説明

変性ポリビニルアルコール

【課題】 高い透明性と耐熱性とを有する成形体を得ることができる変性ポリビニルアル
コールを提供する。
【解決手段】 ポリビニルアルコール分子中の隣接する2つの水酸基にカルボニル化合物
が結合してなる変性ポリビニルアルコールであって、前記カルボニル化合物は、置換基を
有する芳香環又は置換基を有するシクロオレフィン環を有する変性ポリビニルアルコール

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い透明性と耐熱性とを有する成形体を得ることができる変性ポリビニルアル
コールに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコールは、高い水溶性を有し、製膜性に優れフィルム等に用いられている
。一方では、天井温度と融点が非常に近く、また、容易に脱水反応が起こり、樹脂の熱劣
化が起こりやすいために成形性が悪く、用途も繊維やフィルムに限定されていた。また、
このフィルムは主に溶液のキャスト法で作製されるために溶融押出法と比較して生産性が
著しく悪くなった。
これに対して、ポリビニルアルコールの主鎖にエチレン単位を導入した、ガスバリア性が
高く、耐溶剤性も良好な変性ポリビニルアルコールが開発され、食品包装材等として多用
されている。また、ポリビニルアルコールの水酸基にアルデヒド等のカルボニル化合物を
反応させてなる変性ポリビニルアルコール(ポリビニルアセタール樹脂)は、高い透明性
を有するフィルムが得られることから、合わせガラス用中間膜等に応用されている。
【0003】
このように変性ポリビニルアルコールには種々の用途が期待されているものの、従来の方
法では可能な変性の範囲も限られていることから、その応用にも限界があった。特にポリ
ビニルアルコールの問題点として比較的耐熱性に劣ることが挙げられるが、この耐熱性の
問題は、これまでに知られている変性ポリビニルアルコールでも充分には改善されていな
かった。また、ポリビニルアルコールの問題点としては、吸湿性が高く、吸湿により性能
が極端に変動することも挙げられる。このような問題点は主鎖中にエチレン単位を導入す
ることによりある程度は改善できるものの、主鎖中にエチレン単位を有する変性ポリビニ
ルアルコールは、溶媒への溶解性が極端に劣ることから、更にアセタール化等を行い改質
することは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑み、高い透明性と耐熱性とを有する成形体を得ることができる変
性ポリビニルアルコールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明1は、ポリビニルアルコール分子中の隣接する2つの水酸基にカルボニル化合物が
結合してなる変性ポリビニルアルコールであって、前記カルボニル化合物は、置換基を有
する芳香環又は置換基を有するシクロオレフィン環を有する変性ポリビニルアルコールで
ある。
本発明2は、ポリビニルアルコール分子中の2つの水酸基に環状構造を有するジカルボキ
シル化合物又は不飽和オレフィン構造を有するジカルボキシル化合物が結合して分子内橋
掛け構造を形成している変性ポリビニルアルコールである。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明1の変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコール分子中の隣接する2つの
水酸基に、置換基を有する芳香環又は置換基を有するシクロオレフィン環を有するカルボ
ニル化合物が結合しているものである。このような本発明1の変性ポリビニルアルコール
としては特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)〜(5)に示すもの等が挙げら
れる。
【0007】
【化1】

式(1)〜(5)中、R〜Rは、水素原子、アルキル基等の置換基を表し、R〜R
のいずれか少なくとも1つは水素原子以外である。
式(1)〜(5)中、R〜Rは、水素原子、アルキル基等の置換基を表し、R〜R
のいずれか少なくとも1つはアルキル基である。
【0008】
なお、式(1)〜(5)中において、アルキル基は直鎖、分岐、飽和、不飽和のいずれで
あってもよいが、tert−ブチル基のように分岐構造を有するものが好適である。また
、芳香環又はシクロオレフィン環に直接結合している以外にエステル結合、エーテル結合
、アミド結合等により結合されていてもよい。更に、アルキル基の好ましい炭素数の上限
は17である。17を超えるアルキル基を有するカルボニル化合物は極端に溶媒溶解性が
悪くなって反応効率が悪化し、また、得られる本発明の変性ポリビニルアルコールに可塑
化効果が発現し、耐熱性が悪くなったり、アルキル鎖の結晶化により透明性が失われたり
することがある。
【0009】
このような本発明1の変性ポリビニルアルコールは、カルボニル化合物が結合しているこ
とにより透明性に優れることに加え、結合した嵩高なカルボニル化合物により変性ポリビ
ニルアルコール分子の主鎖の回転が妨げられることからガラス転移温度が高くなり、高い
耐熱性を発揮することができる。
【0010】
本発明2の変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコール分子中の2つの水酸基に
ジカルボキシル化合物が結合して分子内橋掛け構造を形成しているものである。このよう
な本発明2の変性ポリビニルアルコールとしては特に限定されないが、例えば、下記式(
6)〜(9)に示すもの等が挙げられる。
【0011】
【化2】

このような本発明2の変性ポリビニルアルコールは、ジカルボキシル化合物の2つのカル
ボキシル基が1分子のポリビニルアルコール中の2つの近接した水酸基と反応して生じた
ものであり、新たに形成された2つの結合によりポリビニルアルコール分子の主鎖骨格の
回転運動を拘束することで耐熱性が向上する。変性後の構造はエステル結合が形成される
ことでエチレン鎖又は水酸基の結晶構造が崩れるため良好な透明性を示す。
【0012】
本発明1及び本発明2の変性ポリビニルアセタールにおいて、変性度の好ましい下限は3
0モル%、好ましい上限は90モル%である。30モル%未満であると、充分な耐熱性が
得られないことがあり、90モル%を超えると、耐溶剤性が悪くなることがある。ただし
、上限については、用途に対して要求される耐溶剤性や耐熱性を満たす限りにおいてはこ
の限りではない。
なお、本明細書において、変性度の算出方法としては、全水酸基のモル数に対して、反応
した水酸基のモル数を用いて求める。即ち、アセタール化を行った場合は、全水酸基量は
、樹脂に存在する水酸基量とアセタール化した水酸基量の和となり、反応した水酸基量は
アセタール化した水酸基量となる。これらは例えばH−NMRから求めることができる

【0013】
本発明1及び本発明2の変性ポリビニルアルコールは、主鎖中にエチレン単位を有するこ
とが好ましい。主鎖中にエチレン単位を含有することにより、ポリビニルアルコールの問
題点の1つである吸湿性の高さ、及び、吸湿による性能の変動の問題を改善することがで
きる。主鎖中のエチレン単位の含有量の好ましい下限は3モル%である。3モル%未満で
あると、耐水性等のエチレン単位による特性を発揮できないことがある。とりわけ、主鎖
中のエチレン単位の含有量が50モル%以上である場合には、高い耐水性を発揮すること
ができる。
【0014】
本発明1及び本発明2の変性ポリビニルアルコールは、重合度が350以上であることが
好ましい。350未満であると、フィルム等の成形体に成形するときに、得られる成形体
の強度が劣ったり、成形自体が困難であったりすることがある。より好ましくは500以
上である。
【0015】
本発明1及び本発明2の変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールと、カルボ
ニル化合物又はジカルボキシル化合物とを混合し、超臨界状態又は亜臨界状態の流体中で
反応させる方法により製造することができる。
変性ポリビニルアルコールの製造方法としては、ポリビニルアルコールとカルボニル化合
物又はジカルボキシル化合物とを反応させる方法が知られているが、従来公知の方法では
、本発明1の変性ポリビニルアルコールのように極めて嵩高なカルボニル化合物を反応さ
せたり、また、本発明2の変性ポリビニルアルコールのように分子内橋掛け構造を形成さ
せたりすることは極めて困難であった。これは、原料となるポリビニルアルコールと、嵩
高なカルボニル化合物又はジカルボキシル化合物とでは共通溶媒が極めて少なく、適当な
反応系がないことが原因の1つであった。とりわけ、主鎖中にエチレン単位を有する変性
ポリビニルアルコール(エチレン−ビニルアルコール共重合体)は、エチレン単位が増加
するに従って、溶解可能な溶媒が極端に少なくなり、嵩高なカルボニル化合物又はジカル
ボキシル化合物との共通溶媒を見出すのはほとんど困難であった。また、仮に共通溶媒が
存在したとしても、反応の進行に伴い変性ポリビニルアルコールが析出し不均一化するこ
とから、高い変性を行うことは事実上不可能であった。
【0016】
本発明者らは、鋭意検討の結果、驚くべきことに超臨界状態又は亜臨界状態の流体中で反
応させた場合には、無溶媒系又は無溶媒系に近い条件下で、ポリビニルアルコールと極め
て嵩高のカルボニル化合物とを反応させることができ、ジカルボキシル化合物を反応させ
て分子内橋掛け構造を形成させることができることを見出した。更に、この反応は無溶媒
系又は無溶媒系に近い条件下であっても高い効率で行うことができることから、主鎖中に
エチレン単位を有する変性ポリビニルアルコール(エチレン−ビニルアルコール共重合体
)であっても用いることができる。
【0017】
即ち、例えば、上記一般式(1)で表される本発明1の変性ポリビニルアルコールを製造
する場合には、原料となるポリビニルアルコールと、置換基を有するシクロヘキサンカル
バルデヒドとを、超臨界状態又は亜臨界状態の流体中で反応させる。
また、例えば、上記式(6)で表される本発明2の変性ポリビニルアルコールを製造する
場合には、原料となるポリビニルアルコールと、マロン酸とを、超臨界状態又は亜臨界状
態の流体中で反応させる。
【0018】
なお、本発明2の変性ポリビニルアセタールは、成型性等を考慮して熱可塑性を有するこ
とが好ましい。本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルアルコールの分子
内でジカルボキシル化合物を反応させることでポリビニルアルコール樹脂の主鎖の分子運
動を拘束し、耐熱性を向上させる。しかし、ジカルボキシル化合物を反応させたときに、
ポリビニルアルコール樹脂の分子間で反応して架橋が生じた場合には熱可塑性を喪失して
しまう。このような分子間架橋を起こさず、熱可塑性を保持した状況でジカルボキシル化
合物を反応させるためにはジカルボキシル化合物のカルボキシル基の位置関係が重要であ
る。即ち、反応させるジカルボキシル化合物における二つのカルボキシル基の位置関係は
、1、2位又は1、3位であることが好ましい。また、ジカルボキシル化合物の二つのカ
ルボキシル基を連結する分子鎖が自由回転可能であると、1、2位又は1、3位にカルボ
キシル基がある場合であっても分子間架橋が起こる可能性があるため、カルボキシル基を
連結する構造としては少なくとも1つの不飽和結合を有するアルキル、分子数2又は3の
飽和アルキル、環状アルキル、芳香環、ヘテロ芳香環が好ましい。特にジカルボニル化合
物が芳香族の場合、オルト位又はメタ位が好ましい。また、不飽和結合の炭素にカルボキ
シル基が結合している場合は、2つのカルボキシル基の位置関係がシス位であることが好
ましい。トランス位の関係にあると分子間で架橋し、熱可塑性を喪失することがある。
また、これらのジカルボキシル化合物の骨格構造は更に分岐構造を有することが好ましい
。分岐構造を有することでジカルボキシル化合物の立体障害性が増すことから、更に耐熱
性能が向上する。
また、上記カルボキシル化合物としては、エステル化合物、ハロゲン化物等のジカルボン
酸誘導体を用いてもよい。
【0019】
上記変性ポリビニルアルコールの製造方法における、原料となるポリビニルアルコールと
カルボニル化合物又はジカルボキシル化合物との混合比としては特に限定されないが、ポ
リビニルアルコールが有する水酸基量に対するカルボニル化合物又はジカルボキシル化合
物の混合量の好ましい上限は20等量である。20等量を超えると、生成物から残存する
カルボニル化合物又はジカルボキシル化合物を除去することが困難となることがあり、ま
た、超臨界押出機を用いて混練する際に混合効率が低下することがある。下限については
特に限定されず、目的とするアセタール化度等により適宜決定すればよい。
なお、上記等量とは、ポリビニルアルコール中の水酸基モル数と求めるアセタール化に必
要なモル数の比を意味する。
【0020】
上記変性ポリビニルアルコールの製造方法では、ポリビニルアルコールとカルボニル化合
物又はジカルボキシル化合物との混合物を、超臨界状態又は亜臨界状態の流体中で反応さ
せる。
本明細書において、超臨界流体とは、臨界圧力(以下、Pcともいう)以上、かつ臨界温
度(以下、Tcともいう)以上の条件の流体を意味する。また、亜臨界流体とは、超臨界
状態以外の状態であって、反応時の圧力、温度をそれぞれP、Tとしたときに、0.5<
P/Pc<1.0かつ0.5<T/Tc、又は、0.5<P/Pcかつ0.5<T/Tc
<1.0の条件の流体を意味する。上記亜臨界流体の好ましい圧力、温度の範囲は、0.
6<P/Pc<1.0かつ0.6<T/Tc、又は、0.6<P/Pcかつ0.6<T/
Tc<1.0である。ただし、流体が水である場合には、亜臨界流体となる温度、圧力の
範囲は、0.5<P/Pc<1.0かつ0.5<T/Tc、又は、0.5<P/Pcかつ
0.5<T/Tc<1.0である。なお、ここで温度は摂氏を表すが、Tc又はTのいず
れかが摂氏ではマイナスである場合には、上記亜臨界状態を表す式はこの限りではない。
【0021】
上記流体としては特に限定されないが、水やアルコール等の有機媒体等の常温常圧で液体
であるものであってもよいし、二酸化炭素、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン、空気等の
常温常圧で気体であるものであってもよいし、また、これらの混合流体であってもよい。
なかでも、二酸化炭素は、比較的容易に超臨界状態又は亜臨界状態にできることに加え、
超臨界状態又は亜臨界状態では液体状に近く上記混合物の混練に適し、解圧することによ
り容易に気化して除去することができることから、好適である。
また、上記流体は、更に反応効率を向上させる目的で、従来公知の酸塩基触媒を含有して
もよい。
【0022】
上記反応の方法としては特に限定されず、上記混合物を入れた耐圧容器中に超臨界状態又
は亜臨界状態にある流体を流入させてもよいが、超臨界押出機を用いて押出成型を行う等
の、連続的な生産方法が好ましい。
【0023】
上記超臨界押出機は、少なくとも、混合物を混練する手段と、超臨界状態又は亜臨界状態
の流体を供給する手段と、混練した混合物を一定の形状に押し出す手段とを有するもので
ある。このような超臨界押出機を用いれば、押出成型法により上記混練物から直接変性ポ
リビニルアルコールの成型体(例えば、シート等)が得られる。混練する手段と押し出す
手段があれば、特に押出成型に限定されず、射出成型、ブロー成型等公知の成型法を用い
ることもできる。
更に、流体として二酸化炭素用いた場合には、成型体を大気中に押し出すことにより二酸
化炭素等は気化して、速やかに成型体の外へと排除される。また、混合物中に含まれてい
た不純物や未反応物も押出時に大気中に放出され、成型体中には残留しない。この放出の
効率を上げるためには、混練手段の後に脱気手段を導入することが好ましい。上記脱気手
段としては、例えば、混練した樹脂を一旦常圧になるように一部を開放系にする方法や、
真空ポンプで減圧する方法等が挙げられる。
【0024】
本発明の変性ポリビニルアルコールを用いれば、極めて高い透明性と耐熱性とを有する成
形体を得ることができ、このような成形体は光学用途に好適に用いることができる。
また、本発明の変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルブチラールやエチレン−ビニル
アルコール共重合体等の、現在広く利用されている樹脂との相溶性に優れることから、混
合することによりこれらの樹脂の改質を行ったりする改質剤として、また、他の樹脂とポ
リビニルブチラールやエチレン−ビニルアルコール共重合体とを混合する際の相溶化剤と
しても有用である。例えば、本発明の変性ポリビニルアルコール樹脂を、ポリ酢酸ビニル
、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルブ
チラール樹脂及びこれらの誘導体等に混合することで、これらの樹脂の耐熱性を向上させ
たり、光学的な性質を向上したりすることができる。また、ポリエチレンやポリプロピレ
ン等のポリオレフィン樹脂に混合することで、ポリオレフィン樹脂に極性を付与すること
ができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高い透明性と耐熱性とを有する成形体を得ることができる変性ポリビニ
ルアルコールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定
されるものではない。
【0027】
(実施例1)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%水溶液44gに対し
てo−アニスアルデヒドを6.8g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を
得た。得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用
いてオートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーター
でオートクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を
行い、開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂をジメチルスルホキシドに溶解し、水への沈殿を
3回行ってから充分乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに再溶解し、H−NM
R測定によりアセタール化度を測定したところ、63mol%であった。
【0028】
また、得られた変性ポリビニルアルコール樹脂をテトラヒドロフランに溶解し、0.2重
量%の溶液を調製した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所社製、L
C−10AT)を用いて、1mL/minの流量で測定を行い、数平均分子量と重量平均
分子量を求めた。得られた数平均分子量、重量平均分子量と、1H−NMR測定により求
めたアセタール化度から、得られた変性ポリビニルアルコール樹脂の重合度を計算したと
ころ500であった。
【0029】
更に、示差走査型熱量計(DSC 2920 Modulated DSC、TAインス
ツルメント製)で10℃/分で昇温過程で測定したところ、ガラス転移温度は82℃であ
った。
【0030】
(実施例2)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%水溶液44gに対し
てジメトキシベンズアルデヒドを8.2g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合
溶液を得た。得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポン
プを用いてオートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒ
ーターでオートクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで
冷却を行い、開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は63mol%、重合度は500、ガラス転移温度は90℃であっ
た。
【0031】
(実施例3)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%水溶液44gに対し
て2−ナフトルアルデヒドを7.8g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液
を得た。得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを
用いてオートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒータ
ーでオートクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却
を行い、開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は50mol%、重合度は500、ガラス転移温度は80℃であっ
た。
【0032】
(実施例4)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%水溶液44gに対し
てo−フタルアルデヒドを6.7g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を
得た。得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用
いてオートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーター
でオートクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を
行い、開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は50mol%、重合度は500、ガラス転移温度は85℃であっ
た。
【0033】
(実施例5)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%水溶液44gに対し
てマロン酸5.2g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を得た。得られた
混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用いてオートクレ
ーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーターでオートクレー
ブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を行い、開圧後に
スパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は40mol%、重合度は500、ガラス転移温度は86℃であっ
た。
【0034】
(実施例6)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%水溶液44gに対し
てトランス−グルタコン酸6.5g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を
得た。得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用
いてオートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーター
でオートクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を
行い、開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は48mol%、重合度は500、ガラス転移温度は84℃であっ
た。
【0035】
(実施例7)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%水溶液44gに対し
て1、3−シクロヘキサンジカルボン酸8.6g加え、スターラーを用いて5分間撹拌し
て混合溶液を得た。得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧
力ポンプを用いてオートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みなが
ら、ヒーターでオートクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80
℃まで冷却を行い、開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収し
た。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は32mol%、重合度は500、ガラス転移温度は86℃であっ
た。
【0036】
(実施例8)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%水溶液44gに対し
てイソフタル酸8.3g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を得た。得ら
れた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用いてオート
クレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーターでオートク
レーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を行い、開圧
後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は40mol%、重合度は500、ガラス転移温度は86℃であっ
た。
【0037】
(実施例9)
主鎖中にエチレン単位を32モル%含有するポリビニルアルコール(クラレ社製、F10
1)の10重量%ジメチルスルホキシド溶液44gに対してo−アニスアルデヒドを4.
6g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を得た。得られた混合溶液をオー
トクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用いてオートクレーブ装置内が8
MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーターでオートクレーブ装置を100
℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を行い、開圧後にスパーテルを用
いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は42mol%、重合度は500、ガラス転移温度は80℃であっ
た。
【0038】
(実施例10)
主鎖中にエチレン単位を32モル%含有するポリビニルアルコール(クラレ社製、F10
1)の10重量%ジメチルスルホキシド溶液44gに対してジメトキシベンズアルデヒド
を5.6g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を得た。
得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用いてオ
ートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーターでオー
トクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を行い、
開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は43mol%、重合度は500、ガラス転移温度は85℃であっ
た。
【0039】
(実施例11)
主鎖中にエチレン単位を32モル%含有するポリビニルアルコール(クラレ社製、F10
1)の10重量%ジメチルスルホキシド溶液44gに対して2−ナフトルアルデヒドを5
.3g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を得た。
得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用いてオ
ートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーターでオー
トクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を行い、
開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は30.6mol%、重合度は500、ガラス転移温度は78℃で
あった。
【0040】
(実施例12)
主鎖中にエチレン単位を32モル%含有するポリビニルアルコール(クラレ社製、F10
1)の10重量%ジメチルスルホキシド溶液44gに対してo−フタルアルデヒドを4.
6g加え、スターラーを用い
て5分間撹拌して混合溶液を得た。
得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用いてオ
ートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーターでオー
トクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を行い、
開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は30mol%、重合度は500、ガラス転移温度は80℃であっ
た。
【0041】
(実施例13)
主鎖中にエチレン単位を32モル%含有するポリビニルアルコール(クラレ社製、F10
1)の10重量%ジメチルスルホキシド溶液44gに対してマロン酸3.5g加え、スタ
ーラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を得た。得られた混合溶液をオートクレーブ装置
(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用いてオートクレーブ装置内が8MPaになるま
で二酸化炭素を送り込みながら、ヒーターでオートクレーブ装置を100℃まで加熱した
。30分間加熱した後、80℃まで冷却を行い、開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビ
ニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は24mol%、重合度は500、ガラス転移温度は82℃であっ
た。
【0042】
(実施例14)
主鎖中にエチレン単位を32モル%含有するポリビニルアルコール(クラレ社製、F10
1)の10重量%ジメチルスルホキシド溶液44gに対してトランス−グルタコン酸4.
4g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を得た。
得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用いてオ
ートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーターでオー
トクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を行い、
開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は32mol%、重合度は500、ガラス転移温度は78℃であっ
た。
【0043】
(実施例15)
主鎖中にエチレン単位を32モル%含有するポリビニルアルコール(クラレ社製、F10
1)の10重量%ジメチルスルホキシド溶液44gに対して1、3−シクロヘキサンジカ
ルボン酸5.8g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を得た。
得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用いてオ
ートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーターでオー
トクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を行い、
開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は26mol%、重合度は500、ガラス転移温度は84℃であっ
た。
【0044】
(実施例16)
主鎖中にエチレン単位を32モル%含有するポリビニルアルコール(クラレ社製、F10
1)の10重量%ジメチルスルホキシド溶液44gに対してイソフタル酸5.6g加え、
スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を得た。
得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用いてオ
ートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーターでオー
トクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を行い、
開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は26mol%、重合度は500、ガラス転移温度は81℃であっ
た。
【0045】
(比較例1)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%水溶液44gに対し
てn−ブチルアルデヒドを4.4g加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を
得た。
得られた混合溶液をオートクレーブ装置(耐圧硝子社製)に入れ、圧力ポンプを用いてオ
ートクレーブ装置内が8MPaになるまで二酸化炭素を送り込みながら、ヒーターでオー
トクレーブ装置を100℃まで加熱した。30分間加熱した後、80℃まで冷却を行い、
開圧後にスパーテルを用いて変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は68mol%、重合度は500、ガラス転移温度は65℃であっ
た。
【0046】
(比較例2)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%水溶液44gに対し
てo−アニスアルデヒド4.6gと酸触媒として濃硫酸4.4gを加え、スターラーを用
いて5分間撹拌して混合溶液を得た。得られた混合溶液を23℃で3時間撹拌し、変性ポ
リビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は0mol%であった。
【0047】
(比較例3)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%ジメチルスルホキシ
ド溶液44gに対してo−アニスアルデヒド4.6gと酸触媒としてp−トルエンスルホ
ン酸4.4gを加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を得た。得られた混合
溶液を23℃で3時間撹拌し、変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は0mol%であった。
【0048】
(比較例3)
ケン化度99%、重合度500のポリビニルアルコールの10重量%ジメチルスルホキシ
ド溶液44gに対してo−アニスアルデヒド4.6gと酸触媒としてp−トルエンスルホ
ン酸4.4gを加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶液を得た。得られた混合
溶液を23℃で3時間撹拌し、変性ポリビニルアルコール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は0mol%であった。
【0049】
(比較例4)
主鎖中にエチレン単位を32モル%含有するポリビニルアルコール(クラレ社製、F10
1)の10重量%ジメチルスルホキシド溶液44gに対してo−アニスアルデヒド4.6
gと酸触媒としてp−トルエンスルホン酸4.4gを加え、スターラーを用いて5分間撹
拌して混合溶液を得た。得られた混合溶液を23℃で3時間撹拌し、変性ポリビニルアル
コール樹脂を回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は0mol%であった。
【0050】
(比較例5)
主鎖中にエチレン単位を32モル%含有するポリビニルアルコール(クラレ社製、F10
1)の10重量%ジメチルスルホキシド溶液44gに対してマロン酸3.5gと酸触媒と
してp−トルエンスルホン酸4.4gを加え、スターラーを用いて5分間撹拌して混合溶
液を得た。得られた混合溶液を23℃で3時間撹拌し、変性ポリビニルアルコール樹脂を
回収した。
得られた変性ポリビニルアルコール樹脂について実施例1と同様の方法により測定したと
ころ、アセタール化度は0mol%であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、高い透明性と耐熱性とを有する成形体を得ることができる変性ポリビニ
ルアルコールを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール分子中の隣接する2つの水酸基にカルボニル化合物が結合してなる
変性ポリビニルアルコールであって、前記カルボニル化合物は、置換基を有する芳香環又
は置換基を有するシクロオレフィン環を有することを特徴とする変性ポリビニルアルコー
ル。
【請求項2】
ポリビニルアルコール分子中の2つの水酸基にジカルボキシル化合物が結合して分子内橋
掛け構造を形成していることを特徴とする変性ポリビニルアルコール。
【請求項3】
主鎖中にエチレン単位を3モル%以上含有することを特徴とする請求項1又は2記載の変
性ポリビニルアルコール。
【請求項4】
重合度が350以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の変性ポリビニルア
ルコール。

【公開番号】特開2006−22160(P2006−22160A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199641(P2004−199641)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】