説明

変性ポリビニルアルコールおよびそれを用いた分散剤

【課題】特定の不飽和二重を有する変性ポリビニルアルコールを用いた分散剤の提供。
【解決手段】分子主鎖中に下記式で表される不飽和二重結合を有する結合単位を含有するケン化度20〜60%でかつ平均重合度100〜1000の変性ポリビニルアルコール。


(Y1は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩またはHを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主鎖に特定モノマー由来の二重結合を有する変性ポリビニルアルコールおよびそれを用いた分散剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分子内に反応性の不飽和二重結合を導入したポリビニルアルコールとしては、ポリビニルアルコール(以下、PVAという)を、重合性二重結合を含有する反応性分子で後変性(post−modification)することによりPVAの側鎖に不飽和二重結合を導入して得られたもの(例えば、特許文献1参照)や、保護されたエチレン性不飽和二重結合を有するポリビニルエステル系共重合体を得た後で保護を外して得られたもの(例えば、特許文献2参照)、アルデヒド類を連鎖移動剤として用いてPVA分子末端に不飽和二重結合を導入させたもの(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平04−283749号公報
【特許文献2】特開2001−072720号公報
【特許文献3】特開2004−250695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、分子内の主鎖に特定モノマー由来の不飽和二重を有する変性PVAおよびそれを用いた分散剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定のモノマーを共重合し、ケン化反応をすることにより、上記の課題を解決できる。
【0006】
すなわち本発明は、分子主鎖中に、一般式(化9)で表される結合単位を含有するケン化度20〜60%でかつ平均重合度100〜1000の変性PVAである。この場合において、0.2質量%の、水溶液、メタノール溶液または水メタノール混合溶液の紫外線吸収スペクトルによる270nmの吸光度は0.05以上が好ましく、未変性PVAの量が25%以下であることが好ましい。
【化9】

(式中、X1とX2は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。gは、0〜3の整数を表す。hは、0〜12の整数を表す。Y1は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【発明の効果】
【0007】
分子内の主鎖に特定モノマー由来の不飽和二重を有する変性PVAが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
変性PVAは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーと、ビニルエステル単位を有するモノマーを共重合させた後に、ケン化させてカルボニル基含有PVAを得、洗浄、乾燥を行って得られるものであり、主鎖にカルボキシル基を起点とする不飽和二重結合をランダムに導入させたものである。
【0009】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、一般式(化10)で表されるものを好適に使用出来る。
【化10】

(式中、X3とX4は、炭素数1〜12の低級アルキル基または水素原子を表す。iは、0〜12の整数を表す。Y2は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
これらモノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等がある。
【0010】
また、一般式(化11)で表されるモノマーも好適に使用出来る。
【化11】

(式中、X5とX6は、炭素数1〜12の低級アルキル基または水素原子を表す。jは、0〜12の整数を表す。Y3は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
これらモノマーとしては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、シトラコン酸ジメチル等がある。
【0011】
また、一般式(化12)で表されるモノマーも好適に使用出来る。
【化12】

(式中、kは、0〜12の整数を表す。Y4は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
これらモノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等がある。
【0012】
これらモノマーの含有量(共重合量)は、特に限定するものではないが、分子内の不飽和二重結合量と水溶性を確保する観点から、0.1〜50モル%が好ましく、0.1〜10モル%がより好ましい。
【0013】
ビニルエステル単位を有するモノマーとしては、特に限定するものではないが、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等があり、安定して重合を行えるという観点から酢酸ビニルが好ましい。
【0014】
また、必要に応じて、これらのモノマーと共重合可能なモノマーを共重合させてもよい。共重合可能なモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸などのアニオン性基を有するモノマー、またはその塩類、または炭素数1〜18のモノアルキルエステル類もしくはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩などのアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩などのメタクリルアミド類、炭素数1〜18のアルキル鎖長を有するアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール等のアリル化合物、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニル等がある。これら共重合可能なモノマーの使用量は、特に限定するものではないが、使用する全モノマーに対して0.001〜20モル%が好ましい。共重合可能なモノマーとしてイタコン酸を使用した場合、イタコン酸モノマーの含有量(共重合量)は、0.05〜10モル%が好ましく、0.1〜3モル%がより好ましい。
【0015】
変性PVAの平均重合度は、モノマーとの親和性、保護コロイド性のバランスを向上させる観点から、100〜1000の範囲であり、200〜800の範囲が好ましい。
【0016】
モノマーの重合方法は、特に限定するものではないが、公知の重合方法が用いられ、通常、メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコールなどのアルコールを溶媒とする溶液重合が行なわれる。バルク重合、乳化重合、懸濁重合を行なうことも可能である。かかる溶液重合において、連続重合でもバッチ重合でもよく、モノマーは、分割して仕込んでもよいし、一括で仕込んでもよく、あるいは連続的にまたは断続的に添加するなど任意の手段を用いてよい。
【0017】
溶液重合において使用する重合開始剤は、特に限定するものではないが、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルパレロニトリル)等のアゾ化合物、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物、ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物、t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリルなどの公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。重合反応温度は、通常30℃〜90℃程度の範囲から選択される。
【0018】
ケン化は、モノマーを共重合させて得られた共重合体をアルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下で分子中のエステルを加水分解するものである。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等がある。アルコール中の共重合体の濃度は、特に限定するものではないが、10〜80重量%の範囲から選ばれる。アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができ、酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸水溶液、p−トルエンスルホン酸等の有機酸を用いることができる。これら触媒の使用量は、共重合体に対して1〜100ミリモル当量にすることがよい。ケン化温度は、特に限定するものではないが、10〜70℃、好ましくは30〜40℃の範囲がよい。反応時間は、特に限定するものではないが、30分〜3時間にわたって行われる。
【0019】
変性PVAの吸光度は、特に限定するものではないが、0.2質量%の、水溶液、メタノール溶液または水メタノール混合溶液の紫外線吸収スペクトルによる270nmの吸光度が、0.05以上のものが好ましい。この吸光度は、ケン化工程において使用する触媒の量、ケン化時間、ケン化温度を変更することによって任意の値に調整することができる。
【0020】
ここで、紫外線吸収スペクトルの帰属については、特開2004−250695公報等に、215nmの吸収はPVA系樹脂中の−CO−CH=CH−の構造に帰属し、280nmの吸収はPVA系樹脂中の−CO−(CH=CH)−の構造に帰属し、320nmの吸収はPVA系樹脂中の−CO−(CH=CH)−の構造に帰属に関するという記載がある。
【0021】
一般的なアルデヒド類を連鎖移動剤として用いたPVAの不飽和二重結合の二連鎖構造(−CO−(CH=CH)−)由来の紫外線吸収スペクトルは、280nm近傍にピークトップがくるが、本発明の変性PVAにおける、一般式(化13)の構造に由来し270nm中心で265〜275nmの範囲に含まれるピークを有するものである。
【化13】

【0022】
変性PVAのケン化度は、水溶性、モノマーとの親和性、保護コロイド性のバランスを向上させる観点から、20〜60%の範囲であり、35〜45%の範囲が好ましい。
【0023】
本発明の変性PVAは、例えば、塩化ビニルの懸濁重合に使用する。具体的には、塩化ビニル又は塩化ビニルと共重合可能なモノマーとの混合物を重合開始剤と分散剤の水性媒体中で懸濁重合して塩化ビニル重合体を製造する方法において、分散剤として、(1)本発明の変性PVAと、(2)(1)以外の分散剤とを併用する方法が挙げられる。
(2)(1)以外の分散剤としては、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、(1)以外のPVA等が挙げられる。これらの中では、塩化ビニル樹脂の物性を向上させる観点から、ケン化度60〜99%でかつ平均重合度が1500〜3000であるPVAが好ましい。
【0024】
(1)本発明の変性PVAの使用量は、塩化ビニル又は塩化ビニルと共重合可能なモノマーとの混合物100質量部に対して、0.005〜0.3質量部が好ましく、0.02〜0.1質量部がより好ましい。(2)(1)以外の分散剤の使用量は、塩化ビニル又は塩化ビニルと共重合可能なモノマーとの混合物100質量部に対して、0.01〜0.3質量部が好ましく、0.04〜0.15質量部がより好ましい。
【0025】
懸濁重合は例えば、水に分散剤(1)、(2)を添加し、塩化ビニル又は塩化ビニルと共重合可能なモノマーを分散し、重合開始剤の存在下で行われる。重合開始剤としては、前述の溶液重合において使用する重合開始剤が挙げられる。
重合温度は例えば、30〜70℃の範囲から選択される。塩化ビニル又は塩化ビニルと共重合可能なモノマーの混合物と水との比は質量比で1:0.9〜1:3が好ましく、1:1〜1:1.5がより好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明について実施例を挙げて更に詳しく説明する。
尚、特に断りがない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0027】
実施例1
〈変性PVAの製造〉
酢酸ビニル10部、メタノール21部、マレイン酸ジメチル0.023部及び酢酸ビニルに対して0.10%のアゾビスイソブチロニトリルを重合缶に仕込み、窒素置換後加熱して沸点まで昇温し、更に、酢酸ビニル3.5部、メタノール7.5部及びマレイン酸ジメチル0.203部の混合液を重合率75%に達するまで連続的に添加して重合させ、重合率90%に達した時点で重合を停止した。次いで常法により未重合の酢酸ビニルを除去し、得られた重合体を水酸化ナトリウムで常法によりケン化し、乾燥して、平均重合度400、ケン化度39.0モル%、マレイン酸ジメチル1.0モル%、0.2%水溶液の波長270nmにおける吸光度1.1、無変性PVA量17%の変性PVAを得た。
【0028】
〈分析方法〉
PVAのケン化度は、JIS K 6726「3.5ケン化度」に準じて測定したものであり、PVAの平均重合度は、JIS K 6726「3.7平均重合度」に準じて測定したものである。マレイン酸ジメチルの含有量はH−NMR及び13C−NMRにより測定したものである。無変性PVAの含有量は、変性PVAをメタノール中でアルカリ触媒にて完全ケン化し、ソックスレー抽出した試料を濃度0.01w/v%水溶液に調整し、イオン排除のHPLCを使用し、IR検出器の面積比で計算したものである。270nm吸光度は、変性PVAを0.2質量%の水溶液に調整し、270nmの紫外線の吸光度を測定したものである。
【0029】
〈光硬化性〉
変性PVA5部を45部の水に溶解させて約10%水溶液を作成し、この水溶液に光重合開始剤(イルガキュア2959;長瀬産業株式会社製)0.005部を添加してUV照射を行った。
【0030】
〈塩化ビニルの懸濁重合〉
攪拌機を備えた容量100Lのステンレス製オートクレーブ中に攪拌下30℃の水14kg、後述する塩化ビニル単量体100質量部に対して分散剤(1)として上記で得た変性PVA0.02質量部と分散剤(2)として無変性PVA(商品名:デンカポバールW−20N、平均重合度2200、ケン化度79〜80%、電気化学工業(製))0.12質量部、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、アゾビスジメチルバレロニトリルを各々0.012kg仕込んだ。オートクレーブを真空で脱気した後、塩化ビニル単量体を10kg加え、50℃で10時間重合した。得られた塩化ビニル樹脂の物性を下記の方法に従い測定した。
【0031】
<細孔容積の評価>
塩化ビニル粒子の多孔性を示すものであり、CARLO ERBA社製水銀圧入式ポロシメーターモデル65により細孔半径75〜75000オングストロームについて測定して得た値である。
【0032】
<粒度分布の評価>
JISZ−8801により測定して得た平均粒径である。
【0033】
<嵩比重>
JIS K−6721に準じて測定した。
【0034】
<可塑剤吸収量>
内径25mm、深さ85mmのアルミニウム合金製容器の底にグラスファイバーを詰め、塩化ビニル樹脂10gを投入した。これに可塑剤(ジオクチルフタレート、以下DOPとする)15mlを加え、30分放置してDOPを塩化ビニル樹脂に充分浸透させた。その後1500Gの加速度下に過剰のDOPを遠心分離し、塩化ビニル樹脂10gに吸収されたDOPの量を測定して、塩化ビニル樹脂100質量%当たりの量に換算した。
【0035】
<フィッシュアイ>
塩化ビニル樹脂100g、DOP50g、カドミウム/バリウム系安定剤3gおよび群青0.2gを混合した後、温度150℃のロールで3分間、5分間混練してシートを作製し、シートの100cm中に存在するフィッシュアイの数を数えた。
【0036】
実施例2〜3、比較例1
ケン化度、分子量(Mn)、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの種類、変性量をそれぞれ表1に記載したように変えた以外は、実施例1と同様にして変性PVAからなる分散剤(1)を作成し、実施例1と同様に評価を行った。実施例3ではイタコン酸を使用した。
【0037】
〈イタコン酸変性PVAの製造〉
酢酸ビニル10部、メタノール21部、マレイン酸ジメチル0.023部、イタコン酸0.204部及び酢酸ビニルに対して0.10%のアゾビスイソブチロニトリルを重合缶に仕込み、窒素置換後加熱して沸点まで昇温し、更に、酢酸ビニル3.5部、メタノール7.5部及びマレイン酸ジメチル0.203部の混合液を重合率75%に達するまで連続的に添加して重合させ、重合率90%に達した時点で重合を停止した。次いで常法により未重合の酢酸ビニルを除去し、得られた重合体を水酸化ナトリウムで常法によりケン化し、乾燥して、平均重合度400、ケン化度39.0モル%、マレイン酸ジメチル1.0モル%、イタコン酸1.0モル%、0.2%水溶液の波長270nmにおける吸光度0.9、無変性PVA量16%の変性PVAを得た。〈分析方法〉
マレイン酸ジメチル及びイタコン酸の含有量はH−NMR及び13C−NMRにより測定したものである。
【0038】
本発明の分散剤は、塩化ビニル重合体の製造に使用できる。
本発明の分散剤を使用して製造した塩化ビニル樹脂は、可塑剤吸収量が高く、フィッシュアイの少ない成形品が得られる。従って、本発明の分散剤を使用すると、品質の優れた塩化ビニル樹脂が得られる。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
変性PVAは、必要に応じて、光開始剤、重合性モノマー等と組み合わせることにより、紫外線、電子線等のエネルギー線で容易に硬化させることが可能であり、塗料、インキ、接着剤、印刷版、エッチングレジスト、ソルダーレジスト、塩化ビニル懸濁重合時の分散剤、酢酸ビニルエマルジョン重合時の保護コロイド剤、アクリルエマルジョン重合時の保護コロイド剤、スチレンエマルジョン重合時の保護コロイド剤等に有効に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子主鎖中に、一般式(化1)で表される結合単位を含有するケン化度20〜60%でかつ平均重合度100〜1000の変性ポリビニルアルコール。
【化1】

(式中、X1とX2は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。gは、0〜3の整数を表す。hは、0〜12の整数を表す。Y1は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【請求項2】
0.2質量%の、水溶液、メタノール溶液または水メタノール混合溶液の紫外線吸収スペクトルによる270nmの吸光度が、0.05以上である請求項1記載の変性ポリビニルアルコール。
【請求項3】
一般式(化2)で表される不飽和二重結合が由来の紫外線吸収スペクトルのピークトップが、265〜275nmの間にある請求項1または請求項2記載の変性ポリビニルアルコール。
【化2】

【請求項4】
未変性ポリビニルアルコールの含有量が、25%以下である請求項1〜3いずれか一項に記載した変性ポリビニルアルコール。
【請求項5】
側鎖にアニオン性基を有するモノマーを共重合してなる請求項1〜4いずれか一項に記載した変性ポリビニルアルコール。
【請求項6】
イタコン酸を共重合してなる請求項1〜5いずれか一項に記載した変性ポリビニルアルコール。
【請求項7】
一般式(化3)〜一般式(化5)で表されるモノマーの少なくとも一種と、ビニルエステル単位を有するモノマーとを共重合させた後、得られた共重合体をケン化する請求項1〜6いずれか一項に記載した変性ポリビニルアルコールの製造方法。
【化3】

(式中、X3とX4は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。iは、0〜12の整数を表す。Y2は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【化4】

(式中、X5とX6は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。jは、0〜12の整数を表す。Y3は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【化5】

(式中、kは、0〜12の整数を表す。Y4は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【請求項8】
一般式(化6)〜一般式(化8)で表されるモノマーの少なくとも一種と、ビニルエステル単位を有するモノマーと、これらのモノマーと共重合可能なモノマーを共重合させた後、得られた共重合体をケン化する、請求項1〜6いずれか一項に記載した変性ポリビニルアルコールの製造方法。
【化6】

(式中、X3とX4は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。iは、0〜12の整数を表す。Y2は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【化7】

(式中、X5とX6は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。jは、0〜12の整数を表す。Y3は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【化8】

(式中、kは、0〜12の整数を表す。Y4は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【請求項9】
共重合可能なモノマーがイタコン酸である請求項7記載の変性ポリビニルアルコールの製造方法。
【請求項10】
塩化ビニル又は塩化ビニルと共重合可能なモノマーとの混合物を重合開始剤と分散剤の水性媒体中で懸濁重合してなる塩化ビニル重合体の製造方法において、分散剤として、(1)請求項1〜6いずれか一項に記載の変性ポリビニルアルコールと、(2)(1)以外の分散剤とを併用する塩化ビニル重合体の製造方法。
【請求項11】
(2)(1)以外の分散剤が、ケン化度60〜99%でかつ平均重合度が1500〜3000であるポリビニルアルコールである請求項10記載の塩化ビニル重合体の製造方法。

【公開番号】特開2007−63369(P2007−63369A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249686(P2005−249686)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】