説明

外壁打撃装置、外壁診断装置

【課題】 構造を簡単化して壊れ難くする。
【解決手段】 外壁診断装置本体1は外壁打撃装置30と打撃振動検出装置31を備え、屋上側昇降装置4と地上側昇降装置5により、外壁2に沿って昇降される。外壁打撃装置30は、建物の外壁を打撃する2つの打撃体36、37と、打撃体36、37が先端に取り付けられたアーム38、39と、アーム38、39の基端側に装着されたハブ40と、ハブ40を回転することにより、アーム38、39に取り付けられた打撃体36、37を外壁2に向けて周回させるモータ41を有している。打撃振動検出装置31で検出された打撃音検出信号は無線により地上装置に送信され、地上側作業員がヘッドホンで聴取し、診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外壁打撃装置、外壁診断装置に係り、とくに建物の外壁を打撃したときの打撃振動や打撃音などを検出して診断を行なう場合に好適な外壁打撃装置、外壁診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタル、コンクリートの壁で出来たマンション、オフィスビル、公共施設などの建物は、年月の経過とともに壁の劣化が進み、浮きやヒビ割れを生じ、最悪の場合、外壁の一部が剥がれ落ちて通行人を負傷させてしまう。このため、従来から、外壁に沿って足場を組み、診断員がハンマで外壁を叩きながら打撃音を聴き、異音が発生した個所で劣化が生じていると判断し、壁の修復を行なうようにしていた。けれども、足場の組み立てには多大な時間と費用が掛かるため、外壁に沿って昇降自在に診断装置を配置し、診断装置に外壁を叩くハンマ、ハンマを打撃駆動する駆動部、打撃音を拾うマイクを搭載し、マイクの検出音を有線または無線で送信し、地上若しくは屋上の作業員がヘッドホンで聴取するようにした診断装置が開発されている。
【0003】
ハンマを打撃駆動する駆動部としては、たとえば、実開平5−27664号公報に示す如く、モータで円板を回し、円板に取り付けたカムでハンマを壁に向かって往復動させるものがある。しかしながら、このような打撃駆動部は構造が複雑なため、多数回の打撃動作により、壊れ易い欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−27664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑み、構造の簡単な外壁打撃装置、外壁診断装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1では、建物の外壁を打撃する1または複数の打撃体と、打撃体を支持する可撓性を有する支持部材と、支持部材に結合されて打撃体を外壁に向けて周回させる周回駆動手段と、を備えたことを特徴としている。
本発明の請求項3では、外壁打撃手段と打撃振動または打撃音を検出する検出手段とを備えた本体と、本体を外壁に沿って昇降させる昇降手段を備え、外壁打撃手段は、建物の外壁を打撃する1または複数の打撃体と、打撃体を支持する可撓性を有する支持部材と、支持部材に結合されて打撃体を外壁に向けて周回させる周回駆動手段と、を備えたことを特徴としている。
本発明の請求項2、4では、前記支持部材は、前記打撃体を先端に取り付けた可撓性を有する1または複数のアームとし、前記周回駆動手段は、アームの基端側に結合されて打撃体を外壁に向けて周回させるようにしたこと、を特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、可撓性を有する支持部材に打撃体を取り付け、支持部材に結合された周回駆動手段により、打撃体を壁に向けて周回させながら建物の外壁を打撃するので、往復動させる場合に必要な複雑な打撃機構を不要化でき、多数回の打撃動作を行なっても壊れ難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例に係る外壁診断装置の全体構成図である(実施例1)。
【図2】図1中の外壁診断装置本体の構成を示す一部省略した外観斜視図である。
【図3】図2中の車輪装置の構成を示す断面図である。
【図4】図2中の振動センサの動作説明図である。
【図5】図1中の屋上側昇降装置の一部省略した平面図である。
【図6】図1中の地上側昇降装置の平面図である。
【図7】外壁診断装置の電気的構成図である。
【図8】図1中の打撃装置の変形例を示す構成図である。
【図9】図1中の打撃装置の他の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0010】
図1を参照して本発明の一実施例を説明する。図1は本発明に係る外壁診断装置の全体構成図である。
図1において、1は外壁診断装置本体であり、建物の外壁2に沿って昇降される。外壁診断装置本体1は外壁2に打撃を加えたときの外壁2の振動を検出し、無線で地上側作業者の持つ地上装置(図7の符号3参照)へ送信する。外壁診断装置本体1は屋上と地上に配置された屋上側昇降装置4と地上側昇降装置5により昇降される。外壁診断装置本体1は図2、図7に示す如く構成されている。10は前面(外壁側)と背面が開口し、内部に縦板11と横板12が固着された方形の枠体、13乃至16は枠体10の四隅に装着された車輪装置であり、外壁診断装置本体1が外壁2の壁面に沿って円滑に昇降可能とする。図3に車輪装置13の断面図を示す。車輪装置13の内、20はボール状の車輪、21は車輪20を回転自在に軸支する円筒状の支持部材、22は車輪20に加わる衝撃吸収用のサスペンションであり、支持部材21の後部を内側に摺動自在に収納する円筒状のスリーブ23と、スリーブ23の内部に介装されたスプリング24から成る。スプリング24の一端は支持部材21の後面に固着されており、スプリング24の他端はスリーブ23の内底に固着されている。25はサスペンション22の後端を枠体10に装着する装着板である。他の車輪装置14乃至16も13と同様に構成されている。
【0011】
図2、図7に戻って、30は横板12に装着されて外壁2を打撃する打撃装置、31は縦板11に装備されて打撃振動を検出する打撃振動検出装置であり、外壁2の打撃点近くに接触して打撃振動を検出する。打撃振動検出装置31は図4に示す如く、振動センサ32を内蔵した円筒状の本体33と、本体33の先端に嵌着された保護及び振動伝達用の半球状のキャップ34を有しており、縦板11に外壁2と平行な面内で水平方向に装着された棒状の支持部材35により、外壁2と直交する鉛直面内で回動自在に軸支されている。打撃振動検出装置31は支持部材35を中心に自重で外壁2に凭れ掛かることにより外壁2との接触が維持される(図4の矢印C参照)。なお、打撃振動検出装置31と横板12の間に引っ張りバネ(図4の符号310)を介装してキャップ34を外壁2の方向へ付勢するようにしても良い。打撃振動検出装置31には、例えば市販のカラオケ用マイクを使用することができる。
【0012】
打撃装置30の内、36、37は互いに同形で球状の2つの打撃体、38、39は先端側に打撃体36、37が固着された2つの可撓性を有する支持部材としての同一長さの棒状のアーム、40はアーム38、39の基端側が装着(結合)された円盤状のハブであり、アーム38と39は180度反対方向に延びている。41は横板12に装着されたモータであり、回転軸が縦板11の開口42から外壁2と平行な面内で水平方向に延設され、先端にハブ40が装着されている。ハブ40とモータ41により周回駆動手段が構成されている。モータ41が回転すると、アーム38、39の基端側が回転駆動されて先端の打撃体36、37が外壁2に向かって周回する。周回軌道が外壁2の表面から少し内部に入り込んでいるため、各打撃体36、37は1周する毎に1回、外壁2を打撃する。打撃時、可撓性を有するアーム38、39が撓むことにより、周回が止らないようになっている。打撃体36、37には木材、プラスチック、金属、ゴム、樹脂などを用いることができ、アーム38、39にはゴム、プラスチック、樹脂、鋼製スプリングなどを用いることができる。
【0013】
枠体10の上面中央の後端にロープ取り付け部43が固着されており、このロープ取り付け部43に屋上側昇降装置4から下方へ延びた1本の上側昇降ロープ44が取り付けられて外壁診断装置本体1の全体が吊持されている。また、枠体10の前面側の左右両脇の上下方向に沿ってロープ通し部45、46が4つずつ固着されており、屋上側昇降装置4から地上側昇降装置5まで外壁2に沿って鉛直に延びた2本のガイドロープ47、48が挿通されている。枠体10の下面中央の後端にロープ取り付け部49が固着されており、このロープ取り付け部49に地上側昇降装置5から上方へ延びた1本の下側昇降ロープ50が取り付けられている。枠体10の下面の中央より右寄りの前端にロープ取り付け部51が固着されており、このロープ取り付け部51に地上側昇降装置5から上方に延びた目盛付ロープ52が取り付けられている。目盛付ロープ52には1cm間隔の目盛が付されており、外壁診断装置本体1による打撃点の地上からの高さを計測可能になっている。
【0014】
外壁診断装置本体1は、ガイドロープ47、48により外壁2の間近で壁面に沿って鉛直方向に昇降自在に案内されるとともに、上側昇降ロープ44と下側昇降ロープ50により昇降される。この際、上側昇降ロープ44と下側昇降ロープ50が外壁診断装置本体1の上面中央の後端と下面中央の後端が斜め上方向(図1の矢印A)と斜め下方向(図1の矢印B)に引っ張られことにより、外壁診断装置本体1の全体が外壁2へ押し付けられて、車輪20と振動検出装置31が外壁2に接触し、かつ、周回する打撃体36、37の軌跡が外壁2の内部に少し入り込む位置に保持される。
【0015】
図1に戻って、屋上側昇降装置4は屋上側作業員が台車に腰掛けた状態で外壁診断装置本体1の昇降作業をするものであり、60はキャスター付の台車、61は台車の上に装備された腰掛、62は屋上の縁63の上に先端近くが載置される方形平板状のベース、64はベース62の下面に固着されて下方へ突設された円柱状の脚、65は台車60の上面に固着された円筒状の支柱であり、内部に脚64が昇降自在に嵌められている。66は支柱65の横を貫通して螺合された止めボルトであり、螺進/螺退させて脚64を所望の高さで固定/解放するものである。67は図1、図5に示す如く、ベース62の後端部に取り付けられた巻き取りドラムであり、ハンドル68を回して上側昇降ロープ44の巻き出し、巻き取りを行なう。巻き取りドラム67にはラチェット機構69が装備されており、巻き取り方向はフリー、巻き出し方向は爪のロックが掛かるようになっており、巻き取りはハンドル68を回すだけで自在に行なえるが、巻き出しは爪のロックを外さないと行なえない。
【0016】
70はベース62の中央に並べて装着された複数個の上側昇降ロープ44のためのガイド、71はベース62の中央の先端に装着された滑車であり、上側昇降ロープ44が掛けられている。72、73はベース62の中央やや後ろよりの図5における左右両側に取り付けられたガイドロープ用の巻き取りドラムであり、ハンドル74、75を回してガイドロープ47、48の巻き出し巻き取りを行なう。巻き取りドラム72、73にはラチェット機構76、77が装備されており、巻き取り方向はフリー、巻き出し方向は爪のロックが掛かるようになっており、巻き取りはハンドル74、75を回すだけで自在に行なえるが、巻き出しは爪のロックを外さないと行なえない。78はベース62の図5における左側に配設されてガイドロープ47を案内する複数個のガイド、79はベース62の図5における右側に配設されてガイドロープ48を案内する複数個のガイドである。
【0017】
図1に戻って、地上側昇降装置5は地上側作業員が台車に腰掛けた状態で外壁診断装置本体1の昇降作業及び外壁診断作業をするものであり、80はキャスター付の台車、81は台車の上に装備された腰掛である。図1、図6に示す如く、地上側昇降装置5の内、82は台車80の上の中央近くに取り付けられた巻き取りドラムであり、ハンドル83を回して下側昇降ロープ50の巻き出し、巻き取りを行なう。84は台車80の中央の前端に装着された滑車、85は台車80の巻き取りドラム82の近くに装着された滑車であり、巻き取りドラム82から延びた下側昇降ロープ50が滑車85、84の順に掛けられて外壁診断装置本体1に延びている。86、87は台車80の前端の左右に固着されたロープ取り付け部であり、ガイドロープ47、48の下端が結ばれる。
【0018】
88は台車80の上の前部の図6における右寄りに取り付けられた巻き取りドラムであり、目盛付ロープ52が巻回されている。巻き取りドラム88には目盛付ロープ52を巻き取り方向に付勢するためのゴム動力部89が備えられている。このゴム動力部89は、巻き取りドラム88の回転軸に装着された円盤状のゴム紐回転板90と、台車80の上に装着されたゴム紐固定板91と、ゴム紐回転板90とゴム紐固定板91の間に取り付けられた2本のゴム紐92からなる。巻き取りドラム88に目盛付ロープ52が巻き取られた状態にあるとき2本のゴム紐92は巻きが無くなっており、この状態から目盛付ロープ52が引き出されて巻き取りドラム88が巻き出し方向へ回転されると、 2本のゴム紐92の巻回が進んで巻き取り方向への付勢力が次第に増大し、目盛付ロープ52の引き出しが解放されると自動的に巻き取られるようになっている。93は手動で巻き取りドラム88を回転させるハンドルである。94は台車80の上の図6における右寄りの前端に装着された滑車、95は台車80の上の巻き取りドラム88の近くに装着された滑車であり、巻き取りドラム88から延びた目盛付ロープ52が滑車95、94の順に掛けられて外壁診断装置本体1に延びている。
【0019】
図7は外壁診断装置本体1と地上装置3の電気的構成を示す。図7において、外壁診断装置本体1の内、100はモータ41に駆動電圧を印加し駆動するドライバ、101は地上装置3から無線で送られるリモコン搬送波を受信し、リモコン操作信号を復元する受信部、102はリモコン操作信号に基づきドライバ100を制御し、モータ41の稼働(回転)と停止をさせるコントローラである。103は打撃振動検出装置31の出力する打撃振動検出信号を増幅するアンプ、104は打撃振動検出信号を高周波の搬送波に載せ、電力増幅して送信する送信部である。
【0020】
地上装置3の内、110は打撃装置30の稼働と停止のリモコン操作を行なうリモコン操作部、111はリモコン操作に応じたリモコン操作信号を作成するリモコン操作信号作成部、112はリモコン操作信号を所定の周波数の搬送波に載せて送信する送信部、113は外壁診断装置本体1からの送信信号を受信し、元の打撃振動検出信号Dを復元して出力する受信部、114は打撃振動検出信号Dを記録するレコーダ、115は打撃振動検出信号Dをヘッドホン用に増幅するヘッドホンアンプ、116はヘッドホンアンプ115の出力を音響変換するヘッドホンであり、地上側作業員が耳で聴いて外壁2の欠陥の有無を判断する。
【0021】
次に、上記した実施例の動作を説明する。
(1)準備
初め、地上側作業員が地上側昇降装置5を建物の外壁2の間近に設置するとともに、上側昇降ロープ44、下側昇降ロープ50、目盛付ロープ52、ガイドロープ47、48を外した状態の外壁診断装置本体1を外壁2の近くの地上に置き、屋上側作業員が屋上側昇降装置4を屋上に上げ、地上側昇降装置5の真上に相当する縁63の近くに設置する。この際、止めボルト66を緩めてベース62を縁63の高さに合わせて上に載せ、水平を保持する位置で止めボルト66を締める。ラチット機構76、77の爪によるロックを外し、ハンドル74、75を回して巻き取りドラム72、73からガイドロープ47、48を巻き出し、先端を地上近くまで降ろすとともに、ラチット機構69の爪によるロックを外し、ハンドル68を回し巻き取りドラム67から上側昇降ロープ44を巻き出して先端を地上近くまで降ろす。
【0022】
地上側作業員は、ガイドロープ47の先端を外壁診断装置本体1の左側の4つのロープ通し部45に通したあと地上側昇降装置5のロープ取り付け部86に結び付け、ガイドロープ48の先端を外壁診断装置本体1の右側の4つのロープ通し部46に通したあと地上側昇降装置5のロープ取り付け部87に結び付け、上側昇降ロープ44の先端を外壁診断装置本体1の上面のロープ取り付け部43に結び付け、下側昇降ロープ50の先端を外壁診断装置本体1の下面のロープ取り付け部49に結びつけ、目盛付ロープ52の先端を外壁診断装置本体1の下面のロープ取り付け部51に結びつけ、外壁診断装置本体1を外壁2の近くに立てた状態とする。
【0023】
(2)外壁診断装置本体の上昇
このようにして準備が終ったら、屋上側作業員は腰掛61に坐り、巻き取りドラム67を巻き取り方向に回して上側昇降ロープ44を一定速度で巻き取り、外壁診断装置本体1を一定速度で上昇させる。地上側作業員は腰掛81に坐り、巻き取りドラム82を巻き出し方向に回して下側昇降ロープ50を張りながら一定速度で巻き出す。上側昇降ロープ44と下側昇降ロープ50が外壁診断装置本体1の上面中央の後端と下面中央の後端を斜め上方向(図1の矢印A)と斜め下方向(図1の矢印B)に引っ張ることにより、外壁診断装置本体1の全体を外壁2へ押し付けて、車輪20と打撃振動検出装置31が外壁2に接触し、かつ、周回する打撃体36、37の軌跡が外壁2の内部に少し入り込む位置に保持させる。振動検出装置31は支持部材35を中心に自重で外壁2に凭れ掛かることにより外壁2との接触が維持される。目盛付ロープ52はゴム動力部89の付勢力に抗して巻き取りドラム88から引き出されていく。
【0024】
(3)外壁診断
地上側作業員は地上装置3のリモコン操作部110で打撃開始操作をし、ヘッドホン116を耳に掛け、レコーダ114による記録を開始させる。リモコン操作部110で打撃開始操作がされるとリモコン操作信号作成部111は、打撃開始指令を示すリモコン操作信号を作成し、送信部112により無線送信される。そして、外壁診断装置本体1の受信部101で受信されて元のリモコン操作信号に復元され、コントローラ102により、ドライバ100が制御されてモータ41の回転が開始される。モータ41の回転で2つの打撃体36、37が周回しながら交互に外壁2を打撃する。この際、2つの打撃体36、37が回転中心から見て反対側に配置されているので、回転ぶれは生じ難い。
【0025】
外壁2に生じた振動は打撃点近くに接している打撃振動検出装置31に伝達して検出される。打撃振動検出信号はアンプ103で増幅後、送信部104で搬送波に乗せられて外部に無線送信される。この送信信号は地上装置3の受信部113で受信されて元の打撃振動検出信号Dが復元され、レコーダ114で記録される。また、打撃振動検出信号Dがヘッドアンプ115に入力されて増幅後、ヘッドホン116に出力される。地上側作業員はヘッドホン116から打撃振動検出音が明瞭に聞こえるような下側昇降ロープ50の張力となるように、巻き取りドラム82からの巻き出しを行なえば良い。地上側作業員はヘッドホン116から聞こえる打撃振動検出音の異常の有無から外壁2に浮き、ヒビ割れ等の欠陥の有無を判断する。異常があれば、トランシーバで屋上側作業員に指示して上側昇降ロープ44の巻き取りを一時的に停止させるとともに下側昇降ロープ50の巻き出しを停止して外壁診断装置本体1の上昇を一時的に中断する。そして、目盛付ロープ52の目盛から異常個所の高さを判別して記録する。しかるのち、トランシーバで屋上側作業員に指示して上側昇降ロープ44の巻き取りを再開させるとともに下側昇降ロープ50の巻き出しを再開し、外壁診断装置本体1の上昇を再開する。
【0026】
屋上まで同様の作業を続けたら、地上側作業員はトランシーバで屋上側作業員に指示して上側昇降ロープ44の巻き取りを停止させるとともに下側昇降ロープ50の巻き出しを停止して外壁診断装置本体1の上昇を停止する。屋上側作業員が巻取りドラム67のハンドル68を放しても、ラチェット機構69によりロックされるので上側昇降ロープ44が巻き出されることはない。そして、地上側作業員はリモコン操作部110で打撃停止操作をする。すると、リモコン操作信号作成部111で作成された打撃停止指令を示すリモコン操作信号が送信部112から送信され、受信部101で受信されてコントローラ102に入力され、コントローラ102がドライバ100を制御してモータ41の回転を停止させる。
【0027】
(4)外壁診断装置本体の下降
地上側作業員と屋上側作業員は台車60、80を建物の横方向に一定距離だけ移動する。そして、屋上側作業員は腰掛61に坐り、ラチェット機構69の爪によるロックを外し、巻き取りドラム67を巻き出し方向に回して上側昇降ロープ44を一定速度で巻き出し、外壁診断装置本体1を一定速度で下降させる。地上側作業員は腰掛81に坐り、巻き取りドラム82を巻き取り方向に回して下側昇降ロープ50を張りながら一定速度で巻き取る。上側昇降ロープ44と下側昇降ロープ50が外壁診断装置本体1の上面中央の後端と下面中央の後端を斜め上方向(図1の矢印A)と斜め下方向(図1の矢印B)に引っ張ることにより、外壁診断装置本体1の全体を外壁2へ押し付けて、車輪20と振動検出装置31が外壁2に接触し、かつ、周回する打撃体36、37の軌跡が外壁2の内部に少し入り込む位置に保持させる。打撃振動検出装置31は支持部材35を中心に自重で外壁2に凭れ掛かることにより外壁2との接触が維持される。目盛付ロープ52はゴム動力部89の付勢力により巻き取りドラム88に巻き取られていく。
【0028】
(5)外壁診断
地上側作業員は地上装置3のリモコン操作部110で打撃開始操作をし、ヘッドホン116を耳に掛け、レコーダ114による記録を開始させる。これにより、前回とは一定距離離れた診断ラインに沿って診断を行なうことができ、同様の作業を横方向に繰り返すことで、外壁2の全面の診断を行なうことができる。
なお、打撃点の高さを測る際に、目盛付ロープ52に緩みがあるときは、ハンドル93を巻き取り方向に回して緩みをなくせばよい。
【0029】
この実施例によれば、可撓性を有するアーム38、39の先に打撃体36、37を取り付け、アーム38、39の基側をモータ41で回転させて打撃体36、37を建物の外壁2に向けて周回させながら打撃するようにしたので、構成が簡単となり、往復動させる場合に比して複雑な打撃機構を不要化でき、多数回の打撃動作を行なっても壊れ難くできる。
また、2つの打撃体36、37が回転中心から見て180度反対側に配置されているので、回転ぶれは生じ難い。
また、打撃振動検出装置31を外壁2に凭れ掛かるように支持したので、外壁2と打撃振動検出装置31の接触性を良好に維持できる。
また、鉛直に配設した2本のガイドロープ47、48により外壁診断装置本体1の昇降が案内されるようにし、屋上側昇降装置4から巻き出した上側昇降ロープ44により外壁診断装置本体 1の上面の中央後端を斜め上方に引っ張ると同時に、地上側昇降装置5から巻き出した下側昇降ロープ50により外壁診断装置本体1の下面の中央後端を斜め下方に引っ張りながら外壁診断装置本体1を昇降させることで、外壁診断装置本体1が外壁2から離れることなく打撃体36、37による外壁2の打撃と打撃振動検出装置31による打撃振動検出を確実に行なうことができる。
【0030】
なお、上記した実施例では、打撃体を球状としたが、本発明は何らこれに限定されるものでなく、半球状としたり、楕円体状としたりしても良い。また、打撃体を2つ設ける場合を例示したが、図8の打撃装置30Aに示す如く、1つの打撃体120を可撓性を有するアーム121の先端に取着し、他方のアーム122を短くして先端に外壁2に衝突しないバランサ123を設けるようにしたり、或いは、図9の打撃装置30Bに示す如く、3つ以上の同形の打撃体124乃至126を放射状に配設された複数の同じ長さの棒状のアーム127乃至129の先端に個別に装着し、アーム127乃至129の基端側をハブ40に装着し、モータ41で回転させるようにしても良い。
また、打撃振動検出装置に代えて、または加えて打撃点近くの外壁診断装置本体に、空気中を伝わる打撃音を拾う打撃音検出装置(マイク)を装備するようにても良い。
また、リモコン操作で打撃開始と停止をできるようにしたが、更に、回転方向を変えたり、回転速度を変えたりできるようにしても良い。
また、屋上側昇降装置の上側昇降ロープ用の巻き取りドラムを電動ウインチに置換えても良い。
また、目盛付ロープを巻回した巻き取りドラムを屋上側昇降装置に装備するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、モルタル、コンクリートなどの外壁を打撃したときの打撃振動、打撃音などから壁の浮き、ひび割れなどの欠陥を検査する外壁診断装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 外壁診断装置本体
30、30A、30B 打撃装置
31 打撃振動検出装置
36、37、120、124、125、126 打撃体
38、39、121、127、128、129 アーム
40 ハブ
41 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁を打撃する1または複数の打撃体と、
打撃体を支持する可撓性を有する支持部材と、
支持部材に結合されて打撃体を外壁に向けて周回させる周回駆動手段と、
を備えたことを特徴とする外壁打撃装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記打撃体を先端に取り付けた可撓性を有する1または複数のアームとし、
前記周回駆動手段は、アームの基端側に結合されて打撃体を外壁に向けて周回させるようにしたこと、
を特徴とする請求項1記載の外壁打撃装置。
【請求項3】
外壁打撃手段と打撃振動または打撃音を検出する検出手段とを備えた本体と、本体を外壁に沿って昇降させる昇降手段を備え、
外壁打撃手段は、
建物の外壁を打撃する1または複数の打撃体と、
打撃体を支持する可撓性を有する支持部材と、
支持部材に結合されて打撃体を外壁に向けて周回させる周回駆動手段と、
を備えたことを特徴とする外壁診断装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記打撃体を先端に取り付けた可撓性を有する1または複数のアームとし、
前記周回駆動手段は、アームの基端側に結合されて打撃体を外壁に向けて周回させるようにしたこと、
を特徴とする請求項3記載の外壁診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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