説明

変性ポリオレフィン粒子の製造方法

【構成】
中和度が0.3当量以下の溶融したカルボキシル基変性ポリオレフィン(A)と少なくとも水とを混合し、変性ポリオレフィンの懸濁液とし、次に水分を除去することで平均粒子径が0.1〜5mmの変性ポリオレフィンを得ることを特徴とする変性ポリオレフィン粒子の製造方法である。
【効果】
本発明の製造方法によれば、変性ポリオレフィンを水と混合し、攪拌することで、平均粒子径が0.1〜5mmの粒子の懸濁液とすることができ、懸濁液から水分を濾別することで変性にともなう未反応の不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸由来の水溶性の副生成物などを除去し、着色状態を改善した変性ポリオレフィン粒子を提供することができる。また本発明の製造方法により芳香族溶剤を使用しないで良好な物性、機能を維持した変性ポリオレフィン粒子を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィンに不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体付加させた変性ポリオレフィン樹脂を精製及び粒子化する新規な製造方法に関するものである。さらに詳しくは、変性ポリオレフィン樹脂を水と混合分散することで懸濁液とし、この懸濁液から水分を除去することにより精製した変性ポリオレフィン粒子を得ることを特徴とする変性ポリオレフィン粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブテン等のオレフィンの単独重合体やこれらのオレフィンを主成分とする他の共重合可能な単量体との共重合体(以下、これらを総称して「ポリオレフィン」と記す)と、不飽和カルボン酸又はその無水物等のエチレン性不飽和化合物をグラフト反応させて得られた変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンと他の樹脂との相溶化剤や接着剤、無機材料の分散剤や接着剤、金属への接着剤、ポリオレフィン基材等のプライマー、インキや塗料用の添加剤等として用いる事が出来る有用な素材である。
【0003】
しかしグラフト反応は有機過酸化物によるポリオレフィンの水素引き抜きを行い、不飽和カルボン酸を付加させるため、未反応の不飽和カルボン酸の残留やグラフト化しない不飽和カルボン酸由来の副生成物が生じ、未反応物や副生成物の混在による変性ポリオレフィンの性能低下や副生成物が異物として欠陥になるなどの問題を生じていた。
【0004】
また変性ポリオレフィンは粘性が高いことから粉砕により粉末化することが極めて困難であるため、取り扱う形状としては塊状に固形化した状態か、ペレタイザーによって固形を粒子化した状態が考えられる。しかし塊状の変性ポリオレフィンの場合、これ自体を混練機や成形機内に送り込むには溶融しなければならないため、塊状のポリマーを溶融できる装置を設置する必要がある。そのため変性ポリオレフィンの取り扱い形状としては粒子での取り扱いが一般的である。
【0005】
高性能の変性ポリオレフィンの粒子を得るには、ポリオレフィンのグラフト化反応による変性ポリオレフィンの生成の後、未反応物や副生成物を除去するといった精製を行い、更にペレタイザーによる粒子化が必要になる。未反応物や副生成物の除去は変性ポリオレフィンを溶剤に溶解させた後に貧溶媒にて再沈殿させるなどの精製工程(例えば、特許文献1参照)や、得られた変性ポリオレフィンを再加熱することで、未反応物を減少させる手法(例えば、特許文献2参照)、変性ポリオレフィンを水の存在下で溶融混練し、水分を揮発させて除去する事で行う精製工程(例えば、特許文献3参照)などの変性ポリオレフィンの後処理方法などが提案されている。しかし、多量の有機溶剤を濾過によって分離するなどの煩雑な工程が必要となること、再加熱によるポリオレフィンの分子量低下、水分を溶融混錬時に揮発させる必要があるなどの問題がある。更に粒子として得るためには、精製後の変性ポリオレフィンをペレタイザーに通す必要があり、煩雑な工程となっていたため、簡便な精製と粒子化の手法が望まれていた。
【特許文献1】特開昭54−099193号公報
【特許文献2】特開昭56−095914号公報
【特許文献3】特開平08−325322号公報
【0006】
高温の芳香族溶剤に変性ポリオレフィンを溶解し、これを析出開始温度以下の同一の溶剤に滴下する事で微細な結晶として析出させ微細粉末を得る精製と粒子化を同時に行う手法も知られているが(例えば、特許文献4参照)、変性ポリオレフィンが溶解しやすい溶剤に析出させるため、収率の低下などの問題があり、また近年環境問題から、トルエンやキシレンといった芳香族炭化水素を使用しない製造工程が求められている。
【特許文献4】特開平05−017585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記状況に鑑み、芳香族溶剤を使用しないで、精製と粒子化を同時に行い、良好な物性、機能を保持した収率の良い変性ポリオレフィン粒子の製造方法を提供することを技術的課題とする。
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために、数多くの試行錯誤的な試作・実験を繰り返した結果、溶融した変性ポリオレフィンに対し、少なくとも高温の水を添加し、攪拌する事で変性ポリオレフィン粒子の懸濁液とし、懸濁液を濾別することで収率良く変性ポリオレフィンの精製と粒子化を出来るようにすることで当該課題を解決したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題は、次のとおりの本発明によって解決できる。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)中和度が0.3当量以下の溶融したカルボキシル基変性ポリオレフィン(A)と少なくとも水とを混合し、変性ポリオレフィンの懸濁液とし、次に水分を除去することで平均粒子径が0.1〜5mmの変性ポリオレフィンを得る変性ポリオレフィン粒子の製造方法であり、
(2)変性ポリオレフィン(A)と少なくとも水と分散剤(B)とを混合し、固形分比で変性ポリオレフィン(A):分散剤(B)=100:0.01〜20を用いる前記(1)の変性ポリオレフィン粒子の製造方法、
(3)変性ポリオレフィン(A)のフローテスターにおける軟化開始温度以上で混合する前記(1)又は(2)の変性ポリオレフィン粒子の製造方法、
(4)変性ポリオレフィン(A)がポリオレフィン(a)に少なくとも不飽和カルボン酸類(b)を用いて変性して得られる樹脂である前記(1)〜(3)のいずれかの変性ポリオレフィン粒子の製造方法、
(5)分散剤(B)がポリビニルアルコール類である前記(1)〜(4)の変性ポリオレフィン粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、変性ポリオレフィンを水と混合し、攪拌することで、平均粒子径が0.1〜5mmの粒子の懸濁液とすることができ、懸濁液から水分を濾別することで変性ポリオレフィン中の未反応の不飽和カルボン酸やグラフト化しない不飽和カルボン酸由来の水溶性の副生成物を除去し、着色状態を改善した変性ポリオレフィン粒子を提供することができる。また本発明の製造方法により芳香族溶剤を使用せずに良好な物性、機能を維持した変性ポリオレフィン粒子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次のとおりである。
【0013】
本発明で使用できる変性ポリオレフィン(A)はカルボキシル基を有する変性ポリオレフィンであり、ポリオレフィン(a)に少なくとも不飽和カルボン酸類(b)を用いて変性させたポリオレフィンが好ましく、ポリオレフィン(a)に(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)と不飽和カルボン酸(b2)と有機過酸化物(c)を用いて変性して得られるポリオレフィンがより好ましい。
【0014】
ポリオレフィン(a)はα−オレフィンの共重合体であり、α−オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−ドデカデセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。共重合体としてはランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0015】
不飽和カルボン酸類(b)は、不飽和カルボン酸およびその誘導体であり、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等の不飽和一塩基酸及び不飽和一塩基酸エステル及び不飽和一塩基酸アミド、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和二塩基酸、不飽和二塩基酸無水物及び不飽和二塩基酸のハーフエステル、ジエステル、不飽和二塩基酸アミド及び不飽和二塩基酸イミド、アコニット酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、4−ペンテン−1,2,4−トリカルボン酸等の不飽和三塩基酸、不飽和三塩基酸無水物及び不飽和三塩基酸のモノ、ジ、トリエステル、不飽和三塩基酸アミド及び不飽和三塩基酸イミド、1−ペンテン−1,1,4,4−テトラカルボン酸、4−ペンテン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、3−ヘキセン−1,1,6,6−テトラカルボン酸等の不飽和四塩基酸、不飽和四塩基酸無水物及び不飽和四塩基酸のモノ、ジ、トリ、テトラエステル、不飽和四塩基酸アミド及び不飽和三塩基酸イミドの群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である。単独重合性に乏しく、グラフト化反応が進行しやすいため、無水マレイン酸及び/又はその誘導体が特に好ましい。
【0016】
不飽和カルボン酸類(b)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)及び不飽和カルボン酸(b2)を併用すると、グラフト化反応を進行させやすく、未反応物やグラフト化していないオリゴマーの生成量が抑制しやすくなるため特に好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)は、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルであり、好ましくは、炭素数1以上18以下の直鎖、分岐、環状のアルキル基とのエステルであるアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルであり、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸2−ブチル、メタクリル酸2−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸n−ドデシル、アクリル酸n−オクタデシル、メタクリル酸n−オクタデシル等を挙げることができる。
【0018】
不飽和カルボン酸(b2)は、不飽和一塩基酸、不飽和二塩基酸などの多価およびその誘導体であり、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和二塩基酸、及び不飽和二塩基酸とメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、n−ドデシルアルコール、n−オクタデシルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリチレングリコールモノエチルエーテル、トリチレングリコールモノブチルエーテル等とのモノエステルの群及びメチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、アニリン、ベンジルアミン等とのアミドの群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である。これらのうち単独重合性に乏しく、グラフト化反応が進行しやすいため、無水マレイン酸及び/又はその誘導体が特に好ましい。
【0019】
本発明では、上記不飽和カルボン酸類(b)以外のエチレン性不飽和化合物を、不飽和カルボン酸類(b)と同時に使用することができる。ここでいうエチレン性不飽和化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン、ブタジエン、イソプレン等のアルカジエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルのようなビニルエーテル等が挙げられる。これらエチレン性不飽和化合物は単独で用いても良いし、2種以上を併用することもできる。
【0020】
有機過酸化物(c)は炭素原子を化合物の骨格に有する過酸化物であればよく、水素引き抜き効果を持つラジカルを発生できる過酸化物が好ましく、具体的には、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アルキルパーオキシカーボネートが挙げられ、具体的には、ジイソブチリル パーオキサイド、クミル パーオキシネオデカネート、ジ−n−プロピル パーオキシジカーボネート、ジイソプロピル パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチル パーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシネオデカネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル) パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチル パーオキシネオデカネート、ジ(2−エトキシエチル) パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル) パーオキシジカーボネート、t−ヘキシル パーオキシネオデカネート、ジメトキシブチル パーオキシジカーボネート、t−ブチル パーオキシネオデカネート、t−ヘキシル パーオキシピバレート、t−ブチル パーオキシピバレート、ジ(3,3,5−トリメチルヘキサノイル) パーオキシド、ジ−n−オクタノイル パーオキサイド、ジラウロイル パーオキサイド、ジステアロイル パーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジコハク酸パーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシル パーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジ(4−メチルベンゾイル) パーオキシド、t−ブチル パーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジベンゾイル パーオキサイド、t−ブチル パーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン)プロパン、t−ヘキシル パーオキシ イソプロピル モノカーボネート、t−ブチル パーオキシ マレイックアシッド、t−ブチル パーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサネート、t−ブチル パーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチル パーオキシ−2−エチルヘキシル モノカーボネート、t−ヘキシル パーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル 4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレラート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミル パーオキサイド、ジ−t−ヘキシル パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチル クミル パーオキサイド、ジ−t−ブチル パーオキサイド、p−メンタン ヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼン ヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチル ヒドロパーオキサイド、クメン ヒドロパーオキサイド、t−ブチル ヒドロパーオキサイド等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記のようにして得られる変性ポリオレフィンは、使用する目的に応じて製造の際、安定性を調整するための安定剤を添加することができる。安定剤としてはソルビトール、ソルビトールアルキレート、ヒドロキノン、ベンゾキノン、ニトロソフェニルヒドロキシ化合物、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のフォスファイト化合物類、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のペンタエリスリトールエステル類等の化合物が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
ポリオレフィン(a)を変性させる方法は、公知の方法で行うことが可能であり、例えばポリオレフィン(a)を軟化点以上の温度にすることで有機溶剤に溶解し、不飽和カルボン酸類(b)と有機過酸化物(c)を添加し反応させる溶液法、ポリオレフィン(a)を軟化点以上にすることで溶融し、不飽和カルボン酸類(b)と有機過酸化物(c)を添加混合し反応させる溶融法、ポリオレフィン(a)と不飽和カルボン酸類(b)と有機過酸化物(c)をバンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を使用して、ポリオレフィン(a)の軟化点以上の温度で混錬する方法等が挙げられる。不飽和カルボン酸類(b)と有機過酸化物(c)の添加方法として、一括添加、溶液に希釈しての添加、分割添加、滴下による連続式の添加方法などは適宜選択でき、添加順序も適宜選択できる。変性反応は多段で行っても良く、その際には各反応器及び反応形式を適宜組み合わせて使用することができる。また、反応終了時に減圧工程を設け、残留した不飽和カルボン酸類(b)と有機過酸化物(c)、有機過酸化物(c)の分解物や有機溶剤を取り除くこともできる。
【0023】
溶液法で不飽和カルボン酸類(b)によりポリオレフィン(a)を変性する場合、有機溶剤としては、たとえば、ヘキサン、へプタン、オクタン等の飽和脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロへプタン、メチルシクロヘプタン等の飽和脂環式炭化水素類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアルキレート類、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのジアルキレングリコールアルキルエーテルアルキレート類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル等のエチレン性の二重結合を含まないエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のエチレン性の二重結合を含まないケトン類、n−ブチルエーテル、イソブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジオキサン等のエチレン性の二重結合を含まないエーテル類などが挙げられる。トルエン、キシレン、エチルベンゼン等のエチレン性の二重結合を含まない芳香族炭化水素類を使用することもできるが、近年の環境問題からできるだけ使用しないことが好ましい。これら有機溶剤は単独で用いてもよいし、混合して使用してもよい。
【0024】
ポリオレフィン(a)を変性する反応温度に特に制限はないが、100〜200℃が好ましい。不飽和カルボン酸類(b)や有機化酸化物(c)が均一に分散できる様に、ポリオレフィンが溶融もしくは有機溶剤に溶解する温度以上であることが好ましく、具体的には100℃以上で行う事が好ましい。また過酸化物によるポリオレフィンの分子量低下を抑制させるため高温になり過ぎないことが好ましく、具体的には200℃以下で行う事が好ましい。
【0025】
本発明において、変性ポリオレフィン(A)の粒子化は、溶融した変性ポリオレフィン(A)を少なくとも水とを混合し攪拌することで、攪拌によってかかる剪断力によって行い、変性ポリオレフィン粒子の懸濁液から水分を除去することで変性ポリオレフィン粒子を得ることが出来る。添加する水は分散剤(B)を溶解した水溶液であることが好ましく、得られた変性ポリオレフィン粒子の平均粒子径は0.1〜5mmであり、0.5〜2mmとなることが好ましい。平均粒子径が5mmより大きい場合に比べ、5mm以下の場合には、変性ポリオレフィン中の不飽和カルボン酸類由来のグラフト化していない酸性の水可溶成分が除かれやすくなるため好ましく、平均粒子径2mm以下ではさらに酸性の水可溶成分が除かれやすくなるためより好ましい。平均粒子径が0.1mmより小さい場合に比べ、0.1mm以上の場合には、変性ポリオレフィン粒子を濾過により分離する際の収率が高くなるため好ましく、平均粒子径0.5mm以上ではさらに収率が向上するため、より好ましい。なお変性ポリオレフィンの粒子径は、球状の粒子は粒子径の測定により、いびつな粒子に関しては、2軸平均径により求めた。平均粒子径は個数平均径により求めた。
【0026】
本発明において、中和度が0.3当量以下のカルボキシル基変性ポリオレフィン(A)は、有機アミン化合物、アルカリ金属の水酸化物やアルカリ土類金属の水酸化物等の塩基性化合物が変性ポリオレフィン(A)中のカルボキシル基に対して0.3当量以下であることが好ましく、塩基性化合物を含まない場合がより好ましい。0.3当量より多い場合に比べ、0.3当量以下である場合には、変性ポリオレフィン粒子の粒子径が0.1mm以上となり、変性ポリオレフィン粒子を濾過により分離する際の収率が高くなるため好ましく、塩基性物質を含まない場合つまり未中和(中和度が0.0当量)の場合にはさらに収率が高くなるためさらに好ましい。
【0027】
本発明で使用できる分散剤(B)は部分的および/または全面的に加水分解されたポリ酢酸ビニルであるポリビニルアルコール、カルボシキ変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カチオン変性デンプン、両性デンプン、酸化デンプン、酵素変性デンプン等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、(メタ)アクリルアミドホモポリマーを含む(メタ)アクリルアミドを主成分とする共重合可能なモノマーを重合したアクリルアミド系ポリマー、(メタ)アクリル酸ホモポリマーを含むアクリル酸を主成分とする共重合可能なモノマーを重合したアクリル酸系ポリマー、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。これら分散剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用することもできる。この中でも、ポリビニルアルコール類が少量でより微細な粒子が得られるため、より好ましい。
【0028】
分散剤(B)の使用量は変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して0.01〜20質量部となることが好ましく、特に0.1質量部〜5質量部となることがより好ましい。なお、これは固形分あたりの質量である。0.01質量部よりも含有量が少ない場合に比べ、0.01質量部以上である場合には、変性ポリオレフィン(A)粒子をより微細な粒子の懸濁状態を安定化させやすいため好ましく、0.1質量部以上である場合には更に懸濁状態を安定化させやすいため好ましい。また、20質量部よりも多い場合に比べ、20質量部以下である場合には、変性ポリオレフィン粒子の粒子径が0.1mm以上となり、変性ポリオレフィン粒子を濾過により分離する際の収率が高くなるため好ましく、5質量部以下である場合にはさらに収率が高くなるためさらに好ましい。
【0029】
溶融した変性ポリオレフィン(A)と混合する水の使用量に特に制限は無いが、変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して100〜500質量部となることが好ましい。100質量部よりも含有量が少ない場合に比べ、100質量部以上である場合には、変性ポリオレフィン(A)粒子の懸濁状態を安定化させ、再融着を防ぎやすいため好ましい。また、500質量部よりも多い場合に比べ、500質量部以下である場合には、変性ポリオレフィン粒子と分離する水の量が少なくなり、分離工程が容易になるため好ましい。
【0030】
本発明では、本発明の効果を阻害しない限り、溶融した変性ポリオレフィン(A)と混合する水に、水溶性の有機溶剤を含んでいても良い。ここでいう水溶性の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類などが挙げられる。これら水溶性の有機溶剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用することもできる。
【0031】
溶融した変性ポリオレフィン(A)と少なくとも水を混合して、攪拌する際の水温はフローテスターにおける変性ポリオレフィン(A)の軟化開始温度以上の温度である事が好ましい。なお、本発明でいう変性ポリオレフィン(A)の軟化開始温度は、加重を0.49MPa、ダイを内径×長さ=1mm×10mmとし、フローテスター(株式会社島津製作所製:CFT−500D)により得た値である。軟化開始温度以上の温度であれば、変性ポリオレフィン(A)が攪拌によって生じる剪断力により粒子化が起こりやすくなるため好ましい。
【0032】
溶融した変性ポリオレフィン(A)と少なくとも水を混合、攪拌する際の圧力は、常圧下もしくは加圧下で行う事が出来る。フローテスターにおける軟化開始温度が100℃以上である変性ポリオレフィン(A)であっても、加圧下において水温を軟化開始温度以上とする事で、変性ポリオレフィン(A)の粒子化は可能である。
【0033】
本発明において得られた変性ポリオレフィン粒子の懸濁液から水分の除去を行い、好ましくは洗浄を行う事で変性ポリオレフィン粒子を得ることができる。水分の除去には遠心脱水、振動篩濾過、圧搾脱水、真空乾燥、真空ベルトフィルター、熱風乾燥などの脱水、乾燥方法等の公知の方法を用いることができる。
【0034】
かくして得られた変性ポリオレフィン粒子は、例えば、ヒートシール剤や接着剤および接着剤の改質剤として使用でき、特にポリオレフィン系の樹脂や複合材料と他の樹脂や金属、ガラス等との接着において接着性が優れる。また、フィルム、シート、構造材料、建築材料、自動車部品、電気・電子製品、包装材料等のポリオレフィン系の樹脂や複合材料を作成する際に、ポリオレフィン系樹脂と他の樹脂との相溶化剤や、複合化する材料をポリオレフィンへ分散させ易くする分散剤等の改質剤として使用できる。また塗料バインダー、インキ用バインダー、プライマーとして使用でき、特にポリオレフィン系の樹脂や複合材料に対する塗装の際に、密着性、塗装性などが優れる。またガラス繊維のサイジング剤としても使用できる。
【0035】
本発明の変性ポリオレフィン粒子はそのままでも接着剤、相溶化剤、分散剤、改質剤塗料バインダー、インキ用バインダー、プライマーとして機能し得るものであるが、使用目的にて様々な添加剤を加えることもできる。添加剤としては、フェノール系安定剤、フォスファイト系安定剤、アミン系安定剤、アミド系安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤などの安定剤、揺変剤、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、耐候剤、顔料、顔料分散剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、油剤、染料などの添加剤、酸化チタン、酸化亜鉛などの遷移金属化合物、カーボンブラック等の顔料、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ウオラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、ガラスフレーク、硫酸バリウム、クレー、カオリン、微粉末シリカ、マイカ、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、セライトなどの無機、有機の充填剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の変性ポリオレフィン粒子は他樹脂との相溶性にも優れることから、必要に応じてウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、硝化綿等の他樹脂をブレンドしてもよい。
【0037】
本発明の変性ポリオレフィンの製造方法を、以下具体的に示す。
【0038】
なお、以下において「部」及び「%」は特記しない限りすべて重量基準である。
【0039】
<変性ポリオレフィンの軟化点>
変性ポリオレフィン(A)の軟化開始温度は、加重を0.49MPa、ダイを内径×長さ=1mm×10mmとし、フローテスター(株式会社島津製作所製:CFT−500D)により得た値である。
【0040】
<変性ポリオレフィン中に含まれる酸性の水可溶成分の酸価>
変性ポリオレフィン(A)2gを熱キシレン50gに溶解し、イオン交換水100gを添加し、10分以上還流下攪拌した後、冷却した。24時間静置する事でキシレン層と水層に分離し、水層の酸価を測定することで、変性ポリオレフィン中に含まれるポリオレフィンにグラフト化していない不飽和カルボン酸類由来の不純物である酸性の水可溶成分の酸価を測定した。このため、この値が大きいほど不純物が多いことを示す。
【0041】
<変性ポリオレフィンの粒子化による酸性の水可溶成分の減少率>
変性ポリオレフィンの粒子化前と粒子化後の酸性の水可溶成分を測定することにより、粒子化による酸性の水可溶成分の減少率(以下、減少率と略する場合がある)を測定した。減少率は式(1)によって得られた値とした。このため、この値が大きいほうが、不純物を取り除くことができたことを示す。
(減少率)={(粒子化前の水可溶成分の酸価)−(粒子化後の水可溶成分の酸価)}/(粒子化前の水可溶成分の酸価)×100 …(1)
【0042】
<変性ポリオレフィン粒子の平均粒子径>
変性ポリオレフィン粒子変性ポリオレフィンの粒子径は、デジタルマイクロスコープVH−6200(株式会社キーエンス製)の寸法計測機能を用いて測定した。球状の粒子は粒子径の測定により、いびつな粒子に関しては、式(2)に示される2軸平均径により求めた。平均粒子径は式(3)に示される個数平均径により求めた。
(2軸平均径)={(長軸径)+(短軸径)}/2 …(2)
(個数平均径)=Σ(測定粒子径)/(測定数) …(3)
【0043】
変性ポリオレフィン(A−1)
変性ポリオレフィン(A−1)として無水マレイン酸を用いて変性したポリオレフィンであるTP LICOCENE PP MA1332(クラリアントジャパン株式会社製)をそのまま用いた。変性ポリオレフィン(A−1)は、外観が黄色、軟化開始温度が72℃、変性ポリオレフィン(A−1)中に含まれる酸性の水可溶成分が3.5mgKOH/gであった。変性ポリオレフィン(A−1)の物性を表1に示す。なお、変性ポリオレフィン(A−1)の酸価は18mgKOH/gであった。
【0044】
変性ポリオレフィン(A−2)
変性ポリオレフィン(A−2)として無水マレイン酸を用いて変性したポリオレフィンであるTP LICOCENE PP MA6252(クラリアントジャパン株式会社製)をそのまま用いた。変性ポリオレフィン(A−2)は、外観が黄色、軟化開始温度が136℃、変性ポリオレフィン(A−2)中に含まれる酸性の水可溶成分は19.3mgKOH/gであった。変性ポリオレフィン(A−2)の物性を表1に示す。なお、変性ポリオレフィン(A−2)の酸価は40mgKOH/gであった。
【0045】
変性ポリオレフィン(A−3)の製造例
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3000mlのセパラフラスコに、ポリオレフィンとしてVESTOPLAST708(デグサジャパン製)1000g、酸化防止剤としてIrganox1010(チバガイギー社製:商品名)1gおよびIrgafos168(チバガイギー社製:商品名)1gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながら170℃になる様に温度を調整し、ポリオレフィンが溶融し、均一の状態になってから、無水マレイン酸6gを添加し、次いでジ−t−ヘキシル パーオキサイド(日本油脂株式会社製:パーヘキシルD)1.4gを添加した。170℃に保ったまま、30分間反応を継続したあと、無水マレイン酸6gを添加し、次いでジ−t−ヘキシル パーオキサイド1gを添加した。同様にして同量の無水マレイン酸、ジ−t−ヘキシル パーオキサイドを30分毎に繰り返し添加し、無水マレイン酸の添加量の合計が30g、ジ−t−ヘキシル パーオキサイドの添加量の合計が7gになるようにした。ジ−t−ヘキシル パーオキサイドを全て添加してから170℃で1時間反応を行った後、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、未反応の無水マレイン酸、ジ−t−ヘキシル パーオキサイドおよびジ−t−ヘキシル パーオキサイドが分解した低分子の化合物の除去を1時間行った。反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィン(A−3)を得た。得られた変性ポリオレフィン(A−3)は、外観が黄色、軟化開始温度が88℃、変性ポリオレフィン(A−3)中に含まれる酸性の水可溶成分は4.2mgKOH/gであった。変性ポリオレフィン(A−3)の物性を表1に示す。
【0046】
変性ポリオレフィン(A−4)の製造例
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3000mlのセパラフラスコに、ポリオレフィンとしてVESTOPLAST7081000g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート50g、酸化防止剤としてIrganox1010 1gおよびIrgafos168 1gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながら、170℃になる様に温度を調整し、ポリオレフィンが溶融し、均一の状態になってから2−エチルヘキシルアクリレート90g、無水マレイン酸30g、ジ−t−ヘキシル パーオキサイド5gをプロピレングリコールメチルエーテルアセテート150gに溶解した溶液を2時間掛けて滴下した。
滴下終了後、還流下で2時間反応を行った後、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、未反応の2−エチルヘキシルアクリレート、無水マレイン酸、ジ−t−ヘキシル パーオキサイドおよびジ−t−ヘキシル パーオキサイドが分解した低分子の化合物の除去を1時間行った。反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィン(A−4)を得た。
得られた変性ポリオレフィン(A−4)は、外観が淡黄色、軟化開始温度は83℃、変性ポリオレフィン(A−4)中に含まれる酸性の水可溶成分は2.0mgKOH/gであった。変性ポリオレフィン(A−4)の物性を表1に示す。
【0047】
変性ポリオレフィン(A−5)の製造例
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3000mlのセパラフラスコに、ポリオレフィンとしてLICOCENE PP 2602(クラリアント製)1000g、プロピオン酸ブチル20g、ソルビトール0.5gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながら170℃になる様に温度を調整し、ポリオレフィンが溶融し、均一の状態になってからn−ブチルメタクリレート12g、無水マレイン酸12gを添加した後、ジ−t−ブチル パーオキサイド(日本油脂株式会社製:パーブチルD)2gをプロピオン酸ブチル6gに溶解して添加した。系内を170℃に保ったまま、30分間反応を継続したあと、n−ブチルメタクリレート12g、無水マレイン酸12gを添加した後、ジ−t−ブチル パーオキサイド2gをプロピオン酸ブチル6gに溶解して添加した。同様にしてn−ブチルメタクリレート、無水マレイン酸、ジ−t−ブチル パーオキサイドの添加を30分毎に合計5回行い、n−ブチルメタクリレートの添加量の合計が60g、無水マレイン酸の添加量の合計が60g、ジ−t−ブチル パーオキサイドの添加量の合計が10gになるようにした。
添加終了後、170℃で1.5時間反応を行った後、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピオン酸ブチル、未反応のn−ブチルメタクリレート、無水マレイン酸およびジ−t−ブチル パーオキサイドが分解した低分子の化合物の除去を1時間行った。反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィン(A−5)を得た。
得られた変性ポリオレフィン(A−5)は、外観が淡黄色、軟化開始温度は98℃、変性ポリオレフィン(A−5)中に含まれる酸性の水可溶成分は4.6mgKOH/gであった。変性ポリオレフィン(A−5)の物性を表1に示す。
【0048】
変性ポリオレフィン(A−6)の製造例
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3000mlのセパラフラスコに、ポリオレフィンとしてLICOCENE PP 1602(クラリアント製)1000g、酸化防止剤としてIrganox1010 1gおよびIrgafos168 1gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながら170℃になる様に温度を調整し、ポリオレフィンが溶融し、均一の状態になってからn−ブチルメタクリレート60g、ラウリルアクリレート60g、マレイン酸i−ブタノールハーフエステル100g、スチレン1g、ジ−t−ブチル パーオキサイド10gを混合したモノマー溶液を2時間掛けて滴下した。
滴下終了後、還流下で2時間反応を行った。反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィン(A−6)を得た。
得られた変性ポリオレフィン(A−6)は、外観が乳白色、軟化開始温度は86℃、変性ポリオレフィン(A−6)中に含まれる酸性の水可溶成分は1.2mgKOH/gであった。変性ポリオレフィン(A−6)の物性を表1に示す。
【0049】
変性ポリオレフィン(A−7)の製造例
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3000mlのセパラフラスコに、ポリオレフィンとしてLICOCENE PP 1602(クラリアント製)1000g、酢酸ブチル50g、酸化防止剤としてIrganox1010 1gおよびIrgafos168 1gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながら系内が、150℃になる様に温度を調整し、ポリオレフィンが溶融し、均一の状態になってから2−エチルヘキシルアクリレート60g、メタクリル酸30g、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキシルモノカーボネート(日本油脂株式会社製:パーブチルE)5gを酢酸ブチル150gに溶解した溶液を2時間掛けて滴下した。
滴下終了後、還流下で3時間反応を行った後、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、酢酸ブチル、未反応の2−エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキシルモノカーボネートおよびt−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキシルモノカーボネートが分解した低分子の化合物の除去を1時間行った。減圧終了後、反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィン(A−7)を得た。
得られた変性ポリオレフィン(A−7)は、外観が乳白色、軟化開始温度は83℃、変性ポリオレフィン(A−7)中に含まれる酸性の水可溶成分は0.5mgKOH/gであった。変性ポリオレフィン(A−7)の物性を表1に示す。
【0050】
変性ポリオレフィン(A−8)の製造例
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3000mlのセパラフラスコに、ポリオレフィンとしてLICOCENE PP 2602(クラリアント製)1000g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート50g、酸化防止剤としてIrganox1010 1gおよびIrgafos168 1gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながら系内が、170℃になる様に温度を調整し、ポリオレフィンが溶融し、均一の状態になってから2−エチルヘキシルアクリレート120g、無水マレイン酸60g、ジ−t−ブチル パーオキサイド10gをプロピレングリコールメチルエーテルアセテート150gに溶解した溶液を2時間掛けて滴下した。
滴下終了後、還流下で2時間反応を行った後、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、未反応の2−エチルヘキシルアクリレート、無水マレイン酸、ジ−t−ブチル パーオキサイドおよびジ−t−ブチル パーオキサイドが分解した低分子の化合物の除去を1時間行った。反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィン(A−8)を得た。 得られた変性ポリオレフィン(A−8)は、外観が淡黄色、軟化開始温度は93℃、変性ポリオレフィン(A−8)中に含まれる酸性の水可溶成分は4.5mgKOH/gであった。変性ポリオレフィン(A−8)の物性を表1に示す。
【0051】
ポリオレフィン(a−1)
ポリオレフィン(a−1)としてVESTOPLAST792(デグサジャパン株式会社製)をそのまま用いた。ポリオレフィン(a−1)は、未変性であり、外観が白色、軟化開始温度が92℃、ポリオレフィン(a−1)中に含まれる酸性の水可溶成分は0mgKOH/gであった。ポリオレフィン(a−1)の物性を表1に示す。
【0052】
ポリオレフィン(a−2)
ポリオレフィン(a−2)としてTP LICOCENE PP 2602(クラリアントジャパン株式会社製)をそのまま用いた。ポリオレフィン(a−2)は、未変性であり、外観が白色、軟化開始温度が95℃、樹脂中の酸性の水可溶成分は0mgKOH/gであった。ポリオレフィン(a−2)の物性を表1に示す。
【0053】
分散剤(B−1)〜(B−5)
ポリビニルアルコール類として分散剤(B−1)(ゴーセノールGH−20(日本合成化学工業株式会社製))、分散剤(B−2)(クラレポバールPVA−210(株式会社クラレ製))、ポリアクリル酸系ポリマーとして分散剤(B−3)(40%ポリアクリル酸水溶液であるアロンA−10SL(東亞合成株式会社) 2.5gに197.5gのイオン交換水を加えて分散剤の水溶液200g(固形分1g)としたもの)、セルロース類として分散剤(B−4)(20℃、2%水溶液粘度が100mPa・sのメチルセルロース MEROLOSE SM(信越化学工業株式会社))、デンプン類として分散剤(B−5)(カチオン化でんぷん エキセルDH(日澱化學株式会社))を用いた。
【0054】
分散剤(B−6)
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた1000mlの4つ口フラスコに50%アクリルアミド水溶液335.7部、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド16.2部、80%メタクリル酸水溶液11.2部とメタリルスルホン酸ナトリウム4.1部、ノルマルドデシルメルカプタン2.6部、イオン交換水215.6部、イソプロピルアルコール199.8部を仕込み、20%硫酸にてpHを4.5に調整した。この混合液を攪拌しながら窒素ガス雰囲気下で、60℃まで昇温した。重合開始剤として2%過硫酸アンモニウム水溶液14.8部加え、80℃まで昇温し、3時間保持した。次いでイソプロピルアルコールの留去を行い、イオン交換水を加えて室温まで冷却し、固形分濃度20%、粘度190mPa・s、pH4.2のポリアクリルアミド系ポリマー水溶液を得た。得られたポリマー水溶液5gに195gのイオン交換水を加えた水溶液200g(固形分1g)を分散剤(B−6)として用いた。
【実施例】
【0055】
(実施例1)変性ポリオレフィン粒子(C−1)の製造例
パドル翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのセパラフラスコに、イオン交換水200gを添加し、90℃に加温した。次にポリオレフィン(A−1)100gの溶融を行い、90℃のイオン交換水中に溶融したポリオレフィン(A−1)を添加し、90℃に保ちながら攪拌する事で樹脂の粒子化を未中和(0.0当量)の状態で行い、懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を行い、乳白色の変性ポリオレフィン粒子(C−1)98gを得た。
変性ポリオレフィン粒子(C−1)の平均粒子径は2.3mmであり、変性ポリオレフィン粒子(C−1)中の酸性の水可溶成分は2.8mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は20%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0056】
(実施例2)変性ポリオレフィン粒子(C−2)の製造例
アンカー翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのセパラフラスコに、ポリオレフィン(A−1)100gを入れ、溶融した後、攪拌を行いながら、90℃になる様に温度を調整した。次に分散剤(B−1)5gをイオン交換水195gに溶解した水溶液を90℃まで加温した。攪拌中の溶融樹脂中に加温した分散剤(B−1)水溶液を添加し、90℃に保ちながら攪拌する事で樹脂の粒子化を未中和(0.0当量)の状態で行い、懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を行い、白色の変性ポリオレフィン粒子(C−2)97gを得た。
変性ポリオレフィン粒子(C−2)の平均粒子径は0.6mmであり、変性ポリオレフィン粒子(C−2)中の酸性の水可溶成分は1.3mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は63%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0057】
(実施例3)変性ポリオレフィン粒子(C−3)の製造例
3枚後退翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのセパラフラスコに、分散剤(B−1)20g、イオン交換水280gを加え、攪拌しながら加熱を行い、100℃の分散剤水溶液を作製した。次にポリオレフィン(A−2)100gの溶融を行い、100℃の分散剤水溶液中に溶融したポリオレフィン(A−2)を添加し、100℃に保ちながら攪拌する事で樹脂の粒子化を未中和(0.0当量)の状態で行い、懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を行い、淡黄色の変性ポリオレフィン粒子(C−3)95gを得た。
変性ポリオレフィン粒子(C−3)の平均粒子径は3.1mmであり、変性ポリオレフィン粒子(C−3)中の酸性の水可溶成分は11.0mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は43%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0058】
(実施例4)変性ポリオレフィン粒子(C−4)の製造例
マックスブレンド翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのセパラフラスコに、分散剤(B−1)1g、イオン交換水199gを加え、攪拌しながら加熱を行い90℃の分散剤水溶液を作製した。次にポリオレフィン(A−3)100gの溶融を行い、90℃の分散剤水溶液中に溶融したポリオレフィン(A−3)を添加し、90℃を保ちながら攪拌する事で樹脂の粒子化を未中和(0.0当量)の状態で行い、懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を行い、淡黄色の変性ポリオレフィン粒子(C−4)98gを得た。
変性ポリオレフィン粒子(C−4)の平均粒子径は1.2mmであり、変性ポリオレフィン粒子(C−4)中の酸性の水可溶成分は2.2mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は48%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0059】
(実施例5)変性ポリオレフィン粒子(C−5)の製造例
使用した変性ポリオレフィンを変性ポリオレフィン(A−4)とし、分散剤(B−1)1gをイオン交換水197.25g、90%2−メチルアミノプロパノール1.75g(中和度0.3当量に相当)に溶解した水溶液を使用量した以外は実施例4と同様に行い、変性ポリオレフィン粒子(C−5)85gを得た。変性ポリオレフィン粒子(C−5)は平均粒子径0.2mmの白色の粒子であり、変性ポリオレフィン粒子(C−5)中の酸性の水可溶成分は0.3mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は85%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0060】
(実施例6)変性ポリオレフィン粒子(C−6)の製造。
使用した変性ポリオレフィンを変性ポリオレフィン(A−4)とした以外は実施例4と同様に未中和(0.0当量)の状態で行い、変性ポリオレフィン粒子(C−6)98gを得た。変性ポリオレフィン粒子(C−6)は平均粒子径0.7mmの白色の粒子であり、変性ポリオレフィン粒子(C−6)中の酸性の水可溶成分は0.8mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は60%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0061】
(実施例7)変性ポリオレフィン粒子(C−7)の製造例
攪拌機及び温度計を備えた1000mlのオートクレーブに、ポリオレフィン(A−5)100gを入れ溶融を行い、ポリオレフィン(A−5)が溶融した後、攪拌を行いながら系内が120℃になる様にオートクレーブの温度を調整した。攪拌を停止した後、90℃に加熱した分散剤(B−1)5gをイオン交換水195gに溶解した水溶液を加え、加圧下、系内の水温が120℃になる様にオートクレーブの温度を調整した。120℃において、攪拌する事で樹脂の粒子化を未中和(0.0当量)の状態で行い、懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから、常圧に戻し、懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を行い、乳白色の変性ポリオレフィン粒子(C−7)98gを得た。
変性ポリオレフィン粒子(C−7)の平均粒子径は1.6mmであり、変性ポリオレフィン粒子(C−7)中の酸性の水可溶成分は2.3mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は50%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0062】
(実施例8)変性ポリオレフィン粒子(C−8)の製造例
使用した変性ポリオレフィンを変性ポリオレフィン(A−5)、95℃で粒子化を行った以外は実施例6と同様に未中和(0.0当量)の状態で行い変性ポリオレフィン粒子(C−8)90gを得た。変性ポリオレフィン粒子(C−8)は平均粒子径4.1mmの淡黄色の粒子であり、変性ポリオレフィン粒子(C−8)中の酸性の水可溶成分は3.7mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は20%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0063】
(実施例9)変性ポリオレフィン粒子(C−9)の製造例
使用した分散剤(B−1)を25g使用し、イオン交換水を275g使用した以外は実施例8と同様に未中和(0.0当量)の状態で行い変性ポリオレフィン粒子(C−9)77gを得た。変性ポリオレフィン粒子(C−9)は平均粒子径0.1mmの白色の粒子であり、変性ポリオレフィン粒子(C−9)中の酸性の水可溶成分は1.0mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は78%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0064】
(実施例10)変性ポリオレフィン粒子(C−10)の製造例
使用した変性ポリオレフィンを(A−6)、分散剤(B−1)0.01gをイオン交換水199.99gに溶解した水溶液を使用し、95℃で粒子化を行った以外は実施例6と同様に未中和(0.0当量)の状態で行い、変性ポリオレフィン粒子(C−10)97gを得た。変性ポリオレフィン粒子(C−10)は平均粒子径3.1mmの乳白色の粒子であり、変性ポリオレフィン粒子(C−10)中の酸性の水可溶成分は0.8mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は33%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0065】
(実施例11)変性ポリオレフィン粒子(C−11)の製造例
3枚後退翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのセパラフラスコに、分散剤(B−1)0.005g、イオン交換水199.995gを加え、攪拌しながら加熱を行い、90℃の分散剤水溶液を作製した。次にポリオレフィン(A−7)100gの溶融を行い、90℃の分散剤水溶液中に溶融したポリオレフィン(A−7)を添加し、90℃に保ちながら攪拌する事で樹脂の粒子化を未中和(0.0当量)の状態で行い、懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を行い、乳白色の変性ポリオレフィン粒子(C−11)96gを得た。
変性ポリオレフィン粒子(C−11)の平均粒子径は4.2mmであり、変性ポリオレフィン粒子(C−11)中の酸性の水可溶成分は0.4mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は20%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0066】
(実施例12)変性ポリオレフィン粒子(C−12)の製造例
使用した変性ポリオレフィンを変性ポリオレフィン(A−8)、分散剤(B−1)0.2gをイオン交換水199.8gに溶解した水溶液を使用量し、95℃で粒子化を行った以外は実施例6と同様に未中和(0.0当量)の状態で行い、変性ポリオレフィン粒子(C−12)99gを得た。変性ポリオレフィン粒子(C−12)は平均粒子径0.8mmの白色の粒子であり、変性ポリオレフィン粒子(C−12)中の酸性の水可溶成分は2.1mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は53%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0067】
(実施例13〜17)変性ポリオレフィン粒子(C−13)〜(C−17)の製造例
使用した変性ポリオレフィンを変性ポリオレフィン(A−8)、分散剤の種類を分散剤(B−2)〜(B−6)と、表1に示してある種類に変更し、95℃で粒子化を行った以外は実施例6と同様に未中和(0.0当量)の状態で行った。なお表1中の分散剤(B)の使用量は固形分で示してある。得られた変性ポリオレフィン粒子(C−13)〜(C−17)の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0068】
(実施例18)変性ポリオレフィン粒子(C−18)の製造例
3枚後退翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのセパラフラスコに、分散剤(B−1)0.1g、イオン交換水189.9g、エタノール10gを加え、攪拌しながら加熱を行い、95℃の分散剤水溶液を作製した。次にポリオレフィン(A−8)100gの溶融を行い、95℃の分散剤水溶液中に溶融したポリオレフィン(A−8)を添加し、95℃に保ちながら攪拌する事で樹脂の粒子化を未中和(0.0当量)の状態で行い、懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を行い、白色の変性ポリオレフィン粒子(C−18)99gを得た。
変性ポリオレフィン粒子(C−18)の平均粒子径は0.9mmであり、変性ポリオレフィン粒子(C−18)中の酸性の水可溶成分は2.0mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は56%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0069】
(比較例1、2)ポリオレフィンの粒子化(D−1)、(D−2)の製造例
使用した変性ポリオレフィンを未変性のポリオレフィン(a−1)または(a−2)とし、95℃で粒子化を行った以外は実施例6と同様に未中和(0.0当量)の状態で行ったが、ポリオレフィン(a−1)および(a−2)のいずれの場合も、溶融したポリオレフィンが攪拌軸に巻き付き、ポリオレフィンは粒子の懸濁状態とならなかった。
【0070】
(比較例3)変性ポリオレフィン粒子(D−3)の製造例
3枚後退翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのセパラフラスコに、分散剤(B−1)5g、イオン交換水191.5g、90%2−メチルアミノプロパノール3.5g(中和度1.1当量に相当)を加え、攪拌しながら油浴による加熱を行い、90℃の分散剤水溶液を作製した。次にポリオレフィン(A−1)100gの溶融を行い、90℃の分散剤水溶液中に溶融したポリオレフィン(A−1)を添加し、90℃に保ちながら攪拌する事で樹脂の粒子化を行い、懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を行い、乳白色の変性ポリオレフィン粒子(D−3)11gを得た。
変性ポリオレフィン粒子(D−3)の平均粒子径は0.04mmであり、変性ポリオレフィン粒子(D−3)中の酸性の水可溶成分は0.7mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は80%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0071】
(比較例4)変性ポリオレフィン粒子(D−4)の製造例
3枚後退翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのセパラフラスコに、分散剤(B−1)25g、イオン交換水275gを加え、攪拌しながら油浴による加熱を行い、90℃の分散剤水溶液を作製した。次にポリオレフィン(A−1)100gの溶融を行い、90℃の分散剤水溶液中に溶融したポリオレフィン(A−1)を添加し、90℃に保ちながら攪拌する事で樹脂の粒子化を未中和(0.0当量)の状態で行い、懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を行い、白色の変性ポリオレフィン粒子(D−4)36gを得た。
変性ポリオレフィン粒子(D−4)の平均粒子径は0.06mmであり、変性ポリオレフィン粒子(C−3)中の酸性の水可溶成分は1.0mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は71%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0072】
(比較例5)変性ポリオレフィン粒子(D−5)の製造例
3枚後退翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのセパラフラスコに、分散剤(B−1)0.001g、イオン交換水199.999gを加え、攪拌しながら油浴による加熱を行い、95℃の分散剤水溶液を作製した。次にポリオレフィン(A−4)100gの溶融を行い、95℃の分散剤水溶液中に溶融したポリオレフィン(A−4)を添加し、95℃に保ちながら未中和(0.0当量)の状態で攪拌した。溶融した変性ポリオレフィンの一部は攪拌軸に巻き付いたが、一部は小判状の粒子となった。粒子化後に冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を行い、黄色、小判状の変性ポリオレフィン粒子(D−5)72gを得た。
変性ポリオレフィン粒子(D−5)は平均長径が30mm、平均短径が17mm、厚さ5mmほどの小判状の粒子であり、変性ポリオレフィン粒子(D−5)中の酸性の水可溶成分は4.6mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は4%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の収率、平均粒子径、酸性の水可溶成分の減少率と外観を表1に示す。
【0073】
(比較例6)変性ポリオレフィン粒子(D−6)の製造例
未中和(0.0当量)の変性ポリオレフィン(A−3)をロートフォーム造粒装置により粒子化し、変性ポリオレフィン粒子(D−6)とした。平均粒子径5.0mmの黄色の粒子であり、変性ポリオレフィン粒子(D−6)中の酸性の水可溶成分は4.2mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は0%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の色、平均粒子径と酸性の水可溶成分の減少率を表2に示す。
【0074】
(比較例7)変性ポリオレフィン粒子(D−7)の製造例
未中和(0.0当量)の状態で変性ポリオレフィン(A−5)を水中ホットカット造粒装置により粒子化し、変性ポリオレフィン粒子(D−7)とした。変性ポリオレフィン粒子(D−7)は平均粒子径3.1mmの淡黄色の粒子であり、変性ポリオレフィン粒子(D−7)中の酸性の水可溶成分は4.6mgKOH/gであり、酸性の水可溶成分の減少率は0%であった。得られた変性ポリオレフィン粒子の色、平均粒子径と酸性の水可溶成分の減少率を表2に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表中の注釈の説明:
(*1)2−メチルアミノプロパノールによる変性ポリオレフィン中のカルボン酸、酸無水物由来のカルボキシル基の0.3当量分中和。
(*2)2−メチルアミノプロパノールによる変性ポリオレフィン中のカルボン酸、酸無水物由来のカルボキシル基の1.2当量分中和。
(*3)分散せず:ポリオレフィンが攪拌軸に融着し、粒子化しない状態。
(*4)小判状:平均長径が30mm、平均短径が17mm、厚さ5mmほどの小判状の粒子。
【0077】
【表2】

【0078】
表1に示した様に、変性ポリオレフィン(A)を水中もしくは分散剤(B)の水溶液中で攪拌することにより、粒子化する事ができた。未変性のポリオレフィン(a)を使用した比較例1や比較例2ではポリオレフィン表面に酸基がないため、樹脂が粒子として安定に分散できなかった。変性ポリオレフィン中のカルボキシル基を1当量以上のアミンで中和した比較例3の場合、300メッシュのナイロンメッシュでは濾別できない微細粒子が極めて多くなり、収率が11%と大きく低下し、濾過により回収した粒子の平均粒子径も0.04mmと極めて小さいものであった。過剰な分散剤(B)を使用し、粒子径が0.1mm以下の変性ポリオレフィンの粒子となった比較例4でも比較例3と同様に、300メッシュのナイロンメッシュでは濾別できない微細粒子が多く、収率が低下した。粒子径が5mm以上の変性ポリオレフィンの粒子となった比較例5では、粒子径が大きいため、変性ポリオレフィン中の不純物である水溶性の酸性物質も減少し難くなり、また溶融物が粒子径の大きな塊状で浮遊しているため、一部が攪拌軸に巻きついて融着してしまい、変性ポリオレフィン粒子の収率が低下した。またロートフォーム造粒装置や水中ホットカットペレタイザーにより粒子化した比較例6や比較例7の場合、変性ポリオレフィン中の不純物である水溶性の酸性物質は特に減少せず、樹脂の着色も特に改善しなかった。一方で、実施例においては、いずれの場合も樹脂の着色が少なくなり、変性ポリオレフィン中の不純物である水溶性の酸性物質も減少した変性ポリオレフィン粒子を収率良く回収することができる良好な結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂粒子の製造方法により、変性ポリオレフィン中の不純物である水溶性の酸性物質が減少し、樹脂の着色も改善された精製した変性ポリオレフィンを得ることが出来る。また本発明の製造方法により得られた変性ポリオレフィン粒子は、精製により着色状態が改善されているため、フィルム、シート、包装材料等の樹脂の着色が問題となるポリオレフィン系の樹脂や複合材料に有用な変性ポリオレフィンとなるものと考えられえる。また本発明の製造方法により得られた変性ポリオレフィン粒子は、不純物である水溶性の酸性物質が減少しているため、例えば、ヒートシール剤や接着剤および接着剤の改質剤として使用でき、特にポリオレフィン系の樹脂や複合材料と他の樹脂や金属等との接着において接着性が改善されるものと考えられえる。また塗料、インキ用バインダー、塗料用バインダー、プライマーなどにも使用でき、特にポリオレフィン系の樹脂や複合材料に対する塗装の際に、密着性、塗装性などが優れるものと考えられえる。以上のような汎用のポリオレフィン系樹脂が使用される広範な範囲において様々な用途に使用することができるものと考えられえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中和度が0.3当量以下の溶融したカルボキシル基変性ポリオレフィン(A)と少なくとも水とを混合し、変性ポリオレフィンの懸濁液とし、次に水分を除去することで平均粒子径が0.1〜5mmの変性ポリオレフィンを得ることを特徴とする変性ポリオレフィン粒子の製造方法。
【請求項2】
変性ポリオレフィン(A)と少なくとも水と分散剤(B)とを混合し、固形分比で変性ポリオレフィン(A):分散剤(B)=100:0.01〜20を用いることを特徴とする請求項1に記載の変性ポリオレフィン粒子の製造方法。
【請求項3】
変性ポリオレフィン(A)のフローテスターにおける軟化開始温度以上で混合することを特徴とする請求項1又は2に記載の変性ポリオレフィン粒子の製造方法。
【請求項4】
変性ポリオレフィン(A)がポリオレフィン(a)に少なくとも不飽和カルボン酸類(b)を用いて変性して得られる樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の変性ポリオレフィン粒子の製造方法。
【請求項5】
分散剤(B)がポリビニルアルコール類であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の変性ポリオレフィン粒子の製造方法。

【公開番号】特開2008−285531(P2008−285531A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129932(P2007−129932)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】