説明

多孔質炭素材料の製造方法

【課題】高比表面積化を達成し、かつ、細孔径を制御することができる多孔質炭素材料の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の多孔質炭素材料の製造方法は、炭素原料をガス賦活することにより多孔質炭素材料を製造する方法であって、前記ガス賦活処理中に、一時的に炉内の賦活ガスを不活性ガスで置換する操作を挟むことを特徴とする。具体的には、炉に炭素原料を収容し、炉を加熱する昇温工程、加熱された炉に、賦活ガスを供給する第1賦活工程、第1賦活工程後、炉を加熱したまま賦活ガスを不活性ガスに置換する置換工程、及び前記置換工程後、再び炉に賦活ガスを供給する第2賦活工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質炭素材料の製造方法に関するものであり、特に高比表面積化を達成し、かつ、細孔径を制御することができる多孔質炭素材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質炭素材料、特に活性炭はその優れた吸着能から電気二重層キャパシタ用電極や吸着剤として広く使用されている。このような用途で効果的に機能するために、活性炭には高比表面積、かつ、適切な細孔径を有することが要求される。
【0003】
そして、多孔質炭素材料の製造方法は種々提案されており、例えば、特許文献1には、1)炭化処理した活性炭材料を一次賦活する工程、2)90%以上の粒子が0.25mm以下の粒径となるように一次賦活後の当該材料を細粒化する工程、及び3)当該細粒粒子を二次賦活する工程、を含んで成ること特徴とする蓄電デバイス電極用炭素材料の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、既知の電気二重層用活性炭(通常の水蒸気賦活あるいはKOH賦活法等による)を金属塩共存下で、炭酸ガス雰囲気中700〜1000℃で加熱して改質することを特徴とする電気二重層キャパシタ用活性炭の改質方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、炭素化合物を炭化処理して得た炭化物を活性化処理した後に粉砕して活性炭基材とし、該活性炭基材にバインダーを加え板状に成形して成形体とし、該成形体を炭化処理して板状活性炭を製造する方法において、前記活性炭基材の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする電気二重層コンデンサー用活性炭電極の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、賦活状態にある炭素質材料および/または賦活処理が施された炭素質材料を黒鉛化したのち、さらにこの黒鉛化物に対して賦活処理を施すことを特徴とする、導電性多孔質炭素材の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−270427号公報
【特許文献2】特開2003−309046号公報
【特許文献3】特開平8−115856号公報
【特許文献4】特開平5−139712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、多孔質炭素材料の製造に用いられている水蒸気賦活法では、水蒸気による炭素質の分解により多孔質化が行われるため、賦活反応が進行するにつれて比表面積、細孔径が共に大きくなる。このような大きな細孔径を有する多孔質炭素材料は、吸着物質の移動抵抗が小さいといった利点がある。しかしながら、吸着物質の分子サイズや電解液中のイオンサイズによって、多孔質炭素材料に求められる細孔径が異なる。そのため、単に高比表面積化を達成するだけでなく、形成される細孔径を制御することができれば、要求に応じた多孔質炭素材料の製造が容易になる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、高比表面積化を達成し、かつ、細孔径を制御することができる多孔質炭素材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することができた本発明の多孔質炭素材料の製造方法は、炭素原料をガス賦活することにより多孔質炭素材料を製造する方法であって、前記ガス賦活処理中に、一時的に炉内の賦活ガスを不活性ガスで置換する操作を挟むことを特徴とする。具体的には、本発明の製造方法は、炉に炭素原料を収容し、炉内を加熱する昇温工程;加熱された炉内に、賦活ガスを供給する第1賦活工程;第1賦活工程後、炉内を加熱したまま賦活ガスを不活性ガスに置換する置換工程;及び、前記置換工程後、炉内を加熱したまま再び炉内に賦活ガスを供給する第2賦活工程;を含むことを特徴とする。前記置換工程においては、炉の容積に対して、体積比で2倍〜100倍の不活性ガスを流入させることが好ましい。
【0011】
本発明には、前記製造方法により得られた多孔質炭素材料を含有する電気二重層キャパシタ用電極および該電気二重層キャパシタ用電極を用いた電気二重層キャパシタ、並びに、前記製造方法により得られた多孔質炭素材料を含有する吸着剤も包含される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、得られる多孔質炭素材料の高比表面積化を達成し、かつ、形成される細孔径を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】製造例1,2,5で得られた多孔質炭素材料の細孔径分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の多孔質炭素材料の製造方法は、炭素原料をガス賦活することにより多孔質炭素材料を製造する方法であって、前記ガス賦活処理中に、一時的に炉内の賦活ガスを不活性ガスで置換する操作を挟むことを特徴とする。
【0015】
ガス賦活処理中に不活性ガスで置換する操作を挟むことにより、得られる多孔質炭素材料の細孔径を制御することができる理由は必ずしも明らかでないが、以下のように考えることができる。すなわち、1段階賦活処理では、賦活が進行するにつれて、形成された細孔内部に賦活ガスによる炭素質の分解によって生じたCO、CO2などのガスが充満し、細孔深部に賦活ガスが接触しづらくなる。そのため、1段階賦活処理では、賦活が進行するにつれて、細孔径を増大させる方向(径方向)に賦活反応が進行してしまう。これに対して、本発明製法のようにガス賦活処理中に不活性ガスで置換する操作を挟んだ多段階賦活処理では、賦活が進行するにつれて細孔内部に充満したCO、CO2などのガスが置換工程において除去される。従って、置換工程後に行われる賦活処理は、細孔内部に発生ガスがない状態から開始されるため、細孔深部に賦活ガスが到達しやすくなり、細孔の深さ方向へと賦活反応が進行する。そのため、本発明製法では、賦活反応が細孔の深さ方法へと進行しやすくなり、細孔径の増大を抑制することができると考えられる。
【0016】
本発明の製造方法は、具体的には、炉に炭素原料を収容し、炉内を加熱する昇温工程;加熱された炉内に、賦活ガスを供給する第1賦活工程;第1賦活工程後、炉内を加熱したまま賦活ガスを不活性ガスに置換する置換工程;及び、前記置換工程後、炉内を加熱したまま再び炉内に賦活ガスを供給する第2賦活工程;を含むことを特徴とする。
【0017】
以下、本発明の多孔質炭素材料の製造方法について詳しく説明する。
【0018】
前記昇温工程は、炉に炭素原料を収容し、炉内を加熱する工程である。なお、本工程には、常温の炉内に炭素原料を収容した後、炉内を加熱する態様;予め加熱しておいた炉内に炭素原料を収容した後、引き続き炉内を加熱する態様;いずれも含まれる。本発明の製造方法に用いられる炉としては、ロータリーキルン、流動床炉、撹拌混合炉などの原料を均質に加熱できる装置などが挙げられる。
【0019】
本発明に用いられる炭素原料としては、炭素質物質の炭化物を用いることができる。前記炭素質物質としては、例えば、ヤシガラ、木材、おが屑、木炭、セルロース系繊維、合成樹脂(例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂)などの難黒鉛化性炭素;ピッチ(例えば、メソフェーズピッチ)、コークス(例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、フリュードコークス)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリアクリルニトリル(PAN)などの易黒鉛化性炭素;およびこれらの混合物が挙げられる。これらの炭素質物質は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヤシガラ、フェノール樹脂などの難黒鉛化性炭素が好適である。ここで、「難黒鉛化性炭素」とは、熱処理によっても黒鉛構造に至らない非晶質炭素をいい、「易黒鉛化性炭素」とは、絶対温度が3300K前後の高温処理により黒鉛に変換できる非晶質炭素をいう。
【0020】
なお、前記炭素質物質の炭化処理は、通常、不活性ガス雰囲気下で加熱処理することによりなされる。該炭化処理の温度は、500℃以上が好ましく、より好ましくは550℃以上であり、850℃以下が好ましく、より好ましくは800℃以下である。
【0021】
炭素原料の平均粒子径は1μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、10cm以下が好ましく、より好ましくは7cm以下、さらに好ましくは5cm以下である。ここで、本願において平均粒子径とは、水に分散させた試料を、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所製の「SALD(登録商標)−2000」)により測定して、求められる体積平均粒子径である。なお、炭素原料の平均粒子径は粉砕により調整すればよい。また、炭素原料の平均粒子径が200μm以上の場合は、篩を用いて整粒すればよい。
【0022】
炉内を加熱する際には、不活性ガスを流入させる。不活性ガスの流入量は、炉の容積や炭素原料の仕込み量に応じて適宜調整すればよいが、通常、炉の容積に対する空間速度(SV)を0.01L/L/分以上1.0L/L/分以下とすることが好ましい。なお、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどを用いることができる。炉を加熱する際の昇温速度は、1℃/分以上が好ましく、より好ましくは5℃/分以上である。なお、昇温速度の上限は特になく、予め加熱した炉に炭素原料を投入してもよい。
【0023】
前記第1賦活工程は、加熱された炉内に賦活ガスを供給することにより、炭素原料に賦活処理を行う工程である。ここで、「賦活処理」とは、固体残渣の表面に細孔を形成して、比表面積および細孔容積を大きくする処理である。本発明製法において賦活ガスとしては、水蒸気、空気、炭酸ガス、酸素、燃焼ガスおよびこれらの混合ガスを用いることができる。これらの中でも、低コストであり、賦活に対して高い反応性を有することから、賦活ガスとしては水蒸気が好適である。賦活ガスを供給する態様としては、賦活ガスを希釈せずに供給する態様、賦活ガスを不活性ガスで希釈して供給する態様のいずれも可能であるが、賦活反応を効率良く進行させるために、不活性ガスで希釈して供給する態様が好ましい。
【0024】
第1賦活工程において供給する賦活ガスの総量は、炭素原料100質量部に対して、50質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは100質量部以上、さらに好ましくは200質量部以上であり、10000質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは5000質量部以下、さらに好ましくは3000質量部以下である。供給する賦活ガスの総量が炭素原料100質量部に対して50質量部以上であれば、賦活反応による細孔形成がより良好となり、10000質量部以下であれば、賦活反応がより効率良く進行し、生産性を向上できる。
【0025】
賦活処理を行う際の温度(炉内温度)は400℃以上が好ましく、より好ましくは450℃以上であり、1500℃以下が好ましく、より好ましくは1300℃以下である。また、賦活処理を行う際の加熱時間は0.1時間以上が好ましく、より好ましくは0.5時間以上であり、50時間以下が好ましく、より好ましくは30時間以下である。なお、賦活ガスの供給方法の好適態様、ならびに供給される賦活ガスの総量、賦活温度および賦活時間の好適範囲は、所望する多孔質炭素材料の物性に応じて適宜変更すればよい。
【0026】
前記置換工程は、第1賦活工程後、炉内を加熱したまま炉内の賦活ガスを不活性ガスに置換する工程である。置換工程は、第1賦活工程後、炉内温度を常温まで冷却したり、第1賦活工程を経た炭素原料を炉から取り出したりすることなく、第1賦活工程に連続して行われる。
【0027】
置換工程において、炉内に流入させる不活性ガスの総量(体積)は、炉の容積に対して2倍以上とすることが好ましく、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは4倍以上であり、100倍以下とすることが好ましく、より好ましくは80倍以下、さらに好ましくは50倍以下である。流入させる不活性ガスの総量を炉の容積に対して2倍以上とすることにより、炉内を十分に不活性ガスに置換することができ、細孔径増大の抑制効果がより向上し、100倍以下とすることにより、置換工程の作業時間を短縮することができ、生産性がより高くなる。なお、不活性ガスの体積とは、流入する炉内温度における体積である。
【0028】
不活性ガスによる置換を行う際の温度(炉内温度)は400℃以上が好ましく、より好ましくは450℃以上であり、1500℃以下が好ましく、より好ましくは1300℃以下である。なお、作業を簡便にする観点から、置換を行う際の温度は、前記第1賦活工程における賦活処理温度と同じ温度とすることが好ましい。
【0029】
前記第2賦活工程は、前記置換工程後、炉内を加熱したまま再び炉内に賦活ガスを供給することにより、炭素原料に賦活処理を行う工程である。第2賦活工程は、置換工程後、連続して行われる。
【0030】
第2賦活工程における賦活ガスの供給方法の好適態様、ならびに供給される賦活ガスの総量、賦活温度および賦活時間の好適範囲は、前記第1賦活工程と同様であり、所望する多孔質炭素材料の物性に応じて適宜変更すればよい。第2賦活工程における賦活温度は、第1賦活工程における賦活温度と同一でも異なっていてもよい。なお、より作業性を向上させるために、第1賦活工程における賦活温度、置換工程における置換する際の温度、第2賦活工程における賦活温度を一定にすることが好ましい。
【0031】
本発明の製造方法は、少なくとも昇温工程、第1賦活工程、置換工程および第2賦活工程を含むが、置換工程と賦活工程を一対とする操作を、さらに一対以上繰り返し行ってもよい。置換工程を挟んで、賦活工程を繰返し行うことにより、得られる多孔質炭素材料の平均細孔径の増大を抑制しつつ、さらなる高比表面積化を図ることができる。繰返し行われる置換工程および賦活工程における置換条件および賦活条件は、前記条件と同様である。
【0032】
なお、置換工程および賦活工程を繰り返す回数は、特に制限されないが、繰返し回数を増加させると作業が煩雑になる。そのため、本発明の製造方法は、第1賦活工程、置換工程および第2賦活工程を含む態様;第1賦活工程、第1置換工程、第2賦活工程、第2置換工程および第3賦活工程を含む態様;が好適である。
【0033】
本発明の製造方法には、前記賦活工程および置換工程に加えて、洗浄工程、熱処理工程、粉砕工程を含ませてもよい。
【0034】
洗浄工程では、賦活工程後の多孔質炭素材料を洗浄し、乾燥させる。洗浄に用いる溶媒としては、水、酸、有機溶剤などが挙げられる。多孔質炭素材料を洗浄することにより、金属不純物、灰分、有機溶剤可溶成分などを除去することができる。
【0035】
熱処理工程では、賦活工程後あるいは洗浄工程後の多孔質炭素材料を、さらに不活性ガス雰囲気下で熱処理する。多孔質炭素材料を熱処理することにより、多孔質炭素材料の表面の官能基量を調整することができる。
【0036】
粉砕工程では、多孔質炭素材料の粒径を調整する。多孔質炭素材料の粉砕方法は、特に限定されるものでなく、ディスクミル、ボールミル、ビーズミルなどを用いて行えばよい。なお、多孔質炭素材料の粒子径は、用途に応じて適宜調整すればよい。
【0037】
本発明の製造方法によれば、高比表面積を有するにもかかわらず、細孔径の小さい多孔質炭素材料が得られる。具体的には、例えば、炭素原料として、炭化ヤシガラを用いた場合、比表面積が1000m2/g〜2000m2/gであり、平均細孔径が1.40nm〜1.65nmである多孔質炭素材料;炭素原料として、炭化フェノール樹脂を用いた場合には、比表面積が1000m2/g〜2000m2/gであり、平均細孔径が1.50nm〜2.00nmである多孔質炭素材料が得られる。
【0038】
本発明の製造方法により得られる多孔質炭素材料は、電気二重層キャパシタ用電極材料として用いることができ、当該電極材料を使用して、電気二重層キャパシタ用電極や電気二重層キャパシタを製造することが可能である。本発明の製造方法によれば、多孔質炭素材料の高比表面積化を図りつつ形成される細孔径を制御することができる。換言すれば、所望の細孔径を維持したまま、さらなる高比表面積化が可能となる。従って、電解液中のイオンサイズに適した細孔径を有する細孔を形成しつつ、さらなる高比表面積化が可能となる。そのため、本発明の製造方法により得られた多孔質炭素材料を電気二重層キャパシタに用いることにより、静電容量に優れる電気二重層キャパシタが得られる。
【0039】
次に、本発明の電気二重層キャパシタについて説明する。本発明の電気二重層キャパシタは、前記の製造方法により得られた多孔質炭素材料を用いたことを特徴とする。
【0040】
電気二重層キャパシタ用電極としては、例えば、多孔質炭素材料、導電性付与剤、およびバインダーを混練し、さらに溶媒を添加してペーストを調製し、このペーストをアルミ箔などの集電板に塗布した後、溶媒を乾燥除去したものが挙げられる。
【0041】
前記電気二重層キャパシタ用電極に使用されるバインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系高分子化合物や、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴム、石油ピッチ、フェノール樹脂などを使用できる。また、導電性付与剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどを使用できる。
【0042】
電気二重層キャパシタは、一般的には、電極、電解液、およびセパレータを主要構成とし、一対の電極間にセパレータを配置した構造となっている。前記電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの有機溶剤に、アミジン塩を溶解した電解液;過塩素酸の4級アンモニウム塩を溶解した電解液;4級アンモニウムやリチウムなどのアルカリ金属の四フッ化ホウ素塩や六フッ化リン塩を溶解した電解液;4級ホスホニウム塩を溶解した電解液などが挙げられる。また、前記セパレータとしては、例えば、セルロース、ガラス繊維、または、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムが挙げられる。
【0043】
また、本発明の製造方法により得られる多孔質炭素材料は、吸着剤としても好適に用いることができる。前記吸着剤としては、ガス吸着剤、浄水用吸着剤、排水浄化用吸着剤などが挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0045】
比表面積、全細孔容積および平均細孔径の測定方法
窒素吸着装置(Micromeritics社製、「ASAP−2400」)を用いてN2ガス吸着法による吸着等温線を求め、BET法により比表面積および全細孔容積を求めた。また、同装置を使用して吸着等温線を求め、BJH法により解析することで細孔径分布を求めた。さらに、細孔径1.0nm〜30nmの範囲における細孔容積と比表面積に基づき、平均細孔径を求めた。
【0046】
製造例1
炭化ヤシガラ原料100g(平均粒子径:5mm〜15mm)をロータリーキルン(タナカテック社製(容積:2.5L))内に投入し、窒素流通下(1L/分)で、炉内温度を900℃まで昇温した(昇温速度:10℃/分)。炉内温度が900℃に達してから、ロータリーキルン内に水蒸気と窒素との混合気体(水蒸気分圧:71.2kPa、全圧:101.3kPa)を流量1L/分で供給し、1時間30分水蒸気賦活処理を行った(第1賦活工程)。この時、水蒸気の総使用量は180g、すなわち炭素原料100質量部に対して180質量部とした。
【0047】
その後、水蒸気の供給を止め、窒素流量を炉容積に対する空間速度で0.4L/L/分として、1時間30分流通させてロータリーキルン内を置換した(置換工程)。このとき、炉に流入させた窒素の総体積は90L、すなわち、炉の容積に対して36倍であった。
【0048】
再びロータリーキルン内に水蒸気と窒素との混合気体(水蒸気分圧71.2kPa、全圧:101.3kPa)を流量1L/分で供給しながら、1時間30分水蒸気賦活を行った(第2賦活工程)。この時、水蒸気の総使用量は180g、すなわち炭素原料100質量部に対して180質量部とした。得られた多孔質炭素材料を評価し、結果を表1に示した。
【0049】
製造例2
炭化ヤシガラ原料100g(平均粒子径:5mm〜15mm)をロータリーキルン(タナカテック社製(容積:2.5L))内に投入し、窒素流通下(1L/分)で、炉内温度を900℃まで昇温した(昇温速度:10℃/分)。炉内温度が900℃に達してから、ロータリーキルン内に水蒸気と窒素との混合気体(水蒸気分圧:71.2kPa、全圧:101.3kPa)を流量1L/分で供給し、1時間水蒸気賦活処理を行った(第1賦活工程)。この時、水蒸気の総使用量は120g、すなわち炭素原料100質量部に対して120質量部とした。
【0050】
その後、水蒸気の供給を止め、窒素流量を炉容積に対する空間速度で0.4L/L/分として、1時間流通させてロータリーキルン内を置換した(第1置換工程)。このとき、炉に流入させた窒素の総体積は60Lすなわち、炉の容積に対して24倍であった。
【0051】
再びロータリーキルン内に水蒸気と窒素との混合気体(水蒸気分圧71.2kPa、全圧:101.3kPa)を流量1L/分で供給しながら、1時間水蒸気賦活を行った(第2賦活工程)。この時、水蒸気の総使用量は120g、すなわち炭素原料100質量部に対して120質量部とした。
【0052】
その後、再度水蒸気の供給を止め、窒素流量を炉容積に対する空間速度で0.4L/L/分として、1時間流通させてロータリーキルン内を置換した(第2置換工程)。このとき、炉に流入させた窒素の総体積は60Lすなわち、炉の容積に対して24倍であった。
【0053】
続いて、ロータリーキルン内に水蒸気と窒素との混合気体(水蒸気分圧71.2kPa、全圧:101.3kPa)を流量1L/分で供給しながら、1時間水蒸気賦活を行った(第3賦活工程)。この時、水蒸気の総使用量は120g、すなわち炭素原料100質量部に対して120質量部とした。得られた多孔質炭素材料を評価し、結果を表1に示した。
【0054】
製造例3
炭化ヤシガラ原料100gを、炭化フェノール樹脂原料(フェノール樹脂(住友ベークライト社製)を処理温度700℃で炭化したもの(平均粒子径:5mm〜15mm))に換えたこと以外は製造例1と同様にして、連続2段階水蒸気賦活処理を行った。得られた多孔質炭素材料を評価し、結果を表1に示した。
【0055】
製造例4
炭化ヤシガラ原料100gを、炭化フェノール樹脂原料(フェノール樹脂(住友ベークライト社製)を処理温度700℃で炭化したもの(平均粒子径:5mm〜15mm))に換えたこと以外は製造例2と同様にして、連続3段階水蒸気賦活処理を行った。得られた多孔質炭素材料を評価し、結果を表1に示した。
【0056】
製造例5
炭化ヤシガラ原料100g(平均粒子径:5mm〜15mm)をロータリーキルン(タナカテック社製(容積:2.5L))内に投入し、窒素流通下(1L/分)で900℃まで昇温した(昇温速度:10℃/分)。
【0057】
900℃に達してからロータリーキルン内に水蒸気(水蒸気分圧:71.2kPa)を窒素とともに供給し、3時間水蒸気賦活処理を行った。この時、水蒸気の総使用量は360g、すなわち炭素原料100質量部に対して360質量部とした。得られた多孔質炭素材料を評価し、結果を表1に示した。
【0058】
製造例6
炭化ヤシガラ原料100gを、炭化フェノール樹脂原料(フェノール樹脂(住友ベークライト社製)を処理温度700℃で炭化したもの(平均粒子径:5mm〜15mm))に換えたこと以外は製造例5と同様にして、水蒸気賦活処理を行った。得られた多孔質炭素材料を評価し、結果を表1に示した。
【0059】
【表1】

【0060】
製造例No.1,2,5は、炭素原料として炭化ヤシガラを使用し、賦活温度を900℃、賦活処理の合計時間を3時間として、置換工程の回数のみを変更したものである。これらの多孔質炭素材料を比較すると、いずれも賦活処理の合計時間が3時間であるためほぼ同様の比表面積、細孔容積が得られているにもかかわらず、置換工程を挟んだ回数が多いほど、得られる平均細孔径が小さくなっていることがわかる。
【0061】
同様に、製造例No.3,4,6は、炭素原料として炭化フェノール樹脂を使用し、賦活温度を900℃、賦活処理の合計時間を3時間として、置換工程の回数のみを変更したものである。これらの多孔質炭素材料を比較しても、いずれも賦活処理の合計時間が3時間であるためほぼ同様の比表面積、細孔容積が得られているにもかかわらず、置換工程を挟んだ回数が多いほど、得られる平均細孔径が小さくなっていることがわかる。
【0062】
図1に炭素原料として炭化ヤシガラを用いた製造例No.1,2,5で得られた多孔質炭素材料の細孔径分布を示す。図1に示すように、置換工程を挟んだ回数が多いほど、細孔径のピーク位置が小径側に移動していることがわかる。この細孔径分布図からも、置換工程を挟むことにより細孔径の増大を抑制できていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、高比表面積を有し、かつ、平均細孔径が小さい多孔質炭素材料の製造に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原料をガス賦活することにより多孔質炭素材料を製造する方法であって、
前記ガス賦活処理中に、一時的に炉内の賦活ガスを不活性ガスで置換する操作を挟むことを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項2】
炉に炭素原料を収容し、炉内を加熱する昇温工程、
加熱された炉内に、賦活ガスを供給する第1賦活工程、
第1賦活工程後、炉内を加熱したまま賦活ガスを不活性ガスに置換する置換工程、及び、
前記置換工程後、炉内を加熱したまま再び炉内に賦活ガスを供給する第2賦活工程、
を含むことを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項3】
前記置換工程において、炉の容積に対して、体積比で2倍〜100倍の不活性ガスを流入させる請求項2に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により得られた多孔質炭素材料を含有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用電極。
【請求項5】
請求項4に記載の電気二重層キャパシタ用電極を用いたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により得られた多孔質炭素材料を含有することを特徴とする吸着剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−265134(P2010−265134A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116941(P2009−116941)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
【Fターム(参考)】