説明

多孔質体及びその製造方法

【課題】 特に、前記微粒子を多孔質体中で均一分散でない状態に制御でき、前記微粒子の持つ機能を十分に発揮できるようにした多孔質体及びその製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 多孔質体3は、バインダー樹脂2中に多数の空孔4が形成され、また微粒子5が前記空孔4の周囲に偏在している。これにより、前記微粒子5の持つ機能を十分に発揮できる多孔質体3となる。例えばガスセンサとして本実施形態の多孔質体3を使用するとき、ガス吸着の感度を上げるために使用される白金やパラジウム等の触媒が、前記微粒子5として前記空孔4の周囲に集まっていることで、ガス検知の感度をより効果的に向上させることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空孔と微粒子とを有する多孔質体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば可変抵抗器やスイッチの接点等に用いられる抵抗体塗膜は、まず熱硬化性のバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂を溶解させる有機溶剤と、カーボンブラックなどの導電性フィラーとが混合されたペーストを、基板の表面にスクリーン印刷などの手段で塗布し、その後に焼成等の工程を経て前記有機溶剤を揮発させ、前記バインダー樹脂を硬化させて形成される。
【0003】
通常、上記のペーストをスクリーン印刷したときに、発生する泡を消滅させるためペーストに消泡剤を添加して、できるだけ気泡(空孔)が形成されないようにしている。従来では、前記消泡剤は前記バインダー樹脂の質量に対し数(1〜3)質量%程度添加していた。
【0004】
これに対し下記の特許文献1には、塗膜中に気泡を形成して多孔質化することで、クラックの発生等を抑制する発明が開示されている。
【特許文献1】特開平5−94901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば光触媒機能を持つ酸化チタン粒子を、多孔質体中に添加すれば、空気の浄化装置に前記多孔質体を使用することが出来る。
【0006】
しかし前記酸化チタン粒子を、単に、前記多孔質体中に均一に分散させただけでは、効率的に酸化チタン表面に有機物を付着できないと考えられる。
【0007】
すなわち洗浄能力を向上させるには、空孔を有するという多孔質体の構造的な利点に加え、前記微粒子の多孔質体中での状態(配置)を適切に制御することが必要と考えられる。
【0008】
なお、特許文献1では、前記微粒子を多孔質体中に添加することを想定しておらず、当然、前記多孔質体中での微粒子の状態についても開示されていない。
【0009】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するものであり、特に、前記微粒子を多孔質体中で均一分散でない状態に制御でき、前記微粒子の持つ機能を十分に発揮できるようにした多孔質体及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における多孔質体は、
空孔を有する基材と、前記空孔の周囲に偏在した微粒子とを有することを特徴とするものである。
【0011】
これにより、前記微粒子の持つ機能を十分に発揮できる多孔質体となる。例えばガスセンサとして本発明における多孔質体を使用するとき、ガス吸着の感度を上げるために使用される白金やパラジウム等の触媒が、前記微粒子として前記空孔の周囲に設けられることで、ガス検知の感度をより効果的に向上させることが可能になる。
【0012】
また本発明では、前記微粒子の平均粒子径は、前記空孔の平均径よりも小さいことが好ましい。これにより適切に前記微粒子は前記空孔の周囲に集まる。
【0013】
また本発明では、前記空孔は、基材中に、全体にわたって均一に分散されていることが好ましい。これにより、前記多孔質体全体にて所定の機能を発揮できる。
【0014】
また本発明における多孔質体の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
【0015】
(a) 消泡剤に、微粒子を混合する工程と、
(b) 溶剤中に、前記微粒子を含む消泡剤と、基材となるバインダー樹脂とを混合してペーストを形成する工程と、
(c) 前記ペーストを、基板上に塗布し、焼成する工程。
【0016】
上記では、(a)工程で消泡剤に微粒子を混合し、その後、溶剤中に、前記消泡剤と前記バインダー樹脂とを混合している。これにより、前記空孔の形成とともに、前記微粒子を、適切に前記空孔の周囲に集めることが可能になる。
【0017】
また前記消泡剤は有機溶剤にアクリレート系共重合体樹脂を添加したものであることが好ましい。これによって適切に前記微粒子を前記空孔の周囲に偏在させることが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明における多孔質体は、空孔を有する基材と、前記空孔の周囲に偏在する微粒子とを有することを特徴とするものである。
【0019】
これにより、前記微粒子の持つ機能を十分に発揮できる多孔質体となる。例えばガスセンサとして本発明における多孔質体を使用するとき、ガス吸着の感度を上げるために使用される白金やパラジウム等の触媒が、前記微粒子として前記空孔の周囲に存在することで、ガス検知の感度をより効果的に向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、基板上に形成した本実施形態の多孔質体を膜厚方向から切断した断面形状の模式図、図2は、前記多孔質体の一部分を拡大して示した部分拡大模式図、図3ないし図5は、空孔の発生、及び微粒子が空孔の周囲に集まるメカニズムを説明するための模式図、である。
【0021】
図1に示す符号1は基板である。材質は図1に示す多孔質体の材質や用途等によって種々変更される。例えば前記基板1は絶縁基板であり、耐熱性の高いポリイミド樹脂やアルミナ等の酸化物等で形成される。
【0022】
図1に示すように前記基板1上には多孔質体3が形成されている。前記多孔質体3は、バインダー樹脂(基材)2と、空孔(気泡)4と、微粒子5とを有して構成される。
【0023】
図1に示す実施形態では、前記空孔4は、バインダー樹脂2中に、均一に分散して形成されている。
【0024】
ここで「均一に分散」しているか否かは、「森下の区画法」で定量化することが出来る。この方法によれば、写真を区画化した時の各区画に存在する空孔の存在状態から空孔の分散状態に凝集傾向があるか、あるいは規則的に分散しているかを森下の指数を算出することによって規定することが出来る。
【0025】
「森下の区画法」では、区画を小さくするほど森下の指数が1よりも連続的に小さくなれば、それは規則的な分散状態(均一な分散状態)として定義される。
【0026】
図8は、区画の長さと森下の指数との関係を示すグラフである。実験には、バインダー樹脂として高分子量化ポリエーテルケトン(平均分子量は11000)、低分子量化ポリエーテルケトン(平均分子量は720)、高分子量化ポリエーテルケトンと低分子量化ポリエーテルケトンとを1:1(質量比)で配合したものに、バインダー樹脂に対して消泡剤を20質量%添加し、そのペーストを365℃で80分間焼成して得た塗膜を使用し、「森下の区画法」に則って、区画の長さと森下の指数との関係を導き出した。
【0027】
図8に示すように、区画を小さくするほど森下の指数は1を下回り、上記の試料は、いずれも規則的な分散状態(均一な分散状態)を示した。
【0028】
前記空孔4は前記多孔質体3内に5〜30(vol%)の範囲内で含有されていることが好ましい。本実施形態では従来に比べて前記多孔質体3内に占められる空孔4の体積分率を大きく出来る。一部の空孔4は前記多孔質体3の表面3aや側面3cに連通していてもよく、これにより、前記表面3a及び側面3cはきれいな平坦化面ではなく、前記空孔4が前記表面3a及び側面3cに連通している位置で前記表面3a及び側面3cは凹部形状になる。このため前記多孔質体3の表面積を大きくすることが出来る。
【0029】
図1は前記多孔質体3を膜厚と平行な方向から切断した断面図であるが、前記多孔質体3を膜面と平行な方向から切断した場合でも前記空孔4は膜面方向の断面の全体にわたって均一に分散して形成されている。したがって本実施形態では、前記多孔質体3を三次元的に見たときに、前記空孔4は、前記多孔質体3の内部に全体的にわたって均一に分散して形成された状態になっている。
【0030】
多くの前記空孔4は、前記多孔質体3の内部において略球形状で存在している。このため前記空孔4の断面は図1に示すように略円形状で現れる。また図1に示すように各空孔4は大体において、独立しているが、例えば複数の空孔4が連なって、図1に示す空孔より、大きな空孔を形成していてもよい。
【0031】
図1に示すように多数の微粒子5は、前記空孔4の周囲に偏在している。図2に示すように、前記微粒子5は、前記空孔4の周囲に点在するだけでなく、前記空孔4の周囲から離れたバインダー樹脂2中にも分散しているが、前記空孔4の周囲には、前記空孔4の周囲から離れたバインダー樹脂2中に比べて、前記微粒子5が密集しており、後述するTEM写真でも、はっきりと空孔4の周囲に微粒子5が密集しているのが見られる。例えば、前記空孔4の周囲から幅0.5μmの領域内に存在する前記微粒子5の密度は、前記空孔4の周囲から0.5μm以上はなれた領域での前記微粒子5の密度に比べて高く(空孔4の周囲の微粒子5が他の部位に比べて最も密度が高い状態にある)、このように密度差のある状態を「偏在」と定義する。
【0032】
また前記微粒子5は、多孔質体3中に存在する全ての空孔4の周囲に偏在していなくてもよい(少なくとも一部であれば足りる)。
【0033】
前記空孔4の平均径は0.5μm〜2μmの範囲内である。一方、前記微粒子5の平均粒子径は、前記空孔4の平均径よりも小さい。前記微粒子5の平均粒子径は、具体的には0.2μm以下であることが好ましい。これにより、前記微粒子5は前記空孔4の周囲全体を取り囲むように偏在される。ここで、空孔4が、球状である場合には、直径を平均したものが、「平均径」であり、それ以外の形態では、前記空孔4の長径、長辺の長さの平均が、「平均径」である。同様に、微粒子5が球形や円形状では、直径を平均したものが、「平均粒子径」であり、例えば前記微粒子5が繊維状である場合は、繊維長を平均したものが「平均粒子径」であり、フレーク状であれば、長い方の辺の長さを平均したものが「平均粒子径」である。
【0034】
前記空孔4の発生や、微粒子5が空孔の周囲に偏在するメカニズムを以下に説明する。
図3は、溶剤中に、微粒子5が添加された消泡剤7と、バインダー樹脂2とを混合した後、前記溶剤を乾燥した状態を示す膜構造の模式図である。
【0035】
図3に示すように、前記消泡剤7と、前記バインダー樹脂2とは、相分離状態となっていると考えられる。図3の時点では、前記微粒子5は、主に、前記消泡剤7中に分散した状態にあるが、前記バインダー樹脂2内にはほとんど分散していない状態にある。このような相分離状態は、消泡剤7の樹脂成分(例えばアクリレート系共重合樹脂)と、前記バインダー樹脂2との相溶性が悪いために生じると考えられる。そして図3に示すように、溶剤を乾燥させた状態では、内部に空孔発生の起点となる核(微小隙間、概ね10〜50nm程度)7aが形成されていると考えられる。
【0036】
前記バインダー樹脂2と、前記消泡剤7の樹脂成分とは、温度変化に対する硬化収縮率が異なる。焼成すると、図4のように、前記硬化収縮の違いから、前記核7aが徐々に大きくなって空孔4となると考えられる。空孔4の成長により、前記消泡剤7の樹脂成分領域は徐々に小さくなっていき、少なくとも一部の前記微粒子5は、前記空孔4の周囲に集まった状態になる(図5)。なお残りの微粒子5は前記空孔4の周囲から離れバインダー樹脂2中に分散する。
【0037】
前記バインダー樹脂の平均分子量は720〜11000であることが好ましい。前記バインダー樹脂の平均分子量は、前記多孔質体3内に形成される空孔4の平均直径や、体積分率に影響を与える。前記バインダー樹脂の平均分子量が大きくなると前記空孔4の平均直径が小さくなる。
【0038】
また、前記バインダー樹脂の平均分子量が11000を越えると、前記バインダー樹脂が有機溶剤に溶けにくくなりペースト(前記多孔質体3の中間生成物)を適切に形成できないことから好ましくない。
【0039】
前記バインダー樹脂には熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、具体的にはポリエーテルケトン(PEK)樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン変性フェノール樹脂等が選択される。さらにポリエステルやフェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂を使用してもよい。
【0040】
前記バインダー樹脂に前記ポリエーテルケトン樹脂を用いる場合、分子量が720のポリエーテルケトン(以下、分子量が720のポリエーテルケトンを低分子量ポリエーテルケトンと呼ぶ)のみを用いるか、あるいは分子量が11000のポリエーテルケトン(以下、分子量が11000のポリエーテルケトンを高分子量ポリエーテルケトンと呼ぶ)のみを用いるか、または前記低分子量ポリエーテルケトンに、高分子量ポリエーテルケトンを所定の配合比で混合したものを用いることが好ましい。
【0041】
また図1に示す多孔質体3にはさらに消泡剤の樹脂成分(基材の一部)が含有されている。前記消泡剤はペーストを形成する段階では、低沸点のトルエン等に、例えば界面活性剤を混ぜた溶液状のものであり、前記ペーストを焼成等して図1に示す多孔質体3となった段階では前記トルエン等は揮発して前記多孔質体3内には前記消泡剤の一部の樹脂成分のみが残された状態になる。例えばペーストを形成するとき、トルエン等にアクリレート系共重合体樹脂を混合した消泡剤を用いており、多孔質体3となった段階では前記共重合体樹脂のみが前記多孔質体3中に残される。
【0042】
前記微粒子5は無機系微粒子であることが好ましい。例えば後述するように、光触媒機能を有する酸化チタンや、ガスセンサの触媒として使用される白金等を前記微粒子5として使用できる。前記微粒子5は、1種類でも複数種類含まれていてもよい。また、前記微粒子5は、導電性、絶縁性、磁性等、特に問わない。
【0043】
例えば、前記微粒子5が導電粒子であると、多孔質の導電体として使用できる。本実施形態のように、前記微粒子5が空孔4の周囲に偏在する形態であると、例えば前記空孔4が形成されず、バインダー樹脂2中に導電性粒子が分散された形態のものや、あるいは空孔4が形成されても、前記微粒子5が空孔4の周囲に集まっておらず、バインダー樹脂2の全体に分散している形態のものに比べて、抵抗値を低く出来る。また、前記微粒子5が前記空孔4間のバインダー樹脂2中にも適切に分散している形態(図2)であると、より効果的に、抵抗値を低く出来る。また、前記微粒子5が前記空孔4間を繋ぐチェーン構造を有していると、より効果的に抵抗値を低く出来る。
【0044】
また本実施形態では、図1に示す多孔質体3を、ガスセンサとして使用できる。例えば、酸化亜鉛や酸化すず等のn型半導体(ガス感応体)と、白金やパラジウム等の触媒とが、微粒子5として多孔質体3中に存在し、前記触媒が、前記空孔4の周囲に設けられる形態であると、ガス検知の感度をより適切に向上させることが出来る。
【0045】
あるいは前記微粒子5を、光触媒機能を持つ酸化チタンとすると空気浄化作用を有する多孔質体3にできる。酸化チタンには、紫外線を照射すると表面に付着した有機物の汚れ等を分解する作用を持つ(光触媒)。前記酸化チタンが微粒子5として、多孔質体3の空孔4の周囲に配置させることで、前記酸化チタンの光触媒機能を適切に高めることが出来る。また、酸化チタン粒子のみならず、銀粒子も空孔4の周囲に点在させることで、抗菌性をも持った多孔質体3に形成できる。
【0046】
または、前記多孔質体3を太陽電池の電極としても利用できる。例えば白金粒子を消泡剤に添加し、これを耐熱性に優れた樹脂に混合し、還元雰囲気中で加熱して、前記樹脂を導電性が得られるまで炭化させる。これにより、カーボン膜中に空孔が形成されるとともに、前記白金は前記空孔の周囲に集まる。前記カーボン膜には、空孔の周囲に白金が存在するため、電解液の酸化還元が損なわれず、さらに白金は、カーボン膜に固着しているので脱落しにくく、長期間の電気駆動でも特性劣化が起こりにくいと考えられる。また白金粒子の代わりに、カーボンブラック、活性炭、あるいはフラーレン等を空孔の周囲に偏在させたカーボン膜では、電気2重層キャパシタ等の多孔質性が要求される電極等にも使用できると考えられる。
【0047】
図1に示す多孔質体3の製造方法について説明する。まず、消泡剤7に、微粒子5を添加し、例えば3本ロールミルで混練する。前記消泡剤7は、トルエン等の溶剤に界面活性剤等を溶かした溶液であり、例えばトルエンに、アクリレート系共重合体樹脂を混合したものである。
【0048】
また前記微粒子5を、前記消泡剤7の樹脂成分に対し5質量%〜30質量%程度添加する。
【0049】
次に、有機溶剤に、前記微粒子5を有する消泡剤7と、バインダー樹脂2とを混合し、例えば3本ロールミルで混練してペーストを形成する。このとき、前記消泡剤7を、前記バインダー樹脂2の質量に対して5〜50(質量%)の範囲内で混合する。前記消泡剤の添加量は、従来に比べてかなり大きい。従来では、前記消泡剤を1〜3(質量%)程度しか混合しなかった。
【0050】
そして前記ペーストを基板上にスクリーン印刷し、その後、前記ペーストを焼成することで有機溶剤や、消泡剤7を構成していたトルエン等の溶剤が揮発し、これら溶剤は前記多孔質体3中で残らない。また前記バインダー樹脂2は硬化する。したがって前記多孔質体3中にはバインダー樹脂2と、焼成によって揮発しなかった消泡剤7を構成する一部の樹脂成分(共重合体樹脂)、及び微粒子5が残される。そして、上記した焼成過程により、図3ないし図5で説明したように、多孔質体中に空孔4が形成されるとともに、前記微粒子5は空孔4の周囲に偏在した状態になる。
【0051】
上記した製造方法の特徴点は、微粒子5を消泡剤7と混合し、その後、微粒子5を有する消泡剤7をバインダー樹脂2と混合している点である。これにより、前記微粒子5を多孔質体3中に形成された前記空孔4の周囲に設けることが出来る。なお、前記微粒子5を消泡剤7とともに、バインダー樹脂2中にも混合しておいてもよい。このようにすることで、前記微粒子5を、空孔4の周囲のみならず空孔4間のバインダー樹脂2にも適量点在でき、例えば前記微粒子5が導電性粒子である場合、抵抗値の低い多孔質体を適切且つ容易に製造することが可能になる。また上記したガスセンサの場合、白金等の触媒粒子は、消泡剤に添加し、酸化錫等のn型半導体粒子は、有機溶剤にバインダー樹脂とともに混合し、上記した消泡剤とバインダー樹脂との混合、焼成を行うことで、n型半導体粒子は多孔質体3中に均一に分散し、一方、触媒粒子は、前記空孔の周囲に偏在した状態になる。これにより、ガス検知の感度に優れたガスセンサを形成できる。
【実施例】
【0052】
消泡剤(トルエンに、アクリレート系共重合体樹脂を添加したもの)の樹脂成分(アクリレート系共重合体樹脂)に対し酸化チタンを10質量%添加し、3本ロールミルにより混練した。
【0053】
次に、有機溶剤に、前記酸化チタンを有する消泡剤と、ポリエーテルケトン樹脂とを混合し、3本ロールミルにより混練して、ペーストを形成した。なお前記消泡剤を、前記ポリエーテルケトン樹脂に対し40質量%添加した。
【0054】
前記ペーストを、アルミナ基板上にスクリーン印刷し、200℃で30分間乾燥した後、380度で80分間、焼成した。
【0055】
そして得られた塗膜の最表面から約3μmの深さの箇所を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した。
【0056】
図7(TEM写真)に示すように、塗膜中の全体にわたって均一に、空孔(気泡)が分散していることがわかった。また空孔(気泡)は直径が1μm以下のものが多く観測された。
【0057】
図7及び図8(図7を拡大したTEM写真)に示すように、少なくとも一部の空孔(気泡)の周囲に酸化チタン粒子が集まっている(偏在している)ことが観測された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】基板上に形成された本実施形態の多孔質体を膜厚と平行な方向から切断した部断面の模式図、
【図2】図1に示す多孔質体の一部分を拡大して示した部分拡大模式図、
【図3】空孔の発生、及び微粒子が空孔の周囲に集まるメカニズムを説明するための模式図、
【図4】空孔の発生、及び微粒子が空孔の周囲に集まるメカニズムを説明するための模式図、
【図5】空孔の発生、及び微粒子が空孔の周囲に集まるメカニズムを説明するための模式図、
【図6】有機溶剤に、酸化チタンを有する消泡剤と、バインダー樹脂(ポリエーテルケトン)とを混合したペーストを印刷・焼成して成る塗膜のTEM写真、
【図7】図6の一部を拡大したTEM写真、
【図8】区画の長さと森下の指数との関係を示すグラフ、
【符号の説明】
【0059】
1 基板
2 バインダー樹脂
3 多孔質体
4 空孔
5 微粒子
7 消泡剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空孔を有する基材と、前記空孔の周囲に偏在した微粒子とを有することを特徴とする多孔質体。
【請求項2】
前記微粒子の平均粒子径は、前記空孔の平均径よりも小さい請求項1記載の多孔質体。
【請求項3】
前記空孔は、基材中に、全体にわたって均一に分散されている請求項1又は2に記載の多孔質体。
【請求項4】
以下の工程を有することを特徴とする多孔質体の製造方法。
(a) 消泡剤に、微粒子を混合する工程と、
(b) 溶剤中に、前記微粒子を含む消泡剤と、基材となるバインダー樹脂とを混合してペーストを形成する工程と、
(c) 前記ペーストを、基板上に塗布し、焼成する工程。
【請求項5】
前記消泡剤は有機溶剤にアクリレート系共重合体樹脂を添加したものである請求項4記載の多孔質体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−62151(P2007−62151A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251047(P2005−251047)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】