説明

変速機の評価方法及び評価装置

【課題】変速機におけるパーキング機構等の特定部位にトルクを付与して機能の評価試験を行う際に、坂路上の実車に対して評価試験するのと同等の状況を再現し得る変速機の評価方法を提供する。
【解決手段】トルク発生部18にて錘部材13の自由落下で所定トルクを発生させてドライブシャフト7,9に瞬時に付与するトルク付与工程と、ブレーキ部15,16を係止して、所定トルクを付与した際のドライブシャフト7,9に歪みが発生した状態を保持した後、Pレンジであった自動変速機2のレンジをNレンジに切換えてドライブシャフトの捩れを解放し、該解放時のトルクを検出する解放時トルク検出工程とを含むので、ブレーキ部を実車のフットブレーキ相当として用い、フットブレーキ係止状態でパーキングロックを解除した際と同等の機能評価を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機に備えたパーキング機構等の特定部位にトルクが作用した際の機能評価を行う変速機の評価方法及び評価装置に係り、特に、変速機を搭載した実車を使用した場合と同等の動的な負荷を特定部位に作用させ得る変速機の評価方法及び評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機に備えたパーキング機構の機能(負荷に対する強度等)の確認のために該パーキング機構にトルクを付与するパーキングトルク負荷装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記パーキングトルク負荷装置は、一端が自動変速機の出力軸に連結された軸と、該軸の他端に固着されたピニオンと、該ピニオンに噛合可能に配設されて直線運動軸受上を上記出力軸と直交する方向に移動するように配置されたラックと、該ラックを出力軸と直交する方向に移動させ、自動変速機の作動に応じてピニオン及びラックの双方を噛合させて自動変速機にトルク(回転トルク)を掛けたり解除したりする駆動機構とを備えている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−38760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のパーキングトルク負荷装置では、パーキング機構のパーキングポールをパーキングギヤに噛み合わせた状態で上記出力軸を介してトルクを作用させる場合、シリンダの作動で移動するラックに噛合するピニオンの回転で出力軸へのトルクの付与・解除を行うため、静的な負荷変化(トルク変化)としてのみ現れる。このため、坂路上の実車にあって、フットブレーキを踏みつつシフトレバーをパーキングレンジ(Pレンジ)に操作して該フットブレーキを解放した際、車重によって瞬時に作用するような動的負荷を再現することはできない。
【0006】
また実車の場合、フットブレーキを踏み込んだ状態でパーキング機構を解除するように操作する関係上、上記パーキング操作時に生じたドライブシャフトの捩れが解放されると、今度は自動変速機の出力軸側が捩られるような逆向きのトルクが作用することになるが、上記パーキングトルク負荷装置では、このような状態も再現することはできなかった。従って、坂路上の実車に対する評価試験を行うような状況を再現し得る評価方法や該方法を容易に実施し得る評価装置の実現が切望される。
【0007】
そこで本発明は、変速機におけるパーキング機構等の特定部位にトルクを付与して機能(負荷に対する特定部位の強度等)を評価試験する際に、坂路上の実車に対して評価試験するのと同等の状況を再現し得る変速機の評価方法及び評価装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は(例えば図1ないし図5参照)、所定位置(3a)にセットした変速機(2,42)の特定部位にトルク発生部(18)から該変速機の出力軸(7,9)を介して所定トルクを与えて機能確認を行う変速機の評価方法において、
前記トルク発生部(18)にて錘部材(13)の自由落下で前記所定トルクを発生させて前記出力軸(7,9)に瞬時に付与するトルク付与工程と、
前記トルク発生部(18)と前記出力軸(7,9)との間に備えたブレーキ部(15,16)を係止し、前記変速機(2,42)のレンジをパーキングレンジに切換えた状態で、前記所定トルクを付与した際の前記出力軸(7,9)に歪みが発生した状態を保持した後、前記変速機(2,42)のレンジをニュートラルレンジに切換えて前記出力軸(7,9)の捩れを解放して、該解放時のトルクを検出する解放時トルク検出工程と、を備える、
ことを特徴とする変速機の評価方法にある。
【0009】
なお、「自由落下」は厳密には空気抵抗や摩擦等の影響を受けない場合の現象を意味するが、本発明における「自由落下」は、空気抵抗や摩擦等の影響を受ける場合の現象をも含む広い概念である。
【0010】
請求項2に係る本発明は(例えば図1ないし図5参照)、前記トルク付与工程と前記解放時トルク検出工程との間にあって、前記所定トルクを付与した際の前記出力軸(例えば9)の歪みに基づき、前記特定部位に作用したトルクを検出するトルク検出工程を更に備える、
請求項1記載の変速機の評価方法にある。
【0011】
請求項3に係る本発明は(例えば図1及び図5参照)、前記特定部位は、前記変速機(2,42)内に備えられたパーキング機構である、
請求項1又は2記載の変速機の評価方法にある。
【0012】
請求項4に係る本発明は(例えば図1及び図5参照)、前記特定部位は、前記変速機(2,42)内の変速機構に備えられたワンウェイクラッチである、
請求項1又は2記載の変速機の評価方法にある。
【0013】
請求項5に係る本発明は(例えば図1ないし図5参照)、所定位置(3a)にセットした変速機(2,42)の特定部位に該変速機の出力軸(7,9)を介して所定トルクを与えて機能確認を行う変速機の評価装置(1)において、
錘部材(13)の自由落下により前記所定トルクを発生させるトルク発生部(18)と、
該トルク発生部(18)と前記出力軸(7,9)とを断・接するクラッチ部(11)と、
前記出力軸(7,9)と前記クラッチ部(11)との間に位置して該出力軸(7,9)を係止するブレーキ部(15,16)と、
前記変速機(2,42)のレンジを切換えるシフト制御手段(41)と、
前記クラッチ部(11)により前記トルク発生部(18)が前記出力軸(7,9)に接続された状態で、前記トルク発生部(18)で発生した前記所定トルクを瞬時に付与した際の前記出力軸に歪みを発生した状態が前記ブレーキ部(15,16)の作動で保持された後、前記シフト制御手段(41)の制御でパーキングレンジに切換えられていた前記変速機(2,42)のレンジがニュートラルレンジに切換えられて前記出力軸(7,9)の捩れが解放された際のトルクを検出するトルク検出手段(37)と、を備える、
ことを特徴とする変速機の評価装置(1)にある。
【0014】
請求項6に係る本発明は(例えば図1ないし図5参照)、前記トルク検出手段(37)は、前記所定トルクを瞬時に付与した際の前記出力軸(例えば9)の歪みに基づき、前記特定部位に作用したトルクを検出してなる、
請求項5記載の変速機の評価装置(1)にある。
【0015】
請求項7に係る本発明は(例えば図1ないし図3、及び図5参照)、前記トルク発生部(18)は、
前記クラッチ部(11)を介して前記出力軸(7,9)に接続可能な回動支軸(8)を中心として回動自在に配置された天秤状のアーム(14)と、
前記回動支軸(8)を挟んだ前記アーム(14)の一端部に吊下された状態で前記錘部材(13)を載せ得る錘載置部材(33)と、
前記回動支軸(8)を挟んだ前記アーム(14)の他端部に連結されたワイヤ(31)を介して該アーム他端部を牽引・解放するアクチュエータ(30)と、を有してなる、
請求項5又は6記載の変速機の評価装置(1)にある。
【0016】
請求項8に係る本発明は(例えば図2参照)、前記アーム(14)は、前記回動支軸(8)と前記アーム一端部の前記錘部材(13)の吊下位置との間の距離(d)を調節し得る複数の穴部(h,h又はh,h)を有してなる、
請求項7記載の変速機の評価装置(1)にある。
【0017】
請求項9に係る本発明は(例えば図2参照)、前記アクチュエータ(30)が単一からなり、かつ、
前記アーム一端部の複数の前記穴部(例えばh,h)に前記錘部材(13)が選択的に吊下された状態で、前記アクチュエータ(30)に連結された前記ワイヤ(31)を、複数のワイヤガイド(例えば32c,32d)を介して前記アーム(14)の他端部の前記穴部(例えばh,h)に選択的に連結し得るようにした、
請求項8記載の変速機の評価装置(1)にある。
【0018】
請求項10に係る本発明は(例えば図1及び図5参照)、前記クラッチ部(11)を介して前記トルク発生部(18)からの前記所定トルクを前記出力軸(7,9)に対して異なる2方向から付与し得る一対のギヤボックス(5,6)を備えてなる、
請求項5ないし9のいずれか1項記載の変速機の評価装置(1)にある。
【0019】
請求項11に係る本発明は(例えば図1及び図5参照)、前記特定部位は、前記変速機(2,42)内に備えられたパーキング機構である、
請求項5ないし10のいずれか1項記載の変速機の評価装置(1)にある。
【0020】
請求項12に係る本発明は(例えば図1及び図5参照)、前記特定部位は、前記変速機(2,42)内の変速機構に備えられたワンウェイクラッチである、
請求項5ないし10のいずれか1項記載の変速機の評価装置(1)にある。
【0021】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る本発明によると、トルク付与工程にて、トルク発生部にて錘部材の自由落下で所定トルクを発生させて出力軸に瞬時に付与し、解放時トルク検出工程にて、トルク発生部と出力軸との間に備えたブレーキ部を係止し、変速機のレンジをパーキングレンジに切換えた状態で、所定トルクを付与した際の出力軸に歪みが発生した状態を保持した後、変速機のレンジをニュートラルレンジに切換えて出力軸の捩れを解放して、該解放時のトルクを検出するので、ブレーキ部を実車のフットブレーキ相当として用いて、該フットブレーキ係止状態でパーキングロックを解除した際の機能評価を行うことができる。これにより、坂路上の実車に対して評価試験するのと同等の状況を再現しつつ、変速機の特定部位の強度等を容易にかつ的確に評価することができる。
【0023】
請求項2に係る本発明によると、トルク付与工程と解放時トルク検出工程との間のトルク検出工程にて、所定トルクを付与した際の出力軸の歪みに基づき、特定部位に作用したトルクを検出するので、錘部材の自由落下で発生させた所定トルクを、出力軸を介して特定部位に瞬時に与えて衝撃的な負荷とすることができる。
【0024】
請求項3に係る本発明によると、特定部位が変速機内に備えられたパーキング機構であるので、坂路上の実車でパーキングレンジに操作した状況を再現して、パーキング機構の機能を適正に評価することができる。
【0025】
請求項4に係る本発明によると、特定部位が、変速機内の変速機構に備えられたワンウェイクラッチであるので、例えばヒルホールド制御におけるワンウェイクラッチの評価試験を適正に実施することができる。
【0026】
請求項5に係る本発明によると、トルク検出手段が、クラッチ部によりトルク発生部が出力軸に接続された状態で、トルク発生部で発生した所定トルクを瞬時に付与した際の出力軸に歪みを発生した状態がブレーキ部の作動で保持された後、シフト制御手段の制御でパーキングレンジに切換えられていた変速機のレンジがニュートラルレンジに切換えられて出力軸の捩れが解放された際のトルクを検出するので、ブレーキ部を実車のフットブレーキに相当するものとして用いて、フットブレーキ係止時にパーキングロックを解除した際の機能評価を実施することができ、また、該機能評価を行わない場合にブレーキ部を単に係止してトルク発生部と特定部位とを遮断することで該特定部位に負荷が不用意に作用するような虞を無くすることができる。これにより、坂路上の実車に対して評価試験するのと同等の状況を再現しつつ、変速機の特定部位の強度等を容易かつ的確に評価することができる。
【0027】
請求項6に係る本発明によると、トルク検出手段が、所定トルクを瞬時に付与した際の出力軸の歪みに基づき、特定部位に作用したトルクを検出するので、錘部材の自由落下で発生させた所定トルクを、出力軸を介して特定部位に瞬時に与えて衝撃的な負荷とすることができる。
【0028】
請求項7に係る本発明によると、トルク発生部が、クラッチ部を介して出力軸に接続可能な回動支軸を中心として回動自在に配置された天秤状のアームと、回動支軸を挟んだアームの一端部に吊下された状態で錘部材を載せ得る錘載置部材と、回動支軸を挟んだアームの他端部に連結されたワイヤを介して該アーム他端部を牽引・解放するアクチュエータとを有するので、錘載置部材に錘部材を載せた状態でアクチュエータの作動でアーム他端部を牽引してアームを回動させ、錘載置部材を持ち上げて所定トルクを特定部位に付与できる状態に、容易にスタンバイさせておくことができる。
【0029】
請求項8に係る本発明によると、アームが、回動支軸とアーム一端部の錘部材の吊下位置との間の距離を調節し得る複数の穴部を有するので、穴部を選択してアームに対する錘部材の吊下位置を変更することで、回動支軸に対するてこの腕の長さ(即ち、支点からの腕の長さ)を変えて、錘部材の自由落下によるモーメント(つまりトルク)の大きさを容易に調整することができる。
【0030】
請求項9に係る本発明によると、アームの一端部の複数の穴部に錘部材が選択的に吊下された状態で、アクチュエータに連結されたワイヤを、複数のワイヤガイドを介してアームの他端部の穴部に選択的に連結し得るようにしたので、ワイヤを牽引するエアシリンダを1つのみ使用して、アームの左右どちらの牽引方向にも対処することができる。
【0031】
請求項10に係る本発明によると、クラッチ部を介してトルク発生部からの所定トルクを出力軸に対して異なる2方向から付与し得る一対のギヤボックスを備えるので、該一対のギヤボックスの双方を用いることで、出力軸を左右2軸有するFFタイプ(前輪駆動用)の自動変速機に対処することができ、また、該一対のギヤボックスの一方を用いることで、出力軸を1軸のみ有するFRタイプ(後輪駆動用)の自動変速機に対処することができる。
【0032】
請求項11に係る本発明によると、特定部位が、変速機内に備えられたパーキング機構であるので、坂路上の実車でパーキング操作した状況を再現して、パーキング機構の機能を適正に評価することができる。
【0033】
請求項12に係る本発明によると、特定部位が、変速機内の変速機構に備えられたワンウェイクラッチであるので、例えばヒルホールド制御におけるワンウェイクラッチの評価試験を適正に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る変速機の評価方法及び評価装置の第1の実施の形態を、図1ないし図4に沿って説明する。この実施の形態では、FFタイプ(フロントエンジン・フロントドライブ)の車輌に用いて好適な前輪駆動用の自動変速機2に対する評価試験を行い得る評価装置1を例に挙げて説明する。
【0035】
まず、本評価装置1の構成について図1ないし図3に沿って説明する。図1は本評価装置1を図2の矢印A方向から見た状態で示す側面図、図2は本評価装置1の正面図、図3は本評価装置1を図2の矢印B方向から見た状態で示す側面図である。なお、評価装置1は、錘部材13の重量に基づきアーム14から作用するトルクの方向を自在に反転させることで、坂路の下り坂、登り坂のいずれをも具現化できるようになっており、従って、図1における自動変速機2は、該自動変速機2が車輌に搭載された際の運転席側から見た状態であっても車輌前方側から見た状態であっても良い。
【0036】
評価装置1は、図1ないし図3に示すように、設備定盤29上に、評価対象となる自動変速機2をセットする取付け面部3aを有する支柱3と、該支柱3から評価装置1の前側に所定距離おいて立設された支柱4と、該支柱4を中心に設けられたトルク発生部18と、支柱3の一側方(図2の右側)に位置するように配置されたエアシリンダ(アクチュエータ)30と、を備えている。該エアシリンダ30は、台部材47を介して設備定盤29上に固定されている。なお、上記取付け面部3aに対する自動変速機2のセットの仕方は、金属ベルトやボルト等の固定用部材を用いても良いし、周知の他の手法によっても良いことは勿論である。
【0037】
支柱3の上下方向中間部には、評価装置1の前後方向(図1の左右方向)に延びるように長尺の支持部材35が固定されており、該支持部材35の両端部にはギヤボックス5,6がそれぞれ配置されている。支柱3の上部側には、剛性の高いドライブシャフト7,9が評価装置1の前後方向に延びており、支柱3におけるドライブシャフト7,9と支持部材35との間には、連動シャフト10が評価装置1の前後方向に延びている。
【0038】
なお、本実施の形態では、トルク発生部18で発生させたトルクを出力軸を介して自動変速機2内のパーキング機構(特定部位)に作用させるが、該出力軸としてのドライブシャフト7,9には、自動変速機2を車輌に搭載する際に用いるドライブシャフトであっても、評価装置1に予め備えられていて、取付け面部3aにセットされた自動変速機2のデファレンシャル装置25のサイドギヤ27,28のスプライン孔27a,28aにスプライン嵌合されるドライブシャフトであっても良いことは勿論である。
【0039】
ドライブシャフト9には、アーム14側から作用するトルクに起因する該ドライブシャフト9の歪み(せん断歪み)を検出する歪みゲージ22が、接着剤等により直接固定されている。該歪みゲージ22は、アーム14側から作用するトルクに起因したギヤ20に対するドライブシャフト9の歪みを、制御部36のトルク算出手段(トルク検出手段)37に電気的に伝える。ドライブシャフト9に固定された歪みゲージ22は、該シャフト9における反対側の部分にも同様に固定されており、当該ドライブシャフト9の外周面に固定された2個により歪みを検出する。該歪みゲージ22は、電気接続ケーブル23を介して制御部36のトルク算出手段37に接続されている。なお、歪みゲージ22は、2個に限らず、ドライブシャフト9の外周面における3箇所或いは4箇所に等角度間隔で固定されていても、同様に機能し得ることは勿論である。
【0040】
連動シャフト10は、支柱3に形成された貫通孔3cに回転自在に挿通され、かつギヤボックス5,6側にてそれぞれ回転自在に支持された状態において、ギヤボックス5内でギヤ19の中心部に一端が固定され、他端が、ギヤボックス6内でギヤ21を貫通した形でクラッチ部11の摩擦板11aに、スプライン等で相対回転を規制した形で連結されている。該ギヤ21は連動シャフト10に固定されている。クラッチ部11内にて摩擦板11aに対向する摩擦板11bの中心部には、支柱4の上部側に形成された貫通孔4aに回転自在に挿通された回動支軸8の一端が、スプライン等で相対回転を規制した形で連結されている。該回動支軸8の他端は、天秤状に支持されたアーム14における長手方向中央部分に固定されている。
【0041】
クラッチ部11は、後述するクラッチ制御手段38の制御で不図示のアクチュエータを作動させ、摩擦板11a,11bを圧接して係合させたり離間させて係合解除したりする。ブレーキ部15は、後述するブレーキ制御手段39の制御で不図示のアクチュエータを作動させ、摩擦板15a,16aを係止したり係止解除したりする。
【0042】
ドライブシャフト7は、支柱3に形成された貫通孔3bに回転自在に挿通された状態で、ギヤボックス5を回転自在な形で貫通してブレーキ部15の摩擦板15aの中心に固定されている。ギヤボックス5内では、ギヤ17がその中心を貫通したドライブシャフト7に固定された状態でギヤ19に噛合している。ドライブシャフト9は、ギヤボックス6を回転自在な形で貫通してブレーキ部16の摩擦板16aの中心に固定されている。ギヤボックス6内では、ギヤ20がその中心を貫通したドライブシャフト9に固定された状態でギヤ21に噛合している。なお、符号26はベアリングを示している。
【0043】
また、上記トルク発生部18は、図2に示すように、支柱4の上部側にて回動支軸8で長手方向の中央部を回動自在に支持された天秤状のアーム14を有し、該アーム14の一端部に錘載置籠(錘載置部材)33を介して吊り下げた錘部材13を一気に自由落下させることで、該アーム14の回動中心に所定のトルクを発生させるように構成されている。
【0044】
なお、「自由落下」は厳密には空気抵抗や摩擦等の影響を受けない場合の現象を意味するが、本実施の形態における「自由落下」は、空気抵抗や摩擦等の影響を受ける場合の現象をも含む広い概念である。
【0045】
上記アーム14は、図2の左方にて所定間隔をあけて2箇所形成された穴部h,hと、図2の右方にて所定間隔をあけて2箇所形成された穴部h,hとを有している。穴部hと穴部hは回動支軸8からの距離d(てこの腕の長さ)が同じになるように形成されており、これら穴部h,hの回動支軸8側に位置する穴部h,hも該回動支軸8からの距離d(てこの腕の長さ)が同じになるように形成されている。
【0046】
設備定盤29は、図2における支柱4の左方に所定の距離をおいて2箇所配置されたワイヤガイド32a,32bを有し、図2における支柱4の右方に所定の距離をおいて2箇所配置されたワイヤガイド32c,32dを有している。ワイヤガイド32aとワイヤガイド32dは支柱4からの距離が同じになるように配置されており、これらワイヤガイド32a,32dの支柱4側に位置するワイヤガイド32b,32cも、該支柱4からの距離が同じになるように配置されている。なお、図2における符号34は、各ワイヤガイドの支持部を示している。
【0047】
図2では、アーム14の一端部(左端部)の穴部hにチェーン12上端の鉤部12a(図1も併せて参照)が引っ掛けられ、また、アーム14の他端部(右端部)の穴部hにアーム引上げ用ワイヤ(ワイヤ)31上端の鉤部31a(図3も併せて参照)が引っ掛けられ、かつ該アーム引上げ用ワイヤ31がワイヤガイド32dに巻き掛けられて水平方向に方向を変えられた後、ワイヤガイド32cに巻き掛けられてエアシリンダ30側に方向を変えられて該エアシリンダ30に接続されている。図2における評価装置1は、エアシリンダ30が牽引方向に作動してアーム引上げ用ワイヤ31を牽引してアーム14を水平状態に保持して、錘載置籠33に載せた錘部材13を設備定盤29から上昇させている。
【0048】
なお、エアシリンダ30に連結したアーム引上げ用ワイヤ31をワイヤガイド32cに反対側から巻き掛けた後、ワイヤガイド32aに巻き掛けて穴部h又はhに鉤部31aを係合させると共に、穴部h又はhに鉤部12aを係合させて錘載置籠33を吊り下げることで、1つのエアシリンダ30を用いながらも、アーム引上げ用ワイヤ31の解放時に、上記とは異なる方向のトルクを回動支軸8に作用させることができる。
【0049】
上記構成を有する評価装置1は、図1に示すように、各部を統括的に制御する制御部36と、評価試験を行う際の種々の操作入力を行う操作部44とを有している。制御部36は、トルク算出手段(トルク検出手段)37、クラッチ制御手段38、ブレーキ制御手段39、エアシリンダ制御手段40、及びシフト制御手段41を有している。操作部44は、評価装置1における任意の場所(例えば支柱3や支柱4の下部側)に配置されるもので、評価試験を開始させるための開始ボタン45と、開始された評価試験を停止させるための停止ボタン46とを有している。開始ボタン45の操作後は、一連の作動(つまり、図4の時点t〜t)が終了するまで、或いは停止ボタン46が操作されるまで、エアシリンダ30、クラッチ部11、及びブレーキ部15が自動的に制御される。
【0050】
なお、本実施の形態では、評価装置1での一連の評価試験を制御部36の制御で自動的に行うものとして説明するが、これに限らず、オペレータがエアシリンダ30、クラッチ部11、及びブレーキ部15を順次手動で操作して評価試験を実施するようにすることも可能である。その場合も、自動制御の際と略々同様の効果を得ることができる。
【0051】
トルク算出手段37は、歪みゲージ22による検出結果に基づき、ドライブシャフト9に作用したトルク値を算出する。即ち、トルク算出手段37は、歪みゲージ22に電気信号を印加し、ドライブシャフト9の歪みに起因して該歪みゲージ22から出力される電気信号を受信する。そして、該トルク算出手段37は、受信した該電気信号に基づき、ドライブシャフト9に作用したトルク値を算出する。トルク算出手段37は、歪みゲージ22からの出力信号(電気信号)を増幅する不図示の増幅器を有しており、該増幅器で増幅された歪みゲージ22の出力電圧に基づき、ドライブシャフト9に作用したトルク値を算出(検出)する。
【0052】
クラッチ制御手段38、ブレーキ制御手段39及びエアシリンダ制御手段40は、開始ボタン45のオン操作で評価試験が開始されると、相互の連動タイミングをとりながら、クラッチ部11、ブレーキ部15及びエアシリンダ30をそれぞれに作動制御する。なお、本実施の形態におけるエアシリンダ30は、図2のようにアーム引上げ用ワイヤ31を牽引して錘部材13を持ち上げた状態から錘部材13を落下させるにあたり、エアを抜かれたときにアーム引上げ用ワイヤ31を一気に解放できるように構成されており、これにより、錘部材13を瞬時に自由落下させる。
【0053】
つづいて、上記構成に基づき、評価装置1を使用して行う評価方法について図4を併せて参照しつつ説明する。なお、図4は、評価装置1の各部の作動タイミングを示すタイムチャートであり、(a)はエアシリンダ(アーム上下用シリンダ)30の作動タイミングを示し、(b)はシフト制御手段41の制御によるシフトレバー(図示せず)の操作状況を示し、(c)はクラッチ部11の作動タイミングを示し、(d)はブレーキ部15,16の作動タイミングを示している。(e)は歪みゲージ22を介してトルク算出手段37が算出したトルクを従来技術の場合と比較して示すグラフであり、縦軸にトルク、横軸に時間をそれぞれとっている。(e)のグラフにおいて、従来技術を破線で、本実施の形態を実線でそれぞれ示している。また、本実施の形態において、上記不図示のシフトレバーは、評価装置1の適宜の位置に配置され、不図示のワイヤ等を介して自動変速機2内のパーキング機構に連動連結されると共に、上記シフト制御手段41の制御に基づくシフト駆動部(図示せず)の作動によってレンジを切換えられる(シフトされる)。
【0054】
評価試験の開始にあたり、まず、エアシリンダ30のエアを抜いて、穴部hに吊り下げたアーム引上げ用ワイヤ31を緩めて錘載置籠33を設備定盤29上に下降させ、穴部hに吊り下げた錘載置籠33に所要の重量の錘部材13を載せる。この場合、錘載置籠33は回動支軸8から距離dだけ離れた穴部hに吊り下げられているため、錘部材13の重量は、重量w×距離dにおいて、回動支軸8、クラッチ部11及びギヤボックス5,6を介してドライブシャフト7,9に、搭載を想定する車輌の重量相当のトルクを作用させ得るようなものとされる。
【0055】
アーム14が回動支軸8を中心に矢印D方向に回動して錘載置籠33が設備定盤29上に載った状態において、開始ボタン45をオン操作する。すると、図4の(a)に示すように、エアシリンダ制御手段40の制御でエアシリンダ30が牽引方向に作動して(時点t)アーム引上げ用ワイヤ31を牽引する。このため、アーム14の錘載置籠33側が上昇して錘部材13が図2の状態に吊り上げられ、この状態にてエアシリンダ30が停止して待機する。このとき、シフト制御手段41の制御で不図示のシフトレバーはニュートラルレンジ(Nレンジ)にシフトされ(図4の(b)参照)、クラッチ部11は非係合状態(OFF状態)にあり(図4の(c)参照)、ブレーキ部15,16は非係止状態(OFF状態)にあり(図4の(d)参照)、ドライブシャフト7,9に対するトルクは0[Nm]となっている(図4の(e)参照)。
【0056】
そして、時点tにおいてシフトレバーがシフト制御手段41の制御でパーキングレンジ(Pレンジ)に切り換えられると、時点tにおいてクラッチ制御手段38の制御でクラッチ部11が係合状態(ON状態)となる。更に、時点tにおいてエアシリンダ制御手段40の制御で、アーム引上げ用ワイヤ31を介して錘載置籠33を支えていたエアシリンダ30が一気にエアを開放するため、該ワイヤ31が解放されて錘載置籠33(錘部材13)が瞬時に自由落下する。これにより、アーム14が図2の水平状態から、錘部材13の重量に準じて矢印D方向に一気に回動するため、クラッチ部11及びギヤボックス5,6を介して自動変速機2のドライブシャフト7,9から、該自動変速機2内で噛み合っているパーキング機構(図示せず)にトルクが一気に作用する。この際、自動変速機2内においてドライブシャフト7,9に連結している不図示のパーキングギヤの谷部分に係合したパーキングポールの先端に動的な負荷(トルク)が一気に掛かるため、図4の(e)に示すように、従来はリニアに変化していた負荷(破線b)が波状に変化(実線a)することになり、実車においてフットブレーキを踏んだ状態でPレンジに操作してからフットブレーキを離した状況を忠実に再現することができる。
【0057】
この直後の時点tにおいて、ブレーキ制御手段39の制御でブレーキ部15,16が係止状態(ON状態)となるため、今度は、パーキング機構のロック状態で、フットブレーキを踏み込んでパーキングロックを解除する際の状況を再現することになる。すなわち、波状に変化するトルク(実線a)が安定し、かつブレーキ部15,16が係止した状況下で、時点tにおいてPレンジにある不図示のシフトレバーがNレンジに切り換えられるため、実車においてフットブレーキを踏んだ状態でNレンジに操作したときと同様の状態が再現される。
【0058】
これにより、時点tではドライブシャフト7,9の捩れが一気に開放されて、実線aとは逆向きの波状に変化するトルク(実線a)が現れる。ここで、従来技術によれば、本実施の形態における実線aの波形変化は破線bで示されるようにリニアに現れ、本実施の形態における実線aの波形変化は破線bで示されるようにリニアに現れるため、静的負荷しか得られず、本実施の形態のような動的負荷を得ることができない。この後、波状に変化するトルク(実線a)が安定し、係止状態(ON状態)だったブレーキ部15,16が時点tにおいて解除され、その後、時点tにおいてクラッチ部11が係合を解除されて、一連の評価試験が終了する。
【0059】
以上のように、前述の特許文献1に示したような従来技術ではラック&ピニオンの回転にて出力軸に対するトルクの抜き差しをしていたため静的なトルク変化しか再現できなかったが、本実施の形態によれば、錘部材13を瞬時に自由落下させることで、実車と同等の動的なトルク変化を再現することができる。
【0060】
なお、以上の本実施の形態では、評価装置1を、FFタイプ用の自動変速機2に対する評価試験を実施し得るものとして説明したが、該評価装置1では、一方のギヤボックス5を使用せずに、他方のギヤボックス6に対してFRタイプ(フロントエンジン・リアドライブ)用の自動変速機(図5の自動変速機42参照)のドライブシャフトを係合させるようにして用いれば、1つの評価装置1を兼用して、FFタイプ用の自動変速機に対する評価試験と、FRタイプの自動変速機に対する評価試験の双方を実施することができる。実際には、本実施の形態の評価装置1にFRタイプの自動変速機をセットする場合、後述する図5の例を参照すると理解できるように、支持部材35及び該支持部材35上のギヤボックス6はそのままの状態で良いが、ギヤボックス5側に係合するドライブシャフト7、及び連動シャフト10における自動変速機下方の部分はいずれも取り外されることになる。
【0061】
<第2の実施の形態>
ここで、FRタイプの車輌に用いて好適な後輪駆動用の自動変速機42に対する評価試験を行い得る評価装置1を例に挙げて第2の実施の形態を説明する。なお、図5は、本第2の実施の形態における評価装置1を示す側面図である。
【0062】
本実施の形態では、第1の実施の形態における支柱3の左側に配置されていたギヤボックス5及びブレーキ部15が無く、支持部材35も左側半分が無くされた点、またFFタイプ用の自動変速機2に比して長いサイズの自動変速機42を良好にセットするために第1の実施の形態の場合に比して支柱3,4間の距離が多く確保された点、ブレーキ部15が無いことに起因してブレーキ制御手段39がブレーキ部16のみを作動制御するように構成された点が異なるが、それ以外の点は第1の実施の形態と同様である。
【0063】
本実施の形態では、自動変速機42が、エンジン(図示せず)と反対側の部位(出力軸43の突出側)をギヤボックス6に向けて支柱3の取付け面部3aにセットされる。この際、ギヤボックス6側に予め設けられているドライブシャフト(出力軸)9の先端部の内スプライン9aに、出力軸43の先端部の外スプラインが嵌合して、双方がスプライン結合される。
【0064】
以上の本実施の形態における評価装置1では、先の第1の実施の形態と同様に評価試験が実施されるが、1つの出力軸43に対する、Pレンジ操作後に坂路での車重に起因して瞬時に作用する動的負荷と、フットブレーキ相当のブレーキ部16の係止状態でPレンジからNレンジに操作された際に作用する動的負荷とを的確に再現することができる。車輌重量相当のトルクを、回動支軸8、クラッチ部11及びギヤボックス6を介してドライブシャフト9に作用させることができる。
【0065】
以上説明した第1及び第2の実施の形態では、評価試験の対象である特定部位を自動変速機2,42内のパーキング機構としていたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えばヒルホールド制御における自動変速機2,42内のワンウェイクラッチ(図示せず)を評価試験の対象である特定部位とするように使用しても良いことは勿論である。坂路等で車輌が後進しないように規制する上記ヒルホールド制御では、自動変速機2,42内の変速機構のギヤトレーンの形式にもよるが、内蔵するブレーキ等の摩擦係合要素のうちの所定のものを係止してヒルホールド制御が機能する状態にしておき、所定トルクを付与した際のドライブシャフト7,9(図5の場合は9のみ)に歪みが発生した状態を保持した後、シフト制御手段41の制御で自動変速機2,42のレンジをNレンジに切換えてドライブシャフト7,9の捩れを解放し、該解放時のトルクを検出する。この場合、ヒルホールド制御におけるワンウェイクラッチの評価試験を適正に実施することができる。
【0066】
また、上記第1及び第2の実施の形態では、本発明に係る変速機として有段の自動変速機2,42を例に挙げて説明したが、これに限らず、本発明に係る変速機を無段変速機(CVT)やハイブリッド車用の変速機構に適用することも可能である。
【0067】
以上の評価装置1を用いて評価試験する第1及び第2の実施の形態では、トルク発生部18にて錘部材13の自由落下で所定トルクを発生させてドライブシャフト7,9に瞬時に付与する工程(トルク付与工程)と、トルク発生部18とドライブシャフト7,9(図5では9のみ)との間に備えたブレーキ部15,16(図5の場合は16のみ)を係止し、自動変速機2,42のレンジをPレンジに切換えた状態で、所定トルクを付与した際のドライブシャフト7,9に歪みが発生した状態を保持した後、自動変速機2,42のレンジをNレンジに切換えてドライブシャフト7,9の捩れを解放して、該解放時のトルクを検出する工程(解放時トルク検出工程)とを含むので、ブレーキ部15,16(図5の場合は16のみ)を実車のフットブレーキ相当として用いて、該フットブレーキ係止状態でパーキングロックを解除した際の機能評価を行うことができる。これにより、坂路上の実車に対して評価試験するのと同等の状況を再現しつつ、自動変速機2,42の特定部位の強度等を容易にかつ的確に評価することができる。また、該機能評価を行わない場合にブレーキ部15,16を単に係止させてトルク発生部18と特定部位とを遮断することで、該特定部位に負荷が不用意に作用するような虞を無くすることもできる。
【0068】
更に、第1及び第2の実施の形態では、上記工程(トルク付与工程)と上記工程(解放時トルク検出工程)との間の工程(トルク検出工程)にて、所定トルクを付与した際のドライブシャフト7,9の歪みに基づき、パーキング機構等の特定部位に作用したトルクを検出するので、錘部材13の自由落下で発生させた所定トルクを、ドライブシャフト7,9(図5では9のみ)を介して特定部位に瞬時に与えて衝撃的な負荷とすることができる。
【0069】
つまり、トルク発生部18が、錘部材13の自由落下により所定トルクを発生させ、クラッチ部11が、トルク発生部18とドライブシャフト7,9(図5では9のみ)とを断・接し、トルク算出手段37が、クラッチ部11によりトルク発生部18をドライブシャフト7,9に接続した状態で、トルク発生部18で発生した所定トルクを瞬時に付与した際のドライブシャフト7,9の歪みに基づき、特定部位に作用したトルクを検出する。このため、錘部材13の自由落下で発生させた所定トルクを、ドライブシャフト7,9を介して特定部位に瞬時に与えて衝撃的な負荷とすることができ、坂路上の実車に対して評価試験するのと同等の状況を再現しつつ、自動変速機2,42の特定部位の強度等を容易かつ的確に評価することができる。
【0070】
そして、トルク発生部18が、クラッチ部11を介してドライブシャフト7,9(図5では9のみ)に接続可能な回動支軸8を中心として回動自在に配置された天秤状のアーム14と、回動支軸8を挟んだアーム14の一端部に吊下された状態で錘部材13を載せ得る錘載置籠33と、回動支軸8を挟んだアーム14の他端部に連結されたアーム引上げ用ワイヤ31を介して該アーム他端部を牽引・解放するエアシリンダ30とを有している。このため、錘載置籠33に錘部材13を載せた状態でエアシリンダ30の作動でアーム他端部を牽引してアーム14を回動させ、錘載置籠33を持ち上げて所定トルクを特定部位に付与できる状態に、容易にスタンバイさせておくことができる。
【0071】
また、第1及び第2の実施の形態では、アーム14が、回動支軸8とアーム一端部の錘部材13の吊下位置との間の距離dを調節し得る穴部h,h(又はh,h)を有するので、穴部を選択してアーム14に対する錘部材13の吊下位置を変更することで、回動支軸8に対するてこの腕の長さ(即ち、支点からの腕の長さ)を変えて、錘部材13の自由落下によるモーメント(つまりトルク)の大きさを容易に調整することができる。
【0072】
更に、アーム14の一端部の穴部h,h(又はh,h)に錘部材13が選択的に吊下された状態で、エアシリンダ30に連結されたアーム引上げ用ワイヤ31を、ワイヤガイド32a〜32dのうちの例えば32c,32dを介してアーム14の他端部の穴部h,h(又はh,h)に選択的に連結し得るようにしたので、アーム引上げ用ワイヤ31を牽引するエアシリンダ30を1つのみ使用して、アーム14の左右どちらの牽引方向にも対処することができる。
【0073】
また、第1の実施の形態では、クラッチ部11を介してトルク発生部18からの所定トルクをドライブシャフト7,9に対して異なる2方向から付与し得るギヤボックス5,6を備えるので、該一対のギヤボックス5,6の双方を用いることで、ドライブシャフト7,9を左右2軸有するFFタイプの自動変速機2に対処することができ、また、該一対のギヤボックス5,6の一方を用いることで、ドライブシャフト9を1軸のみ有するFRタイプの自動変速機42に対処することができる。
【0074】
更に、第1及び第2の実施の形態では、特定部位が、自動変速機2,42内に備えられたパーキング機構であるので、坂路上の実車でパーキング操作した状況を再現して、パーキング機構の機能を適正に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態における評価装置を図2の矢印A方向から見た状態で示す側面図。
【図2】第1の実施の形態における評価装置の正面図。
【図3】第1の実施の形態における評価装置を図2の矢印B方向から見た状態で示す側面図。
【図4】第1の実施の形態における評価装置の各部の作動タイミングを示すタイムチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態における評価装置を示す側面図。
【符号の説明】
【0076】
1 評価装置
2,42 変速機(自動変速機)
3a 所定位置(取付け面部)
5,6 ギヤボックス
7,9 出力軸(ドライブシャフト)
8 回動支軸
11 クラッチ部
13 錘部材
14 天秤状のアーム
15,16 ブレーキ部
18 トルク発生部
30 アクチュエータ(エアシリンダ)
31 ワイヤ(アーム引上げ用ワイヤ)
32a,32b,32c,32d ワイヤガイド
33 錘載置部材(錘載置籠)
37 トルク検出手段(トルク算出手段)
41 シフト制御手段
d 距離
,h,h,h 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置にセットした変速機の特定部位にトルク発生部から該変速機の出力軸を介して所定トルクを与えて機能確認を行う変速機の評価方法において、
前記トルク発生部にて錘部材の自由落下で前記所定トルクを発生させて前記出力軸に瞬時に付与するトルク付与工程と、
前記トルク発生部と前記出力軸との間に備えたブレーキ部を係止し、前記変速機のレンジをパーキングレンジに切換えた状態で、前記所定トルクを付与した際の前記出力軸に歪みが発生した状態を保持した後、前記変速機のレンジをニュートラルレンジに切換えて前記出力軸の捩れを解放して、該解放時のトルクを検出する解放時トルク検出工程と、を備える、
ことを特徴とする変速機の評価方法。
【請求項2】
前記トルク付与工程と前記解放時トルク検出工程との間にあって、前記所定トルクを付与した際の前記出力軸の歪みに基づき、前記特定部位に作用したトルクを検出するトルク検出工程を更に備える、
請求項1記載の変速機の評価方法。
【請求項3】
前記特定部位は、前記変速機内に備えられたパーキング機構である、
請求項1又は2記載の変速機の評価方法。
【請求項4】
前記特定部位は、前記変速機内の変速機構に備えられたワンウェイクラッチである、
請求項1又は2記載の変速機の評価方法。
【請求項5】
所定位置にセットした変速機の特定部位に該変速機の出力軸を介して所定トルクを与えて機能確認を行う変速機の評価装置において、
錘部材の自由落下により前記所定トルクを発生させるトルク発生部と、
該トルク発生部と前記出力軸とを断・接するクラッチ部と、
前記出力軸と前記クラッチ部との間に位置して該出力軸を係止するブレーキ部と、
前記変速機のレンジを切換えるシフト制御手段と、
前記クラッチ部により前記トルク発生部が前記出力軸に接続された状態で、前記トルク発生部で発生した前記所定トルクを瞬時に付与した際の前記出力軸に歪みを発生した状態が前記ブレーキ部の作動で保持された後、前記シフト制御手段の制御でパーキングレンジに切換えられていた前記変速機のレンジがニュートラルレンジに切換えられて前記出力軸の捩れが解放された際のトルクを検出するトルク検出手段と、を備える、
ことを特徴とする変速機の評価装置。
【請求項6】
前記トルク検出手段は、前記所定トルクを瞬時に付与した際の前記出力軸の歪みに基づき、前記特定部位に作用したトルクを検出してなる、
請求項5記載の変速機の評価装置。
【請求項7】
前記トルク発生部は、
前記クラッチ部を介して前記出力軸に接続可能な回動支軸を中心として回動自在に配置された天秤状のアームと、
前記回動支軸を挟んだ前記アームの一端部に吊下された状態で前記錘部材を載せ得る錘載置部材と、
前記回動支軸を挟んだ前記アームの他端部に連結されたワイヤを介して該アーム他端部を牽引・解放するアクチュエータと、を有してなる、
請求項5又は6記載の変速機の評価装置。
【請求項8】
前記アームは、前記回動支軸と前記アーム一端部の前記錘部材の吊下位置との間の距離を調節し得る複数の穴部を有してなる、
請求項7記載の変速機の評価装置。
【請求項9】
前記アクチュエータが単一からなり、かつ、
前記アーム一端部の複数の前記穴部に前記錘部材が選択的に吊下された状態で、前記アクチュエータに連結された前記ワイヤを、複数のワイヤガイドを介して前記アームの他端部の前記穴部に選択的に連結し得るようにした、
請求項8記載の変速機の評価装置。
【請求項10】
前記クラッチ部を介して前記トルク発生部からの前記所定トルクを前記出力軸に対して異なる2方向から付与し得る一対のギヤボックスを備えてなる、
請求項5ないし9のいずれか1項記載の変速機の評価装置。
【請求項11】
前記特定部位は、前記変速機内に備えられたパーキング機構である、
請求項5ないし10のいずれか1項記載の変速機の評価装置。
【請求項12】
前記特定部位は、前記変速機内の変速機構に備えられたワンウェイクラッチである、
請求項5ないし10のいずれか1項記載の変速機の評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−8327(P2010−8327A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170368(P2008−170368)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】