説明

多孔質の針状ムライト体の作製方法

高度に多孔質な針状ムライト体が調製される。ムライト前駆体およびポロゲンを含有するグリーン体は、湿式法を用いて形成する。グリーン体を加熱して、任意のバインダー、ポロゲンを連続して除去し、次にこれを焼成する。焼成体は、ムライト化される。このプロセスにより優れた強度を有する焼成体が形成された。これは、容易に扱うことができる。ムライト化された該体は、非常に高い気孔率、小さい気孔および優れた破壊強度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年6月27日に出願した、米国仮出願第61/076,306号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、多孔質の針状ムライト体の作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
針状ムライトは、高アスペクト比の針状晶の形態をとる。これらの細長い針状晶の塊は、優れた耐温度性を特徴とする、高度に多孔質な構造を形成する。多孔質の針状ムライト体は、動力装置から放出される排気由来の煤をろ過する、微粒子トラップとして使用することができる。動力装置は、移動用または定置のものであり得る。移動用動力装置の一例は、内燃機関である。定置動力装置としては、発電装置および/または蒸気発生装置が挙げられる。多孔質の針状ムライト体は、また、自動車の触媒コンバーターにおける触媒金属の担体などの、触媒担体としても有用である。特定の触媒を坦持した多孔質の針状ムライト体は、燃焼排ガス中に含まれているNOx放出を減少させ、炭化水素の残存量および一酸化炭素を酸化させる、機械式煤フィルターとしての、さらに触媒コンバーターとしての働きなどの複数の機能を実行することができる。
【0004】
多孔質の針状ムライト体は、他の種類の化学反応における触媒のためのフィルターもしくは担体として、またはヒ素除去のためのTiOなどの収着剤の担体としても使用することができる。
【0005】
多孔質の針状ムライト体を作製する便利な方法は、アルミニウム原子およびシリコン原子の源を含有する「グリーン体(green body)」から開始する。グリーン体は、最終製品で望まれるおおよその大きさおよび形状に形造られる。バインダーを焼き飛ばし、グリーン体を焼成する。フッ素源の存在下でグリーン体を加熱することにより、(理論)実験式がAl(SiO)Fのフルオロトパーズ(fluorotopaz)化合物を形成することができる。フルオロトパーズ化合物を、次に、熱分解して、(理論)実験構造が3Al・2SiOのムライトを形成することができる。このように形成したムライト結晶は、互いにつながった針状晶の塊の形態をとる。針状晶は、通常、最大約25ミクロンの平均直径を有する。互いにつながった針状晶は、多孔質構造を形作る。生成物の大きさおよび形状は、出発グリーン体のものにかなり近い。
【0006】
これら針状ムライト体の気孔率(porosity)は、大変重要である。ムライト体の多くの用途では、該体を通してガスまたは液体を流すことが必要である。気孔率がより高いと、該体を通る所与の流体の流量を確立するために必要な運転圧力を低減させる。ムライト体が、触媒または収着剤などのある種の機能材料の担体として働くケースでは、気孔率がより高いと、該体の運搬能力を高める傾向があり、該体上にいっそう多くの機能材料を担持することを可能にする。
【0007】
しかし、気孔径もまた重要である。気孔径があまり大きくなりすぎると、ムライト体は、フィルターとしての効率が悪くなる。触媒または収着剤用途においては、大きな気孔では、該体を通って流れる試薬が触媒または収着剤と接触しない可能性が生じる。加えて、気孔径が大きくなると、該体の機械的完全性がしばしば低下する。該体が、通常の取扱いおよび使用中に遭遇する機械的応力ならびに熱応力に耐え得るために、良好な機械的完全性は明らかに重要である。実際問題として、気孔率が60%より高いムライト体(ならびに他のセラミック体)は、受け入れ難いほど大きな気孔を有する傾向があり、これは、ろ過効率および物理的強度の喪失をもたらす。平均気孔径を50ミクロン以下に維持することが一般に望ましい。
【0008】
針状ムライト体は、軽度に圧縮した乾燥粉末を使用してグリーン体を形成することにより、約80%ほどの気孔率で製造されてきた。低加圧法により、グリーン体を低密度で形成することが可能になり、これは、グリーン体をムライトに変換すると高い気孔率につながる。低加圧法にある問題は、この方法は、非常に単純な形状の部品を作るためだけに使用できることである。加えて、加圧法は、概して比較的小さな部品にだけ役立つ。ほとんどの針状ムライト部品は、いくらか複雑な形状であることが必要とされ、これらの部品は若干大きくなり得る。より高圧で加圧する方法は、気孔率が50から70容積パーセントの範囲にあるムライト体を製造できるが、これらの方法もまた、単純な形状のより小さな該体を作ることに限定してしまう。
【0009】
大きなグリーン体、およびこれらのより複雑な形状のグリーン体は、単純な加圧法よりむしろ湿式法を用いて製造しなければならない。押出成形法および射出成形法は、これらのケースで通常用いられるが、スリップキャスティングおよびテープキャスティングもまた有用である。湿式法では、非常に低い密度でグリーン体を製造することはできないので、結果として、得られる針状ムライトの気孔率は約60容積パーセントを超えることはほとんどない。
【0010】
ポロゲンは、多孔質体を製造するためにいくつかのセラミック系で使用される。しかし、ムライト化プロセスの性質は、ポロゲンの使用を思いとどまらせる。ムライト製造は、グリーン体を形成し、バインダーを焼き飛ばす多ステップのプロセスである。プロセスのこの段階における該体は、非常に脆く、扱うのが難しい。グリーン体中にポロゲンを添加すると、構造をさらに脆くさせるだけであり、しかもクラックや他の欠陥を持ち込んでしまう恐れがある。他のセラミック材料では、グリーン体を扱う前に焼成することにより、この問題はいくらか改善される。焼成により隣接するセラミック粒子間で架橋が形成され、これらの架橋は、該体をより容易に扱うことを可能にするほど構造を強化する。しかし、ムライトでは、従来のプロセスにおける約1100℃を超える温度での焼成が、その後のムライト化ステップ中で、アペクト比の大きい結晶を成長させる能力に悪影響を与えるという、固有の課題が提示される。より低温の焼成では、該体の著しい強化が得られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、より大きく、より複雑な針状ムライト体で高気孔率を達成するため、および湿式法によって製造されるグリーン体から出発して、高気孔率を達成するためには、まだ問題が残っている。該体は、また、クラックまたは他の欠陥を最小にして形成する必要もあり、ムライト化プロセスの前には、容易に扱うことができる十分な機械強度であることが必要である。加えて、そのような高度に多孔質の該体は、ムライト化後に小さい気孔、良好な機械強度を有し、多くの最終用途では、急激な温度変化によって引き起こされる熱衝撃に対する良好な抵抗性を有していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、1つの態様において、針状ムライト体を作製する方法に関する。該方法は、
a)液体(複数可)およびバインダー(複数可)を除く全成分を基準として5から60重量パーセントの、アルミニウム原子の源およびシリコン原子の源、体積平均の有効粒子径(volume average effective particle size)が1から50ミクロンのポロゲン粒子の源、少なくとも1つの液体および任意選択でバインダーを含む成分から粘着性の塊を形成するステップと、次に、
b)粘着性の塊をグリーン体に成形するステップと、
c)実質的にフッ素含有ガスがない雰囲気下で、バインダーが存在する場合、これを連続して除去するのに十分な温度までグリーン体を加熱し、次に、ポロゲン粒子を気体に変換させ多孔質のグリーン体を生成するステップと、次に、
d)実質的にフッ素含有ガスがない雰囲気下で、1100℃から1400℃の間の温度で多孔質のグリーン体を焼成し、多孔質の焼成体を形成するステップと、次に
e)フッ素含有化合物を含む雰囲気の存在下で、焼成体中のアルミニウム原子の源およびシリコン原子の源がフッ素含有化合物と反応してフルオロトパーズを形成するように、ある温度まで多孔質の焼成体を加熱するステップと、次に、
f)800℃を超える温度まで該体を加熱してフルオロトパーズを分解し、多孔質の針状ムライト体を形成するステップと
を含む。
【0013】
この方法は、非常に高い気孔率と小さい気孔径を有する多孔質の針状ムライト体を作製するために、有用である。平均気孔径は、典型的には50ミクロン未満であり、1ミクロンほど小さくすることができる。平均気孔径は、好ましくは、5から40ミクロンであり、より好ましくは、10から25ミクロンであるが、気孔径は、様々な径のポロゲンを使用することにより、ある程度まで変化させ得る。加えて、この方法では、クラックまたは他の欠陥の非常に少ない該体が製造される。
【0014】
本発明の大変驚くべき特徴は、ムライト前駆体の高アスペクト比の針状晶を形成する能力を損なうことなく、グリーン体を高温において焼成できることである。このことは、ムライト系で以前に観察されたことに反している。グリーン体を焼成できることは、該体のより高い破壊強度(fracture strength)の獲得を可能にする。破壊強度は、ASTM 1161の4点曲げ試験によって測定すると、典型的には、気孔率が70から85%においてさえ3MPa以上である。焼成体の破壊強度は、本明細書において、場合により「焼成強度」と称す。良好な焼成強度により、焼成部品を容易に扱うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で製造される針状ムライト体は、また、良好な破壊強度を有しており、ASTM 1161の4点曲げ試験によって測定すると、気孔率が70から85%においてさえ、しばしば10MPaである。
【0016】
本発明の方法は、大きな体(外のり寸法で定めた体積が、少なくとも13.5立方インチ(220cm)、好ましくは、少なくとも96立方インチ(1575cm)およびさらに好ましくは、少なくとも216立方インチ(3540cm)のものなど)、および/またはハニカムなどの複雑な形状の体を作製するのに特に有用である。
【0017】
別の態様では、本発明は、気孔率が70から85%の気孔率であり、焼成強度が少なくとも3MPaである、多孔質のムライト前駆体の焼成体である。
【0018】
別の態様では、本発明は、気孔率が少なくとも70容積パーセント、体積平均の気孔径が50ミクロン以下および破壊強度が少なくとも10MPaの多孔質の針状ムライト体である。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、触媒活性材料の付着前では、気孔率が少なくとも70容積パーセント、平均気孔径が50ミクロン以下および破壊強度が少なくとも10MPaである多孔質の針状ムライト体に付着した、少なくとも1つの触媒活性材料または収着剤を含む、触媒または収着剤で被覆された針状ムライト担体である。
【0020】
グリーン体は、少なくとも一部にアルミニウム原子の源およびシリコン原子の源を含む。適当なアルミニウム原子およびシリコン原子の源としては、WO92/11219、WO03//082773およびWO04/096729に記載されているような材料が挙げられる。単一の材料が、アルミニウム原子およびシリコン原子の両源として働いてもよい。適当な前駆体材料の例としては、粘土などの種々の水和ケイ酸アルミニウム、ならびにアルミナ、シリカ、三フッ化アルミニウム、種々のゼオライトおよびムライト自体さえ挙げられる。グリーン体は、例えば、ケイ酸アルミニウム粘土とアルミナの混合物を含有してもよい。あるいは、グリーン体は、三フッ化アルミニウムと、二酸化ケイ素と、任意選択でアルミナとの混合物を含有してもよい。
【0021】
グリーン体は、アルミニウム原子およびシリコン原子を、シリコン原子1モルにつきアルミニウム原子1から約4のモル比で含有するべきである。ムライトの理論組成では、アルミニウム原子およびシリコン原子を、3:1の比で含有し、実験式が3Al・2SiOである。しかし、ムライト結晶は、異なるアルミニウム対シリコン比で生じることができる。WO03/082773に記載されているように、グリーン体中のシリコン原子に対するアルミニウム原子の比は、2から2.95でもよい。あるいは、シリコン原子に対するアルミニウム原子の比は、2から4または2.5から3.5でもよい。
【0022】
アルミニウム原子およびシリコン原子の源は、適切には、存在し得るポロゲン粒子および任意のバインダーを除いて、グリーン体の55から約95重量パーセントを占める。
【0023】
アルミニウムおよびシリコン原子の源は、任意の好都合な粒子径を有し得る粒子の形態で提供される。これらの粒子は、10ナノメートルほどの小さいまたは約50ミクロンほどの大きい有効粒子径を有し得る。好ましくは、これらの粒子は、少なくとも100ナノメートルの直径、より好ましくは、少なくとも500ナノメートルの直径を有し、最大で30ミクロン、好ましくは最大10ミクロンの直径を有す。本明細書にわたって用いられる「有効」粒子径は、凝集していなければ一次粒子自体の径であり、または凝集粒子の形態にある場合は凝集粒子の径である。
【0024】
グリーン体は、また、ポロゲン粒子も含有する。ポロゲン粒子は、存在し得る任意のバインダーおよび液体を除いて、グリーン体の約5から約60重量パーセントを占めるべきである。ポロゲン粒子は、任意のバインダーまたは液体を除いて、グリーン体の重量の少なくとも10、少なくとも20または少なくとも30%を占め得る。ポロゲン粒子は、任意のバインダーを除き、グリーン体の重量の最大50%、より好ましくは最大40%を占め得る。
【0025】
ポロゲン粒子は、体積平均の有効粒子径が、少なくとも1ミクロン、好ましくは少なくとも3ミクロン、より好ましくは少なくとも5ミクロンであり、最大50ミクロン、好ましくは最大40ミクロン、より好ましくは最大25ミクロンおよびさらにより好ましくは最大10ミクロンであるべきである。ポロゲン粒子は、アルミニウムおよびシリコンの源の粒子径に近い大きさを有し得る。ポロゲン粒子の少なくとも80容積パーセントは、有効粒子径が1から50ミクロンの間であるべきである。より好ましくは、ポロゲン粒子の少なくとも80容積パーセントは、有効粒子径が3から25ミクロンの間であるべきである。さらにより好ましくは、粒子の少なくとも90容積パーセントは、有効粒子径が3から10ミクロンの間であるべきである。この文脈における粒子径は、粒子の最も長い寸法を示す。粒子は、好ましくは、アスペクト比(最短寸法で割った最長寸法)が10未満、より好ましくは、5未満、さらにより好ましくは、2未満である。
【0026】
ポロゲン粒子は、1100℃を下回る昇温において気体生成物(複数可)に変換する材料から作製される。バインダーが使用される場合、好ましいことであるが、ポロゲン粒子は、バインダーを除去するために必要な温度よりも高い温度で気体になる。ポロゲン粒子は、少なくとも400℃、好ましくは少なくとも700℃の温度まで、しかし1000℃を超えない、好ましくは900℃を超えない温度まで上げた場合、好ましくは気体生成物になる。ポロゲン粒子は、例えば、昇華、熱分解、または酸化などの1つまたは複数の化学反応を経由して、気体になることができる。酸化反応の場合、ポロゲンの除去は、空気、酸素富化空気または酸素などの酸化雰囲気中で行われる。他の場合では、ポロゲン粒子は、昇華または熱分解し得るが、この場合、雰囲気は、ポロゲン除去の条件下で他の出発材料と反応しない任意の気体または気体混合物とすることができる。
【0027】
好ましいポロゲンは、炭素粒子またはグラファイト粒子である。上記の粒子径の炭素粒子およびグラファイト粒子は、多くの供給源から市販されている。好適な炭素粒子およびグラファイト粒子の適当な供給源の1つは、Asbury Carbons,Inc.、Asbury、New Jerseyである。炭素粒子またはグラファイト粒子は、好ましくは、炭素含有量が、少なくとも80重量%、より好ましくは、少なくとも90重量%、さらにより好ましくは、少なくとも95重量%、およびさらにより好ましくは、少なくとも98重量%である。
【0028】
グリーン体は、焼結助剤、種々の不純物、特に自然粘土の出発材料由来の不純物、またはWO04/096729に記載されている特性増進性化合物(property−enhancing compound)などの他の様々な材料を含有し得る。特性増進性化合物は、Mg、Ca、Fe、Na、K、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、B、Y、ScおよびLaの1つまたは複数の酸化物、または空気中で加熱すると酸化物を形成する前述の1つまたは複数の化合物である。酸化物ではない場合、特性増進性化合物は、例えば、塩化物、フッ化物、硝酸塩、塩素酸塩、炭酸塩もしくはケイ酸塩または酢酸塩などのカルボン酸塩であり得る。より好ましい化合物は、Nd、B、Y、Ce、Feおよび/またはMgの化合物である。とりわけ好ましい特性増進性化合物は、タルクなどの水和ケイ酸マグネシウムである。別の好ましい特性増進性化合物は、Nd、Ce、Feおよび/またはBの化合物とMg、Ca、Y、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Scおよび/またはLaの化合物との混合物である。特性増進性化合物がケイ素を含有する場合(ケイ酸塩の場合など)、特性増進性化合物により提供されるケイ素の量を、グリーン体中のアルミニウム−ケイ素の比を計算する際に、考慮に入れなければならない。特性増進性化合物は、適切には、存在し得る任意のバインダーまたは液体を除いて、グリーン体の重量の少なくとも0.01、好ましくは、少なくとも0.1、より好ましくは、少なくとも0.5、およびさらにより好ましくは、少なくとも1%を占める。特性増進性化合物は、グリーン体の重量の12%程度まで占めてもよいが、好ましくは、任意のバインダーまたは液体を除いて、グリーン体の重量の最大10、より好ましくは、最大約5、およびさらにより好ましくは、最大2%を占める。
【0029】
液体は、100℃以下、好ましくは、50℃以下、さらにより好ましくは、25℃以下の温度で液体であり、成形可能で粘着性の塊が形成されるのに足るだけ他の成分をぬらす任意の材料である。水が好ましいが、他の材料をぬらすならば他の有機液体を使用することができる。液体は、他の成分を溶解させるべきではない。液体の全てまたはその一部は、また、グリーン体を形成するために使用し得るバインダーの溶媒または分散剤として機能することもできる。
【0030】
出発材料は、一緒に混合されて、以下、場合により「ウェットミックス(wet mix)」と称する成形可能な粘着性の塊を形成する。「粘着性」とは、ウェットミックスの成分が一緒にくっつき、粘性で流動性の塊を形成することを意味する。「成形可能」とは、粘性で流動性の材料である混合物が、軽度または適度の力を加えた下で分解することなく流動でき、それゆえ加圧により様々な形状に形成できることを意味する。
【0031】
バインダーは、グリーン体が焼成されるまで出発材料の粒子を一緒に結合するのに役立つように他の材料と共に混合してもよく、また好ましくは混合される。バインダーは、ポロゲンを除去するために必要な温度より低い温度で、グリーン体から熱的に除去できる材料である。バインダーは、昇華、熱分解および/または酸化などの他の化学反応を受けることにより、熱的に除去することができる。バインダーは、好ましくは、400℃以下、好ましくは、350℃以下の温度で熱的に除去できる。
【0032】
バインダーは、好適には、水または他の溶媒に溶解され得る有機ポリマーである。バインダーの好ましい種類は、水溶性有機ポリマー、特に、水溶性セルロースエーテルである。バインダーは、一般に、グリーン体全体にわたって非常に細かく分散または分配される。一般に、バインダーは、グリーン体の重量の約1%から約7%までを占めてもよい。より好ましい量は、約2から5重量パーセントである。バインダーが微粒子の形態である場合、バインダーは、針状ムライト体の気孔率に僅かに貢献し得る。
【0033】
ウェットミックスは、次に、所望の塊、形状および寸法のグリーン体に形成される。ウェットミックスをグリーン体に成形するために有用な任意の方法を、用いることができる。好ましい方法としては、射出成形、押出成形、スリップキャスティングおよびテープキャスティングなどが挙げられる。そのような好適な方法は、Introduction to the Principles of Ceramic Processing、J.,Reed、20および21章、Wiley Interscience、1988年に記載されている。
【0034】
針状ムライト体の寸法は、通常、グリーン体の寸法にぴったり合うことになる。その理由で、グリーン体は、通常、針状ムライト製品で所望される形状および寸法に形成される。グリーン体は、典型的には、理論密度の約40%から70%である。理論密度は、グリーン体の様々な成分の密度およびこれらそれぞれの重量分率から決定される。
【0035】
グリーン体は、バインダーおよびポロゲンを連続して除去するために加熱される。「連続して」とは、単に、バインダーがポロゲンの除去に先立って除去されることを意味する。ほとんどの場合、バインダーは、ポロゲンが除去される温度よりも低い温度で除去されることになる。バインダーおよびポロゲンは、最初にグリーン体を、バインダーは気体に変換されるがポロゲンは気体にならない温度まで加熱すること(およびバインダーが酸化反応を介して除去される場合の酸化雰囲気の存在などの、他の必要な条件)により連続して除去される。この温度は、好ましくは400℃以下である。好ましい温度は、300℃から400℃である。存在し得る押出成形用の有機添加剤もまた、このステップ中に除去される。
【0036】
バインダーが除去された後に、グリーン体は、ポロゲン粒子が昇華または反応する温度および他の条件にさらされ、結果として、ポロゲン粒子は、1つまたは複数の気体副産物に変換される。この間の温度は、ほとんどの場合、バインダーが除去されるときよりも高い温度となる。ポロゲン粒子は、好ましくは、溶融することなく、固体状態から1つの気体または複数の気体に直接変換される。気体副産物は、出発材料の隣接粒子間の小さな間隙を通って、直ちにグリーン体から放散される。以前のように、ポロゲンが酸化反応を経由して気体に変換される場合、このステップでは、酸化雰囲気が存在する。しかし、ポロゲンがあまり急速に除去されるのを防ぐため、(空気と比較して)酸素の減少した環境を、このステップで用いることができる。これにより、クラックおよび他の欠陥の形成を防ぐことができる。このステップ中の温度は、概して400℃よりも高く、好ましくは、700℃よりも高い。このステップ中の温度は、1100℃を超えず、好ましくは、1000℃を超えず、さらにより好ましくは、900℃を超えない。
【0037】
固体ポロゲン粒子の気体への変換により、グリーン体において、ポロゲン粒子の位置に気孔が生じる。この気孔は、ポロゲンを除去する前のポロゲン粒子のおよその大きさおよび形状である。したがって、ポロゲン除去ステップでは、直径がおよそ1から50ミクロン、好ましくは、5から40ミクロン、より好ましくは、10から25ミクロンの気孔を有する多孔質体が生じる。ポロゲン粒子が気体に変換され、グリーン体から抜けるので、ポロゲン除去ステップでは、グリーン体の密度の減少が付随して起こる。ポロゲン粒子が除去されると、該体の密度は、使用されるポロゲンの量により理論密度の約15%から50%となり得る。ポロゲン除去ステップ後の密度は、好ましくは、理論密度の35%以下、さらにより好ましくは、30%以下である。最も好ましくは、ポロゲン除去ステップ後の密度は、理論密度の20から30%である。
【0038】
バインダーおよびポロゲンの個別除去により、これらのステップ中にグリーン体において形成するクラックおよび他の欠陥の量が減少される。本発明は、いかなる理論にも制約されないが、バインダーおよびポロゲンの除去には、該体の温度の急激で局所的な変化が生じ得る発熱過程、主に酸化が関与していると考えられる。これは、該体内部で著しい温度差をもたらし、さらには、不均一または急激な熱膨張を招き、クラックまたは他の欠陥が生じかねない。バインダーおよびポロゲンの除去を個別にすることは、部品内で局在化した温度差が進む程度を低くし、それにより、不均一もしくは急激な熱膨張または熱収縮により引き起こされるクラックおよび他の欠陥の量を減少させると考えられる。
【0039】
多孔質のグリーン体は、次に、少なくとも1100℃、最大1400℃の温度まで加熱することにより焼成される。少なくとも1150℃の温度が好ましく、少なくとも1200℃の温度がより好ましい。好ましい温度は、最大1350℃、特に最大1300℃である。焼成ステップは、該体の破壊強度を増加させるのに十分な長さの時間行われる。必要な時間は、部品の大きさおよび気孔率にある程度左右されることになる。典型的には、15分から5時間で十分である。より典型的には、約30分から3時間が必要である。特に好ましい焼成時間は、45分から2時間である。
【0040】
該体は、焼成ステップ中に破壊強度を増加させる。このことは、主に、出発材料がいくらか焼結されることによると考えられる。このステップでは、多少のフルオロトパーズが形成することもあり、またはムライトの形成さえ起こり得るが、これは、フッ素含有ガスの不在が原因ではないようである。焼成ステップ後の焼成体は、気孔率が70から85%であっても、好ましくは、破壊強度が少なくとも3MPa、より好ましくは、少なくとも5MPaである。
【0041】
バインダー除去、ポロゲン除去および焼成ステップ中の雰囲気は、空気、酸素、窒素または不活性ガスであり得る。空気が好ましい。しかし、これらのステップ中の雰囲気は、この段階におけるフルオロトパーズの形成を最小にするために、本質的にフッ素含有ガスを欠くべきである。焼成ステップ中の圧力条件は、大気圧、低大気圧または超大気圧である。
【0042】
焼成体の気孔率および気孔径は、ポロゲン除去後であるが焼成前のグリーン体のものに近くなる傾向がある。気孔率は、好ましい場合、70から85%であり、体積平均の気孔径は、好ましくは、約50ミクロン以下である。
【0043】
焼成体は、別のステップでムライトへ変換される状態にある。ムライトは、アルミニウムおよびシリコン原子の出発源が反応してフルオロトパーズを形成し、次に分解してムライトを形成する、2ステップの反応で生じる。これらの反応は、多孔質のグリーン体を用いて開始する当技術分野で既知の方法を含む、任意の簡便な方法で行うことができる。WO92/11219、WO03/082773およびWO04/096729に記載されているような多孔質の針状ムライト体の作製方法は、概してここで適用可能である。
【0044】
グリーン体は、フッ素含有化合物を含むプロセスガスの存在下で加熱することにより、フルオロトパーズに変換される。フッ素含有化合物は、好適には、SiF、AlF、HF、NaSiF、NaF、NHF、またはこれらの任意の2つ以上のある種の混合物である。SiFが好ましい。典型的には、真空下、または窒素もしくは希ガスなどの不活性雰囲気下で、少なくとも500℃の温度に到達するまで、グリーン体を加熱することが好ましい。その後、フッ素含有化合物は加熱炉に送られ、少なくとも700℃、最大約950℃の温度が達成されるまで加熱が続行される。
【0045】
好ましいプロセスでは、フルオロトパーズ形成ステップ中のプロセス温度は、800℃を超えない。これにより、たとえプロセスガス中にフッ素含有化合物が存在していても、800℃ほどの低い温度で起こり得るムライト形成の分解反応と個別に、フルオロトパーズ形成反応を行うことが可能になる。
【0046】
フルオロトパーズ形成反応中のプロセスガスは、フッ素含有化合物を最大100%含有してもよいが、フッ素含有化合物を80から99重量%、特に、85から95重量%含み、残りは、出発材料に含まれる不純物、またはフルオロトパーズ形成もしくはムライト形成反応から生成される種々の気体生成物および副生成物である混合物を使用することが、より実際的である。
【0047】
プロセスガスの流量は、フルオロトパーズ形成ステップ中に、加熱炉内で確立してもよい。これにより、そこから使い切ってしまうことがあり得る炉の区域にフッ素含有化合物を補給することによって、一緒に処理される個々のグリーン体間で、およびいくつかのケースでは単一のグリーン体内でさえ、より均一な反応速度が促進される。
【0048】
加熱炉(または、閉区域)内のフッ素含有化合物のこの反応全体にわたる分圧は、所望のレベルに調整または維持させることができる。このことで、さらに、反応速度をいくらか制御することができ、同様に、フルオロトパーズ形成ステップ中のグリーン体(複数可)の温度を制御することが可能になる。
【0049】
フルオロトパーズは、分解して、多孔質体の針状ムライト結晶を形成する。フルオロトパーズは、分解すると同時に、四フッ化ケイ素を遊離する。この過程は、吸熱反応である。分解反応は、約800℃ほどの低い温度で起こり得る。フッ素源が存在する条件では、約900℃までのある温度で、フルオロトパーズ形成反応およびフルオロトパーズ分解反応の両反応が起こり得る。しかし、これらの反応が同時に起こるよりも連続して起こるような条件を選択することが好ましい。したがって、フルオロトパーズ分解ステップ中の温度は、好ましくは、少なくとも1000℃であり、1700℃ほどの高さでもよい。より好ましい温度は、少なくとも1050℃または少なくとも1100℃である。好ましい温度は最大で1500℃、より好ましい温度は最大1200℃であり得る。
【0050】
フルオロトパーズ分解反応は、一般に、非酸化雰囲気中で行われる。このステップ中、フッ素含有化合物がプロセスガス中に存在し得るが、この化合物の分圧は、有利には、755mmHg以下である。フッ素含有化合物の分圧は、任意のより低い値であり得る。フッ素含有化合物のない雰囲気を使用することも、また可能である。このステップ中に形成されるムライト針状晶の大きさを制御するために、フッ素含有化合物の分圧をプロセス変数として用いることができる。プロセスガスは、このステップ中、流れていても静止していてもよいが、流動環境では、フッ素含有化合物の高濃度の局在化を低減したり解消するある種の利益が得られ得るが、これは、フルオロトパーズ分解反応を遅くする恐れがある。
【0051】
フルオロトパーズ分解反応の完了後、該体を、フッ素含有化合物のない、好ましくは空気中で加熱し、存在し得る残余のフッ素を除去してもよい。
【0052】
フルオロトパーズが分解してムライトを形成すると、互いにつながった針状の結晶の塊が生成される。非常に驚くべきことに、この構造が高度に多孔性である場合、焼成ステップでは、その後のアスペクト比の高いムライト粒子の成長に対する悪影響が、僅かであるかまたは全く無い。これは、焼成ステップではその後のムライト結晶の成長に著しい悪影響がある、(最大約60%の気孔率などの)より低い気孔率のケースで見られる影響とは異なる。この結晶は、主に、結晶ムライトを含むが、僅かな量の他の結晶相および/またはガラス相が存在することも可能である。例えば、結晶は、WO03/082773に記載されているように、クリストバル石などの結晶シリカ相を最大約2容積パーセント含有してもよく、あるいは以前に記載した焼結助剤および/または特性増進性化合物によりもたらされる、ケイ素および/またはアルミニウムならびに1つまたは複数の金属を含有し得る酸化物ガラス相を、最大約10容積パーセント含有してもよい。
【0053】
針状ムライト結晶は、接点で共に結合し、本質的にグリーン体と全体的に同じ形状および寸法を有する多孔質の塊を形成する。ムライト結晶のアスペクト比は、典型的には、少なくとも5、好ましくは、少なくとも10、より好ましくは、少なくとも20である。結晶は、平均粒子径が5から50ミクロンであり得る。
【0054】
針状ムライト体の気孔率は、焼成前のグリーン体に存在するポロゲンの量に応じて変動することになる。非常に低いレベルのポロゲン粒子が使用される場合、本発明のプロセスで製造される針状ムライト体では、気孔率は、50容積パーセントほどの小ささであり得るが、より典型的な場合、気孔率は少なくとも60容積パーセントである。ポロゲン粒子のレベルがより高いと、気孔率の増加をもたらす傾向がある。この気孔率は、80〜85容積パーセントと同程度になり得る。本発明に従って作製される好ましい針状ムライト体は、気孔率が70から85容積パーセント、より好ましくは、75から82容積パーセントである。従来の方法を用いて、グリーン体をポロゲンなしでウェットミックスから調製する場合、このような高い気孔率を得るのは、これまで不可能ではないにしても大変困難であった。
【0055】
針状ムライト体に存在し得る巨視的な開口部、溝または間隔は、「気孔」として、または該体の気孔率に寄与しているとは考えない。本発明の目的に関して、巨視的な開口部は、少なくとも500ミクロンの直径または最小寸法を有するものであると考える。したがって、針状ムライト体の形成中か形成後のどちらかに針状ムライト体中に作られる、例えば、溝、穴、開口部または他の巨視的な特徴は、本発明の目的の気孔と見なされない。ハニカム構造内の溝は、本発明の目的の気孔ではない。
【0056】
本発明に従って製造される針状ムライト体は、所与の気孔率において、優れた破壊強度を持つ傾向がある。破壊強度は、気孔率と反比例して変化する傾向がある。本発明で製造される針状ムライト体は、気孔率が80から85容積パーセントであり、ASTM−1161に準じた4点曲げ試験を用いて測定した破壊強度が、しばしば10MPaである。本発明を用いた低多孔性の針状ムライト体は、破壊強度がより高くなる傾向があり得る。本発明で達成される優れた破壊強度により、その他の場合に使用され得るものより高気孔率の針状ムライト体が、使用できるようになり得る。気孔率がより高いと、操業中に見られる圧力損失がより少ないので、多くのろ過および触媒用途において、明白な利点がある。あるいは、より高い気孔率は、ムライト体の全域で等価な圧力損失を保持しながら、触媒などの機能材料をムライト体により多く担持させることができる。
【0057】
本発明に従って作製される針状ムライト体の材料としての耐熱衝撃性も、この高い気孔率によりまた極めて良好である。材料としての耐熱衝撃性は、気孔率と共に増加する傾向があり、約80%の気孔率における耐熱衝撃性は、典型的には、気孔率が約60%しかない場合よりも50〜75%高い。したがって、本発明により、極めて良好な耐熱衝撃性を有する針状ムライト体を作製する方法が提供される。
【0058】
本発明に従って作製される針状ムライト体の平均気孔径は、極めて小さくなる傾向がある。体積平均の気孔径は、典型的には、50ミクロン未満、好ましくは、5から40ミクロンであり、しばしば10から25ミクロンの間である。気孔径は、水銀ポロシメトリーを用いて測定される。
【0059】
本発明に従って作製される針状ムライト体は、様々なろ過用途および/または様々な種類の機能材料(その中では、触媒が特に興味深い)の担体として有用である。ムライト体の熱安定性は、これを、移動用または定置の動力装置から出る排ガスを処理する目的などの、高温用途に良く適したものにさせる。
【0060】
針状ムライト体は、(移動用または定置の)動力装置の排ガスの微粒子状物質を除去するために、微粒子フィルターとして使用できる。この種類の具体的な用途は、内燃機関、特にディーゼルエンジン用の煤フィルターである。
【0061】
機能材料は、様々な方法を用いて針状ムライト体に塗布できる。機能材料は、有機物または無機物である。金属および金属酸化物などの無機機能材料は、これらの多くが、望ましい触媒特性を有し、収着剤として機能し、または他の必要とされるある種の機能を発揮するので、特に興味深い。金属または金属酸化物を針状ムライト体上に取り入れる1つの方法は、金属の塩溶液または酸溶液を該体に含浸させ、次に、加熱または別の方法で溶媒を除去し、必要ならば焼成または他の方法で塩もしくは酸を分解して、所望の金属または金属酸化物を形成することによる。
【0062】
したがって、触媒材料または収着剤材料を付着させることができる表面積をより広く得るために、例えば、アルミナ被覆または別の金属酸化物の被覆を塗布することが多い。針状ムライト体をコロイド状アルミナに含浸させ、次に、典型的には、含浸針状ムライト体にガスを通すことにより乾燥させて、アルミナを付着させることができる。必要ならばこの手順を繰り返して、所望の量のアルミナを付着させることができる。チタニアなどの他のセラミック被覆を、類似方法で塗布することができる。
【0063】
針状ムライト体(好ましくは、アルミナまたは他の金属酸化物で被覆される)を、例えば、硝酸白金、塩化金、硝酸ロジウム、硝酸テトラアミンパラジウム、ギ酸バリウムなどの金属の可溶性塩に含浸し、続いて乾燥させ、好ましくは焼成することにより、バリウム、白金、パラジウム、銀、金などの金属を、針状ムライト体に付着させることができる。動力装置の排気流の触媒コンバーター、特に車両用のものは、この方法で、針状ムライト体から製造することができる。
【0064】
針状ムライト体上に種々の無機材料を付着させる適当な方法は、例えば、US205/0113249およびWO2001045828に記載されている。
【0065】
特に好ましい実施形態では、アルミナと白金、アルミナとバリウム、またはアルミナとバリウムと白金とを、1つまたは複数のステップで針状ムライト体に付着させて、車両エンジン由来などの動力装置の排気由来の煤、NOx化合物、一酸化炭素および炭化水素などの微粒子の除去を、同時にできるフィルターを形成することができる。
【0066】
本発明を例示するために、以下の実施例を提供するが、本発明の範囲を制限することを意図していない。全ての部および割合は、特段の指示の無い限り重量表示による。別に規定しない限り、本明細書で表現される全ての分子量は、重量平均分子量である。
【0067】
実施例1〜4および比較例A
比較例Aは、以下の基本配合物から調製する。
【0068】
【表A】

【0069】
これらの成分を混合してウェットミックスにし、これを押し出してグリーン体を形成する。グリーン体の寸法は、13mm×1.8mm×75mmである。グリーン体の重量は、およそ2グラムである。
【0070】
バインダーが焼き飛ぶようにグリーン体を加熱し、次に、ポロゲン粒子を除去し、次に、該体を1100℃で2時間焼成する。次に、焼成体を別の炉に移し、ムライトへ加工する。
【0071】
得られる針状ムライト体は、気孔率が約56%である。
【0072】
実施例1は、(1)ウェットミックス中に、15重量部の炭素粒子(Asbury 4023、Asbury Carbons,Inc.、粒子径4〜7.5ミクロン)もまた含めること、および(2)混合物をグリーン体に成形後、炭素粒子を空気中で1065℃に2時間加熱することにより焼成することを除き同様な方法で調製する。得られる針状ムライト体は、気孔率が約63%である。
【0073】
実施例2〜4は、炭素粒子をそれぞれ30、45および60重量部使用して、実施例1と同様な方法で調製する。実施例2〜4の気孔率は、それぞれ70%、75%および81%である。
【0074】
破壊強度は、実施例1〜4および比較サンプルAの各々について、ASTM 1161に準じて測定する。材料としての耐熱衝撃性は、サンプルの破壊強度および弾性率に基づいて計算する。結果は、表1に示したとおりである。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例5
実施例1で記載した一般的な方法で作製した、気孔率が64〜75%の範囲にある6つの針状ムライト体。部品寸法は、0.75in×0.75in×3in(18×18×76mm)である。前面または後面上で、交互に流路を目封じして、各面上に目封じの格子状パターンを作り出すことにより、該体をディーゼル微粒子フィルターに加工する。目封じした該体5つを、別々にコロイド状アルミナ溶液(20%Al、Alfa Aesar)で飽和する。余分な溶液は、振盪することにより溝から除去する。該体が乾燥するまで、流量を100リットル/分に徐々に増加させ、飽和した該体を通して空気を流す。いくつかのケースでは、含浸および乾燥ステップを繰り返して、部品に担持するアルミナを増加させる。乾燥した該体は、空気中で500℃で1時間焼成する。6つ目の該体は、含浸せずに対照として使用する。
【0077】
6つのサンプルの気孔率およびアルミナ担持量(それぞれ、実施例5−1から実施例5−6として表わす)は、表2に示したとおりである。各微粒子フィルターの外面は、絶縁用テープにきっちりとくるむことによって密封する。流量100リットル/分で、実施例5−1から5−6の各々を通して空気を流し、それぞれのケースにおいて、部品にわたる圧力損失を測定する。結果は、表2に示したとおりである。
【0078】
【表2】

【0079】
表3のデータは、気孔率が一定に保持される場合、圧力損失は、アルミナ担持量の増加と共に、増大することを示している。しかし、気孔率がより高いと、合理的な運転圧力を保持しながら、ムライト体に塗布するアルミナ量をかなり多くすることができる。したがって、例えば、針状ムライト体の気孔率が64%、アルミナ担持量が74g/Lの場合、水約7インチの圧力損失をもたらす。ところが、気孔率を75%まで増加させ、アルミナを170g/Lまたは約2から1/2倍多く担持させる場合、同等な圧力損失をもたらす。実施例5−4および5−6は、アルミナ担持量は同じであるが、実施例5−4に対して実施例5−6の気孔率がより高いので(75%対64%)、実施例5−6にわたる圧力損失は、実施例5−4の圧力損失の僅か約1/3である。
【0080】
実施例6〜8
3インチ長(7.5cm)ごとに10セル×10セルのディーゼル微粒子フィルター(1立方インチ当たり200セル)を、実施例2〜4に記載した一般的な方法で調製した針状ムライト体から作製する。それぞれは、以下の様にアルミナ、バリウムおよび白金を担持した各々である。該体は、別々にコロイド状アルミナ溶液(20%Al、Alfa Aesar)で飽和する。溝中の余分な溶液は、該体を振盪することにより除去し、流量20リットル/分で、該体が乾燥するまで飽和した該体を通して空気を流す。必要ならば、飽和および乾燥ステップを繰り返して、部品に担持するアルミナを125g/Lまで増加させる。乾燥した該体は、空気中で500℃で1時間焼成する。
【0081】
白金3.6g/リットルのモノリスの付着をもたらすために、アルミナで被覆した部品を、十分な白金を含有する硝酸白金希釈溶液に浸す。次に、該体を乾燥し、空気中で500℃で1時間焼成する。次に、バリウム0.25モル/Lのモノリスの付着をもたらすために、この部品を十分なバリウムを含有するギ酸バリウム水溶液に含浸させ、部品を通して空気を流すことにより乾燥し、次に、600℃で1時間焼成する。
【0082】
得られる含浸体は、動力装置の排ガス用のフィルター/触媒コンバーターとして有用である。NOxコンバーターとしてのこれらの性能は、合成排ガスを使用して、400℃で濃厚−希薄のサイクルにさらすことにより評価される。各サイクルでは、希薄なフィードは、20リットル/分の割合で60秒間送り、その後に、濃厚なフィードが同じ割合で3秒間続く。希薄なフィードには、200ppmのNO、5%の酸素が含まれ、残りは窒素である。濃厚なフィードには、5000ppmのプロピレンが含まれ、残りは窒素である。該体を出るガスは、FTIRによって10サイクルにわたりNOx化合物を測定し、Nへ変換するNOxの%は、供給されたNOの量を、反応炉内に存在するガス中に検出されたNO、NO、NOおよびNHの量と比較することにより計算する。結果は、表3に掲載する。
【0083】
【表3】

【0084】
全てのケースで、NOのNへの変換率は優れており、これらの高い気孔率の基材上に付着した触媒および収着剤の両方の効果を実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)液体(複数可)およびバインダー(複数可)を除く全成分を基準として5から60重量パーセントの、アルミニウム原子の源およびシリコン原子の源、体積平均の有効粒子径が1から50ミクロンのポロゲン粒子の源、少なくとも1つの液体および任意選択でバインダーを含む成分から粘着性の塊を形成するステップと、次に、
b)粘着性の塊をグリーン体に成形するステップと、
c)実質的にフッ素含有ガスがない雰囲気下で、バインダーが存在する場合、これを連続して除去するのに十分な温度までグリーン源体を加熱し、次に、ポロゲン粒子を気体に変換させ多孔質のグリーン体を生成するステップと、次に、
d)実質的にフッ素含有ガスがない雰囲気下で、1100℃から1400℃の間の温度で多孔質のグリーン体を焼成し、多孔質の焼成体を形成するステップと、次に
e)フッ素含有化合物を含む雰囲気の存在下で、焼成体中のアルミニウム原子の源およびシリコン原子の源がフッ素含有化合物と反応してフルオロトパーズを形成する温度まで多孔質の焼成体を加熱するステップと、次に、
f)800℃を超える温度まで前記体を加熱してフルオロトパーズを分解し、多孔質の針状ムライト体を形成するステップと
を含む、針状ムライト体の作製方法。
【請求項2】
多孔質の針状ムライト体の気孔率が70から85容積パーセントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
針状ムライト体の平均気孔径が、1から50ミクロンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポロゲンがグリーン体の重量の少なくとも30%を占める、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
グリーン体がバインダーを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステップc)が、グリーン体を最大400℃の温度に加熱してバインダーを除去し、次に、700から1000℃までの温度に加熱してポロゲン粒子を除去することによって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)が、押出成形、射出成形またはキャスティングによって行われる、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップf)が、少なくとも1000℃の温度で行われる、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
フッ素含有化合物がSiFを含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ステップd)の後で、多孔質の焼成体の破壊強度が少なくとも3MPaである、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
針状ムライト体の平均気孔径が5から40ミクロンである、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
気孔率が70から85%の気孔率であり、焼成強度が少なくとも3MPaである、多孔質のムライト前駆体の焼成体。
【請求項13】
気孔率が少なくとも70容積パーセント、平均気孔径が50ミクロン以下および破壊強度が少なくとも10MPaである、請求項1から11のいずれかの記載に従って作製された多孔質の針状ムライト体。
【請求項14】
少なくとも1つの触媒活性材料または収着剤で被覆された、請求項13に記載の多孔質の針状ムライト担体。

【公表番号】特表2011−525889(P2011−525889A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516485(P2011−516485)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/048081
【国際公開番号】WO2009/158294
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】