説明

外観検査方法および外観検査装置

【課題】被検査体の表面の状態に個体差がある場合であっても、個体差の影響を除去して被検査体の表面を精度良く検査できる外観検査方法および外観検査装置を提供すること。
【解決手段】基準画像および検査対象である被検査体の外観を撮像することができる撮像手段30と、外撮像手段が撮像した基準画像を記憶することができる記憶手段62と、前記被検査体の外観を撮像した画像から一部のエリアを抽出するとともに、前記記憶手段に記憶される基準画像から前記抽出したエリアに対応する座標のエリアを抽出し、前記被検査体の外観を撮像した画像から抽出されたエリアの輝度と前記基準画像から抽出されたエリアの輝度を比較して、該比較結果に基づいて前記被検査体の外観を撮像した画像の輝度を補正する演算手段61と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観検査方法および外観検査装置に関するものであり、特に好適には、鋳造品や鍛造品などの被検査体の表面を撮像し、当該撮像した画像を画像処理することによって、被検査体に欠陥がないかなどを検査する外観検査方法および外観検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳造品や鍛造品は、鋳造加工や鍛造加工により所定の形状に成形された後、表面に欠陥が存在しないかなどを検査する外観検査が行われることがある。鋳造品や鍛造品などの被検査体の外観検査としては、作業者(検査者)の目視によるもののほか、被検査体の表面をCCDカメラなどで撮像し、当該撮像した画像を画像処理することによって行うものがある。画像処理によって行う外観検査としては、たとえば、欠陥のない鋳造品や鍛造品の表面を撮像した画像(すなわち、基準となる画像)と、被検査体の表面を撮像した画像とのパターンマッチングを行い、基準となる画像と被検査体の画像との相関が所定の閾値より低い場合には、欠陥が存在するとみなす方法などがある。
【0003】
ところで、鋳造品は、鋳造加工により成形された後、表面の清浄や表面の粗度を均一にする目的のために、サンドブラスト処理が施されることがある。サンドブラスト処理は、鋳造品の表面に砂などの粒子を吹きつける処理であり、吹き付けられた砂などの粒子が鋳造品の表面に衝突して研磨することによって、鋳造品の表面を清浄にするとともに、表面の粗度を均一にする。
【0004】
サンドブラスト処理に用いられる砂は、新品または新品に近い状態においては、砂の粒子が全体として角張った形状をしており(トゲトゲしており)、鋳造品の表面を研磨する能力が高い。そして、サンドブラスト処理での使用を繰り返すことによって、使用される砂が磨耗して全体として丸まった形状になっていき、鋳造品の表面を研磨する能力が低くなっていく。このため、新品または新品に近い砂を用いてサンドブラスト処理を行った場合には、鋳造品の表面が大きく研磨され、サンドブラスト処理された鋳造品の表面の明るさの度合が高くなる。これに対して、磨耗が進んだ砂を使用してサンドブラスト処理を行った場合には、鋳造品の表面が大きくは研磨されないため、鋳造品の表面の明るさの度合が低くなる。このように、サンドブラスト処理においては、使用する砂の状態(たとえば使用履歴)によって、鋳造品の表面の状態(たとえば明るさの度合)に個体差が生じることがある。
【0005】
また、鍛造加工された鍛造品の表面を清浄にするなどの目的で、鍛造品にショットブラスト処理が行われることがある。このほか、表面の機械的性質の向上などの目的で、ショットピーニングが実施されることがある。ショットブラスト処理およびショットピーニング処理は、微小な鋼球や鋼粉などを吹き付ける処理であり、微小な鋼球や鋼粉を吹き付けることにより、表面の清浄や機械的性質の向上を図る。このようなショットブラスト処理やショットピーニング処理においても、鋼球や鋼粉の状態や使用履歴などによって、サンドブラスト処理と同様に、表面の状態(たとえば明るさの度合)に個体差が生じることがある。
【0006】
サンドブラスト処理やシャットブラスト処理などが施された鋳造品や鍛造品を、画像処理により外観検査する場合において、前記のように表面の状態(特に明るさの度合)に個体差が存在すると、次のような問題が生じることがある。鋳造品や鍛造品などの被検査体の表面の撮像においては、所定の表面性状を有する部分が所定の輝度で撮像されるように、所定の光量の光源を用いて被検査体の表面を照明する。この際に、被検査体の表面の状態(明るさの度合)に個体差が存在すると、同じような表面性状であるにもかかわらず、撮像された画像は輝度が相違することになる。
【0007】
このため、撮像された画像を画像処理するに際して、特定の輝度の画像に好適な画像処理条件を適用すると、当該輝度から外れた輝度の画像については、正確に欠陥の有無を判定することが困難となる。そしてその結果として、被検査体の表面の明るさの度合などの個体差によって、誤判定されるということが生じる。たとえば、所定の閾値の輝度よりも低い箇所を欠陥であると判定するように設定される場合には、表面の明るさの度合いが低い被検査体は、欠陥がないにもかかわらず、欠陥を有すると判定されることがある。
【0008】
さらに、前記のように被検査体の表面を所定の光量の光源を用いて照明する構成においては、光源の経時劣化などにより光量が変化することがある。被検査体ごとに光源の光量が相違すると、被検査体ごとに異なる輝度の画像が撮像されることになる。このため、表面に状態(明るさの度合)に個体差がある場合と同様の問題が発生することがある。
【0009】
【特許文献1】特開2006−17668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、被検査体の表面の状態(特に明るさの度合)に個体差がある場合であっても、個体差の影響を除去して被検査体の表面を精度良く検査できる外観検査方法および外観検査装置を提供すること、または、被検査体の表面に曲面で構成される部分が含まれる場合であっても、曲面で構成されることに起因する輝度差の影響を除去して被検査体の表面を精度良く検査できる外観検査方法および外観検査装置を提供すること、または、光源の光量が被検査体ごとに相違した場合であっても、精度良く検査できる外観検査方法および外観検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、サンドブラスト処理またはショットブラスト処理またはショットピーニング処理が施された被検査体の表面を検査する外観検査方法であって、基準となる物品の外観を撮像して基準画像を取得し、該基準画像の輝度分布を示す被検査体輝度画像を取得する段階と、前記被検査体の外観を撮像して被検査体画像を取得し、該被検査体画像の輝度分布を示す被検査体輝度画像を取得する段階と、前記被検査体輝度画像から、あらかじめ設定した位置のエリアを被検査体エリアとして抽出する段階と、前記基準輝度画像から前記被検査体エリアの位置に対応するエリアを基準エリアとして抽出する段階と、前記被検査体エリアと前記基準エリアとの、それぞれの輝度分布のデータを所定座標方向に一次元データに変換し、当該各エリアの輝度値として設定する段階と、前記設定された各エリアの輝度値同士を、前記座標ごとに比較する比較段階と、前記比較結果に基づいて、前記被検査体輝度画像の輝度分布を、前記基準画像の輝度分布に近付ける補正を行う補正段階と、前記補正後の被検査体輝度画像について所定の画像処理を施して外観検査を行う段階と、を含むことを要旨とするものである。
【0012】
前記比較段階は、前記座標ごとに前記被検査体エリアの輝度値を前記基準エリアの輝度値で除して、当該座標ごとに比率を求め、該座標方向の比率の変化を直線で近似し、当該近似直線の切片を補正レートとして設定するものであり、
前記補正段階は、前記設定した補正レートの逆数を、前記被検査体輝度画像の全体に一律に乗ずるものであることが好ましい。
【0013】
また、前記被検査体輝度画像からあらかじめ設定した位置のエリアを被検査体エリアとして抽出する段階の後に、前記被検査体エリアの画像に欠陥が含まれているか否かを判定する段階をさらに有し、該段階において欠陥が含まれていると判定された場合には、当該抽出した被検査体エリアとは他の異なる被検査体エリアを前記被検査体輝度画像から新たに抽出するとともに、当該新たに抽出した被検査体エリアに対応するエリアを前記基準画像から抽出することが好ましい。
【0014】
前記基準となる物品の外観を撮像し取得する基準画像は、サンドブラスト処理の砂またはショットブラスト処理の鋼球が新しいものを使用して形成した物品を撮像した画像と、古いものを使用して形成した物品を撮像した画像との二つの画像であり、前記比較段階は、前記二つの基準画像に設定されたそれぞれの輝度値の平均を新たに基準エリアの輝度値として設定し直し、当該設定し直した該基準エリアの輝度値と、前記被検査体エリアの輝度値とを、前記座標ごとに比較するものである構成であっても良い。
【0015】
本発明は、基準となる物品の外観の基準画像および被検査体の外観の被検査体画像を撮像することができる撮像手段と、該撮像手段が撮像した基準画像を記憶することができる記憶手段と、前記基準画像の輝度分布を示す被検査体輝度画像を取得するとともに、前記被検査体画像の輝度分布を示す被検査体輝度画像を取得し、前記被検査体輝度画像から、あらかじめ設定した位置のエリアを被検査体エリアとして抽出するとともに、前記基準輝度画像から前記被検査体エリアの位置に対応するエリアを基準エリアとし、前記被検査体エリアと前記基準エリアとの、それぞれの輝度分布のデータを所定座標方向に一次元データに変換し、当該各エリアの輝度値として設定し、設定された各エリアの輝度値同士を前記座標ごとに比較し、前記被検査体輝度画像の輝度分布を前記基準画像の輝度分布に近付ける補正を行うことができる演算手段と、を備えることを要旨とするものである。
【0016】
ここで、前記演算手段は、前記座標ごとに前記被検査体エリアの輝度値を前記基準エリアの輝度値で除して、当該座標ごとに比率を求め、該座標方向の比率の変化を直線で近似し、当該近似直線の切片を補正レートとして設定し、前記設定した補正レートの逆数を、前記被検査体輝度画像の全体に一律に乗ずるものであることが好ましい。
【0017】
なお、本発明においては、「エリア」とは画素(ピクセル)が二次元配列された領域をいう。具体的にはたとえば、100ピクセル×100ピクセルの通常の領域を「エリア」と称することに加え、1ピクセル×100ピクセル(通常はラインと呼ぶ)であっても、「エリア」に含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被検査体を撮像した画像の輝度が、基準画像基づいて補正されているから、基準画像を画像処理する条件で被検査体を撮像した画像を画像処理しても、精度良く検査を行うことができる。したがって、被検査体の表面性状(特に明るさの度合)に個体差がある場合や、光源の経時劣化などによって撮像の条件(特に照明の条件)に個体差がある場合などにおいても、精度良く検査を行うことができる。
【0019】
特に、被検査体の外観を撮像した画像から抽出されたエリアの輝度の値を、前記基準画像から抽出されたエリアの輝度の値で除し、被検査体の外観を撮像した画像に前記除して算出された値の逆数を乗ずる構成とすると、被検査体の外観を撮像した画像の輝度を基準画像の輝度にほぼ等しくすることができる。したがって、検査を行う画像の輝度がほぼ統一できるから、基準画像を画像処理する条件で被検査体を撮像した画像を画像処理しても、精度良く検査を行うことができる。
【0020】
また、被検査体の外観を撮像した画像から一部のエリアを抽出する段階の後に、前記被検査体の外観を撮像した画像から抽出されたエリアの画像に欠陥が含まれているか否かを判定する段階をさらに追加し、この段階において欠陥が含まれていると判定された場合には、当該抽出したエリアとは他の異なるエリアを前記被検査体の外観を撮像した画像から新たに抽出するとともに、当該新たに抽出したエリアに対応するエリアを前記基準画像から抽出するようにすれば、欠陥のないエリアの輝度に基づいて画像全体の輝度の補正を行うことができる。したがって、補正の精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の各種実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態にかかる外観検査装置10の一例の構成を示す概略図である。本発明の実施形態にかかる外観検査装置10は、被検査体として自動車のターボチャージャ用の羽根車1(すなわち、タービンホイール)の外観検査に用いられる装置である。このターボチャージャ用の羽根車1は、鋳造(たとえば、ロストワックス製法)により成形されるものであり、鋳造により成形後、サンドブラスト処理によって、表面の清浄と表面の粗度の均一化が行われるものである。そして、本発明の実施形態にかかる外観検査装置は、サンドブラスト処理が施された被検査体(羽根車(タービンホイール))の外観を検査することによって、鋳造不良の有無を判定する。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施形態にかかる外観検査装置10は、被検査体(羽根車1)を所定の位置に保持することができるワーク保持手段20と、羽根車1の外観を撮像して画像情報を得ることができる撮像手段30と、羽根車1に光を照射することができる光源装置40と、羽根車1の位置を検知することができるワーク位置センサ50と、撮像した画像の画像処理やワーク保持手段20の制御などを行うことができる制御ユニット60とを備える。
【0024】
ワーク保持手段20は、被検査体(羽根車1)を所定の位置に保持することができる。図1に示すように、ワーク保持手段20は、羽根車1を回動自在に支持することができる回動機構部21と支持部22とが、基台23上に取付けられて構成されている。回動機構部21は、羽根車1の軸部材2の軸方向端部のレンチボス4に当接して、羽根車1のレンチボス4側を支持するためのチャック部24、及びチャック部24に接続されチャック部24を回動させるためのサーボモータ25を備えている。また支持部22は、羽根車1のシャフト保持部5側に当接して、チャック部24との間で羽根車1を挟んで、羽根車1を回動自在に保持するためのホルダ部26を備えている。羽根車1は、ワーク保持手段20によって軸方向の両端が保持される。
【0025】
撮像手段30は、羽根車1の外観を撮像して画像情報を得ることができる。撮像手段30には、たとえばCCDカメラなどの公知の各種撮像手段が適用できる。光源40は、羽根車1に光を照射することができる。光源40としては、例えばLEDライト、フラッシュライト等の各種光源が適用できる。
【0026】
ワーク位置センサ50は、羽根車1の位置(姿勢)を検知することができる。このワーク位置センサ50は、制御ユニット60の制御手段63に接続されており、ワーク保持手段20に保持される羽根車1の位置情報(姿勢情報)を制御手段63に送信することができる。ワーク位置センサ50は公知の各種位置センサ等を用いることができる。
【0027】
制御ユニット60は、撮像した画像の画像処理や、撮像手段30およびワーク保持手段20などの制御を行うことができる。具体的には、制御ユニット60は、演算手段61と記憶手段62と制御手段63とを備える。演算手段61は撮像手段30に接続されており、撮像手段30が撮像した画像のデータを受信して、所定の処理を行うことができる。記憶手段62は、撮像手段30が撮像した画像のデータや、演算手段が処理したデータなどを記憶することができる。制御手段63は、ワーク位置センサ50やサーボモータ25などに接続され、ワーク位置センサ50からの信号を受信して、サーボモータ25の動きを制御することができる。たとえば制御手段63は、羽根車1をステップ送り(回転)するようにサーボモータ25の回転を制御することが可能である。また、制御手段63は、ワーク位置センサ50の信号や、撮像手段30が撮像した画像情報等に基づいて、撮像手段の位置や姿勢を変化させることができる。この制御ユニット60には、パーソナルコンピュータやワークステーションなどが適用できる。
【0028】
図2は、本発明の実施形態にかかる外観検査方法の対象となる羽根車1の外観を示す斜視図である。それぞれ、(a)は羽根車1を軸方向の一方側から見た図であり、(b)は羽根車1の軸方向の他方側から見た図である。図2(a)、(b)に示すように羽根車1は、軸部材2とこの軸部材2の周囲に設けられている複数のねじれ羽根3とから構成されている。また、羽根車1は、図2(a)に示すように、軸部材2の一方の端部が、六角形等のボルト形状のように正多角形の凸部からなるレンチボス4として形成されている。そして、軸部材2の他方の端部が、図2(b)に示すように、中央部が円形に窪んだクレーター状の凹部からなるシャフト保持部5が設けられている。シャフト保持部5は、別部材のシャフトを溶接等で一体化するために設けられている。この羽根車1はロストワックス法により鋳造される。そして、鋳造により成形された後は、表面の性状などを目的として、サンドブラスト処理が施される。材質としては、合金ステンレス、TiAl等が用いられる。
【0029】
本発明の実施形態にかかる外観検査装置10および外観検査方法は、このような羽根車1などの鋳造品であって、サンドブラスト処理などが施された後に、その表面を検査するために適用される。たとえば、羽根車1の表面に現れるピンホールやブローホールを検出することや、ねじれ羽根の端部などに発生する湯境欠陥を検出することなどを目的に行うものである。
【0030】
以下に、本発明の実施形態にかかる外観検査装置を用いた外観検査方法(本発明の実施形態にかかる外観検査方法)について説明する。図3は、本発明の実施形態にかかる外観検査方法の流れの概略を示したフローチャートである。本発明の実施形態にかかる外観検査方法は、大きく段階分けを行うと、(1)基準となる画像データを取得する段階、(2)検査対象となる画像データを取得する段階、(3)検査対象となる画像データを補正する補正レートを決定する段階、(4)決定した補正レートに基づいて検査対象となる画像データの輝度の補正を行う段階、(5)輝度が補正された画像を画像処理して被検査体の外観検査を行う段階、の5段階となる。
【0031】
(1)基準となる画像を取得する段階
ステップS−1において、基準画像が撮像され、保存される。基準となる画像は、平均的な表面性状を有し、かつ表面に欠陥のない被検査体(以下、実際に検査対象となる被検査体と区別するため、「リファレンス」と称する)の画像を撮像した画像とする。たとえば、サンドブラスト処理で使用する砂の寿命をN回とした場合において、N/2回程度使用された砂を用いてサンドブラスト処理が施されたリファレンスの表面が、平均的な表面性状を有するものとする。具体的には、サンドブラスト処理で使用する砂の寿命を3500回とした場合において、1800回程度使用された砂を用いてサンドブラスト処理が施されたリファレンスの表面性状を、平均的な表面性状とする。そして、このリファレンスの表面を撮像した画像を基準画像とする。
【0032】
基準画像の撮像においては、撮像領域の輝度の分布が均一になるように、撮像手段30(CCDカメラ)の位置および光源40(LED)の位置や明るさを調整することが好ましい。
【0033】
撮像される画像のサイズは特に限定されるものではないが、たとえば20mm×30mm程度の範囲を撮像した画像が適用される。撮像する領域は、被検査体(羽根車1)の実際の検査対象領域に対応する領域とする。撮像された画像は、複数のピクセル(画素)のマトリックスデータ(行列)として得られる。N行M列(N,Mは所定の自然数)のマトリックスデータは、たとえば、行が画像のX座標、列がY座標となる。そして撮像された基準画像は、所定の輝度階調を有する画像に変換される。たとえば、撮像された画像は、各ピクセルが256階調(8ビット階調)の輝度階調を有する画像に変換される。この画像が基準輝度画像である。そして変換された画像(特に各ピクセルの輝度情報)は、記憶手段に記憶される。
【0034】
(2)検査対象となる画像データを取得する段階
ステップS−2において、実際の検査対象である被検査体の検査領域を撮像する。撮像条件は、基準画像の撮像条件と同一にすることが好ましい。基準画像の撮像と同様に、表面に曲面が含まれる物体の撮像において、輝度の分布を均一にすることは困難であるが、輝度の分布の傾向が、基準画像の輝度の分布と同様な傾向にあれば問題がないと考えられる。
【0035】
ステップS−3において、被検査体の画像についても基準輝度画像と同様の処理を行い、輝度階調を有する画像に変換した画像(被検査体輝度画像)を得る。そして被検査体輝度画像から一部の領域を抽出する。この抽出した領域を「補正エリア(被検査体エリア)」と称する。補正エリアは、撮像した画像の輝度を補正する補正レートを算出するために、画像の各ピクセルの輝度階調を採取するエリアである。なお、補正エリアの範囲は特に限定されるものではないが、たとえば100ピクセル×100ピクセルの領域を抽出する。
【0036】
ステップS−4において、ノイズ除去処理が行われる。ここで、被検査体を撮像した画像がノイズを含んでいることがある。ノイズを含んだまま後のステップの処理を行うと、画像処理の段階(撮像された画像に基づいて、欠陥の有無を判定する段階)において、ノイズを欠陥であると判定することがあり、検査精度が低下するおそれがある。そこで、ステップS−4において、撮像した被検査体の画像に対し、ガウシアンフィルタや平均化フィルタなどを用いて、ノイズ除去処理が行われる。
【0037】
羽根車1のような被検査体は、サンドブラスト処理が施されており、砂の粒子によってその表面が研磨されている。したがって、局所的に研磨量が大きく輝度が高い孤立点が存在することがある。このような局所的に輝度が高い孤立点は欠陥ではないため、検査精度の向上を図るためには、画像処理の段階において欠陥と判定されないようにすることが好ましい。そこで、このような孤立点をノイズとして扱い、ガウシアンフィルタや平均化フィルタなどを用いてノイズ除去処理を行うことによって、このような局所的に現れる孤立点を暈かして平均化する。そして、このノイズ除去処理が行われた画像を用いて、後のステップの処理を行う。
【0038】
なお、ノイズ除去処理は、図3のフローチャートに示すように、補正エリアを抽出するごとに、当該抽出した補正エリアに対して行っても良く、また、撮像した画像全体に対して行っても良い(すなわち、ステップS−2とステップS3の間において行っても良い)。また、このノイズ除去処理は、選択的に実施される処理であり、必ずしも実施しなくとも良い。
【0039】
ステップS−5において、輝度階調採取が行われる。すなわち、抽出した補正エリアの各ピクセルの輝度階調が採取される。そして、基準画像から、当該抽出した補正エリアに対応する領域を抽出し、当該基準画像から抽出された領域の各ピクセルの輝度階調を採取する。すなわち、被検査体を撮像した画像のうちからその一部(補正エリア)を抽出して輝度階調を採取し、同様に、リファレンスを撮像した画像のうちから、抽出した補正エリアに対応する位置(領域、座標)の画像を抽出して輝度階調を採取する。
【0040】
そして、採取した輝度階調に基づいて、輝度のX軸方向成分またはY軸方向成分が平均化される。数学的にいうと、補正エリアの画像データは、N行M列のマトリックスデータ(N,Mは所定の自然数)であから、このマトリックスデータに基づいて、1行M列の行ベクトルまたはN行1列の列ベクトルが作成される。前記の例では補正エリアの画像データは、100ピクセル×100ピクセルのマトリックスデータであるから、このマトリックスデータに基づいて、1行100列の行ベクトル、または100行1列の列ベクトルが作成される。具体的には、補正エリアの画像データがan,m(1,2,3,・・・,n,・・・,N、1,2,3,・・・m,・・・,M)であるとすると、次の数式(1)で与えられる行ベクトル、または数式(2)で与えられる列ベクトルが作成される。
【0041】
【数1】

【0042】
【数2】

【0043】
これらの行ベクトルbまたは列ベクトルcは、補正エリアの画像データのX軸方向の輝度またはY軸方向の輝度の平均値を成分とするベクトルである。このように、補正エリアの画像データが二次元データから一次元データに変換される。すなわち、「面」として得たデータが、「線」のデータに変換される。以下、この作成された一次元のデータに基づいて処理が行われる。このように「線」のデータを用いることにより、後の処理が簡単になる。なお、ステップS−3で抽出するエリアとして、たとえば1ピクセル×100ピクセルといった領域(一般にはラインと呼ばれる領域)を抽出する場合には、この領域自体が平均化された一次元データとして得られるため、このデータを用いて処理すればよい。かかる処理を施すことで、補正エリアと基準画像のエリア(基準エリア)との、それぞれの輝度を一次元データの輝度値として設定することができる。
【0044】
図4は、平均化された補正エリアの輝度と、当該補正エリアに対応する基準画像の平均化された輝度とを表したグラフの一例である。図4においては、被検査体は、新品の砂を用いてサンドブラスト処理を行ったものである。また、基準画像のリファレンスは、1800回のサンドブラスト処理を行った砂を用いてサンドブラスト処理を行ったものである。図4に示すように被検査体はリファレンスに比較して新しい砂を用いてサンドブラスト処理を行っており、砂の研磨能力が大きいため、リファレンスの画像に対して輝度が全体的に高い。
【0045】
なお、基準画像および被検査体を撮像した画像の両方において、輝度に傾きがあるが、これは、リファレンスおよび被検査体の表面が曲面であるため、リファレンスまたは被検査体の表面で反射した光の入射状態(撮像手段への入射)が、座標によって相違するためであると考えられる。すなわち、反射光の進行方向と撮像手段の光軸とが一致しているかまたは近い位置においては輝度が高く、反射光の進行方法と撮像手段の光軸とが離れるにしたがって、輝度が低くなっていくものと考えられる。
【0046】
(3)検査対象となる画像データを補正する補正レートを決定する段階
ステップS−6において、補正エリアの各ピクセル(一次元に変換後のデータ)の輝度が規格化される。具体的には、補正エリアの各ピクセルの輝度を、基準画像から抽出した画像のうちの対応する座標のピクセルの輝度で除す。この処理を「規格化」と称し、座標ごとに輝度値を比較する処理である。図5は、図4の例について、基準画像から抽出した画像のうちの対応する座標のピクセルの輝度で除した値(すなわち、規格化された輝度)を示したグラフである。補正エリアの各ピクセルの輝度を、基準画像から抽出した画像のうちの対応する座標のピクセルの輝度で除した値(規格化された輝度)は、補正エリアの各ピクセルの輝度が、基準画像に比較してどの程度高いかまたは低いかを示す指標となる。すなわち、図4に示すように、補正エリアの各ピクセルの輝度が、基準画像から抽出した画像のうちの対応する座標のピクセルの輝度よりも高い場合には、図5に示すように、規格化された輝度は1よりも大きくなり、反対に輝度が低い場合には、規格化された輝度は1よりも小さくなる。
【0047】
ステップS−7において、抽出した補正エリアに欠陥が含まれていないかを判定する。欠陥が含まれている場合には、正しい補正レートを算出することが困難となる。このため、補正エリアに欠陥が含まれていると判定された場合には、ステップS−3に戻り、被検査体を撮像した画像から、当該欠陥が含まれる補正エリアとは別のエリアを抽出する。そして新たに抽出したエリアを新たな補正エリアとし、ステップS−4以降の処理を繰り返す。なお、抽出した補正エリアに欠陥が含まれているか否かを判定する処理および、欠陥が含まれている場合の具体的な処理については後述する。まず、補正エリアに欠陥が含まれないものとして説明をする。
【0048】
ステップS−8において、規格化された輝度に基づいて補正レートを算出する。図5に示すように、グラフに基づいて、縦軸(y:値域)を規格化された輝度とし、横軸(x:定義域)を座標とする関数y=ax+b(a:傾き、b:切片)で近似する。近似方法は、最小二乗法などの公知の各種近似方法が適用できる。
【0049】
被検査体の補正エリアの表面性状(輝度の分布)が、基準画像から抽出した画像と同様の傾向を有する場合には、図5に示すように、規格化された輝度は、傾きがほとんどない一次関数によって近似される。すなわち、規格化された輝度をy=ax+b(a:傾き、x:座標、b:切片)で表した場合(たとえば最小二乗法で近似した場合)、傾きaはゼロに近い値となる。そしてこの切片bを「補正レート」とする。
【0050】
(4)決定した補正レートに基づいて検査対象となる画像データの輝度の補正を行う段階
ステップS−9において、被検査体を撮像した画像を補正する。具体的には、被検査体を撮像した画像の各ピクセルの輝度に、算出した補正レートの逆数を乗じる。図6は、被検査体を撮像した画像の補正エリアの各ピクセルの輝度に補正レートの逆数を乗じた輝度と、基準画像から抽出した画像のうちの対応するピクセルの輝度とを重ね合わせたグラフである。図6に示すように、補正エリアの各ピクセルの輝度に、補正レートの逆数を乗じると、それらの輝度は、基準画像の輝度にほぼ等しくなる。このように、補正レートの逆数を乗じることにより、被検査体を撮像した画像の輝度を、基準画像の輝度に近付けることができる。
【0051】
そして、被検査体を撮像した画像の一部(すなわち、補正エリア)と、基準画像のうち当該補正エリアに対応する領域(すなわち、基準エリア)を用いて補正レートを算出することにより、被検査体を撮像した画像の全体の輝度を補正することになる。このような構成によれば、被検査体を撮像した画像のうち、欠陥が含まれない領域を補正エリアとして抽出することができるから、精度の高い補正レートを算出することができる。また、全体どうしを比較する構成に比して、計算量を少なくすることができる。
【0052】
(5)輝度が補正された画像を画像処理して被検査体の外観検査を行う段階
ステップS−10において、補正された画像を使用して画像処理を行い、検査を実施する。なお、画像処理により外観検査を行う方法は、二値化により欠陥を判定する方法や、パターンマッチングにより基準画像との相関を算出して、相関の大小によって欠陥を判定する方法などが適用できる。このように、画像処理により外観検査を行う方法は公知であることから、説明は省略する。
【0053】
前記のように、被検査体を撮像した画像の輝度が、基準画像の輝度にほぼ等しくなるように補正されているから、基準画像を画像処理する条件で被検査体を撮像した画像を画像処理しても、精度良く検査を行うことができる。したがって、被検査体の表面性状(特に明るさの度合)に個体差がある場合や、光源の経時劣化などによって撮像の条件(特に照明の条件)に個体差がある場合などにおいても、精度良く検査を行うことができる。
【0054】
次に、抽出した補正エリアに欠陥が含まれているか否かを判定する処理および、欠陥が含まれている場合の具体的な処理について説明する。図7(a)は、抽出した補正エリアに欠陥がある場合における、当該抽出した補正エリアの各ピクセルの輝度と、当該抽出した補正エリアに対応する基準画像の各ピクセルの輝度を合わせて示したグラフであり、図7(b)は、当該欠陥を有する補正エリアの輝度を規格化した値を示すグラフである。
【0055】
図7(a)に示すように、たとえば抽出した補正エリアに欠陥があると、輝度が部分的に低下したり上昇したりする。図7(a)においては、輝度が部分的に低下している場合を示す。たとえば、被検査体の表面(鋳肌)にピンホールやブローホールが存在すると、図7(a)に示すように、当該ピンホールやブローホールを撮像した部分において、輝度が部分的に低くなることがある。このように、正常な表面性状を有する分に比較して輝度が低い部分や高い部分が存在すると、補正エリアの輝度に基づいて算出される補正レートが、欠陥の影響を受け、正しい値にならないことがある。たとえば、輝度の低くなるような欠陥が存在すると、補正レートも、欠陥のない補正エリアを用いて算出した場合に比較して、その値が小さくなることがある。そうすると、被検査体の全体を撮像した画像を正しく補正することができなくなり、検査の精度が低下することがある。
【0056】
そこで、このような場合には次のとおりとする。まず、抽出した補正エリアに欠陥があるかどうかにかかわらず、ステップS−1からステップS−6までの処理を実行し、規格化した輝度を算出する(図3参照)。そして、図7(b)に示すように、規格化した輝度の最大値と最小値の差を算出する。この差をピーク幅とする。このとき、ピーク幅が所定の閾値以上であれば、抽出した補正エリアに欠陥が存在するものとみなす。たとえば、ピーク幅が、規格化された輝度において30パーセント以上の輝度差であれば、欠陥が存在するものとみなす。なお、ステップS−4においてノイズ除去処理が行われていれば、ノイズや孤立点は欠陥として判定されない。
【0057】
このように、欠陥があると判定された場合には、ステップS−3に戻り、被検査体を撮像した画像の全体から、当該欠陥が含まれる補正エリアとは別のエリアを抽出する。そして新たに抽出したエリアを新たな補正エリアとし、ステップS−4以降の処理を繰り返す。このような処理を行うと、欠陥が含まれない補正エリアを参照して補正レートが算出されるから、精度の高い検査を行うことができる。
【0058】
なお、ステップS−7において欠陥があると判定された場合には、ステップS−3に戻らずに、そのまま被検査体に欠陥があるとみなす処理を行っても良い。すなわち、S−7において欠陥と判定された場合には、本来欠陥の有無を判定すべきであるS−10において欠陥があると判定された場合と同様の処理を行っても良い。このような構成とすれば、処理を少なくすることができ、処理の単純化を図ることができる。
【0059】
次いで、本発明の他の実施形態について説明する。前記実施形態においては、基準画像として、平均的な表面性状を有する標準試験片の表面を撮像した画像を適用したが、必ずしも、このような標準試験片を用いる必要はない。以下に示す他の実施形態は、平均的な表面性状を有する標準試験片を用いない形態である。以下、主に図3を参照して説明する。
【0060】
(1)基準となる画像を取得する段階
ステップS1−1において、まず、あるリファレンスに対して、新品の砂または新品に近い状態の砂を用いてサンドブラスト処理を行い、当該あるリファレンスの表面を撮像する。また、他のリファレンスに対して、寿命に達した砂または寿命に近い砂を用いてサンドブラスト処理を行い、当該他のリファレンスの表面を撮像する。このように、新旧2種類の砂を用いてサンドブラスト処理を施した基準画像をそれぞれ撮像する。そして、撮像された2つの基準画像は、それぞれ所定の輝度階調を有する画像に変換される。たとえば、撮像された画像は、256階調(8ビット階調)の輝度階調を有する画像に変換される。そして変換された画像は、それぞれ記憶手段に記憶される。なお、撮像条件などは、前記実施形態と同じ条件などが適用できる。
【0061】
(2)検査対象となる画像データを取得する段階
ステップS−2、ステップS−3、ステップS−4、ステップS−5は、前記実施形態と同じ構成が適用できる。したがって、説明は省略する。
【0062】
(3)検査対象となる画像データを補正する補正レートを決定する段階
ステップS−6において、抽出した補正エリアの各ピクセルの輝度が規格化される。具体的には、補正エリアの各ピクセルの輝度を、基準画像に基づいて算出されたピクセルの輝度で除す。この処理を、この他の実施形態において「規格化」と称するものとする。
【0063】
ここで、基準画像に基づくピクセルの輝度の算出方法について説明する。まず、撮像して保存した2つの基準画像のそれぞれから、抽出した補正エリアに対応する領域の輝度を抽出する。図8は、2つの基準画像のそれぞれから、抽出した補正エリアに対応する領域の輝度を示したグラフである。このグラフは、2つの基準画像のプロットを合わせて示してある。
【0064】
図8に示すように、2つの基準画像のそれぞれから、抽出した補正エリアに対応する領域の輝度を抽出し、横軸(x軸:定義域)を画像の座標(ピクセル)とし、縦軸(y軸:値域)を輝度とするグラフを作成する。そして作成したそれぞれのグラフに基づいて、それぞれのプロットを良く表している関数を求める。関数の導出方法には、最小二乗法などの公知の各種方法が適用できる。図8のグラフに示す例においては、新品の砂を用いてサンドブラスト処理を行ったリファレンスの輝度の関数は、y=0.0332x+83.027であり、寿命に達した砂を用いてサンドブラスト処理を行ったリファレンスの輝度の関数は、y=0.0244+65.854である。そしてさらに、導出した2つの関数の中間値をとる関数を作成する。図8に示す例では、y=((0.0332+0.0244)/2)x+(83.027+65.854)/2=0.0288x+74.441となる。そして、このように導出された関数の変数x(定義域)に、ピクセル座標を代入することにより、当該ピクセルの基準画像に基づくピクセルの輝度が算出される。
【0065】
そして、抽出した補正エリアの各ピクセルの輝度を、基準画像に基づいて算出されたピクセルの輝度(前記のようにして導出した関数)で除した値、すなわち規格化された輝度を算出する。補正エリアの各ピクセルの輝度を、基準画像から抽出した画像のうちの対応する座標のピクセルの輝度で除した値は、補正エリアの各ピクセルの輝度が、基準画像に比較してどの程度高位かまたは低いかを示す指標となる。すなわち、補正エリアの各ピクセルの輝度が、基準画像から抽出した画像のうちの対応する座標のピクセルの輝度よりも高い場合には、規格化された輝度は1よりも大きくなり、反対に輝度が低い場合には、規格化された輝度は1よりも小さくなる。
【0066】
ステップS−7、ステップS−8については、前記実施形態と同じ構成が適用できることから、説明は省略する。同様に、(4)決定した補正レートに基づいて検査対象となる画像データの輝度の補正を行う段階、(5)輝度が補正された画像を画像処理して被検査体の外観検査を行う段階については、前記実施形態と同じ構成が適用できることから、説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明は、前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能であることはいうまでもない。たとえば前記実施形態においては、外観検査の対象として、鋳造成形されサンドブラスト処理が施された羽根車(タービンホイール)を挙げたが、外観検査の対象は、羽根車(タービンホイール)に限定されるものではない。種々の鋳造品に適用することができる。
【0068】
また、鋳造品のほかにも、ショットピーニングやショットブラスト処理が施される被検査体に対して適用することができる。すなわち、表面性状が正常であるにもかかわらず、表面の光の反射の度合が異なるような処理が施される被検査体に対して適用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態にかかる外観検査装置の構成の概略を、模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる外観検査方法の適用対象となる羽根車(タービンホイール)の外観を示した斜視図であり、(a)は羽根車(タービンホイール)を軸方向の一方側から見た図であり、(b)は羽根車(タービンホイール)の軸方向の他方側から見た図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる外観検査方法の流れの概略を示したフローチャートである。
【図4】抽出した補正エリアの各ピクセルの輝度と、当該各ピクセルに対応する基準画像の各ピクセル(基準画像から抽出したピクセル)の輝度とを表したグラフの一例である。
【図5】図4に示す例を規格化した輝度を示すグラフである。
【図6】被検査体を撮像した画像の補正エリアの各ピクセルの輝度に補正レートの逆数を乗じた輝度と、基準画像から抽出した画像のうちの対応するピクセルの輝度とを重ね合わせたグラフである。
【図7】(a)は、抽出した補正エリアに欠陥ある場合における、当該抽出した補正エリアの各ピクセルの輝度と、当該抽出した補正エリアに対応する基準画像の各ピクセルの輝度を合わせて示したグラフであり、(b)は、当該欠陥を有する補正エリアの輝度を、そのまま規格化した値を示すグラフである。
【図8】2つの基準画像のそれぞれから、抽出した補正エリアに対応する領域の輝度を示したグラフである。
【符号の説明】
【0070】
1 羽根車
2 軸部材
3 ねじれ羽根
4 レンチボス
5 シャフト保持部
10 外観検査装置
20 ワーク保持手段
21 回動機構部
22 支持部
24 チャック部
25 サーボモータ
26 ホルダ部
30 撮像手段
40 光源
50 ワーク位置センサ
60 制御ユニット
61 演算手段
62 記憶手段
63 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンドブラスト処理またはショットブラスト処理またはショットピーニング処理が施された被検査体の表面を検査する外観検査方法であって、
基準となる物品の外観を撮像して基準画像を取得し、該基準画像の輝度分布を示す被検査体輝度画像を取得する段階と、
前記被検査体の外観を撮像して被検査体画像を取得し、該被検査体画像の輝度分布を示す被検査体輝度画像を取得する段階と、
前記被検査体輝度画像から、あらかじめ設定した位置のエリアを被検査体エリアとして抽出する段階と、
前記基準輝度画像から前記被検査体エリアの位置に対応するエリアを基準エリアとして抽出する段階と、
前記被検査体エリアと前記基準エリアとの、それぞれの輝度分布のデータを所定座標方向に一次元データに変換し、当該各エリアの輝度値として設定する段階と、
前記設定された各エリアの輝度値同士を、前記座標ごとに比較する比較段階と、
前記比較結果に基づいて、前記被検査体輝度画像の輝度分布を、前記基準画像の輝度分布に近付ける補正を行う補正段階と、
前記補正後の被検査体輝度画像について所定の画像処理を施して外観検査を行う段階と、
を含むことを特徴とする外観検査方法。
【請求項2】
前記比較段階は、前記座標ごとに前記被検査体エリアの輝度値を前記基準エリアの輝度値で除して、当該座標ごとに比率を求め、該座標方向の比率の変化を直線で近似し、当該近似直線の切片を補正レートとして設定するものであり、
前記補正段階は、前記設定した補正レートの逆数を、前記被検査体輝度画像の全体に一律に乗ずるものである
ことを特徴とする請求項1に記載の外観検査方法。
【請求項3】
前記被検査体輝度画像からあらかじめ設定した位置のエリアを被検査体エリアとして抽出する段階の後に、前記被検査体エリアの画像に欠陥が含まれているか否かを判定する段階をさらに有し、該段階において欠陥が含まれていると判定された場合には、当該抽出した被検査体エリアとは他の異なる被検査体エリアを前記被検査体輝度画像から新たに抽出するとともに、当該新たに抽出した被検査体エリアに対応するエリアを前記基準画像から抽出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の外観検査方法。
【請求項4】
前記基準となる物品の外観を撮像し取得する基準画像は、サンドブラスト処理の砂またはショットブラスト処理の鋼球が新しいものを使用して形成した物品を撮像した画像と、古いものを使用して形成した物品を撮像した画像との二つの画像であり、
前記比較段階は、前記二つの基準画像に設定されたそれぞれの輝度値の平均を新たに基準エリアの輝度値として設定し直し、当該設定し直した該基準エリアの輝度値と、前記被検査体エリアの輝度値とを、前記座標ごとに比較するものである
ことをと特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の外観検査方法。
【請求項5】
基準となる物品の外観の基準画像および被検査体の外観の被検査体画像を撮像することができる撮像手段と、
該撮像手段が撮像した基準画像を記憶することができる記憶手段と、
前記基準画像の輝度分布を示す被検査体輝度画像と前記被検査体画像の輝度分布を示す被検査体輝度画像とを算出し、あらかじめ設定した位置のエリアを前記被検査体輝度画像から被検査体エリアとして抽出するとともに、前記基準輝度画像から前記被検査体エリアの位置に対応するエリアを基準エリアとして設定し、設定された前記被検査体エリアと前記基準エリアとのそれぞれの輝度分布のデータを一次元データに変換するとともに当該各エリアの輝度値として設定し、設定された各エリアの輝度値同士を前記座標ごとに比較し、前記被検査体輝度画像の輝度分布を前記基準画像の輝度分布に近付ける補正を行うことができる演算手段と、
を備えることを特徴とする外観検査装置。
【請求項6】
前記演算手段は、前記座標ごとに前記被検査体エリアの輝度値を前記基準エリアの輝度値で除して、当該座標ごとに比率を求め、該座標方向の比率の変化を直線で近似し、当該近似直線の切片を補正レートとして設定し、前記設定した補正レートの逆数を、前記被検査体輝度画像の全体に一律に乗ずることを特徴とする請求項5に記載の外観検査装置。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−66153(P2010−66153A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233467(P2008−233467)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】