外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物及びその製剤の製造方法
【課題】褥瘡や怪我又は病気が原因となった冶癒し難い傷口治療用の漢方薬組成物及び外用ペースト状製剤の提供。
【解決手段】乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)等の漢方薬材を有効成分として含む、外傷、褥瘡治療用の外用漢方薬組成物。より好適な処方は、さらに、蜀椒(ショクショウ)を添加し、更に、呉茱萸(ゴシュユ)を添加し、また、芍薬(シャクヤク)、厚朴、さらに、乳香、没薬(モツヤク)、及び阿仙薬(児茶)を添加してなる。
該外用漢方薬剤の他のより好適な処方は、上記の処方に凍結乾燥されたエノキタケ菌菌糸体抽出物を添加してなる。
本発明の外用漢方薬剤は、上記の処方である薬材を粉砕して油脂剤(例:ラード等)と混合、攪拌してペースト状にしてなる軟膏製剤である。
【解決手段】乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)等の漢方薬材を有効成分として含む、外傷、褥瘡治療用の外用漢方薬組成物。より好適な処方は、さらに、蜀椒(ショクショウ)を添加し、更に、呉茱萸(ゴシュユ)を添加し、また、芍薬(シャクヤク)、厚朴、さらに、乳香、没薬(モツヤク)、及び阿仙薬(児茶)を添加してなる。
該外用漢方薬剤の他のより好適な処方は、上記の処方に凍結乾燥されたエノキタケ菌菌糸体抽出物を添加してなる。
本発明の外用漢方薬剤は、上記の処方である薬材を粉砕して油脂剤(例:ラード等)と混合、攪拌してペースト状にしてなる軟膏製剤である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢方薬組成物に関する。また本発明は褥瘡及びその他に怪我又は病気が原因となった冶癒し難い傷口を治療することを目的とする外用ペースト状製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
褥瘡(ジョクソウ)は、医療の臨床上よく見られる徴候であり、行動の不自由な方や長年寝込んでいる患者によく起きる現象である。褥瘡の原因としては局所の皮膚や皮下にある軟部組織が長時間にわたり圧迫を受け、酸素欠乏に陥ってその結果、細胞組織は壊死する。
【0003】
以下に褥瘡が起きる原因を説明する。
局所的な成因:
(1)表皮の垂直圧力:外部の圧力が局所皮下組織内にある微血管の血圧より大きい場
合、局所にある血液の循環が阻害されるため、細胞が酸素欠乏の状態になる。欠乏の状態が長続きすると、細胞が死んでしまい、皮膚や皮下組織及び筋肉に潰爛(カイラン、壊乱)を起こす。
【0004】
圧迫される局所は常に身体に最も突出した部位であり,仙骨、寛骨、坐骨棘(ザコツキョク)、かかど、足首、肩甲骨部、肘等が挙げられる。
(2)表皮の剪断応力:患者が横になる時又は座る時に当たる仙骨部の皮膚が引っ張ら
れ、水平方向の剪力になり、皮膚に供給する血管に圧力が掛かることになり、皮膚が酸素欠乏及び壊死を引き起こす。
【0005】
(3)局所の外傷及び感染:擦り傷や挫傷により感染した場合、組織の酸素欠乏に対す
る耐性が落ち、長時間寝たきりになると、圧力と剪断応力のために褥瘡が発生する。
(4)局所の温度:局所組織の温度が下るので細胞の代謝率を下げ、酸素欠乏に対する
耐性が低下する。
【0006】
(5)局所の湿度:皮膚が過度の浸潤により組織がより軟らかく、脆くなり、局所が通
気不良及び大小便失禁のため、紙おむつを常時着用することにより、局所が常時温った状態になる。
【0007】
全身的な成因・原因:
(1)年齢:老化により皮膚の弾力性が失われて血液循環が悪くなるため、組織の酸素
欠乏に対する耐性も低下する。
【0008】
(2)栄養不足:長期にわたる栄養不足のため、組織の修復が停滞して、酸素欠乏に対
する耐性や感染に対する抵抗力が下る。
(3)貧血:貧血になると、血液の中で酸素を運ぶ能力が低下し、血液循環が阻害され
てしまい、組織に酸素欠乏が生じやすくなる。
【0009】
(4)心理的な影響:長時間寝たきりで、生きる意志が薄弱になり、免疫力が低下する
。
中医学の観点から見ると、その発病の転機を黄帝内経『霊枢巻第81の癰疽(ヨウソ)篇』(非特許文献1)から説明することができる。
【0010】
『寒邪が経絡に侵襲し滯留すると、血行が滯って不通となる。血行不通となると衛気の
運行が阻害されて血行不通の部位にとどまって循環しなくなり、癰腫(ヨウシュ)となる。
【0011】
寒気が熱と化し、熱が盛んになると筋を腐敗させ、筋が腐敗すると、化膿する。膿が排出されないと筋が糜爛(ビラン)し、筋が糜爛(ビラン)すると、骨を損傷し、骨が損傷すると、骨髄が消耗する。
【0012】
膿毒が骨節の空隙箇所にいなければ、排出されず、営血の虚損を引き起こす。
そうなると筋骨筋肉に栄養がめぐらず、経気血脈がこれによって衰敗して損傷し、毒気が五臓に及ぶと、五臓が損傷し、死ぬことになる。』
現在、一般的に傷口に用いる薬物は多くの場合はヨードチンキ、湿布材、外傷・やけど用の軟膏及び外用薬であり、しかもこれらの効果は殺菌、消毒までに過ぎない。
【0013】
しかし、上記のように、褥瘡(ジョクソウ)になる原因は単純な外傷になる原因とは極めて違っている。
そして、褥瘡のように治癒し難い傷口を治療する薬剤について言えば、同時に細菌感染の除去と壊死組織の再生及び他の疾患による傷口が癒合不良の改善する機能などを同時に備えた薬剤となると、今もって確かな効果を持つ配合法が開発されていない。
【0014】
褥瘡及び外傷を治療する漢方薬に関しては、下記の文献がある。
(1)外科証治全生集(非特許文献2)、
(2)外科正宗(非特許文献3)、
(3)医宗金鑑(非特許文献4)。
【0015】
上記の文献において、
(1)には、陽和解凝膏で糜爛・潰瘍(カイヨウ)、陰疽、しもやけを治すことができると記載されている。
【0016】
(2)には、生肌玉紅膏で癰疽(ヨウソ)、發背(背中の腫れ物、発背)、色々な糜爛(ビラン)・潰瘍、棒毒等の瘡に膿瘍が形成し、排膿をしている時にて治すことができると記載されている。
【0017】
(3)には、腐敗を終わらせ、新しい肌膚を生成してすべての癰疽等を治すことができると記載されている。
上記の文献に記載された漢方薬剤処方は、ただ論理的な思考しかない、又は、実際に治療効果が得られない、且つ、多くの患者が前もって既にヨードチンキなどの外用殺菌消毒剤等の薬品で処理するため、医療に対応することが困難となってきている。
【非特許文献1】黄帝内経の『霊枢巻第81の癰疽(ようそ)篇』
【非特許文献2】外科証治全生集
【非特許文献3】外科正宗
【非特許文献4】医宗金鑑
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記の如く、弁証論治の角度からは、褥瘡(ジョクソウ)を寒証、虚証、労証、痿症(イショウ)、血淤(ケツオ)と見ることができ、従ってその治則大法は、寒に対してはこれを温め、虚に対してはこれを補う、労に対してはこれを温め、痿の治療には単独に陽明を取り、さらに活血化淤法でこれを補助する。清朝の銭塘出身の呉師機が著した『理▲論▼駢文(リロンベンブン)』の中で述べられている「内治法は即ち外治法である」の理論と一致する。
【0019】
本発明者は、上記の原理に基づいて一意専心して研究に取り組み、褥瘡を治療する有効膏剤を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物および、外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤の特徴は、下記[1]〜[32]および[33]の事項にある。
[1] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡(ジョクソウ)の治療用漢方薬組成物。
【0021】
なお、本発明では、附子(ブシ)または附子(ブシ)を減毒した炮附子(ほうぶし)に代えて、塩附子(えんぶし)、加工附子(かこうぶし)などを用いてもよい。
[2] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)の混合重量比が4:2:1であることを特徴とする[1]に記載の外傷
、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【0022】
[3] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[1]または[2]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[4] [1]〜[3]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【0023】
[5] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【0024】
[6] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)の混合重量比が4:1:1:1であることを特徴とする[5]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[7] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[5]または[6]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[8] [5]〜[7]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[9] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[10] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)の混合重量比が4:1:1:1:1であることを特徴とする[9]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【0025】
[11] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[9]または[10]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[12] [9]〜[11]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[13] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[14] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)の混合重量比が4:1:1:1:1:1であることを特徴とする[13]に記載の外傷、褥瘡
の治療用漢方薬組成物。
[15] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[13]または[14]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[16] [13]〜[15]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[17] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[18] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)の混合重量比が4:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする[1
7]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[19] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[17]または[18]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【0026】
[20] [17]〜[19]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[21] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[22] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)の混合重量比が4:1:1
:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする[21]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[23] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[21]または[22]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[24] [21]〜[23]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[25] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[26] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)の混合重量比が4:1:1:1:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする[25]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【0027】
[27] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[25]または[26]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[28] [27]に記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[29] さらに、有効成分としてエノキタケ菌菌糸体抽出物を含有することを特徴とする、[1]〜[3]、[5]〜[7]、[9]〜[11]、[13]〜[15]、[17]〜[19]、[21]〜[23]、[25]〜[27]の何れかに記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[30] エノキタケ菌菌糸体抽出物の含量が他の有効成分である、乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)
、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)の合計の含量1重量部に対して0.01
〜0.27重量部、好ましくは、0.02〜0.1重量部であることを特徴とする[29]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[31] 有効成分が粉末状であることを特徴とする[29]または[30]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[32] [29]〜[31]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[33] 上記油脂剤が、ラードである[4]、[8]、[12]、[16]、[20]、[24]、[28]の何れかに記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物又は膏剤。
【発明の効果】
【0028】
その主な効用には、患者の免疫力を増強し即ち「正気を扶け」て、効果的に感染を抑えるだけでなく、腐敗筋肉を除去し即ち「邪気を取り除い」て、古いものを除いて新しいものにするなどがあり、さらに傷口とも相性がよく、急速に滲出液を吸収し、湿潤状態を保たせることができる。
【0029】
従って、本発明は、傷口がなかなか治らない場合に適用する外用漢方薬膏剤を提供する。
本発明による外用漢方薬膏剤は、特に、褥瘡を治療することに最も効果がある。
【0030】
上記の漢方薬膏剤は、乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ、山椒の実)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、及び阿仙薬(アセンヤク、中国語:児茶)等の漢方薬材を含む。さらに、エノキタケ菌菌糸体抽出物を調合すると、より良い効果が得られる。
【0031】
乾薑(カンキョウ)はショウガ科ショウガ属植物ショウガZingiber officinale Roscoeの根を干したものである。温中散寒に働き、止血、回陽通脈の効果があり、鎮痛作用や酸素欠乏の拮抗作用、抗炎症作用といった薬理作用がある。
【0032】
附子(ブシ)はキンポウゲ科トリカブト属植物烏頭(うず)Aconitum carmichaeli Debeaux の側根である。回陽救逆、散寒除湿の効果があり、血流が減少するために、心臓の
筋肉が酸素不足に陥ることへの拮抗作用や抗血栓作用、抗炎症作用、T細胞(リンパ細胞)の転化率を増加させる免疫機能を向上することといった薬理作用がある。炮附子(ほうぶし)は、附子(ブシ)を減毒加工したものである。
【0033】
肉桂(ニクケイ)(シナモン)はクスノキ科クスノキ属植物シナモンCinnamomum cassia Presl の樹皮をはがし、乾燥させたものである。補火助陽、散寒止痛、温経通脈の効果があり、抗潰瘍作用や抗炎症作用、抗菌作用、老化予防作用といった薬理作用がある。若い枝の桂枝(けいし)で代用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に示すのは上記の漢方薬の中から選ばれたものの好ましい処方であり、数値は重量部を表す。
処方1は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)2、肉桂(ニ
クケイ)1の構成よりなるものである。
【0035】
処方1'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)2、肉桂(ニクケイ)1及びエノキタケ菌菌糸体抽出物0.27の構成よりなるものである。
処方2は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニ
クケイ)1、蜀椒(ショクショウ、山椒の実)1の構成よりなるものである。
【0036】
処方2'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニクケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1及びエノキタケ菌菌糸体抽出物0.27の構成よりなるものである。
【0037】
処方3は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニ
クケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1の構成よりなるものである。
処方3'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニクケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1及びエノキタケ菌菌糸体抽出
物0.27の構成よりなるものである。
【0038】
処方4は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニ
クケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1の構成よりなるものである。
【0039】
処方4'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニクケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1及びエノキタケ菌菌糸体抽出物0.27の構成よりなるものである。
【0040】
処方5は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニ
クケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1、厚朴1の構成よりなるものである。
【0041】
処方5'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニクケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1、厚朴1及びエノキタケ菌菌糸体抽出物0.27の構成よりなるものである。
【0042】
処方6は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニ
クケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1、厚朴1、乳香(ニュウコウ)1、没薬(モツヤク)1の構成よりなるものである。
【0043】
処方6'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニクケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1、厚朴1、乳香(ニュウコウ)1、没薬(モツヤク)1及びエノキタケ菌菌糸体抽出物0.27の構
成よりなるものである。
【0044】
本発明の漢方薬膏剤は、上記の漢方薬材を上記の処方の比率に基づいて配合し、混合・粉砕することで粉末状にした後、助剤を添加し、攪拌してからなるものである。
上記の漢方薬材は、生鮮型と乾燥型のいずれであっても良い。しかし、不純物の混入を避けるためには乾燥型がよい。
【0045】
乾燥の程度には特に制限はないが、乾燥し過ぎると、品質に影響する。
上記の助剤は、鉱物系油脂又は動植物系油脂であってもよい。さらには、ロウ等を用いてもよい。
【0046】
鉱物系油脂としては、例えば、セレシン、ワセリンの他に、石油資源から得られ、C15以上のパラフィン系のものなどが挙げられる。
動物系油脂としては、例えば、動物油では、卵黄油、ミンク油、タラ肝油、スクワラン
等が挙げられ、
動物脂では、ヘット(牛脂)、ラード(豚脂)、羊脂が挙げられる。
【0047】
また、植物性油脂としては、例えば、植物油では、ヒマワリ油等の乾性油;ゴマ油等の半乾性油;オリーブ油、椿油等の不乾性油;が挙げられ、また、
植物脂では、カカオ脂、ヤシ油、モクロウ等が挙げられる。
【0048】
本発明においては、これら助剤としては、高温下において、ペースト状のものになるのがよい。
鉱物系油脂はワセリンが比較的よい。動植物油脂はヘット(牛脂)、ラード(豚脂)が好ましい。
【0049】
但し、本発明の漢方薬外用膏剤の用途からすれば、他の医薬用油脂やエマルジョン類材料を選んで使用することもできる。
本発明者は実験により、ラードの効果が最もよいと立証している。
【0050】
上記助剤(例:ラード)と、粉末になった漢方薬製剤とを混合して攪拌すれば、軟膏等の製剤が出来上がる。軟膏の粘度を調整するために、粘度調整剤を適宜に混合してもよい。さらに、使用者が受け入れやすいように、適宜に消臭剤や芳香剤を混合してもよい。
【0051】
上記のエノキタケ菌菌糸体抽出物は、上記の漢方薬材を粉砕して粉末にした後、助剤と同時に添加して攪拌、混合すればよい。或は、上記のペースト状製剤ができ上がった後に、上記のエノキタケ菌菌糸体抽出物をそれに添加して攪拌、混合すればよい。
【0052】
本発明の膏薬の作用範囲として、皮(皮膚)、脈(神経、血管、経脈)、肉(皮下脂肪)、筋(筋肉)、骨(骨髄)などが含まれる。
本発明のペースト状製剤には、以下の長所がある。
【0053】
・欠損の深い潰爛に対する作用:
褥瘡の治療で最も難しいのは、壊死組織(necrotic tissue、これは中医学でいう「陰
疽」)の除去であるが、本発明の膏薬は凝固を解く効用があるため、死んだ肌膚を除去して潰爛を終わらせることができる。
これは治療効果の有無のキーポイントである。
【0054】
・肉芽組織(granulation tissue)の新生を促進:
本発明の膏薬は新しい肌膚の生成を促す効用がある。
【0055】
・滲出液の抑制:
褥瘡によく見られる大量の滲出液(exudate)は、伝染性膿痂疹(デンセンセイノウカ
シン、とびひ)でもあり、その病原体はほとんどが黄色ブドウ球菌である。
本発明の膏薬に含まれている活性成分には、マクロファージの貪食作用を増強し、かつ生体の免疫を高める機能があり、さまざまな病原体に対して抑制作用がある。
【0056】
・湿潤状態を保つ:
本発明の膏薬には上記滲出液の過度の浸潤(infiltrates)に対して抑制作用があり、
それと同時に傷口の回復に役立つように、滲出液を除去した後の組織を浸潤状態に保たせる。
【0057】
本発明の膏薬は上記褥瘡のどの段階にあっても適用できる。
次に上記のエノキタケ菌菌糸体抽出物の製造方法を説明する。
先ずバカスからなる固体培地に水、好ましくは純水を適度に混ぜた後、滅菌し、冷却後、エノキタケ菌を接種する。
【0058】
なお、このバカス培地に、米糠の他、必要によりリン、鉄等のミネラル類、落花生表皮、玄米等を添加してもよい。
なお、砂糖キビの絞り粕であるバカスには、菌糸体の栄養源となる糖類及びタンパク質が含まれており、このままでも固体培地となりうるが、バカスに上記米糠を添加して用いる場合には、バカス80重量部に対して米糠は通常10〜20重量部程度の量で用いられる。
【0059】
エノキタケ菌としては、従来より公知のものを用いることができる。
次いで、このようにエノキタケ菌が接種された培地を、温度及び湿度が調節され、さらには照度も調節された培養室内にいれて、菌糸体を増殖させる。
【0060】
このようにエノキタケ菌菌糸体を増殖させる際には、上記のようにエノキタケ菌を接種した後、温度14〜25℃および湿度70%を超える条件下で、好ましくは、上記温度および湿度75〜99%の条件下で、特に好ましくは、上記温度および湿度80〜95%の条件に調節した培養室内で、通常2〜6ヶ月間、好ましくは、2〜3ヶ月間保持(培養)し、菌糸体を増殖させることが望ましい。
【0061】
なお、エノキタケ菌の作用により、培養中に培地成分が分解され最終的に水と炭酸ガスとなり、培地内部の水分が約80%となる。このため、上記湿度を70%以下に設定すると、培地外への水分の蒸発が多くなり、その結果、培地が縮小し、本来の目的物を得ることができなくなる。
【0062】
本発明においては、菌糸体が固体培地に蔓延し、子実体の発生直前.直後の時期に、バカス基材の繊維素を解束し、12メッシュ通過分が30重量%以下となるようにすることが望ましい。なお、バカス基材培地の解束は、上記のように子実体の発生直前.直後の時期に行うことが好ましいが、子実体がかなり成長した後の時期に行ってもよい。
【0063】
このように解束された固体培地に、水およびセルラーゼ、プロテアーゼ、グルコシダーゼ、ヘミセルラーゼ、キチナーゼ、アミラーゼおよびペクチナーゼから選ばれる酵素1種
またはそれ以上を、固体培地を30〜50℃に保ちながら添加する。
【0064】
添加される酵素としては、セルラーゼが好ましい。
酵素の添加量は、固体培地1kgに対して0.5〜5g、好ましくは1〜3gであることが好ましい。
【0065】
また水は、金属イオン等のイオン類を含まない純水が好ましく、この解束された培地1kgに対して、純水1〜10kg、好ましくは3〜5kgを加えてバカス含有混合物とする。
次いでこのバカス含有混合物からエノキタケ菌菌糸体エキス分を抽出するが、このようにエノキタケ菌菌糸体エキス分を抽出するには、培地含有混合物を、例えば変速機付ギヤーポンプ等を用いて循環させながら、固体培地に粉砕および擂潰(ライカイ)作用を加えてバカス繊維の約70重量%以上が12メッシュ通過分となるようにすることが望ましい。
【0066】
12メッシュ通過分が70重量%未満である場合には、固体培地中の有効成分の抽出が不充分となり、繊維素が充分に軟化しない部分が多くなり、得られる固形残渣を飼料、食料或いは肥料として有効利用できなくなることがある。
【0067】
バカス含有混合物の粉砕および擂潰(ライカイ)は、該混合物の温度を30〜50℃に保ちながら行ってもよく、温度を上記温度より徐徐に上昇させながら行ってもよいが、温度を
上昇させながら行うことが好ましい。
【0068】
水温が30℃以上、好ましくは35℃以上となったときに、バカス含有混合物中に室温の空気を噴入させると、空気泡は急激に加熱されて破裂し、バカス繊維に衝撃を与え有効成分の抽出をより効率的に行うことができる。
【0069】
次いで、このようにして処理されたバカス含有混合物をさらに加熱95℃までの温度、好ましくは75〜90℃程度の温度に加熱し、この温度で数十分間保持して該混合物中の酵素を失活させるとともに、該混合物を滅菌すると、エノキタケ菌菌糸体エキスが得られる。
【0070】
このように該混合物中の酵素を加熱失活させ、かつ滅菌すると、エノキタケ菌菌糸体エキスの変質を防止できる。
なお、得られたエノキタケ菌菌糸体エキスを必要に応じて、50〜120メッシュ、好まし
くは60〜100メッシュ程度の濾布を用いて濾過してもよい。
【0071】
このようにして得られるエノキタケ菌菌糸体エキスは、プロフラミンを含有する。
このようなエキスは濃縮して用いることもでき、また凍結乾燥して粉末状として用いることもでき、さらには例えば精製水、アルコール等で希釈して用いることもでき、医薬品(例:アトピー性皮膚炎治療剤、水虫治療剤、面皰治療薬、免疫活性化剤、エイズ治療剤、制ガン剤等)、化粧料(皮膚保湿用化粧料等)等に添加して用いることができる。
以下、本発明に係る外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物および、外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤ついて製造例、実施例によりさらに具体的に説明する。
【0072】
[製造例1]:
下記の漢方薬材を下記の処方の比率に基づいて配合し、混合・粉砕して、攪拌した。
【0073】
乾薑(カンキョウ)150g、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)37.5g、肉桂(ニク
ケイ)37.5g、蜀椒(ショクショウ)37.5g、呉茱萸(ゴシュユ)37.5g、芍薬(シャクヤ
ク)37.5g、厚朴37.5g、乳香(ニュウコウ)37.5g、没薬(モツヤク)37.5g、及び阿仙薬(アセンヤク)37.5g(計487.5g)。
【0074】
粉砕は気流式超微粉砕機(欣鎮企業会社製造;台湾特許121630号)を用いて120メッシ
ュ程度通過しうるように粉砕する(微粉砕)。粉砕した後、さらに、ラード2400 gと混合し、攪拌してペースト状にして、軟膏状の製剤(漢方薬軟膏1:2887.5g)を得た。
【0075】
[製造例2]:
上記製造例1と同じ処方に基づいて製造された漢方薬材(計487.5g)を混合・粉砕して粉末とし、凍結乾燥されたエノキタケ菌菌糸体エキス粉末10gを加え、よく攪拌して、さ
らに、ラード2400 gと混合し、攪拌してペースト状にし、軟膏状の製剤(漢方薬軟膏2:2897.5g)を得た。
【0076】
エノキタケ菌菌糸体培養抽出物(F.V.M)の調製法:
バカス90重量部、米糠10重量部からなる固体培地に純水を適度に含ませた後に、エノキタケの種菌を接種し、温度および湿度を調節した培養室内に静置し、菌糸体を増殖させた。
【0077】
菌糸体が固体培地に蔓延した後、バカス基材の繊維素を解束し、12メッシュ通過分が24重量%以下となるようにした。この解束された培地1.0kgに、純水3.5 kgを加え、40℃に
保ちながら精製セルラーゼ2.0 gを加え、培地含有混合物とした。
【0078】
次いで培地含有混合物を変速機付ギヤーポンプにより循環させながら、固体培地にギヤー部分において粉砕およびすりつぶし作用を200分間程度加えバカス繊維の約80重量%が12メッシュ通過分となるようにした。
【0079】
培地含有混合物の粉砕およびすりつぶしは、該混合物の温度を徐徐に上昇させながら行った。
その後、培地含有混合物をさらに加熱して、90℃として30分間放置した。90℃への加熱により、酵素を失活せしめ、かつ殺菌を施した。
得られた培地含有混合物を60メッシュ濾布を用いて濾過してエノキタケ菌糸体抽出液とし、濃縮した後、エノキタケ菌糸体抽出物である凍結乾燥粉末を得た。
【0080】
本発明の褥瘡軟膏製剤とエノキタケ菌菌糸体培養抽出物(F.V.M)との併用例:
(1)エノキタケ菌菌糸体培養抽出物(F.V.M)含有褥瘡剤を使用して治療効果を検討した結果、一般には数日程度再生にかかるが、エノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)含有褥
瘡剤を使用した患者はそれと比較して再生が促進された。
【0081】
これはエノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)が本来持っている抗腫瘍作用、免疫賦活
作用や疲労回復作用が相乗的に加わり、体に対する抵抗力を上昇させたことによるものと考えられる。
特に、低濃度においてエノキタケ菌糸体培養抽出物は交感神経を刺激して疲労回復が示唆されている。
【0082】
(2)エノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)含有褥瘡剤(例:製造例2の漢方薬軟膏2)には、エノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)が本来持っている抗腫瘍作用、免疫賦活作
用や疲労回復作用がある。
【0083】
さらに、エノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)には皮膚に対する保湿作用があり、こ
の褥瘡剤を用いて治療することにより皮膚の再生は促進され、再生された皮膚は保湿作用により定着が早かった。
【0084】
本発明のエノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)含有褥瘡剤(=漢方薬軟膏、漢方薬軟
膏2ともいう。)(ロ)は、皮膚切創に対する治癒促進作用の点で、(イ)無処置(皮膚
切創に対する処置をしなかった場合)と比較して、創耐張力の点で有意な高値を示し、治
癒促進作用を有している。
【0085】
また、本発明の漢方薬軟膏2は、一般的な褥瘡治療剤として市販されている「 b-FGF」(褥瘡治療剤、科研製薬(株)製、一般名「trafermin」)に比して、より強力な治癒促進
作用を示し、皮膚切創の治癒効果で優れた有効性を有している(試験例11)。
【0086】
また、本発明の漢方薬軟膏2を、遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)の背部に作製した欠損傷部に塗布し、その欠損部面積を測定した結果、漢方薬軟膏2の治癒促進作用が認められた。また、欠損部面積の時間経過曲線下面積(AUC)も、有意な低値を示し、治癒
促進作用が認められる(試験例12)。
【0087】
本発明の膏薬は、以下の説明に従って使用するものである。
先ず、瘡口を無菌生理食塩液で洗浄し、滅菌綿棒で適量の膏薬を不織布の上に塗ってガーゼを被せ、それを瘡口に当てる。
【0088】
瘡口が深い場合は、膏薬(瘡口の大きさや深さに応じて加減して使用)を直接瘡口に塗布してからガーゼで覆う。傷口の状況に応じて1日数回交換する。
交換するときは、傷口の新生薄膜を破らないように、また湿潤状態を保つように注意深く行い、ヨードチンキで消毒をしてはならない。
【0089】
保存方法:冷暗所に置いて直射日光を避け、長期保存するときは、冷蔵庫にいれて冷蔵する。保存の有効期限は1年である。
【実施例】
【0090】
(試験例1)
『病歴番号1』:陳氏
52才の脳出血症の患者であり、長期に寝たきりで、2007年9月28日に仙骨部に褥瘡(ジ
ョクソウ)が発生した。傷口(面積)が約10cm×5cmで、II度褥瘡(ジョクソウ)の真皮
までに亘る潰瘍である。
【0091】
製造例1によって作られた褥瘡(ジョクソウ)膏剤を用いて1日1回に塗り換えることに
より、同年10月10日に傷口が全癒した。
これを図1(A)〜(D)に示す。
【0092】
(試験例2)
『病歴番号2』:趙氏
66才の脳出血症の患者であり、長期に寝たきりで、仙骨部に褥瘡がある。傷口が約3cm
×2cmで、皮下脂肪層までとどくIII度褥瘡である。病歴1ヶ月があり、癒し難い傷口であ
った。2007年9月29日から製造例1より作られた褥瘡膏剤を始めに用いて治療することにより、同年10月10日に傷口が全癒した。
これを図2(A)〜(D)に示す。
【0093】
(試験例3)
『病歴番号3』:鄭氏
34才の高血圧症及び下肢静脈血栓症の患者であり、2007年5月5日から来院された。左足の踵をケガしたため、蜂窩織炎に罹った。病歴1ヶ月があり、傷口が約10cm×4cmで、皮下脂肪層まで達したものである。
【0094】
製造例1より作られた褥瘡膏剤を1日1回に塗り換えることにより、同年7月20日に傷口が全癒した。
これを図3(A)〜(B)に示す。
【0095】
(試験例4)
『病歴番号4』:21才の王氏
2007年3月始頃に交通事故で右足の脛を怪我して縫ってしまったが、傷口がなかなか治
らなくて、蜂窩織炎に罹った。
【0096】
傷口が約6cm×4cmで、筋肉層までとどくIV度褥瘡である。
同年4月12日から製造例1より作られた褥瘡膏剤を1日1回に塗り換えることにより、同年6月29日に傷口が全癒した。
これを図4に示す。
【0097】
(試験例5)
『病歴番号5』:彭氏
54才の脳出血症及び糖尿病の患者であり、長期に寝たきりで、臀部に褥瘡があり、傷口が約10cm×5cmで、筋肉層までとどくIV度褥瘡である。
【0098】
背中も褥瘡が発生し、傷口が約5cm×3cmで、皮下脂肪までとどくIII度褥瘡である。病
歴2ヶ月がある。
2007年6月始頃から製造例1より作られた褥瘡膏剤を1日1回に塗り換えることにより、同年7月17日に傷口が全癒した。
これを図5(A)〜(B)に示す。
【0099】
(試験例6)
『病歴番号6』:76才の許氏
手足の不自由な方であり、長期で車椅子と臥床に伴って背中部に褥瘡が発生し、皮膚が赤くなり腫れてきて、最後には皮膚が破れてしまった。傷口が表皮層まで及んだI度褥瘡である。病歴1ヶ月がある。2007年10月1日から製造例1より作られた褥瘡膏剤を1日に1回
塗り換えることにより、同年10月7日に傷口が全癒した。
これを図6(A)〜(E)に示す。
【0100】
(試験例7)
『病歴番号7』:劉氏
64才の乳癌及び直腸癌の患者であり、小腸の人工肛門を造り直す手術を受けた。腹部に何ヶ所かの傷口が癒合せず、化膿した。
【0101】
多く傷口(面積)が1〜2cm×1〜2cmで、真皮層まで及んだII度褥瘡である。病歴数ヶ月がある。
2007年9月頃から製造例1より作られた褥瘡膏剤を使用し、治療することにより、同年10月5日に化膿が止まり傷口が全癒した。
これを図7(A)〜(F)に示す。
【0102】
(試験例8)
『病歴番号8』:張氏
79才の糖尿病の患者であり、足の左親指が黒くなって壊死し、第二趾関節の部分が腫れ、化膿して痛みを伴った。病歴数ヶ月がある。
【0103】
2007年7月頃から製造例1より作られた褥瘡膏剤を使用し、1日1〜2回に塗り換えること
により、同年8月3日に化膿及び腫れの状況が改善した。
これを図8に示す。
【0104】
(試験例9)
『病歴番号9』:魏氏
76才の脳出血症の患者であり、長期に寝たきりで、坐骨部に褥瘡が発生した。傷口が約2cm×2cmで、真皮層まで及んだ褥瘡である。
病歴1ヶ月がある。2007年8月10日から製造例1より作られた褥瘡膏剤を使用し、治療す
ることにより、同年9月21日に傷口が全癒した。
【0105】
(試験例10)
『病歴番号10』:鄭氏
77才の肺結核の患者であり、長期に寝たきりで、左肩甲骨部に褥瘡が発生した。皮膚が赤くなり腫れてきて、最後には皮膚が破れてしまった。
【0106】
傷口が約2cm×2cmで、表皮層まで及んだI度褥瘡である。病歴2ヶ月がある。
2007年7月13日から製造例1より作られた褥瘡膏剤を使用し、治療することにより、同年8月始頃に傷口が全癒した。
【0107】
(試験例11)
<<本発明の漢方薬軟膏2のラット皮膚切創モデルによる治療試験>>
1.<要約>
12週齢のCr1:CD(SD系)ラットの皮膚切創モデルを、製造例2で得られた漢方薬軟
膏(「漢方薬軟膏2」ともいう。)にて処置し、治癒促進作用の試験を行った結果、下記表1および図9に示すように、(イ)無処置群、(ロ)本発明の漢方薬軟膏2処置群及び(ハ)「 b-FGF」(褥瘡治療剤、科研製薬(株)製、一般名「trafermin」)処置群の創耐
張力の平均及び標準誤差は、それぞれ、(イ)143±8g、(ロ)289±31g、(ハ)205±19gであった。
【0108】
また、(ロ)本発明の漢方薬軟膏2処置群及び(ハ)b-FGF処置群について、(イ)無
処置群と比べた創耐張力の増加率は、それぞれ102.1%及び43.4%であった。
本発明の漢方薬軟膏2処置群及び「b-FGF」(褥瘡治療剤、科研製薬(株)製、一般名「trafermin」)処置群の創耐張力は、無処置群と比較して、有意な高値を示し、治癒促進作用が示唆された。また、b-FGF処置群よりも、本発明の漢方薬軟膏2処置群は、更に皮膚
切創の治癒を促進したことが分かる(表1、図9参照)。
【0109】
以上の結果より、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)は、褥瘡剤として市販されているb-FGFを上回る治癒促進作用を示し、本発明の漢方薬軟膏2は皮膚切創の治癒効果で優れた有効性を有することが立証された。
以下に、試験プロセスに即して詳説する。
【0110】
2.<試験概要>
(i) (i-a)被験物質:製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)。
(i-b)比較対照物質:「フィブラスト(登録商標)スプレー250」(略称「b-FGF」
、褥瘡治療剤、科研製薬(株)製、一般名「trafermin」))。
(ii) 試験系:ラット(SPF)、Crl:CD(SD)。
(iii) 試験:製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)の創傷治癒促
進作用についてラット皮膚切創モデルを用いて試験を行った。
(iv) 試験期間:2008年2月26日〜2008年6月11日
(v) 試験実施日:試験用動物(ラット)を入手し、群分け、切創作製(2008年3月17日)の後、薬剤投与を2008年3月17日に開始し、2008年3月20日に投与を終了した。
張力測定を2008年3月21日に行った。
(vi-1) 試験用動物(ラット)の入手後1日(:入手当日)の体重範囲は、325〜403gであった。入手した動物には、検疫・馴化飼育期間中の一般状態及び体重推移に異常はみられなかった。
(vi-2) 湿度:40.0〜70.0%で飼育。(一時的にごく短時間に亘り、この湿度範囲を
外れたが、試験成績に影響なし。)
【0111】
3.<緒言>
12週齢のCrl:CD(SD系)ラットの皮膚切創モデルを用いて、製造例2で得られた漢方
薬軟膏の治癒促進作用に対する影響を試験した。
【0112】
4.<被験物質等>
4.1. (a) 被験物質及び比較対照物質
被験物質:製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)。
比較対照物質:「フィブラスト(登録商標)スプレー250」(略称「b-FGF」、(褥瘡治
療剤、科研製薬(株)製、一般名「trafermin」、ロット番号:G71183)。
5.<投与検体>
5.1 (a) 調製法
(比較対照物質)
被験物質は、そのまま試験に使用した。
比較対照物質は、1バイアル(250μg)に添付溶解液(2.5mL/本)の全量を加えて、0.01w/v/%濃度となるように溶解して使用した。
【0113】
6.<試験系>
(6-1) 試験用動物及びその飼育条件
試験には、薬効薬理試験に一般的に用いられている動物種で、その系統維持が明らかな雄性Crl:CD(SD)(SPF、日本チャールズ・リバー株式会社)を使用した。
【0114】
試験用動物は、2008年3月5日に10週齢を42匹入手した。入手後1日の体重範囲は、325〜403gであった。それらのうちで、5日間の検疫期間、その後7日間の馴化期間を設け、こ
の間に体重測定(電子天秤:PM2000、PG2002-S、メトラー・トレド(株)製を使用。)を3回、一般状態の観察を1日1回行って、これらに異常の認められなかった動物を試験に用
いた。
【0115】
動物は、設定温度:23℃(実測値:20.5〜24.7℃)、設定湿度55%(実測値:29.4〜74.9%)、明暗各12時間、換気回数12回/時(フィルターにより除菌した新鮮空気)に維持された飼育室で飼育した。受皿及び給水瓶の交換は1週間に2回以上行った。
【0116】
飼料は、固型飼料(CRF-1、ロット番号:071105、オリエンタル酵母工業(株)製)を
給餌器に入れ、自由に摂取させた。
飲料水は、水道水を給水瓶に入れて自由に摂取させた。
【0117】
(6-2) 群分け法及び個体識別法
群分けは投与開始日に行い、コンピュータを用いて体重を層別に分けた後、無作為抽出法により各群の動物の平均体重及び分散がほぼ等しくなるよう1群10匹の3群に群分けした。(なお、群分け後の残余動物は麻酔下で致死させた。)
【0118】
(6-3) 投与
投与経路は、臨床適用経路に従い経皮投与とした。
投与は、試験施設で用いられている通常の方法に従い、被験物質(第2群)は、ポリプ
ロピレン製注射筒を用いて予め測定した比重から得られた容積により200mg(0.2mL)を切創部位に塗布した。比較対照物質(第3群)は、マイクロピペットを用いて0.2mLを切創部位に滴下することにより行った。
投与回数は、1日1回ずつ、4日間とした。
投与は、午前に実施し、切創作製日及びミヘル除去日は各個体で作業終了直後に行った。
【0119】
(6-4) 群構成、投与量及び使用動物匹数
第1群(無処置、10匹)では、塗布(処置)せず。
第2群(本発明の漢方薬軟膏2の処置、10匹)では、200mg(0.2mL)塗布(site)。
第3群(b−FGFの処置、10匹)では、0.2mL塗布。
【0120】
7.<試験方法>
(7-1) 皮膚切開創の作製
投与開始日にペントバルビタールナトリウム(「ネンブタール」(登録商標)注射液、40mg/0.8mL/kg、i.p)にて麻酔後、動物の背部を電気バリカンにて剃毛した。背部皮膚
をアルコール綿で消毒して外科用メスで正中線上に3.4cmの切創を作製した(この日を切
創作製1日とした。)。切開部の中央部及び中央部から頭部側及び尾部側の1cmの位置計3
箇所をミヘル(ミッヘル縫合鋲:大3.0×14mm、(株)夏目製作所製)で縫合した。
【0121】
(7-2) 創傷治癒効果の評価
切創作製4日の投与前にジエチルエーテル麻酔下でミヘルを除去した。切創作製5日に体重を測定(電子天秤:PG-2002-G、メトラー・トレド株式会社)し、ジエチルエーテル過
麻酔で致死させた後、創傷部周辺の皮膚を剥離した。創傷部を中央とした短冊形の皮膚片(約2cm×約3cm)を作製し、片側を端から約0.5cmの位置で固定して、創耐張力(切創が
開裂するのに要する荷重)を創傷治癒測定用引張試験機(TK-251、有限会社ユニコム)にて測定した。
なお、切創作製2日から切創作製5日まで1日1回午前中に一般状態の観察を行った。
【0122】
8.<統計学的方法及び結果のまとめ>
各群の創耐張力及び体重は平均値±標準誤差を算出した。また、各群の平均創耐張力値をもとに無処置群からの増加率も算出した。
統計学的解析は、創耐張力について行い、2群間比較とした。すなわち、F検定による等分散性の検定を行い、不等分散であったためAspin-Welchのt検定を行った。なお、対比する群間(1群vs2〜3群)については、以下に記載した。有意水準は、5%未満を有意とし、5%未満(p<0.05)と1%未満(p<0.01)に分けて表示した。
(群間比較)
第1群対第2〜3群で比較した。
【0123】
9.<試験成績>
ラットに作製した皮膚切創モデルに対する治癒促進作用を検討した結果を表1と図9に示す。
【0124】
無処置の創耐張力は、143±8gを示した。
製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)を用いて皮膚切創モデルの治療を行った場合の創耐張力は289±31gを示し、無処置群と比較して有意な創耐張力の増強
が認められた。無処置群からの創耐張力増加率は、102.1%を示した。
b-FGF群の創耐張力は205±19gを示し、無処置群と比較して有意な創耐張カの増強が認められた。また、無処置群からの創耐張力増加率は、43.4%を示した。
【0125】
10.<結論>
12週齢のCrl:CD(SD系)ラットの皮膚切創モデルを用いて、本発明の漢方薬軟膏2の
治癒促進作用について試験した結果、無処置群(イ)、本発明の漢方薬軟膏2による処置群(ロ)及びb-FGFによる処置群(ハ)の創耐張力の平均及び標準誤差は、それぞれ、(
イ)143±8g、(ロ)239±31g、(ハ)205±19gであった。
また、無処置群(イ)からの創耐張力増加率は、製造例2で得られた漢方薬軟膏群(ロ)及びb-FGF群(ハ)でそれぞれ(ロ)102.1%及び(ハ)43.4%であった。
製造例2で得られた漢方薬軟膏処置群(ロ)及びb-FGF処置群(ハ)の創耐張力は、無
処置群(イ)と比較して有意な高値を示し、治癒促進作用が示された。また、b-FGF処置
群(ハ)よりも、製造例2で得られた漢方薬軟膏処置群(ロ)のほうが、更に皮膚切創の治癒を促進した.
【0126】
以上の結果より、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏は、褥瘡剤として市販されているb-FGFを上回る治癒促進作用を示し、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏の有効
性が示された。
【0127】
【表1】
(試験例12)
<<本発明の漢方薬軟膏2の遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)皮膚欠損傷モデルに対する治癒効果試験>>
1.<試験概要>
(1-1) 被験物質名:製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)。
(1-2) 試験系:マウス(SPF)、BKS.Cg-+Leprdb/+Leprdb/Jcl。
(1-3) 試験目的:製造例2で得られた漢方薬軟膏の創傷治癒促進作用の有無を遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)に皮膚欠損傷を作製して試験した。
(1-4) 試験期間:2008年2月26日(開始)〜2008年7月7日(終了)。
(1-5) 試験実施日:試験用動物(遺伝的糖尿病マウス、db/dbマウス)を入手し、群わけ、欠損傷作製(2008年4月9日)の後、薬剤(被験物質)の投与を2008年4月9日に開始し、2007年4月29日に投与を終了した。
(1-6) 試験用動物の入手後1日(:入手当日)の体重範囲は、42.0〜45.4gであった。入
手した動物には、検疫・馴化飼育期間中の一般状態及び体重推移に異常はみられなかった。
(1-7) 3-メチル-1-ブタノール(ロット番号:WKG6715)。
【0128】
2.<要約>
12週齢の遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)の背部に作製した欠損傷部に1日1回、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)を塗布し、2日に1回欠損部面積を測定し、漢方薬軟膏2の治癒促進作用を調べた。
【0129】
その結果、本発明の漢方薬軟膏2は、投与3日に有意な高値を示したものの、投与11、13、l5、17及び19日において有意な低値が認められ、治癒促進作用が認められた。
また、欠損部面積の時間経過曲線下面積(AUC)も、有意な低値を示し、治癒促進作用
が認められた。
【0130】
また、褥瘡治療薬として上市されている「b-FGF」(褥瘡治療剤、科研製薬(株)製、
一般名「trafermin」)は、投与9、11、13、15、17、19及び21日に有意な低値を示し、AUCも有意な低値を示し、治癒促進作用が認められた。
以上より、本発明の漢方薬軟膏2は、db/dbマウスの欠損傷において創傷治癒促進作用が認められた。
【0131】
3.<緒言>
試験例11に示すラット背部切創試験(本発明の漢方薬軟膏2のラット皮膚切創モデルによる治療試験)においては、本発明の漢方薬軟膏2は、創傷治癒促進作用があることを示した。
【0132】
更に、創傷治癒効果の有無を調べるために、12適齢の遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)の欠損傷モデルを用いて、背部に作製した欠損傷部に1日1回、本発明の漢方薬軟膏2をテガダームによる閉鎖的投与(注1)を行い、2日に1回欠損部面積を測定し、漢方薬軟膏2の治癒促進作用の有無を調べた。
(注1)「漢方薬軟膏2をテガダームによる閉鎖的投与」とは、後述するように、マウスの背部欠損傷部に、この欠損傷部を被覆するように通気性のシール材「テガダーム」(欠損傷部への水やバクテリアの浸入を防止でき、かつ水蒸気や酸素透過性を有し、皮膚呼吸を維持でき長期の貼付けも可能なポリウレタン製フィルム、3M社製)を貼付しておき、漢方薬軟膏2を充填した注射筒(b-FGF投与では注射針)を、該フィルムに押し当て、貫
通させて、欠損傷部に漢方薬軟膏2(b-FGF投与ではb-FGF)を投与することをいう。
【0133】
4.<被験物質等>
4.1 被験物質、比較対照物質及び媒体
(1-a) 被験物質:「製造例2」で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)。
(1-b) 比較対照物質:「フィブラスト(登録商標)スプレー250」(難治性皮膚潰瘍治療薬、科研製薬(株)製、ロット番号:G71183)。
(1-c) 媒体の生理食塩液(ロット番号:K7E83、(株)大塚製薬工場製)。
4.2 試薬: 3-メチル-1-ブタノール(ロット番号:WKG6715、和光純薬工業株式会社)、2,2,2-トリブロモエタノール(ロット番号:DPH7940、和光純薬工業株式会社)。
注射用水(ロット番号:7C75N、株式会社大塚製薬工場)。
【0134】
5.<投与検体>
5.1 調製法
5.1.1 比較対照物質の調製原液
比較対照物質:調製原液として1バイアルにつき添付溶解液(2.5mL/本)全量を加えて0.01w/v%濃度となるように溶解して使用。
5.1.2 被験物質及び比較対照物質
被験物質:被験物質の漢方薬軟膏2をそのまま使用。
比較対照物質:調製原液に生理食塩液を加えて0.002w/v%濃度となるように5倍希釈し
た。
5.1.3 麻酔(アバチン)
3-メチル-1-ブタノール2mLに2,2,2-トリブロモエタノール3gを加え、37℃前後の温浴中で約30分間温め、溶解した。完全に溶解後、その溶液のうち、0.5mLを40mLの注射用水に
加え、転倒混和させた。
【0135】
6.<試験系>
6.1 試験動物及び飼育条件
試験には、薬効薬理試験に一般的に用いられている動物種で、その系統維持が明らかな雌性BKS.Cg-+Leprdb/+Leprdb/Jcl(SPF、日本クレア株式会社)を使用した。
この試験用動物は、2008年3月27日に10週齢を40匹入手した。入手後1日(:入手当日)の体重範囲は42.0〜45.4gであった。入手した動物の5日間の検疫期間、その後8日間の馴化期間を設け、この間に体重測定(電子天秤:PG2002-S、PB3002、メトラー・トレド(株)製を使用。)を3回、一般状態の観察を1日1回行って、これらに異常の認められなかった
ものを試験に用いた。
【0136】
動物は、設定温度:23℃(実測値:22.9〜23.7℃)、設定湿度:55%(実測値:51.3〜57.5%)、明暗各12時間、換気回数12回/時(フィルターにより除菌した新鮮空気)に維持された飼育室で飼育した。
【0137】
プラスチック製のケージ及び給水瓶の交換は1週間に2回以上行い、給餌器の交換は2週
間に1回以上行った。
飼料は、固型飼料(CRF-1、ロット番号:071105、080107、オリエンタル酵母工業(株
)製)を給餌器に入れ、自由に摂取させた。
飲料水は、水道水を給水瓶に入れて自由に摂取させた。
【0138】
6.2 群分け法及び個体識別法
群分けは投与開始日に行い、コンピュータを用いて体重を層別に分けた後、無作為抽出法により各群の動物の平均体重及び分散がほぼ等しくなるよう、投与開始日に1群10匹の3群に群分けした。(なお、群わけの残余動物は致死させた。)
【0139】
6.3 投与
薬剤の投与は、第3群のb-FGF投与では26Gの注射針(テルモ(株)製)を用い、また、
硬膏剤である第2群の漢方薬軟膏2の投与では21Gの注射針を取り付けたポリプロピレン製ディスポーザブル注射筒(1mL容、テルモ(株)製)を用いた。これら注射針(あるいは
注射筒)に各投与薬剤(検体)を充填後、欠損傷部を覆っているポリウレタンフィルム材(商品名「テガダーム」、3M社製)の上から突き刺し、注入することにより、薬剤100μ
l(0.1mL)を欠損傷部に塗布した。
投与回数は、1日1回、21日間とした。
投与は、午前9時〜午後2時の間に実施し、欠損作製日、トレース及び写真撮影日は各個体で作業終了直後に行った。
【0140】
6.4 群構成、投与量及び使用動物匹数
第1群(無処置、10匹)では、塗布(処置)せず。
第2群(本発明の漢方薬軟膏2(褥瘡剤)の処置、10匹)では、100μL塗布。
第3群(b−FGFの処置、10匹)では、100μL塗布。
【0141】
7.<試験方法>
7.1 皮膚欠損傷の作製
群分け3日前に試験用動物背部の毛を電気バリカンで刈毛し、除毛クリームで除毛した
。群分け後、「アバチン」麻酔下[投与液量:体重(g)×0.02+0.05mL、投与経路:腹
腔内]で、背部正中線を軸とする1.5cm四方の皮膚を眼科用ハサミで除去し、皮膚欠損傷
を作製した(:欠損傷作製1日)。
その後、この皮膚欠損傷部を酸素及び水蒸気の通気性に優れたポリウレタンフィルム材「テガダーム」(商品名、3M社製)で覆った。
【0142】
7.2 皮膚欠損部面積の測定
欠損傷作製1、3、5、7、9、11、13、15、17、19及び21日に欠損部の輪郭をトレースし
た。その面積をエリアラインメーター(Super PLANIX β、タマヤ計測システム(株)
製)にて1回測定した。
【0143】
皮膚欠損部が「治癒した」と判断された動物のトレースはそれ以上行わず、欠損部面積は0とした。
また、投与1日(:当日)の面積を100%として、各投与日の面積率を算出し、投与日数から次式に従い欠損部面積の時間経過曲線下面積(AUC)を算出した。
AUC=(a+k)+2(b+c+d+e+f+g+h+i+j)
a:投与1日の面積率、b:投与3日の面積率、c:投与5日の面積率、d:投与7日の面積率、e:投与9日の面積率、f:投与11日の面積率、g:投与13日の面積率、h:投与15
日の面積率、i:投与17日の面積率、j:投与19日の面積率、k:投与21日の面積率。
【0144】
7.3 一般状態
死亡の有無を含めた一般状態は、毎日午前の投与前に1回観察した。
【0145】
7.4 体重測定
体重は、欠損傷作製1、7、14及び21日(投与日は投与前に測定)に測定した(電子天秤:PG2002-S、メトラー・トレド(株)製を使用)。
【0146】
7.5 写真撮影
欠損傷作製1、7、13及び21日に全例につき写真撮影(投与日は投与前に撮影)した。
【0147】
8. 統計学的方法
体重、欠損傷作製1日から欠損傷作製21日までの欠損部面積及び欠損部面積の時間経過
曲線下面積(AUC)は、群毎に平均値±標準誤差を算出した。
有意差検定は、無処置対照群と各投与群間で行い、5%未満を有意とし、5%未満(p<0.05)及び1%未満(p<0.01)に分けて表示した。検定手法は、Bartlett検定後、等分散の場合はDunnett検定を、不等分散の場合はノンパラメトリックのSteel検定を用いた。検定には、SAS前臨床パッケージVersion5.0(株式会社SASインスティチュートジャパン)を使用した。
【0148】
9. 試験成績
9.1 一般状態
いずれの群においても、投与期間中に一般状態の異常は認められなかった。
【0149】
9.2 体重
結果を図10と表2に示した。
無処置群では、投与1日(:初日)の体重値の平均は、45.4±0.5gであったが、投与期
間を通じて徐々に減少し、投与21日では38.5±1.5gとなった。
製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏投与群では、投与1日の体重値の平均は、45.4g±0.4gであったが、投与期間を通じて徐々に減少し、投与21日では、35.1±0.8gとなった。無処置群と比較して、投与14日以降の測定日において低値を示したが、いずれの測定日においても有意差は認められなかった。
b-FGF投与群では、投与1日の体重値の平均は、45.3±0.4gであったが、投与期間を通じて徐々に減少し、投与21日では、38.3±0.9gとなった。無処置群と比較して、ほぼ同様の体重推移を示し、有意差は認められなかった。
【0150】
9.3 皮膚欠損部の面積及び欠損部面積の時間経過曲線下面積(AUC)
結果を図11〜12と表3に示す。
無処置群では、欠損傷作製1日(:欠損傷を作製したその日)の面積の平均は255.3±6.7mm2であった。この面積は欠損傷作製15日までほぼ一定の値で推移し、欠損傷作製15日以降は日数の経過に伴って小さくなったものの欠損傷作製21日の面積率は62.4±5.8%であった。なお、全例において治癒は認められなかった。このAUCの平均は、1885.1±44.1mm2であった。
【0151】
製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏処置群では、欠損傷作製1日の面積の平均は258.8±9.1mm2であった。
この面積率は欠損傷作製7日(:初日から数えて7日目)まで作製時より傷面積は増大し、欠損傷作製14日以降に欠損傷周辺部に炎症を起こしていた。
【0152】
しかし、欠損部面積は日数の経過に伴って小さくなり、欠損傷作製21日の面積率は43.7±5.5%であった。
なお、本発明の漢方薬軟膏2処置群では、全ての例において「(皮膚欠損傷の完全な)治癒」は認められなかった。このAUCの平均は、1472.9±55.1 mm2であった。
【0153】
無処置群と比較して、本発明の漢方薬軟膏2による処置群では、面積率は、投与3日に
有意な高値が認められ、投与11、13、15、17及び19日で有意な低値が認められた。また、AUCでは、有意な低値が認められた。
【0154】
b-FGF処置群では、欠損傷作製1日(:欠損傷作製当日)の面積の平均は245.7±6.4mm2
であった。この面積率は欠損傷作製後の日数の経過に伴って小さくなり欠損傷作製21日の面積率は1.2±0.6%であった。なお、10例中6例において(完治)治癒が認められた。このAUCの平均は、1135.5±33.3 mm2であった。無処置群と比較して、b-FGF処置群では、面積率は、投与9、11、13、15、17、19及び21日で有意な低値が認められた。また、AUCでも、有意な低値が認められた。
【0155】
10.<結論>
12週齢の遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)を用いて、1日1回背部に作製した欠損傷部に、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)を塗布し、2日に1回欠損部面積を測定し、この漢方薬軟膏2の治癒促進作用を調べた。
【0156】
その結果、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)は、投与3日に有
意な高値を示したものの、投与11、13、15、17及び19日において有意な低値が認められ、治癒促進作用が認められた。
【0157】
また、欠損部面積の時間経過曲線下面積(AUC)も、有意な低値を示し、治癒促進作用
が認められた。しかし、今回用いた製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏
2)では、投与14日以降、体重が無処置群より低値であったこと、背部皮膚に欠損傷部周
辺に炎症を起こしていたことから、投与17日以降の欠損部面積の収縮は停滞していた。
【0158】
この原因は明らかではないが、この検体(薬剤)が硬膏剤のため、今回の投与方法である閉鎖的投与では、皮膚から吸収されにくく、テガダーム内に検体が残存している状態であった。そのため、連日の投与により動物に負担がかかり、ストレスが負荷され、体重の減少や欠損部面積の縮小停滞に影響を及ぼした可能性が考えられる。
【0159】
しかし、試験例11に示すラット皮膚切創試験では、褥瘡剤として市販されているb-FGFを上回る治癒促進作用を有し、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏の有効性が示さ
れた。
【0160】
また、今回行った糖尿病遺伝的マウス(db/dbマウス)における皮膚欠損傷の治癒効果でも、治癒促進作用が認められた。
以上のことから、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)は、連日閉鎖的投与により、皮膚から吸収されにくいものの、db/dbマウスにおける皮膚欠損傷の治癒促進作用を有することが明らかとなった。
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0163】
一般的な褥瘡等の処置方法では、傷口に腐敗筋肉が現れると、傷口の癒合に影響する壊死組織を取り除かなければならない。
これを創傷清拭術(外科医が機械で除去するか、特定の湿布膏薬で壊死組織を軟化させ
る)といい、傷口壊死組織が清拭され、正常な状況下にあって初めて自分から新生組織を生成させることができる。
【0164】
しかし、傷口処置に伴う患者の苦痛と精神的な負担は往々にして耐え難いものであり、心理的な治療排斥によって傷口の癒合に影響がでることさえある。
本発明の膏薬は、塗布した当初から快復するまでの全過程において、病原菌などを抑制する抗生物質など、副作用をもたらす薬剤を使用することがなく、本発明の膏薬を塗布する(治療期間中に数回ガーゼ交換し、塗布する)手段を実施するだけで、効果的に壊死組織を除去し、新しい皮膚の生成を促すことができる。
【0165】
また、本発明の膏薬は、滲出液を抑制する作用があり、同時に傷口を湿潤状態に保ち、傷口の快復に役立つ。
従って、患者に身体的苦痛を与えたり、精神的負担をかけたりすることがなく、そのうえ手術などによる経済的な負担も回避でき、快復までの期間も短縮される。
【0166】
従って、患者自身とその家族にとって、本発明の膏薬は快復面、精神面、身体面、経済面及び時間面のいずれにおいても、優れた処方である。
本発明は乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(児茶)など10種類の漢方薬材とエノキタケ菌菌糸体抽出物を有効成分とするものであるが、これらの処方においては、実際の症状により適宜に調整、増減することができる。
【0167】
本発明者は漢方薬の論理によると、上記10種類の漢方薬には、欠かせない成分として乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)が本発明の製剤の根本的な組合せであるとの知見を得て、さらに鋭意研究を重ねて本発明に係る外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物および、外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤を完成するに至ったのである。
【0168】
より好ましい処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)と、エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」であってもよい。
【0169】
さらに良い処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)と、
エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」であってもよい。
【0170】
また一段とよい処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)と、
エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」であってもよい。
【0171】
もっと良い処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)と、エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」であってもよい。
【0172】
さらに好ましい処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)と、エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」である。
【0173】
最も好ましい処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(児茶)の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(児茶)と、エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」である。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1(A)】図1(A)は、試験例1に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す1枚目の写真である。
【図1(B)】図1(B)は、試験例1に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図1(A)に続く2枚目の写真である。
【図1(C)】図1(C)は、試験例1に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)が全癒するまでの経過を示す、図1(B)に続く3枚目の写真である。
【図1(D)】図1(D)は、試験例1に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図1(C)に続く4枚目の写真である。
【図2(A)】図2(A)は、試験例2に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す1枚目の写真である。
【図2(B)】図2(B)は、試験例2に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図2(A)に続く2枚目の写真である。
【図2(C)】図2(C)は、試験例2に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図2(B)に続く3枚目の写真である。
【図2(D)】図2(D)は、試験例2に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図2(C)に続く4枚目の写真である。
【図3(A)】図3(A)は、試験例3に示す左足の踵に生じた蜂窩織炎の傷口が全癒するまでの経過を示す1枚目の写真である。
【図3(B)】図3(B)は、試験例3に示す左足の踵に生じた蜂窩織炎の傷口が全癒するまでの経過を示す、図3(A)に続く2枚目の写真である。
【図4】図4は、試験例4に示す右足の脛に生じた蜂窩織炎の傷口が全癒した状態を示す写真である。
【図5(A)】図5(A)は、試験例5に示す臀部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒した状態を示す写真である。
【図5(B)】図5(B)は、試験例5に示す背中の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒した状態を示す写真である。
【図6(A)】図6(A)は、試験例6に示す背中部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す1枚目の写真である。
【図6(B)】図6(B)は、試験例6に示す背中部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図6(A)に続く2枚目の写真である。
【図6(C)】図6(C)は、試験例6に示す背中部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図6(B)に続く3枚目の写真である。
【図6(D)】図6(D)は、試験例6に示す背中部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図6(C)に続く4枚目の写真である。
【図6(E)】図6(E)は、試験例6に示す背中部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図6(D)に続く5枚目の写真である。
【図7(A)】図7(A)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す1枚目の写真である。
【図7(B)】図7(B)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図7(A)に続く2枚目の写真である。
【図7(C)】図7(C)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図7(B)に続く3枚目の写真である。
【図7(D)】図7(D)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図7(C)に続く4枚目の写真である。
【図7(E)】図7(E)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図7(D)に続く5枚目の写真である。
【図7(F)】図7(F)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図7(E)に続く6枚目の写真である。
【図8】図8は、試験例8に示す、足の左親指の第二趾関節部分の傷口が改善した状態を示す写真である。
【図9】図9は、試験例11に示す、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2、Chinese medicine of bedsore−2)のラット皮膚切創モデルによる治療を行った場合の創耐張力(tensile strength(g))を示す。
【0175】
なお、無処置群(対照、control)での創耐張力と、「b-FGF」での治療を行った場合の創耐張力も合わせて図9に示す。
【図10】図10は、試験例12における、db/dbマウスへの投薬日数(days of administration)と体重(body weight(g))との関係を示すグラフである。
【0176】
図10中、「○と実線」はコントロール(対照)を示し、「●と点線」は本発明の漢方薬軟膏2を投与した場合を示し、「△と実線」は「b−FGF」を投与した場合を示す。
【図11】図11は、本発明の試験例12における、db/dbマウスへの投薬日数(days of administration)と欠損傷面積変化率(change of wound lesion area(%))との関係を示すグラフである。
【0177】
なお、無処置群(対照、control)における、db/dbマウスへの投薬日数と欠損
傷面積変化率との関係、および、薬剤「b-FGF」投与群における、db/dbマウスへの
投薬日数と欠損傷面積変化率との関係も合わせて図11に示す。
【0178】
図11中、「○と実線」はコントロール(対照)を示し、「●と点線」は本発明の漢方薬軟膏2を投与した場合を示し、「△と実線」は「b−FGF」を投与した場合を示す。
【図12】図12は、試験例12に示す、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2、Chinese medicine of bedsore−2)のdb/dbマウスへの投薬による治癒効果をAUC(mm2)で示す。
【0179】
コントロール(対照)および 「b−FGF」を投与した場合も併せて示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢方薬組成物に関する。また本発明は褥瘡及びその他に怪我又は病気が原因となった冶癒し難い傷口を治療することを目的とする外用ペースト状製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
褥瘡(ジョクソウ)は、医療の臨床上よく見られる徴候であり、行動の不自由な方や長年寝込んでいる患者によく起きる現象である。褥瘡の原因としては局所の皮膚や皮下にある軟部組織が長時間にわたり圧迫を受け、酸素欠乏に陥ってその結果、細胞組織は壊死する。
【0003】
以下に褥瘡が起きる原因を説明する。
局所的な成因:
(1)表皮の垂直圧力:外部の圧力が局所皮下組織内にある微血管の血圧より大きい場
合、局所にある血液の循環が阻害されるため、細胞が酸素欠乏の状態になる。欠乏の状態が長続きすると、細胞が死んでしまい、皮膚や皮下組織及び筋肉に潰爛(カイラン、壊乱)を起こす。
【0004】
圧迫される局所は常に身体に最も突出した部位であり,仙骨、寛骨、坐骨棘(ザコツキョク)、かかど、足首、肩甲骨部、肘等が挙げられる。
(2)表皮の剪断応力:患者が横になる時又は座る時に当たる仙骨部の皮膚が引っ張ら
れ、水平方向の剪力になり、皮膚に供給する血管に圧力が掛かることになり、皮膚が酸素欠乏及び壊死を引き起こす。
【0005】
(3)局所の外傷及び感染:擦り傷や挫傷により感染した場合、組織の酸素欠乏に対す
る耐性が落ち、長時間寝たきりになると、圧力と剪断応力のために褥瘡が発生する。
(4)局所の温度:局所組織の温度が下るので細胞の代謝率を下げ、酸素欠乏に対する
耐性が低下する。
【0006】
(5)局所の湿度:皮膚が過度の浸潤により組織がより軟らかく、脆くなり、局所が通
気不良及び大小便失禁のため、紙おむつを常時着用することにより、局所が常時温った状態になる。
【0007】
全身的な成因・原因:
(1)年齢:老化により皮膚の弾力性が失われて血液循環が悪くなるため、組織の酸素
欠乏に対する耐性も低下する。
【0008】
(2)栄養不足:長期にわたる栄養不足のため、組織の修復が停滞して、酸素欠乏に対
する耐性や感染に対する抵抗力が下る。
(3)貧血:貧血になると、血液の中で酸素を運ぶ能力が低下し、血液循環が阻害され
てしまい、組織に酸素欠乏が生じやすくなる。
【0009】
(4)心理的な影響:長時間寝たきりで、生きる意志が薄弱になり、免疫力が低下する
。
中医学の観点から見ると、その発病の転機を黄帝内経『霊枢巻第81の癰疽(ヨウソ)篇』(非特許文献1)から説明することができる。
【0010】
『寒邪が経絡に侵襲し滯留すると、血行が滯って不通となる。血行不通となると衛気の
運行が阻害されて血行不通の部位にとどまって循環しなくなり、癰腫(ヨウシュ)となる。
【0011】
寒気が熱と化し、熱が盛んになると筋を腐敗させ、筋が腐敗すると、化膿する。膿が排出されないと筋が糜爛(ビラン)し、筋が糜爛(ビラン)すると、骨を損傷し、骨が損傷すると、骨髄が消耗する。
【0012】
膿毒が骨節の空隙箇所にいなければ、排出されず、営血の虚損を引き起こす。
そうなると筋骨筋肉に栄養がめぐらず、経気血脈がこれによって衰敗して損傷し、毒気が五臓に及ぶと、五臓が損傷し、死ぬことになる。』
現在、一般的に傷口に用いる薬物は多くの場合はヨードチンキ、湿布材、外傷・やけど用の軟膏及び外用薬であり、しかもこれらの効果は殺菌、消毒までに過ぎない。
【0013】
しかし、上記のように、褥瘡(ジョクソウ)になる原因は単純な外傷になる原因とは極めて違っている。
そして、褥瘡のように治癒し難い傷口を治療する薬剤について言えば、同時に細菌感染の除去と壊死組織の再生及び他の疾患による傷口が癒合不良の改善する機能などを同時に備えた薬剤となると、今もって確かな効果を持つ配合法が開発されていない。
【0014】
褥瘡及び外傷を治療する漢方薬に関しては、下記の文献がある。
(1)外科証治全生集(非特許文献2)、
(2)外科正宗(非特許文献3)、
(3)医宗金鑑(非特許文献4)。
【0015】
上記の文献において、
(1)には、陽和解凝膏で糜爛・潰瘍(カイヨウ)、陰疽、しもやけを治すことができると記載されている。
【0016】
(2)には、生肌玉紅膏で癰疽(ヨウソ)、發背(背中の腫れ物、発背)、色々な糜爛(ビラン)・潰瘍、棒毒等の瘡に膿瘍が形成し、排膿をしている時にて治すことができると記載されている。
【0017】
(3)には、腐敗を終わらせ、新しい肌膚を生成してすべての癰疽等を治すことができると記載されている。
上記の文献に記載された漢方薬剤処方は、ただ論理的な思考しかない、又は、実際に治療効果が得られない、且つ、多くの患者が前もって既にヨードチンキなどの外用殺菌消毒剤等の薬品で処理するため、医療に対応することが困難となってきている。
【非特許文献1】黄帝内経の『霊枢巻第81の癰疽(ようそ)篇』
【非特許文献2】外科証治全生集
【非特許文献3】外科正宗
【非特許文献4】医宗金鑑
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記の如く、弁証論治の角度からは、褥瘡(ジョクソウ)を寒証、虚証、労証、痿症(イショウ)、血淤(ケツオ)と見ることができ、従ってその治則大法は、寒に対してはこれを温め、虚に対してはこれを補う、労に対してはこれを温め、痿の治療には単独に陽明を取り、さらに活血化淤法でこれを補助する。清朝の銭塘出身の呉師機が著した『理▲論▼駢文(リロンベンブン)』の中で述べられている「内治法は即ち外治法である」の理論と一致する。
【0019】
本発明者は、上記の原理に基づいて一意専心して研究に取り組み、褥瘡を治療する有効膏剤を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物および、外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤の特徴は、下記[1]〜[32]および[33]の事項にある。
[1] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡(ジョクソウ)の治療用漢方薬組成物。
【0021】
なお、本発明では、附子(ブシ)または附子(ブシ)を減毒した炮附子(ほうぶし)に代えて、塩附子(えんぶし)、加工附子(かこうぶし)などを用いてもよい。
[2] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)の混合重量比が4:2:1であることを特徴とする[1]に記載の外傷
、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【0022】
[3] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[1]または[2]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[4] [1]〜[3]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【0023】
[5] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【0024】
[6] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)の混合重量比が4:1:1:1であることを特徴とする[5]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[7] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[5]または[6]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[8] [5]〜[7]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[9] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[10] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)の混合重量比が4:1:1:1:1であることを特徴とする[9]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【0025】
[11] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[9]または[10]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[12] [9]〜[11]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[13] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[14] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)の混合重量比が4:1:1:1:1:1であることを特徴とする[13]に記載の外傷、褥瘡
の治療用漢方薬組成物。
[15] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[13]または[14]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[16] [13]〜[15]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[17] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[18] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)の混合重量比が4:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする[1
7]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[19] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[17]または[18]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【0026】
[20] [17]〜[19]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[21] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[22] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)の混合重量比が4:1:1
:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする[21]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[23] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[21]または[22]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[24] [21]〜[23]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[25] 乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[26] 有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)の混合重量比が4:1:1:1:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする[25]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【0027】
[27] 各有効成分が粉末状であることを特徴とする[25]または[26]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[28] [27]に記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[29] さらに、有効成分としてエノキタケ菌菌糸体抽出物を含有することを特徴とする、[1]〜[3]、[5]〜[7]、[9]〜[11]、[13]〜[15]、[17]〜[19]、[21]〜[23]、[25]〜[27]の何れかに記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[30] エノキタケ菌菌糸体抽出物の含量が他の有効成分である、乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)
、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)の合計の含量1重量部に対して0.01
〜0.27重量部、好ましくは、0.02〜0.1重量部であることを特徴とする[29]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[31] 有効成分が粉末状であることを特徴とする[29]または[30]に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
[32] [29]〜[31]の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
[33] 上記油脂剤が、ラードである[4]、[8]、[12]、[16]、[20]、[24]、[28]の何れかに記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物又は膏剤。
【発明の効果】
【0028】
その主な効用には、患者の免疫力を増強し即ち「正気を扶け」て、効果的に感染を抑えるだけでなく、腐敗筋肉を除去し即ち「邪気を取り除い」て、古いものを除いて新しいものにするなどがあり、さらに傷口とも相性がよく、急速に滲出液を吸収し、湿潤状態を保たせることができる。
【0029】
従って、本発明は、傷口がなかなか治らない場合に適用する外用漢方薬膏剤を提供する。
本発明による外用漢方薬膏剤は、特に、褥瘡を治療することに最も効果がある。
【0030】
上記の漢方薬膏剤は、乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ、山椒の実)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、及び阿仙薬(アセンヤク、中国語:児茶)等の漢方薬材を含む。さらに、エノキタケ菌菌糸体抽出物を調合すると、より良い効果が得られる。
【0031】
乾薑(カンキョウ)はショウガ科ショウガ属植物ショウガZingiber officinale Roscoeの根を干したものである。温中散寒に働き、止血、回陽通脈の効果があり、鎮痛作用や酸素欠乏の拮抗作用、抗炎症作用といった薬理作用がある。
【0032】
附子(ブシ)はキンポウゲ科トリカブト属植物烏頭(うず)Aconitum carmichaeli Debeaux の側根である。回陽救逆、散寒除湿の効果があり、血流が減少するために、心臓の
筋肉が酸素不足に陥ることへの拮抗作用や抗血栓作用、抗炎症作用、T細胞(リンパ細胞)の転化率を増加させる免疫機能を向上することといった薬理作用がある。炮附子(ほうぶし)は、附子(ブシ)を減毒加工したものである。
【0033】
肉桂(ニクケイ)(シナモン)はクスノキ科クスノキ属植物シナモンCinnamomum cassia Presl の樹皮をはがし、乾燥させたものである。補火助陽、散寒止痛、温経通脈の効果があり、抗潰瘍作用や抗炎症作用、抗菌作用、老化予防作用といった薬理作用がある。若い枝の桂枝(けいし)で代用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に示すのは上記の漢方薬の中から選ばれたものの好ましい処方であり、数値は重量部を表す。
処方1は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)2、肉桂(ニ
クケイ)1の構成よりなるものである。
【0035】
処方1'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)2、肉桂(ニクケイ)1及びエノキタケ菌菌糸体抽出物0.27の構成よりなるものである。
処方2は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニ
クケイ)1、蜀椒(ショクショウ、山椒の実)1の構成よりなるものである。
【0036】
処方2'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニクケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1及びエノキタケ菌菌糸体抽出物0.27の構成よりなるものである。
【0037】
処方3は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニ
クケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1の構成よりなるものである。
処方3'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニクケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1及びエノキタケ菌菌糸体抽出
物0.27の構成よりなるものである。
【0038】
処方4は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニ
クケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1の構成よりなるものである。
【0039】
処方4'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニクケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1及びエノキタケ菌菌糸体抽出物0.27の構成よりなるものである。
【0040】
処方5は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニ
クケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1、厚朴1の構成よりなるものである。
【0041】
処方5'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニクケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1、厚朴1及びエノキタケ菌菌糸体抽出物0.27の構成よりなるものである。
【0042】
処方6は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニ
クケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1、厚朴1、乳香(ニュウコウ)1、没薬(モツヤク)1の構成よりなるものである。
【0043】
処方6'は、乾薑(カンキョウ)4、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)1、肉桂(ニクケイ)1、蜀椒(ショクショウ)1、呉茱萸(ゴシュユ)1、芍薬(シャクヤク)1、厚朴1、乳香(ニュウコウ)1、没薬(モツヤク)1及びエノキタケ菌菌糸体抽出物0.27の構
成よりなるものである。
【0044】
本発明の漢方薬膏剤は、上記の漢方薬材を上記の処方の比率に基づいて配合し、混合・粉砕することで粉末状にした後、助剤を添加し、攪拌してからなるものである。
上記の漢方薬材は、生鮮型と乾燥型のいずれであっても良い。しかし、不純物の混入を避けるためには乾燥型がよい。
【0045】
乾燥の程度には特に制限はないが、乾燥し過ぎると、品質に影響する。
上記の助剤は、鉱物系油脂又は動植物系油脂であってもよい。さらには、ロウ等を用いてもよい。
【0046】
鉱物系油脂としては、例えば、セレシン、ワセリンの他に、石油資源から得られ、C15以上のパラフィン系のものなどが挙げられる。
動物系油脂としては、例えば、動物油では、卵黄油、ミンク油、タラ肝油、スクワラン
等が挙げられ、
動物脂では、ヘット(牛脂)、ラード(豚脂)、羊脂が挙げられる。
【0047】
また、植物性油脂としては、例えば、植物油では、ヒマワリ油等の乾性油;ゴマ油等の半乾性油;オリーブ油、椿油等の不乾性油;が挙げられ、また、
植物脂では、カカオ脂、ヤシ油、モクロウ等が挙げられる。
【0048】
本発明においては、これら助剤としては、高温下において、ペースト状のものになるのがよい。
鉱物系油脂はワセリンが比較的よい。動植物油脂はヘット(牛脂)、ラード(豚脂)が好ましい。
【0049】
但し、本発明の漢方薬外用膏剤の用途からすれば、他の医薬用油脂やエマルジョン類材料を選んで使用することもできる。
本発明者は実験により、ラードの効果が最もよいと立証している。
【0050】
上記助剤(例:ラード)と、粉末になった漢方薬製剤とを混合して攪拌すれば、軟膏等の製剤が出来上がる。軟膏の粘度を調整するために、粘度調整剤を適宜に混合してもよい。さらに、使用者が受け入れやすいように、適宜に消臭剤や芳香剤を混合してもよい。
【0051】
上記のエノキタケ菌菌糸体抽出物は、上記の漢方薬材を粉砕して粉末にした後、助剤と同時に添加して攪拌、混合すればよい。或は、上記のペースト状製剤ができ上がった後に、上記のエノキタケ菌菌糸体抽出物をそれに添加して攪拌、混合すればよい。
【0052】
本発明の膏薬の作用範囲として、皮(皮膚)、脈(神経、血管、経脈)、肉(皮下脂肪)、筋(筋肉)、骨(骨髄)などが含まれる。
本発明のペースト状製剤には、以下の長所がある。
【0053】
・欠損の深い潰爛に対する作用:
褥瘡の治療で最も難しいのは、壊死組織(necrotic tissue、これは中医学でいう「陰
疽」)の除去であるが、本発明の膏薬は凝固を解く効用があるため、死んだ肌膚を除去して潰爛を終わらせることができる。
これは治療効果の有無のキーポイントである。
【0054】
・肉芽組織(granulation tissue)の新生を促進:
本発明の膏薬は新しい肌膚の生成を促す効用がある。
【0055】
・滲出液の抑制:
褥瘡によく見られる大量の滲出液(exudate)は、伝染性膿痂疹(デンセンセイノウカ
シン、とびひ)でもあり、その病原体はほとんどが黄色ブドウ球菌である。
本発明の膏薬に含まれている活性成分には、マクロファージの貪食作用を増強し、かつ生体の免疫を高める機能があり、さまざまな病原体に対して抑制作用がある。
【0056】
・湿潤状態を保つ:
本発明の膏薬には上記滲出液の過度の浸潤(infiltrates)に対して抑制作用があり、
それと同時に傷口の回復に役立つように、滲出液を除去した後の組織を浸潤状態に保たせる。
【0057】
本発明の膏薬は上記褥瘡のどの段階にあっても適用できる。
次に上記のエノキタケ菌菌糸体抽出物の製造方法を説明する。
先ずバカスからなる固体培地に水、好ましくは純水を適度に混ぜた後、滅菌し、冷却後、エノキタケ菌を接種する。
【0058】
なお、このバカス培地に、米糠の他、必要によりリン、鉄等のミネラル類、落花生表皮、玄米等を添加してもよい。
なお、砂糖キビの絞り粕であるバカスには、菌糸体の栄養源となる糖類及びタンパク質が含まれており、このままでも固体培地となりうるが、バカスに上記米糠を添加して用いる場合には、バカス80重量部に対して米糠は通常10〜20重量部程度の量で用いられる。
【0059】
エノキタケ菌としては、従来より公知のものを用いることができる。
次いで、このようにエノキタケ菌が接種された培地を、温度及び湿度が調節され、さらには照度も調節された培養室内にいれて、菌糸体を増殖させる。
【0060】
このようにエノキタケ菌菌糸体を増殖させる際には、上記のようにエノキタケ菌を接種した後、温度14〜25℃および湿度70%を超える条件下で、好ましくは、上記温度および湿度75〜99%の条件下で、特に好ましくは、上記温度および湿度80〜95%の条件に調節した培養室内で、通常2〜6ヶ月間、好ましくは、2〜3ヶ月間保持(培養)し、菌糸体を増殖させることが望ましい。
【0061】
なお、エノキタケ菌の作用により、培養中に培地成分が分解され最終的に水と炭酸ガスとなり、培地内部の水分が約80%となる。このため、上記湿度を70%以下に設定すると、培地外への水分の蒸発が多くなり、その結果、培地が縮小し、本来の目的物を得ることができなくなる。
【0062】
本発明においては、菌糸体が固体培地に蔓延し、子実体の発生直前.直後の時期に、バカス基材の繊維素を解束し、12メッシュ通過分が30重量%以下となるようにすることが望ましい。なお、バカス基材培地の解束は、上記のように子実体の発生直前.直後の時期に行うことが好ましいが、子実体がかなり成長した後の時期に行ってもよい。
【0063】
このように解束された固体培地に、水およびセルラーゼ、プロテアーゼ、グルコシダーゼ、ヘミセルラーゼ、キチナーゼ、アミラーゼおよびペクチナーゼから選ばれる酵素1種
またはそれ以上を、固体培地を30〜50℃に保ちながら添加する。
【0064】
添加される酵素としては、セルラーゼが好ましい。
酵素の添加量は、固体培地1kgに対して0.5〜5g、好ましくは1〜3gであることが好ましい。
【0065】
また水は、金属イオン等のイオン類を含まない純水が好ましく、この解束された培地1kgに対して、純水1〜10kg、好ましくは3〜5kgを加えてバカス含有混合物とする。
次いでこのバカス含有混合物からエノキタケ菌菌糸体エキス分を抽出するが、このようにエノキタケ菌菌糸体エキス分を抽出するには、培地含有混合物を、例えば変速機付ギヤーポンプ等を用いて循環させながら、固体培地に粉砕および擂潰(ライカイ)作用を加えてバカス繊維の約70重量%以上が12メッシュ通過分となるようにすることが望ましい。
【0066】
12メッシュ通過分が70重量%未満である場合には、固体培地中の有効成分の抽出が不充分となり、繊維素が充分に軟化しない部分が多くなり、得られる固形残渣を飼料、食料或いは肥料として有効利用できなくなることがある。
【0067】
バカス含有混合物の粉砕および擂潰(ライカイ)は、該混合物の温度を30〜50℃に保ちながら行ってもよく、温度を上記温度より徐徐に上昇させながら行ってもよいが、温度を
上昇させながら行うことが好ましい。
【0068】
水温が30℃以上、好ましくは35℃以上となったときに、バカス含有混合物中に室温の空気を噴入させると、空気泡は急激に加熱されて破裂し、バカス繊維に衝撃を与え有効成分の抽出をより効率的に行うことができる。
【0069】
次いで、このようにして処理されたバカス含有混合物をさらに加熱95℃までの温度、好ましくは75〜90℃程度の温度に加熱し、この温度で数十分間保持して該混合物中の酵素を失活させるとともに、該混合物を滅菌すると、エノキタケ菌菌糸体エキスが得られる。
【0070】
このように該混合物中の酵素を加熱失活させ、かつ滅菌すると、エノキタケ菌菌糸体エキスの変質を防止できる。
なお、得られたエノキタケ菌菌糸体エキスを必要に応じて、50〜120メッシュ、好まし
くは60〜100メッシュ程度の濾布を用いて濾過してもよい。
【0071】
このようにして得られるエノキタケ菌菌糸体エキスは、プロフラミンを含有する。
このようなエキスは濃縮して用いることもでき、また凍結乾燥して粉末状として用いることもでき、さらには例えば精製水、アルコール等で希釈して用いることもでき、医薬品(例:アトピー性皮膚炎治療剤、水虫治療剤、面皰治療薬、免疫活性化剤、エイズ治療剤、制ガン剤等)、化粧料(皮膚保湿用化粧料等)等に添加して用いることができる。
以下、本発明に係る外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物および、外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤ついて製造例、実施例によりさらに具体的に説明する。
【0072】
[製造例1]:
下記の漢方薬材を下記の処方の比率に基づいて配合し、混合・粉砕して、攪拌した。
【0073】
乾薑(カンキョウ)150g、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)37.5g、肉桂(ニク
ケイ)37.5g、蜀椒(ショクショウ)37.5g、呉茱萸(ゴシュユ)37.5g、芍薬(シャクヤ
ク)37.5g、厚朴37.5g、乳香(ニュウコウ)37.5g、没薬(モツヤク)37.5g、及び阿仙薬(アセンヤク)37.5g(計487.5g)。
【0074】
粉砕は気流式超微粉砕機(欣鎮企業会社製造;台湾特許121630号)を用いて120メッシ
ュ程度通過しうるように粉砕する(微粉砕)。粉砕した後、さらに、ラード2400 gと混合し、攪拌してペースト状にして、軟膏状の製剤(漢方薬軟膏1:2887.5g)を得た。
【0075】
[製造例2]:
上記製造例1と同じ処方に基づいて製造された漢方薬材(計487.5g)を混合・粉砕して粉末とし、凍結乾燥されたエノキタケ菌菌糸体エキス粉末10gを加え、よく攪拌して、さ
らに、ラード2400 gと混合し、攪拌してペースト状にし、軟膏状の製剤(漢方薬軟膏2:2897.5g)を得た。
【0076】
エノキタケ菌菌糸体培養抽出物(F.V.M)の調製法:
バカス90重量部、米糠10重量部からなる固体培地に純水を適度に含ませた後に、エノキタケの種菌を接種し、温度および湿度を調節した培養室内に静置し、菌糸体を増殖させた。
【0077】
菌糸体が固体培地に蔓延した後、バカス基材の繊維素を解束し、12メッシュ通過分が24重量%以下となるようにした。この解束された培地1.0kgに、純水3.5 kgを加え、40℃に
保ちながら精製セルラーゼ2.0 gを加え、培地含有混合物とした。
【0078】
次いで培地含有混合物を変速機付ギヤーポンプにより循環させながら、固体培地にギヤー部分において粉砕およびすりつぶし作用を200分間程度加えバカス繊維の約80重量%が12メッシュ通過分となるようにした。
【0079】
培地含有混合物の粉砕およびすりつぶしは、該混合物の温度を徐徐に上昇させながら行った。
その後、培地含有混合物をさらに加熱して、90℃として30分間放置した。90℃への加熱により、酵素を失活せしめ、かつ殺菌を施した。
得られた培地含有混合物を60メッシュ濾布を用いて濾過してエノキタケ菌糸体抽出液とし、濃縮した後、エノキタケ菌糸体抽出物である凍結乾燥粉末を得た。
【0080】
本発明の褥瘡軟膏製剤とエノキタケ菌菌糸体培養抽出物(F.V.M)との併用例:
(1)エノキタケ菌菌糸体培養抽出物(F.V.M)含有褥瘡剤を使用して治療効果を検討した結果、一般には数日程度再生にかかるが、エノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)含有褥
瘡剤を使用した患者はそれと比較して再生が促進された。
【0081】
これはエノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)が本来持っている抗腫瘍作用、免疫賦活
作用や疲労回復作用が相乗的に加わり、体に対する抵抗力を上昇させたことによるものと考えられる。
特に、低濃度においてエノキタケ菌糸体培養抽出物は交感神経を刺激して疲労回復が示唆されている。
【0082】
(2)エノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)含有褥瘡剤(例:製造例2の漢方薬軟膏2)には、エノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)が本来持っている抗腫瘍作用、免疫賦活作
用や疲労回復作用がある。
【0083】
さらに、エノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)には皮膚に対する保湿作用があり、こ
の褥瘡剤を用いて治療することにより皮膚の再生は促進され、再生された皮膚は保湿作用により定着が早かった。
【0084】
本発明のエノキタケ菌糸体培養抽出物(F.V.M)含有褥瘡剤(=漢方薬軟膏、漢方薬軟
膏2ともいう。)(ロ)は、皮膚切創に対する治癒促進作用の点で、(イ)無処置(皮膚
切創に対する処置をしなかった場合)と比較して、創耐張力の点で有意な高値を示し、治
癒促進作用を有している。
【0085】
また、本発明の漢方薬軟膏2は、一般的な褥瘡治療剤として市販されている「 b-FGF」(褥瘡治療剤、科研製薬(株)製、一般名「trafermin」)に比して、より強力な治癒促進
作用を示し、皮膚切創の治癒効果で優れた有効性を有している(試験例11)。
【0086】
また、本発明の漢方薬軟膏2を、遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)の背部に作製した欠損傷部に塗布し、その欠損部面積を測定した結果、漢方薬軟膏2の治癒促進作用が認められた。また、欠損部面積の時間経過曲線下面積(AUC)も、有意な低値を示し、治癒
促進作用が認められる(試験例12)。
【0087】
本発明の膏薬は、以下の説明に従って使用するものである。
先ず、瘡口を無菌生理食塩液で洗浄し、滅菌綿棒で適量の膏薬を不織布の上に塗ってガーゼを被せ、それを瘡口に当てる。
【0088】
瘡口が深い場合は、膏薬(瘡口の大きさや深さに応じて加減して使用)を直接瘡口に塗布してからガーゼで覆う。傷口の状況に応じて1日数回交換する。
交換するときは、傷口の新生薄膜を破らないように、また湿潤状態を保つように注意深く行い、ヨードチンキで消毒をしてはならない。
【0089】
保存方法:冷暗所に置いて直射日光を避け、長期保存するときは、冷蔵庫にいれて冷蔵する。保存の有効期限は1年である。
【実施例】
【0090】
(試験例1)
『病歴番号1』:陳氏
52才の脳出血症の患者であり、長期に寝たきりで、2007年9月28日に仙骨部に褥瘡(ジ
ョクソウ)が発生した。傷口(面積)が約10cm×5cmで、II度褥瘡(ジョクソウ)の真皮
までに亘る潰瘍である。
【0091】
製造例1によって作られた褥瘡(ジョクソウ)膏剤を用いて1日1回に塗り換えることに
より、同年10月10日に傷口が全癒した。
これを図1(A)〜(D)に示す。
【0092】
(試験例2)
『病歴番号2』:趙氏
66才の脳出血症の患者であり、長期に寝たきりで、仙骨部に褥瘡がある。傷口が約3cm
×2cmで、皮下脂肪層までとどくIII度褥瘡である。病歴1ヶ月があり、癒し難い傷口であ
った。2007年9月29日から製造例1より作られた褥瘡膏剤を始めに用いて治療することにより、同年10月10日に傷口が全癒した。
これを図2(A)〜(D)に示す。
【0093】
(試験例3)
『病歴番号3』:鄭氏
34才の高血圧症及び下肢静脈血栓症の患者であり、2007年5月5日から来院された。左足の踵をケガしたため、蜂窩織炎に罹った。病歴1ヶ月があり、傷口が約10cm×4cmで、皮下脂肪層まで達したものである。
【0094】
製造例1より作られた褥瘡膏剤を1日1回に塗り換えることにより、同年7月20日に傷口が全癒した。
これを図3(A)〜(B)に示す。
【0095】
(試験例4)
『病歴番号4』:21才の王氏
2007年3月始頃に交通事故で右足の脛を怪我して縫ってしまったが、傷口がなかなか治
らなくて、蜂窩織炎に罹った。
【0096】
傷口が約6cm×4cmで、筋肉層までとどくIV度褥瘡である。
同年4月12日から製造例1より作られた褥瘡膏剤を1日1回に塗り換えることにより、同年6月29日に傷口が全癒した。
これを図4に示す。
【0097】
(試験例5)
『病歴番号5』:彭氏
54才の脳出血症及び糖尿病の患者であり、長期に寝たきりで、臀部に褥瘡があり、傷口が約10cm×5cmで、筋肉層までとどくIV度褥瘡である。
【0098】
背中も褥瘡が発生し、傷口が約5cm×3cmで、皮下脂肪までとどくIII度褥瘡である。病
歴2ヶ月がある。
2007年6月始頃から製造例1より作られた褥瘡膏剤を1日1回に塗り換えることにより、同年7月17日に傷口が全癒した。
これを図5(A)〜(B)に示す。
【0099】
(試験例6)
『病歴番号6』:76才の許氏
手足の不自由な方であり、長期で車椅子と臥床に伴って背中部に褥瘡が発生し、皮膚が赤くなり腫れてきて、最後には皮膚が破れてしまった。傷口が表皮層まで及んだI度褥瘡である。病歴1ヶ月がある。2007年10月1日から製造例1より作られた褥瘡膏剤を1日に1回
塗り換えることにより、同年10月7日に傷口が全癒した。
これを図6(A)〜(E)に示す。
【0100】
(試験例7)
『病歴番号7』:劉氏
64才の乳癌及び直腸癌の患者であり、小腸の人工肛門を造り直す手術を受けた。腹部に何ヶ所かの傷口が癒合せず、化膿した。
【0101】
多く傷口(面積)が1〜2cm×1〜2cmで、真皮層まで及んだII度褥瘡である。病歴数ヶ月がある。
2007年9月頃から製造例1より作られた褥瘡膏剤を使用し、治療することにより、同年10月5日に化膿が止まり傷口が全癒した。
これを図7(A)〜(F)に示す。
【0102】
(試験例8)
『病歴番号8』:張氏
79才の糖尿病の患者であり、足の左親指が黒くなって壊死し、第二趾関節の部分が腫れ、化膿して痛みを伴った。病歴数ヶ月がある。
【0103】
2007年7月頃から製造例1より作られた褥瘡膏剤を使用し、1日1〜2回に塗り換えること
により、同年8月3日に化膿及び腫れの状況が改善した。
これを図8に示す。
【0104】
(試験例9)
『病歴番号9』:魏氏
76才の脳出血症の患者であり、長期に寝たきりで、坐骨部に褥瘡が発生した。傷口が約2cm×2cmで、真皮層まで及んだ褥瘡である。
病歴1ヶ月がある。2007年8月10日から製造例1より作られた褥瘡膏剤を使用し、治療す
ることにより、同年9月21日に傷口が全癒した。
【0105】
(試験例10)
『病歴番号10』:鄭氏
77才の肺結核の患者であり、長期に寝たきりで、左肩甲骨部に褥瘡が発生した。皮膚が赤くなり腫れてきて、最後には皮膚が破れてしまった。
【0106】
傷口が約2cm×2cmで、表皮層まで及んだI度褥瘡である。病歴2ヶ月がある。
2007年7月13日から製造例1より作られた褥瘡膏剤を使用し、治療することにより、同年8月始頃に傷口が全癒した。
【0107】
(試験例11)
<<本発明の漢方薬軟膏2のラット皮膚切創モデルによる治療試験>>
1.<要約>
12週齢のCr1:CD(SD系)ラットの皮膚切創モデルを、製造例2で得られた漢方薬軟
膏(「漢方薬軟膏2」ともいう。)にて処置し、治癒促進作用の試験を行った結果、下記表1および図9に示すように、(イ)無処置群、(ロ)本発明の漢方薬軟膏2処置群及び(ハ)「 b-FGF」(褥瘡治療剤、科研製薬(株)製、一般名「trafermin」)処置群の創耐
張力の平均及び標準誤差は、それぞれ、(イ)143±8g、(ロ)289±31g、(ハ)205±19gであった。
【0108】
また、(ロ)本発明の漢方薬軟膏2処置群及び(ハ)b-FGF処置群について、(イ)無
処置群と比べた創耐張力の増加率は、それぞれ102.1%及び43.4%であった。
本発明の漢方薬軟膏2処置群及び「b-FGF」(褥瘡治療剤、科研製薬(株)製、一般名「trafermin」)処置群の創耐張力は、無処置群と比較して、有意な高値を示し、治癒促進作用が示唆された。また、b-FGF処置群よりも、本発明の漢方薬軟膏2処置群は、更に皮膚
切創の治癒を促進したことが分かる(表1、図9参照)。
【0109】
以上の結果より、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)は、褥瘡剤として市販されているb-FGFを上回る治癒促進作用を示し、本発明の漢方薬軟膏2は皮膚切創の治癒効果で優れた有効性を有することが立証された。
以下に、試験プロセスに即して詳説する。
【0110】
2.<試験概要>
(i) (i-a)被験物質:製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)。
(i-b)比較対照物質:「フィブラスト(登録商標)スプレー250」(略称「b-FGF」
、褥瘡治療剤、科研製薬(株)製、一般名「trafermin」))。
(ii) 試験系:ラット(SPF)、Crl:CD(SD)。
(iii) 試験:製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)の創傷治癒促
進作用についてラット皮膚切創モデルを用いて試験を行った。
(iv) 試験期間:2008年2月26日〜2008年6月11日
(v) 試験実施日:試験用動物(ラット)を入手し、群分け、切創作製(2008年3月17日)の後、薬剤投与を2008年3月17日に開始し、2008年3月20日に投与を終了した。
張力測定を2008年3月21日に行った。
(vi-1) 試験用動物(ラット)の入手後1日(:入手当日)の体重範囲は、325〜403gであった。入手した動物には、検疫・馴化飼育期間中の一般状態及び体重推移に異常はみられなかった。
(vi-2) 湿度:40.0〜70.0%で飼育。(一時的にごく短時間に亘り、この湿度範囲を
外れたが、試験成績に影響なし。)
【0111】
3.<緒言>
12週齢のCrl:CD(SD系)ラットの皮膚切創モデルを用いて、製造例2で得られた漢方
薬軟膏の治癒促進作用に対する影響を試験した。
【0112】
4.<被験物質等>
4.1. (a) 被験物質及び比較対照物質
被験物質:製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)。
比較対照物質:「フィブラスト(登録商標)スプレー250」(略称「b-FGF」、(褥瘡治
療剤、科研製薬(株)製、一般名「trafermin」、ロット番号:G71183)。
5.<投与検体>
5.1 (a) 調製法
(比較対照物質)
被験物質は、そのまま試験に使用した。
比較対照物質は、1バイアル(250μg)に添付溶解液(2.5mL/本)の全量を加えて、0.01w/v/%濃度となるように溶解して使用した。
【0113】
6.<試験系>
(6-1) 試験用動物及びその飼育条件
試験には、薬効薬理試験に一般的に用いられている動物種で、その系統維持が明らかな雄性Crl:CD(SD)(SPF、日本チャールズ・リバー株式会社)を使用した。
【0114】
試験用動物は、2008年3月5日に10週齢を42匹入手した。入手後1日の体重範囲は、325〜403gであった。それらのうちで、5日間の検疫期間、その後7日間の馴化期間を設け、こ
の間に体重測定(電子天秤:PM2000、PG2002-S、メトラー・トレド(株)製を使用。)を3回、一般状態の観察を1日1回行って、これらに異常の認められなかった動物を試験に用
いた。
【0115】
動物は、設定温度:23℃(実測値:20.5〜24.7℃)、設定湿度55%(実測値:29.4〜74.9%)、明暗各12時間、換気回数12回/時(フィルターにより除菌した新鮮空気)に維持された飼育室で飼育した。受皿及び給水瓶の交換は1週間に2回以上行った。
【0116】
飼料は、固型飼料(CRF-1、ロット番号:071105、オリエンタル酵母工業(株)製)を
給餌器に入れ、自由に摂取させた。
飲料水は、水道水を給水瓶に入れて自由に摂取させた。
【0117】
(6-2) 群分け法及び個体識別法
群分けは投与開始日に行い、コンピュータを用いて体重を層別に分けた後、無作為抽出法により各群の動物の平均体重及び分散がほぼ等しくなるよう1群10匹の3群に群分けした。(なお、群分け後の残余動物は麻酔下で致死させた。)
【0118】
(6-3) 投与
投与経路は、臨床適用経路に従い経皮投与とした。
投与は、試験施設で用いられている通常の方法に従い、被験物質(第2群)は、ポリプ
ロピレン製注射筒を用いて予め測定した比重から得られた容積により200mg(0.2mL)を切創部位に塗布した。比較対照物質(第3群)は、マイクロピペットを用いて0.2mLを切創部位に滴下することにより行った。
投与回数は、1日1回ずつ、4日間とした。
投与は、午前に実施し、切創作製日及びミヘル除去日は各個体で作業終了直後に行った。
【0119】
(6-4) 群構成、投与量及び使用動物匹数
第1群(無処置、10匹)では、塗布(処置)せず。
第2群(本発明の漢方薬軟膏2の処置、10匹)では、200mg(0.2mL)塗布(site)。
第3群(b−FGFの処置、10匹)では、0.2mL塗布。
【0120】
7.<試験方法>
(7-1) 皮膚切開創の作製
投与開始日にペントバルビタールナトリウム(「ネンブタール」(登録商標)注射液、40mg/0.8mL/kg、i.p)にて麻酔後、動物の背部を電気バリカンにて剃毛した。背部皮膚
をアルコール綿で消毒して外科用メスで正中線上に3.4cmの切創を作製した(この日を切
創作製1日とした。)。切開部の中央部及び中央部から頭部側及び尾部側の1cmの位置計3
箇所をミヘル(ミッヘル縫合鋲:大3.0×14mm、(株)夏目製作所製)で縫合した。
【0121】
(7-2) 創傷治癒効果の評価
切創作製4日の投与前にジエチルエーテル麻酔下でミヘルを除去した。切創作製5日に体重を測定(電子天秤:PG-2002-G、メトラー・トレド株式会社)し、ジエチルエーテル過
麻酔で致死させた後、創傷部周辺の皮膚を剥離した。創傷部を中央とした短冊形の皮膚片(約2cm×約3cm)を作製し、片側を端から約0.5cmの位置で固定して、創耐張力(切創が
開裂するのに要する荷重)を創傷治癒測定用引張試験機(TK-251、有限会社ユニコム)にて測定した。
なお、切創作製2日から切創作製5日まで1日1回午前中に一般状態の観察を行った。
【0122】
8.<統計学的方法及び結果のまとめ>
各群の創耐張力及び体重は平均値±標準誤差を算出した。また、各群の平均創耐張力値をもとに無処置群からの増加率も算出した。
統計学的解析は、創耐張力について行い、2群間比較とした。すなわち、F検定による等分散性の検定を行い、不等分散であったためAspin-Welchのt検定を行った。なお、対比する群間(1群vs2〜3群)については、以下に記載した。有意水準は、5%未満を有意とし、5%未満(p<0.05)と1%未満(p<0.01)に分けて表示した。
(群間比較)
第1群対第2〜3群で比較した。
【0123】
9.<試験成績>
ラットに作製した皮膚切創モデルに対する治癒促進作用を検討した結果を表1と図9に示す。
【0124】
無処置の創耐張力は、143±8gを示した。
製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)を用いて皮膚切創モデルの治療を行った場合の創耐張力は289±31gを示し、無処置群と比較して有意な創耐張力の増強
が認められた。無処置群からの創耐張力増加率は、102.1%を示した。
b-FGF群の創耐張力は205±19gを示し、無処置群と比較して有意な創耐張カの増強が認められた。また、無処置群からの創耐張力増加率は、43.4%を示した。
【0125】
10.<結論>
12週齢のCrl:CD(SD系)ラットの皮膚切創モデルを用いて、本発明の漢方薬軟膏2の
治癒促進作用について試験した結果、無処置群(イ)、本発明の漢方薬軟膏2による処置群(ロ)及びb-FGFによる処置群(ハ)の創耐張力の平均及び標準誤差は、それぞれ、(
イ)143±8g、(ロ)239±31g、(ハ)205±19gであった。
また、無処置群(イ)からの創耐張力増加率は、製造例2で得られた漢方薬軟膏群(ロ)及びb-FGF群(ハ)でそれぞれ(ロ)102.1%及び(ハ)43.4%であった。
製造例2で得られた漢方薬軟膏処置群(ロ)及びb-FGF処置群(ハ)の創耐張力は、無
処置群(イ)と比較して有意な高値を示し、治癒促進作用が示された。また、b-FGF処置
群(ハ)よりも、製造例2で得られた漢方薬軟膏処置群(ロ)のほうが、更に皮膚切創の治癒を促進した.
【0126】
以上の結果より、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏は、褥瘡剤として市販されているb-FGFを上回る治癒促進作用を示し、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏の有効
性が示された。
【0127】
【表1】
(試験例12)
<<本発明の漢方薬軟膏2の遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)皮膚欠損傷モデルに対する治癒効果試験>>
1.<試験概要>
(1-1) 被験物質名:製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)。
(1-2) 試験系:マウス(SPF)、BKS.Cg-+Leprdb/+Leprdb/Jcl。
(1-3) 試験目的:製造例2で得られた漢方薬軟膏の創傷治癒促進作用の有無を遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)に皮膚欠損傷を作製して試験した。
(1-4) 試験期間:2008年2月26日(開始)〜2008年7月7日(終了)。
(1-5) 試験実施日:試験用動物(遺伝的糖尿病マウス、db/dbマウス)を入手し、群わけ、欠損傷作製(2008年4月9日)の後、薬剤(被験物質)の投与を2008年4月9日に開始し、2007年4月29日に投与を終了した。
(1-6) 試験用動物の入手後1日(:入手当日)の体重範囲は、42.0〜45.4gであった。入
手した動物には、検疫・馴化飼育期間中の一般状態及び体重推移に異常はみられなかった。
(1-7) 3-メチル-1-ブタノール(ロット番号:WKG6715)。
【0128】
2.<要約>
12週齢の遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)の背部に作製した欠損傷部に1日1回、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)を塗布し、2日に1回欠損部面積を測定し、漢方薬軟膏2の治癒促進作用を調べた。
【0129】
その結果、本発明の漢方薬軟膏2は、投与3日に有意な高値を示したものの、投与11、13、l5、17及び19日において有意な低値が認められ、治癒促進作用が認められた。
また、欠損部面積の時間経過曲線下面積(AUC)も、有意な低値を示し、治癒促進作用
が認められた。
【0130】
また、褥瘡治療薬として上市されている「b-FGF」(褥瘡治療剤、科研製薬(株)製、
一般名「trafermin」)は、投与9、11、13、15、17、19及び21日に有意な低値を示し、AUCも有意な低値を示し、治癒促進作用が認められた。
以上より、本発明の漢方薬軟膏2は、db/dbマウスの欠損傷において創傷治癒促進作用が認められた。
【0131】
3.<緒言>
試験例11に示すラット背部切創試験(本発明の漢方薬軟膏2のラット皮膚切創モデルによる治療試験)においては、本発明の漢方薬軟膏2は、創傷治癒促進作用があることを示した。
【0132】
更に、創傷治癒効果の有無を調べるために、12適齢の遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)の欠損傷モデルを用いて、背部に作製した欠損傷部に1日1回、本発明の漢方薬軟膏2をテガダームによる閉鎖的投与(注1)を行い、2日に1回欠損部面積を測定し、漢方薬軟膏2の治癒促進作用の有無を調べた。
(注1)「漢方薬軟膏2をテガダームによる閉鎖的投与」とは、後述するように、マウスの背部欠損傷部に、この欠損傷部を被覆するように通気性のシール材「テガダーム」(欠損傷部への水やバクテリアの浸入を防止でき、かつ水蒸気や酸素透過性を有し、皮膚呼吸を維持でき長期の貼付けも可能なポリウレタン製フィルム、3M社製)を貼付しておき、漢方薬軟膏2を充填した注射筒(b-FGF投与では注射針)を、該フィルムに押し当て、貫
通させて、欠損傷部に漢方薬軟膏2(b-FGF投与ではb-FGF)を投与することをいう。
【0133】
4.<被験物質等>
4.1 被験物質、比較対照物質及び媒体
(1-a) 被験物質:「製造例2」で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)。
(1-b) 比較対照物質:「フィブラスト(登録商標)スプレー250」(難治性皮膚潰瘍治療薬、科研製薬(株)製、ロット番号:G71183)。
(1-c) 媒体の生理食塩液(ロット番号:K7E83、(株)大塚製薬工場製)。
4.2 試薬: 3-メチル-1-ブタノール(ロット番号:WKG6715、和光純薬工業株式会社)、2,2,2-トリブロモエタノール(ロット番号:DPH7940、和光純薬工業株式会社)。
注射用水(ロット番号:7C75N、株式会社大塚製薬工場)。
【0134】
5.<投与検体>
5.1 調製法
5.1.1 比較対照物質の調製原液
比較対照物質:調製原液として1バイアルにつき添付溶解液(2.5mL/本)全量を加えて0.01w/v%濃度となるように溶解して使用。
5.1.2 被験物質及び比較対照物質
被験物質:被験物質の漢方薬軟膏2をそのまま使用。
比較対照物質:調製原液に生理食塩液を加えて0.002w/v%濃度となるように5倍希釈し
た。
5.1.3 麻酔(アバチン)
3-メチル-1-ブタノール2mLに2,2,2-トリブロモエタノール3gを加え、37℃前後の温浴中で約30分間温め、溶解した。完全に溶解後、その溶液のうち、0.5mLを40mLの注射用水に
加え、転倒混和させた。
【0135】
6.<試験系>
6.1 試験動物及び飼育条件
試験には、薬効薬理試験に一般的に用いられている動物種で、その系統維持が明らかな雌性BKS.Cg-+Leprdb/+Leprdb/Jcl(SPF、日本クレア株式会社)を使用した。
この試験用動物は、2008年3月27日に10週齢を40匹入手した。入手後1日(:入手当日)の体重範囲は42.0〜45.4gであった。入手した動物の5日間の検疫期間、その後8日間の馴化期間を設け、この間に体重測定(電子天秤:PG2002-S、PB3002、メトラー・トレド(株)製を使用。)を3回、一般状態の観察を1日1回行って、これらに異常の認められなかった
ものを試験に用いた。
【0136】
動物は、設定温度:23℃(実測値:22.9〜23.7℃)、設定湿度:55%(実測値:51.3〜57.5%)、明暗各12時間、換気回数12回/時(フィルターにより除菌した新鮮空気)に維持された飼育室で飼育した。
【0137】
プラスチック製のケージ及び給水瓶の交換は1週間に2回以上行い、給餌器の交換は2週
間に1回以上行った。
飼料は、固型飼料(CRF-1、ロット番号:071105、080107、オリエンタル酵母工業(株
)製)を給餌器に入れ、自由に摂取させた。
飲料水は、水道水を給水瓶に入れて自由に摂取させた。
【0138】
6.2 群分け法及び個体識別法
群分けは投与開始日に行い、コンピュータを用いて体重を層別に分けた後、無作為抽出法により各群の動物の平均体重及び分散がほぼ等しくなるよう、投与開始日に1群10匹の3群に群分けした。(なお、群わけの残余動物は致死させた。)
【0139】
6.3 投与
薬剤の投与は、第3群のb-FGF投与では26Gの注射針(テルモ(株)製)を用い、また、
硬膏剤である第2群の漢方薬軟膏2の投与では21Gの注射針を取り付けたポリプロピレン製ディスポーザブル注射筒(1mL容、テルモ(株)製)を用いた。これら注射針(あるいは
注射筒)に各投与薬剤(検体)を充填後、欠損傷部を覆っているポリウレタンフィルム材(商品名「テガダーム」、3M社製)の上から突き刺し、注入することにより、薬剤100μ
l(0.1mL)を欠損傷部に塗布した。
投与回数は、1日1回、21日間とした。
投与は、午前9時〜午後2時の間に実施し、欠損作製日、トレース及び写真撮影日は各個体で作業終了直後に行った。
【0140】
6.4 群構成、投与量及び使用動物匹数
第1群(無処置、10匹)では、塗布(処置)せず。
第2群(本発明の漢方薬軟膏2(褥瘡剤)の処置、10匹)では、100μL塗布。
第3群(b−FGFの処置、10匹)では、100μL塗布。
【0141】
7.<試験方法>
7.1 皮膚欠損傷の作製
群分け3日前に試験用動物背部の毛を電気バリカンで刈毛し、除毛クリームで除毛した
。群分け後、「アバチン」麻酔下[投与液量:体重(g)×0.02+0.05mL、投与経路:腹
腔内]で、背部正中線を軸とする1.5cm四方の皮膚を眼科用ハサミで除去し、皮膚欠損傷
を作製した(:欠損傷作製1日)。
その後、この皮膚欠損傷部を酸素及び水蒸気の通気性に優れたポリウレタンフィルム材「テガダーム」(商品名、3M社製)で覆った。
【0142】
7.2 皮膚欠損部面積の測定
欠損傷作製1、3、5、7、9、11、13、15、17、19及び21日に欠損部の輪郭をトレースし
た。その面積をエリアラインメーター(Super PLANIX β、タマヤ計測システム(株)
製)にて1回測定した。
【0143】
皮膚欠損部が「治癒した」と判断された動物のトレースはそれ以上行わず、欠損部面積は0とした。
また、投与1日(:当日)の面積を100%として、各投与日の面積率を算出し、投与日数から次式に従い欠損部面積の時間経過曲線下面積(AUC)を算出した。
AUC=(a+k)+2(b+c+d+e+f+g+h+i+j)
a:投与1日の面積率、b:投与3日の面積率、c:投与5日の面積率、d:投与7日の面積率、e:投与9日の面積率、f:投与11日の面積率、g:投与13日の面積率、h:投与15
日の面積率、i:投与17日の面積率、j:投与19日の面積率、k:投与21日の面積率。
【0144】
7.3 一般状態
死亡の有無を含めた一般状態は、毎日午前の投与前に1回観察した。
【0145】
7.4 体重測定
体重は、欠損傷作製1、7、14及び21日(投与日は投与前に測定)に測定した(電子天秤:PG2002-S、メトラー・トレド(株)製を使用)。
【0146】
7.5 写真撮影
欠損傷作製1、7、13及び21日に全例につき写真撮影(投与日は投与前に撮影)した。
【0147】
8. 統計学的方法
体重、欠損傷作製1日から欠損傷作製21日までの欠損部面積及び欠損部面積の時間経過
曲線下面積(AUC)は、群毎に平均値±標準誤差を算出した。
有意差検定は、無処置対照群と各投与群間で行い、5%未満を有意とし、5%未満(p<0.05)及び1%未満(p<0.01)に分けて表示した。検定手法は、Bartlett検定後、等分散の場合はDunnett検定を、不等分散の場合はノンパラメトリックのSteel検定を用いた。検定には、SAS前臨床パッケージVersion5.0(株式会社SASインスティチュートジャパン)を使用した。
【0148】
9. 試験成績
9.1 一般状態
いずれの群においても、投与期間中に一般状態の異常は認められなかった。
【0149】
9.2 体重
結果を図10と表2に示した。
無処置群では、投与1日(:初日)の体重値の平均は、45.4±0.5gであったが、投与期
間を通じて徐々に減少し、投与21日では38.5±1.5gとなった。
製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏投与群では、投与1日の体重値の平均は、45.4g±0.4gであったが、投与期間を通じて徐々に減少し、投与21日では、35.1±0.8gとなった。無処置群と比較して、投与14日以降の測定日において低値を示したが、いずれの測定日においても有意差は認められなかった。
b-FGF投与群では、投与1日の体重値の平均は、45.3±0.4gであったが、投与期間を通じて徐々に減少し、投与21日では、38.3±0.9gとなった。無処置群と比較して、ほぼ同様の体重推移を示し、有意差は認められなかった。
【0150】
9.3 皮膚欠損部の面積及び欠損部面積の時間経過曲線下面積(AUC)
結果を図11〜12と表3に示す。
無処置群では、欠損傷作製1日(:欠損傷を作製したその日)の面積の平均は255.3±6.7mm2であった。この面積は欠損傷作製15日までほぼ一定の値で推移し、欠損傷作製15日以降は日数の経過に伴って小さくなったものの欠損傷作製21日の面積率は62.4±5.8%であった。なお、全例において治癒は認められなかった。このAUCの平均は、1885.1±44.1mm2であった。
【0151】
製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏処置群では、欠損傷作製1日の面積の平均は258.8±9.1mm2であった。
この面積率は欠損傷作製7日(:初日から数えて7日目)まで作製時より傷面積は増大し、欠損傷作製14日以降に欠損傷周辺部に炎症を起こしていた。
【0152】
しかし、欠損部面積は日数の経過に伴って小さくなり、欠損傷作製21日の面積率は43.7±5.5%であった。
なお、本発明の漢方薬軟膏2処置群では、全ての例において「(皮膚欠損傷の完全な)治癒」は認められなかった。このAUCの平均は、1472.9±55.1 mm2であった。
【0153】
無処置群と比較して、本発明の漢方薬軟膏2による処置群では、面積率は、投与3日に
有意な高値が認められ、投与11、13、15、17及び19日で有意な低値が認められた。また、AUCでは、有意な低値が認められた。
【0154】
b-FGF処置群では、欠損傷作製1日(:欠損傷作製当日)の面積の平均は245.7±6.4mm2
であった。この面積率は欠損傷作製後の日数の経過に伴って小さくなり欠損傷作製21日の面積率は1.2±0.6%であった。なお、10例中6例において(完治)治癒が認められた。このAUCの平均は、1135.5±33.3 mm2であった。無処置群と比較して、b-FGF処置群では、面積率は、投与9、11、13、15、17、19及び21日で有意な低値が認められた。また、AUCでも、有意な低値が認められた。
【0155】
10.<結論>
12週齢の遺伝的糖尿病マウス(db/dbマウス)を用いて、1日1回背部に作製した欠損傷部に、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)を塗布し、2日に1回欠損部面積を測定し、この漢方薬軟膏2の治癒促進作用を調べた。
【0156】
その結果、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)は、投与3日に有
意な高値を示したものの、投与11、13、15、17及び19日において有意な低値が認められ、治癒促進作用が認められた。
【0157】
また、欠損部面積の時間経過曲線下面積(AUC)も、有意な低値を示し、治癒促進作用
が認められた。しかし、今回用いた製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏
2)では、投与14日以降、体重が無処置群より低値であったこと、背部皮膚に欠損傷部周
辺に炎症を起こしていたことから、投与17日以降の欠損部面積の収縮は停滞していた。
【0158】
この原因は明らかではないが、この検体(薬剤)が硬膏剤のため、今回の投与方法である閉鎖的投与では、皮膚から吸収されにくく、テガダーム内に検体が残存している状態であった。そのため、連日の投与により動物に負担がかかり、ストレスが負荷され、体重の減少や欠損部面積の縮小停滞に影響を及ぼした可能性が考えられる。
【0159】
しかし、試験例11に示すラット皮膚切創試験では、褥瘡剤として市販されているb-FGFを上回る治癒促進作用を有し、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏の有効性が示さ
れた。
【0160】
また、今回行った糖尿病遺伝的マウス(db/dbマウス)における皮膚欠損傷の治癒効果でも、治癒促進作用が認められた。
以上のことから、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2)は、連日閉鎖的投与により、皮膚から吸収されにくいものの、db/dbマウスにおける皮膚欠損傷の治癒促進作用を有することが明らかとなった。
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0163】
一般的な褥瘡等の処置方法では、傷口に腐敗筋肉が現れると、傷口の癒合に影響する壊死組織を取り除かなければならない。
これを創傷清拭術(外科医が機械で除去するか、特定の湿布膏薬で壊死組織を軟化させ
る)といい、傷口壊死組織が清拭され、正常な状況下にあって初めて自分から新生組織を生成させることができる。
【0164】
しかし、傷口処置に伴う患者の苦痛と精神的な負担は往々にして耐え難いものであり、心理的な治療排斥によって傷口の癒合に影響がでることさえある。
本発明の膏薬は、塗布した当初から快復するまでの全過程において、病原菌などを抑制する抗生物質など、副作用をもたらす薬剤を使用することがなく、本発明の膏薬を塗布する(治療期間中に数回ガーゼ交換し、塗布する)手段を実施するだけで、効果的に壊死組織を除去し、新しい皮膚の生成を促すことができる。
【0165】
また、本発明の膏薬は、滲出液を抑制する作用があり、同時に傷口を湿潤状態に保ち、傷口の快復に役立つ。
従って、患者に身体的苦痛を与えたり、精神的負担をかけたりすることがなく、そのうえ手術などによる経済的な負担も回避でき、快復までの期間も短縮される。
【0166】
従って、患者自身とその家族にとって、本発明の膏薬は快復面、精神面、身体面、経済面及び時間面のいずれにおいても、優れた処方である。
本発明は乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(児茶)など10種類の漢方薬材とエノキタケ菌菌糸体抽出物を有効成分とするものであるが、これらの処方においては、実際の症状により適宜に調整、増減することができる。
【0167】
本発明者は漢方薬の論理によると、上記10種類の漢方薬には、欠かせない成分として乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)が本発明の製剤の根本的な組合せであるとの知見を得て、さらに鋭意研究を重ねて本発明に係る外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物および、外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤を完成するに至ったのである。
【0168】
より好ましい処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)と、エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」であってもよい。
【0169】
さらに良い処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)と、
エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」であってもよい。
【0170】
また一段とよい処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)と、
エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」であってもよい。
【0171】
もっと良い処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)と、エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」であってもよい。
【0172】
さらに好ましい処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)と、エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」である。
【0173】
最も好ましい処方は、「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(児茶)の組合せ」、あるいは
「乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(児茶)と、エノキタケ菌菌糸体抽出物との組合せ」である。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1(A)】図1(A)は、試験例1に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す1枚目の写真である。
【図1(B)】図1(B)は、試験例1に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図1(A)に続く2枚目の写真である。
【図1(C)】図1(C)は、試験例1に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)が全癒するまでの経過を示す、図1(B)に続く3枚目の写真である。
【図1(D)】図1(D)は、試験例1に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図1(C)に続く4枚目の写真である。
【図2(A)】図2(A)は、試験例2に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す1枚目の写真である。
【図2(B)】図2(B)は、試験例2に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図2(A)に続く2枚目の写真である。
【図2(C)】図2(C)は、試験例2に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図2(B)に続く3枚目の写真である。
【図2(D)】図2(D)は、試験例2に示す仙骨部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図2(C)に続く4枚目の写真である。
【図3(A)】図3(A)は、試験例3に示す左足の踵に生じた蜂窩織炎の傷口が全癒するまでの経過を示す1枚目の写真である。
【図3(B)】図3(B)は、試験例3に示す左足の踵に生じた蜂窩織炎の傷口が全癒するまでの経過を示す、図3(A)に続く2枚目の写真である。
【図4】図4は、試験例4に示す右足の脛に生じた蜂窩織炎の傷口が全癒した状態を示す写真である。
【図5(A)】図5(A)は、試験例5に示す臀部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒した状態を示す写真である。
【図5(B)】図5(B)は、試験例5に示す背中の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒した状態を示す写真である。
【図6(A)】図6(A)は、試験例6に示す背中部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す1枚目の写真である。
【図6(B)】図6(B)は、試験例6に示す背中部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図6(A)に続く2枚目の写真である。
【図6(C)】図6(C)は、試験例6に示す背中部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図6(B)に続く3枚目の写真である。
【図6(D)】図6(D)は、試験例6に示す背中部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図6(C)に続く4枚目の写真である。
【図6(E)】図6(E)は、試験例6に示す背中部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図6(D)に続く5枚目の写真である。
【図7(A)】図7(A)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す1枚目の写真である。
【図7(B)】図7(B)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図7(A)に続く2枚目の写真である。
【図7(C)】図7(C)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図7(B)に続く3枚目の写真である。
【図7(D)】図7(D)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図7(C)に続く4枚目の写真である。
【図7(E)】図7(E)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図7(D)に続く5枚目の写真である。
【図7(F)】図7(F)は、試験例7に示す腹部の褥瘡(ジョクソウ)の傷口が全癒するまでの経過を示す、図7(E)に続く6枚目の写真である。
【図8】図8は、試験例8に示す、足の左親指の第二趾関節部分の傷口が改善した状態を示す写真である。
【図9】図9は、試験例11に示す、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2、Chinese medicine of bedsore−2)のラット皮膚切創モデルによる治療を行った場合の創耐張力(tensile strength(g))を示す。
【0175】
なお、無処置群(対照、control)での創耐張力と、「b-FGF」での治療を行った場合の創耐張力も合わせて図9に示す。
【図10】図10は、試験例12における、db/dbマウスへの投薬日数(days of administration)と体重(body weight(g))との関係を示すグラフである。
【0176】
図10中、「○と実線」はコントロール(対照)を示し、「●と点線」は本発明の漢方薬軟膏2を投与した場合を示し、「△と実線」は「b−FGF」を投与した場合を示す。
【図11】図11は、本発明の試験例12における、db/dbマウスへの投薬日数(days of administration)と欠損傷面積変化率(change of wound lesion area(%))との関係を示すグラフである。
【0177】
なお、無処置群(対照、control)における、db/dbマウスへの投薬日数と欠損
傷面積変化率との関係、および、薬剤「b-FGF」投与群における、db/dbマウスへの
投薬日数と欠損傷面積変化率との関係も合わせて図11に示す。
【0178】
図11中、「○と実線」はコントロール(対照)を示し、「●と点線」は本発明の漢方薬軟膏2を投与した場合を示し、「△と実線」は「b−FGF」を投与した場合を示す。
【図12】図12は、試験例12に示す、製造例2で得られた本発明の漢方薬軟膏(漢方薬軟膏2、Chinese medicine of bedsore−2)のdb/dbマウスへの投薬による治癒効果をAUC(mm2)で示す。
【0179】
コントロール(対照)および 「b−FGF」を投与した場合も併せて示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡(ジョクソウ)の治療用漢方薬組成物。
【請求項2】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)の混合重量比が4:2:1であることを特徴とする請求項1に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項3】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴と
する外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項5】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項6】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)の混合重量比が4:1:1:1であることを特徴とする請求項5に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項7】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項8】
請求項5〜7の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項9】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項10】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)の混合重量比が4:1:1:1:1
であ
ることを特徴とする請求項9に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項11】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項12】
請求項9〜11の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項13】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項14】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(
ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)の混合重量比が4:1:1:1:1:1であることを特徴とする請求項13に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項15】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項16】
請求項13〜15の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項17】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項18】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)の混合重量比が4:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする請求項17に記
載の
外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項19】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項17または請求項18に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項20】
請求項17〜19の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項21】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項22】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)の混合重量比が4:1:1:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする請求項21に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項23】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項21または請求項22に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項24】
請求項21〜23の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項25】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項26】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)の混
合重量比が4:1:1:1:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする請求項25に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項27】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項25または請求項26に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項28】
請求項27に記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項29】
さらに、有効成分としてエノキタケ菌菌糸体抽出物を含有することを特徴とする、請求項1〜3、5〜7、9〜11、13〜15、17〜19、21〜23、25〜27の何れかに記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項30】
エノキタケ菌菌糸体抽出物の含量が他の有効成分である、乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)の合計の含量1重量部に対して0.01〜0.27
重量部であることを特徴とする請求項29に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項31】
有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項29または請求項30に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項32】
請求項29〜31の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項1】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡(ジョクソウ)の治療用漢方薬組成物。
【請求項2】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)の混合重量比が4:2:1であることを特徴とする請求項1に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項3】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴と
する外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項5】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項6】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)の混合重量比が4:1:1:1であることを特徴とする請求項5に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項7】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項8】
請求項5〜7の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項9】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項10】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)の混合重量比が4:1:1:1:1
であ
ることを特徴とする請求項9に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項11】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項12】
請求項9〜11の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項13】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項14】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(
ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)の混合重量比が4:1:1:1:1:1であることを特徴とする請求項13に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項15】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項16】
請求項13〜15の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項17】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項18】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)の混合重量比が4:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする請求項17に記
載の
外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項19】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項17または請求項18に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項20】
請求項17〜19の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項21】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項22】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)の混合重量比が4:1:1:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする請求項21に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項23】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項21または請求項22に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項24】
請求項21〜23の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項25】
乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)を有効成分として含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項26】
有効成分とする乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)の混
合重量比が4:1:1:1:1:1:1:1:1:1であることを特徴とする請求項25に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項27】
各有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項25または請求項26に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項28】
請求項27に記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【請求項29】
さらに、有効成分としてエノキタケ菌菌糸体抽出物を含有することを特徴とする、請求項1〜3、5〜7、9〜11、13〜15、17〜19、21〜23、25〜27の何れかに記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項30】
エノキタケ菌菌糸体抽出物の含量が他の有効成分である、乾薑(カンキョウ)、附子(ブシ)または炮附子(ほうぶし)、肉桂(ニクケイ)、蜀椒(ショクショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、芍薬(シャクヤク)、厚朴(コウボク)、乳香(ニュウコウ)、没薬(モツヤク)、阿仙薬(アセンヤク、児茶)の合計の含量1重量部に対して0.01〜0.27
重量部であることを特徴とする請求項29に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項31】
有効成分が粉末状であることを特徴とする請求項29または請求項30に記載の外傷、褥瘡の治療用漢方薬組成物。
【請求項32】
請求項29〜31の何れかに記載の漢方薬組成物及び適量の油脂剤を含有することを特徴とする外傷、褥瘡の治療用漢方薬膏剤。
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1(A)】
【図1(B)】
【図1(C)】
【図1(D)】
【図2(A)】
【図2(B)】
【図2(C)】
【図2(D)】
【図3(A)】
【図3(B)】
【図4】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図6(A)】
【図6(B)】
【図6(C)】
【図6(D)】
【図6(E)】
【図7(A)】
【図7(B)】
【図7(C)】
【図7(D)】
【図7(E)】
【図7(F)】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1(A)】
【図1(B)】
【図1(C)】
【図1(D)】
【図2(A)】
【図2(B)】
【図2(C)】
【図2(D)】
【図3(A)】
【図3(B)】
【図4】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図6(A)】
【図6(B)】
【図6(C)】
【図6(D)】
【図6(E)】
【図7(A)】
【図7(B)】
【図7(C)】
【図7(D)】
【図7(E)】
【図7(F)】
【図8】
【公開番号】特開2009−269904(P2009−269904A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315937(P2008−315937)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(390041243)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(390041243)
【Fターム(参考)】
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