説明

外壁構造材

【課題】耐久性に優れるとともに、窯業系サイディングボードの反りの問題も解消することができる外壁構造材を提供することを目的としている。
【解決手段】窯業系サイディングボードと、鋼板とが接着剤を用いて接着されてなる外壁構造材であって、前記接着剤が、接着剤の硬化後の伸び率がJIS K6251準拠の3号ダンベルで50〜1000%であり、かつ、接着剤の硬化後のJIS K6253タイプAデュロメータで測定したゴム硬度が20〜60となる変成シリコーン系樹脂接着剤であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窯業系サイディングボードと、鋼板とが接着された外壁構造材に関する。
【背景技術】
【0002】
窯業系サイディングボードに、鋼板が裏打ち材として全面あるいは周縁部に沿って枠状に接着された外壁構造材がすでに提案されている(特許文献1参照)。
このような外壁構造材の場合、窯業系サイディングボードと鋼板とは、主に接着剤を用いて接着され、ビスや釘を用いた物理接着も併用されている。
【0003】
従来、上記接着剤としては、ウレタン系接着剤が用いられているが、ウレタン系接着剤の場合、弾性率が高い為、夏場に窯業系サイディングボードが反ってしまったり、輸送中に剥がれたりするという問題が発生している。また、最近では、耐久性を重視して、鋼板として、亜鉛めっき鋼板やアルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(商品名ガルバリウム鋼板、ガルバニウム鋼板)が使われているが、ウレタン系接着剤は、これらの亜鉛系めっき鋼板との接着性に問題があり、外壁構造材の耐久性が確保できない等の課題も発生している。
【0004】
そこで、本発明の発明者は、従来のウレタン系接着剤に代えて、耐久性の良好な弾性接着剤組成物として先に提案されている(1)分子量分布が1.5以下の反応性ケイ素含有ポリオキシアルキレン重合体と(2)分子中に少なくとも1個の窒素原子を含有する加水分解性シリコーン化合物を必須成分とする接着剤組成物(特許文献2参照)を用いれば、上記問題が解決できるのではないかと考えた。
しかしながら、上記接着剤組成物の場合、外壁構造材の耐久性を確保するという点で十分なものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−52477号公報
【特許文献2】特開平5−70759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて、耐久性に優れるとともに、窯業系サイディングボードの反りの問題も解消することができる外壁構造材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の外壁構造材(以下、「請求項1の外壁構造材」と記す)は、窯業系サイディングボードと、鋼板とが接着剤を用いて接着されてなる外壁構造材であって、前記接着剤が、接着剤の硬化後の伸び率がJIS K6251準拠の3号ダンベルで50〜1000%であり、かつ、接着剤の硬化後のJIS K6253タイプAデュロメータで測定したゴム硬度が20〜60となる変成シリコーン系樹脂接着剤であることを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項2に記載の外壁構造材(以下、「請求項2の外壁構造材」と記す)は、請求項1の外壁構造材において、鋼板が亜鉛めっき鋼板またはアルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板であることを特徴としている。
本発明の請求項3に記載の外壁構造材(以下、「請求項3の外壁構造材」と記す)は、請求項1または請求項2の外壁構造材において、接着剤が、シリル基含有ポリアルキレンオキサイドと、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体とを主成分として含むことを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項4に記載の外壁構造材(以下、「請求項4の外壁構造材」と記す)は、請求項3の外壁構造材において、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体が、1分子あたり0.7〜4個のシリル基を含み、重量平均分子量が2000〜50000であることを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項5に記載の外壁構造材(以下、「請求項5の外壁構造材」と記す)は、請求項1〜請求項4のいずれかの外壁構造材において、窯業系サイディングボードと、鋼板とが、接着剤と、ビスまたは釘とを用いて接着されていることを特徴としている。
【0011】
本発明において、窯業系サイディングボードとは、主原料としてセメント質原料および繊維質原料等を用いて板状に成形し、養生・硬化させたものである。
【0012】
セメント質原料としては、例えば、セメント、石灰質原料、ケイ酸質原料、スラグ、石膏等が挙げられる。
繊維質原料としては、例えば、ガラス繊維、ロックウール、金属繊維等の無機質繊維、パルプ、木繊維、木片、ポリエチレン、ビニロン、ポリプロピレン等の有機質繊維が挙げられる。
【0013】
また、必要に応じて、パーライト、シラスバルーン、ゼオライト、バーミキュライト、炭酸カルシウム、スチレンビーズ等の粒状有機発砲体、着色材料、その他の充填材も添加されることがある。
【0014】
このような窯業系サイディングボードの具体例としては、例えば、硬質木片セメント板、木繊維混入セメント・ケイ酸カルシウム板、繊維混入セメントパーライト板、繊維混入パーライトセメント板、繊維混入スラグセメント板、スラグセメントパーライト板、繊維混入フライアッシュスラグセメント板、スラグ石膏セメント板、繊維混入ケイ酸カルシウム板、繊維ケイ酸カルシウム板押出し成形板、パルプ混入軽量セメント押し出し成形板、繊維混入軽量成形板、セメント押し出し成形板などが挙げられ、積水化学工業社製のシンセライト等市販のものを用いることができる。
【0015】
鋼板としては、特に限定されないが、例えば、耐食性等、より耐久性を求めるためには、請求項2の外壁構造材のように、亜鉛めっき鋼板またはアルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板を用いることが好ましい。
また、鋼板は、特に限定されないが、例えば、窯業系サイディングボードの周囲を枠状に囲んだ状態で窯業系サイディングボードに接着される場合、窯業系サイディングボードの裏打ち材として、窯業系サイディングボードの背面を覆うように接着される場合、窯業系サイディングボードの表面化粧材として、窯業系サイディングボードの前面を覆うように接着される場合等がある。
【0016】
本発明の外壁構造材に用いられる変成シリコーン系樹脂接着剤は、接着剤の硬化後の伸び率がJIS K6251準拠の3号ダンベルで50〜1000%であり、かつ、接着剤の硬化後のJIS K6253タイプAデュロメータで測定したゴム硬度が20〜60となるものに限定されるが、その理由は、伸び率が50%未満では、反り改善効果が見られず、1000%より大きいと耐久性が損なわれ、ゴム硬度が20未満では、耐久性が損なわれ、60より大きいと輸送中に窯業系サイディングボードの剥がれ等の問題が起きやすくなるためである。
【0017】
上記変成シリコーン系樹脂接着剤としては、上記伸び率およびゴム硬度を満足するものであれば、特に限定されないが、請求項3の外壁構造材のように、シリル基含有ポリアルキレンオキサイドと、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体とを主成分として含むものを用いることが好ましい。
【0018】
上記シリル基含有ポリアルキレンオキサイドとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド等を主鎖に含むものが挙げられ、硬化後の伸びがよく、粘性的に取り扱いしやすいという点で、ポリプロピレンオキサイドを主鎖として含むものが好適である。
また、シリル基含有ポリアルキレンオキサイドを構成するシリル基は、加水分解性基が珪素原子に結合した基である。
【0019】
珪素原子に結合した加水分解性基としては、例えば、水素、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシド基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシド基などが挙げられ、反応後に有害な副生成物を生成しないので、アルコキシ基が好適である。
【0020】
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等を挙げることができる。これらの内、メトキシ基、エトキシ基等が好適である。
【0021】
アルコキシ基が珪素原子に結合した上記アルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基等のジアルコキシシリル基;メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基等のモノアルコキシシリル基を挙げることができる。シリル基含有ポリアルキレンオキサイドは、これらのアルコキシシリル基を単独または2種以上有していてもよい。
【0022】
さらに、上記シリル基含有ポリアルキレンオキサイドは、上記シリル基を1分子あたり少なくとも平均1個有することが好ましい。
上記シリル基含有ポリアルキレンオキサイドは、重量平均分子量が、4000〜50000のものが好ましく、10000〜40000のものがより好ましい。すなわち、重量平均分子量が、4000未満の場合、硬化後の硬化体の伸び率が充分でなくなり、弾性機能が低下し、50000を超えると、粘度が高すぎて、配合工程での作業性が低下する虞がある。また、シリル基含有ポリアルキレンオキサイドの分子量分布(Mw/Mn)としては、1.6以下のものが作業性と伸びとのバランスに優れているため好ましい。
【0023】
上記のようなシリル基含有ポリアルキレンオキサイドとしては、例えばカネカ社製の商品名MSポリマーS−203、S−303、サイリルポリマーSAT−200、SAT−350、SAT−400、旭硝子社製の商品名エクセスターESS−3620、ESS−2420、ESS2410、ESS3430等の市販のものを使用することができる。
【0024】
上記シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体は、主鎖が本質的に(メタ)アクリル酸エステル重合体で形成されていれば、特に限定されないが、請求項4の外壁構造材のように、1分子あたり0.7〜4個のシリル基を含み、重量平均分子量が2000〜50000であるものが好ましい。すなわち、重量平均分子量が2000より少ないと、硬化体が脆くなり、50000より大きいと、接着付与効果が少なくなる虞があり、シリル基の数が、0.7個より少ないと接着付与効果が少なくなり、4個より多いと硬化物が脆くなる虞がある。
【0025】
上記シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の主鎖部分を形成するアクリル酸エステルモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシプロピルフタル酸等や、以下に示す化合物1〜20の(メタ)アクリル酸エステルモノマー等を挙げることができる。
【0026】
[化合物1]
CH2=CH−C(O)O−CH2CH2O−[C(O)CH2CH2CH2CH2CH2O]n−H
(n=1〜10)
[化合物2]
CH2=C(CH3)−C(O)O−CH2CH2O−[C(O)CH2CH2CH2CH2CH2O]n−H
(n=1〜10)
[化合物3]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−H
(n=1〜12)
[化合物4]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−H
(n=1〜12)
[化合物5]
CH2=CH−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−H
(n=1〜12)
[化合物6]
CH2=C(CH3)−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−H
(n=1〜12)
[化合物7]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−[CH2CH(CH3)O]m−H
(m,n=1〜12)
[化合物8]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−[CH2CH(CH3)O]m−H
(m,n=1〜12)
[化合物9]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−(CH2CH2CH2CH2O)m
(m,n=1〜12)
[化合物10]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−(CH2CH2CH2CH2O)m
(m,n=1〜12)
[化合物11]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−CH3
(n=1〜10)
[化合物12]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−CH3
(n=1〜30)
[化合物13]
CH2=CH−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−CH3
(n=1〜10)
[化合物14]
CH2=C(CH3)−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−CH3
(n=1〜10)
[化合物15]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−[CH2CH(CH3)O]m−H
(m,n=1〜10)
[化合物16]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−[CH2CH(CH3)O]m−H
(m,n=1〜10)
[化合物17]
CH2=CH−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−C(O)−CH=CH2
(n=1〜20)
[化合物18]
CH2=C(CH3)−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−C(O)−C(CH3)=CH2
(n=1〜20)
[化合物19]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−C(O)−CH=CH2
(n=1〜20)
[化合物20]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−C(O)−C(CH3)=CH2
(n=1〜20)
【0027】
また、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体は、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーを単独重合、あるいは2種以上の(メタ)アクリル酸エステルモノマーあるいはその他の重合性モノマーと共重合させることによって得られるが、共重合体とする場合、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの内、メチルメタアクリレートを含むこと好ましく、メチルメタアクリレートとブチルアクリレートとを含むことがより好ましい。
すなわち、共重合体成分として、メチルメタアクリレートを含むと、例えば、ポリエステル被覆鋼板のようなプラスチック材料に対しても密着性が良好になる。
【0028】
また、上記シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体を形成する他の重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体;例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニル等のビニルエステル基を持つ化合物;無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4−ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテル等のビニロキシ基を持つ化合物を挙げることができる。
【0029】
上記シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法等の各種重合法を用いることができる。モノマーの重合性に応じて適宜の上記重合法を選択すればよい。
【0030】
上記シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体のシリル基としては、上記シリル基含有ポリアルキレンオキサイドと同様のシリル基が挙げられる。
【0031】
また、シリル基の導入法としては、特に限定されないが、例えば、シリル基を持つ開始剤による重合を開始する方法、シリル基を持つ連鎖移動剤を用いる方法、シリル基を持つ共重合性モノマーを用いる方法等の重合と同時にシリル基を導入する方法(例えば、特開昭54−123192号公報、特開昭57−179210号公報、特開昭59−78220号公報、特開昭60−23405号公報)や、アルケニル基を持った(メタ)アクリル酸エステル重合体を合成し、その後、ヒドロシリル化によってアルコキシシリル基を導入する方法(例えば、特開昭54−40893号公報、特開平11−80571号公報)等の公知の方法が挙げられる。
【0032】
本発明の外壁構造材に用いられる接着剤中には、必要に応じて、1分子中にアミノ基及びアルコキシシリル基を有する化合物、シラノール縮合触媒、脱水剤、各種の充填材、タレ防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、溶剤、香料等を配合することができる。
【0033】
上記1分子中にアミノ基及びアルコキシシリル基を有する化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。これらは、単独または2種以上を併用して使用できる。
【0034】
上記シラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレートビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル酸オキサイド等の錫化合物、アルコキシシリル基を有する錫化合物(例えば、日東化成社製U−303、U−700)、テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物、ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等のアミン類や、他の酸性触媒及び塩基性触媒が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を併用することができる。
【0035】
上記脱水剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のシラン化合物類、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等の加水分解性エステル化合物類が挙げられ、これらは単独または2種以上を併用して使用することができる。
【0036】
上記充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、シリカ、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、ガラスバルーン等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を併用することができる。
【0037】
上記タレ防止剤としては、例えば、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカ等が挙げられる。
【0038】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート等のヒンダートアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0039】
また、本発明の外壁構造材は、上記接着剤による接着に加えて、請求項5の外壁構造材のように、ビスまたは釘による接着を併用するようにしても構わない。
【発明の効果】
【0040】
本発明にかかる外壁構造材は、以上のように、窯業系サイディングボードと、鋼板とが接着剤を用いて接着されてなる外壁構造材であって、前記接着剤が、接着剤の硬化後の伸び率がJIS K6251準拠の3号ダンベルで50〜1000%であり、かつ、接着剤の硬化後のJIS K6253タイプAデュロメータで測定したゴム硬度が20〜60となる変成シリコーン系樹脂接着剤であるので、耐久性に優れるとともに、窯業系サイディングボードの反りの問題も解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明の具体的な実施例をその比較例と対比させて詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体として、主鎖部分がブチルアクリレートと、メチルメタクリレートとの共重合体からなり、シリル基としてトリメトキシシリル基が1分子あたり1.7個で、重量平均分子量が4000である重合体Xを用意した。
この重合体X10重量部と、シリル基含有ポリアルキレンオキサイド(カネカ社製MSポリマーS−303)100重量部と、充填材としてのコロイダル炭酸カルシウム(平均粒径0.07μm)150重量部と、ヒンダート系光安定剤としてのビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(三共社製商品名サノールLS770)1重量部と、紫外線吸収剤としてのベンゾトリアゾール(チバスペシャリティケミカルズ社製商品名チヌビン327)1重量部と、充填材としての二酸化チタン(石原産業社製商品名CR97)20重量部と、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製)4重量部と、3−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製)4重量部と、シラノール縮合触媒(日東化成社製ジブチル錫系シラノール縮合触媒、商品名ネオスタンU−700)2重量部と、可塑剤(東亜合成社製アクリル可塑剤、商品名エクセノール3020)40重量部とを外部から湿気が入らないように密封された混合攪拌機を用いて減圧下で均一に混合して変成シリコーン樹脂系接着剤(以下、「接着剤1」と記す)を得た。
【0043】
図1に示すように、窯業系サイディングボード(積水化学工業社製商品名シンセライト、縦150mm、横300mm、厚さ12mm)1と、枠状にしたアルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(枠幅25mm、厚さ3mm)2とを接着剤1を用いて貼り合わせ、23℃、湿度50%の雰囲気中で2週間養生して外壁構造材サンプル3を得た。なお、接着剤層の厚さは0.3mmとなるようにした。
【0044】
(実施例2)
重合体Xの配合割合を20重量部とした以外は、実施例1と同様にして変成シリコーン樹脂系接着剤(以下、「接着剤2」と記す)を得た。
そして、実施例1と同様にして外壁構造材サンプル3を得た。
【0045】
(実施例3)
可塑剤を添加せず、コロイダル炭酸カルシウムの配合割合を100重量部とするとともに、充填材としてタルク(平均粒径8μm)10重量部をさらに加えた以外は、実施例1と同様にして変成シリコーン樹脂系接着剤(以下、「接着剤3」と記す)を得た。
そして、実施例1と同様にして外壁構造材サンプル3を得た。
【0046】
(実施例4)
シリル基含有ポリアルキレンオキサイド(カネカ社製MSポリマーS−303)に代えて、シリル基含有ポリアルキレンオキサイド(カネカ社製MSポリマーS−203)を用いるとともに、可塑剤の配合割合を50重量部とした以外は、実施例1と同様にして変成シリコーン樹脂系接着剤(以下、「接着剤4」と記す)を得た。
そして、実施例1と同様にして外壁構造材サンプル3を得た。
【0047】
(比較例1)
重合体Xを配合せず、シリル基含有ポリアルキレンオキサイド(カネカ社製MSポリマーS−303)に代えて、シリル基含有ポリアルキレンオキサイド(カネカ社製MSポリマーS−203)を用いるとともに、可塑剤の配合割合を60重量部とした以外は、実施例1と同様にして変成シリコーン樹脂系接着剤(以下、「接着剤5」と記す)を得た。
そして、実施例1と同様にして外壁構造材サンプル3を得た。
【0048】
(比較例2)
重合体Xおよび可塑剤を配合せず、コロイダル炭酸カルシウムの配合割合を50重量部とするとともに、充填材としてタルク(平均粒径8μm)50重量部をさらに加えた以外は、実施例1と同様にして変成シリコーン樹脂系接着剤(以下、「接着剤6」と記す)を得た。
そして、実施例1と同様にして外壁構造材サンプル3を得た。
【0049】
(比較例3)
重合体Xを配合せず、シリル基含有ポリアルキレンオキサイド(カネカ社製MSポリマーS−303)に代えて、シリル基含有ポリアルキレンオキサイド(カネカ社製MSポリマーS−203)を用いるとともに、可塑剤の配合割合を50重量部とした以外は、実施例1と同様にして変成シリコーン樹脂系接着剤(以下、「接着剤7」と記す)を得た。
そして、実施例1と同様にして外壁構造材サンプル3を得た。
【0050】
(比較例4)
接着剤として積水フーラー社製ウレタン系接着剤商品名エスダイン552(以下、「接着剤8」と記す)を用いた以外は、実施例1と同様にして外壁構造材サンプル3を得た。
【0051】
上記実施例1〜4および比較例1〜4で得られた外壁構造材サンプル3の養生後の硬化体のゴム硬度、伸び率および外壁構造材サンプル3を80℃で24時間加熱したのちの、窯業系サイディングボード1の反りを調べ、接着剤組成とともに表1に示した。
【0052】
なお、ゴム硬度については、接着剤を厚さ3mmになるように塗布し、23℃湿度50%で1ヶ月養生後、タイプAデュロメータを用いて23℃湿度50%下で測定した。
伸び率については、接着剤を厚さ3mmになるように塗布し、23℃湿度50%で1ヶ月養生後、JIS K6251準拠の3号ダンベルに切り出し、23℃湿度50%の条件下で500mm/分の速度で引っ張り、亀裂が入ったときの標線間距離を読み取り、初期に対する変化率を伸び率とした。
反りについては、図2(a)に示すように、窯業系サイディングボード1をX方向およびY方向から見たときの、図2(b)に示す反り幅Zの最大値が5mm以下の場合を○、反り幅Zの最大値が5mmを超える場合を×とした。
【0053】
【表1】

【0054】
また、図3に示すように、上記実施例および比較例で使用した窯業系サイディングボードを30mm角に裁断した試験片4と、上記実施例および比較例で使用したアルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板を30mm角に裁断した試験片5とを、それぞれ上記接着剤1〜4を用いて重なり幅15mmで貼り合わせ、23℃、湿度50%の雰囲気中で2週間養生したのち、引っ張り試験機にセットし、図3に示す矢印方向に引っ張り速度5mm/分で引っ張り、接着強度を調べ、その結果を表2に示した。
【0055】
【表2】

【0056】
上記表1および表2から、本発明のように、接着剤の硬化後の伸び率がJIS K6251準拠の3号ダンベルで50〜1000%であり、かつ、接着剤の硬化後のJIS K6253タイプAデュロメータで測定したゴム硬度が20〜60となる変成シリコーン系樹脂接着剤を用いて窯業系サイディングボードと鋼板とを接着することによって得られる外壁構造材は、耐久性に優れるとともに、窯業系サイディングボードの反りの問題も解消できることがよくわかる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例および比較例で作製した外壁構造材サンプルの平面図である。
【図2】反りの測定方法を説明する説明図である。
【図3】引っ張り試験を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 窯業系サイディングボード
2 アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板
3 外壁構造材サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窯業系サイディングボードと、鋼板とが接着剤を用いて接着されてなる外壁構造材であって、
前記接着剤が、接着剤の硬化後の伸び率がJIS K6251準拠の3号ダンベルで50〜1000%であり、かつ、接着剤の硬化後のJIS K6253タイプAデュロメータで測定したゴム硬度が20〜60となる変成シリコーン系樹脂接着剤であることを特徴とする外壁構造材。
【請求項2】
鋼板が亜鉛めっき鋼板またはアルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板である請求項1に記載の外壁構造材。
【請求項3】
接着剤が、シリル基含有ポリアルキレンオキサイドと、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体とを主成分として含む請求項1または請求項2に記載の外壁構造材。
【請求項4】
シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体が、1分子あたり0.7〜4個のシリル基を含み、重量平均分子量が2000〜50000である請求項3に記載の外壁構造材。
【請求項5】
窯業系サイディングボードと、鋼板とが、接着剤と、ビスまたは釘とを用いて接着されている請求項1〜請求項4のいずれかに記載の外壁構造材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−162212(P2007−162212A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355629(P2005−355629)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(305044143)積水フーラー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】