説明

外壁材の接合構造、接合用役物、及び、外壁の隅部工法

【課題】出隅部において利用される接合用役物に関連し、防水性の更なる向上を図るための技術を提案する。
【解決手段】二つの外壁材1・2を直交に配置しつつ、二つの外壁材1・2の縦端面1a・2aを隣接させて出隅部を形成するための、外壁材1・2の接合構造であって、前記各外壁材1・2の縦端面1a・2aは、柱4などの下地材に固定される接合用役物6を介して接合されるものであって、前記接合用役物6には、前記各外壁材1・2の各裏面1b・2bに対してそれぞれ対向する第一の止水部62a・62bと、前記各裏面1b・2bと前記第一の止水部62a・62bの間から浸入した水を排水し得る縦方向の縦溝部11a・11bと、が形成されることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窯業系サイディングなどの外壁材にて外壁を構成するための技術に関するものであり、より詳しくは、出隅部や入隅部において外壁材を接合させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窯業系サイディングなどの外壁材にて外壁が構成されるものについて、出隅部に専用の部材を配置するとともに、この専用の部材に対し平面視において直交するように二つの外壁材の端部を挿し込むことにより、出隅部において二つの外壁材が接合されることとする技術が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1では、接合用役物(接合金物)の二つの取付凹所にそれぞれ板部材の取付基端部が挿入される構成とするものであって、接合用役物の内側辺の内側突起部を、板部材の裏側面の裏側挿入溝に嵌着させることによって、板部材の裏側面まで雨水などの回り込みの防止を図る技術について開示がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−40866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような形態で出隅部を構成するものにおいて、外壁材の裏側に対し、接合用役物の内側辺などを接触させることで、その接触された先の箇所への水の浸入の防止を図ることは、一般的に有効であるとされ、一定の効果を得ることが期待できる。外壁材の裏面と接合用役物の内側辺が接触するシール部が形成され、このシール部にて防水性(止水性能)が得られると考えられるためである。
【0006】
しかし、外壁材の裏面に凹凸がある場合や、長尺の接合用役物の内側辺に撓みが生じている場合には、シール部において接触状態が形成されない部位が局所的に生じ、微小な隙間や孔が形成されてしまうことが考えられる。このような場合には、例えば、継続的に雨水が降りかかるような状況になると、いわゆる毛細管現象により、本来シール部にて止水されるべき水が、シール部を通過して浸入してしまうことが考えられる。
【0007】
以上のようなことから、接合用役物の内側辺と外壁材の裏面にてシール部が形成される構成においては、更なる防水性の向上が望まれるものであるが、外壁材の裏面の凹凸や、接合用役物の撓みなどの問題は、製品のばらつきの存在も考えると、完全に解決することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は以上の問題に鑑み、出隅部において利用される接合用役物に関連し、防水性の更なる向上を図るための技術を提案するものである。
【0009】
さらに、上述した出隅部のほか、入隅部においても同様に、二つの外壁材を直交に配置させるとともに、二つの外壁材の端部を隣接させることで、入隅部が形成されるものである。
【0010】
そこで、本発明では、入隅部において利用される接合用役物に関連し、防水性の更なる向上を図るための技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1に記載のごとく、
二つの外壁材を直交に配置しつつ、二つの外壁材の縦端面を隣接させて出隅部を形成するための、外壁材の接合構造であって、
前記各外壁材の縦端面は、柱などの下地材に固定される接合用役物を介して接合されるものであって、
前記接合用役物には、
前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ対向する第一の止水部と、
前記各裏面と前記第一の止水部の間から浸入した水を排水し得る縦方向の縦溝部と、
が形成されることとするものである。
【0013】
また、請求項2に記載のごとく、
二つの外壁材を直交に配置しつつ、二つの外壁材の縦端面を隣接させて入隅部を形成するための、外壁材の接合構造であって、
前記各外壁材の縦端面は、柱などの下地材に固定される接合用役物を介して接合されるものであって、
前記接合用役物には、
前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ対向する第一の止水部と、
前記各裏面と前記第一の止水部の間から浸入した水を排水し得る縦方向の縦溝部と、
が形成されることとするものである。
【0014】
また、請求項3に記載のごとく、
前記接合用役物には、前記縦溝部の内側から前記外壁材の裏面への水の浸入を防ぐための第二の止水部であって、前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ対向する第二の止水部が形成されることとするものである。
【0015】
また、請求項4に記載のごとく、
前記各外壁材の各縦端面と接合用役物の間には、それぞれ、パッキン材が挟装されることとする。
【0016】
また、請求項5に記載のごとく、
前記接合用役物における外壁材と防水シートの間の部位の室内外方向の奥行き寸法は、外壁材と防水シートの間に形設される通気空間の室内外方向の奥行き寸法と略同一に設定されるものである。
【0017】
また、請求項6に記載のごとく、
二つの外壁材を直交に配置しつつ、二つの外壁材の縦端面を隣接させて出隅部を形成するために用いる接合用役物であって、
前記接合用役物には、前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ当接し得る第一の止水部と、
前記各裏面と前記第一の止水部の間から浸入した水を排水し得る縦方向の縦溝部と、
が形成されることとするものである。
【0018】
また、請求項7に記載のごとく、
二つの外壁材を直交に配置しつつ、二つの外壁材の縦端面を隣接させて入隅部を形成するために用いる接合用役物であって、
前記接合用役物には、
前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ当接し得る第一の止水部と、
前記各裏面と前記第一の止水部の間から浸入した水を排水し得る縦方向の縦溝部と、
が形成されることとするものである。
【0019】
また、請求項8に記載のごとく、
前記接合用役物には、前記縦溝部の内側から前記外壁材の裏面への水の浸入を防ぐための第二の止水部であって、前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ当接し得る第二の止水部が形成されることとするものである。
【0020】
また、請求項9に記載のごとく、
前記各外壁材の各縦端面と接合用役物の間には、それぞれ、パッキン材が挟装されることとする。
【0021】
また、請求項10に記載のごとく、
前記接合用役物における外壁材と防水シートの間の部位の室内外方向の奥行き寸法は、外壁材と防水シートの間に形設される通気空間の室内外方向の奥行き寸法と略同一に設定されるものである。
【0022】
また、請求項11に記載のごとく、
請求項6乃至請求項10のいずれか一項に記載の接合用役物を用い、二つの外壁材の段差加工の無い縦端面を接合用役物を介して接合することで、出隅部、又は、入隅部を形成する、外壁の隅部工法とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0024】
即ち、請求項1に記載の発明においては、
縦端面を接合して出隅部を構成する場合において、仮に、第一の止水部と裏面の間から水が浸入した場合でも、この水を縦溝部によって排水することができ、優れた防水性を確保することが可能となる。
【0025】
また、請求項2に記載の発明においては、
縦端面を接合して入隅部を構成する場合において、仮に、第一の止水部と裏面の間から水が浸入した場合でも、この水を縦溝部によって排水することができ、優れた防水性を確保することが可能となる。
【0026】
また、請求項3に記載の発明においては、
外壁材の裏面において縦溝部よりも内側への水の浸入を防止することができ、防水性の向上を図ることが可能となる。
【0027】
また、請求項4に記載の発明においては、
前記各外壁材の各縦端面と接合用役物の間の隙間がパッキン材によって埋められることになり、各縦端面における止水を図ることができる。
【0028】
また、請求項5に記載の発明においては、
外壁材と防水シートの間に通気空間が形成される工法において、他のスペーサー部材などを用いずに、接合用役物を利用することが可能となる。
【0029】
また、請求項6に記載の発明においては、
縦端面を接合して出隅部を構成する場合において、仮に、第一の止水部と裏面の間から水が浸入した場合でも、この水を縦溝部によって排水することができ、優れた防水性を確保することが可能となる。
【0030】
また、請求項7に記載の発明においては、
縦端面を接合して入隅部を構成する場合において、仮に、第一の止水部と裏面の間から水が浸入した場合でも、この水を縦溝部によって排水することができ、優れた防水性を確保することが可能となる。
【0031】
また、請求項8に記載の発明においては、
外壁材の裏面において縦溝部よりも内側への水の浸入を防止することができ、防水性の向上を図ることが可能となる。
【0032】
また、請求項9に記載の発明においては、
前記各外壁材の各縦端面と接合用役物の間の隙間がパッキン材によって埋められることになり、各縦端面における止水を図ることができる。
【0033】
また、請求項10に記載の発明においては、
外壁材と防水シートの間に通気空間が形成される工法において、他のスペーサー部材などを用いずに、接合用役物を利用することが可能となる。
【0034】
また、請求項11に記載の発明においては、
外壁材の幅寸法の調整が必要となった場合においては、施工現場にて外壁材を切断しさえすれば、この切断された箇所の端面において合じゃくり加工などの特別な段差加工を必要とすることなく、施工を完了することができ、優れた施工性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1の接合構造について示す斜視図。
【図2】実施例1の接合構造について示す水平断面図。
【図3】実施例2の接合構造について示す水平断面図。
【図4】実施例3の接合構造について示す斜視図。
【図5】実施例3の接合構造について示す水平断面図。
【図6】実施例4の接合構造について示す斜視図。
【図7】実施例4の接合構造について示す水平断面図。
【図8】実施例4の接合用役物の構成について示す分解図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態では、図1及び図2に示すごとく、
二つの外壁材1・2を直交に配置しつつ、二つの外壁材1・2の縦端面1a・2aを隣接させて出隅部を形成するための、外壁材1・2の接合構造であって、
前記各外壁材1・2の縦端面1a・2aは、柱4などの下地材に固定される接合用役物6を介して接合されるものであって、
前記接合用役物6には、前記各外壁材1・2の各裏面1b・2bに対してそれぞれ対向する第一の止水部62a・62bと、
前記各裏面1b・2bと前記第一の止水部62a・62bの間から浸入した水を排水し得る縦方向の縦溝部11a・11bと、
が形成されることとするものである。
【0037】
これにより、縦端面1a・2aを接合して出隅部を構成する場合において、仮に、第一の止水部62a・62bと裏面1b・2bの間から水が浸入した場合でも、この水を縦溝部11a・11bによって排水することができ、優れた防水性を確保することが可能となる。
【0038】
また、図2に示すごとく、前記接合用役物6には、前記縦溝部11a・11bの内側から前記外壁材1・2の裏面1b・2bへの水の浸入を防ぐための第二の止水部65a・65bであって、前記各外壁材1・2の各裏面1b・2bに対してそれぞれ対向する第二の止水部65a・65bが形成されることとするものである。
【0039】
これにより、外壁材1・2の裏面1b・2bにおいて縦溝部11a・11bよりも内側(外壁材1・2の幅方向の中心側)への水の浸入を防止することができ、防水性の向上を図ることが可能となる。
【0040】
また、図2に示すごとく、前記各外壁材1・2の各縦端面1a・2aと接合用役物6の間には、それぞれ、パッキン材73・74が挟装されることとする。
【0041】
これにより、前記各外壁材1・2の各縦端面1a・2aと接合用役物6の間の隙間がパッキン材73・74によって埋められることになり、各縦端面1a・2aにおける止水を図ることができる。
【0042】
また、図2に示すごとく、接合用役物6における外壁材1・2と防水シート5の間の部位の室内外方向の奥行き寸法(距離W1・W2)は、外壁材1・2と防水シート5の間に形設される通気空間15の室内外方向の奥行き寸法(距離W3)と略同一に設定されるものである。
【0043】
これにより、外壁材1・2と防水シート5の間に通気空間15が形成される工法において、他のスペーサー部材などを用いずに、接合用役物6を利用することが可能となる。
【0044】
また、図2に示すごとく、以上の接合用役物6を用い、二つの外壁材1・2の段差加工の無い縦端面1a・2aを接合用役物6を介して接合することで、出隅部20、又は、入隅部30(図4参照)を形成する、隅部工法とするものである。
【0045】
これにより、外壁材1の幅寸法の調整が必要となった場合においては、施工現場にて外壁材1を切断しさえすれば、この切断された箇所の端面において合じゃくり加工などの特別な段差加工を必要とすることなく、施工を完了することができ、優れた施工性を実現することができる。
【0046】
また、別の実施形態として、図4及び図5に示すごとく、
二つの外壁材101・102を直交に配置しつつ、二つの外壁材101・102の縦端面101a・102aを隣接させて入隅部30を形成するための、外壁材101・102の接合構造であって、
前記各外壁材101・102の縦端面101a・102aは、柱104などの下地材に固定される接合用役物106を介して接合されるものであって、
前記接合用役物106には、
前記各外壁材101・102の各裏面101b・102bに対してそれぞれ対向する第一の止水部165・168と、
前記各裏面101a・102aと前記第一の止水部165・168の間から浸入した水を排水し得る縦方向の縦溝部111a・111bと、
が形成されることとするものである。
【0047】
これにより、縦端面101a・102aを接合して入隅部30を構成する場合において、仮に、第一の止水部165・168と裏面101a・102aの間から水が浸入した場合でも、この水を縦溝部111a・111bによって排水することができ、優れた防水性を確保することが可能となる。
以下、実施例を用いて詳細について説明する。
【実施例1】
【0048】
図1及び図2に示すごとく、本実施例1は、出隅部20を構成する実施例である。
二つの外壁材1・2は、その縦端面1a・2aを隣接させつつ、両外壁材1・2の裏面1b・2bにて略90度の角度が形成されるように直交に配置され、両縦端面1a・2aの間に接合用役物6が介設される。これにより、出隅部20が形成されるようになっている。また、各縦端面1a・2aは、段差加工の無い縦端面にて構成されるものである。
なお、本明細書中において、「段差加工の無い縦端面」とは、外壁材を施工現場にて外壁面に対して垂直方向に切断することで単純に形成される垂直切断面(切りっ放し端面ともいう)や、工場などで規格寸法に形成された状態で単純な垂直端面を形成している端面も含むものであり、合じゃくり加工のように「積極的に特定の段差を形成することを意図した加工」がなされていない端面をいうものである。
【0049】
また、図1及び図2に示すごとく、外壁材1・2は、図示せぬ留め金具によって柱4などに対して留め付けられるようになっており、この留め金具によって、各外壁材1・2の裏面1b・2bと防水シート5の間に通気空間15が形成され得るようになっている。
【0050】
また、図1及び図2に示すごとく、接合用役物6は、図示せぬ固定具により、防水シート5を介して柱4に対して固定されるようになっている。なお、接合用役物6は、柱4の他、縦胴縁、間柱、胴縁、下地用ボード材などの各種の下地材に対して取付けることもできる。
【0051】
また、図2に示すごとく、接合用役物6は、長尺の部材であって上下方向に長く配設されるものである。この接合用役物6は、防水シート5を介して柱4の角部に固定される断面略L字状の固定板部61と、固定板部61の角部から外壁材1・2の縦端面1a・2aへ向かうように延出される縦板部62を有している。なお、本実施例の接合用役物6は、金属などからなる板材を板金加工することによって、各部位を構成することとしているが、この他、金属を押出成形することによって各部位が形成されることとしてもよい。
【0052】
また、図2に示すごとく、縦板部62の先端部には、外壁材1の縦端面1aに対面し得る外側縦板部63と、外壁材2の縦端面2aに対面し得る外側縦板部64が設けられている。各外側縦板部63・64には、それぞれ、縦端面1a・2aに当着し得るパッキン材73・74が貼設されており、外側縦板部63と縦端面1aの間の隙間、外側縦板部64と縦端面2aの間の隙間が、それぞれパッキン材73・74によって埋められ得るようになっている。これにより、外側縦板部63と縦端面1aの間にシール面13aが、外側縦板部64と縦端面2aの間にシール面13bがそれぞれ形設され、このシール面13a・13bによる止水を図れるようになっている。
【0053】
また、図2に示すごとく、パッキン材73・74は、ゴムや樹脂などの弾性のある素材にて構成されることとしている。これにより、外壁材1・2の縦端面1a・2aの凹凸や、接合用役物6の撓みなどが存在した場合であっても、パッキン材73・74が弾性によって変形し、これら凹凸や撓みによるシール面13a・13bの隙間形成を防ぐことができる。つまり、パッキン材73・74によって、縦端面1a・2aの凹凸や、接合用役物6の撓みなどを吸収することが可能となるのである。なお、パッキン材73・74は、幅を有する帯状のものとするほか、他の形態であってもよく、また、接合用役物6とは別体であって、施工時に都度挟装されるものであってもよい。
【0054】
また、図2に示すごとく、各外側縦板部63・64の先端部には、外壁材1・2の外装面1c・2cに対面する折返片部63a・64aがそれぞれ設けられている。この折返片部63a・64aによって、パッキン材73・74が外観に現れないように隠されることとなって、パッキン材73・74による美観低下を防ぐことができるとともに、図1に示すごとく、外側縦板部63・64と折返片部63a・64aによって連続的な意匠外観面を形成することが可能となる。
【0055】
また、図2に示すごとく、縦板部62の先端部には、外壁材1・2の裏面1b・2bに対してそれぞれ当接し得る第一の止水部62a・62bが設けられている。この第一の止水部62a・62bは、裏面1b・2bと平行となる板面で構成されており、裏面1b・2bに対して幅Wa・Wbの範囲において面で当接する部位を有する構成としている。このように、幅Wa・Wbを確保することにより、幅Wa・Wbのシール面13c・13dが形設されることになって、このシール面13c・13dによる止水を図れるようになっている。なお、第一の止水部62a・62bにゴムや樹脂などからなるパッキン材を設け、第一の止水部62a・62bと外壁材1・2の裏面1b・2bの間に、パッキン材が介装される構成としてもよい。即ち、各裏面1b・2bに対し第一の止水部62a・62bがパッキン材を介して当接し得る構成としてもよい。また、第一の止水部62a・62bが1b・2bと接触せずに隙間が形成される場合であっても、後述の縦溝部11a・11bによる排水が確保されることから、大きな問題が生じることはない。
【0056】
以上のようにして、図2に示すごとく、パッキン材73・74により形成されるシール面13a・13bによる第一段階の止水と、第一の止水部62a・62bによって形成されるシール面13c・13dよる第二段階の止水が実現される。
【0057】
また、図2に示すごとく、接合用役物6において、断面略L字状の固定板部61の両端部には、それぞれ、裏側縦板部65A・65Bが設けられている。この裏側縦板部65A・65Bは、固定板部61から室外方向に延出されており、その先端部には、外壁材1・2の裏面1b・2bに対してそれぞれ当接し得る第二の止水部65a・65bが設けられる。
【0058】
そして、図1及び図2に示すごとく、以上の構成とする接合用役物6の構成により、縦板部62と、外壁材1の裏面1bと、第一の止水部62aと、固定板部61と、裏側縦板部65Aと、第二の止水部65aによって取り囲まれる上下方向の縦溝部11aが形成される。また、縦板部62と、外壁材2の裏面2bと、第一の止水部62bと、固定板部61と、裏側縦板部65Bと、第二の止水部65bによって取り囲まれる上下方向の縦溝部11bが形成されることになる。
【0059】
これにより、第一の止水部62a・62bと外壁材1・2の裏面1b・2bの間に形設されるシール面13c・13dから水が浸入した場合でも、この浸入した水を縦溝部11a・11bから下方へ排水することが可能となる。また、第二の止水部65a・65bによって、第二の止水部65a・65bよりも内側にある、外壁材1・2の裏面1b・2bへの水の浸入を防ぐことが可能となる。
【0060】
以上のようにして、図1及び図2に示すごとく、仮に、第一の止水部62a・62bによって形成されるシール面13c・13dの間から水が浸入した場合でも、この水を縦溝部11a・11bによって排水する第三段階の止水と、第二の止水部65a・65bによって外壁材1・2のさらに内側の裏面1b・2bへの水の浸入を防止する第四段階の止水が実現される。
【0061】
また、図2に示すごとく、第二の止水部65a・65bは、第一の止水部62a・62bと同様に、裏面1b・2bと平行な板面で構成されており、裏面1b・2bに対して幅Wc・Wdの範囲において面で当接する部位を有する構成としている。このように、幅Wc・Wdを確保することにより、幅Wc・Wdのシール面13e・13fが形設されることになって、確実な止水を図ることができる。なお、第二の止水部65a・65bにゴムや樹脂などからなるパッキン材を設け、第二の止水部65a・65bと外壁材1・2の裏面1b・2bの間に、パッキン材が介装される構成としてもよい。即ち、各裏面1b・2bに対し第二の止水部65a・65bがパッキン材を介して当接し得る構成としてもよい。また、この他、第二の止水部65a・65bが裏面1b・2bに当接されず、シール面13e・13fが形設されない構成にて実施することも考えられる。
【0062】
また、図2に示すごとく、第一の止水部62a・62bと第二の止水部65a・65bは、それぞれ幅We・Wfだけ離間して配置されることとなっており、外壁材1・2の裏面1b・2bにおいては、止水部と接触しない部位1m・2mが形成されるようになっている。
【0063】
ここで、仮に、図2において、第一の止水部62a・62bと第二の止水部65a・65bが連続して設けられる場合には、止水部と接触しない部位1m・2mが形成されず、裏面1b・2bとの間で一連のシール面が形成されてしまうことになり、このシール面に小さな隙間が形設される場合には、いわゆる毛細管現象によって、水が浸入して、第二の止水部65a・65bを通過してしまうことになる。
【0064】
この点、本実施例1の形態によれば、止水部と接触しない部位1m・2mにおいてはシール面が形成されず、毛細管現象が生じないため、第一の止水部62a・62bによって形成されるシール面13a・13bを通過した水を縦溝部11a・11bに排水することができるようになる。また、外壁材1・2の幅方向において、シール面13c・13d、シール面13e・13fが位置をずらして形設されるため、二段階にて止水を行うことができる。
【0065】
また、図2に示すごとく、接合用役物6における固定板部61から第一の止水部62a・62bまでの距離W1、及び、第二の止水部65a・65bまでの距離W2は、それぞれ、通気空間15の奥行幅W3と略同一に形成されるようになっている。即ち、接合用役物6における外壁材1・2と防水シート5の間の部位の室内外方向の奥行き寸法(距離W1・W2)は、外壁材1・2と防水シート5の間に形設される通気空間15の室内外方向の奥行き寸法(距離W3)と略同一に設定されるものである。これにより、外壁材1・2と防水シート5の間に通気空間15が形成される工法において、他のスペーサー部材などを用いずに、接合用役物6を利用することが可能となる。
【0066】
また、図2に示すごとく、接合用役物6の一部である外側縦板部63・64は、それぞれ、外壁材1・2の縦端面1a・2aにパッキン材73・74を介して対向し得ることとしている。これにより、仮に、外壁材1・2が外側縦板部63・64に近づくように横方向にずれるような状況が生じた場合においては、この外側縦板部63・64によって外壁材1・2のズレを規制することが可能となる。この効果は、例えば、外壁材1・2を躯体側に固定するための固定金具が、横ずれ防止の機能を有していない場合など、外壁材1・2の横ずれの防止が図られていない工法においては、特に有効なものとなる。
【0067】
また、図2に示すごとく、本実施例1の接合用役物6を用いることで、出隅部20を構成するための外壁材1・2の縦端面1a・2aは、段差加工の無い縦端面とすることができる。このため、例えば、外壁材1の幅寸法の調整が必要となった場合においては、施工現場にて外壁材1を切断しさえすれば、この切断された箇所の端面において合じゃくり加工などの特別な段差加工を必要とすることなく、施工を完了することができ、優れた施工性を実現することができる。
【実施例2】
【0068】
本実施例2では、図3に示すごとく、接合用役物6Aについて、縦板部62の先端部に、出隅部20にて窪んだ円弧断面を有する外観を構成するための外側縦板部66を設ける構成とし、この外側縦板部66と各縦端面1a・2aの間にパッキン材67・68を介設する構成であって、他の構成は実施例1と同様である。
【0069】
このように、図3に示すような円弧断面を有する外側縦板部66を用いることにより、出隅部20における外観意匠を外側縦板部66の有するカーブした面にて構成することが可能となる。なお、図3に示すほか、出隅部20にて膨らんだ円弧断面を有する外側縦板部を設ける構成とすることや、別体の化粧材を外側縦板部66に取付けて化粧材にて外観意匠を構成することなども考えられる。
【実施例3】
【0070】
図4及び図5に示すごとく、本実施例3は、入隅部30を構成する実施例である。
二つの外壁材101・102は、その縦端面101a・102aを隣接させつつ、両外壁材101・102の外装面101c・102cにて略90度の角度が形成されるように直交に配置される。これにより、入隅部30が形成され、この入隅部30における外壁材101・102と柱104、補助下地材104a・104bの間の空間に、接合用役物106が配設されるようになっている。
【0071】
また、図4及び図5に示すごとく、外壁材101・102は、図示せぬ留め金具によって柱104(或いは補助下地材104a・104b)などに対して留め付けられるようになっており、この留め金具によって、各外壁材101・102の裏面101b・102bと防水シート105の間に通気空間115が形成され得るようになっている。
【0072】
また、図5に示すごとく、接合用役物106は、柱104に固定される補助下地材104a・104bに対して、防水シート105を介して図示せぬ固定具によって固定されるようになっている。なお、接合用役物106は、補助下地材104a・104bの他、縦胴縁、間柱、胴縁、下地用ボード材などの各種の下地材に対して取付けることもできる。
【0073】
また、図5に示すごとく、接合用役物106は、長尺の部材であって上下方向に長く配設されるものである。この接合用役物106は、互いに直交する面を形成する補助下地材104a・104bの表面に固定され、それぞれ外壁材101・102の裏面101b・102bに対向する固定板部161・162を有している。なお、本実施例の接合用役物106は、金属などからなる板材を板金加工することによって、各部位を構成することとしているが、この他、金属を押出成形することによって各部位が形成されることとしてもよい。
【0074】
また、図5に示すごとく、接合用役物106は、固定板部161の両端部から外壁材101の裏面101bに向かって延出され、裏面101bに当接し得る縦板部163・164と、裏面101bに対して当接し得る第一の止水部165と、縦端面101aに対向し得る内側縦板部171と、を有している。また、接合用役物106は、固定板部162の両端部から外壁材102の裏面102bに向かって延出され、裏面102bに当接し得る縦板部166・167と、裏面101bに対して当接し得る第一の止水部168と、縦端面102aに対向し得る内側縦板部172と、を有している。また、内側縦板部171・172は、互いに直交するように連続して設けられており、外壁材101・102の間に形設される隙間107の内側に、これら内側縦板部171・172にて形設される角部が配置されるようになっている。
【0075】
また、図5に示すごとく、内側縦板部171・172には、それぞれ、縦端面101a・102aに当着し得るパッキン材173・174が貼設されており、内側縦板部171と縦端面101aの間の隙間、内側縦板部172と縦端面102aの間の隙間が、それぞれパッキン材173・174によって埋められ得るようになっている。これにより、内側縦板部171と縦端面101aの間にシール面113aが、内側縦板部172と縦端面102aの間にシール面113bがそれぞれ形設され、このシール面113a・113bによる止水を図れるようになっている。
【0076】
また、図5に示すごとく、パッキン材173・174は、ゴムや樹脂などの弾性のある素材にて構成されることとしている。これにより、外壁材101・102の縦端面101a・102aの凹凸や、接合用役物106の撓みなどが存在した場合であっても、パッキン材173・174が弾性によって変形し、これら凹凸や撓みによるシール面113a・113bの隙間形成を防ぐことができる。つまり、パッキン材173・174によって、縦端面101a・102aの凹凸や、接合用役物106の撓みなどを吸収することが可能となるのである。なお、パッキン材173・174は、幅を有する帯状のものとするほか、他の形態であってもよく、また、接合用役物106とは別体であって、施工時に都度挟装されるものであってもよい。
【0077】
また、図5に示すごとく、第一の止水部165・168は、裏面101b・102bと平行となる板面で構成されており、裏面101b・102bに対して幅Wg・Whの範囲において面で当接する部位を有する構成としている。このように、幅Wg・Whを確保することにより、幅Wg・Whのシール面113c・113dが形設されることになって、このシール面113c・113dによる止水を図れるようになっている。なお、第一の止水部165・168にゴムや樹脂などからなるパッキン材を設け、第一の止水部165・168と外壁材101・102の裏面101b・102bの間に、パッキン材が介装される構成としてもよい。即ち、各裏面101b・102bに対し第一の止水部165・168がパッキン材を介して当接し得る構成としてもよい。また、第一の止水部165・168が101b・102bと接触せずに隙間が形成される場合であっても、後述の縦溝部111a・111bによる排水が確保されることから、大きな問題が生じることはない。
【0078】
以上のようにして、図5に示すごとく、パッキン材173・174により形成されるシール面113a・113bによる第一段階の止水と、第一の止水部165・168によって形成されるシール面113c・113dよる第二段階の止水が実現される。
【0079】
また、図5に示すごとく、縦板部164の先端に形設される第二の止水部164aが、外壁材101の裏面101bに当接し得るようになっている。これにより、固定板部161と第一の止水部165と、縦板部163・164と、によって取り囲まれた上下方向の縦溝部111aが形成されるようになっている。なお、第二の止水部164aについては、図5に示すように折り返して設けるほか、裏面101bと平行に設けて裏面101bに当接させ、第二の止水部164aと裏面101bの間に幅のあるシール面を構成することとしてもよい。
【0080】
同様に、図5に示すごとく、縦板部167の先端に形設される第二の止水部167aが、外壁材102の裏面102bに当接し得るようになっている。これにより、固定板部162と第一の止水部168と、縦板部166・167と、によって取り囲まれた上下方向の縦溝部111bが形成されるようになっている。なお、第二の止水部167aについては、図5に示すように折り返して設けるほか、裏面102bと平行に設けて裏面102bに当接させ、止水部167aと裏面102bの間に幅のあるシール面を構成することとしてもよい。
【0081】
また、図5に示すごとく、以上の構成において、各止水部164a・167aと各裏面101b・102bが当接することで、両者の間にそれぞれシール部113e・113fを形成することができる。なお、各止水部164a・167aにゴムや樹脂などからなるパッキン材を設け、各止水部164a・167aと外壁材101・102の裏面101b・102bの間に、パッキン材が介装される構成としてもよい。即ち、各裏面101b・102bに対し第二の止水部164a・167aがパッキン材を介して当接し得る構成としてもよい。また、この他、第二の止水部164a・167aが裏面101b・102bに当接されず、シール部113e・113fが形設されない構成にて実施することも考えられる。
【0082】
以上の構成により、第一の止水部165・168と外壁材101・102の裏面101b・102bの間に形設されるシール面113c・113dから水が浸入した場合でも、この浸入した水を縦溝部111a・111bから下方へ排水することが可能となる。また、第二の止水部164a・167aによって、第二の止水部164a・167aよりも内側にある、外壁材101・102の裏面101b・102bへの水の浸入を防ぐことが可能となる。
【0083】
以上のようにして、図4及び図5に示すごとく、仮に、第一の止水部165・168によって形成されるシール面113c・113dの間から水が浸入した場合でも、この水を縦溝部111a・111bによって排水する第三段階の止水と、第二の止水部164a・167aによって外壁材101・102のさらに内側の裏面101b・102bへの水の浸入を防止する第四段階の止水が実現される。
【0084】
また、図5に示すごとく、接合用役物106における固定板部161・162から第一の止水部165・168までの距離W4、及び、第二の止水部164a・167aまでの距離W5は、それぞれ、通気空間115の奥行幅W6と略同一に形成されるようになっている。即ち、接合用役物106における外壁材101・102と防水シート105の間の部位の室内外方向の奥行き寸法(距離W4・W5)は、外壁材101・102と防水シート105の間に形設される通気空間115の室内外方向の奥行き寸法(距離W6)と略同一に設定されるものである。これにより、外壁材101・102と防水シート105の間に通気空間115が形成される工法において、他のスペーサー部材などを用いずに、接合用役物106を利用することが可能となる。
【0085】
また、図5に示すごとく、接合用役物106の一部である内側縦板部171・172は、それぞれ、外壁材101・102の縦端面101a・102aにパッキン材173・174を介して対向し得ることとしている。これにより、仮に、外壁材101・102が内側縦板部171・172に近づくように横方向にずれるような状況が生じた場合においては、この内側縦板部171・172によって外壁材101・102のズレを規制することが可能となる。この効果は、例えば、外壁材101・102を躯体側に固定するための固定金具が、横ずれ防止の機能を有していない場合など、外壁材101・102の横ずれの防止が図られていない工法においては、特に有効なものとなる。
【0086】
また、図5に示すごとく、本実施例3の接合用役物106を用いることで、入隅部30を構成するための外壁材101・102の縦端面101a・102aは、段差加工の無い縦端面とすることができる。このため、例えば、外壁材101の幅寸法の調整が必要となった場合においては、施工現場にて外壁材101を切断しさえすれば、この切断された箇所の端面において合じゃくり加工などの特別な段差加工を必要とすることなく、施工を完了することができ、優れた施工性を実現することができる。
【実施例4】
【0087】
図6及び図7に示すごとく、本実施例4は、入隅部40を構成する実施例である。
二つの外壁材201・202は、その縦端面201a・202aを隣接させつつ、両外壁材201・202の外装面201c・202cにて略90度の角度が形成されるように直交に配置される。これにより、入隅部40が形成され、この入隅部40における外壁材201・202と柱204、補助下地材204a・204bの間の空間に、接合用役物206が配設されるようになっている。
【0088】
また、図6及び図7に示すごとく、外壁材201・202は、図示せぬ留め金具によって柱204(或いは補助下地材204a・204b)などに対して留め付けられるようになっており、この留め金具によって、各外壁材201・202の裏面201b・202bと防水シート205の間に通気空間215が形成され得るようになっている。
【0089】
また、図7に示すごとく、接合用役物206は、柱204に固定される補助下地材204a・204bに対して、防水シート205を介して固定具281・282によって固定されるようになっている。なお、接合用役物206は、補助下地材204a・204bの他、縦胴縁、間柱、胴縁、下地用ボード材などの各種の下地材に対して取付けることもできる。
【0090】
また、図8に示すごとく、接合用役物206は、役物本体206Aと、この役物本体206Aに付設して使用される付設役物206Bの二部材にて構成されている。
【0091】
また、図7及び図8に示すごとく、役物本体206Aは、長尺の部材であって上下方向に長く配設されるものである。この役物本体206Aは、互いに直交する面を形成する補助下地材204a・204bの表面に固定され、それぞれ外壁材201・202の裏面201b・202bに対向する固定板部261・262を有している。なお、本実施例の役物本体206Aは、金属などからなる板材を板金加工することによって、各部位を構成することとしているが、この他、金属を押出成形することによって各部位が形成されることとしてもよい。
【0092】
また、図7に示すごとく、役物本体206Aは、固定板部261の両端部から外壁材201の裏面201bに向かって延出される縦板部263・264と、裏面201bに対して対向する第一の止水部265と、外壁材201の縦端面201aに対向し得る内側縦板部271と、を有している。また、役物本体206Aは、固定板部262の両端部から外壁材202の裏面202bに向かって延出される縦板部266・267を有しており、内側縦板部271に近い側にある縦板部266は、内側縦板部271と直行するように連続して設けられている。
【0093】
また、図7及び図8に示すごとく、役物本体206Aにおいて、固定板部262及び縦板部266・267にて囲まれる箇所には、付設役物206Bが納められるようになっている。この付設役物206Bは、長尺の部材であって上下方向に長く配設されるものであり、役物本体206Aの固定板部262に当接し、固定板部262を介して補助下地材204bに固定される固定板部292と、固定板部292の両端部から外壁材202の裏面202bに向かって延出される縦板部293・294と、縦板部294から縦板部293の反対側に延設されて外壁材202の裏面202bに対向する第一の止水部295と、第一の止水部295から外壁材202の縦端面202aに対向する挟装縦板部296と、を有している。この挟装縦板部296は、外壁材201・202の間に形設される隙間207の内側に挟装されるようにして設けられる。
【0094】
また、図7に示すごとく、内側縦板部271には、外壁材201の縦端面201aに当着し得るパッキン材273が貼設されており、内側縦板部271と縦端面201aの間の隙間が、パッキン材273によって埋められ得るようになっている。これにより、内側縦板部271と縦端面201aの間にシール面213aが形設され、このシール面213aによる止水を図れるようになっている。
【0095】
また、図7に示すごとく、第一の止水部295から挟装縦板部296に掛けては、外壁材202縦端面202a、及び、裏面202bに当着し得る略L字状のパッキン材274が貼設されており、第一の止水部295と裏面202bの間の隙間、及び、挟装縦板部296と縦端面202aの間の隙間が、それぞれパッキン材274によって埋められ得るようになっている。これにより、第一の止水部295から挟装縦板部296にかけて一連のシール面213bが形設され、このシール面213bによる止水を図れるようになっている。
【0096】
また、図7に示すごとく、パッキン材273・274は、ゴムや樹脂などの弾性のある素材にて構成されることとしている。これにより、外壁材201・202の縦端面201a・202aの凹凸や、外壁材202の裏面202bの凹凸、さらには、接合用役物206(役物本体206A、付設役物206B)の撓みなどが存在した場合であっても、パッキン材273・274が弾性によって変形し、これら凹凸や撓みによるシール面213a・213bの隙間形成を防ぐことができる。つまり、パッキン材273・274によって、縦端面201a・202aの凹凸や、外壁材202の裏面202bの凹凸、さらには、接合用役物206の撓みなどを吸収することが可能となるのである。なお、パッキン材273・274は、幅を有する帯状のものとするほか、他の形態であってもよく、また、接合用役物206とは別体であって、施工時に都度挟装されるものであってもよい。
【0097】
また、図7に示すごとく、第一の止水部265・295は、裏面201b・202bと平行となる板面で構成されており、裏面201b・202bに対して幅Wm・Wnの範囲において対向する部位が形成されるようにしている。このように、幅Wm・Wnを確保することにより、幅Wm・Wnのシール面213c・213dが形設されることになって、このシール面213c・213dによる止水を図れるようになっている。なお、第一の止水部265については、裏面201bと接触せずに隙間が形成される場合であっても、後述の縦溝部211aによる排水が確保されることから、大きな問題が生じることはない。また、第一の止水部265にゴムや樹脂などからなるパッキン材を設け、第一の止水部265と外壁材201の裏面201bの間に、パッキン材が介装される構成としてもよい。即ち、裏面201bに対し第一の止水部265がパッキン材を介して当接し得る構成としてもよい。
【0098】
以上のようにして、図7に示すごとく、パッキン材273・274により形成されるシール面213a・213bによる第一段階の止水と、第一の止水部265・295によって形成されるシール面213c・213dよる第二段階の止水が実現される。
【0099】
また、図7に示すごとく、縦板部264の先端に形設される第二の止水部264aが、外壁材201の裏面201bに当接し得るようになっている。これにより、固定板部261と縦板部263・264によって取り囲まれた上下方向の縦溝部211aが形成されるようになっている。なお、第二の止水部264aについては、図7に示すように折り返して設けるほか、裏面201bと平行に設けて裏面201bに当接させ、第二の止水部264aと裏面201bの間に幅のあるシール面を構成することとしてもよい。
【0100】
同様に、図7に示すごとく、付設役物206Bの縦板部293の先端に形設される第二の止水部293aが、外壁材202の裏面202bに当接し得るようになっている。これにより、固定板部292と縦板部293・294によって取り囲まれた上下方向の縦溝部211bが形成されるようになっている。なお、第二の止水部293aについては、図7に示すように折り返して設けるほか、裏面202bと平行に設けて裏面202bに当接させ、止水部293aと裏面202bの間に幅のあるシール面を構成することとしてもよい。
【0101】
また、図7に示すごとく、以上の構成において、各止水部264a・293aと各裏面201b・202bが当接することで、両者の間にそれぞれシール部213e・213fを形成することができる。なお、各止水部264a・293aにゴムや樹脂などからなるパッキン材を設け、各止水部264a・293aと外壁材201・202の裏面201b・202bの間に、パッキン材が介装される構成としてもよい。即ち、各裏面201b・202bに対し第二の止水部264a・293aがパッキン材を介して当接し得る構成としてもよい。また、この他、第二の止水部264a・293aが裏面201b・202bに当接されず、シール部213e・213fが形設されない構成にて実施することも考えられる。
【0102】
以上の構成により、第一の止水部265・295と外壁材201・202の裏面201b・202bの間に形設されるシール面213c・213dから水が浸入した場合でも、この浸入した水を縦溝部211a・211bから下方へ排水することが可能となる。また、第二の止水部264a・293aによって、第二の止水部264a・293aよりも内側にある、外壁材201・202の裏面201b・202bへの水の浸入を防ぐことが可能となる。
【0103】
以上のようにして、図6及び図7に示すごとく、仮に、第一の止水部265・295によって形成されるシール面213c・213dの間から水が浸入した場合でも、この水を縦溝部211a・211bによって排水する第三段階の止水と、第二の止水部264a・293aによって外壁材201・202のさらに内側の裏面201b・202bへの水の浸入を防止する第四段階の止水が実現される。
【0104】
また、図7に示すごとく、第二の止水部264a・293aから防水シート205までの距離W8は、それぞれ、通気空間215の奥行幅W9と略同一に形成されるようになっている。これにより、外壁材201・202と防水シート205の間に通気空間215が形成される工法において、他のスペーサー部材などを用いずに、接合用役物206を利用することが可能となる。
【0105】
また、図7に示すごとく、接合用役物206の一部である内側縦板部271及び挟装縦板部296は、それぞれ、外壁材201・202の縦端面201a・202aにパッキン材273・274を介して対向し得ることとしている。これにより、仮に、外壁材201・202が、それぞれ内側縦板部271、挟装縦板部296に近づくように横方向にずれるような状況が生じた場合においては、この内側縦板部271、挟装縦板部296によって外壁材201・202のズレを規制することが可能となる。この効果は、例えば、外壁材201・202を躯体側に固定するための固定金具が、横ずれ防止の機能を有していない場合など、外壁材201・202の横ずれの防止が図られていない工法においては、特に有効なものとなる。
【0106】
また、図7に示すごとく、本実施例4の接合用役物206を用いることで、入隅部40を構成するための外壁材201・202の縦端面201a・202aは、段差加工の無い縦端面とすることができる。このため、例えば、外壁材201の幅寸法の調整が必要となった場合においては、施工現場にて外壁材201を切断しさえすれば、この切断された箇所の端面において合じゃくり加工などの特別な段差加工を必要とすることなく、施工を完了することができ、優れた施工性を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の構成は、窯業系サイディング、セラミック系サイディング、金属系サイディング、ALC板などの板状の外壁材を接合させる接合構造において、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 外壁材
1a 縦端面
1b 裏面
2 外壁材
2a 縦端面
2b 裏面
4 柱
5 防水シート
6 接合用役物
11a 縦溝部
11b 縦溝部
13a シール面
13b シール面
15 通気空間
20 出隅部
30 入隅部
61 固定板部
62 縦板部
62a 第一の止水部
62b 第一の止水部
63 外側縦板部
64 外側縦板部
65a 第二の止水部
65b 第二の止水部
66 外側縦板部
73 パッキン材
74 パッキン材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの外壁材を直交に配置しつつ、二つの外壁材の縦端面を隣接させて出隅部を形成するための、外壁材の接合構造であって、
前記各外壁材の縦端面は、柱などの下地材に固定される接合用役物を介して接合されるものであって、
前記接合用役物には、
前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ対向する第一の止水部と、
前記各裏面と前記第一の止水部の間から浸入した水を排水し得る縦方向の縦溝部と、
が形成される、外壁材の接合構造。
【請求項2】
二つの外壁材を直交に配置しつつ、二つの外壁材の縦端面を隣接させて入隅部を形成するための、外壁材の接合構造であって、
前記各外壁材の縦端面は、柱などの下地材に固定される接合用役物を介して接合されるものであって、
前記接合用役物には、
前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ対向する第一の止水部と、
前記各裏面と前記第一の止水部の間から浸入した水を排水し得る縦方向の縦溝部と、
が形成される、外壁材の接合構造。
【請求項3】
前記接合用役物には、前記縦溝部の内側から前記外壁材の裏面への水の浸入を防ぐための第二の止水部であって、前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ対向する第二の止水部が形成される、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の外壁材の接合構造。
【請求項4】
前記各外壁材の各縦端面と接合用役物の間には、それぞれ、パッキン材が挟装される、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の外壁材の接合構造。
【請求項5】
前記接合用役物における外壁材と防水シートの間の部位の室内外方向の奥行き寸法は、外壁材と防水シートの間に形設される通気空間の室内外方向の奥行き寸法と略同一に設定される、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の外壁材の接合構造。
【請求項6】
二つの外壁材を直交に配置しつつ、二つの外壁材の縦端面を隣接させて出隅部を形成するために用いる接合用役物であって、
前記接合用役物には、前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ対向する第一の止水部と、
前記各裏面と前記第一の止水部の間から浸入した水を排水し得る縦方向の縦溝部と、
が形成される、接合用役物。
【請求項7】
二つの外壁材を直交に配置しつつ、二つの外壁材の縦端面を隣接させて入隅部を形成するために用いる接合用役物であって、
前記接合用役物には、
前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ対向する第一の止水部と、
前記各裏面と前記第一の止水部の間から浸入した水を排水し得る縦方向の縦溝部と、
が形成される、接合用役物。
【請求項8】
前記接合用役物には、前記縦溝部の内側から前記外壁材の裏面への水の浸入を防ぐための第二の止水部であって、前記各外壁材の各裏面に対してそれぞれ対向する第二の止水部が形成される、
ことを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の接合用役物。
【請求項9】
前記各外壁材の各縦端面と接合用役物の間には、それぞれ、パッキン材が挟装される、
ことを特徴とする、請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の接合用役物。
【請求項10】
前記接合用役物における外壁材と防水シートの間の部位の室内外方向の奥行き寸法は、外壁材と防水シートの間に形設される通気空間の室内外方向の奥行き寸法と略同一に設定される、
ことを特徴とする、請求項6乃至請求項9のいずれか一項に記載の接合用役物。
【請求項11】
請求項6乃至請求項10のいずれか一項に記載の接合用役物を用い、二つの外壁材の段差加工の無い縦端面を接合用役物を介して接合することで、出隅部、又は、入隅部を形成する、外壁の隅部工法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−106258(P2011−106258A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186115(P2010−186115)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(305003542)旭トステム外装株式会社 (38)
【Fターム(参考)】