説明

多孔質シリカ系粒子の製造方法および該方法から得られる多孔質シリカ系粒子

【課題】 平均粒子径がミクロン以上と比較的大きく、しかも粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子を製造するための新規な方法および該方法から得られる多孔質シリカ系粒子に関する。
【解決手段】 (a)有機珪素化合物の層と水の層とからなる二層分離液を調合し、次いで該有機珪素化合物層と該水層が完全に混合しない程度に撹拌しながら、前記水層中に有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加して、該混合水溶液中で前記有機珪素化合物を部分加水分解および/または加水分解してシリカ系粒子前駆体を調製する工程、(b)前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液にアルミン酸ナトリウムを添加して、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する工程および(c)前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥する工程を含むことを特徴とする多孔質シリカ系粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均粒子径がミクロン以上と比較的大きく、しかも粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子を簡単かつ効率よく製造する方法およびこれより得られる多孔質シリカ系粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質シリカ系粒子を製造する方法は数多く知られており、その代表的なものとしては、ゾル・ゲル法により多孔質粒子を生成させる方法や、複合粒子中から有機化合物または無機化合物を除去して該粒子を多孔質化させる方法等が知られている。
ゾル・ゲル法による多孔質粒子の製造方法としては、オルトケイ酸テトラエチルに、アルコール、水および酸触媒を加えて部分加水分解を行わせた後、フタル酸ジブチルを添加し、この溶液を界面活性剤を含んだアンモニア水溶液中で混合攪拌し、乳化し、重縮合させる方法(特許文献1)、テトラアルコキシシラン又は水ガラスをアンモニアの存在下で加水分解し、シリカゾルを生成させ、該ゾルにカルボン酸又はカルボン酸塩および脂肪族ニトリル化合物を添加し、シリカゲルを形成させる方法(特許文献2)等が提案されている。
【0003】
複合粒子中の有機化合物を除去する多孔質粒子の製造方法としては、活性シリカとカチオン系界面活性剤をアルカリ性領域で混合反応させてシリカとカチオン系界面活性剤の複合体を生成させ、次いで該複合体を焼成処理して前記カチオン系界面活性剤を除去する方法(特許文献3)、水混和性有機溶媒、アルキルアミン及びケイ酸エステル或いはケイ酸エステルと水混和性有機溶媒に可溶な金属塩との組み合わせを含む混合液に、攪拌下に水或いは酸性水溶液を添加し、生成するシリカ・アルキルアミン複合生成物を球状粒子に成長させ、該球状粒子中のアルキルアミンを除去する方法(特許文献4)等が提案されている。
複合粒子中の無機化合物を除去する多孔質粒子の製造方法としては、テトラアルコキシシランとホウ素化合物とを、水と水に可溶な有機溶媒との混合溶液中で加水分解・縮重合して、SiO2とB23とを主成分とする球状粒子を生成させ、次いでB23を溶出させて除去する方法(特許文献5)、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基の珪酸塩とアルミン酸ナトリウム等の無機化合物とを、pH10以上のアルカリ水溶液中に同時に添加して、シリカと前記無機酸化物とからなるコロイド粒子を生成させ、該コロイド粒子中の前記無機化合物を酸または陽イオン交換樹脂を用いて除去する方法(特許文献6)等が提案されている。
【0004】
一方、有機珪素化合物と水とからなる二層分離液の界面またはその水層において、有機溶媒、アルカリおよび/または界面活性剤の存在下で前記有機珪素化合物を加水分解・縮重合してポリオルガノシロキサン粒子等を製造する方法も既に知られている。(特許文献7、特許文献8および特許文献9)しかし、これらの方法は、粒子径の揃った緻密なシリカ系粒子等を製造する方法に関するもので、多孔質なシリカ系粒子を製造するものではない。
【0005】
【特許文献1】特開平8−91821号公報
【特許文献2】特開平8−26716号公報
【特許文献3】特開平8−34607号公報
【特許文献4】特開2002−187712号公報
【特許文献5】特開平7−172814号公報
【特許文献6】特開平7−133105号公報
【特許文献7】特開平4−70335号公報
【特許文献8】特開2000−17074号公報
【特許文献9】特開2000−204168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1〜6などに記載された従来公知の方法においても、多孔質シリカ系粒子を製造することはできるものの、平均粒子径がミクロン以上と比較的大きく、しかも粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子を簡単かつ効率よく製造することは必ずしも容易ではなかった。
そこで、本発明者等は、これらの課題を解決すべく鋭意研究を繰り返したところ、有機珪素化合物の部分加水分解物および/または加水分解物からなるシリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液中にアルミン酸ナトリウムを添加すれば、その後の複雑な操作を行わなくとも多孔質シリカ系粒子を容易に製造できることを見いだし、本発明をなすに到った。
すなわち、本発明は、平均粒子径がミクロン以上と比較的大きく、しかも粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子を簡単かつ効率よく製造するための新規な方法を提供するものである。
【0007】
さらに、本発明は、この新規な方法から得られる、平均粒子径が1〜15μmの範囲にあり、しかも充填嵩密度(Compacted Bulk Density)が0.20〜0.76g/cm3、好ましくは0.25〜0.62g/cm3の範囲にある多孔質シリカ系粒子を提供するものである。
また、本発明においては、前記多孔質シリカ系粒子の内部に所望する有機化合物や無機化合物を吸収または吸着させてなるシリカ系粒子、および該シリカ系粒子の表面に前記無機化合物と同種または異種の無機化合物もしくはその加水分解物、あるいは前記有機化合物と同種または異種の有機化合物もしくはその重合物で被覆してなるシリカ系粒子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第一の多孔質シリカ系粒子の製造方法は、
粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子を製造する方法であって、
(a)下記一般式(I)で表される有機珪素化合物の層と水の層とからなる二層分離液を調合し、次いで該有機珪素化合物層と該水層が完全に混合しない程度に撹拌しながら、前記水層中に有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加して、該混合水溶液中で前記有機珪素化合物を部分加水分解および/または加水分解してシリカ系粒子前駆体を調製する工程、
1nSi(OR24-n ・・・(I)
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基から選ばれる1価の基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基であり、nは1〜3の整数である。)
(b)前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液にアルミン酸ナトリウムを添加して、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する工程、および
(c)前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥する工程
を含むことを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る第二の多孔質シリカ系粒子の製造方法は、
粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子を製造する方法であって、
(a)下記一般式(I)で表される有機珪素化合物の層と水の層とからなる二層分離液を調合し、次いで該有機珪素化合物層と該水層が完全に混合しない程度に撹拌しながら、前記水層に有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加して、該混合水溶液中で前記有機珪素化合物を部分加水分解および/または加水分解してシリカ系粒子前駆体を調製する工程、
1nSi(OR24-n ・・・(I)
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基から選ばれる1価の基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基であり、nは1〜3の整数である。)
(b)前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液にアルミン酸ナトリウムを添加して、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する工程、
(c)必要に応じて前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥する工程、
(d)前記シリカ系粒子をアルカリ水溶液中に添加して、該シリカ系粒子の外周部に存在する被覆層を溶解させて、少なくとも粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する工程、および
(e)前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥する工程
を含むことを特徴としている。
【0010】
前記工程(a)において、前記の有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤は、前記混合水溶液の温度を0.1〜10℃に保ちながら、該混合水溶液のpHが8.2〜9.8の範囲となるように添加して、前記有機珪素化合物層が実質的になくなるまで30〜100rpmの速度で攪拌することが好ましい。(ここで、前記の温度0.1℃は、水が凍らない0℃近傍の温度を意味する。)
前記工程(a)において、前記有機珪素化合物層が実質的になくなった後、前記混合水溶液は、攪拌しながら1〜30℃の温度条件下で0.1〜7時間、放置することが好ましい。
前記工程(a)において、前記有機溶媒は、水と相溶性があり、しかも前記有機珪素化合物を希釈または分散することができるアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類およびケトン類から選ばれた1種または2種以上であることが好ましい。
前記工程(a)において、前記アルカリは、前記有機珪素化合物の加水分解触媒として機能するアンモニア水溶液、アンモニアガス、アルカリ金属塩水溶液、第4級アンモニウム塩水溶液およびアミン類から選ばれた1種または2種以上であることが好ましい。
前記工程(a)において、前記界面活性剤は、アニオン系界面活性剤から選ばれた1種または2種以上であることが好ましい。
【0011】
前記工程(b)において、前記アルミン酸ナトリウムの添加は、該アルミン酸ナトリウムをAl23で表し、前記有機珪素化合物をSiO2で表したとき、その重量比Al23/SiO2が3/97〜20/80となる範囲で行うことが好ましい。
前記工程(b)において前記アルミン酸ナトリウムを添加した後、前記混合水溶液は、攪拌しながら5〜30℃の温度条件下で0.5〜50時間、放置することが好ましい。
前記工程(d)において、前記アルカリ水溶液は、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液であることが好ましい。
前記工程(c)または(e)において乾燥された前記シリカ系粒子は、200〜1100℃の温度条件下で加熱処理することが好ましい。
【0012】
このようにして乾燥または加熱処理された前記シリカ系粒子は、必要に応じて該シリカ系粒子を有機溶媒、水またはその混合液に分散させた懸濁液に、有機溶媒、水またはその混合液に溶解または分散させた無機化合物の溶液を添加して、前記シリカ系粒子の表面を該無機化合物もしくはその加水分解物で被覆することが好ましい。
前記無機化合物は、珪酸液または有機珪素化合物であり、前記シリカ系粒子の表面に珪素成分を被覆することが好ましい。また、前記有機珪素化合物は、エチルシリケート、メチルシリケートおよび上記一般式(I)で表される有機珪素化合物から選ばれた1種または2種以上であることが好ましい。
前記珪素成分で被覆された前記シリカ系粒子は、洗浄して乾燥した後、必要に応じて200〜1100℃の温度条件下で加熱処理することが好ましい。
【0013】
また、上記のように乾燥または加熱処理された前記シリカ系粒子は、その表面に微粉末状の有機化合物を付着させ、さらに付着した有機化合物の少なくとも一部を溶融させることにより、前記シリカ系粒子の表面を該有機化合物で被覆することが好ましい。
前記有機化合物は、ガラス転移点200℃以下の熱可塑性合成樹脂または硬化温度200℃以下の熱可塑性合成樹脂であることが望ましい。また、前記熱可塑性合成樹脂は、メチルメタクリレート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂またはこれらの混合物から選ばれたものであることが好ましい。
前記シリカ系粒子に被覆される前記無機化合物または前記有機化合物は、被覆層の厚さが0.005〜2μmの範囲にあることが好ましい。
【0014】
このようにして得られる多孔質シリカ系粒子は、平均粒子径が1〜15μmの範囲にあり、しかも充填嵩密度が0.25〜0.62g/cm3の範囲にあることが好ましい。また、前記多孔質シリカ系粒子は、吸油量が0.63〜1.53ml/gの範囲にあることが好ましい。さらに、その圧縮強度が4〜100kgf/mm2の範囲にあることが好ましい。
また、本発明に係る前記多孔質シリカ系粒子は、粒子内部に無機化合物および/または有機化合物を吸収または吸着させてなるシリカ系粒子、または該シリカ系粒子の表面に前記無機化合物と同種または異種の無機化合物もしくはその加水分解物、あるいは前記有機化合物と同種または異種の有機化合物もしくはその重合物で被覆してなるシリカ系粒子を提供するための用途に好適に使用される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、平均粒子径が1〜15μmと比較的大きく、しかも充填嵩密度が0.20〜0.76g/cm3、好ましくは0.25〜0.62g/cm3と低い多孔質シリカ系粒子を簡単かつ効率よく製造することができる。さらに、該粒子を乾燥または加熱処理することにより、圧縮強度が4〜100kgf/mm2の範囲にある多孔質シリカ系粒子を製造することができる。
また、本発明においては、一部の従来技術で用いられている特殊な有機化合物や無機化合物を、粒子内部に空孔や空隙を形成するために使用していないため、これらの化合物やその反応生成物等からなる夾雑物が粒子内に残存することも殆どない。
【0016】
さらに、本発明に係る第一の製造方法によれば、この多孔質シリカ系粒子の製造に係る工程数が比較的少なく、しかも各工程の操作を連続的に行うことができるので、非常に操作性がよく、かつ該粒子の製造コストを低く抑えることができる。
また、本発明方法から得られる多孔質シリカ系粒子は、粒子内部に多くの空孔または空隙を有しているため、該粒子を被膜形成用マトリックス成分と混ぜて調合した塗布液または塗料を用いて基材上に被膜を形成すると、使用されるマトリックス成分の種類や混合比等によっても異なるが、低屈折率、低誘電率、低反射率等の機能をもつ被膜を基材上に形成することができる。
【0017】
さらに、本発明に係る第二の製造方法から得られる多孔質シリカ系粒子、特に粒子表面にも空孔または空隙が露出した多孔質シリカ系粒子は、有機溶媒、水またはその混合液に溶解または分散された無機化合物および/または有機化合物を吸収または吸着する能力に優れているため、これらの化合物を該粒子中に吸収または吸着させることにより、その化合物自体が保有する機能や効能等を安定的かつ長期的に発揮させることができる。また、このようにして得られるシリカ系粒子の表面を珪素成分等の無機化合物や高分子化合物等の有機化合物からなる薄膜で被覆すると、吸収または吸着された前記無機化合物および/または前記有機化合物が短時間で外部に溶出するのを抑制または防止することができる。一方では、これらの被覆層を有するシリカ系粒子(これをマトリックス成分や有機化合物等と混合したものを含む)を加熱したり、溶液に浸したり或いは機械的に圧縮したりすると、前記被覆層が融解、溶解または破損して該粒子中に吸収または吸着された前記物質を瞬時または短時間で外部に流出させることができるので、このように吸収または吸着された物質の機能や効能を効果的に発揮させることができる。すなわち、本発明に係る多孔質シリカ系粒子は、これらの物質のマイクロカプセル化の用途に好適に使用することができる。
さらに、本発明に係る多孔質シリカ系粒子、特に粒子表面にも空孔や空隙を有する前記多孔質シリカ系粒子は、その比表面積が大きいので、ガス状物質または液状物質中に含まれる不純物を除去する用途にも、好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
多孔質シリカ系粒子の製造方法(1)
本発明に係る第一の多孔質シリカ系粒子の製造方法は、
(a)下記一般式(I)で表される有機珪素化合物の層と水の層とからなる二層分離液を調合し、次いで該有機珪素化合物層と該水層が完全に混合しない程度に撹拌しながら、前記水層に有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加して、該混合水溶液中で前記有機珪素化合物を部分加水分解および/または加水分解してシリカ系粒子前駆体を調製する工程、
1nSi(OR24-n ・・・(I)
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基から選ばれる1価の基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基であり、nは1〜3の整数である。)
(b)前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液にアルミン酸ナトリウムを添加して、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する工程、および
(c)前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥する工程
に供することによって、粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子を製造するものである。
【0019】
工程(a)
この工程(a)では、実質的に有機珪素化合物の部分加水分解物および/または加水分解物からなるシリカ系粒子前駆体を調製する。
上記一般式(I)で表される有機珪素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロルシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン等が挙げられる。この中でも、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等の有機珪素化合物を使用することが好ましい。
これらの有機珪素化合物は、単独で使用することができるが、2種以上を混合して使用することもできる。
【0020】
前記有機珪素化合物は、0.1〜15℃、好ましくは0.1〜10℃、さらに好ましくは0.1〜5℃の温度に調節した後、予め0.1〜15℃、好ましくは0.1〜10℃、さらに好ましくは0.1〜5℃の温度に調節された水(例えば、純水)を収納した容器中に静かに加えることが望ましい。ここで、水の温度が0.1℃未満であると、水が凍結する場合があり、また15℃を超えると、得られるシリカ系粒子前駆体の粒度分布が悪くなる場合がある。ここで、粒度分布が悪くなるとは、CV値=粒子径標準偏差(σ)/平均粒子径(Dm)x100の数式から得られる粒子径変動係数(CV値)が大きくなることを意味し、以下、同じ意味で使用する。さらに、有機珪素化合物の温度が0.1℃未満であると、水と混合したときに水を凍結させる場合があり、また15℃を超えると、前記有機珪素化合物の加水分解時にその部分加水分解物の一部がゲル化し易くなったり、あるいは得られるシリカ系粒子前駆体の粒度分布が悪くなったりする場合がある。なお、実施例で「約0℃」と表記してある温度は、水が凍らない0℃近傍の温度を意味し、上記の温度範囲に含まれる。
【0021】
ここで、前記有機珪素化合物はそれ自体が疎水性であり、加水分解速度も遅いため、これを水と混合すると、上下2層に別れた二層分離液が形成される。この二層分離液は、前記有機珪素化合物と水との比重の違いにより上下の位置関係が生ずるが、前記有機珪素化合物の多くは、水より比重が軽いため、上部が有機珪素化合物層で、下部が水層となる。しかし、一部の有機珪素化合物(例えば、ジフェニルジエトキシシラン等)は、水より比重が重いため、上部が水層で、下部が有機珪素化合物層となる。よって、本願明細書においては、前者の場合(すなわち、上部が有機珪素化合物層で、下部が水層)に基づき説明を行うが、本発明はこれに限定されるものではない。
前記水の量は、前記有機珪素化合物の加水分解に必要な量以上で、前記二層分離液が形成できる量であれば特に制限されるものではないが、前記有機珪素化合物の量に対し、3〜50倍量、好ましくは4〜20倍量(重量基準)であることが望ましい。この水の量が3倍量未満であると、前記有機珪素化合物の加水分解時にその部分加水分解物の一部がゲル化したり、あるいは得られるシリカ系粒子前駆体が凝集したりする場合がある。また、この水の量が50倍量を超えると、最終的に得られるシリカ系粒子の生産効率が悪くなったり、所望の粒子径のものが得られなくなったりする場合がある。
【0022】
次いで、有機珪素化合物層と水層が完全に混合しない程度に攪拌しながら、水層中に有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加すると、この水層(混合水溶液)中に有機珪素化合物の部分加水分解物および/または加水分解物からなる微細なシリカ系シード粒子またはその前駆体が生成される。さらに、その詳細は定かではないが、これらが集合または結合し、その外周部に有機珪素化合物の部分加水分解物および/または加水分解物が生成または付着して、最終的に前記有機珪素化合物の部分加水分解物および/または加水分解物からなるシリカ系粒子前駆体が形成される。
ここでの攪拌は、有機珪素化合物層と水層が完全に混合したり、あるいは水層が懸濁したりしないように行うことが好ましく、前記の有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤が水層中に速やか、かつ均一に混合される程度に行うことが望ましい。
【0023】
有機溶媒としては、水と相溶性があり、しかも前記有機珪素化合物を希釈または分散できるものであれば特に限定されるものではないが、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、ケトン類等から選んで使用することができる。この中でも、ブチルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等のアルコール類を使用することが好ましい。また、これらの有機溶媒は、単独で使用することができるが、2種以上を混合して使用することもできる。
ここで添加される有機溶媒の量は、水の量に対して0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%の範囲にあることが望ましい。(ここで、「水の量」とは、二層分離液の調製に用いた水の量と、以下に示すように有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を水で希釈して使用する場合には、その水の量との合計値を意味する。)この添加量が0.001重量%未満では、有機珪素化合物の溶解性が悪くなるため、結果として前記混合水溶液への混合がうまくいかなかったり、また5重量%を超えると、得られるシリカ系粒子前駆体の粒度分布が悪くなったりする場合がある。
この有機溶媒の添加により、水は有機溶媒との混合水溶液となり、また有機珪素化合物はこの混合水溶液に分散しやすくなるので、同じく添加されるアルカリにより部分加水分解および/または加水分解されて、前記シリカ系シード粒子またはその前駆体を生成し、さらにこれらが集合または結合してシリカ系粒子前駆体が得られる。なお、このようにして得られるシリカ系シード粒子やシリカ系粒子前駆体は、有機珪素化合物に由来する炭化水素基R1を有しているので疎水性を呈する。
【0024】
アルカリとしては、アンモニア水、アンモニアガス、アルカリ金属塩水溶液、第4級アンモニウム塩水溶液、アミン類等が挙げられる。この中でも、アンモニア水溶液、アンモニアガス等のアルカリを使用することが好ましい。なお、このようなアルカリは、前記有機珪素化合物の加水分解触媒として機能する。
ここで添加されるアルカリの量は、生成される前記シリカ系粒子前駆体の粒子径に影響を及ぼし、その量を多くすると該シリカ系粒子前駆体の平均粒子径が小さくなり、またその量を少なくするとその平均粒子径が大きくなる傾向にある。従って、アルカリの添加量は、所望する前記シリカ系粒子前駆体の粒子径に応じて適宜、選択されるが、水の量に対して0.0001〜0.1重量%、好ましくは0.001〜0.05重量%の範囲にあることが望ましい。(ここで、「水の量」とは、上記の場合と同様な意味を有する。)この添加量が0.0001重量%未満では、有機珪素化合物の加水分解反応が著しく遅かったり、有機珪素化合物の部分加水分解物がゲル化したりする場合がある。また、この添加量が0.1重量%を超えると、得られるシリカ系粒子前駆体の粒子径が小さくなり、更にはその粒度分布が悪くなる傾向にある。
さらに詳しく述べれば、前記混合水溶液のpHを8.1〜10.2、好ましくは8.2〜9.8、さらに好ましくは8.5〜9.4の範囲に維持できる程度に前記アルカリを添加することが望ましい。ここで、前記のpH値が大きくなると、前記有機珪素化合物の加水分解速度が速くなって微細なシリカ系シード粒子が数多く生成され、結果として平均粒子径の大きなシリカ系粒子前駆体が得られ難くなる。
【0025】
界面活性剤としては、水に可溶なものであれば特に制限されるものではないが、アニオン系界面活性剤を使用することが望ましい。具体的には、アルキル硫酸エステル、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸エステル、ナフタレンスルフォン酸フォルマリン縮合物等が挙げられる。この中でも、オクチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤を使用することが好ましい。
ここで添加される界面活性剤の量は、水の量に対して0.005〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%の範囲にあることが望ましい。(ここで、「水の量」とは、上記の場合と同様な意味を有する。)この添加量が0.005重量%未満では、有機珪素化合物の部分加水分解物がゲル化したり、得られるシリカ系粒子前駆体の収率が悪くなったりする場合がある。また、この添加量が1重量%を超えると、得られるシリカ系粒子前駆体の粒度分布が悪くなったり、所望の粒子径のものが得られなくなったりする場合がある。
なお、前記界面活性剤は、前記シリカ系シード粒子またはその前駆体との親和性が高いため、その詳細は定かではないが、これらの粒子または前駆体を集合または結合させ、さらに有機珪素化合物の部分加水分解物および/または加水分解物を取り込んで、シリカ系粒子前駆体を効率的に生成させることができる。
【0026】
前記の有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤は、それぞれ個別に添加してもよいが、これらを前記の添加量となるように混合して前記の水層中に添加することが望ましい。さらに、これらは水(例えば、純水)で希釈して前記水層中に添加することが好ましい。また、これらの添加は、導管を前記水層中に入れ、水層下部に位置する導管ノズルから前記物質を流出させるようにして行うことが望ましい。なお、これらの水溶液(水で希釈したもの)を直接、前記有機珪素化合物層中に添加すると、有機珪素化合物の部分加水分解反応および/または加水分解反応が急激に進むため、有機珪素化合物の部分加水分解物がゲル化したりして、所望の形状や物性を有する粒子が得られなくなる。
これらの有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤、あるいはその混合液は、0.1〜15℃、好ましくは0.1〜10℃、さらに好ましくは0.1〜5℃の温度に冷却または調節して添加することが望ましく、またその添加に際し、前記の二層分離液を構成する有機珪素化合物層も攪拌しながら0.1〜15℃、好ましくは0.1〜10℃、さらに好ましくは0.1〜5℃の温度に冷却または調節しておくことが望ましい。ここで、前記の有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤、あるいはその混合液の温度が0.1℃未満であると、水が凍結する場合があり、また15℃を超えると、得られるシリカ系粒子前駆体の粒度分布が悪くなる場合がある。さらに、前記有機珪素化合物層の温度が0.1℃未満であると、水を凍結させる場合があり、また15℃を超えると、前記有機珪素化合物の加水分解時にその部分加水分解物の一部がゲル化したり、あるいは得られるシリカ系粒子前駆体の粒度分布が悪くなったりする場合がある。
【0027】
また、前記の有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤、あるいはその混合液の添加は、所望するシリカ系粒子前駆体の粒子径やその他の条件によっても異なるが、前記二層分離液の水層中に攪拌機の攪拌羽根を入れて30〜100rpm、好ましくは50〜70rpmの速度で前記有機珪素化合物層と前記水層とが完全に混合しない程度にゆっくりと攪拌しながら、1時間以内、好ましくは0.5〜10分、かけて行うことが望ましい。ここで、この攪拌速度が30rpm未満であると、これらの添加物が水層中に均一に混合するのに時間を要し、更には前記有機珪素化合物が前記水層中に混合しづらくなる。また、この攪拌速度が100rpmを超えると、前記有機珪素化合物層と水層の混合が激しくなるので好ましくない。さらに、前記の添加時間は、前記導管のノズル口径等にも依存するが、特に制限されるものではない。しかし、pH値を制御しながら添加する場合には、比較的ゆっくりと行ってもよいが、1時間を超えて行うことは得策でない。
【0028】
このようにして、前記水層中に、前記有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤、あるいはその混合液を添加して得られる、pH8.1〜10.2、好ましくは8.2〜9.8、さらに好ましくは8.5〜9.4の範囲にある混合水溶液を0.1〜15℃、好ましくは0.1〜10℃、さらに好ましくは0.1〜5℃の温度に保ちながら、30〜100rpmの速度でゆっくりと攪拌して、前記有機珪素化合物を部分加水分解および/または加水分解することが望ましい。この有機珪素化合物の部分加水分解反応および/または加水分解反応が進むに伴い、前記有機珪素化合物層は、前記水層(混合水溶液)中に取り込まれて実質的になくなり、前記有機珪素化合物の部分加水分解物および/または加水分解物を含む混合水溶液のみが残ることになる。また、この操作を開始してから前記有機珪素化合物層が実質的になくなるまでの時間は、上記した操作範囲の中からどの条件を選択するかによっても異なるが、結果として0.5〜6時間、好ましくは0.5〜3時間の範囲にあることが望ましい。
【0029】
次いで、前記有機珪素化合物層が実質的になくなった後、この混合水溶液を攪拌しながら1〜45℃、好ましくは1〜30℃、さらに好ましくは10〜20℃の温度条件下で0.1〜35時間、好ましくは0.1〜7時間、さらに好ましくは0.5〜5.5時間、放置しておくことが望ましい。ここで、前記混合水溶液の温度が1℃未満であると、水が凍結する危険性があり、また45℃を超えると、前記有機珪素化合物の部分加水分解物および/または加水分解物の一部がゲル化したり、あるいは粒子同士の凝集が生じ易くなり、更には粒子体の緻密化が進み易くなるため下記工程(b)でアルミン酸ナトリウムが該粒子中に浸透し難くなり、結果として多孔質のシリカ系粒子が得られなくなる場合がある。さらに、この放置時間が0.1時間未満であると、前記有機珪素化合物の部分加水分解反応および/または加水分解反応が十分に進まずに所望の粒子が得られなかったり、あるいはその一部がゲル化したりし、更には未反応の有機珪素化合物が残ってシリカ系粒子前駆体の収率が悪くなったりする。また、放置時間が35時間を超えると、粒子同士が凝集し始める場合がある。
さらに、前記の攪拌は、30〜100rpmの速度でゆっくりと行うことが好ましい。これにより、比較的、骨格のしっかりしたシリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液が得られる。
【0030】
工程(b)
この工程(b)では、前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液中にアルミン酸ナトリウム水溶液を添加することにより、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する。
アルミン酸ナトリウムには、オルトアルミン酸ナトリウム(Na3AlO3)とメタアルミン酸ナトリウム(NaAlO2)とがあるが、本発明においては、そのいずれをも使用することができる。しかし、後者のメタアルミン酸ナトリウムを使用することが望ましい。
また、前記アルミン酸ナトリウム(通常は、白色な結晶性固体)は、水(例えば、純水)に溶解して使用される。しかし、市販のアルミン酸ナトリウムを使用せずに、水酸化ナトリウム水溶液に水酸化アルミニウムを添加して反応させることによって調製されたアルミン酸ナトリウム水溶液(すなわち、メタアルミン酸ナトリウムの水溶液)を使用することもできる。この場合、アルミン酸ナトリウム水溶液の濃度は、特に制限されるものではないが、Al23換算基準で20〜24重量%の範囲にあることが好ましい。
【0031】
前記混合水溶液中に添加されるアルミン酸ナトリウムの量は、該アルミン酸ナトリウムをAl23で表し、前記工程(a)で使用される前記有機珪素化合物をSiO2で表したとき、その重量比Al23/SiO2が2.5/97.5〜20/80、好ましくは3/97〜20/80、さらに好ましくは3/97〜10/90となる範囲で行うことが好ましい。ここで、前記重量比が2.5/97.5未満では、前記アルミン酸ナトリウムまたはその加水分解物が前記シリカ系粒子前駆体中に浸透または侵入して作用する度合いが少ないため、得られるシリカ系粒子の内部に形成される空孔部や空隙部が少なくなり、また20/80を超えると、前記シリカ系粒子前駆体が溶解して崩壊することもあるので好ましくない。
このアルミン酸ナトリウム水溶液は、前記工程(a)から得られる前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液中に直接、添加することができる。しかし、前記混合水溶液の水量が多い場合などには、該混合水溶液の上層液をデカンテーション等で予め分離・除去した混合水溶液中に添加してもよい。
【0032】
前記アルミン酸ナトリウムの添加は、前記混合水溶液を攪拌しながら、5〜45℃、好ましくは5〜30℃、さらに好ましくは10〜20℃の温度条件下で0.01〜1時間、好ましくは0.01〜0.5時間かけて行うことが望ましい。ここで、前記混合水溶液の温度が5℃未満であると、アルミン酸ナトリウムまたはその加水分解物がシリカ系粒子前駆体中に浸透または侵入しづらくなり、また45℃を超えると、シリカ系粒子前駆体が溶解して崩壊する場合がある。さらに、この添加時間が0.01時間未満であると、シリカ粒子前駆体が溶解して崩壊しやすくなり、また1時間を超えると、アルミン酸ナトリウムまたはその加水分解物がシリカ系粒子前駆体中に浸透または侵入するのが遅くなるため、得られるシリカ系粒子の内部に形成される空孔部や空隙部が少なくなる。また、前記の攪拌は、100〜300rpmの速度でゆっくりと行うことが好ましい。
さらに、前記アルミン酸ナトリウムを添加した後、この混合水溶液を攪拌しながら5〜50℃、好ましくは5〜30℃、さらに好ましくは10〜20℃の温度条件下で0.5〜50時間、好ましくは3〜15時間、放置しておくことが望ましい。ここで、前記混合水溶液の温度が5℃未満であると、アルミン酸ナトリウムまたはその加水分解物がシリカ系粒子前駆体中に浸透または侵入しづらくなり、また50℃を超えると、シリカ系粒子前駆体が溶解して崩壊する場合がある。さらに、この放置時間が0.5時間未満であると、アルミン酸ナトリウムまたはその加水分解物がシリカ系粒子前駆体中に浸透または侵入して作用する度合いが低下して、得られるシリカ系粒子の内部に形成される空孔部や空隙部が少なくなり、また50時間を超えると、シリカ系粒子前駆体が溶解して崩壊することもある。
【0033】
ここで、前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液にアルミン酸ナトリウムを添加すると、粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子が得られることについてのメカニズムは、現時点では不明であるが、以下のようなことが考えられる。
上記したとおり、前記工程(a)で得られるシリカ系粒子前駆体は、複数個のシリカ系シード粒子またはその前駆体が集合または結合した粒子体、さらに詳しくはミセル状の構造を有する球状粒子体となっていることが予想される。
このような構造を有するシリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液にアルミン酸ナトリウムを添加すると、該アルミン酸ナトリウムまたはその加水分解物が前記シリカ系粒子前駆体中に浸透または侵入して作用し、該シリカ系粒子前駆体中に含まれる一部のシリカ系成分を粒子外に溶出させて、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を形成するものと考えられる。
【0034】
また、この工程(b)では、粒子内部に空孔部または空隙部を有し、さらにその表面(外周部)がシリカ系成分で被覆された球状のシリカ系粒子が得られる。このように粒子表面に被覆層が形成される理由も明らかではないが、この被覆層は、前記シリカ系粒子前駆体の表面に付着または取り込まれた前記有機珪素化合物の部分加水分解物および/または加水分解物が縮重合して形成されたものであると察せられる。なお、この被覆層にも、粒子内部に形成される空孔部または空隙部より遙かに小さい細孔が形成させていることが認められる。
【0035】
工程(c)
この工程(c)では、前記工程(b)で得られるシリカ系粒子を洗浄して乾燥することにより、粒子内部に空孔または空隙を有するシリカ系粒子を調製する。
先ず初めに、前記混合水溶液からシリカ系粒子をデカンテーションや濾過分離等の操作で分離し、得られたシリカ系粒子(ケーキ状物質)を純水で繰り返し洗浄する。この場合、前記シリカ系粒子を純水中に添加して攪拌しながらシリカ系粒子分散液を調製し、これを遠心分離器にかけて該シリカ系粒子を分離する操作を繰り返し行うことが好ましい。
次に、十分に洗浄された前記シリカ系粒子(ケーキ状物質)を乾燥する。この場合、前記シリカ系粒子は、50〜200℃、好ましくは80〜150℃の温度で0.5〜12時間、乾燥させることが好ましい。ここで、乾燥温度が50℃未満であると、得られるシリカ系粒子の内部に前記混合水溶液(特に、水分)が残り易くなり、また200℃を超えると、得られるシリカ系粒子の末端に一部、存在する有機基が取れ易くなる(ただし、前記有機珪素化合物の末端に存在する有機基によっても異なる)ので、この有機基を必要とするシリカ系粒子(例えば、疎水性等の性状を有するもの)を調製する場合には、これ以下の温度で乾燥することが望ましい。
このように洗浄、乾燥して、前記シリカ系粒子の表面や内部の空孔部または空隙部に存在する混合水溶液、更にはそれに含まれるその他成分を取り除くことにより、粒子内部に空孔または空隙を有する球状の多孔質シリカ系粒子が得られる。
【0036】
また、このようにして得られた前記シリカ系粒子は、必要に応じて200〜1100℃、好ましくは500〜1000℃の温度で0.5〜2時間、加熱処理することが好ましい。ここで、この加熱温度が200℃未満であると、所望の圧縮強度を有するシリカ系粒子が得られなかったり、場合によってはシリカ系粒子の内部に残存する水分などの除去が不十分となり、また1100℃を超えると、得られるシリカ系粒子が焼結したり、あるいは崩壊したりする場合がある。さらに、加熱時間が0.5時間未満であると、得られるシリカ系粒子の内部に残存する水分などの除去が不十分となり、また2時間を超えて加熱処理してもその効果は変わらず、結果としてシリカ系粒子の生産効率が悪くなる。
これにより、粒子内部に空孔または空隙を有し、しかも圧縮強度の高い球状の多孔質シリカ系粒子が得られる。
さらに、必要に応じて前記シリカ系粒子を分級工程に処して、粒子径の小さいものと大きいもの、或いはその片方を取り除くことにより、所望の平均粒子径を有するシリカ系粒子が得られる。
【0037】
多孔質シリカ系粒子の製造方法(2)
本発明に係る第二の多孔質シリカ系粒子の製造方法は、
(a)下記一般式(I)で表される有機珪素化合物の層と水の層とからなる二層分離液を調合し、次いで該有機珪素化合物層と該水層が完全に混合しない程度に撹拌しながら、前記水層に有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加して、該混合水溶液中で前記有機珪素化合物を部分加水分解および/または加水分解してシリカ系粒子前駆体を調製する工程、
1nSi(OR24-n ・・・(I)
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基から選ばれる1価の基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基であり、nは1〜3の整数である。)
(b)前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液にアルミン酸ナトリウムを添加して、粒子内部に空孔または空隙を有するシリカ系粒子を調製する工程、および
(c)必要に応じ前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥する工程
(d)前記シリカ系粒子をアルカリ水溶液中に添加して、該シリカ系粒子の外周部に存在する被覆層を溶解させて、少なくとも粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する工程、および
(e)前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥する工程
に供することによって、粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子を製造するものである。
【0038】
工程(a)
この工程(a)では、前記多孔質シリカ系粒子の製造方法(1)に記載の前記工程(a)と同様な条件下で、実質的に有機珪素化合物の部分加水分解物および/または加水分解物からなるシリカ系粒子前駆体を調製する。
【0039】
工程(b)
この工程(b)では、前記多孔質シリカ系粒子の製造方法(1)に記載の前記工程(b)と同様な条件下で、前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液中にアルミン酸ナトリウムを添加することにより、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する。
【0040】
工程(c)
この工程(c)では、必要に応じて前記多孔質シリカ系粒子の製造方法(1)に記載の前記工程(c)と同様な条件下で、前記工程(b)で得られるシリカ系粒子を洗浄して乾燥することにより、粒子内部に空孔または空隙を有するシリカ系粒子を調製する。しかし、以下に示す工程(d)において該シリカ系粒子の表面(外周部)に存在する被覆層を溶解させてその一部または全部を取り除く必要があるので、上記の加熱処理、特に200℃以上の高温条件下で加熱処理を行うことは得策ではない。
【0041】
工程(d)
この工程(d)では、前記シリカ系粒子をアルカリ水溶液中に添加して、該シリカ系粒子の外周部に存在する被覆層の一部または全部を溶解させて、少なくとも粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する。(なお、本発明においてはこの添加方法に限定されることはなく、前記シリカ系粒子上にアルカリ水溶液を添加してもよいことは勿論である。)
前記アルカリ水溶液としては、前記被覆層を溶解できるアルカリの水溶液であれば特に制限されるものではないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属水酸化物を用いることが好ましい。この中でも、シリカ系成分の溶解能の高い水酸化ナトリウム(NaOH)を使用することが望ましい。
前記アルカリの濃度は、特に制限されるものではないが、該水溶液に対し0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。ここで、前記濃度が0.1重量%未満では、前記被覆層の溶解が遅くなり、また10重量%を超えると、得られるシリカ系粒子自体が溶解して崩壊する場合がある。また、このアルカリ水溶液の量は、前記被覆層を溶解できる量以上のアルカリを含み、前記シリカ系粒子を添加した水溶液が十分に攪拌できる量以上であればよい。
【0042】
この工程(d)では、前記シリカ系粒子をアルカリ水溶液中に添加した後、1〜80℃、好ましくは10〜50の温度に加熱し、さらに同じ温度に保ちながら0.5〜30時間、好ましくは1〜20時間、攪拌処理することが望ましい。この温度が1℃未満であると、前記被覆層の溶解が遅くなり、また80℃を超えると、得られるシリカ系粒子自体が溶解して崩壊する場合がある。さらに、この時間が0.5時間未満であると、前記被覆層の溶解が不十分となり、また30時間を超えると、得られるシリカ系粒子自体が溶解して崩壊する場合がある。また、前記の攪拌は、200〜500rpmの速度でゆっくりと行うことが好ましい。
これにより、前記被覆層の一部または全部が溶解された多孔質シリカ系粒子が得られる。さらに詳しく述べれば、この工程(d)に供することにより、前記シリカ系粒子の空孔部または空隙部に残存または存在しているアルミン酸ナトリウムやその加水分解物、有機珪素化合物の加水分解物であるシリカ系成分、あるいはこれらの反応物等も溶出するので、孔隙率(Porosity)の高い多孔質シリカ系粒子を得ることができる。
【0043】
前記被膜層の一部が溶解されたシリカ系粒子は、粒子内部の表面近くに空孔部または空隙部を有する箇所が凹んだ形状(ディンプル形状)の球状粒子となっており、前記空孔部または空隙部は粒子表面に殆ど露出していないか、あるいはその一部しか露出していない。しかし、前記被覆層には上記したように小さな細孔が形成されているので、前記空孔部または空隙部に残存している前記物質はその大部分が粒子外に溶出する。
一方、前記被膜層の全部またはその大部分が溶解されたシリカ系粒子は、前記空孔部または空隙部が粒子表面に露出した形状の球状粒子となっている。
ここで、前記被膜層の一部を溶解させるか、またはその全部を溶解させるかについては、前記シリカ系粒子の使用目的あるいはその用途により適宜、選択されるべきものである。
【0044】
工程(e)
この工程(e)では、前記工程(d)で得られるシリカ系粒子を洗浄して乾燥することにより、粒子内部に空孔または空隙を有するシリカ系粒子を調製する。
ここでも、前記多孔質シリカ系粒子の製造法(1)に記載の前記工程(c)と同様な条件下で、前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥することができる。しかし、前記シリカ系粒子を洗浄するに際しては、純水で洗浄するほかに、該粒子が疎水性を示す等、適切な洗浄が難しい場合にはエタノール水溶液等でも洗浄して、前記工程(d)で使用された水酸化ナトリウム等のアルカリを完全に除去することが望ましい。
これにより、少なくとも粒子内部に空孔または空隙を有する球状の多孔質シリカ系粒子が得られる。
【0045】
また、このようにして得られた前記シリカ系粒子は、必要に応じて200〜1100℃、好ましくは500〜1000℃の温度で0.5〜2時間、加熱処理することが好ましい。ここで、この加熱温度が200℃未満であると、所望の圧縮強度を有するシリカ系粒子が得られない場合があり、また1100℃を超えると、得られるシリカ系粒子が焼結したり、あるいは崩壊したりする場合がある。さらに、加熱時間が0.5時間未満であると、得られるシリカ系粒子の内部に残存する水分などの除去が不十分となり、また2時間を超えて加熱処理してもその効果は変わらず、結果としてシリカ系粒子の生産効率が悪くなる。
これにより、少なくとも粒子内部に空孔または空隙を有し、しかも圧縮強度の高い球状の多孔質シリカ系粒子が得られる。
さらに、必要に応じて前記シリカ系粒子を分級工程に処して、粒子径の小さいものと大きいもの、或いはその片方を取り除くことにより、所望の平均粒子径を有するシリカ系粒子が得られる。
【0046】
被覆された多孔質シリカ系粒子の製造方法
前記多孔質シリカ系粒子の製造法(1)および前記多孔質シリカ系粒子の製造法(2)から得られる多孔質シリカ系粒子(乾燥または加熱処理されたもの)は、そのまゝ使用することができるが、その粒子表面を所望する無機化合物および/または有機化合物で被覆して使用することもできる。
以下に、前記シリカ系粒子を有機溶媒、水またはその混合液に分散させた懸濁液に、有機溶媒、水またはその混合液に溶解または分散させた無機化合物の溶液を添加して、該シリカ系粒子の表面を前記無機化合物もしくはその加水分解物で被覆する方法、および前記シリカ系粒子の表面に有機化合物を付着させ、さらに付着した有機化合物の少なくとも一部を溶融させることにより、該シリカ系粒子の表面を前記有機化合物もしくはその重合物で被覆する方法の代表例について説明する。
【0047】
無機化合物による被覆方法
前記多孔質シリカ系粒子の表面を無機化合物で被覆する代表例としては、前記シリカ系粒子を分散させた懸濁液に、珪酸液または有機珪素化合物を溶解または分散させた溶液を添加して、該シリカ系粒子の表面を珪素成分等の無機化合物で被覆する方法などがある。
この方法は、前記多孔質シリカ系粒子の表面(外周部)を前記無機化合物またはその加水分解物で被覆するもので、該粒子の表面を封止(シール)したり、或いは該粒子の圧縮強度を高めたりする場合に、適宜、実施される。
【0048】
前記珪酸液としては、アルカリ金属珪酸塩、有機塩基の珪酸塩等の珪酸塩水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリしたものが好適に使用される。これらの珪酸塩としては、珪酸ナトリウム(水ガラス)、珪酸カリウム等のアルカリ金属珪酸塩、第4級アンモニウムシリケート等の有機塩基の珪酸塩が挙げられる。
前記珪酸液の中でも、pHが2〜4、好ましくは2〜3の範囲にあり、シリカ濃度がSiO2基準で0.1〜8重量%、好ましくは1〜6重量%の範囲にあるものを使用することが望ましい。ここで、pHが2未満の珪酸液を製造するためには外部から不必要な酸を添加しなくてはならず、また、このようにして製造された珪酸液を用いてシリカ系粒子の調製や被覆を行った場合には、所望の粒子が得られなかったり、外部から添加した酸成分が不純分として粒子内などに残存したりするので好ましくない。また、pHが4を超えると、珪酸液の安定性が悪くなりゲル化し易くなるため、シリカ系粒子の表面を安定的に被覆することは困難になる。さらに、シリカ濃度が0.1重量%未満であると、珪素成分で被覆されたシリカ系粒子の生産効率が悪くなり、また8重量%を超えると、珪酸液の安定性が悪くなるため、シリカ系粒子の表面を安定的に被覆できない場合がある。
【0049】
さらに、前記有機珪素化合物としては、エチルシリケート、メチルシリケートおよび上記一般式(I)で表される有機珪素化合物が好適に使用される。この中でも、エチルシリケート、メチルシリケート等の有機珪素化合物を使用することが好ましい。
前記珪酸液または前記有機珪素化合物は、有機溶媒、水またはその混合液に溶解または分散させて、前記シリカ系粒子を有機溶媒、水またはその混合液に分散させた懸濁液中に添加することが好ましい。しかし、この添加方法を換えて、前記シリカ系粒子を分散させた懸濁液を、前記珪酸液または前記有機珪素化合物を溶解または分散させた溶液中に添加してもよい。
ここで添加される前記珪酸液または前記有機珪素化合物の量は、前記シリカ系粒子の表面に被覆される珪素成分の被覆層の厚さが0.005〜2μm、好ましくは0.01〜0.5μmの範囲となるように添加することが好ましい。
【0050】
前記珪酸液を使用する場合には、該珪酸液を溶解させた水溶液中に予め珪酸塩を攪拌しながら添加して、pHが7.5〜12、好ましくは8〜11の範囲となるように調製し、さらに20〜98℃、好ましくは40〜98℃の温度に加熱した後、前記シリカ系粒子を水に分散させた懸濁液中に攪拌しながら添加することが望ましい。このpHが7.5未満であると、シリカ系粒子の表面に珪素成分が被覆されにくくなり、また12を超えると、シリカ系粒子の溶解が生じる場合がある。さらに、加熱温度が20℃未満であると、シリカ粒子の表面に珪素成分が被覆されなかったり、その被覆速度が遅かったりする。また、加熱温度が98℃を超えると、溶媒として水を使用する場合には、その水が沸騰し易くなり、結果として被覆面(被覆層の厚さ等)が不均一になる傾向がある。
また、前記珪酸塩としては、前記珪酸液の調製時に使用されたものと同じものを用いることが望ましい。
【0051】
なお、前記シリカ系粒子を含む懸濁液中に前記珪酸液を含む水溶液を添加した後の処理時間は、前記シリカ系粒子の表面に被覆される珪素成分の被覆層の厚さによっても異なるが、0.5〜12時間、好ましくは1〜6時間であることが望ましい。この処理時間が0.5時間未満であると、前記珪酸液(珪素成分)がシリカ系粒子の表面に十分に被覆されず、また12時間を超えて処理しても、その効果は同じであり、結果として珪素成分で被覆されたシリカ系粒子の生産性が悪くなる。
前記有機珪素化合物としてエチルシリケートを使用する場合には、水、エチルシリケートと均一に混合できるアルコールなどの有機溶媒を用い、さらにpHが7.5〜12の範囲となるように調製して、20〜98℃、好ましくは40〜98℃の温度条件下でエチルシリケートの加水分解反応を起こさせることが望ましい。このpHが7.5未満であると、エチルシリケートの加水分解反応が進みにくく、また12を超えると、シリカ系粒子の溶解が生じる場合がある。さらに、加熱温度が20℃未満であると、シリカ粒子の表面に珪素成分が被覆されなかったり、あるいは被覆されたとしてもその被覆速度が遅かったりする。また、加熱温度が98℃を超えると、溶媒が沸騰し易くなり、結果として被覆面(被覆層の厚さ等)が不均一になる傾向がある。
【0052】
次いで、前記水溶液からシリカ系粒子を遠心分離器で分離し、得られたケーキ状物質に純水を添加して攪拌しながら前記シリカ系粒子の分散液を調製し、さらに遠心分離器にかけてこのシリカ系粒子(ケーキ状物質)を分離する操作を繰り返し行うことが好ましい。
このようにして十分に洗浄されたシリカ系粒子を、50〜200℃、好ましくは80〜150℃の温度で0.5〜12時間、乾燥させると、粒子内部に空孔または空隙を有し、しかも表面が珪素成分で被覆されたシリカ系粒子が得られる。ここで、乾燥温度が50℃未満であると、得られるシリカ系粒子の内部に残存する水などの除去が不十分となり、また200℃を超えると、得られるシリカ系粒子の末端に一部、存在する有機基が取れ易くなる(ただし、前記有機珪素化合物の末端に存在する有機基によっても異なる)ので、この有機基を必要とするシリカ系粒子(例えば、疎水性等の性状を有するもの)を調製する場合には、これ以下の温度で乾燥することが望ましい。
【0053】
さらに、必要に応じて前記シリカ系粒子は、200〜1100℃、好ましくは500〜1000℃の温度で0.5〜2時間、加熱処理することが好ましい。ここで、この加熱温度が200℃未満であると、所望の圧縮強度を有するシリカ系粒子が得られない場合があり、また1100℃を超えると、得られるシリカ系粒子が焼結したり、あるいは崩壊したりする場合がある。さらに、加熱時間が0.5時間未満であると、得られるシリカ系粒子の内部に残存する水分などの除去が不十分となり、また2時間を超えて加熱処理してもその効果は変わらず、結果としてシリカ系粒子の生産効率が悪くなる。
これにより、粒子内部に空孔または空隙を有し、しかもその表面(外周部)がシリカ等の珪素成分で被覆してなる圧縮強度に優れた球状のシリカ系粒子が得られる。
さらに、必要に応じて前記シリカ系粒子を分級工程に処して、粒子径の小さいものと大きいもの、或いはその片方を取り除くことにより、所望の平均粒子径を有するシリカ系粒子が得られる。
【0054】
有機化合物による被覆方法
前記多孔質シリカ系粒子の表面を有機化合物で被覆する代表例としては、本出願人の先願に係る特開平8−328922号公報にも示されるように、前記シリカ系粒子の表面に微粉末状の有機化合物を付着させ、さらに付着した有機化合物の少なくとも一部を溶融させることにより、前記シリカ系粒子の表面を該有機化合物で被覆する方法などがある。
この方法は、前記多孔質シリカ系粒子の表面を前記有機化合物で被覆するもので、該粒子の表面を封止(シール)したり、或いは該粒子の圧縮強度や弾性率を高めたりする場合に、適宜、実施される。
【0055】
前記有機化合物としては、特に制限されるものではないが、ガラス転移点が200℃以下の熱可塑性合成樹脂または硬化温度が200℃以下の熱可塑性合成樹脂であることが好ましい。これらの中でも、メチルメタクリレート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂またはこれらの混合物から選ばれた熱可塑性合成樹脂を使用することが望ましい。
前記有機化合物は、微粉末状であればその形状には特に制限を受けるものではないが、球状粒子であることが望ましい。しかし、該粒子の平均粒子径d(形状が方形等である場合には長手方向の長さ)は、前記多孔質シリカ系粒子の平均粒子径をDとした場合、D/5以下、好ましくはD/7以下であることが望ましく、更に詳しくは0.01〜2μm、好ましくは0.01〜1μm以下であることが望ましい。ここで、前記有機化合物の平均粒子径dがD/5以下でないと、前記多孔質シリカ系粒子の表面に該有機化合物が均一に付着しなかったり、たとえ付着してもその表面から脱落したりするので好ましくない。
【0056】
前記有機化合物の微粉末状粒子は、前記多孔質シリカ系粒子と混合して該シリカ系粒子の表面に付着させ、次いでこの有機化合物が付着した前記多孔質シリカ系粒子をボールミル等の容器に入れて該シリカ系粒子の表面に衝撃を与えることにより、前記有機化合物の少なくとも一部を溶融させて該有機系化合物の粒子同士を接合させると共に、該シリカ系粒子の表面に固着させる。ここで、前記有機化合物の微粉末状粒子は、その形状を維持して互いに隣接する粒子同士が接合した状態であってもよく、更にはその一部または大部分が融解して薄膜状になっていてもよい。
前記ボールミルに用いられるボールとしては、比較的、直径が大きく重さのある球形のもの(例えば、ステンレス製金属玉)であれば特に制限を受けるものではないが、その直径は1〜30mmの範囲にあることが望ましい。
【0057】
さらに、前記有機化合物の微粉末状粒子は、前記多孔質シリカ粒子と混合して該シリカ系粒子の表面に付着させ、次いでこの有機化合物が付着した前記多孔質シリカ系粒子を予め加熱したすり鉢中に入れて軽くすり潰すことにより、前記有機化合物の少なくとも一部を溶融させて該シリカ粒子表面に固着させることもできる。この場合も同様に、前記有機化合物の微粉末状粒子は、その形状を維持して互いに隣接する粒子同士が接合した状態であってもよく、更にはその一部または大部分が融解して薄膜状になっていてもよい。
これにより、粒子内部に空孔または空隙を有し、しかもその表面(外周部)が有機化合物で被覆してなる圧縮強度や弾性率に優れた球状のシリカ系粒子が得られる。
さらに、必要に応じて前記シリカ系粒子を分級工程に処して、粒子径の小さいものと大きいもの、或いはその片方を取り除くことにより、所望の平均粒子径を有するシリカ系粒子が得られる。
【0058】
多孔質シリカ系粒子
本発明に係る多孔質シリカ系粒子は、上記の方法から得られるシリカ系粒子であって、該粒子の平均粒子径が1〜15μmの範囲にあり、しかも充填嵩密度(Compacted Bulk Density)が0.20〜0.76g/cm3、好ましくは0.25〜0.62g/cm3の範囲にある。また、前記多孔質シリカ系粒子は、吸油量が0.51〜1.55ml/g、好ましくは0.63〜1.53ml/gの範囲にあり、さらに圧縮強度が4〜100kgf/mm2の範囲にあることが好ましい。
本発明に係る多孔質シリカ系粒子の製造方法によれば、前記多孔質シリカ系粒子の平均粒子径が1〜15μm、好ましくは2〜10μmの範囲にあるものが得られる。この平均粒子径については、前記シリカ系粒子の使用目的や用途によってその所望値が大きく変わってくるので、前記調製工程(a)での操作条件その他を調整して、その大きさを適宜、制御する必要がある。ここで、平均粒子径が1μm未満のシリカ系粒子は製造可能であるものの、粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子は必ずしも得られず、また平均粒子径が15μmを超えた多孔質シリカ系粒子を得ることは困難である。この平均粒子径は、前記シリカ系粒子前駆体の平均粒子径に依存して概ね決まってしまうものであるが、前記調製工程(a)の操作条件を変えても15μmを超えた多孔質シリカ系粒子を得ることは難しい。
【0059】
また、本発明方法によれば、充填嵩密度が0.20〜0.76g/cm3、好ましくは0.25〜0.62g/cm3、さらに好ましくは0.25〜0.60g/cm3範囲にある多孔質シリカ系粒子が得られる。この多孔質シリカ系粒子は、このように粒子密度が極めて低く、疎水性を呈するものが多いため、水などの溶媒に浮いてしまい、更には粒子内部に形成される空孔や空隙の細孔径が比較的大きいので、従来公知の水銀法等を用いて該粒子の見掛け密度等を正確に測定することは難しい。そこで、以下に示す方法で、該粒子の吸油量を測定したところ、0.51〜1.55ml/g、好ましくは0.63〜1.53ml/gの範囲にあることが分かった。さらに、この好ましき範囲について述べれば、粒子表面に被膜層を有する多孔質シリカ系粒子の場合には、0.63〜1.32ml/g、さらに好ましくは0.63〜0.90ml/gの範囲にあり、また粒子表面に被膜層を有しない多孔質シリカ系粒子の場合には、0.70〜1.53ml/g、さらに好ましくは0.74〜1.53ml/gの範囲にあった。これは、前記被膜層には細孔を有するものの、粒子内部に比べてかなり密であり、また粒子内部も該被覆層を有しないシリカ系粒子に比べて些か密であるため、吸油量も少なくなる傾向を示している。また、この数値から、該粒子の孔隙率(Porosity)を算出したところ、概ね20〜70%の範囲にあった。
【0060】
さらに、本発明方法によれば、圧縮強度が4〜100kgf/mm2の範囲にある球状の多孔質シリカ系粒子が得られる。さらに詳しくは、多孔質化が進んだシリカ系粒子の場合、乾燥処理のみを施したシリカ系粒子の圧縮強度は、概ね4〜15kgf/mm2の範囲にあり、また比較的低い温度条件下(例えば、500℃)で加熱処理したシリカ系粒子の圧縮強度は、概ね15〜30kgf/mm2の範囲にあり、さらに比較的高い温度条件下(例えば、1000℃)で加熱処理したシリカ系粒子の圧縮強度は、概ね30〜100kgf/mm2の範囲にあった。よって、前記多孔質シリカ系粒子を加熱処理するかどうか、更にはどの位の温度で加熱処理するかについては、その使用目的や用途に応じて適宜、決定することが望ましい。
【0061】
このように、本発明に係る多孔質シリカ系粒子の圧縮強度が比較的高いのは、粒子内部が有機珪素化合物の加水分解物に由来する−Si−O−Si−構造の骨格で形成されていることによるものと考えられる。なお、前記多孔質シリカ系粒子の製造方法(2)から得られるシリカ系粒子(粒子表面に存在する被覆層を取り除いたもの)から見る限りでは、添加された前記アルミン酸ナトリウムに由来するアルミニウム成分は、これをAl23で表し、前記シリカ系粒子をSiO2で表したとき、該シリカ系粒子に対し0.5重量%以下しか含まれていないので、前記骨格の構成には関与していないものと考えられる。
なお、本発明において前記平均粒子径は、コールターカウンター(ベックマンコールター社製)を用いて、前記シリカ系粒子群から取得された10000個の粒子サンプルの粒子径を測定した結果の平均値から求められる。
【0062】
また、前記充填嵩密度、吸油量および圧縮強度は、以下の方法で測定される。
充填嵩密度
粒子サンプル約2〜3gを取得して、その重量を測定する。次に、この粒子サンプルを25mlのメスシリンダーに入れ、これらがメスシリンダー内に最密充填されるまでタッピングして、その容積(容量)を読み取る。次いで、次式により充填嵩密度を算出する。
充填嵩密度(g/cm3)=粒子サンプルの重量(g)/最密充填容量(cm3
【0063】
吸油量
顔料試験方法JIS−K5101に準拠して、粒子サンプルの吸油量を測定する。この方法は、JIS−K5101に記載されているので、その詳細は省略するが、一定の条件下で粒子サンプルに吸収される煮あまに油の量を測定して、その吸油量(ml/100g)を求めるものである。ただし、本発明の明細書においては、吸油量の単位をml/gで表示してある。
圧縮強度
粒子サンプルを圧縮強度測定装置(例えば、島津製作所 MCTM−200)上に載置し、これに圧力を徐々にかけていき、該粒子が破壊される時の圧縮強度(圧縮破壊強度)を求める。さらに詳しく述べれば、負荷速度定数を1として、該粒子の粒径によって負荷速度を0.029〜0.27gf/secの範囲で変更して測定する。
【0064】
多孔質シリカ系粒子の用途
前記多孔質シリカ系粒子の製造法(1)および前記多孔質シリカ系粒子の製造法(2)から得られる多孔質シリカ系粒子(乾燥または加熱処理されたもの)は、有機溶媒、水またはその混合液に溶解または分散された無機化合物および/または有機化合物を吸収または吸着する能力に優れているため、これらの化合物を該粒子中に吸収または吸着させることにより、その化合物自体が保有する機能や効能等を安定的かつ長期的に発揮させることができる。また、このようにして得られるシリカ系粒子の表面を珪素成分等の無機化合物や高分子化合物等の有機化合物による薄膜で被覆すると、該粒子中に吸収または吸着された前記無機化合物および/または前記有機化合物が短時間で外部に溶出するのを抑制または防止することができる。一方では、これらの被覆層を有するシリカ系粒子(これをマトリックス成分や有機化合物等と混合したものを含む)を加熱したり、溶液に浸したり或いは機械的に圧縮したりすると、前記被覆層が融解、溶解または破損して該粒子中に吸収または吸着された前記物質を瞬時または短時間で外部に流出させることができるので、このように吸収または吸着された物質の機能や効能を効果的に発揮させることができる。すなわち、本発明に係る多孔質シリカ系粒子は、これらの物質のマイクロカプセル化の用途に好適に使用することができる。
【0065】
前記の多孔質シリカ系粒子の内部に前記無機化合物および/または前記有機化合物を吸収または吸着させるためには、従来公知の方法を使用することができるが、その代表例としては、以下のようなものがある。
先ず始めに、前記多孔質シリカ系粒子に吸収または吸着させることを必要する、ケイ素、チタニウム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、アンチモン、錫、インジウム等の無機金属化合物や有機金属化合物、あるいは炭化水素類、アミン類、顔料、染料、香料等の有機化合物を準備し、必要に応じて所望の溶液(水、有機溶媒等)に溶解または分散させて、所定濃度に希釈した調合液を調製する。
【0066】
次いで、1)この調合液を前記多孔質シリカ系粒子の上部にゆっくりと添加して該粒子の細孔容積に相当する量を該粒子に吸収または吸着させる方法、あるいは2)この調合液(細孔容積相当量)と前記多孔質シリカ系粒子を容器に入れ、さらに容器内を真空状態にして、前記調合液を該粒子に吸収または吸着(含浸)させる方法に供する。さらに、使用目的に応じて、このように吸収または吸着された物質に加熱処理(例えば、乾燥のため)や加水分解処理を施したりすることがある。また、必要に応じて、未吸着物質の分離や洗浄を行うこともある。
このようにして前記シリカ系粒子の内部に前記無機化合物および/または前記有機化合物を吸収または吸着させてなるシリカ系粒子の表面に無機化合物または有機化合物を被覆する方法としては、上記の「被覆された多孔質シリカ系粒子の製造方法」のところに記載した方法と同様な方法を採用することができる。
【0067】
さらに、本発明に係る多孔質シリカ系粒子、特にその表面(外周部)に被覆層を有する多孔質シリカ系粒子は、粒子内部に数多くの空孔または空隙を有しているため、その屈折率が1.10〜1.40、さらに詳しくは1.15〜1.35の範囲にあるなど、特異な物理特性を備えたものが得られる。
これにより、被膜形成用のマトリックス成分と混ぜて基材上に塗布することにより、該基材上に低屈折率被膜、低誘電率被膜、低反射被膜等を形成する用途等に使用することができる。
【0068】
前記マトリックス成分としては、従来から使用されているポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂、これら樹脂の混合物、さらにはこれら樹脂の共重合体や変成体等の塗料用樹脂、または下記一般式(II)、(III)、(IV)等で表される珪素化合物、これら珪素化合物の混合物、さらにはこれらの部分加水分解物および/または加水分解物等の珪素化合物が挙げられる。
【0069】
nSi(OR)4-n ・・・(II)
nSiX′4-n ・・・(III)
(式中、Xは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基もしくはビニル基を表し、Rは水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基もしくはビニル基を表し、X′はハロゲン原子を表す。また、nは0〜3の整数である。)
【0070】
13
| |
−(Si−N)− ・・・(IV)

2
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立した水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0071】
前記マトリックス成分として塗料用樹脂を用いる場合には、例えば、前記多孔質シリカ系粒子を直接、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、炭化水素類等から選ばれた有機溶媒に分散させるか、あるいは水に分散させた後、その中に含まれる水を前記有機溶媒とロータリーエバポレータ等を用いて溶媒置換することにより、前記シリカ系粒子が分散された有機溶媒液を調合し、次いでこれを塗料用樹脂(必要に応じ、前記の有機溶媒に溶解させたもの)と混合した被膜形成用塗布液等が得られる。
【0072】
また、前記マトリックス成分として珪素化合物を用いる場合には、例えば、前記珪素化合物を水および触媒の存在下で加水分解して得られた部分加水分解物および/または加水分解物を含む混合液に、前記多孔質シリカ系粒子もしくはこれを水に分散させて得られたシリカ系粒子分散液を混合し、さらに必要に応じて前記部分加水分解物および/または加水分解物を加水分解した後、その中に含まれる水をアルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、炭化水素類等から選ばれた有機溶媒とロータリーエバポレータ等を用いて溶媒置換することにより、前記多孔質シリカ系粒子と前記加水分解物を該有機溶媒中に分散させた被膜形成用塗布液等が得られる。
【0073】
前記の被膜形成用塗布液は、その用途によっても異なるが、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等で構成されたプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル、さらにはガラス板、半導体基板、液晶表示板、陰極線管、蛍光表示管等の基材上に塗布して使用される。
この塗布液は、従来周知のディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法等を用いて基材上に塗布して乾燥され、さらに必要に応じて加熱あるいは紫外線照射等を施して硬化させることにより、所望する被膜、例えば低屈折率被膜、低誘電率被膜、低反射被膜等を基材上に形成することができる。
【0074】
この被膜は、単独で使用してもよいが、その用途によっては、保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物膜、さらにはプライマー膜等と組み合わせて使用することができる。このように他の被膜と組み合わせて使用する場合、前記被膜は、基材の最外表面に形成されている必要はない。
前記シリカ系粒子を低屈折率被膜の形成に用いる場合、該シリカ系粒子と前記マトリックス成分の混合割合は、シリカ系粒子をSxで表し、マトリックス成分をMxで表したとき、その重量比Sx/Mxが0.1/9.9〜9/1、好ましくは1/9〜8/2の範囲となるようにすることが望ましい。この重量比が1/99(0.1/9.9)未満では、該粒子の添加効果、すなわち被膜の屈折率を低下させる効果が得られず、また9/1を超えると、被膜の強度や基材との密着性が低下して実用的でなくなる。
【0075】
前記基材の表面に形成される被膜の屈折率は、前記シリカ系粒子とマトリックス成分との混合比率や使用されるマトリックス成分の屈折率によっても異なるが、1.13〜1.44の範囲にあるものが得られる。これは、前記シリカ系粒子が、従来公知のシリカ系粒子に較べて優れた低屈折率特性を有していることによる。
前記シリカ系粒子を低誘電率被膜の形成に用いる場合、該シリカ系粒子と前記マトリックス成分の混合割合は、シリカ系粒子をSxで表し、マトリックス成分をMxで表したとき、その重量比Sx/Mxが1/9〜9/1、好ましくは2/8〜8/2、さらに好ましくは3/7〜7/3の範囲となるようにすることが望ましい。この重量比が1/9未満では、比誘電率が3.0以下の被膜を形成することが困難であり、また9/1を超えると、被膜の強度や基材との密着性が低下して実用的でなくなる。
【0076】
前記基材の表面に形成される被膜の比誘電率は、前記シリカ系粒子とマトリックス成分との混合比率や使用されるマトリックス成分の比誘電率によっても異なるが、3.5以下、更に詳しくは3.0以下のものが得られる。
マトリックス成分として塗料用樹脂を用いる場合には、比誘電率が3.5以下、さらに詳しくは1.8〜3.0の範囲にあるもが得られ、またマトリックス成分として有機珪素化合物等の珪素化合物を用いる場合には、比誘電率が3.5以下、さらに詳しくは1.8〜3.0の範囲にあるもが得られる。これは、内部に空孔または空隙を有するシリカ系粒子が、該被膜の低誘電率化に大きく寄与していることによる。
【0077】
前記シリカ系粒子を低反射率被膜の形成に用いる場合、該被膜は、高屈折率基材の表面または該基材上に形成された高屈折率被膜の表面に形成することが望まれる。例えば、基材の屈折率が1.6以下の場合には、その表面に金属酸化物粒子とマトリックス成分等を含む塗布液を塗布して得られる高屈折率被膜を形成し、さらにその上に前記低屈折率被膜を形成すると、これら被膜の屈折率の差が大きくなるため、反射防止機能に優れた被膜付基材が得られる。
さらに、本発明に係る前記シリカ系粒子を使用すれば、高い被膜強度や透明性等が要求される被膜を基材上に容易に形成することができる。
【0078】
また、本発明に係る多孔質シリカ系粒子、特に粒子表面にも空孔や空隙を有する前記多孔質シリカ系粒子は、その比表面積が大きいので、ガス状物質または液状物質中に含まれる不純物を除去する用途にも、好適に使用することができる。この場合、この多孔質シリカ系粒子は、これらの不純物を直接、吸着させる吸着剤としてそのまゝ使用することができるが、前記不純物の吸着や分解等を促進させる活性金属その他を担持して使用することもできる。さらに、担持される活性金属成分によっては、優れた触媒機能を発揮させることができるので、これらの触媒担体として使用することもできる。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに具体的に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に記載された範囲に限定されるものではない。
【実施例1】
【0079】
多孔質シリカ系粒子Aの調製
工程(a)
内容積5リットルの容器に純水3290.4gを入れ、50rpmの速度で攪拌しながらこの純水の温度を約0℃(水が凍らない0℃近傍の温度)に冷却した。次いで、この純水に、予め約5℃の温度に調節したビニルトリメトキシシラン(信越化学(株)製)375.0gを静かに加え、ビニルトリメトキシシラン層(上部)と水層(下部)からなる二層分離液を調製した。さらに、このビニルトリメトキシシラン層の温度が約1℃になるまで、50rpmの速度で攪拌しながら冷却した。
また、内容積100ccの容器に純水41.9gを入れ、これに100rpmの速度で攪拌しながらn−ブチルアルコール(関東化学(株)製)1.05gおよび28重量%濃度のアンモニア水0.4gを加え、さらにアニオン系界面活性剤であるアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王(株)製)3.75gを加えた混合液を調製した。さらに、この混合液の温度が約5℃になるまで、100rpmの速度で攪拌しながら冷却した。
【0080】
次いで、この混合液を、前記二層分離液の上部に位置する有機珪素化合物層と下部に位置する水層が完全に混合しない程度に50rpmの速度で攪拌しながら、前記水層中に50秒かけて添加した。ここで、前記添加は、水層下部まで導管を入れ、該導管の先端ノズルから前記混合液を流出させることによって行った。その後、この混合液を添加した前記水層(混合水溶液)を約1℃の温度に保持し、前記有機珪素化合物の加水分解反応が進んで前記有機珪素化合物層がなくなるまで約4.5時間、50rpmの速度で攪拌を続けた。この時、該水層(混合水溶液)のpHは、平均で約8.8であった。
さらに、前記有機珪素化合物層がなくなった前記混合水溶液を、50rpmの速度で静かに攪拌しながら、約15℃の温度条件下で3時間、放置した。
これにより、前記水層(混合水溶液)の中にビニルメトキシシランの部分加水分解物および/または加水分解物からなるシリカ系粒子前駆体A-(a)を含む混合水溶液が得られた。
【0081】
工程(b)
前記工程(a)で得られた前記混合水溶液3712.5gに、メタアルミン酸ナトリウムをAl23換算基準で22.12重量%含むアルミン酸ナトリウム水溶液(触媒化成工業(株)製)42.7gを200rpmの速度で攪拌しながら、60秒かけて添加した。ここで、このアルミン酸ナトリウムをAl23で表し、前記工程(a)で使用された前記有機珪素化合物(ビニルトリメトキシシラン)をSiO2で表したとき、その重量比(Al23/SiO2)は、5/95であった。
なお、前記アルミン酸ナトリウム水溶液の添加は、前記混合水溶液の液面上部から行った。この間、前記混合水溶液は、約18℃の温度に保持されていた。
さらに、この混合水溶液を、200rpmの速度で静かに攪拌しながら、約18℃の温度条件下で15時間、放置した。
これにより、前記シリカ系粒子前駆体中に含まれる一部のシリカ系成分が溶出され、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子A-(b)を含む混合水溶液が得られた。
【0082】
工程(c)
前記工程(b)で得られた前記混合水溶液3643gを、遠心分離器(コクサン(株)製 H−900)にかけて前記シリカ系粒子を分離した。さらに、得られたケーキ状物質に純水を添加しながら攪拌して分散液を調製し、同様な遠心分離操作を繰り返し3回、行った。このようにして十分に洗浄されたシリカ系粒子(ケーキ状物質)を110℃で12時間かけて乾燥した。
これにより、粒子内部に空孔または空隙を有し、さらにその表面(外周部)がシリカ系成分の被覆層で覆われた多孔質シリカ系粒子A-(c)63gが得られた。
【実施例2】
【0083】
多孔質シリカ系粒子Bの調製
工程(a)
内容積5リットルの容器に純水3290.4gを入れ、50rpmの速度で攪拌しながらこの純水の温度を約0℃(水が凍らない0℃近傍の温度)に冷却した。次いで、この純水に、予め約5℃の温度に調節したメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製)375.0gを静かに加え、メチルトリメトキシシラン層(上部)と水層(下部)からなる二層分離液を調製した。さらに、このメチルトリメトキシシラン層の温度が約1℃になるまで、50rpmの速度で攪拌しながら冷却した。
また、内容積100ccの容器に純水69.8gを入れ、これに100rpmの速度で攪拌しながらn−ブチルアルコール(関東化学(株)製)1.75gおよび28重量%濃度のアンモニア水0.7gを加え、さらにアニオン系界面活性剤であるアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王(株)製)3.75gを加えた混合液を調製した。さらに、この混合液の温度が約5℃になるまで、100rpmの速度で攪拌しながら冷却した。
【0084】
次いで、この混合液を、前記二層分離液の上部に位置する有機珪素化合物層と下部に位置する水層が完全に混合しない程度に50rpmの速度で攪拌しながら、前記水層中に100秒かけて添加した。ここで、前記添加は、水層下部まで導管を入れ、該導管の先端ノズルから前記混合液を流出させることによって行った。その後、この混合液を添加した前記水層(混合水溶液)を約0〜1℃の温度に保持し、前記有機珪素化合物の加水分解反応が進んで前記有機珪素化合物層がなくなるまで約4.5時間、50rpmの速度で攪拌を続けた。この時、該水層(混合水溶液)のpHは、平均で約9.2であった。
さらに、前記有機珪素化合物層がなくなった前記混合水溶液を、50rpmの速度で静かに攪拌しながら、約15℃の温度条件下で2時間、放置した。
これにより、前記水層(混合水溶液)の中にメチルトリメトキシシランの部分加水分解物および/または加水分解物からなるシリカ系粒子前駆体B-(a)を含む混合水溶液が得られた。
【0085】
工程(b)
前記工程(a)で得られた前記混合水溶液3741.4gに、メタアルミン酸ナトリウムをAl23換算基準で22.12重量%含むアルミン酸ナトリウム水溶液(触媒化成工業(株)製)42.7gを200rpmの速度で攪拌しながら、60秒かけて添加した。ここで、このアルミン酸ナトリウムをAl23で表し、前記工程(a)で使用された前記有機珪素化合物(メチルトリメトキシシラン)をSiO2で表したとき、その重量比(Al23/SiO2)は、5/95であった。
なお、前記アルミン酸ナトリウム水溶液の添加は、前記混合水溶液の液面上部から行った。この間、前記混合水溶液は、約18℃の温度に保持されていた。
さらに、この混合水溶液を、200rpmの速度で静かに攪拌しながら、約18℃の温度条件下で15時間、放置した。
これにより、前記シリカ系粒子前駆体中に含まれる一部のシリカ系成分が溶出され、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子B-(b)を含む混合水溶液が得られた。
【0086】
工程(c)
前記工程(b)で得られた前記混合水溶液3643gを、遠心分離器(コクサン(株)製 H−900)にかけて前記シリカ系粒子を分離した。さらに、得られたケーキ状物質に純水を添加しながら攪拌して分散液を調製し、同様な遠心分離作業を繰り返し3回、行った。このようにして十分に洗浄されたシリカ系粒子(ケーキ状物質)を110℃で12時間かけて乾燥した。
これにより、粒子内部に空孔または空隙を有し、を有し、さらにその表面(外周部)がシリカ系成分の被覆層で覆われた多孔質シリカ系粒子B-(c)79gが得られた。
【0087】
工程(d)
前記工程(c)で得られたシリカ系粒子B-(c)30gを、1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液(関東化学(株)製)225gの中に添加し、続いてエタノール25gを加えたのち、150rpmの速度で攪拌しながら50℃に加温した。さらに、この温度に保って、150rpmの速度で攪拌しながら、2時間、放置した。
これにより、前記シリカ系粒子の表面を覆っていたシリカ系成分(被覆層)の一部が溶解されたシリカ系粒子B-(d1)を含むアルカリ水溶液(1)が得られた。
同様にして、前記工程(c)で得られたシリカ系粒子B-(c)30gを、3重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液(関東化学(株)製)225gの中に添加し、続いてエタノール25gを加えたのち、150rpmの速度で攪拌しながら50℃に加温した。さらに、この温度に保って、150rpmの速度で攪拌しながら、4時間、放置した。
これにより、前記シリカ系粒子の表面を覆っていたシリカ系成分(被覆層)の全てが溶解されたシリカ系粒子B-(d2)を含むアルカリ水溶液(2)が得られた。
【0088】
工程(e)
前記工程(d)で得られたアルカリ水溶液(1)および(2)に含まれるシリカ系粒子B-(d1)およびB-(d2)をそれぞれ濾過分離した後、純水で十分に洗浄し、その後、110℃の温度で12時間かけて乾燥した。
これにより、粒子表面を覆っていた被覆層の全てが溶解されずに一部、残っている多孔質シリカ系粒子B-(e1)18gおよび該被覆層の全てが溶解されて粒子表面からなくなった多孔質シリカ系粒子B-(e2)5gが得られた。
【0089】
加熱処理工程
前記多孔質シリカ系粒子B-(e1)およびB-(e2)をそれぞれ大気中雰囲気下、500℃の温度で2時間かけて加熱処理した。
これにより、加熱処理された、少なくとも粒子内部に空孔または空隙を有するシリカ系粒子B-(s1)およびB-(s2)が得られた。
さらに、前記多孔質シリカ系粒子B-(e2)を大気中雰囲気下、1000℃の温度で2時間かけて加熱処理した。
これにより、加熱処理された、少なくとも粒子内部に空孔または空隙を有するシリカ系粒子B-(s3)が得られた。
【実施例3】
【0090】
被覆された多孔質シリカ系粒子Cの調製
前記シリカ系粒子B-(e2)4gを純水80gに添加し、続いてエタノール12gを加えて分散させ、これに1重量%濃度の水酸化ナトリウム(関東化学(株)製)を添加してpHを11に調節した後、100rpmの速度で攪拌しながら90℃に加温した。さらに、この温度に保ちながら、珪酸ナトリウム(洞海化学(株)製)の水溶液から陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして得られた3.5重量%濃度(SiO2基準)の珪酸液15.3gを添加し、2時間、100rpmの速度で攪拌を続けた。
次いで、前記水溶液からシリカ系粒子を遠心分離器(コクサン(株)製 H−900)で分離し、得られたケーキ状物質に純水を添加して200rpmの速度で攪拌しながら前記シリカ系粒子の分散液を調製し、さらに遠心分離器にかけてこのシリカ系粒子を分離する操作を繰り返し3回、行った。このようにして十分に洗浄されたシリカ系粒子(ケーキ状物質)を110℃で2時間かけて乾燥した。
これにより、粒子内部に空孔部または空隙部を有し、しかも少なくともその表面が珪素成分で被覆されたシリカ系粒子C-(e)が得られた。
【0091】
加熱処理工程
前記シリカ系粒子C-(e)3gを大気中雰囲気下、500℃の温度で2時間かけて加熱処理した。これにより、加熱処理された、粒子内部に空孔または空隙を有するシリカ系粒子C-(s)が得られた。
【実施例4】
【0092】
多孔質シリカ系粒子D〜Qの調製
実施例2における工程(a)の操作条件を表1に示すように変更して、シリカ系粒子前駆体D-(a)〜Q-(a)を調製した以外は、前記シリカ系粒子B-(e2)の調製と同様な条件下で、以下のシリカ系粒子D-(e2)〜Q-(e2)を調製した。なお、実施例2との対比を容易とするために、前記シリカ系粒子B-(e2)を調製するための操作条件を表1に併記する。
【0093】
【表1】

【実施例5】
【0094】
多孔質シリカ系粒子R〜Xの調製
実施例2における工程(b)の操作条件を表2に示すように変更して、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子R-(b)〜X-(b)を調製した以外は、前記シリカ系粒子B-(e2)の調製と同様な条件下で、以下のシリカ系粒子R-(e2)〜X-(e2)を調製した。なお、実施例2との対比を容易とするために、前記シリカ系粒子B-(e2)を調製するための操作条件を表2に併記する。
【0095】
【表2】

【実施例6】
【0096】
多孔質シリカ系粒子
実施例1〜5で調製された多孔質シリカ系粒子A-(c)、B-(c)、B-(e1)、B-(e2)、B-(s1)、B-(s2)、B-(s3)、C-(e)、C-(s)およびD-(e2)〜X-(e2)について、その平均粒子径(ベックマンコールター社製 マルチサイザーII)、充填嵩密度、吸油量および圧縮強度(島津製作所 MCTM−200)を測定した。その結果を表3に示す。
【0097】
表3からも明らかなように、本発明に係る多孔質シリカ系粒子A-(c)、B-(c)、B-(e1)、B-(e2)、B-(s1)、B-(s2)、B-(s3)、C-(e)、C-(s)、E-(e2)、F-(e2)、G-(e2)、J-(e2)、L-(e2)、M-(e2)、N-(e2)、O-(e2)、Q-(e2)、S-(e2)、T-(e2)、U-(e2)、V-(e2)およびW-(e2)は、平均粒子径が1〜15μmの範囲にあり、しかも充填嵩密度が0.25〜0.62g/cm3の範囲にあった。すなわち、これらのシリカ系粒子は、かなり多孔質化が進んでいることがわかった。(表3において、これらのシリカ系粒子については、多孔質化の度合いが「高い」旨、表記する。)
【0098】
さらに、前記多孔質シリカ系粒子の吸油量は0.63〜1.53ml/gの範囲にあり、また圧縮強度は4〜100kgf/mm2の範囲にあった。
これについて、さらに詳しく述べれば、粒子表面に被膜層を有する多孔質シリカ系粒子A-(c)およびB-(c)の場合、あるいは粒子表面に被覆層が一部、残っている多孔質シリカ系粒子B-(e1)の場合には、吸油量が0.63〜1.32ml/gの範囲内にあり、また粒子表面に被膜層を有しない多孔質シリカ系粒子B-(e2)、B-(s1)、B-(s2)、B-(s3)、E-(e2)、F-(e2)、G-(e2)、J-(e2)、L-(e2)、M-(e2)、N-(e2)、O-(e2)、Q-(e2)、S-(e2)、T-(e2)、U-(e2)、V-(e2)およびW-(e2)の場合には、吸油量が0.70〜1.53ml/gの範囲内にあることがわかった。さらに、粒子表面に被覆層を有しない前記多孔質シリカ系粒子B-(e2)の表面が珪素成分で被覆した前記シリカ系粒子C-(e)およびC-(s)の場合においても、給油量は0.63〜1.32ml/gの範囲内にあった。
【0099】
また、乾燥処理のみを施した多孔質シリカ系粒子A-(c)、B-(c)、B-(e1)、B-(e2)、C-(e)、E-(e2)、F-(e2)、G-(e2)、J-(e2)、L-(e2)、M-(e2)、N-(e2)、O-(e2)、Q-(e2)、S-(e2)、T-(e2)、U-(e2)、V-(e2)およびW-(e2)の圧縮強度は、概ね4〜15kgf/mm2の範囲内にあり、また比較的低い温度条件下で加熱処理したシリカ系粒子B-(s1)、B-(s2)およびC-(s)の圧縮強度は、概ね15〜30kgf/mm2の範囲内にあり、さらに比較的高い温度条件下で加熱処理したシリカ系粒子B-(s3)の圧縮強度は、概ね30〜100kgf/mm2の範囲内にあることがわかった。
【0100】
一方、本発明に係る多孔質シリカ系粒子D-(e2)、H-(e2)、I-(e2)、K-(e2)、P-(e2)、R-(e2)およびX-(e2)は、平均粒子径が1〜15μmの範囲にあるものの、充填嵩密度が0.63〜0.76g/cm3の範囲にあった。すなわち、これらのシリカ系粒子は、あまり多孔質化が進んでいないことがわかった。(表3において、これらのシリカ系粒子については、多孔質化の度合いが「低い」旨、表記する。)
さらに、前記多孔質シリカ系粒子の吸油量は、0.51〜0.62ml/gの範囲にあり、また圧縮強度は30〜37kgf/mm2の範囲にあった。これは、前記の多孔質シリカ系粒子に比べて、粒子内部が密で、多孔質化が進んでいないことによるものである。しかし、後記表4に示すシリカ系粒子Y-(c)およびY-(s1)に比べれば、多孔質化が進んでいると云える。
また、前記多孔質シリカ系粒子T-(e2)は、その一部が溶解され、僅かではあるがその表面に付着物が見られた。
【0101】
この結果、本発明に係る多孔質シリカ系粒子の製造方法においても、その操作条件は以下の範囲から選択することが好ましいことがわかった。
1)シリカ系粒子前駆体を調製する前記工程a)において、前記の有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤の添加は、前記有機珪素化合物と水との混合水溶液(二層分離液)のpHが8.2〜9.8の範囲となるように行う。
2)前記工程a)において、前記の有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤の添加時および添加後、前記有機珪素化合物と水との混合水溶液(二層分離液)は、該混合水溶液の温度を0.1〜10℃に保ちながら、前記有機珪素化合物層が実質的になくなるまでゆっくりと攪拌する。
3)前記工程a)において、前記有機珪素化合物層が実質的になくなった後、前記混合水溶液は、攪拌しながら1〜30℃の温度条件下で0.1〜7時間、放置する。
4)粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する前記工程b)において、前記アルミン酸ナトリウムの添加は、該アルミン酸ナトリウムをAl23で表し、前記有機珪素化合物をSiO2で表したとき、その重量比Al23/SiO2が3/97〜20/80となる範囲で行う。
5)前記工程b)において、前記アルミン酸ナトリウムの添加後、前記混合水溶液は、攪拌しながら5〜30℃の温度条件下で0.5〜50時間、放置する。
【0102】
さらに、表3の結果を解析したところ、以下のようなことがわかった。
前記工程(a)において、前記の有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加するときの混合水溶液のpH値を小さくすると、平均粒子径の大きな多孔質シリカ系粒子が得られ、またこのpH値を大きくすると、前記平均粒子径が小さな多孔質シリカ系粒子が得られる傾向を示した。
前記工程(b)において、前記アルミン酸ナトリウムの添加量(Al23/SiO2換算基準の重量比)を多くすると、シリカ系粒子前駆体が溶解して崩壊する傾向となり、またこの添加量を少なくすると、シリカ系粒子前駆体中に浸透しづらくなり粒内が密で圧縮強度が大きく粒子密度が高くなる傾向を示した。
【0103】
また、前記工程(b)において、前記アルミン酸ナトリウム水溶液を添加した後の放置時間を短くすると、粒子密度が高くなり圧縮強度も高くなる傾向を示し、またこの放置時間を長くすると、粒子密度が低くなり、圧縮強度も低くなる傾向を示した。
さらに、前記多孔質シリカ系粒子B-(c)、B-(e1)およびB-(e2)について、走査型電子顕微鏡(日本電子データム(株)JSM―5410LV)で撮った顕微鏡写真(SEM)を図1〜図3に示す。
【0104】
図1に示すように、前記多孔質シリカ系粒子B-(c)は、粒子表面(外周部)が被覆層で覆われており、その表面には一部の空孔または空隙(比較的その口径が大きいものを意味し、以下同じ)しか認められなかった。しかし、該被覆層が一部、破損したものを観測すると、粒子内部に数多くの空孔または空隙が存在していた。さらに、顕微鏡の倍率を高めて観察すると、該被膜層にも比較的小さな空孔(細孔)が数多く形成されていることが認められた。(これらについては、図示せず。)
また、図2に示すように、前記多孔質シリカ系粒子B-(c)の表面を覆っていた被覆層の一部を溶解させた多孔質シリカ系粒子B-(e1)は、粒子内部の表面近くに空孔または空隙を有する箇所が凹んだ形状(ディンプル形状)となっており、粒子表面には必ずしも多くの空孔または空隙が露出していなかった。
一方、図3に示すように、前記被覆層の全部を溶解させた前記多孔質シリカ系粒子B-(e2)は、粒子表面にも数多くの空孔または空隙が露出しており、粗い軽石状の表面となっていることが認められた。
【0105】
【表3】

【比較例1】
【0106】
シリカ系粒子Yの調製
実施例2における工程(a)と同様な操作条件下で、シリカ系粒子前駆体Y-(a)を含む混合水溶液3741.4gを調製した。
次いで、該混合水溶液をステンレス製容器(蓋付き)に移して、80℃の温度条件下で12時間、静置状態で安定化処理を施した。これにより、安定化されたシリカ系粒子Y-(b)を含む混合水溶液が得られた。
このようにして得られたシリカ系粒子Y-(b)を含む混合水溶液の上澄み液を排出させた後、その下層液を、純水とエタノールを2対1の割合で混合した混合水溶液3000g中に添加し、さらにホーン付超音波分散器(カイジョウ(株)製)を用いて前記シリカ粒子Y-(b)を該混合水溶液中に分散させた。次に、この分散液を遠心分離器(コクサン(株)製H−900)にかけて前記シリカ系粒子Y-(b)を分離した。
さらに、得られたケーキ状物質を110℃で12時間かけて乾燥した。これにより、乾燥されたシリカ系粒子Y-(c)約160gが得られた。
次いで、前記シリカ系粒子Y-(c)50gを大気雰囲気下、500℃の温度で2時間かけて加熱処理した。これにより、加熱処理されたシリカ系粒子Y-(S1)が得られた。
【比較例2】
【0107】
シリカ系粒子
比較例1で調製されたシリカ粒子Y-(c)およびY-(S1)について、実施例6の場合と同様に、その平均粒子径、充填嵩密度、吸油量および圧縮強度を測定した。その結果を表4に示す。
表4からも明らかなように、アルミン酸ナトリウムを添加せずに調製した前記シリカ系粒子は、本発明による多孔質シリカ系粒子に比べて、充填嵩密度が高いばかりでなく、吸油量が極端に少なく、また圧縮強度もかなり高いものであった。
さらに、走査型電子顕微鏡を用いて粒子表面および内部(破砕したもの)を観測したところ、緻密なシリカ系粒子で粒子内部に空孔または空隙を有していないことがわかった。
【0108】
【表4】

【実施例7】
【0109】
有機化合物を吸着したシリカ系粒子Zの調製
実施例2で調製された多孔質シリカ系粒子B-(e2)5gを100mlのポリ容器に入れた。
次に、アミン系樹脂硬化剤(ジャパンエポキシレジン(株)製 ポリメートRD−1)を1回に4,5滴ずつビューレットを用いて粒子集合体の中央部に滴下し、その都度ポリ容器を振って、均一に混合させた。その操作を繰り返し行い、前記樹脂硬化剤を合計で4.5ml滴下した。
これにより、前記樹脂硬化剤を粒子内部に十分に吸着してなるシリカ系粒子Z-(f)8gが得られた。
【0110】
被覆されたシリカ系粒子Zの調製
このようにして前記樹脂硬化剤を吸着させたシリカ系粒子Z-(f)8gとメチルメタクリレート樹脂(綜研化学(株)製 MP−4951)0.8gを予め50〜60℃に加熱したすり鉢中に入れて、軽く摺り合わせることにより、該粒子の表面がメチルメタクリレート樹脂で被覆されたシリカ系粒子Z-(p)が得られた。ここで、粒子表面に付着していないメチルメタクリレート樹脂は取り除かれた。
【0111】
被覆シリカ系粒子の利用
上記で得られた表面被覆シリカ系粒子(内包成分含有カプセル)Z-(p)8gを、マトリックス成分としてのエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製 エピコートー828)15gに混合して分散させた後、ガラス基板上に塗布した。次いで、該基板を80℃の温度で加熱したところ、前記シリカ系粒子の被覆成分であるメチルメタクリレート樹脂が溶解して前記樹脂硬化剤が該粒子の外に浸みだし、前記エポキシ樹脂と反応して該エポキシ樹脂が硬化していることが観察された。
これにより、本発明に係る表面被覆シリカ系粒子は、該粒子中に含まれる内包成分と前記マトリックス成分等とを反応させる場合等に好適に使用できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】実施例2の工程(c)から得られた、本発明に係る多孔質シリカ系粒子B-(c)(被覆層あり)の走査型電子顕微鏡写真(倍率:7500倍)を示す。
【図2】実施例2の工程(e)から得られた、本発明に係る多孔質シリカ系粒子B-(e1)(一部、被覆層あり)の走査型電子顕微鏡写真(倍率:7500倍)を示す。
【図3】実施例2の工程(e)から得られた、本発明に係る多孔質シリカ系粒子B-(e2)(被覆層なし)の走査型電子顕微鏡写真(倍率:10000倍)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子を製造する方法であって、
(a)下記一般式(I)で表される有機珪素化合物の層と水の層とからなる二層分離液を調合し、次いで該有機珪素化合物層と該水層が完全に混合しない程度に撹拌しながら、前記水層中に有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加して、該混合水溶液中で前記有機珪素化合物を部分加水分解および/または加水分解してシリカ系粒子前駆体を調製する工程、
1nSi(OR24-n ・・・(I)
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基から選ばれる1価の基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基であり、nは1〜3の整数である。)
(b)前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液にアルミン酸ナトリウムを添加して、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する工程、および
(c)前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥する工程
を含むことを特徴とする多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項2】
粒子密度の低い多孔質シリカ系粒子を製造する方法であって、
(a)下記一般式(I)で表される有機珪素化合物の層と水の層とからなる二層分離液を調合し、次いで該有機珪素化合物層と該水層が完全に混合しない程度に撹拌しながら、前記水層中に有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加して、該混合水溶液中で前記有機珪素化合物を部分加水分解および/または加水分解してシリカ系粒子前駆体を調製する工程、
1nSi(OR24-n ・・・(I)
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基から選ばれる1価の基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基であり、nは1〜3の整数である。)
(b)前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液にアルミン酸ナトリウムを添加して、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する工程、
(c)必要に応じて前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥する工程、
(d)前記シリカ系粒子をアルカリ水溶液中に添加して、該シリカ系粒子の外周部に存在する被覆層の一部または全部を溶解させて、少なくとも粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する工程、および
(e)前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥する工程
を含むことを特徴とする多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)において、前記混合水溶液の温度を0.1〜10℃に保ちながら、該混合水溶液のpHが8.2〜9.8の範囲となるように前記の有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加して、前記有機珪素化合物層が実質的になくなるまで30〜100rpmの速度で攪拌することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)において、前記有機珪素化合物層が実質的になくなった後、前記混合水溶液を攪拌しながら1〜30℃の温度条件下で0.1〜7時間、放置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項5】
前記工程(a)において、前記有機溶媒が水と相溶性があり、しかも前記有機珪素化合物を希釈または分散することのできるアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類およびケトン類から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項6】
前記工程(a)において、前記アルカリが前記有機珪素化合物の加水分解触媒として機能するアンモニア水溶液、アンモニアガス、アルカリ金属塩水溶液、第4級アンモニウム塩水溶液およびアミン類から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項7】
前記工程(a)において、前記界面活性剤がアニオン系界面活性剤から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項8】
前記工程(b)において、前記アルミン酸ナトリウムの添加を、前記アルミン酸ナトリウムをAl23で表し、前記有機珪素化合物をSiO2で表したとき、その重量比Al23/SiO2が3/97〜20/80となる範囲で行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項9】
前記工程(b)において、前記アルミン酸ナトリウムを添加した後、前記混合水溶液を攪拌しながら5〜30℃の温度条件下で0.5〜50時間、放置することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項10】
前記工程(d)において、前記アルカリ水溶液がアルカリ金属水酸化物を含む水溶液であることを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項11】
前記工程(c)または(e)において乾燥された前記シリカ系粒子を、200〜1100℃の温度条件下で加熱処理することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法から得られるシリカ系粒子を、有機溶媒、水またはその混合液に分散させた懸濁液中に、有機溶媒、水またはその混合液に溶解または分散させた無機化合物の溶液を添加して、前記シリカ系粒子の表面を該無機化合物もしくはその加水分解物で被覆することを特徴とする多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項13】
前記無機化合物が珪酸液または有機珪素化合物であり、前記シリカ系粒子の表面に珪素成分を被覆することを特徴とする請求項12に記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項14】
前記有機珪素化合物がエチルシリケート、メチルシリケートおよび上記一般式(I)で表される有機珪素化合物から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする請求項13に記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項15】
前記珪素成分で被覆された前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥し、さらに必要に応じて200〜1100℃の温度条件下で加熱処理することを特徴とする請求項13〜14のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法から得られるシリカ系粒子の表面に微粉末状の有機化合物を付着させ、さらに付着した有機化合物の少なくとも一部を溶融させることにより、前記シリカ系粒子の表面を該有機化合物で被覆することを特徴とする多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項17】
前記有機化合物がガラス転移点200℃以下の熱可塑性合成樹脂または硬化温度200℃以下の熱可塑性合成樹脂であることを特徴とする請求項16に記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項18】
前記熱可塑性合成樹脂がメチルメタクリレート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂またはこれらの混合物から選ばれたものであることを特徴とする請求項16〜17に記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項19】
前記シリカ系粒子に被覆される被覆層の厚さが0.005〜2μmの範囲にあることを特徴とする請求項2〜18のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれかに記載の方法から得られるシリカ系粒子であって、該粒子の平均粒子径が1〜15μmの範囲にあり、しかも充填嵩密度が0.25〜0.62g/cm3の範囲にある多孔質シリカ系粒子。
【請求項21】
前記シリカ系粒子の吸油量が、0.63〜1.53ml/gの範囲にあることを特徴とする請求項20記載の多孔質シリカ系粒子。
【請求項22】
前記シリカ系粒子の圧縮強度が4〜100kgf/mm2の範囲にあることを特徴とする請求項20〜21のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の内部に、無機化合物および/または有機化合物を吸収または吸着させてなるシリカ系粒子。
【請求項24】
請求項20〜22のいずれかに記載の多孔質シリカ系粒子の内部に、無機化合物および/または有機化合物を吸収または吸着させ、さらにその粒子表面に前記無機化合物と同種または異種の無機化合物もしくはその加水分解物、あるいは前記有機化合物と同種または異種の有機化合物もしくはその重合物で被覆してなるシリカ系粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−176343(P2006−176343A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368582(P2004−368582)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】