説明

外装プレート取付け構造

【課題】 本発明は、外装プレートと取付け基盤の透孔を有した接着面との間の接着剤の厚さを所定の寸法以上確保し、接着剤による外装プレート取付け耐力を安定して確保する構造を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 建築物側の下地壁3に設けられた取付け基盤2の透孔2bを有した接着面2aが、外装プレート1の内面1cと略平行に配置され、かつ下地壁3の前面に隙間を確保した構造で、弾性接着剤5を接着面2aの透孔2bに絡み接合構造となるように、外装プレート1を接着する構造において、1枚の外装プレート1に対して、相互に距離を離した少なくとも2つの周辺部1aに、所定の厚さ寸法を有したスペーサ4を接着面2aと外装プレート1の内面1cとの間に設けたことを特徴とする外装プレート取付け構造であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に外装プレートを取付ける構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、大形タイル、石材等の外装プレートを建築物の外壁に取付ける際に、多数の透孔を有した取付け基盤によって外装プレートの位置決めと確実な取付けが確保出来る技術として、特開2003−213888号公報(特許文献1)に記載された技術がある。
【0003】
特許文献1に記載された外装プレート取付け構造としては、取付け基盤に多数の透孔を有した接着面が、外装プレート内面と略平行に配置され、且つ下地壁との隙間を確保した構造で、弾性接着剤を接着面の透孔に絡み接合構造となるように、外装プレートを接着する構造である。このように構成されることにより、外装プレートを接着面に押し付けて接着することにより、下地壁の前面とにクリアランスを確保しながら、容易に外装プレートの位置決めをして取付けることが出来る。
【0004】
一方、外装プレートが、面外方向の外力や、面内方向の強制変位等を受けた場合、外装プレートと接着面との間の弾性接着剤の厚さ寸法に応じた負荷が、その部分の弾性接着剤に作用し、最大耐力を定める大きな要因となる。ここで、弾性接着剤の厚さが小さい(薄い)ほど大きな負荷が作用するため、外装プレートと接着面との間の弾性接着剤の厚さを所定の厚さ寸法以上に管理することが望ましいと考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−213888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、外装プレートを接着面に押し付けて接着するため、外装プレートと接着面との間の弾性接着剤の厚さを所定の寸法以上に管理することは難しかった。
【0007】
また、建築物側の下地壁に直接外装プレートを弾性接着剤で張る場合は、潰しきれなくて、少なくとも1mm程度の弾性接着剤の厚さになるのであるが、取付け基盤の接着面に多数の透孔が設けてあるため、外装プレートを接着面に押し付けた際に、弾性接着剤が透孔を通して接着面と下地壁との隙間に押し出されるため、下地壁に直接外装プレートを弾性接着剤で張る場合との比較で、弾性接着剤を潰しやすく、外装プレートと接着面との間の弾性接着剤の厚さは、0.5mm程度、或いは更に薄い厚さに潰れることもあった。
【0008】
更には、外装プレートの寸法が400mm以上等大きな寸法の場合、日射熱による伸びで、外装プレートが外に向かって凹に反るような変形をすると、外装プレートと取付け基盤の接着面との距離が、弾性接着剤の厚さに応じて0.5mm程度しか確保されていない場合もあり得るため、外装プレートの周辺部近傍が外に反って、外装プレートと接着面との間の弾性接着剤に大きな引張応力が繰り返し作用することになり、耐久性を確保するために、弾性接着剤の劣化特性や繰り返し疲労特性を、より十分に配慮して設計する必要があった。
【0009】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、外装プレートと取付け基盤の透孔を有した接着面との間の接着剤の厚さを所定の寸法以上確保し、接着剤による外装プレート取付け耐力を安定して確保する構造を提供することを目的とする。また、外装プレートが日射熱による伸びで、外に向かって凹に反るような変形をした場合にも、外装プレートの周辺部近傍で、接着面との間の接着剤に作用する引張応力を緩和する構造を提供することを目的とする。更に、それらの構成を、施工現場作業で、簡単に構成する構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明に係る外装プレート取付け構造の第1の構成は、建築物側の下地壁に設けられた取付け基盤の透孔を有した接着面が、外装プレート内面と略平行に配置され、且つ前記下地壁の前面に隙間を確保した構造で、接着剤を前記接着面の透孔に絡み接合構造となるように、外装プレートを接着して取り付ける構造において、1枚の外装プレートに対して、相互に距離を離した少なくとも2つの周辺部に、所定の厚さ寸法を有したスペーサを前記接着面と前記外装プレート内面との間に設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る外装プレート取付け構造の第2の構成は、前記第1の構成において、前記外装プレートは矩形形状で、該1枚の外装プレートに対して、4つの頂点から各辺の1/3の長さの範囲である4つの周辺部のうちの少なくとも3つの周辺部に、所定の厚さ寸法を有したスペーサを前記接着面と前記外装プレート内面との間に設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る外装プレート取付け構造の第3の構成は、前記第2の構成において、前記1枚の外装プレートの前記4つの周辺部を除く中央クロス十字部では、前記外装プレートの内面に対して、前記取付け基盤の接着面との間に前記スペーサの厚み以上、及び/または、前記下地壁との間に前記スペーサと前記取付け基盤の合計の厚み以上、のクリアランスを設け、前記クリアランスに、接着剤を介在させて前記外装プレート内面と前記接着面または前記下地壁とを接着するか、及び/または、前記クリアランスに、接着剤を介在させない構成としたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る外装プレート取付け構造の第4の構成は、前記第1〜3の構成において、前記スペーサにフックが設けられ、前記取付け基盤に、該フックを引っ掛けて設置したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る外装プレート取付け構造の第5の構成は、前記第1〜第4の構成において、前記スペーサは、隣接する2枚以上の外装プレートに跨って設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る外装プレート取付け構造の第1の構成によれば、外装プレートを接着面に押し付けた際に、接着剤が透孔を通して接着面と下地壁との隙間に押し出され、接着剤が潰れようとした場合であっても、1枚の外装プレートに対して、相互に距離を離した少なくとも2つの周辺部に、所定の厚さ寸法を有したスペーサを接着面と外装プレート内面との間に設けているため、外装プレートと接着面との間の接着剤の厚さを、スペーサの厚さ寸法に応じて、所定の厚さ寸法以上に確保し、接着剤による外装プレート取付け耐力に信頼性を持たせることが出来る。
【0016】
尚、スペーサは、確実に接着面と外装プレート内面との間に設けられ、外装プレートを押し付けて施工した際に、接着面或いは外装プレート内面に、面接触或いは多点接触が可能なように設けられている構造が、外装プレートと接着面との間で確実に所定の厚さ寸法以上の接着剤の厚さを確保出来、好ましい。
【0017】
また、透孔を有した接着面は意図的に平滑面として、スペーサと面接触させることが出来るが、外装プレートとしての陶磁器質タイル等では、内面に凹凸模様が形成されている場合があり、このような場合には、スペーサが確実に外装プレートの内面を所定の寸法で位置決めするために、内面の凹凸模様の間隔以上の寸法の平滑部を設けるか、内面の凹凸模様の間隔よりも小さなピッチで多点接触出来るようスペーサを構成するのが、より好ましい。
【0018】
ここで、任意の2つの周辺部は、相互に距離を離した位置であり、外装プレートを取り付ける際に、外装プレートと接着面との間の接着剤の厚さを所定の厚さ寸法以上に確保しながら、安定して外装プレートの位置決めをすることが容易となる。2つの周辺部は外装プレートの長さ寸法の1/5以上、好ましくは1/3以上の距離を離した位置であることが望ましい。
【0019】
尚、スペーサの設置位置を相互に距離を離した2つの周辺部だけとする場合で、該2つの周辺部が、外装プレートの長さ寸法の1/5以上、好ましくは1/3以上の距離を離した位置であっても、位置が外装プレートの一端側に寄りすぎていると、外装プレートの他端側において外装プレートと接着面との間の接着剤の厚さを所定の厚さに確保しづらくなるが、それでも、少なくとも一端側においては、外装プレートと接着面との間の接着剤の厚さを所定の厚さに確保することが出来、そのため、一端側での接着剤による外装プレートの取付け耐力に信頼性を持たせることが出来る。
【0020】
しかし、スペーサの設置位置を相互に距離を離した2つの周辺部だけとする場合は、外装プレートを接着面に対して、平行度を保って張り付ける施工が安定しずらい面があり、施工時に、外装プレートと接着面との間の接着剤の厚さを所定の厚さ寸法以上に確保するために、外装プレートを接着面に対して、平行度を保って張り付けることに、少々神経を配る必要がある。そのため、スペーサの設置位置である相互に距離を離した周辺部を、少なくとも3つの周辺部とし、そのいずれかの3つの周辺部位置を結ぶと三角形を構成するような構造が、安定して外装プレートを接着面に対して、平行度を保って張り付けることが容易になり、より好ましい。
【0021】
上記接着剤は弾性接着剤が好ましく、弾性接着剤の一例としては、変性シリコーン系、エポキシ変性シリコーン系、ウレタン系、シリコーン系、弾性エポキシ等の弾性係数が低めで、変形追従性の高い接着剤が好ましく適用出来る。
【0022】
また、本発明に係る外装プレート取付け構造の第2の構成によれば、矩形形状の外装プレートで、1枚の外装プレートに対して、4つの頂点から各辺の1/3長さの範囲である4つの周辺部のうちの少なくとも3つの周辺部に所定の厚さ寸法を有したスペーサが接着面と外装プレート内面との間に設けられており、外装プレートを取付ける際に、外装プレートと接着面との間の接着剤の厚さを所定の厚さ寸法以上に確保し、接着剤による外装プレートの取付け耐力に信頼性を持たせながら、安定して外装プレートの位置決めをすることが出来る。
【0023】
即ち、矩形形状の外装プレートを接着面に押し付けた際に、接着剤が透孔を通して接着面と下地壁との隙間に押し出され、接着剤が潰れようとした場合であっても、1枚の外装プレートに対して、4つの頂点から各辺の1/3長さの範囲である4つの周辺部のうちの少なくとも3つの周辺部に所定の厚さ寸法を有したスペーサが接着面と外装プレート内面との間に設けられているため、外装プレートと接着面との間の接着剤の厚さを、スペーサの厚さ寸法に応じて、所定の厚さ寸法以上に確保し、接着剤による外装プレートの取付け耐力に信頼性を持たせながら、且つ、3つの周辺部は相互に各辺の1/3長さ以上の距離だけ離れているため、安定して外装プレートの位置決めをすることが出来る。
【0024】
尚、スペーサは、確実に接着面と外装プレート内面との間に設けられ、外装プレートを押し付けて施工した際に、接着面或いは外装プレート内面に、面接触或いは多点接触が可能なように設けられている構造とすることで、外装プレートと接着面との間で確実に所定の厚さ寸法以上の接着剤の厚さを確保することが出来、好ましい。
【0025】
また、透孔を有した接着面は意図的に平滑面として、スペーサと面接触させることが出来るが、外装プレートとしての陶磁器質タイル等では、内面に凹凸模様が形成されている場合があり、このような場合には、スペーサが確実に外装プレートの内面を所定の寸法で位置決めするために、内面の凹凸模様の間隔以上の寸法の平滑部を設けるか、内面の凹凸模様の間隔よりも小さなピッチで多点接触出来るようにスペーサを構成するのが、より好ましい。
【0026】
尚、4つの頂点から各辺の1/3長さの範囲である4つの周辺部すべてに、所定の厚さ寸法を有したスペーサを接着面と外装プレート内面との間に設ける構造とすれば、更に、安定して外装プレートを接着面に対して、平行度を保って張り付けることが出来、より好ましい。
【0027】
また、本発明に係る外装プレート取付け構造の第3の構成によれば、矩形形状の外装プレートの4つの周辺部を除く中央クロス十字部では、外装プレートの内面に対して、取付け基盤の接着面との間にスペーサの厚み以上、及び/または、下地壁との間にスペーサと取付け基盤との合計の厚み以上、のクリアランスを設ける構造であって、該クリアランスに、接着剤が介在するか、及び/または、介在しない構成としたため、外装プレートが日射熱による伸びで、外に向かって凹に反るような変形をした場合にも、外装プレートは、中央クロス十字部において、クリアランスの範囲で、下地壁寄りに変形することが可能で、且つ外装プレートと接着面との間の接着剤の厚さを所定の厚さ寸法以上に管理しており、その結果、外装プレートの周辺部近傍で、接着面との間の接着剤に作用する引張応力を緩和することが出来る。
【0028】
尚、中央クロス十字部においてクリアランス部分に、接着剤を介在させるか介在させないかは、風圧力等に対する面外耐力確保や、飛来物等への耐衝撃性等、他の観点も含め、総合的に判断するものであるが、接着剤の劣化特性や繰り返し疲労特性を考慮しての耐久設計の観点で、中央クロス十字部において、下地壁寄りへの変形を阻害しないという意味で、接着剤に作用する引張応力をより緩和出来、接着剤を介在させない構造が好ましい。
【0029】
尚、接着剤に作用する引張応力は緩和される一方で、圧縮応力が発生する可能性がある。しかし、矩形形状の外装プレートの場合、接着剤の破断は、面内方向へのムーブメントが大きいと想定される周辺部で、更に4つの頂点寄りから発生すると考えられ、外装プレートと接着面との間の接着剤の厚さが0.5mm以下等の小さな寸法になった場合で、日射熱による外装プレートの伸びで、外装プレートの周辺部近傍が外に反る作用も加わっての破断が懸念されるが、外装プレートの周辺部にスペーサを設けているため、スペーサに制約されて、接着剤に発生する圧縮応力も過大にはならない。そのため、外装プレートの周辺部での接着剤の破断は発生し難い構造とすることが出来る。
【0030】
更に、クリアランスには、接着剤が介在するか、及び/または、介在しない構成としているが、接着剤以外の他の物を介在させる構造は、他の物が接着剤よりも剛性(弾性率)が低い場合には、外装プレートが、中央クロス十字部において、接着剤と同程度に、下地壁寄りへの変形が可能であり、本発明の構成と同等の効果を発揮する。また、クリアランス部分に接着剤よりも剛性(弾性率)の高い物が配置されていても、スペーサの厚み以上のクリアランスが残っている場合には、やはり、本発明の構成と同等の効果を発揮する。これらの構造も、第3発明に含まれる。
【0031】
また、本発明に係る外装プレート取付け構造の第4の構成によれば、スペーサのフックを取付け基盤の透孔或いは切欠きに引っ掛けることで、簡単な施工作業で、外装プレートの割付けに応じての所定の位置にスペーサを設けることが可能である。
【0032】
この際、取付け基盤の透孔は、接着面以外に設けられた透孔であったり、取付け基盤の周辺から設けられた切欠きであっても良く、即ち、フックを簡単な施工作業で引っ掛けられれば良い。
【0033】
また、本発明に係る外装プレート取付け構造の第5の構成によれば、隣接する2枚以上の外装プレートに跨ってスペーサを設置することで、スペーサの設置個数を減らすことが出来、施工作業の効率を高めることが出来る。例えば、矩形形状をした外装プレートを芋目地形状(縦横方向の目地が一直線に並んだ形状)に配置した場合で、上下左右で隣接する4枚の外装プレートに跨ってスペーサを設置することで、かなりのスペーサの設置個数を減らすことが出来、有効である。
【0034】
更に、本発明は、取付け基盤の接着面に多数の透孔を有する構造であるため、スペーサのフックと、取付け基盤の透孔が係合するように設計しておけば、施工現場において、外装プレートの割付けに合わせて任意の位置にスペーサを設置することが出来、好都合である。このように、外装プレートの割付けに合わせて、外装プレートの所定の位置に対応する取付け基盤位置にだけスペーサ機能を設けたい場合、多数の透孔を有する取付け基盤と、該透孔に、任意の位置で係合するように設計されたフック付きスペーサは、施工現場で、所望の位置にだけスペーサを設けることが可能で、合理的な構造とすることが出来る。
【0035】
尚、取付け基盤によって形成される隙間寸法の範囲で、スペーサのフックには、係り代の余裕(遊び寸法)があっても良い。また、スペーサの取り付けには、係り代の余裕がある方が、取り付け易く、好適である。即ち、外装プレートをスペーサに押し付けて位置決めした際に、外装プレートと接着面との間の接着剤の厚さは所定の厚さ寸法が確保出来れば良い。
【0036】
スペーサの素材としては、外装プレート裏面への雨水の浸入等が懸念される場合には、ステンレス材等を用いることが出来るが、他に、プラスチック材料等も適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図により本発明に係る外装プレート取付け構造の一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る外装プレート取付け構造を示す平面説明図、図2は図1のA−A断面説明図、図3は図1のB−B断面説明図、図4は外装プレートの平面説明図、図5は外装プレート取付け用の各種スペーサの構成を示す斜視図、図6は相互に距離を離した2つの周辺部の各種例を示す平面説明図、図7は相互に距離を離した3つの周辺部の1例を示す平面説明図である。
【0038】
図1〜図5において、建築物側の下地壁3の前面には取付け基盤2が水平方向に平行に留め付けられている。取付け基盤2は固定面2cに設けられた固定用透孔2dを通した図示しないアンカーで下地壁3に留め付けられている。このように下地壁3に設けられた取付け基盤2の透孔2bを有した接着面2aが外装プレート1の内面1cと略平行に配置されている。外装プレート1は下地壁3の前面に隙間を確保した構造で、弾性接着剤5を接着面2aの透孔2bに絡み接合構造となるように接着して取り付ける構造とされる。
【0039】
ここで、弾性接着剤5としては、変性シリコーン系、エポキシ変性シリコーン系、ウレタン系、シリコーン系、弾性エポキシ等の弾性係数が低めで、変形追従性の高い接着剤が適用出来る。尚、他の接着剤としては、硬質エポキシ、モルタル等も適用可能である。
【0040】
そして、1枚の外装プレート1に対して相互に距離を離した少なくとも2つの周辺部に所定の厚さ寸法を有したスペーサ4を接着面2aと外装プレート1の内面1cとの間に設けており、1枚の矩形形状の外装プレート1に対しては、その4つの頂点から各辺の1/3の長さの範囲である4つの周辺部1aのうちの少なくとも3つの周辺部1aに所定の厚さ寸法を有したスペーサ4を接着面2aと外装プレート1の内面1cとの間に設けることが出来る。
【0041】
本実施形態では図1及び図4に示すように、1枚の矩形形状の外装プレート1に対して、その4つの頂点から各辺の1/3の長さの範囲である4つの周辺部1aの全てに所定の厚さ寸法を有したスペーサ4を接着面2aと外装プレート1の内面1cとの間に設けた一例である。ここで隣接する2枚以上の外装プレートに跨ってスペーサを設置することで、スペーサの設置個数を減らすことが出来、施工作業の効率を高めることが出来る。また、矩形形状をした外装プレートを芋目地形状(縦横方向の目地が一直線に並んだ形状)に配置した場合で、上下左右で隣接する4枚の外装プレートに跨ってスペーサを設置することで、かなりのスペーサの設置個数を減らすことが出来、有効である
【0042】
外装プレート1は、図2及び図3に示すように、4つの周辺部1aに各1箇所ずつの弾性接着剤5が設けられ、4箇所に設けたスペーサ4を押さえつけるように、且つ、取付け基盤2に設けられた透孔2bに絡み接合構造となるように取付け基盤2に弾性接着剤5で接着されて張り付けられている。
【0043】
ここで、矩形形状の外装プレート1の4つの頂点から各辺の1/3の長さの範囲である4つの周辺部1aとは、図4の斜線で示した4つの周辺部1aである。
【0044】
本実施形態の外装プレート1は、矩形形状で、一辺600mmの大形タイルで、厚さ10mmである。
【0045】
また、下地壁3としては、鉄筋コンクリート壁、軽量気泡コンクリート(ALC)壁、ラスモル壁、サイディング壁等が適用可能である。
【0046】
また、取付け基盤2の素材はステンレスで板厚1mm、接着面2aは下地壁3から6mmの位置に設けられており、隙間2fを5mm確保する構造である。取付け基盤2の幅寸法は200mm、幅寸法の略中間位置に自重受け片2eが設けられ、外装プレート1の自重を受ける構造となっている。
【0047】
本実施形態の取付け基盤2の接着面2aに設けられた透孔2bは接着面2aの全面に設けられているが、図1では、部分的に省略して図示している。取付け基盤2の幅寸法は、100mm程度であっても良く、或いは、大形タイルの一辺600mmよりも長い寸法であっても良いし、外装プレート1が設けられる下地壁3の全面に取付け基盤2が設けられても良い。
【0048】
本実施形態の外装プレート取付け用スペーサ4の厚みは2mmで、外装プレート1と接着面2aとの間の弾性接着剤5の厚さを2mm以上確保した。このように、外装プレート1と接着面2aとの間の弾性接着剤5の厚さを2mm以上確保したため、外装プレート1が、面外方向の外力や、面内方向の強制変位等を受けた場合、外装プレート1と接着面2aとの間の弾性接着剤5の厚さ寸法に応じて発生する弾性接着剤5の負荷を低減し、最大耐力を安定確保することが可能となる。尚、本実施形態のスペーサ4は、幅70mm、長さ180mmとした。
【0049】
図5(a),(b)はスペーサ4の各種例である。このようにスペーサ4にフック4aを設け、取付け基盤2の透孔2b或いは切欠きに該フック4aを引っ掛けて隣接する2枚以上の外装プレート1に跨って設置することが出来る。ここでは、スペーサ4は、幅70mm、長さ180mmであり、上下左右に隣接する4枚の外装プレート1に跨って設置してある。
【0050】
図5(a)に示すスペーサ4は、厚さ2mm、幅4mmで、一端部にフック4aを設け、他端部にバン線4cによりフック部材4dが接続されたものである。フック4aの係り代は4mmとしてあり、取付け基盤2の板厚を1mmとすると、3mmの係り代の余裕(遊び寸法)がある。このように、スペーサ4に係り代の余裕があるので、取付け基盤2の透孔2b或いは切欠きに取り付け易い。外装プレート1に係止されるフック部材4dを接続したことで、スペーサ4に外装プレート1の落下防止機能を持たせることが出来る。
【0051】
スペーサ4の厚さを2mmとしてあるため、外装プレート1と接着面2aとの間の弾性接着剤5の厚さを2mm以上として管理することが可能である。一方、スペーサ4の他端部にバン線4cで繋いだ先にフック部材4dを設けたため、外装プレート1の内面1cに切り込みを入れ、そこにフック部材4dを係合させることにより、スペーサ4を設けると同時に、外装プレート1の脱落防止のための機械的係合(或いは接合)を、簡単な施工で実施することが出来る。このように、スペーサ4の一端部のフック4aが間接/直接に取付け基盤2に係合され、他端部のフック部材4dが間接/直接に外装プレート1に係合または接合している構造は外装プレート1の脱落防止の点でより好ましい。
【0052】
図5(b)に示すスペーサ4は、両端部にフック4aを設けたもので、図5(b)の下方側の一方のフック4aはバネ状になっており、一端部のフック4aを取付け基盤2の透孔2bに該フック4aを引っ掛けた後、他端部のフック4aを取付け基盤2の透孔2bに叩き込むことで、スペーサ4を固定出来る。
【0053】
また、図5(b)に示すスペーサ4は、幅を8mmと広くし、高さ2mmの突起4bを設けることで、スペーサ4の厚さ機能を4mmとしたものである。この例では、スペーサ4に使用したステンレス板の厚さは2mmであるが、外装プレート1と接着面2aとの間の弾性接着剤5の厚さを4mm以上として管理することが可能である。
【0054】
また、矩形形状の外装プレート1の4つの周辺部1aを除く中央クロス十字部1bでは、図2及び図3に示すように、外装プレート1の内面1cに対して取付け基盤2の接着面2aとの間にスペーサ4の厚み以上、及び/または下地壁3との間にスペーサ4と取付け基盤2の合計の厚み以上のクリアランス6が設けられる。
【0055】
ここで、矩形形状の外装プレート1の4つの周辺部1aを除く中央クロス十字部1bとは、図1及び図4に示す外装プレート1で、斜線で示した4つの周辺部1aを除く中央クロス十字部1bである。
【0056】
本実施形態では外装プレート1の内面1cと下地壁3との間がクリアランス6となり、スペーサ4の厚み2mmと取付け基盤2の厚み6mmとの合計の厚み8mm以上のクリアランス6を確保した。但し、図2に示す図1のA−A断面位置近傍とその対称位置(中央クロス十字部1bの下端近傍)では、クリアランス6は、外装プレート1の内面1cと取付け基盤2の接着面2aとの間がクリアランス6となり、スペーサ4の厚み2mm以上となっている。この例では、クリアランス6部分では、弾性接着剤5は介在させていない。
【0057】
このように、外装プレート1は、中央クロス十字部1bで、外装プレート1の内面1cと下地壁3との間にスペーサ4の厚みと取付け基盤2の厚みとの合計厚み以上のクリアランス6を設けているため、或いは、図2に示す図1のA−A断面位置等では、外装プレート1の内面1cと取付け基盤2の接着面2aとの間にスペーサ4の厚み以上のクリアランス6を設けているため、且つ、クリアランス6には弾性接着剤5を介在しなくしたため、外装プレート1の中央クロス十字部1bは、取付け基盤2の接着面2aよりも下地壁3寄りに変形することが可能で、そのため、外装プレート1の周辺部1aにおいて弾性接着剤5に繰り返し作用する引張応力を低減することが可能になり、弾性接着剤5の劣化特性や繰り返し疲労特性を配慮しての耐久設計が比較的容易になる。
【0058】
尚、本実施形態では、外装プレート1の中央クロス十字部1bにおいて、外装プレート1の内面1cと取付け基盤2の接着面2a或いは下地壁3との間のクリアランス6に弾性接着剤5を介在させない構造について例示したが、クリアランス6に弾性接着剤5を介在させても良い。
【0059】
即ち、クリアランス6に接着剤を介在させて外装プレート1の内面1cと接着面2aまたは下地壁3とを接着する構成とするか、及び/またはクリアランス6に接着剤を介在させない構成とすることが出来る。
【0060】
クリアランス6に弾性接着剤5が介在する場合、外装プレート1の周辺部1aにおいて弾性接着剤5に繰り返し作用する引張応力を低減する効果は小さくなる。外装プレート1の中央クロス十字部1bに弾性接着剤5を介在させるか否かは、風圧力等に対する面外耐力確保や、飛来物等への耐衝撃性等、他の観点も含め、総合的に定めるものであるが、弾性接着剤5の劣化特性や繰り返し疲労特性を配慮しての耐久設計の観点では、クリアランス6に弾性接着剤5を介在させない構造がより好ましい。
【0061】
図2では、図1のA−A位置における断面説明図を厚さ方向に10倍程度拡大して模式的に示している。このA−A位置では取付け基盤2の接着面2aが連続して配置されており、外装プレート1の中央クロス十字部1bにおけるクリアランス6はスペーサ4の厚さ以上となっており、その範囲で、外装プレート1に反りが生じた場合に接着面2a寄りへの変形が可能である。その変形状態を図2の点線で模式的に示した。
【0062】
図3では、図1のB−B位置における断面説明図を厚さ方向に10倍程度拡大して模式的に示している。このB−B位置では取付け基盤2は4つの周辺部1aに配置されており、外装プレート1の中央クロス十字部1bにおけるクリアランス6は取付け基盤2の厚さとスペーサ4の厚さとの合計厚さ以上となっており、その範囲で、外装プレート1に反りが生じた場合に下地壁3寄りへの変形が可能である。その変形状態を図3の点線で模式的に示した。
【0063】
図6(a),(b)は、外装プレート1が矩形形状をしている場合で、相互に距離を離した2つの周辺部1dのそれぞれにスペーサ4が設けられた状態を例示したものである。図6(a)の例では、2つの周辺部1dは、相互に、外装プレート1の1辺の1/5の距離だけ離れた略中央位置に配置されており、2つの周辺部1dには、各々スペーサ4が設けられている。
【0064】
図6(b)の例では、同様に、2つの周辺部1dは、相互に、外装プレート1の1辺の1/5の距離だけ離れた互いに斜向かいの位置に配置されており、1つのスペーサ4が、2つの周辺部1dを跨って設けられている。
【0065】
図7は、外装プレート1が矩形形状をしている場合で、相互に距離を離した3つの周辺部1eにそれぞれスペーサ4が設けられた状態を例示したものである。3つの周辺部1eは、相互に、外装プレート1の1辺の1/5以上の距離だけ離れた上方中央部と下方両端部の3点の位置に配置されている。図7では上方の周辺部1eと下方の周辺部1eとの間の離間距離が外装プレート1の1辺の1/5の距離だけ離れており、下方両端部の周辺部1e相互の離間距離が外装プレート1の1辺の1/3の距離だけ離れている。このように3つの周辺部1eを結ぶと三角形を構成するような構造とすることで、図6に示す例よりも更に外装プレート1を接着面2aに対して安定して平行度を保って張り付けることが容易になる。
【0066】
スペーサ4の厚みは、一般に、0.8mm以上、且つ10mm以下の寸法とするのが好ましい。更に好適な範囲は、1.5mm以上、且つ5mm以下である。確保すべきスペーサ4の厚みは、弾性接着剤5の変形追従性能により、また、外装プレート1による壁面を何年保たせる設計とするかで、弾性接着剤5の劣化特性にもよる。更には、外装プレート1の大きさや熱膨張率等の物性にもよる。一方、建築物側の下地壁3と、外装プレート1の動きの違いによる面内のムーブメントは、条件により様々で、これら多数の要素を加味して設計されるものである。
【0067】
例えば、外装プレート1の寸法が600mmで、面内のムーブメントが0.5mmとすると、変形追従性能に優れた弾性接着剤5を採用すれば、スペーサ4の厚みが0.5mmで、外装プレート1と接着面2aとの間の弾性接着剤5の厚さを0.5mm程度確保する場合であっても、初期値としては、面内の動きには十分に追従性はあると考えられるが、弾性接着剤5の劣化特性を考慮し、50年、100年の耐用年数を考えた場合は、外装プレート1と接着面2aとの間の弾性接着剤5の厚さを2mm前後確保するのが望ましいと考えられる。
【0068】
尚、外装プレート1と接着面2aとの間の弾性接着剤5の厚さを確保するためには、外装プレート1の外形寸法に係わらず、スペーサ4を配置することによって、所定の効果が得られるが、外装プレート1の外形寸法が300mm未満のような小さな寸法の場合、スペーサ4の配置位置を外装プレート1の周辺部とせず、外装プレート1の中央部にだけ60mm(外装プレート1の辺の1/5長さ寸法)未満のスペーサ4を配置しただけでも、外装プレート1を接着面2aに対して、平行度を保って張り付けて弾性接着剤5の厚さを確保する施工が、比較的、安定し易い。外装プレート1の外形寸法は大きくなる程好適であり、外装プレート1の外形寸法は300mm以上が好ましく、更には、400mm以上の場合がより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の活用例として、建築物に外装プレートを取付ける構造として好適に利用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る外装プレート取付け構造を示す平面説明図である。
【図2】図1のA−A断面説明図である。
【図3】図1のB−B断面説明図である。
【図4】外装プレートの平面説明図である。
【図5】外装プレート取付け用の各種スペーサの構成を示す斜視図である。
【図6】相互に距離を離した2つの周辺部の各種例を示す平面説明図である。
【図7】相互に距離を離した3つの周辺部の1例を示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1…外装プレート
1a…周辺部
1b…中央クロス十字部
1c…内面
1d…周辺部
1e…周辺部
2…取付け基盤
2a…接着面
2b…透孔
2c…固定面
2d…固定用透孔
2e…自重受け片
2f…隙間
3…下地壁
4…スペーサ
4a…フック
4b…突起
4c…バン線
4d…フック部材
5…弾性接着剤
6…クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物側の下地壁に設けられた取付け基盤の透孔を有した接着面が、外装プレート内面と略平行に配置され、且つ前記下地壁の前面に隙間を確保した構造で、接着剤を前記接着面の透孔に絡み接合構造となるように、外装プレートを接着して取り付ける構造において、
1枚の外装プレートに対して、相互に距離を離した少なくとも2つの周辺部に、所定の厚さ寸法を有したスペーサを前記接着面と前記外装プレート内面との間に設けたことを特徴とする外装プレート取付け構造。
【請求項2】
前記外装プレートは矩形形状で、該1枚の外装プレートに対して、4つの頂点から各辺の1/3の長さの範囲である4つの周辺部のうちの少なくとも3つの周辺部に、所定の厚さ寸法を有したスペーサを前記接着面と前記外装プレート内面との間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の外装プレート取付け構造。
【請求項3】
前記1枚の外装プレートの前記4つの周辺部を除く中央クロス十字部では、前記外装プレートの内面に対して、前記取付け基盤の接着面との間に前記スペーサの厚み以上、及び/または、前記下地壁との間に前記スペーサと前記取付け基盤の合計の厚み以上、のクリアランスを設け、前記クリアランスに、接着剤を介在させて前記外装プレート内面と前記接着面または前記下地壁とを接着するか、及び/または、前記クリアランスに、接着剤を介在させない構成としたことを特徴とする請求項2に記載の外装プレート取付け構造。
【請求項4】
前記スペーサにフックが設けられ、前記取付け基盤に、該フックを引っ掛けて設置したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の外装プレート取付け構造。
【請求項5】
前記スペーサは、隣接する2枚以上の外装プレートに跨って設置したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の外装プレート取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−107201(P2007−107201A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297055(P2005−297055)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】