多孔性食品食感評価方法、多孔性食品データ処理装置、多孔性食品食感評価方法及び多孔性食品食感評価方法をコンピュータに実行させるプログラム
【課題】 多孔性食品の食感を実験的に評価するための評価方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の多孔性食品食感評価方法は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析し、該音響解析により得られた数値を用い、官能試験による評価を行わずに多孔性食品のクリスプネスを評価することを特徴とする。
【解決手段】 本発明の多孔性食品食感評価方法は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析し、該音響解析により得られた数値を用い、官能試験による評価を行わずに多孔性食品のクリスプネスを評価することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性食品の食感評価方法及び食感評価システムに関するものであり、更に詳細には多孔性食品の食感、特にクリスプネスを実験的に評価する評価方法及び評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フライ食品、クッキー等のスナック菓子、米菓等の多孔性食品は、口に入れて咀嚼した際のパリパリ(サクサク)とした食感が品質上非常に重要であり、そのような食感の低下が商品価値を著しく低下させる原因となっている。それ故、多孔性食品のパリパリとした食感を正しく評価することは重要であり、従来から多孔性食品の食感は官能検査により評価されている。このような官能検査は、機器によって測定し難い風味や食感等の評価に主に用いられている手法であり、精度が高く正確なデータを得ることができることが知られている。
【0003】
しかし、一方で官能検査はパネラーの選定や育成が困難であり、また官能検査を行うに際しては複数のパネラーを使用することから、複数のパネラーのスケジュール調整に手間がかかる等の問題があり、非効率的な側面を有している。
【0004】
近年、ハードネス(硬さ)、スプリンジネス(弾力性)、ブリットルネス(脆さ)、チューイネス(咀嚼性)、スティッキネス(粘り)、クリスプネス(パリパリ感)等の食品の食感を、レオメータ等の機器分析により評価する試みが行われており、ある程度の成果は得られている。
【0005】
多孔性食品については、多孔性食品に存在する気孔の大きさの定量化、気孔構造と物性との関連性が検討されているが、気孔の方向性については未だ評価されていない(非特許文献1、A.H.Barrett,M.Peleg:J.Food Sci,57,1253−1257,1992)。
【0006】
咀嚼音に関しては、マイクロフォンから入力された音声をFFTにより周波数解析する技術を開示した文献があり(非特許文献2、C.Dacremont:J.Texture Studies,26,27−43,1995)、アーモンドや人参等の食品を、パリパリ、バリバリ及びカリカリの3種類の食感に分類している。しかし、多孔性食品の保存における食感、特にクリスプネスの変化についての記載はない。
【0007】
また、スナック菓子の咀嚼音、ポテトチップスの破砕音をFFT解析し、多量解析等を行っている文献がある(非特許文献3、L.M.Duizer,O.H.Campanella:Journal of Texture Studies,29,397−411,1998 及び非特許文献4、P.Wide,Conf Proc IEEE Instrum Meas Technol Conf,1,570−575,1997)。しかし、上記文献に記載された方法は官能評価に代わる評価方法として確立されているわけではなく、ましてはラフネス、シャープネスに関する記載はされていない。
【0008】
食品のパリパリ感を評価するための測定器を設計する試みもなされている(非特許文献5,S.K.Seymour,Pap Am Soc Agric Eng,24,1984)が、該文献には0.5〜3.3kHzの低中周波領域における音圧レベルを示しているのみであり、食感との相関を判断し、官能評価に代わる評価方法として確立されたものではない。
【0009】
力学特性に関しては、テクスチャーの曲げ試験による評価(非特許文献6、E.V.HEck,K.Allaf and J.M.Bouvier:J.Texture Studies,26,11−25,1995)、応力−ひずみ曲線を高速フーリエ変換(FFT)することによる周波数解析(非特許文献7、F.Rohde,M.D.Normand and M.Peleg:J.Texture Studies,25,77−95,1993)、応力−ひずみ曲線をフラクタル理論に基づいて次元数を求める解析(非特許文献8、A.Borges,M.Peleg:J.Texture Studies,27,243−255,1996)等がなされている。
【0010】
しかし、上述した文献に記載されたものは、何れも食感の知覚との相関性については言及しておらず、食品のレオロジーの一側面の評価がなされているのみであった。
上述したように、多孔性食品の食感は官能検査により行われるのが通常であり、最も重要な食感を機器分析により正確に測定することは困難であった。
【0011】
【非特許文献1】A.H.Barrett,M.Peleg:J.Food Sci,57,1253−1257,1992
【非特許文献2】C.Dacremont:J.Texture Studies,26,27−43,1995
【非特許文献3】L.M.Duizer,O.H.Campanella:Journal of Texture Studies,29,397−411,1998
【非特許文献4】P.Wide,Conf Proc IEEE Instrum Meas Technol Conf,1,570−575,1997
【非特許文献5】S.K.Seymour,Pap Am Soc Agric Eng,24,1984
【非特許文献6】E.V.HEck,K.Allaf and J.M.Bouvier:J.Texture Studies,26,11−25,1995
【非特許文献7】F.Rohde,M.D.Normand and M.Peleg:J.Texture Studies,25,77−95,1993
【非特許文献8】A.Borges,M.Peleg:J.Texture Studies,27,243−255,1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、従来は多孔性食品の食感を実験的に評価する方法がなく、官能試験に頼っていたのであるが、官能試験は上述したような問題があるため、多孔性食品の食感、特にクリスプネスを実験的に評価する評価方法及び評価システムが望まれていた。
従って、本発明の目的は、多孔性食品の食感を実験的に評価するための評価方法及び評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意検討した結果、音響解析手段を用いることにより、上記目的を達成し得るという知見を得た。本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析し、該音響解析により得られた数値を用い、官能試験による評価を行わずに多孔性食品のクリスプネスを評価することを特徴とする、多孔性食品食感評価方法を提供するものである。
また、本発明は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動からのシャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、該音響解析により得られた数値を用い、官能試験による評価を行わずに多孔性食品のクリスプネスを評価する手段を有する多孔性食品データ処理装置を提供する。
【0014】
また、本発明は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析し、該音響解析により得られた数値と、官能試験により得られた官能評価とを相関分析することにより多孔性食品のクリスプネスを評価することを特徴とする、多孔性食品食感評価方法を提供する。
また、本発明は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動からのシャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、該音響解析により得られた数値と、官能試験により得られた官能評価とを相関分析することにより多孔性食品のクリスプネスを評価する手段を有する多孔性食品データ処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の多孔性食品食感評価方法によれば、実際に官能試験による評価を行わなくても、多孔性食品の食感(クリスプネス)の評価を実験により行うことが可能である。
また、本発明の多孔性食品食感評価システムによれば、実際に官能試験による評価を行わなくても、多孔性食品の食感(クリスプネス)の評価を実験によって評価することが可能となる。
また、本発明の多孔性食品食感評価システムは本発明の多孔性食品データ処理装置を備えているので、実際に多孔性試験の官能試験を行わなくても、多孔性食品の食感(クリスプネス)の評価を実験によって行なうことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本願明細書において「多孔性食品の食感」とは、いわゆるクリスプネス(パリパリ感)のことをいう。
【0017】
本発明において食感を評価する対象となる食品は多孔性食品である。多孔性食品とは、材料中の蒸発成分の拡散、又は材料に注入したガスの微細気泡の膨化により生じた多孔性組織を有するビスケット、クラッカー、プレッシェル、クッキー、コーンパフ、コーンフレーク、ポップコーン及びポテトチップス等のスナック菓子、せんべい、あられ等の米菓、天ぷらの衣、かき揚げ等のフライ食品が挙げられる。特に、パフマシーン、加圧押出機等により膨化成形されたものが挙げられる。
【0018】
食品の食感は、通常ハードネス(硬さ)、スプリンジネス(弾力性)、ブリットルネス(脆さ)、チューイネス(咀嚼性)、スティッキネス(粘り)、クリスプネス(パリパリ感、サクミ感)等で評価される。多孔性食品の場合は、上記のうち、特にパリパリとした食感を代表するクリスプネスが重要である。
【0019】
本発明の多孔性食品食感評価方法は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を音響解析し、該音響解析により得られた数値を用いて多孔性食品の食感を評価することを特徴とする。
なお、音響解析により得られた数値を用いるとは、該音響解析により得られた数値と、官能試験により得られた官能評価とを相関分析することをも含む。
【0020】
本発明の多孔性食品食感評価方法において多孔性食品を破砕するには食品破砕装置を用いる。食品破砕装置とは、食品を圧縮及び切断する装置の総称であり、その装置は食品を圧縮、切断する際に破砕音を発生し、装置に振動を伝えるものである。本発明において用いられる食品破砕装置の一例としては、図1に示す食品破砕装置や図3に示すレオメータが挙げられる。食品を切断する切断部分はアダプター式になっているものが好ましい。食品の種類によって形状を変えることができるので好ましい。一例を挙げると、アダプターは格子型又はフォーク型のものが挙げられる。格子型のアダプターは、コロッケ及び天ぷら等を破砕する際に用いられ、フォーク型のアダプターは春巻き及びクッキー等を破砕する際に用いられる。また、食品破砕装置としては、破砕音を測定する際にできるだけ稼働音が小さいものが好ましい。
切断部分の押し込み速度は20〜300mm/秒で測定することが好ましい。
【0021】
また、本発明において「人による咀嚼時の音」とは、多孔性食品を人によって咀嚼した際の咀嚼1回目を含む嚥下するまでに繰り返し食品を噛む際に発生する音、振動のことをいう。
【0022】
本発明において用いられる食品破砕装置の一例を図1に示す。図1は、本発明において用いられる食品破砕装置の一例を示す斜視図であり、図1に示す食品破砕装置1は、アーム部11の先端部に重り12が搭載されており、また該重り12の下部には油圧シリンダー13が備えられており、該油圧シリンダー13によりアーム部11が一定速度で落下するようになされている。前記アーム部11のほぼ中間部には食品破砕部14が備えられている。重り12の重みにより、食品破砕部14を有するアーム部11が落下し、サンプル台16の上に搭載された食品(図示せず)を破砕するようになっている。また、食品破砕部14はアダプター式になっており、食品の種類によって食品破砕部14の形状を変えることができる。
また、食品破砕装置1には、図示していないコンタクトマイクが備えられているか、又はマイク(図示せず)を食品破砕部14の近くに設置できるようになされている。
【0023】
食品破砕部の一例を図2(a)及び(b)に示す。図2(a)はフォーク型のアダプターであり、春巻き等を破砕する際に用いられる。食品破砕部に用いられるアダプターとしては、図2に示すものに限られず、どのような形状のものでも用いることが可能であり、例えば格子型のアダプター等も使用可能である。また、アダプターとしては、図2(b)に示すような形状のものを用いることも可能である。
【0024】
本発明において、機器による食品破砕時の音及び振動と、人による咀嚼時の音及び振動により歯の触感を測定し(歯ざわり)、レオメータの破断応力から歯にかかる力(歯ごたえ)を測定する。
【0025】
また、本発明において用いられる食品破砕装置の一種であるレオメータとは、物質の力学的性状を測定する装置として用いられるものであり、該レオメータによれば、圧縮破断強度(荷重)、引張強度、切断強度、弾性、粘弾性、脆さ、粘着性、応力緩和及びクリーム等の測定が可能である。本発明においては、レオメータを用いて、多孔性食品をプランジャーにより一定の速度で押し潰し、その荷重を測定する単軸圧縮破断強度試験を行うと共に、多孔性食品を押し潰す際に発生する音及び振動の収集・解析を行う。
【0026】
本発明において用いられるレオメータの一例を図3に示す。図3は、本発明において用いられるレオメータの一例を示す図であり、図3に示すように、レオメータ30は、上下動可能な試料台31、ロードセル32、ロードセルに接続されたプランジャー33を有しており、ロードセル32及びプランジャー33にコンタクトマイク34が備えられている。また、試料台31の近くにマイク35が設置可能になされている。また、試料台31の上に載せた多孔性食品39をプランジャー33により破砕し、プランジャー33により破砕された食品の音を録音、測定する測定部38が接続されている。
【0027】
プランジャーの一例を図4(a)、(b)、(c)及び(d)に示す。プランジャーとしては、図4に示すような、棒状であり、先端が平坦なもの(図4(a))、先端が尖ったもの(図4(b)及び(c))、先端にナイフが備えられたもの(図4(d))等が挙げられるが、本発明に用いられるレオメータに接続されるプランジャーとしては、食感を評価する対象となる食品を破砕するのに適した形状であれば、どのような形状であったもよく、例示したものに限定されない。
【0028】
上述したレオメータを用いた単軸圧縮破断試験において、プランジャーの押し込み速度を0.1〜10mm/秒として測定することが好ましく、プランジャーの形状に特に制限はない。また、データ収集間隔(距離分離能)には特に制限はないが、データ収集間隔が小さく、データ収集数が多い方が好ましい。例えばデータ収集間隔としては0.01〜0.001mmであることが好ましい。
【0029】
本発明の多孔性食品食感評価方法において、多孔性食品の破砕音及び破断曲線を得るため、レオメータに、くさび型プランジャーを装着し、圧縮速度を1.0mm/秒、データ収集間隔を0.01mm(サンプリング周波数:100Hz)、最大ひずみ0.8に設定して単軸圧縮破砕試験によって、多孔性食品の力−変形曲線が得られる。
【0030】
上述した、単軸圧縮破砕試験により得られた力−変形曲線から力−時間曲線の変換を行なう。その変換は供試食品の変形とプランジャー移動距離が同一であるため、プランジャーの移動速度(圧縮速度)から求めることができる。得られた力−時間曲線に対し、離散フーリエ変換(DFT)処理が施され、パワースペクトルを得る。
【0031】
本発明の多孔性食品食感評価方法において用いられる食品破砕装置を用いて一定荷重により多孔性食品の破砕を行い、音、振動、圧縮破断強度(力−変形曲線)を求める。また、本発明の多孔性食品食感評価方法において用いられるレオメータを使用して一定速度により多孔性食品の破砕を行い、音、振動を求める。なお、詳細は特開2001−133374号公報に開示されている通りである。
【0032】
本発明の多孔性食品食感評価方法においては、多孔性食品の咀嚼時に発生する音及び/又は振動を音響解析し、該音響解析により得られた数値を用いることにより多孔性食品の食感を評価することもできる。
咀嚼時に発生する音及び/又は振動を音響解析するには、コンタクトマイクにより収音する。この場合、人の頭部(喉及び首を含む)であれば、どこに設置してもよいが、好ましくは額、頭頂及び耳内部に設置することが好ましい。また、通常のマイクを用いて収音を行ってもよく、この場合、マイクを顔に近づけ、咀嚼時に発生する音を収音する。咀嚼時に発生する音及び/又は振動を収音する場合のマイク、コンタクトマイクを設置する場所の一例を図5に示す。図5において、人の顔の前部にマイクが設置されているが、顔に印をつけてある部位がコンタクトマイクの設置部である。例えば、コンタクトマイクは頭頂、額、こめかみ、喉、耳内部及び耳の後ろに設置することができる。
【0033】
本発明の多孔性食品食感評価方法においては、多孔性食品を破砕又は多孔性食品を咀嚼する際に発生する音及び/又は振動を収音して音響解析を行う。音及び/又は振動を収音する装置としては録音装置が用いられる。用いられる録音装置としては、音を評価するための試験において通常に用いられるものが使用可能である。例えば、マイクロフォン、パーソナルコンピュータ及び記録媒体からなる。マイクロフォンとはマイク及びコンタクトマイクを含み、前記マイクとは騒音計をも含む概念である。
【0034】
上記マイクとは、空気中の振動、いわゆる“音”を電気振動に変換することにより収音するものであり、騒音計を含む、コンタクトマイクとは骨や食品破砕装置等の固体を伝わる振動を測定するものである。コンタクトマイクとしては、例えば骨伝導マイクHG17A((株)テムコジャパン製)等が挙げられる。
【0035】
音及び/又は振動を収音する際に用いられるマイクロフォン等の録音装置の設置位置として、一例を挙げると、破砕又は咀嚼される多孔性食品から3〜50cm程度の距離に設置し、コンタクトマイクにより収音する際には、食品破砕装置の食品切断部分から1〜30cmの距離に装着する。マイクロフォン等の録音装置の設置位置としては、上記距離に限定されることはなく、多孔性食品破砕又は咀嚼する音を安定に収音することができる位置であればよい。
【0036】
本発明の多孔性食品食感評価方法においては、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いる。
本発明において音響解析を行うシャープネスとは、いわゆる“音の鋭さ感”のことであり、アコースティックワークステーションCF85(ノイトリックコルテクスインスツルメント社製)を用いて算出することができる。シャープネスは、周波数成分に依存する評価量であり、低周波数、高周波数間におけるスペクトルバランスを示す。
【0037】
シャープネス(S)の定義式を以下に示す。
【0038】
【数1】
【0039】
式中、N’:各臨界帯域番号(Bark)におけるラウドネス
すなわち、分母はトータルラウドネスである。
g(z):臨界帯域番号に依存する重み関数
z 臨界帯域番号
すなわち上記は、g(z)にて重みのかかったN’を臨界帯域番号軸に並べた時の重心位置を表わす。
なお、ラウドネスとは人が感じる音の大きさ、すなわち“音の大きさ感”(単位:sone)を示す。
【0040】
また、本発明において音響解析を行うラフネスとは、いわゆる“音の粗さ感”のことであり、アコースティックワークステーションCF85(ノイトリックコルテクスインスツルメント社製)を用いて算出することができる。ラフネスは、音が早く変動する際のその変動を知覚することができないために生じる粗さ感の評価量である。
ラフネス(R)の定義式を以下に示す。
【0041】
【数2】
【0042】
c 正規化係数(約0.3;信号に依存)
ri 各臨界帯域番号におけるラフネス
Δz 臨界帯域幅
ki-1 臨界帯域番号iとi-1番目とのラウドネスの時間変化の相関係数
k1 臨界帯域番号iとi+1番目とのラウドネスの時間変化の相関係数
g(z) 臨界帯域番号に依存する重み係数
m 時間包絡信号の時間変動に依存する係数
【0043】
本発明の多孔性食品食感評価方法においては、1/1、1/3、1/6、1/12オクターブ解析も使用することができる。音及び振動データを1/1、1/3、1/6、1/12オクターブ解析し、一例を挙げると、コロッケに関しては2000〜4000Hzの周波数帯域に特徴を見出した。
【0044】
本発明の多孔性食品食感評価方法においては、上記音響解析により算出した値と、多孔性食品の官能試験により求めた官能評価値とを相関分析することにより、多孔性食品の食感を評価する。
以下、官能試験について説明する。
官能試験は、パネラー10名により行なう。官能評価用紙を用いて、サクミ度合いを0〜4の5段階で採点する。次いで、パネラー10名の平均点を算出し、表1に示す判断基準に従ってサクミ度合いを評価する。平均点が3以上のものをサクミがないものと判断する。
【0045】
【表1】
【0046】
相関分析法1
食品破砕装置により多孔性食品を破砕した際に発生する音又は振動、人が多孔性食品を咀嚼した際に発生する音又は振動を、マイク又はコンタクトマイクを通じてパーソナルコンピュータに取り込み、データをシャープネス解析する。
シャープネス解析することにより、官能試験による食感の評価との間に高い相関関係を導き出すことにより、食感、特にクリスプネスについての客観的な評価が可能となる。
【0047】
相関分析法2
食品破砕装置により多孔性食品を破砕した際に発生する音又は振動、人が多孔性食品を咀嚼した際に発生する音又は振動を、マイク又はコンタクトマイクを通じてパーソナルコンピュータに取り込み、データをラフネス解析する。
ラフネス解析することにより、官能試験による食感の評価との間に高い相関関係を導き出すことにより、食感、特にクリスプネスについての客観的な評価が可能となる。
【0048】
相関分析法3
食品破砕装置により多孔性食品を破砕した際に発生する音又は振動、人が多孔性食品を咀嚼した際に発生する音又は振動を、マイク又はコンタクトマイクを通じてパーソナルコンピュータに取り込み、データを1/1、1/3、1/6、1/12オクターブ解析し、特徴ある周波数帯域の音圧暴露レベル(例:コロッケについては2000〜4000Hz)から官能試験による食感評価との間に関係を導き出す。
【0049】
相関分析4
かかる分析は比較例として行うものであるが、食品破砕装置により多孔性食品を破砕した際に発生する音又は振動、人が多孔性食品を咀嚼した際に発生する音又は振動を、マイク又はコンタクトマイクを通じてパーソナルコンピュータに取り込み、データの音圧暴露レベル(100〜20000Hz:オーバーオール音圧暴露レベル)から、官能試験による食感評価との間に関係を導き出す。
【0050】
次に、本発明の多孔性食品データ処理装置について説明する。
本発明の多孔性食品データ処理装置は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動からのシャープネス又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、該音響解析により得られた数値を用いて多孔性食品の食感を評価する手段を有することを特徴とする。
【0051】
多孔性食品の破砕、咀嚼等の用語については上述した本発明の多孔性食品食感評価方法において説明した通りである。
本発明の多孔性食品データ処理装置によれば、多孔性食品を破砕、又は咀嚼した際に発生する音及び/又は振動からのシャープネス又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、官能試験による食感の評価との間に高い相関関係を導き出すことにより、食感、特にクリスプネスについての客観的な評価が可能となる。
【0052】
次に、本発明の多孔性食品評価システムについて説明する。本発明の多孔性食品評価システムは、上述した本発明の多孔性食品データ処理装置を備えることを特徴とする。本発明の多孔性食品評価システムによれば、多孔性食品を破砕、又は咀嚼した際に発生する音及び/又は振動からのシャープネス又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、官能試験による食感の評価との間の高い相関関係を導き出すことにより、食感、特にクリスプネスについての客観的な評価が可能となる。
【0053】
次に、本発明の多孔性食品食感評価方法をコンピュータに実行させるプログラムについて説明する。本発明の多孔性食品食感評価方法をコンピュータに実行させるプログラムとは、コンピュータの動作を制御し、以上に説明した本発明の多孔性食品食感評価方法を実施するためのプログラムであり、プログラム制御されたコンピュータがプログラムにより指令され、以上に説明した本発明の多孔性食品食感評価方法を実施するためのプログラムである。
【0054】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
マッシュポテト製のパテ(20g/1個)を調製した。次いで、化工澱粉、デキストリン及び植物性タンパク質を含有するバッターを5.5〜6.5g付けた後、パン粉を付け、3Lフライヤーにキャノーラ油を3Kg入れ、180℃の温度で5分間調理してコロッケを製造した。製造したコロッケを8分間放冷した後、−35℃の急速冷凍庫にて1時間保管し、冷凍食品としての冷凍コロッケを得た。得られた冷凍コロッケを密閉式ビニール袋に入れた後、−10℃の冷凍庫中にて保存した。
【0055】
−10℃の冷凍庫中に保存した冷凍コロッケを4日、7日及び12日後に取り出し、衣中の水分含有量を測定した。また、電子レンジを用いて再加熱して加熱した後(コロッケ4個:450W、2分50秒)破砕試験及び官能試験を行った。
【0056】
コロッケの破砕試験は、図1に示す食品破砕装置を用いて行った。コロッケの破砕条件は、油圧シリンダーの抵抗により一定速度で運動する装置に、重量6kgの重りを搭載し、試料(コロッケ)に約10kgの力が加わるようにしてコロッケを破砕した。コロッケを破砕するアダプターとしては格子状の金属製パイプレンダー(図2(b)に示されるもの)を用い、コロッケを包丁で切断することを想定した測定を行った。
【0057】
測定に用いたマイクとしては騒音計(リオン(株)製NL−15)を用い、音響解析ソフト(Syntrillium社製Cool Edit2000)を使用してパーソナルコンピュータ内蔵ハードディスク内に音圧信号を収集した。データのラフネス解析を行い、その結果を表2に示す。また、同時にパネラー10名を用いた官能試験を行い、その結果を併せて表2に示す。なお、官能試験の方法については上述した通りである。なお、保存していないコロッケ(保存日数0日)についても同様に試験を行った。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例2
実施例1と同様に製造したコロッケについて同条件で破砕を行い、データをシャープネス解析した。結果、及び官能試験による結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
実施例3
実施例1と同様に製造したコロッケについて同条件で破砕を行い、データを1/12オクターブ解析し、特徴ある周波数帯域の音圧暴露レベル(2000〜4000Hz)を求めた。結果、及び官能試験による結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
比較例1
実施例1と同様に製造したコロッケについて同条件で破砕を行い、オーバーオール音圧暴露レベル(100〜20000Hz)を求めた。結果、及び官能試験による結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
次に、実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1の結果と官能評価点との相関係数を求めた。それぞれの相関係数を表6に示し、それぞれの相関を図6、図7及び図8に示す。図6は、官能評価とラフネス解析との相関を示すグラフであり、図7は、官能評価とシャープネス解析との相関を示すグラフであり、図8は、官能評価と特徴ある周波数帯域の音圧暴露レベル(2000〜4000Hz)との相関を示し、図9は官能評価とオーバーオール音圧暴露レベル(100〜20000Hz)との相関を示す図である。
【0066】
【表6】
【0067】
表3、表4及び表5、図5、図6、図7及び図8から明らかなように、実施例1、実施例2及び実施例3は、比較例1よりも高い相関を示す。従って、本発明の多孔性食品食感評価方法によれば、実際に官能試験による評価を行わなくても、多孔性食品の食感(クリスプネス)の評価を実験により行なうことが可能である。
【0068】
実施例4
実施例1と同様にコロッケを調製し、−10℃の冷凍庫中に保存した。−10℃の冷凍庫中に冷凍コロッケを7日及び12日後に取り出し、衣中の水分含有量を測定した。また、電子レンジを用いて再加熱して加熱した後(コロッケ4個:450W、2分50秒)破砕試験及び官能試験を行った。
【0069】
また、コロッケの咀嚼音をコンタクトマイクにより測定した。咀嚼音の測定部位としては人の額中央を選択し、人の額中央部にコンタクトマイクを密着させることにより咀嚼音を測定した。
【0070】
測定に用いたコンタクトマイクとしては骨伝導マイク(HG17A:(株)テムコジャパン製)を用い、音響解析ソフト(Syntrillium社製Cool Edit2000)を使用してパーソナルコンピュータ内蔵ハードディスク内に振動加速度信号を収集した。基準値を10−5m/s2として求めた振動加速度レベルを音圧レベルと見立て、ラフネス解析及びシャープネス解析を行い、その結果を表7に示す。また、同時にパネラー10名を用いた官能試験を行い、その結果を併せて表7に示す。なお、官能試験の方法については上述した通りである。なお、保存していないコロッケ(保存日数0日)についても同様に試験を行った。
【0071】
【表7】
【0072】
実施例5
実施例4と同様に製造したコロッケについて同条件で咀嚼音の測定を行い、データを1/12オクターブ解析し、特徴ある周波数帯域(700〜1000Hz)の振動加速度レベルを求めた。結果、及び官能試験による結果を表8に示す。
【0073】
【表8】
【0074】
比較例2
実施例4と同様に製造したコロッケについて同条件で咀嚼音測定を行い、オーバーオール振動加速度レベル(100〜20000Hz)を求めた。結果、及び官能試験による結果を表9に示す。
【0075】
【表9】
【0076】
次に、実施例4、実施例5及び比較例2の結果と官能評価点との相関係数を求めた。それぞれの相関係数を表10に示し、それぞれの相関を図10、図11、図12及び図13に示す。図10は、官能評価とラフネス解析との相関を示すグラフであり、図11は、官能評価とシャープネス解析との相関を示すグラフであり、図12は、官能評価と特徴ある周波数帯域(700〜1000Hz)の振動加速度レベルとの相関を示すグラフであり、図13は官能評価とオーバーオール振動加速度レベル(100〜20000Hz)との相関を示すグラフである。
【0077】
【表10】
【0078】
表7、表8、表9及び表10、図10、図11、図12及び図13から明らかなように、実施例4、実施例5の結果は、比較例2よりも高い相関を示した。従って、本発明の多孔性食品食感評価方法によれば、実際に官能試験による評価を行わなくても、多孔性食品の食感(クリスプネス)の評価を実験により行なうことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明において用いられる食品破砕装置の一例を示す斜視図である。
【図2】食品破砕部の一例を示す図である。
【図3】本発明において用いられるレオメータの一例を示す図である。
【図4】プランジャーの一例を示す図である。
【図5】コンタクトマイクを設置する場所の一例を示す図である。
【図6】官能評価とラフネス解析との相関を示すグラフである。
【図7】官能評価とシャープネス解析との相関を示すグラフである。
【図8】官能評価と特徴ある周波数帯域(2000〜4000Hz)の音圧暴露レベルとの相関を示すグラフである。
【図9】官能評価とオーバーオール音圧暴露レベル(100〜20000Hz)との相関を示すグラフである。
【図10】官能評価とラフネス解析との相関を示すグラフである。
【図11】官能評価とシャープネス解析との相関を示すグラフである。
【図12】官能評価と特徴ある周波数帯域(700〜1000Hz)の振動加速度レベルとの相関を示すグラフである。
【図13】官能評価とオーバーオール振動加速度レベル(100〜20000Hz)との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
10 食品破砕装置
11 アーム部
12 重り
13 油圧シリンダー
14 食品破砕部
16 サンプル台
30 レオメータ
31 試料台
32 ロードセル
33 プランジャー
34 コンタクトマイク
35 マイク
38 測定部
39 多孔性食品
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性食品の食感評価方法及び食感評価システムに関するものであり、更に詳細には多孔性食品の食感、特にクリスプネスを実験的に評価する評価方法及び評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フライ食品、クッキー等のスナック菓子、米菓等の多孔性食品は、口に入れて咀嚼した際のパリパリ(サクサク)とした食感が品質上非常に重要であり、そのような食感の低下が商品価値を著しく低下させる原因となっている。それ故、多孔性食品のパリパリとした食感を正しく評価することは重要であり、従来から多孔性食品の食感は官能検査により評価されている。このような官能検査は、機器によって測定し難い風味や食感等の評価に主に用いられている手法であり、精度が高く正確なデータを得ることができることが知られている。
【0003】
しかし、一方で官能検査はパネラーの選定や育成が困難であり、また官能検査を行うに際しては複数のパネラーを使用することから、複数のパネラーのスケジュール調整に手間がかかる等の問題があり、非効率的な側面を有している。
【0004】
近年、ハードネス(硬さ)、スプリンジネス(弾力性)、ブリットルネス(脆さ)、チューイネス(咀嚼性)、スティッキネス(粘り)、クリスプネス(パリパリ感)等の食品の食感を、レオメータ等の機器分析により評価する試みが行われており、ある程度の成果は得られている。
【0005】
多孔性食品については、多孔性食品に存在する気孔の大きさの定量化、気孔構造と物性との関連性が検討されているが、気孔の方向性については未だ評価されていない(非特許文献1、A.H.Barrett,M.Peleg:J.Food Sci,57,1253−1257,1992)。
【0006】
咀嚼音に関しては、マイクロフォンから入力された音声をFFTにより周波数解析する技術を開示した文献があり(非特許文献2、C.Dacremont:J.Texture Studies,26,27−43,1995)、アーモンドや人参等の食品を、パリパリ、バリバリ及びカリカリの3種類の食感に分類している。しかし、多孔性食品の保存における食感、特にクリスプネスの変化についての記載はない。
【0007】
また、スナック菓子の咀嚼音、ポテトチップスの破砕音をFFT解析し、多量解析等を行っている文献がある(非特許文献3、L.M.Duizer,O.H.Campanella:Journal of Texture Studies,29,397−411,1998 及び非特許文献4、P.Wide,Conf Proc IEEE Instrum Meas Technol Conf,1,570−575,1997)。しかし、上記文献に記載された方法は官能評価に代わる評価方法として確立されているわけではなく、ましてはラフネス、シャープネスに関する記載はされていない。
【0008】
食品のパリパリ感を評価するための測定器を設計する試みもなされている(非特許文献5,S.K.Seymour,Pap Am Soc Agric Eng,24,1984)が、該文献には0.5〜3.3kHzの低中周波領域における音圧レベルを示しているのみであり、食感との相関を判断し、官能評価に代わる評価方法として確立されたものではない。
【0009】
力学特性に関しては、テクスチャーの曲げ試験による評価(非特許文献6、E.V.HEck,K.Allaf and J.M.Bouvier:J.Texture Studies,26,11−25,1995)、応力−ひずみ曲線を高速フーリエ変換(FFT)することによる周波数解析(非特許文献7、F.Rohde,M.D.Normand and M.Peleg:J.Texture Studies,25,77−95,1993)、応力−ひずみ曲線をフラクタル理論に基づいて次元数を求める解析(非特許文献8、A.Borges,M.Peleg:J.Texture Studies,27,243−255,1996)等がなされている。
【0010】
しかし、上述した文献に記載されたものは、何れも食感の知覚との相関性については言及しておらず、食品のレオロジーの一側面の評価がなされているのみであった。
上述したように、多孔性食品の食感は官能検査により行われるのが通常であり、最も重要な食感を機器分析により正確に測定することは困難であった。
【0011】
【非特許文献1】A.H.Barrett,M.Peleg:J.Food Sci,57,1253−1257,1992
【非特許文献2】C.Dacremont:J.Texture Studies,26,27−43,1995
【非特許文献3】L.M.Duizer,O.H.Campanella:Journal of Texture Studies,29,397−411,1998
【非特許文献4】P.Wide,Conf Proc IEEE Instrum Meas Technol Conf,1,570−575,1997
【非特許文献5】S.K.Seymour,Pap Am Soc Agric Eng,24,1984
【非特許文献6】E.V.HEck,K.Allaf and J.M.Bouvier:J.Texture Studies,26,11−25,1995
【非特許文献7】F.Rohde,M.D.Normand and M.Peleg:J.Texture Studies,25,77−95,1993
【非特許文献8】A.Borges,M.Peleg:J.Texture Studies,27,243−255,1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、従来は多孔性食品の食感を実験的に評価する方法がなく、官能試験に頼っていたのであるが、官能試験は上述したような問題があるため、多孔性食品の食感、特にクリスプネスを実験的に評価する評価方法及び評価システムが望まれていた。
従って、本発明の目的は、多孔性食品の食感を実験的に評価するための評価方法及び評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意検討した結果、音響解析手段を用いることにより、上記目的を達成し得るという知見を得た。本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析し、該音響解析により得られた数値を用い、官能試験による評価を行わずに多孔性食品のクリスプネスを評価することを特徴とする、多孔性食品食感評価方法を提供するものである。
また、本発明は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動からのシャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、該音響解析により得られた数値を用い、官能試験による評価を行わずに多孔性食品のクリスプネスを評価する手段を有する多孔性食品データ処理装置を提供する。
【0014】
また、本発明は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析し、該音響解析により得られた数値と、官能試験により得られた官能評価とを相関分析することにより多孔性食品のクリスプネスを評価することを特徴とする、多孔性食品食感評価方法を提供する。
また、本発明は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動からのシャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、該音響解析により得られた数値と、官能試験により得られた官能評価とを相関分析することにより多孔性食品のクリスプネスを評価する手段を有する多孔性食品データ処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の多孔性食品食感評価方法によれば、実際に官能試験による評価を行わなくても、多孔性食品の食感(クリスプネス)の評価を実験により行うことが可能である。
また、本発明の多孔性食品食感評価システムによれば、実際に官能試験による評価を行わなくても、多孔性食品の食感(クリスプネス)の評価を実験によって評価することが可能となる。
また、本発明の多孔性食品食感評価システムは本発明の多孔性食品データ処理装置を備えているので、実際に多孔性試験の官能試験を行わなくても、多孔性食品の食感(クリスプネス)の評価を実験によって行なうことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本願明細書において「多孔性食品の食感」とは、いわゆるクリスプネス(パリパリ感)のことをいう。
【0017】
本発明において食感を評価する対象となる食品は多孔性食品である。多孔性食品とは、材料中の蒸発成分の拡散、又は材料に注入したガスの微細気泡の膨化により生じた多孔性組織を有するビスケット、クラッカー、プレッシェル、クッキー、コーンパフ、コーンフレーク、ポップコーン及びポテトチップス等のスナック菓子、せんべい、あられ等の米菓、天ぷらの衣、かき揚げ等のフライ食品が挙げられる。特に、パフマシーン、加圧押出機等により膨化成形されたものが挙げられる。
【0018】
食品の食感は、通常ハードネス(硬さ)、スプリンジネス(弾力性)、ブリットルネス(脆さ)、チューイネス(咀嚼性)、スティッキネス(粘り)、クリスプネス(パリパリ感、サクミ感)等で評価される。多孔性食品の場合は、上記のうち、特にパリパリとした食感を代表するクリスプネスが重要である。
【0019】
本発明の多孔性食品食感評価方法は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を音響解析し、該音響解析により得られた数値を用いて多孔性食品の食感を評価することを特徴とする。
なお、音響解析により得られた数値を用いるとは、該音響解析により得られた数値と、官能試験により得られた官能評価とを相関分析することをも含む。
【0020】
本発明の多孔性食品食感評価方法において多孔性食品を破砕するには食品破砕装置を用いる。食品破砕装置とは、食品を圧縮及び切断する装置の総称であり、その装置は食品を圧縮、切断する際に破砕音を発生し、装置に振動を伝えるものである。本発明において用いられる食品破砕装置の一例としては、図1に示す食品破砕装置や図3に示すレオメータが挙げられる。食品を切断する切断部分はアダプター式になっているものが好ましい。食品の種類によって形状を変えることができるので好ましい。一例を挙げると、アダプターは格子型又はフォーク型のものが挙げられる。格子型のアダプターは、コロッケ及び天ぷら等を破砕する際に用いられ、フォーク型のアダプターは春巻き及びクッキー等を破砕する際に用いられる。また、食品破砕装置としては、破砕音を測定する際にできるだけ稼働音が小さいものが好ましい。
切断部分の押し込み速度は20〜300mm/秒で測定することが好ましい。
【0021】
また、本発明において「人による咀嚼時の音」とは、多孔性食品を人によって咀嚼した際の咀嚼1回目を含む嚥下するまでに繰り返し食品を噛む際に発生する音、振動のことをいう。
【0022】
本発明において用いられる食品破砕装置の一例を図1に示す。図1は、本発明において用いられる食品破砕装置の一例を示す斜視図であり、図1に示す食品破砕装置1は、アーム部11の先端部に重り12が搭載されており、また該重り12の下部には油圧シリンダー13が備えられており、該油圧シリンダー13によりアーム部11が一定速度で落下するようになされている。前記アーム部11のほぼ中間部には食品破砕部14が備えられている。重り12の重みにより、食品破砕部14を有するアーム部11が落下し、サンプル台16の上に搭載された食品(図示せず)を破砕するようになっている。また、食品破砕部14はアダプター式になっており、食品の種類によって食品破砕部14の形状を変えることができる。
また、食品破砕装置1には、図示していないコンタクトマイクが備えられているか、又はマイク(図示せず)を食品破砕部14の近くに設置できるようになされている。
【0023】
食品破砕部の一例を図2(a)及び(b)に示す。図2(a)はフォーク型のアダプターであり、春巻き等を破砕する際に用いられる。食品破砕部に用いられるアダプターとしては、図2に示すものに限られず、どのような形状のものでも用いることが可能であり、例えば格子型のアダプター等も使用可能である。また、アダプターとしては、図2(b)に示すような形状のものを用いることも可能である。
【0024】
本発明において、機器による食品破砕時の音及び振動と、人による咀嚼時の音及び振動により歯の触感を測定し(歯ざわり)、レオメータの破断応力から歯にかかる力(歯ごたえ)を測定する。
【0025】
また、本発明において用いられる食品破砕装置の一種であるレオメータとは、物質の力学的性状を測定する装置として用いられるものであり、該レオメータによれば、圧縮破断強度(荷重)、引張強度、切断強度、弾性、粘弾性、脆さ、粘着性、応力緩和及びクリーム等の測定が可能である。本発明においては、レオメータを用いて、多孔性食品をプランジャーにより一定の速度で押し潰し、その荷重を測定する単軸圧縮破断強度試験を行うと共に、多孔性食品を押し潰す際に発生する音及び振動の収集・解析を行う。
【0026】
本発明において用いられるレオメータの一例を図3に示す。図3は、本発明において用いられるレオメータの一例を示す図であり、図3に示すように、レオメータ30は、上下動可能な試料台31、ロードセル32、ロードセルに接続されたプランジャー33を有しており、ロードセル32及びプランジャー33にコンタクトマイク34が備えられている。また、試料台31の近くにマイク35が設置可能になされている。また、試料台31の上に載せた多孔性食品39をプランジャー33により破砕し、プランジャー33により破砕された食品の音を録音、測定する測定部38が接続されている。
【0027】
プランジャーの一例を図4(a)、(b)、(c)及び(d)に示す。プランジャーとしては、図4に示すような、棒状であり、先端が平坦なもの(図4(a))、先端が尖ったもの(図4(b)及び(c))、先端にナイフが備えられたもの(図4(d))等が挙げられるが、本発明に用いられるレオメータに接続されるプランジャーとしては、食感を評価する対象となる食品を破砕するのに適した形状であれば、どのような形状であったもよく、例示したものに限定されない。
【0028】
上述したレオメータを用いた単軸圧縮破断試験において、プランジャーの押し込み速度を0.1〜10mm/秒として測定することが好ましく、プランジャーの形状に特に制限はない。また、データ収集間隔(距離分離能)には特に制限はないが、データ収集間隔が小さく、データ収集数が多い方が好ましい。例えばデータ収集間隔としては0.01〜0.001mmであることが好ましい。
【0029】
本発明の多孔性食品食感評価方法において、多孔性食品の破砕音及び破断曲線を得るため、レオメータに、くさび型プランジャーを装着し、圧縮速度を1.0mm/秒、データ収集間隔を0.01mm(サンプリング周波数:100Hz)、最大ひずみ0.8に設定して単軸圧縮破砕試験によって、多孔性食品の力−変形曲線が得られる。
【0030】
上述した、単軸圧縮破砕試験により得られた力−変形曲線から力−時間曲線の変換を行なう。その変換は供試食品の変形とプランジャー移動距離が同一であるため、プランジャーの移動速度(圧縮速度)から求めることができる。得られた力−時間曲線に対し、離散フーリエ変換(DFT)処理が施され、パワースペクトルを得る。
【0031】
本発明の多孔性食品食感評価方法において用いられる食品破砕装置を用いて一定荷重により多孔性食品の破砕を行い、音、振動、圧縮破断強度(力−変形曲線)を求める。また、本発明の多孔性食品食感評価方法において用いられるレオメータを使用して一定速度により多孔性食品の破砕を行い、音、振動を求める。なお、詳細は特開2001−133374号公報に開示されている通りである。
【0032】
本発明の多孔性食品食感評価方法においては、多孔性食品の咀嚼時に発生する音及び/又は振動を音響解析し、該音響解析により得られた数値を用いることにより多孔性食品の食感を評価することもできる。
咀嚼時に発生する音及び/又は振動を音響解析するには、コンタクトマイクにより収音する。この場合、人の頭部(喉及び首を含む)であれば、どこに設置してもよいが、好ましくは額、頭頂及び耳内部に設置することが好ましい。また、通常のマイクを用いて収音を行ってもよく、この場合、マイクを顔に近づけ、咀嚼時に発生する音を収音する。咀嚼時に発生する音及び/又は振動を収音する場合のマイク、コンタクトマイクを設置する場所の一例を図5に示す。図5において、人の顔の前部にマイクが設置されているが、顔に印をつけてある部位がコンタクトマイクの設置部である。例えば、コンタクトマイクは頭頂、額、こめかみ、喉、耳内部及び耳の後ろに設置することができる。
【0033】
本発明の多孔性食品食感評価方法においては、多孔性食品を破砕又は多孔性食品を咀嚼する際に発生する音及び/又は振動を収音して音響解析を行う。音及び/又は振動を収音する装置としては録音装置が用いられる。用いられる録音装置としては、音を評価するための試験において通常に用いられるものが使用可能である。例えば、マイクロフォン、パーソナルコンピュータ及び記録媒体からなる。マイクロフォンとはマイク及びコンタクトマイクを含み、前記マイクとは騒音計をも含む概念である。
【0034】
上記マイクとは、空気中の振動、いわゆる“音”を電気振動に変換することにより収音するものであり、騒音計を含む、コンタクトマイクとは骨や食品破砕装置等の固体を伝わる振動を測定するものである。コンタクトマイクとしては、例えば骨伝導マイクHG17A((株)テムコジャパン製)等が挙げられる。
【0035】
音及び/又は振動を収音する際に用いられるマイクロフォン等の録音装置の設置位置として、一例を挙げると、破砕又は咀嚼される多孔性食品から3〜50cm程度の距離に設置し、コンタクトマイクにより収音する際には、食品破砕装置の食品切断部分から1〜30cmの距離に装着する。マイクロフォン等の録音装置の設置位置としては、上記距離に限定されることはなく、多孔性食品破砕又は咀嚼する音を安定に収音することができる位置であればよい。
【0036】
本発明の多孔性食品食感評価方法においては、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いる。
本発明において音響解析を行うシャープネスとは、いわゆる“音の鋭さ感”のことであり、アコースティックワークステーションCF85(ノイトリックコルテクスインスツルメント社製)を用いて算出することができる。シャープネスは、周波数成分に依存する評価量であり、低周波数、高周波数間におけるスペクトルバランスを示す。
【0037】
シャープネス(S)の定義式を以下に示す。
【0038】
【数1】
【0039】
式中、N’:各臨界帯域番号(Bark)におけるラウドネス
すなわち、分母はトータルラウドネスである。
g(z):臨界帯域番号に依存する重み関数
z 臨界帯域番号
すなわち上記は、g(z)にて重みのかかったN’を臨界帯域番号軸に並べた時の重心位置を表わす。
なお、ラウドネスとは人が感じる音の大きさ、すなわち“音の大きさ感”(単位:sone)を示す。
【0040】
また、本発明において音響解析を行うラフネスとは、いわゆる“音の粗さ感”のことであり、アコースティックワークステーションCF85(ノイトリックコルテクスインスツルメント社製)を用いて算出することができる。ラフネスは、音が早く変動する際のその変動を知覚することができないために生じる粗さ感の評価量である。
ラフネス(R)の定義式を以下に示す。
【0041】
【数2】
【0042】
c 正規化係数(約0.3;信号に依存)
ri 各臨界帯域番号におけるラフネス
Δz 臨界帯域幅
ki-1 臨界帯域番号iとi-1番目とのラウドネスの時間変化の相関係数
k1 臨界帯域番号iとi+1番目とのラウドネスの時間変化の相関係数
g(z) 臨界帯域番号に依存する重み係数
m 時間包絡信号の時間変動に依存する係数
【0043】
本発明の多孔性食品食感評価方法においては、1/1、1/3、1/6、1/12オクターブ解析も使用することができる。音及び振動データを1/1、1/3、1/6、1/12オクターブ解析し、一例を挙げると、コロッケに関しては2000〜4000Hzの周波数帯域に特徴を見出した。
【0044】
本発明の多孔性食品食感評価方法においては、上記音響解析により算出した値と、多孔性食品の官能試験により求めた官能評価値とを相関分析することにより、多孔性食品の食感を評価する。
以下、官能試験について説明する。
官能試験は、パネラー10名により行なう。官能評価用紙を用いて、サクミ度合いを0〜4の5段階で採点する。次いで、パネラー10名の平均点を算出し、表1に示す判断基準に従ってサクミ度合いを評価する。平均点が3以上のものをサクミがないものと判断する。
【0045】
【表1】
【0046】
相関分析法1
食品破砕装置により多孔性食品を破砕した際に発生する音又は振動、人が多孔性食品を咀嚼した際に発生する音又は振動を、マイク又はコンタクトマイクを通じてパーソナルコンピュータに取り込み、データをシャープネス解析する。
シャープネス解析することにより、官能試験による食感の評価との間に高い相関関係を導き出すことにより、食感、特にクリスプネスについての客観的な評価が可能となる。
【0047】
相関分析法2
食品破砕装置により多孔性食品を破砕した際に発生する音又は振動、人が多孔性食品を咀嚼した際に発生する音又は振動を、マイク又はコンタクトマイクを通じてパーソナルコンピュータに取り込み、データをラフネス解析する。
ラフネス解析することにより、官能試験による食感の評価との間に高い相関関係を導き出すことにより、食感、特にクリスプネスについての客観的な評価が可能となる。
【0048】
相関分析法3
食品破砕装置により多孔性食品を破砕した際に発生する音又は振動、人が多孔性食品を咀嚼した際に発生する音又は振動を、マイク又はコンタクトマイクを通じてパーソナルコンピュータに取り込み、データを1/1、1/3、1/6、1/12オクターブ解析し、特徴ある周波数帯域の音圧暴露レベル(例:コロッケについては2000〜4000Hz)から官能試験による食感評価との間に関係を導き出す。
【0049】
相関分析4
かかる分析は比較例として行うものであるが、食品破砕装置により多孔性食品を破砕した際に発生する音又は振動、人が多孔性食品を咀嚼した際に発生する音又は振動を、マイク又はコンタクトマイクを通じてパーソナルコンピュータに取り込み、データの音圧暴露レベル(100〜20000Hz:オーバーオール音圧暴露レベル)から、官能試験による食感評価との間に関係を導き出す。
【0050】
次に、本発明の多孔性食品データ処理装置について説明する。
本発明の多孔性食品データ処理装置は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動からのシャープネス又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、該音響解析により得られた数値を用いて多孔性食品の食感を評価する手段を有することを特徴とする。
【0051】
多孔性食品の破砕、咀嚼等の用語については上述した本発明の多孔性食品食感評価方法において説明した通りである。
本発明の多孔性食品データ処理装置によれば、多孔性食品を破砕、又は咀嚼した際に発生する音及び/又は振動からのシャープネス又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、官能試験による食感の評価との間に高い相関関係を導き出すことにより、食感、特にクリスプネスについての客観的な評価が可能となる。
【0052】
次に、本発明の多孔性食品評価システムについて説明する。本発明の多孔性食品評価システムは、上述した本発明の多孔性食品データ処理装置を備えることを特徴とする。本発明の多孔性食品評価システムによれば、多孔性食品を破砕、又は咀嚼した際に発生する音及び/又は振動からのシャープネス又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、官能試験による食感の評価との間の高い相関関係を導き出すことにより、食感、特にクリスプネスについての客観的な評価が可能となる。
【0053】
次に、本発明の多孔性食品食感評価方法をコンピュータに実行させるプログラムについて説明する。本発明の多孔性食品食感評価方法をコンピュータに実行させるプログラムとは、コンピュータの動作を制御し、以上に説明した本発明の多孔性食品食感評価方法を実施するためのプログラムであり、プログラム制御されたコンピュータがプログラムにより指令され、以上に説明した本発明の多孔性食品食感評価方法を実施するためのプログラムである。
【0054】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
マッシュポテト製のパテ(20g/1個)を調製した。次いで、化工澱粉、デキストリン及び植物性タンパク質を含有するバッターを5.5〜6.5g付けた後、パン粉を付け、3Lフライヤーにキャノーラ油を3Kg入れ、180℃の温度で5分間調理してコロッケを製造した。製造したコロッケを8分間放冷した後、−35℃の急速冷凍庫にて1時間保管し、冷凍食品としての冷凍コロッケを得た。得られた冷凍コロッケを密閉式ビニール袋に入れた後、−10℃の冷凍庫中にて保存した。
【0055】
−10℃の冷凍庫中に保存した冷凍コロッケを4日、7日及び12日後に取り出し、衣中の水分含有量を測定した。また、電子レンジを用いて再加熱して加熱した後(コロッケ4個:450W、2分50秒)破砕試験及び官能試験を行った。
【0056】
コロッケの破砕試験は、図1に示す食品破砕装置を用いて行った。コロッケの破砕条件は、油圧シリンダーの抵抗により一定速度で運動する装置に、重量6kgの重りを搭載し、試料(コロッケ)に約10kgの力が加わるようにしてコロッケを破砕した。コロッケを破砕するアダプターとしては格子状の金属製パイプレンダー(図2(b)に示されるもの)を用い、コロッケを包丁で切断することを想定した測定を行った。
【0057】
測定に用いたマイクとしては騒音計(リオン(株)製NL−15)を用い、音響解析ソフト(Syntrillium社製Cool Edit2000)を使用してパーソナルコンピュータ内蔵ハードディスク内に音圧信号を収集した。データのラフネス解析を行い、その結果を表2に示す。また、同時にパネラー10名を用いた官能試験を行い、その結果を併せて表2に示す。なお、官能試験の方法については上述した通りである。なお、保存していないコロッケ(保存日数0日)についても同様に試験を行った。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例2
実施例1と同様に製造したコロッケについて同条件で破砕を行い、データをシャープネス解析した。結果、及び官能試験による結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
実施例3
実施例1と同様に製造したコロッケについて同条件で破砕を行い、データを1/12オクターブ解析し、特徴ある周波数帯域の音圧暴露レベル(2000〜4000Hz)を求めた。結果、及び官能試験による結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
比較例1
実施例1と同様に製造したコロッケについて同条件で破砕を行い、オーバーオール音圧暴露レベル(100〜20000Hz)を求めた。結果、及び官能試験による結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
次に、実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1の結果と官能評価点との相関係数を求めた。それぞれの相関係数を表6に示し、それぞれの相関を図6、図7及び図8に示す。図6は、官能評価とラフネス解析との相関を示すグラフであり、図7は、官能評価とシャープネス解析との相関を示すグラフであり、図8は、官能評価と特徴ある周波数帯域の音圧暴露レベル(2000〜4000Hz)との相関を示し、図9は官能評価とオーバーオール音圧暴露レベル(100〜20000Hz)との相関を示す図である。
【0066】
【表6】
【0067】
表3、表4及び表5、図5、図6、図7及び図8から明らかなように、実施例1、実施例2及び実施例3は、比較例1よりも高い相関を示す。従って、本発明の多孔性食品食感評価方法によれば、実際に官能試験による評価を行わなくても、多孔性食品の食感(クリスプネス)の評価を実験により行なうことが可能である。
【0068】
実施例4
実施例1と同様にコロッケを調製し、−10℃の冷凍庫中に保存した。−10℃の冷凍庫中に冷凍コロッケを7日及び12日後に取り出し、衣中の水分含有量を測定した。また、電子レンジを用いて再加熱して加熱した後(コロッケ4個:450W、2分50秒)破砕試験及び官能試験を行った。
【0069】
また、コロッケの咀嚼音をコンタクトマイクにより測定した。咀嚼音の測定部位としては人の額中央を選択し、人の額中央部にコンタクトマイクを密着させることにより咀嚼音を測定した。
【0070】
測定に用いたコンタクトマイクとしては骨伝導マイク(HG17A:(株)テムコジャパン製)を用い、音響解析ソフト(Syntrillium社製Cool Edit2000)を使用してパーソナルコンピュータ内蔵ハードディスク内に振動加速度信号を収集した。基準値を10−5m/s2として求めた振動加速度レベルを音圧レベルと見立て、ラフネス解析及びシャープネス解析を行い、その結果を表7に示す。また、同時にパネラー10名を用いた官能試験を行い、その結果を併せて表7に示す。なお、官能試験の方法については上述した通りである。なお、保存していないコロッケ(保存日数0日)についても同様に試験を行った。
【0071】
【表7】
【0072】
実施例5
実施例4と同様に製造したコロッケについて同条件で咀嚼音の測定を行い、データを1/12オクターブ解析し、特徴ある周波数帯域(700〜1000Hz)の振動加速度レベルを求めた。結果、及び官能試験による結果を表8に示す。
【0073】
【表8】
【0074】
比較例2
実施例4と同様に製造したコロッケについて同条件で咀嚼音測定を行い、オーバーオール振動加速度レベル(100〜20000Hz)を求めた。結果、及び官能試験による結果を表9に示す。
【0075】
【表9】
【0076】
次に、実施例4、実施例5及び比較例2の結果と官能評価点との相関係数を求めた。それぞれの相関係数を表10に示し、それぞれの相関を図10、図11、図12及び図13に示す。図10は、官能評価とラフネス解析との相関を示すグラフであり、図11は、官能評価とシャープネス解析との相関を示すグラフであり、図12は、官能評価と特徴ある周波数帯域(700〜1000Hz)の振動加速度レベルとの相関を示すグラフであり、図13は官能評価とオーバーオール振動加速度レベル(100〜20000Hz)との相関を示すグラフである。
【0077】
【表10】
【0078】
表7、表8、表9及び表10、図10、図11、図12及び図13から明らかなように、実施例4、実施例5の結果は、比較例2よりも高い相関を示した。従って、本発明の多孔性食品食感評価方法によれば、実際に官能試験による評価を行わなくても、多孔性食品の食感(クリスプネス)の評価を実験により行なうことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明において用いられる食品破砕装置の一例を示す斜視図である。
【図2】食品破砕部の一例を示す図である。
【図3】本発明において用いられるレオメータの一例を示す図である。
【図4】プランジャーの一例を示す図である。
【図5】コンタクトマイクを設置する場所の一例を示す図である。
【図6】官能評価とラフネス解析との相関を示すグラフである。
【図7】官能評価とシャープネス解析との相関を示すグラフである。
【図8】官能評価と特徴ある周波数帯域(2000〜4000Hz)の音圧暴露レベルとの相関を示すグラフである。
【図9】官能評価とオーバーオール音圧暴露レベル(100〜20000Hz)との相関を示すグラフである。
【図10】官能評価とラフネス解析との相関を示すグラフである。
【図11】官能評価とシャープネス解析との相関を示すグラフである。
【図12】官能評価と特徴ある周波数帯域(700〜1000Hz)の振動加速度レベルとの相関を示すグラフである。
【図13】官能評価とオーバーオール振動加速度レベル(100〜20000Hz)との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
10 食品破砕装置
11 アーム部
12 重り
13 油圧シリンダー
14 食品破砕部
16 サンプル台
30 レオメータ
31 試料台
32 ロードセル
33 プランジャー
34 コンタクトマイク
35 マイク
38 測定部
39 多孔性食品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析し、該音響解析により得られた数値を用い、官能試験による評価を行わずに多孔性食品のクリスプネスを評価することを特徴とする、多孔性食品食感評価方法。
【請求項2】
多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動からのシャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、該音響解析により得られた数値を用い、官能試験による評価を行わずに多孔性食品のクリスプネスを評価する手段を有する多孔性食品データ処理装置。
【請求項3】
多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析し、該音響解析により得られた数値と、官能試験により得られた官能評価とを相関分析することにより多孔性食品のクリスプネスを評価することを特徴とする、多孔性食品食感評価方法。
【請求項4】
多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動からのシャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、該音響解析により得られた数値と、官能試験により得られた官能評価とを相関分析することにより多孔性食品のクリスプネスを評価する手段を有する多孔性食品データ処理装置。
【請求項1】
多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析し、該音響解析により得られた数値を用い、官能試験による評価を行わずに多孔性食品のクリスプネスを評価することを特徴とする、多孔性食品食感評価方法。
【請求項2】
多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動からのシャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、該音響解析により得られた数値を用い、官能試験による評価を行わずに多孔性食品のクリスプネスを評価する手段を有する多孔性食品データ処理装置。
【請求項3】
多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を、シャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析し、該音響解析により得られた数値と、官能試験により得られた官能評価とを相関分析することにより多孔性食品のクリスプネスを評価することを特徴とする、多孔性食品食感評価方法。
【請求項4】
多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動からのシャープネス及び/又はラフネスを音響評価量として用いて音響解析を行い、該音響解析により得られた数値と、官能試験により得られた官能評価とを相関分析することにより多孔性食品のクリスプネスを評価する手段を有する多孔性食品データ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−227021(P2006−227021A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111579(P2006−111579)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【分割の表示】特願2002−61373(P2002−61373)の分割
【原出願日】平成14年3月7日(2002.3.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2001年9月11日 日本食品科学工学会第48回大会事務局発行の「日本食品科学工学会 第48回大会講演集」に発表
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【分割の表示】特願2002−61373(P2002−61373)の分割
【原出願日】平成14年3月7日(2002.3.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2001年9月11日 日本食品科学工学会第48回大会事務局発行の「日本食品科学工学会 第48回大会講演集」に発表
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】
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