説明

外壁補修構造体及びその製法

【課題】 乾燥により肉やせすることが抑制され、ネット目がみえず、かつ、乾燥による亀裂が発生せず、高い伸び率を有する外壁の補修構造体を提供する。
【解決手段】 躯体外壁面にプライマーを介して形成されたアクリルゴム系の第1主材層と、該第1主材層の上に形成されたネットと、該ネットの上から打ち込まれたアンカーピンと、該ネットの上面に形成されたアクリルゴム系の第2主材層とを有する外壁補修構造体において、アクリルゴム系の第1主材層及び第2主材層のうち少なくとも一層に、アクリル系樹脂を10〜50質量部、平均粒子径が40μm以上の無機質中空粒子と、該中空粒子以外の無機質充填剤を含有し、かつ、層の比重を0.8〜1.5とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外壁の補修構造体に関し、特に、鉄筋コンクリート系建築物の外壁改修工事の際、既存の外壁の塗り仕上げ層、タイル仕上げ層やモルタル仕上げ層を存置したまま改修層を形成する補修構造体に関するものである。特に、塗布後の膜が、乾燥により肉やせすることが抑制され、ネット目が見えず、美観を向上させ、かつ、乾燥による亀裂が発生せず、高い伸び率を有する防水塗膜となる、外壁補修構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に建築物の外壁面はコンクリート等の躯体の伸縮による歪や地震等による振動により老朽化し、劣化するのを避けがたい。このため亀裂や損傷を生じ、そのまま放置しておくと壁面の内部に雨水が侵入して、損傷が徐々に広がりタイルやコンクリートの剥離等を起こすことがある。かかる事態を放置しておくのは、特に高層のビルなどでは極めて危険である。
【0003】
従来、ピンネット工法とよばれる外壁剥落防止工法が実用化されてはいるが、該工法は工数がかかるという難点がある。
【0004】
この難点を克服すべく特許文献1には、躯体外壁面にプライマーを介して形成されたアクリルゴム系の第1主材層と、該第1主材層の上に形成されたネットと、該ネットの上から打ち込まれたアンカーピンと、該ネットの上面に形成されたアクリルゴム系の第2主材層とを有する外壁補修構造体が開示されている。かかる外壁補修構造体によれば、防水性や耐久性に優れる外壁に回復できるだけでなく、年月を経て傷んだ外壁改修の工数を大幅に短縮できるとされている。
【特許文献1】特開2004−183261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、アクリルゴム系塗膜防水材は、液比重が高いため、塗布後の膜が、乾燥により肉やせして窪みを生じやすく、施工後、ネット目が見えて、美観を損ないやすいという問題があった。これを、ネット目が見えないように平坦な施工面に仕上げるためには、何度も塗り重ねたり、厚塗りをしたりするため、施工工程が長くなり、施工日数が長く、施工コストも上昇しがちであった。
【0006】
従って、乾燥により肉やせすることが抑制され、ネット目が見えず、かつ、乾燥による亀裂が発生せず、加えて高い伸び率を有する外壁の補修構造体が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、無機充填剤として、大き目の中空粒子をそれ以外の無機質充填剤と併用し、比重を特定値以下とした水性エマルジョン系防水塗料組成物を塗布して形成される膜を積層することにより、上記課題が解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち第一の本発明は、躯体外壁面にプライマーを介して形成されたアクリルゴム系の第1主材層と、該第1主材層の上に形成されたネットと、該ネットの上から打ち込まれたアンカーピンと、該ネットの上面に形成されたアクリルゴム系の第2主材層とを有する外壁補修構造体であって、アクリルゴム系の第1主材層及び第2主材層のうち少なくとも一層が、アクリル系樹脂を10〜50質量部、平均粒子径が40〜200μmの無機質中空粒子と、該中空粒子以外の無機質充填剤が含有されており、かつ、層の比重が0.8〜1.5であることを特徴とする外壁補修構造体に存する。ここに「平均粒子径」とは、重量累積粒度分布の50%径により測定した平均粒径をいうものとする(以下同様)。
【0009】
上記外壁補修構造体において、無機質充填剤成分全量を基準として、無機質充填剤成分のうち、平均粒子径が40〜200μmの中空粒子が0.5〜5.0質量%、中空粒子以外の無機質充填剤が95.0〜99.5質量%であることが好ましい。
【0010】
また、上記外壁補修構造体において、中空粒子の真比重が、0.05〜0.2であることがこのましい。
【0011】
さらに第二の本発明は、躯体外壁面に下地処理をした後、プライマー層を形成する工程と、該プライマー層の表面にアクリルゴム系の第1主材層を形成する工程と、該第1主材層の上にネットを配設する工程と、該ネットの上からアンカーピンを打設する工程と、該ネットの上面にアクリルゴム系の第2の主材層を形成する工程と、を含む外壁補修構造体の製法であって、アクリルゴム系の第1主材層を形成する工程、及び第2主材層を形成する工程の少なくとも一方が、アクリル系樹脂を固形分として30〜70質量部、無機質充填剤成分が30〜70質量部分散されてなり、無機質充填剤成分として、平均粒子径が40〜200μmの中空粒子と、中空粒子以外の無機質充填剤とを含有し、比重が0.7〜1.2である水性エマルジョン系防水塗料組成物を塗布、乾燥して形成する工程であることを特徴とする外壁補修構造体の製法に存するのである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の外壁補修構造体によれば、特に、塗布後の膜が、乾燥により肉やせすることが抑制され、ネット目が見えず、美観を向上させ、かつ、乾燥による亀裂が発生せず、高い伸び率を有する防水塗膜となるため、外壁補修構造体として極めて工業的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の外壁補修構造体の製法は、
(1)躯体外壁面に下地処理する工程
(2)プライマー層を形成する工程
(3)プライマー層の表面にアクリルゴム系の第1主材層を形成する工程
(4)第1主材層の上にネットを配設する工程
(5)ネットの上からアンカーピンを打設する工程
(6)ネットの上面にアクリルゴム系の第2の主材層を形成する工程
と、を含む外壁補修構造体の製法である。
【0014】
そして、アクリルゴム系の第1主材層を形成する工程、及び第2主材層を形成する工程の少なくとも一方が、特定の組成を備えた水性エマルジョン系防水塗料組成物を塗布、乾燥して形成されるものであることを特徴とする。
【0015】
また、上記水性エマルジョン系防水塗料組成物は、アクリル系樹脂を固形分として30〜70質量部、無機質充填剤成分が30〜70質量部分散されてなり、無機質充填剤成分として、平均粒子径が40〜200μmの中空粒子と、中空粒子以外の無機質充填剤とを含有し、比重が0.7〜1.2であることを特徴とするものである。
【0016】
以下にまず、図1及び図2を参照しつつ、本発明の外壁補修構造体の製法について説明し、その後、本発明の特徴的部分である水性エマルジョン系防水塗料組成物について詳しく説明するものとする。なお、以下において「水性エマルジョン系防水塗料組成物」というときは、塗布、乾燥によって本発明の外壁補修構造体の第1主材層、及び/又は第2主材層を形成する塗料組成物をいうものとする。
【0017】
<外壁補修構造体の製法>
図1は本発明にかかる外壁補修構造体の一実施例を示す概略断面図であり、図2はその製造工程の流れ図である。下地処理工程(工程20)においては、下地の劣化状態に合わせた処理を施す。例えば0.2mm以上のひび割れがあるときにはエポキシ樹脂を注入し、欠損部分にはポリマーセメントモルタルを充填する。また既存の躯体がタイル仕上げまたは不陸の大きいモルタル塗り仕上げの場合には、不陸調整として例えばポリマーセメントペーストを塗布し平滑に仕上げる。
【0018】
次に既存の躯体10の表面に形成された既存仕上げ層9の上にプライマーを塗布してプライマー層2を形成する(工程21)。プライマーとしてはアクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリルシリコーン系が用いられる。通常は水性のプライマーを使用し、塗布した後1時間以上乾燥させる。この後、水性エマルジョン系防水塗料組成物を塗布、乾燥してアクリルゴム系第1主材層3を形成する(工程22)。ここでは、水性エマルジョン系防水塗料組成物を例えば1m当り0.3〜1.0kgを用いて塗布する。
【0019】
工程22の後、アクリルゴム系第1主材層3の上に、例えばビニロン製のネット4を張り付ける(工程23)。ネット4の材料としてはビニロンの他にポリプロビレン、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエステル等を使用することができる。このネット4は例えば15mm×15mmのメッシュ状に形成した2軸網目のものでよい。形状としては単繊維あるいは複合繊維からなる織物、編物若しくは不織布で、2軸網目の他に3軸網目、4軸網目あるいは立体網目のものでもよい。
【0020】
上記のネット4を張り付けた後、その上からアンカーピン7を打設する(工程24)。アンカーピン7の材料としては通常、ステンレス鋼が用いられ、1m当り例えば4本の割合で打込まれる。アンカーピン7の頭部をアクリルゴムのこて塗りにより隠蔽し、3時間以上乾燥させた後、再度水性エマルジョン系防水塗料組成物を塗布、乾燥してアクリルゴム系第2主材層5を形成する(工程25)。この工程25では例えば水性エマルジョン系防水塗料組成物を1.5〜6.0kg/m程度塗布し、その後12時間程度乾燥させる。最後に水性アクリル系上塗り材を塗布して(工程26)トップコート層6を形成する。トップコートとしてはウレタン樹脂系、フッ素樹脂系でもよい。通常0.2〜0.3kg/mを使用して、1回塗布した後に同じ程度の量を使用して2回目の塗布を行う。
【0021】
<水性エマルジョン系防水塗料組成物>
本発明における水性エマルジョン系防水塗料組成物は、アクリル系樹脂を固形分として30〜70質量部、無機質充填剤成分が30〜70質量部分散されてなり、無機質充填剤成分として、平均粒子径が40〜200μmの中空粒子と、中空粒子以外の無機質充填剤とが含有されている。
【0022】
以下、水性エマルジョン系防水塗料組成物を構成する各成分に分けて説明する。
【0023】
(アクリル系樹脂)
水性エマルジョン系防水塗料組成物を構成する塗膜成分はアクリル系樹脂を含む。このアクリル系樹脂はアクリル酸エステル類を主成分とするアクリル系共重合体である。アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アクリル酸エステル類は、上に例示したものに限定されるものではなく、1種でも2種類以上の混合物であってもよい。
【0024】
上記アクリル酸エステル類と共重合可能な化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ブチルスチレン、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、イソブチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、マレイン酸、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、無水マレイン酸、フマール酸、フマール酸エチル、フマール酸ブチル、イタコン酸、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクロレインなどが挙げられる。共重合可能な化合物は、上に例示したものに限定されるものではなく、1種でも2種類以上の混合物であってもよい。
【0025】
(無機充填材)
水性エマルジョン系防水塗料組成物には、無機質充填剤成分として、平均粒子径が40〜200μmの中空粒子と、中空粒子以外の無機質充填剤とが含有されている。
【0026】
(1)中空粒子
水性エマルジョン系防水塗料組成物に配合される中空粒子は、40〜200μmの平均粒子径を有する。平均粒子系は好ましくは55〜100μmである。中空粒子の平均粒子径をかかる範囲に保持することにより、塗料組成物の生産時にシェアに強く、また出来上がった塗料組成物製品の施工性が良好なものとなる。中空粒子の平均粒子径が大きすぎると、製品の外観不良や物性低下を招きやすい。中空粒子の平均粒子径が小さすぎると、塗料組成物中への添加料を多くせねばならず、その結果、真比重の上昇を招き、製品コストも上昇する。
【0027】
水性エマルジョン系防水塗料組成物に配合される中空粒子の真比重は0.05〜0.2であることが好ましい。さらに好ましくは、0.1〜0.2である。ここに「真比重」とは、中空体粒子として観念される中空の球体の質量に対する該球体の体積の比である。従って、粒子間に空隙を有する多数の中空粒子の集合体である粉体の「見かけ比重」とは異なるものである。
【0028】
中空体粒子の真比重が小さすぎると外観不良、物性低下という不都合が生じる。一方、中空体粒子の真比重が大きすぎると、添加量を多くせねばならず、価格が高くなるという不都合が生じるので好ましくない。
【0029】
中空体粒子の外殻を構成する材料は、本発明において特に限定されないが、樹脂、ガラス、シラス、セラミックス、ヒル石等を単独で、あるいはこれらのうち複数を組み合わせて好適に使用することができる。中空体粒子は市中において、例えば、日本フェライト社製の「樹脂バルーン」、3M社製の「シラスバルーン」として入手することが可能である。
【0030】
(2)他の無機充填材
中空粒子以外の無機質充填剤とは、中空部分を有しない、中実の無機質充填剤をさす。中空か中実かは顕微鏡等で粒子を観察することで確認できる。具体的には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、タルク、クレー、珪藻土、ゼオライト、マイカ、酸化チタンが挙げられる。なお、他の無機質充填剤として上記した特許文献1にあるセピオライトを単独で、あるいは上記各成分とともに使用してもよい。
【0031】
他の無機充填材の平均粒子径は、40μm以下、好ましくは20μm以下である。この平均粒子径が大きすぎると、チクソトロピー性に優れた塗料組成物が得られない。一方平均粒子径が小さすぎると、強度に優れた塗料組成物を得ることができない。
【0032】
(3)中空粒子と他の無機充填材との比率
水性エマルジョン系防水塗料組成物において、無機質充填剤成分全量を基準として、中空粒子が0.5〜5質量%、中空粒子以外の無機質充填剤が95〜99.5質量%、好ましくは、中空粒子が1.0〜3.0質量%、中空粒子以外の無機質充填剤が97〜99質量%、含まれることが好ましい。中空粒子の比率が上記範囲より高い場合、製品のコストが上昇し、塗料としての施工性が低下する。一方、比率が上記範囲より低いと製品比重が上昇して、塗料を塗布した後の肉やせの傾向が大きくなる。
【0033】
(他の任意成分)
水性エマルジョン系防水塗料組成物は、上記のアクリル系樹脂及び、中空粒子を含む無機充填材の2成分を必須とするが、必要に応じ、通常の各種添加剤を配合することができる。配合できる他の添加剤としては、例えば、有機繊維、増粘剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、分散剤、湿潤剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。水性エマルジョン系防水塗料組成物に適度のチクソトロピー性を確保する際には、増粘剤、分散剤などを配合するのが好ましい。
【0034】
水性エマルジョン系防水塗料組成物には、アクリル系樹脂を固形分として30〜70質量部、無機質充填剤成分が30〜70質量部が分散されている。アクリル系樹脂に対して無機質充填剤成分が上記比率より小さいと塗膜強度が低下するという不具合が生じる。逆にこの比率が大きすぎると塗膜の伸びが低下するという不具合が生じて好ましくない。
【0035】
水性エマルジョン系防水塗料組成物の比重は、0.7〜1.2であることが必須である。比重のさらに好ましい範囲は0.8〜1.2である。塗料組成物の比重が小さすぎると、塗膜の強度が弱くなる。一方、比重が大きすぎると、製品の外観不良、物性の低下が生じやすくなり好ましくない。
【実施例】
【0036】
表1に示す組成を有する実施例2種類、比較例3種類の塗料組成物試料を調製して、以下に示す評価を行った。
(試料の調製)
各組成物試料の調製に使用した成分の詳細は以下のとおりである。
アクリル酸エステル系共重合エマルジョン(大日本インキ化学工業社製JP−9、固形分が60質量%、粘度が2500mPa・sのもの。)
セピオライト(楠本化成社、製品名:PANGEL HV、長さ:0.2〜2μm、幅:100〜300オングストローム、厚さ:50〜100オングストローム、表面積:320m/g、総気孔度:0.70cm/g)、
中空粒子(平均粒子径が30μm、70μm、及び250μmのもの3種を用いた。それぞれの真比重は、0.2、 0.13、 及び0.05であった。)
炭酸カルシウム(平均粒子径:1μm〜20μm)
消泡剤(旭電化社製 B−1015)
【0037】
上記各成分を、表−1に記載の割合で秤量し、混合して水性エマルジョン系防水塗料組成物試料を調製した。
【0038】
(評価試験)
(1)肉やせ
RC板の上に、各塗料組成物試料により、第1主材層、ネット、ピンを施工し、さらにその上から同一の塗料組成物試料を塗布、乾燥して第2主材層を形成し、第2主材層塗膜の外観を目視により観察した。ネット目が見えないものを「○」、見えるものを「×」と判定して記録した。
【0039】
(2)乾燥性
各塗料組成物試料を、金属板の表面にスプレー塗布して、50mm×50mm×3mm(厚さ)の塗布膜を形成し、この塗布膜付金属板を、温度を20℃、湿度を60%に調節した室内で12時間養生した。この養生の後、塗布膜に10mm間隔で格子状の切れ目を形成して20℃の水中に浸漬した。塗布膜が剥がれないものを「○」とし、塗布膜が剥がれたものを「×」として表示した。
【0040】
(3)亀裂生成の有無
各塗料組成物資料を、スレート製の300mm×300mm×10mm(深さ)の箱型容器の内部に、スプレー塗布して、厚さ5mmの塗布膜を形成し、温度を20℃、湿度を60%に調節した室内で48時間養生した。この養生の後、容器側壁からの剥離の有無、塗布膜表面のヒケによる溝の有無、クラックの有無を目視観察した。これらが全く認められないものを「○」とし、いずれかが認められるものを「×」として表示した。
【0041】
(4)塗布膜の伸び率(破断時)
JIS A6021(2000、建築用塗膜防水材)に準拠して測定した。
【0042】
(5)付着性能
JIS K5400(1990年版)の規定に準拠して測定した。付着強度0.4N/mm以上のものを「○」とし、0.4N/mm未満のものを「×」とした。
【0043】
上記各評価試験の結果を表1に合わせて示す。なお、実施例1、及び実施例2の塗料組成物の乾燥塗膜を別途作成し、各塗膜を分析したところ、表2に示す結果が得られた。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表1から、以下の点が明らかになった。
本発明の規定に合致する平均粒子径(40〜200μm)を有する中空粒子を配合した水性エマルジョン系防水塗料組成物(実施例1、2)は良好な肉やせ抑制性、乾燥性、亀裂発生の抑制性、及び付着性を示した。比較例1の塗料組成物は中空粒子の平均粒子径が250μmであり、この点で本発明の規定(40〜200μm)からはずれており、付着性能に劣るものであった。比較例2の塗料組成物は中空粒子の平均粒子径が30μmであり、この点で本発明の規定(40〜200μm)からはずれており、肉やせ抑制性に劣るものであった。比較例3の塗料組成物は中空粒子の平均粒子径が70μmであり、この点では本発明の規定を満たすものであったが、比重が本発明の規定範囲(0.7〜1.2)より大であり、付着性能に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる補修構造体の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる補修構造体の工法を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0048】
10:既存躯体
2:プライマー
3:アクリルゴム系第1主材層
4:ネット
5:アクリルゴム系第2主材層
6:トップコート層
7:アンカーピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体外壁面にプライマーを介して形成されたアクリルゴム系の第1主材層と、該第1主材層の上に形成されたネットと、該ネットの上から打ち込まれたアンカーピンと、該ネットの上面に形成されたアクリルゴム系の第2主材層とを有する外壁補修構造体であって、前記アクリルゴム系の第1主材層及び第2主材層のうち少なくとも一層が、アクリル系樹脂を10〜50質量部、平均粒子径が40〜200μmの無機質中空粒子と、該中空粒子以外の無機質充填剤が含有されており、かつ、層の比重が0.8〜1.5であることを特徴とする外壁補修構造体。
【請求項2】
前記無機質充填剤成分全量を基準として、前記無機質充填剤成分のうち、平均粒子径が40〜200μmの中空粒子が0.5〜5.0質量%、中空粒子以外の無機質充填剤が95.0〜99.5質量%であることを特徴とする請求項1に記載の外壁補修構造体。
【請求項3】
前記中空粒子の真比重が、0.05〜0.2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の外壁補修構造体。
【請求項4】
躯体外壁面に下地処理をした後、プライマー層を形成する工程と、該プライマー層の表面にアクリルゴム系の第1主材層を形成する工程と、該第1主材層の上にネットを配設する工程と、該ネットの上からアンカーピンを打設する工程と、該ネットの上面にアクリルゴム系の第2の主材層を形成する工程と、を含む外壁補修構造体の製法であって、
前記アクリルゴム系の第1主材層を形成する工程、及び第2主材層を形成する工程の少なくとも一方が、アクリル系樹脂を固形分として30〜70質量部、無機質充填剤成分が30〜70質量部分散されてなり、前記無機質充填剤成分として平均粒子径が40〜200μmの中空粒子と、中空粒子以外の無機質充填剤とを含有し、比重が0.7〜1.2である水性エマルジョン系防水塗料組成物を塗布、乾燥して形成する工程であることを特徴とする外壁補修構造体の製法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−312813(P2006−312813A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134955(P2005−134955)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(000236159)三菱化学産資株式会社 (101)
【出願人】(000130374)株式会社コンステック (8)
【Fターム(参考)】