説明

外壁パネルの取付穴加工装置

【課題】 従来の加工装置は、加工材Wを裏返し表面側を治具に接触するようにセットしていた。このため、化粧層が欠損してしまうなどの問題点があった。また化粧層のデザインが変わるたびに治具を準備してセット換えをしなければならず、作業性と共に経済性が悪いという問題があった。
【解決手段】 搬送面A上の加工材Wを前後方向に制御移動するワーク位置決め手段Bと、加工材Wを搬送面A上に押圧固定するクランプ手段Gと、上記搬送面Aの下側にして上向きに配設した多数の回転刃物35,35と、これら回転刃物35,35を左右方向において個々に制御移動する刃物の位置決め手段F,Fと、上記多数の回転刃物35,35を一斉に上下方向、前後方向および左右方向の三軸方向に制御移動するX軸移動制御手段E、Y軸移動制御手段C、Z軸移動制御手段Dを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネルの裏面に施工用の穴を削成する外壁パネルの取付穴加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、窯業系の外壁パネルを下地材などのフレーム側に取りつける構造として、特許文献1に記載される発明が公知である。
【0003】
しかして、上記外壁パネルの取付穴は、本出願人が先に提案した特許文献2において、従来例として記載される機械装置などによって加工したものである。
【0004】
以下、図5〜図6によって従来の加工装置を説明する。同図において、101はベース 102はベース101の上に配設したテーブルである。このテーブル102は、サーボモータ103によって前後方向(X軸方向)に移動制御される。テーブル102の上面には、バキューム手段によって加工材Wを取りつける。
【0005】
104はベース101の両側に樹立した一対のコラム 105は両コラム104を連結するようにテーブル102の上部に架設した水平ビーム 106は水平ビーム105に設けた左右方向(Y軸方向)のガイドレール 107はガイドレール106に支持して水平ビーム105の前面部に配設した左右移動ベースである。この左右移動ベース107は、サーボモータ130によってY軸方向に移動制御される。
【0006】
108は左右移動ベース107に設けた上下方向(Z軸方向)のガイドレール 109はガイドレール108に支持して左右移動ベース107の前面部に配設した第1の昇降移動ベースである。この昇降移動ベース109は、サーボモータ110によってZ軸方向に移動制御される。また上記の昇降移動ベース109には左右方向のガイドレール111を設ける。
【0007】
112はガイドレール111に支持して第1の昇降移動ベース109の前面部に配設した多数(図の例では4基)の左右可動ベースである。この左右可動ベース112は、図5に示すように間隔的に取りつけられており、ねじ送り式の調整手段113によって配列位置を調整される。またこの左右可動ベース112には、各々Z軸方向のガイドレール114を設ける。
【0008】
115はガイドレール114に支持して左右可動ベース112の前面部に配設した第2の昇降移動ベース この昇降移動ベース115は、左右可動ベース112の上端に取りつけた空圧シリンダ116によって昇降作動される。117は昇降移動ベース115の前面部に、スピンドル118を下向きにして取りつけた主軸ヘッドである。スピンドル118の下端には回転工具119を備えるようにする。
【0009】
さて、このような加工装置において、前述した外壁パネルの取付穴を加工するには、まず治具(図示省略)を介してテーブル102上に加工材Wを吸着固定する。この加工材Wは裏返し状、すなわち化粧層を有する表面側を下にし、取付穴の加工対象となる裏面側を上にして取りつける。
【0010】
加工材Wのセットが終了したならば、所望のNCプログラムを読み込んで実行し、各軸方向のサーボモータ103,110,130を制御駆動する。これによって加工材WがX軸方向に、回転工具119がY軸およびZ軸方向に制御移動されるものであり、加工材Wと回転工具119との三次元的な相対運動によって加工材Wに所定の取付穴の切削加工を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−285887号
【特許文献2】特開2001−001302号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上に述べた従来の加工装置は、加工材Wを裏返してその表面側を治具に接触するようにセットしたものである。このため、化粧層が欠損してしまうなど不良品の発生を招くという問題があった。また化粧層のデザインが変わるたびに治具を準備してセット換えをしなければならず、作業性と共に経済性が悪いという問題点をも有していた。
【0013】
また取付穴は有底状をなしていて上に開口している。このため、切削屑が滞留しやすく、従来では後工程で排出処理をしなければならず、甚だ面倒を強いられていた。
【0014】
本発明は、このような従来の加工装置が有していた問題点を解決しようとするものであり、不良品の発生がなく効率的に加工作業を行なうことができ、また切削屑の処理を簡単に行なうことができる外壁パネルの取付穴加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明に係る外壁パネルの取付穴加工装置は、
搬送面上の外壁パネルを前後方向に制御移動するワーク位置決め手段と、外壁パネルを搬送面上に押圧固定するクランプ手段と、上記搬送面の下側にして上向きに配設した多数の回転刃物と、これら回転刃物を左右方向において個々に制御移動する刃物の位置決め手段と、上記多数の刃物を一斉に上下方向、前後方向および左右方向の三軸方向に制御移動する各軸の移動制御手段を備えたものである。
【0016】
また第2の課題解決手段は、回転刃物と隣接して、上向きの空気噴出ノズルを設けたものである。
【発明の効果】
【0017】
上記の第1の課題解決手段によれば、外壁パネルにおける表面側を上に、裏面側を下にして取付穴の加工を行なうことができる。このため表面の化粧層に欠けなどの弊害を生ずることがない。また化粧層のデザインなどが変わっても特別な治具を用意する必要がなく効率的に加工を行なうことができる。
【0018】
また第2の課題解決手段によれば、空気噴出ノズルを下向きに開口する取付穴に臨ませることができる。このため、簡単な構成で容易に切削屑を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る外壁パネルの取付穴加工装置の好適な実施例を示す平面図である。
【図2】同じく、正面図である。
【図3】同じく、要部の構成を示す一部縦断側面図である。
【図4】同じく、要部の構成を示す側面図である。
【図5】従来の加工装置の構成を示す正面図である。
【図6】同じく、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4について説明する。図において、1はベースフレーム 2はベースフレーム1の前側(図1の下側位置)に設けた水平の前部テーブル この前部テーブル2は、複数条のコロコンベヤ3と複数枚の平板4によって構成される。5はベースフレーム1の後側に配設した水平の後部テーブル この後部テーブル5は、複数条のコンベヤベルト6によって構成される。上記の前部テーブル2と後部テーブル5は、外壁パネル(以下、加工材Wという)を移送する搬送面Aを構成する。
【0021】
6aはベースフレーム1の後方両側に配設したサイドフレーム 7はサイドフレーム6aのガイドレール8に移動自在に架設した左右方向の取付ビーム 9,9は取付ビーム7の前部に配設した多数(実施例では7個)のチャッキング爪 10は前記の取付ビーム7を介してチャッキング爪9,9を前後方向に制御移動するサーボモータである。上記のサーボモータ10およびチャッキング爪9,9などの各部材は、加工材Wを前後方向に制御移送するワーク位置決め手段Bを構成する。
【0022】
11はベースフレーム1の両側上部に樹立したサイドコラム 12はサイドコラム11に昇降自在に架設した左右方向の取付ビーム 13は取付ビーム12を昇降作動する空圧シリンダ 14,14は取付ビーム12の下部に配設した多数(実施例では8個)の押圧片である。上記の押圧片14および空圧シリンダ13などの各部材は、加工材Wを搬送面Aへ押圧固定するクランプ手段Gを構成する。
【0023】
次に図3および図4を参照して、ベースフレーム1内の各手段について説明する。
【0024】
15はベースフレーム1の下部に配設した取付ベース 16は取付ベース15に配設した前後方向のガイドレール 17はスライドベアリングを介してガイドレール16に移動自在に設けた前後移動ベース 18は送りねじ軸19と受動ナット20による伝動部材を介して前後移動ベース17を前後方向(Y軸方向)に制御移動するサーボモータである。このサーボモータ18および伝動部材などの各機構は、Y軸移動制御手段Cを構成する。
【0025】
21は前後移動ベース17に配設した上下方向のガイドレール 22はスライドベアリングを介してガイドレール21に移動自在に設けた昇降移動ベース この昇降移動ベース22は、左右方向に長く伸びるビーム状に構成する。23は連動ギヤ部材24、送りねじ軸25および受動ナット26による伝動部材を介して昇降移動ベース22を昇降方向(Z軸方向)に制御移動するサーボモータである。このサーボモータ23および伝動部材などの各機構は、Z軸移動制御手段Dを構成する。
【0026】
27は昇降移動ベース22に配設した左右方向のガイドレール 28,28はスライドベアリングを介してガイドレール27に移動自在に配設した多数(実施例では6基)の左右移動ベース 29は送りねじ軸30と左右移動ベース28の個々に設けた受動ナット31,31による伝動部材を介して各左右移動ベース28,28を一斉に左右方向(X軸方向)に制御移動するサーボモータである。このサーボモータ29および伝動部材などの各機構は、X軸移動制御手段Eを構成する。
【0027】
32,32は各左右移動ベース28,28に配設した上下方向のガイドレール 33,33はスライドベアリングを介してガイドレール32,32に昇降自在に配設した多数(6基)の刃物取付ベース 34、34は刃物取付ベース33,33に上向きに取りつけた電動モータ 35,35は電動モータ34,34の出力軸に固定した回転刃物である。上記の回転刃物35は、前記した前部テーブル2と後部テーブル5との接続空隙に対応してその下方位置に配設する。
【0028】
36は左右移動ベース28の下部にして、上向きに取りつけた空圧シリンダ この空圧シリダ36は、そのピストンロッドを刃物取付ベース33に連結してあり、伸縮作動によって回転刃物35を使用位置と退避位置に設定する。37は回転刃物35を囲繞する集塵カバー 38は集塵カバー37に接続した排塵筒 39は集塵カバー37内にして回転刃物35に隣接して設けた上向きの空気噴出ノズルである。
【0029】
次に、前記したX軸移動制御手段Eの送りねじ軸30と各左右移動ベース28の受動ナット31の構成を利用した個々の刃物の位置決め手段Fについて説明する。
【0030】
前記の受動ナット31は、左右移動ベース28に回転だけ自由にして支承されるもので、40はこの受動ナット31に固定した受動ギヤ 41は左右移動ベース28に取りつけたサーボモータ 42はサーボモータ41の出力軸に取りつけた駆動ギヤ 43は受動ギヤ40と駆動ギヤ41を連係したベルトである。
【0031】
上記の刃物の位置決め手段Fは、前記したX軸移動制御手段Eのサーボモータ29がサーボロックし、送りねじ軸30が回転できない条件で作動する。また前記のX軸移動制御手段Eは、刃物の位置決め手段Fのサーボモータ41がサーボロックし、受動ナット31が回転できない条件で作動する。
【0032】
以下、一実施例に係る外壁パネルの取付穴加工装置について、その動作を説明する。
【0033】
取付穴加工を行なうには、まず加工材Wを前部テーブル2に供給し、これを人為的に後方へ押し込んでチャッキング爪9,9により把持させる。そして、ワーク位置決め手段Bによって搬送面A上において移送し、所定位置に設定する。位置決め後は、クランプ手段Gの押圧片14,14を下降作動し、加工材Wを搬送面Aに押圧固定する。
【0034】
上記において加工材Wは、その化粧層を上面にしているので、移送中における欠損などを生ずることがない。また加工材Wは、その被加工面を下面にしているので、例えば厚さの異なるものの場合でも改めて段取り替えを行なう必要がなく、作業を順調に行なうことができる。
【0035】
一方において、回転刃物側においては次の動作が行なわれる。すなわち指定プログラムによって加工指令が与えられると、刃物の位置決め手段F、Fが制御駆動され、サーボモータ41,41によって左右移動ベース28,28がそれぞれ単独でX軸方向に移動制御される。これによって回転刃物35,35の配列を加工材Wにおける取付穴の配列ピッチに合せて設定することができる。
【0036】
回転刃物35,35の位置決めがされると、空圧シリンダ36,36のピストンロッドが伸長作動して回転刃物35が退避位置から使用位置に上昇する。この上昇動作によって、回転刃物35が加工材Wにおける被加工面にほとんど接触する状態になる。
【0037】
加工指令が次のステップに進行すると、まずZ軸移動制御手段Dによって回転刃物35,35が一斉に上昇移動して加工材Wに切込み、続いてX軸移動制御手段Eによって回転刃物35,35が一斉に左右方向に移動し、さらにY軸移動制御手段Cによって回転刃物35,35が前方に移動する。そして、この三軸方向の制御移動によって加工材Wの下面に所要の取付穴の加工を行なうことができる。
【0038】
上記の回転刃物35による切削加工中において、隣接位置の空気噴出ノズル39からは上向きに圧力空気が噴出する。この圧力空気はたえず取付穴あるいはその付近に作用するものであり、切削屑を下方へ落下させながら残らず排出することができる。
【0039】
上記のようにして横一列の穴加工が終了したならば、クランプ手段Gを開放し、次いでワーク位置決め手段Bによって加工材Wの次の位置決めを行なう。そして、前記と同様にして回転刃物35,35の位置決めと三軸方向の制御移動を行なうようにする。これによって、加工材Wに所要の取付穴の切削加工を行なうことができる。
【0040】
なお上記の一実施例では、送りねじ軸30と受動ナット31をX軸移動制御手段Eと刃物の位置決め手段Fとに共用したが、この送りねじ軸30と受動ナット31をそれぞれの手段に別個に備えるるように設計変更することは容易である。
【符号の説明】
【0041】
1 ベースフレーム
2 前部テーブル
5 後部テーブル
A 搬送面
W 加工材(外壁パネル)
B ワーク位置決め手段
G クランプ手段
17 前後移動ベース
C Y軸移動制御手段
22 昇降移動ベース
D Z軸移動制御手段
28 左右移動ベース
E X軸移動制御手段
35 回転刃物
39 空気噴出ノズル
F 刃物の位置決め手段


































【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面上の外壁パネルを前後方向に制御移動するワーク位置決め手段と、外壁パネルを搬送面上に押圧固定するクランプ手段と、上記搬送面の下側にして上向きに配設した多数の回転刃物と、これら回転刃物を左右方向において個々に制御移動する刃物の位置決め手段と、上記多数の刃物を一斉に上下方向、前後方向および左右方向の三軸方向に制御移動する各軸の移動制御手段を備えたことを特徴とする外壁パネルの取付穴加工装置。
【請求項2】
回転刃物と隣接して、上向きの空気噴出ノズルを設けた請求項1の外壁パネルの取付穴加工装置。

























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−42031(P2011−42031A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189615(P2009−189615)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000190725)シンクス株式会社 (33)
【Fターム(参考)】