説明

変調器およびΔΣ型D/A変換器

【課題】高精度かつ簡易に要求出力範囲を充足させる。
【解決手段】デジタル入力信号をパルス信号に変換するΔΣ変調器12と、デジタル入力信号に対応する入力値と予め設定された閾値とを比較する入力比較器11と、入力比較器11による比較結果が、入力値が閾値よりも小さいことを示す場合に、入力値と閾値との差が大きいほど入力値に対する出力値を低下させ、入力値が0であるときには出力値を0とする間引き出力制御部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調器およびΔΣ型D/A変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
D/A変換器として、例えば、PWM変調器を有するPWM型D/A変換器やΔΣ変調器を有するΔΣ型D/A変換器が用いられている。PWM変調器には、高精度化を図ると消費電力が増大し、低消費電力化を図ると精度が低下するという問題がある。これに対して、ΔΣ変調器は、オーバサンプリングやノイズシェーピングによって、PWM変調器よりも低いクロック周波数で高いリニアリティを実現することができる。つまり、ΔΣ型D/A変換器には、PWM型D/A変換器に比べて、消費電力を低減し、かつ精度を向上させることができるというメリットがある。下記特許文献1には、多ビットの入力信号をパルス列の出力信号に変換するΔΣ型D/A変換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−35038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ΔΣ変調器の出力は、Low/Highレベルを示すパルスの粗密信号となる。粗密信号は、ΔΣ変調器の内部フィードバック回路によってLow/Highレベルが決められるため、PWM波形とは異なり周期性が無い。ΔΣ変調器の出力が、LowレベルまたはHighレベルのいずれか一方に固定されている状態は、内部フィードバック回路が飽和している状態である。つまり、この状態は、正常な安定動作を保つことができない状態となるため、通常のΔΣ変調器では、出力をLowレベルまたはHighレベルのいずれか一方に固定することができない。例えば、入力信号の値が0であっても、ΔΣ変調器の内部が正常に動作している場合には、系の安定性を保つために一定の割合でHighレベルのパルスが出力されてしまうため、ΔΣ変調器の出力値は完全に0にはならない。同様に、入力信号の値が最大値であっても、一定の割合でLowレベルのパルスが出力されてしまうため、ΔΣ変調器の出力値は最大値にならない。その結果、ΔΣ変調器の出力をフィルタ回路で平均化してアナログ信号を出力するΔΣ型D/A変換器は、例えば図6に示すような出力電圧の範囲が0[V]〜2.5[V]に設定されている場合に、出力電圧の下限付近となる0[V]〜0.1[V]の電圧(下限側出力不可範囲)や、出力電圧の上限付近となる2.4[V]〜2.5[V]の電圧(上限側出力不可範囲)を出力することができないことになる。
【0005】
産業用計測機器の中には、例えば0[V]〜1[V]や0[V]〜5[V]のように、0[V]からの出力を要求するものがある。このような計測機器において、上述したΔΣ型D/A変換器を採用する場合には、0[V]からの出力を実現するために、例えばゲイン調節回路や電圧源等を含む補正回路を別途設ける必要がある。この補正回路の精度が低い場合には、ΔΣ型D/A変換器の精度が低下してしまう。一方、補正回路の精度をΔΣ変調器に見合うレベルにまで引き上げると構成が複雑となりコストが嵩んでしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、精度を低下させず、かつ簡易に、要求する出力範囲を充足できる変調器およびΔΣ型D/A変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る変調器は、デジタル入力信号をパルス信号に変換するΔΣ変調器と、前記デジタル入力信号に対応する入力値と予め設定された閾値とを比較する比較器と、前記比較器による比較結果が、前記入力値が前記閾値よりも小さいことを示す場合に、前記入力値と前記閾値との差が大きいほど前記入力値に対する出力値を低下させる出力制御手段と、を備える。
【0008】
かかる構成を採用することで、入力値が閾値よりも小さい場合には、入力値が小さくなるほど、出力値を本来の出力値よりも小さくすることができる。
【0009】
上記出力制御手段は、前記ΔΣ変調器から出力される前記パルス信号を、前記閾値と所定の最小値との差分数のパルスからなるパルス列に区分し、それぞれの前記パルス列に含まれるパルスのうち、前記入力値と前記閾値との差分数のパルスの値を強制的にLowにすることで、前記入力値に対する出力値を低下させることができる。
【0010】
上記出力制御手段は、前記入力値が当該入力値として入力可能な最小値であるときには、前記入力値に対する出力値を前記最小値に対応する値にすることができる。これにより、入力値が最小値であるときには、出力値として当該最小値に対応する値を出力させることが可能となる。
【0011】
本発明に係る変調器は、デジタル入力信号をパルス信号に変換するΔΣ変調器と、前記デジタル入力信号に対応する入力値と予め設定された閾値とを比較する比較器と、前記比較器による比較結果が、前記入力値が前記閾値よりも大きいことを示す場合に、前記入力値と前記閾値との差が大きいほど前記入力値に対する出力値を増加させる出力制御手段と、を備える。
【0012】
かかる構成を採用することで、入力値が閾値よりも大きい場合には、入力値が大きくなるほど、出力値を本来の出力値よりも大きくすることができる。
【0013】
上記出力制御手段は、前記ΔΣ変調器から出力される前記パルス信号を、所定の最大値と前記閾値との差分数のパルスからなるパルス列に区分し、それぞれの前記パルス列に含まれるパルスのうち、前記入力値と前記閾値との差分数のパルスの値を強制的にHighにすることで、前記入力値に対する出力値を増加させることができる。
【0014】
上記出力制御手段は、前記入力値が当該入力値として入力可能な最大値であるときには、前記入力値に対する出力値を前記最大値に対応する値にすることができる。これにより、入力値が最大値であるときには、出力値として当該最大値に対応する値を出力させることが可能となる。
【0015】
本発明に係る変調器は、デジタル入力信号をパルス信号に変換するΔΣ変調器と、前記デジタル入力信号に対応する入力値と予め設定された第1の閾値とを比較する第1の比較器と、前記デジタル入力信号に対応する入力値と予め設定された第2の閾値とを比較する第2の比較器と、前記第1の比較器による比較結果が、前記入力値が前記第1の閾値よりも小さいことを示す場合に、前記入力値と前記第1の閾値との差が大きいほど前記入力値に対する出力値を低下させる第1の出力制御手段と、前記第2の比較器による比較結果が、前記入力値が前記第2の閾値よりも大きいことを示す場合に、前記入力値と前記第2の閾値との差が大きいほど前記入力値に対する出力値を増加させる第2の出力制御手段と、を備える。
【0016】
かかる構成を採用することで、入力値が第1の閾値よりも小さい場合には、入力値が小さくなるほど、出力値を本来の出力値よりも小さくすることができる。また、入力値が第2の閾値よりも大きい場合には、入力値が大きくなるほど、出力値を本来の出力値よりも大きくすることができる。
【0017】
本発明に係るΔΣ型D/A変換器は、上記変調器と、前記変調器の出力信号を平滑化するアナログフィルタと、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高精度かつ簡易に要求出力範囲を充足可能な変調器およびΔΣ型D/A変換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態におけるΔΣ型D/A変換器の構成を模式的に例示する図である。
【図2】図1に示す間引き出力制御部から出力される間引き後信号の内容を説明するための図である。
【図3】図1に示す水増し出力制御部から出力される水増し後信号の内容を説明するための図である。
【図4】図1に示すアナログフィルタの回路構成を例示する図である。
【図5】図1に示すΔΣ型D/A変換器における入力値と出力値との関係を示す図である。
【図6】従来のΔΣ型D/A変換器における入力値と出力値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0021】
まず、図1を参照して、実施形態における変調器を含むΔΣ型D/A変換器の構成について説明する。図1は、実施形態におけるΔΣ型D/A変換器1の構成を模式的に例示した図である。
【0022】
同図に示すように、ΔΣ型D/A変換器1は、入力比較器11と、ΔΣ変調器12と、カウンタ13と、間引き出力制御部14と、水増し出力制御部15と、選択器16と、アナログフィルタ17と、を有する。カウンタ13、間引き出力制御部14、水増し出力制御部15および選択器16が出力制御手段を構成する。また、入力比較器11、ΔΣ変調器12、カウンタ13、間引き出力制御部14、水増し出力制御部15および選択器16が変調器を構成する。
【0023】
入力比較器11は、多ビットのデジタル入力信号ISに対応する入力値と予め設定された閾値LVとを比較する。本実施形態では、多ビットの一例として、16ビットを用いて説明する。また、閾値LVには、上限側の閾値LVGと下限側の閾値LVLとが含まれる。
【0024】
入力比較器11は、入力値が下限側の閾値LVLよりも小さい場合には、比較結果信号CSとして“LT”を出力する。入力比較器11は、入力値が上限側LVGの閾値よりも大きい場合には、比較結果信号CSとして“GT”を出力する。入力比較器11は、入力値が下限側の閾値LVL以上、かつ上限側の閾値LVG以下である場合には、比較結果信号CSとして“ORG”を出力する。
【0025】
入力比較器11は、比較結果信号CSとして“ORG”を出力する間は、ΔΣ変調器12に対してデジタル入力信号ISをそのままSIS信号として出力する。入力比較器11は、比較結果信号CSとして“LT”を出力する間は、デジタル入力信号ISの入力値を下限側の閾値LVLに固定してSIS信号としてΔΣ変調器12に出力する。入力比較器11は、比較結果信号CSとして“GT”を出力する間は、デジタル入力信号ISの入力値を上限側の閾値LVGに固定してSIS信号としてΔΣ変調器12に出力する。
【0026】
ΔΣ変調器12は、デジタル入力信号ISの大きさによって決定されるデジタル入力信号SISをパルス信号PSに変換する。パルス信号PSは、デジタル入力信号ISに応じたパルスの粗密信号となる。本実施形態では、パルス信号PSの一例として、二値(Low/High)のパルスを示す信号を用いて説明する。なお、パルス信号PSのレベルは、二値であることには限定されず、多値であってもよい。
【0027】
カウンタ13は、カウント値CVを0から、下限側の閾値LVL、または入力値として入力可能な最大値と上限側の閾値LVGとの差まで、1ずつカウントアップする。カウンタ13は、カウント値CVが下限側の閾値LVLまたは上記差に達すると0に戻って再度下限側の閾値LVLまたは上記差までカウントアップすることを繰り返す。なお、カウント値CVは、0からカウントアップを開始することには限定されない。例えば、入力値として入力可能な最小値が0以外である場合には、この最小値からカウントアップを開始することとしてもよい。
【0028】
間引き出力制御部14は、比較結果信号CSが“LT”を示す場合に、入力値と下限側の閾値LVLとの差が大きいほど、この入力値に対する間引き出力制御部14からの出力値を徐々に低下させる。この場合、間引き出力制御部14は、入力値が当該入力値として入力可能な最小値(以下では、最小値が0である場合について説明する。)であるときには出力値が当該最小値に対応する値(以下では、この値が0である場合について説明する。)となるように、入力値と下限側の閾値LVLとの差に応じて出力値を徐々に低下させる。
【0029】
具体的に、間引き出力制御部14は、比較結果信号CSが“LT”を示す場合に、ΔΣ変調器12から出力されるパルス信号PSを下限側の閾値LVL数のパルスからなるパルス列に区分し、それぞれのパルス列に含まれるパルスのうち、入力値と下限側の閾値LVLとの差分数のパルスを強制的にLowに固定することで出力値を徐々に低下させる。
【0030】
図2を参照し、さらに具体的に説明する。図2は、下限側の閾値LVLが“0X0008”であり、デジタル入力信号ISに対応する入力値が“0X0005”である場合に、間引き出力制御部14から出力される間引き後信号PSLの内容を説明するための図である。図2に示すパルス信号PSは、ΔΣ変調器12から出力され、間引き出力制御部14に入力される信号である。カウント値CVは、カウンタ13から出力され、間引き出力制御部14に入力される値である。カウンタ13は、閾値LVに含まれる下限側の閾値LVL“0X0008”に基づいて、0〜7までの8カウントのカウントアップを繰り返すことで、カウント値CVを間引き出力制御部14に対して出力する。パルス信号PSは、0〜7までのカウント値CVによって、8個のパルスからなるパルス列に区分される。例えば、図2に示すパルス信号PSは、4つのパルス列に区分されている。
【0031】
間引き出力制御部14は、各パルス列のうち、0〜4までのカウント値で区別される5個のパルスを、それぞれそのまま間引き後信号PSLとして出力する。そのまま出力するパルス数は入力値と同数に設定する。ここでは、入力値が“0X0005”であるため、そのまま出力するパルス数は5個に設定されている。
【0032】
続いて、間引き出力制御部14は、各パルス列のうち、残りのパルスとなる5〜7までのカウント値で区別される3個のパルスを、それぞれ強制的にLowに固定し、間引き後信号PSLとして出力する。強制的にLowに固定するパルス数は、下限側の閾値LVLと入力値との差分と同数に設定する。ここでは、下限側の閾値LVLが“0X0008”であり、入力値が“0X0005”であるため、強制的にLowに固定するパルス数は3個に設定されている。
【0033】
図2に示す4つのパルス列を用いて、間引き出力制御部14による出力結果について具体的に説明する。パルス信号PSの値は、4つのパルス列の値を平均すると、下記(1)に示すように、“1/4”となるのに対し、間引き後信号PSLの値は、4つのパルス列の値を平均すると、下記(2)に示すように、“5/32”となる。“5/32”は、パルス信号PSの値である“1/4”を“5/8”倍した値に相当する。つまり、この場合の間引き後信号PSLの値は、パルスをそのまま出力した出力パルス信号PSの値の“5/8”の値に低下することになる。
【0034】
{(3/8)+(3/8)+(2/8)+(2/8)}/4 = 1/4 … (1)
{(2/8)+(1/8)+(1/8)+(1/8)}/4 = 5/32 … (2)
【0035】
このように、入力値が下限側の閾値LVLよりも小さい場合に、パルス列に含まれるパルスのうち下限側の閾値LVLと入力値との差分と同数のパルスを強制的にLowに固定して出力することで、下限側の閾値LVLと入力値との差が大きいほど、間引き後信号PSLの値を低下させることができる。また、入力値が0である場合には、全てのパルスが強制的にLowに固定して出力されることになるため、間引き後信号PSLの値を0にすることができる。
【0036】
なお、上記間引き出力制御部14による出力結果の説明では、説明の便宜のために、4つのパルス列の平均値を算出した場合について説明しているが、平均を算出する際の対象パルス列は4つであることには限定されない。対象パルス列が多いほど平均値の算出精度を向上させることができる。出力精度に応じた対象パルス列数は、シミュレーションを繰り返すことで求めることができる。
【0037】
水増し出力制御部15は、比較結果信号CSが“GT”を示す場合に、入力値と上限側の閾値LVGとの差が大きいほど、この入力値に対する水増し出力制御部15からの出力値を徐々に増加させる。この場合、水増し出力制御部15は、入力値が当該入力値として入力可能な最大値であるときには出力値が当該最大値に対応する値となるように、入力値と上限側の閾値LVGとの差に応じて出力値を徐々に増加させる。
【0038】
具体的に、水増し出力制御部15は、比較結果信号CSが“GT”を示す場合に、ΔΣ変調器12から出力されるパルス信号PSを、入力値の最大値と上限側の閾値LVGとの差分数のパルスからなるパルス列に区分し、それぞれのパルス列に含まれるパルスのうち、入力値と上限側の閾値LVGとの差分数のパルスを強制的にHighに固定することで出力値を徐々に増加させる。
【0039】
図3を参照し、さらに具体的に説明する。図3は、上限側の閾値LVGが“0XFFF7”であり、デジタル入力信号ISに対応する入力値が“0XFFFD”である場合に、水増し出力制御部15から出力される水増し後信号PSGの内容を説明するための図である。図3に示すパルス信号PSは、ΔΣ変調器12から出力され、水増し出力制御部15に入力される信号である。カウント値CVは、カウンタ13から出力され、水増し出力制御部15に入力される値である。カウンタ13は、入力値の最大値“0XFFFF”と閾値LVに含まれる上限側の閾値LVG“0XFFF7”とに基づいて、0〜7までの8カウントのカウントアップを繰り返すことで、カウント値CVを水増し出力制御部15に対して出力する。パルス信号PSは、0〜7までのカウント値CVによって、8個のパルスからなるパルス列に区分される。例えば、図3に示すパルス信号PSは、4つのパルス列に区分されている。
【0040】
水増し出力制御部15は、各パルス列のうち、0および1のカウント値で区別される2個のパルスを、それぞれそのまま水増し後信号PSGとして出力する。そのまま出力するパルス数は、入力値の最大値と入力値との差分と同数に設定する。ここでは、入力値の最大値が“0XFFFF”であり、入力値が“0XFFFD”であるため、そのまま出力するパルス数は2個に設定されている。
【0041】
続いて、水増し出力制御部15は、各パルス列のうち、残りのパルスとなる2〜7までのカウント値で区別される6個のパルスを、それぞれ強制的にHighに固定し、水増し後信号PSGとして出力する。強制的にHighに固定するパルス数は、入力値と上限側の閾値LVGとの差分と同数に設定する。ここでは、入力値が“0XFFFD”であり、上限側の閾値LVGが“0XFFF7”であるため、強制的にHighに固定するパルス数は6個に設定されている。
【0042】
図3に示す4つのパルス列を用いて、水増し出力制御部15による出力結果について具体的に説明する。パルス信号PSの値は、4つのパルス列の値を平均すると、下記(3)に示すように、“11/16”となるのに対し、水増し後信号PSGの値は、4つのパルス列の値を平均すると、下記(4)に示すように、“15/16”となる。“15/16”は、パルス信号PSの値である“11/16”を“15/11”倍した値に相当する。つまり、この場合の水増し後信号PSGの値は、パルスをそのまま出力した出力パルス信号PSの値の“15/11”の値に増加することになる。
【0043】
{(5/8)+(6/8)+(5/8)+(6/8)}/4 = 11/16 … (3)
{(7/8)+(8/8)+(7/8)+(8/8)}/4 = 15/16 … (4)
【0044】
このように、入力値が上限側の閾値LVGよりも大きい場合に、パルス列に含まれるパルスのうち入力値と上限側の閾値LVGとの差分と同数のパルスを強制的にHighに固定して出力することで、入力値と上限側の閾値LVGとの差が大きいほど、水増し後信号PSGの値を増加させることができる。また、入力値が最大値である場合には、全てのパルスが強制的にHighに固定して出力されることになるため、水増し後信号PSGの値を最大値にすることができる。
【0045】
選択器16は、比較結果信号CSに基づいて、アナログフィルタ17に対して出力する出力パルス信号OSを選択する。具体的に、選択器16は、比較結果信号CSが“GT”を示す場合に、出力パルス信号OSとして水増し後信号PSGをアナログフィルタ17に出力する。選択器16は、比較結果信号CSが“LT”を示す場合に、出力パルス信号OSとして間引き後信号PSLをアナログフィルタ17に出力する。選択器16は、比較結果信号CSが“ORG”を示す場合に、出力パルス信号OSとして、ΔΣ変調器12から出力されたパルス信号PSをそのままアナログフィルタ17に出力する。
【0046】
アナログフィルタ17は、出力パルス信号OSの高周波成分を除去(平滑化)してアナログ信号ASを出力する。アナログフィルタ17として、例えば、抵抗およびコンデンサを有するローパスフィルタとバッファアンプとを備えるフィルタ回路を用いることができる。
【0047】
ここで、アナログフィルタ17は、出力パルス信号OSをそのままローパスフィルタで平滑化する構成としてもよいが、図4に示すように、任意に設定されて異なる電圧を出力する電源VA1および電源VA2の切替を、出力パルス信号OSで行い、選択した電源電圧をローパスフィルタで平滑化する構成としてもよい。このように構成することで、例えば、電源VA1の電圧を2.5[V]、電源VA2の電圧を0.0[V]と設定した場合には、0[V]〜2.5[V]の電圧が、D/A変換の結果となるアナログ信号ASの出力範囲として出力される。
【0048】
図5に示すように、本実施形態のΔΣ型D/A変換器1によれば、入力値が下限側の閾値LVLよりも小さい場合には、入力値が小さくなるほど、出力値を本来の出力値よりも小さくすることができ、入力値が最小値“0X0000”であるときには、出力値として最小値“0[V]”を出力させることが可能となる。また、入力値が上限側の閾値LVGよりも大きい場合には、入力値が大きくなるほど、出力値を本来の出力値よりも大きくすることができ、入力値が最大値“0XFFFF”であるときには、出力値として最大値“2.5[V]”を出力させることが可能となる。
【0049】
これにより、図4に示すアナログフィルタ17を通すことで、要求出力範囲である0[V]〜2.5[V]までの電圧を出力することができるため、要求出力範囲を充足することができる。なお、出力値の最小値は、0[V]に限定する必要はない。例えば、図4に示す電源VA1の電圧を2.5[V]、電源VA2の電圧を1.0[V]と設定した場合には、出力範囲が1.0[V]〜2.5[V]となり、この場合には、出力値の最小値が、1.0[V]となる。
【0050】
また、間引き出力制御部14および水増し出力制御部15によって出力可能となった出力値(例えば、図6に示す下限側出力不可範囲(0[V]〜0.1[V])や、上限側出力不可範囲(2.4[V]〜2.5[V]))を、機器内部の異常状態を段階的に通知するための信号値や、各種の設定条件の操作ミスを通知するための信号値等に利用することが可能となる。
【0051】
なお、上述した実施形態では、間引き出力制御部14および水増し出力制御部15双方の出力制御部を備えているが、いずれか一方を備えることとしてもよい。
【0052】
また、上述した実施形態では、下限側の閾値LVLと最小値である0との差と、最大値と上限側の閾値LVGとの差とが等しい場合について説明しているが、それぞれの差が等しいことには限定されない。ただし、下限側の閾値LVLと最小値である0との差と、最大値と上限側の閾値LVGとの差とを等しくすることで、間引き出力制御部14におけるパルス列のパルス数と水増し出力制御部15におけるパルス列のパルス数とを同数にすることができるため、出力制御手段に含まれる要素を共通化することが可能となる。
【0053】
また、上述した実施形態における間引き出力制御部14および水増し出力制御部15は、パルス列の先頭パルスから順に選択して処理しているが、パルス列の先頭パルスから順に選択することには限定されない。パルス列に含まれるパルスの中から、そのまま出力するパルス数として設定された数のパルスを選択し、強制的にLowやHighに固定するパルス数として設定された数のパルスを選択することができれば、どのような方法を用いて選択してもよい。例えば、パルス列の中からランダムに選択することとしてもよい。また、例えばトグルカウンタを用いて前回最後に選択したパルスに対応するカウント値の次のカウント値に対応するパルスから順次選択することとしてもよい。選択するパルスの位置を変動させることで、選択したパルスの位置に起因して生ずる平均値のノイズをシェイピングすることができるため、さらに精度を向上させることが可能となる。
【0054】
また、上述した実施形態では、デジタル入力信号の値を正負の2進数で表現した場合について説明しているが、デジタル入力信号の値を2の補数で表現してもよい。2の補数を用いることで、コンピュータの計算を容易にすることができる。例えば、上述した16ビットの2進数で表現される“0X0000”〜“0XFFFF”までのデジタル入力信号の値を、16ビットの2の補数で表現した場合には、デジタル信号の値が、“0X8000”〜“0X7FFF”までの値をとることになる。これらの値のうち、“0X8000”〜“0XFFFF”までが、負の数を表現し、負の最大値は、“0X8000”となる。
【0055】
また、上述した実施形態におけるΔΣ変調器12は、粗密なパルス信号を出力するため、パルスが一定の割合でランダムに出力されることになる。しかしながら、入力信号が固定されたままである場合には、出力の割合に周期性が生じることがある。そこで、ΔΣ変調器12からの出力のランダム性を高めるために、ΔΣ変調器12への入力信号にディザ信号を加えることとしてもよい。入力信号やΔΣ変調器12の内部フィードバック回路のループ内にディザ信号を加えることで、Highパルスの出現位置やパルス数のランダム性をより高めることができる。これにより、周期的なノイズによって生ずる出力値の偏りを排除することが可能となり、出力精度をさらに向上させることができる。なお、ディザ信号を付加してノイズを減少する手法は、周知技術であり、例えば、特開平5−284033号公報に開示されている。
【符号の説明】
【0056】
1…ΔΣ型D/A変換器、11…入力比較器、12…ΔΣ変調器、13…カウンタ、14…間引き出力制御部、15…水増し出力制御部、16…選択器、17…アナログフィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル入力信号をパルス信号に変換するΔΣ変調器と、
前記デジタル入力信号に対応する入力値と予め設定された閾値とを比較する比較器と、
前記比較器による比較結果が、前記入力値が前記閾値よりも小さいことを示す場合に、前記入力値と前記閾値との差が大きいほど前記入力値に対する出力値を低下させる出力制御手段と、
を備えることを特徴とする変調器。
【請求項2】
前記出力制御手段は、前記ΔΣ変調器から出力される前記パルス信号を、前記閾値と所定の最小値との差分数のパルスからなるパルス列に区分し、それぞれの前記パルス列に含まれるパルスのうち、前記入力値と前記閾値との差分数のパルスの値を強制的にLowにすることで、前記入力値に対する出力値を低下させることを特徴とする請求項1記載の変調器。
【請求項3】
前記出力制御手段は、前記入力値が当該入力値として入力可能な最小値であるときには、前記入力値に対する出力値を前記最小値に対応する値にすることを特徴とする請求項1または2記載の変調器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の変調器と、
前記変調器の出力信号を平滑化するアナログフィルタと、
を備えることを特徴とするΔΣ型D/A変換器。
【請求項5】
デジタル入力信号をパルス信号に変換するΔΣ変調器と、
前記デジタル入力信号に対応する入力値と予め設定された閾値とを比較する比較器と、
前記比較器による比較結果が、前記入力値が前記閾値よりも大きいことを示す場合に、前記入力値と前記閾値との差が大きいほど前記入力値に対する出力値を増加させる出力制御手段と、
を備えることを特徴とする変調器。
【請求項6】
前記出力制御手段は、前記ΔΣ変調器から出力される前記パルス信号を、所定の最大値と前記閾値との差分数のパルスからなるパルス列に区分し、それぞれの前記パルス列に含まれるパルスのうち、前記入力値と前記閾値との差分数のパルスの値を強制的にHighにすることで、前記入力値に対する出力値を増加させることを特徴とする請求項5記載の変調器。
【請求項7】
前記出力制御手段は、前記入力値が当該入力値として入力可能な最大値であるときには、前記入力値に対する出力値を前記最大値に対応する値にすることを特徴とする請求項5または6記載の変調器。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の変調器と、
前記変調器の出力信号を平滑化するアナログフィルタと、
を備えることを特徴とするΔΣ型D/A変換器。
【請求項9】
デジタル入力信号をパルス信号に変換するΔΣ変調器と、
前記デジタル入力信号に対応する入力値と予め設定された第1の閾値とを比較する第1の比較器と、
前記デジタル入力信号に対応する入力値と予め設定された第2の閾値とを比較する第2の比較器と、
前記第1の比較器による比較結果が、前記入力値が前記第1の閾値よりも小さいことを示す場合に、前記入力値と前記第1の閾値との差が大きいほど前記入力値に対する出力値を低下させる第1の出力制御手段と、
前記第2の比較器による比較結果が、前記入力値が前記第2の閾値よりも大きいことを示す場合に、前記入力値と前記第2の閾値との差が大きいほど前記入力値に対する出力値を増加させる第2の出力制御手段と、
を備えることを特徴とする変調器。
【請求項10】
前記第1の閾値と前記入力値として入力可能な最小値との差と、前記入力値として入力可能な最大値と前記第2の閾値との差とが等しいことを特徴とする請求項9記載の変調器。
【請求項11】
請求項9または10記載の変調器と、
前記変調器の出力信号を平滑化するアナログフィルタと、
を備えることを特徴とするΔΣ型D/A変換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate