説明

多価不飽和脂肪酸のエステルの製造方法および精製方法

本発明は、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを有する組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程を含む、多価不飽和脂肪酸のエステルの製造および精製のための方法を含む。前記組成物は、通常処理されていない多価不飽和脂肪酸含有組成物であり得る。前記反応させた組成物は、蒸留によってさらに処理され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年6月29日に出願された米国仮出願第60/947,284号の35 U.S.C.§119(e)下での優先権の恩典を主張し、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、トリグリセリド含有組成物から多価不飽和脂肪酸のエステルを製造および精製するための方法に関する。本発明はまた、多価不飽和脂肪酸を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
多くの有益な栄養素の食事摂取を増加させることが望ましい。特に有益な栄養素としては、脂肪酸、例えば、ω-3およびω-6長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)ならびにそれらのエステルが挙げられる。ω-3 PUFAは、動脈硬化症および冠動脈性心疾患の予防、炎症状態の緩和、ならびに腫瘍細胞の増殖の遅延について重要な食事化合物として認識されている。ω-6 PUFAは、人体において構造脂質としてだけでなく、プロスタグランジンおよびロイコトリエンなどの、炎症における多数の因子についての前駆体としても役立つ。長鎖ω-3およびω-6 PUFAは、重要なクラスのPUFAを代表する。
【0004】
脂肪酸のメチル末端に最も近い二重結合の位置に応じて、LC-PUFAの2つの主要なシリーズまたはファミリーがある:ω-3シリーズは、第3炭素に二重結合を含有し、一方、ω-6シリーズは、第6炭素まで二重結合を有さない。従って、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)は、メチル末端から第3番目の炭素から始まる6個の二重結合を有する、22個の炭素の鎖長を有し、「22:6 n-3」と呼ばれる。他の重要なω-3 LC-PUFAとしては、「20:5 n-3」と呼ばれるエイコサペンタエン酸(「EPA」)、および「22:5 n-3」と呼ばれるω-3ドコサペンタエン酸(「DPA n-3」)が挙げられる。重要なω-6 LC-PUFAとしては、「20:4 n-6」と呼ばれるアラキドン酸(「ARA」)、および「22:5 n-6」と呼ばれるω-6ドコサペンタエン酸(「DPA n-6」が挙げられる。
【0005】
ヒトおよび多くの他の動物はω-3およびω-6必須脂肪酸を直接合成することができないので、それらは食事で得られなければならない。PUFAの従来の食事供給源としては、植物油、海生動物油、魚油および油料種子が挙げられる。さらに、特定の微生物によって産生された油は、LC-PUFAに富んでいることがわかった。しかし、これらの供給源の各々由来の油は、実質的な濃度の飽和脂肪酸および他の望ましくない不純物も含有する。
【0006】
粗製油からPUFAおよびその誘導体を単離または精製するために、多数の方法が使用されてきた。これらのプロセスには、低温での分別結晶、尿素付加結晶化、金属塩溶液での抽出、向流カラムにおける超臨界流体分別、および高速液体クロマトグラフィーがある。
【0007】
医学および栄養学の分野におけるPUFAおよびそれらのエステルの使用が増加したため、高濃度でありかつ不純物を含有しないPUFAについての比例した必要性が生じた。しかし、PUFAを精製することに向けられた以前の努力は、刺激の強い試薬の使用に一部起因する低収率および高コストなどの問題に苦しんだ。従って、ヒトおよび他の動物によって消費および利用され得る形態でPUFAを単離および精製する改善された方法についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物を精製するための方法であって、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程、ならびに、組成物を蒸留し、多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程を含む方法を提供する。
【0009】
ある態様において、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程は、約60℃〜約120℃の温度で行われる。
【0010】
ある態様において、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程は、約2時間〜約12時間行われる。
【0011】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物は、リファイニング、脱溶媒化(desolventization)、脱臭、脱ろう、冷却濾過、および漂白からなる群より選択される1つまたは複数の処理へ供されていない。
【0012】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物は、リファイニング、脱溶媒化、脱臭、脱ろう、冷却濾過、および漂白へ供されていない。
【0013】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物は、植物、微生物、動物、および前述のものの混合物からなる群より選択される供給源由来である。
【0014】
ある態様において、供給源は、藻類、細菌類、真菌類および原生生物からなる群より選択される微生物である。
【0015】
ある態様において、供給源は、ダイズ、トウモロコシ、イネ、ベニバナ、ヒマワリ、キャノーラ、亜麻、落花生、カラシ、菜種、ヒヨコマメ、綿、レンズマメ、シロツメクサ、オリーブ、ヤシ、ルリジサ、マツヨイグサ、亜麻仁およびタバコならびにそれらの混合物からなる群より選択される植物からなる群より選択される。
【0016】
ある態様において、供給源は、遺伝子組み換え植物および遺伝子組み換え微生物からなる群より選択され、ここで、遺伝子組み換えは、ポリケチドシンターゼ遺伝子の導入を含む。
【0017】
ある態様において、供給源は、ヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)、渦鞭毛藻類、およびモルティエレラ(Mortierella)からなる群より選択される微生物である。
【0018】
ある態様において、微生物は、ヤブレツボカビ目である、シゾキトリウム(Schizochytrium)またはヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)である。
【0019】
ある態様において、微生物は、クリプテコディニウム属の渦鞭毛藻類である。
【0020】
ある態様において、供給源は、水生動物より選択される動物である。
【0021】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸は、少なくとも18個の炭素の鎖長を有する多価不飽和脂肪酸である。
【0022】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ステアリドン酸、リノレン酸、αリノレン酸、γリノレン酸、共役リノレン酸およびそれらの混合物からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸である。
【0023】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸はドコサヘキサエン酸である。
【0024】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸はアラキドン酸(arachadonic acid)である。
【0025】
ある態様において、塩基は式RO-Mの塩基であり、ここで、Mは一価のカチオンであり、ROはC1-6アルキルアルコールのアルコキシドである。
【0026】
ある態様において、塩基はナトリウムエトキシドである。
【0027】
ある態様において、アルコールはC1-6アルキルアルコールである。
【0028】
ある態様において、アルコールはエタノールであり、エステルは多価不飽和脂肪酸のエチルエステルである。
【0029】
ある態様において、組成物を蒸留し多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程は、真空下で行われる。
【0030】
ある態様において、組成物を蒸留し多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程は、約170℃未満の温度で行われる。
【0031】
ある態様において、回収されたフラクションは、多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約50重量%、75重量%、90重量%または95重量%含む。
【0032】
ある態様において、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程は、直接エステル交換によってトリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する。
【0033】
ある態様において、方法は、さらに以下の工程を含む:a)多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションと媒体中の尿素とを合わせる工程;b)該媒体を冷却または濃縮し、尿素含有沈殿物および液体フラクションを形成させる工程;ならびにc)該液体フラクションから該沈殿物を分離する工程。
【0034】
ある態様において、媒体は、多価不飽和脂肪酸のエステルを可溶化し得る有機溶媒をさらに含む。
【0035】
ある態様において、有機溶媒は、1〜4個の炭素原子を含むアルキルアルコールを含む。
【0036】
ある態様において、有機溶媒はエタノールを含む。
【0037】
ある態様において、媒体は約0℃〜約25℃の温度へ冷却され、尿素含有沈殿物が形成される。
【0038】
ある態様において、尿素含有沈殿物の少なくとも一部は、非酸化性雰囲気下で形成される。
【0039】
本発明はまた、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物から多価不飽和脂肪酸のエステルを製造するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:組成物をアルコールおよび塩基の存在下でエステル交換し、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程、ならびに、組成物を蒸留し、多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程。
【0040】
本発明はさらに、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物を精製するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程、ならびに、多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約75%含むフラクションを分離する工程。
【0041】
ある態様において、分離工程は蒸留を含む。
【0042】
本発明はまた、多価不飽和脂肪酸のエステルを含む組成物を製造するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程;ここで、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物は、リファイニング、脱溶媒化、脱臭、脱ろう、冷却濾過、および漂白からなる群より選択される1つまたは複数の処理へ供されていない。
【0043】
ある態様において、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程は、約60℃〜約120℃の温度で行われる。
【0044】
ある態様において、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程は、約2時間〜約12時間行われる。
【0045】
ある態様において、方法は、組成物を蒸留し多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程をさらに含む。
【0046】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物は、植物、微生物、動物、および前述のものの混合物からなる群より選択される供給源由来である。
【0047】
ある態様において、供給源は、藻類、細菌類、真菌類および原生生物からなる群より選択される微生物である。
【0048】
ある態様において、供給源は、ダイズ、トウモロコシ、イネ、ベニバナ、ヒマワリ、キャノーラ、亜麻、落花生、カラシ、菜種、ヒヨコマメ、綿、レンズマメ、シロツメクサ、オリーブ、ヤシ、ルリジサ、マツヨイグサ、亜麻仁およびタバコならびにそれらの混合物からなる群より選択される植物からなる群より選択される。
【0049】
ある態様において、供給源は、遺伝子組み換え植物および遺伝子組み換え微生物からなる群より選択され、ここで、遺伝子組み換えは、ポリケチドシンターゼ遺伝子の導入を含む。
【0050】
ある態様において、供給源は、ヤブレツボカビ目、渦鞭毛藻類、およびモルティエレラからなる群より選択される微生物である。
【0051】
ある態様において、供給源は、ヤブレツボカビ目、渦鞭毛藻類、およびモルティエレラからなる群より選択される微生物である。
【0052】
ある態様において、微生物は、クリプテコディニウム属の渦鞭毛藻類である。
【0053】
ある態様において、供給源は、水生動物より選択される動物である。
【0054】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸は、少なくとも18個の炭素の鎖長を有する多価不飽和脂肪酸である。
【0055】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ステアリドン酸、リノレン酸、αリノレン酸、γリノレン酸、共役リノレン酸およびそれらの混合物からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸である。
【0056】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸はドコサヘキサエン酸である。
【0057】
ある態様において、多価不飽和脂肪酸はアラキドン酸(arachadonic acid)である。
【0058】
ある態様において、塩基は式RO-Mの塩基であり、ここで、Mは一価のカチオンであり、ROはC1-6アルキルアルコールのアルコキシドである。
【0059】
ある態様において、塩基はナトリウムエトキシドである。
【0060】
ある態様において、アルコールはC1-6アルキルアルコールである、
【0061】
ある態様において、アルコールはエタノールであり、エステルは多価不飽和脂肪酸のエチルエステルである。
【0062】
ある態様において、組成物を蒸留し多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程は、真空下で行われる。
【0063】
ある態様において、組成物を蒸留し多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程は、約170℃未満の温度で行われる。
【0064】
ある態様において、回収されたフラクションは、多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約50重量%、75重量%、90重量%、または95重量%含む。
【0065】
ある態様において、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程は、直接エステル交換によってトリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する。
【0066】
本発明はまた、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約90重量%含む組成物であって、ここで、該組成物が、さらに4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)またはそのエステルを少なくとも約0.1重量%含む組成物を提供する。
【0067】
ある態様において、組成物は、4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)またはそのエステルを少なくとも約0.5重量%、1.0重量%、または1.2重量%含む。
【0068】
ある態様において、組成物は、さらにドコサペンタエン酸(n-3)またはそのエステルを少なくとも約0.1重量%、0.3重量%、0.4重量%、または0.5重量%含む。
【0069】
ある態様において、組成物は、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約92重量%または95重量%含む。
【0070】
ある態様において、組成物は、さらにエイコサペンタエン酸またはそのエステルを約1重量%、0.5重量%または0.25重量%未満含む。
【0071】
本発明はさらに、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約90重量%含む組成物であって、ここで、該組成物が、さらにドコサペンタエン酸(n-3)またはそのエステルを少なくとも約0.1重量%含む組成物を提供する。
【0072】
ある態様において、組成物は、ドコサペンタエン酸(n-3)またはそのエステルを少なくとも約0.3重量%、0.4重量%、または0.5重量%含む。
【0073】
ある態様において、組成物は、さらに4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)またはそのエステルを少なくとも約0.5重量%、0.75重量%、1.0重量%、または1.2重量%含む。
【0074】
ある態様において、組成物は、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約92重量%または95重量%含む。
【0075】
ある態様において、組成物は、さらにエイコサペンタエン酸またはそのエステルを約1重量%、0.5重量%、または0.25重量%未満含む。
【0076】
本発明はまた、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約90重量%含む組成物であって、ここで、該組成物が、0.8 mm Hgの圧力で約150〜170℃の沸点を有する少なくとも1つの追加の脂肪酸またはそのエステルをさらに含む組成物を提供する。
【0077】
本発明はさらに、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約70重量%およびドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルを少なくとも約25重量%含む組成物を提供する。
【0078】
ある態様において、組成物は、さらに飽和脂肪酸またはそのエステルを約4%未満含む。
【0079】
ある態様において、飽和脂肪酸またはそのエステルは、20個未満の炭素を含有する。
【0080】
ある態様において、飽和脂肪酸またはそのエステルは、14または16個の炭素を含有する。
【0081】
本発明はまた、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルとドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルとの組み合わせを少なくとも約90重量%含む組成物を提供する。
【0082】
ある態様において、組成物は、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約10重量%およびドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルを少なくとも約10重量%含む。
【0083】
ある態様において、組成物は、さらに飽和脂肪酸またはそのエステルを約4%未満含む。
【0084】
ある態様において、飽和脂肪酸またはそのエステルは、20個未満の炭素を含有する。
【0085】
ある態様において、飽和脂肪酸またはそのエステルは、14または16個の炭素を含有する。
【0086】
本発明はさらに、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルとドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルとの組み合わせを少なくとも約90重量%含む組成物(a comprising)であって、ここで、該組成物が、0.5 mm Hgの圧力で約150〜175℃の沸点を有する少なくとも1つの追加の脂肪酸またはそのエステルをさらに含む物を提供する。
【0087】
本発明はまた、多価不飽和脂肪酸のエステルを含む組成物を製造するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程;ここで、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物は、少なくとも約300 ppmリン、少なくとも約0.4%遊離脂肪酸、および少なくとも約0.2 meq/kgの過酸化物価からなる群より選択される少なくとも1つの特徴を含む。
【0088】
本発明はまた、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物を精製するための方法であって、ここで、該組成物は、少なくとも約300 ppmリン、少なくとも約0.4%遊離脂肪酸、および少なくとも約0.2 meq/kgの過酸化物価からなる群より選択される少なくとも1つの特徴を含み、以下の工程を含む方法を提供する:a)組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程;ならびにb)組成物を蒸留し、多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程。
【0089】
本発明はさらに、アラキドン酸のエステルを少なくとも約60重量%含む組成物を提供する。
【0090】
ある態様において、組成物は、さらにエイコサペンタエン酸を約10重量%未満含む。
【0091】
ある態様において、アラキドン酸のエステルはアラキドン酸のエチルエステルである。
【0092】
本発明はまた、請求項68、81、94、95、99または104に従う組成物を被験体へ投与する工程を含む、高濃度のトリグリセリドを有する被験体を治療する方法を提供する。
【0093】
本発明はさらに、請求項68、81、94、95、99または104に従う組成物を被験体へ投与する工程を含む、神経障害、認知症または前認知症関連状態を有する被験体を治療する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0094】
発明の説明
本発明は、PUFA残基を有するトリグリセリドを含有する組成物の精製のための新規の方法を提供する。種々の局面において、本発明は、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造することを含む。一態様において、本発明は、有利かつ効率的には、リファイニング、漂白、脱臭および脱ろうを含み得る通常の処理方法へ供されていない比較的粗製の油に対して行われる。別の態様において、本発明は、トリグリセリドからエステルを製造すること、および次いで、得られた組成物を蒸留し、多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収することを含む。さらなる態様において、多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションは、尿素結晶化によってさらに精製される。本発明は、粗製油または処理油から直接のPUFAのエステルの効率的でありかつ費用効果が高い製造を可能にする。
【0095】
本発明の方法についての出発材料は、PUFA残基を有するトリグリセリドを含む組成物である。用語「油」および「PUFA残基を有するトリグリセリドを含む組成物」は、本願にわたって交換可能に使用される。本明細書において使用される場合、「トリグリセリド」は、一般化学式CH2(OOCR1)CH(OOCR2)CH2(OOCR3)を有する、3つの脂肪酸残基とグリセロールとのエステルであり、式中、OOCR1、OOCR2、およびOOCR3の各々は、脂肪酸残基を示す。好適なトリグリセリドは、少なくとも1つのPUFAを含有する。ある態様において、PUFAは、少なくとも18個の炭素の鎖長を有する。このようなPUFAは、本明細書において、長鎖PUFAまたはLC PUFAと呼ばれる。ある態様において、PUFAは、ドコサヘキサエン酸 C22:6 n-3(DHA)、ω-3ドコサペンタエン酸 C22:5 n-3(DPA)、ω-6ドコサペンタエン酸 C22:5 n-6(DPA)、アラキドン酸 C20:4 n-6(ARA)、エイコサペンタエン酸 C20:5 n-3(EPA)、ステアリドン酸(SDA)、リノレン酸(LLA)、αリノレン酸(ALA)、γリノレン酸(GLA)、共役リノレン酸(CLA)またはそれらの混合物であり得る。PUFAはまた、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、リン脂質、遊離脂肪酸を含むがこれらに限定されない、天然脂質中において見られる任意の通常の形態で、またはこれらの脂肪酸の天然若しくは合成誘導体形態(例えば、脂肪酸のカルシウム塩など)で、存在し得る。油またはPUFA残基を有するトリグリセリドを含む他の組成物への参照は、本発明において使用される場合、DHAなどの単一タイプのLC PUFA残基のみを有するトリグリセリドを含む組成物、または、DHA、EPAおよびARAの2つ以上などの、2つ以上のタイプのLC PUFA残基の混合物を有するトリグリセリドを含む組成物のいずれかを参照し得る。
【0096】
PUFA残基を有するトリグリセリドを含む組成物は、任意の好適な供給源、例えば、植物(油料種子を含む)、微生物、動物、または前述のものの混合物から得ることができるかまたは誘導することができる。微生物は、藻類、細菌類、真菌類または原生生物であり得る。微生物供給源ならびに栄養素および/またはPUFAを含む微生物を増殖させるための方法は、当技術分野において公知である(Industrial Microbiology and Biotechnology, 2nd edition, 1999, American Society for Microbiology)。例えば、微生物は、発酵槽中の発酵培地中において培養され得る。微生物によって産生された油は、本発明の方法および組成物において使用され得る。ある態様において、生物としては、以下からなる群より選択されるものが挙げられる:黄金色藻類(ストラメノパイル(Stramenopiles)界の微生物など)、緑藻類、珪藻類、渦鞭毛藻類(例えばクリプテコディニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)などのクリプテコディニウム属のメンバーを含む渦鞭毛藻(Dinophyceae)目の微生物など)、酵母、ならびにこれらに限定されないがモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)およびモルティエレラ・シュムッケリ節(Mortierella sect. schmuckeri)を含むムコール(Mucor)属およびモルティエレラ属の菌類からなる群より選択されるものが含まれる。微生物群ストラメノパイルのメンバーには、以下の微生物群を含む微細藻類および藻類様微生物が含まれる:ハマトレス(Hamatores)、プロテロモナス(Proteromonads)、オパリナ(Opalines)、デヴェルパエラ(Develpayella)、ディプロフリス(Diplophrys)、ラブリンチュリド(Labrinthulids)、ヤブレツボカビ(Thraustochytrids)、ビオセシド(Biosecids)、卵菌綱(Oomycetes)、サカゲツボカビ綱(Hypochytridiomycetes)、コマチオン(Commation)、レチキュロスファエラ(Reticulosphaera)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、ペラゴコッカス(Pelagococcus)、オリコラ(Ollicola)、オーレオコッカス(Aureococcus)、パルマ目(Parmales)、珪藻類(Diatoms)、黄緑色藻類(Xanthophytes)、褐藻類(Phaeophytes)(褐藻類(brown algae))、真正眼点藻類(Eustigmatophytes)、ラフィド藻類(Raphidophytes)、シヌリド(Synurids)、アキソジン(Axodines)(リゾクロムリナ目(Rhizochromulinaales)、ペディネラ目(Pedinellales)、ディクチオカ目(Dictyochales)を含む)、クリソメリス目(Chrysomeridales)、サルキノクリシス目(Sarcinochrysidales)、ミズオ目(Hydrurales)、ヒッバーディア目(Hibberdiales)、およびクロムリナ目(Chromulinales)。ヤブレツボカビには、シゾキトリウム属(種には、アグレガツム(aggregatum)、リムナセウム(limnaceum)、マングロベイ(mangrovei)、ミヌツム(minutum)、オクトスポルム(octosporum)が含まれる)、ヤブレツボカビ属(種には、アルジメンタレ(arudimentale)、アウレウム(aureum)、ベンチコラ(benthicola)、グロボスム(globosum)、キンネイ(kinnei)、モチブム(motivum)、ムルチルジメンタレ(multirudimentale)、パキデルマム(pachydermum)、プロリフェルム(proliferum)、ロゼウム(roseum)、ストリアツム(striatum)が含まれる)、ウルケニア(Ulkenia)属(種には、アモエボイデア(amoeboidea)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、ミヌタ(minuta)、プロフンダ(profunda)、ラジアテ(radiate)、サイレンズ(sailens)、サルカリアナ(sarkariana)、シゾキトロプス(schizochytrops)、ビスルゲンシス(visurgensis)、ヨーケンシス(yorkensis)が含まれる)、アプラノキトリウム(Aplanochytrium)属(種には、ハリオチジス(haliotidis)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、プロフンダ(profunda)、ストッキノイ(stocchinoi)が含まれる)、ジャポノキトリウム(Japonochytrium)属(種にはマリヌム(marinum)が含まれる)、アルソルニア(Althornia)属(種にはクロウチイ(crouchii)が含まれる)、およびエリナ(Elina)属(種には、マリサルバ(marisalba)、シノリフィカ(sinorifica)が含まれる)が含まれる。ラブリンチュリドには、ラビリンチュラ属(種には、アルゲリエンシス(algeriensis)、コエノシスティス(coenocystis)、チャットニイ(chattonii)、マクロシスティス(macrocystis)、マクロシスティス・アトランティカ(macrocystis atlantica)、マクロシスティス・マクロシスティス(macrocystis macrocystis)、マリナ(marina)、ミヌタ(minuta)、ロスコフェンシス(roscoffensis)、バルカノビイ(valkanovii)、ビテリナ(vitellina)、ビテリナ・パシフィカ(vitellina pacifica)、ビテリナ・ビテリナ(vitellina vitellina)、ゾプフィ(zopfi)が含まれる)、ラビリントミキサ(Labyrinthomyxa)属(種にはマリナ(marina)が含まれる)、ラビリンチュロイデス(Labyrinthuloides)属(種には、ハリオチジス(haliotidis)、ヨーケンシス(yorkensis)が含まれる)、ディプロフリス(Diplophrys)属(種にはアルケリ(archeri)が含まれる)、ピュロソルス(Pyrrhosorus)属(種にはマリヌス(marinus)が含まれる)、ソロディプロフリス(Sorodiplophrys)属(種にはステルコレア(stercorea)が含まれる)、クラミドミクサ(Chlamydomyxa)属(種には、ラビリンチュロイデス(labyrinthuloides)、モンタナ(montana)が含まれる)が含まれる(=現在、これらの属の正確な分類学的配置には全体的な合意がない)。
【0097】
好適な微生物としては、ω-3および/またはω-6多価不飽和脂肪酸を含む脂質を産生することができるものが挙げられ、特に、DHA、DPA、EPAまたはARAを含有する油を産生することができる微生物が挙げられる。より特には、好ましい微生物は、ヤブレツボカビ属(ウルケニアを含む)およびシゾキトリウムを含み、かつ、いずれもBarclayに付与され、いずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による米国特許第5,340,594号および第5,340,742号に開示されているヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)を含む、ヤブレツボカビ目のヤブレツボカビなどの藻類である。より好ましくは、微生物は、ATCCナンバー20888、ATCCナンバー20889、ATCCナンバー20890、ATCCナンバー20891およびATCCナンバー20892の識別特徴を有する微生物からなる群より選択される。専門家達の間では、ウルケニアがヤブレツボカビ属とは別の属であるかどうかについて意見の相違がいくらかあるため、本願の目的については、ヤブレツボカビ属はウルケニアを含む。モルティエレラ・シュマッカリ(Mortierella schmuckeri)(例えば、ATCC 74371を含む)およびモルティエレラ・アルピナの株もまた好ましい。ATCCナンバー30021、30334-30348、30541-30543、30555-30557、30571、30572、30772-30775、30812、40750、50050-50060、および50297-50300の識別特徴を有する微生物を含む、クリプテコディニウム・コーニーの株も好ましい。油性微生物もまた好ましい。本明細書において使用される場合、「油性微生物」は、それらの細胞の乾燥重量の20%超を脂質の形態で蓄積することができる微生物と定義される。PUFA含有油を産生する遺伝子組み換え微生物もまた、本発明に好適である。これらとしては、遺伝子組み換えされた天然にPUFAを産生する微生物、ならびに、天然にはPUFAを産生しないがそうするように遺伝子組み換えされた微生物が挙げられ得る。
【0098】
適切な生物は、自然環境からの収集を含んで、多数の利用可能な供給源から得ることができる。例えば、American Type Culture Collectionは、現在、上記微生物の公的に入手可能な多くの株を収載している。本明細書において使用される場合、任意の生物、または任意の特定型の生物には、野生株、変異体、または組換え型が含まれる。これらの生物を培養するかまたは増殖させるための増殖条件は、当技術分野において公知であり、これらの生物の少なくともいくつかについて好適な増殖条件は、例えば、米国特許第5,130,242号、米国特許第5,407,957号、米国特許第5,397,591号、米国特許第5,492,938号、米国特許第5,711,983号および米国特許第6,607,900号に開示されており、これらの全ては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。微生物油が使用される場合、微生物は、油産生を促進させることができる任意の培地として本明細書において定義される、有効な培地中において培養される。好ましくは、有効な培地はまた、迅速な微生物増殖を促進する。微生物は、通常の発酵様式で培養され得、これらとしては、バッチ、フェッドバッチおよび連続が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本発明の組成物および方法に好適な油の別の供給源としては、植物供給源、例えば、油料種子植物が挙げられる。代替の態様において、PUFA産生植物は、PUFAを産生する遺伝子を発現するように遺伝子操作されたものおよびPUFAを天然に産生するものを含み得る。このような遺伝子は、古典的脂肪酸シンターゼ経路に関与するタンパク質をコードする遺伝子、またはPUFAポリケチドシンターゼ(PKS)経路に関与するタンパク質をコードする遺伝子を含み得る。古典的脂肪酸シンターゼ経路に関与する遺伝子およびタンパク質、ならびに、このような遺伝子で形質転換された、植物などの、遺伝子組み換え生物は、例えば、Napier and Sayanova, Proceedings of the Nutrition Society (2005), 64:387-393;Robert et al., Functional Plant Biology (2005) 32:473-479;または米国特許出願公開2004/0172682に記載されている。PUFA PKS経路、この経路に関与する遺伝子およびタンパク質、ならびに、PUFAの発現および産生のためにこのような遺伝子で形質転換された遺伝子組み換え微生物および植物は、以下において詳細に記載されている:米国特許第6,140,486号、米国特許第6,566,583号;米国特許出願公開第20020194641号、米国特許第7,211,418号、米国特許出願公開第20050100995A1号、米国特許出願公開第20070089199号、PCT公開第WO 05/097982号、および米国特許出願公開第20050014231号;これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0100】
本発明における使用に好適な油料種子作物としては、上述のようにPUFAを産生するように遺伝子組み換えされた、ダイズ、トウモロコシ、イネ、ベニバナ、ヒマワリ、キャノーラ、亜麻、落花生、カラシ、菜種、ヒヨコマメ、綿、レンズマメ、シロツメクサ、オリーブ、ヤシ油、ルリジサ、マツヨイグサ、亜麻仁およびタバコが挙げられる。
【0101】
微生物および植物についての遺伝子形質転換技術は、当技術分野において周知である。微生物についての形質転換技術は、当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Labs Pressにおいて議論されている。クリプテコディニウム・コーニーでの使用に適合され得る、渦鞭毛藻類の形質転換についての一般的な技術は、Lohuis and Miller, The Plant Journal (1998) 13(3): 427-435に詳細に記載されている。ヤブレツボカビの遺伝子形質転換についての一般的な技術は、2003年9月4日に公開された米国特許出願公開第20030166207号に詳細に記載されている。植物の遺伝子操作のための方法もまた、当技術分野において周知である。例えば、生物学的および物理的形質転換プロトコルを含む、植物形質転換についての多数の方法が開発された。例えば、Miki et al., "Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants" in Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick, B.R. and Thompson, J.E. Eds. (CRC Press, Inc., Boca Raton, 1993) pp. 67-88を参照のこと。さらに、植物細胞または組織形質転換および植物の再生についてのベクターおよびインビトロ培養方法が利用可能である。例えば、Gruber et al., "Vectors for Plant Transformation" in Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick, B.R. and Thompson, J.E. Eds. (CRC Press, Inc., Boca Raton, 1993) pp. 89-119を参照のこと。さらに、Horsch et al., Science 227:1229 (1985);Kado, C.I., Crit. Rev. Plant. Sci. 10:1 (1991);Moloney et al., Plant Cell Reports 8:238 (1989);米国特許第4,940,838号;米国特許第5,464,763号;Sanford et al., Part. Sci. Technol. 5:27 (1987);Sanford, J.C., Trends Biotech. 6:299 (1988);Sanford, J.C., Physiol. Plant 79:206 (1990);Klein et al., Biotechnology 10:268 (1992);Zhang et al., Bio/Technology 9:996 (1991);Deshayes et al., EMBO J., 4:2731 (1985);Christou et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA 84:3962 (1987);Hain et al., Mol. Gen. Genet. 199:161 (1985);Draper et al., Plant Cell Physiol. 23:451 (1982);Donn et al., In Abstracts of VIIth International Congress on Plant Cell and Tissue Culture IAPTC, A2-38, p.53 (1990);D'Halluin et al., Plant Cell 4:1495-1505 (1992)およびSpencer et al., Plant Mol. Biol. 24:51-61 (1994)を参照のこと。
【0102】
油料種子植物がPUFA含有油の供給源である場合、種子が、収穫され、収穫された種子から不純物、破片または消化できない部分を除去するために処理され得る。処理工程は、油料種子のタイプに応じて変化し、当技術分野において公知である。処理工程は、脱穀(例えば、ダイズ種子が鞘から分離される場合)、皮むき(果実、種子、または木の実の、乾燥外皮、または殻の除去)、乾燥、洗浄、粉砕、製粉およびフレーキングを含み得る。種子が不純物、破片または消化できない材料を除去するために処理された後、それらは、水溶液へ添加され、次いで混合されスラリーが作製され得る。ある態様において、製粉、破砕またはフレーキングは、水と混合する前に行われる。この様式で作製されたスラリーは、微生物発酵ブロスについて説明したのと同一の様式で処理およびプロセッシングされ得る。
【0103】
本発明の組成物および方法に好適なPUFA含有油の別のバイオマス供給源としては、動物供給源が挙げられる。動物供給源の例としては、水生動物(例えば、魚類、海生哺乳動物、ならびに、甲殻類の動物、例えば、クリルおよび他のオキアミ(euphausid))、ならびに動物組織(例えば、脳、肝臓、眼など)、ならびに動物性食品、例えば、卵またはミルクが挙げられる。このような供給源からのPUFA含有油の回収のための技術は、当技術分野において公知である。
【0104】
本発明の一態様において、PUFA残基を有するトリグリセリドを含む組成物は、粗製油(下記においてより詳細に議論する)であり得る一方、本発明において有用な他のこのような組成物は、当業者に公知の任意の好適な手段によってそれらの供給源から回収され得る。例えば、油は、クロロホルム、ヘキサン、塩化メチレン、メタノールなどの溶媒での抽出によって、または超臨界流体抽出によって、回収され得る。または、油は、米国特許第6,750,048号およびPCT特許出願番号US01/01806(両方とも、出願日2001年1月19日、表題“Solventless Extraction Process”;これらは両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)に記載されるような、抽出技術を使用して抽出され得る。さらなる抽出および/または精製技術は、以下において教示されている:PCT特許出願第PCT/IB01/00841号、表題“Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials”、出願日2001年4月12日;PCT特許出願第PCT/IB01/00963号、表題“Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials Using Water-Soluble Organic Solvent and Centrifugation”、出願日2001年4月12日;米国仮特許出願第60/291,484号、表題“Production and Use of a Polar Lipid-Rich Fraction Containing Stearidonic Acid and Gamma Linolenic Acid from Plant Seeds and Microbes”、出願日2001年5月14日;米国仮特許出願第60/290,899号、表題“Production and Use of a Polar-Lipid Fraction Containing Omega-3 and/or Omega-6 Highly Unsaturated Fatty Acids from Microbes, Genetically Modified Plant Seeds and Marine Organisms”、出願日2001年5月14日;米国特許第6,399,803号、表題“Process for Separating a Triglyceride Comprising a Docosahexaenoic Acid Residue from a Mixture of Triglycerides”、発行日2002年6月4日、出願日2000年2月17日;ならびにPCT特許出願第US01/01010号、表題“Process for Making an Enriched Mixture of Polyunsaturated Fatty Acid Esters”、出願日2001年1月11日;これらは全て、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。抽出された油は、高濃度の油材料のサンプルを製造するために、減圧下で蒸発させられ得る。脂質の回収のためのバイオマスの酵素処理のためのプロセスが、以下に開示されている:米国仮特許出願第60/377,550号、表題“HIGH-QUALITY LIPIDS AND METHODS FOR PRODUCING BY ENZYMATIC LIBERATION FROM BIOMASS”、出願日2002年5月3日;PCT特許出願第PCT/US03/14177号、表題“HIGH-QUALITY LIPIDS AND METHODS FOR PRODUCING BY ENZYMATIC LIBERATION FROM BIOMASS”、出願日2003年5月5日;対応の米国特許出願第10/971,723号、表題“HIGH-QUALITY LIPIDS AND METHODS FOR PRODUCING BY LIBERATION FROM BIOMASS”、出願日2004年10月22日;EP特許出願公開第0 776 356号および米国特許第5,928,696号、両方とも表題“Process for extracting native products which are not water-soluble from native substance mixtures by centrifugal force”;これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0105】
ある態様において、上述の供給源から得られた油は、それが通常の処理へ供されていない場合でさえ、本発明の方法についての出発材料として役立ち得る。避けられ得るこのような通常の処理の例としては、リファイニング(例えば、物理的リファイニング、シリカリファイニングまたは苛性リファイニング)、脱溶媒化、脱臭、脱ろう、冷却濾過、および/または漂白が挙げられる。従って、ある態様において、PUFA残基を有するトリグリセリドを含有する組成物は、リファイニング、脱溶媒化、脱臭、脱ろう、冷却濾過、および漂白より選択される1つまたは複数の処理へ供されておらず、さらなる態様において、組成物は、リファイニング、脱溶媒化、脱臭、脱ろう、冷却濾過、および漂白のいずれにも供されていない。
【0106】
本発明のさらなる局面において、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物は、通常の処理、例えば、リファイニング、脱溶媒化、脱臭、脱ろう、冷却濾過、および漂白へ供されていない油の特徴を有する油であり得る。従って、好適な油は、未処理油の化学的または物理的特徴を有し得る。例えば、油は、通常処理された油中には典型的に存在しないレベルで、望ましくない成分(例えば、不純物)を含有し得る。例えば、油は、約300 ppmリン(phosphorous)〜約1000 ppmリンを含有し得る。ある態様において、油は、リンを少なくとも約300 ppm;リンを少なくとも約400 ppm;リンを少なくとも約500 ppm;リンを少なくとも約600 ppm;リンを少なくとも約650 ppm;リンを少なくとも約700 ppm;リンを少なくとも約750 ppm;リンを少なくとも約800 ppm;リンを少なくとも約850 ppm;リンを少なくとも約900 ppm;リンを少なくとも約950 ppm;またはリンを少なくとも約1000 ppm含む。別の局面において、油は、約0.4重量%〜約1.4重量%の範囲内で遊離脂肪酸を含有し得る。ある態様において、油は、遊離脂肪酸を少なくとも約0.4重量%;遊離脂肪酸を少なくとも約0.6重量%;遊離脂肪酸を少なくとも約0.8重量%;遊離脂肪酸を少なくとも約0.9重量%;遊離脂肪酸を少なくとも約1.0重量%;遊離脂肪酸を少なくとも約1.1重量%;遊離脂肪酸を少なくとも約1.2重量%;遊離脂肪酸を少なくとも約1.3重量%;または遊離脂肪酸を少なくとも約1.4重量%含む。別の局面において、油は、約0.2 meq/kg〜約2.5 meq/kgの範囲内の過酸化物価を含有し得る。ある態様において、油は、少なくとも約0.2 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約0.4 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約0.6 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約0.8 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約1.0 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約1.2 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約1.4 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約1.5 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約1.6 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約1.7 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約1.8 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約1.9 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約2.0 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約2.1 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約2.2 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約2.3 meq/kgの過酸化物価;少なくとも約2.4 meq/kgの過酸化物価;または少なくとも約2.5 meq/kgの過酸化物価を含む。
【0107】
ある態様において、粗製油は、標準技術を使用して微生物から単離され得、さらなるリファインメントまたは精製へ供されない。このような形態において、油は、溶媒抽出、例えば、ヘキサン抽出、イソプロパノール抽出などへのみ供された微生物油である。
【0108】
他の態様において、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物、例えば、上述の油は、リファイニング、脱溶媒化、脱臭、脱ろう、冷却濾過、および/または漂白などのさらなる処理工程へ供され得る。このような「処理された」油としては、溶媒抽出と、これらの追加の処理工程の1つまたは複数とへ供された微生物油が挙げられる。ある態様において、油は、最小限に処理される。「最小限に処理された」油としては、溶媒抽出および濾過へ供された微生物油が挙げられる。ある態様において、最小限に処理された油は、脱ろうへさらに供される。
【0109】
本発明の方法は、PUFA残基を有するトリグリセリドを含有する組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドからPUFAのエステルを製造する工程を含む。
【0110】
本発明における使用に好適なアルコールとしては、1〜6個の炭素原子を含有する任意の低級アルキルアルコール(即ち、C1-6アルキルアルコール)が挙げられる。理論によって拘束されないが、本発明の方法における低級アルキルアルコールの使用によって、PUFAの低級アルキルエステルが製造されると考えられる。例えば、エタノールの使用によってエチルエステルが製造される。ある態様において、アルコールはメタノールまたはエタノールである。これらの態様において、製造されるPUFAエステルは、それぞれ、PUFAのメエチルエステルおよびエチルエステルである。本発明の方法において、アルコールは、典型的に、組成物、アルコールおよび塩基の混合物の約25重量%〜約50重量%、約30重量%〜約45重量%、または約35重量%〜約40重量%を構成する。ある態様において、アルコールは、組成物、アルコールおよび塩基の混合物の約38重量%を構成する。ある態様において、組成物および塩基は、純粋なエタノールまたは純粋なメタノールのいずれかへ添加され得る。一般的に、使用されるアルコールの量は、アルコール中におけるPUFA残基を有するトリグリセリドを含有する組成物または油の溶解性で変化し得る。
【0111】
反応物としての使用に好適であると当技術分野において公知の任意の塩基が、本発明において使用され得る。Mが一価のカチオンであり、ROがC1-6アルキルアルコールのアルコキシドである、式RO-Mの塩基が、本発明について特に適している。好適な塩基の例としては、元素ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、およびカリウムエトキシドが挙げられる。ある態様において、塩基はナトリウムエトキシドである。本発明の方法において、塩基は、典型的に、組成物およびアルコールとの反応工程へ、トリグリセリドの約0.5〜約1.5モル当量、トリグリセリドの約0.7〜約1.4モル当量、トリグリセリドの約0.9〜約1.3モル当量、またはトリグリセリドの約1.0〜約1.2モル当量の量で添加される。ある態様において、塩基は、典型的に、組成物およびアルコールとの反応工程へ、トリグリセリドの約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.95、1.0、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.10、1.15、1.2、1.3、1.4、または1.5モル当量の量で添加される。ある態様において、塩基は、組成物およびアルコールとの反応工程へ、トリグリセリドの1.04モル当量の量で添加される。
【0112】
多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物、アルコールおよび塩基を、脂肪酸残基およびアルコール間でのエステルの製造を可能にする温度でおよび時間の間、一緒に反応させる。エステルを製造するための好適な反応時間および温度は、当業者によって決定され得る。理論によって拘束されるようには意図されないが、PUFA残基は、反応工程の間、トリグリセリドのグリセロール骨格から切断され、各PUFA残基のエステルが形成されると考えられる。ある態様において、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程は、約60℃〜約120℃、約70℃〜約110℃、約75℃〜約100℃、または約80℃〜約90℃の温度で行われる。さらなる態様において、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程は、約75℃、80℃、85℃、90℃、または95℃の温度で行われる。ある態様において、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程は、約2時間〜約12時間、約3時間〜約11時間、約4時間〜約10時間、約5時間〜約9時間、または約6時間〜約8時間、行われる。ある態様において、組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程は、約5.5、6、6.5、7、7.5、8、または8.5時間、行われる。
【0113】
一態様において、油組成物、アルコールおよび塩基を反応させる工程は、成分を還流しPUFAエステルを製造することによって行われ得る。さらなる態様において、油組成物を反応させる工程は、反応成分の還流を生じさせない温度で行われ得る。例えば、大気圧を超える圧力下で油組成物を反応させる工程を行うことは、反応混合物中に存在する溶媒の沸点を上昇させ得る。このような条件下において、溶媒が大気圧で沸騰する温度で、反応は生じ得るが、反応成分の還流は生じない。ある態様において、反応は、約5〜約20ポンド毎平方インチ(psi);約7〜約15 psi;または約9〜約12 psiの圧力で行われる。ある態様において、反応は、約7、8、9、10、11、または12 psiの圧力で行われる。圧力下で行われる反応は、上記に列挙される反応温度で行われ得る。ある態様において、圧力下で行われる反応は、約70℃、75℃、80℃、85℃、または90℃で行われ得る。
【0114】
PUFAエステルを含む反応混合物は、混合物からPUFAエステルを得るために、さらに処理され得る。例えば、前記混合物は、PUFAエステルを含む組成物を製造するために、冷却され、水で希釈され、水溶液がヘキサンなどの溶媒で抽出され得る。粗製反応混合物を洗浄および/または抽出するための技術は、当技術分野において公知である。
【0115】
本発明の一態様において、PUFAエステルは、組成物を蒸留し多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収することによって、反応混合物から分離される。この様式において、関心対象のPUFAエステルを含む反応混合物の標的フラクションが、反応混合物から分離され、回収され得る。
【0116】
ある態様において、蒸留は真空下で行われる。理論によって拘束されないが、真空下での蒸留は、真空の非存在におけるよりも低い温度で蒸留が達成されることを可能にし、従って、エステルの分解を防止し得る。典型的な蒸留温度は、約120℃〜約170℃の範囲にわたる。ある態様において、蒸留工程は、約180℃未満、約175℃未満、約170℃未満、約165℃未満、約160℃未満、約155℃未満、約150℃未満、約145℃未満、約140℃未満、約135℃未満、または約130℃未満の温度で行われる。真空蒸留についての典型的な圧力は、約0.1 mm Hg〜約10 mm Hgの範囲にわたる。ある態様において、真空蒸留についての圧力は、約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、または4 mm Hgである。
【0117】
本発明の方法は、PUFAエステルを高いパーセンテージ含有する組成物を製造するために使用され得る。例えば、このような組成物は、PUFAのエステルを約50重量%〜約100重量%含有し得、他の態様において、組成物は、PUFAのエステルを少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約99重量%含み得る。
【0118】
ある態様において、PUFAエステルは、尿素結晶化工程へ供される。上述の技術を使用してグリセリド供給源のエステル交換によって形成されたPUFAエステル(例えば、DHAのエステル)および飽和脂肪酸エステルを含有する溶液中において尿素が結晶化する場合、尿素と飽和脂肪酸エステルの少なくとも一部とを含む沈殿物が形成される。しかし、この沈殿物は、最初の反応混合物よりもPUFAエステルの実質的により少ないフラクションを含む。代わりに、PUFAエステルの大部分が溶液中に残り、従って、沈殿した飽和脂肪酸エステルから容易に分離され得る。
【0119】
尿素結晶化分離プロセスは、先ず、脂肪酸エステルおよび尿素を含む溶液を形成することを含む。尿素の量は、好ましくは、溶液から分離される飽和脂肪酸の総量に比例する。上述のエステル交換反応混合物から脂肪酸エステルを分離する場合、脂肪酸エステルの混合物と尿素との質量比は、典型的に約1:2である。溶液はまた、尿素および所望のPUFAエステルを可溶化し得る、より好ましくは、尿素および混合物中の全ての脂肪酸エステルを可溶化し得る、有機溶媒を好ましくは含む。好適な溶媒の例としては、1〜4個の炭素を有するアルキルアルコールが挙げられ、メタノールおよびエタノールがより好ましく、エタノールが最も好ましい。脂肪酸エステルの混合物と溶媒との体積比は、好ましくは約1:10である。
【0120】
本質的に全ての尿素が、溶液中に好ましくは溶解される。これは、一般的に、溶液を加熱することによって達成され得る。しかし、溶液は、好ましくは、有機溶媒の沸点を超える温度へ加熱されない。典型的に、溶液は、約60℃、65℃、70℃、75℃または80℃の温度へ加熱される。
【0121】
尿素が溶解されると、PUFAエステルが溶液へ添加される。添加時に、固体が残っていれば、混合物は、固体が溶解するまで加熱され得る。溶液は、脂肪酸エステルの尿素付加物を含む沈殿物を形成させるために、冷却され得る。ある態様において、溶液は、約0℃〜約25℃、例えば約15℃〜約25℃である温度へ冷却される。他の態様において、溶液は、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、または約20℃〜約25℃の温度へ冷却される。溶液が冷却されると、それは、時折撹拌しながら、冷却温度で、ある時間の間(典型的に、約20時間以下)静置され得る。
【0122】
本発明の別の態様において、溶液(脂肪酸エステルおよび溶解された尿素を含む)が形成された後、尿素を含む沈殿物が、溶液を濃縮することによって形成される。溶液は、例えば、溶液中の溶媒の一部を蒸発させることによって、濃縮され得る。除去される溶媒の量は、好ましくは、溶液中の尿素濃度に飽和濃度を超えさせるに十分である。
【0123】
尿素結晶化分離プロセスの間、溶液は、非酸化性雰囲気中、例えば、希ガス、N2、またはそれらの組み合わせから本質的になる雰囲気中において維持され得、N2から本質的になる雰囲気が最も好ましい。このような雰囲気の使用は、PUFAエステルの炭素−炭素二重結合の酸化を最小限にすることに役立ち得る。
【0124】
尿素を含む沈殿物が形成された後、沈殿物は、PUFAエステルに富む液体フラクションから分離され得る。これは、例えば、濾過または遠心分離によって達成され得る。一態様において、沈殿物と共に残っている残りの沈殿していない所望のPUFAエステルを回収するために、沈殿物は、続いて、少量の有機溶媒(好ましくは、尿素で飽和されている)で洗浄され得る。この溶媒は、次に、前記液体フラクションと合わされ得る。
【0125】
液体フラクションは、濃縮され、水と合わされ得、次いでその中のエステルが、得られた混合物から無極性溶媒で抽出され得る。液体フラクションは、例えば、液体フラクションから溶媒の一部を蒸発させることによって、濃縮され得る(しかし、蒸発される溶媒の量は、好ましくは、さらに尿素を沈殿させるほど多くない)。得られた高濃度の液体フラクションと続いて合わされる水の量は、広範囲に変化し得る。好ましくは、水と高濃度の液体フラクションとの体積比は、約2:1である(特に好ましい態様において、十分な酸(好ましくはH2SO4)がまた、尿素を中和するために導入される)。得られた高濃度の母液/水混合物から脂肪酸エステルを抽出するために使用され得る無極性溶媒は、例えば、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、またはヘプタンであり得、ヘキサンが最も好ましい。無極性溶媒と高濃度の母液/水混合物との体積比は、好ましくは約2:3である。
【0126】
他の態様において、液体フラクションはまた、脂肪酸エステル(これは、僅かに極性である)の回収を最大化するために、僅かに極性の有機溶媒で抽出され得る。好適な僅かに極性の溶媒の例としては、ジエチルエーテルおよび酢酸エチルが挙げられ、ジエチルエーテルが最も好ましい。好ましくは、僅かに極性の溶媒と母液/水混合物との体積比は、約2:3である。この僅かに極性の溶媒での抽出に続いて、溶媒は、好ましくは、最初の抽出において使用された無極性溶媒と合わされ得る。
【0127】
抽出が完了した後、残存する水は、例えば、鹹水で溶媒を洗浄することおよび/または無水塩(例えば、硫酸ナトリウム)上に溶媒を通過させることによって、抽出溶媒から除去され得る。次いで、溶液は、例えば、溶媒の一部を蒸発させることによって、好ましくは濃縮される。
【0128】
例えば、本発明の方法は、粗製モルティエレラ・アルピナ油からアラキドン酸エチル(アラキドン酸エチルエステル)を精製するために使用され得る。ヘキサン抽出によってモルティエレラ・アルピナから得られた粗製油(典型的に、約0.5 g/g油のARA含有量を有する)が、脱ろうおよび/またはRBD処理などのいかなるさらなる処理無しに、直接使用され得る。150 mLの無水エタノールが、室温でN2下において1リットルフラスコ中の粗製油175 g(およそ0.2モル)へ添加され得る。混合物は、均一溶液を得るために15分間撹拌され得る。次いで、NaOEt/EtOHの21%溶液67 g(およそ1.04モル当量)が、前記溶液へ添加され得、混合物は約10時間N2下において還流され得る。反応の進行は、ガスクロマトグラフィー(GC)および/または薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニタリングされ得る。
【0129】
反応が完了すると、およそ75 mLのエタノールが蒸留によって除去され得、混合物はN2下において室温へ冷却され得る。300 mLのヘキサンが、冷却された混合物へ添加され得、混合物は室温で15分間撹拌され得る。次いで、300 mLの脱イオン水が混合物へ添加され得、混合物はさらに15分間撹拌され得る。有機層を除去および確保した後、水層は、300 mL部分のヘキサンで2回洗浄され得る。合わされた有機層は、200 mLの飽和NaCl溶液で洗浄され得る。有機層のGC分析が、粗生成物中に存在するARAエチルエステルの量を測定するために使用され得る。ある態様において、粗生成物のおよそ50%がARAエチルエステルであり、残りの材料は、主に、より低分子量のエチルエステルである。次いで、粗生成物は、真空分別蒸留または他の精製手順へ供され得る。ある態様において、約60%を超えるARAエチルエステルの純度が、粗生成物の分別蒸留に続いて達成され得る。
【0130】
理論によって拘束されないが、本発明の方法は、PUFA残基を有するトリグリセリドの直接エステル交換を生じさせ、PUFAのエステルを製造すると考えられる。以前の方法は、長い反応時間、大量の試薬を使用し、高温および強酸性条件などの厳しい条件へ油を供した。従って、本明細書に開示される方法は、純粋な生成物を産するより効率的かつ経済的な精製プロセスを提供する。さらに、本明細書に開示される方法は、粗製油ならびに精製油へ適用され得、効率性がさらに高められ、コスト削減がさらに進む。
【0131】
本発明の他の態様は、本明細書に記載される方法によって製造された組成物を含む。上述されるように、このような組成物は、PUFAのエステルを約50重量%超、約55重量%超など含有し得る。このような形態において、組成物は、PUFAエステルを少なくとも約89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99重量%含有し得る。他の態様において、組成物は、さらに、エイコサペンタエン酸を約10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.25または0.1重量%未満含み得る。本発明の組成物は、上述される任意のPUFAエステル、即ち、DHA、ω-3 DPA、ω-6 DPA、ARA、SDA、LLA、ALA、GLA、もしくはCLA、またはそれらの組み合わせを含み得る。ある態様において、組成物はエチルエステルを含み得る。ある態様において、組成物は、DHAエステルを少なくとも約89重量%含む。他の態様において、組成物は、DHAおよびDPAエステルの組み合わせを少なくとも約89重量%含む。
【0132】
本発明の組成物はまた、ARAエステルを少なくとも約60、65、70、75、80、85、90、または95重量%含有する組成物を含む。ある態様において、ARAエステルはARAのエチルエステルであり得る。他の態様において、組成物は、さらに、エイコサペンタエン酸を約10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.25または0.1重量%未満含み得る。
【0133】
本発明はまた、ドコサヘキサエン酸(DHA)のエチルエステルを少なくとも約90重量%および4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)を少なくとも約0.1重量%含む組成物を提供する。これらの組成物は、本明細書に開示される方法によって製造され得る。ある態様において、組成物中のDHAのエチルエステルの量は、少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98、または99重量%であり得る。ある態様において、組成物中のC28:8の量は、少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5重量%であり得る。C28:8は、トリグリセリドまたはエステル形態で存在し得る。例えば、C28:8は、エチルエステル形態で存在し得る。
【0134】
本発明はまた、ドコサヘキサエン酸(DHA)のエチルエステルを少なくとも約90重量%およびDPA(n-3)を少なくとも約0.1重量%含む組成物を提供する。これらの組成物は、本明細書に開示される方法によって製造され得る。ある態様において、組成物中のDHAのエチルエステルの量は、少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98、または99重量%であり得る。ある態様において、組成物中のDPA(n-3)の量は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0重量%のDPA(n-3)であり得る。DPA(n-3)は、トリグリセリドまたはエステル形態で存在し得る。例えば、DPA(n-3)は、エチルエステル形態で存在し得る。
【0135】
ある態様において、組成物は、上記で明記した濃度範囲内でDHAのエチルエステル、C28:8およびDPA(n-3)の3つ全てを含む。
【0136】
さらなる態様において、組成物は、DHAのエチルエステルおよびC28:8に加えて、EPAを約1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1重量%未満含み得る。一態様において、組成物は、EPAを約0.25重量%未満含み得る。EPAは、トリグリセリドまたはエステル形態で存在し得る。例えば、EPAは、エチルエステル形態で存在し得る。ある態様において、組成物は、EPAを0重量%含み得る。
【0137】
本発明はまた、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約90重量%および少なくとも1つの追加の脂肪酸またはそのエステルを含む組成物を提供する。ある態様において、組成物中のDHAのエチルエステルの量は、少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98、または99重量%であり得る。ある態様において、追加の脂肪酸は、0.8 mm Hgの圧力で約150〜170℃の沸点を有し得る。
【0138】
本発明はさらに、ドコサヘキサエン酸(DHA)のエチルエステルを少なくとも約70重量%およびドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルを少なくとも約25重量%を含む組成物を含む。
【0139】
本発明の組成物はまた、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルとドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルとの組み合わせを少なくとも約90重量%含む組成物を含む。ある態様において、組成物は、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルとドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルとの組み合わせを少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98、または99重量%含み得る。ある態様において、組成物は、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約10重量%およびドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルを少なくとも約10重量%含み得る。他の態様において、組成物は、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約15または20重量%およびドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルを少なくとも約15または20重量%含み得る。
【0140】
本発明はまた、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルとドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルとの組み合わせを少なくとも約90重量%、ならびに少なくとも1つの追加の脂肪酸またはそのエステルを含む組成物を提供する。ある態様において、組成物は、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルとドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルとの組み合わせを少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98、または99重量%含み得る。ある態様において、追加の脂肪酸は、0.8 mm Hgの圧力で約150〜170℃の沸点を有し得る。
【0141】
上述のDHA/DPA (n-6)組成物は、さらに、飽和脂肪酸またはそのエステルを約4%未満含み得る。ある態様において、組成物は、飽和脂肪酸またはそのエステルを約3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%または0.5%未満含み得る。
【0142】
ある態様において、飽和脂肪酸またはそのエステルは、20個未満の炭素を含有し得る;例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9または8個の炭素を含有する飽和脂肪酸またはそのエステル。ある態様において、飽和脂肪酸またはそのエステルは、14または16個の炭素を含有し得る。
【0143】
本発明の組成物およびPUFAエステル(「PUFAエステル」と集合的に呼ばれることもある)は、医薬品中に使用され得る。ある態様において、医薬品は、追加の薬学的活性剤無しにPUFAエステルを含有し得る。他の態様において、医薬品は、薬学的活性剤を含み得る。薬学的活性剤の例としては、スタチン、降圧薬、抗糖尿病薬、抗認知症薬、抗うつ薬、抗肥満薬、食欲抑制薬、ならびに記憶および/または認知機能を増強するための薬剤が挙げられる。医薬品は、さらに、任意の薬学的に許容される賦形剤、担体、結合剤、または当技術分野において公知の他の製剤成分を含み得る。
【0144】
本発明の方法によって製造されたPUFAエステルおよび本発明の組成物は、治療的および実験的薬剤としての使用に適している。本発明のある態様は、PUFA欠乏幼児の治療用のPUFAエステルの製造を含む。PUFAエステルは、幼児のPUFA補給を強化するために、非経口経路を介して幼児へ投与され得る非経口製剤中に含まれ得る。好ましい非経口経路としては、皮下、皮内、静脈内、筋肉内および腹腔内経路が挙げられるが、これらに限定されない。非経口製剤は、本発明のPUFAエステルと非経口送達に好適な担体とを含み得る。本明細書において使用される場合、「担体」は、好適なインビボ作用部位へ分子または組成物を送達するためのビヒクルとして好適な任意の物質を指す。このような担体の例としては、水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンクス溶液、および他の水性生理的平衡溶液が挙げられるが、これらに限定されない。好適な担体としてはまた、油ベースの担体、非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油、注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチル、ポリエトキシル化ヒマシ油(クレモフォール(cremaphor))、および当技術分野において公知の他のものが挙げられる。有効な様式でPUFAエステルを投与するための許容されるプロトコルは、個々の用量サイズ、用量の数、用量投与の頻度、および投与の様式を含む。このようなプロトコルの決定は、幼児の体重およびPUFA欠乏の程度を含む、さまざまな変数に応じて、当業者によってなされ得る。本発明の別の態様は、成体、特に妊娠している母親の治療用のPUFAエステルの製造を含む。前記プロダクトは、温血動物の母乳中の長鎖PUFAレベルを増加するために使用され得る。成体へのPUFAエステルの投与について許容されるプロトコルは、非経口供給技術、または、流動食製剤中におよび/または経口投与のために、ゼラチン(即ち、消化性)カプセルなどのカプセル中に本発明のPUFAエステルをカプセル化することを含む。流動食製剤は、食事を補うために好適な栄養素または完全食として十分な栄養素を含有する液体組成物を含み得る。
【0145】
本発明の方法によって製造されたPUFAエステルおよび本発明の組成物はまた、トリグリセリド血症を有する被験体を含む、高濃度のトリグリセリドを有する被験体(例えば、ヒトまたは動物)を治療するために使用され得る。例えば、150 mg/dLまたはそれを超える空腹時トリグリセリドを有する被験体は、本発明のPUFAエステルでの治療から利益を得ることができ、さらに、食後トリグリセリド(post-parandial triglyercide)の上昇が、本発明のPUFAエステルでの治療によって下げられ得る。ある態様において、個々のPUFAエステルが、高濃度のトリグリセリドを治療するために被験体へ投与され得る。ある態様において、PUFAエステルは、DHAまたはARAであり得る。他の態様において、PUFAエステルの組み合わせが、高濃度のトリグリセリドを治療するために被験体へ投与され得る。ある態様において、PUFAエステルの組み合わせは、ω-3およびω-6 PUFA、例えば、DHAおよびDPA n-6を含み得る。ある態様において、PUFAエステルは、被験体へ投与される組成物の約90%を構成し得る。PUFAエステルは、他の成分および賦形剤、例えば、上述の担体と共に、投与され得る。PUFAエステルはまた、高濃度のトリグリセリドに関連し得る疾患、例えば、心臓血管疾患または高血圧症を有する被験体を治療するために使用され得る。
【0146】
本発明のPUFAエステルおよび組成物は、神経障害、認知症および前認知症関連状態を有する被験体を治療するために使用され得る。これらの状態としては、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、レヴィー小体型認知症、ならびに薬物、せん妄、またはうつ病によって引き起こされる二次性認知症が挙げられる。
【0147】
本発明のPUFAエステルおよび組成物と共の使用に好適な治療化合物としては、本明細書において議論される任意の状態または疾患から個体を保護するために使用され得る任意の治療薬が挙げられ、タンパク質、アミノ酸、薬物、他の天然産物および炭水化物を含み得る。このような治療化合物は、治療される特定の疾患または状態についての当業者に周知である。本発明の組成物または製剤と組み合わせるためのいくつかの好ましい治療化合物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:タクリン(COGNEX);ドネペジル(ARICEPT);リバスチグミン(EXELON);ガランタミン(REMINYL);メマンチン(AKATINOL);ネオトロピン;向知性薬;α-トコフェロール(ビタミンE);セレゲリン(Selegeline)(ELDEPRYL);非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS);イチョウ(Gingko biloba);エストロゲン;β-セクレターゼ阻害剤;脳におけるプラークを溶解する、脂質またはリポソームベースのワクチンを含む、ワクチン;B複合ビタミン;カルシウムチャネル遮断薬;HMG CoAレダクターゼ阻害剤;スタチンおよび他の抗コレステロール薬(例えば、ZOCOR(シンバスタチン)、LIPITOR(アトルバスタチンカルシウム)、LESCOL(フルバスタチン)、LOPID(ゲムフィブロジル)、またはPRAVACHOL(プラバスタチンナトリウム));ポリコサノール;フィブレート;クリオキノール;(ならびに他の天然産物(例えば、クルクミン、リグナン、植物エストロゲン、植物ステロール;ナイアシン、およびビタミンサプリメント)。
【0148】
投薬量および投与経路は、当技術分野において公知であり、当業者によって決定され得る。
【0149】
本発明のPUFAエステルおよび組成物は局所的にまたは注射可能物質として投与され得るが、最も好ましい投与経路は、経口投与である。PUFAは、栄養補助食品および/または食物および/または薬学的製剤および/または飲料の形態で、個体へ投与され得る。食物の好ましいタイプは、医療食物(例えば、消費されるかまたは医師の監視の下で外部的に投与される製剤の形態である食物であって、それについて特有の栄養所要量が、認識される科学的原理に基づいて、医学的評価によって確立される疾患または状態の特別な食事管理に意図される、食物)である。幼児については、脂肪酸は、幼児用調製粉乳、離乳食、瓶詰めのベビーフード、母乳強化剤および/または幼児用シリアルとして、幼児へ投与される。
【0150】
任意の生物学的に許容される投薬形態、およびそれらの組み合わせが、本発明の主題によって考えられる。このような投薬形態の例としては、チュアブル錠、速溶錠、発泡錠、再構成可能な散剤、エリキシル剤、液体、液剤、懸濁剤、エマルジョン、錠剤、多層錠剤、二層錠剤、カプセル剤、軟ゼラチンカプセル剤、硬ゼラチンカプセル剤、カプレット剤、ロゼンジ、チュアブルロゼンジ、ビーズ、散剤、顆粒剤、粒子、マイクロ粒子、分散性顆粒剤、カシェ剤、ドゥーシェ(douche)、坐剤、クリーム、局所剤、吸入剤、エアロゾル吸入剤、貼付剤、粒子吸入剤、インプラント、デポーインプラント、摂取可能物、注射可能物質、注入物、ヘルスバー、糖剤、シリアル、シリアルコーティング、食品、栄養食品、機能性食品およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。上記の投薬形態の調製物は、当業者に周知である。好ましくは、所望のPUFAに富む食物は、以下を含むがこれらに限定されない群より選択される:焼いた食品およびミックス;チューインガム;朝食用シリアル;チーズ製品;ナッツおよびナッツベースの製品;ゼラチン、プリン、およびフィリング;冷凍乳製品;乳製品;乳製品類似物;ソフトキャンディー;スープおよびスープミックス;スナック食品;加工フルーツジュース;加工野菜ジュース;油脂;魚加工品;植物性タンパク質製品;鳥肉製品;および肉製品。
【0151】
本発明はまた、例えば、当技術分野において公知の任意の好適な方法を使用して任意の好適な送達形態へ組成物の成分を合わせることによる、上述の本発明の組成物のいずれかを製造する方法を含む。
【0152】
本発明によれば、本発明の方法は、脊椎動物綱のメンバー、哺乳類、例えば、非限定的に、霊長類、家畜および家庭内ペット(例えば、コンパニオンアニマル)である個体における使用に適している。最も典型的には、個体は、ヒト個体である。用語「個体」は、用語「被験体」または「患者」と交換され得、本発明に従うプロトコルまたは方法の対象を指す。従って、個体としては、健康な、正常な(病気でない)個体、ならびに前認知症もしくは認知症または本明細書に記載されるそれらの症状もしくは指標を有するかまたはこれらを発症する危険性がある個体が挙げられ得る。
【0153】
本発明の方法によって製造されたPUFAエステルは、PUFA塩を製造するために使用され得る。ある態様において、PUFA塩は、アルカリ金属塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化カリウム)の存在下で本発明のPUFAエステルを反応させることによって、製造され得る。本発明のPUFAエステルから形成されたPUFA塩は、種々の用途において、例えば、食品、飲料、および医薬品において使用され得る。ある態様において、本発明のPUFAエステルを使用して製造されたPUFA塩は、水溶性であり、食品、飲料、および医薬品において直接使用され得る。
【0154】
本発明の方法によって製造されたPUFAエステルは、増加された濃度のPUFAを有する食品を作製するために、任意の動物食品材料、特にヒト用の食品材料において使用され得る。食品中の本来の脂肪酸の量は、食品ごとに異なる。本発明の食品は、通常量のPUFAまたは変更量のPUFAを有し得る。前者の場合、天然の脂質の一部が、本発明のPUFAエステルによって置換され得る。後者の場合、天然の脂質は、本発明のPUFAエステルによって補われ得る。
【0155】
PUFAエステルは、幼児用の食品、例えば、幼児用調製粉乳およびベビーフードへ添加され得る。本発明によれば、幼児は、特に未熟児を含む、約2歳未満の幼児および小児を指す。ある特定のPUFAは、幼児の急速な成長のために(即ち、人生の最初の年の間に体重が2倍または3倍になる)、幼児用調製粉乳およびベビーフードの特に重要な成分である。幼児用調製粉乳を補うためのPUFAエステルの有効量は、ヒトの母乳中のPUFAの濃度に近い量である。幼児用調製粉乳またはベビーフードへ添加するためのPUFAエステルの好ましい量は、総脂肪酸の約0.1〜約1.0%の範囲であり、より好ましくは、総脂肪酸の約0.1〜約0.6%の範囲であり、なおより好ましくは、総脂肪酸の約0.4%である。
【0156】
本発明の別の局面は、本発明のPUFAエステルと合わされた食品材料を含む食品を含む。PUFAエステルは、増加された濃度のPUFAを有する食品を作製するために、食品材料へ添加され得る。本明細書において使用される場合、用語「食品材料」は、ヒトまたは非ヒト動物へ与えられる任意の食品タイプを指す。本発明の方法によって製造されたPUFAエステルを食品材料へ添加することを含む食品の製造方法も、本発明の範囲内にある。
【0157】
本発明の食品の形成のために有用な好適な食品材料としては、動物食品が挙げられる。用語「動物」は、動物界に属する任意の生物を意味し、霊長類(例えば、ヒトおよびサル)、家畜および家庭内ペットを含むが、これらに限定されない。用語「食品」は、このような動物へ与えられる任意のプロダクトを含む。ヒトによって消費される好ましい食品材料としては、幼児用調製粉乳およびベビーフードが挙げられる。家庭内ペットよって消費される好ましい食品材料としては、ドッグフードが挙げられる。
【0158】
本発明の方法によって製造されたPUFAエステルは、焼いた食品、ビタミン補助剤、食品補助剤、粉末飲料などの広範な製品へ、様々な製造段階で添加され得る。多数の完成または半完成粉末食品が、本発明の組成物を使用して製造され得る。
【0159】
本発明の製品を含む食品の一部のリストには、生地、バッター、焼いた食品、例えば、ケーキ、チーズケーキ、パイ、カップケーキ、クッキー、バー、パン、ロールパン、ビスケット、マフィン、ペストリー、スコーン、およびクルトンなどの品目;液体食品、例えば飲料、栄養飲料、幼児用調製粉乳、流動食、フルーツジュース、総合ビタミンシロップ、食事代替物、薬効食品、およびシロップ;半固体食品、例えば、ベビーフード、ヨーグルト、チーズ、シリアル、パンケーキミックス;食品バー、例えば、エネルギーバー;加工肉;アイスクリーム;凍結デザート;フローズンヨーグルト;ワッフルミックス;サラダドレッシング;ならびに代用卵ミックスが含まれる。焼いた食品、例えば、クッキー、クラッカー、甘い食品、スナックケーキ、パイ、グラノーラ/スナックバー、およびトースターペストリー;塩味スナック、例えば、ポテトチップ、コーンチップ、トルティアチップ、押し出しスナック、ポップコーン、プレッツェル、ポテトクリスプ、およびナッツ;特殊スナック、例えば、ディップ、ドライフルーツスナック、食肉スナック、ポークラインズ、健康食品バー、および餅(rice cake)/コーンケーキ;ならびにキャンディーなどの菓子スナックもまた含まれる。
【0160】
本発明は、特定の方法、プロダクト、および生物に関して開示されたが、当業者に利用可能であるような全てのこのような置換、修飾および最適化を含む、本明細書に開示される技術に従って得ることができかつ有用である全てのこのような方法、プロダクト、および生物を含むように意図される。以下の実施例および試験結果は、例示のために提供され、本発明の範囲を限定するようには意図されない。
【0161】
実施例
実施例1
この実施例は、ドコサヘキサエン酸(docosahexaneoic acid)含有単細胞油からドコサヘキサエン酸エチル(ethyl docosahexaneoate)(DHAエチルエステル)を精製するための本発明の方法を説明する。
【0162】
150 mLの無水エタノール(EtOH)を、室温で窒素(N2)下において1リットルフラスコ中の175 g(およそ0.2モルのトリグリセリド)のDHASCO(登録商標)-T油(Martek Biosciences Corporation, Columbia, MD、0.4 g/g油のDHA含有量を有する)へ添加した。DHASCO(登録商標)-T油は、微細藻類クリプテコディニウム・コーニーから作製される。混合物を15分撹拌し、均一溶液を得た。次いで、ナトリウムエトキシド/エタノール(NaOEt/EtOH;トリグリセリドのおよそ1.04モル当量)の21%溶液67 gを、前記溶液へ添加し、混合物を約9時間N2下において還流した。反応の進行を、ガスクロマトグラフィー(GC)および薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニタリングした。反応が完了すると、およそ75 mLのEtOHを蒸留によって除去した。次いで、反応混合物をN2下において室温へ冷却した。300 mLのヘキサンを、冷却された反応混合物へ添加し、混合物を室温で15分間撹拌した。次いで、300 mLの脱イオン水を混合物へ添加し、混合物をさらに15分間撹拌した。有機層を除去および確保した後、水層を、300 mL部分のヘキサンで2回洗浄した。暗褐色水層を捨てた。次いで、合わせた有機層を、200 mLの飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層のGC分析によって、約44.7%DHAエチルエステルの存在が示され;残りの物質は、主に、より低分子量のエチルエステルであった(表1を参照のこと)。
【0163】
合わせた有機層を減圧下で濃縮した。次いで、粗製濃縮物を真空分別蒸留へ供した。より低分子量のエチルエステルを、0.8 mm Hgの圧力で100〜150℃の温度にて回収した。このフラクションの主成分は、オレイン酸、飽和C-14、およびC-12エステルであった。DHAエチルエステルを、0.8 mm Hgの圧力で155〜165℃の温度にて回収した。DHAエチルエステルフラクションのGC分析によって、約91.3%DHAの純度が示された(表1を参照のこと)。分別蒸留から、68 g(収率86%)のDHAエチルエステルが淡黄色油として得られた。
【0164】
(表1)DHASCO(登録商標)-T油のエステル交換および蒸留生成物のGC分析

【0165】
実施例2
この実施例は、粗製クリプテコディニウム・コーニー油からドコサヘキサエン酸エチル(ethyl docosahexaneoate)(DHAエチルエステル)を精製するための本発明の方法を説明する。
【0166】
ヘキサン抽出によってクリプテコディニウム・コーニーから得られた粗製油(0.5 g/g油のDHA含有量)を、脱ろうおよび/またはRBD処理などのさらなる処理なしに、直接使用した。150 mLの無水エタノールを、室温でN2下において1リットルフラスコ中の粗製油175 g(およそ0.2モルのトリグリセリド)へ添加した。混合物を15分撹拌し、均一溶液を得た。次いで、NaOEt/EtOHの21%溶液67 g(トリグリセリドのおよそ1.04モル当量)を、前記溶液へ添加し、混合物を約10時間N2下において還流した。反応の進行を、GCおよびTLCによってモニタリングした。反応が完了すると、およそ75 mLのエタノールを蒸留によって除去し、混合物をN2下において室温へ冷却した。300 mLのヘキサンを、冷却された反応混合物へ添加し、混合物を室温で15分間撹拌した。次いで、300 mLの脱イオン水を混合物へ添加し、混合物をさらに15分間撹拌した。有機層を除去および確保した後、水層を、300 mL部分のヘキサンで2回洗浄した。次いで、合わせた有機層を、200 mLの飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層のGC分析によって、約51%DHAエチルエステルの存在が示され;残りの物質は、主に、より低分子量のエチルエステルであった(表2を参照のこと)。
【0167】
合わせた有機層を減圧下で濃縮した。次いで、粗製濃縮物を真空分別蒸留へ供した。より低分子量のエチルエステルを、0.8 mm Hgの圧力で100〜150℃の温度にて回収した。このフラクションの主成分は、オレイン酸、飽和C-14、およびC-12エステルであった。DHAエチルエステルを、0.8 mm Hgの圧力で155〜165℃の温度にて回収した。DHAエチルエステルフラクションのGC分析によって、約92%DHAの純度が示された(表2を参照のこと)。分別蒸留から、69 g(収率66%)のDHAエチルエステルが淡黄色油として得られた。
【0168】
(表2)粗製クリプテコディニウム・コーニー油のエステル交換および蒸留生成物のGC分析

【0169】
実施例3
この実施例は、粗製シゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)油からドコサヘキサエン酸エチル(DHAエチルエステル/DPAエチルエステル混合物として)を精製するための本発明の方法を説明する。
【0170】
ヘキサン抽出によってシゾキトリウム種から得られた粗製油を、脱ろうおよび/またはRBD処理などのさらなる処理なしに、直接使用した。
【0171】
150 mLの無水エタノールを、室温でN2下において1リットルフラスコ中の粗製油(DHA含有量40%、DPA含有量15%)175 g(およそ0.2モルのトリグリセリド)へ添加した。混合物を15分撹拌し、均一溶液を得た。次いで、NaOEt/EtOHの21%溶液67 g(トリグリセリドおよそ1.04モル当量)を、前記溶液へ添加し、混合物を約10時間N2下において還流した。反応の進行を、GCおよびTLCによってモニタリングした。反応が完了すると、およそ65 mLのエタノールを蒸留によって除去し、混合物をN2下において室温へ冷却した。300 mLのヘキサンを、冷却された混合物へ添加し、混合物を室温で15分間撹拌した。次いで、300 mLの脱イオン水を混合物へ添加し、混合物をさらに15分間撹拌した。有機層を除去および確保した後、水層を、300 mL部分のヘキサンで2回洗浄した。合わせた有機層を、200 mLの飽和NaCl溶液で洗浄した。有機物のGC分析によって、約40%DHAエチルエステルおよび15%DPAエチルエステルの存在が示され;残りの物質は、主に、より低分子量のエチルエステルであった(表3を参照のこと)。
【0172】
合わせた有機層を減圧下で濃縮した。次いで、粗製濃縮物を真空分別蒸留へ供した。より低分子量のエチルエステルを、0.8 mm Hgの圧力で100〜150℃の温度にて回収した。このフラクションの主成分は、飽和C-14、およびC-16エチルエステルであった。DHAエチルエステル/DPAエチルエステル混合物を、約0.5 mm Hgの圧力で155〜170℃の温度にて回収した。DHA/DPAエチルエステルフラクションのGC分析によって、約93%の合わせた純度が示された(表3を参照のこと)。分別蒸留から、85 g(収率85%)のDHA/DPAエチルエステルが非常に淡い黄色の油として得られた。
【0173】
(表3)粗製シゾキトリウム種油のエステル交換および蒸留生成物のGC分析

【0174】
実施例4
この実施例は、クリプテコディニウム・コーニー油およびシゾキトリウム種油由来の粗製および精製PUFAエチルエステルのGC分析を説明する。
【0175】
ヘキサン抽出によってシゾキトリウム種またはクリプテコディニウム・コーニーから得られた粗製油を、脱ろうおよび/またはRBD処理などのさらなる処理なしに、直接使用した。次いで、粗製油を、実施例2および3において上述したようにエステル交換反応へ供した。次いで、粗製エチルエステルを、上述したように尿素付加(adduction)へ、または実施例2および3において上述したように蒸留へ供した。次いで、GC分析を、DPAエチルエステルプロダクトまたはDHAエチルエステルプロダクト(Nu-Chek Prep, Inc., Elysian, MN)と共に、各サンプルについて行った。結果を表4(シゾキトリウム種)または表5(クリプテコディニウム・コーニー)において下記に示す。2つの分析を、クリプテコディニウム・コーニー油由来の粗製および蒸留エチルエステルについて行った。
【0176】
(表4)シゾキトリウム種エチルエステル生成物のGC分析

【0177】
実施例5
この実施例は、尿素結晶化によって、ドコサヘキサエン酸(docosahexaneoic acid)の脂肪酸エチルエステルの混合物を含有する単細胞油から、ドコサヘキサエン酸エチル(ethyl docosahexaneoate)(DHAエチルエステル)を精製するための、本発明の方法を説明する。
【0178】
微細藻類クリプテコディニウム・コーニーから作製されたドコサヘキサエン酸(docosahexaneoic acid)含有単細胞DHASCO(登録商標)-Tオイルのエステル交換によって得られた、脂肪酸エチルエステルの粗製混合物150 gを、窒素下において70℃でメタノール1050 mL(エステルの7体積当量)中の尿素262.5 g(エステルの1.75重量当量)の溶液へ添加した。尿素およびエステルの得られた混合物を、1時間、窒素下において70℃で加熱し続けた。先ず、混合物を20℃へ冷却し、続いて0〜4℃へ冷却し、尿素付加物結晶化を完了した。混合物を0〜4℃でさらに2時間静置した。次いで、結晶化された尿素付加物を0〜4℃で濾過した。
【0179】
濾液を300 mLの水で希釈し、混合物を希硫酸でpH 1〜2へ酸性化した。酸性化された溶液を300 mL x 3のヘキサンで抽出した。合わせたヘキサン抽出物を飽和NaCl溶液で洗浄した。洗浄したヘキサン溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮し、理論的収率の70〜75%が得られた。典型的に、GC分析によって、上記で得られたDHAエチルエステルの純度はおよそ90〜96%(800〜860 mg/g)と示された。
【0180】
(表5)クリプテコディニウム・コーニーエチルエステル生成物のGC分析

**測定せず
【0181】
本発明の原理、好ましい態様および実施のモードを、前述の詳説に記述した。しかし、本明細書において保護されることが意図される本発明は、開示された特定の形態に限定されると解釈されないべきであり、何故ならば、これらは、限定的ではなく例示的とみなされるためである。変化および変更が、本発明の精神を逸脱することなく当業者によってなされ得る。従って、本発明を実施する前述のベストモードは、実際は例示と考えられ、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲および精神を限定するとは考えられない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物を精製するための方法であって、以下の工程を含む方法:
a)組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程;ならびに
b)組成物を蒸留し、多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程。
【請求項2】
組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程が、約60℃〜約120℃の温度で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程が、約2時間〜約12時間行われる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物が、リファイニング、脱溶媒化(desolventization)、脱臭、脱ろう、冷却濾過、および漂白からなる群より選択される1つまたは複数の処理へ供されていない、請求項1記載の方法。
【請求項5】
多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物が、リファイニング、脱溶媒化、脱臭、脱ろう、冷却濾過、および漂白へ供されていない、請求項1記載の方法。
【請求項6】
多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物が、植物、微生物、動物、および前述のものの混合物からなる群より選択される供給源由来である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
供給源が、藻類、細菌類、真菌類および原生生物からなる群より選択される微生物である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
供給源が、ダイズ、トウモロコシ、イネ、ベニバナ、ヒマワリ、キャノーラ、亜麻、落花生、カラシ、菜種、ヒヨコマメ、綿、レンズマメ、シロツメクサ、オリーブ、ヤシ、ルリジサ、マツヨイグサ、亜麻仁およびタバコならびにそれらの混合物からなる群より選択される植物からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
供給源が、遺伝子組み換え植物および遺伝子組み換え微生物からなる群より選択され、該遺伝子組み換えが、ポリケチドシンターゼ遺伝子の導入を含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
供給源が、ヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)、渦鞭毛藻類、およびモルティエレラ(Mortierella)からなる群より選択される微生物である、請求項6記載の方法。
【請求項11】
微生物がヤブレツボカビ目である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
微生物がシゾキトリウム(Schizochytrium)である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
微生物がヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
微生物が、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)属の渦鞭毛藻類である、請求項10記載の方法。
【請求項15】
供給源が、水生動物より選択される動物である、請求項6記載の方法。
【請求項16】
多価不飽和脂肪酸が、少なくとも18個の炭素の鎖長を有する多価不飽和脂肪酸である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
多価不飽和脂肪酸が、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ステアリドン酸、リノレン酸、αリノレン酸、γリノレン酸、共役リノレン酸およびそれらの混合物からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
多価不飽和脂肪酸がドコサヘキサエン酸である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
多価不飽和脂肪酸がアラキドン酸(arachadonic acid)である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
塩基が式RO-Mの塩基であり、Mが一価のカチオンであり、ROがC1-6アルキルアルコールのアルコキシドである、請求項1記載の方法。
【請求項21】
塩基がナトリウムエトキシドである、請求項1記載の方法。
【請求項22】
アルコールがC1-6アルキルアルコールである、請求項1記載の方法。
【請求項23】
アルコールがエタノールであり、エステルが多価不飽和脂肪酸のエチルエステルである、請求項1記載の方法。
【請求項24】
組成物を蒸留し多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程が、真空下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項25】
組成物を蒸留し多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程が、約170℃未満の温度で行われる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
回収されたフラクションが、多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約50重量%含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
回収されたフラクションが、多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約75重量%含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
回収されたフラクションが、多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約90重量%含む、請求項1記載の方法。
【請求項29】
回収されたフラクションが、多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約95重量%含む、請求項1記載の方法。
【請求項30】
組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程が、直接エステル交換によってトリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する、請求項1記載の方法。
【請求項31】
さらに以下の工程を含む、請求項1記載の方法:
a)多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションと媒体中の尿素とを合わせる工程;
b)該媒体を冷却または濃縮し、尿素含有沈殿物および液体フラクションを形成させる工程;ならびに
c)該液体フラクションから該沈殿物を分離する工程。
【請求項32】
媒体が、多価不飽和脂肪酸のエステルを可溶化し得る有機溶媒をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
有機溶媒が、1〜4個の炭素原子を含むアルキルアルコールを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
有機溶媒がエタノールを含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
媒体が約0℃〜約25℃の温度へ冷却され、尿素含有沈殿物が形成される、請求項31記載の方法。
【請求項36】
尿素含有沈殿物の少なくとも一部が、非酸化性雰囲気下で形成される、請求項31記載の方法。
【請求項37】
多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物から多価不飽和脂肪酸のエステルを製造するための方法であって、以下の工程を含む方法:
a)組成物をアルコールおよび塩基の存在下でエステル交換し、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程;ならびに
b)組成物を蒸留し、多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程。
【請求項38】
多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物を精製するための方法であって、以下の工程を含む方法:
a)組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程;ならびに
b)多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約75%含むフラクションを分離する工程。
【請求項39】
多価不飽和脂肪酸のエステルを含む組成物を製造するための方法であって、以下の工程を含む方法:
多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程であって、該多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物が、リファイニング、脱溶媒化、脱臭、脱ろう、冷却濾過、および漂白からなる群より選択される1つまたは複数の処理へ供されていない、前記工程。
【請求項40】
組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程が、約60℃〜約120℃の温度で行われる、請求項39記載の方法。
【請求項41】
組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程が、約2時間〜約12時間行われる、請求項39記載の方法。
【請求項42】
組成物を蒸留し多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程をさらに含む、請求項39記載の方法。
【請求項43】
多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物が、植物、微生物、動物、および前述のものの混合物からなる群より選択される供給源由来である、請求項39記載の方法。
【請求項44】
供給源が、藻類、細菌類、真菌類および原生生物からなる群より選択される微生物である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
供給源が、ダイズ、トウモロコシ、イネ、ベニバナ、ヒマワリ、キャノーラ、亜麻、落花生、カラシ、菜種、ヒヨコマメ、綿、レンズマメ、シロツメクサ、オリーブ、ヤシ、ルリジサ、マツヨイグサ、亜麻仁およびタバコならびにそれらの混合物からなる群より選択される植物からなる群より選択される、請求項43記載の方法。
【請求項46】
供給源が、遺伝子組み換え植物および遺伝子組み換え微生物からなる群より選択され、該遺伝子組み換えが、ポリケチドシンターゼ遺伝子の導入を含む、請求項43記載の方法。
【請求項47】
供給源が、ヤブレツボカビ目、渦鞭毛藻類、およびモルティエレラからなる群より選択される微生物である、請求項43記載の方法。
【請求項48】
微生物がヤブレツボカビ目である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
微生物がシゾキトリウムである、請求項48記載の方法。
【請求項50】
微生物がヤブレツボカビ属である、請求項48記載の方法。
【請求項51】
微生物が、クリプテコディニウム属の渦鞭毛藻類である、請求項47記載の方法。
【請求項52】
供給源が、水生動物より選択される動物である、請求項43記載の方法。
【請求項53】
多価不飽和脂肪酸が、少なくとも18個の炭素の鎖長を有する多価不飽和脂肪酸である、請求項39記載の方法。
【請求項54】
多価不飽和脂肪酸が、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ステアリドン酸、リノレン酸、αリノレン酸、γリノレン酸、共役リノレン酸およびそれらの混合物からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸である、請求項39記載の方法。
【請求項55】
多価不飽和脂肪酸がドコサヘキサエン酸である、請求項54記載の方法。
【請求項56】
多価不飽和脂肪酸がアラキドン酸(arachadonic acid)である、請求項54記載の方法。
【請求項57】
塩基が式RO-Mの塩基であり、Mが一価のカチオンであり、ROがC1-6アルキルアルコールのアルコキシドである、請求項39記載の方法。
【請求項58】
塩基がナトリウムエトキシドである、請求項39記載の方法。
【請求項59】
アルコールがC1-6アルキルアルコールである、請求項39記載の方法。
【請求項60】
アルコールがエタノールであり、エステルが多価不飽和脂肪酸のエチルエステルである、請求項39記載の方法。
【請求項61】
組成物を蒸留し多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程が、真空下で行われる、請求項42記載の方法。
【請求項62】
組成物を蒸留し多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程が、約170℃未満の温度で行われる、請求項61記載の方法。
【請求項63】
回収されたフラクションが、多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約50重量%含む、請求項42記載の方法。
【請求項64】
回収されたフラクションが、多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約75重量%含む、請求項42記載の方法。
【請求項65】
回収されたフラクションが、多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約90重量%含む、請求項42記載の方法。
【請求項66】
回収されたフラクションが、多価不飽和脂肪酸のエステルを少なくとも約95重量%含む、請求項42記載の方法。
【請求項67】
組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させる工程が、直接エステル交換によってトリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する、請求項39記載の方法。
【請求項68】
ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約90重量%含む組成物であって、さらに4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)またはそのエステルを少なくとも約0.1重量%含む、前記組成物。
【請求項69】
4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)またはそのエステルを少なくとも約0.5重量%含む、請求項68記載の組成物。
【請求項70】
4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)またはそのエステルを少なくとも約1.0重量%含む、請求項68記載の組成物。
【請求項71】
4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)またはそのエステルを少なくとも約1.2重量%含む、請求項68記載の組成物。
【請求項72】
さらにドコサペンタエン酸(n-3)またはそのエステルを少なくとも約0.1重量%含む、請求項68記載の組成物。
【請求項73】
さらにドコサペンタエン酸(n-3)またはそのエステルを少なくとも約0.3重量%含む、請求項68記載の組成物。
【請求項74】
さらにドコサペンタエン酸(n-3)またはそのエステルを少なくとも約0.4重量%含む、請求項68記載の組成物。
【請求項75】
さらにドコサペンタエン酸(n-3)またはそのエステルを少なくとも約0.5重量%含む、請求項68記載の組成物。
【請求項76】
ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約92重量%含む、請求項68記載の組成物。
【請求項77】
ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約95重量%含む、請求項68記載の組成物。
【請求項78】
さらにエイコサペンタエン酸またはそのエステルを約1重量%未満含む、請求項68記載の組成物。
【請求項79】
さらにエイコサペンタエン酸またはそのエステルを約0.5重量%未満含む、請求項68記載の組成物。
【請求項80】
さらにエイコサペンタエン酸またはそのエステルを約0.25重量%未満含む、請求項68記載の組成物。
【請求項81】
ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約90重量%含む組成物であって、さらにドコサペンタエン酸(n-3)またはそのエステルを少なくとも約0.1重量%含む、前記組成物。
【請求項82】
ドコサペンタエン酸(n-3)またはそのエステルを少なくとも約0.3重量%含む、請求項81記載の組成物。
【請求項83】
ドコサペンタエン酸(n-3)またはそのエステルを少なくとも約0.4重量%含む、請求項81記載の組成物。
【請求項84】
ドコサペンタエン酸(n-3)またはそのエステルを少なくとも約0.5重量%含む、請求項81記載の組成物。
【請求項85】
さらに4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)またはそのエステルを少なくとも約0.5重量%含む、請求項81記載の組成物。
【請求項86】
さらに4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)またはそのエステルを少なくとも約0.75重量%含む、請求項81記載の組成物。
【請求項87】
さらに4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)またはそのエステルを少なくとも約1.0重量%含む、請求項81記載の組成物。
【請求項88】
さらに4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)またはそのエステルを少なくとも約1.2重量%含む、請求項81記載の組成物。
【請求項89】
ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約92重量%含む、請求項81記載の組成物。
【請求項90】
ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約95重量%含む、請求項81記載の組成物。
【請求項91】
さらにエイコサペンタエン酸またはそのエステルを約1重量%未満含む、請求項81記載の組成物。
【請求項92】
さらにエイコサペンタエン酸またはそのエステルを約0.5重量%未満含む、請求項81記載の組成物。
【請求項93】
さらにエイコサペンタエン酸またはそのエステルを約0.25重量%未満含む、請求項81記載の組成物。
【請求項94】
ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約90重量%含む組成物であって、0.8 mm Hgの圧力で約150〜170℃の沸点を有する少なくとも1つの追加の脂肪酸またはそのエステルをさらに含む、前記組成物。
【請求項95】
ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約70重量%およびドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルを少なくとも約25重量%含む組成物。
【請求項96】
さらに飽和脂肪酸またはそのエステルを約4%未満含む、請求項95記載の組成物。
【請求項97】
飽和脂肪酸またはそのエステルが、20個未満の炭素を含有する、請求項96記載の組成物。
【請求項98】
飽和脂肪酸またはそのエステルが、14または16個の炭素を含有する、請求項96記載の組成物。
【請求項99】
ドコサヘキサエン酸のエチルエステルとドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルとの組み合わせを少なくとも約90重量%含む組成物。
【請求項100】
ドコサヘキサエン酸のエチルエステルを少なくとも約10重量%およびドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルを少なくとも約10重量%含む、請求項99記載の組成物。
【請求項101】
さらに飽和脂肪酸またはそのエステルを約4%未満含む、請求項99記載の組成物。
【請求項102】
飽和脂肪酸またはそのエステルが、20個未満の炭素を含有する、請求項101記載の組成物。
【請求項103】
飽和脂肪酸またはそのエステルが、14または16個の炭素を含有する、請求項101記載の組成物。
【請求項104】
ドコサヘキサエン酸のエチルエステルとドコサペンタエン酸(n-6)のエチルエステルとの組み合わせを少なくとも約90重量%含む組成物であって、0.5 mm Hgの圧力で約150〜175℃の沸点を有する少なくとも1つの追加の脂肪酸またはそのエステルをさらに含む、前記組成物。
【請求項105】
多価不飽和脂肪酸のエステルを含む組成物を製造するための方法であって、以下の工程を含む方法:
多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程であって、該多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物は、少なくとも約300 ppmリン、少なくとも約0.4%遊離脂肪酸、および少なくとも約0.2 meq/kgの過酸化物価からなる群より選択される少なくとも1つの特徴を含む、前記工程。
【請求項106】
以下の工程を含む、多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む組成物を精製するための方法であって、該組成物が、少なくとも約300 ppmリン、少なくとも約0.4%遊離脂肪酸、および少なくとも約0.2 meq/kgの過酸化物価からなる群より選択される少なくとも1つの特徴を含む、前記方法:
a)組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させ、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを製造する工程;ならびに
b)組成物を蒸留し、多価不飽和脂肪酸のエステルを含むフラクションを回収する工程。
【請求項107】
アラキドン酸のエステルを少なくとも約60重量%含む組成物。
【請求項108】
さらにエイコサペンタエン酸を約10重量%未満含む、請求項107記載の組成物。
【請求項109】
アラキドン酸のエステルがアラキドン酸のエチルエステルである、請求項107記載の組成物。
【請求項110】
請求項68、81、94、95、99または104に従う組成物を被験体へ投与する工程を含む、高濃度のトリグリセリドを有する被験体を治療する方法。
【請求項111】
請求項68、81、94、95、99または104に従う組成物を被験体へ投与する工程を含む、神経障害、認知症または前認知症関連状態を有する被験体を治療する方法。

【公表番号】特表2010−532418(P2010−532418A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515186(P2010−515186)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/068613
【国際公開番号】WO2009/006317
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(508004410)マーテック バイオサイエンシーズ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】