説明

変調方法と装置

【課題】無線周波数での送信機で用いる変調回路を、所望の周波数で、約25%のデューティサイクルで1つ以上の局部発振器信号を生成する局部発振器回路と変調器で構成する。
【解決手段】変調回路は、変調器への変調入力としての役目を果たす各ベースバンド情報信号のためのトランジスタ回路を含むミキサと相互コンダクタンスとを組合せた回路を備える変調器を含む。各トランジスタ回路は、ベースバンド情報信号により駆動され、変調器出力ノードを対応する相互コンダクタンス素子に結合する第1のトランジスタと、1つ以上の局部発振器信号の1つにより駆動され、対応する相互コンダクタンス素子を信号接地ノードに結合する第2のトランジスタとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、例えば、無線周波数信号生成のような信号変調に関し、特に、変調波形および対応する変調回路に関する。
【背景技術】
【0002】
通信デバイスとシステムで使用する送信機は一般に、ベースバンド情報信号を所望の(搬送波)周波数にアップコンバートするための変調回路を採用する。もっと詳細には、その様なデバイスとシステムは送信情報を搬送波信号にのせることを課す。その信号は通常、所望の送信情報を表わす1つ以上のベースバンド情報信号に従い、搬送波信号の位相、周波数、振幅またはそれらの幾つかの組合せを変調することにより、所望のまたは割当てられた送信チャネル周波数で生成される。
【0003】
“IQ”変調とも称する直交変調は、2個の搬送波信号、即ち、同相搬送波とその同相搬送波から90度オフセットした直交搬送波とを使用する。2つの搬送波は一般的に、対応する同相および直交のベースバンド情報信号によって変調され、次に、振幅に合成して通信チャネルを介して伝送する。IQ変調は、各種の無線通信システム、例えば、広帯域符号分割多元接続(WCDMA)またはcdma2000標準をベースとするセルラ通信ネットワークで広範囲な使用を見いだすことができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明で教示される方法と装置によれば、変調回路の1つの実施例は、所望の周波数で、25%或は約25%のデューティサイクルで1つ以上の局部発振器信号を生成するよう構成された局部発振器回路と、前記1つ以上の局部発振器信号と1つ以上のベースバンド情報信号に応じて、1つ以上の変調信号を生成するよう構成された変調器とを備える。その変調回路は、例えば、セルラ無線電話機のような無線通信デバイスで使用されてもよい。
【0005】
1つの実施例では、その変調器は、前記1つ以上のベースバンド情報信号に応じて、1つ以上の電流信号を生成するよう構成された相互コンダクタンス段回路と、前記1つ以上の電流信号と前記1つ以上の局部発振器信号とに応じて、1つ以上のミキサ出力信号を生成するよう構成されたミキサ段回路とを備える。もう1つの実施例では、そのミキサ段回路と相互コンダクタンス段回路とは効果的に組合わせられる。その結果得られる変調器構成は、多くの利点を提供し、その利点には、非限定的な例として、削減された駆動振幅要求条件と改善された出力電圧振幅を含む。
【0006】
上記のミキサと相互コンダクタンスとを組合わせた回路の1つの実施例は、変調器への変調入力としての役目を果たす各ベースバンド情報信号のためのトランジスタ回路を含む。その様なトランジスタ回路それぞれには、前記ベースバンド情報信号により駆動され、変調器出力ノードを対応する相互コンダクタンス素子に結合する第1のトランジスタと、前記1つ以上の局部発振器信号の1つにより駆動され、対応する相互コンダクタンス素子を信号接地または基準ノードに結合する第2のトランジスタとを備える。
【0007】
これらの変調器の変形を考慮して、変調器の動作を改善する方法の1つの実施例は、25%或は約25%のデューティサイクルで局部発振器信号を生成することに基づいている。その様な方法の1つには、所望の周波数で、25%或は約25%のデューティサイクルで1つ以上の局部発振器信号を生成する工程と、前記1つ以上の局部発振器信号で変調器の対応する局部発振器信号入力を駆動する工程とを備える。その変調器は、個別の相互コンダクタンスおよびミキサ段回路を採用してもよく、あるいは、ミキサと相互コンダクタンス段とを組合わせた回路を採用してもよい。
【0008】
勿論、本発明は上記の特徴および利点に限定されない。当業者は、以下の詳細な説明を読み、添付図面を見て、付加的な特徴および利点を認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】変調回路の一実施例のブロック図である。
【図2】図1の変調回路に示した変調器の一実施例の概略図である。
【図3】例えば、図2の局部発振器信号、ベースバンド情報信号、及び、変調出力信号を示す波形のグループである。
【図4】25%のデューティサイクルを持つ局部発振器信号を生成する一実施例を示す波形グラフである。
【図5】局部発振器信号のデューティサイクルに信号対雑音比を関係づけるグラフである。
【図6】図1の変調回路に示した変調器のもう1つの実施例の概略図である。
【図7】例えば、図6の局部発振器信号、ベースバンド情報信号、及び、変調出力信号を示す波形のグループである。
【図8】図1の変調回路に示した変調器のもう1つの実施例の概略図である。
【図9】図1の変調回路の実施例を含む無線通信デバイスの一実施例のブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、無線通信デバイスまたはシステムで実装されるかもしれない変調回路10の1実施例を図示している。図示の実施例では、変調回路10は、所望の周波数で、そして(そのような信号に用いる従来の50%のデューティサイクルに比較して)25%或は約25%のデューティサイクルで、1つ以上の局部発振器信号を生成するように構成された局部発振器回路12を含むか、それに関連している。変調回路10は更に、1つ以上の局部発振器信号と1つ以上のベースバンド情報信号に応答して、1つ以上の変調信号を生成するよう構成された変調器14を含む。その図では、変調信号、即ち、変調器14により変調された搬送波信号を“変調器出力信号”と名付け、シングルエンド・ミキサ出力信号またはミキサ出力信号の差動ペアを備える。いずれにせよ、変調器出力信号は、伝送のために増幅するよう構成された電力増幅器(PA)回路16に入力される。
【0011】
変調器14を更に詳細に見ると、図示された変調器の実施例は、1つ以上のベースバンド情報信号に応答して、1つ以上の(差動)電流信号を生成するよう構成された相互コンダクタンス段回路18を備え、更に、1つ以上の電流信号と1つ以上の局部発振器信号とに応答して、1つ以上のミキサ出力信号を生成するよう構成されたミキサ段回路20を備えるということが分かる。なお、そのミキサ出力信号は、ここで後に詳しく説明するミキサ負荷回路22の実施例を介して、ミキサ段回路20により生成される。
【0012】
またなお、1つ以上のベースバンド情報信号は、同相および直交信号の差動ペアとして示されており、正および負または相補的な信号成分を表示するため、VIp/VInとラベルが付される。同様に、1つ以上の局部発振器信号は、同相および直交の局部発振器信号の差動ペアとして示されており、同相成分に対してはLOIp/LOInとラベルが付けられ、直交成分に対してはLOQp/LOQnとラベルが付けられる。
【0013】
図2は、図1に示される変調器の一実施例のための簡略図を提供している。特に、図示の回路構成は、上述の同相および直交のべースバンドおよび局部発振器信号の差動ペアのために適合しており、それ故、二個の二重平衡ミキサを備え、ミキサ出力電流(Ic1およびIc2)が負荷に加えてられる。
【0014】
更に詳細に言えば、相互コンダクタンス段回路18は、差動ベースバンド情報信号ペアVIp/VInの1つの成分により駆動されるトランジスタM1を備える。対応する相互コンダクタンス素子(R1で示す)と関連するトランジスタM1は、入力ベースバンド情報信号を、ミキサ段回路20のM2/M3トランジスタペアに結合される電流モード信号に変換する。M2/M3トランジスタペアは、差動局部発振器信号ペアLOIp/LOInによって駆動される。VIp/VIn差動ペアの他の成分は、同様に対応する相互コンダクタンス素子(R2)およびミキサ段回路20のM5/M6トランジスタペアと関連するトランジスタM4を駆動する。
【0015】
この構成では、VIp/VInベースバンド情報信号から生成される差動電流変調は、ミキサ段回路20のM2/M3およびM5/M6トランジスタペアによって局部発振器信号LOIp/LOIn周波数にアップコンバートされる。同様の構成と動作は、トランジスタM7とM10およびその対応する相互コンダクタンス素子R3とR4、ならびにその対応するミキサ段トランジスタペアM8/M9とM11/M12を介して、直交ベースバンド情報信号および直交局部発振器信号LOQp/LOQnに適用される。
【0016】
その様な動作は、ベースバンド情報信号VIp/VInおよびVQp/VQnに対応して変調する搬送波周波数信号を表す差動電流Ic1とIc2とを発生する。その差動電流はミキサ負荷回路22を駆動し、その回路は、図示の実施例では、インダクタL1とL2、キャパシタC1およびレジスタR5を備える。ミキサ負荷回路22の動作により、差動電流Ic1とIc2とは、伝送のために増幅する電力増幅器16の入力で、電圧モードの変調された搬送波信号を発生する。またなお、ミキサ負荷回路22は一般的には、局部発振器周波数fLOの高調波を抑圧するよう、共振して同調させている。
【0017】
所望の周波数で波形を切替えるように、そして、25%或は約25%のデューティサイクルで、局部発振器信号LOIp/LOInとLOQp/LOQnを提供するよう局部発振器回路12を構成するのが都合が良い。図3は、局部発振器信号波形の一実施例を示し、更に、対応する変調回路14と電力増幅器回路16の所定の構成に対して、対応するベースバンド情報信号と電力増幅器出力波形とを示している。なお、図3に示すスケールは限定的というよりはむしろ例示的なものであるということを理解すべきである。
【0018】
それを考慮して、図3の一番下の波形は、差動波形ペアLOIp/LOInのLOIp成分を表わしている。その表示する振幅は、ピークからピークの間で2V(ボルト)であるが、理解すべきことは、LOI(およびLOQ)信号に用いられる駆動振幅と相対的オフセット電圧は設計事項であり、多くの考慮すべき事項、例えば、変調器14の構成、関与するトランジスタの閾値電圧、用いられる電源とバイアス電圧、所望の動作温度範囲などに依存するということである。
【0019】
いずれの場合でも、その波形図で論理的に上方に進んでゆくと、図示される次の波形は、差動波形(LOIp−LOIn)を表わし、LOIpとLOInの25%デューティサイクル生成は、特徴のある階段状矩形波を持つ差動波形を発生するということが分かる。LOIpとLOInのピークからピークの間での2Vの生成のために、差動波形(LOIp−LOIn)は、−2Vから+2Vの実効振幅を持つであろう。理解すべきことであるが、同様のセットの波形パターンが、直交ベースバンド信号LOQp/LOQnに適用される。
【0020】
その図を続けて説明すると、図示の次の2個の波形は、差動ベースバンド情報信号(VIp−VIn)と(VQp−VQn)を表わす。最後に、一番上の波形は、電力増幅器回路16が生成する、対応して変調された出力信号VRF_OUTを表わす。
【0021】
上記の詳細を考慮するなら、50%或は約50%のデューティサイクルでの従来の動作と比較して、変調器14を25%或は約25%のデューティサイクルで動作させることの利点の少なくとも幾つかを認識するかもしれない。25%のデューティサイクルで動作させることは、例えば、1つ以上の実施例に対して、図4に示す局部発振器波形の25%のデューティサイクルにより表わされるように、変調回路10の変換利得を3dB削減するが、そうすることはまた、変調器14の電流消費を半減させ、従ってその回路の雑音を半減させる。電流消費を半減させることは出力電力を3dB削減させるが、対応する雑音の削減は、ミキサ出力信号の信号対雑音比(SNR)が同じままであるということを意味する。あるいは、25%のデューティサイクルで、しかし50%のデューティサイクルの動作に相当する電流消費で変調器14を動作させることができ、従って、出力電力とSNRを3dB改善することが可能である。
【0022】
上記の詳細の理解は、図4に示す局部発振器信号波形の一般化されたフーリエ級数表現から始まる。例えば、その表現は(式1)のように与えられる。
【0023】

【0024】
ここで、T=2π/ωLOである。デューティサイクル項をη=τ/Tと表現すると、例えば、図4のLOIp(t)波形は、一般的に(式2)のように表現できる。
【0025】

【0026】
それ故、LOIn(t)は、LOIp(t)と180度異なる位相であるが、一般的に(式3)のように表現できる。
【0027】

【0028】
次に、差動信号は(式4)となるであろう。
【0029】

【0030】
50%のデューティサイクル、即ち、η=1/2では(式4)は(式5)の結果をもたらす。
【0031】

【0032】
25%のデューティサイクル、即ち、η=1/4では(式4)は(式6)の結果をもたらす。
【0033】

【0034】
(式5)の50%のデューティサイクル項を考慮するなら、変調器14の電流変換(相互コンダクタンス段18の差動出力から負荷電流Ic1及びIc2まで)は、(式7)のように導出できる。
【0035】

【0036】
ここで、Iin,diffは、ミキサ段20への差動電流入力であり、相互コンダクタンス段18の差動出力電流と同じである。
【0037】
ここで、(式6)の25%のデューティサイクル項を考慮すると、出力電流は(式8)となる。
【0038】

【0039】
ミキサ負荷回路22は局部発振器周波数fLOで共振すると仮定すると、負荷電流の基本音(n=0)の振幅は、25%のデューティサイクル動作に対しては、Iin,diff・√2 /πである。比較すると、(式7)の負荷電流の基本音(n=0)の振幅は、局部発振器信号における50%のデューティサイクルという従来の使用を仮定すると、Iin,diff・2/πである。これらの表現を考慮すると、電流と雑音における対応する削減のため、電力においては3dBの削減があるがSNRでは何ら劣化がなく、25%のデューティサイクルで変調器14は動作できるということが分かる。
【0040】
図5は、デューティサイクルηの関数としてsin2(πη)/ηをプロットし、更に、25%のデューティサイクルで変調器14を動作させる1つ以上の利点を示している。もっと詳しくは、(式4)の基本音から、変調器の出力電力はsin2(πη)に比例し、同様に、sin2(πη)/ηはSNRに比例する、ということが分かる。またなお、雑音電力はデューティサイクルηに直接依存している。更に、プロット比は約0.37で最大となる、ということが分かる。しかしながら、0.37のデューティサイクルは実際的でないし、または、少なくとも明らかに0.25のデューティサイクルを発生するより複雑である。実際、所望の周波数の入力クロック信号から、または、そのある倍数で、局部発振器回路12により、例えば、フリップフロップとデジタル遅延ゲートとを使用して、信頼性高くきれいに、0.25のデューティサイクルは発生できる。更に、ジョンソン・カウンタ、直交電圧制御発振器(VCO)、或は、ロジックサポートを持たせた2分周回路を使用してもよい。
【0041】
局部発振器回路12に実装された生成の詳細にかかわらず、プロット比は、従来使用した0.5のデューティサイクルで持つ値と、0.25のデューティサイクルで持つ値とが同じであることが理解できる。50%のデューティサイクルでの従来の動作と比較して、このSNRの不変性は生じているが、それは、変調器の相互コンダクタンス電流源は半分の時間、オンであり、従って、ミキサ回路負荷22に転送される全雑音電力は半分であるという理由からである。
【0042】
同じか同様の25%のデューティサイクル信号を、図6に示す変調器14の実施例に適用してもよい。そして、理解すべきことは、変調器14の実施例は、図1の変調回路10に代用できるということである。勿論、図6に示す変調器14は、図2に示すような変調器14の実施例に対して、25%のデューティサイクルを持つ局部発振器信号をそれに提供することに依存しないという有利な点があることを更に理解すべきである。しかしながら、その状況で使用した場合、優れた性能を備える。
【0043】
もっと詳細には、図6に示す変調器14は、とりわけ変調器14の改善した出力電圧振幅能力を提供するミキサと相互コンダクタンス段とを組合わせた回路28とを含む。増加した出力電圧振幅は、同じ入力電力に対して変調器14の出力電力を増加する、即ち、その効率を改善する。
【0044】
図6に示すミキサと相互コンダクタンス段とを組合わせた回路28の注目すべき特徴の一つは、局部発振器信号により駆動されるスイッチングトランジスタが、ベースバンド情報信号による駆動される相互コンダクタンストランジスタの底部に移される点にある。もっと詳細には、ミキサと相互コンダクタンス段とを組合わせた回路28は、変調器14への変調入力としての役目を果たす各ベースバンド情報信号のためのトランジスタ回路を含む。各トランジスタ回路は、ベースバンド情報信号により駆動され、変調器出力ノードを対応する相互コンダクタンス素子に結合する第1のトランジスタと、1つ以上の局部発振器信号のうちの1つにより駆動され、対応する相互コンダクタンス素子を信号接地ノードに結合する第2のトランジスタとを備える。
【0045】
この構成は簡単に見え、例えば、トランジスタM14は1つのトランジスタ回路の第1のトランジスタを表わし、レジスタR6は対応する相互コンダクタンス素子を表わし、トランジスタM15は同じトランジスタ回路の第2のトランジスタを表わす。更に、トランジスタM14は、−差動ベースバンド信号ペアVIpとVInの正の成分で示される−ベースバンド情報信号の1つによって駆動され、トランジスタM14は、変調器出力ノード30と32を相互コンダクタンス素子R6の一端に結合する。R6の他端は、トランジスタM15を介して信号接地つまり基準ノード34に結合され、トランジスタM15は、−差動局部発振器信号ペアLOIpとLOInの正の成分で示される−局部発振器信号の1つによって駆動される。相互コンダクタンス・トランジスタM16〜M28(偶数)と、それらに対応する相互コンダクタンス素子R7〜R13と、スイッチングトランジスタM15〜M29(奇数)は、同様の動作を提供する。またなお、スイッチングトランジスタM15〜M29(奇数)を相互コンダクタンス・トランジスタM14〜M28(偶数)のドレインまたはゲートに置くこともできる。
【0046】
いずれの場合にせよ、差動信号構成にとって、ミキサと相互コンダクタンス段とを組合わせた回路28は一般的に、差動信号ペアにおける各差動信号に対して図示の一対のトランジスタ回路を含む。この構成が、図2の変調器の実施例に関して図示された相互コンダクタンス段回路18に比較して、電流源の数を実効的に2倍にするが、相対的電流レベルは半減し、SNRは維持される。更に、上記で注意したように、図示された回路構成は、改善した出力電圧振幅を提供する。もっと詳細には、図2で、スイッチングトランジスタ−局部発振器信号により駆動されるトランジスタ−は、ミキサ負荷と相互コンダクタンス・トランジスタ即ちベースバンド情報信号により駆動されるトランジスタとの間に現れることが分かる。その回路構成の意味するところは、スイッチングトランジスタ、即ち、図2のトランジスタM2、M3、M5、M6、M8、M9、M11、及びM12は、出力電圧無歪限界の200〜300ミリボルトを消費するということである。対照的に、図6のスイッチングトランジスタM15〜M29(奇数)は相互コンダクタンス素子(レジスタR6〜R13)の下に含まれ、それ故、それらの抵抗に実効的に包含される。
【0047】
図7は、図6の変調器14と共に用いられるかもしれない局部発振器信号波形とベースバンド信号波形の一実施例を示している。図3の波形と同様に、図7は、下から上の順に、LOIp信号、LOIp−LOIn差動信号、VIp−VIn差動信号、VQp−VQn差動信号、及び、VRF_OUT信号である。勿論、当業者は認識するであろうが、図示の信号レベルは単に非限定的例の目的でのみ備えられたものである。
【0048】
しかしながら、注意すべきことであるが、スイッチングトランジスタM15〜M29(奇数)を相互コンダクタンス・トランジスタM14〜M28(偶数)の下に置くことにより、とりわけ、局部発振器信号のために削減した振幅を使用するという利点を提供している。このことを理解するため、ミキサ段回路20においてトランジスタM2/M3、M5/M6、M8/M9、及び、M11/M12として示される図2のスイッチングトランジスタを参照するとよい。それらのトランジスタのゲートに印加される駆動電圧は、トランジスタを十分にオンにすることを保証するため、十分なマージンを持ってゲート−ソース間閾値電圧を超えなければならない。それらのトランジスタのゲート−ソース間電圧は、相互コンダクタンス段18の各ソースノードに現れる電圧を基準にするので、LOIp/LOIn及びLOQp/LOQnの印加駆動電圧は、図6のミキサと相互コンダクタンス段とを組合わせた回路28に対する印加駆動電圧より高くなければならない。即ち、図6のスイッチングトランジスタM15〜M29(奇数)のゲート−ソース間電圧は、共通信号接地ノード34を基準にしており、このことは、局部発振器信号に対して比較的低い振幅を使用して、デューティサイクルに無関係に、これらのトランジスタを十分にオンにすることができるということを意味している。
【0049】
これらおよび他の利点を考慮して、図8は変調器14のもう一つの実施例を図示している。ここでは、ミキサと相互コンダクタンス段とを組合わせた回路40は、シングルエンド動作用に構成される。ここで、第1のトランジスタ回路は、共通変調器出力ノードを対応する相互コンダクタンス素子R15に結合する第1のトランジスタM30を備える。次に、その相互コンダクタンス素子は、第2のトランジスタM31を介して共通信号基準ノードに結合される。トランジスタM30は、差動ベースバンド情報信号ペアVIp/VInの1つの成分によって駆動され、トランジスタM31は、差動局部発振器信号ペアLOIp/LOInの1つの成分によって駆動される。トランジスタM32/M33、M34/M35、M36/M37、及びそれらに対応する相互コンダクタンス素子R16、R17、及びR18は、差動信号VIp/VIn、VQp/VQn、LOIp/LOIn、及びLOQp/LOQnの残りの成分に同様の機能を提供する。
【0050】
ミキサ負荷回路22は、電源電圧(VCC)と共通変調器出力ノード36との間にシングルエンド接続を提供することにより、ミキサと相互コンダクタンス段とを組合わせた回路40のシングルエンド構成を補完する。ミキサ負荷回路22を異なるように構成できることを理解すべきであるが、図示の実施例には、C3、L5、及びR19を含む並列RLC回路を備える。
【0051】
また、無線通信基地局および移動局で使用される無線周波数トランシーバのタイプにおけるような、変調信号の生成と伝送に関与する種々の応用で変調回路10を使用できることも理解すべきである。例えば、図9は、ここで説明した変調回路10の実施例を含む無線通信デバイス50の一実施例を図示している。なお、しかしながら、変調回路10の各種構成要素は、完全に集積されているというよりは、むしろ、通信デバイス50内で分散されてもよい。
【0052】
図示の実施例では、例えば、セルラ無線電話機、PDA、無線ページャ等であるかもしれない無線通信デバイス50は、送信/受信アンテナ52、スイッチ/デュープレクサ54、受信機56、送信機58、ベースバンド処理回路60、システム制御回路62、入力/出力(インタフェース)回路64、およびユーザインタフェース回路66を備える。理解されるように、ユーザインタフェース回路66はデバイス50の意図する機能に従って変わるであろうし、それ故、ディスプレイ画面、キーパッド、マイクロフォン、及びスピーカを含むかもしれない。
【0053】
とにかく、送信機58の変調器14への入力のためにベースバンド情報信号−例えば、直交信号−を生成するよう、1つ以上の汎用または特殊用途のマイクロプロセッサおよび対応するプログラム命令を備えるかもしれないベースバンド処理回路60が構成されてもよい。同様に、変調器14への入力のために局部発振器信号を生成するよう、ベースバンド処理回路60による命令/制御の下で動作してもよい局部発振器回路12が構成され、このようにして、ベースバンド情報信号に従って変調した1つ以上の伝送用搬送波信号を送信機58の電力増幅回路16に提供する。
【0054】
上記の適用範囲と実施例を考慮するなら、本発明は、前述の説明によって制限されず、また添付図面によっても制限されるものではないことを理解すべきである。それよりむしろ、本発明は請求の範囲とそれらの法的均等物によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数での送信機に用いられる変調回路であって、
前記変調回路は、
所望の周波数で、25%或は約25%のデューティサイクルで1つ以上の局部発振器信号を生成するよう構成された局部発振器回路と、
前記1つ以上の局部発振器信号と、1つ以上のベースバンド情報信号とに応じて、1つ以上の変調信号を生成するよう構成された変調器とを備えることを特徴とする変調回路。
【請求項2】
前記変調器は、
前記1つ以上のベースバンド情報信号に応じて、1つ以上の電流信号を生成するよう構成された相互コンダクタンス段回路と、
前記1つ以上の電流信号と前記1つ以上の局部発振器信号とに応じて、1つ以上のミキサ出力信号を生成するよう構成されたミキサ段回路とを有することを特徴とする請求項1に記載の変調回路。
【請求項3】
前記変調器は、前記変調器への変調入力としての役目を果たすベースバンド情報信号各々に対するトランジスタ回路を含むミキサと相互コンダクタンスとを組合せた回路を有し、
前記トランジスタ回路各々は、
前記ベースバンド情報信号により駆動され、変調器出力ノードを対応する相互コンダクタンス素子に結合する第1のトランジスタと、
前記1つ以上の局部発振器信号の1つにより駆動され、前記対応する相互コンダクタンス素子を信号接地ノードに結合する第2のトランジスタとを有することを特徴とする請求項1に記載の変調回路。
【請求項4】
前記局部発振器回路は、前記1つ以上の局部発振器信号を同相信号と直交信号として生成するよう構成されることを特徴とする請求項1に記載の変調回路。
【請求項5】
前記局部発振器回路は、前記変調器のミキサ部におけるトランジスタベースのスイッチのためのトランジスタ駆動信号として、前記1つ以上の局部発振器信号を生成するよう構成されることを特徴とする請求項1に記載の変調回路。
【請求項6】
前記局部発振器回路は、前記1つ以上のベースバンド情報信号により駆動される1つ以上の相互コンダクタンストランジスタと、前記1つ以上の局部発振器信号により駆動される1つ以上のスイッチングトランジスタとを有することを特徴とする請求項1に記載の変調回路。
【請求項7】
前記1つ以上の相互コンダクタンストランジスタ夫々は、
前記1つ以上のベースバンド情報信号によって駆動されるベース或はゲートと、負荷回路に結合されるコレクタ或はドレインと、相互コンダクタンス素子に結合されるエミッタ或はソースとを有するトランジスタを含み、
前記1つ以上のスイッチングトランジスタ夫々は、
前記1つ以上の局部発振器信号の1つによって駆動されるベース或はゲートと、前記相互コンダクタンス素子の1つに結合されるコレクタ或はドレインと、信号接地に結合されるエミッタ或はソースとを有するトランジスタとを含むことを特徴とする請求項6に記載の変調回路。
【請求項8】
前記局部発振器回路は、前記1つ以上の局部発振器信号を、前記信号接地を基準として、前記スイッチングトランジスタのターンオン閾値電圧を超える所望の量の電圧レベルに対応する振幅で発生するよう構成されていることを特徴とする請求項7に記載の変調回路。
【請求項9】
変調入力としての役目を果たすベースバンド情報信号各々に対するトランジスタ回路を含むミキサと相互コンダクタンスとを組合せた回路を有する変調器であって、
前記トランジスタ各々には、
前記ベースバンド情報信号により駆動され、変調器出力ノードを対応する相互コンダクタンス素子に結合する第1のトランジスタと、
1つ以上の局部発振器信号の1つにより駆動され、前記対応する相互コンダクタンス素子を信号接地ノードに結合する第2のトランジスタとを有することを特徴とする変調器。
【請求項10】
前記ベースバンド情報信号は、差分信号ペアを有し、
前記ミキサと相互コンダクタンスとを組合せた回路は、前記差分信号ペアにおける各差分信号に対する1対のトランジスタ回路を含むことを特徴とする請求項9に記載の変調器。
【請求項11】
局部発振器が前記変調器に含まれるか、或は関係し、
前記局部発振器は、所望の周波数で、25%或は約25%のデューティサイクルで前記1つ以上の局部発振器信号を生成するよう構成されていることを特徴とする請求項9に記載の変調器。
【請求項12】
前記局部発振器は、25%或は約25%のデューティサイクルをもち、前記信号接地を基準として前記第2のトランジスタのターンオン電圧の関数として決定される振幅をもつ実質的に矩形の波形信号として前記局部発振器信号を生成するよう構成されていることを特徴とする請求項11に記載の変調器。
【請求項13】
前記変調器は、変調入力として、同相ベースバンド情報信号と対応する直交ベースバンド情報信号とを受信するよう構成された同相及び直交変調器を有することを特徴とする請求項9に記載の変調器。
【請求項14】
1つ以上のベースバンド情報信号を所望の周波数にアップコンバートするように構成された変調器の動作を改善する方法であって、前記方法は、
前記所望の周波数で、25%或は約25%のデューティサイクルで1つ以上の局部発振器信号を生成する工程と、
前記1つ以上の局部発振器信号で前記変調器の対応する局部発振器信号入力を駆動する工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項15】
変調回路を有する無線通信デバイスであって、
所望の周波数で、25%或は約25%のデューティサイクルで1つ以上の局部発振器信号を生成するよう構成された局部発振器回路と、
前記1つ以上の局部発振器信号と、1つ以上のベースバンド情報信号とに応じて、1つ以上の変調信号を生成するよう構成された変調器とを備えることを特徴とする無線通信デバイス。
【請求項16】
前記変調器は、前記変調器への変調入力としての役目を果たすベースバンド情報信号各々に対するトランジスタ回路を含むミキサと相互コンダクタンスとを組合せた回路を有し、
前記トランジスタ回路各々は、
前記ベースバンド情報信号により駆動され、変調器出力ノードを対応する相互コンダクタンス素子に結合する第1のトランジスタと、
前記1つ以上の局部発振器信号の1つにより駆動され、前記対応する相互コンダクタンス素子を信号接地ノードに結合する第2のトランジスタとを有することを特徴とする請求項15に記載の無線通信デバイス。
【請求項17】
前記ベースバンド情報信号は、差分信号ペアを有し、
前記ミキサと相互コンダクタンスとを組合せた回路は、前記差分信号ペアにおける各差分信号に対する1対のトランジスタ回路を含むことを特徴とする請求項16に記載の無線通信デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−199989(P2012−199989A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−127455(P2012−127455)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【分割の表示】特願2008−542761(P2008−542761)の分割
【原出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】