説明

外装パネル用役物と外装パネルの取付構造

【課題】厚さの異なる様々な胴縁に対しても、外装パネルと外壁本体の隙間に虫等の侵入を確実且つ容易に防止できる汎用性に優れた外装パネル用役物を提供すること。
【解決手段】胴縁5を介して後方の外壁本体6に固定される固定部4とこの固定部4の下端4bから前方に延設されて外装パネル2の下方部2aを保持する受け部7とからなる外装パネル保持片11と、この外装パネル保持片11から後方に向かって延設されるとともに、開口部13が形成されたカバー片12とを有し、全体が外壁本体6の左右方向に長尺である外装パネル用役物1であって、前記カバー片12は、長尺方向にわたって屈曲部12aを有し、この屈曲部12aにおける屈曲にともなって、カバー片12の後方先端部12bの上下動を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装パネルを外壁本体に取付けるための外装パネル用役物と外装パネルの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外装パネル用役物として、スタータと呼ばれる金属留め具が知られている(例えば、特許文献1)。例えば、図3に示すように、外装パネル用役物(スタータ)1を介した外装パネル2の取付構造としては、釘等の固着具3を用いて、垂直な固定部4を胴縁5を介して後方の外壁本体6に固定し、固定部4の下端から前方に延設された受け部7によって外装パネル2の下方部2aを保持する構造が一般的である。また、図3の例では、水切り部材8を胴縁5と外壁本体6の間に配置し、雨水を外側に排出するようにしている。
【0003】
ただ、図3に例示する構造においては、外装パネル2と外壁本体6の間の通気性を確保するために、胴縁5と水切り部材8の間に隙間9aを設け、また、複数の胴縁5を縦張りして隣接する胴縁5間にも隙間9bを設けている。このため、図中の矢印Pに沿って空気が隙間9bを通るとともに、この隙間9bに虫や小動物等が侵入するという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、例えば、図4に例示するように、胴縁5の下端部5aを防虫網10で被覆することが考えられた。しかしながら、この場合、別途、胴縁5の大きさに合わせた防虫網10を作成する必要があるためコストがかかるとともに、外観が悪く、また、施工に手間がかかるという問題を有していた。
【0005】
このような状況において、外装パネルと外壁本体の間の通気性を確保しつつ、虫等の侵入を防ぐことのできる外装パネル用役物が提案されている(特許文献2)。
【0006】
図5に示すように、特許文献2の外装パネル用役物1は、第一垂直材30aと第二垂直材30cがそれぞれの下端部を第一水平材30bで連結して成る断面略U字形状の長尺材で形成されている。そして、胴縁31の下端面31aを覆う第二水平材30eの一端部に第三垂直材30dが連結され、この第三垂直材30dは第二垂直材30cに沿ってその上端部が第二垂直材30cの上端部に連結されている。また、第二水平材30eには通気孔32が形成されている。さらに、第二水平材30eには、その下面から通気孔32を覆うカバー材33を備え、このカバー材33には開口部34が外壁本体35に向けて設けられている。
【0007】
しかしながら、特許文献2の外装パネル用役物1は、外装パネル2内側の通気性および虫等の侵入防止効果には一定の効果を発揮するものの、カバー材33を備えることから複雑な構造となり、製作コストが高くなるという問題があった。
【0008】
さらに、この外装パネル用役物1は、所定の厚さよりも胴縁31が薄い場合には、第二水平材30eの端部が邪魔になるため外装パネル2の取付けが難しかった。一方、所定の厚さよりも胴縁31が厚い場合には、第二水平材30eの端部と外壁本体35または水切り部材36との間に隙間が生じ、虫等の侵入防止効果が十分に発揮されない場合があった。したがって、特許文献2の外装パネル用役物1は、第二水平材30eの長さを胴縁31の厚さと略等しく形成する必要があり、厚さの異なる様々な胴縁31に対応することが難しいという汎用面での問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-197412号公報
【特許文献2】特開2008-267073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、以上のとおりの背景から、従来の問題点を解消して、外装パネル内側の通気性を確保し、さらに、厚さの異なる様々な胴縁に対しても、外装パネルと外壁本体の隙間への虫等の侵入を確実且つ容易に防止できる汎用性に優れた外装パネル用役物と外装パネルの取付構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の外装パネル用役物および外装パネルの取付構造は、上記課題を解決するため、以下のことを特徴としている。
【0012】
第1に、本発明の外装パネル用役物は、胴縁を介して後方の外壁本体に固定される固定部とこの固定部の下端から前方に延設されて外装パネルの下方部を保持する受け部とからなる外装パネル保持片と、この外装パネル保持片から後方に向かって延設されるとともに、開口部が形成されたカバー片とを有し、全体が外壁本体の左右方向に長尺である外装パネル用役物であって、前記カバー片は、長尺方向にわたって屈曲部を有し、この屈曲部における屈曲にともなって、カバー片の後方先端部の上下動が可能とされている。
【0013】
第2に、本発明の外装パネルの取付構造は、前記の外装パネル用役物を介した外装パネルの取付構造であって、固定部が胴縁を介して後方の外壁本体に固定されるとともに、受け部によって外装パネルの下方部が保持され、カバー片の屈曲部における屈曲にともなって、カバー片の後方先端部が外壁本体面と当接することで、胴縁の下端部が覆われる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外装パネル内側の通気性が確保され、また、厚さの異なる様々な胴縁に対しても、外装パネルと外壁本体との間の隙間への虫等の侵入を確実且つ容易に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の外装パネル用役物を用いた外装パネルの取付構造を例示する断面概要図である。
【図2】(A)は、本発明の外装パネル用役物を例示する側面図であり、(B)は、(A)の矢印S方向から見たカバー片を示す上面図である。
【図3】従来の外装パネルの取付構造の一例を示す断面図である。
【図4】胴縁下端部に防虫網を取付ける形態を例示する断面図である。
【図5】従来の外装パネルの取付構造の異なった一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の外装パネル用役物を用いた外装パネルの取付構造を例示する断面概要図である。図2(A)は、本発明の外装パネル用役物を例示する側面図であり、図2(B)は、(A)の矢印S方向から見たカバー片を示す上面図である。
【0018】
図1、図2に示すように、本発明の一実施形態としての外装パネル用役物1は、外装パネル2の下方部2aを保持するとともに、建物の外壁本体6に胴縁5を介して取付けられるものであり、具体的には、外装パネル保持片11およびカバー片12を有し、全体が外壁本体6の左右方向に長尺な形状からなるものである。
【0019】
外装パネル保持片11は、釘等の固着具3によって胴縁5を介して後方の外壁本体6に固定される固定部4と、前記固定部4の下端4bから前方に延設されて外装パネル2の下方部2aを保持する受け部7とによって構成される。固定部4の垂直方向の長さや、水平方向の長さは、固着具3によって安定的に固定され得る範囲で適宜決定することができる。同様に、受け部7の垂直方向の長さや、水平方向の長さ、幅等も外装パネル2を安定的に保持することができる範囲で適宜決定することができる。
【0020】
固定部4の形状は、略垂直な板状とすることができ、固着具3によって胴縁5の下端部5aの前面と当接状態で固定される。固定部4の先端4aは、図2に例示するように、折り重ね部等を設けてもよい。
【0021】
受け部7の形状は、外装パネル2の下方部2aを安定的に保持することができる形状であればよく、具体的な形状に限定されない。例えば、図1に例示するように、外装パネル2の下方部2aに凹部が形成された形態のものを取付ける場合には、詳しくは図2に例示するように、固定部4から延設される受け部7を水平部7aと垂直部7bによって構成することで、垂直な固定部4と受け部7の垂直部7bの間に、外装パネル下方部2aの凹部の一部を挟み込んで保持することができる。また、図2に示す例においては、受け部7は、固定部4から延設されるとともに受け部7の先端で折り返す構造であるため、金属板が二重に折り重なって形成されている。これによって、外装パネル2の下方部2aを保持するために十分な強度が確保されている。一方、下方部2aに凹部が形成されていない外装パネル2の場合には、例えば、受け部7の垂直部7bが外装パネル2の前面と当接するようにして外装パネル2の下方部2aを保持することができる。このように、受け部7の形状は、外装パネル2の下方部2aの形状に応じて適宜設計することができる。
【0022】
そして、本発明の外装パネル用役物は、カバー片に大きな特徴を有している。
【0023】
図1、図2に示されるように、カバー片12は、外装パネル保持片11から後方に向かって延設されている。すなわち、カバー片12は、外装パネル保持片11の固定部4または受け部7から延設される。図1、図2は、受け部7からカバー片12が延設される形態を例示しており、受け部7の垂直部7bの先端で折り返した金属板が水平部7aの下方を通って、そのまま後方へ、すなわち、外壁本体6側へ向かって延設されている。また、図示してはいないが、例えば、外装パネル保持片11の固定部4の下端4bから、後方へカバー片12を延設することもできる。図1、図2に例示するように、受け部7の先端で折り返した金属板がそのまま後方へ延びてカバー片12を形成する形態は、受け部7が二重の金属板で構成されることから強度が高く、安定に外装パネル2を保持することができる。また、外装パネル用役物1全体を一枚の金属板を曲げ加工等することによって形成することができるため、製作コストを安価に抑えることができる。
【0024】
さらに、本発明の外装パネル用役物1のカバー片12は、外壁本体6の左右方向にわたって屈曲部12aを有している。
【0025】
具体的には、図1、2に例示するように、屈曲部12aは、外装パネル保持片11の固定部4から外壁本体6側への所定位置においてカバー片12を上方へ屈曲させることで形成され、施工後は、屈曲部12aは胴縁5の下方に位置することになる。本発明の外装パネル用役物1として、屈曲が容易な材料を使用すれば、屈曲部12aに特殊な加工は必要ないが、必要に応じて、後述するカバー片12の後方先端部12bの上下動を容易にするための加工を屈曲部12aに施してもよい。
【0026】
屈曲部12aより前方、すなわち外装パネル保持片11側には、水平部12cを形成することができ、例えば、この水平部12cには、図2(B)に例示するように、複数の開口部13を外壁本体6の左右方向にわたって形成することができる。なお、開口部13の数、位置、形状、大きさは、通気性を確保しつつ、開口部13から虫等が侵入できないように設計することができ、図2(B)に例示する形態に限定されない。開口部13の具体的な形状としては、例えば、円形、矩形等に適宜設計することができるが、図1(B)に例示するような幅小の楕円型の開口部13は、特に通気性が高く、また、虫等の侵入もより確実に防止することができるため好ましい。
【0027】
また、カバー片12には、開口部13とは別に、雨水を外部へ排出するための水抜き孔(図示していない)を設けることもできる。一方、前記開口部13によって排水機能を担わせることもでき、この場合、開口部13の形成位置は、前記カバー片12の水平部12cが好ましい。カバー片12の水平部12cに開口部13を設けることで、外壁本体6、胴縁5から下方へ流れ落ちる雨水の一部は、カバー片12の上面に達した後、開口部13から下方へ流れ出やすい構造となる。流れ出た水は、例えば、水切り部材8を介して外壁の外側へ向かう。
【0028】
そして、図1、図2に例示するように、通常、カバー片12の後方先端部12bは、屈曲部12aから外壁本体6方向の斜め上を向いて屈曲させたものとすることができる。カバー片12の後方先端部12bを下方へ屈曲させることもできるが、この場合、カバー片12が外部に露出する恐れがあり、美観を害するため好ましくない。屈曲部12aにおける屈曲角度の変化にともなって、図2(A)の矢印Xに例示するように、屈曲部12aを基点としたカバー片12の後方先端部12bの上下動が可能である。そして、図2(A)の矢印Yは、矢印Xの範囲でカバー片12の後方先端部12bが上下動させた場合の、カバー片12の後方先端部12bの水平方向の移動範囲を示している。なお、カバー片12の後方先端部12bの上下動の範囲は、胴縁5の厚さ、胴縁5の下端部5aの位置と関係するが、目安としては、屈曲部12aを基準として、およそ0°(水平)から60°程度が考慮される。前記のとおり、本発明の外装パネル用役物1は、カバー片12が屈曲可能である点で従来とは異なり、このような特徴から、施工時には、胴縁5の下端部5aを従来よりもやや持ち上げた状態で固定することで、カバー片12の後方先端部12bの上下動を可能とするための空間を確保することが考慮される。
【0029】
さらに、カバー片12は、後方先端部12bまでの長さが、少なくとも、胴縁5の厚さよりも大きく形成される。これによって、カバー片12の後方先端部12bの上下動による胴縁5の厚さへの対応が可能であり、カバー片12の先端部12bを水切り部材8を含む外壁本体6と当接または、ほぼ当接状態とすることができる。
【0030】
このように、本発明の外装パネル用役物1は、屈曲部12aを基点としたカバー片12の後方先端部12bの上下動によって、図2(A)の矢印Yに示すように、カバー片12の後方先端部12bの位置を、胴縁5の厚さ方向に調整可能であるため、胴縁5の厚さに関わらずカバー片12の後方先端部12bを外壁本体6と当接または、ほぼ当接状態とすることができ、カバー片12の後方先端部12bと外壁本体6面との間に隙間が生じることなく胴縁5の下端部5aを覆うことができる。例えば、胴縁5が薄い場合には、カバー片12の後方先端部12bを外壁本体6面に押し付けることで、図2(A)の点線に示すように、屈曲部12aにおいて、カバー片12の後方先端部12bを上方(前方)へ屈曲変形させることができるため、カバー片12の後方先端部12bまでの長さが問題になることがなく、カバー片12の後方先端部12bと外壁本体6面との間に隙間が生じることなく胴縁5の下端部5aを覆うことができる。一方、例えば、胴縁5が厚い場合には、カバー片12の後方先端部12bを下方へ屈曲変形させることで、外壁本体6との隙間を調整することができるため、前記と同様に、胴縁5の下端部5aを覆うことができる。
【0031】
このように、本発明の外装パネル用役物1によれば、厚さの異なる様々な胴縁5に対しても、カバー片12の後方先端部12bと外壁本体6との間に隙間を生じさせることがなく、また、開口部13も虫等の侵入ができないように設計されていることで、確実に虫等の侵入を防止することができる。一方で、開口部13によって外装パネル2内側の通気性は確保される。したがって、本発明の外装パネル用役物1は、汎用性に優れ、製品価値が高い。
【0032】
なお、本発明の外装パネル用役物1は、例えば、板厚0.35mm程度の薄厚鋼板を加工して、外装パネル保持片11とカバー片12とが一体形成されるが、両表面にアルミ・亜鉛合金メッキを施し、さらに表面側となる面にフッ素樹脂塗装、裏面側にポリエステル樹脂塗装が施すこと等が考慮される。ただ、外装パネル保持片11とカバー片12の厚さは必ずしも均一とする必要はなく、図2に例示するように、外装パネル保持片11を厚く形成することで、外装パネル2の重量に耐え得るものとすることができる。
【0033】
また、図2に例示するように、例えば、固定部4の先端部4aやカバー片12の後方先端部12bに折り返し部を設ける等、その他の細部については、様々な形態が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 外装パネル用役物
2 外装パネル
2a 下方部
4 固定部
4a 先端
4b 下端
5 胴縁
5a 下端部
6 外壁本体
7 受け部
7a 水平部
7b 垂直部
11 外装パネル保持片
12 カバー片
12a 屈曲部
12b 後方先端部
12c 水平部
13 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴縁を介して後方の外壁本体に固定される固定部とこの固定部の下端から前方に延設されて外装パネルの下方部を保持する受け部とからなる外装パネル保持片と、この外装パネル保持片から後方に向かって延設されるとともに開口部が形成されたカバー片とを有し、全体が外壁本体の左右方向に長尺である外装パネル用役物であって、前記カバー片は、長尺方向にわたって屈曲部を有し、この屈曲部における屈曲にともなって、カバー片の後方先端部の上下動が可能とされていることを特徴とする外装パネル用役物。
【請求項2】
請求項1の外装パネル用役物を介した外装パネルの取付構造であって、固定部が胴縁を介して後方の外壁本体に固定されるとともに、受け部によって外装パネルの下方部が保持され、カバー片の屈曲部における屈曲にともなって、カバー片の後方先端部が外壁本体面と当接することで、胴縁の下端部が覆われることを特徴とする外装パネルの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−94328(P2011−94328A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247058(P2009−247058)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】