説明

多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置及びセル電圧監視装置

【課題】多セル直列電池における電池セルの異常を簡易・小型で高効率な回路で早期かつ適確に検出し、多セル直列電池の信頼性、安全性、寿命を向上させる。
【解決手段】このセル電圧監視装置12では、任意の電池セルBTiに対するモニタサイクルの開始直後で、セル電圧異常検出回路14が働いて、セル電圧Viが正常範囲から外れているか否かを検査する。セル電圧異常検出回路14は、多セル直列電池10の中から任意の電池セルBTを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子A,B間に取り出すための一群の選択スイッチ18と、セル電圧−モニタ電流変換回路20と、モニタ電流−モニタ電圧変換回路22と、比較判定回路24と、判定信号出力回路26と、異常検出制御回路28とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池について電池セルの電圧を監視するセル電圧監視装置に係り、特に電池セル電圧の異常を検出するセル電圧異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド電気自動車では、電気モータの電源として、多数の電池セルを直列に接続して所望の駆動電圧が得られるようにした多セル直列電池が用いられている。このような多セル直列電池においては、電池セルが二次電池からなり、電気モータの回生により発電された電力を電池に貯蔵できるようになっており、電池セルの電圧が放電で低下したり充電で上昇したりする。しかしながら、電池セルの過放電や過充電は、電気モータのトルク特性ひいては自動車の走行性を低下させるだけでなく、電池セル自体の寿命にも悪影響を及ぼす。このことから、電池セルの電圧を監視して、過充電または過放電の状態になっていれば、速やかにその異常事態を検出して制御部等に通知するセル電圧異常検出装置またはセル電圧監視装置が必要とされている。
【0003】
従来の典型的なセル電圧異常検出装置は、たとえば特許文献1に記載されるように、多セル直列電池を構成する各々の電池セルに対して当該セル電圧に応じた電流が流れるセル電圧検出素子を並列に接続し、全てのセル電圧検出素子に流れる電流の総量をカレント・トランスからなる素子電流検出手段により検出し、比較判定手段において電流総量検出値を比較基準値と比較して、各電池セルに異常が発生しているか否かを判定するようにしている。
【0004】
また、多セル直列電池内の各電池セルの電圧を検出または測定する装置においてセル電圧の異常(過充電・過放電)を検出する機能を備えたものもある。たとえば特許文献2に開示されるセル電圧検出回路は、多セル直列電池の任意の電池セルを選択するためのセル選択スイッチと、選択された電池セルの電圧をサンプリングするサンプリング・スイッチと、サンプリングされた電圧で充電されるコンデンサと、サンプリング・スイッチがオフに遷移した後に該コンデンサの電圧をA/D変換器に転送するトランスファ・スイッチとを備え、A/D変換器の出力より得られるディジタルの電流測定値を判定基準値と比較して異常(過充電・過放電)を検出するようにしている。
【特許文献1】特開2001−327091
【特許文献2】特開2001−201522
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるようなセル電圧異常検出装置は、電池セル毎にセル電圧検出素子を設けるので回路構成が煩雑であるうえ、全てのセル電圧検出素子を流れる電流の総量を検出する外付けの素子電流検出手段(カレント・トランス)を必要とするので装置コストおよび装置サイズが増大するという問題があり、さらには異常セルの識別・確定を個々に行い得ないという不便または制限もある。
【0006】
また、特許文献2に記載のようなセル電圧検出装置は、セル選択スイッチにより多セル直列電池の中から選択した電池セルの状態を判断するまでに、サンプリング・スイッチを介してコンデンサに充電する時間、トランスファ・スイッチを介してコンデンサの対地電位をグランドまで引き下げ、次いでA/D変換器へ転送する時間、およびA/D変換器におけるA/D変換時間を費やすため、異常の発見が遅れるおそれがある。電気自動車等において電池異常の検出が遅れることは電池の安全上の致命的な欠点になる。また、電圧検出回路の構成(特にサンプリング・スイッチ、コンデンサ、トランスファ・スイッチ)と動作(スイッチング動作、充放電動作)が複雑であり、セル電圧測定値に異常が現れた場合に、果たしてセル電圧の異常なのか、それとも測定回路の異常なのかを区別できないという問題もある。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、簡易・小型で高効率な回路構成により多セル直列電池における電池セルの異常を早期かつ高精度に検出し、多セル直列電池の信頼性、安全性、寿命を向上させる多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置およびセル電圧監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の観点における多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置は、多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタと組み合わさって第1の電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタと、前記第2のトランジスタを流れる電流をモニタ電圧に変換する電流−電圧変換回路と、前記電流−電圧変換回路で得られる前記モニタ電圧を所定の基準電圧と比較して、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路とを有する。
【0009】
上記の装置構成においては、選択スイッチにより多セル直列電池の中から所望の電池セルが選択されると、第1および第2のモニタ端子間で当該電池セルの電圧に応じた電流つまりモニタ電流が第1のトランジスタを流れる。そうすると、電流−電圧変換回路では、第1および第2のトランジスタで構成される電流ミラー回路のミラー効果により、モニタ電流に一定のカレントミラー比または倍率で比例する電流が流れ、この電流に応じたモニタ電圧が得られる。比較判定回路は、モニタ電流ひいては当該電池セルの電圧と一定の対応関係を有するモニタ電圧を所定の基準電圧と比較するので、当該電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを適確に判定することができる。
【0010】
本発明の第2の観点における多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置は、多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタを有し、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧をモニタ電流に変換するセル電圧−モニタ電流変換回路と、前記第1のトランジスタと組み合わさって電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタを有し、前記モニタ電流に所定の倍率で比例するミラーモニタ電流を生成するミラーモニタ電流生成回路と、前記ミラーモニタ電流生成回路で生成されたミラーモニタ電流を所定の基準電流と比較して、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路とを有する。
【0011】
上記の装置構成においては、選択スイッチにより多セル直列電池の中から所望の電池セルが選択されると、第1および第2のモニタ端子間で当該電池セルの電圧に応じた電流つまりモニタ電流が第1のトランジスタを流れる。そうすると、ミラーモニタ電流生成回路では、第1および第2のトランジスタで構成される電流ミラー回路のミラー効果により、モニタ電流に一定のカレントミラー比または倍率で比例するミラーモニタ電流が生成される。比較判定回路は、モニタ電流ひいては当該電池セルの電圧と一定の対応関係を有するミラーモニタ電流を基準電流と比較することで、当該電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを適確に判定することができる。
【0012】
本発明の第3の観点における多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置は、多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタを有し、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧をモニタ電流に変換するセル電圧−モニタ電流変換回路と、前記第1のトランジスタと組み合わさって電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタを有し、前記セル電圧−モニタ電流変換回路で生成されたモニタ電流を所定の基準電流と比較して、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路とを有する。
【0013】
上記の装置構成においては、選択スイッチにより多セル直列電池の中から所望の電池セルが選択されると、第1および第2のモニタ端子間で当該電池セルの電圧に応じた電流つまりモニタ電流が第1のトランジスタを流れる。そうすると、比較判定回路では、第1および第2のトランジスタで構成される電流ミラー回路のミラー効果により、モニタ電流に一定のカレントミラー比または倍率で比例するミラーモニタ電流が生成される。比較判定回路は、ミラーモニタ電流を通じてモニタ電流を基準電流と比較することで、当該電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを適確に判定することができる。
【0014】
本発明の第4の観点における多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置は、多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタと組み合わさって第1の電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタと、前記第2のトランジスタを流れる電流をモニタ電圧に変換する電流−電圧変換回路と、前記電流−電圧変換回路で得られる前記モニタ電圧を所定の基準電圧と比較して、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路とを有する。
【0015】
上記の装置構成においては、選択スイッチにより多セル直列電池の中から所望の電池セルが選択されると、第1および第2のモニタ端子間で当該電池セルの電圧に応じた電流つまりモニタ電流が第1のトランジスタを流れる。そうすると、第1および第2のトランジスタで構成される電流ミラー回路のミラー効果により、モニタ電流に一定のカレントミラー比または倍率で比例する電流が第2のトランジスタを流れ、この2のトランジスタを流れる電流に応じたモニタ電圧が電流−電圧変換回路より得られる。比較判定回路は、モニタ電流ひいては当該電池セルの電圧と一定の対応関係を有するモニタ電圧を所定の基準電圧と比較するので、当該電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを適確に判定することができる。
【0016】
本発明の好適な一態様によれば、電流−電圧変換回路は、第1のモニタ端子と第1の電源電圧端子との間で第2のトランジスタと直列に接続される第3のトランジスタと、第3のトランジスタと組み合わさって第2の電流ミラー回路を構成する第4のトランジスタと、一定の電圧を与える第2および第3の電源電圧端子の間で第4のトランジスタと直列に接続される第1の抵抗とを有し、第4のトランジスタと第1の抵抗との間のノードよりモニタ電圧を取り出す。また、比較判定回路は、モニタ電圧を下限監視用の第1の比較基準電圧と比較して、両電圧の高低関係を表わす二値の判定信号を出力する第1の電圧比較回路と、モニタ電圧を上限監視用の第2の比較基準電圧と比較して、両電圧の高低関係を表わす二値の判定信号を出力する第2の電圧比較回路とを有する。
【0017】
本発明の第5の観点における多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置は、多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタと組み合わさって第1の電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタと、前記第2のトランジスタを流れる電流を下限監視用の第1のモニタ電圧および上限監視用の第2のモニタ電圧に変換する電流−電圧変換回路と、前記電流−電圧変換回路で得られる前記第1および第2のモニタ電圧をそれぞれ第1および第2の基準電圧と比較して、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路とを有する。
【0018】
上記の装置構成においては、選択スイッチにより多セル直列電池の中から所望の電池セルが選択されると、第1および第2のモニタ端子間で当該電池セルの電圧に応じた電流つまりモニタ電流が第1のトランジスタを流れる。そうすると、第1および第2のトランジスタで構成される電流ミラー回路のミラー効果により、モニタ電流に一定のカレントミラー比または倍率で比例する電流が第2のトランジスタを流れ、この第2のトランジスタを流れる電流に応じた下限監視用および上限監視用の第1および第2のモニタ電圧が電流−電圧変換回路で得られる。比較判定回路は、モニタ電流ひいては当該電池セルの電圧と一定の対応関係を有する第1および第2モニタ電圧をそれぞれ下限監視用および上限監視用の基準電圧と比較することで、当該電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを適確に判定することができる。
【0019】
本発明の好適な一態様として、電流−電圧変換回路は、第1のモニタ端子と第1の電源電圧端子との間で第2のトランジスタと直列に接続される第3のトランジスタと、この第3のトランジスタと組み合わさって第2の電流ミラー回路を構成する第4のトランジスタと、一定の電圧を与える第2および第3の電源電圧端子の間で第4のトランジスタと直列に接続される第1の抵抗と、第3のトランジスタと組み合わさって第3の電流ミラー回路を構成する第5のトランジスタと、第2および第3の電源電圧端子の間で第5のトランジスタと直列に接続される第2の抵抗とを有し、第4のトランジスタと第1の抵抗との間のノードより第1のモニタ電圧を取り出し、第5のトランジスタと第2の抵抗との間のノードより第2のモニタ電圧を取り出す。
【0020】
本発明の第6の観点における多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置は、多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタと組み合わさって第1の電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタと、前記第2のトランジスタを流れる電流を所定の基準電流と比較して、前記電池セルにより選択された前記電池セルの出力電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路とを有する。
【0021】
上記の装置構成においては、選択スイッチにより多セル直列電池の中から所望の電池セルが選択されると、第1および第2のモニタ端子間で当該電池セルの電圧に応じた電流つまりモニタ電流が第1のトランジスタを流れる。そうすると、第1および第2のトランジスタで構成される電流ミラー回路のミラー効果により、モニタ電流に一定のカレントミラー比または倍率で比例する電流が第2のトランジスタを流れる。比較判定回路は、モニタ電流ひいては当該電池セルの電圧と一定の対応関係を有する第2のトランジスタを流れる電流を基準電圧と比較することで、当該電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを適確に判定することができる。
【0022】
本発明の好適な一態様として、比較判定回路は、第1のモニタ端子と第1の電源電圧端子との間で第2のトランジスタと直列に接続される第3のトランジスタと、この第3のトランジスタと組み合わさって第2の電流ミラー回路を構成する第4のトランジスタと、一定の電圧を与える第2および第3の電源電圧端子の間で第4のトランジスタと直列に接続される下限監視用の第1の定電流源と、第3のトランジスタと組み合わさって第3の電流ミラー回路を構成する第5のトランジスタと、第2および第3の電源電圧端子の間で第5のトランジスタと直列に接続される上限監視用の第2の定電流源とを有し、第4のトランジスタと第1の定電流源との間のノードより電池セルの電圧が所定の下限値を割っているか否かを示す第1の判定信号を取り出し、第4のトランジスタと第2の定電流源との間のノードより電池セルの出力電圧が所定の上限値を超えているか否かを示す第2の判定信号を取り出す。
【0023】
本発明の第7の観点における多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置は、多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタを流れる電流を所定の基準電流と比較して、前記電池セルにより選択された前記電池セルの出力電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路とを有する。
【0024】
上記の装置構成においては、選択スイッチにより多セル直列電池の中から所望の電池セルが選択されると、第1および第2のモニタ端子間で当該電池セルの電圧に応じた電流つまりモニタ電流が第1のトランジスタを流れる。比較判定回路は、モニタ電流と一定の対応関係を有するモニタ電流を基準電流と比較することで、当該電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを適確に判定することができる。
【0025】
本発明の好適な一態様によれば、比較判定回路が、第1のトランジスタと組み合わさって第1の電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタと、第1のモニタ端子と所定の電源電圧端子との間で第2のトランジスタと直列に接続される下限監視用の第1の定電流源と、第1のトランジスタと組み合わさって第2の電流ミラー回路を構成する第3のトランジスタと、第1のモニタ端子と電源電圧端子との間で第3のトランジスタと直列に接続される上限監視用の第2の定電流源とを有し、第2のトランジスタと第1の定電流源との間のノードより電池セルの電圧が所定の下限値を割っているか否かを示す第1の判定信号を取り出し、第3のトランジスタと第2の定電流源との間のノードより電池セルの出力電圧が所定の上限値を超えているか否かを示す第2の判定信号を取り出す。
【0026】
本発明のセル電圧異常検出装置においては、好適な一態様として、第1および第2のモニタ端子間で第3の抵抗が第1のトランジスタと直列に接続される。この第3の抵抗の抵抗値によってモニタ電流の電流値を調整することができる。また、別の好適な一態様として、第1および第2のモニタ端子間でオン/オフ切換用のスイッチが第1のトランジスタと直列に接続される。このスイッチのオン・オフによってセル電圧異常検出の動作をオン・オフさせることができる。
【0027】
本発明の多セル直列電池用のセル電圧監視装置は、本発明のセル電圧異常検出装置と、前記多セル直列電池内の各電池セルの電圧を測定するためのセル電圧測定回路とを有する。かかる装置構成によれば、所望の電池セルについてセル電圧測定回路でセル電圧の測定値が得られる前に、セル電圧異常検出装置より当該セル電圧が正常であるか異常であるかのモニタ情報が出されるので、セル電圧の異常を早期に検知して、適確な安全処置をとることができる。
【0028】
好適な一態様として、セル電圧測定回路は、選択スイッチにより選択された電池セルの出力電圧をサンプリングするためのサンプリング・スイッチと、このサンプリング・スイッチによりサンプリングされた電圧によって充電されるコンデンサと、このコンデンサに充電された電圧をディジタル信号に変換するA/D変換器と、コンデンサの充電電圧をA/D変換器へ転送するためのトランスファ・スイッチとを有してよい。また、選択スイッチにより所望の電池セルの電圧を選択している期間の開始直後または前半部で、セル電圧異常検出装置が作動して、当該電池セルの電圧が正常であるか異常であるかを判定するようにしてよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置およびセル電圧監視装置によれば、上述したような構成および作用により、多セル直列電池における電池セルの異常を簡易・小型・高効率な回路で早期かつ適確に検出し、多セル直列電池の信頼性、安全性、寿命を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0031】
図1に、本発明の一実施形態による多セル直列電池用のセル電圧監視装置の回路構成を示す。
【0032】
多セル直列電池10は、多数(n)個の電池セルBT1,BT2,・・,BTn-1,BTnを直列に接続してなる。各電池セルBTは、たとえばリチウムイオン電池などの二次電池からなり、所定の充電特性および放電負荷特性で充放電するように構成されている。多セル直列電池10の正極性および負極性の出力端子OUT(+),OUT(-)は、負荷たとえば電気自動車の場合は電気モータ駆動用のインバータ(図示せず)に接続される。
【0033】
この多セル直列電池10を監視するセル電圧監視装置12は、セル電圧異常検出回路14およびセル電圧測定回路16を有しており、装置全体がワンチップの半導体集積回路として構成される。
【0034】
セル電圧異常検出回路14は、多セル直列電池10の中から1セル単位または複数セル(ブロック)単位で任意の電池セルBTを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子A,B間に取り出すための一群の選択スイッチ18と、セル電圧−モニタ電流変換回路20と、モニタ電流−モニタ電圧変換回路22と、比較判定回路24と、判定信号出力回路26と、異常検出制御回路28とを有している。
【0035】
より詳細には、選択スイッチ18は、多セル直列電池10の各電池セルBTiの両端子と両モニタ端子A,Bとの間にそれぞれ接続されたn組のオン/オフ切換スイッチ[SHi,SLi](i=1,2,・・n−1,n)で構成されている。たとえば、スイッチ[SH2,SL2]〜[SHn,SLn]が全てオフ状態で、スイッチ[SH1,SL1]がオンすると、電池セルBT1の電圧がスイッチ[SH1,SL1]を介してモニタ端子A,Bに取り出されるようになっている。
【0036】
セル電圧−モニタ電流変換回路20は、第1および第2のモニタ端子A,B間で直列に接続されたPMOSトランジスタ30、抵抗32およびオン/オフ切換スイッチ34を有している。より詳細には、PMOSトランジスタ30のソース端子が正極側のモニタ端子Aに接続され、ドレイン端子およびゲート端子が抵抗32およびスイッチ34を介して負極側のモニタ端子Bに接続されている。
【0037】
選択スイッチ18においてスイッチ[SHi,SLi]がオンして電池セルBTiの電圧Viがモニタ端子A,B間に取り出されている間に、セル電圧検出回路20においてスイッチ30が異常検出制御回路28からの異常検出制御信号MSに応じてオンすると、PMOSトランジスタ30および抵抗32に電流IM(以下、「モニタ電流IM」と称する。)が流れる。このモニタ電流IMは、PMOSトランジスタ30のしきい値電圧をVT30、抵抗32の抵抗値をR32とすると、次式(1)で表わされる。
M=(Vi−VT30)/R32 ・・・・(1)
【0038】
モニタ電流−モニタ電圧変換回路22は、第1のモニタ端子Aとグランド端子との間で直列に接続されたPMOSトランジスタ36およびNMOSトランジスタ38を有している。より詳細には、PMOSトランジスタ36のソース端子が正極側のモニタ端子Aに接続され、ドレイン端子がNMOSトランジスタ38を介してグランド端子に接続されている。そして、PMOSトランジスタ36のゲート端子がPMOSトランジスタ30のゲート端子およびドレイン端子に接続されており、両トランジスタ30,36で電流ミラー回路が構成されている。
【0039】
セル電圧−モニタ電流変換回路20でモニタ電流IMが流れると、電流ミラー回路[30,36]におけるミラー効果により、PMOSトランジスタ36およびNMOSトランジスタ38の直列回路でモニタ電流IMに所望のカレントミラー比または倍率aで比例する電流a*IM(以下、「一次ミラーモニタ電流a*IM」と称する。)が流れるようになっている。
【0040】
この実施形態では、セル電圧−モニタ電流変換回路20において消費電力を極力少なくするように、モニタ電流IMを微小電流値たとえば数μA〜数百μAに設定するのが好ましく、そのためには抵抗32の抵抗値R32を大きな値たとえば数kΩ〜数MΩに選定してよい。
【0041】
さらに、モニタ電流−モニタ電圧変換回路22は、NMOSトランジスタ38と組み合わさってそれぞれ電流ミラー回路を構成するNMOSトランジスタ40,42と、VDD端子およびグランド端子の間でNMOSトランジスタ40,42にそれぞれ直列接続される抵抗44,46とを有している。より詳細には、NMOSトランジスタ40,42のソース端子がグランド端子に接続され、NMOSトランジスタ40,42のドレイン端子がそれぞれ抵抗44,46を介してVDD端子に接続され、NMOSトランジスタ40,42のゲート端子がNMOSトランジスタ38のゲート端子およびドレイン端子に接続されている。
【0042】
モニタ電流−モニタ電圧変換回路22において、NMOSトランジスタ38に一次ミラーモニタ電流a*IMが流れると、電流ミラー回路[38,40]におけるミラー効果により、MOSトランジスタ40および抵抗44の直列回路に一次ミラーモニタ電流a*IMに所望のカレントミラー比または倍率bで比例する電流ab*IM(以下、「第1の二次ミラーモニタ電流ab*IM」と称する。)が流れる。また、NMOSトランジスタ42および抵抗46の直列回路では、電流ミラー回路[38,42]におけるミラー効果により、一次ミラーモニタ電流a*IMに所望のカレントミラー比または倍率cで比例する電流ac*IM(以下、「第2の二次ミラーモニタ電流ac*IM」と称する。)が流れる。
【0043】
ここで、第1の二次ミラーモニタ電流ab*IMは倍率a×bでモニタ電流IMに比例し、第2の二次ミラーモニタ電流ac*IMは倍率a×cでモニタ電流IMに比例するという関係がある。
【0044】
抵抗44の抵抗値をR44とすると、NMOSトランジスタ40と抵抗44との間のノードFには次の式(2)で表される下限監視または過放電監視用の電圧VF(以下、「第1のモニタ電圧VF」と称する。)が得られる。
F=VDD−R44*(ab*IM) ・・・・(2)
【0045】
また、抵抗46の抵抗値をR46とすると、NMOSトランジスタ42と抵抗46との間のノードGには次の式(3)で表される上限監視または過充電監視用の電圧VG(以下、「第2のモニタ電圧VG」と称する。)が得られる。
G=VDD−R46*(ac*IM) ・・・・(3)
【0046】
上記の式(2),(3)からわかるように、モニタ電流IMが大きいほど(つまりセル電圧VMが高いほど)モニタ電圧VF,VDは低くなり、モニタ電流IMが小さいほど(セル電圧VMが低いほど)モニタ電圧VF,VDは高くなるという関係がある。
【0047】
比較判定回路24は、たとえば演算増幅器を用いた第1および第2の電圧比較回路48,50を有している。第1の電圧比較回路48は、正極側の入力端子(+)にモニタ電流−モニタ電圧変換回路22からの第1のモニタ電圧VFを入力し、負極側の入力端子(−)に基準電圧発生回路52からの過放電監視用の比較基準電圧VSLを入力する。そして、両入力電圧VF,VSLの電圧レベルを比較し、VF≦VSLのときはセル電圧VMが所定の下限値よりも高い、つまり当該電池セルBTiが過放電状態でないことを表わす論理値Lの判定信号を出力し、VF>VSLのときはセル電圧VMが所定の下限値よりも低い、つまり当該電池セルBTiが過放電状態であることを表わす論理値Hの判定信号(過放電検出信号)を出力するようになっている。
【0048】
なお、各電池セルBTiが過放電状態であると認定されるような所定の低いセル電圧まで下がったときにセル電圧−モニタ電流変換回路20に流れるモニタ電流IMの電流値をIMLとすると、過放電監視用の比較基準電圧VSLは次の式(4)で表される。
VSL=VDD−R44*(ab*IML) ・・・・(4)
【0049】
第2の電圧比較回路50は、正極側の入力端子(+)に基準電圧発生回路54からの過充電監視用の比較基準電圧VSUを入力し、負極側の入力端子(−)にモニタ電流−モニタ電圧変換回路22からの第2のモニタ電圧VGを入力する。そして、両入力電圧VG,VSUの電圧レベルを比較し、VG≧VSUのときはセル電圧VMが所定の上限値よりも低い、つまり当該電池セルBTiが過充電状態でないことを表わす論理値Lの判定信号を出力し、VG<VSUのときはセル電圧VMが所定の上限値よりも高い、つまり当該電池セルBTiが過充電状態であることを表わす論理値Hの判定信号(過充電検出信号)を出力するようになっている。
【0050】
なお、各電池セルBTiが過充電状態であると認定されるような所定の高いセル電圧まで上がったときにセル電圧−モニタ電流変換回路20に流れるモニタ電流IMの電流値をIMUとすると、過充電監視用の比較基準電圧VSUは次の式(5)で表される。
VSU=VDD−R46*(ac*IMU) ・・・・(5)
【0051】
判定信号出力回路26は、それぞれ論理ゲート回路として機能する第1および第2のAND回路56,58で構成されている。第1のAND回路56は、一方の入力端子に第1の電圧比較回路48からの判定信号を入力し、他方の入力端子に異常検出制御回路28からの異常検出制御信号MSを入力する。第2のAND回路58は、一方の入力端子に第2の電圧比較回路50からの判定信号を入力し、他方の入力端子に異常検出制御回路28からの異常検出制御信号MSを入力する。異常検出制御信号MSが論理値Lのときは、両AND回路56,58がそれらの出力を強制的に論理値Lにしてディセーブル状態つまり待機モードとなる。異常検出制御信号MSが論理値Hのときは、両AND回路56,58がイネーブル状態つまりモニタ出力モードとなり、比較判定回路24からの判定信号、特に論理値Hの過放電検出信号または過充電検出信号を出力するようになっている。
【0052】
判定信号出力回路26の出力端子は、この多セル直列電池およびセル電圧監視装置を統括制御するコントローラ(図示せず)に接続されてよい。また、選択スイッチ18も該コントローラの下で制御されてよく、異常検出制御回路28は該コントローラの下で、またはその一部として動作してよい。
【0053】
次に、セル電圧測定回路16について説明する。このセル電圧測定回路16は、上述した一群の選択スイッチ18を含むとともに、一対のサンプリング・スイッチ60H,60L、コンデンサ(フライング・キャパシタ)62、一対のトランスファ・スイッチ64H,64LおよびA/D変換器66を有している。
【0054】
より詳細には、正極側のモニタ端子Aとコンデンサ62の正極側端子との間に一方のサンプリング・スイッチ60Hが接続され、負極側のモニタ端子Bとコンデンサ62の負極側端子との間に他方のサンプリング・スイッチ60Lが接続される。また、コンデンサ62の正極側端子とA/D変換器66の電圧入力端子との間に一方のトランスファ・スイッチ64Hが接続され、コンデンサ62の負極側端子とA/D変換器66のグランド端子との間に他方のトランスファ・スイッチ64Lが接続される。
【0055】
このセル電圧測定回路16において、多セル直列電池10内の電池セルBTiの電圧を測定する場合は、両トランスファ・スイッチ64H,64Lをオフ状態にしておいて、選択スイッチ18の中でスイッチ[SHi,SLi]のみをオンさせて電池セルBTiの電圧をモニタ端子A,Bに取り出し、この状態の下で両サンプリング・スイッチ60H,60Lをオンにして、コンデンサ62を電池セルBTiの電圧で充電する。このコンデンサ充電が完了した後に、選択スイッチ18および両サンプリング・スイッチ60H,60Lをオフにして電池セルBTiをコンデンサ62から電気的に切り離す。次いで、負極側のトランスファ・スイッチ64Lを先にオンさせて、コンデンサ62の負極側端子または対地電位をグランド電位まで引き下げ、少し遅れて正極側のトランスファ・スイッチ64Hもオンさせる。これにより、電池セルBTiの電圧Viをコピーしたコンデンサ62の充電電圧が、両トランスファ・スイッチ64H,64Lを介してA/D変換器66に転送される。A/D変換器66より得られるディジタル信号はセル電圧測定値として上記コントローラに送られる。
【0056】
次に、図2を参照してこのセル電圧監視装置内の全体の動作を説明する。図2には、任意の1個の電池セルBTiに対してセル電圧異常検出およびセル電圧測定を行う際の各部の波形を示す。多セル直列電池10の全体に対しては、一端の電池セルBT1から他端の電池セルBTnまで1セルずつ図示のモニタサイクルを繰り返してよい。
【0057】
モニタサイクルの開始直前では、装置内の全てのスイッチがオフ状態となっている。モニタサイクルが開始すると、先ず選択スイッチ18の中でスイッチ[SHi,SLi]がオンし、これと同時に異常検出制御信号MSがアクティブな論理値Hになる。
【0058】
選択スイッチ[SHi,SLi]がオンすることにより、当該電池セルBTiの電圧Viがスイッチ[SHi,SLi]を介してモニタ端子A,Bに取り出される。
【0059】
セル電圧異常検出回路14においては、セル電圧−モニタ電流変換回路20でスイッチ34が論理値Hの異常検出制御信号MSに応じてオンし、モニタ端子A,B間で上記の式(1)で表わされるモニタ電流IMが流れる。
【0060】
そうすると、上述したような電流ミラー効果により、モニタ電流−モニタ電圧変換回路22の各部で一次ミラーモニタ電流a*IMおよび第1および第2の二次ミラーモニタ電流ab*IM,ac*IMが流れ、ノードF,Gにそれぞれ第1および第2のモニタ電圧VF,VGが得られる。
【0061】
そして、比較判定回路24において、モニタ電圧VF,VGが過放電監視用および過充電監視用の比較基準電圧VSL,VSUとそれぞれ比較され、それらの比較結果に基づいた第1および第2の判定信号が生成される。その結果、第1の電圧比較回路48で論理値Hの過放電検出信号が得られた場合、あるいは第2の電圧比較回路50で論理値Hの過充電検出信号が得られた場合は、それらの異常検出信号が判定信号出力回路26を通じて速やかにコントローラに送られる。
【0062】
セル電圧異常検出回路14は、異常検出制御回路28が異常検出制御信号MSをアクティブ(論理値H)状態に保持している期間中に動作する。この信号MSのアクティブな期間またはパルス幅(t1〜t2)は、電池セルBTiの電力消費を極力少なくするうえで出来るだけ短い時間幅が好ましく、たとえば数μsec〜数百μsecに設定されてよい。
【0063】
セル電圧検出装置16では、セル電圧異常検出回路14で異常検出制御信号MSが非アクティブな論理値Lになった直後(時点t2)に、サンプリング・スイッチ60H,60Lがオンする。そうすると、電池セルBTiとコンデンサ62との間にオン状態の選択スイッチ[SHi,SLi]およびサンプリング・スイッチ60H,60Lを介して閉回路が形成され、電池セルBTiからコンデンサ62に充電電流が供給される。こうして、コンデンサ62の電圧が電池セルBTiの電圧Viに等しくなるまで充電される。充電開始から一定期間が経過すると(時点t3で)、サンプリング・スイッチ60H,60Lがオフし、電池セルBTiがコンデンサ62から電気的に切り離される。
【0064】
しかる後、所定のタイミング(時点t4)で、先に負極側のトランスファ・スイッチ64Lがオンしてコンデンサ62の負極側端子つまり対地電位をグランド電位まで引き下げ、少し遅れて時点t5で正極側のトランスファ・スイッチ64Hもオンする。これにより、電池セルBTiの電圧をコピーしたコンデンサ62の充電電圧が、両トランスファ・スイッチ64H,64Lを介してA/D変換器66に転送される。A/D変換器66は、取り込んだアナログのセル電圧Viをディジタル信号に変換し、そのディジタル信号をセル電圧測定値としてコントローラに送る。
【0065】
上記のように、この実施形態のセル電圧監視装置12においては、任意の電池セルBTiに対するモニタサイクルの開始直後で、つまり電池セルBTiの電圧Viをモニタ端子A,Bに取り出した直後に、セル電圧異常検出回路14が働いて、セル電圧Viが正常範囲から外れているか否かを検査する。そして、電池セルBTiが異常(過放電または過充電)状態になっているときは、セル電圧検出装置16でセル電圧ViがA/D変換される前に、その異常を示す判定信号がセル電圧異常検出回路14より出力され、コントローラはセル電圧の異常に対する所要の処置を速やかにとることができる。このことにより、負荷ないしシステム全体の安全性能を向上できるとともに、電池セルの破壊防止や長寿命化を図れる。
【0066】
実施形態におけるセル電圧異常検出回路14は、セル電圧検出装置16内で、特にコンデンサ(フライング・キャパシタ)62回りで誤動作や不具合があっても、セル電圧異常検出回路14はその影響を受けることなくセル電圧の異常の有無を適確に判定することができる。他方において、セル電圧検出装置16でコンデンサ62が充電される前に、セル電圧検出装置16の動作が終了するので(スイッチ34がオフするので)、コンデンサ62の充電動作に影響を与えることはない。つまり、セル電圧検出装置16側からセル電圧検出装置16のセル電圧測定に悪影響(測定誤差)を与えることはない。
【0067】
また、セル電圧異常検出回路14は、多セル直列電池10を構成する多数(たとえば数十個)の電池セルBT1〜BTnの電圧を共通に1つの電圧検出手段(セル電圧−モニタ電流変換回路20)で検出し、しかもカレントトランスのような外付け部品を不要としており、消費電力が少なく、回路規模および面積も大幅に小さくなっている。さらに、セル電圧検出装置16と選択スイッチ18を兼用しているので、この点でも回路構成の効率化が図られている。
【0068】
また、多セル直列電池10の正極側出力端子OUT(+)に近い電池セルたとえばBTn)が選択された場合は、モニタ端子A,Bに高電圧(たとえば50〜60ボルト)が印加されるが、セル電圧−モニタ電流変換回路20で生成されるモニタ電流IMが電流ミラー回路を介して次段ないし後段に伝達されるので、モニタ電流−モニタ電圧変換回路22および比較判定回路24では低電圧(たとえば3.3ボルト)の電源電圧VDDを用いて異常検出の信号処理を行うことができる。これにより、ドレイン−ゲート間にLOCOSオフセットを持つ高耐圧MOS素子をPMOSトランジスタ30,36等に数個用いるだけで、半導体集積化が容易であり、かつ高電圧に対する耐圧リスクが低くなっている。
【0069】
図3に、第2の実施形態によるセル電圧監視装置の回路構成を示す。図中、上述した実施形態のセル電圧監視回路(図1)と同様の構成または機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0070】
この第2の実施形態は、セル電圧−モニタ電流変換回路20の次段で、モニタ電流−モニタ電圧変換回路22を省いて、ミラーモニタ電流生成回路68および電流比較型の比較判定回路70を備えている。
【0071】
ミラーモニタ電流生成回路68は、第1のモニタ端子Aとグランド端子との間で直列に接続されたPMOSトランジスタ36およびNMOSトランジスタ38を有している。より詳細には、PMOSトランジスタ36のソース端子が正極側のモニタ端子Aに接続され、ドレイン端子がNMOSトランジスタ38を介してグランド端子に接続されている。そして、PMOSトランジスタ36のゲート端子がPMOSトランジスタ30のゲート端子およびドレイン端子に接続されており、両トランジスタ30,36で電流ミラー回路が構成されている。
【0072】
セル電圧−モニタ電流変換回路20にモニタ電流IMが流れると、上記第1の実施形態と同様に、電流ミラー回路[30,36]におけるミラー効果により、PMOSトランジスタ36およびNMOSトランジスタ38の直列回路にモニタ電流IMに所望の倍率aで比例する一次ミラーモニタ電流a*IMが流れる。
【0073】
比較判定回路70は、NMOSトランジスタ38と組み合わさってそれぞれ電流ミラー回路を構成するNMOSトランジスタ40,42と、VDD端子およびグランド端子の間でNMOSトランジスタ40,42にそれぞれ直列接続される定電流源72,74とを有している。より詳細には、NMOSトランジスタ40,42のソース端子がグランド端子に接続され、NMOSトランジスタ40,42のドレイン端子がそれぞれ定電流源72,74を介して正極側のVDD端子に接続され、NMOSトランジスタ40,42のゲート端子がNMOSトランジスタ38のゲート端子およびドレイン端子に接続されている。
【0074】
そして、定電流源72とNMOSトランジスタ40との間のノードJは、2段の反転回路76,78を介して判定信号出力回路26のAND回路56の一入力端子に接続される。また、定電流源74とNMOSトランジスタ42との間のノードKは、一段の反転回路80を介して判定出力回路26のAND回路58の一入力端子に接続される。
【0075】
比較判定回路70においては、定電流源72とNMOSトランジスタ40とで過放電検出用の第1の電流比較回路が構成されている。定電流源72は下限または過放電監視用の比較基準電流IJを与える。電流ミラー回路[38,40]におけるカレントミラー比をbとすると、IJ=ab*IMLと定義される。ここで、IMLは、上記第1の実施形態と同様に、各電池セルBTiが過放電状態であると認定されるような所定の低いセル電圧まで下がったときにセル電圧−モニタ電流変換回路20に流れるモニタ電流IMの電流値(下限電流値)である。
【0076】
セル電圧−モニタ電流変換回路20にモニタ電流IMが流れると、ミラーモニタ電流生成回路68ではモニタ電流IMを一定の比率aでミラーした一次ミラーモニタ電流a*IMがPMOSトランジスタ36およびNMOSトランジスタ38を流れる。そうすると、比較判定回路70の第1の電流比較回路では、一次ミラーモニタ電流a*IMを一定の比率bでミラーした第1の二次ミラーモニタ電流ab*IMがNMOSトランジスタ40のソース電流として流れる。IJ≦ab*IMのときは、定電流源72よりドレイン端子に供給される電流よりもソース電流が大きいためにNMOSトランジスタ40のドレイン端子つまりノードJの電位が下がり、反転回路78の出力端子より当該セル電圧Viが正常範囲内にあることを示す論理値Lの判定出力信号が得られる。しかし、IJ>ab*IMのときは、定電流源72よりドレイン端子に供給される電流よりもソース電流が小さいためにノードJの電位が上がり、反転回路78の出力端子より当該セル電圧Viが下限値を割っている、つまり過放電状態にあることを示す論理値Hの判定出力信号が得られる。
【0077】
一方、定電流源74とNMOSトランジスタ42とで過充電検出用の第2の電流比較回路が構成されている。定電流源74は上限または過充電監視用の比較基準電流IKを与える。電流ミラー回路[38,42]におけるカレントミラー比をcとすると、IK=ac*IMUと定義される。ここで、IMUは、上記第1の実施形態と同様に、各電池セルBTiが過充電状態であると認定されるような所定の高いセル電圧まで上がったときにセル電圧−モニタ電流変換回路20に流れるモニタ電流IMの電流値(上限電流値)である。
【0078】
上記のようにミラーモニタ電流生成回路68に一次ミラーモニタ電流a*IMが流れると、比較判定回路70の第2の電流比較回路では一次ミラーモニタ電流a*IMを一定の比率cでミラーした第2の二次ミラーモニタ電流ac*IMがNMOSトランジスタ42のソース電流として流れる。IK≧ac*IMのときは、定電流源72よりドレイン端子に供給される電流よりもソース電流が小さいためにNMOSトランジスタ42のドレイン端子つまりノードKの電位が上がり、反転回路80の出力端子より当該セル電圧Viが正常範囲内にあることを示す論理値Lの判定出力信号が得られる。IK<ac*IMのときは、定電流源72よりドレイン端子に供給される電流よりもソース電流が大きいためにノードKの電位が下がり、反転回路80の出力端子より当該セル電圧Viが上限値を超えている、つまり過充電状態にあることを示す論理値Hの判定出力信号が得られる。
【0079】
この第2の実施形態におけるセル電圧異常検出回路14は、上記第1の実施形態と同様の作用効果が得られるだけでなく、電圧比較回路48,50を含まないので、より簡易・小型の回路構成となっている。
【0080】
以上本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変形・変更が可能である。
【0081】
たとえば、上記第1の実施形態では、モニタ電流−モニタ電圧変換回路22で下限監視用のモニタ電圧VFおよび上限監視用のモニタ電圧VGを個別に生成するので、比較判定回路24の電圧比較回路48,50における電圧比較の判定ロジックを各々独立に最適化することができる。しかし、図示省略するが、モニタ電流−モニタ電圧変換回路22で単一のモニタ電圧を生成し、比較回路24はそのモニタ電圧を電圧比較回路48,50で下限監視用の基準電圧および上限監視用の基準電圧と比較して判定信号を得るようにしてもよい。
【0082】
また、セル電圧異常検出回路14において、図示省略するが、各PMOSトランジスタ30,36,40,42をNMOSトランジスタに置換し、NMOSトランジスタ38をPMOSトランジスタに置換する変形も可能である。
【0083】
また、上記第2の実施形態において、ミラーモニタ電流生成回路68を省いて、図4に示すようにセル電圧−モニタ電流変換回路20に比較判定回路70を直接接続する構成とすることも可能である。
【0084】
図4の構成例では、セル電圧−モニタ電流変換回路20のトランジスタをNMOSトランジスタ30'で構成し、このNMOSトランジスタ30'と比較判定回路70のNMOSトランジスタ40とで下限監視用の第1の電流比較のための電流ミラー回路を構成し、NMOSトランジスタ30'と比較判定回路70のNMOSトランジスタ42とで上限監視用の第2の電流比較のための電流ミラー回路を構成している。
【0085】
セル電圧−モニタ電流変換回路20にモニタ電流IMが流れると、このモニタ電流IMを一定の比率bでミラーした第1のミラーモニタ電流b*IMがNMOSトランジスタ40のソース電流として流れる。IJ≦b*IMのときは、ノードJの電位が下がり、後段の反転回路78(図3)の出力端子より当該セル電圧Viが正常範囲内にあることを示す論理値Lの判定出力信号が得られる。しかし、IJ>b*IMのときは、ノードJの電位が上がり、反転回路78の出力端子より当該セル電圧Viが下限値を割っている、つまり過放電状態にあることを示す論理値Hの判定出力信号が得られる。
【0086】
また、セル電圧−モニタ電流変換回路20にモニタ電流IMが流れると、このモニタ電流IMを一定の比率cでミラーした第2のミラーモニタ電流c*IMがNMOSトランジスタ42のソース電流として流れる。IK≧c*IMのときは、ノードKの電位が上がり、後段の反転回路80(図3)の出力端子より当該セル電圧Viが正常範囲内にあることを示す論理値Lの判定出力信号が得られる。IK<c*IMのときは、ノードKの電位が下がり、反転回路80の出力端子より当該セル電圧Viが上限値を超えている、つまり過充電状態にあることを示す論理値Hの判定出力信号が得られる。
【0087】
上記実施形態では多セル直列電池10より所望の電池セルBTiを1個ずつ選択する例を説明したが、複数の電池セルBTをブロック単位で選択してそれらの合成セル電圧をモニタ端子A,Bに取り出すことも可能である。たとえば、他のスイッチを全てオフにしてスイッチSH2,SL1のみをオンにすることで、2つの電池セルBT1,BT2のセル電圧(V1+V2)をモニタ端子A,Bに取り出すことができる。
【0088】
本発明によるセル電圧異常検出装置およびセル電圧監視装置は、自動車バッテリ以外にも、様々なアプリケーションで用いられる多セル直列電池のモニタリングに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1の実施形態による多セル直列電池用のセル電圧監視装置の回路構成を示す回路図である。
【図2】第1の実施形態におけるセル電圧監視装置の全体の動作を示すタイミング図である。
【図3】第2の実施形態による多セル直列電池用のセル電圧監視装置の回路構成を示す
【図4】第2の実施形態の一変形例におけるセル電圧異常検出回路の要部の回路構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0090】
10 多セル直列電池
12 セル電圧監視装置
14 セル電圧異常検出回路
16 セル電圧測定回路
18 選択スイッチ
20 セル電圧−モニタ電流変換回路
22 モニタ電流−モニタ電圧変換回路
24 比較判定回路
26 判定信号出力回路
28 異常検出制御回路
30 PMOSトランジスタ
32 抵抗
34 オン/オフ切換スイッチ
36 PMOSトランジスタ
38 NMOSトランジスタ
40,42 NMOSトランジスタ
44,46 抵抗
48,50 電圧比較回路
52,54 基準電圧発生回路
56,58 AND回路
SH1,SL1〜SHn,SLn オン/オフ・スイッチ
60H,60L サンプリング・スイッチ
62 コンデンサ(フライング・キャパシタ)
64H,64L トランスファ・スイッチ
66 A/D変換器
68 ミラーモニタ電流生成回路
70 比較判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、
前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、
前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタを有し、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧をモニタ電流に変換するセル電圧−モニタ電流変換回路と、
前記第1のトランジスタと組み合わさって電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタを有し、前記セル電圧−モニタ電流変換回路で生成されたモニタ電流をモニタ電圧に変換するモニタ電流−モニタ電圧変換回路と、
前記モニタ電流−モニタ電圧変換回路で得られる前記モニタ電圧を所定の基準電圧と比較して、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路と
を有する多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置。
【請求項2】
多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、
前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、
前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタを有し、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧をモニタ電流に変換するセル電圧−モニタ電流変換回路と、
前記第1のトランジスタと組み合わさって電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタを有し、前記モニタ電流に所定の倍率で比例するミラーモニタ電流を生成するミラーモニタ電流生成回路と、
前記ミラーモニタ電流生成回路で生成されたミラーモニタ電流を所定の基準電流と比較して、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路と
を有する多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置。
【請求項3】
多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、
前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、
前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタを有し、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧をモニタ電流に変換するセル電圧−モニタ電流変換回路と、
前記第1のトランジスタと組み合わさって電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタを有し、前記セル電圧−モニタ電流変換回路で生成されたモニタ電流を所定の基準電流と比較して、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路と
を有する多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置。
【請求項4】
前記セル電圧−モニタ電流変換回路が、前記第1および第2のモニタ端子間で前記第1のトランジスタと直列接続される抵抗を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のセル電圧異常検出装置。
【請求項5】
前記セル電圧−モニタ電流変換回路が、前記第1および第2のモニタ端子間で前記第1のトランジスタと直列接続されるオン/オフ切換用のスイッチを有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のセル電圧異常検出装置。
【請求項6】
多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、
前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、
前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタと組み合わさって第1の電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタと、
前記第2のトランジスタを流れる電流をモニタ電圧に変換する電流−電圧変換回路と、
前記電流−電圧変換回路で得られる前記モニタ電圧を所定の基準電圧と比較して、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路と
を有する多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置。
【請求項7】
前記電流−電圧変換回路が、
前記第1のモニタ端子と第1の電源電圧端子との間で前記第2のトランジスタと直列に接続される第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタと組み合わさって第2の電流ミラー回路を構成する第4のトランジスタと、
一定の電圧を与える第2および第3の電源電圧端子の間で前記第4のトランジスタと直列に接続される第1の抵抗と
を有し、前記第4のトランジスタと前記第1の抵抗との間のノードより前記モニタ電圧を取り出し、
前記比較判定回路が、
前記モニタ電圧を下限監視用の第1の比較基準電圧と比較して、両電圧の高低関係を表わす二値の判定信号を出力する第1の電圧比較回路と、
前記モニタ電圧を上限監視用の第2の比較基準電圧と比較して、両電圧の高低関係を表わす二値の判定信号を出力する第2の電圧比較回路と
を有する請求項6に記載のセル電圧異常検出装置。
【請求項8】
多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、
前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、
前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタと組み合わさって第1の電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタと、
前記第2のトランジスタを流れる電流を上限監視用の第1のモニタ電圧および下限監視用の第2のモニタ電圧に変換する電流−電圧変換回路と、
前記電流−電圧変換回路で得られる前記第1および第2のモニタ電圧をそれぞれ第1および第2の基準電圧と比較して、前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路と
を有する多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置。
【請求項9】
前記電流−電圧変換回路が、
前記第1のモニタ端子と第1の電源電圧端子との間で前記第2のトランジスタと直列に接続される第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタと組み合わさって第2の電流ミラー回路を構成する第4のトランジスタと、
一定の電圧を与える第2および第3の電源電圧端子の間で前記第4のトランジスタと直列に接続される第1の抵抗と、
前記第3のトランジスタと組み合わさって第3の電流ミラー回路を構成する第5のトランジスタと、
前記第2および第3の電源電圧端子の間で前記第5のトランジスタと直列に接続される第2の抵抗と
を有し、
前記第4のトランジスタと前記第1の抵抗との間のノードより前記第1のモニタ電圧を取り出し、前記第5のトランジスタと前記第2の抵抗との間のノードより前記第2のモニタ電圧を取り出す請求項8に記載のセル電圧異常検出装置。
【請求項10】
多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、
前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、
前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタと組み合わさって第1の電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタと、
前記第2のトランジスタを流れる電流を所定の基準電流と比較して、前記電池セルにより選択された前記電池セルの出力電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路と
を有する多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置。
【請求項11】
前記比較判定回路が、
前記第1のモニタ端子と第1の電源電圧端子との間で前記第2のトランジスタと直列に接続される第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタと組み合わさって第2の電流ミラー回路を構成する第4のトランジスタと、
一定の電圧を与える第2および第3の電源電圧端子の間で前記第4のトランジスタと直列に接続される下限監視用の第1の定電流源と、
前記第3のトランジスタと組み合わさって第3の電流ミラー回路を構成する第5のトランジスタと、
前記第2および第3の電源電圧端子の間で前記第5のトランジスタと直列に接続される上限監視用の第2の定電流源と
を有し、
前記第4のトランジスタと前記第1の定電流源との間のノードより前記電池セルの電圧が所定の下限値を割っているか否かを示す第1の判定信号を取り出し、前記第4のトランジスタと前記第2の定電流源との間のノードより前記電池セルの出力電圧が所定の上限値を超えているか否かを示す第2の判定信号を取り出す請求項10に記載のセル電圧異常検出装置。
【請求項12】
多数の電池セルを直列接続してなる多セル直列電池においてセル電圧の異常を検出するためのセル電圧異常検出装置であって、
前記多セル直列電池の中から任意の電池セルを選択してその電圧を第1および第2のモニタ端子間に取り出すための選択スイッチと、
前記第1および第2のモニタ端子間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタを流れる電流を所定の基準電流と比較して、前記電池セルにより選択された前記電池セルの出力電圧が所定の正常範囲から外れたか否かを判定する比較判定回路と
を有する多セル直列電池用のセル電圧異常検出装置。
【請求項13】
前記比較判定回路が、
前記第1のトランジスタと組み合わさって第1の電流ミラー回路を構成する第2のトランジスタと、
前記第1のモニタ端子と所定の電源電圧端子との間で前記第2のトランジスタと直列に接続される下限監視用の第1の定電流源と、
前記第1のトランジスタと組み合わさって第2の電流ミラー回路を構成する第3のトランジスタと、
前記第1のモニタ端子と前記電源電圧端子との間で前記第3のトランジスタと直列に接続される上限監視用の第2の定電流源と
を有し、
前記第2のトランジスタと前記第1の定電流源との間のノードより前記電池セルの電圧が所定の下限値を割っているか否かを示す第1の判定信号を取り出し、前記第3のトランジスタと前記第2の定電流源との間のノードより前記電池セルの出力電圧が所定の上限値を超えているか否かを示す第2の判定信号を取り出す請求項12に記載のセル電圧異常検出装置。
【請求項14】
前記第1および第2のモニタ端子間で前記第1のトランジスタと直列接続される第3の抵抗を有する請求項6〜13のいずれか一項に記載のセル電圧異常検出装置。
【請求項15】
前記第1および第2のモニタ端子間で前記第1のトランジスタと直列接続されるオン/オフ切換用のスイッチを有する請求項6〜14のいずれか一項に記載のセル電圧異常検出装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のセル電圧異常検出装置と、
前記多セル直列電池内の各電池セルの電圧を測定するためのセル電圧測定回路と
を有する多セル直列電池用のセル電圧監視装置。
【請求項17】
前記セル電圧測定回路が、
前記選択スイッチにより選択された前記電池セルの出力電圧をサンプリングするためのサンプリング・スイッチと、
前記サンプリング・スイッチによりサンプリングされた電圧によって充電されるコンデンサと、
前記コンデンサに充電された電圧をディジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記コンデンサの充電電圧を前記A/D変換器へ転送するためのトランスファ・スイッチと
を有する請求項16に記載のセル電圧監視装置。
【請求項18】
前記選択スイッチにより所望の前記電池セルの電圧を選択している期間の開始直後または前半部で、前記セル電圧異常検出装置が作動して、当該電池セルの電圧が正常であるか異常であるかを判定する請求項16または請求項17に記載のセル電圧監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−69056(P2009−69056A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239349(P2007−239349)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】