説明

外部断熱用途のためのコンポジット構造体

押出ポリスチレン層、モルタル層及びプライマー層を含むコンポジット構造体であって、この押出ポリスチレン層の少なくとも1個の表面が平らにされており、このモルタル層が再分散性粉末、セルロースエーテル、1種又はそれ以上の粘度調整剤、1種又はそれ以上の水硬性結合剤及び1種又はそれ以上の骨材を含むモルタル組成物から作られるコンポジット構造体。このようなコンポジット構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工業に於ける外部断熱システム(exterior thermal insulation system)に関する。特に、本発明は、下記性質、即ち低い水吸収、より長いオープンタイム、より高い結合強度の1個又はそれ以上を示す、断熱システムに於いて使用されるコンポジット構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
1970年代初期に欧州に於いて開発された外部断熱仕上システム(External Insulation Finish System)(EIFS)は、建設工業に於けるエネルギー節約に於ける重要な用途(application)である。1970年代初期に最初の石油危機が起こったとき、欧州に於ける各国は、エネルギー節約技術を真剣に開発し、実施することを始めた。例えばドイツ国に於いて、政府は個人家屋所有者が、彼らの家に於いてEIFSを適用することを奨励するために、彼らのための経済的補償を支給した。この政策はEIFSの開発を著しく促進した。1973年から1993年まで、EIFSは、ドイツ国だけで、約3憶m2の壁空間を占める新築に於いて適用され、それによって、冬季の間の著しい量の暖房用の油を節約した。
【0003】
1980年代の中頃に、幾つかの外国の企業が、中国に於いてEIFS技術を導入することを始めた。建設省及び幾つかの中国の省は、EIFSの促進を強化し、幾つかの科学研究機関及び企業もその当時、種々のEIFS技術を開発した。1996年に、最初の国家エネルギー節約作業会議が開催され、これは、中国の視野からのEIFS技術を更に強化した。現在、中国に於けるEIFS市場は、急速に増加しつつあり、EIFSは、中国に於いて、非常に重要なエネルギー節約技術になりつつある。
【0004】
EIFSの機能は、気象条件変化の間、一層安定な屋内温度及び湿度を保持することであり、したがって住宅内の快適さは著しく改良される。このシステムに於いて、断熱材料の適用によって、エネルギーが節約される。更に、外部壁の温度変化及び水分凝縮の減少は、建物の老化及び損傷を減少するであろう。
【0005】
EIFSは、主として、下記のコンポーネント、即ち断熱ボード(insulation board)、接着剤(断熱ボードを壁に接着する)、ベースコートモルタル(断熱ボードの保護コート及び仕上材料のベースコート)並びに仕上材料(塗料、タイル及びスタッコ(stucco)等)を有する。1970年代に、EIFS接着剤及びベースコートモルタルは、液体エマルジョン接着剤を、建設現場でセメントの中に混合することから製造され、これは、後に、工業界によって現在、使用されている二成分配合物であるように開発された。この適用方法で、多くの問題点、例えばセメントとエマルジョンとを、現場で均一に混合することができない、エマルジョン含有量を充分に制御できないなどが生じ、劣った性能及びシステム破損になった。これらの問題点及び他の問題点を克服するために、ポリマー変性セメント系ドライ混合モルタルをベースにする、だんだん改良された技術が、EIFSでますます一般的になりつつある。この技術を使用する製品は、中国の建築物及び建設工業に於いて、主要な製品になりつつある。
【0006】
二成分配合物のモルタルと比較して、ドライ混合モルタル(一成分配合物としても知られている)は、下記の利点、即ち
1.高い製品品質(大規模での自動化製造からの予備混合モルタルは、品質に於いて安定であり、信頼でき、多数の添加剤を、特別の品質要件に適合させることができる);
2.高い製造効率;
3.輸送及び貯蔵のための利便性;並びに
4.現場混合騒音、粉末及び汚染の減少(原材料の損失及び廃棄が、より低くなる)。
【0007】
一般的に言って、EIFSの接着性モルタルは、下記の特性を有しなくてはならない。
【0008】
・高い接着性能
・低い収縮性
・完全な保水性及び均一性、良好な作業性
・防水性及び耐アルカリ性。
【0009】
EIFSのベースコートモルタルは下記の性質も有していなくてはならない。
【0010】
・充分な変形能力
・仕上材料との相溶性(compatibility)
・凍結−解凍耐性
・急速乾燥、早期強度及び高い建設効率
・優れた耐衝撃性能。
【0011】
ドライ混合モルタル製品は、一般的に、三つの主成分、即ち接着材料、骨材(aggregate)(微細な充填材を含む)及び種々の化学的混合物を有する。接着材料は、主として、無機結合材料、例えばセメント、石灰及び石膏等を指す。これは、ドライ混合モルタルの最終強度に於いて、重要な役割を演じる。ドライ混合モルタル中の骨材は、結合機能を有しない無機材料を指す。これには、粗い骨材及び微細な充填材が含まれる。粗い骨材の粒子サイズは大きく、8mm以下の最大サイズである。微細な充填物の粒子サイズは、小さく、一般的に0.1mmよりも小さい。殆どのドライ混合モルタルの骨材は、使用レベルが高い珪砂である。微細な充填材は炭酸カルシウム粉末であってよい。
【0012】
EIFS技術は断熱建物外壁への発泡ポリスチレンボード(「EPS」)の使用に関する。典型的なEIFSの図解は図1に示される。典型的な用途に於いて、EPSボードへの接着性モルタル又は下塗りコート(rendering-coat)モルタルの結合強度は、約0.1Mpaであり、これらのモルタルのオープンタイムは約1.5時間である。
【0013】
現在存在する問題点には、以下のことが含まれる。
典型的なポリマーモルタルの可使時間(オープンタイム)は、約1.5時間であり、気象温度(weather temperature)で、このようなオープンタイムは1.5時間よりも短くなり得、このことは、ユーザー適性ではなく、作業現場で設備品質にマイナスの影響を与える。
【0014】
断熱材に対するポリマーモルタルの結合強度は約0.1MPaであり、これは、特にタイル仕上用途のためには、低いと考えられる。
【0015】
ポリマーモルタル層の現在の水吸収要件は、500g/m2よりも小さく、これは、高く、システム耐久性(凍結/解凍性能、耐候性性能)にマイナスの影響を有すると考えられる。
【0016】
本発明の一面は、システムの、より長いオープンタイム、より良い結合強度及びより良い水吸収を有するモルタル組成物を有する、新規なコンポジット構造体を開発することを求めるものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、押出ポリスチレン層、モルタル層及びプライマー層を含んでなるコンポジット構造体であって、この押出ポリスチレン層の少なくとも一つの表面が平らにされており、このモルタル層がa)再分散性粉末、b)セルロースエーテル、c)1種又はそれ以上の粘度調整剤、d)1種又はそれ以上の水硬性結合剤及びe)1種又はそれ以上の骨材を含んでなるモルタル組成物から作られる、コンポジット構造体に関する。
【0018】
一つの態様に於いて、押出ポリスチレン層は、フォーム(foam)断熱ボードである。好ましい態様に於いて、モルタル層は押出ポリスチレン層に隣接している。本発明の別の態様に於いて、コンポジット構造体は、仕上層を更に含み、ここで、モルタル層は、押出ポリスチレン層と仕上層との間に適用されている。更に別の態様に於いて、プライマー層は、押出ポリスチレン層の平らにされた表面に適用されている。別の態様に於いて、プライマー層は押出ポリスチレン層とモルタル層との間に適用されている。
【0019】
本発明の一つの態様に於いて、再分散性粉末は、エマルジョンラテックスの噴霧乾燥(spray drying)粉末を含み、好ましくは、再分散性粉末は、エチレン含有ポリマーを含む。更に好ましくは、再分散性粉末はビニルエステル−エチレンコポリマーを含む。なお更に好ましくは、再分散性粉末は、酢酸ビニル−エチレンコポリマー、酢酸ビニル/ビニル−バーサテート(vinyl-versatate)コポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー及びスチレン/アクリルコポリマー又はこれらの混合物の少なくとも1種を含む。最も好ましくは、再分散性粉末は酢酸ビニル−エチレンコポリマーを含む。
【0020】
一つの態様に於いて、コンポジット構造体には、約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約1重量%〜約10重量%、更に好ましくは約2重量%〜約5重量%の再分散性粉末を有するモルタル組成物が含有されている。
【0021】
別の態様に於いて、セルロースエーテルはヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテルを含む。モルタル組成物は約0.01重量%〜約50重量%、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%のセルロースエーテルを含む。
【0022】
なお別の態様に於いて、粘度調整剤は、鉱物のスメクタイト群の一つを含み、好ましくはヘクトライト粘土を含み、更に好ましくは非変性ヘクトライト粘土を含む。モルタル組成物は約0.01重量%〜約1重量%、好ましくは約0.05重量%〜約0.5重量%、更に好ましくは約0.1重量%〜約0.3重量%の粘度調整剤を含む。
【0023】
一つの態様に於いて、水硬性結合剤はセメントを含む。モルタル組成物は約10重量%〜約80重量%、好ましくは約20重量%〜約40重量%、更に好ましくは約25重量%〜約35重量%の水硬性結合剤を含む。
【0024】
別の態様に於いて、骨材は珪砂を含む。モルタル組成物は約20重量%〜約80重量%、好ましくは約30重量%〜約70重量%、更に好ましくは約50重量%〜約65重量%の骨材を含む。
【0025】
別の態様に於いて、プライマー組成物は水分散性である。プライマー組成物は、好ましくはエマルジョンポリマーを含み、更に好ましくはポリアクリルエマルジョンを含む。
【0026】
別の態様に於いて、プライマー組成物は、押出ポリスチレン層の各表面で、約2.5g/m2〜約150g/m2の量で適用される。好ましい態様に於いて、プライマー組成物は、押出ポリスチレン層の各表面で、約5g/m2〜約50g/m2の量で適用される。更に好ましい態様に於いて、プライマー組成物は、押出ポリスチレン層の各表面で、約20g/m2〜約35g/m2の量で適用される。
【0027】
一つの態様に於いて、モルタル組成物は、押出ポリスチレン層に適用されて、非連続的又は断続的モルタル層を形成する。別の態様に於いて、モルタル組成物は、押出ポリスチレン層に適用されて、均一化された、連続層を形成する。
【0028】
本発明は、押出ポリスチレン層、モルタル層及びプライマー層を含むコンポジット構造体であって、この押出ポリスチレン層の少なくとも一つの表面が平らにされており、このモルタル層が、0.2MPaよりも高い結合強度で押出ポリスチレン層に接着されている、コンポジット構造体にも関する。好ましい態様に於いて、モルタル層は0.25MPaよりも高い結合強度で押出ポリスチレン層に接着されている。
【0029】
本発明は、押出ポリスチレン層、モルタル層及びポリアクリルエマルジョン層を含むコンポジット構造体であって、この押出ポリスチレン層の両表面が平らにされており、その表面上に、ポリアクリルエマルジョン層が適用されており、このモルタル層が、このポリアクリルエマルジョン層の上に更に適用されており、モルタル層が、約2重量%〜約5重量%のビニルエステル−エチレンコポリマー粉末、約0.1重量%〜約1重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル、約0.1重量%〜約0.3重量%の未変性ヘクトライト粘土、約25重量%〜約35重量%のセメント及び約50重量%〜約65重量%の珪砂を含むモルタル組成物から作られる、コンポジット構造体にも関する。
【0030】
好ましい態様に於いて、少なくとも一つのモルタル層は埋封された(embedded)ガラス繊維メッシュを含む。
【0031】
本発明の別の態様に於いて、モルタル層は約2mm〜約10mmの厚さを有し、押出ポリスチレン層は約2cm〜約15cmの厚さを有する。
【0032】
本発明は、レベリングスクリード(leveling screed)、スタッコ仕上層及びコンポジット構造体を含む、壁基体に取り付けるための外部断熱システムであって、モルタル層が断熱層とレベリングスクリードとの間に使用されている、外部断熱システムにも関する。
【0033】
一つの態様に於いて、プライマー層は断熱層の両面上に適用されている。
【0034】
本発明は2.0時間よりも長いオープンタイム、断熱ボードとの0.25MPaよりも大きい結合強度(bonding strength)及び390g/m2よりも低い水吸収を有するモルタル組成物にも関する。
【0035】
本発明は、モルタル組成物を、平らにされた基体の上に適用して、モルタル層を形成し、押出ポリスチレンフォーム断熱層の平らにされた表面を調製し、プライマー組成物を、この押出ポリスチレン層の平らにされた表面の上に適用して、プライマー層を形成し、そして断熱層をこのモルタル層の上に適用することを含んでなる、建築構造体の外部の断熱及び仕上方法であって、このモルタル組成物が、再分散性粉末、セルロースエーテル、1種又はそれ以上の粘度調整剤、1種又はそれ以上の水硬性結合剤及び1種又はそれ以上の骨材を含む混合物から製造される、断熱及び仕上方法にも関する。
【0036】
一つの態様に於いて、本発明の方法は、プライマー組成物を押出ポリスチレンフォーム断熱層の上に適用し(ここで、押出ポリスチレンフォーム断熱層の両面が平らにされている)、下塗りコートモルタル組成物(rendering coat mortar composition)を、押出ポリスチレンフォーム断熱層の上に適用し、そしてスタッコ仕上(stucco finish)又は塗装を、下塗りコートモルタルの上に適用することを更に含んでなる。
【0037】
別の態様に於いて、本発明の方法は、断熱層を、機械的固定によって、接着モルタル層の上に固定し、そしてガラス繊維メッシュを下塗りコートモルタルの上に埋封し、その上にスタッコ仕上又は塗装を適用することを更に含んでなる。
【0038】
別の態様に於いて、本発明の方法は、モルタル組成物が、強化繊維を更に含み、コンポジット構造体を更に含んでなる。更に別の態様に於いて、この強化繊維はプラスチック繊維である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明を、本発明の態様の非限定的実施例によって、多数の図面を参照して、以下の詳細な説明に於いて更に説明する。類似の参照番号は、幾つかの図面を通して同様の部分を表す。
【図1】EIFSの図解。
【図2】結合強度試験方法の図解。
【図3】曲げ強度試験方法の図解線図。
【図4】実物大耐候試験のための壁寸法。
【図5】モルタル組成物適用サンプル調製のためのPVCデックル(deckle)フレームの図解図面。
【図6】種々の厚さでのSTYROFOAM*片の引張強度。
【図7】非稀釈プライマー組成物処理したSTYROFOAM*ボードの接着モルタルに対する結合強度。
【図8】1:1稀釈のプライマー組成物処理したSTYROFOAM*ボードの接着モルタルに対する結合強度。
【図9】1:1.5稀釈のプライマー組成物処理したSTYROFOAM*ボードの接着モルタルに対する結合強度。
【図10】R161N処理したSTYROFOAM*ボードの結合強度。
【図11】3種のRDPの間の乾燥結合強度。このサンプルは、23℃及び50%湿度で14日間硬化させた。
【図12】3種のRDPの間の湿潤結合強度。このサンプルは、23℃及び50%湿度で14日間硬化させ、続いて水中に7日間浸漬させた。
【図13】3種のRDPの間の高温度結合強度。このサンプルは、23℃及び50%湿度で7日間硬化させ、続いて50℃で7日間硬化させた。
【図14】異なったCEを含有するモルタル組成物の水和速度。
【図15】2個のDLP%レベルでの2種のCEの間の乾燥結合強度の比較。このサンプルは、23℃及び50%湿度で14日間硬化させた。
【図16】2個のDLP%レベルでの2種のCEの間の湿潤結合強度の比較。このサンプルは、23℃及び50%湿度で7日間硬化させ、続いて水中に7日間浸漬させた。
【図17】2個のDLP%レベルでの2種のCEの間の高温度結合強度の比較。このサンプルは、23℃及び50%湿度で7日間硬化させ、続いて50℃で7日間硬化させた。
【図18】異なったセメント比でのコンクリートに対する結合強度。
【図19】異なったセメント比でのSTYROFOAM*に対する結合強度。
【図20】2種のセメントによって配合されたモルタル組成物の結合強度の比較。
【図21】2種の水比によって配合されたモルタル組成物の結合強度の比較。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の詳細な説明に於いて、本発明の特定の態様を、その好ましい態様と結び付けて説明する。しかしながら、下記の説明が、本発明の技術の特別の態様又は特別の使用に対して特異的である範囲まで、これは、例示のみであることを意図し、単に、代表的な態様の簡潔な説明を提供する。従って、本発明は、下記の特定の態様に限定されるのではなく、本発明は、付属する特許請求の範囲の真の範囲内に入る、全ての代替、修正及び均等を含む。
【0041】
本明細書に於いて使用する場合、下記の通りである。
他の方法で記載しない限り、全てのパーセント(%)はドライモルタル組成物の全重量基準の重量%である。以下に記載した種々の成分の説明は、非限定的である。
【0042】
「外部断熱仕上げシステム(EIFS)」は、欧州に於いて外部熱絶縁システム(ETICS)としても知られている、外壁クラッディング(cladding)システムである。これは、エネルギー節約、室内快適さを改良すること並びに水分及び他の外的要素に対して壁を保護することの目的のために、住居用及び商業用建築物の両方で使用することができる。
【0043】
EIFSに於いて使用される「モルタル組成物」は、
・再分散性粉末、
・セルロースエーテル、
・1種又はそれ以上の粘度調整剤、
・1種又はそれ以上の水硬性結合剤及び
・1種又はそれ以上の充填材
を含んでなる。
【0044】
本発明のモルタル組成物は、幾つかの添加剤、例えば初期強度材、撥水剤、天然木材セルロース等を更に含んでいてよい。モルタル組成物が、任意の基体上に適用されるとき、「モルタル層」がその上に形成されるであろう。
【0045】
異なった目的に依存して、モルタル組成物は、a)断熱ボードを壁基体に接着するために使用される接着モルタル及びb)通常、仕上層と断熱ボードとの間に使用される下塗りコートモルタル(ベースモルタル)として使用することができる。成分の含有量は互いに異なっていてよい。
【0046】
異なった成分に依存して、モルタル組成物は「セメントモルタル」と「ポリマーモルタル」とに分類することができる。セメントモルタルは、通常、セメント、ポルトランドセメント、砂/骨材、水並びに他の無機添加物及び充填材、例えばフライアッシュ等を含むモルタル組成物を意味する。典型的には、セメントモルタルはエマルジョンポリマー及び他のポリマー含有添加剤を含有していない。ポリマーモルタル又はポリマー変性モルタルは、セメント及びセメントモルタルの他の成分+ポリマー添加剤、例えばラテックス/エマルジョンポリマーを含むモルタル組成物を意味する。典型的なプロセスに於いて、液体エマルジョンポリマーは、建設現場でセメントモルタルに添加されて、ポリマーモルタルを作る。しかしながら、本発明の一つの態様に於いて、ポリマーモルタルは、一成分ポリマーモルタルとして参照される。このような独特のポリマーモルタルは、予備混合ドライ組成物である。これは、ドライミックス再分散性ポリマー粉末をセメントモルタルと混合することによって、建設現場に到着する前でも、予備調製することができる。
【0047】
「押出ポリスチレン層」又は「押出ポリスチレンボード(XPS)」は、スチレン系ポリマー及び発泡剤を含む発泡性ポリマーフォーム組成物を、ダイから放出し、この組成物をポリマーフォームに発泡させることによって製造されたポリスチレンボードを意味する。スチレン系ポリマーは、モノマー単位の大部分がスチレン又はその誘導体であるものである。これには、特に、スチレンと、アクリロニトリル、アクリル酸、アクリル酸エステル等とのコポリマーが含まれる。典型的には、押出は、発泡を妨げるような充分に高い圧力の環境から、発泡を可能にするために充分に低い圧力の環境まで起こる。一般的に、押出フォームは、単一の押出フォーム構造体に発泡する単一の発泡性組成物から得られる、相互連結された気泡の連続継ぎ目無し構造体である。しかしながら、押出フォームの一態様には、「ストランドフォーム」が含まれる。ストランドフォームは、互いに接着された隣接するフォームのスキンを有する、連続ポリマースキンによって定義される、複数のフォームの押出ストランドを含む。ストランドフォーム中のポリマースキンはストランドの押出方向にのみ伸びている。
【0048】
XPSの厚さは、建設現場での気象、湿度等に依存して、変化する。通常、これは約20〜約150mm以上である。
【0049】
「発泡ポリスチレン層」又は「発泡ポリスチレンボード(EPS)」は、発泡剤を、ポリマー組成物の粒子の中に含有させる(例えば圧力下で、ポリマー組成物の粒子に発泡剤を吸収させる)ことによって、発泡性ポリマービードプロセスで製造された発泡性組成物を意味する。続いて、金型内でこの粒子を発泡させて、多数の、互いに接着して「ビードフォーム」を形成する発泡したフォームビーズ(粒子)を含む、フォーム組成物を得る。金型内での二次発泡に続く、独立ビーズの予備発泡も、可能である。更に別の代替として、金型から離して、ビーズを発泡させ、次いで、これらを一緒に熱的に又は金型内で接着剤と共に融着させる。
【0050】
ビードフォームは、フォームセルの収集物(collection)をフォーム内でカプセルに包む、ポリマービードスキンの特徴的な連続ネットワークを有する。ポリマービードスキンは、ビードスキン内の気泡壁よりも高い密度を有する。ポリマービードスキンは、多方向に伸び、任意のフォーム表面を対峙するフォーム表面に連結し、一般的に全てのフォーム表面を相互連結する。ポリマービードスキンは、膨張してフォームを形成するそれぞれのフォームビードからの残留スキンである。ビードスキンは、一緒に融合して、複数の発泡したフォームビーズを含むフォーム構造体を形成する。ビードフォームは、ビードスキンネットワークに沿って破断するので、ビードフォームは、押出フォームよりも一層脆い傾向がある。更に、ビードスキンネットワークは、フォームの任意の一方の側から対峙する側への連続熱ショート(thermal short)をもたらし、これは、断熱材料に於いて望ましくない。
【0051】
押出フォームは、カプセルに入れられたビーズの収集物を含有していないことによって、発泡ポリマービードフォームとは異なる。ストランドフォームは、ビードフォームに類似のスキンを有するが、ストランドフォームのスキンは、気泡の群を完全にはカプセルに入れず、むしろ、フォームの押出方向にのみ伸びているチューブを形成する。従って、ストランドフォーム内のポリマースキンは、発泡ポリマービードフォームに於けるポリマースキンのように、全ての方向に伸び、任意のフォーム表面を対峙する表面に相互連結することはない。
【0052】
押出ポリスチレン層の平らにされた表面は、押出ポリスチレンボードの高密度層を剥ぎ取ることによって得られる、ボードの粗い表面である。平らにされた表面は、他の手段、例えば摩耗によっても達成できる。
【0053】
「フォーム断熱ボード」又は「断熱ボード」は、ボードの形態での断熱材料を意味する。EIFS用途の核心は、接着モルタルを使用することによって、断熱材料を基体壁に取り付けることである。その結果、EIFSの外側表面は、繊維メッシュ埋封ベースモルタルによって覆われており、他の仕上材料、例えばスタッコ、塗装又はセラミックタイルによって更に、完成されている。断熱材料は、EPS、XPS、ポリウレタンフォーム、ミネラルウール又はコルクボードであってもよく、これらの全ては、建築物に断熱を与えることができ、同様に断熱/エネルギー規準に適合することができる。モルタル層は、通常、断熱ボードに隣接しており、任意的に、プライマー層がそれらの間に適用される。
【0054】
「仕上層」は、通常、コンポジット構造体の最外層であり、塗装層、セラミックタイル又はスタッコ層であってよい。
【0055】
「レベリングスクリード」は、固体床又は壁の最終の平坦で平滑な表面を意味し、その上に、通常、モルタル層又は微細コンクリートの床又は壁カバーが適用される。
【0056】
「スタッコ仕上」は、通常、建物の外部に使用され、種々の形態で数世紀の間、建築で使用されてきた、仕上プラスターの一種である。これは屋内でも使用することができるが、特に設計されたインテリアプラスターが、殆どの領域で、インテリア使用のためにスタッコに取って代わった。昔は、屋内スタッコは、大理石粉末、石灰及び水を混合し、精巧な背景に成形し、塗装することができる平滑なプラスターを作ることによって、作られたであろう。スペイン、ギリシャ及びミッションスタイル建築術は全て、顕著にスタッコを特徴にし、これは、熱を反射し、家屋を冷たく保つことを助けている。
【0057】
種々の材料を使用して、スタッコを作ることができる。伝統的なスタッコは、キルン内で石灰石を焼成し、それを石灰化することによって製造された材料である石灰を、砂及び水と共に使用する。これらの要素は、ペーストに混合され、このペーストを、屋内スタッコと同様に、使用するとき、表面の上にこてで塗るか又は成形することができる。この方式で作られたスタッコは、耐久性があり、強く、重い。石灰は幾らか可溶性であるので、湿った場合、石灰は滴下して亀裂を充填するので、スタッコ内の亀裂は、それ自体を修復するであろう。今日、更に一般的には、スタッコは、微細に粉砕されたポルトランドセメント、砂及び水を使用し、容易に亀裂する、耐久性の低い形態のスタッコになる。
【0058】
「再分散性粉末」(「RDP」)は、保護コロイド、凝結防止剤等のような種々の添加剤の存在下で、エマルジョンポリマーから噴霧乾燥プロセスによって製造される。RDPを製造するために、多種類のポリマー、即ちエチレン/酢酸ビニルコポリマー(ビニルエステル−エチレンコポリマー)、酢酸ビニル/ビニル−バーサテートコポリマー(VeoVa)、スチレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/アクリルコポリマー等を使用することができる。噴霧乾燥を実施するために、コポリマーの分散液を、適切な場合、保護コロイドと一緒に、噴霧し、乾燥する。水と混合したとき、これらのポリマー粉末は、再分散されて、エマルジョンを形成することができ、これは、次いで後で、セメントモルタル内に連続フィルムを形成し、一方、水は、蒸発及びセメントの水和によって除去される。これらの連続フィルムは、モルタル層を基体に結合するための「ブリッジ」として機能し、従って、モルタル層の固有の強度及び基体への接着を改良する。最低フィルム形成温度(MFFT)は、フィルムが形成できる最低温度要件を記載するために使用される用語である。フィルムが形成されると、RDPからの利益が得られるであろう。ポリマーのMFFT及びガラス転移温度(Tg)は、RDP特性を定義するための2つの重要なパラメーターである。ダウ・ラテックス・パウダー(Dow Latex Powders)(DLP)は、主として、セメント又は石膏系ドライブレンド製品用の添加剤として、建設工業のために設計されている。
【0059】
好ましいビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、酢酸1−メチルビニル、ピバル酸ビニル及び炭素数5〜11のα−分岐モノカルボン酸のビニルエステルを含む。幾つかの好ましい例には、VeoVa5.RTM.、VeoVa9.RTM.、VeoVa10.RTM.、VeoVa11.RTM.(Shellの商品名)又はDLP2140(Dowの商品名)が含まれる。好ましいメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルには、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが含まれる。好ましいビニル芳香族化合物には、スチレン、メチルスチレン及びビニルトルエンが含まれる。好ましいハロゲン化ビニルは塩化ビニルである。好ましいオレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいジエンは1,3−ブタジエン及びイソプレンである。
【0060】
RDP分率は、好ましくは約0.1〜約20重量%、更に好ましくは約1〜約10重量%、最も好ましくは約2〜5重量%である。
【0061】
「エチレン含有ポリマー」は、エチレン部分、即ち構造:−CH2−CH2−を含有するポリマーを意味する。
【0062】
「エマルジョンポリマー」又は「ポリマー分散液」は、溶媒、例えば水中に微細に分散されたポリマー粒子を有する二相システムを意味する。水系エマルジョンポリマーは、通常、ポリマー粒子、例えばビニルポリマー又はポリアクリルエステルコポリマー並びに疎水性部分及び親水性部分を含有する界面活性剤から構成されている。好ましい水系エマルジョンポリマーは、基体上にコーティングとして適用され、環境温度又は上昇した温度で硬化されたとき、優れた耐溶媒性、耐薬品性及び耐水性、外部耐久性、耐衝撃性、耐摩耗性、種々の基体に対する優れた接着性等を有することが見出された。
【0063】
「プライマー組成物」は、通常、表面を一緒に接着するために使用される。EIFSに使用されるプライマー組成物もエマルジョンポリマーの一つであり、通常水分散性である。プライマー組成物の一例はポリアクリルエマルジョンを含む。プライマー組成物は、全ての種類の基体、例えばフォーム断熱ボードの表面上に刷毛塗りされる。コーティング(層)は、モルタル組成物が乾燥した後に、表面の上に形成される。ときには、プライマー組成物(通常市販製品)を、建設現場で、対応する溶媒、通常水によって更に稀釈することができる。
【0064】
プライマー組成物は、好ましくは押出ポリスチレン層の表面基準で、約2.5g/m2〜約150g/m2、更に好ましくは約5g/m2〜約50g/m2、最も好ましくは20g/m2〜約35g/m2の量で適用される。
【0065】
「セルロースエーテル」(「CE」)は、ドライ混合モルタル組成物中に、レオロジー改質剤として一般的に使用される添加剤である。しかし、CEによってもたらされる主な利点は、改良された作業性及び保水性であることが見出される。良好な作業性は現場作業員によって好まれ、高い保水性は湿潤モルタル組成物が使用される前の可使時間(オープンタイム)を延長し、従って、モルタル層の品質を、使用の前に比較的長い時間、維持することができる。EIFSモルタル組成物中に使用されるCEは、非常に限定される(<1%)ので、システム全体の性能は、RDPからの大きい寄与と比較して、CE添加剤によりやや影響を受ける。セルロースエーテルの好ましい例はヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル、例えばMETHOCEL CP1425(Dowの商品名)である。
【0066】
セルロースエーテル分率は、好ましくは約0.01〜約50重量%、更に好ましくは約0.1〜約10重量%、最も好ましくは約0.2〜0.4重量%である。
【0067】
「粘度調整剤」又は「増粘剤」は、建設工業に於いて、モルタル組成物の粘度を調整するために使用される。増粘剤の例は、多糖類、例えばセルロースエーテル、変性セルロースエーテル、デンプンエーテル、グアーガム、キサンタンガム、フィロシリケート、ポリカルボン酸、例えばポリアクリル酸及びその部分エステル、任意的にアセタール化された及び/又は疎水性に変性されたポリビニルアルコール、カゼイン並びに会合増粘剤である。これらの増粘剤の混合物を使用することも可能である。セルロースエーテル、変性セルロースエーテル、任意的にアセタール化された及び/又は疎水性に変性されたポリビニルアルコール並びにこれらの混合物が好ましい。モルタル組成物は、好ましくは0.05〜2.5重量%、更に好ましくは0.05〜0.8重量%の増粘剤を含有している。
【0068】
建設システム、例えばモルタル組成物、下塗り、スタッコ、フローリングシステム及び建築接着剤に於いて、流動調節は非常に重要である。増粘及び保水を与えるために使用される主な添加剤は、セルロースエーテルである。しかしながら、システム性能及び適用挙動が、1種又はそれ以上のレオロジー剤を、セルロースエーテルと組み合わせて使用することによって、著しく改良できることが見出される。一般的に、レオロジー剤は、下記の利点、即ち、
・作業性及びツーリング(tooling)、
・改良された垂れ下がり抵抗、
・チキソトロピー
・沈降防止特性、
・改良されたポンプ輸送性及び剪断減粘性
・ブリード防止
を提供する。
【0069】
ヘクトライト粘土は、種々の建設システムに於いて、流動特性を制御するのに使用される、非常に効率的な鉱物レオロジー添加剤である。ヘクトライトは、天然に産出する層化膨潤粘土のファミリーであるスメクタイト鉱物群の一つである。スメクタイト粘土は水中で膨潤することができ、従ってレオロジー添加剤として広く使用されている、層化ケイ酸塩である。このケイ酸塩小板は3つの層を有し、2つの二酸化ケイ素層が金属酸化物層を埋封している。ヘクトライト中の金属酸化物層はマグネシウムである。ヘクトライト小板の表面は、ヘクトライト中の二価のマグネシウムが、一価のリチウムによって部分的に置換されている(これは、電荷不足になる)ので、負に帯電されている。ヘクトライト粘土の好ましい例には、Elementis Specialties Inc.によって製造されたBENTONE OCが含まれる。これらの天然に産出するヘクトライト粘土は、ときには、非変性ヘクトライト粘土として参照される。
【0070】
ヘクトライト粘土は、ときには、そのレオロジー曲線を変える又は新規な用途のための新規な特性を得るために、「変性ヘクトライト粘土」を作るために、他の無機又は有機材料、例えば多糖類又は第四級アンモニウムと組み合わせることができる。例えば有機粘土は第四級アンモニウムによって変性される。これは、次いで、疎水性特性のために溶媒系システム中で使用することができる。
【0071】
粘度調整剤分率は、好ましくは約0.01〜約1重量%、更に好ましくは約0.05〜約0.5重量%、最も好ましくは約0.1〜0.3重量%である。
【0072】
「水硬性結合剤(hydraulic(binder))」は、建設工業に於いて広く使用されている。水硬性結合剤分率は、好ましくは0.5〜70重量%、更に好ましくは8〜50重量%である。一般的に、セメント又は石膏が使用される。
【0073】
水硬性結合剤分率は、好ましくは約10〜約80重量%、更に好ましくは約20〜約40重量%、最も好ましくは約25〜35重量%である。
【0074】
セメントは、典型的には、モルタル組成物中の最大部分を占める。セメントは、水の存在下での水和プロセスによって、基体に対する接着強度を提供する。充分に水和したセメントは、非常に高い機械的強度及び耐水性を有するが、可撓性は非常に劣る。EIFSのような用途に於ける機能的要件のために、セメントを、可撓性ポリマーによって変性しなくてはならない。中国は、全世界で最大のセメント生産国であり、全世界の生産能力の約50%を有する。しかしながら、中国で生産されたセメントは、異なった活性充填材、例えばスコリア(scoria)、ポゾラナ(pozzolana)等の品質及び種類の項目で大きく変化する。セメントメーカーは、通常、セメントが、国の規準になお適合し得る限り、季節変化及び/又は顧客要求に従って、成分を修正する。活性充填材の最大含有量は、ときには70%まで達し、一方、西洋の国々に於いては、不活性充填材は、典型的には、純粋ケイ酸塩セメント、別名、ポルトランドセメント中に5%未満である。
【0075】
中国に於いて製造されたセメントは、EIFSに於ける機能性コンポーネントではなくて、主に、建造物における構造荷重支持材料として設計され、従って、それらの初期強度、硬化時間及び添加剤との相溶性を研究することは複雑である。品質管理のために、充填材富化セメント中の成分はしばしば変化し、成分と残りのポリマー添加剤との間の相互作用は制御することが困難であるので、EIFS中にポルトランドセメントを使用することが示唆される。ポルトランドセメントに於ける比較的高い純度は、配合物の変動を減少し、その結果、モルタル層の安定性を改良する。ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
【0076】
ドライ混合モルタル組成物に於ける「骨材」は、結合機能を有しない無機材料を指す。これには、粗い骨材及び微細な充填材が含まれる。粗い骨材の粒子サイズは、典型的には、8mm以下の最大サイズで大きい。微細な充填材の粒子サイズは、典型的には、小さく、一般的に0.1mmよりも小さい。骨材の一例は使用レベルが高い珪砂であり、一方、微細な充填材は主として炭酸カルシウム粉末である。
【0077】
骨材分率は、好ましくは約20〜約80重量%、更に好ましくは約30〜約70重量%、最も好ましくは約50〜65重量%である。
【0078】
珪砂は、ケイ素に於ける鉱山製品の原材料である。ケイ素に於ける鉱山製品の原材料は、多くのSiO2含有量を有する天然鉱物材料を指し、一般的に、珪砂、珪岩、鉱脈石英(vein quartz)、コナイト(conite)等を含む。石英の化学含有物は、ガラス光沢(vitreous luster)を有し、破面でグリースラスター(grease luster)を有し、一般的に、硬度7及び密度2.65〜2.66g/cm3を有するSiO2である。
【0079】
珪砂は、一般的に、絶対的な高いレベルで石英含有量を有する砂の全ての種類、例えば海砂、川砂及び湖砂等を指す。殆どの場合に、ドライ混合モルタル組成物の絶対的に必要な骨材として、珪砂はモルタル層強度、体積安定性及び水消費に大きい影響を有する。更に、珪砂の粒子サイズ、水含有量及び泥含有量はモルタル層の結合強度、圧縮強度及び作業性に直接的に影響を与えるであろう。
【0080】
川の中度及び低い水路中の珪砂は、一般的に、形状が丸い(端角形状又は薄片状粒子が少ない)。珪砂は、長距離輸送及び洗浄の後、殆ど汚染物質を有していない。このような川砂は、主として、ドライ混合モルタル組成物中に使用され、この砂は、掘り出された後、水洗浄、乾燥及び篩い分けのようなプロセスを通って進む。次いで、これは、異なった等級を有する珪砂骨材に作られる。
【0081】
「ガラス繊維メッシュ(fiber glass mesh)」は、通常、白色及び無臭布帛から作られる。例は、SBR(スチレンブタジエンラテックス)によってコーティングされ、種々のメッシュサイズ(4×4mm、5×5mm、4×5mm等)及び表面積重量(135、145、160、200、300g/m2等)を有する、白色C−ガラス繊維織布である。亀裂及び衝撃に耐えるための表面のために、EIFSベースコートモルタルの中間部内に埋封される追加の強化布帛として使用される。1ロールは、約45m2(幅1m、長さ50m、しかし1.1m2/表面のm2)に対して充分である。
【0082】
強化繊維、例えばプラスチック繊維を、性能を改良するために、モルタル組成物の中に混合することもできる。強化繊維の一例は米国特許第6844065号明細書中に開示されている。
【0083】
典型的な断熱プロセスに於いて、接着性モルタルが硬化した後、Styrofoam XPSボードを研磨し、清浄にし、次いで、プライマー組成物及びベースコートモルタルの第一の層を適用する。メッシュを、皺又は折り目無しに、設計されたように重なり合って、ベースコートモルタルの中に挿入するためにプレスする。最後に、ベースコートモルタルの第二の層を適用して、設計されたカバー厚さに従ってメッシュを覆う。
【0084】
EIFS明細及び技術的要件は国毎に異なっている。欧州に於けるEIFS規格は、European Organization for Technical Approvals(EOTA)によって提出されている。この規格は、物理的特性、作業性並びに現場操作要件、例えば水吸収、蒸気透過性、結合強度及び耐衝撃性能等を含むこの規格は、システム全体が適合しなくてはならないEIFSの全ての部分及び全ての技術的性能要件を特定している。
【0085】
中国に於いては、Ministry of Constructionが、2003年7月1日に、第一EIFS工業規格、「EPSに基づく外部断熱コンポジットシステム(External thermal insulation composite systems based on EPS)」JG 149−2003を発行した。更に全体的な規格、JGJ144−2004「壁上の外部断熱のための技術的仕様(Technical specification for external thermal insulation on walls)」が、2005年1月に発行された。この規格は、MOCに於けるCenter of Science & Technology of Constructionによって導かれ、一方、CABR、China Institute of Building Standard Design & Researchは、編集作業に関与した。JG149−2003は、欧州に於けるEOTA ETAG004と非常に類似している。これは、主に、薄い下塗りコート及び仕上を有するEPSボードの外部断熱システムを導入した。JGJ144−2004は、多数の会社によるEIFS技術の大きい注目及び参加を示している。この規格は、JG149−2003のシステムをそれ自体に持ち込み、一方、それは、また、更なる拡張を行い、EPSベース技術の他の3種(EPSボードと一緒のコンクリート壁現場注入、金属ネットワーク保持EPSボードと一緒のコンクリート壁現場注入、機械的ファスナーにより固定された金属ネットワークを有するEPSボード)を特定する。これが現在中国のEIFS市場で最も重要な役割を演じていることは真実である。
【0086】
本明細書中に導入された関連試験方法は、主として、JG149−2003及びJGJ144−2004を基準にしており、上海ローカル規格DB31/T366−2006「外部断熱のためのポリマーモルタルの技術的要件(Requirements of Polymer Mortar for External Thermal Insulation)」中の幾つかの内容も、部分的に採用されている。
【0087】
JGJ144ベースコートモルタル結合強度(XPSボードに対して)
JGJ144に従うXPSに対する結合強度試験は、下記の通り例示される。
【0088】
1.試験寸法は100mm×100mmであり、XPSボードの厚さは50mmである。サンプルの数は5である。
【0089】
2.サンプル調製方法は、下記の通り記載される。XPSの1つの表面上に、厚さ(3±1)mmで接着剤を塗布。硬化後、2つの側面上に、寸法100mm×100mmのスチールボトムボードを結合させるために、適切な接着剤(例えばエポキシ)を塗布。
【0090】
3.試験は、下記の状態下で実施すべきである。
・標準硬化して28日間後、乾燥状態で、乾燥結合強度と呼ばれる。
・標準硬化28日間、水中に48時間浸漬、取り出して2時間後、湿潤結合強度と呼ばれる。
・標準硬化28日間後、下記の循環(50±3℃で16時間ドライボックス内、サンプルベースコート層を下方部分にし、水レベルを、サンプル表面よりも少なくとも20mm高くして、23±3℃で水中に8時間浸漬,次いで、−20℃±3℃で24時間凍結、これを1サイクルと呼ぶ)を20日内で10サイクル実施する。この強度は、凍結−解凍結合強度と呼ばれる。
【0091】
4.サンプルを引張試験機に取り付け、5mm/分の引張速度で、破断するまでサンプルを引っ張り、次いで、破断が起きたときの引張力及び破断位置を記録する。
【0092】
5.試験結果は5個のサンプルの試験データの算術平均によって表される。
【0093】
JG149結合強度
JG149に従う結合強度試験は、下記の通り例示される。
【0094】
1.サンプルは、主として、70mm×70mmのセメントモルタルボトムボード(又はXPSボード)及び40mm×40mmの引張スチールクランプを含む。
【0095】
2.セメントモルタル(又はXPSボード)と結合するサンプルの数は6であり、サンプル調製方法は、下記の通り記載される。製品説明書に従って接着剤を調製し、この接着剤をセメントモルタルボトムボード(又はXPSボード)上に塗布し、次いで、接着剤厚さ3mm及び面積40mm×40mmでスチールクランプを締める。
【0096】
3.試験は、下記の状態下で実施すべきである。
・標準硬化して14日間後、乾燥状態で(乾燥結合強度と呼ばれる)。
・標準硬化14日間、水中に23±3℃で7日間浸漬、取り出して2〜4時間後(湿潤結合強度と呼ばれる)。
・標準硬化14日間後、下記のサイクル(50±3℃で16時間ドライボックス内、サンプルベースコート層を下方部分にし、水レベルを、サンプル表面よりも少なくとも20mm高くして、23±3℃で水中に8時間浸漬,次いで、−20℃±3℃で24時間凍結、これを1サイクルと呼ぶ)を20日内で10サイクル実施する。この強度は、凍結−解凍結合強度と呼ばれる。
【0097】
4.サンプルを引張試験機に取り付け、引張速度を5mm/分に設定し、破断するまでサンプルを引っ張り、次いで、破断が起きたときの引張力及び破断位置を記録する。
【0098】
5.試験結果は、4個の中間値の算術平均によって表される。
【0099】
「オープンタイム」は下記のようにして測定される。
ポリマーモルタルの調製後、サンプルを、システム供給者によって与えられる運転可能な時間に従って、試験環境中に置き、次いで、乾燥結合強度で使用した試験方法に従って試験を実施する。
【0100】
曲げ強度
曲げ強度のために、GB/T17671−1999「セメントモルタル強度の試験方法(Test method of cement mortar strength)」を参照する。標準試験条件は、環境温度23±2℃、相対湿度50±5%、試験領域内の空気速度0.2m/秒以下である。ポリマーモルタルの熟成は、28日間であり、寸法は40mm×40mm×160mmである。仕様要件に従ってサンプルを調製する。
【0101】
試験機は、下記の方法で作られる。40mm厚さのモルタル棒を、3本の、10mm直径のスチールシリンダー軸で挟み、2本のシリンダー軸をそれらの間に100mmの距離を開けて一方側に置き、そして別のスチールシリンダーを他方側の中間に置き、モルタル棒を押し下げる。下記線図を参照。
【0102】
曲げ強度Rfは、MPaによって表され、下記の式に従って計算する。
【0103】
【数1】

【0104】
(式中、Ff:曲げで、サンプルの中間部に適用される荷重(N)、
L:支持シリンダーの間の距離(mm)、
b:サンプル方形区画の側長(mm)
である。)
【0105】
3個の試験片についての試験値の算術平均を、0.01MPaの精度まで、試験結果として得る。
【0106】
圧縮強度
圧縮強度のために、GB/T17671−1999「セメントモルタル強度の試験方法」も参照する。ポリマーモルタルの熟成は、28日間であり、寸法は40mm×40mm×160mmである。仕様要件に従ってサンプルを調製する。しかしながら、この試験は、曲げサンプルの横表面(即ち半プリズム)上で実施され、曲げ試験後に完結する。この半プリズムの中心と、プレス機プレスボードとの間の差は、0.5mm以内であることが必要である。
【0107】
荷重をかけている間に、荷重を、2400±200N/sの速度で、破断まで均一に掛ける。圧縮強度Rcは、MPaによって表され、下記の式に従って計算される。
【0108】
【数2】

【0109】
(式中、Fc:破断時の最大荷重(N)、
A:圧縮部分の面積40mm×40mm=1600mm2
である。)
【0110】
6個の試験片についての測定値の算術平均を、0.01MPaの精度まで、試験結果として得る。
【0111】
水吸収(小規模システム)
水吸収測定は、下記のように例示される。
【0112】
1.サンプルサイズは200mm×200mmであり、サンプルの数は3である。
【0113】
2.サンプル調製:ベースコートモルタルを、供給者の要件に従って、50mm厚さのXPSボード上にコーティングし、メッシュをプレスし、5mmの全厚さを有するベースコートモルタルでメッシュを埋封する。試験環境中で28日間硬化させた後、試験のサイズ要件に従って、サンプルを切断する。
【0114】
3.それぞれのサンプルについてベースコートモルタル表面以外は、他の5個の全ての表面を、防水材料によって封止しなくてはならない。
【0115】
4.試験プロセス:最初に、サンプルの質量を測定し、次いで、サンプルを、ベースコートモルタル表面を下側に向けて、ベースコートモルタル厚さに等価の水中浸透で、室内温度で水中に置く。サンプルを水中に24時間浸漬させた後、それを取り出し、表面上の水を拭き取り、24時間水吸収後のサンプルの質量を秤量する。
【0116】
5.試験結果は、1g/m2の精度まで、3回の試験結果の算術平均によって表される。
【0117】
抗衝撃(anti-impact)性能(小規模システム)
抗衝撃試験は、下記のように例示される。
【0118】
1.試験装置:スチール定規、測定範囲0〜1.02m、目盛り値10mm;それぞれ、0.5kg及び1.0kgの質量を有するスチールボール。
【0119】
2.サンプルサイズ:600mm×1200mm、サンプルの数:2。調製方法:ベースコートモルタルを、供給者の要件に従って、50mm厚さのXPSボード上にコーティングし、メッシュをプレスし、5mmの全厚さを有するベースコートモルタルでメッシュを埋封する。試験環境中で28日間硬化させた後、サイズ要件に従って、サンプルを切断する。
【0120】
3.試験プロセス:サンプルを、ベースコートを上側に向けて、平らな地面に平らに置き、サンプルを地面にしっかりと密接させなくてはならず、0.5kg(1.0kg)のボールを使用し、それを0.61m(1.02)の高さに離し、ボールを自由に落下させ、サンプル表面に衝撃を与える。それぞれのレベルで、10個の点に衝撃を与えなくてはならず、点群の間又は点と縁との間を、少なくとも100mm空けなくてはならない。
【0121】
4.試験結果:ベースコートモルタル表面の破壊が、破壊として考えられ、破壊が10回の内4回より少なく起こる場合、この試験についての抗衝撃性能は標準以下であり、破断が10回の内4回以上起こる場合、この試験についての抗衝撃性能は標準以下ではない。
【0122】
水密性(小規模システム)
水密性測定は下記のように例示される。
【0123】
1.サンプルサイズ及びサンプルの数:サイズ65mm×200mm×200mm、サンプルの数:2。
【0124】
2.サンプル調製:60mm厚さのXPSボードを使用し、システム水吸収試験に於いて使用された方法によってサンプルを調製し、サンプルの中心部分でXPSボードを除去し、除去した部分の寸法は100mm×100mmであり、次いで、ベースコートモルタル表面から50mm離れた位置(サンプルの横面上)にマークを付ける。
【0125】
3.試験プロセス:サンプルを、そのベースコートモルタル表面が下側に向き、そのベースコート層が、水面下50mm位置に配置されるような方法で置き、サンプルの上に重い物体を置いて、サンプルが水中にあることを確実にする。それを水中に2時間保持した後、サンプルの内側表面を観察する。
【0126】
4.試験結果:取り出されたXPSボードを有するサンプルの裏側上の部分で水滲出が存在しない場合、それは標準以下である。
【0127】
JG149凍結−解凍抵抗(小規模システム)
JG149に従う凍結−解凍抵抗試験は下記のように例示される。
【0128】
1.試験装置:凍結ボックス:最低温度−30℃、制御精度±3℃;乾燥ボックス:制御精度±3℃。
【0129】
2.サンプル寸法150mm×150mm、サンプル数:3。50mm厚さのXPSボードを使用し、システム水吸収試験に於いて使用された方法によってサンプルを調製し、次いで、ベースコートモルタル表面の上に仕上層(塗装又はセラミックタイル)をコーティングする。
【0130】
3.試験プロセス:サンプルを、乾燥ボックス内で50±3℃で16時間保持し、次いで、サンプルベースコートを下側に向けて、サンプル表面よりも少なくとも20mm高い水レベルで、サンプルを水中に20±3℃で8時間浸漬し、これを、凍結ボックス内で−20±3℃で24時間保持する、これが1サイクルである。各サイクル毎に1回サンプルを観察する。この試験は、10サイクル後に終わる。
【0131】
4.試験結果:試験が終わった後に、表面に、発泡、割れ、膨れ又は剥離が存在しないことを観察し、5×拡大鏡下で表面に亀裂が存在しないことも観察する。
【0132】
JGJ144凍結−解凍抵抗(小規模システム)
JGJ144下での凍結−解凍抵抗試験は下記のように例示される。
【0133】
1.サンプル寸法500mm×500mm、サンプル数:3。50mm厚さのXPSボードを使用し、システム水吸収試験に於いて使用された方法によってサンプルを調製し、次いで、下記の2種類のサンプル、即ち仕上層(塗装又はセラミックタイル)有り又は無しを試験する。
【0134】
2.試験プロセス:凍結−解凍サイクル30回、各回24時間。サンプルベースコートを下側に向けて、ベースコート層を水中に浸漬して、サンプルを水中に20±2℃で8時間浸漬し、これを、凍結ボックス内で−20±2℃で16時間凍結させる、これが1サイクルである。各3サイクル毎に1回サンプルを観察する。この試験は、サンプルの30サイクル後に終わる。
【0135】
3.試験結果:各3サイクル後に、表面に、発泡、割れ、膨れ又は剥離が存在しないことを観察し、これを記録する。試験が終わった後に、サンプルを、研究所条件下で7日間硬化させ、前記の方法に従って、乾燥結合強度を試験する。
【0136】
水透過度(小規模システム)
水透過度試験は、下記のように例示される。
【0137】
蒸気透過度は、単位時間内に単位面積を横切って流れる蒸気透過を指す。単位:g/(m2・h)又はkg/(m2・s)。JG149−2003に於いて蒸気透過度は、GB/T17146−1997「建築材料の水蒸気透過のための試験方法(Test methods for water vapor transmission of building materials)」に於ける水方法の規則に従って測定される。EIFSサンプル(仕上表面を下側に向ける)を、(その中に一定量の水を含有する)試験カップに閉じ込め、それを秤量した後、このカップを、一定温度23℃及び一定相対湿度50%を有する環境内に置く。カップ内の水の相対湿度100%と研究室の相対湿度50%との間に湿度差が存在するので、カップ内の蒸気は、研究室に拡散するであろう。試験カップの重量を規則的に秤量し、EIFSの蒸気透過度を計算することができる。
【0138】
一般的に言って、塗布層は、この目標に大きい効果を有する。タイル仕上げシステムに於いては、この目標は、タイル隙間の幅及び接合(グラウト注入)材料の透過に完全に依存する。
【0139】
JG149−2003に於いて特定される蒸気透過度0.85g/m2・hは、透過の中レベルに相当する。EIFSが関係する限り、壁の異なったコンポーネントに於ける透過差異は、壁結露に至り、これが長期間となると壁カビ発生及びシステム損傷を起こすであろう。JG149は、下記のことを要求している。
【0140】
1.特定された方法に従ってサンプルを調製した後、ベースコート層上にコーティング塗装し、乾燥した後XPSボードを除去する。サンプル厚さは、サンプル塗装(又はセラミックタイル)表面で、より低い湿度の側の方に、4.0±1.0mmにすべきである。
【0141】
2.更に、仕上層(塗装又はセラミックタイル)を有しないシステムも試験することができる。
【0142】
フルスケールシステム耐候試験
フルスケールシステム耐候試験は、下記のように例示される。
【0143】
1.試験装置及び要件:
a)耐候試験ボックス:温度制御範囲−25℃〜75℃、温風による温度制御有り、自動スプレー装置はボックスの一部である。温度制御装置は、EIFS表面から0.1m離れた位置に配置されており、数は4個以上である。試験ボックスは、自動的に制御することができ、EIFS表面温度を記録する。
【0144】
b)試験壁:コンクリート壁又は石造壁、試験壁は、耐候試験ボックス上に設置するために充分に堅くなくてはならない。試験壁の上部分が、縁から0.4m離れている位置で、幅0.4m及び高さ0.6mの開口を作り、窓枠を開口に設置しなくてはならない。試験壁サイズは、6.0m2以上の面積、2.5m以上の幅、2.0m以上の高さに適合するものとする。
【0145】
2.サンプル硬化条件:
環境温度(10〜25)℃、相対湿度50%よりも高い室内。
【0146】
3.サンプル成形及び硬化:
a)サンプル要件:供給者によって特定されたEIFS構造及び構成方法に従って、試験壁上でEIFSサンプルを調製する。サンプル領域及びサイズは、規則に従わなくてはならない。EIFSは、試験壁開口の側表面のために伸びなくてはならず、断熱ボードの厚さは50m以上でなくてはならず、開口の側表面での断熱ボードの厚さは20mm以上でなくてはならない。仕上の1種のみ又は仕上の最大4種は、サンプルのために使用され、これは、壁底の高さ0.4mで仕上層として取られない。仕上コーティングの異なった種類が採用されるとき、仕上の長さは、試験壁の長さに等しくなくてはならず、高さ方向に沿って均一に分布していなくてはならない。
b)断熱材料:断熱ボードの接合部を埋めるために同じ品質の材料を使用する;材料の説明、品質、ボード接合部位置並びに機械的固定の数及び位置等のような設置の詳細を点検し、記録する。
c)ベースコート層:供給者仕様に従って、ベースコートモルタルを調製する;材料の説明、品質及びメッシュオーバーラップ位置等のようなコーティング作成詳細を点検し、記録する。
d)仕上層:異なった種類の仕上コーティング接合部でのベースコート層は、露出させてはならない。
e)硬化:サンプルは、最後のベースコートモルタルが完結した後、少なくとも28日間硬化させなくてはならない。
【0147】
4.試験プロセス
a)80回の加熱/雨サイクル
−加熱3時間:サンプルの表面温度を、1時間以内に70℃まで上昇させ、サンプルを、(70±5)℃及び(10〜15)%RHの条件下で、一定温度で2時間保持する。
−水噴霧1時間:水温度(15±5)℃、噴霧体積(1.0〜1.5)L/(m2・分)。
−放置2時間。
−それぞれ4回加熱/雨サイクル後に、表面を観察し、ベースコート及び仕上層の膨れ、亀裂又は割れを点検し、そのサイズ及び位置を記録する。
【0148】
b)5回の凍結−解凍サイクル
−加熱/雨サイクルが完結した後、サンプルを48時間置き、次いで凍結−解凍サイクルを実施する。
−加熱8時間:サンプルの表面温度を、1時間以内に50℃まで上昇させ、サンプルを、(50±5)℃及び(10〜15)%RHの条件下で、一定温度で7時間保持する。
−凍結16時間:サンプルの表面温度を、2時間以内に−20℃まで低下させ、サンプルを、(−20±5)℃の一定温度で14時間保持する。
−それぞれの凍結−解凍サイクル後に、表面を観察し、ベースコート及び仕上層の膨れ、亀裂又は割れを点検し、そのサイズ及び位置を記録する。
【0149】
5.性能試験
凍結−解凍サイクル後に、サンプルを7日間置き、次いで結合強度試験を実施する。塗装、スタッコ、タイル仕上げについて、ベースコートモルタル対断熱ボード結合強度を、試験しなくてはならず、表面層を断熱ボード表面まで切断する。切断線間隔及び仕上コーティング縁からの距離はともに、100mm以上でなくてはならない。試験結果として、引張結合強度に於ける3個のサンプルの平均値を、0.01MPaの精度まで取る。セラミックタイルが仕上として取られている場合、タイル対ベースコート層の引張結合強度も試験しなくてはならず、この表面をベースコートモルタル表面まで切断する。試験結果として、引張結合強度に於ける3個のサンプルの平均値を、0.01MPaの精度まで取る。
【0150】
本発明を、以下の非限定的実施例によって更に示す。
【実施例】
【0151】
1.材料
STYROFOAM*:50mm厚さWallmate EXボードを、試験のための単独の断熱材料として選択し、仕様を表1に記載した。
【0152】
【表1】

【0153】
プライマー組成物:表2中に記載されている4種類のエマルジョンラテックスを、この研究に於いて、STYROFOAM*ボード表面を処理するために評価した。モルタル層とSTYROFOAM*との間の結合強度を改良することの有効性を評価した。3種のUCARラテックスは、Dowによって製造されている。Shanghai Transea Chemicals Co.,Ltd.によって製造されたPOLLYED6400は、市場に於いてXPSプライマー組成物として広く使用されており、比較サンプルとして機能する。
【0154】
【表2】

【0155】
RDP:表3に記載された3種のRDPを比較した。DLP2140は、EIFSのために設計されたDowのグレードである。DLP2140からの接着特性に対する改良を、それぞれWACKER及びNational Starchによって製造された、他の2種のRDPと比較する。RE5044NはWACKERによって製造され、FX2350はNational Starchから得られる。
【0156】
【表3】

【0157】
CE:表4に記載された3種のCEを比較した。その2種はDow METHOCEL*であった。METHOCEL* CP1425(以前の名称、METHOCEL* XCS41425)は、卓越した作業性を与える、断熱システム用に設計されたグレードである。METHOCEL*306は、バランスの取れた性能を有するセメント系用途のための汎用グレードである。Culminal C8681は、主としてセメントモルタルシステム用に設計された、Herculesによって供給されたメチルセルロースである。
【0158】
【表4】

【0159】
セメント:ローカル市場で購入した2種のセメントを、表5に記載する。P・IIは、5%未満の不活性充填材を含有するポルトランドセメントを示し、一方、P・Oは、6〜15%の範囲内の未知の活性充填材を含有する通常セメントを示す。「52.5」及び「42.5」は、それぞれのセメントグレードについての対応する強度レベルである。
【0160】
【表5】

【0161】
2.方法
2.1.サンプル調製方法
モルタル組成物は、通常、異なった成分からのレベルに従って調節される。一般的配合例を、表6に記載する。
【0162】
【表6】

【0163】
結合強度試験のためのモルタル層サンプルを調製するための手順:全ての成分を、中国コードJC/T681に於いて特定されているミキサーを使用して混合して、接着モルタルを製造した。水を最初に混合ボウルの中に入れ、続いて乾燥成分を添加した。混合動作は、低速度で約60秒間を要し、停止し、次いで混合羽根を清浄にし、混合ボウルを擦り、未混合の乾燥成分を入れた。10〜15分後に、別の混合動作を、再び、以下の同じ手順に従って実施した。
【0164】
プライマー組成物処理が必要であったとき、プライマー組成物を、最初に、水によって、前記の比に従って稀釈し、STYROFOAM*表面上に、水が全部蒸発し、膜が透明になるために充分に長い時間内に、1回又は2回適用した。
【0165】
モルタル層サンプル調製のために、(図5に示されるような)PVCデックルフレームを基体(コンクリート又はSTYROFOAM*ボード)の上に置いた。これは、8個の等しく空間を空けた50mm×50mmのキャビティを有しており、3mmの厚さであった。充分に混合したモルタル組成物を、デックルフレームの上に流し込み、全てのキャビティ内に充填した。モルタル層を、こてで平滑にし、次いでデックルフレームを、注意深く取り除いた。ついで、このサンプルを、一定温度及び湿度室(23℃及び50%湿度)内で7日間硬化させた。
【0166】
2.2.評価に於ける結合強度型
中国コードに従って、この評価を加速し、そして研究所経験に基づく、結合強度、例えば乾燥強度、湿潤強度、高温度強度及び凍結−解凍強度についての多数の試験方法が存在し、この評価作業のために、3個の強度の型を選択した。
【0167】
乾燥結合強度
モルタル層サンプルを6日間(又は必要なとき13日間)硬化させた後、裏側にねじ穴を有する50mm×50mm×10mm金属片を、エポキシ接着剤によってモルタル層の表面に接着させた。エポキシを硬化させた後、約24時間後に、この金属片を引張試験機に接合し、5mm/分の速度で、基体に対して垂直方向に引っ張り、引き剥がし力を記録した。
【0168】
湿潤結合強度
7日間(又は14日間)硬化させた金属接着サンプルを、20℃で更に2日間(又は7日間)水中に浸漬させ、次いで引張試験の前に、4時間乾燥した。
【0169】
高温度結合強度
7日間硬化させた金属接着サンプルを、引張試験の前に、50℃環境中で追加的に7日間更に硬化させた。
【0170】
3.試験結果及び検討
3.1.STYROFOAM*ボード
STYROFOAM*ボードの固有の引張強度は、その厚さとの関係を有すると考えられる。この試験は、中国国家EPS EIFS規格JG149−2003に従って実施し、STYROFOAM*ボードを、異なった厚さ、即ち20mm、25mm及び40mmを有する70mm×70mmの小片に切断した。40mm×40mmの金属片を、エポキシによってSTYROFOAM*ボードに直接的に接着させた。エポキシが硬化した後、引張力を測定し、結果を図7に示す。
【0171】
図6から、STYROFOAM*片が厚いほど、引張強度が大きいことが判る。これは、引張試験の間の、異なった厚さのSTYROFOAM*ボード中の異なった剪断応力分布に起因する。観察される破壊モデルは、薄い片が、STYROFOAM*の内側で引き剥がし易く、一方、厚いものは、STYROFOAM*スキン又はモルタル層との界面で破壊したことを示した。この研究に於いて、50mm厚さのSTYROFOAM*ボードを使用したとき、セメントモルタルの層によって与えられた結合強度が0.4MPaを超えない場合、STYROFOAM*ボード破壊を観察することは困難である。より小さい剥離強度で、破壊は、界面で起こるのみである。
【0172】
3.2プライマー組成物
4種のエマルジョンを、この研究に於いて評価する。現場用途の間に、プライマー組成物は、通常、水によって稀釈されたので、(表7に示される)標準配合物は、プライマー組成物性能を試験するために設計された。
【0173】
【表7】

【0174】
乾燥強度及び湿潤強度の両方を測定し、比較した。図7は、稀釈されていないプライマー組成物によって処理されたサンプルの結合強度を示す。STYROFOAM*ボードとの結合強度が、どのプライマー組成物によって処理されようとも、処理後に大きく改良されたことが明らかである。R161Nは、4種のプライマー組成物の中で、乾燥接着強度の項目に於いて最大の改良を示し、これは、未処理のもの0.1MPaよりも2.5倍大きかった。POLLYED 6400は、最良の湿潤接着を示し、未処理のものよりも5倍大きくなり、一方、R161Nも、湿潤接着に於いて3倍の改良を有していた。稀釈しなかったS53で処理したサンプルは、未処理のものと同様の結合強度を示し、湿潤接着に於いて穏和な改良を示した。
【0175】
1:1及び1:1.5の異なった稀釈比で結合強度も試験し、それらの結果を、それぞれ、図8及び図9に示した。異なった稀釈比下でも、4種のプライマー組成物は、絶えず、結合強度に対して大きい改良を与えた。R161N及びPOLLYED 6400は、稀釈無しから1:1.5稀釈までの全体範囲で、最良の二つの候補であった。S53からの改良はこの研究から集められたデータに従って最低であった。これは、おそらく、R161Nが、そのより低いTg、−11℃で、より大きい可撓性を与えるように設計されているためであろう。U413B及びS53によって形成されたフィルムは、ともかく、より高いTg、即ちそれぞれ13℃及び17℃のために、一定の温度範囲下で一層硬質である。湿潤接着強度面から、稀釈されたS53は、稀釈されないもののそれよりも良く性能を発揮したが、そのメカニズムは明らかではなく、更なる研究を必要とした。総合的に言うと、R161Nは、要件よりも性能が良く、EIFSに於けるSTYROFOAM*ボードに対するプライマー組成物として選択された。
【0176】
異なった稀釈比でのR161N性能を、図10に示した。種々の稀釈比は、乾燥接着に如何なる差異ももたらさないと思われ、ここで、結合強度は、0.25〜0.3MPaで一定に保持された。湿潤接着は、より大きい稀釈比でより強かった。稀釈されたプライマー組成物を使用するとき、コスト及び作業性は、考慮に入れるべき二つの重要な要因である。高い稀釈比は、プライマー組成物のコストを低下させるが、過稀釈プライマー組成物は、研究所実験から、作業性に逆の影響を示した。本発明者らの観察は、水玉が現れ、STYROFOAM*ボード上に留まり、プライマー組成物が均一に広がることができなかったことである。結局、稀釈比1:1.5〜1:2が、良好な作業性と低コストとのバランスで推奨される。労働費を下げるために、プライマー組成物の適用サイクルは、1回にまで低下させることができるが、前の処理が充分な表面コーティングを与えることができない場合、第二巡の適用が必要である。
【0177】
3.3.再分散性ポリマー粉末
RDP比較のために設計された標準配合を、表8に記載する。DLP2140を、WACKER及びNational Starchからの他の2種のRDPと比較した。それらの仕様を表3に示す。この試験の目的は、全EIFSシステムのための最適配合物を提供することではなくて、種々の条件での接着挙動の項目で、DLP2140が、競合者のRDPに匹敵するかと言う、初期段階で原材料性能を迅速に判定することであるので、通常のセメント及び未処理のSTYROFOAM*ボードを、この試験に於いて使用したことが注目される。Walocel MKX 45000は、40000〜50000mPa・sの粘度範囲(ROTOVISKO、2%溶液、20℃)を有する、Bayerからのメチルヒドロキシエチルセルロースである。
【0178】
【表8】

【0179】
本発明者らは、30部のことごとくのRDPを配合物の中に添加し、STYROFOAM*ボードに対する乾燥、湿潤及び高温度結合強度を測定した。結果を、それぞれ、図11、図12及び図13に示す。プライマー組成物の不存在のために、全ての条件での結合強度は、0.1〜0.15MPaの平均で、比較的低かった。試験の間に、全ての破壊が、STYROFOAM*−モルタル層界面で起こったことが観察され、これは、結合強度が、STYROFOAM*ボードを破断するために充分に大きくなかったことを意味する。DLP2140は、ELOTEX FX2350及びVINNAPAS RE5044Nよりも僅かに大きい、乾燥及び高温度接着を与えた。しかしながら、3種のRDPは、図12に示されるように、STYROFOAM*に匹敵する湿潤接着強度を与えた。
【0180】
これらのデータに基づいて、二つの結論を下すことができる。
【0181】
I.30部レベルで、DLP2140は、乾燥及び高温度条件で僅かに良く、STYROFOAM*への接着を改良することの効果で、競合者のRDPに匹敵する。
【0182】
II.他方、プライマー組成物無しでのSTYROFOAM*への劣った接着が観察され、これは、プライマー組成物の重要性を示した。
【0183】
3.4.セルロースエーテル
夏季の間に、高い環境温度のために、セメントモルタルは、より速く硬化する。新しく製造された湿潤モルタル層は、配合物を良く設計しない場合、その作業性を容易に失う。CEが、セメントモルタルの中に与える一つの重要な機能は、セメントの水和を遅くし、結果としてオープンタイムを延長することである。水和プロセスに於けるモルタル層の熱放出速度は、この機能を決定するための重要な指標である。本試験に於いて、本発明者らは、熱量計デバイス、TAM Air C08によって、CE変性モルタル組成物の水和プロセスから放出される熱を測定する。熱測定の範囲は、0〜600mWであり、温度測定は15〜60℃である。サンプルは、20℃及び60%湿度の環境中に維持した。結果を、図14に示す。
【0184】
これは、METHOCEL* CP1425によって変性されたモルタル組成物が、最初の24時間以内に最も遅い熱放出を有したことを示しており、これは、セメント水和プロセスへの良好な遅延効果を示す。CP1425によって変性されたモルタル組成物は、306及びC8681よりも長いオープンタイム及び高い保水力を有することができ、これは、夏季気候のために設計された配合物にとって重要である。
【0185】
2種のDow METHOCEL*(表4中に記載)についての剥離試験を、表9に示した標準配合物に従って実施した。0.2%(重量基準)のMETHOCEL*で、DLPの二つの使用量レベル、2.5%及び3%を試験した。この目的は、METHOCEL*が、XPSボードへの結合強度に、任意のマイナスの影響を有するかを定義すること及び306とCP1425との間の性能を比較することである。この試験に於いて、プライマー組成物は適用されなかったことに注意されたい。
【0186】
【表9】

【0187】
上記の配合物から製造されたモルタル組成物は、全て、良好な作業性を有していた。乾燥、湿潤及び高温度剥離試験からの結果を、それぞれ、図15、図16及び図17に示す。殆どの結合強度は、全ての試験条件下で、0.1〜0.15MPaの範囲内であり、これは、METHOCEL*306及びCP1425の両方が、EIFSモルタル組成物の接着特性にマイナスの影響を有しないことを示すのは明らかである。METHOCEL*306及びCP1425の両方が、異なったDLP使用量レベルで、乾燥、湿潤及び高温度条件下で、STYROFOAM*への接着強度に、統計的に差異を有していなかったことも確認される。
【0188】
METHOCEL* CP1425は、セメント水和プロセスに最良の遅延効果を有しているのでオープンタイムを延長すると結論づけることができる。両方のDow METHOCEL*セルロースエーテル製品は、システムの結合強度に影響を与えなかったが、CP1425は、EIFS配合開発のために一層適している。
【0189】
3.5.セメント
STYROFOAM*への接着特性に於けるセメントの種類及びセメントの純度からの影響を試験した。純粋なポルトランドセメントをEIFSに於いて使用することが示唆され、それ故、Xiaoyetian P・II 52.5ポルトランドセメントを、この研究に於いて詳細に試験した。標準試験配合物を、表10に記載する。25%から37.5%までの範囲内のXiaoyetianセメント比が測定され、2個の典型的なセメント比27.5%及び32.5%を、XiaoyetianポルトランドセメントとLianhe通常セメントとの間で比較した。コンクリート及びSTYROFOAM*ボード(R161Nプライマー組成物により、1:2の稀釈比で処理した)に対する接着を試験した。この水比は、最良の作業性を与えるように調節した。
【0190】
【表10】

【0191】
コンクリート及びSTYROFOAM*への乾燥及び湿潤接着の結果を、図18及び図19に示す。コンクリート及びSTYROFOAM*ボードへの両方の接着について、この範囲内のXiaoyetianセメント比が、結合強度に影響を有したと言うことは困難である。配合物中のセメントの増加に対して、結合強度は比較的一定のままであった。図18は、全てのセメント比で、乾燥接着に於けるものよりも遙かに弱い、コンクリートに対する湿潤接着を示し、ここで、乾燥結合強度及び湿潤結合強度は、それぞれ、約0.4MPa及び0.2MPaで安定であった。STYROFOAM*への接着は、図19に示されるように、乾燥試験条件及び湿潤試験条件で、非常に類似していた。両方の結合強度は、平均で0.22MPaであったが、湿潤接着は、増加したセメント比でより高い値を有しているようであった。図20に於いて、どのようなセメント比、基体及び/又は接着条件が使用されても、Xiaoyetianポルトランドセメントが、Lianhe通常セメントよりも高い結合強度の点で、より良い性能を有していたことが明らかであり、これは、結合強度とセメントの種類との間の固有の関係を示している。両方のセメントは、ローカル市場で非常に有力であるが、XiaoyetianがEIFS用途のために一層適している。
【0192】
下記のことが結論づけられる。
1)二つの試験条件、即ち乾燥及び湿潤での、2種の基体、即ちコンクリート及びSTYROFOAM*への結合強度は、25%〜40%の範囲内のセメント比に独立であった。
2)Xiaoyetian P・II 52.5ポルトランドセメントは、27.5%及び32.5%比の両方で、コンクリート及びSTYROFOAM*基体の両方に対し、乾燥及び湿潤条件の両方で、Lianhe P・O 42.5通常セメントよりも高い結合強度を与えた。
【0193】
3.6.水
典型的には、ポリマーモルタルのための水比率は30%未満である。この範囲外では、粘度がより低く、壁基体にこてで塗ることが困難である。他方、現場作業者は、非常に正確な手段で水を測定しないことが予想され、これは、水比が、実際の実施の際にある程度変化するであろうことを意味する。本発明に於いて、二つの水比、即ち22%及び25%を試験した。使用された配合物を表11に記載する。二つのRDP%レベル、2.5%及び3%を比較した。
【0194】
作業性は、粘度、保水能力又は長いオープンタイム、流動性を意味する。表11に示されるように、22%水によって配合されたモルタル組成物の作業性は良好であり、一方、25%水によるものは少し良くなかったことが見出される。モルタル組成物接着を、2種の基体、コンクリート及びSTYROFOAM*ボード上で試験し(1:2稀釈したR161N、2回処理)、乾燥及び湿潤接着を比較した。
【0195】
【表11】

【0196】
図21に示されるように、22%及び25%水によって配合されたモルタル組成物は、変化させたRDP%レベル(2.5%及び3%)、変化させた基体(コンクリート及びSTYROFOAM*)並びに変化させた試験条件(乾燥及び湿潤)で、同様の結合強度を有していた。この結果に従って、これらの一連の配合物は、25%での作業性はあまり良くなかったと見出されたが、22%〜25%の範囲内の水比について作業可能であると考えられる。3%間隔(さらにより大きい)の水比で、現場作業者は、一貫した品質を維持しながら、水を添加することのより多くの柔軟性を有する。
【0197】
4.種々の成分の選択
将来のEIFSシステム開発を容易にするために、原材料評価研究を実施した。EIFSモルタル組成物の種々の成分を、この研究に於いて、STYROFOAM*ボード及びSTYROFOAM*ボード表面を処理するために使用したプライマー組成物と同様に評価した。主として、RDP、CE、セメント、砂及び水から構成されていた、ドライ混合モルタル組成物又は一成分ポリマーモルタルに焦点を合わせた。これらの成分によって配合されたモルタル組成物の接着特性及び接着性能全てへのこれらの個々の影響を試験した。この研究に基づいて、幾つかの結論を引き出すことができる。
【0198】
●STYROFOAM*ボードの固有の引張強度は、厚さと共に増加した。50mm厚さのSTYROFOAM*ボードは、セメントモルタルによって与えられる結合強度が、引張試験の間に、ボードを破断できず、STYROFOAM*内破損を作ったように、強かった(>0.4MPa)。
【0199】
●プライマー組成物として、UCAR R161Nエマルジョンラテックスは、最良の性能を示した。これは、STYROFOAM*ボード上の乾燥及び湿潤接着の両方を、未処理のものよりも3倍以上改良した。1:1.5〜1:2の範囲内の稀釈比が、良好な作業性と低コストとのバランスで推奨された。
【0200】
●DLP2140は、STYROFOAM*への接着を改良する効果で、競合者のRDPと等価であり、乾燥及び高温度条件下で僅かにより良い。しかしながら、プライマー組成物処理無しSTYROFOAM*への劣った接着の事実が、観察された。
【0201】
●METHOCEL* CP1425は、セメント水和プロセスへの最良の遅延効果を有するので、オープンタイムを延長させる。この研究に於いて試験された2種のDow METHOCEL*セルロースエーテルの両方は、システムの結合強度に影響を与えなかった。
【0202】
●接着強度は、25%〜40%の範囲内で、セメント比に独立であった。Xiaoyetian P・II 52.5ポルトランドセメントは、Lianhe P・O 42.5通常セメントよりも高い結合強度を与えるので、P・II 52.5は、EIFS開発のために適している。
【0203】
●22%から25%までの水比の3%間隔は、接着強度全てに影響を有しないと観察された。この研究に於いて試験された一連の配合物は、水比の大きい柔軟性で良好な品質安定性を有すると見なされた。
【0204】
5.配合物の実施例
実施例配合物(ベースコートモルタル)を、下記のようにして製造した。
【0205】
【表12】

【0206】
再分散性粉末(酢酸エテニルエステル、エタンとのポリマー)
これらの配合物は、本発明者らの経験及び前記の原材料評価の幾つかの結果に基づき、ベースコートモルタルの特別の要件、例えばXPSボードに対する本発明者らの目標結合強度、可使時間、可撓性、水吸収、水密性及び抗衝撃性能を考慮に入れている。全ての試験方法はJG149−2003に於けるものと同じであり、詳細は下記に付属する報告中に記載されていることに留意されたい。
【0207】
試験のためのモルタル組成物サンプルを調製するための手順:全ての成分を、中国コードJC/T681に於いて特定されているミキサーを使用して混合して、接着モルタルを製造した。水を最初に混合ボウルの中に入れ、続いて乾燥成分を添加した。混合動作は、低速度で約60秒間を要し、停止し、次いで混合羽根を清浄にし、混合ボウルを擦り、未混合の乾燥成分を入れた。10〜15分後に、別の混合動作を、再び、同じ手順に従って実施した。
【0208】
モルタル組成物の特性を下記に示す。
【0209】
【表13】

【0210】
この試験結果は、高い結合強度、長い可使時間及びより良好な水吸収が、本発明のドライモルタル組成物によって達成されることを示している。EPSに基づくEIFSのための典型的なコード必要条件は、対照的に、機械的強度に於いて著しく低い値及び水吸収に於いて著しく高い値(この値について、より低いほど、より良いことに注目されたい)を示す。
【0211】
本発明は、種々の修正及び代替形を受け入れることができるが、前記で検討した代表的態様を、実施例の手段によって示した。しかしながら、本発明は、本明細書中に開示された特別の態様に限定されることを意図しないことが、再び理解されるべきである。実際に、本発明の技術は、以下に付属する特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神及び範囲内に入る、全ての修正、均等及び代替をカバーするためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出ポリスチレン層、モルタル層及びプライマー層を含んでなるコンポジット構造体であって、
前記押出ポリスチレン層の少なくとも1つの表面が平らにされており、
前記モルタル層が、
再分散性粉末、
セルロースエーテル、
1種又はそれ以上の粘度調整剤、
1種又はそれ以上の水硬性結合剤及び
1種又はそれ以上の骨材
を含んでなるモルタル組成物から作られるコンポジット構造体。
【請求項2】
前記押出ポリスチレン層がフォーム断熱ボードである請求項1に記載のコンポジット構造体。
【請求項3】
前記モルタル層が前記押出ポリスチレン層に隣接している請求項1〜2のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項4】
前記モルタル層が、仕上層を更に含んでなり、前記押出ポリスチレン層と前記仕上層との間に適用されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項5】
前記プライマー層が前記押出ポリスチレン層の平らにされた表面に適用されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項6】
前記プライマー層が、前記押出ポリスチレン層と前記モルタル層との間に適用されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項7】
前記再分散性粉末がエマルジョンラテックスの噴霧乾燥粉末を含んでなる請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項8】
前記再分散性粉末がエチレン含有ポリマーを含んでなる請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項9】
前記再分散性粉末がビニルエステル−エチレンコポリマーを含んでなる請求項8に記載のコンポジット構造体。
【請求項10】
前記再分散性粉末が酢酸ビニル−エチレンコポリマー、酢酸ビニル/ビニル−バーサテートコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー及びスチレン/アクリルコポリマー又はこれらの混合物の少なくとも1種を含んでなる請求項9に記載のコンポジット構造体。
【請求項11】
前記再分散性粉末が酢酸ビニル−エチレンコポリマーを含んでなる請求項10に記載のコンポジット構造体。
【請求項12】
前記モルタル組成物が約0.1重量%〜約20重量%の再分散性粉末を含んでなる請求項1〜11のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項13】
前記モルタル組成物が約1重量%〜約10重量%の再分散性粉末を含んでなる請求項12に記載のコンポジット構造体。
【請求項14】
前記モルタル組成物が約2重量%〜約5重量%の再分散性粉末を含んでなる請求項13に記載のコンポジット構造体。
【請求項15】
前記セルロースエーテルがヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテルを含んでなる請求項1〜14のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項16】
前記モルタル組成物が約0.01重量%〜約50重量%のセルロースエーテルを含んでなる請求項15に記載のコンポジット構造体。
【請求項17】
前記モルタル組成物が約0.1重量%〜約10重量%のセルロースエーテルを含んでなる請求項16に記載のコンポジット構造体。
【請求項18】
前記粘度調整剤が鉱物のスメクタイト群の一員を含んでなる請求項1〜17のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項19】
前記粘度調整剤がヘクトライト粘土を含んでなる請求項18に記載のコンポジット構造体。
【請求項20】
前記粘度調整剤が非変性ヘクトライト粘土を含んでなる請求項19に記載のコンポジット構造体。
【請求項21】
前記モルタル組成物が約0.01重量%〜約1重量%の粘度調整剤を含んでなる請求項1〜20のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項22】
前記モルタル組成物が約0.05重量%〜約0.5重量%の粘度調整剤を含んでなる請求項21に記載のコンポジット構造体。
【請求項23】
前記モルタル組成物が約0.1重量%〜約0.3重量%の粘度調整剤を含んでなる請求項22に記載のコンポジット構造体。
【請求項24】
前記水硬性結合剤がセメントを含んでなる請求項1〜23のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項25】
前記モルタル組成物が約10重量%〜約80重量%の水硬性結合剤を含んでなる請求項1〜24のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項26】
前記モルタル組成物が約20重量%〜約40重量%の水硬性結合剤を含んでなる請求項25に記載のコンポジット構造体。
【請求項27】
前記モルタル組成物が約25重量%〜約35重量%の水硬性結合剤を含んでなる請求項26に記載のコンポジット構造体。
【請求項28】
前記骨材が珪砂を含んでなる請求項1〜27のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項29】
前記モルタル組成物が約20重量%〜約80重量%の骨材を含んでなる請求項28に記載のコンポジット構造体。
【請求項30】
前記モルタル組成物が約30重量%〜約70重量%の骨材を含んでなる請求項29に記載のコンポジット構造体。
【請求項31】
前記モルタル組成物が約50重量%〜約65重量%の骨材を含んでなる請求項30に記載のコンポジット構造体。
【請求項32】
前記プライマー組成物が水分散性である請求項1〜31のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項33】
前記プライマー組成物がエマルジョンポリマーを含んでなる請求項1〜32のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項34】
前記プライマーがポリアクリルエマルジョンを含んでなる請求項33に記載のコンポジット構造体。
【請求項35】
前記プライマーが押出ポリスチレン層の各表面で約2.5g/m2〜約150g/m2の量で適用される請求項1〜34のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項36】
前記プライマーが押出ポリスチレン層の各表面で約5g/m2〜約50g/m2の量で適用される請求項35に記載のコンポジット構造体。
【請求項37】
前記プライマーが押出ポリスチレン層の各表面で約20g/m2〜約35g/m2の量で適用される請求項36に記載のコンポジット構造体。
【請求項38】
前記モルタル組成物が押出ポリスチレン層に適用されて断続的モルタル層を形成する請求項3に記載のコンポジット構造体。
【請求項39】
前記モルタル組成物が押出ポリスチレン層に適用されて均一化された連続層を形成する請求項3に記載のコンポジット構造体。
【請求項40】
押出ポリスチレン層、モルタル層及びプライマー層を含んでなるコンポジット構造体であって、
前記押出ポリスチレン層の少なくとも1個の表面が平らにされており、そして
前記モルタル層が0.2MPaよりも高い結合強度で前記押出ポリスチレン層に接着されているコンポジット構造体。
【請求項41】
前記モルタル層が0.25MPaよりも高い結合強度で前記押出ポリスチレン層に接着されている請求項40に記載のコンポジット構造体。
【請求項42】
押出ポリスチレン層、モルタル層及びポリアクリルエマルジョン層を含んでなるコンポジット構造体であって、
前記押出ポリスチレン層の両表面が平らにされており、その表面上に、ポリアクリルエマルジョン層が適用されており、
前記モルタル層が前記ポリアクリルエマルジョン層の上に更に適用されており、そして
前記モルタル層が、
約2重量%〜約5重量%のビニルエステル−エチレンコポリマー粉末、
約0.1重量%〜約1重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル、
約0.1重量%〜約0.3重量%の非変性ヘクトライト粘土、
約25重量%〜約35重量%のセメント及び
約50重量%〜約65重量%の珪砂
を含んでなるモルタル組成物から作られるコンポジット構造体。
【請求項43】
少なくとも1個のモルタル層が埋封されたガラス繊維メッシュを含んでなる請求項42に記載のコンポジット構造体。
【請求項44】
前記モルタル層が約2mm〜約10mmの厚さを有し、前記押出ポリスチレン層が約2cm〜約15cmの厚さを有する請求項1〜43のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項45】
レベリングスクリード、
スタッコ仕上層及び
請求項1〜44のいずれか1項に記載のコンポジット構造体
を含んでなる壁基体に取り付けるための外部断熱システムであって、
前記モルタル層が断熱層と前記レベリングスクリードとの間に使用されている外部断熱システム。
【請求項46】
前記プライマー層が前記断熱層の両面上に適用されている請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
2.0時間よりも長いオープンタイム、断熱ボードとの0.25MPaよりも大きい結合強度及び390g/m2よりも低い水吸収を有するモルタル組成物。
【請求項48】
モルタル組成物を、平らにされた基体の上に適用して、モルタル層を形成し、
前記押出ポリスチレンフォーム断熱層の平らにされた表面を調製し、
プライマー組成物を、前記押出ポリスチレン層の平らにされた表面の上に適用して、プライマー層を形成し、そして
断熱層を前記モルタル層の上に適用する
ことを含んでなる、建築構造体の外部の断熱及び仕上方法であって、
前記モルタル組成物が、
再分散性粉末、
セルロースエーテル、
1種又はそれ以上の粘度調整剤、
1種又はそれ以上の水硬性結合剤及び
1種又はそれ以上の骨材
を含んでなる混合物から製造される断熱及び仕上方法。
【請求項49】
前記プライマー組成物を前記押出ポリスチレンフォーム断熱層の上に適用し(ここで前記押出ポリスチレンフォーム断熱層の表面は平らにされている)、
下塗りコートモルタル組成物を、前記押出ポリスチレンフォーム断熱層の上に適用し、そして
スタッコ仕上又は塗装を、前記下塗りコートモルタルの上に適用する
ことを更に含んでなる請求項48に記載の方法。
【請求項50】
断熱層を、機械的固定によって、前記接着モルタル層の上に固定し、そして
ガラス繊維メッシュを前記下塗りコートモルタル上に埋封し、その上にスタッコ仕上又は塗装を適用する
ことを更に含んでなる請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記モルタル組成物が、強化繊維から更になる、請求項1〜44のいずれか1項に記載のコンポジット構造体。
【請求項52】
前記モルタル組成物がプラスチック繊維を更に含む請求項52に記載のコンポジット構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公表番号】特表2012−503119(P2012−503119A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527175(P2011−527175)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/CN2008/001638
【国際公開番号】WO2010/031206
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】