説明

変性エポキシ樹脂の製造方法

エポキシ樹脂にコアシェル型ゴム粒子(ゴム状重合体粒子)を分散させたエポキシ樹脂組成物の製造方法において、エポキシ樹脂中のゴム状重合体粒子の分散状態が良好であり、かつ夾雑物の低減されたエポキシ樹脂組成物を、簡便かつ効率的に製造する手段を提供する。 ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスを、水に対し部分溶解性を示す有機媒体(C)に接触させた後、さらに水に対する部分溶解性が該有機媒体(C)未満の有機媒体(D)を接触することにより水を実質的に分離して、ゴム状重合体粒子が有機媒体中に分散した分散体(F)として取り出した後、エポキシ樹脂(A)と混合し、揮発成分を留去することで、エポキシ樹脂中にゴム状重合体粒子が良好に分散しかつ夾雑物の少ないエポキシ樹脂組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ゴム変性エポキシ樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
エポキシ樹脂の硬化物は、寸法安定性、機械的強度、電気的絶縁特性、耐熱性、耐水性、耐薬品性などの多くの点で優れている。しかしながら、エポキシ樹脂の硬化物は破壊靭性が小さく、非常に脆性的な性質を示すことがあり、広い範囲の用途においてこのような性質が問題となることが多い。
これらの問題を解決するための手法の一つとして、エポキシ樹脂中にゴム成分を配合することが従来より行われている。その中でも、乳化重合、分散重合、懸濁重合に代表される水媒体中の重合方法を用いて、予め粒子状に調製したゴム状重合体粒子を配合する方法は、例えばエポキシ樹脂に対して非架橋のゴム成分を溶解混合した後硬化過程において相分離を生じさせることでエポキシ樹脂硬化物連続相にゴム成分の分散相を生成させる様な方法と比較して、原理上、配合硬化条件による分散状態の変動を生じにくいこと、ゴム成分を予め架橋しておくことでエポキシ樹脂硬化物連続相へのゴム成分の混入が無く耐熱性や剛性の低下が少ないこと、などの種々の利点が考えられる事から、以下に示すような各種の製造方法が提案されている。
(1)ゴム状重合体ラテックスの凝固物を粉砕した後、エポキシ樹脂に混合する方法(例えば、特開平5−295237号、および特許第2751071号)
(2)ゴム状重合体ラテックスとエポキシ樹脂を混合したのち、水分を留去して、混合物を得る方法(例えば、特開平6−107910号参照)
(3)ゴム状重合体ラテックスを有機溶剤の存在下、エポキシ樹脂に混合して、混合物を得る方法(例えば、米国特許第4,778,851号参照)
通常は水性ラテックスとして得られるゴム状重合体粒子を、エポキシ樹脂中に混合分散させるに際しては、ゴム状重合体と水分とを分離する必要がある。
(1)の方法では、ゴム状重合体を凝固物として一旦取り出す事により水と分離するが、これの取り扱いやエポキシ樹脂との混合の工程が煩雑で工業的に好ましくない。更に、ゴム状重合体を一旦凝固物として取り出した上でエポキシ樹脂に混合し再分散させる場合には、相当の機械的剪断力による粉砕や分散操作を用いても、エポキシ樹脂中にゴム状重合体粒子を一次粒子の状態で再分散させることは困難である。
また、(2)の方法では、エポキシ樹脂と水が混ざり合い難いため、混ざらない部分で乾燥物が発生し塊状物となり、除去しなければ品質に悪影響が生じる。その上、エポキシ樹脂の存在下で多量の水分を除去しなくてはならず、操作に困難が伴う。
さらに、(3)の方法では、ゴム状重合体ラテックスとエポキシ樹脂を混合するに当たり、有機溶剤と共に系中(混合物中)に存在する、多量の水分(有機溶剤が溶解可能な水分量以上の水分)を分離、あるいは留去する必要があるが、有機溶剤層と水層の分離には例えば一昼夜等の、多大な時間を要するか、或いは有機溶剤層と水層が安定な乳化懸濁状態を形成するために実質的に分離が困難となる。また水分を留去する場合には、多量のエネルギーを必要とする上、通常ゴム状重合体ラテックスの製造に使用する乳化剤、副原料等の水溶性夾雑物が組成物中に残留してしまい、品質的にも劣るものとなる。このため、分離、留去のいずれの方法にしても水分の除去が煩雑であり、工業的に好ましくない。
【発明の開示】
本発明は、エポキシ樹脂にゴム状重合体粒子を配合したゴム変性エポキシ樹脂組成物を得る方法として、水性ラテックスの状態で得たゴム状重合体粒子を凝固物として取り出すことなく、水分をゴム状重合体粒子から効率よく分離し、その後にエポキシ樹脂と混合する方法であって、ゴム状重合体粒子をエポキシ樹脂中に均一に混合分散でき、同時にゴム状重合体粒子の重合時に添加されている乳化剤等の夾雑物の除去を同時に実施するできる、簡便かつ効率的な方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂(A)中にゴム状重合体粒子(B)が安定に分散混合されたエポキシ樹脂組成物の製造方法であって、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスに、水に対し部分溶解性を示す有機媒体(C)を接触した後、さらに水に対する部分溶解性が(C)未満の有機媒体(D)を接触することでゴム状重合体粒子(B)から水層を実質的に分離し、得られたゴム状重合体粒子(B)および混合有機媒体(C)および(D)からなる分散体(F)をエポキシ樹脂(A)と混合し、揮発成分を除去することにより、簡便かつ効率的に変性エポキシ樹脂組成物を得る製造方法である。
また、本発明の製造方法においては、分散体(F)をエポキシ樹脂(A)と混合する前に、水と少なくとも1回以上接触させ洗浄することが好ましい実施形態であり、さらには、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスに、水に対し部分溶解性を示す有機媒体(C)を接触した後であって、有機媒体(D)と接触する前に、水と少なくとも1回以上接触させることがより好ましい実施形態である。
また、水に対し部分溶解性を示す有機媒体(C)に対する水の溶解度は9〜40重量%であることが好ましく、さらに、有機媒体(C)および有機媒体(D)が2成分系共沸混合物を形成しない組み合わせであることが好ましい。
本発明の製造方法における重合体粒子(B)は、ジエン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群から選ばれる1種以上の単量体50重量%以上、およびその他の共重合可能なビニル単量体50重量%未満から構成されるゴム弾性体、ポリシロキサンゴム系弾性体、またはそれらの混合物からなるゴム粒子コア(B−1)50〜95重量%に対して、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル、不飽和酸誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体およびマレイミド誘導体からなる群から選ばれる1種以上の単量体からなるシェル層(B−2)5〜50重量%をグラフト重合して得られるものであることが好ましく、さらに、ゴム状重合体粒子(B)のシェル層(B−2)が、エポキシ樹脂の硬化反応時にエポキシ樹脂または硬化剤に対して反応性を有する単量体を構成成分として含有することがより好ましい。
また、本発明は、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスに、水と部分溶解性を示す有機媒体(C)を接触混合した後、さらに水の溶解性が(C)よりも低い有機媒体(D)を接触混合することでゴム状重合体粒子(B)から水層を実質的に分離することにより得られる、ゴム状重合体粒子(B)、有機媒体(C)および有機媒体(D)からなる分散体(F)に関するものである。
また、本発明は、前記エポキシ樹脂組成物の製造方法により得られるエポキシ樹脂組成物に関するものであり、さらに、前記エポキシ樹脂組成物を、硬化剤を用いて硬化させた硬化成形物に関するものである。
本発明は、エポキシ樹脂(A)中にゴム状重合体粒子(B)を安定に分散したエポキシ樹脂組成物を得る製造方法である。さらに詳しくは、水性ラテックスの状態で得られるゴム状重合体(B)をエポキシ樹脂(A)中に簡便かつ効率的に混合分散させる製造方法である。本発明により得られるエポキシ樹脂組成物は、ゴム状重合体粒子(B)が、エポキシ基を有する液状樹脂(A)中に良好に分散されてなるエポキシ組成物である。
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、エポキシ基を有するプレポリマーである。本発明に用いることのできるエポキシ樹脂は、ポリエポキシドとも言われるエポキシ樹脂である。例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂、3或いは4官能のエポキシ樹脂、更には、高分子量化したエポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールAで高分子量化したビスフェノールAのジグリシジルエーテルなど)、或いはまた、不飽和モノエポキシド(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル)を重合して得られるホモポリマー若しくはコポリマーである。
本発明で用いるポリエポキシドとしては、多価アルコール及び多価フェノールのグリシジルエーテル、ポリグリシジルアミン、ポリグリシジルアミド、ポリグリシジルイミド、ポリグリシジルヒダントイン、ポリグリシジルチオエーテル、エポキシ化脂肪酸またはエポキシ化乾性油、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化不飽和ポリエステル、およびそれらの混合物があげられる。多価フェノールより合成される多くのポリエポキシドは、例えば米国特許第4,431,782号に開示されている。ポリエポキシドは一価、二価、三価のフェノールより合成され、ノボラック樹脂も含まれる。ポリエポキシドにはエポキシ化シクロオレフィンの他、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルの重合体および共重合体によるポリエポキシドも含まれる。適切なポリエポキシドの例としては更に、米国特許第3,804,735号明細書、同第3,892,819号明細書、同第3,948,698号明細書、同第4,014,771号明細書、および、“エポキシ樹脂ハンドブック”(日刊工業新聞社、昭和62年)に開示されているものがあげられる。
本発明に用いるポリエポキシドは前述のようなものであるが、一般的にはエポキシ当量(Epoxy Equivalent Weight)として、80〜2000を有するものが挙げられる。これらのポリエポキシドは周知の方法で得ることができるが、通常よく用いられる方法として、例えば、多価アルコールもしくは多価フェノールなどに対して過剰量のエピハロヒドリンを塩基存在下で反応させることで得られる。
本発明に用いるポリエポキシドには、反応性希釈剤としてモノエポキシド、例えば、ブチルグリシジルエーテル、またはフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどの脂肪族グリシジルエーテルを含んでいても良い。一般的に知られているように、モノエポキシドはポリエポキシド配合物の化学量論に影響を及ぼすが、これの調整は硬化剤の量またはその他周知の方法で行われる。
本発明に用いるエポキシ樹脂(A)には、前記エポキシ基含有化合物に対する硬化剤および/または硬化促進剤を含有することも可能であるが、本発明における製造条件下で、実質的にエポキシ樹脂と意図しない硬化反応を起こさないことが望まれる。該硬化剤および/または硬化促進剤としては、前述のエポキシ樹脂ハンドブックに記載のもので本発明の要件を満たすもののみが使用可能である。
本発明によるエポキシ樹脂組成物の製造方法においては、ゴム状重合体粒子(B)は、エラストマーまたはゴム状のポリマーを主成分とするポリマーからなるゴム粒子コア(B−1)と、これにグラフト重合されたポリマー成分からなるシェル層(B−2)より構成されるコアシェル型ポリマーであることが好ましい。
ゴム粒子コア(B−1)を構成するポリマーは架橋されており、ゴム粒子コア(B−1)を構成するポリマーは適切な溶媒に対して膨潤しうるけれども実質的には溶解しない。ゴム粒子コア(B−1)はエポキシ樹脂(A)に不溶である。ゴム粒子コア(B−1)のゲル分は60重量%以上、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上で、さらに好ましくは95重量%以上である。ゴム粒子コア(B−1)を構成するポリマーのガラス転移温度(Tg)は0℃以下、好ましくは−10℃以下である。
ゴム粒子コア(B−1)を構成するポリマーは、ジエン系単量体(共役ジエン系単量体)および(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる群より選ばれる一つ以上の単量体を50重量%以上、および他の共重合可能なビニル単量体50重量%未満から構成されるゴム弾性体、ポリシロキサンゴム系弾性体、またはこれらを併用することが好ましい。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
前記ゴム弾性体を構成する共役ジエン系モノマーとしては、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を挙げることができるが、ブタジエンが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えばアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリルなどがあげられるが、アクリル酸ブチルとアクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。これらは1種類または2種類以上を組み合わせて使用できる。
共役ジエン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の単量体の使用量は、ゴム弾性体全体の重量に対して好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。該単量体の使用量が50重量%未満の場合には、本発明のエポキシ樹脂組成物が有する靱性改良効果が低下する傾向にある。
さらに、前記ゴム弾性体は、共役ジエン系単量体または(メタ)アクリル酸エステル系単量体の他に、これらと共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよい。共役ジエン系単量体または(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共重合可能なビニル単量体としては、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる単量体があげられる。芳香族ビニル系単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンが、シアン化ビニル系単量体としては、例えば(メタ)アクリロニトリルおよび置換アクリロニトリルがあげられる。これらは1種類または2種類以上を組み合わせて使用できる。
これらの共重合可能なビニル単量体の使用量は、ゴム弾性体全体の重量に対して、好ましくは50重量%未満、より好ましくは40重量%未満である。
また、前記ゴム弾性体を構成する成分として、架橋度を調節するために、多官能性単量体を含んでいても良い。多官能性単量体としては、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(イソ)シアヌル酸トリアリル、(メタ)アクリル酸アリル、イタコン酸ジアリル、フタル酸ジアリル等が例示できる。多官能性単量体の使用量はゴム弾性体全体の重量に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。使用量が10重量%を超えると、本発明のエポキシ樹脂組成物が有する靱性改良効果が低下する傾向がある。
また、前記ゴム弾性体を構成するポリマーの分子量や架橋度を調節するために、連鎖移動剤を使用してもよく、炭素数5〜20のアルキルメルカプタン等が例示できる。連鎖移動剤の使用量はゴム粒子コア(B−1)全体の重量に対して5重量%以下、好ましくは3重量%以下である。連鎖移動剤の使用量が5重量%を越えると、ゴム粒子コア(B−1)の未架橋成分の量が増加し、本発明のエポキシ樹脂組成物を使用して得られたエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、剛性等に悪影響を与える可能性があり好ましくない。
さらに、ゴム粒子コア(B−1)として、前記ゴム弾性体に替えて、またはこれらと併用して、ポリシロキサンゴム系弾性体を使用することも可能である。ゴム粒子コア(B−1)としてポリシロキサンゴム系弾性体を使用する場合には、例えばジメチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ等の、アルキルまたはアリール2置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサンゴムが使用可能である。また、前記ポリシロキサンゴムを使用する場合には、必要に応じて、重合時に多官能性のアルコキシシラン化合物を一部併用するか、ビニル反応性基を持ったシラン化合物をラジカル反応させること等により、予め架橋構造を導入しておくことがより好ましい。
シェル層(B−2)は、ゴム状重合体粒子(B)がエポキシ樹脂中で安定に一次粒子の状態で分散するための、エポキシ樹脂に対する親和性を与える。
シェル層(B−2)を構成するポリマーは、ゴム粒子コア(B−1)を構成するポリマーにグラフト重合されており、実質的にゴム粒子コア(B−1)を構成するポリマーと結合している。シェル層(B−2)を構成するポリマーの好ましくは70重量%、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上がゴム粒子コア(B−1)に結合していることが望ましい。
シェル層(B−2)は、後述する有機媒体(C)およびエポキシ樹脂(A)に対して膨潤性、相容性もしくは親和性を有するものが好ましい。またシェル層(B−2)は、使用時の必要性に応じて、エポキシ樹脂(A)もしくは使用時に配合される硬化剤に対する反応性を有する単量体を含有するものであってもよい。シェル層(B−2)に含有される反応性を有する単量体の官能基は、エポキシ樹脂(A)が硬化剤と反応して硬化する条件下において、エポキシ樹脂(A)または硬化剤と化学反応し、結合を生成することができるものが好ましい。
シェル層(B−2)を構成するポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物より選ばれる1種以上の成分を共重合して得られる重合体若しくは共重合体が、入手が容易であり、かつ有機溶媒(C)への親和性を有する点から好ましい。さらに、特にシェル層(B−2)にエポキシ樹脂硬化時の化学反応性を求める場合には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物またはシアン化ビニル化合物に加えて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、エポキシアルキル(メタ)アクリレート等の反応性側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類、エポキシアルキルビニルエーテル、不飽和酸誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体およびマレイミド誘導体からなる群より選ばれる1種以上の単量体からなることが、エポキシ基またはエポキシ硬化剤との反応性が高い点から好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどがあげられる。芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレンなどがあげられる。シアン化ビニルとしては、(メタ)アクリロニトリルなどがあげられる。
また、反応性側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどがあげられる。エポキシアルキルビニルエーテルとしては、グリシジルビニルエーテルなどがあげられる。不飽和酸誘導体としては、α,β−不飽和酸、及びα,β−不飽和酸無水物、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸などがあげられる。(メタ)アクリルアミド誘導体としては、(メタ)アクリルアミド(N−置換物を含む)などがあげられる。マレイミド誘導体としては、マレイン酸無水物、マレイン酸イミドなどがあげられる。これらは1種類または2種類以上を適宜組み合わせて使用できる。
ゴム状重合体粒子(B)の好ましいゴム粒子コア(B−1)/シェル層(B−2)比率(重量比)は、50/50〜95/5の範囲であり、より好ましくは60/40〜90/10である。(B−1)/(B−2)比率が50/50をはずれゴム粒子コア(B−1)の比率が低下すると、本発明のエポキシ樹脂組成物が有する靱性改良効果が低下する傾向がある。95/5をはずれシェル層(B−2)の比率が低下すると、本発明の製造方法における取扱い時に凝集をきたし易く操作性に問題が生じるとともに、期待する物性が得られない可能性がある。
ゴム状重合体粒子(B)の製造にあたっては、周知の方法、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などで製造することができる。なかでも、特に乳化重合による製造方法が好適である。
水媒体中での乳化若しくは分散剤としては、水性ラテックスのpHを中性としても乳化安定性が損なわれないものを用いることが好ましい。具体的には、ジオクチルスルホコハク酸やドデシルベンゼンスルホン酸等に代表されるようなアルキルまたはアリールスルホン酸、アルキルまたはアリールエーテルスルホン酸、ドデシル硫酸に代表されるようなアルキルまたはアリール硫酸、アルキルまたはアリールエーテル硫酸、アルキルまたはアリール置換燐酸、アルキルまたはアリールエーテル置換燐酸、ドデシルザルコシン酸に代表されるようなN−アルキルまたはアリールザルコシン酸、オレイン酸やステアリン酸等に代表されるようなアルキルまたはアリールカルボン酸、アルキルまたはアリールエーテルカルボン酸等の、各種酸類のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、アルキルまたはアリール置換ポリエチレングリコール等の非イオン性乳化剤または分散剤、ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体等の分散剤があげられる。これらは1種類または2種類以上を組み合わせて使用できる。
これらの乳化若しくは分散剤は、本発明の好ましい実施形態の趣旨から言えば、ゴム状重合体粒子(B)ラテックスの製造工程において、分散安定性に支障を来さない範囲で出来る限り少量を使用することがより好ましい。または、本発明の製造方法の実施工程において、製造されるエポキシ樹脂組成物の物性に影響を及ぼさない程度の残存量まで、水層に抽出洗浄される性質を有していることがより好ましい。
本発明によるエポキシ樹脂組成物の製造方法においては、ゴム状重合体粒子(B)の粒子径に関して特に制限は無く、ゴム状重合体粒子(B)を水性ラテックスの状態で安定的に得ることができるものであれば問題なく使用できるが、工業生産性の面からは、製造が容易であるという点で、平均粒子径が0.03〜2μm程度のものが好ましく、平均粒径が0.05〜1μm程度のものがより好ましい。
本発明によるエポキシ樹脂組成物の製造方法においては、ゴム状重合体粒子(B)の含有量に関して特に制限はない。さらに、得られたエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂にて適宜所望のゴム状重合体粒子(B)の配合量となるよう希釈して使用される、いわゆるマスターバッチとして使用することも可能である。希釈に使用するエポキシ樹脂は、該組成物のエポキシ樹脂(A)と同一のものでも、必要に応じて異なった種類のものでもよい。エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂(A)とゴム状重合体粒子(B)の合計量を100重量%とした場合、ゴム状重合体粒子(B)の含量としては0.5〜80重量%が例示されるが、好ましくは1〜70重量%であり、より好ましくは3〜60重量%であり、さらに好ましくは3〜50重量%である。ゴム状重合体粒子(B)が0.5重量%未満では、本発明のエポキシ樹脂組成物が有する靱性改良効果が低下する傾向があり、80重量%を超えると、エポキシ樹脂組成物の粘度が著しく増大し、製造上の操作に支障をきたしやすい傾向がある。
本発明で用いる水に対し部分溶解性を示す有機媒体(C)としては、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスを有機媒体(C)と接触させる場合、ゴム状重合体粒子(B)が凝固析出することなく混合が達成される有機媒体である必要がある。
本発明で用いる水に対し部分溶解性を示す有機媒体(C)は、少なくとも1種以上の有機溶媒またはその混合物であって、好ましくは、25℃における有機媒体(C)に対する水の溶解度が9〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%であるような有機溶媒または有機溶媒混合物である。有機媒体(C)に対する水の溶解度が40重量%を越えると、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスに有機媒体(C)を混合する際に、ゴム状重合体粒子(B)の凝固を生じ易くなり操作に支障を来したり、有機媒体(D)を混合した後に、有機層となる混合物(F)中の含水量が増加する可能性が高くなる傾向がある。水の溶解度が9重量%未満では、有機媒体(D)を混合した後もゴム状重合体粒子(B)が水層中に多く残存する傾向がある。
好ましい有機媒体(C)の例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エタノール、(イソ)プロパノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等から選ばれる1種以上の有機溶媒またはその混合物であって、水の溶解度が上記の範囲を満たすものがあげられる。なかでも、メチルエチルケトンを好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上含む有機溶媒の混合物が、特に好ましい。
有機媒体(C)の量は、ゴム状重合体粒子(B)の種類や、またはゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス中に含まれる(B)の量によっても変化しうるが、好ましくは、ゴム状重合体粒子(B)のラテックス100重量部に対し、50〜350重量部、より好ましくは、70〜250重量部、更に好ましくは50〜200重量部である。有機媒体(C)の量が50重量部未満では、有機媒体(C)の種類によっては有機媒体層を形成する有機媒体(C)の量が少なくなる為、有機媒体層の取り扱いが困難になる傾向がある。350重量部を超えると、有機溶媒(C)の除去量が増大するために製造効率が低下する。
水に対する部分溶解性が(C)未満の有機媒体(D)は、25℃における有機媒体(D)に対する水の溶解度が好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下、さらに好ましくは4重量%以下であるような有機溶媒、または2種以上の有機溶媒の混合物である。有機媒体(D)に対する水の溶解度が9重量%以上では、有機層と水層の分離を促す効果が不充分となる可能性がある。
好ましい有機媒体(D)としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ブチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等から選ばれる、水の溶解度が上記の範囲を満たす1種以上の有機溶剤、またはその混合物があげられる。
有機媒体(D)は有機媒体層と水層の分離を促す効果のある範囲の量で使用できる。好ましくは、使用する有機媒体(C)を100重量部とした場合、20〜1000重量部、より好ましくは50〜400重量部、更に好ましくは50〜200重量部である。20重量部未満では、有機層と水層の分離を促す効果が不充分となる傾向にあり、1000重量部を超えると、有機媒体の除去量が増大するために製造効率が低下する。
さらに、有機媒体(C)と有機媒体(D)の組み合わせとしては、上述の要件に加えて、(C)と(D)が2成分系で実質的に共沸を示さない組み合わせが、工業生産を行う際に有機媒体の回収・分離・再使用を容易にするという観点からより好ましい。このような組み合わせとしては、例えばメチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの組み合わせ等が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明によるエポキシ樹脂組成物の製造方法においては、水性ラテックスの状態で得られるゴム状重合体粒子(B)を、凝固物として取り出すことなしに、ゴム状重合体粒子(B)から水分を効率よく分離し、その後にエポキシ樹脂(A)と混合する。詳しくは、ゴム状重合体粒子(B)が水層に分散している、いわゆる水性ラテックス状態から、ゴム状重合体粒子(B)を2種類の有機媒体(C)および(D)からなる層(以下、混合有機媒体層と称する)中に安定して分散させた分散体(F)として一旦取り出し、その後にエポキシ樹脂(A)と混合する。
すなわち、本発明では、まず、本発明の要件を満たす水に対する部分溶解性が異なる2種類の有機媒体(C)および(D)を、本発明の方法に従って、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスと順次接触させることにより、混合物を主に有機媒体(C)および(D)からなる層(混合有機媒体層)と主に水からなる層(以下、水層と称する)の2層に短時間で分離させることができる。これによって、ゴム状重合体粒子(B)を有機媒体(C)および(D)からなる混合有機媒体層中に安定に分散させた分散体(F)として取り出すことが可能となる。
本発明では、まず、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスを、水と部分溶解性を示す有機媒体(C)と接触させると、ゴム状重合体粒子(B)が、ラテックス由来の水層から、主に有機媒体(C)からなる層に抽出された混合物(以下、混合物(E)と称する)が形成される。この際、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス由来の水分は、混合物(E)中で水層を形成するが、この水層の少なくとも一部か、場合によっては実質的に大部分は、ゴム状重合体粒子(B)が抽出された、主に有機媒体(C)からなる層中に乳化分散して混入し、長時間静置しても混入した水分を分離することが困難である。
次に、このようにして得られた混合物(E)に、水に対する部分溶解性が有機媒体(C)未満、すなわち疎水性の高い有機媒体(D)を接触させることにより、主に有機媒体(C)からなる層中に乳化分散して混入した水分を分離することができる。この際、疎水性の高い有機媒体(D)を接触させることにより、有機媒体(C)と有機媒体(D)が混合して形成される、混合有機媒体層の疎水性が高められ、混合物(E)中の主に有機媒体(C)からなる層では多量に乳化分散していたゴム状重合体粒子(B)ラテックス由来の水分が水層に排除され、さらに、混合有機媒体層中へ水層の一部が再度乳化分散し混入したり、或いは逆に混合有機媒体層が乳化して水層中へ分散する事が抑制される。
このようにして得られた混合有機媒体層、すなわちゴム状重合体粒子(B)および有機媒体(C)および(D)の混合有機媒体からなる分散体(F)は、有機媒体(C)と(D)の混合有機媒体中にゴム状重合体(B)が安定に分散した状態で存在するものである。好ましい本発明の形態においては、ゴム状重合体粒子(B)は分散体(F)中で実質的に一次粒子で分散している。
このような操作で分離した水層中に含まれるゴム状重合体粒子(B’)の量は、ゴム状重合体粒子(B)の全量に対して、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは3重量%以下であり、最も好ましくはゴム状重合体粒子(B’)が実質的に含まれない状態である。
なお、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスに対して、水と部分溶解性を示す有機媒体(C)を接触させる前に、より疎水性の高い有機媒体(D)を接触混合させた場合、有機媒体(D)を主成分とする有機媒体中にゴム状重合体粒子(B)を抽出された混合物(E)を得ることはできない。
これまでの操作における接触とは、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスおよび有機媒体(C)、またはその混合物(E)および有機媒体(D)との界面間の接触のみでなく、緩やかな撹拌条件下での両者の混合も含んでもよく、特別な装置または方法は必要ではなく、良好な混合状態が得られる装置または方法で有ればよい。
続いて、このような操作を施して得られた分散体(F)を、エポキシ樹脂(A)に混合する。この混合は容易に達成でき、特別な装置または方法を使用することなく、周知の方法で実施可能である。例えばエポキシ樹脂を有機溶剤に溶解する際に使用されるような方法や条件で実施可能である。しかも、これら一連の操作において、ゴム状重合体粒子(B)は不可逆な凝集を起こさず、エポキシ樹脂(A)への混合の前後において、ゴム状重合体粒子(B)は良好な分散状態を維持している。好ましい本発明の形態においては、ゴム状重合体粒子(B)はエポキシ樹脂(A)への混合の前後で実質的に一次粒子で独立分散した状態を維持している。
さらに、分散体(F)およびエポキシ樹脂(A)からなる混合物から、有機媒体(C)および(D)を主体とする揮発成分を除去することによって、ゴム状重合体粒子(B)のエポキシ樹脂(A)中での良好な分散状態を維持したまま、目的とするエポキシ樹脂組成物を得ることができる。揮発成分の除去方法としては、周知の方法が適用できる。例えば槽内に該混合物を仕込み加熱して常圧或いは減圧下に揮発成分を留去する回分式の方法、槽内で乾燥ガスと該混合物を接触させる方法、薄膜式蒸発機を用いる連続式の方法、脱揮装置を備えた押出機あるいは連続式攪拌槽を用いる方法などがあげられるが、これらに限定されるものではない。揮発成分を除去する際の温度や所要時間等の条件は、エポキシ樹脂(A)が反応したり、品質を損なわない範囲で適宜選択することができる。
また、本発明で得ることのできるエポキシ樹脂組成物の最終使用形態によっては、有機媒体(C)および(D)を除去せず、含んだままでも用いることが可能であり、このような場合も同様に、ゴム状重合体粒子(B)が凝集する事無く、残存する有機媒体(C)および(D)の混合有機媒体にエポキシ樹脂(A)が溶解した溶液に対して良好に分散した状態を得ることができる。該エポキシ樹脂組成物に残存する有機媒体(C)および(D)の量は、該エポキシ樹脂組成物の使用目的に応じて、問題のない範囲で適宜選択できる。
さらに、本発明の別の特徴として、ゴム状重合体粒子(B)ラテックスの製造に通常使用される、乳化剤などのエポキシ樹脂(A)の使用に際しては有害な影響を与える可能性のある夾雑物成分を容易に除去できる。本発明のより好ましい実施形態として、得られた分散体(F)を、エポキシ樹脂(A)と混合するに先だって、1回以上水で洗浄することによって、分散体(F)から前記夾雑物成分を、水層に抽出する事により、低減または除去できる。さらに高度な夾雑物の除去が必要となる場合には、ゴム状重合体粒子(B)および有機媒体(C)を接触混合させた混合物(E)を得た後であって、混合物(E)に有機媒体(D)を接触混合させる前に、混合物(E)を少なくとも1回以上水で洗浄することも可能である。
ゴム状重合体粒子(B)に有機媒体(C)を混合する温度は、有機溶媒(C)の種類によって水への部分溶解性が変化しうる為、有機層と水層の分離に影響し得るので、本発明の効果を損なわない範囲に設定する必要がある。またこのような性質を利用し、温度を適宜設定することで有機層と水層の分離を好ましい状態にすることもできる。
このように、本発明では、エポキシ樹脂(A)にゴム状重合体粒子(B)を混合分散するに際し、ゴム状重合体粒子(B)を凝固物として単離することなく有機媒体中に安定な分散された分散体(F)として効率よく取り出すことにより、強力な機械的撹拌などを必要とせず、ゴム状重合体粒子(B)を良好な分散状態を維持したままでエポキシ樹脂(A)に分散させることができる。また、エポキシ樹脂(A)およびゴム状重合体粒子(B)の混合物より分離すべき水分量も、従来の方法に比較して有意に抑制でき、製造効率の面でも有利である。さらに、操作に際しては、夾雑物成分にもなる可能性のある水溶性電解質等の添加を行う必要が無く、ゴム状重合体粒子(B)に添加されている乳化剤、イオン性化合物や水溶性化合物等の夾雑物成分を容易に低減あるいは除去できる。
以上のような本発明の方法によって製造されたエポキシ樹脂組成物は、塗料、コーティング剤、航空機部品やスポーツ用品、構造材料等の繊維あるいはフィラー強化複合材料、接着剤、固着材料、半導体封止剤や電子回路基板等の電子材料などの、エポキシ樹脂が通常使用される各種の用途に対して、例えば使用するエポキシ樹脂の一部、または全部を本発明の組成物とすることで、幅広く利用が可能であり、エポキシ樹脂組成物中、さらに硬化物中でのゴム状重合体粒子(B)の分散状態の安定性に優れ、かつ夾雑物の少ない優れた硬化成形物を得ることができる。
【実施例】
実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、断りがない場合、実施例および比較例の「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。
略号はそれぞれ下記の物質を示す。
MEK :メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチレンケトン
まず本実施例中に記載の分析測定方法について以下に説明する。
[1]水層中に含まれるゴム状重合体粒子(B)成分の定量
実施例および比較例で記載の方法により排出された水層の一部を取り、120℃にて十分乾燥させて得られる残渣のうち、メタノール不溶成分の量を定量し、これを水層中に含まれるゴム状重合体粒子(B)成分量とした。
[2]エポキシ樹脂(A)中でのゴム状重合体粒子(B)の分散状態
実施例および比較例でそれぞれ得られたエポキシ樹脂組成物を硬化させて硬化物として、この硬化物を超薄切片法で透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、ゴム状重合体粒子(B)の分散状態を判断した。
[2−1]エポキシ樹脂組成物の硬化
実施例および比較例でそれぞれ得られたエポキシ樹脂組成物25gを、同一のエポキシ樹脂(エピコート821)75gと混合した後、硬化剤としてピペリジン(東京化成工業(株)製)6gを攪拌混合した。この混合物を真空乾燥機内に静置し、まず窒素雰囲気下として、その後60℃で減圧下として10分間、脱泡した。この混合物を100×150×3mm寸法の型に注型後、120℃で16時間保持して硬化させ、硬化成形物を得た。
[2−2]透過型電子顕微鏡によるゴム状重合体粒子(B)の分散状態の観察
得られた成形物の一部を切り出し、酸化オスミウムでゴム状重合体粒子(B)を染色処理した後に薄片を切り出し、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−1200EX)を用いて倍率4万倍にて観察を行い、以下の方法により算出した粒子分散率(%)を指標として、エポキシ樹脂硬化物中のゴム状重合体粒子(B)の分散状態を判定した。
良好:粒子分散率が90%以上である。
不良:粒子分散率が90%未満である。
[2−3]粒子分散率の算出
得られたTEM写真において、5cm四方のエリアを無作為に4カ所選択して、ゴム状重合体粒子(B)の総個数Bと、3個以上が接触しているゴム状重合体粒子(B)の個数B(なお、ある1個のゴム状重合体粒子(B)がn個に接触している場合、個数はn個とカウントする)を求め、下記の式により算出した。
粒子分散率(%) = (1−(B/B))×100 。
[3]残存乳化剤量
残存乳化剤量は、エポキシ樹脂(A)と混合する前の分散体(F)中に残存する乳化剤量を下記の分析方法により測定し、ゴム状重合体粒子(B)の重合に使用された乳化剤全量を100重量%とした際の割合(重量%)として数値化し、指標とした。
[3−1]サンプル前処理
下記の実施例に記載の方法においてエポキシ樹脂(A)と混合する前の分散体(F)を5ml分取し、乾固後、ビーカー内にエタノール50mlとともに投入し、10分間撹拌した後、上澄み液をメチレンブルー法による分析試料とした。
[3−2]メチレンブルー法
分液ロートに水30ml、アルカリ性ホウ酸ナトリウム溶液10ml、メチレンブルー溶液(0.025%水溶液)5mlを投入した。クロロホルム20mlを加え、3〜5分間振とうし、クロロホルム層を分離除去した。クロロホルムの添加および除去の操作をクロロホルム層の着色がなくなるまで繰り返した。次に、希硫酸(2.9%水溶液)3mlとクロロホルム20mlと(1)で調製した試料2mlを加え、3〜5分間振とう後、クロロホルム層を分光光度計((株)島津製作所製、分光光度計UV−2200)を用い、波長650nmの吸収において、エポキシ樹脂(A)を混合する前の分散体(F)中の残存乳化剤量を測定した。なお、アルカリ性ホウ酸ナトリウム溶液は、四ホウ酸ナトリウム十水和物1.9%水溶液500mlに0.4%水酸化ナトリウム溶液500mlを混合し、作製した。
[4]エポキシ価
JIS K−7236に従い、実施例に記載の方法で得られたエポキシ樹脂組成物のエポキシ価を測定した。
【0075】
以下に本発明の強化エポキシ樹脂組成物の製造例を説明する。
【0076】
<製造例1> ゴム状重合体粒子(B)ラテックスの製造
100L耐圧重合機中に、水200部、リン酸三カリウム0.03部、リン酸二水素カリウム0.25部、エチレンジアミン4酢酸0.002部、硫酸第一鉄0.001部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部を投入し、攪拌しつつ十分に窒素置換を行なって酸素を除いた後、ブタジエン75部およびスチレン25部を系中に投入し、45℃に昇温した。パラメンタンハイドロパーオキサイド0.015部、続いてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.04部を投入し重合を開始した。重合開始から4時間目に、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.01部、エチレンジアミン4酢酸0.0015部および硫酸第一鉄0.001部を投入した。重合10時間目に減圧下残存モノマーを脱揮除去し、重合を終了した。重合転化率は98%、得られたスチレン−ブタジエンゴムラテックスの平均粒径は0.1μmであった。
3Lガラス容器に、前記ゴムラテックス1300g(スチレン・ブタジエンゴム粒子420gを含み、乳化剤としてゴムの固形分に対して1.5wt%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む。)と純水440gを仕込み、窒素置換を行いながら70℃で攪拌した。アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.2gを加えた後、スチレン54g、メタクリル酸メチル72g、アクリロニトリル36g、メタクリル酸グリシジル18gの混合物を3時間かけて連続的に添加しグラフト重合した。添加終了後、更に2時間攪拌して反応を終了させ、ゴム状重合体粒子(B)のラテックスを得た。重合転化率は99.5%であった。得られたラテックスはそのまま使用した。
<実施例1> 変性エポキシ組成物の製造
25℃に保たれた3Lのガラス容器に、有機媒体(C)成分としてメチルエチルケトン(以下、MEKと称す:25℃での水の溶解度、11重量%)500gを取り、製造例1で得られたゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス420gを加え、攪拌した。得られたゴム状重合体粒子(B)と有機媒体(C)の混合物(E)を攪拌しながら、有機媒体(D)としてメチルイソブチルケトン(以下、MIBKと称す:25℃での水の溶解度、2重量%)450gを加えた。混合有機媒体層からの水の分離が観察された。MIBKを添加後、水210gを加え攪拌した。攪拌を止めて30分静置した後に水層を排出して、分散体(F)を分取した。排出した水層は460gであった。分離した水層中にはゴム状重合体粒子(B)は認められなかった。
次いで、得られた分散体(F)をエポキシ樹脂(A)(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート828)340gと混合した後、揮発分を80℃にて4時間、減圧下留去して、ゴム状重合体粒子(B)がエポキシ樹脂(A)中に分散したエポキシ樹脂組成物を得た。分散体(F)とエポキシ樹脂(A)の混合は震とう混合で行っており、強力な機械攪拌(高せん断下での攪拌)は一切必要としない。
このエポキシ樹脂組成物より得られた硬化物中のゴム状重合体粒子(B)の分散状態を観察の結果、ゴム状重合体粒子(B)は凝集なく均一に分散されていた。また、エポキシ価(EEW)は、245g/eq.であった。
<比較例1−1>
25℃に保たれた3Lのガラス容器に有機媒体(C)としてメチルエチルケトン(MEK)500gを取り、製造例1で得られたゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス420gを加え攪拌した。得られた混合物(E)を攪拌しながら、再びMEK450gを加えた。MEKを添加後、水210gを加え攪拌した。攪拌を止めて30分静置した。実施例1とは異なり、殆ど水層は形成されず、有機媒体層は乳化しており、多量の水分を含んでいる様子が観察された。対応する実施例1よりも水の分離効性が悪いことが判る。
実施例1と同様の操作を行い、ゴム状重合体粒子(B)がエポキシ樹脂(A)中に混合したエポキシ樹脂組成物を得ることを試みたが、多量の水分が除去されずにエポキシ樹脂中に残存しており、実施例1のような目的とするエポキシ樹脂組成物は得られなかった。
<比較例1−2>
25℃に保たれた3Lのガラス容器に、有機媒体(C)としてメチルエチルケトン(MEK)500gを取り、製造例1で得られたゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス420gを添加し攪拌した。得られた混合物(E)に水210gを加え攪拌した。攪拌を止めて30分静置した。殆ど水層は形成されず、有機媒体層は乳化しており、多量の水分を含んでいる様子が観察された。対応する実施例1よりも水の分離効性が悪いことが判る。
<比較例1−3>
25℃に保たれた3Lのガラス容器に有機媒体(C)としてメチルエチルケトン(MEK)500gを取り、製造例1で得られたゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス420gを添加し攪拌した。撹拌を停止して、得られた混合物(E)を12時間放置した。混合物(E)は乳化しており、水の分離の進行は殆ど見られず、水層は形成されなかった。
【表1】

【実施例2】
25℃に保った1L混合槽に有機媒体(C)としてメチルエチルケトン(MEK)306gおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)34gの混合溶媒(混合溶媒に対する25℃における水の溶解度、10重量%)を取り、パドル翼3段の撹拌翼で撹拌しながら、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス252gを混合した。水126gを添加し攪拌した。得られた混合物(E)を攪拌しながら、有機媒体(D)としてMIBK340gを加えた。攪拌を止めて30分静置した後、水層を排出して、分散体(F)を分取した。排出した水層にゴム状重合体粒子(B)は認められず、ゴム状重合体粒子(B)を完全に有機媒体層へ抽出できた。
得られた分散体(F)を実施例1同様にエポキシ樹脂(エピコート828)204gと混合した後、揮発分を減圧下留去し、エポキシ樹脂組成物を得た。
上記エポキシ樹脂組成物より得られた硬化物中のゴム状重合体粒子(B)の分散状態を観察の結果、ゴム状重合体粒子(B)は凝集なく均一に分散されていた。また、分散体(F)中の残存乳化剤量は、ゴム状重合体粒子(B)ラテックスの製造時に添加されている乳化剤量に対して、49重量%であった。
<比較例2−1>
25℃に保った1L混合槽に、有機媒体としてメチルイソブチルケトン(25℃における水の溶解度、2.0重量%)340gを仕込み、パドル翼3段の撹拌翼で撹拌しながら、製造例1で得られたゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス252gを混合した。これに水126gを添加し攪拌した。攪拌を止めた後、MIBK層と水層の分離は確認できたが、MIBK層中にゴム状重合体粒子(B)は存在せず、MIBK層にゴム状重合体粒子(B)を抽出できなかった。
<比較例2−2>
25℃に保った1L混合槽に、アセトン(水溶性溶媒であり、水に対して任意の割合で相互溶解する、すなわち25℃における水の溶解度としては∞である)340gを仕込み、パドル翼3段の撹拌翼で撹拌しながら、製造例1で得られたゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス252gを加えた。ゴム状重合体粒子(B)は凝固し、多数の大きな凝固物の塊が発生し、攪拌が困難となった。
【実施例3】
25℃に保った1L混合槽に、有機媒体(C)としてメチルエチルケトン288gとメチルイソブチルケトン52gの混合溶媒(混合溶媒に対する25℃における水の溶解度、9.2重量%)を取り、パドル翼3段の撹拌翼で撹拌しながら、製造例1で得られたゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス252gを混合した。水126gを添加し攪拌した。得られた混合物(E)を攪拌しながら容器媒体(D)としてMIBK340gを加えた。攪拌を止めて30分静置した後、水層を排出し、分散体(F)を得た。水層中のゴム状重合体粒子(B)含有量はが1.2重量%であった。
【表2】

【実施例4】
室温にて1Lのガラス容器に、有機媒体(C)としてメチルエチルケトン(MEK)365g(25℃における水の溶解度、11重量%)を添加し、撹拌しながら、製造例1で得られたゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス252gを混合した。得られた混合物(E)に有機媒体(D)としてメチルイソブチルケトン(MIBK)400gを添加しつつ攪拌した。水を252g添加し攪拌した。撹拌を止めて30分間静置した後、水層を排出して、分散体(F)と分離した。この際の水層にはゴム状重合体粒子(B)は含まれていなかった。再度、分散体(F)に、水を400g添加し混合した。60分間静置後、水層を排出して分散体(F)を得た。この際の水層にもゴム状重合体粒子(B)は含まれていなかった。
得られた分散体(F)を実施例1と同様にエポキシ樹脂(エピコート828)204gと混合した後、揮発分を減圧下留去し、エポキシ樹脂組成物を得た。
上記エポキシ樹脂組成物より得られた硬化物中のゴム状重合体粒子(B)の分散状態を観察の結果、ゴム状重合体粒子(B)は凝集なく均一に分散されていた。また、(F)中の残存乳化剤は、ラテックス中に添加されている乳化剤に対して、26重量%であった。
【実施例5】
25℃に保った1L混合槽にメチルエチルケトン(MEK)340gを添加し、パドル翼3段の撹拌翼で撹拌しながら、製造例1で得られたゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス252gを混合した後、撹拌を停止した。水126gを添加し攪拌した。得られた混合物(E)に有機媒体(D)としてメチルイソブチルケトン400gを添加しつつ攪拌した。撹拌を止めて30分間静置後、水層を排出して、分散体(F)を得た。この際の水層にはゴム状重合体粒子(B)は含まれていなかった。再度、分散体(F)に、水を400g添加し混合した。60分間静置後、水層を排出して分散体(F)と分離した。この際の水層にもゴム状重合体粒子(B)は含まれていなかった。
得られた分散体(F)を実施例1と同様にエポキシ樹脂(エピコート828)204gと混合した後、揮発分を減圧下留去し、エポキシ樹脂組成物を得た。
上記エポキシ樹脂組成物より得られた硬化物中のゴム状重合体粒子(B)の分散状態を観察の結果、ゴム状重合体粒子(B)は凝集なく均一に分散していた。また、分散体(F)中の残存乳化剤量は、ゴム状重合体粒子(B)ラテックスの製造時に添加されている乳化剤量に対して、32重量%であった。
【実施例6】
25℃に保った1L混合槽に有機媒体(C)としてメチルエチルケトン(MEK)340gを添加し、パドル翼3段の撹拌翼で撹拌しながら、製造例1で得られたゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス252gを混合した後、撹拌を停止した。水126gを添加し攪拌した。得られた混合物(E)に有機媒体(D)としてメチルイソブチルケトン(MIBK)400gを添加しつつ攪拌した。30分間静置後、水層を排出して、分散体(F)と分離した。この際の水層にはゴム状重合体粒子(B)は含まれていなかった。再度、分散体(F)に、水を250g添加し撹拌し、30分間静置後、水層を排出して分散体(F)と分離した。この際の水層にもゴム状重合体粒子(B)は含まれていなかった。さらに、水を250g添加し撹拌し、30分間静置後、水層を排出して分散体(F)を得た。この際の水層にもゴム状重合体粒子(B)は含まれていなかった。
得られた分散体(F)を実施例1と同様にエポキシ樹脂(エピコート828)204gと混合した後、揮発分を減圧下留去し、エポキシ樹脂組成物を得た。
上記エポキシ樹脂組成物より得られた硬化物中のゴム状重合体粒子(B)の分散状態を観察の結果、ゴム状重合体粒子(B)は凝集なく均一に一次粒子で分散されていた。また、分散体(F)中の残存乳化剤量は、ゴム状重合体粒子(B)ラテックスの製造時に添加されている乳化剤量に対して、10重量%であった。エポキシ価(EEW)は、248g/eq.であった。
【実施例7】
25℃に保った1L混合槽にメチルエチルケトン(MEK)340gを添加し、パドル翼3段の撹拌翼で撹拌しながら、製造例1で得られたゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックス252gを混合した後、撹拌を停止した。水126gを添加し攪拌した。得られた有機層(E)に攪拌しながら(D)成分として酢酸エチル(25℃における水の溶解度、3.4重量%)400gを添加しつつ攪拌した。30分間静置後、水層を排出して、分散体(F)と分離した。この際の水層にはゴム状重合体粒子(B)は含まれていなかった。分散体(F)30分間静置後、水層を排出して分散体(F)と分離した。この際の水層にもゴム状重合体粒子(B)は含まれていなかった。
得られた分散体(F)を実施例1と同様にエポキシ樹脂(エピコート828)204gと混合した後、揮発分を減圧下留去し、エポキシ樹脂組成物を得た。上記エポキシ樹脂組成物より得られた硬化物中のゴム状重合体粒子(B)の分散状態を観察の結果、ゴム状重合体粒子(B)は凝集なく一次粒子で均一に分散されていた。分散体(F)中の残存乳化剤量は、ゴム状重合体粒子(B)ラテックスの製造時に添加されている乳化剤量に対して、32重量%であった。
【表3】

【産業上の利用可能性】
本発明の製造方法を用いることにより、ゴム状重合体粒子(B)の分散状態が良好であり、夾雑物が少なく品質に優れたゴム変性エポキシ樹脂組成物を、簡便かつ効率的に製造することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)中にゴム状重合体粒子(B)が分散されてなるエポキシ樹脂組成物の製造方法であって、ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスに、水に対し部分溶解性を示す有機媒体(C)を接触した後、さらに水に対する部分溶解性が(C)未満の有機媒体(D)を接触することでゴム状重合体粒子(B)から水層を実質的に分離し、得られたゴム状重合体粒子(B)および混合有機媒体(C)および(D)からなる分散体(F)をエポキシ樹脂(A)と混合し、揮発成分を除去することを特徴とするエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスに、水に対し部分溶解性を示す有機媒体(C)を接触した後、さらに水に対する部分溶解性が(C)未満の有機媒体(D)を接触することでゴム状重合体粒子(B)から水層を実質的に分離した後であって、分散体(F)をエポキシ樹脂(A)と混合する前に、分散体(F)を、水と少なくとも1回以上接触させ洗浄することを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
有機媒体(C)の水に対する部分溶解性が下記で示される、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。有機媒体(C)に対する25℃における水の溶解度が、9〜40重量%である。
【請求項4】
有機媒体(C)および有機媒体(D)が、2成分系共沸混合物を形成しない組み合わせであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
ゴム状重合体粒子(B)が、ジエン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体50重量%以上、および他の共重合可能なビニル単量体50重量%未満から構成されるゴム弾性体、ポリシロキサンゴム系弾性体、またはそれらの混合物からなるゴム粒子コア(B−1)50〜95重量%に対して、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル、不飽和酸誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体およびマレイミド誘導体からなる群から選ばれる1種以上の単量体からなるシェル層(B−2)5〜50重量%をグラフト重合して得られるものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
ゴム状重合体粒子(B)のシェル層(B−2)が、エポキシ樹脂または硬化剤に対する反応性を有する単量体を含有することを特徴とする、請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
ゴム状重合体粒子(B)の水性ラテックスに、水と部分溶解性を示す有機媒体(C)を接触した後、さらに水に対する部分溶解性が(C)よりも低い有機媒体(D)を接触混合することでゴム状重合体粒子(B)から水層を実質的に分離することにより得られる、ゴム状重合体粒子(B)、有機媒体(C)および(D)からなる分散体(F)。
【請求項8】
1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られるエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物を、硬化剤を用い硬化させた硬化成形物。

【国際公開番号】WO2004/108825
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【発行日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506770(P2005−506770)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007679
【国際出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】