説明

多孔質シリカガラス上のパラジウムを含む新規の選択的水素化触媒およびその使用

本発明は、担体としての多孔質シリカガラス上のパラジウムを含む触媒、ならびにアルキン類からアルケン類への選択的水素化のためのこのような触媒の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、担体としての多孔質シリカガラス上のパラジウムを含む触媒、ならびにアルキン類からアルケン類への選択的水素化のためのこのような触媒の使用に関する。
【0002】
本発明の触媒は、多孔質シリカガラス上のパラジウムを含む。
【0003】
好ましくは、本発明の触媒は多孔質シリカガラス上のパラジウムである。
【0004】
多孔質シリカガラスは好ましくは以下の特徴を示す:
a) 20〜500μmの範囲内、好ましくは50〜400μmの範囲内、より好ましくは80〜300μmの範囲内、最も好ましくは100〜200μmの範囲内の粒径;および/または
b) 10〜400nmの範囲内;好ましくは30 250nmの範囲内、より好ましくは40 150nmの範囲内、最も好ましくは50〜60nmの範囲内の細孔サイズ;および/または
c) 100〜5000mm/gの範囲内;好ましくは250〜2500mm/gの範囲内、より好ましくは500〜2000mm/gの範囲内、最も好ましくは、1000〜1500mm/gの範囲内の細孔容積;および/または
d) 5〜500m/gの範囲内;好ましくは25〜300m/gの範囲内、より好ましくは40〜250m/gの範囲内、最も好ましくは50〜200m/gの範囲内の比表面積。
【0005】
好ましくは、多孔質シリカガラスはa)〜d)のすべての特徴を示し、したがって、本発明は好ましい/より好ましい/最も好ましい特徴の考えられるあらゆる組合せを包含する。
【0006】
このような多孔質シリカガラスは市販されている。特に好ましいものは、Schuller GmbH(Wertheim,Germany)によりTRISOPERL(登録商標)という商標で販売されている。TRISOPERL(登録商標)は、100〜200μmの範囲内の平均粒子サイズ、54.47nmの平均細孔サイズ、93.72m/gの比表面積そして1255.5mm/gの平均細孔容積を有する多孔質シリカガラスである。
【0007】
本発明に係る触媒は、以下の官能基の存在下において末端C≡C3重結合から末端C=C2重結合への選択的水素化のために使用してよい:
◇ アルキル:1〜50個のC原子を伴う直鎖C1−50アルキル、分岐C3−50アルキル、C3−20シクロアルキル、ならびにアルキルシクロアルキル類およびシクロアルキルアルキル類;好ましいのは、それが直鎖(C1−20)、分岐(C3−20)または環状(C3−20)のいずれであれC1−20アルキル−、またはアルキルシクロアルキル(C4−20)またはシクロアルキルアルキル(C4−20)である;
◇ アルケニル:直鎖C2−50アルケニル、分岐C3−50アルケニル;好ましいのは、それが直鎖(C2−20)または分岐(C3−20)のいずれであれ、C2−20アルケニルである。
◇ ヘテロアルキル:すなわち、非芳香族炭素水素部分、好ましいのは、エーテル例えばテトラヒドロフランおよびテトラヒドロピランなどのヘテロ原子窒素および/または酸素を1個以上含む3〜50個のC原子(好ましくは3〜30個のC原子)を伴う飽和炭素水素部分;
◇ 好ましくは6〜17個のC原子を有するアルキルアリールおよびアリール、例えばフェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチルなど;
◇ ヘテロアリール、好ましくは5〜17個のC原子を有し、ここでヘテロ原子は酸素または窒素のいずれかである;ヘテロアリールは、同様に複数のヘテロ原子(ヘテロ原子数≧1)を含んでいてよく、したがって、O原子ならびにN原子を含むヘテロアリールも包含される;例としてはピリジル、インジル、フリルがある。
◇ ヒドロキシ(−OH);
◇ ニトロオキシ(−NO
◇ アミノ(−NH
◇ −SiR、なおR、RおよびRは、互いに独立してアルキル(直鎖または分岐C−C)またはアリールまたはアルキルアリールであり;好ましくはR=R=Rである。
【0008】
これはすなわち、アルキン類RC≡CHがアルケン類RHC=CHに水素化され、ここでRは、ヘテロ原子Oおよび/またはNまたはそれらのいくつかを任意に担持する炭素水素部分および/または−OH、−NO、−NHおよび−SiRといった以上で定義された通りの官能基であることを意味している。好ましくは、Rは、全てがさらに1つ以上のヘテロ原子Oおよび/またはNを担持してよい以上で定義された通りのアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリールあるいはさらなる官能基例えば−OH、−NO、−NHおよび−SiRからなる群から選択される。好ましくは、アルキン類はイソプレノイドビルディングブロックの前駆体である。
【0009】
したがって、本発明は同様に、以上で定義づけされている触媒のこのような利用ならびにこの触媒の存在下でアルキン類を水素化するステップを含むアルケン類の製造方法にも関する。
【0010】
一般に、水素化は、0℃〜150℃の範囲内の温度および/または1bar〜150barの範囲内の圧力で実施されてよい。
【0011】
このようなアルキン類および対応するアルケン類の好ましい例が下表に示されている。
【0012】
【表1】



【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はアルキン類および対応するアルケン類の好ましい例を示す。
【0014】
[本発明の好ましい実施形態]
[デヒドロイソフィトールからイソフィトールへの水素化]
本発明の好ましい実施形態においては、アルキン3,7,11,15−テトラメチル−1−ヘキサデシン−3−オール(デヒドロイソフィトール)をアルケン3,7,11,15−テトラメチル−1−ヘキサデセン−3−オール(イソフィトール)へと水素化する。
【0015】
一般に、この水素化は、0℃〜150℃の範囲内の温度、好ましくは10℃〜100℃の範囲内の温度、より好ましくは15℃〜95℃の範囲内の温度、最も好ましくは最高75℃の温度で実施されてよい。
【0016】
水素圧力は、1〜50barの範囲内、好ましくは1.1〜10barの範囲内、より好ましくは1.2〜8barの範囲内、最も好ましくは6bar前後で変動してよい。
【0017】
好ましくはこの水素化は、溶媒の無い状態で実施される。
【0018】
[2−メチルブチノールから2−メチルブテノールへの水素化]
本発明の別の好ましい実施形態において、アルキン2−メチルブチノールはアルケン2−メチルブテノールに水素化される。
【0019】
一般に、この水素化は、0℃〜150℃の範囲内の温度、好ましくは15℃〜80℃の範囲内の温度、より好ましくは20℃〜75℃の範囲内の温度、最も好ましくは60℃前後の温度で実施されてよい。
【0020】
水素圧力は、1〜50barの範囲内、好ましくは1.2〜15barの範囲内、より好ましくは1.5〜10barの範囲内、最も好ましくは6bar前後で変動してよい。
【0021】
有利には、触媒を被毒させてその活性を減少させる化合物が使用される。この化合物は、一般には、硫黄またはリン含有有機化合物である。好ましい触媒毒は、ホスファン類(特にトリアルキルホスファン類)、チオエーテル類、チオール類およびジスルフィド類からなる群から選択される。特に好ましいのはチオエーテル類、例えばジプロピルスルフィド、エチル−2−ヒドロキシエチルスルフィド、テトラヒドロチオフェン、チオフェンおよび2,2’−(エチレンジチオ)−ジエタノール、チオール類、例えば2,2’−(エチレンジオキシ)−ジエタンチオール、およびジスルフィド類、例えばプロピルジスルフィドおよびイソプロピルジスルフィドである。最も好ましいのは、2,2’−(エチレンジチオ)−ジエタノールである。触媒毒は同様に、以上で記述したデヒドロイソフィトールからイソフィトールへの水素化においても使用されてよい。
【0022】
[デヒドロリナロールからリナロールへの水素化]
本発明のさらなる好ましい実施形態においては、アルキンデヒドロリナロールは、アルケンリナロールに水素化される。
【0023】
一般に、この水素化は、0℃〜120℃の範囲内の温度、好ましくは10℃〜100℃の範囲内の温度、より好ましくは20℃〜90℃の範囲内の温度で実施されてよい。
【0024】
水素圧力は、1bar〜50barの範囲内、好ましくは1.2〜15barの範囲内、より好ましくは1.5〜10barの範囲内、最も好ましくは3bar前後で変動してよい。
【0025】
[3,7−ジメチル−1−オクチン−3−オールから3,7−ジメチル−l−オクテン−3−オールへの水素化]
本発明の別の好ましい実施形態において、アルキン3,7−ジメチル−1−オクチン−3−オールは、アルケン3,7−ジメチル−l−オクテン−3−オールに水素化される。
【0026】
本発明について、以下の非限定的実施例の中で例示する。
【0027】
[実施例]
実施例中で使用された担体は、Schuller GmbH(Wertheim,Germany)により販売されているTRISOPERL(登録商標)であった。TRISOPERL(登録商標)は、100〜200μmの範囲内の平均粒子サイズ、54.47nmの平均細孔サイズ、93.72m/gの比表面積そして1255.5mm/gの平均細孔容積を有する多孔質シリカガラスである。
【0028】
[実施例1:触媒の調製]
50mLのジクロロメタン中に21mgのPd(OAc)(0.09mmol)を懸濁させた。1gのTRISOPERL(登録商標)を添加し、溶媒を除去した(浴温度:40℃/圧力:950mbar)。Pd(OAc)でドープした担体を、オーブン内で300℃で2時間か焼した(1000Wの場合、20分間オーブンを300℃まで予熱)。そのとき、担体上の触媒の負荷は、およそ1重量%Pdすなわち1gの担体上でPdが10mgであった。
【0029】
[実施例2:オートクレーブ内での2−メチル−3−ブチン−2−オール(MBI)から2−メチル−3−ブテン−2−オール(MBE)への水素化]
撹拌(2000rpm)下で280分間60℃および2.8baraで実施例1にしたがって調製された触媒200mgの存在下で、3.2molのMBIを水素化した。転換は98%、収量は94%であった。
【0030】
[実施例3−4:溶媒無しでのデヒドロイソフィトール(DIP)からイソフィトール(IP)への水素化]
実施例1にしたがって調製された100mgの触媒の存在下で、3.75mmolのDIPを水素化した。水素化を実施した温度および圧力は、次の表に示されている。3時間の反応時間の後に試料を採取し、ガスクロマトグラフィで収量および選択性を決定した。
【0031】
【表2】



【0032】
[実施例5:より大規模なデヒドロイソフィトール(DIP)からイソフィトール(IP)の無溶媒水素化]
265g(0.9mol)のDICを、500ml入りオートクレーブ内で実施例1にしたがって調製した触媒106mgと2,2’−(エチレンジチオ)−ジエタノール23mgの存在下で80℃および2バールで水素化した。4時間2000rpmで反応混合物を撹拌した。DIPに基づいて、転換は99%、収量は89.6%であった。
【0033】
[実施例6:溶媒中のデヒドロイソフィトール(DIP)からイソフィトール(IP)への水素化]
0.5mlの酢酸エチル中に3.75mmolのDIPを溶解させ、実施例1にしたがって調製した100mgの触媒の存在下で50℃および21baraで水素化した。1時間の反応時間後に試料を採取し、ガスクロマトグラフィで収量および選択性を決定した。転換はDIPに基づいて93%であり、選択性はIPに基づいて91%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体としての多孔質シリカガラス上のパラジウムを含む触媒。
【請求項2】
前記担体が、20〜500μmの範囲内、好ましくは50〜400μmの範囲内、より好ましくは80〜300μmの範囲内、最も好ましくは100〜200μmの範囲内の粒径を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記担体が10〜400nmの範囲内;好ましくは30 250nmの範囲内、より好ましくは40 150nmの範囲内、最も好ましくは50〜60nmの範囲内の細孔サイズを有する、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
前記担体が、100〜5000mm/gの範囲内;好ましくは250〜2500mm/gの範囲内、より好ましくは500〜2000mm/gの範囲内、最も好ましくは、1000〜1500mm/gの範囲内の細孔容積を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記担体が5〜500m/gの範囲内;好ましくは25〜300m/gの範囲内、より好ましくは40〜250m/gの範囲内、最も好ましくは50〜200m/gの範囲内の比表面積を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
C≡C3重結合からC=C2重結合への選択的水素化のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒の使用。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒の存在下でアルキン類を水素化するステップを含むアルケン類の製造方法。
【請求項8】
前記アルキンが3,7,11,15−テトラメチル−1−ヘキサデシン−3−オール(デヒドロイソフィトール)であり、前記アルケンが3,7,11,15−テトラメチル−1−ヘキサデセン−3−オール(イソフィトール)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルキンが2−メチルブチノールであり、前記アルケンが2−メチルブテノールである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記水素化が、硫黄含有化合物の存在下で実施される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記硫黄含有化合物が2,2’−(エチレンジチオ)−ジエタノールである請求項10に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−500112(P2012−500112A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523423(P2011−523423)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060764
【国際公開番号】WO2010/020671
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】