説明

変性レシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ酵素

本発明は、LCATポリペプチドを改変することによって、アテローム性動脈硬化症、冠動脈性心疾患、血栓症を治療し、そして、被験者のコレステロールの蓄積を低減し、または、予防するための化合物、医薬組成物、および、方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、一般的に、医薬の分野に関するものであり、特に、冠動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、炎症性障害、それに、血栓症が関連する障害を治療するための組成物と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国では5000万人を超える人々が、心臓血管に問題を抱えており、また、その他の多くの国においても、心臓血管病の高い発生率とその発生率の増大に直面している。 この疾患は、米国や多くの欧州諸国での死亡および身体障害に至る第1位の原因である。 心臓の欠陥が発見されるまで、通常は、根本の原因であるアテローム性動脈硬化症が、何十年もの期間にわたって続いて、症状の進行が重大なものとなる。
【0003】
アテローム性動脈硬化症は、哺乳動物の多遺伝子性複合体病であって、動脈(大動脈、冠状動脈、および、頸動脈)の壁に脂質やその他の血液由来物質が沈着したり、斑を形成することを特徴としている。 このような斑は、程度の差はあるものの、疾患の進行具合に応じて石灰化される。 また、それらは、主にコレステロールエステルからなる脂肪性沈着物の動脈内での蓄積とも関連している。 コレステロールは、動脈の壁の泡沫細胞内に蓄積し、それにより、血管の内径が狭くなり、そして、血流の低下を招く。 この現象は、動脈壁の肥厚、平滑筋の肥大、泡沫細胞の出現、それに、繊維組織の蓄積を伴う。 よって、高コレステロール血症は、梗塞、末梢血管障害、脳卒中、突然死、心不全、脳血管障害などの非常に重大な心臓血管病変を招くこととなる。
【0004】
コレステロールは、超低密度リポタンパク質(VLDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)などの様々なリポタンパク質によって、血液中で、運搬される。 VLDLは、肝臓において合成され、そして、血液中でLDLに変換され、これにより、末梢組織にもコレステロールを供給することが可能となる。 これに対して、HDLは、末梢組織からコレステロール分子を捕捉し、そして、それらコレステロール分子を胆汁酸に変換して分泌する肝臓へと、コレステロール分子を運ぶ。 アテローム性動脈硬化症の進行と冠動脈性心疾患(CHD)の危険度は、血清中のHDLのレベルと反比例的に相関している。 Gordon et al. (1989) N. Engl. J. Med. 321: 1311; Goldbourt et al. (1997) Thromb Vase. Biol. 17: 107. 中心性肥満、糖尿病、それに、メタボリック症候群その他の特徴として、低HDLコレステロールは、しばしば認められる。 Goldbourt et al., 前出。 高濃度のHDLは、早期のアテローム性動脈硬化症の進行に対しては保護作用を示すが、低レベルのHDLコレステロールは、CHDの危険性の増大に関与していることが示唆されている。 Gordon et al. (1986) Circulation 74: 1217. これまでの研究によって、男性において臨床的アテローム性動脈硬化症が進行する危険性は、血漿中のHDL濃度を1mg/dLずつ増大させることで、2〜3%低下することが実証されている。 Gordon et al. (1989) N. Engl. J. Med. 321: 1311. コレステロール生合成酵素3-ヒドロキシル-3-メチルグルタリル補酵素Aレダクターゼの阻害剤であるスタチンで治療することで、LDLコレステロールの濃度を下げることが可能であることは知られており、それが故に、この治療は、高レベルLDLが初期兆候として現れるアテローム性動脈硬化症の危険度を抑える有効な手段として用いられている。 しかしながら、初期の脂質異常が低HDLコレステロールとして現れる患者におけるスタチンの有効性は未だ不明である。
【0005】
レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)とは、ホスファチジルコリン由来のアシル基をコレステロールの3-ヒドロキシルに転送し、そして、コレステリルエステルとリゾホスファチジルコリンを形成して、遊離コレステロールのエステル化を触媒する酵素である。 McLean et al. (1986) Proc. Natl. Acad Sci. 83: 2335 and McLean et al. (1986) Nucleic Acids Res. 14(23): 9397. LCATは、肝臓で合成され、そして、血漿中に分泌され、そこで、HDLと結合して、抗動脈硬化リポタンパク質と呼ばれることとなる。 これらHDL粒子は、過剰なコレステロールを受け入れる能力があり、そして、それらは、HDL粒子内でLCATによってエステル化される。 HDL粒子内のコレステリルエステル分子は、SR-BI受容体を介して直接に肝臓に転送されるか、あるいは、CETPによる媒介を受けて、超低密度リポタンパク質(VLDL)およびLDLを含むアポB含有リポタンパク質に移され、そして、LDL-受容体経路を介して肝臓に転送される。 この作用機構は、コレステロール逆輸送(Glomset (1968) J. Lipid Res. 9:155)と呼ばれており、身体から過剰なコレステロールを除去するので、アテローム発生の予防にも関係している。 LCATは、血漿膜の間に遊離コレステロールの勾配を形成し、そして、リポタンパク質を循環させることで、このプロセスにおいて主要な役割を果たしている。
【0006】
本願発明は、改善された酵素活性および/または安定性を具備した変性LCATタンパク質を提供し、また、これら変性LCATタンパク質を用いて、冠動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、炎症性障害、および、血栓症が関連する障害を治療するための方法も提供する。
【発明の開示】
【0007】
本明細書に開示されているものは、野生型LCATタンパク質アミノ酸配列におけるアミノ酸置換を含む変性LCATタンパク質である。 ある実施態様によれば、この変性LCATタンパク質の酵素活性は、それが由来する野生型LCATタンパク質の酵素活性よりも大きい。 その他の実施態様によれば、この変性LCATタンパク質は、高密度リポタンパク質(HDL)のレベルを、それが由来する野生型LCATタンパク質よりも大きなレベルにまで引き上げる。 その他の実施態様によれば、この変性LCATタンパク質は、それが由来する野生型LCATタンパク質よりも、in vivoでの安定性に優れ、あるいは、免疫原性において劣っている。
【0008】
ある実施態様によれば、この変性LCATタンパク質は、配列番号:1における第31位のアミノ酸残基、または、配列番号:1における第31位に対応するオーソロガス野生型LCATタンパク質アミノ酸配列におけるアミノ酸残基の置換を含む。 また、様々な実施態様において、この変性LCATタンパク質は、野生型のヒト、ウサギ、サル、ハムスター、マウス、または、ラットのLCATタンパク質に由来する。
【0009】
その他の実施態様によれば、この変性LCATタンパク質は、配列番号:1に記載の野生型LCATアミノ酸配列に由来し、かつ、Fl、L3、L4、N5、L7、C31、N384、または、E416の位置での置換を含む。 様々な実施態様において、この置換として、FlA、FlG、FlI、FlL、FlM、FlP、FlV、FlC、FlY、FIT、FlQ、FlN、FlH、または、FlDがある。 その他の実施態様によれば、この置換として、L3I、L3F、L3C、L3W、または、L3Yがある。 さらにその他の実施態様によれば、この置換として、L4A、L4I、L4M、L4F、L4V、L4W、L4Y、L4T、L4Q、または、L4Rがある。 さらにその他の実施態様によれば、この置換として、N5A、N5M、N5H、N5K、N5D、または、N5Eがある。 さらに別の実施態様によれば、この置換として、L7M、L7F、または、L7Eがある。 その他の実施態様によれば、この置換として、C31A、C31I、C31M、C31F、C31V、C31W、C31Y、C31T、C31R、または、C31Hがある。
【0010】
さらに別の実施態様によれば、この置換として、N384C、N384Q、または、E416Cがある。
【0011】
別の実施態様によれば、この変性LCATタンパク質は、配列番号:1の第C31位の位置での置換、および、Fl、L4、N5、V28、P29、G30、L32、G33、または、N34の位置での置換を含む。 様々な実施態様において、この置換として、FlA、L4F、N5E、N5Q、N5D、N5A、V28A、V28I、V28C、V28T、V28R、P29G、P29F、P29T、G30A、G301、L32A、L32I、L32M、L32F、L32C、L32W、L32Y、L32T、L32S、L32N、L32H、L32E、G33I、G33M、G33F、G33S、G33H、N34A、N34C、N34S、または、N34Rがある。 別の実施態様において、このC31の位置での置換として、C31A、C31I、C31M、C31F、C31V、C31W、C31Y、C31T、C31R、または、C31Hがある。 ある実施態様において、この変性LCATタンパク質は、C31Yの置換を含み、そして、Fl、L4、L32、または、N34の置換をさらに含み、そして、ある特定の実施態様において、これら置換として、FlS、FlW、L4M、L4K、N34S、L32F、または、L32Hがある。
【0012】
さらに別の実施態様によれば、本明細書に記載の変性LCATタンパク質は、賦形剤をさらに含み、そして、様々な実施態様において、当該賦形剤は、免疫グロブリン定常(Fc)領域、または、水溶性ポリマーであり、あるいは、さらに具体的には、ポリエチレングリコールを水溶性ポリマーとする。
【0013】
別の実施態様によれば、本明細書に記載の変性LCATは、複製され、かつ、変性LCATタンパク質の末端に共有結合している野生型LCATタンパク質アミノ末端アミノ酸配列の領域を含む。 ある実施態様によれば、野生型LCATタンパク質アミノ末端アミノ酸配列の領域は、10〜15個のアミノ酸の長さである。 別の実施態様によれば、野生型LCATタンパク質アミノ酸配列の領域は、複製され、かつ、変性LCATタンパク質のアミノ末端、変性LCATタンパク質のカルボキシ末端、または、その双方に共有結合している。
【0014】
本明細書に記載の変性LCATタンパク質と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物も提供される。
【0015】
LCAT関連障害の治療において有効量の量でもってして本明細書に記載の変性LCATタンパク質を投与する工程を含む、LCAT関連障害を治療する方法も提供される。 他の実施態様において、この変性LCATは、静脈内に投与され、あるいは、ボーラスで投与される。 この治療方法での様々な実施態様において、LCAT関連障害とは、アテローム性動脈硬化症、炎症、血栓症、冠動脈性心疾患、高血圧、LCAT不全症候群、アルツハイマー病、角膜混濁、メタボリック症候群、脂質異常症、心筋梗塞、脳卒中、重症下肢虚血、および/または、狭心症である。
【0016】
治療効果を奏する量の本明細書に記載の変性LCATタンパク質を被験者に投与する工程を含む、被験者のHDLコレステロールを増大する方法も提供される。
【0017】
本願発明は、治療効果を奏する量の本明細書に記載の変性LCATタンパク質を被験者に投与することを含む、被験者のコレステロールの蓄積を防ぐ方法もさらに提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
I.定 義
本明細書で用いている「LCAT」または「レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ」の用語は、コレステロールエステル、および、ホスファチジルコリン由来のリゾレシチン、それに、リポタンパク質に含まれる非エステル化コレステロールの合成を触媒する野生型糖タンパク質酵素を指す。 この酵素は、主に、肝臓で生成され、そして、リポタンパク質に可逆的に結合した血液内を循環する。 ヒトのLCAT(配列番号:1;Genbank受入番号第AAB34898号)は、49kDaの質量のポリペプチド、あるいは、糖質を加えて得た約67kDaの質量を有する。 本願発明において有用な変性LCATタンパク質を取得するための様々なLCATアミノ酸配列を、図1に列挙してある。

ヒトLCAT(配列番号:1;Genbank受入番号第AAB34898号)

FWLLNVLFPP HTTPKAELSN HTRPVILVPG CLGNQLEAKL DKPDVVNWMC
YRKTEDFFTI WLDLNMFLCL GVDCWIDNTR VVYNRSSGLV SNAPGVQIRV
PGFGKTYSVE YLDSSKLAGY LHTLVQNLVN NGYVRDETVR AAPYDWRLEP
GQQEEYYRKL AGLVEEMHAA YGKPVFLIGH SLGCLHLLYF LLRQPQAWKD
RFIDGFISLG APWGGSIKPM LVLASGDNQG IPIMSSIKLK EEQRITTTSP
WMFPSRMAWP EDHVFISTPS FNYTGRDFQR FFADLHFEEG WYMWLQSRDL
LAGLPAPGVE VYCLYGVGLP TPRTYIYDHG FPYTDPVGVL YEDGDDTVAT
RSTELCGLWQ GRQPQPVHLL PLHGIQHLNM VFSNLTLEHI NAILLGAYRQ
GPPASPTASP EPPPPE

「変性LCAT」の用語は、前述したレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼを指すものであって、野生型LCATタンパク質での一つまたはそれ以上のアミノ酸が、他のアミノ酸と置換されており、あるいは、変性LCATタンパク質の誘導源である野生型LCATのいずれか一方の末端、または、その中央部に一つまたはそれ以上のアミノ酸が付加されている。 変性LCATタンパク質では、その誘導源である野生型LCATタンパク質と比較して改善された薬物動態特性を保有せしめることを意図している。 さらに具体的には、変性LCATタンパク質は、(i) 同じin vitro分析条件下で測定して得た酵素活性であって、その誘導源である野生型LCATタンパク質と比較して増大した酵素活性、(ii) その誘導源である野生型LCATタンパク質と比較して、in vivoでのHDLレベルを増大させる改善された活性、(iii) 改善された血漿安定性または半減期、すなわち、その誘導源である野生型LCATタンパク質の血漿安定性と比較して改善された循環半減期、および/または、(iv) その誘導源である野生型LCATタンパク質と比較して減少した免疫原性(すなわち、弱い免疫応答の惹起)のいずれかを有している。 LCAT酵素活性を分析する方法として、例えば、人工系および生理的関連系の各々においてコレステロールエステル化率を決定する、アポAI-リポソーム分析および血漿LCAT活性分析などを利用する。 LCAT安定性をin vivoで分析する方法として、LCATタンパク質を投与した後の血液中の組換えLCATタンパク質の半減期を決定するELISAなどがある。 変性LCATタンパク質の生物学的に活性な断片として、野生型LCATアミノ酸配列にアミノ酸改変が導入された断片を意図している。
【0019】
「誘導している」、「誘導する」または「誘導した」の用語は、プロセスとその結果に得られる変性LCATタンパク質を含み、例えば、(1) 環状部分、例えば、化合物内部のシステイニル残基間に架橋を有する化合物、(2) 架橋した部位、または、架橋している部位を有する化合物、例えば、システイニル残基を有しており、それが故に、培地またはin vivoにて架橋二量体を形成する化合物、(3) 一つまたはそれ以上のペプチジル結合が、非ペプチジル結合で置換されていること、(4) N末端が、-NRR1、NRC(O)R1、-NRC(O)OR1、-NRS(O)21、-NHC(O)NHR、スクシンイミド基、または、置換済または未置換のベンジルオキシカルボニル-NH-、式中、RおよびR1および環状置換基が、後に定義する要素である化学基で置換されていること、(5) C末端が、-C(O)R2、または、-NR34、式中、R2、R3、および、R4が、後に定義する要素である化学基で置換されていること、および、(6) 各アミノ酸部分が、選択した側鎖または末端残基と反応可能な薬剤を用いた処理を受けて改変されている化合物などがあるが、これらに限定されない。 変性LCATタンパク質の誘導は、変性LCATタンパク質アミノ酸配列のカルボキシ末端、変性LCATタンパク質アミノ酸配列のアミノ末端、または、変性LCATタンパク質アミノ酸配列のカルボキシ末端およびアミノ末端の双方において、一つまたはそれ以上のアミノ酸残基を追加する誘導に関するもの以外の変性LCATタンパク質アミノ酸配列のさらなる改変を招かない。 加えて、野生型ヒトLCAT配列の第31位のシステインの側鎖改変、および、アミノ酸配列アライメントによって同定されたヒト相同物およびオーソロガスタンパク質において対応し、必要なギャップを含んだシステイン残基は、本願発明の範疇から除外されるものの、変性LCATタンパク質は、アミノ残基の側鎖の改変と共に誘導することができる。 さらに、本明細書において「変性LCATタンパク質」と言及した場合に、変性LCATタンパク質誘導体も、本願発明の実施態様に属することについてまで理解は及ぶであろう。
【0020】
「薬理学的に活性」の用語は、そこに記載された物質が、医療パラメーター(例えば、 血圧、血球数、コレステロールレベル)、または、疾患状態(例えば、アテローム性動脈硬化症、炎症性、および、血栓症障害)に影響を与える活性を有するものと決定されたことを意味する。
【0021】
「生理学的に許容可能な塩」の用語は、薬学的に許容可能なことが知られている塩、または、そのことが後に発見された塩を含む。 具体例として、酢酸塩、リフルオロ酢酸塩、それに、塩酸塩や臭化水素酸塩などのハロゲン酸、硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、および、シュウ酸塩などがある。
【0022】
本願発明の実施に向けて本明細書で用いる「実質的に均質」との表現は、全治療用分子についての特定の含有率が明示されていない限りは、調製物に含まれる全治療用分子が、検出可能な単一種の治療用化合物を含んでいることを意味するものである。 一般的に、実質的に均質な調製物では、均質な調製物の利点を引き出す上で十分な程度、例えば、ロット間薬物動態が予測可能な状況下で容易に臨床適用できる程度になるまで均質化されている。
【0023】
「生物有効性」とは、所望の生物学的効果を生み出す能力のことを指す。 異なる化合物、または、同じ化合物での異なる用量、または、同じ化合物での異なる投与形態については、一般的に、適切な比較を実現するために、化合物の量は標準化される。
【0024】
「アテローム性動脈硬化症」とは、動脈壁の内部に粥状斑が集積することに起因して、動脈の硬化および/または閉塞することを特徴とした病態のことを指す。 この粥状斑の特徴は、以下の三つの要素、すなわち、(1) 動脈の内腔に最も近いマクロファージから構成されており、大きな斑の中央部にある軟質鱗片状物質の結節性蓄積物であるアテローム、(2) コレステロール結晶が潜在している領域、(3) 顕著な進行が認められる病変部外端での石灰化に分類される。 アテローム性動脈硬化症の指標として、例えば、動脈での粥状斑の成長、その石灰化、ズダンIV染色で決定可能な進行の程度、または、動脈での泡沫細胞の成長などがある。 動脈の閉塞は、冠動脈血管形成術、超高速CT、または、超音波によって決定することができる。
【0025】
「炎症」または「炎症性障害」という表現は、障害性物質および損傷を受けた組織の双方に対して、破壊、緩和、または、囲い込む(封鎖する)作用を示す反応、すなわち、組織の損傷または破壊に起因して生じる局所的な防御反応を指す。 本明細書で使用する「炎症性疾患」または「炎症性病態」という用語は、過剰または無秩序な炎症反応が、過剰な炎症性症状、宿主組織損傷、または、組織機能の低下を招く疾患を指す。 さらに、本明細書で使用する「自己免疫疾患」という用語は、組織の損傷が、自身の身体の構成要素に対する体液または細胞が媒介した反応に関与する障害の一群のことを指す。 本明細書で使用する「アレルギー疾患」という用語は、アレルギーに起因する症状、組織の損傷、または、組織機能の低下のことを指す。 本明細書で使用する「関節炎疾患」という用語は、様々な病因に起因する関節の炎症性障害を特徴とする大きな疾患の一群のことを指す。 本明細書で使用する「皮膚炎」という用語は、様々な病因に起因する皮膚の炎症を特徴とする皮膚の疾患についての大きな一群のことを指す。 本明細書で使用する「移植片拒絶反応」という用語は、移植組織および周辺組織の機能喪失、疼痛、腫れ、白血球増加症、および、血小板減少症を特徴とする移植組織(臓器および細胞(例えば、骨髄)を含む)に対する免疫反応のことを指す。
【0026】
「血栓症」および「血栓症関連障害」という表現は、血管の閉塞を招く不正常な血栓形成、それに、かような閉塞に関連する病態のことを指す。 血管に対しては、血流剪断速度の作用によって顕著な剪断応力が付加される。 小さな血管や毛細血管に対して損傷を与えることがよくある。 これら血管が損傷を受けると、出血を止めるために止血作用が働く。 通常の状況下では、かような損傷は、一般的に「血栓形成」と称する一連の出来事として取り扱われる。 血栓形成は、血小板の粘着、活性化、および、凝集、それに、可溶性フィブリノゲンから不溶性フィブリン血栓への変換を招く凝固カスケードに依存している。 創傷部位での血栓形成は、血液成分の溢出を防ぐ。 続いて、創傷治癒と血栓溶解に至り、そして、血管の構造と血流が回復することとなる。
【0027】
「HDL」の用語は、高密度リポタンパク質を指す。
【0028】
本明細書で使用する「LDL」の用語は、低密度リポタンパク質を意味している。
【0029】
「VLDL」の用語は、超低密度リポタンパク質を指す。
【0030】
「治療」または「治療する」という表現は、例えば、病理学的アテローム性動脈硬化症、炎症性障害、または、血栓症関連障害の阻害、抑制、または、退行を招く本願発明の変性LCATタンパク質を、薬理学的に活性な量で、治療を必要とする被験者に対して投与することを含んでいる。 その他の態様によれば、本明細書で使用する治療の用語は、アテローム性動脈硬化症に関しては、HDLコレステロールレベルを増大する本願発明の化合物を、適量で、治療を必要とする被験者に対して投与することを指している。 アテローム性動脈硬化症の阻害に関係した「阻害する」との表現は、粥状斑、炎症性障害、または、血栓症関連障害の形成または進行を、予防、抑制、安定化、または、逆転させることを指すものである。 本明細書で使用する疾患および障害の治療とは、例えば、炎症性障害、血栓症障害、冠動脈性心疾患、高血圧、LCAT不全症候群、アルツハイマー病、角膜混濁、メタボリック症候群、脂質異常症、心筋梗塞、脳卒中、重症下肢虚血、狭心症などの疾患および障害の治療の必要のあると考えられる被験者に対して、本願発明の変性LCATタンパク質(または、その薬学的塩類、誘導体、または、プロドラッグ)、または、当該変性LCATタンパク質を含んだ医薬組成物を、治療のために投与することも含んでいる。 治療には、本願発明の変性LCATタンパク質または医薬組成物を、治療の必要が無いと診断された被験者に対して、これら病態または障害の予防のために投与すること、すなわち、被験者に対して予防的に投与することも含んでいる。 一般的に、被験者は、登録を受けた医師および/または認可を受けた開業医によってまずは診断が下され、そして、本願発明の変性LCATタンパク質または組成物の投与を介した予防処置および/または治療(急性または慢性)処置のための治療計画が、示唆、勧告、または、指示される。
【0031】
「治療有効量」の表現は、障害の程度および発症の頻度の改善を達成するであろう本願発明の化合物の量のことを指す。 障害の程度の改善とは、例えば、アテローム性動脈硬化症に関して言えば、血中のHDLコレステロールレベルを増大する血管壁におけるコレステロールの蓄積の予防、アテローム性動脈硬化症の病状の退行ならびにアテローム性動脈硬化症の進行抑制、炎症性障害の予防または治療、および、血栓症関連病態の予防または治療などがある。
【0032】
本明細書で用いる「被験者」の用語は、アテローム性動脈硬化症、炎症性障害、または、血栓症関連障害を発症しているか、あるいは、それが進行する危険性のあるヒトまたはその他の哺乳動物を指す。 かような個体は、例えば、炎症、血栓症、冠動脈性心疾患、高血圧、LCAT不全症候群、アルツハイマー病、角膜混濁、メタボリック症候群、脂質異常症、心筋梗塞、脳卒中、重症下肢虚血、狭心症などの病態を示しているか、あるいはかような病態に至る危険性を有している。 これら病態の予後や臨床的兆候は、当該技術分野において周知である。
【0033】
II. 変性LCATタンパク質
A. 化学分析
LCAT酵素活性、血漿安定性(血漿中での酵素半減期)、または、血漿LCATタンパク質レベルを決定するための分析方法は、当該技術分野において周知である。 血清でのLCAT活性の絶対値および内因性コレステロールエステル化率は、文献、例えば、Albers J. et al. (1986) Methods in Enzymol. 129: 763-783; Dobiasova M. et al. (1983) Adv. Lipid Res. 20: 107-194に記載の手順に従って決定することができる。 ある実施態様によれば、LCATとアポA-Iを含んだ放射性標識したLCAT基質とをインキュベーションした後に、放射性標識したコレステロールからコレステロールエステルへの変換率を測定することによって、LCAT活性を決定することができる。 放射性標識した血漿と微量の放射性コレステロールとを、4℃で、[14C]コレステロール-アルブミン混合物で平衡させてインキュベーションした後に、標識したコレステロールからコレステロールエステルへの変換率を測定することによって、コレステロールエステル化率(CER、nmol CE/mL/時間)を決定することができる。 内因性コレステロールエステル化率(血漿LCAT活性分析法で決定したもの)は、LCATの質量のみならず、血清中に存在するLCAT基質と補因子の性質と量をも反映しているので、治療用LCAT活性に関して良質の情報が提供されることとなる。
【0034】
血中のLCAT安定性(半減期)および血漿LCATタンパク質濃度を測定するための分析方法も、当該技術分野において周知である。 投与を行った後に、血漿での組換えLCATタンパク質レベルを、JR Crowther: ELISA theory and practice, methods in molecular Biology Volume 42)に記載の手順に従って、ELISAを用いて決定することができる。 LCAT安定性とタンパク質濃度を測定するための試薬として、幾つかの供給元から市販されている抗LCAT抗体がある。 変性LCATの活性および/または安定性の決定に関して、この分析方法の実施例を以下に示す。
【0035】
B. アミノ酸改変
変性LCATタンパク質は、野生型LCATタンパク質アミノ酸配列にアミノ酸置換を含む形態で提供される。 野生型LCATタンパク質でのアミノ酸配列は、一つまたはそれ以上のアミノ酸の置換を介して改変されるので、ある実施態様によれば、この変性LCATタンパク質は、自然に存在しないタンパク質と言える。 変性LCATタンパク質は、野生型LCATタンパク質から誘導されるものであって、野生型LCATタンパク質の例を、図1に示している。
【0036】
LCAT関連障害に起因するヒトの病態の治療についての本願発明の実施態様に関して、本願発明は、ヒトのLCATタンパク質を、一つまたはそれ以上のアミノ酸置換、または、一つまたはそれ以上のアミノ酸付加、そして、ある実施態様によれば、配列番号:1に記載の野生型ヒトLCATアミノ酸配列を含むように改変して得た変性LCATタンパク質を提供する。 配列番号:1に記載のヒトLCATタンパク質配列での特定のアミノ酸に関する開示に鑑みれば、その他のヒトLCATアミノ酸配列(すなわち、対立遺伝子多型のLCAT配列、または、その他の自然に存在するLCAT配列)、または、オーソロガスLCATアミノ酸配列において、同一または対応するアミノ酸残基での同一または類似の改変の使用および利用についてまで、当業者の理解は及ぶであろう。 配列番号:1に関して、以下の位置でのアミノ酸置換(アミノ酸の一文字表記に続いて、タンパク質配列での位置が示されており、これによれば、「F1」の表記は、配列番号:1の第1位にフェニルアラニンがあることを示している)、すなわち、Fl、W2、L3、L4、N5、V6、L7、F8、P9、P1O、H11、T12、T13、P14、K15、A16、E17、L18、S19、N20、H21、T22、R23、P24、V25、I26、L27、V28、P29、G30、C31、L32、G33、N34、Q35、L36、E37、A38、K39、L40、D41、K42、P43、D44、V45、V46、N47、W48、M49、C50、Y51、R52、K53、T54、E55、D56、F57、F58、T59、I60、W61、L62、D63、L64、N65、M66、F67、L68、C69、L70、G71、V72、D73、C74、W75、I76、D77、N78、T79、R80、V81、V82、Y83、N84、R85、S86、S87、G88、L89、V90、S91、N92、A93、P94、G95、V96、Q97、I98、R99、V100、P101、G102、F103、G104、K105、T106、Y107、S108、V109、E11O、Y111、L112、D113、S114、S115、K116、L117、A118、G119、Y120、L121、H122、T123、L124、V125、Q126、N127、L128、V129、N130、N131、G132、Y133、V134、R135、D136、E137、T138、V139、R140、A141、A142、P143、Y144、D145、W146、R147、L148、E149、P150、G151、Q152、Q153、E154、E155、Y156、Y157、R158、K159、L160、A161、G162、L163、V164、E165、E166、M167、H168、A169、A170、Y171、G172、K173、P174、V175、F176、L177、I178、G179、H180、S181、L182、G183、C184、L185、H186、L187、L188、Y189、F190、L191、L192、R193、Q194、P195、Q196、A197、W198、K199、D200、R201、F202、I203、D204、G205、F206、I207、S208、L209、G210、A211、P212、W213、G214、G215、S216、I217、K218、P219、M220、L221、V222、L223、A224、S225、G226、D227、N228、Q229、G230、I231、P232、I233、M234、S235、S236、I237、K238、L239、K240、E241、E242、Q243、R244、I245、T246、T247、T248、S249、P250、W251、M252、F253、P254、S255、R256、M257、A258、W259、P260、E261、D262、H263、V264、F265、I266、S267、T268、P269、S270、F271、N272、Y273、T274、G275、R276、D277、F278、Q279、R280、F281、F282、A283、D284、L285、H286、F287、E288、E289、G290、W291、Y292、M293、W294、L295、Q296、S297、R298、D299、L300、L301、A302、G303、L304、P305、A306、P307、G308、V309、E310、V311、Y312、C313、L314、Y315、G316、V317、G318、L319、P320、T321、P322、R323、T324、Y325、I326、Y327、D328、H329、G330、F331、P332、Y333、T334、D335、P336、V337、G338、V339、L340、Y341、E342、D343、G344、D345、D346、T347、V348、A349、T350、R351、S352、T353、E354、L355、C356、G357、L358、W359、Q360、G361、R362、Q363、P364、Q365、P366、V367、H368、L369、L370、P371、L372、H373、G374、I375、Q376、H377、L378、N379、M380、V381、F382、S383、N384、L385、T386、L387、E388、H389、I390、N391、A392、I393、L394、L395、G396、A397、Y398、R399、Q400、G401、P402、P403、A404、S405、P406、T407、A408、S409、P410、E411、P412、P413、P414、P415および/またはE416を意図している。 これら位置での一つまたはそれ以上のアミノ酸が、自然に存在しないアミノ酸、または、自然に存在するアミノ酸で置換される。 例えば、変性LCATは、C31Yの置換、それに、アミノ酸残基Fl、L4、L32、およびN34での置換を含むが、これらに限定されない。 ある実施態様によれば、この第二の置換として、FlS、FlW、L4M、L4K、N34S、L32F、および/または、L32Hがある。
【0037】
様々な実施態様において、特定の置換が提供されている。 例えば、脂肪族アミノ酸残基(G、A、V、L、または、I)は、その他の脂肪族残基と置換され、芳香族アミノ酸残基(F、Y、または、W)は、その他の芳香族残基と置換され、脂肪族ヒドロキシル側鎖残基(S、または、T)は、その他の脂肪族ヒドロキシル側鎖残基と置換され、塩基性残基(K、RまたはH)は、その他の塩基性アミノ酸残基と置換され、酸性残基(DまたはE)は、その他のアミノ酸残基と置換され、アミド側鎖残基(NまたはQ)は、その他のアミド側鎖残基と置換され、疎水性残基(ノルロイシン、M、A、V、L、または、I)は、その他の疎水性残基と置換され、中性アミノ酸残基(C、S、T、N、または、Q)は、その他の中性残基と置換され、鎖配向に影響を及ぼす残基(GまたはP)は、鎖配向に影響を及ぼすその他の残基と置換され、および/または、硫黄含有側鎖残基(CまたはM)は、その他の硫黄含有側鎖残基と置換されるが、これらに限定されない。
【0038】
その他の実施態様によれば、同類置換が、野生型LCATアミノ酸配列に導入されるが、これに限定されるものではない。
【0039】
【表1】

さらにその他に利用する置換を、以下の表2に例示してあるが、これらにも限定されない。
【0040】
【表2】

C.誘導体
前述した変性LCATタンパク質に加えて、変性LCATタンパク質のその他の「誘導体」も、前述した変性LCATタンパク質と同様に置換することも意図している。 かような誘導体は、化合物の可溶性、吸収性、生物学的半減期などを改善する可能性がある。
【0041】
また、誘導部分は、化合物の望ましくない副作用などを、消失または減退させる可能性がある。
【0042】
そのような変性LCATタンパク質の誘導体として、以下のものがある。
【0043】
1. 変性LCATタンパク質またはその一部が環状構造のもの。 例えば、ペプチド部分に、ジスルフィド結合形成によって環化することができる一つまたは二つの(例えば、リンカー内の)システイン残基を取り込むように改変することができる。
【0044】
2. 変性LCATタンパク質を架橋するか、あるいは、分子間で架橋が行えるように する。 例えば、ペプチド部分に、一つのシステイン残基を取り込むように改変することで、様分子を用いて分子間ジスルフィド結合を形成できるようになる可能性がある。 このタンパク質は、そのC末端を介して架橋することもできる。
【0045】
3. 一つまたはそれ以上のペプチジル[-C(O)NR-]連鎖(結合)が、非ペプチジル連鎖によって置換される。 非ペプチジル連鎖の例として、-CH2-カルバミン酸塩[-CH2-OC(O)NR-]、ホスホン酸塩、-CH2-スルホンアミド[-CH2-S(O)2NR-]、尿素 [-NHC(O)NH-]、-CH2-第二級アミン、および、アルキル化ペプチド[-C(O)NR6-、式中、R6は、低級アルキルである]などがある。
【0046】
4. N末端は、誘導される。 通常、N末端は、アシル化されるか、あるいは、置換アミンに改変される。 N末端誘導基の例として、-NRR1(-NH2以外)、-NRC(O)R1、-NRC(O)OR1、-NRS(O)21、-NHC(O)NHR1の式、すなわち、式中、RおよびR1が、各々、独立して、水素または低級アルキルであるが、RおよびR1が、共に水素ではなく、また、フェニル環が、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、クロロ、および、ブロモからなるグループから選択された1〜3個の化学基で置換できる、との式で表される誘導基、スクシンイミド基、ベンジルオキシカルボニル-NH-(CBZ-NH-)基、および、その遊離C末端が、-C(O)R2に誘導されているペプチドであって、式中、R2が、低級アルコキシ、および、-NR34であり、式中、R3およびR4が、独立して、水素および低級アルキルからなるグループから選択されるペプチド、などがある。 「低級」の用語は、1〜6個の炭素原子を有する化学基を指す。
【0047】
5. C末端は、誘導される。 通常、C末端は、エステル化またはアミド化される。
【0048】
例えば、本願発明の化合物のC末端に(NH-CH2-CH2-NH2)2を付加するために、当該技術分野の公知技術を用いることができる。 同様に、本願発明の化合物のC末端に-NH2を付加するために、当該技術分野の公知技術を用いることができる。 C末端誘導基の例として、-C(O)R2、式中、R2が、低級アルコキシ、または、-NR34であり、式中、R3およびR4が、独立して、水素またはC1-C8アルキル(または、C1-C4アルキル)である、との式で表される誘導基がある。
【0049】
6. ジスルフィド結合は、その他の要素、例えば、安定性に優れた架橋性要素(例えば、アルキレン)と置換される。 例えば、Bhatnagar et al. (1996), J. Med. Chem. 39: 3814-9; Alberts et al. (1993) Thirteenth Am. Pep. Symp., 357-9を参照されたい。
【0050】
7. 一つまたはそれ以上の個々のアミノ酸残基は、改変される。 様々な誘導体化剤が、以下に詳述するように、選択した側鎖、または、末端残基に対して特異的に反応することが知られている。
【0051】
さらに、選択した側鎖、または、末端残基に対して反応することができる有機性誘導体化剤と、変性LCATの標的アミノ酸残基とを反応させることで、個々のアミノ酸の改変を、変性LCATアミノ酸配列に導入することができる。 以下に、その例を示す。
【0052】
リジン末端残基、および、アミノ末端残基を、コハク酸無水物、または、その他のカルボン酸無水物と反応せしめることができる。 これら試薬を用いた誘導は、リジン残基の電荷を反転させる効果を奏する。 α-アミノ含有残基を誘導するためのその他の好適な試薬として、メチルピコリンイミドのようなイミドエステル、ピリドキサルリン酸、ピリドキサル、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O-メチルイソ尿素、2,4-ペンタンジオン、および、グリオキシル酸を用いたトランスアミナーゼ触媒反応などがある。
【0053】
アルギニン残基は、フェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、および、ニンヒドリンの内の一つまたは数個の公知の試薬を用いた反応によって改変することができる。 グアニジン官能基のpKaが高いため、アルギニン残基の誘導は、反応をアルカリ条件下で行う必要がある。 さらに、これら試薬は、リジン基ならびにアルギニングアニジノ基と反応することができる
チロシン残基の特定の改変それ自体は多方面で研究がされており、とりわけ、芳香族ジアゾニウム化合物、または、テトラニトロメタンを用いた反応によって、チロシン残基にスペクトル標識を導入する手法に関心が寄せられている。 通常は、O-アセチルチロシル種と3-ニトロ誘導体を形成するために、N-アセチルイミジゾールとテトラニトロメタンのそれぞれを使用することができる。
【0054】
1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-(4-エチル)カルボジイミドや1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドのようなカルボジイミド(R'-N=C=N-R')を用いた反応によって、カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)を選択的に改変することができる。 さらに、アンモニウムイオンを用いた反応によって、アスパルチル残基およびグルタミル残基を、アスパラギニル残基およびグルタミニル残基に変換することができる。
【0055】
グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、よく脱アミド化を起こして、対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基に改変される。 また、これら残基は、弱酸性条件下で脱アミド化される場合もある。 これら残基のいずれの形態のものも、本願発明の範囲に属する。
【0056】
第31位以外の位置にあるシステイニル残基は、ジスルフィド結合の解消、または、これとは反対に、架橋の安定化のいずてかを達成させるために、アミノ酸残基またはその他の要素でもってして置換することができる。 例えば、Bhatnagar et al. (1996), J. Med. Chem. 39: 3814-9を参照されたい。
【0057】
二官能性物質を用いた誘導は、ペプチドまたはその官能性誘導体を、水不溶性支持マトリックスまたはその他の高分子担体に架橋する上で有用である。 一般的な架橋剤として、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、4-アジドサリチル酸を有するエステル、3,3'-ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミディル)などのジスクシンイミディルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、および、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタンのような二官能性マレイミドなどがある。 メチル-3-[(p-アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートのような誘導体化剤は、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化可能な中間体をもたらす。 あるいは、臭化シアン活性化糖質のような反応性水不溶性マトリックス、それに、米国特許第3,969,287号、第3,691,016号、第4,195,128号、第4,247,642号、第4,229,537号、および、第4,330,440号に記載された反応性物質なども、タンパク質を固定化するために使用することができる。
【0058】
その他の利用可能な改変として、プロリンおよびリジンの水酸化、セリルまたはスレオニル残基の水酸基のリン酸化、システイン内の硫黄原子の酸化、リジン、アルギニン、および、ヒスチジン側鎖のαアミノ基のメチル化(Creighton, T.E., Proteins: Structure and Molecule Properties, W. H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86 (1983))、N末端アミンのアセチル化、および、場合によっては、C末端カルボキシル基のアミド化などがある。
【0059】
このような誘導部分は、好ましくは、本願発明の化合物の酵素活性、可溶性、吸着性、生物学的半減期などの一つまたはそれ以上の特性を改善する。 あるいは、これら誘導部分は、誘導がされていない化合物と同じまたは実質的に同じ特性および/または性質を有する化合物をもたらす。 これら誘導部分は、化合物などにおいて望ましくない副作用などを、消失または減退させる可能性がある。
【0060】
糖質(オリゴ糖)基を、タンパク質でのグリコシル化部位として知られている部位に対して好適に結合することができる。 一般的に、その一部にAsn-X-Ser/Thrの配列を含み、かつ、Xが、プロリン以外のアミノ酸である配列を含むオリゴ糖の場合には、セリン(Ser)残基またはトレオニン(Thr)残基には、O-結合型オリゴ糖が結合するのに対して、アスパラギン(Asn)残基には、N-結合型オリゴ糖が結合する。 Xとしては、プロリン以外の自然界に存在する19個のアミノ酸のいずれか一つのアミノ酸が好ましい。 N-結合型オリゴ糖の構造とO-結合型オリゴ糖の構造、それに、各タイプのオリゴ糖に認められる糖残基の構造は、相違している。 双方の糖においてよく認められるタイプの糖の一つが、N-アセチルノイラミン酸(シアル酸と称されている)である。 通常、シアル酸は、N-結合型オリゴ糖およびO-結合型オリゴ糖の双方の末端残基にあり、その負電荷に起因して、グリコシル化化合物に対して酸性を付与する。 これら部位は、本願発明の化合物のリンカーに組み込むことができ、そして、好ましくは、(例えば、CHO、BHK、COSなどの哺乳類細胞において)ポリペプチド化合物を組換え生産する間に、細胞によってグリコシル化される。 しかしながら、これら部位は、当該技術分野で周知の合成法または半合成法によって、さらにグリコシル化することができる。
【0061】
本願発明の変性LCATタンパク質は、DNAレベルでも、同様にして改変することができる。 本願発明の化合物の一部に対応するDNA配列は、選択したにより適合するコドンに改変することができる。 宿主細胞の一実施態様である大腸菌に関して言えば、好適なコドンは、当該技術分野において周知である。 選択した宿主細胞でのDNAの加工を補助すべく、制限部位を解消したり、あるいは、サイレント制限部位を導入するために、コドンを置換することができる。 前述した配列の改変を導入するために、賦形剤、リンカー、および、ペプチドのDNA配列を改変することができる。
【0062】
その他の有用な誘導体の組み合わせとして、毒素、トレーサー、または、放射性同位体に対して共役している前述した分子がある。 このような共役は、腫瘍細胞や病原菌に結合するペプチド配列を含む分子に対しては特に有用である。 このような分子は、治療剤において、または、外科手術の補助(例えば、放射性免疫誘導手術、または、RIGS)において、または、診断用薬(例えば、放射性免疫診断法、または、RID)において使用することができる。
【0063】
これら共役誘導体は、治療剤として、幾つかの利点がある。 ペプチド配列によって提供される特異的な結合が無いままに投与が行われた場合にのみ、有毒な毒素や放射性同位体などの使用を促すこととなる。 低有効量の共役パートナーを利用することで、放射線や化学療法の利用に伴う副作用の抑制を図ることもできる。
【0064】
有用な共役パートナーとして、
90イットリウム、131ヨー素、225アクチニウム、および、213ビスマスなどの放射性同位体、 シュードモナス エンドトキシン(Pseudomonas endotoxin、例えば、PE38、PE40)などの微生物由来の毒素であるリシンA毒素、
キャプチャシステムでのパートナー分子(以下を参照されたい)、
ビオチン、ストレプトアビジン(キャプチャシステムでのパートナー分子、または、特に、診断用途のトレーサーのいずれかとして有用である)、および、
細胞毒性薬(例えば、ドキソルビシン)、などがある。
【0065】
これら共役誘導体の有用な利用法の一つに、 キャプチャシステムでの利用がある。 これらシステムでは、本願発明の分子は、無害の捕捉分子を含む。 この捕捉分子は、例えば、毒素または放射性同位体を含む別個のエフェクタ分子に対して特異的に結合することができる。 賦形剤が共役した分子、および、エフェクタ分子の双方を、患者に対して投与できる。 これらシステムでは、賦形剤が共役したキャプチャ分子に結合している場合を除いて、これらエフェクタ分子の半減期は短く、そのため、毒性に起因する副作用を最小限のものとなる。 賦形剤が共役した分子は、半減期が比較的に長いが、無害で、しかも毒性も無い。 双方の分子における特定の結合部分を、公知の特異的結合ペア(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン)とすることができ、あるいは、本明細書に記載したペプチド生成法から得ることもできる。
【0066】
このような共役した誘導体は、当該技術分野で周知の方法によって調製することができる。 タンパク質エフェクタ分子s (例えば、シュードモナス エンドトキシン(Pseudomonas endotoxin))の場合、そのような分子は、相関関係にあるDNA構築物に由来する融合タンパク質として発現することができる。 放射性同位体が共役した誘導体は、例えば、BEXA抗体(Coulter)に関する記述に基づいて調製することができる。 細胞毒性薬または微生物由来毒素を含む誘導体は、BR96抗体(Bristol-Myers Squibb)に関する記述に基づいて調製することができる。 キャプチャシステムに利用する分子は、例えば、NeoRXに関する特許、特許出願、および、文献での記述に基づいて調製することができる。 RIGSおよびRIDで用いる分子は、例えば、NeoProbeに関する特許、特許出願、および、文献での記述に基づいて調製することができる。
【0067】
D. 賦形剤/担体部分
本願発明の化合物は、線状ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリリシン、デキストランなど)、分枝鎖ポリマー(例えば、米国特許第4,289,872号、米国特許第5,229,490号、WO 93/21259号公報を参照されたい)、脂質、コレステロール類(ステロイドなど)、または、糖質もしくはオリゴ糖などの担体分子と共有的または非共有的に会合することができる。 その他の利用可能な担体として、抗体の一部、特に、抗体から得られる定常領域がある。 さらに別の担体として、米国特許第4,640,835号、第4,496,689号、第4,301,144号、第4,670,417号、第4,791,192号、および、第4,179,337号に記載されているような、ポリオキシエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどの一つまたはそれ以上の水溶性ポリマーアタッチメントなどがある。 当該技術分野で公知の有用なその他のポリマーとして、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、または、糖質を主成分とするその他のポリマー、ポリ-(N-ビニルピロリドン)-ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、および、ポリビニルアルコール、それに、これらポリマーの混合物などがある。
【0068】
1. 免疫グロブリン定常領域賦形剤/担体
ある実施態様によれば、本願発明の変性LCATタンパク質は、一つのアミノ酸残基のN末端、C末端、または、側鎖を介してタンパク質に結合した少なくとも一つの賦形剤を含む。
【0069】
ある実施態様において、Fcドメインは、賦形剤である。 よって、Fcドメインを、ペプチドのN末端またはC末端、あるいは、N末端とC末端の双方に融合することができる。 本明細書において例示したように、複数の賦形剤、例えば、各末端に配置したFc、または、一つの末端に配置したFc、および、その他の末端または側鎖に配置したPEG基を使用することができる。
【0070】
様々な実施態様において、Fc要素としては、野生型FcまたはFc変異体のいずれかである。 その例として、Fc要素としては、ヒト免疫グロブリンIgG1重鎖のFc領域、または、生物学的に活性なその断片、誘導体、または、ダイマーなどがあるが、これらに限定されない。 Ellison, J.W. et al., Nucleic Acids Res. 10:4071-4079 (1982)を参照されたい。 しかしながら、本願発明で用いるFc領域が、由来種に関係なく、IgG、IgA、IgM、IgE、または、IgDから誘導できることは、理解の及ぶところである。 野生型Fcドメインは、共有的会合(すなわち、ジスルフィド結合)、および/または、非共有的会合によって二量体または多量体に結合可能な単量体ポリペプチドで構成されている。 野生型Fc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgA、IgE)、または、サブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2)に応じて、1〜4の範囲の数値になる。 野生型Fcの一例として、IgGをパパイン消化して得たジスルフィド結合ダイマーがある(Ellison et al. (1982), Nucleic Acids Res. 10: 4071-9を参照されたい)。
【0071】
様々な実施態様において、利用するFc配列として、例えば、Fc IgG1(GenBank受入番号第PO1 857号)、Fc IgG2(GenBank受入番号第PO1 859号)、Fc IgG3(GenBank受入番号第PO1 860号)、Fc IgG4(GenBank受入番号第P01 861号)、Fc IgA1(GenBank受入番号第P01 876号)、Fc IgA2(GenBank受入番号第PO1 877号)、Fc IgD(GenBank受入番号第POl 880号)、Fc IgM(GenBank受入番号第P01 871号)、および、Fc IgE(GenBank受入番号第P01 854号)などの当該技術分野において周知の配列がある。
【0072】
Fc部分の変異体、類似体、または、誘導体は、例えば、様々な残基または配列の置換を行うことによって構築することができる。 ある実施態様によれば、Fc変異体は、非ヒトの野生型Fcからヒト型化した分子または配列を含むものに組み込まれる。 あるいは、Fc変異体は、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する米国特許出願公開第20040087778号に詳述されている、(1) ジスルフィド結合形成、(2) 選択した宿主細胞との不適合性、(3) 選択した宿主細胞での発現時のN末端の不均一性、(4) グリコシル化、(5) 相補体との相互作用、(6) サルベージ受容体以外のFc受容体に対する結合、または、(7) 抗体依存性細胞毒性(ADCC)に影響または関与している一つまたはそれ以上の野生型Fc部位または残基を欠いている分子または配列を含む。
【0073】
変異体(または類似体)のFcポリペプチド部分は、一つまたはそれ以上のアミノ酸残基がFcアミノ酸配列を補っている挿入変異体を含んでいる。 挿入部は、タンパク質の一方または双方の末端に設けることができ、あるいは、Fcアミノ酸配列の中間領域に置くこともできる。 一方または双方の末端にさらに別の残基を有する挿入変異体として、例えば、融合タンパク質、または、アミノ酸タグまたは標識を含むタンパク質などが利用可能である。 例えば、Fc分子は、特に、大腸菌のような細菌細胞において分子を組換え発現する場合には、N末端に、メチオニン(Met)を任意に含むことができる。
【0074】
Fc削除変異体にあっては、Fcポリペプチドの一つまたはそれ以上のアミノ酸残基は削除される。 Fcポリペプチドの一方または双方の末端の削除、または、Fcアミノ酸配列の一つまたはそれ以上の残基の除去を効果的に行うことができる。 したがって、削除変異体は、Fcポリペプチド配列のすべての断片を含んでいる。
【0075】
Fc置換変異体にあっては、Fcポリペプチドの一つまたはそれ以上のアミノ酸残基は除去され、そして、代替残基と交換される。 ある実施態様によれば、この置換は、実際には保存的であり、この種の同類置換は、当該技術分野で周知の事項である。 また、本願発明は、非保存的な置換をも利用する。
【0076】
例えば、Fc配列の幾つかまたはすべてのジスルフィド架橋の形成を防ぐために、システイン残基を、削除したり、あるいは、その他のアミノ酸と置換することができる。 各システイン残基を、削除したり、および/または、アラニン(Ala)またはセリン(Ser)などのその他のアミノ酸と置換することができる。 その他の例として、(1) Fc受容体結合部位の除去、(2) 相補体(CIq)結合部位の除去し、および/または、(3) 抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)部位の除去のためのアミノ酸置換を導入するために、改変を導入することもできる。 このような部位は、当該技術分野で周知であり、また、いかなる公知の置換も、本明細書で使用するFcの範囲内のものである。 例えば、IgG1でのADCCに関しては、Molecular Immunology, Vol. 29, No. 5, 633-639 (1992)を参照されたい。
【0077】
同様に、一つまたはそれ以上のチロシン残基を、フェニルアラニン残基で置換することができる。 加えて、その他の変異アミノ酸の挿入、削除、および/または、置換も意図しており、また、これらも本願発明の範囲内のものである。 ある実施態様によれば、これらを、保存的アミノ酸置換でもってして行うことができる。 さらに、ペプチド模倣薬やD-アミノ酸などの改変アミノ酸の形態への改変を行うことができる。
【0078】
前述したように、野生型FcとFc変異体の双方が、本願発明の範囲内において用いるFcドメインとして好適である。 野生型Fcは、サルベージ受容体への結合が維持されている限りは、Fc変異体を形成するまでは何度も改変をすることができる。 例えば、国際公開公報第WO 97/34631号および第WO 96/32478号を参照されたい。 このようなFc変異体では、本願発明の融合分子において必要とされていない構造的特徴や機能活性をもたらす野生型Fcの一つまたはそれ以上の部位を除去することができる。 例えば、これら残基を置換または削除したり、その部位に残基を挿入したり、あるいは、その残基を含む部分の先端を切り取ることによって、これら部位を除去することができる。 挿入または置換した残基を、ペプチド模倣薬やD-アミノ酸などの改変アミノ酸とすることができる。 Fc変異体は、多くの理由で所望されているが、その内の幾つかを以下に示す。 Fc変異体の例として、次のような分子と配列がある。
【0079】
1. ジスルフィド結合形成に関与する部位が、除去されている。 このような除去を行うことで、本願発明の分子を生成するために用いた宿主細胞に存在するその他のシステイン含有タンパク質との反応を回避することができる。 この目的のために、N末端にあるシステイン含有セグメントの先端を切り取ったり、あるいは、システイン残基を削除したり、あるいは、その他のアミノ酸(例えば、アラニン、セリン)と置換することができる。
【0080】
システイン残基が除去された場合でも、一本鎖Fcドメインは、依然として、互いに非共有的に結合している二量体Fcドメインを形成することができる。
【0081】
2. 野生型Fcは、選択した宿主細胞に対してさらに適合するように改変される。 例えば、プロリンイミノペプチダーゼのような大腸菌が保有している消化酵素を認識することができる典型的な野生型FcのN末端の近傍にあるPA配列を除去することができる。
【0082】
また、とりわけ、大腸菌のような細菌細胞において分子を組換え発現する場合には、N末端にメチオニン残基を付加することができる。
【0083】
3. 選択した宿主細胞において発現する場合に、N末端の不均一性を防ぐために、野生型FcのN末端の一部は除去される。 この目的のために、N末端の最初の20個のアミノ酸残基のいずれか、特に、第1位、第2位、第3位、第4位、および、第5位のアミノ酸を除去することができる。
【0084】
4. 一つまたはそれ以上のグリコシル化部位は除去される。 グリコシル化を受けやすい残基(例えば、アスパラギン)は、細胞溶解反応を付与することができる。 このような残基は、削除されたり、あるいは、非グリコシル化残基(例えば、アラニン)で置換することができる。
【0085】
5. CIq結合部位のような相補体に対して相互作用を示す部位は除去される。 例えば、ヒトIgG1のEKK配列を、削除または置換することができる。 本願発明の分子にとって、相補体の使用は好ましくなく、それ故に、Fc変異体と相補体との利用を避けることができる。
【0086】
6. サルベージ受容体以外のFc受容体への結合に影響を与える部位は除去される。 野生型Fcは、本願発明の融合分子において必要とされていない特定の白血球と相互作用する部位をを有しているので、それらは除去することができる。
【0087】
7. ADCC部位は除去される。 ADCC部位は、当該技術分野で周知の事項である。 例えば、IgG1でのADCC部位に関しては、Molec. Immunol. 29 (5): 633-9 (1992)を参照されたい。 同様に、これら部位も、本願発明の融合分子において必要とされていないので、それらは除去することができる。
【0088】
8. 野生型Fcが、非ヒト抗体に由来するものである場合、野生型Fcをヒト型化することができる。 一般的に、野生型Fcをヒト型化するにあたって、非ヒト野生型Fcにおいて選択した残基は、ヒト野生型Fcにおいて一般的に認められる残基と置換される。
【0089】
抗体をヒト型化するための技術は、当該技術分野で周知の事項である。
【0090】
ジスルフィド結合形成を介した二量化を妨げる特定の条件が存在しない限りは、好適なシステイン残基が存在しておれば、Fc単量体は自然と二量体を形成することを留意すべきである。 通常はFc二量体に含まれているジスルフィド結合に由来するシステイン残基が、除去されたり、あるいは、他の残基と置換されている場合でも、一般的に、モノマー鎖は、非共有結合的相互作用を介して二量体を形成する。 本明細書に記載の「Fc」の用語は、野生型単量体、(ジスルフィド結合で結合した)野生型二量体、(ジスルフィド結合、および/または、非共有結合で結合した)変性二量体、および、変性単量体(すなわち、誘導体)のいずれの形態をも指すものとして用いている。
【0091】
Fc配列の誘導、すなわち、Fc配列に、アミノ酸残基の挿入、削除、または、置換以外の改変を付加すべく誘導することもできる。 ある実施態様によれば、これら改変は、本来は共有結合性のものであり、例えば、ポリマー、脂質、その他の有機要素、および、無機要素に対する化学結合を含む。 しかしながら、非共有結合性の改変も意図している。 本願発明の誘導体は、循環半減期を増大させるために調製することができ、あるいは、所望の細胞、組織、または、臓器に対するポリペプチドのターゲッティング能力を改善するために調製することができる。
【0092】
本願発明の化合物のFc部分として、「延長された半減期を有する改変ポリペプチド」という発明の名称が記された国際公開公報第WO 96/32478号公報に記載されたようにして、無傷のFc分子のサルベージ受容体結合ドメインを用いることも可能である。 本明細書でFcと称する分子が属するクラスのその他の分子として、「延長された半減期を有する免疫グロブリン様ドメイン」という発明の名称が記された国際公開公報第WO 97/34631号公報に記載のものがある。
【0093】
2. 水溶性ポリマー賦形剤
上記したように、ポリマー賦形剤の使用も意図している。 目下のところ、賦形剤として有用な化学要素を結合させるための様々な手段が利用可能であり、例えば、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、「N末端を化学的に改変したタンパク質組成物および方法」という発明の名称が記された国際公開公報第WO 96/11953号公報を参照されたい。 このPCT公報は、とりわけ、タンパク質のN末端に水溶性ポリマーを選択的に結合させることを開示している。
【0094】
よって、本願発明は、水溶性ポリマー(WSP)を含む化合物を意図している。 臨床的に利用可能な好適なWSPとして、PEG、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキソラン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリ-β-アミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、ポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー(PPG)、および、その他のポリアルキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(POG)(例えば、グリセロール)、および、その他のポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、または、ポリオキシエチル化グルコース、コロミン酸、または、その他の糖質ポリマー、フィコール、または、デキストラン、および、これらの混合物などがあるが、これらに限定されない。 実際のところ、モノ-(C1-ClO)アルコキシ-、または、アリールオキシ-ポリエチレングリコールなど、これらに限定されはしないが、このようなその他のタンパク質を誘導するために使用されてきたPEGのいかなる形態のものも提供される。 ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水中での安定性が故に、製造に際して好都合である。 PEG基としては、都合の良い分子量のものを使用することができ、また、直鎖状または分枝状のいずれでも使用可能である。 本願発明での使用を意図しているPEGの平均分子量は、約2kDa〜約100kDa、約5kDa〜約50kDa、約5kDa〜約10kDaである。 他の実施態様では、PEG部分は、約6kDa〜約25kDaの分子量を有している。 一般的に、PEG基は、標的ペプチドまたはタンパク質に関する反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、または、エステル基)に対するPEG部分に関する反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、チオール、または、エステル基)のアシル化または還元的アルキル化を介してペプチドまたはタンパク質に結合される。 本明細書に記載の方法を用いて、ポリマー/ペプチド共役分子の混合物を調製することができ、また、本願発明が奏する利点として、ポリマー/ペプチドの共役部分を、その混合物が含むように選択できる点が挙げられる。 そして、必要であれば、所定の割合のポリマー/ペプチド共役体を用いて、様々な数(すなわち、ゼロ、一つ、または二つ)のポリマー要素が結合したペプチドの混合物を調製することもできる。
【0095】
合成ペプチドのペグ化のための有用な手法は、その各々が、溶液内での共役結合の形成を通じて、相互に相手に対して反応性を示す特別な官能性を有するペプチドとWSP(PEG)部分との組み合わせからなる。 これらペプチドは、従来の固相合成法によって、容易に調製することができる。 これらペプチドは、特定の部位にある適切な官能基によって、「予め活性化」される。 前駆体は、精製され、そして、PEG部分との反応に先駆けて十分に特徴決定がされる。 通常、ペプチドとPEGとの結合は水性相で形成され、そして、逆相分析HPLCによって容易にモニターすることができる。 これらペグ化ペプチドは、分離HPLCで容易に精製することができ、また、分析HPLC、アミノ酸分析、それに、レーザー脱離質量分析によって特徴を決定することもできる。
【0096】
多糖ポリマーとは、タンパク質の改変のために使用できる別のタイプの水溶性ポリマーである。 デキストランとは、その大部分が、α1-6結合によって結合されたグルコースの個別のサブユニットを含んだ多糖ポリマーである。 デキストランそれ自体は、多様な分子量範囲を有するものを入手することができるが、とりわけ、約1kD〜約70kDの分子量のものが容易に入手可能である。 デキストランは、それ単体でも、あるいは、その他の賦形剤(例えば、Fc)と組み合わせても、本願発明で用いる賦形剤としては好適な水溶性ポリマーである。 例えば、国際公開公報第WO 96/11953号および国際公開公報第WO 96/05309号を参照されたい。 治療用または診断用免疫グロブリンに共役したデキストランの使用についても報告がされている。 例えば、欧州特許公報第0 315 456号を参照されたい。 本願発明に従って、デキストランを賦形剤として用いる場合には、約1kD〜約20kDのデキストランが好ましい。
【0097】
この分子のWSP部分は、分岐鎖または非分岐鎖のいずれのものでもよい。 最終製品を治療用途に供するために、このポリマーは、薬学的に許容可能なものとする。 一般的に、このポリマー共役体について、治療用途での利用可能性を考慮し、その妥当性が認められる場合には、所望の用量、循環時間、タンパク質分解に対する耐性、および、その他の事項について検討を行ってから、所望のポリマーは選択される。 様々な実施態様において、各々のWSPの平均分子量は、約2kDa〜約100kDa、約5kDa〜約50kDa、約12kDa〜約40kDa、および、約20kDa〜約35kDaである。 他の実施態様では、PEG部分は、約6kDa〜約25kDaの分子量を有している。 本明細書の全体にわたって使用している「約」の用語は、水溶性ポリマーの調製物の分子量が、標準的な分子量よりも、調製物によって、大きかったり、逆に、小さかったりすることを示している。 一般的に、分子量が大きかったり、分岐度が大きい場合には、ポリマー/タンパク質の比率は大きくなる。 所望の治療計画に応じて、その他の事項、例えば、持続放出の時間、生物学的活性に関する効果(もしあれば)、取り扱い容易性、抗原性の程度または欠如、および、治療用タンパク質に関する水溶性ポリマーのその他の公知の効果などの事項を利用することができる。
【0098】
WSPは、ペプチドまたはタンパク質の機能ドメインまたは抗原性ドメインに関する効果を考慮して、タンパク質に対して結合すべきである。 一般的には、活性ポリマー分子を有するタンパク質を反応せしめるために用いられる好適な条件下で、化学誘導が行われる。 一つまたはそれ以上のタンパク質に水溶性ポリマーを結合するために用いることができる活性化基として、スルホン、マレイミド、スルフヒドリル、チオール、トリフラート、トレシレート、アジジリン、オキシラン、および、5-ピリジルなどがあるが、これらに限定されない。 還元的アルキル化によって、ペプチドに結合されるようであれば、選択したポリマーは、重合度が調節されるようにするために、単一の反応性アルデヒドを有するべきである。
【0099】
3. その他の賦形剤
その他の賦形剤として、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、あるいは、サルベージ受容体に結合することができる小分子(例えば、ペプチド模倣薬化合物)などがある。 例えば、米国特許第5,739,277号に記載のポリペプチドを、賦形剤としても使用できる。 FcRnサルベージ受容体に対する結合に関するファージ提示法によって、ペプチドの選択を行うこともできる。 このようなサルベージ受容体が結合している化合物も、「賦形剤」の定義に含まれ、また、本願発明の範囲内の事項でもある。 このような賦形剤は、(例えば、プロテアーゼによって認識された配列の排除して現れる)半減期の増大、および、(例えば、抗体のヒト型化において発見されるような非免疫原性配列を選り好んで現れる)免疫原性の減少に基づいて選択されるべきである。
【0100】
III. 変性LCATタンパク質の製造/調製方法
A. ポリヌクレオチド
本明細書に記載のタンパク質は、主として、組換えDNA技術を用いて、形質転換した宿主細胞において形成することができる。 このことを行うために、そのペプチドをコードする組換えDNA分子が調製される。 そのようなDNA分子を調製するための方法は、当該技術分野で周知の事項である。 例えば、そのようなペプチドをコードする配列は、適切な制限酵素を用いて、DNAから切り出すことができる。 あるいは、DNA分子を、ホスホロアミダイト法のような化学合成技術を用いて合成することができる。 これら技術の組み合わせを用いることもできる。
【0101】
本願発明は、適切な宿主においてペプチドを発現することができるベクターも含む。 このベクターは、適切な発現調節配列に作動可能に結合したペプチドをコードするDNA分子を含む。 DNA分子をベクターに挿入する以前または以後のいずれかに、この作動可能な結合を有効にする方法は、周知の事項である。 発現調節配列は、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開始シグナル、停止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、それに、転写または翻訳の調節に関係するその他のシグナルを含む。
【0102】
こうして得られた前述したDNA分子を有するベクターは、好適な宿主を形質転換するために用いられる。 この形質転換は、当該技術分野で周知の方法を用いて実施することができる。
【0103】
数多くの入手可能で公知のいかなる宿主細胞も、本願発明を実施するために使用することができる。 特定の宿主の選択は、当該技術分野で認識されている因子の数によって定まる。 これら因子として、例えば、選択した発現ベクターとの適合性、DNA分子によってコードされたペプチドの毒性、形質転換率、ペプチドの回収のしやすさ、発現の特徴、生物学的安全性、それに、費用などがある。 これら因子のバランスは、すべての宿主が、特定のDNA配列の発現において等しく効果的ではない、との理解の下に行わなければならない。 このような認識の下で、有用な微生物宿主として、細菌(大腸菌など)、酵母(Saccharomyces sp.など)、それに、培養されたその他の真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、哺乳類(ヒトを含む)細胞、あるいは、当該技術分野で周知のその他の宿主などがある。
【0104】
次に、形質転換した宿主は培養され、そして、精製される。 所望の化合物を発現させるために、宿主細胞を、従来の発酵条件下で培養することができる。 そのような発酵条件は、当該技術分野で周知の事項である。 最後に、当該技術分野で周知の方法によって、培養物からペプチドは精製される。
【0105】
変性LCATタンパク質は、合成法によっても調製することができる。 例えば、固相合成技術を用いることができる。 好適な技術は、当該技術分野で周知の事項であり、そのような技術として、Merrifield (1973), Chem. Polypeptides, pp. 335-61 (Katsoyannis and Panayotis eds.)、Merrifield (1963), J. Am. Chem. Soc. 85: 2149、Davis et al. (1985), Biochem. Intl. 10: 394-414、Stewart and Young (1969), Solid Phase Peptide Synthesis、米国特許第3,941,763号、Finn et al. (1976), The Proteins (3rd ed.) 2: 105-253、および、Erickson et al. (1976), The Proteins (3rd ed.) 2: 257-527に記載のものがある。 固相合成法は、小さなペプチドを調製する上で最も費用効果が高い方法であるので、この固相合成技術で、各ペプチドを調製することを意図している。
【0106】
B. ベクター
組換えタンパク質発現を行うために、本願発明は、適切な宿主で発現することができる変性LCATタンパク質をコードするベクターを提供する。 このベクターは、賦形剤の改変の有無にかかわらず、適切な発現調節配列に作動可能に結合した変性LCATタンパク質をコードするDNA分子を含む。 DNA分子をベクターに挿入する以前または以後のいずれかに、この作動可能な結合を有効にする方法は、周知の事項である。 発現調節配列は、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開始シグナル、停止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、および/または、転写または翻訳の調節に関係するその他のシグナルを含む。 当業者であれば、例えば、変性LCATタンパク質が発現される宿主細胞の選択に従って、これら調節配列の様々な組合わせを利用するであろう。 こうして得られたベクターは、当該技術分野で周知の方法を用いて好適な宿主を形質転換するために供される。
【0107】
C. 宿主細胞
変性LCATタンパク質を発現するために、数多くの入手可能で公知のいかなる宿主細胞も使用される。 宿主の選択は、因子の数によって定まり、これら因子としては、例えば、選択した発現ベクターとの適合性、形質転換したポリヌクレオチドによってコードされて発現した変性LCATタンパク質の毒性、形質転換率、発現した変性LCATタンパク質の回収のしやすさ、発現の特徴、グリコシル化の程度とタイプ、そして、必要に応じて、生物学的安全性と費用などもあるが、これらに限定されない。 これら因子のバランスは、すべての宿主細胞が、特定の変性LCATタンパク質の発現において等しく効果的ではない、との理解の下に行わなければならない。 使用した宿主細胞によって、変性LCAT発現産物は、哺乳類またはその他の真核細胞の糖質でグリコシル化されたり、あるいは、グリコシル化されない場合がある。 この変性LCAT発現産物は、例えば、細菌の宿主細胞で発現された場合などは、(第-1位の位置のアミノ酸残基として)開始メチオニンアミノ酸残基を有することもある。 このような一般的な認識の下で、有用な宿主細胞として、細菌、酵母、それに、培養されたその他の真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、哺乳類(ヒトを含む)細胞、あるいは、当該技術分野で周知のその他の宿主細胞などがある。
【0108】
所望の化合物を発現させるために、宿主細胞を、当該技術分野で周知の従来の発酵条件下で培養し、そして、同様に当該技術分野で周知の方法によって、培養物から変性LCAT発現産物は精製される。
【0109】
変性LCATタンパク質を発現するために利用した宿主細胞に応じて、糖質(オリゴ糖)基を、タンパク質でのグリコシル化部位として知られている部位に対して好適に結合することができる。 一般的に、その一部にAsn-X-Ser/Thrの配列を含み、かつ、Xが、プロリン以外のアミノ酸である配列を含むオリゴ糖の場合には、セリン(Ser)残基またはトレオニン(Thr)残基には、O-結合型オリゴ糖が結合するのに対して、アスパラギン(Asn)残基には、N-結合型オリゴ糖が結合する。 Xとしては、プロリン以外の自然界に存在する19個のアミノ酸のいずれか一つのアミノ酸が好ましい。 N-結合型オリゴ糖の構造とO-結合型オリゴ糖の構造、それに、各タイプのオリゴ糖に認められる糖残基の構造は、相違している。 双方の糖においてよく認められるタイプの糖の一つが、N-アセチルノイラミン酸(シアル酸と称されている)である。 通常、シアル酸は、N-結合型オリゴ糖およびO-結合型オリゴ糖の双方の末端残基にあり、その負電荷に起因して、グリコシル化化合物に対して酸性を付与する。 これら部位は、本願発明の化合物のリンカーに組み込むことができ、そして、好ましくは、(例えば、CHO、BHK、COSなどの哺乳類細胞において)ポリペプチド化合物を組換え生産する間に、細胞によってグリコシル化される。 しかしながら、これら部位は、当該技術分野で周知の合成法または半合成法によって、さらにグリコシル化することができる。
【0110】
D. 変性LCATタンパク質の賦形剤改変
選択したWSPの結合方法に応じて、標的タンパク質分子に結合したWSP分子の部分を改変し、また、反応混合物におけるその濃度も同様に改変することとなる。 一般的に、(未反応のタンパク質またはポリマーが過剰に残らない程度の反応効率に関する)最適比率は、選択したWSPの分子量によって決定される。 加えて、非特異的結合を利用し、かつ所望の種類の物質の精製を後回しに行う方法を用いる場合には、この比率は、利用可能な反応基(通常は、アミノ基)の数によって変化する。
【0111】
一般的に、標的の反応基に対するWSPの反応基(すなわち、アルデヒド、アミノ、エステル、チオール、α-ハロアセチル、マレイミド、または、ヒドラジン基)が関係しているアシル化、還元的アルキル化、マイケル付加、チオールアルキル化、または、その他の化学選択的共役/ライゲーション法を介して、変性LCATタンパク質にWSPは付加される。
【0112】
よって、共役誘導体を調製するためのプロセスも意図されている。 よって、本願発明のある実施態様は、本明細書に記載の方法、または、当該技術分野で周知の方法によって、少なくとも一つの賦形剤を含む変性LCAT剤を調製することを含むプロセスである。
【0113】
そのプロセスの例として、還元的アルキル化化学修飾手法があるが、このものに限定されない。 WSP改変のためのその他の方法として、Stability of protein pharmaceuticals: in vivo pathways of degradation and strategies for protein stabilization (Eds. Ahern., T. and Manning, M.C.) Plenum, N.Y., 1991に収録されているFrancis et al.,の文献があり、この文献が用いられる。 その他の実施態様として、WSP部分と変性LCATタンパク質との間に結合を生成しない塩化トレシルの使用に関する、Fisher et al., eds., Separations Using Aqueous Phase Systems, Applications In Cell Biology and Biotechnology, Plenum Press, N.Y., N.Y., 1989 pp. 211-213に収録されているDelgado et al., "Coupling of PEG to Protein By Activation With Tresyl Chloride, Applications In Immuno affinity Cell Preparation"に記載の方法がある。 しかしながら、この代替法は、塩化トレシルの使用によって、毒性副産物が生成される可能性があるので、治療用製剤の製造のために使用することは難しいものと考えられる。 その他の実施態様として、当該技術分野で周知の通り、カルボキシメチルメトキシポリエチレングリコールのN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルを使用することで、WSPの結合効率は改善される。
【0114】
1. 還元的アルキル化
ある実施態様によれば、N末端アミノ基を選択的に改変するために本明細書に記載の還元的アルキル化化学修飾法を行い、そして、本明細書に記載の生物学的活性分析法などによって、所望の生物学的性質に関して得られた産物を試験することで、WSPと変性LCATタンパク質との間の共有結合の形成が行われる。
【0115】
タンパク質またはペプチドに対してWSPを結合するための還元的アルキル化は、特定のタンパク質での誘導のために利用可能な異なる反応性を示す異なるタイプの第1級アミノ基(例えば、リジン対N末端)を利用する。 適切な反応条件下で、ポリマーを含むカルボニル基を有するN末端において、タンパク質の実質的な選択的誘導が行われる。
【0116】
還元的アルキル化を用いることで、還元剤は、水性溶液において安定性を取得し、そして、好ましくは、還元的アルキル化の開始プロセスにおいて形成されるシッフ塩基だけを還元することができるようになる。 還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ホウ酸ジメチルアミン、ホウ酸トリメチルアミン、および、ホウ酸ピリジンなどがあるが、これらに限定されない。
【0117】
反応pHは、使用するタンパク質に対するポリマーの比率に影響する。 一般的に、反応pHが、標的反応基のpKaよりも小さい場合には、タンパク質に対して大幅に過剰量のポリマーが必要とされる。 pHが、標的pKaよりも大きい場合には、ポリマー:タンパク質の比率を、さほど大きくする必要はない(すなわち、わずかなポリマー分子だけが必要となるので、より多くの反応基が利用可能となる)。
【0118】
したがって、ある実施態様によれば、リジン残基のε-アミノ基とタンパク質のN末端残基のα-アミノ基との間のpKaの相違の利用を可能にするpHにおいて、反応が実施される。 このような選択的誘導によって、タンパク質への水溶性ポリマーの結合が調節され、主にタンパク質のN末端においてポリマーとの共役が起こることとなり、そして、リジン側鎖アミノ基などのその他の反応基について顕著な改変が生じることはない。
【0119】
したがって、ある実施態様によれば、別個の化学修飾構造を用いることが必要な場合に行われる大規模で追加的な精製を欠いた状況でも、WSP/タンパク質共役分子の実質的に均質な調製物をもたらす共有結合をWSPと標的変性LCATタンパク質との間に形成する方法が提供される。 さらに具体的には、ポリエチレングリコールを用いる場合には、ここに記載した方法は、抗原性結合基を欠いていると考えられるN末端ペグ化タンパク質の生成を許容し、すなわち、ポリエチレングリコール部分は、毒性が疑われる副産物を伴わずにタンパク質部分に対して直接的に結合される。
【0120】
E. WSP改変化合物の精製
ある実施態様によれば、実質的に均質なWSP-LCATタンパク質調製物を取得するための方法とは、変性LCATタンパク質配列での様々な位置にある幾つかのWSP結合を有する複数種の変性LCATの混合物から、結合したWSP部分を有する主に単一種の変性LCATの精製である。 実施例として、実質的に均質な複数種のWSP-LCATは、まず、単一種の電荷特性(同じ見かけの電荷を有するその他の種類のものも存在はするが)を有する物質を取得するために、イオン交換クロマトグラフィーで分離され、ついで、所望の種類のものが、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分離される。 その他の方法も報告されており、また、それら方法は、本願発明においても意図されており、そのような方法として、例えば、PEGを含有している水二相系において、PEG/タンパク質付加物を分割することを含む、PEG-タンパク質付加物を分割するためのプロセスを記載している国際公開公報第WO 90/04606号がある。 その他(すなわち、非PEG)の結合物を有する変性LCATタンパク質を用いて利用するために、このような分離システムに対して修正を加えることができる。
【0121】
したがって、本願発明のある実施態様とは、WSP-変性LCAT共役体の調製方法、すなわち、(a)水溶性ポリマーが、α-アミノ基に対して選択的に結合させるべく、タンパク質部分のアミノ末端でのα-アミノ基の選択的活性化に適したpHにおいて、還元アルキル化条件下で、一つ以上のアミノ基を有する変性LCATタンパク質と水溶性ポリマー部分とを反応させ、および、(b)反応産物を取得する、ことを含む調製方法である。 任意ではあるが、とりわけ、治療用製剤に関しては、未反応部分から反応産物は分離される。
【0122】
IV. 変性LCATを含む医薬組成物および投与方法
本願発明の化合物をそれ単独で投与することも可能ではあるが、本明細書に記載した方法では、投与される化合物は、一般的には、従来の薬学的に許容可能な担体を含んだ薬学的に許容可能な組成物などの所望の用量単位製剤の活性成分として用いられる。 よって、本願発明の他の実施態様によれば、本願発明の化合物と薬学的に許容可能な担体との組み合わせを含む医薬組成物が提供される。 一般的に、許容可能な薬学的担体としては、本明細書に記載した希釈剤、賦形剤、アジュバントなどがある。
【0123】
本願発明の医薬組成物は、有効量の本願発明の化合物、または、有効用量の本願発明の化合物を含む。 有効用量の本願発明の化合物は、本願発明の化合物の有効量よりも少ない、同等、または、それ以上の量の化合物を含む。 例えば、有効量の化合物を投与するために、錠剤やカプセル剤などのように、二つまたはそれ以上の単位用量を必要とする医薬組成物や、あるいは、有効量の化合物を投与するために、粉剤や液剤などのように、複数の用量を必要とする医薬組成物は、その一部を投与することで、それら組成物の投与を行うことができる。 「単位用量」は、好適な担体に分散した治療用化合物のそれぞれの量として定義される。 当業者であれば、適切な医療行為と各患者の病態に応じて、最適な有効用量と投与計画を決定するであろう。
【0124】
様々な疾患を治療または緩和するための所望の投与可能な製剤を形成するために、この医薬組成物は、一般的に、一つまたはそれ以上の変性LCATタンパク質と、一つまたはそれ以上の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、結合剤、アジュバント、希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤などを混合することによって調製することができる。 このような組成物として、様々な緩衝成分(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩)とpHおよびイオン強度を有する希釈剤、洗浄剤や可溶化剤などの添加物(例えば、Tween 80、ポリソルベート 80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)、および、増量剤(例えば、ラクトース、マンニトール)などがあり、これら物質は、ポリ乳酸やポリグリコール酸などの高分子化合物からなる微粒子状調製物や、リポソームに取り込まれる。 ヒアルロン酸も使用することができ、この物質は、循環系での持続時間を延ばす効果を有する。 これら組成物は、本願発明のタンパク質および誘導体の物理的状態、安定性、in vivoでの放出速度、および、in vivoでの消失速度に影響を与える可能性がある。 例えば、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990, Mack Publishing Co., Easton, PA 18042)の第1435頁〜第1712頁を参照されたい。 これら組成物は、液状形態として調製することができ、あるいは、凍結乾燥形態のような乾燥粉末の形態で調製することもできる。 埋め込み可能な持続放出型製剤も、経皮製剤として、意図している。
【0125】
これら医薬組成物は、殺菌などの従来の薬学的処理に供することができ、および/または、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などの従来のアジュバントを含むことができる。 本願発明の薬学的に活性な化合物は、ヒトやその他の哺乳類を含む患者に対して投与する医薬品を製造するために、従来の薬学的手法に従って加工をすることができる。
【0126】
医薬組成物は、造粒、混合、溶解、カプセル化、凍結乾燥、乳化、または、粉砕などの当該技術分野で周知の従来の手法によって製造することができる。 本願発明の組成物は、例えば、顆粒、粉末、錠剤、カプセル剤、シロップ、坐薬、注射液、乳剤、エリキシル剤、懸濁液、または、溶液などの形態にすることができる。 本願発明の組成物は、例えば、経口投与、経粘膜投与(肺および鼻への投与を含む)、非経口投与(皮下投与を含む)、経皮(局所)投与、直腸投与、ならびに、髄腔内、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、眼球内、または、脳室内注射などの様々な投与経路に適した製剤にすることができる。 本願発明の化合物または化合物の組み合わせは、持続放出性製剤を注射するなどして、全身投与よりもむしろ局所的に投与することもできる。
【0127】
本明細書に記載した代表的な剤形以外にも、薬学的に許容可能な賦形剤や担体は、一般的に、当業者に周知の事項であり、また、それらは、本願発明に包含されている。 このような賦形剤や担体は、例えば、「Remingtons Pharmaceutical Sciences」 Mack Pub. Co., New Jersey (2000);および、「Pharmaceutics The Science of Dosage Form Design」、2nd Ed. (Aulton, ed.) Churchill Livingstone (2002)などに記載されている。 以下の剤形は、例示目的で開示されたものであって、その開示に基づいて、本願発明を限定的に解釈すべきものではない。
【0128】
A. 経口投与
経口、口腔、および、舌下での投与のために、粉末、懸濁液、顆粒、錠剤、丸薬、カプセル剤、ジェルキャップ、トローチまたは薬用飴、カプセル、ペレット、および、化婦レットなどは、固形剤形(および、単位用量)として許容可能であり、これらは、一般的に、Remington's Pharmaceutical Sciences (1990), 18th Ed., Mack Publishing Co. Easton PA 18042の第89章に記載されている。 固形剤形は、リポソーム封入、または、プロテイノイド封入(例えば、プロテイノイド微小球は、米国特許第4,925,673号で報告されている)も含む。 リポソーム封入を用いることができ、そして、リポソームは、様々なポリマーから誘導することができる(例えば、米国特許第5,013,556号)。 治療用途に利用可能な固形剤形は、G.S. Banker および C.T. Rhodesによって編集されたMarshall, K., Modern Pharmaceutics (1979)の第10章に記載されている。 一般的に、この製剤は、変性LCATタンパク質の他に、胃の内部環境に対して防御作用を示し、そして、腸内に生物学的に活性な物質を放出する不活性成分を含んでいる。
【0129】
必要に応じて、 経口デリバリーの生物有効性を改善するために、本願発明の化合物は、化学的に修飾される。 一般的に、意図している化学修飾とは、化合物分子それ自身に対して、少なくとも一つの部分を結合することであって、当該部分は、(a)タンパク質分解の阻害、および(b)胃または腸からの血流への取り込みを許容する。 また、本願発明の化合物の全般的な安定性の増大、それに、体内での循環時間の増大についても記載されている。 本願発明において共有結合した賦形剤として有用な部分も、この目的のために使用することができる。 このような部分の例として、PEG、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、および、ポリプロリン、ならびに、本明細書に記載したその他の部分などがある。 例えば、Abuchowski and Davis, Soluble Polymer-Enzyme Adducts, Enzymes as Drugs (1981), Hocenberg and Roberts, eds., Wiley-Interscience, New York, NY, pp 367-83; Newmark, et al. (1982), J. Appl. Biochem. 4: 185-9も参照されたい。 その他に使用可能なポリマーは、ポリ-1,3-ジオキソランと、ポリ-1,3,6-チオキソカンである。 ある実施態様によれば、前述したように、PEG部分は、薬学的用途のために供される。
【0130】
経口デリバリー剤形のために、本願発明の治療用化合物の吸収作用を高めるための担体として、N-(8-[2-ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸ナトリウム(SNAC)などの変性脂肪族アミノ酸の塩を使用することも可能である。 SNACを用いたヘパリン製剤の臨床的有効性は、エミスフェア テクノロジーズ社によって実施された第二相試験において実証されている。 発明の名称が「Oral drug delivery composition and methods」である米国特許第5,792,451号を参照されたい。
【0131】
本願発明の化合物は、約1mmの粒子サイズの顆粒またはペレットの形態の微細多粒子の製剤に含有させることもできる。 カプセル投与のための材料の製剤は、粉末、軽度に押圧したプラグ、あるいは、錠剤としても使用することができる。 治療用途のものは、押圧して調製することができた。
【0132】
ここで意図している経口医薬組成物は、例えば、一つまたはそれ以上の本願発明の化合物を、澱粉などの少なくとも一つの添加物または賦形剤、あるいは、その他の添加物と共に混合し、そして、錠剤化、カプセル封入、または、従来の投与方法に適合したその他の所望の形態に加工することで、調製をすることができる。 好適な添加物または賦形剤は、スクロース、ラクトース、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、ソルビトール、澱粉、寒天、アルギン酸、キチン、キトサン、ペクチン、ラガカントゴム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成または半合成ポリマーまたはグリセリド、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、および/または、ポリビニルピロリドンである。 投与を補助するために、経口剤形は、任意に、不活性希釈剤、または、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、パラベンまたはソルビン酸のような防腐剤、または、アスコルビン酸、トコフェロール、または、システインなどの抗酸化剤、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味料、着香料、または、香料などのその他の成分を含むことができる。 加えて、区別ができるようにするために、染料または顔料を加えることもできる。 錠剤および丸薬は、当該技術分野で周知の適切なコーティング物質を用いて、さらに処理をすることができる。
【0133】
経口投与用の液体剤形を、水のような不活性希釈剤を含むことが可能な薬学的に許容可能な乳液、シロップ、エリキシル剤、懸濁液、スラリー、および、溶液などの形態にすることができる。 薬学的製剤を、滅菌液を用いて、懸濁液または溶液として調製することができ、また、滅菌液としては、油、水、アルコール、および、これらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。 薬学的に好適な界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤なども、経口投与または非経口投与のために加えることができる。
【0134】
さらに具体的には、様々な態様の経口医薬組成物は、一つまたはそれ以上の以下の添加物を含む。
【0135】
いかなる着色剤や着香料についても、利用できる可能性がある。 例えば、タンパク質(または、誘導体)を、(リポソームまたは微小球にカプセル封入するなどして)調製することができ、そして、着色剤および着香料を含む冷蔵飲料のような可食物にさらに含有させることも可能である。
【0136】
不活性物質を用いて、本願発明の化合物の体積を、希釈または増量することも可能である。 これら希釈剤として、糖質、とりわけ、マンニトール、ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、変性デキストラン、および、澱粉などがある。 特定の無機塩も充填剤として使用することができ、例えば、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、および、塩化ナトリウムなどが使用することができる。 市販されている希釈剤として、ファスト-フロ、エムデックス、STA-Rx 1500、エムコンプレス、および、アビセルなどがある。
【0137】
崩壊剤は、治療剤を固形剤形に製剤する際に用いることができる。 崩壊剤として用いた物質は、澱粉を主成分とする市販の崩壊剤、エクスプロタブなどがあるが、これらに限定されない。 デンプングリコール酸ナトリウム、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラアミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジの皮、酸カルボキシメチルセルロース、海綿、および、ベントナイトのすべてを使用することができる。 その他の形態の崩壊剤として、不溶性陽イオン交換樹脂がある。 粉末ゴムは、崩壊剤および結合剤として使用することができ、また、そのような粉末ゴムとして、寒天、カラヤゴム、または、トラガカントゴムなどがある。 アルギン酸とそのナトリウム塩も、崩壊剤として有用である。
【0138】
治療剤成分を保持しつつ硬質の錠剤を形成するために結合剤を利用することが可能であり、そのような結合剤として、アカシア、トラガカント、澱粉、および、ゼラチンなどの天然物に由来する物質がある。 その他に、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、および、カルボキシメチルセルロース(CMC)などがある。 治療剤を顆粒状にするために、ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の双方を、アルコール溶液に調製して利用することができる。
【0139】
製剤過程での粘着性の付与を予防するために、治療剤に抗摩擦剤を含有させることができる。 治療剤とダイ壁との間に層を形成するために、潤滑剤を用いることができ、このような潤滑剤として、ステアリン酸、およびそのマグネシウム塩ならびにそのカルシウム塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油、および、ワックスなどがあるが、これらに限定されない。 ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、カーボワックス4000および6000などの可溶性潤滑剤も使用することができる。
【0140】
製剤過程での薬剤の流動性を改善し、かつ、押圧中の形状変化に対応するために、流動促進剤を加えることもできる。 このような流動促進剤として、澱粉、滑石、焼成シリカ、および、水化ケイ酸アルミニウムなどがある。
【0141】
本願発明の化合物の水環境への溶解を補助するために、界面活性剤を、保湿剤として加えることができる。 そのような界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、および、ジオクチルスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン洗剤がある。 陰イオン洗剤を使用することができ、また、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含むことができる。 界面活性剤として製剤に取り込むことが可能な非イオン洗剤の例として、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアリン酸塩、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65および80, スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、および、カルボキシメチルセルロースなどがある。 これら界面活性剤は、それ単独で、あるいは、それらを異なる比率で含む混合物として、タンパク質または誘導体の製剤に取り込むことができる。
【0142】
本願発明の加工物の取り込みやすさを改善するために、添加物を製剤に加えることも可能である。 この性質を潜在的に具備している添加物として、例えば、オレイン酸、リノール酸、および、リノレン酸などの脂肪酸がある。
【0143】
放出制御製剤が、望ましい。 本願発明の化合物に、分散機構または浸出機構のいずれかによる放出を許容する不活性マトリックス、例えば、ガムを取り込むことができる。 アルギン酸塩や多糖のような緩慢に変性するマトリックスも取り込むことができる。 本願発明の化合物のその他の形態の放出制御として、オロス治療システム(Alza社)に基づいた方法があり、この方法によれば、浸透圧効果を利用して単一の小さな開口部から水が侵入して薬剤の押し出しを許容する半透膜を用いて薬剤が包まれている。 幾つかの腸溶性コーティング剤も、遅延放出効果を奏する。
【0144】
製剤をするために、その他のコーティング剤も使用できる。 これらのコーティング剤として、コーティングフライパンにも使用できる様々な糖類がある。 本願発明の治療剤は、フィルムコート錠として提供することも可能で、このフィルムコート錠に用いられる材料は、二つのグループに分類される。 一方のグループは、腸溶コートされていない物質に関するものであって、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシ-エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、カルボキシ-メチルセルロースナトリウム、プロビドン、および、ポリエチレングリコールなどがある。 他方のグループは、腸溶コートされている物質に関するものであって、フタル酸のエステルなどが一般的である。
【0145】
最適なフィルムコートを得るために、これら物質の混合物を使用することもできる。 フィルムコーティングは、パンコーティング設備もしくは流動床において、または、圧縮コーティングによって実施することができる。
【0146】
B. 肺送達形態
本明細書では、本願発明のタンパク質(または、その誘導体)の肺送達についても意図されている。 本願発明のタンパク質(または、誘導体)を吸い込むことで、それらは哺乳動物の肺にまで送達され、そして、肺上皮層を横断して血流にまで到達する。 この機構を報告しているその他の文献として、Adjei et al., Pharma. Res. (1990) 7: 565-9、Adjei et al. (1990), Internatl. J. Pharmaceutics 63: 135-44 (酢酸ロイプロリド)、Braquet et al. (1989), J. Cardiovasc. Pharmacol. 13 (suppl.5): s.143-146 (エンドセリン-1)、Hubbard et al. (1989), Annals Int. Med. 3: 206-12 (α1-抗トリプシン)、Smith et al. (1989), J. Clin. Invest. 84: 1145-6 (α1-プロテイナーゼ)、Oswein et al. (March 1990), "Aerosolization of Proteins" Proc. Symp. Resp. Drug Delivery II, Keystone, Colorado (組換えヒト成長ホルモン)、Debs et al. (1988), J. Immunol. 140: 3482-8 (インターフェロン-γおよび腫瘍壊死因子α)、および、Platz et al., 米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)などがある。
【0147】
治療剤の肺送達のためにデザインされた多様な医療機器を、本願発明を実施する際に使用することも意図しており、そのような機器としては、噴霧器、定量吸入器、および、粉末吸入器など、いずれも当業者に周知である機器があるが、これらに限定されない。 本願発明を実施する上で好適な市販の機器に関する特定の実施例として、ミズーリー州セントルイスに所在のマリンクロッド社によって製造されたウルトラベント噴霧器、コロラド州エングルウッドに所在のマルケストメディカルプロダクツ社によって製造されたアクロンII噴霧器、ノースカロライナ州リサーチトライアングルパークに所在のグラクソ社によって製造されたベントリン定量吸入器、および、マサチューセッツ州ベッドフォードに所在のファイソンズ社によって製造されたスピンへラー粉末吸入器などがある。
【0148】
これらすべての機器は、本願発明の化合物を投薬する上で好適な製剤の使用を必要としている。 一般的に、各製剤は、使用する機器のタイプに適合しており、そして、治療剤に有用な希釈剤、アジュバント、および/または、担体に加えて、好適な噴射剤を使用することができる。
【0149】
本願発明の化合物を微粒子の形状で調製することが最も好都合であって、また、末梢の肺にまで最も効果的にその微粒子を送達させるために、その平均粒子径は、10μm(または、ミクロン)未満、最も好ましくは、0.5〜5μmとする。
【0150】
肺送達のための薬学的に許容可能な担体として、トレハロース、マンニトール、キシリトール、スクロース、ラクトース、および、ソルビトールなどの糖質がある。 製剤のために用いるその他の成分として、DPPC、DOPE、DSPC、および、DOPCなどがある。 天然界面活性剤および合成界面活性剤を使用することができる。 PEGを使用することができる(タンパク質または類似体を誘導するという用途からかけ離れていても)。 シクロデキストランのようなデキストランを使用することができる。 胆汁塩とその他の関連するエンハンサーを使用することができる。 セルロースおよびセルロース誘導体を使用することができる。 緩衝剤の成分としての用途などにおいて、アミノ酸を使用することができる。
【0151】
リポソーム、マイクロカプセルまたは微小球、包接錯体、または、その他のタイプの担体の使用も意図されている。
【0152】
噴射式または超音波式のいずれかの方式の噴霧器での使用に適した製剤は、一般的に、水に約0.1μlの濃度で溶解した本願発明の化合物を含んでおり、そして、スプレー剤またはエアロゾルとして使用することができ、スプレー剤またはエアロゾルは、適切な溶媒の他に、安定剤、抗菌剤、抗酸化剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ修飾剤、および、これらの組み合わせなどを任意に含むが、これら任意成分に限定されない。
【0153】
エアロゾル製剤のための噴射剤は、圧縮空気、窒素、二酸化炭素、または、炭化水素を主成分とする低沸点溶剤を含むことができる。 本願発明の一つまたはそれ以上の化合物は、噴霧器などからエアロゾル噴霧させる形態で都合良く送達される。
【0154】
D. 非経口投与
一般的に、非経口投与のための注射可能な剤形は、水性懸濁液または油性懸濁液を含んでおり、これらは、好適な分散剤または湿潤剤、および、懸濁化剤を用いて調製することができる。 注射可能な剤形は、溶液相、または、溶液への再調製に適した粉末とすることができる。 これらは、共に、溶媒または希釈剤を用いて調製される。 許容可能な溶媒または賦形剤として、滅菌水、リンガー溶液、または、等張性の水性生理食塩水などがある。 あるいは、滅菌油を、溶媒または懸濁化剤として用いることができる。 通常、油または脂肪酸とは、天然油または合成油、脂肪酸類、モノ-、ジ-、または、トリ-グリセリドなどの非揮発性のものである。 注射用の製剤は、安定剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ修飾剤、および、これらの組み合わせなどを任意に含有することができる。 本願発明の化合物は、ボーラス注射や持続注入などの注射による非経口投与のために製剤をすることができる。 注射用の単位剤形を、アンプルや頻回注射用容器に収容することができる。
【0155】
E. 直腸投与
直腸投与のための薬学的製剤は、腸管、S状結腸、および/または、直腸において化合物を放出する坐薬、軟膏、浣腸、錠剤、または、クリームの形態とすることができる。 直腸用坐薬は、 一つまたはそれ以上の本願発明の化合物、または、薬学的に許容可能なその塩または互変異性体を、許容可能な賦形剤、例えば、室温では固相を呈するが、直腸のような身体内部の放出箇所での温度では液相を示すココアバターやポリエチレングリコールなどと共に混合して調製される。 坐薬の調製を行うにあたって、当業者に周知の様々なその他の薬剤または添加物を用いることができる。
【0156】
F. 薬学的製剤および用量
本願発明の製剤は、後述するように、短時間作用型、急速的放出型、長時間作用型、および、持続的放出型となるようにデザインすることができる。 よって、薬学的製剤も、放出制御型または持続放出型となるように製剤することもできる。 本願発明の組成物は、例えば、ミセルまたはリポソーム、あるいは、その他のカプセル剤を含むことができ、あるいは、長期貯蔵および/または送達効果を得るために徐放性製剤として投与することができる。 したがって、薬学的製剤を、ペレットまたはシリンダー内に押し込むことができ、そして、蓄積注射またはステントのような埋没物として、筋内または皮下に埋め込むことができる。 そのような埋没物として、シリコーンや生分解性ポリマーのような公知の不活性物質を使用することができる。
【0157】
患者の疾患の状態、年齢、体重、通常の健康状態、性別、および、食習慣、投与間隔、投与経路、排泄率、および、薬剤の組み合わせに応じて、特異的用量を調整することができる。 有効量を含む前述してきたいずれの剤形も、十分に日常の実験の範囲内のものであり、また、十分に本願発明の範囲内のものでもある。
【0158】
投与経路と剤形に応じて、治療有効量を変更することができる。 一般的に、本願発明の一つまたはそれ以上の化合物は、高い治療指数を示す製剤を得るために選択される。 この治療指数とは、LD50とED50との間の比率として表される、毒性作用と治療効果との間の用量比である。 LD50とは、集団の50%を致死させる用量であり、また、ED50とは、集団の50%に治療効果をもたらす用量である。 LD50とED50は、動物細胞培養物または実験動物を用いた標準的な薬学的手順によって決定される。
【0159】
LCATが関係した疾患や本明細書に記載のその他の障害を、変性LCATタンパク質および/または組成物を用いて治療するための投薬計画は、患者の疾患の種類、年齢、体重、性別、病態、病状の重篤度、投与経路、それに、使用している化合物の詳細などの様々な要因に基づいている。 よって、投薬計画は、多様に変化はするが、標準的な方法によって日常的に決定することができる。 約0.01mg〜30mg/体重kg/日、例えば、約0.1mg〜10mg/kg、あるいは、約0.25mg〜1mg/kgの数値の用量レベルは、本明細書に記載したすべての使用方法において有用である。 一般的に、日々の投薬計画は、体重kgあたり0.1〜1,000μgの化合物、好ましくは、0.1〜150μg/kgの範囲で設定すべきである。
【0160】
1. 経口投薬量
経口投与のための医薬組成物は、例えば、カプセル、錠剤、懸濁液、または、液状の形態とすることができる。 この医薬組成物は、所定量の活性成分を含んだ単位用量ごとに調製することができる。 例えば、これら医薬組成物は、 約1〜2,000mg、例えば、約1〜500mg、または、約5〜150mg、または、10〜100mgの量の活性成分を含むことができる。 ヒトまたはその他の哺乳動物に対して好適な日々の用量は、患者の病態やその他の要因に基づいて多様に変化するが、改めて言うこととなるが、それら用量は、標準的な方法によって日常的に決定することができる。
【0161】
2. 注射投薬量
活性成分は、生理食塩水、デキストロース、または、水を含んだ好適な担体を含む組成物として、注射によって投与することもできる。 日々の非経口投薬計画は、約0.1〜約30mg/全体重kg、例えば、約0.1〜約10mg/kg、または、約0.25mg〜1mg/kgで行われることとなる。
【0162】
3. 局所投薬量
局所投与に適した製剤として、皮膚への浸透に適した液剤または半液体調製物(例えば、リニメント剤、ローション、軟膏、クリーム、または、ペースト)、それに、眼、耳、または、鼻への投与に適した点滴剤などがある。
【0163】
本願発明の化合物の活性成分の好適な局所投薬量は、0.1mg〜150mgを、毎日、1〜4回、例えば、1回または2回で投与される量とする。 局所投与のための活性成分は、製剤の0.001%〜10% w/w、例えば、1重量%〜2重量%の量で含まれており、それは、10% w/wと同程度の量まで含むことができるが、通常は、5% w/wを超えることはあまりない。 ある実施態様によれば、その濃度は、製剤の0.1%〜1%となっている。
【0164】
G. 投薬計画
本願発明の組成物の投与は、全身的または局所的のいずれの方式でも可能であり、そして、治療有効量の変性LCATタンパク質組成物を、単一部位に注射または注入することを含む。 本願発明の治療用組成物の投与経路として、当業者に周知のすべての経路を意図しており、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、または、長期投与のためのカテーテル投与などがある。 あるいは、本願発明の治療用組成物は、複数の部位から患者に送達することもできる。 複数回投与として、同時に複数回の投与をしてもよく、あるいは、所定の期間にわたって複数回の投与をすることもできる。 事例によっては、治療用化合物の連続投与が有効な場合もある。 その他の治療薬を、期間単位、例えば、日単位、週単位、または、月単位で投与することができる。 ある実施態様によれば、本願発明の変性LCATポリペプチドは、再灌流の部位に対して局所的に投与される。
【0165】
V. 治療方法
A. アテローム性動脈硬化症、心臓血管疾患、または、関連する疾患
ある実施態様によれば、本願発明の方法は治療法であり、また、本願発明の化合物および組成物は、アテローム性動脈硬化症、心臓血管疾患、または、関連する疾患をすでに患っている被験者に対して投与される。 本願発明の他の実施態様によれば、本願発明の方法は予防法であり、また、本願発明の化合物および組成物は、アテローム性動脈硬化症にまで進行する危険度の高い被験者に対して投与される。 例えば、被験者がアテローム性動脈硬化症を発症する可能性を決定するために、粥腫誘発性リポタンパク質データを評価することができる。 例えば、血清コレステロール:HDLの比率が、5:1またはそれ以上の場合には、アテローム性動脈硬化症を発症する可能性が、平均値よりも高いと言える。 その他の判断要素として、240mg/dLまたはそれ以上の血清コレステロールレベル、35mg/dLまたはそれ以下のHDLレベル、もしくは、190mg/dLまたはそれ以上のLDLレベル、標準値(<5μg/ml)よりも低い血漿LCATタンパク質レベル、および、減少した血漿コレステロールエステル化率(<60nmol/ml/時間)などがある。
【0166】
コレステロールの蓄積を効果的に抑制する変性LCATタンパク質の量は、人種、投与方法、被験者の健康状態、所望の結果(例えば、予防的処置または治療的処置)、および、処方医師の判断などの幾つかの要素に応じて変化する。 例えば、医師であれば、心臓疾患の危険度レベルに応じた予防的処置や、すでにアテローム性動脈硬化症を患った患者の治療にあたって必要とされる変性LCATタンパク質の標的レベルを決定することが可能である。
【0167】
ヒトの場合、正常なコレステロールエステル化率は、約60nmol/ml/時間〜約130nmol/mL/時間の範囲である。 ヒトのアテローム性動脈硬化症の効果的治療法は、約200nmol/mL/時間のコレステロールエステル化率を達成するために、本願発明の組成物の投与を利用することができる。
【0168】
本願発明は、心臓血管疾患の治療、予防、または、管理のための方法を提供する。 本明細書で使用する「心臓血管疾患」の用語は、心臓および循環系の疾患を指す。 予防または治療を行う上で本願発明の組成物が有効な心臓血管疾患として、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、虚血、内皮機能不全、とりわけ、血管の弾力性に影響を与える機能不全、末梢血管障害、冠動脈性心疾患、心筋梗塞、脳梗塞および再狭窄、血栓症、高血圧、および、狭心症などがあるが、これらに限定されない。 ある実施態様によれば、本願発明は、慢性治療の目的で、本願発明の化合物および組成物を投与する方法も包含している。 その他の実施態様によれば、本願発明は、急性治療も意図している。
【0169】
予防または治療のために本願発明の組成物を有効に利用できるその他疾患として、LCAT不全症候群、アルツハイマー病、角膜混濁、メタボリック症候群、脂質異常症、心筋梗塞、脳卒中、重症下肢虚血がある。
【0170】
B. 炎症性病態
本願発明の方法、化合物、および、組成物は、炎症細胞の活性化を抑制する上で有用である。 本明細書で使用する「炎症細胞の活性化」という用語は、増殖細胞応答の刺激(サイトカイン、抗原、または、自己抗体などがあるが、これらに限定されない)による誘発、可溶性メディエーター(サイトカイン、酸素ラジカル、酵素、プロスタノイド、または、血管作用性アミンなどがあるが、これらに限定されない)の生成、または、炎症細胞(単球、マクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球、顆粒球、多形核白血球、肥満細胞、好塩基球、好酸球、樹状細胞、および、内皮細胞などがあるが、これらに限定されない)での新規または増加したメディエーター(主要組織適合抗原、または、細胞接着分子などがあるが、これらに限定されない)の細胞表面発現のことをを指す。 当業者であれば、これら細胞での表現型の一つまたは組み合わせを活性化することで、炎症病態の開始、永続化、または、悪化に関与できることは理解に及ぶところであろう。
【0171】
本願発明の方法、化合物、および、組成物は、関節炎疾患(関節リウマチなど)、変形性関節炎、痛風性関節炎、脊椎炎、甲状腺関連眼症、ベーチェット病、敗血症、敗血症性ショック、内毒素性ショック、グラム陰性菌敗血症、グラム陽性菌敗血症、毒素性ショック症候群、喘息、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、春季カタル、好酸球性肉芽腫、成人(急性)呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性肺炎症性疾患(慢性閉塞性肺疾患など)、珪肺症、肺サルコイドーシス、心筋、脳または四肢の再灌流傷害、軽度の外傷に起因する脳または脊髄の損傷、嚢胞性線維症などの線維症、ケロイド形成、瘢痕組織形成、アテローム性動脈硬化症、全身性紅斑性狼瘡(SLE)および移植片拒絶反応障害(例えば、移植片対宿主(GvH)反応および同種移植拒絶反応)などの自己免疫疾患、慢性糸球体腎炎、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、白血病(例えば、慢性リンパ球性白血病;CLL)(Munoz et al., J. Exp. Med. 172:95-103 (1990); Mentz et al., Blood 88:2172-2182 (1996)を参照されたい)などの増殖性リンパ球性疾患、および、アトピー性皮膚炎、乾癬、または、蕁麻疹などの炎症性皮膚病などの疾患を治療する上で有用である。
【0172】
C. 血栓症関連病態
本願発明の化合物、組成物、および、方法を、血栓症とそれに起因する血流の低下または欠乏の予防または治療を必要とする様々な障害の治療において用いることも意図されている。 血栓性障害の例として、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中、および、腎虚血、それに、哺乳動物の体内において認められる血栓症などがあるが、これらに限定されない。 本願発明の組成物は、微小血栓の形成、または、血小板へのフォン ヴィレブランド因子(VWF)の結合に起因する、血小板の過剰消費、および/または、VWFに起因する出血性要素をもたらす細小血管障害の予防および治療においても利用される。 後者の障害の例として、血小板減少性紫斑病、II型および血小板型フォン ヴィレブランド疾患(VWD)などがあるが、これらに限定されない。 本願発明の化合物または併用治療法は、VWF依存的血小板粘着や凝集を阻害する。 本願発明の化合物、組成物、および、方法は、哺乳類の出血時間を持続させる上でも有用であるので、これらは、治療法および予防法における抗血栓薬としても有用である。 したがって、本願発明の化合物、組成物、および、方法は、抗凝固剤、および/または、抗血小板薬として有用である。 さらに、本願発明は、血流を円滑にすること、または、血管の閉塞を緩和することを必要とする心臓血管循環系での血栓症およびその他の障害を治療するための化合物、組成物、および、方法を提供する。
【0173】
本願発明の化合物、組成物、および、方法は、抗凝固剤を用いて治療を受けている最中のいかなる障害の治療においても有用である。 このような障害として、動脈手術および心臓手術での血栓形成を予防し、また、末梢動脈塞栓症の予防および治療のために、肺塞栓症、不安定狭心症、心筋梗塞、深部静脈血栓症、塞栓を伴う心房細動、そして、急性および慢性凝血障害(播種性血管内凝固症候群)などがある。 本願発明の化合物、組成物、および、方法は、血栓性血小板減少性紫斑病、VWFと血小板との間の自発的相互作用が介在したその他のタイプの細小血管障害、それに、(GPIbまたはVWFのいずれかでの欠損に起因する)VWFと血小板との間の結合が増大している血小板型またはIIb型フォン ヴィレブランド疾患を治療するためにも用いられる。 本明細書に記載の化合物、組成物、および、方法は、輸血、体外循環、透析での抗血小板薬として、それに、検査のための採血においても有用である。 本願発明の化合物、組成物、および、方法は、間欠注射、または、注入療法、または、採血のために用いられる留置静脈穿刺機器の開存性を維持するためにも用いられる。 本願発明の化合物、組成物、および、方法は、血栓の形成を予防するための外科手術において、特に有用である。 このようなことは、血栓合併症の危険度を低減するための腹部手術を受けた患者、膝または腰の置換治療を受けている患者またはその治療を終えた患者、それに、後期での血栓形成の一般的な予防において、特に所望されている事項である。 さらに、本願発明の化合物、組成物、および、方法は、例えば、急性疾患のために運動を厳しく制限されている患者など、血栓合併症の危険性のある患者の治療において有用である。 このような障害は、本明細書に記載の組成物によって容易に治療を行うことができる。 治療方法には、内科治療、および/または、必要に応じた予防的投与の双方が含まれている。
【0174】
本明細書で使用する「血小板凝集を阻害する」という表現は、血小板凝集を妨げること、遅らせることの意味の他に、血小板凝集の重症度または程度を緩和するという意味を含めて、一般的に許容可能な意味で用いられている。 そのような阻害性は、所定の試料が呈する凝集性についての時間の関数を用いて、測定を行うことができる。 その他の実施態様によれば、血栓症の動物モデルが利用されている。 薬剤の効果を決定するための方法として、凝固検査、出血時間のモニタリング、動物のヘモグロビンレベルの決定などがある。
【0175】
VI. 併用療法
本願発明は、本願発明の化合物および/または組成物を、一つまたはそれ以上の別個の薬剤と共に投与する併用療法をさらに提供する。 一般的に、本願発明の治療方法、組成物、および、化合物は、様々な疾患状態の治療において、本願発明の組成物と同時または順次に投与される別個の薬剤を用いる他の治療方法と組み合わせて利用することも可能である。
【0176】
A. サイトカイン
そのような同時投与のためのサイトカインまたは造血因子の例として、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-11、コロニー刺激因子-1(CSF-1)、M-CSF、SCF、GM-CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、EPO、インターフェロン-α(IFN-α)、コンセンサスインターフェロン、IFN-β、IFN-γ、IFN-ω、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-31、IL-32α、IL-33、トロンボポエチン(TPO)、アンジオポイエチン、例えば、Ang-1、Ang-2、Ang-4、Ang-Y、ヒトアンジオポイエチン様ポリペプチド ANGPTL1-7、ビトロネクチン、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンギオジェニン、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、骨形態形成タンパク質-1、骨形態形成タンパク質-2、骨形態形成タンパク質-3、骨形態形成タンパク質-4、骨形態形成タンパク質-5、骨形態形成タンパク質-6、骨形態形成タンパク質-7,骨形態形成タンパク質-8、骨形態形成タンパク質-9、骨形態形成タンパク質-10、骨形態形成タンパク質-11、骨形態形成タンパク質-12、骨形態形成タンパク質-13、骨形態形成タンパク質-14、骨形態形成タンパク質-15、骨形態形成タンパク質受容体IA、骨形態形成タンパク質受容体IB、骨形態形成タンパク質受容体II、脳由来神経栄養因子、 カーディオトロフィン-1、繊毛神経栄養因子、繊毛神経栄養因子受容体、クリプト菌、クリプティック、サイトカイン誘発性好中球走化因子1、サイトカイン誘発性好中球、化学走化性因子2α、サイトカイン誘発性好中球走化因子2β、β内皮細胞成長因子、エンドセリン1、上皮細胞増殖因子、エピジェン、エピレギュリン、上皮由来好中球誘引物質、線維芽細胞増殖因子4、線維芽細胞増殖因子5、線維芽細胞増殖因子6、線維芽細胞増殖因子7、線維芽細胞増殖因子8、線維芽細胞増殖因子8b、線維芽細胞増殖因子8c、線維芽細胞増殖因子9、線維芽細胞増殖因子10、線維芽細胞増殖因子11、線維芽細胞増殖因子12、線維芽細胞増殖因子13、線維芽細胞増殖因子16、線維芽細胞増殖因子17、線維芽細胞増殖因子19、線維芽細胞増殖因子20、線維芽細胞増殖因子21、酸性線維芽細胞増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、グリア細胞系由来神経栄養因子受容体α1、グリア細胞系由来神経栄養因子受容体α2、成長関連タンパク質、成長関連タンパク質α、成長関連タンパク質β、成長関連タンパク質γ、ヘパリン結合性上皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、肝癌由来成長因子、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子受容体、インスリン様成長因子II、インスリン様成長因子結合タンパク質、ケラチノサイト成長因子、白血病抑制因子、白血病抑制因子受容体α、神経成長因子、神経成長因子受容体、ニューロポイエチン、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、オンコスタチンM(OSM)、胎盤成長因子、胎盤成長因子2、胎盤由来内皮細胞成長因子、胎盤由来成長因子、血小板由来増殖因子A鎖、血小板由来増殖因子AA、血小板由来増殖因子AB、血小板由来増殖因子B鎖、血小板由来増殖因子BB、血小板由来増殖因子受容体α、血小板由来増殖因子受容体β、プレB細胞成長刺激因子、幹細胞因子(SCF)、幹細胞因子受容体、TNF0、TNF1、TNF2などのTNF、形質転換成長因子α、形質転換成長因子β、形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β1.2、形質転換成長因子β2、形質転換成長因子β3、形質転換成長因子β5、潜在性形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β結合タンパク質I、形質転換成長因子β結合タンパク質II、形質転換成長因子β結合タンパク質III、胸腺間質リンパポイエチン(TSLP)、I型腫瘍壊死因子受容体、II型腫瘍壊死因子受容体、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター受容体、血管内皮増殖因子、および、キメラタンパク質、および、生物学的または免疫学的に活性なこれらの断片などがある。
【0177】
B. アテローム性動脈硬化症薬
アテローム性動脈硬化症の治療および予防、または、コレステロールの管理、あるいは、心臓血管疾患などのその他の障害の治療および予防のために、その他の活性成分は、変性LCATタンパク質に対して相補的または相乗的な役割を果たすことができる。
【0178】
ある実施態様によれば、本願発明の化合物は、スタチンと共に使用することができる。
【0179】
スタチンとは、コレステロール生合成での初期の律速段階を触媒する酵素である3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素(HMG-CoA還元酵素)を拮抗的に阻害する薬剤である。 Hebert et al., JAMA 1997, 278: 313-21. HDLレベルを向上し、かつ、LDLレベルを抑制することに加えて、この組み合わせは、トリグリセリドも減少させ、そして、炎症を抑える。 この組み合わせは、例えば、脳卒中および末梢動脈疾患(下肢の動脈閉塞)を抑えるために、平滑筋の増殖、心臓発作、血小板凝集などを抑制することで、例えば、血圧を抑え、そして、心臓疾患を防ぐという、新たな治療効果を獲得することができるものと考えられている。
【0180】
本願発明のスタチンの例として、メバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、ペントスタチン(ニペント登録商標)、ナイスタチン、ロバスタチン(メバコール登録商標)、シムバスタチン(ゾコール登録商標)、プラバスタチン(プラバコール登録商標)、フルバスタチン(レスコール登録商標)、アトルバスタチン(リピトール登録商標)、セリバスタチン(バイコール登録商標)、または、これらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。 本願発明の組成物および方法での使用に好適なスタチンは、米国特許第4,681,893号、第5,273,995号、第5,356,896号、第5,354,772号、第5,686,104号、第5,969,156号、および、第6,126,971号にも記載されている。 ある種のスタチン(例えば、シムバスタチン)は、ラクトンのような不活性型で存在する場合があるので、本願発明は、それらの活性型(例えば、b-ヒドロキシ酸型)を用いる事例をも包含している。 医師用卓上参考書、54.sup.th Ed. (2000) pp.1917-1920を参照されたい。
【0181】
フィブラートまたはフィブリン酸誘導体は、広域スペクトル脂質調節剤と見なされており、その主たる作用は、血清トリグリセリドの抑制作用にあるが、その他にも、LDLコレステロールを減少せしめ、かつ、HDLコレステロールを増加せしめる作用を示す傾向もある。 本願発明の化合物とフィブラートとを併用することで、体内を循環しているトリグリセリドが豊富なリポタンパク質の化学分解(すなわち、異化作用)を促すことによって、HDLコレステロールの少ない、または、トリグリセリドの多い患者での冠動脈性心疾患の危険度を抑えることができる、と考えられている。
【0182】
フィブラートとして、ベザフィブラート、シプロフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、または、これらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。 本願発明の組成物、または、本願発明の方法での投与に適したフィブラートは、米国特許第4,895,762号、第6,074,670号、および、第6,277,405号に開示されている。
【0183】
本願発明の組成物および方法で利用するビグアニドとして、メトホルミン、フェンホルミン、ブホルミン、または、これらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。
【0184】
本願発明の組成物または方法での利用に適したビグアニドは、米国特許第6,303,146号にも記載されている。 本願発明の化合物とビグアニドとの併用は、肝臓および筋肉でのインスリン感受性が高め、それにより、血糖管理を改善することができる。 この組み合わせは、脂質異常症、1型プラスミノーゲン活性化因子阻害剤の濃度増加、その他の線溶異常、高インスリン血症、インスリン抵抗性などの心臓血管の危険因子を減退または排除することができ、また、2型糖尿病の治療のための有効かつ安全な治療剤でもある。
【0185】
その他の実施態様によれば、本願発明の化合物は、筋肉内でのグルコースを増大し、そして、内因性のグルコース生産を抑制することができるグリタゾンと組み合わせて使用することができる。 グリタゾンとしては、5-((4-(2-(メチル-2-ピリジニルアミノ)エトキシ)-フェニル)メチル)-2,4-チアゾリジンジオン、トログリタゾン、ピオグリタゾン、シグリタゾン、WAY-120,744、エングリタゾン、AD 5075、ダルグリタゾン、ロシグリタゾン、これらの組み合わせ、または、これらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、包接体、多形体、プロドラッグ、または、これらの薬理学的に活性な代謝物などがある。
【0186】
本願発明の組成物、または、方法での使用に適したグリタゾンは、米国特許第4,687,777号、第5,002,953号、第5,741,803号、第5,965,584号、第6,150,383号、第6,150,384号、第6,166,042号、第6,166,043号、第6,172,090号、第6,211,205号、第6,271,243号、第6,288,095号、第6,303,640号、および、第6,329,404号に開示されている。
【0187】
本願発明の変性LCATタンパク質と、スルホニル尿素またはその誘導体とを含む組成物は、膵臓からのインスリン放出を増大させ、そして、ホルモンの肝クリアランスを減少させることで、インスリンレベルも増大させる。 本願発明の組成物および方法において使用されるスルホニル尿素を主成分とする薬剤としては、グリソキセピド、グリブリド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリボルヌリド、トルブタミド、トラザミド、グリピジド、グリクラジド、グリキドン、グリヘキサミド、フェンブタミド、トルシクラミド、これらの組み合わせ、または、これらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、または、包接体などがあるが、これらに限定されない。
【0188】
併用組成物は、CETPを阻害する薬剤を含むことができる。 このような薬剤として、例えば、トルセトラピブや、S-(2[([1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル)アミノ]フェニル)2-メチルプロパンチオラートなどがある。
【0189】
さらに別の活性成分を、心臓血管薬に含有させることができる。 心臓血管疾患を予防または治療するための本願発明の化合物と組み合わせて用いられる心臓血管薬として、末梢抗アドレナリン作動薬、中枢作用性降圧薬(例えば、メチルドーパ、メチルドーパ塩酸)、降圧作用直接血管拡張薬(例えば、ジアゾキシド、ヒドララジン塩酸)、レニン アンギオテンシン系に影響を及ぼす薬剤、末梢血管拡張薬、フェントラミン、抗狭心症薬、強心配糖体、強心性血管拡張薬(例えば、アムリノン、ミルリノン、エノキシモン、フェノキシモン、イマゾダン、スルマゾール)、抗不整脈薬、カルシウム流入阻害薬、ラニチン、および、レズリンなどがある。
【0190】
治療を考えている障害に応じて、本願発明の化合物および組成物は、特定の生物学的効果をもたらすその他の治療法を採用した併用療法において利用される。
【0191】
1. コレステロール降下剤
様々な薬剤で、血中コレステロールレベルを下げることができる。 それら薬剤は、個々に処方することもできるし、あるいは、その他の薬剤との組み合わせで処方することもできる。 一般的なタイプのコレステロール降下剤として、スタチン、レジン、および、ニコチン酸(ナイアシン)、ゲムフィブロジル、それに、クロフィブラートなどがある。 したがって、例えば、クロフィブラート(アトロミド-S、HDLコレステロールレベルを増大させ、そして、トリグリセリドレベルを減少させる薬剤)、ゲムフィブロジル(ロピッド、HDLコレステロールレベルを増大させる薬剤)、ニコチン酸(血中脂質の生成に影響を及ぼすべく肝臓において機能しており、そして、トリグリセリドとLDLコレステロールを減少させ、かつ、HDL(「善玉」)コレステロールを増やすために用いられている)、コレスチラミン(クエストラン、プレバライト、ロコレスト)、コレスチポール(コレスチド)、および、コレセベラム(ウェルコール)などのレジン(胆汁酸結合薬とも称されており、コレステロールの処理を促すべく腸において機能している)、および、アトルバスタチン (リピトール)、フルバスタチン(レスコール)、ロバスタチン(メバコール)、プラバスタチン(プラバコール)、ロスバスタチンカルシウム(クレストール)、および、シムバスタチン(ゾコール)などのスタチン、を用いた併用療法も意図している。
【0192】
増大したLDLコレステロールに対する薬剤の第一選択肢は、HMG CoA還元酵素阻害剤、例えば、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、および、シムバスタチンなどである。 スタチン薬は、LDLコレステロールレベルを効果的に下げることができ、即時短期的な副作用がほとんど無く、投与が容易であり、患者の承諾が得られやすく、そして、薬物相互作用もほとんど示さない。
【0193】
LDLを下げるためのその他のクラスの薬として、比較臨床試験において冠動脈性心疾患の危険度を下げることが認められている胆汁酸抑制薬、コレセベラム、コレスチラミンおよびコレスチポール、それに、ニコチン酸(ナイアシン)などがある。 いずれのクラスの薬剤も、重大な副作用は示さない。 しかしながら、いずれの薬剤においても、厄介な副作用を招く可能性があるので、治療を厳格に続けるためには、患者に対して十分な教育を施す必要がある。 胆汁酸抑制薬には、トリグリセリドレベルを上げる傾向が認められるので、トリグリセリドレベルが250mg/dLを超える患者に対して、ニコチン酸を用いることはできる。
【0194】
2. ACE阻害剤
アンジオテンシンIIは、血管を収縮し、それにより、血管の狭窄を招く。 血管が狭くなると、血管内の圧力が増大し、それにより、高血圧症(高血圧)を招く。 アンジオテンシンIIは、血液中で、酵素、すなわち、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の作用によって、アンジオテンシンIから形成される。 ACE阻害剤は、アンジオテンシンIIの生成を抑制する。 その結果、血管が、拡大または拡張し、そして、血圧が下がる。 米国で入手可能なACE阻害剤として、カプトプリル(カポテン)、ベナゼプリル(ロテンシン)、エナラプリル(バソテック)、リシノプリル(プリニビル、ゼストリル)、フォシノプリル(モノプリル)、ラミプリル(アルテース)、ペリンドプリル(アセオン)、ナプリル(アキュプリル)、モエキシプリル(ユニバスク)、および、トランドラプリル(マビック)などがある。
【0195】
C. 抗炎症薬
炎症の予防および治療において、例えば、アセチルサリチル酸(アスピリン、エコトリン)、サルチル酸コリンマグネシウム(トリリサート)、ジクロフェナク(ボルタレン、カタフラム、ボルタレン-XR)、ジフルニサル(ドロビッド)、エトドラク(ロディン)、フェノプロフェン(ナルフォン)、フルルビプロフェン(アンサイド)、イブプロフェン(アドビル、モートリン、メディプレン、ニュープリン)、インドメタシン(インドシン、インドシン-SR)、ケトプロフェン(オルディス、オルバイル)、メクロフェナメイト(メクロメン)、ナブメトン(レラフェン)、ナプロキセン(ナプロシン、ナプレラン、アナプロックス、アリーブ)、オキサプロジン(デイプロ)、フェニルブタゾン(ブタゾリディン)、ピロキシカム(フェルデン)、サルサラート(ジサルシド、サルフレックス)、トルメチン(トレクチン)、バルデコキシブ(ベクストラ)、および、ベクストラ、セレブレックス、ナプロキセン、および、バイオックスなどのCOX-2選択的非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を用いた併用療法が意図されている。 処方箋が必要なNSAIDとして、イブプロフェン(ブルフェン)、アセクロフェナク(プリサーベックス)、アセメタシン(エムフレックス)、アザプロパゾン(リューモックス)、セレコキシブ(セレブレックス)、デクスケトプロフェン(ケラル)、ジクロフェナク(ボルタロール、ジクロマックス、アルスロテック)、ジフルニサル(ドロビッド)、エトドラク(ロディン)、フェンブフェン(レデルフェン)、フェノプロフェン(フェノプロフェン)、フルルビプロフェン(フロベン)、インドメタシン、ケトプロフェン(オルディス、オルバイル)、メフェナム酸、メロキシカム(モービック)、ナブメトン(レリフェックス)、ナプロキセン(ナプロシン、シンフレックス)、フェニルブタゾン(ブタコート)、ピロキシカム(フェルデン)、スリンダク(クリノリル)、テノキシカム(モビフレックス)、および、チアプロフェン酸(スルガム)などがある。
【0196】
D. 抗血栓症薬
血栓症関連疾患の予防および治療において、例えば、血液から血栓の形成や凝血を阻害する性質を示す抗凝固剤としての抗血栓症薬を用いた併用療法も意図しており、そのような抗血栓症薬としては、ダルテパリン(フラグミン)、ダナパロイド(オルガラン)、エノキサパリン(ラブノックス)、ヘパリン(多数)、チンザパリン(インノヘプ)、ワルファリン(クマジン)、および、レピルジン(レフルダン)、それに、アスピリン、チクロピジン(チクリッド)、クロピドグレル(プラビックス)、チロフィバン(アグラスタット)、および、エプチフィバチド(インテグリリン) などの抗血小板薬などがある。 さらにその他の方法では、ビバリルジン(選択的および可逆的トロンビン阻害剤)、アルガトロバン(トロンビンの可逆的阻害剤)、それに、エノキサパリン(ラブノックス)、ダルテパリン(フラグミン)、アルデパリン(ノルミフロ)、フォンダパリナックス、および、インダパリナックスなどの低分子量ヘパリン(LMWH)などを使用している。 本願発明の方法での使用を意図しているさらにその他の抗血栓症薬として、フラグミン(ダルテパリンナトリウム注射液)、ラブノックス(エノキサパリンナトリウム)、ノルミフロ(アルデパリンナトリウム)、オルガラン(ダナパロイドナトリウム)、そして、フォンダパリナックス(アリクストラ登録商標)、および、インダパリナックスなどの間接(抗トロンビン依存性)Fxa阻害剤、それに、BAY 59-7939[バイエル]、DPC-423[ブリストル・マイヤーズ スクイブ]、DX-9065a[第一]、LY517717、ラザキサバン(DPC906)、レピルジン(レフルダン登録商標)、デシルジン(レバサク登録商標)、ビバリルジン(ヒルログ登録商標、アンジオマックス登録商標)、アルガトロバン(ノバスタン登録商標)、メラガトラン、および、キシメラガトラン(エグザンタ登録商標)などの直接(抗トロンビン依存性)Fxa阻害剤などがある。
【0197】
本願発明の組成物によって治療される障害が、血小板の凝集を阻害するための治療的介入を必要とするという事実によってのみ限定されるということについては、理解されるべきである。 薬剤の用量は、個々の被験者に応じて変更をすることができる。 当該技術分野における投与経路とその利用に関する特定の指導事項は、製剤、投与経路、そして、グラスタット商標(例えば、pp.1933-1937の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、アグレノックス商標(例えば、pp.1023-1026の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、アグリリン商標(例えば、pp.3142-3143の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、フローラン商標(例えば、pp.1516-1521の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、インテグリリン商標(例えば、pp.2138-2142の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、ペルサンチン商標(例えば、pp.1052-2053の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、プラビックス商標(例えば、pp.1098-1101の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、プレタール商標(例えば、pp.2780-2782の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、レオプロ商標(例えば、pp.1866-1870の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、クマジン商標(例えば、pp.1074-1079の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、フラグミン商標(例えば、pp.2750-2754の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、ヘプロック商標(例えば、pp.1284-1288の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、ラブノックス商標(例えば、pp.739-744の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)、ミラドン商標(例えば、pp.3051-3052の収録事項、PDR、57th Edn., 2003を参照されたい)などの薬剤を利用した患者のモニタリングに関する一般的手順を著した医師用卓上参考書(PDR)において言及がされている。 PDRでのこれら収録事項は、抗凝固剤および抗血小板薬として組成物を製剤および使用する技術に関する当該技術分野における技術レベルを示すものである。
【0198】
E. 抗糖尿病薬
血中グルコースレベルを低下する抗糖尿病薬を用いた併用療法も意図されている。 インスリン、エクセナチド、および、プラムリンチドを除いて、抗糖尿病薬は、経口投与されるので、これらは、経口血糖降下薬、または、経口高血糖治療薬とも呼ばれている。 抗糖尿病薬は、インスリン、スルフォニル尿素、α-グルコシダーゼ阻害剤、ビグアニド、メグリチニド、および、チアゾリジンジオンの六つのグループに分類される。
【0199】
インスリン(ヒューマリン、ノボリン)は、血中グルコースレベルを調節する。 形態としては、イソフェンインスリン懸濁液、インスリン亜鉛懸濁液、および、インスリン作用期間を延ばすその他の製剤などがある。 吸入用インスリンの使用も意図している。
【0200】
スルホニル尿素は、膵臓のβ細胞からのインスリン放出を促すものであって、クロルプロパミド[ジアビナーゼ]、トラザミド[トリナーゼ]、グリピジド[グルコトロール]、グリメピリド(アマリール)、トルブタミド(オリナーゼ)、アセトヘキサミド(ジメロール)、グリブリド(ジアベータ、ミクロナーゼ、グリナーゼ)、および、グリクラジド(ジアミクロン)などがある。
【0201】
α-グルコシダーゼ阻害剤は、二糖および複合糖質が、グルコースへ変換することを阻害するものであって、スルホニル尿素、または、その他の血糖降下薬を利用する併用療法において用いられている。 このタイプの抗糖尿病薬として、アカルボース[プレコース]やミグリトール[グリセット]などがある。
【0202】
上記したビグアニドのクラスに属する化合物は、肝糖産生を抑制し、グルコースの腸内吸収を抑制し、そして、末梢でのグルコースの取り込みと利用を促す。
【0203】
メグリチニドのクラスに属する化合物は、インスリン産生を刺激し、そして、メトホルミンと組み合わせて使用することができる。 このクラスに属する化合物として、レパグリニド(プランジン)やナテグティニド(スターリックス)などがある。
【0204】
チアゾリジンジオン剤は、肝臓でのグルコース生産を抑制し、その一方で、筋肉細胞でのインシュリン依存的なグルコースの取り込みを増大させる。 これら薬剤は、メトホルミン、または、スルホニル尿素との組み合わせで使用することもでき、また、ロシグリタゾン(Avandia)やピオグリタゾン(Actos)を含めることもできる。
【0205】
抗糖尿病ペプチド類似体を用いた組み合わせ療法も利用する。 そのような類似体として、インシュリン分泌促進剤であるインクレチンがあり、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)および胃抑制ペプチド(グルコース依存性インスリン分泌促進ペプチドまたはGIPとしても知られている)などがこれに該当する。 GLP-1およびGIPの双方が、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)によって不活性化される。 その他のペプチドとして、GLPアゴニストであり、DPP-4の分解作用に対しても大きな抵抗性を示すエクセナチド(エキセンジン-4とも呼ばれており、バイエッタの名前で販売されている)、ビルダグリプチンやシタグリプチンなど、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)による自身の分解を阻害することで、GLP-1の血中濃度を維持するジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤、それに、プラムリンチドなど、胃内容排出を遅延させ、グルカゴンを抑制するアミリンアゴニスト類似体などがある。
【0206】
特定の課題または状況に対して本願発明の教示を適用することは、本明細書での教示を考慮すれば、当業者にとって実施可能な事項であることにまで理解は及ぶであろう。 本願発明の生成物の実施例、それに、その単離、使用、および、製造のための代表的なプロセスを以下に示す。
【実施例】
【0207】
実施例1
変性LCATタンパク質の調製
野生型ヒトLCATタンパク質(配列番号:1)をコードするポリヌクレオチドを、ヒト肝臓cDNAライブラリーからクローニングした。 当該技術分野で周知であり、かつ、日常的に利用されているクイックチェンジ部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を用いて、野生型ヒトLCATタンパク質をコードするDNAに突然変異を起こさせた。
【0208】
要するに、所望の変異を有するプライマー対を、新たに合成したDNA分子に組み込んだ。 この新たに合成したLCATをコードする配列に、コードしたタンパク質のC末端にヒトFc断片をコードするポリヌクレオチドを付けた。 DpnIエンドヌクレアーゼを用いて、親のテンプレートをデザインした。 所望の変異を有する切れ目が入ったベクターDNAで、XL1-Blue大腸菌を形質転換した。 変異LCATをコードするプラスミドを、形質転換した大腸菌から回収した。 プラスミドでの変異の存在は、DNA配列分析によって確認し、そして、DHFRを利用したベクターセットと既知組成培地を用いて、タンパク質を発現するために、変異LCAT-Fc構築物をCHO細胞にトランスフェクションした。 組換えヒトLCAT-Fc(rhLCAT-Fc)融合変異タンパク質(すなわち、変性LCATタンパク質)を、トランスフェクションしたCHO細胞の培養培地から単離した。 rhLCAT-Fcが分泌された培地を入れた震盪フラスコまたはバイオリアクター容器のいずれかにおいて、産物(すなわち、発酵産物)は、トランスフェクションしたCHO細胞の成長に関与していた。
【0209】
Fc-融合変性ヒトLCATタンパク質の精製を、次のようにして行った。 通常は、タンパク質の生成から4〜6日後に培養物の回収を行い、そして、遠心分離、あるいは、震盪フラスコまたはバイオリアクター容器の各々に対する中空糸濾過を介して、細胞から粗上清を単離した。 そして、粗混合物を、そのまま直接に、あるいは、10倍〜20倍に濃縮し、そして、20mM リン酸ナトリウム、pH 7.2、300mM NaCl、0.05% アジドでもって緩衝液交換を行ってから、モノクローナル抗体選択シュア樹脂(GE Biosciences)に対して適用した。 次いで、この樹脂を、同じ高塩濃度リン酸緩衝液で、5回〜10回の洗浄を行い、そして、結合したタンパク質を、300mM クエン酸塩、pH 3.4で溶出した。 溶出した画分を、1M Tris緩衝液、pH 8.0で中和した。 90%全長タンパク質よりもタンパク質Aアフィニティー精製物質を豊富にするために、高分解能疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)のクロマトグラフィーを利用した。 pH中和したプールを、包装済のバイオスイートフェニルHICカラム(Waters)に対して直接に適用したところ、切断片種の大半がカラムを通って流れ去り、そして、全長タンパク質の大半がカラムに結合した。 変性LCAT-Fcタンパク質を、100%ミリ-Q H2Oの直線勾配を介して溶出した。 N末端配列(NTS)を介して全長LCATの存在率に関して画分の分析を行い、その後、それらをプールした。 そして、HICプールを濃縮し、そして、移動相にPBS、pH 7.2、10% グリセロール、50μM EDTAを具備した分離用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を介してさらに精製を行った。 必要に応じて、非凝集SEC産物を、5mg/mLにまで濃縮し、等分し、そして、急速冷凍した。
【0210】
実施例2
変性LCATタンパク質のスクリーニング
LCAT酵素活性
3Hで標識したコレステロール(FC)のコレステリルエステル(CE)への変換率を測定することによって、変性LCATタンパク質の活性を決定した。 血漿LCAT活性分析法(CER)において、ヒトの血漿試料を、放射性標識した微量のコレステロールを用いて、4℃で、平衡化し、そして、37℃でインキュベーションをした後に、コレステロールのエステル化率を、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によって計測をした(Dobiasova and Frohlich, Physiol Res. 1996; 45, 65-73)。
【0211】
アポAI-リポソーム分析手法を用いて化合物の活性を測定するために、CHO細胞において変性LCATタンパク質を発現し、そして、安定裏に形質転換した細胞から分泌された酵素を、血清を含まない培養培地から回収した。 標準的なコール酸塩-透析法によって調製したアポAI-リポソーム基質を用いて、培養培地に含まれる変性LCAT酵素の活性を決定した(Chen et al. (1982) J. Lipid Res. 23: 680-691)。 最初の混合物は、卵ホスファチジルコリン(PC)(Sigma)/3H-非エステル化コレステロール/ヒトアポAI(250:12.5:0.8のモル比)を含んでいた。 透析を行った後、変性LCATタンパク質を用いて、プロテオリポソームを取り込んだ。 放射性標識したコレステロールからコレステリルエステルへの変換率を測定し、そして、nmol CE/mL/時間の単位でLCAT活性を表した。 組換えLCATタンパク質を、組換えタンパク質のFc融合断片を特異的に認識する標準的なプロテインAアフィニティーカラム、あるいは、組換えタンパク質のHisタグを特異的に認識するアフィニティー樹脂のいずれかで精製した以外は、精製した変性LCAT酵素の活性は、同じ分析方法によって行った。 精製試料のLCAT活性は、nmol CE/μg/時間の単位で表した。
【0212】
変性LCATタンパク質の活性範囲の例を、表3にとりまとめた。
【0213】
【表3−1】

【0214】
【表3−2】

【0215】
【表3−3】

野生型LCATタンパク質の酵素活性と比較して、少なくとも20%は高い酵素活性を示す変性LCATタンパク質を、変性LCATタンパク質のN末端配列を決定するために、大規模精製をした。 無傷のN末端配列を保持し、かつ切り出し箇所を具備していない変性LCATタンパク質を、安定性およびin vivoでの有効性をさらに評価するために利用した。
【0216】
変性LCATタンパク質本体のin vivoでの有効性および安定性
変性LCATタンパク質分子を、マウス、ハムスター、および、ウサギを含む動物モデルで評価を行った。 In vivo評価に関して読み出された情報には、血漿HDL-コレステロール(HDL-C)レベルと安定性(PK)の増大に関する有効性が含まれていた。 好適な動物に対して、変性LCATタンパク質を、単回投与または連続投与し、次いで、255時間に至る所定の期間において、血漿試料を単離し、そして、測定を行った。
【0217】
HDL-Cプラス第三世代キット、コバス(カタログ番号第04713311 190号)のマニュアルに記載の手順に従って、ポリエチレングリコール(PGE)修飾酵素およびデキストラン硫酸塩と、自動分析装置 Roche/Hitachi 904/911/912/MODULAR アナライザー CAN 435とを用いて、HDL-Cを酵素的に決定した。
【0218】
PKは、次のようにして測定を行った。 要するに、組換えLCAT-Fcタンパク質濃度を決定するために用いた分析方法は、アムジェン社によって開発されたサンドウィッチELISA法であった。 マウス抗LCATクローン9B14A12を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈し、次いで、96穴マイクロタイタープレート(Maxisorp、Nunc)のウェルをコーティングし、そして、5℃±3℃で、一晩、インキュベーションした。 このプレートを、1×KPL洗浄用緩衝液で、三度、洗浄をした。 10%脱脂粉乳(NFDM)を含むPBSと0.05% Tween-20(PBST)を含んだブロッキング緩衝液を、ウェルに分散させた。 攪拌をせずに、少なくとも1時間かけて、周囲室温(ART)下でインキュベーションを行った後に、ウェルからブロッキング緩衝液を除去した。 次に、ニュージーランドシロウサギの100%血清を用いて調製し、そして、PBST+10%NFDMの50の希釈係数で前処置をしたLCAT-Fc分析用標準品、NSB、および、品質調整用試料(QCs)の各々を、やはりPBST+10%NFDMで前処置をしたウサギ血清試料と一緒に、プレートに加えた。 攪拌をしながら、一時間をかけてARTインキュベーションを行った後に、そのプレートを、1×KPL洗浄用緩衝液で、六度、洗浄をし、次いで、ヒトの血清タンパク質(Jackson; #111-035-046)に対して最小架橋反応性を示す西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したヤギ抗ウサギFcを、2%のプールしたウサギ血清を含む10%NFDMで調製した25,000の希釈係数で希釈を行い、そして、LCAT-Fcを検出するために、ウェルに加えた。 攪拌をしながら、一時間をかけてARTインキュベーションを行った後に、そのプレートを洗浄し、そして、TMB基質溶液(1:1 テトラメチルベンジジン:過酸化物、Kirkegaard & Perry Laboratories)を用いて発色させた。 10分間をかけてARTインキュベーションを行った後に、1+9リン酸(VWR;#VW3346-1)で、出現した比色反応を停止し、そして、光学密度(ODs)を、450nm〜650nmの波長で決定した。 OD値からQCおよび未知の試料の濃度への変換は、同時に分析した標準曲線、すなわち、1の加重係数を有する四つのパラメーターを用いたロジスティックモデルに逆行した標準曲線との比較を介して、ワトソンソフトウェアで実施した。
【0219】
ここでの結果は、野生型LCATタンパク質と比較して、試験した変性LCATタンパク質の安定性は改善されていたこと、それに、HDLの明確な用量依存的増大を示していた。 変性LCATタンパク質分子は、血漿HDL-Cレベルの増大において有効性を示しており、そして、前臨床アテローム性動脈硬化症モデルにおいて、許容可能なin vivo安定性の分析をさらに行った。
【0220】
アテローム性動脈硬化症の動物モデル
この研究では、野生型ニュージーランドシロ(NZW)ウサギを用いた。 アテローム性動脈硬化症を誘発させるために、動物たちに対して、粥腫誘発性(高コレステロール)食餌を、4ヶ月にわたって与え、次いで、アテローム性動脈硬化症の退行を誘発するために、変性LCATを用いて処置をした。 動物たちを、4つの処置グループ、すなわち、a)賦形剤、b) 低用量rLCAT、および、c) 高用量rLCAT、それに、d) 処置は行っていないが、粥腫病変のベースラインにおいて治療を打ち切った動物のグループに振り分けた。 治療の過程で副作用が発生した場合も想定して、治療期間は、8〜16週間に設定した。 治療期間の終期に、アテローム性動脈硬化症病変部の評価を行った。 アテローム性動脈硬化斑の評価手順は、次の通りであった。
【0221】
要するに、ペントバルビタールを用いて動物たちに麻酔をかけ、そして、生理食塩水灌流を行い、次いで、パラホルムアルデヒドを用いて固定した。 大動脈に結合しているすべての臓器と脂肪組織を除去し、そして、近位から遠位へ広がるように切開をして、大動脈を摘出した。 次いで、大動脈を、蝋板にピン留めし、そして、スダンIVで染色をした。 粥腫病変領域を定量するために、光学顕微鏡写真を利用し、また、染色箇所については、イメージプロソフトウェアを用いて解析を行った。
【0222】
実施例3
二重突然変異を有する組換えLCATタンパク質
様々なLCAT変異体において認められた前掲の活性測定結果に鑑み、後述するような、C31Y置換とその他の置換を含む幾つかの二重変異体を調製し、そして、先に述べたようにして、放射性標識したコレステロール(FC)からコレステリルエステル(CE)に変換する能力に基づいて活性の評価を行った。
【0223】
野生型タンパク質と単一変異C31Y LCATタンパク質に対して比較をした二重変異についての結果を、以下の表4に示してある。 表4において、「−」は、検出レベルに満たない酵素活性を示しており、「++」は、野生型タンパク質の活性の−20%〜+50%の範囲の酵素活性を示しており、「+++」は、野生型タンパク質の活性の+100%〜+500%の範囲の酵素活性を示しており、そして、「++++」は、野生型タンパク質の活性の+500%を超える酵素活性を示している。
【0224】
【表4】

実施例4
野生型タンパク質と変性LCATタンパク質との間のin vivo比較
個別の野生型LCATに対して比較をして変性LCATタンパク質のin vivo活性を個別に分析するために、以下の実験を行った。
【0225】
組換え野生型LCATタンパク質、および、C31Y置換を含む変性LCATは、安定してトランスフェクションしたCHO細胞において発現された。 このC31Y変性LCATは、発現され、そして、Fc融合タンパク質、Fc賦形剤は、ヒトIgGまたはウサギIgGのいずれかに由来するものであった。 野生型ヒトタンパク質が、カルボキシ末端ヒスチジン(His)タグを用いて発現され、そして、このタグに対して特異的に結合するアフィニティービーズを用いて精製をした。 C31Y変性LCAT-Fcタンパク質は、プロテインAアフィニティービーズを用いて精製された。 双方の形態の精製rLCATタンパク質を、PBS pH 7.2、50μM EDTA、および、10%グリセロールを含む緩衝液で可溶化を行った。
【0226】
実験を行う前に、野生マウスに対して通常の食餌を与えた。 動物(n=4/グループ)に対して、静脈注射によって、10mg/kgの単一用量の野生型タンパク質または変性タンパク質のいずれかを投与し、そして、その後の2週間の一定の時点において、採血をした。
【0227】
各試料から得た血清は、標準ELISAを用いて、野生型タンパク質含量、または、変性LCATタンパク質含量のいずれかについて評価がされた。 タンパク質の活性は、放射性標識したコレステロール(FC)からコレステリルエステル(CE)への変換に基づいて評価がされた。 臨床分析機器を用いて、血漿脂質-総コレステロール(TC)、高密度リポタンパク質C(HDL-C)、および、トリグリセリド(TG)についての測定が行われた。
【0228】
そこで得られた結果は、70kDの分子量と20nmol CE/時間/μgの活性を有する野生型LCATタンパク質が、CHO細胞培養培地から単離されていたことを示した。 野生型タンパク質は、その半減期が30分にも満たないものであり、そして、投与をして2時間以内の血漿LCAT活性は、30%〜40%だけ増大していたことが明らかとなった。 研究過程の全般において、血漿HDL-Cレベルに変化は認められなかった。
【0229】
これに対して、95kDの分子量(単量体)と200nmol CE/時間/μgの活性を有する組換えヒトC31Y変性野生型LCATタンパク質が、宿主細胞培養培地から単離された。 投与をした後のこのタンパク質に関する半減期は、約3日間であると決定され、そして、投与をして3日以内に、血漿LCAT活性は、400%にまで増大した。 加えて、投与をして24時間後には、血漿HDL-Cレベルが、約3.5倍にまで増大し、そして、そのベースレベルにまで戻るまでに約3日を要した。
【0230】
実施例5
変性LCAT活性の評価
LCATノックアウトマウス(LCATノックアウトマウスは、The Journal of Biological Chemistry, 1997; 272: 15777-15781の文献の記載にしたがって作製をした)でのアポA-IレベルとHDL-Cレベルの復元に関する変性LCATタンパク質の作用を評価するための実験をデザインした。
【0231】
要するに、実験を行う前に、野生マウスとLCATノックアウトマウスのグループ(n=4/グループ)に対して通常の食餌を与えた。 次いで、動物に対して、静脈注射によって、10mg/kgの変性組換えヒトLCATタンパク質[rnLCAT(C31Y)-huFc]、または、等量の賦形剤緩衝液(PBS pH 7.2、50μM EDTA、および、10%グリセロール)のいずれかを投与した。 注射をして約24時間後に、動物を屠殺し、そして、採血をした。 血清試料を、血液から単離した。 血漿LCAT活性は、基質としてアポAI-プロテオリポソームを用いて、放射性標識したコレステロール(FC)からコレステリルエステル(CE)への変換に基づいて評価がされた。 血漿アポA-Iタンパク質レベルは、抗マウスアポAI抗体を用いて、ウェスターンブロッティングによって決定をした。 血漿脂質(TC、HDL-C、および、TG)は、臨床分析機器で計測された。
【0232】
そこで得られた結果は、変性rhLCATタンパク質を用いて治療をすることで、野生マウスの血漿LCAT活性が増大し、そして、LCATノックアウトマウスの血漿LCAT活性が復元されていたことを示した。 加えて、変性rhLCATタンパク質を用いて治療をすることで、ウェスターンブロッティングで測定をしたところ、LCATノックアウトマウスの血漿アポAIタンパク質レベルが、ほぼ正常レベル(すなわち、野生マウスのレベル)にまで回復していた。 さらに、変性rhLCATタンパク質を用いて治療をすることで、臨床分析機器で計測をしたところ、LCATノックアウトマウスの血漿HDL-Cレベルが、野生マウスのレベルにまでほぼ回復していた。 最後に、変性rhLCATタンパク質を用いて治療をすることで、LCATノックアウトマウスにおいて増大していたTGレベルが、同じ治療を施した野生マウスでのTGレベルにまで落ち着いていたことも、計測によって判明した。
【0233】
実施例6
変性LCAT活性のin vivoでの追加評価
一連のその他の実験において、ウサギでのHDL-Cレベルに及ぼす影響をin vivoで決定するために、変性rhLCAT活性の評価が行われた。
【0234】
要するに、実験を行う前に、ニュージーランドシロウサギ(それぞれの体重は2kg未満)に対して通常の食餌を与えた。 次いで、動物を無作為に三つのグループに分け、各グループ(n=4/グループ)に対して、賦形剤緩衝液(PBS pH 7.2、50μM EDTA、10%グリセロール)、1.0 mg/kgの用量の組換えウサギLCAT(C31Y)-rab Fc タンパク質、または、10.0 mg/kgの用量の組換えウサギLCAT(C31Y)-rab Fc タンパク質のいずれかを投与した。 所定の時点において、分析に供する血液試料を得るべく、採血をした。 血清試料を、血液から単離した。 血漿LCAT活性は、基質としてアポAI-プロテオリポソームを用いて、放射性標識したコレステロール(FC)からコレステリルエステル(CE)への変換に基づいて評価がされた。 血漿脂質(TC、HDL-C、および、TG)は、臨床分析機器で計測された。 同じグループの動物から得たプールしていた血清試料は、FPLC分別に使用し、そして、各画分のコレステロール含量とTG含量は、臨床分析機器によって決定がされた。
【0235】
そこで得られた結果は、変性rLCATタンパク質を用いて治療をすることで、時間および用量依存的に血漿LCAT活性が急速に増大し、そして、血漿HDL-Cレベルもまた、時間および用量依存的に着実に増大していたことを示した。 加えて、FPLC分析が示したように、変性rLCATタンパク質が、血漿LDLレベルまたは血漿VLDLレベルを増大せずに、HDL粒子を、用量依存的に、かつ、可逆的に調節していた。
【0236】
実施例7
免疫原性の検討
変性LCATタンパク質配列が、ヒトにおいて好ましくない免疫反応を惹起するかどうかを決定するために、免疫原性の検討を行った。
【0237】
すなわち、二つのLCATタンパク質ペプチドについて、それらが免疫反応を誘発する能力に関して、in silico法を介して評価を行った。 一方のペプチドは、33残基の長さで、野生型LCATアミノ酸配列のものであった。 他方のペプチドも、33アミノ酸の長さであったが、野生型LCAT配列にC16Yの改変を含んでおり、このC16Yの変異は、LCAT配列のC31Y変異に対応するものである。
【0238】
これら結果は、野生型ペプチドが、わずかの免疫反応しか誘発しないことを示すものであった。 驚くべきことに、C16Yペプチド変異体が、免疫反応を顕著に誘発することは予測できたにもかかわらず、実際の免疫反応は非常に弱いものでしかなかった。 この結果に鑑み、改変したC31YのLCATタンパク質は、in vivoで投与した場合に、抗治療反応を誘発しそうにもないと考えられる。
【0239】
本実施例およびその他の実施例でのデータの組み合わせから、野生型LCATタンパク質が、免疫反応を誘発しそうにない一方で、変性LCATタンパク質の強い活性と、変性タンパク質が免疫反応を誘発する可能性が小さいということが明らかとなり、これらのことは、変性LCATタンパク質が、野生型タンパク質に代わる望ましい治療法の選択肢になることを示すものである。
【0240】
これまでに述べてきた発明については、理解を容易にする目的で、本願発明の例証および実施例として、少し詳細に説明してきたが、本願発明での教示に照らせば、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載の要旨と範囲を逸脱することなく、ある一定の変更と修正を本願発明に加えることができることは、当業者に自明の事項である。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1−1】変性LCATタンパク質の製造に適した野生型LCATタンパク質のGenbank受入番号である。
【図1−2】変性LCATタンパク質の製造に適した野生型LCATタンパク質のGenbank受入番号である。
【図1−3】変性LCATタンパク質の製造に適した野生型LCATタンパク質のGenbank受入番号である。
【図1−4】変性LCATタンパク質の製造に適した野生型LCATタンパク質のGenbank受入番号である。
【図1−5】変性LCATタンパク質の製造に適した野生型LCATタンパク質のGenbank受入番号である。
【図1−6】変性LCATタンパク質の製造に適した野生型LCATタンパク質のGenbank受入番号である。
【図1−7】変性LCATタンパク質の製造に適した野生型LCATタンパク質のGenbank受入番号である。
【図1−8】変性LCATタンパク質の製造に適した野生型LCATタンパク質のGenbank受入番号である。
【図1−9】変性LCATタンパク質の製造に適した野生型LCATタンパク質のGenbank受入番号である。
【図1−10】変性LCATタンパク質の製造に適した野生型LCATタンパク質のGenbank受入番号である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型LCATタンパク質アミノ酸配列におけるアミノ酸置換を含む変性LCATタンパク質。
【請求項2】
配列番号:1における第31位のアミノ酸残基、または、配列番号:1における第31位に対応するオーソロガス野生型LCATタンパク質アミノ酸配列におけるアミノ酸残基が置換される請求項1に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項3】
野生型のヒト、ウサギ、サル、ハムスター、マウス、または、ラットのLCATタンパク質に由来する請求項2に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項4】
野生型LCATアミノ酸配列が、配列番号:1に記載のものである請求項1に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項5】
Fl、L3、L4、N5、L7、C31、N384、または、E416の位置で置換が行われる請求項4に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項6】
FlA、FlG、FlI、FlL、FlM、FlP、FlV、FlC、FlY、FIT、FlQ、FlN、FlH、または、FlDの置換である請求項5に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項7】
L3I、L3F、L3C、L3W、または、L3Yの置換である請求項5に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項8】
L4A、L4I、L4M、L4F、L4V、L4W、L4Y、L4T、L4Q、または、L4Rの置換である請求項5に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項9】
N5A、N5M、N5H、N5K、N5D、または、N5Eの置換である請求項5に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項10】
L7M、L7F、または、L7Eの置換である請求項5に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項11】
C31A、C31I、C31M、C31F、C31V、C31W、C31Y、C31T、C31R、または、C31Hの置換である請求項5に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項12】
N384C、N384Q、または、E416Cの置換である請求項5に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項13】
C31の位置での置換、および、Fl、L4、N5、V28、P29、G30、L32、G33、および、N34からなるグループから選択されるアミノ酸残基での置換を含む請求項4に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項14】
FlA、L4F、N5E、N5Q、N5D、N5A、V28A、V28I、V28C、V28T、V28R、P29G、P29F、P29T、G30A、G301、L32A、L32I、L32M、L32F、L32C、L32W、L32Y、L32T、L32S、L32N、L32H、L32E、G33I、G33M、G33F、G33S、G33H、N34A、N34C、N34S、および、N34Rからなるグループから選択される置換を含む請求項13に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項15】
C31の位置での置換が、C31A、C31I、C31M、C31F、C31V、C31W、C31Y、C31T、C31R、または、C31Hである請求項13に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項16】
C31Yの置換、および、Fl、L4、L32、および、N34からなるグループから選択されるアミノ酸残基での置換を含む請求項15に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項17】
FlS、FlW、L4M、L4K、N34S、L32F、および、L32Hからなるグループから選択される置換を含む請求項16に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項18】
賦形剤をさらに含む請求項1、11、または17に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項19】
賦形剤が、免疫グロブリン定常部(Fc)である請求項18に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項20】
賦形剤が、水溶性ポリマーである請求項18に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項21】
水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコールである請求項20に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項22】
野生型LCATタンパク質アミノ末端アミノ酸配列の領域が、複製され、かつ、変性LCATタンパク質の末端に共有結合している請求項1または11に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項23】
野生型LCATタンパク質アミノ末端アミノ酸配列の領域が、10〜15個のアミノ酸の長さである請求項22に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項24】
野生型LCATタンパク質アミノ酸配列の領域が、複製され、かつ、変性LCATタンパク質のアミノ末端に共有結合している請求項22に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項25】
野生型LCATタンパク質アミノ酸配列の領域が、複製され、かつ、変性LCATタンパク質のカルボキシ末端に共有結合している請求項22に記載の変性LCATタンパク質。
【請求項26】
請求項1または11に記載の変性LCATタンパク質、および、薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項27】
LCAT関連障害の治療において有効量の請求項1または11に記載の変性LCATタンパク質を投与する工程を含む、LCAT関連障害を治療する方法。
【請求項28】
変性LCATを静脈内投与する請求項27に記載の方法。
【請求項29】
変性LCATをボーラス投与する請求項27に記載の方法。
【請求項30】
LCAT関連障害が、アテローム性動脈硬化症、炎症、血栓症、冠動脈性心疾患、高血圧、LCAT不全症候群、アルツハイマー病、角膜混濁、メタボリック症候群、脂質異常症、心筋梗塞、脳卒中、重症下肢虚血、および、狭心症からなるグループから選択される請求項27に記載の方法。
【請求項31】
LCAT関連障害が、アテローム性動脈硬化症である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
LCAT関連障害が、炎症である請求項30に記載の方法。
【請求項33】
LCAT関連障害が、血栓症である請求項30に記載の方法。
【請求項34】
治療効果を奏する量の請求項1または11に記載の変性LCATタンパク質を被験者に投与することを含む、被験者のHDLコレステロールを増大する方法。
【請求項35】
治療効果を奏する量の請求項1または11に記載の変性LCATタンパク質を被験者に投与することを含む、被験者のコレステロールの蓄積を防ぐ方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図1−9】
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【図1−10】
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【公表番号】特表2010−534479(P2010−534479A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518400(P2010−518400)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/071119
【国際公開番号】WO2009/015314
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】