説明

外部寄生生物撲滅方法および製剤

スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を用いて、動物における外部寄生生物の寄生を局所的に抑制するための新規の方法および製剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外部寄生生物撲滅方法および製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ノミ、シラミ、クロバエ、カ、マダニ(tick)およびダニ(mite)などの外部寄生生物は、ヒトおよび同様に動物にとって問題となる。このような有害生物は、体重増加を減少させること、低い品質の皮、羊毛、および肉を生じること、ならびに一部の場合において死をもたらすことにより、家畜産業における生産性に重要な影響を与える。外部寄生生物はまた、ペットにおいて疾患および不快感を引き起こす。外部寄生生物は、ヒトの病原体となる細菌およびウイルスを保有することが知られている。外部寄生生物が引き起こす疾患としては、例えば、マラリア、リンパ管フィラリア症、トラコーマ、トリパノソーマ症、および河川盲目症が挙げられる。
【0003】
外部寄生生物を抑制するための試みとして、殺虫剤および農薬の使用が挙げられている。例えば、天然由来の発酵産物である、スピノシンが、動物およびヒトにおける外部寄生生物撲滅薬として利用されている(Snyder、特許文献1および特許文献2;Kassebaumら、特許文献3;ならびにJanssenら、特許文献4)。
【0004】
スピノシンの誘導体は農業用途に利用されている(DeAmicisら、特許文献5)。スピネトラムは、25〜90%、好ましくは50〜90%の(2R,3aR,5aR,5bS,9S,13S,14R,16aS,16bR)−2−(6−デオキシ−3−O−エチル−2,4−ジ−O−メチル−アルファ−L−マンノピラノシルオキシ)−13−[(2R,5S,6R)−5−(ジメチルアミノ)テトラヒドロ−6−メチルピラン−2−イルオキシ]−9−エチル−2,3,3a,4,5,5a,5b,6,9,10,11,12,13,14,16a,16b−ヘキサデカヒドロ−14−メチル−1H−as−インダセノ[3,2−d]オキサシクロドデシン−7,15−ジオン(「ジヒドローEt−J」と称される、以下の式I)、および10〜75%、好ましくは10〜50%の(2R,3aR,5aS,5bS,9S,13S,14R,16aS,16bS)−2−(6−デオキシ−3−O−エチル−2,4−ジ−O−メチル−アルファ−L−マンノピラノシルオキシ)−13−[(2R,5S,6R)−5−(ジメチルアミノ)テトラヒドロ−6−メチルピラン−2−イルオキシ]−9−エチル−2,3,3a,5a,5b,6,9,10,11,12,13,14,16a,16b−テトラデカヒドロ−4,14−ジメチル−1H−as−インダセノ[3,2−o]オキサシクロドデシン−7,15−ジオン(「Et−L」と称される、以下の式II)の混合物についての慣用名である(Podhorezら、特許文献6)。
【化1】

【化2】

スピネトラムは、様々な農作物における広範囲の害虫の長期間の抑制を提供すると記載されている(非特許文献1)。スピネトラムは、ナシ状果の果実市場において殺虫剤としてニュージーランドにおいて登録されていることが報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,063,771号明細書
【特許文献2】米国特許第6,664,237号明細書
【特許文献3】米国特許第6,933,318号明細書
【特許文献4】米国特許第7,030,095号明細書
【特許文献5】米国特許第6,001,981号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0108800A1号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Dow AgroSciences Spinetoram Technical Bulletin、2006年11月
【非特許文献2】「Dow AgroSciences Receives First Global Registration for Spinetoram Insecticide」,Dow AgroSciences Newsroom,Corporate News,2007年,8月10日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スピノシンならびに他の殺虫剤および農薬の使用は有益であるが、代替または改良された製剤および方法が必要とされている。所望の製剤および方法は、代替治療を与えるだけでなく、現在の治療の少なくとも一部の限界も克服する。このような限界としては、毒性および安全性、有効性(効能および持続期間)、ならびに抵抗力の問題が挙げられる。また、殺虫剤および農薬の有益な使用に影響を与えることは、投与の様式および反復を含む、投与の障害となる。例えば、動物に投薬することは、多くの場合、不都合および/または困難であるため、有効性を維持しながら投与の頻度を減少させることが望まれる。本発明は、外部寄生生物の寄生に対処するための代替の任意選択物を与える、動物に使用するための外部寄生生物撲滅方法および製剤を包含する。さらに、それらは、現在の殺虫剤および農薬の使用における少なくとも一部の限界を克服し、特に、外部寄生生物の有効な長期間の安全な局所的抑制を提供する。本発明は優れた殺傷速度および残効性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有効量のスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を、動物に局所投与することによって、動物の外部寄生生物の寄生を抑制する方法、ならびにスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される担体を使用して外部寄生生物の寄生を局所的に抑制するための医薬製剤を提供する。本発明はまた、有効量のスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を、イヌまたはネコに局所投与することによって該イヌまたはネコのノミ寄生を抑制するための方法を提供する。スピネトラムを使用する方法および製剤の別の態様は、外部寄生生物の寄生の長期間の局所的抑制を提供することにより、動物への投与の反復を、例えば1週間もしくは2週間に1回以下、または1ヶ月に1回以下に減少させる能力、および初期のノックダウン効果を提供する能力である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
宿主動物は、哺乳動物またはトリ(シチメンチョウ、ニワトリ)もしくはサカナなどの非哺乳動物であってもよい。宿主動物が哺乳動物である場合、その宿主動物は、ヒトまたは非ヒトの哺乳動物であってもよい。非ヒトの哺乳動物としては、畜産動物(livestock animal)およびペット(companion animal)などの家畜(domestic animal)が挙げられる。畜産動物としては、ウシ、ラクダ、ブタ、ヒツジ、ヤギおよびウマが挙げられる。ペットとしては、ヒトと動物との絆の一部としてヒトと密接に関わって所有され、保持されている、イヌ、ウサギ、ネコ、および他のペットが挙げられる。ネコに関して、その動物は好ましくは、8週齢またはそれ以上である。
【0010】
外部寄生生物としては、一般に動物に寄生または感染する、昆虫およびダニ目の害虫が挙げられ、さらに、それらの卵、幼虫、サナギ、若虫、および成虫期が挙げられる。このような害虫としては、ノミ、シラミ、カ、ダニ、マダニ、および吸血、噛むまたは不快なハエ種が挙げられる。特定の標的はハエであり、より特には、ネコノミ(Ctenocephalides felis)である。ヒトジラミ(Pediculus humanus)およびケジラミ(Pthirus pubis)がヒトにおける2つの特定の標的である。
【0011】
「抑制する」とは、動物宿主において、現在の寄生を改善もしくは取り除くか、または寄生を予防することをいう。
【0012】
「局所的」とは、動物またはヒトの外表面領域に適用することと定義し、皮膚または髪を含む。これは、経皮適用などの重要な全身適用を含まない。
【0013】
「有効量」とは、外部寄生生物を抑制するのに十分なスピネトラム、またはその塩の量をいい、外部寄生生物の寄生集団の測定可能な減少を引き起こすことを含む。この抑制は、供給すると、害虫の系に侵入するスピネトラムまたはそのコンジュゲートもしくは塩の結果であり得るか、あるいはスピネトラムまたはそのコンジュゲートもしくは塩の存在に起因する忌避剤の作用を介する結果であり得る。この方法におけるスピネトラムまたはその塩についての範囲は、動物の体重1kg当たり0.01mgより多くから1000mg、望ましくは0.1mg〜500mg、およびより望ましくは10mg〜350mgの範囲である。
【0014】
例えば塩ならびに担体および成分などの製剤成分を指して本明細書に使用される場合、「薬学的に受容可能」とは、「獣医学的に受容可能」および「皮膚科学的に受容可能」を含み、従ってヒトおよび動物の両方の適用を含む。
【0015】
医薬的に許容される塩、およびそれらを調製する一般的方法は当該技術分野において公知である。例えば、P.Stahlら,HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE,(VCHA/Wiley−VCH,2002):S.M.Bergeら,「Pharmaceutical Salts」,Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.66,No,1,1977年1月を参照のこと。塩の例としては、限定されないが、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、コール酸、パモン酸、粘液酸、グルタミン酸、ショウノウ酸、グルタル酸、グリコール酸、フタル酸、酒石酸、ギ酸、ラウリン酸、ステアリン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ソルビン酸、ピクリン酸、安息香酸、桂皮酸などの有機酸および無機酸の両方との標準的な反応によって形成される塩が挙げられる。
【0016】
用語「担体」は、製剤中の活性成分以外の任意の成分を示すために本明細書に使用される。担体の選択は、特定の投与様式、溶解性および安定性に対する担体の効果、ならびに投与形態の性質などの要因に大きく依存する。
【0017】
スピネトラムおよびその塩は、局所投与のための医薬組成物として製剤化され得る。そのような医薬組成物およびそれらを作製するためのプロセスは当該技術分野において公知である。スピネトラムまたはその塩は、0%より多くから90%、望ましくは0.1%〜50%、およびより望ましくは1%〜45%(全て重量パーセント)の量で製剤中に存在し得る。特定の製剤は、純粋な基本成分に基づいて約39.6%のスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を含み、製剤の残りの部分は1またはそれ以上の担体が存在する。本発明の製剤はまた、酸化防止剤、緩衝剤、防腐剤、界面活性剤、キレート剤、保湿剤、混和剤、UV吸収化合物または光安定剤、粘性修飾剤、抗菌剤、他の活性剤、色素、香料、調整剤、脱臭剤および生理学的または皮膚科学的に受容可能な希釈剤、賦形剤または補助剤などの他の最適な成分を含んでもよい。このような薬剤は当該技術分野において公知である。このような任意の成分は、例えば、30〜65重量%、より標準的には45〜60重量%のベンジルアルコール;0〜15重量%、より標準的には0〜10重量%のDowanol DPM;および0〜2重量%、より標準的には0.1〜1.0重量%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などの他の成分であってもよい。
【0018】
スピネトラムまたはその塩の投与は、任意の適切な適用による局所投与であってもよい。化合物および製剤は、皮膚または髪に組成物を直接付けるか、または塗ることによって動物に局所投与されてもよい。製剤は、スポットオン(spot−on)適用、プランジまたはスプレーディッピング、ハンドヘルドスプレーを用いるかもしくはレース(race)中での噴射、またはバックラインスプレーとして、またはポアオン(pour−on)により適用されてもよい。投与は、例えば害虫による寄生および曝露の重度に応じて、毎日、週1回、週2回、または月1回、行われてもよい。月1回の投与が大部分の状況において通常好ましいが、一部の場合において、投与後の十分な残効性が5、6、7、8、もしくは9週またはそれ以上に延びることも理解されるべきである。一例として、C.felisに関して、90%以上の残効性が投与後9週より長く延び得る。
【0019】
本発明に有用な製剤は皮膚または髪への局所適用に適切な製剤を含み、様々な製品タイプにすることができる。それらとしては、限定されないが、溶液、エアロゾル、ローション、クリーム、ゲル、スティック、軟膏、ペースト、クリームリンス、シャンプー、およびボディーソープが挙げられる。
【0020】
スピネトラムを、局所活性を測定するためにインビトロおよびインビボでのバイオアッセイを用いて評価した。多くのアッセイにおいて、スピノサドを、コンパレータまたはヒストリカル陽性対照として使用し、一方、他の標準物(フィプロニル、ペルメトリン、イミダクロプリド)を利用した。スピネトラムは、技術的活性として、および製剤においての両方で使用した。
【実施例】
【0021】
幼虫小包試験(Larval Packet Test)(LPT)/マダニ
試験物質を2:1の比のトリクロロエチレン:オリーブオイル中で製剤化する。組織生検バッグを1mlの製剤化した物質で満たし(1つの試験レベルにつきn=3)、バッグを少なくとも2時間ドラフト下で乾燥させる。約50〜100匹の幼虫期のマダニを各バッグに入れ、そのバッグを、プラスチックディスプレイクリップを用いて密封し、27℃および95%相対湿度にて24時間インキュベートする。次いでバッグを開き、生きている/死んでいるマダニを数える。非線形回帰を使用して、用量−死亡率の関係をモデル化し、同時対照(溶媒のみまたはフィプロニル)と比較して相対効果(LD50)データを得る。
【0022】
成体サシバエまたはイエバエのアッセイ(ASF、AhsF)
このアッセイは実質的に、White,W.H.,S.M.Bauer,X.Zhaoら,Comparison of in vitro and in vivo ectoparasiticide activity of an experimental benzimidazole−carbamate with permethrin and amitraz,J.Med.Entomol.42,207−211(2005);およびWhite,W.H.,C.M.McCoy,J.A.Meyerら,Knockdown and mortality comparisons among spinosad−,imidacloprid−,and methomyl−containing baits against susceptible Musca domestica(Diptera:Muscidae) under laboratory conditions,J.Econ.Entomol.100,155−163(2007)に記載されているように実施する。
【0023】
試験物質を10mMにてDMSO中で製剤化する。同様の溶媒中で2倍希釈して、10個の試験レベルを得る。物質をウシ血清(サシバエ)または5%グルコース溶液(イエバエ)のいずれかで希釈して、200〜0.39μMの所望の曝露濃度を得る。約3mlの希釈した試験物質を試験管に入れ(1つの試験レベルにつきn=3)、歯科用ウィックを使用して流体を吸収する。1つの歯科用ウィックを100mmのペトリ皿内部の低重量のボートに入れる。約10匹の混合した性別の成体ハエを、二酸化炭素を用いて麻酔し、各皿内で計数する。皿を27℃および50〜70%相対湿度でインキュベートする。ハエを麻酔から回復させ、化合物を浸した歯科用ウィックを供給する。24時間後、生きている/死んでいるハエを数える。非線形回帰を使用して、用量−死亡率の関係をモデル化し、同時対照(溶媒のみまたはペルメトリン)と比較して相対効果(LD50)データを得る。
【0024】
ノミ接触アッセイ(FCA)/ネコノミ
試験物質を、所望の曝露濃度にてアセトン中で製剤化し、2倍希釈を実施して全部で10の試験レベルを得る。約0.05mlの製剤化した物質を、少量のイヌの毛を含有する試験管の底に分注する。アセトンをドラフト下で一晩蒸発させる。約10匹の混合した性別の成体のネコノミを、二酸化炭素を用いて麻酔し、各管に分注する。管を、通気したプラスチックキャップを用いて密閉し、27℃および75〜80%相対湿度にてインキュベートする。24時間後、生きている/死んでいるノミを数える。非線形回帰を使用して、用量−死亡率の関係をモデル化し、同時対照(アセトンのみまたはフィプロニル)と比較して相対効果(LD50)データを得る。
【0025】
以下の表1は、スピネトラム(技術的)対標準物についてのインビトロでの特性の要約を示す。
【0026】
【表1】

【0027】
スピノサドと比較して、スピネトラムは、成体のイエバエおよび成体のネコノミに対してインビトロにおいて著しく高い殺虫活性を示す(それぞれ、5.5および2.4倍以上の効果)。
【0028】
ノックダウンおよび残効性試験ならびに処理したパネル上でイエバエを抑制するためのスピネトラムとElector(登録商標)との比較
スピネトラム(120g/Lの懸濁液濃度)およびスピノサド(25g/Lの懸濁液濃度、Elector)の試験物質濃度を、Electorを用いてイエバエを抑制するためのラベルの推奨されている前提となるスプレー使用率に基づいて、0.04%(スピネトラムのみ)または0.08%(両方)のいずれかの所望の試験濃度まで蒸留水で希釈した。商業的なビルディング供給業者から得た1平方フットのパネルは、未処理の合板、コンクリートおよびシートメタルから構成された。合板およびコンクリート基板の両方の第2のセットを用意し、屋外用の等級のラテックスである白色のラテックス塗料を用いて塗った。希釈した物質を、流れ去る(run−off)時点までパネル上に噴霧した(パネル当たり約5秒)。全部で4つのパネルを、処置群(n=4)当たり試験した。イエバエを二酸化炭素を用いて麻酔し、パネル上に固定したプラスチック容器内に入れた。パネル当たり4つのサブの複製容器があり、各容器は10匹の混合した性別の成体のハエ(パネル当たり40匹)を含んだ。グルコースを浸した歯科用ウィックを、各カップの穴を通して固定し、ハエに食物および水の源を与えた。パネルは試験の間中、直立させたままにした。ハエの死亡および瀕死を、処置の適用後すぐに、曝露後、4、8、24、48および72時間の間隔において評価し、1ヶ月間、週に1回ベースで再度評価した。
【0029】
表2は、処置したパネル上でのイエバエ減少の幾何平均パーセントを示す。
【0030】
【表2】

【0031】
スピネトラムは、シートメタルおよび未塗装のコンクリートパネル上において2分の1の適用率でElectorと同等またはElectorより優れていた。スピネトラムは、未塗装の合板におけるElectorと比較して、同等の初期活性およびわずかに劣る残留効果を示した。
【0032】
代理の動物バイオアッセイ/マダニ(Amblyomma americanum)およびノミ
局所的曝露−試験物質を、所望の試験濃度、典型的に6%の活性成分またはそれ以下にてエタノールまたはアセトン中で製剤化する。2倍またはlog希釈のいずれかをエタノール中で実施して、さらなる試験濃度(3.0、0.3、0.03、および0.003mg/cm)を得る。マダニ封じ込め単位を、背面または成体のオスまたはメスのラットに付け、0.05mlの製剤化した試験物質を封じ込め単位の内側の表面領域に局所適用する。物質を一晩乾燥させ、その後、10匹の食物を与えていないイヌダニの若虫を、各々の封じ込め単位に入れる。各々の試験濃度について、全部で5匹のラットを通常使用する。マダニを、48時間、処置動物に付着させ、食物を与え、その後、封じ込め単位を開放し、生きている/死んでいるマダニを数える。ラットをマダニ寄生の時に成体のネコノミに同時寄生させ、同じ動物を用いて局所的殺虫活性についてデータを得る。エタノール中のスピネトラムは、スピノサドと同様のマダニの若虫に対する局所活性を示したが、アセトン中のスピノサドと比較して約5〜10倍の効果を示した。
【0033】
ウシの外部寄生生物撲滅試験(CET)/ノサシバエ(Haematobia irritans)および/または成体のマダニ(Amblyomma americanum)
ウシを、環境を制御した部屋(部屋当たり1または2匹の動物)に収容し、その部屋はハエが逃げるのを防ぐために遮断されたドアおよび通気システムを有する。処置の適用後、規定数のノサシバエを各部屋に放つ(典型的に、経済的閾値において、またはそれ以上の動物当たり200匹のハエ)。規定した期間の後、動物に残っているままである生きているノサシバエの数を数える。ノサシバエとマダニを組み合わせた実験を実施する場合、成体の一つ星ダニ(lone star tick)を、ウシの背面に接着させた外科用のメリヤス編みエンクロージャに入れる。ウシを、環境を制御した部屋内の改質したヘッドゲート内で抑える。ノサシバエは数えることができ、続いて、封じ込め単位内の死んだマダニの数を測定する。典型的に、動物当たり2つの封じ込め単位が存在し、処置群当たり少なくとも2匹の動物である。
【0034】
A)ウシにおける一つ星ダニ(Amblyomma americanum)寄生に対するスピネトラムの単回投与効果試験およびElectorとの比較
技術的スピネトラムを、Electorに見出されるものと同じ製剤成分を用いて25g/Lのスピネトラム濃度として製剤化した。試験物質を、全身への局所的スプレーとして動物に適用した。処置群当たり合計で2匹の動物であり、各動物は3つの封じ込め単位内にマダニを保有した(動物当たりn=3または処置群あたりn=6)。濃縮物(25g/L)を水で希釈し、処置レベルはElectorについての市販の割合と同等である(動物当たり0.5gAI)。表3は、処置動物において示した曝露間隔後のマダニの減少の割合(±SD)を示し、表4は、ウシにおける成体の一つ星ダニに対するスピネトラムおよびElectorについての殺傷速度の評価を示す。
【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
スピネトラムは、0.5g/動物の用量でウシに局所適用した場合、一つ星ダニ寄生の実験に対して、Electorと同等の活性(効果および殺傷速度)を示した。
【0038】
B)ポアオンまたは局所スプレーとしてウシに局所適用した場合のノサシバエに対するスピネトラムおよびElectorの治療および残効性試験
上記のようにスピネトラム(120g/L)、Elector(25g/Lのスピノサド)を使用した。試験物質を、全身への局所スプレーまたはそのままのポアオン(neat pour−on)のいずれかとして動物に適用した。スピネトラムは、ポアオンとして適用する前に25g/Lまで水に希釈した。動物当たり1Lの全量で全身へのスプレーとしての適用のために両方の物質を0.04%(400ppm)まで水に希釈した。処置群当たり全部で6匹の動物(n=6)および6匹の陰性対照動物が存在した。肉牛および乳牛を使用した。処置後、ノサシバエをウシを飼っている部屋に放った。チャレンジから24時間後、生きているハエを数えた。表5は、スピネトラムポアオン(2mg/kg)またはスプレー(0.04%AI)およびElectorポアオン(2mg/kg)またはスプレー(0.04%AI)を用いた寄生したウシの処置後のノサシバエ減少の割合の幾何平均を示す。
【0039】
【表5】

【0040】
ポアオン(2mg/kg)または全身への局所スプレー(0.04%AI)のいずれかとしてノサシバエに寄生したウシに適用した場合、スピネトラムおよびElectorは同等の治療効果を与えた。
【0041】
C)ウシにおけるBoophilius annulatus寄生の処置のための局所適用したスピネトラムの効果試験およびスピノサドとの比較
技術的スピネトラムおよび技術的スピノサドの両方を、市販のElectorと同様の25g/Lの懸濁液濃度の製剤として製剤化した。安定性アッセイ(HPLCおよびLPTバイオアッセイ)を、低い保存温度にて延長した期間(5週間)にわたる効果を確認するために実施した。処置の21日前に、幼虫期のB.annulatusのマダニをウシに予め寄生させ、処置の時点で、このマダニは非常に多くの数の全ての3つの生存期の存在を生じた。試験物質を0.025%(250ppm)まで希釈し、動物当たり10Lの体積でウシに全身への局所スプレーを適用した。処置群当たり全部で6匹の動物が存在した(n=6)。動物を周囲条件の温度および湿度下で、覆われた牛房に収容した。毎日、各牛房内の吸血し(engorged)、分離した成体のメスのマダニを動物から回収した。卵塊を秤量し、生存能力を評価するために、卵を孵化するようにした。効果を、動物当たりのメスのマダニの合計数および繁殖の指標(IF)に関して測定した。表6は、子牛当たりのメスのマダニの平均数、全ての繁殖の指標(IF)およびIFの全抑制(±SD)で示されるように、Boophilus annulatusを寄生させたウシに全身へのスプレーとして0.025%の活性成分(AI)で適用したスピノサドおよびスピネトラムの治療効果を示す。表7は、0.025%AIにてスピノサドまたはスピネトラムで処置したウシから回収したB.annulatusの異なる寄生生物の生存期(成体、若虫、幼虫)に対して得た治療効果(±SD)を示す。表8は、処置後1週間間隔で幼虫として寄生させたB.annulatusのマダニに対して得た、残効性または平均のIFの抑制の割合(±SD)を示す。
【0042】
【表6】

【0043】
平均は一般化線形モデル(GLM)、1元配置分散分析(1−way ANOVA)により試験した。平均間の差(P<0.05)は、Tukeyの全一対比較を用いて分離した。同じ列内の平均、その後の異なる文字はp<0.05レベルで有意であった。
【0044】
【表7】

【0045】
平均は主な効果として寄生生物の生存期および処置群を用いて一般化線形モデル(GLM)、2元配置分散分析(2−way ANOVA)により試験した。NSは有意性を示さない。
【0046】
【表8】

【0047】
スピネトラムおよびスピノサドは、B.annulatusに対して不十分な初期/ノックダウン活性を示したが、2週間を通して96%より高く、4週間を通して80%より高い幼虫の再寄生からの十分な防御を与えた(表8)。
【0048】
ネコノミ寄生を抑制するための局所的スポットオンとしてのスピネトラムの第1の評価
研究を、ネコにおけるノミ(C.felis)を抑制するために局所適用した種々の用量のスピネトラムの安全性および効果を評価するために実施した。20匹のネコを、各々5匹のネコの4つの群に割り当てた。
【0049】
局所用溶液は以下の通りであった。
A)50/50w/wのエタノール/ミリスチン酸イソプロピルの媒体中の202mg/ml(理論的)スピネトラム
B)87/13w/wのベンジルアルコール/Dowanol DPM[ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル]の媒体中の205mg/ml(理論的)スピネトラム
C)75/25w/wのイソプロパノール/Dowanol DPM[ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル]の媒体中の198mg/ml(理論的)スピネトラム
【0050】
媒体コントロールを使用した。上記の溶液は約27mg/kgの基準用量を対象とした。3つの処置群の各動物に、0日目に肩甲骨の間の皮膚に局所的スポットオンとして適用した溶液A、B、またはCを与えた。
【0051】
−8、−1、5、12、28、35、および42日目に動物をノミに寄生させた。ノックダウン活性を処置の24時間後に評価し、一方で、残効性を、5日目の再寄生で開始して再寄生の約48時間後に評価した。
【0052】
3つ全ての製剤は、14日を通して100%の残存抑制で100%の治療的(初期)ノックダウンを与えた。残効性は、3つ全ての製剤について、少なくとも1か月間95%より高く、1か月以上で93%より高いままであった。製剤Bは、37日を通して99%の効果、44日を通して90%の効果である、最も長い期間の残存活性を示した。製剤AおよびCは、37日から44日の間に時々90%以下の効果に落ちた。40〜50mg/kgの処置レベルは、ネコにおいて繰り返されるノミ寄生に対して60日以上の残存抑制を与えると予想される。
【0053】
ネコノミ寄生を抑制するための局所的スポットオンとしてのスピネトラムの第2の評価
研究を、ネコにおけるノミ(C.felis)を抑制するために局所適用した種々の用量のスピネトラムの安全性および効果を評価するために実施した。28匹のネコを、各々4匹のネコの7つの群に割り当てた。
局所用溶液は以下の通りであった。
1)スピネトラム42%w/v(210mgのスピネトラム/0.5ml用量)
2)スピネトラム20.5%w/v(205mgのスピネトラム/1.0ml用量)
3)プラシーボ/媒体コントロール。
各製剤は、上記の製剤B(87/13ベンジルアルコール/Dowanol DPM)に基づいて作製した。
【0054】
群を以下のように0日目にスポットオン適用により局所的に処置した。
【0055】
【表9】

【0056】
群7に30日目に第2の適用を与えた。溶液は、1×の処置率でネコ当たり約210mg、0.8×の処置率でネコ当たり168mg、および1.2×の処置率でネコ当たり252mgのスピネトラムを送達するために記載した用量体積で適用した。
【0057】
−6、−1、7、14、21、28、35、42、49、56、および63日目に動物をノミに寄生させた。ノミの効果を、1日目の処置の約24時間後、ならびに9、16、23、30、37、44、51、58、および65日目の寄生の約24時間後に評価した。
【0058】
スピネトラム溶液は、処置後24時間以内で100%の抑制を達成した。1×(210mg)用量の群は、溶液#2について44日を通して、および溶液#1について65日を通して100%の抑制を示した。全てのスピネトラム処置(0.8×−168mg、1×−210mg、および1.2×−252mg)は、処置後65日を通して90%より高い効果を生じた。
【0059】
ネコノミ寄生を抑制するための局所的スポットオンとしてのスピネトラムの第3の評価
研究を、ネコにおけるノミ(C.felis)を抑制するために局所的に適用したスピネトラムの殺傷速度の効果を評価するために実施した。36匹のネコを均一に6つの群に割り当てた。1つの群は処置せず、媒体のない群であった。−8および−1日目の研究において、各ネコを、約100匹の新しく現れた、約50/50のオス対メスのノミに分けた、餌を与えていない成体のノミ(C.felis)で寄生させた。使用した局所用溶液は、ベンジルアルコールおよびブチル化ヒドロキシトルエンを用いて、純粋な基本成分に基づいて、39.6%w/w(210mgのスピネトラム/0.5ml用量)のスピネトラムであった。研究の0日目に、皮膚レベルで頭の部分に適用することによって処置群に一度投与し、ノミの計数を以下のように実施した。
【0060】
【表10】

【0061】
処置の4時間後までに、生きているノミの数の63.2%の減少が観測された。投与の8時間後までに、効果レベルは94.6%まで上昇した。12および24時間の時点で効果は向上し続け、実質的に完全に抑制した(それぞれ98.6%および100%)。
【0062】
処置の7日後、90%以上のノミが、さらなる寄生の1時間以内に殺傷し、さらなる寄生の4、8、12、および24時間後において100%の減少が観測された。
【0063】
処置の28日後において、80.7%のノミの減少が、さらなる寄生の1時間後に観測され、4時間で91.6%の減少、8時間で98.5%の減少、12および24時間の両方で100%の減少が観測された。
【0064】
上記に示したように、スピネトラムは、優れた残効性および殺傷速度効果の両方を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の外部寄生生物の寄生を抑制する方法であって、該動物に有効量のスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を局所的に投与することを含む、方法。
【請求項2】
該動物が家畜である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該家畜がペットである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該ペットがイヌまたはネコである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該投与が、スポットオン、プランジまたはスプレーディッピング、ハンドヘルドスプレーを用いるかもしくはレース中での噴射、またはバックラインスプレーとして、またはポアオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該投与が、2週間に1回以下で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該投与が、月に1回以下で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該外部寄生生物が昆虫である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該昆虫がノミである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該有効量が、該動物の体重1kg当たり0.01〜1000mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該有効量が、該動物の体重1kg当たり10〜350mgである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
イヌまたはネコのノミの寄生を抑制するための方法であって、該イヌまたはネコに有効量のスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を局所的に投与することを含む、方法。
【請求項13】
該ノミが、Ctenocephalides felisである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該投与が、2週間に1回以下で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
該投与が、月に1回以下で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該有効量が、該イヌまたはネコの体重1kg当たり10〜350mgである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される担体を含む、外部寄生生物の寄生を局所的に抑制するための医薬製剤。
【請求項18】
該スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩が、該製剤の重量で0%〜90%より多い量で該製剤に存在する、請求項17に記載の医薬製剤。
【請求項19】
該スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩が、該製剤の重量で1〜45%の量で該製剤に存在する、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
該製剤が、スポットオン、プランジまたはスプレーディッピング、ハンドヘルドスプレーを用いるかもしくはレース中での噴射、またはバックラインスプレーとして、またはポアオン投与である、請求項17に記載の医薬製剤。
【請求項21】
シャンプー、コンディショナー、またはクリームリンスである、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項22】
2週間に1回以下で投与される、請求項17に記載の医薬製剤。
【請求項23】
月に1回以下で投与される、請求項22に記載の医薬製剤。

【公表番号】特表2012−530709(P2012−530709A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516226(P2012−516226)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/038768
【国際公開番号】WO2010/148053
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】