説明

変速装置

【課題】必要なトルク容量を確保しながらクラッチの小型化を図る。
【解決手段】二つのクラッチの各クラッチドラム50,60を同心円上に層状に配置し、クラッチピストン56とクラッチドラム60とを外周面のスプライン歯が内周面のスプライン溝となるよう内外周面にスプラインが形成して両者をスプライン嵌合する。これにより、クラッチドラム50のサイズを径方向に大きくすることなくクラッチドラム60に嵌合するクラッチプレート(摩擦板)の接触面積を大きくすることができ、十分なトルク容量を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速装置に関し、詳しくは、複数のクラッチの係合状態を切り替えることにより変速段を変更可能な変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の変速装置としては、自動車に搭載され、複数のクラッチの係合を切り替えることにより変速段を変更するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この変速装置が備えるクラッチとしては、一方の回転体に取り付けられたクラッチドラムと他方の回転体に取り付けられたクラッチハブとにそれぞれ複数枚のクラッチプレートを交互に配置し、クラッチプレートをクラッチピストンにより押圧することにより二つの回転体を連結する多板クラッチとして構成されている。
【特許文献1】特開2006−349162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした変速装置では、二つのクラッチドラムを同心円上に2層に配置することにより二つのクラッチをコンパクトに収容して装置全体の小型化を図ることができる。しかしながら、クラッチドラムを2層に配置する手法では、各クラッチドラムの径方向のサイズに制約が生じ、この制約の範囲内で必要なトルク容量(クラッチプレートの接触面積)を確保しなければならない。クラッチプレートの枚数を増やすことも考えられるが、この場合、装置の全長(軸方向の長さ)が大きくなってしまう。
【0004】
本発明の変速装置は、必要なトルク容量を確保しながら装置の小型化を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の変速装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の変速装置は、
複数のクラッチの係合状態を切り替えることにより変更可能な変速段をもって入力軸に入力された動力を変速して出力軸に出力する変速装置であって、
第1のクラッチドラムを有し、該第1のクラッチドラムの内周面に環状のクラッチプレートがスプライン嵌合されると共に軸方向にスライドして該クラッチプレートを押圧可能で内周面にスプラインが形成されたクラッチピストンが配置されてなる第1のクラッチと、
前記第1のクラッチのクラッチピストン内に同心円上に配置され外周面が前記クラッチピストンの内周面にスプライン嵌合されると共に内周面に環状のクラッチプレートがスプライン嵌合されるように前記外周面のスプライン歯が前記内周面のスプライン溝となるよう内外周面にスプラインが形成されてなる第2のクラッチドラムを有する第2のクラッチと、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の変速装置では、第1のクラッチドラムを有し第1のクラッチドラムの内周面に環状のクラッチプレートがスプライン嵌合されると共に軸方向にスライドしてクラッチプレートを押圧可能で内周面にスプラインが形成されたクラッチピストンが配置されてなる第1のクラッチと、第1のクラッチのクラッチピストン内に同心円上に配置され外周面がクラッチピストンの内周面にスプライン嵌合されると共に内周面に環状のクラッチプレートがスプライン嵌合されるように外周面のスプライン歯が内周面のスプライン溝となるよう内外周面にスプラインが形成されてなる第2のクラッチドラムを有する第2のクラッチとを備えるから、第1のクラッチドラムの径方向のサイズを大きくすることなく第2のクラッチドラムの内周面にスプライン嵌合するクラッチプレートの径を大きくとることができる。この結果、必要なトルク容量を確保しながら装置の小型化を図ることができる。ここで、「クラッチ」には、二つの回転系を接続する通常のクラッチが含まれる他、一つの回転系をケースなどの固定系に接続するブレーキも含まれる。
【0008】
こうした本発明の変速装置において、前記クラッチピストンは、外周面が前記第1のクラッチドラムの内周面とスプライン嵌合されると共に内周面が前記第2のクラッチドラムの外周面とスプライン嵌合されるように前記外周面のスプライン歯が前記内周面のスプライン溝となるよう内外周面にスプラインが形成されてなるものとすることもできる。こうすれば、第2のクラッチドラムの内周面にスプライン嵌合されるクラッチプレートの径をより大きくとることができる。この態様の本発明の変速装置において、前記クラッチピストンの内周面と前記第2のクラッチドラムの外周面とのスプラインは、前記第1のクラッチドラムの内周面と前記クラッチピストンの外周面とのスプライン嵌合に比してスプライン溝とスプライン歯とが周方向に空間的な余裕をもって嵌合されるよう形成されてなるものとすることもできる。こうすれば、第2のクラッチドラムがクラッチピストンの軸方向の移動を妨げるのを防止することができる。これらの態様の本発明の変速装置において、前記第1のクラッチドラムと前記第2のクラッチドラムは、前記クラッチピストンを介してスプライン嵌合された部位とは異なる連結部位でスプライン嵌合により一体回転可能に連結されてなるものとすることもできる。この場合、前記第1のクラッチドラムは、前記クラッチピストンにスプライン嵌合するスプライン歯が形成された第1の部材と、前記第2のクラッチドラムにスプライン嵌合するスプライン歯が形成された第2の部材とからなり、前記第2のクラッチドラムは、前記クラッチピストンにスプライン嵌合するスプライン歯が形成された第3の部材と、前記第1のクラッチドラムにスプライン嵌合するスプライン歯が形成された第4の部材とからなり、前記第1の部材と前記第2の部材との連結と前記第3の部材と前記第4の部材との連結は、前記第1のクラッチドラムと前記第2のクラッチドラムとが前記クラッチピストンを介してスプライン嵌合すると共に前記連結部位でスプライン嵌合するようスプライン歯を位相合わせした状態で互いに連結されてなるものとすることもできる。こうすれば、スプライン歯の位相合わせをより容易なものとすることができる。
【0009】
また、本発明の変速装置において、4つの回転要素からなり、第1の回転要素がクラッチC1に接続され第2の回転要素が回転軸に接続され第3の回転要素が前記出力軸に接続され第4の回転要素がワンウェイクラッチを介してケースに固定されると共にクラッチC2を介して前記入力軸に接続された第1の遊星歯車機構と、3つの回転要素からなり、第1の回転要素がケースに固定され第2の回転要素がクラッチC3を介して前記回転軸に接続されると共に前記クラッチC1を介して前記第1の遊星歯車機構の前記第1の回転要素に接続され第3の回転要素が前記入力軸に接続されると共にクラッチC4を介して前記回転軸に接続された第2の遊星歯車機構と、を備え、前記回転軸は、さらにブレーキB1を介してケースに固定され、前記第1の遊星歯車機構の前記第4の回転要素は、さらにブレーキB2を介してケースに固定され、前記第1のクラッチは、前記クラッチC3であり、前記第2のクラッチは、前記クラッチC4であるものとすることもできる。こうすれば、必要なクラッチC4のトルク容量を確保しながら装置全体の小型化を図ることができる。この態様の本発明の変速装置において、前記第2の遊星歯車機構は、前記第3の回転要素に入力される動力を減速して前記第3の回転要素に出力する減速機構として形成されてなるものとすることもできる。こうすれば、比較的大きなトルク容量が要求されるクラッチC4でもそのトルク容量を確保することができる。
【0010】
さらに、本発明の変速装置において、前記変速装置は、車載用の有段変速機であるものとすることもできる。この場合、前記変速装置は、前記入力軸および前記出力軸が車軸に対して直交方向となるよう縦置きに配置される縦置き用変速機であるものとすることもできる。こうすれば、特に径方向のサイズに制約が大きい縦置き用変速機における本発明の効果をより顕著なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としての変速装置20を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図である。実施例の自動車10は、図示するように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関としてのエンジン12と、エンジン12のクランクシャフト14に取り付けられたトルクコンバータ16と、このトルクコンバータ16の出力側に入力軸22が接続されると共にデファレンシャルギヤ18を介して駆動輪19a,19bに出力軸24が接続され入力軸22に入力された動力を変速して出力軸24に伝達する有段変速機としての変速装置20と、を備える。この自動車10は、フロントエンジンリアドライブ(FR)方式の自動車として構成されており、エンジン22のクランクシャフト14(変速装置20の入力軸22と出力軸24)が車軸に対して直交するようエンジン22と変速装置20とが縦置きに配置されている。
【0013】
トルクコンバータ16は、エンジン12のクランクシャフト14側に接続されたポンプインペラ16aと、変速装置20の入力軸22側に接続されたタービンランナ16bと、ポンプインペラ16aとタービンランナ16bとの間に介在するステータ16cとを備え、内部に充填されている油を介してトルクの増幅を伴ってエンジン12のクランクシャフト14と変速装置20の入力軸22との間の動力の伝達を行なう。
【0014】
変速装置20は、図示しない油圧回路からの油圧を用いて駆動される8速の有段変速機として構成されており、ダブルピニオン式の遊星歯車機構30とラビニヨ式の遊星歯車機構40と四つのクラッチC1,C2,C3,C4と二つのブレーキB1,B2とワンウェイクラッチF1とを備える。ダブルピニオン式の遊星歯車機構30は、外歯歯車としてのサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車としてのリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合する複数の第1ピニオンギヤ33aと、この第1ピニオンギヤ33aに噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数の第2ピニオンギヤ33bと、複数の第1ピニオンギヤ33aおよび複数の第2ピニオンギヤ33bとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31はケースに固定されており、リングギヤ32はクラッチC3を介して回転軸36に接続されており、キャリア34はクラッチC4を介して回転軸36に接続されている。回転軸36は、ブレーキB1のオンオフによりその回転を自由にまたは固定できるようになっている。ラビニヨ式の遊星歯車機構40は、外歯歯車の二つのサンギヤ41a,41bと、内歯歯車のリングギヤ42と、サンギヤ41aに噛合する複数のショートピニオンギヤ43aと、サンギヤ41bおよび複数のショートピニオンギヤ43aに噛合すると共にリングギヤ42に噛合する複数のロングピニオンギヤ43bと、複数のショートピニオンギヤ43aおよび複数のロングピニオンギヤ43bとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア44とを備え、サンギヤ41aはクラッチC1を介してダブルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に接続されており、サンギヤ41bは回転軸36に接続されており、リングギヤ42は出力軸24に接続されており、キャリア44はワンウェイクラッチF1によりその回転が一方向に規制され且つブレーキB2のオンオフによりその回転を自由にまたは固定されると共にクラッチC2を介して入力軸22に接続されている。
【0015】
変速装置20は、図2の作動表に示すように、クラッチC1〜C4のオンオフ(オンが係合状態でオフが解放状態)とブレーキB1,B2のオンオフ(オンが係合状態でオフが解放状態)との組み合わせによって前進1速〜8速と後進1速,2速とニュートラルとを切り替えることができるようになっている。ニュートラルの状態は、クラッチC1〜C4とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができる。また、前進1速の状態は、クラッチC1をオンとすると共にクラッチC2〜C4とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸22からダブルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に入力される動力はサンギヤ31の固定により減速されてリングギヤ32に伝達されると共にリングギヤ32からクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに入力される動力はワンウェイクラッチF1によるキャリア44の固定により減速されてリングギヤ42即ち出力軸24に出力されるから、入力軸22に入力される動力は最も大きな減速比をもって減速して出力軸24に出力される。この前進1速の状態では、エンジンブレーキ時には、ブレーキB2をオンとすることにより、ワンウェイクラッチF1に代えてキャリア44の回転が固定される。前進2速の状態は、クラッチC1とブレーキB1とをオンとすると共にクラッチC2〜C4とブレーキB2をオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸22からダブルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に入力される動力はサンギヤ31の固定により減速されてリングギヤ32に伝達されると共にリングギヤ32からクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに入力される動力はブレーキB1によるサンギヤ41bの固定により減速されてリングギヤ42即ち出力軸24に出力されるから、入力軸22に入力される動力は前進1速よりも若干小さな減速比をもって減速して出力軸24に出力される。前進3速の状態は、クラッチC1,C3をオンとすると共にクラッチC2,C4とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸22からダブルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に入力される動力はサンギヤ31の固定により減速されてリングギヤ32に伝達されると共にリングギヤ32からクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに入力されると共にクラッチC3を介してサンギヤ41bに入力される動力は変速を伴わずにリングギヤ42即ち出力軸24に出力されるから、入力軸22に入力される動力は前進2速よりも若干小さな減速比をもって減速して出力軸24に出力される。前進4速の状態は、クラッチC1,C4をオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸22からダブルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に入力される動力はサンギヤ31の固定により減速されてリングギヤ32に伝達されると共にリングギヤ32からクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに入力される動力は入力軸22からキャリア34とクラッチC4とを介してサンギヤ41bに出力される動力により増速されてリングギヤ42即ち出力軸24に出力されるから、入力軸22に入力される動力は前進3速よりも若干小さな減速比をもって減速して出力軸24に出力される。前進5速の状態は、クラッチC1,C2をオンとすると共にクラッチC3,C4とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸22からダブルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に入力される動力はサンギヤ31の固定により減速されてリングギヤ32に伝達されると共にリングギヤ32からクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに入力される動力は入力軸22からクラッチC2を介してキャリア44に出力される動力により増速されてリングギヤ42即ち出力軸24に出力されるから、入力軸22に入力される動力は前進4速よりも若干小さな減速比をもって減速して出力軸24に出力される。前進6速の状態は、クラッチC2,C4をオンとすると共にクラッチC1,C3とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸22はクラッチC4を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41bに接続されると共にクラッチC2を介してキャリア44に接続されるから、ラビニヨ式の遊星歯車機構40のすべての回転要素は一体回転し、入力軸22に入力される動力は等速で出力軸24に出力される。前進7速の状態は、クラッチC2,C3をオンとすると共にクラッチC1,C4とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸22からダブルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に入力される動力はサンギヤ31の固定により減速されてリングギヤ32に伝達されると共に入力軸22からクラッチC2を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のキャリア44に出力される動力はリングギヤ32からクラッチC3を介してサンギヤ41bに入力される動力により増速されてリングギヤ42即ち出力軸24に出力されるから、入力軸22に入力される動力は等速よりも若干小さな減速比をもって増速して出力軸24に出力される。前進8速の状態は、クラッチC2とブレーキB1とをオンとすると共にクラッチC1,C3,C4とブレーキB2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸22からクラッチC2を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のキャリア44に出力される動力はブレーキB1によるサンギヤ41bの固定により増速されてリングギヤ42即ち出力軸24に出力されるから、入力軸22に入力される動力は前進7速よりも若干小さな減速比をもって増速して出力軸24に出力される。
【0016】
また、後進1速の状態は、クラッチC3とブレーキB2とをオンとすると共にクラッチC1,C2,C4とブレーキB1とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸22からダブルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に入力される動力はサンギヤ31の固定により減速されてリングギヤ32に伝達されると共にリングギヤ32からクラッチC3を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41bに入力される動力はブレーキB2によるキャリア44の固定により逆回転してリングギヤ42即ち出力軸24に出力されるから、入力軸22に入力される動力は比較的大きな減速比をもって減速して逆回転の動力として出力軸24に出力される。後進2速の状態は、クラッチC4とブレーキB2とをオンとすると共にクラッチC1〜C3とブレーキB1とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸22からクラッチC4を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41bに入力される動力はブレーキB2によるキャリア44の固定により逆回転してリングギヤ42即ち出力軸24に出力されるから、入力軸22に入力される動力は比較的小さな減速比をもって減速して逆回転の動力として出力軸24に出力される。
【0017】
図3は、実施例の変速装置20におけるクラッチC3とクラッチC4を中心とした一部の構成の概略を示す構成図である。クラッチC3は、図示するように、回転軸36(図1参照)に固定されたクラッチドラム50と、ダブルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に固定されたクラッチハブ54と、クラッチドラム50の内周面とクラッチハブ54の外周面とに交互にスプライン嵌合された複数枚の環状のクラッチプレート53,55と、クラッチプレート53,55側にスライド可能なクラッチピストン56と、クラッチピストン56をクラッチプレート53,55側とは逆方向に付勢するリターンスプリング57と、スナップリング59によりクラッチドラム50に係止されたスプリング受けとしてのスプリングリテーナ58と、を備え、図示しない油圧回路からの油圧を用いてクラッチピストン56をクラッチプレート53,55側にスライドさせてクラッチプレート53,55に押し付けることによりクラッチプレート53,55間に作用する摩擦力によりクラッチドラム50とクラッチハブ54とを係合する。クラッチC4は、クラッチドラム50内に同心円上に配置されクラッチドラム50と一体回転可能に連結されたクラッチドラム60と、ダブルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に固定されたクラッチハブ64と、クラッチドラム60の内周面とクラッチハブ64の外周面とに交互にスプライン嵌合された複数枚の環状のクラッチプレート63,65と、クラッチプレート63,65側にスライド可能なクラッチピストン66と、クラッチピストン66をクラッチプレート63,65側とは逆方向に付勢するリターンスプリング67と、スナップリング69によりクラッチドラム50に係止されたスプリング受けとしてのスプリングリテーナ68と、を備え、油圧回路からの油圧を用いてクラッチピストン66をクラッチプレート63,65側にスライドさせてクラッチプレート63,65側に押し付けることによりクラッチプレート63,65間に作用する摩擦力によりクラッチドラム60とクラッチハブ64とを係合する。なお、クラッチドラム50とクラッチドラム60は、ダブルピニオン式の遊星歯車機構30のサンギヤ31に接続されたサンギヤ軸31aに取り付けられた円筒状のブッシュ70により回転自在に支持されている。
【0018】
図4は、二つのクラッチドラム50,60とクラッチピストン56とを組み付けた状態の断面を示す断面図である。なお、説明の都合上、クラッチハブ54,64やクラッチプレート53,55,63,65,クラッチピストン66,リターンスプリング57,67,スプリングリテーナ58,68などの図示は省略した。図示するように、クラッチドラム50は、円筒状のドラム部材51とクラッチドラム50の底部をなすベース部材52とが溶接などを用いて接合部51aで接合されたものとして構成されている。ドラム部材51は、クラッチC4(クラッチドラム60やクラッチハブ64,クラッチピストン66など)を収容可能に値r1の内径に形成された第1収容部51bと、ダブルピニオン式の遊星歯車機構30を収容すると共にこの遊星歯車機構30のリングギヤ32と一体形成されたクラッチハブ54の外周面との間にクラッチプレート53,55を収容可能に値r1よりも大きな値r2の内径に形成された第2収容部51cとが形成されている。ベース部材52は、外周縁がドラム部材51と接合される接合部51aとなるフランジ部52aと、このフランジ部52aから軸方向に延伸した円筒状のボス部52bとからなっている。クラッチドラム60は、底部中心に開口を有する椀型のドラム部材61と、ベース部材52と連結されるベース部材62とが溶接などを用いて接合部61aで接合されたものとして構成されている。ベース部材62は、外周縁がドラム部材61の開口に接合される接合部61aとなるフランジ部62aと、このフランジ部62aから軸方向に延伸された円筒状のボス部62bとからなっている。ベース部材52のボス部52bの外周面とベース部材62のボス部62bの内周面には、クラッチドラム50とクラッチドラム60とが一体回転可能にスプライン嵌合する嵌合部72が形成されている。
【0019】
図5は、図4のA−A断面を示す断面図である。図示するように、クラッチピストン56は、外周面のスプライン歯が内周面のスプライン溝となるよう外周面と内周面の両面にスプラインが形成されており、クラッチドラム60も、同様に、外周面のスプライン歯が内周面のスプライン溝となるよう外周面と内周面の両面にスプラインが形成されている。クラッチドラム50の内周面とクラッチピストン56の外周面には、スプライン嵌合が可能な嵌合部74が形成されており、クラッチピストン56の内周面とクラッチドラム60の外周面には、スプライン嵌合が可能な嵌合部76が形成されている。クラッチドラム60の内周面には、環状のクラッチプレート63(図3参照)がスプライン嵌合される。したがって、クラッチプレート63は、クラッチドラム50の値R1の外径に対して値R2の外径をとることができる。図6に、クラッチピストン56Bとクラッチドラム60Bとをスプライン嵌合しない比較例の断面図を示す。クラッチピストン56Bの内周面にスプラインを形成しないタイプの比較例では、図示するように、クラッチドラム60Bのスプライン歯がクラッチピストン56Bに嵌合しない分だけ外径が小さくなる(値R2よりも小さな値R3)。このように、クラッチピストン56とクラッチドラム60とを外周面のスプライン歯が内周面のスプライン溝となるよう内外周面にスプラインが形成して両者をスプライン嵌合するのは、クラッチドラム50のサイズを径方向に大きくすることなくクラッチドラム60に嵌合するクラッチプレート63,65(摩擦板)の径(接触面積)を大きくして少ないクラッチプレート63,65の枚数で十分なトルク容量を確保できるようにするためである。実施例の変速装置20では、図2の作動表に示すように、前進3速と前進4速との切替と、前進6速と前進7速との切替と、後進1速と後進2速との切替でクラッチC3とクラッチC4とのつかみ替えが行なわれる。クラッチC3とクラッチC4につかみ替えが生じない場合を考えると、クラッチピストン56を廃止してクラッチピストン56を兼ねるようクラッチドラム60を構成することも可能となるから、クラッチプレート63,65の径を比較的大きくとることができる。しかし、つかみ替えが生じる場合を考えると、つかみ替えの際にクラッチピストンとして機能するクラッチドラム60のスムーズな移動を妨げトルクショックが生じる場合があるから、別途クラッチピストン56を配置する必要がある。このため、クラッチピストン56によりクラッチドラム60の径方向に対するサイズの制約が大きくなり、トルク容量を確保することが困難となるが、実施例では、クラッチピストン56とクラッチドラム60とをスプライン嵌合しているから、クラッチドラム60の径方向のサイズに制約が生じるものとしても、比較的大きな径のクラッチプレート63,65を配置することが可能となる。
【0020】
嵌合部74は、図5に示すように、クラッチドラム50とクラッチピストン56とが周方向に若干のクリアランスをもって嵌合されるようクラッチドラム50のスプライン溝の溝幅がこれに嵌合するクラッチピストン56のスプライン歯の歯幅よりも若干大きく形成されている。また、嵌合部76は、図5に示すように、嵌合部74に比してクラッチピストン56とクラッチドラム60とが周方向に余裕をもって嵌合されるようクラッチピストン56のスプライン溝の溝幅がこれに嵌合するクラッチドラム60のスプライン歯の歯幅よりも十分に大きく形成されている。したがって、クラッチドラム60によりクラッチピストン56の軸方向のスライド(摺動)が妨げられることはない。クラッチピストン56はクラッチドラム50と嵌合部74によりスプライン嵌合されて回り止めがなされているが、クラッチドラム50とクラッチドラム60との間のトルクの伝達は前述した嵌合部72により行なわれ、クラッチピストン56を介したトルクの伝達は行われない。
【0021】
二つのクラッチドラム50,60は、前述したように、嵌合部72で一体的に連結されるようスプライン嵌合されていると共に嵌合部74,76でクラッチピストン56を介してスプライン嵌合されているため、嵌合部72におけるスプライン歯と嵌合部74,76におけるスプライン歯の位相合わせを行なう必要が生じる。クラッチドラム50の作成は、実施例では、ドラム部材51とベース部材52の必要箇所にスプラインを形成しておき、位相合わせすると共に接合部51aを合わせた状態でドラム部材51とベース部材52とを固定可能な固定治具を用いてドラム部材51とベース部材52とを固定し、接合部51aを溶接することにより行なうものとした。クラッチドラム60の作成も同様の手法により行なうものとした。クラッチドラム50,60をそれぞれドラム部材51,61とベース部材52,62の二つの部材により構成しているのはこうした理由に基づいている。
【0022】
以上説明した実施例の変速装置20によれば、クラッチドラム50,60を同心円上に層状に配置し、クラッチピストン56とクラッチドラム60とを外周面のスプライン歯が内周面のスプライン溝となるよう内外周面にスプラインを形成して両者をスプライン嵌合するから、クラッチドラム50のサイズを径方向に大きくすることなくクラッチドラム60に嵌合するクラッチプレート63,65の径(接触面積)を大きくして十分なトルク容量を確保することができる。この結果、クラッチプレート63,65の枚数を少なくすることができ、装置の全長(軸方向の長さ)を小さくすることができる。もとより、クラッチドラム50,60を同心円上に層状に配置するから、径方向のサイズに制約が大きいFR式の自動車10に搭載する場合でも、その搭載を効率的に行なうことができる。しかも、クラッチピストン56とクラッチドラム60とが嵌合部74よりも周方向に余裕をもって嵌合されるよう嵌合部76を形成したから、クラッチピストン56が周方向に若干回転してもクラッチドラム60に接触するのを抑制でき、クラッチドラム60によってクラッチピストン56のスライドが妨げられるのを防止することができる。また、クラッチドラム50とクラッチドラム60をそれぞれドラム部材51,61とベース部材52,62の二つの部材により構成するものとしたから、クラッチドラム50とクラッチドラム60とを嵌合部72で一体的に連結されるようスプライン嵌合すると共に嵌合部74,76でクラッチピストン56を介してスプライン嵌合する際のスプライン歯の位相合わせをより容易なものとすることができる。
【0023】
実施例の変速装置20では、クラッチC3とクラッチC4に対応するクラッチドラム50とクラッチドラム60とを嵌合部72でトルクの伝達がなされるようスプライン嵌合すると共にクラッチドラム50とクラッチドラム60とをトルクの伝達がなされないようクラッチピストン56を介してスプライン嵌合するものとしたが、層状に配置する二つのクラッチのつかみ替えを伴わない仕様の変速装置においては外側のクラッチドラムと内側のクラッチドラムとの間のトルクの伝達がなされるよう形成するものとしてもよい。この場合、外側のクラッチドラムと内側のクラッチドラムとを一体回転可能に連結する嵌合部を別途設ける必要はない。なお、この場合には、内側のクラッチドラムを、外側のクラッチドラムに取り付けられたクラッチプレートを押圧するためのクラッチピストンを兼ねるよう構成するものとしてもよい。
【0024】
実施例の変速装置20では、クラッチドラム50の内周面とクラッチピストン56の外周面とをスプライン嵌合するものとしたが、スプライン嵌合しないものとしても差し支えない。この場合、クラッチピストンの回り止めを行なうための回り止め機構を別途設けるものとしてもよい。
【0025】
実施例の変速装置20は、クラッチドラム50とクラッチドラム60とをドラム部材51,61とベース部材52,62の二つの部材を接合したものとして構成するものとしたが、クラッチドラム50とクラッチドラム60のいずれか又は両方を三つ以上の部材により構成するものとしてもよいし、単一の部材により構成するものとしても構わない。
【0026】
実施例の変速装置20では、油圧駆動の8速の有段変速機を用いるものとしたが有段変速機であれば8速に限定されるものではなく、2〜7速の変速段や9速以上の変速段など如何なる変速段を有するものとしても構わない。
【0027】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、クラッチC3が「第1のクラッチ」に相当し、クラッチC4が「第2のクラッチ」に相当する。また、ドラム部材51が「第1の部材」に相当し、ベース部材52が「第2の部材」に相当し、ドラム部材61が「第3の部材」に相当し、ベース部材62が「第4の部材」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0028】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、変速装置の製造産業に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例としての変速装置20を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図である。
【図2】変速装置20の作動表を示す説明図である。
【図3】変速装置20の一部の断面を示す断面図である。
【図4】二つのクラッチドラム50,60とクラッチピストン56とを組み付けた状態の断面を示す断面図である。
【図5】図4のA−A断面を示す断面図である。
【図6】比較例の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 自動車、12 エンジン、14 クランクシャフト、16 トルクコンバータ、16a ポンプインペラ、16b タービンランナ、16c ステータ、18 デファレンシャルギヤ、19a,19b 駆動輪、20 変速装置、22 入力軸、24 出力軸、30 ダブルピニオン式の遊星歯車機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33a 第1ピニオンギヤ、33b 第2ピニオンギヤ、34 キャリア、36 回転軸、40 ラビニヨ式の遊星歯車機構、41a,41b サンギヤ、42 リングギヤ、43a ショートピニオンギヤ、43b ロングピニオンギヤ、44 キャリア、50,60,60B クラッチドラム、51,61 ドラム部材、51a 接合部、51b 第1収容部、51c 第2収容部、52,62 ベース部材、52a,62a フランジ部、52b,62b ボス部、53,55,63,65 クラッチプレート、54,64 クラッチハブ、56,56B,66 クラッチピストン、57,67 リターンスプリング、58,68 スプリングリテーナ、59,69 スナップリング、70 ブッシュ、72,74,76 嵌合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクラッチの係合状態を切り替えることにより変更可能な変速段をもって入力軸に入力された動力を変速して出力軸に出力する変速装置であって、
第1のクラッチドラムを有し、該第1のクラッチドラムの内周面に環状のクラッチプレートがスプライン嵌合されると共に軸方向にスライドして該クラッチプレートを押圧可能で内周面にスプラインが形成されたクラッチピストンが配置されてなる第1のクラッチと、
前記第1のクラッチのクラッチピストン内に同心円上に配置され外周面が前記クラッチピストンの内周面にスプライン嵌合されると共に内周面に環状のクラッチプレートがスプライン嵌合されるように前記外周面のスプライン歯が前記内周面のスプライン溝となるよう内外周面にスプラインが形成されてなる第2のクラッチドラムを有する第2のクラッチと、
を備える変速装置。
【請求項2】
前記クラッチピストンは、外周面が前記第1のクラッチドラムの内周面とスプライン嵌合されると共に内周面が前記第2のクラッチドラムの外周面とスプライン嵌合されるように前記外周面のスプライン歯が前記内周面のスプライン溝となるよう内外周面にスプラインが形成されてなる請求項1記載の変速装置。
【請求項3】
前記クラッチピストンの内周面と前記第2のクラッチドラムの外周面とのスプラインは、前記第1のクラッチドラムの内周面と前記クラッチピストンの外周面とのスプライン嵌合に比してスプライン溝とスプライン歯とが周方向に空間的な余裕をもって嵌合されるよう形成されてなる請求項2記載の変速装置。
【請求項4】
前記第1のクラッチドラムと前記第2のクラッチドラムは、前記クラッチピストンを介してスプライン嵌合された部位とは異なる連結部位でスプライン嵌合により一体回転可能に連結されてなる請求項2または3記載の変速装置。
【請求項5】
請求項4記載の変速装置であって、
前記第1のクラッチドラムは、前記クラッチピストンにスプライン嵌合するスプライン歯が形成された第1の部材と、前記第2のクラッチドラムにスプライン嵌合するスプライン歯が形成された第2の部材とからなり、
前記第2のクラッチドラムは、前記クラッチピストンにスプライン嵌合するスプライン歯が形成された第3の部材と、前記第1のクラッチドラムにスプライン嵌合するスプライン歯が形成された第4の部材とからなり、
前記第1の部材と前記第2の部材との連結と前記第3の部材と前記第4の部材との連結は、前記第1のクラッチドラムと前記第2のクラッチドラムとが前記クラッチピストンを介してスプライン嵌合すると共に前記連結部位でスプライン嵌合するようスプライン歯を位相合わせした状態で互いに連結されてなる
変速装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項に記載の変速装置であって、
4つの回転要素からなり、第1の回転要素がクラッチC1に接続され第2の回転要素が回転軸に接続され第3の回転要素が前記出力軸に接続され第4の回転要素がワンウェイクラッチを介してケースに固定されると共にクラッチC2を介して前記入力軸に接続された第1の遊星歯車機構と、
3つの回転要素からなり、第1の回転要素がケースに固定され第2の回転要素がクラッチC3を介して前記回転軸に接続されると共に前記クラッチC1を介して前記第1の遊星歯車機構の前記第1の回転要素に接続され第3の回転要素が前記入力軸に接続されると共にクラッチC4を介して前記回転軸に接続された第2の遊星歯車機構と、
を備え、
前記回転軸は、さらにブレーキB1を介してケースに固定され、
前記第1の遊星歯車機構の前記第4の回転要素は、さらにブレーキB2を介してケースに固定され、
前記第1のクラッチは、前記クラッチC3であり、
前記第2のクラッチは、前記クラッチC4である
変速装置。
【請求項7】
前記第2の遊星歯車機構は、前記第3の回転要素に入力される動力を減速して前記第3の回転要素に出力する減速機構として形成されてなる請求項6記載の変速装置。
【請求項8】
前記変速装置は、車載用の有段変速機である請求項1ないし7いずれか1項に記載の変速装置。
【請求項9】
前記変速装置は、前記入力軸および前記出力軸が車軸に対して直交方向となるよう縦置きに配置される縦置き用変速機である請求項8記載の変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−156457(P2009−156457A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338776(P2007−338776)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】