説明

多出力型スイッチング電源装置

【課題】小型化・低コスト化の要求に応えることができる多出力型スイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング素子Qを制御回路4による制御下でスイッチング動作させて主出力電圧Vbbを出力する主出力回路2と、主出力電圧Vbbを降圧して得た従出力電圧Vccを出力する従出力回路3とを備えた多出力型スイッチング電源装置1であって、主出力回路2は、主出力電圧Vbbの過電圧状態および従出力電圧Vccの減電圧状態を検出する電圧検出回路5を有する。電圧検出回路5は、主出力電圧Vbbが過電圧状態になるか、従出力電圧Vccが減電圧状態になるとオフ状態からオン状態に切り替わるトランジスタQを含み、制御回路4は、トランジスタQがオン状態になった場合に、スイッチング素子Qのスイッチング動作を停止させ、主出力回路2および従出力回路3からの出力を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主出力電圧と該主出力電圧を降圧して得た少なくとも1つの従出力電圧とを出力する多出力型スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多出力型スイッチング電源装置は、主出力回路と少なくとも1つの従出力回路とを有し、複数の負荷回路に同時に電力を供給するものである。この種の多出力型スイッチング電源装置においては、安全上の理由から、いずれかの負荷回路に短絡等の異常が発生し、その負荷回路に電力を供給する従出力電圧が減電圧状態となった場合や主出力電圧が過電圧状態となった場合に、そのことを素早く検知して電力の供給を停止させることが重要である。
【0003】
図2に、従来の多出力型スイッチング電源装置1’を示す(例えば、特許文献1参照)。この多出力型スイッチング電源装置1’は、主出力電圧として例えば+24[V]を出力する主出力回路2’と、従出力電圧として例えば+5[V]を出力する従出力回路3とを備えている。
【0004】
このうち、主出力回路2’は、トランスTの一次巻線Tに接続されたスイッチング素子Qと、スイッチング素子Qを制御する制御回路4とを備え、制御回路4がスイッチング素子Qをスイッチング動作させると二次巻線Tに交流電圧が誘起されるようになっている。この交流電圧はダイオードDおよび平滑コンデンサCで整流・平滑され、直流の主出力電圧Vbb(+24[V])として出力される。また、主出力電圧Vbbの多寡は不図示のフィードバック回路によって制御回路4にフィードバックされ、これにより主出力電圧Vbbはほぼ一定に保たれる。
【0005】
従出力回路3は、主にDC−DCコンバータ回路から構成され、主出力電圧Vbbを降圧して生成した直流の従出力電圧Vcc(+5[V])を不図示の負荷回路に出力する。
【0006】
また、主出力回路2’は、従出力電圧Vccの減電圧状態を検出する減電圧検出回路5’と、主出力電圧Vbbの過電圧状態を検出し、装置を過電圧から保護する過電圧保護回路6とを有する。過電圧保護回路6が有するフォトカプラPCは、過電圧のみならず、減電圧検出回路5’で減電圧状態が検出されたことを一次側に伝達する伝達手段としての役割も兼ねている。
【0007】
この従来の多出力型スイッチング電源装置1’では、何ら異常が発生していない定常時には、減電圧検出回路5’のトランジスタQがオンするのでフォトカプラPCに電流は流れないが、従出力電圧Vccが減電圧状態になると、トランジスタQがオフするので、ダイオードDおよび抵抗Rを通ってフォトカプラPCに電流が流れることになる。これにより、減電圧状態となったことが二次側から一次側の制御回路4に伝達され、制御回路4はスイッチング素子Qのスイッチング動作を停止させる。そして、主出力回路2’および従出力回路3による電力供給は停止する。
【0008】
一方、この従来の多出力型スイッチング電源装置1’では、主出力電圧Vbbが過電圧状態になると、過電圧保護回路6の定電圧ダイオードZDが非導通状態から導通状態になるので、定電圧ダイオードZDおよび抵抗Rを通ってフォトカプラPCに電流が流れることになる。これにより、過電圧状態となったことが二次側から一次側の制御回路4に伝達され、従出力電圧Vccが減電圧状態になった場合と同様に、主出力回路2’および従出力回路3による電力供給は停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−17084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の多出力型スイッチング電源装置1’は、従出力電圧Vccの減電圧状態を検知するための減電圧検出回路5’と、主出力電圧Vbbの過電圧状態を検知するための過電圧保護回路6とを別々に備えているので、部品点数が増加して、実装スペースやコストの増大を招くおそれがあった。このため、従来の多出力型スイッチング電源装置1’では、小型化・低コスト化の要求に応えることが困難であった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、小型化・低コスト化の要求に応えることができる多出力型スイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る多出力型スイッチング電源装置は、トランスの一次巻線に接続されたスイッチング素子を制御回路の制御下でスイッチング動作させてトランスの二次巻線に交流電圧を誘起させ、該交流電圧を直流化して得た主出力電圧を出力する主出力回路と、主出力電圧を降圧して得た従出力電圧を出力する従出力回路と、を備えた多出力型スイッチング電源装置であって、
主出力回路は、主出力電圧の過電圧状態および従出力電圧の減電圧状態を検出する電圧検出回路と、電圧検出回路が過電圧状態または減電圧状態を検出すると、過電圧状態または減電圧状態を示す信号を制御回路に伝達する伝達手段と、を有し、
電圧検出回路は、主出力電圧が過電圧状態になるか、または従出力電圧が減電圧状態になるとオフ状態からオン状態に切り替わる切替手段を含み、
制御回路は、切替手段がオン状態になった場合に、伝達手段から信号を受けてスイッチング素子のスイッチング動作を停止させ、主出力回路および従出力回路からの出力を停止させることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、従来別々の回路により検出されていた主出力電圧の過電圧状態と従出力電圧の減電圧状態とが、一つの電圧検出回路により検出されるので、部品点数を削減することができ、小型化・低コスト化の要求に応えることができる。
【0014】
上記多出力型スイッチング電源装置は、電圧検出回路が、主出力回路と従出力回路との間に介装され、主出力電圧と従出力電圧との電圧差を検出し、該電圧差に応じて導通状態と非導通状態とが切り替えられる電圧差検出素子をさらに含み、電圧差検出素子が非導通状態から導通状態になることで主出力電圧の過電圧状態または従出力電圧の減電圧状態を検出し、切替手段をオフ状態からオン状態に切り替えるように構成してもよい。
【0015】
この構成によれば、電圧差検出素子が主出力電圧と従出力電圧との電圧差を検出し、該電圧差に応じて非導通状態から導通状態になることで、確実に主出力電圧の過電圧状態および従出力電圧の減電圧状態を検出することができる。しかも、電圧差検出素子が非導通状態から導通状態になることにより、切替手段がオフ状態からオン状態に切り替えられるので、簡素な構成で伝達手段を介して過電圧状態または減電圧状態を示す信号を制御回路に伝達することができる。
【0016】
このような電圧差検出素子として定電圧ダイオードを用いるのが好ましく、定電圧ダイオードのカソード側を主出力回路に接続する一方、アノード側を従出力回路に接続すればよい。
【0017】
また、電圧検出回路の部品点数を削減する観点からは、切替手段としてPNP型のトランジスタを用いて、次のように回路を構成することが好ましい。すなわち、トランジスタのベースが第1抵抗を介して主出力回路の出力の高電位側に接続されるとともに、第2抵抗を介して定電圧ダイオードのカソード側に接続され、トランジスタのエミッタが主出力回路の出力の高電位側に接続され、トランジスタのコレクタが伝達手段に接続されるように構成することが好ましい。
【0018】
また、上記多出力型スイッチング電源装置における伝達手段をフォトカプラとし、該フォトカプラがオン状態とされた切替手段から供給される電流を検知することで制御回路に信号を伝達するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小型化・低コスト化の要求に応えることができる多出力型スイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る多出力型スイッチング電源装置の回路図である。
【図2】従来の多出力型スイッチング電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る多出力型スイッチング電源装置の好ましい実施形態について説明する。
【0022】
図1に、本発明の一実施形態に係る多出力型スイッチング電源装置1の回路図を示す。同図に示すように、本実施形態に係る多出力型スイッチング電源装置1は、主出力電圧として例えば+24[V]を出力する主出力回路2と、従出力電圧として例えば+5[V]を出力する従出力回路3とを備えている。
【0023】
主出力回路2は、トランスTの一次巻線Tに接続されたスイッチング素子(本実施形態では、FETを使用)Qと、スイッチング素子Qを制御する制御回路4とを備え、制御回路4がスイッチング素子Qをスイッチング動作させると二次巻線Tに交流電圧が誘起されるようになっている。
【0024】
この交流電圧はダイオードDおよび平滑コンデンサCで整流・平滑され、直流の主出力電圧Vbb(+24[V])として出力される。主出力電圧Vbbの多寡は不図示のフィードバック回路によって制御回路4にフィードバックされ、これにより主出力電圧Vbbはほぼ一定に保たれる。
【0025】
従出力回路3は、主にDC−DCコンバータ回路から構成され、主出力電圧Vbbを降圧して生成した直流の従出力電圧Vcc(+5[V])を不図示の負荷回路に出力する。
【0026】
また、主出力回路2には、従出力電圧Vccの減電圧状態および主出力電圧Vbbの過電圧状態を検出する電圧検出回路5が備えられている。
【0027】
電圧検出回路5は、エミッタが主出力回路2の出力(以下「主出力」という)の高電位側に接続されたPNP型のトランジスタQと、トランジスタQのベース−エミッタ間に接続された抵抗R(本発明の“第1抵抗”に相当)と、アノード側が従出力回路3の出力(以下「従出力」という)の高電位側に接続された定電圧ダイオードZD(本発明の“電圧差検出手段”に相当)と、トランジスタQのベースと定電圧ダイオードZDのカソード側との間に接続された抵抗R(本発明の“第2抵抗”に相当)と、を備えている。
【0028】
定電圧ダイオードZDは、上記のように、カソード側が抵抗Rおよび抵抗Rを介して主出力に接続される一方、アノード側が従出力に接続されており、主出力電圧Vbbと従出力電圧Vccとの電圧差を検出し、該電圧差に応じて導通状態と非導通状態とが切り替えられる。
【0029】
フォトカプラPC(本発明の“伝達手段”に相当)は、トランジスタQのコレクタと主出力および従出力の低電位側との間に接続された発光素子PCと、制御回路4に接続された受光素子PCとを備えている。フォトカプラPCは、主出力電圧Vbbの過電圧状態または従出力電圧Vccの減電圧状態が検出されたことを一次側に伝達する。
【0030】
上記のように、本実施形態における主出力電圧Vbbおよび従出力電圧Vccの一例は、それぞれ+24[V]、+5[V]であり、その差は19[V]である。したがって、定電圧ダイオードZDの設定電圧(降伏電圧)を19[V]よりも僅かに高い20[V]程度に設定しておけば、何ら異常が発生していない定常時に抵抗Rに電流が流れることはないので、トランジスタQはオフ状態のままである。
【0031】
従出力回路3によって電力供給されている負荷回路に短絡等の異常が発生し、従出力が減電圧状態になると、定電圧ダイオードZDが降伏状態となり、主出力の高電位側から従出力の高電位側に向かって、つまり定電圧ダイオードZDの逆方向に電流が流れる。そして、この電流による抵抗Rの電圧降下によって、トランジスタQのベース−エミッタ間電圧が上昇し、トランジスタQがオフ状態からオン状態に切り替わる。具体的には、トランジスタQのオン電圧を1.2[V]とすると、従出力電圧Vccが2.8(=24−(20+1.2))[V]以下になると、トランジスタQがオフ状態からオン状態に切り替わる。このように、本実施形態では、トランジスタQが本発明の「切替手段」として機能する。
【0032】
オン状態となっているトランジスタQを介して主出力の高電位側から流れてくる電流、すなわちオン状態とされたトランジスタQのコレクタ電流は、フォトカプラPCの発光素子PCに流れる。これにより、減電圧状態を示す信号が二次側から一次側の制御回路4に伝達され、制御回路4はスイッチング素子Qのスイッチング動作を停止させる。そして、主出力回路2および従出力回路3からの出力(主出力回路2および従出力回路3による電力供給)は停止する。
【0033】
一方、主出力が過電圧状態になると、従出力が減電圧状態になった場合と同様に、定電圧ダイオードZDが降伏状態となり、定電圧ダイオードZDの逆方向に電流が流れる。これにより、トランジスタQがオフ状態からオン状態に切り替わる。具体的には、主出力電圧Vbbが26.2(=5+20+1.2)[V]以上になると、トランジスタQがオフ状態からオン状態に切り替わる。その結果、トランジスタQのコレクタ電流がフォトカプラPCの発光素子PCに流れるので、過電圧状態を示す信号が二次側から一次側の制御回路4に伝達され、制御回路4はスイッチング素子Qのスイッチング動作を停止させる。そして、主出力回路2および従出力回路3からの出力は停止する。
【0034】
結局、本実施形態に係る多出力型スイッチング電源装置1によれば、電圧検出回路5により、主出力の過電圧状態と従出力の減電圧状態とを検出することができるので、部品点数を削減することができ、小型化・低コスト化の要求に応えることができる。
【0035】
以上、本発明に係る多出力型スイッチング電源装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0036】
例えば、上記実施形態では、電圧検出回路5の切替手段としてPNP型のトランジスタQを使用しているが、別のトランジスタを使用してもよいし、トランジスタ以外の切替手段を使用してもよい。
【0037】
また、スイッチング素子Qと、該スイッチング素子Qを制御する制御回路4とは、単一のICによって構成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 多出力型スイッチング電源装置
2 主出力回路
3 従出力回路
4 制御回路
5 電圧検出回路
PC フォトカプラ(伝達手段)
FET(スイッチング素子)
トランジスタ(切替手段)
第1抵抗
第2抵抗
ZD 定電圧ダイオード(電圧差検出素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの一次巻線に接続されたスイッチング素子を制御回路の制御下でスイッチング動作させて前記トランスの二次巻線に交流電圧を誘起させ、該交流電圧を直流化して得た主出力電圧を出力する主出力回路と、
前記主出力電圧を降圧して得た従出力電圧を出力する従出力回路と、
を備えた多出力型スイッチング電源装置であって、
前記主出力回路は、
前記主出力電圧の過電圧状態および前記従出力電圧の減電圧状態を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路が過電圧状態または減電圧状態を検出すると、過電圧状態または減電圧状態を示す信号を前記制御回路に伝達する伝達手段と、
を有し、
前記電圧検出回路は、前記主出力電圧が過電圧状態になるか、または前記従出力電圧が減電圧状態になるとオフ状態からオン状態に切り替わる切替手段を含み、
前記制御回路は、前記切替手段がオン状態になった場合に、前記伝達手段から前記信号を受けて前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させ、前記主出力回路および前記従出力回路からの出力を停止させることを特徴とする多出力型スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記電圧検出回路は、
前記主出力回路と前記従出力回路との間に介装され、前記主出力電圧と前記従出力電圧との電圧差を検出し、該電圧差に応じて導通状態と非導通状態とが切り替えられる電圧差検出素子をさらに含み、
前記電圧差検出素子が非導通状態から導通状態になることで前記主出力電圧の過電圧状態または前記従出力電圧の減電圧状態を検出し、前記切替手段をオフ状態からオン状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の多出力型スイッチング電源装置。
【請求項3】
前記電圧差検出素子は定電圧ダイオードであり、
前記定電圧ダイオードのカソード側が前記主出力回路に接続される一方、アノード側が前記従出力回路に接続されることを特徴とする請求項2に記載の多出力型スイッチング電源装置。
【請求項4】
前記切替手段はPNP型のトランジスタであり、
前記トランジスタのベースが第1抵抗を介して前記主出力回路の出力の高電位側に接続されるとともに、第2抵抗を介して前記定電圧ダイオードのカソード側に接続され、
前記トランジスタのエミッタが前記主出力回路の出力の高電位側に接続され、
前記トランジスタのコレクタが前記伝達手段に接続されることを特徴とする請求項3に記載の多出力型スイッチング電源装置。
【請求項5】
前記伝達手段はフォトカプラであり、
前記フォトカプラはオン状態とされた前記切替手段から供給される電流を検知することで前記制御回路に前記信号を伝達することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多出力型スイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−13299(P2013−13299A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146075(P2011−146075)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】