(c)シフト合成ガス流(i)と非シフト合成ガス流(ii)の100体積パーセント以下とを混合して、少なくとも1つの混合合成ガス流(iii)と非シフト合成ガス流(ii)の残部とを生成すること;
(d)ステップ(c)で得た混合ガス流(iii)をメタノール生成ゾーンに通すことによってメタノールを生成すること;ならびに
(e)非シフト合成ガス流(ii)の残部を電力生成ゾーンに通して電気を生成すること
を含み、混合合成ガス流を、電力生成ゾーンのピークおよびオフピークの電力需要の期間に応じて変動する量で生成する方法である。上記のように、該プロセスは、前述したようなガス化装置、合成ガス流、スチーム発生、オキシダント流、炭素質材料、電力生成ゾーン、酸ガス除去ゾーン、および冷却ゾーンの種々の態様を含む。例えば、ガス化装置は、石炭または石油コークス等の炭素質材料を合成ガスに酸化するために使用でき、そして電力生成ゾーンの最大容量燃料要求の少なくとも90%を供給するサイズにすることができる。オキシダント流の純度は、典型的には少なくとも酸素85体積%であり、そして少なくとも95体積%の酸素、または他の例では少なくとも98体積%の酸素を含むことができる。メタノール生成ゾーンは、前述したようなもので、例えば、固定床または液体スラリー相のメタノール反応器を含むことができる。
【0050】
前述したように、水性ガスシフト反応ゾーンから出るのに従いかつステップ(c)において非シフト合成ガス流(ii)と混合する前に、シフト合成ガス流(i)から熱を回収することによって、水性ガスシフト反応ゾーンでスチームを発生させることができる。水性ガスシフト反応ゾーン内で発生したスチームは、共通のスチームヘッダーに導いて一般的な実用スチームとして用いることができ、または、スチームの一部とガス化ゾーンからのステップ(b)における1つ以上の原合成ガス流の一部とを組合せて少なくとも1つの湿潤合成ガス流を生成し、そして該湿潤合成ガス流を水性ガスシフト反応ゾーンに通すことによって、水性ガスシフト反応ゾーンに入る原合成ガスに十分な水を添加するために用いることができる。典型的には、湿潤合成ガス流における水の一酸化炭素に対するモル比は1.5:1から3:1である。更なる例の、生成できる水:一酸化炭素のモル比は、2:1および2.5:1である。
【0051】
ステップ(a),(b)または(c)において存在する合成ガス流の各々は、別個のガス冷却ゾーンおよび/または別個の酸ガス除去ゾーンを通過できる。酸ガス除去ゾーンは、硫黄除去ゾーン、二酸化炭素除去ゾーン、またはこれらの組合せを含むことができる。例えば、ステップ(a),(b)または(c)において存在する合成ガス流中に存在する硫黄含有化合物全体の少なくとも95モルパーセントが、硫黄除去ゾーン内にある。他の態様において、プロセスは、ステップ(d)のメタノール生成ゾーンに通す前に、二酸化炭素の一部を合成ガス流(i)または(iii)から除去して、合成ガス流(i)または(iii)中のガスの総モル基準で0.5から10モル%の二酸化炭素濃度を与えることを更に含むことができる。
【0052】
水性ガスシフト反応ゾーンに通す原合成ガスの体積、および、シフト合成ガス流(i)と混合される非シフト合成ガス(ii)の体積を調整することにより、混合合成ガス流(iii)を電力生成ゾーンのピークおよびオフピークの電力需要の期間に応じて変動する量で生成できる。非シフト合成ガス流(ii)の100体積パーセント以下を、シフト合成ガス流(ii)と混合できる。例えば、非シフト合成ガス流(ii)の100体積パーセントを、オフピーク電力需要の期間の間にシフト合成ガス流(i)と混合できる。この態様においては、電力生成ゾーンに通す代わりに、非シフト合成ガス流(ii)の全体積をシフト合成ガス流(i)と混合して混合合成ガス流(iii)を形成できる。混合合成ガス流をメタノール生成ゾーンに通し、メタノールを生成するために用いる。
【0053】
他の例において、電力生成ゾーンは、オフピーク電力需要の期間の間に操業停止できる少なくとも1つの燃焼タービンを含むことができる。電力生成ゾーンのより低い電力需要に応じて、水性ガスシフト反応ゾーンに導かれる原合成ガスの体積を増大させることができ、非シフト合成ガス流の100体積%をシフト合成ガス流と混合することができる。次いで、混合合成ガス流をメタノール生成ゾーンに通す。24時間の期間内にオフピーク電力需要の1つより多い期間が存在することができる。よって、燃焼タービンは既定の24時間の期間内で1回よりも多く操業停止することができる。非効率または不経済な体制でタービンを運転する代わりに、オフピーク電力需要のこれらの期間の間少なくとも1つの燃焼タービンを操業停止させることにより、一定速度で、実現される合成ガスの熱力学的および経済的な価値が最大でガス化装置を効率的に運転することができる。
【0054】
例えば、2つの燃焼タービンを含む電力生成ゾーンは、全能力の90%以上で運転する場合がある。電力に対する需要が落ちるにつれ、経済的理由(すなわち電力の低価格)で、または熱力学的な非効率性の理由から、1つ以上の燃焼タービンを閉じることは有利である可能性がある。従って、本発明のプロセスに従い、非効率および/または不経済な様式でタービンの1つの運転を続けるよりも、タービンを操業停止させて、代わりに化学品生成ゾーンに合成ガス供給物流を通して化学品を生成する。よって、合成ガス流を用い、非効率な利用率で運転するタービンで電気を生成する代わりに、合成ガスを用いて、例えば市場で販売でき、または燃焼タービンの燃料要求を補うために使用できる化学品を生成する。メタノールに加え、例えばメタノール、アルキルホルメート、オキソアルデヒド、メタン、アンモニア、ジメチルエーテル、水素、フィッシャートロプシュ生成物、またはこれらの化学品の1種以上の組合せ等の合成ガス原材料から効率的に得られる任意の化学品を生成することが本発明の範囲内である。
【0055】
本発明の一態様において、例えば、アンモニアおよび/または水素を化学品生成ゾーン内で生成できる。この例においては、水性ガスシフト反応ゾーンを運転して水素および二酸化炭素の生成を最大化することになる。一酸化炭素の水素および二酸化炭素への典型的な変換は95%超である。二酸化炭素除去ゾーンは上記の従来の吸収技術または吸着技術、続いて最終的な精製ステップを含むことができる。例えば、圧力スイング吸着では、水素の含酸素量が2体積ppm未満に低減される。水素は、販売でき、またはHaber−Boschプロセスによって、LeBlanceらの“Ammonia”,Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, Volume 2,3rd Edition,1978,pp.494−500におけるものに例示される当該分野で公知の手段で、化学品生成ゾーン内でアンモニアを生成するために使用できる。
【0056】
本発明の他の態様においては、フィッシャートロプシュ生成物,例えば炭化水素およびアルコール等を、化学品生成ゾーン内で、米国特許第5,621,155号および第6,682,711号に例示されるフィッシャートロプシュ反応を介して生成できる。典型的には、フィッシャートロプシュ反応は、固定床、スラリー床、または流動化床の反応器内で効果を奏することができる。フィッシャートロプシュ反応条件は、190℃から340℃の間の反応温度を用いることを含むことができ、実際の反応温度は大部分が反応器構成によって決定される。例えば、流動化床反応器を用いる場合、反応温度は、好ましくは300℃から340℃の間であり;固定床反応器を用いる場合、反応温度は好ましくは200℃から250℃の間であり;そしてスラリー床反応器を用いる場合、反応温度は好ましくは190℃から270℃の間である。
【0057】
フィッシャートロプシュ反応器への入口合成ガス圧力は、1から50barの間、好ましくは15から50barの間を用いることができる。合成ガスは、未使用供給物中で、H2:COモル比1.5:1から2.5:1、好ましくは1.8:1から2.2:1を有することができる。合成ガスは、典型的には0.1wppm以下の硫黄を含む。反応段階にはガスリサイクルを任意に採用でき、そして、ガスリサイクル量の未使用合成ガス供給物量に対する比は、モル基準で、1:1から3:1、好ましくは1.5:1から2.5:1の間であることができる。空間速度は、m3(触媒kg)-1hr-1単位で、1から20、好ましくは8から12、を反応段階で用いることができる。
【0058】
フィッシャートロプシュ反応段階においては、原則として、鉄系、コバルト系または鉄/コバルト系のフィッシャートロプシュ触媒を用いることができるが、高い鎖成長可能性(すなわちアルファ値が0.8以上、好ましくは0.9以上、より好ましくは0.925以上)で作用するフィッシャートロプシュ触媒が典型的である。反応条件は、メタンおよびエタンの形成を最少化するように好ましく選択される。これは、殆どがワックスおよび重質生成物、すなわち大部分がパラフィン系のC20+直鎖炭化水素を含む生成物流を与える傾向がある。
【0059】
鉄系フィッシャートロプシュ触媒は、沈殿または融合(fuse)した鉄および/または酸化鉄を含むことができる。しかし、好適な支持体上に焼結(sinter)、固定化(cement)、または含浸させた鉄および/または酸化鉄もまた使用できる。鉄は、フィッシャートロプシュ合成の前に金属Feに還元するのがよい。鉄系触媒は、種々のレベルのプロモーターを含むことができ、これらの役割は最終的な触媒の活性、安定性、および選択性のうち1つ以上を変えることであると考えられる。典型的なプロモーターは、還元された鉄の表面積に影響するもの(「構造プロモーター(structural promoter)」)であり、これらとしては、Mn,Ti,Mg,Cr,Ca,Si,Al,もしくはCuまたはこれらの組合せの酸化物または金属が挙げられる。
【0060】
フィッシャートロプシュ反応による生成物は、ガス状反応生成物および液体反応生成物をしばしば含む。例えば、ガス状反応生成物は、典型的には、343℃未満で沸騰する炭化水素(例えば、中間留分を介した排ガス)を含む。液体反応生成物(凝縮画分)は、343℃超で沸騰する炭化水素(例えば重質パラフィンを介したバキュームガスオイル)および種々の鎖長のアルコールを含む。
【0061】
化学品生成ゾーンは、当該分野で周知のヒドロホルミル化プロセスを用いてオキソアルデヒドを生成するために用いることもできる。ヒドロホルミル化反応は、典型的には、例えばエチレンまたはプロピレン等のオレフィンを、遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素および水素と接触させて直鎖および分岐鎖のアルデヒドを生成することによって実施される。ヒドロホルミル化によって生成できるアルデヒドの例としては、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、およびイソブチルアルデヒドが挙げられる。
【0062】
他の例においては、例えばメチルホルメート等のアルキルホルメートが化学品生成ゾーン内で生成される。現在、メチルホルメート等のアルキルホルメートの合成ガスおよびアルキルアルコール原材料からの合成のための幾つかの公知のプロセスがある。米国特許第3,716,619号に加え、これらとしては、一酸化炭素およびメタノールを液相または気相のいずれかで反応させ、アルカリ触媒および十分な水素の存在下で高圧および高温でメチルホルメートを形成し、一酸化炭素のメタノールへの変換を可能にする米国特許第3,816,513号、および、メタノールおよびアルカリ金属またはアルカリ土類金属のメトキシドの触媒のいずれかを含む液体反応混合物流とともに一酸化炭素を高温および高圧で反応させてメチルホルメートを生成する米国特許第4,216,339号が挙げられる。しかし、本発明の最も広範な態様においては、対応するアルキルアルコールおよび一酸化炭素に十分に富む調製された合成ガスを含む原材料からのアルキルホルメートの形成のための任意の効率的な商業的に実施可能なプロセスが本発明の範囲内である。選択する的確な1種または複数種の触媒、および濃度、接触時間等は当業者に公知なように幅広く変えることができる。米国特許第4,216,339号に開示される触媒を用いることが好ましいが、当業者に公知の他の触媒の幅広い多様なものもまた使用できる。
【0063】
本発明の一態様のよりよい理解は、図1に表すプロセスフロー図を特に参照して与えられる。図1に記載する態様において、炭化水素質または炭素質の材料を、当該分野で公知の任意の種類の2つ以上のガス化装置(図1中でガス化装置2および3として示される)を含むガス化ゾーン1内でガス化して、粗合成ガス流4および5を生成する。合成ガス流4および5の流れは、管路6,7,8および9の間で、当該分野で公知の流れ制御法(流れ6および8の、7および9に対する流れ比は、生成物流65および66の所望の組成および体積に左右される)によって分割する。管路8および9に導かれるガスの割合は、管路4および5のそれぞれの流れの0〜100%で変動させることができる。流れ6および7を管路10内で組合せて非シフトガス流を生成する。
【0064】
管路8および9を経て導かれるガスの画分は、共通の水性ガスシフト反応ゾーン20に通され、ここでガスは、一酸化炭素が水と反応して水素と二酸化炭素とを生成する平衡限界の水性ガスシフト反応を受ける。発熱シフト反応の熱によって発生するスチームは、管路22経由で水性ガスシフトゾーンから出る。ガス化ゾーン1からの原合成ガスの水の量に応じ、水またはスチームを流れ8および9に管路21経由で直接添加して、水性ガスシフト反応を適切に実施するのに十分な水を与えることが必要な場合がある。典型的には、水性ガスシフトゾーン20への組合された供給物中のCOの蒸気状水に対するモル比は、1.5対1以上、より好ましくは2対1以上である。所望の場合、管路21経由でシフトゾーン20に添加されるスチームの全部または一部は、管路22の圧力が管路8および9の圧力以上であるという条件で、シフトゾーン自体の中で発生したものから(すなわち管路22経由で)供給できる。
【0065】
シフトガスは、管路23および25経由でガス冷却ゾーン40に運搬する。ここで該ガスの温度を低減させ、そして該ガスを更なる精製のために準備する。合成ガスからの熱エネルギーは、当該分野で公知の任意の手段を通して回収できる。ガス冷却ゾーン40は、以下の種類の熱交換器:スチーム発生熱交換器(すなわちボイラー)(ここで熱は合成ガスから移動して水を沸騰させる)、ガス−ガス交流器、ボイラー供給水交換器、強制空気交換器、水冷却交換器、および直接接触水交換器のいずれかまたは全てを含むことができる。より低圧のスチームレベルを良好に生成する複数のスチーム発生熱交換器の使用は本発明の範囲内であることが意図される。ガス冷却ゾーン30および40の中で発生するスチームおよび凝縮物は、管路31,32および41,42のそれぞれを経由して出る。管路41は異なる圧力の1つ以上のスチーム生成物を統合できることが理解される。ガス冷却ゾーン40は、微量不純物,例えばアンモニア、塩化水素、シアン化水素、および微量金属,例えば水銀、ヒ素等の除去のための他の吸収、吸着または凝縮のステップを任意に含むことができる。これに加えて、ガス冷却ゾーン40は、水との反応を経て硫化カルボニルを硫化水素および二酸化炭素に変換するための反応ステップを任意に含むことができる。
【0066】
非シフトガスを、管路10および26経由でガス冷却ゾーン30に運搬し、ここで該ガスの温度を低減して該ガスを更なる精製のために準備する。合成ガスからの熱エネルギーは、当該分野で公知の任意の手段を通じて回収できる。ガス冷却ゾーン30は以下の種類の熱交換器:スチーム発生熱交換器(すなわちボイラー)(ここで熱は合成ガスから移動して水を沸騰させる)、ガス−ガス交流器、ボイラー供給水交換器、強制空気交換器、水冷却交換器、および直接接触水交換器のいずれかまたは全てを含むことができる。より低圧のスチームレベルを良好に生成する複数のスチーム発生熱交換器の使用は本発明の範囲内であることが意図される。ガス冷却ゾーン30内で発生するスチームおよび凝縮物は、管路31および32のそれぞれを経由して出る。管路31は異なる圧力の1つ以上のスチーム生成物を統合できることが理解される。ガス冷却ゾーン30は、微量不純物,例えばアンモニア、塩化水素、シアン化水素、および微量金属,例えば水銀、ヒ素等の除去のための他の吸収、吸着または凝縮のステップを任意に含むことができる。ガス冷却ゾーン30は、水との反応を経て硫化カルボニルを硫化水素および二酸化炭素に変換するための反応ステップを任意に含むことができる。冷却された非シフト合成ガスを酸ガス除去ゾーン50に通して、硫黄および/もしくは二酸化炭素の全部または一部を除去することができ、または、全部または一部を、冷却されたシフト合成ガスと混合される流れに管路44経由で通すことができる。
【0067】
冷却されたシフトガスを、管路43および45経由で酸ガス除去ゾーン60に運搬し、ここで粗合成ガスの酸ガス成分、例えば硫化水素、硫化カルボニル、および二酸化炭素の全部または一部を除去する。同様に、冷却されたシフトガスを管路33および46経由で酸ガス除去ゾーン60に運搬し、ここで粗合成ガスの酸ガス成分、例えば硫化水素、硫化カルボニル、および任意に二酸化炭素を除去する。流れ51および61は、回収された硫黄含有種に富み、そして任意に、流れ52および62は二酸化炭素に富む。
【0068】
典型的には、硫黄含有種および二酸化炭素の種々の除去レベルが種々の合成ガス用途のために必要である。例えば、電力発生プラントからの酸ガス排出に対する環境規制は、現状で規制されない二酸化炭素レベルとともに、典型的には清浄化された合成ガスの硫黄量を100万分の100体積部未満に制限する一方、100万分の1部を大幅に下回る硫黄量および典型的には5モルパーセント未満の二酸化炭素量が、メタノール合成触媒の適切な働きおよび寿命を確保するために要求される。多くの他の化学合成触媒、例えばフィッシャートロプシュ、アンモニア、オキソ、およびメタン化触媒は、酸ガス量に対してメタノール触媒と同様またはより厳格な制限を有する。従って、種々の酸ガス除去仕様のためにゾーン50および60を設計できる。
【0069】
当該分野で公知の任意の方法,例えばClaus反応によって、流れ51および61中の硫黄含有種を更に加工して元素状硫黄を生成できる。これに代えて、当該分野で周知の手段で、硫黄を酸化して水と組合せて硫酸を生成できる。
【0070】
シフト合成ガス流および非シフト合成ガス流を混合するために管路24,44および64が与えられる。典型的には、酸ガス除去ゾーンの後、すなわち管路64経由で、シフト合成ガス流および非シフト合成ガス流を混合して混合合成ガス流を生成する。次いで、無硫合成ガスの全部または一部は、管路64経由でシフト合成ガス流と混合するために使用でき、または燃焼タービンのための燃料として電力生成ゾーンに通すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】変動可能な組成および体積の合成ガスを生成するための一態様についての概略フロー図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変動可能な合成ガス組成物を製造する方法であって:
(a)少なくとも2つのガス化装置を含むガス化ゾーン内でオキシダント流と炭素質材料とを反応させて、一酸化炭素、水素、二酸化炭素および硫黄含有化合物を含む少なくとも2つの原合成ガス流を生成すること;
(b)ステップ(a)で得た前記原合成ガス流の少なくとも1つの一部を共通の水性ガスシフト反応ゾーンに通して、水素量に富む少なくとも1つのシフト合成ガス流(i)と、前記原合成ガス流の残部を含む少なくとも1つの非シフト合成ガス流(ii)とを生成すること;および
(c)前記シフト合成ガス流(i)と前記非シフト合成ガス流(ii)の一部とを混合して、少なくとも1つの混合合成ガス流(iii)と、非シフト合成ガス流(ii)の残部を含む少なくとも1つの非混合合成ガス流(iv)とを生成し、前記混合合成ガス流を、少なくとも1つの下流合成ガスの要求に応じて変動する体積および/または組成で生成すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記水性ガスシフト反応ゾーン内でスチームを発生させること、前記水性ガスシフト反応ゾーンからの前記スチームの一部と、1つ以上の原合成ガス流のステップ(b)における前記一部とを組合せて少なくとも1つの湿潤合成ガス流を生成すること、および前記湿潤合成ガス流を前記水性ガスシフト反応ゾーンに通すこと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記湿潤合成ガス流の、水の一酸化炭素に対するモル比が、1.5:1から3:1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オキシダント流が、前記オキシダント流の総体積基準で少なくとも85体積%の酸素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
炭素質材料が、石炭または石油コークスである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)で得た前記合成ガス流(i)および(ii)の各々またはステップ(c)で得た前記合成ガス流(iii)および(iv)の各々に、別個のガス冷却ゾーンまたは別個の酸ガス除去ゾーンを通過させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸ガス除去ゾーンが、前記合成ガス流(i)および(ii)または(iii)および(iv)中に存在する前記硫黄含有化合物全体の少なくとも95モルパーセントを除去する硫黄除去ゾーンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記下流合成ガスの要求が、少なくとも1つの化学的プロセスの原材料要求、少なくとも1つの電力プラントの燃料要求、またはこれらの組合せを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(d)前記混合合成ガス流(iii)を、メタノール、アルキルホルメート、ジメチルエーテル、オキソアルデヒド、アンモニア、メタン、水素、フィッシャートロプシュ生成物またはこれらの組合せを生成する化学品生成ゾーンに通し;そして前記非混合合成ガス流(iv)を電力生成ゾーンに通すことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記化学品生成ゾーンがメタノール生成ゾーンであり、そして、ステップ(d)の前記メタノール生成ゾーンに通す前に、前記二酸化炭素の一部を前記合成ガス流(i)または(iii)から除去して、前記合成ガス流(i)または(iii)中のガスの総モル数基準で二酸化炭素濃度0.5から10モル%を与えることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電力生成ゾーンが、組合されたサイクルシステムを含み、そして前記混合合成ガス流の前記体積および/または組成が、ピークおよびオフピークの電力需要に応じて変動する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記シフト合成ガス流(i)の、水素の一酸化炭素に対するモル比が1:1から20:1であり、かつ、
(d)前記シフト合成ガス流(i)からの熱の回収によって、前記水性ガスシフト反応ゾーン内でスチームを発生させること;
(e)前記水性ガスシフト反応ゾーンに通す前に、ステップ(c)で得た前記スチームの一部と1つ以上の原合成ガス流の前記一部とを組合せること;および
(f)前記混合合成ガス流(iii)をメタノールまたはジメチルエーテルの生成ゾーンに通し、そして非混合合成ガス流(iv)を電力生成ゾーンに通すこと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)で得た前記合成ガス流(i)および(ii)の各々またはステップ(e)で得た前記合成ガス流(iii)および(iv)の各々に、別個のガス冷却ゾーン、硫黄除去ゾーン,二酸化炭素除去ゾーンを含む別個の酸ガス除去ゾーン、またはこれらの組合せを通過させることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記混合合成ガス流(iii)を、ピークおよびオフピークの電力需要に応じて変動する体積および/または組成で生成する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
変動可能な量の電力およびメタノールを製造する方法であって:
(a)少なくとも2つのガス化装置を含むガス化ゾーン内でオキシダント流と石炭または石油コークスとを反応させて、一酸化炭素、水素、二酸化炭素および硫黄含有化合物を含む少なくとも2つの原合成ガス流を生成すること;
(b)ステップ(a)で得た前記原合成ガス流の少なくとも1つの一部を共通の水性ガスシフト反応ゾーンに通して、水素量に富む少なくとも1つのシフト合成ガス流(i)と、前記原合成ガス流の残部を含む少なくとも1つの非シフト合成ガス流(ii)とを生成すること;
(c)前記シフト合成ガス流(i)と前記非シフト合成ガス流(ii)の100体積パーセント以下とを混合して、少なくとも1つの混合合成ガス流(iii)と前記非シフト合成ガス流(ii)の残部とを生成すること;
(d)ステップ(c)で得た前記混合ガス流(iii)をメタノール生成ゾーンに通すことによってメタノールを生成すること;ならびに
(e)非シフト合成ガス流(ii)の残部を電力生成ゾーンに通して電気を生成すること
を含み、
前記混合合成ガス流を、前記電力生成ゾーンのピークおよびオフピークの電力需要の期間に応じて変動する体積および/または組成で生成する、方法。
【請求項16】
前記メタノール生成ゾーンが、固定床または液体スラリー相のメタノール反応器を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記2つ以上のガス化装置が、前記電力生成ゾーンの最大容量燃料要求の少なくとも90%を供給するようなサイズである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
オフピークの電力需要の期間の間に、前記非シフト合成ガス流(ii)の100体積パーセントを前記シフト合成ガス流(i)と混合する、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−516054(P2009−516054A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541218(P2008−541218)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/043281
【国際公開番号】WO2007/061616
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】