説明

多孔質炭素材料複合体及びその製造方法、並びに、吸着剤、化粧料、浄化剤及び光触媒複合材料

【課題】多孔質炭素材料及び機能性材料から成り、高い機能性を備えた多孔質炭素材料複合体を提供する。
【解決手段】多孔質炭素材料複合体は、(A)ケイ素(Si)の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素(Si)の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、(B)該多孔質炭素材料に付着した機能性材料から成り、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の材料を原料とした多孔質炭素材料複合体及びその製造方法、並びに、係る多孔質炭素材料複合体から構成された吸着剤、化粧料、浄化剤及び光触媒複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質材料に、例えば、磁気特性や、光吸収特性、発光特性、特定物質に対する吸着能といった物理的、物理化学的物性を付与した機能性材料は、高い比表面積と機能性材料の有する物性とを併せ持つことから、興味深い材料である。ここで、多孔質材料として、アルミナ、カーボン、シリカ等を挙げることができる。また、磁気特性、あるいは、光に対して特異な挙動を示す特性(尚、このような特性を、以下の説明においては、便宜上、『光学的特性』と呼ぶ)、特定物質に対する吸着能を有する機能性材料として、金属[Fe、Co、Ni、Au、Ag、Pt、Cu]や合金、酸化物[Fe23、Fe34、TiO2、ZnO2]、化合物[CdS、CdSe、ZnS、CaCO3、Ca(CH3COO)2]等の微粒子や薄膜、あるいは、アミノ基を多く含む高分子膜や単分子膜を挙げることができる。
【0003】
このような機能性材料は、例えば、吸着剤や触媒、エネルギーデバイスの電極、センシングデバイスへの応用が期待されている(例えば、特開2006−167694参照。)。また、野菜や穀類等の植物の未利用部分の殆どは廃棄されているが、これらの未利用部分の有効利用が、地球環境の保全や改善のために強く求められている。未利用部分の有効利用の一例として、炭化処理が挙げられる。そして、このような植物由来の材料を炭化処理することにより製造された炭素材料を色素吸着剤に用いた例が、例えば、Dyes and Pigments, Vol 66, 2005, pp 123-128 から知られている。また、植物資材による脱臭能、イオン交換能、触媒能を有する炭化物製造方法が、特開2000−211910から周知である。
【0004】
富栄養化した湖沼や池では、夏期を中心に、藍藻類(ミクロキスティス等)が異常増殖して、水の表面が緑色の粉をふいたような厚い層が形成されることがあり、これはアオコと呼ばれている。この藍藻類は人体に有害な毒素を発生することが知られているが、多くの毒素の中でミクロシスチンLRという毒素が特に警戒されている。ミクロシスチンLRが生体内に入ると肝臓が大きな損傷を受け、その毒性はマウスによる実験でも報告されている。ミクロシスチンLRを出す有毒アオコは、オーストラリアやヨーロッパ、アメリカの湖、アジア各地で発生している。被害の大きい中国の湖では、一年中、大発生したアオコが消えることはない。そして、湖水は飲料水や農業用水に利用されているため、湖沼において藍藻類が生み出す毒素が人間の飲料水の確保において問題になっており、その解決が強く望まれている。
【0005】
ゼオライトや活性炭は、数ナノメートルと非常に微細な細孔構造を有する多孔質材料であり、様々な分野において利用されており、その機能は分離、除去、貯蔵、触媒等、多岐に亙る。そして、近年では、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System, DDS。薬物輸送(送達)システムとも呼ばれる)における薬物の担持体としての利用が期待されている。
【0006】
スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素は、広義の活性酸素種として知られており、急性炎症、組織障害、老化の要因と考えられている。これら酸化物質に対処するため、従来から使用されてきた抗酸化成分として、ビタミンC(L−アスコルビン酸)、アスタキサンチン、コエンザイムQ10等の成分が挙げられる。しかしながら、L−アスコルビン酸塩及びL−アスコルビン酸誘導体等は安定性に問題があり、単回の還元作用によって、それ自身が酸化されるという問題点を有している。これに対して、近年、高活性の白金コロイドの有する電気二重層を皮膚に作用させることにより皮膚を保護し、皮膚の角質層の活性化を図る白金ナノコロイド含有化粧料が提案されている(例えば、特開2005−139102参照)。ナノサイズの白金粒子は、長い期間に亙る抗酸化能、高い触媒能を有しており、表面での反応性が高く、各種の活性酸素を消去できる等の利点を有しており、多くの化粧品に含有されている。
【0007】
また、現在市販されている化粧水や化粧水含浸パックには多数の美容成分が含まれているが、これら美容成分の多くは、疎水性分子であり、水に不溶または難溶であることが多い。そのため、これらの美容成分を可溶化するために多数の可溶化剤が用いられており、特に安定性に優れた可溶化剤が幅広く利用されている。可溶化剤として、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンオレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン鎖を含有する非イオン界面活性剤や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−167694
【特許文献2】特開2000−211910
【特許文献3】特開2005−139102
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Dyes and Pigments, Vol 66, 2005, pp 123-128
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、植物由来の材料を原料とした多孔質炭素材料に無機材料から成る機能性材料を複合化させた機能性材料が報告されているが、植物由来の材料を炭化処理する技術は十分とは云えず、多孔質炭素材料に基づく機能性材料(多孔質炭素材料複合体)には、特性、機能性の一層の向上が望まれている。
【0011】
藍藻類の生み出す分子量500以上の毒素の除去において、従来の活性炭を用いた吸着方法では、活性炭の細孔直径が小さいために単位重量当たりの吸着量が非常に低い。即ち、炭素材料を用いた毒素の除去方法においては、一層の機能向上が望まれている。また、実用化する上での課題として、
[A]アオコの処分に伴い溶出する毒性成分のミクロシスチンを確実に無毒化するシステムであること、
が挙げられるし、更には、
[B]使用する資材等による環境の二次汚染が無いこと、
[C]処理システムが経済的であり、取り扱いが容易であり、且つ、必要に応じて回収可能であって、環境の生態系を攪乱しないものであること、
等を満足することが望ましい。
【0012】
ドラッグデリバリーシステム(DDS)においては、必要な部位、場所に、必要量だけ、薬物を投与することが非常に重要である。しかしながら、現状の多孔質材料は、吸着特性には優れているものの、脱着の制御を行うことは不可能である。また、薬物送達システム以外にも、温度や湿度等の種々の外部刺激に基づき、担持していた物質の放出を制御し得る機構、構成、構造が、種々の技術分野、産業分野で要求されている。
【0013】
上述した白金ナノコロイド含有化粧品にあっては、ナノサイズの白金微粒子をコロイド化するために保護コロイド剤を用いる必要があるが、これにより粒子表面が被覆されてしまい、充分な効果が期待できない場合がある。従って、表面保護剤を用いずに微粒子をナノサイズに保つことができれば、より高い抗酸化作用が期待できる。
【0014】
上述した化粧水や化粧水含浸パックにおいて用いられている界面活性剤は、安全性の点で必ずしも十分に満足し得るものでない。近年では、従来の界面活性剤よりも安全性が高いと考えられる高分子化合物を用いる方法も検討され始めているが、これら高分子化合物を用いた場合、可溶化工程が複雑であるし、製造コストが高いといった問題がある。
【0015】
従って、本発明の目的は、多孔質炭素材料及び機能性材料から成り、高い機能性を備え得る多孔質炭素材料複合体、並びに、その製造方法、更には、多孔質炭素材料複合体から構成された吸着剤、化粧料、浄化剤及び光触媒複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するための本発明の多孔質炭素材料複合体は、
(A)ケイ素(Si)の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素(Si)の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した機能性材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である。
【0017】
上記の目的を達成するための本発明の多孔質炭素材料複合体の製造方法は、植物由来の材料を800゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって、多孔質炭素材料を得た後、該多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる工程から成る。
【0018】
上記の目的を達成するための本発明の吸着剤は、
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した磁性材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
ミクロシスチンを吸着する。
【0019】
上記の目的を達成するための本発明の光触媒複合材料は、
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料複合体を含む。
【0020】
上記の目的を達成するための本発明の化粧料は、
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した活性酸素除去効果を有する金属系材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料複合体を含む。
【0021】
上記の目的を達成するための本発明の浄化剤は、
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料複合体を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明の多孔質炭素材料複合体あるいはその製造方法によって製造される多孔質炭素材料複合体、本発明の吸着剤、化粧料、浄化剤あるいは光触媒複合材料において、植物由来の材料にはケイ素が5重量%以上含まれるが、後述する多孔質炭素材料前駆体[1]あるいは炭素質物質[1]に変換する際、植物由来の材料を800゜C乃至1400゜Cにて炭素化することによって、植物由来の材料中に含まれるケイ素が、炭化ケイ素(SiC)とはならずに、二酸化ケイ素(SiOx)や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素成分(ケイ素酸化物)となる。それ故、次の工程において酸又はアルカリ(塩基)で処理することにより、二酸化ケイ素や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素成分(ケイ素酸化物)が除去される結果、大きな窒素BET法による比表面積の値を得ることができる。即ち、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上であり、ケイ素の含有率が1重量%以下、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を得ることができる。そして、係る多孔質炭素材料に機能性材料を付着させることによって、多孔質炭素材料単位重量当たりの機能性材料付着量の増加を図ることができ、高い特性、高い機能性を有する多孔質炭素材料複合体を得ることができる。
【0023】
また、係る多孔質炭素材料に磁性材料を付着させると、多孔質炭素材料単位重量当たりの磁性材料付着量の増加を図ることができ、優れた特性、高い機能性を有し、例えば磁気分離装置によって容易に水から分離することができる吸着剤を得ることができる。そして、その結果、アオコや、湖沼水、河川水等に含まれる毒性成分のミクロシスチン類を、容易に、確実に、且つ、経済的に、しかも、環境の二次汚染を生じさせること無く、環境の生態系を攪乱すること無く、吸着することができる。
【0024】
本発明における多孔質炭素材料は、上述したとおり、天然物由来の環境融和材料であり、その微細構造は、植物由来の材料である原料中に予め含まれるケイ素成分(ケイ素酸化物)を酸又はアルカリで処理し、除去することによって得られる。従って、細孔は、従来の活性炭では実現できない大きさやメソ領域(2〜50nm)を有しており、また、細孔の配列は植物の有する生体規則性を維持している。本発明の光触媒複合材料にあっては、このような細孔サイズや配列によって光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による分解を効果的に生じさせることができる。また、本発明の化粧料にあっては、このような細孔サイズや配列によって活性酸素除去効果を有する金属系材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に担持させることができる。それ故、例えば、ナノサイズの白金微粒子をコロイド化するために保護コロイド剤を用いることが不可欠ではなくなり、急性炎症、組織障害、老化の要因と考えられるスーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素といった活性酸素種に対する高い抗酸化作用を発揮することができる。更には、環境浄化用材料である本発明の浄化剤にあっても、このような細孔サイズや配列は、有害物質の吸着に対して有効に作用と考えられると同時に、光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による有害物質の分解、無毒化を効果的に生じさせることができる。しかも、浄化剤内部における有害物質の拡散が促進され、光触媒作用による分解を一層効果的に生じさせることができ、水の浄化や空気の浄化を極めて効果的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1の多孔質炭素材料複合体及び比較例1の多孔質炭素材料におけるメソ細孔の細孔分布及びマイクロ細孔の細孔分布を表すグラフである。
【図2】図2の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例2の多孔質炭素材料複合体及び比較例2の多孔質炭素材料におけるメソ細孔の細孔分布及びマイクロ細孔の細孔分布を表すグラフである。
【図3】図3の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例3の多孔質炭素材料複合体及び比較例3の多孔質炭素材料におけるメソ細孔の細孔分布及びマイクロ細孔の細孔分布を表すグラフである。
【図4】図4の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例4の多孔質炭素材料複合体及び比較例4の多孔質炭素材料におけるメソ細孔の細孔分布及びマイクロ細孔の細孔分布を表すグラフである。
【図5】図5の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例5の多孔質炭素材料複合体及び比較例5の多孔質炭素材料におけるメソ細孔の細孔分布及びマイクロ細孔の細孔分布を表すグラフである。
【図6】図6の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例6の多孔質炭素材料複合体及び比較例6の多孔質炭素材料におけるメソ細孔の細孔分布及びマイクロ細孔の細孔分布を表すグラフである。
【図7】図7は、実施例1及び実施例2の多孔質炭素材料複合体、並びに、比較例1及び比較例2の多孔質炭素材料の粉末X線回折法にて得られたX線回折結果のチャートである。
【図8】図8は、実施例3及び実施例4の多孔質炭素材料複合体、並びに、比較例3及び比較例4の多孔質炭素材料の粉末X線回折法にて得られたX線回折結果のチャートである。
【図9】図9は、実施例5及び実施例6の多孔質炭素材料複合体、並びに、比較例5及び比較例6の多孔質炭素材料の粉末X線回折法にて得られたX線回折結果のチャートである。
【図10】図10の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1の多孔質炭素材料複合体及び比較例1の多孔質炭素材料の磁化曲線、並びに、実施例2の多孔質炭素材料複合体及び比較例2の多孔質炭素材料の磁化曲線である。
【図11】図11の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例3の多孔質炭素材料複合体及び比較例3の多孔質炭素材料の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフ、並びに、実施例4の多孔質炭素材料複合体及び比較例4の多孔質炭素材料の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図12】図12の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例5の多孔質炭素材料複合体及び比較例5の多孔質炭素材料の磁化曲線を示すグラフ、並びに、実施例6の多孔質炭素材料複合体及び比較例6の多孔質炭素材料の磁化曲線を示すグラフである。
【図13】図13の(A)、(B)、(C)及び(D)は、それぞれ、参考例7、TiO2、実施例7−A、実施例7−Bの粉末X線回折法にて得られたX線回折結果のチャートである。
【図14】図14の(A)、(B)、(C)は、参考例7、実施例7−A、実施例7−Bの示差熱分析の結果を示すグラフである。
【図15】図15の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例7−A、実施例7−Bの試料及び参考例7をメチルオレンジ水溶液に添加し、紫外線を照射したときのメチルオレンジの分解状態の時間変化を評価した結果を示すグラフ、並びに、実施例7−Aの試料及びTiO2をミクロシスチン水溶液に添加し、紫外線を照射したときのミクロシスチンの分解状態の時間変化を評価した結果を示すグラフである。
【図16】図16は、実施例9−A、実施例9−B、比較例9−A、比較例9−Bの粉末X線回折法にて得られたX線回折結果のチャートである。
【図17】図17の(A)及び(B)は、実施例9−A及び比較例9−Aの電子線顕微鏡像である。
【図18】図18は、実施例9−A、実施例9−B、比較例9−A、比較例9−Bにおけるラジカル残存率の時間変化を示すグラフである。
【図19】図19は、実施例10の多孔質炭素材料複合体において、放出物質としてアリザリングリーンGを用い、365nmの紫外線を照射したときの、605nmの吸光度の時間変化を調べた結果を示すグラフである。
【図20】図20は、実施例10の多孔質炭素材料複合体において、放出物質としてアリザリングリーンGを用い、温度に依存した放出物質の放出状態を605nmの吸光度によって調べた結果を示すグラフである。
【図21】図21は、実施例10の多孔質炭素材料複合体において、放出物質としてリモネンを用い、湿度に依存した放出物質の放出状態を調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の多孔質炭素材料複合体及びその製造方法、並びに、吸着剤、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の多孔質炭素材料複合体及びその製造方法)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.実施例4(実施例3の変形)
6.実施例5(実施例1の別の変形)
7.実施例6(実施例5の変形)
8.実施例7(実施例1の別の変形、本発明の光触媒複合材料及び浄化剤)
9.実施例8(本発明の吸着剤)
10.実施例9(実施例1の更に別の変形、その他)
11.実施例10(実施例1の更に別の変形、その他)
【0027】
[本発明の多孔質炭素材料複合体及びその製造方法、吸着剤、化粧料、浄化剤、並びに、光触媒複合材料、全般に関する説明]
本発明の多孔質炭素材料複合体は、上記の本発明の多孔質炭素材料複合体の製造方法によって製造できるだけでなく、植物由来の材料を、後の工程で実行する炭素化のための温度よりも低い温度(例えば、400゜C〜700゜C)にて、酸素を遮断した状態で加熱処理(予備炭素化処理)を施した後、酸又はアルカリで処理し、次いで、800゜C乃至1400゜Cにて炭素化することによって、多孔質炭素材料を得た後、該多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる工程から成る製造方法によっても得ることができる。尚、このような製造方法を、便宜上、『第2の製造方法』と呼び、本発明の多孔質炭素材料複合体の製造方法を、便宜上、『第1の製造方法』と呼ぶ場合がある。
【0028】
第1の製造方法にあっては、酸又はアルカリでの処理の後、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる前に、賦活処理を施す工程を含めることができる。また、このような好ましい形態を含む第1の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、植物由来の材料を炭素化する前に、炭素化のための温度よりも低い温度(例えば、400゜C〜700゜C)にて、酸素を遮断した状態で植物由来の材料に加熱処理(予備炭素化処理)を施してもよい。これによって、あるいは又、第2の製造方法にあっては、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を抽出することが出来る結果、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。尚、酸素を遮断した状態は、例えば、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気とすることで、あるいは又、真空雰囲気とすることで、あるいは又、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とすることで達成することができる。また、第1の製造方法あるいは第2の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、植物由来の材料中に含まれるミネラル成分や水分を減少させるために、また、炭素化の過程での異臭の発生を防止するために、植物由来の材料をアルコール(例えば、メチルアルコールやエチルアルコール、イソプロピルアルコール)に浸漬してもよい。尚、第1の製造方法にあっては、その後、予備炭素化処理を実行してもよい。不活性ガス中で加熱処理を施すことが好ましい材料として、例えば、木酢液(タールや軽質油分)を多く発生する植物を挙げることができる。また、アルコールによる前処理を施すことが好ましい材料として、例えば、ヨウ素や各種ミネラルを多く含む海藻類を挙げることができる。第2の製造方法にあっては、炭素化後、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる前に、賦活処理を施す工程を含めることができる。
【0029】
また、上記の各種の好ましい形態を含む第1の製造方法若しくは第2の製造方法にあっては、植物由来の材料におけるケイ素(Si)の含有率は5重量%以上であり、多孔質炭素材料のケイ素(Si)の含有率は1重量%以下であり、多孔質炭素材料複合体の窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である形態とすることができる。
【0030】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の多孔質炭素材料複合体あるいはその製造方法、本発明の吸着剤、本発明の化粧料、本発明の浄化剤及び本発明の光触媒複合材料を総称して、単に、『本発明』と呼ぶ場合がある。また、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の多孔質炭素材料複合体あるいはその製造方法、第2の製造方法によって得られた多孔質炭素材料複合体を総称して、単に、『本発明における多孔質炭素材料複合体』と呼ぶ場合があるし、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の多孔質炭素材料複合体あるいはその製造方法、第2の製造方法によって得られた多孔質炭素材料複合体、本発明の吸着剤、本発明の化粧料、本発明の浄化剤及び本発明の光触媒複合材料を総称して、単に、『本発明における多孔質炭素材料複合体等』と呼ぶ場合がある。更には、第1の製造方法において、植物由来の材料を800゜C乃至1400゜Cにて炭素化することにより得られた材料であって、酸又はアルカリでの処理を行う前の材料を、『多孔質炭素材料前駆体[1]』あるいは『炭素質物質[1]』と呼ぶ。また、第2の製造方法において、予備炭素化処理後であって、酸又はアルカリでの処理を行う前の材料を、『多孔質炭素材料前駆体[2]』と呼ぶ。
【0031】
本発明における多孔質炭素材料複合体において、機能性材料を磁性材料とすることができる。そして、この場合、あるいは又、本発明の吸着剤にあっては、磁性材料は、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)から成る群から選択された少なくとも1種類の元素を構成要素とすることが望ましい。更には、磁性材料は、本発明における多孔質炭素材料複合体等において磁性を示す状態で1重量%以上、好ましくは10重量%以上含まれていることが望ましい。多孔質炭素材料に含まれる磁性材料の上限値は、本発明における多孔質炭素材料複合体等に要求される特性に基づき決定すればよい。あるいは又、本発明における多孔質炭素材料複合体等の飽和質量磁化の値は、1A・m2/kg以上、好ましくは10A・m2/kg以上であることが望ましい。尚、本発明における多孔質炭素材料複合体等の飽和質量磁化の上限値として、150A・m2/kgを例示することができる。磁性材料として、より具体的には、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)といった強磁性材料、これらの強磁性材料の合金(例えば、Co−Fe、Co−Fe−Ni、Ni−Fe等)、これらの合金に非磁性元素(例えば、タンタル、ホウ素、クロム、白金、シリコン、炭素、窒素、リン等)を混ぜた合金(例えば、Co−Fe−B等)、Co、Fe、Niの内の1種類以上を含む酸化物(例えば、フェライト:Fe−MnO等)、ハーフメタリック強磁性材料と呼ばれる一群の金属間化合物(ホイスラー合金:NiMnSb、Co2MnGe、Co2MnSi、Co2CrAl等)、酸化物(例えば、(La,Sr)MnO3、CrO2、Fe34等)を挙げることができる。機能性材料を磁性材料とする場合、機能性材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、微粒子の状態での付着、薄膜の状態での付着を例示することができ、本発明における多孔質炭素材料複合体には磁性が付与され、磁気誘導可能な吸着剤、徐放剤、細胞培養の足場(交流磁界・温度応答性高分子による表面性制御)、発生する磁界による血行促進剤、水浄化、土壌浄化といった用途への応用が可能である。
【0032】
あるいは又、本発明における多孔質炭素材料複合体において、機能性材料は光学的特性を示す形態とすることができる。ここで、光学的特性とは、「表面プラズモン吸収」あるいは「半導体による光吸収」を意味する。あるいは又、機能性材料は、白金(Pt)パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)を含む貴金属;貴金属の合金;酸化チタン、酸化亜鉛等の酸化物半導体;硫化カドミウム、硫化鉛、セレン化カドミウム、セレン化鉛、セレン化亜鉛、砒素化インジウム、砒素化ガリウム、燐化インジウム、燐化ガリウム、アンチモン化ガリウム、アンチモン化インジウム、酸化チタン、ランタニド酸化物等の化合物半導体から成る形態とすることができる。尚、機能性材料を貴金属あるいはその合金から選択することで、表面プラズモン吸収といった光学的特性が発揮され、表面プラズモン吸収特性(色調)の変化で反応を検出するセンサー、細胞培養の足場(プラズモン共鳴の細胞への影響)への応用が可能である。また、機能性材料を酸化物半導体あるいは化合物半導体から選択することで、半導体による光吸収や発光といった光学的特性が発揮される。あるいは又、機能性材料を、白金(Pt)パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)を含む貴金属や貴金属の合金から構成することで、多孔質炭素材料複合体に活性酸素種に対する高い抗酸化作用を付与することができる。尚、これらの機能性材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、微粒子の状態での付着、薄膜の状態での付着を例示することができる。
【0033】
あるいは又、本発明における多孔質炭素材料複合体において、機能性材料は光触媒特性を示す形態とすることができる。ここで、機能性材料を白金(Pt)、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)から構成する場合、機能性材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、微粒子の状態での付着、薄膜の状態での付着を例示することができ、多孔質炭素材料複合体には触媒特性が付与され、電極材料としての応用が可能であるし、自動車等における内燃機関、燃焼装置、エンジン等からの排ガス中のNOxやSOxの除去といった応用も可能である。また、機能性材料を酸化チタン(TiO2)や酸化亜鉛(ZnO)から構成する場合、機能性材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、微粒子の状態での付着、薄膜の状態での付着を例示することができ、多孔質炭素材料複合体には電荷分離、紫外線吸収、触媒特性が付与され、光触媒効果により、半永久的に使用可能な有害物質分解剤、有害物質除去剤としての応用が可能である。
【0034】
ここで、光触媒材料(機能性材料)を酸化チタンあるいは酸化亜鉛から構成することで、本発明の光触媒複合材料あるいは本発明の浄化剤を得ることができる。有害物質の分解、除去にあっては、本発明における多孔質炭素材料複合体にエネルギー線や電磁波(例えば、紫外線や太陽光、可視光等)を照射する形態を挙げることができる。有害物質として水中あるいは空気中に存在する有害物質を挙げることができ、具体的には、ミクロシスチン類や各種のウィルス、アレルギー発生原因物質を例示することができる。本発明の浄化剤は、水の浄化剤あるいは空気の浄化剤として機能し、例えば、空気浄化装置のフィルターとしての応用が可能である。本発明の光触媒複合材料あるいは本発明の浄化剤の使用形態として、シート状での使用、カラムやカートリッジに充填された状態での使用、バインダー(結着剤)等を用いて所望の形状に賦形した状態での使用、粉状での使用を例示することができる。
【0035】
あるいは又、本発明における多孔質炭素材料複合体においては、機能性材料を外部刺激応答性物質及び放出物質から構成することができる。即ち、外部刺激によって、外部刺激応答性物質の構造変化の制御、更には、多孔質炭素材料(場合によっては、更には、外部刺激応答性物質)に付着、結合、吸着等し、あるいは又、担持されている放出物質の多孔質炭素材料からの脱着の制御が可能となる。そして、このように機能性材料を外部刺激応答性物質から構成することで、例えば、必要な部位に、必要量だけ、薬物を投与することが可能となる。高分子材料あるいはオリゴマーから成る外部刺激応答性物質は、外部からの刺激を受けて、その構造が変化する。そして、本発明における多孔質炭素材料は、従来の活性炭では実現できない大きさやメソ領域(2〜50nm)の細孔を有しており、外部刺激応答性物質が外部の刺激に応答した際に生じる変化を十分に反映させることができ、この変化に基づき、放出すべき物質(放出物質)を放出することができる。一方、従来の活性炭やゼオライト等の多孔質材料では、細孔サイズが微小すぎ、外部刺激応答性物質が外部の刺激に応答した際に生じる変化が十分に反映されない。ここで、物理的な外部刺激として光を想定した場合、外部刺激応答性物質である光応答性物質として、アゾベンゼンやクマリン、ナフトキノンジアジド化合物を挙げることができる。また、物理的な外部刺激として温度を想定した場合、外部刺激応答性物質である温度応答性物質として、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(IPAAm)、ポリエチレンオキサイド(例えば、分子量1000乃至2000のポリエチレンオキサイド,PEO1000〜2000)、ゼラチンを挙げることができる。更には、物理的な外部刺激として湿度を想定した場合、外部刺激応答性物質である湿度応答性物質として、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸を挙げることができる。また、化学的な外部刺激としてpHを想定した場合、外部刺激応答性物質であるpH応答性物質として、カルボキシル基やアミノ基等の酸解離する官能基を含んだポリマーを挙げることができる。更には、化学的な外部刺激としてイオン強度を想定した場合、外部刺激応答性物質であるイオン強度応答性物質として、カルボキシル基やアミノ基等、金属イオンとイオン交換することができる官能基を含んだポリマーを挙げることができる。
【0036】
放出物質として、DDS担持体へ担持させる薬物、経皮吸収薬、細胞培養足場材、化粧料成分や保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分、芳香剤を例示することができる。より具体的には、DDS担持体へ担持させる薬物として、モルヒネや抗癌剤等を挙げることができる。経皮吸収薬として、狭心症のためのニトログリセリンや硝酸イソソルビド、喘息薬のツロブテロール、禁煙用のニコチンパッドを挙げることができる。また、細胞培養足場材として、カゼインやグルコース等の細胞に対する栄養分を挙げることができる。更には、化粧料成分として、疎水性の美容成分を有する物質(例えばダイゼイン、ゲニステイン)を挙げることができるし、保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分として、ヒアルロン酸、アスタキサンチン、トコフェロール、トロロックス、コエンザイムQ10等の化粧水中に含まれる有効成分を挙げることができる。また、芳香剤として、リモネン、メントール、リナロール、バニリン等を挙げることができる。例えば、これらの放出物質を液状として、多孔質炭素材料を浸漬、乾燥し、次いで、これらの外部刺激応答性物質を液状として、放出物質が付着、結合、吸着等された多孔質炭素材料を浸漬、乾燥することで、多孔質炭素材料複合体を得ることができるが、このような方法に限定するものではない。
【0037】
経皮吸収は比較的副作用が少ない投与法として有用であるが、現状の経皮吸収薬の持続性は、必ずしも十分であるとは云えない。体温付近で構造変化が生じる高分子(温度応答性物質あるいは体温応答性物質)によって多孔質炭素材料を修飾することで得られる多孔質炭素材料複合体は、経皮吸収薬の担持体として極めて有用であり、体温により暖められた部位から徐々に経皮吸収薬である放出物質が放出され、徐放性が向上するといった優れた特性を有する。
【0038】
現在市販されている化粧水や化粧水含浸パックといった各種化粧品等には多数の美容成分が含まれているが、これら美容成分の多くは疎水性分子であり、水に不溶あるいは難溶であることが多い。ここで、放出物質は多孔質炭素材料に付着しており、従来の技術と異なり、界面活性剤や高分子化合物の使用は不要である。しかも、保持された放出物質(化粧料成分や保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分)が各種化粧品等の使用時に放出されるように、体温付近で構造変化が生じる高分子(温度応答性物質や湿度応答性物質)によって多孔質炭素材料を修飾することで得られる多孔質炭素材料複合体は、化粧料成分や保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分である放出物質を担持する材料として極めて好ましい材料である。また、クレンジング効果もあり、汗や油脂、口紅等の汚れ成分を除去することもできる。汚れ成分として、具体的には、例えば、脂肪酸グリセリンエステルを成分とする油脂や皮脂;単純脂質、複合脂質、誘導脂質といった脂質;蝋等の構成成分である有機酸、特に人の肌表面に存在する油分全般を指し(広義の脂肪酸)、また、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸といった鎖状あるいは分枝鎖を含み、あるいは又、環状構造を有する狭義の脂肪酸を指す。脂肪酸として、具体的には、オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、スクアレン(テルペノイドに属する油脂)、コレステロール(スクアレンから生合成される)、ステアリン酸モノグリセリンを挙げることができる。また、口紅等に含まれる色素として、具体的には、リソールルビンBCA(赤色202号)を含む法定色素(タール色素)全般を挙げることができる。
【0039】
多孔質炭素材料は、細胞培養のための足場材料として有用である。ここで、培養温度である37゜C前後に暖められた足場材料から、徐々に培養に必要な成分である放出物質が放出されることが極めて重要である。体温付近で構造変化が生じる高分子(温度応答性物質)によって多孔質炭素材料を修飾することで得られる多孔質炭素材料複合体は、このような理由から、細胞培養足場材として極めて好ましい材料である。
【0040】
現在、高い持続性を有する芳香剤が多く市販されているが、外部刺激に応答するような芳香剤は存在しない。温度や湿度によって構造変化が生じる高分子によって多孔質炭素材料を修飾することで得られる多孔質炭素材料複合体は、例えば、人が不快に感じるような温度や湿度が高い環境下において、気分をリラックスさせるような効果を持つ芳香剤(放出物質)を放出することが可能である。
【0041】
あるいは又、本発明における多孔質炭素材料複合体においては、機能性材料を、保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分(あるいは又、美容成分)から構成することができる。ここで、保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分として、ヒアルロン酸、アスタキサンチン、トコフェロール、トロロックス、コエンザイムQ10、コラーゲンを挙げることができ、これらは、従来、例えば、化粧水中に含まれている。尚、このような多孔質炭素材料複合体にあっては、クレンジング効果も有し、汗や油脂、口紅等の汚れ成分を除去することもできる。
【0042】
本発明の化粧料において、活性酸素除去効果を有する金属系材料(活性酸素を除去する金属系材料)として、例えば、白金ナノ粒子を挙げることができる。尚、本発明の化粧料はクレンジング効果も有し、汗や油脂、口紅等の汚れ成分を除去することもできる。
【0043】
あるいは又、本発明における多孔質炭素材料複合体において、機能性材料は、特定物質に対する選択吸着性又は結合性を示す形態とすることができる。そして、この場合、機能性材料は、リンと結合して析出する化合物(例えば、炭酸カルシウムや酢酸カルシウム)、又は、リンを吸着する部位を有する分子膜(例えば、アミノ基を有する高分子膜[具体的には、例えば、塩酸セベラマー]や、アミノ基を有する単分子膜[具体的には、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン])から成る形態とすることができる。
【0044】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における多孔質炭素材料複合体等において、植物由来の材料として、米(稲)、大麦、小麦、ライ麦、稗(ヒエ)、粟(アワ)等の籾殻や藁、あるいは又、葦、茎ワカメを挙げることができるが、これらに限定するものではなく、その他、例えば、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類、海草を挙げることができる。尚、これらの材料を、原料として、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また、植物由来の材料の形状や形態も特に限定はなく、例えば、籾殻や藁そのものでもよいし、あるいは乾燥処理品でもよい。更には、ビールや洋酒等の飲食品加工において、発酵処理、焙煎処理、抽出処理等の種々の処理を施されたものを使用することもできる。特に、産業廃棄物の資源化を図るという観点から、脱穀等の加工後の藁や籾殻を使用することが好ましい。これらの加工後の藁や籾殻は、例えば、農業協同組合や酒類製造会社、食品会社から、大量、且つ、容易に入手することができる。
【0045】
本発明における多孔質炭素材料複合体等において、機能性材料の種類や構成、構造、形態にも依存するが、機能性材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、多孔質炭素材料の表面(細孔内を含む)に、微粒子として付着している状態、薄膜状に付着している状態、海・島状(多孔質炭素材料の表面を「海」とみなした場合、機能性材料が「島」に相当する)に付着している状態を挙げることができる。尚、付着とは、異種の材料間の接着現象を指す。多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる方法として、機能性材料を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、多孔質炭素材料の表面に無電解メッキ法(化学メッキ法)又は化学還元反応にて機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、熱処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、超音波照射処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、ゾル・ゲル反応を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法を挙げることができる。
【0046】
第1の製造方法若しくは第2の製造方法にあっては、植物由来の材料を800゜C乃至1400゜Cにて炭素化するが、ここで、炭素化とは、一般に、有機物質(本発明においては、植物由来の材料)を熱処理して炭素質物質に変換することを意味する(例えば、JIS M0104−1984参照)。尚、炭素化のための雰囲気として、酸素を遮断した雰囲気を挙げることができ、具体的には、真空雰囲気、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とする雰囲気を挙げることができる。炭素化温度に至るまでの昇温速度として、係る雰囲気下、1゜C/分以上、好ましくは3゜C/分以上、より好ましくは5゜C/分以上を挙げることができる。また、炭素化時間の上限として、10時間、好ましくは7時間、より好ましくは5時間を挙げることができるが、これに限定するものではない。炭素化時間の下限は、植物由来の材料が確実に炭素化される時間とすればよい。また、植物由来の材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、更には、分級してもよい。また、植物由来の材料を予め洗浄してもよい。
【0047】
第1の製造方法においては、酸又はアルカリでの処理の後、また、第2の製造方法においては、炭素化後、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる前に、上述したとおり、賦活処理を施せば、孔径が2nmよりも小さいマイクロ細孔(後述する)を増加させることができる。賦活処理の方法として、ガス賦活法、薬品賦活法を挙げることができる。ここで、ガス賦活法とは、賦活剤として酸素や水蒸気、炭酸ガス、空気等を用い、係るガス雰囲気下、700゜C乃至1000゜Cにて、数十分から数時間、多孔質炭素材料を加熱することにより、多孔質炭素材料中の揮発成分や炭素分子により微細構造を発達させる方法である。尚、加熱温度は、植物由来の材料の種類、ガスの種類や濃度等に基づき、適宜、選択すればよいが、好ましくは、800゜C以上950゜C以下である。薬品賦活法とは、ガス賦活法で用いられる酸素や水蒸気の替わりに、塩化亜鉛、塩化鉄、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸等を用いて賦活させ、塩酸で洗浄、アルカリ性水溶液でpHを調整し、乾燥させる方法である。
【0048】
第1の製造方法若しくは第2の製造方法にあっては、酸又はアルカリでの処理によって、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去する。ここで、ケイ素成分として、二酸化ケイ素や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素酸化物を挙げることができる。このように、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去することで、高い比表面積を有する多孔質炭素材料を得ることができ、多孔質炭素材料単位重量当たりの機能性材料付着量の増加を図ることができる。
【0049】
本発明の吸着剤に対しては、以上に説明した形態、構成を含む本発明の多孔質炭素材料複合体、本発明の多孔質炭素材料複合体を構成する多孔質炭素材料、以上に説明した好ましい形態、構成を含む第1の製造方法若しくは第2の製造方法を適用することができる。
【0050】
本発明における多孔質炭素材料等には、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)や、リン(P)、硫黄(S)等の非金属元素や、遷移元素等の金属元素が含まれていてもよい。マグネシウム(Mg)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、カリウム(K)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、カルシウム(Ca)の含有率として0.05重量%以上3重量%以下、リン(P)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、硫黄(S)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下を挙げることができる。尚、これらの元素の含有率は、本発明における多孔質炭素材料複合体等の使用用途によって異なるが、比表面積の値の増加といった観点からは、少ない方が好ましい。多孔質炭素材料には、上記した元素以外の元素を含んでいてもよく、上記した各種元素の含有率の範囲も、本発明における多孔質炭素材料複合体等の使用用途によって変更し得ることは云うまでもない。
【0051】
本発明において、各種元素の分析は、例えば、エネルギー分散型X線分析装置(例えば、日本電子株式会社製のJED−2200F)を用い、エネルギー分散法(EDS)により行うことができる。ここで、測定条件を、例えば、走査電圧15kV、照射電流10μAとすればよい。
【0052】
本発明における多孔質炭素材料複合体等は、細孔(ポア)を多く有している。細孔として、孔径が2nm乃至50nmの『メソ細孔』、及び、孔径が2nmよりも小さい『マイクロ細孔』が含まれる。具体的には、メソ細孔として、例えば、20nm以下の孔径の細孔を多く含み、特に、10nm以下の孔径の細孔を多く含んでいる。また、マイクロ細孔として、例えば、孔径が1.9nm程度の細孔と、1.5nm程度の細孔と、0.8nm〜1nm程度の細孔とを多く含んでいる。本発明における多孔質炭素材料複合体等にあっては、BJH法及びMP法による細孔の容積は0.1cm3/グラム以上であるが、0.3cm3/グラム以上であることが一層好ましい。
【0053】
本発明における多孔質炭素材料複合体等において、窒素BET法による比表面積の値(以下、単に、『比表面積の値』と呼ぶ場合がある)は、より一層優れた機能性を得るために、好ましくは50m2/グラム以上、より好ましくは100m2/グラム以上、更に一層好ましくは400m2/グラム以上であることが望ましい。
【0054】
窒素BET法とは、吸着剤(ここでは、多孔質炭素材料複合体)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータを式(1)で表されるBET式に基づき解析する方法であり、この方法に基づき比表面積や細孔容積等を算出することができる。具体的には、窒素BET法により比表面積の値を算出する場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料複合体)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、吸着等温線を求める。そして、得られた吸着等温線から、式(1)あるいは式(1)を変形した式(1’)に基づき[p/{Va(p0−p)}]を算出し、平衡相対圧(p/p0)に対してプロットする。そして、このプロットを直線と見なし、最小二乗法に基づき、傾きs(=[(C−1)/(C・Vm)])及び切片i(=[1/(C・Vm)])を算出する。そして、求められた傾きs及び切片iから式(2−1)、式(2−2)に基づき、Vm及びCを算出する。更には、Vmから、式(3)に基づき比表面積asBETを算出する(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第66頁参照)。尚、この窒素BET法は、JIS R 1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準じた測定方法である。
【0055】
a=(Vm・C・p)/[(p0−p){1+(C−1)(p/p0)}] (1)
[p/{Va(p0−p)}]
=[(C−1)/(C・Vm)](p/p0)+[1/(C・Vm)] (1’)
m=1/(s+i) (2−1)
C =(s/i)+1 (2−2)
sBET=(Vm・L・σ)/22414 (3)
【0056】
但し、
a:吸着量
m:単分子層の吸着量
p :窒素の平衡時の圧力
0:窒素の飽和蒸気圧
L :アボガドロ数
σ :窒素の吸着断面積
である。
【0057】
窒素BET法により細孔容積Vpを算出する場合、例えば、求められた吸着等温線の吸着データを直線補間し、細孔容積算出相対圧で設定した相対圧での吸着量Vを求める。この吸着量Vから式(4)に基づき細孔容積Vpを算出することができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第65頁参照)。尚、窒素BET法に基づく細孔容積を、以下、単に『細孔容積』と呼ぶ場合がある。
【0058】
p=(V/22414)×(Mg/ρg) (4)
【0059】
但し、
V :相対圧での吸着量
g:窒素の分子量
ρg:窒素の密度
である。
【0060】
メソ細孔の孔径は、例えば、BJH法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。BJH法は、細孔分布解析法として広く用いられている方法である。BJH法に基づき細孔分布解析をする場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料複合体)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、脱着等温線を求める。そして、求められた脱着等温線に基づき、細孔が吸着分子(例えば窒素)によって満たされた状態から吸着分子が段階的に着脱する際の吸着層の厚さ、及び、その際に生じた孔の内径(コア半径の2倍)を求め、式(5)に基づき細孔半径rpを算出し、式(6)に基づき細孔容積を算出する。そして、細孔半径及び細孔容積から細孔径(2rp)に対する細孔容積変化率(dVp/drp)をプロットすることにより細孔分布曲線が得られる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第85頁〜第88頁参照)。
【0061】
p=t+rk (5)
pn=Rn・dVn−Rn・dtn・c・ΣApj (6)
但し、
n=rpn2/(rkn−1+dtn2 (7)
【0062】
ここで、
p:細孔半径
k:細孔半径rpの細孔の内壁にその圧力において厚さtの吸着層が吸着した場合のコア半径(内径/2)
pn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔容積
dVn:そのときの変化量
dtn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの吸着層の厚さtnの変化量
kn:その時のコア半径
c:固定値
pn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔半径
である。また、ΣApjは、j=1からj=n−1までの細孔の壁面の面積の積算値を表す。
【0063】
マイクロ細孔の孔径は、例えば、MP法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。MP法により細孔分布解析を行う場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料複合体)に窒素を吸着させることにより、吸着等温線を求める。そして、この吸着等温線を吸着層の厚さtに対する細孔容積に変換する(tプロットする)。そして、このプロットの曲率(吸着層の厚さtの変化量に対する細孔容積の変化量)に基づき細孔分布曲線を得ることができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第72頁〜第73頁、第82頁参照)。
【0064】
あるいは又、多孔質炭素材料は、水銀圧入法による細孔分布において1×10-7m乃至5×10-6mの範囲にピークを有し、且つ、BJH法による細孔分布において2nm乃至20nmの範囲にピークを有する構成とすることができる。そして、この場合、更には、水銀圧入法による細孔分布において2×10-7m乃至2×10-6mの範囲にピークを有し、且つ、BJH法による細孔分布において2nm乃至10nmの範囲にピークを有する構成とすることが好ましい。
【0065】
多孔質炭素材料前駆体[1],[2]を酸又はアルカリで処理するが、具体的な処理方法として、例えば、酸あるいはアルカリの水溶液に多孔質炭素材料前駆体[1],[2]を浸漬する方法や、多孔質炭素材料前駆体[1],[2]と酸又はアルカリとを気相で反応させる方法を挙げることができる。より具体的には、酸によって処理する場合、酸として、例えば、フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等の酸性を示すフッ素化合物を挙げることができる。フッ素化合物を用いる場合、多孔質炭素材料前駆体[1],[2]に含まれるケイ素成分におけるケイ素元素に対してフッ素元素が4倍量となればよく、フッ素化合物水溶液の濃度は10重量%以上であることが好ましい。フッ化水素酸によって、多孔質炭素材料前駆体[1],[2]に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、二酸化ケイ素は、化学式(A)又は化学式(B)に示すようにフッ化水素酸と反応し、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)あるいは四フッ化ケイ素(SiF4)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0066】
SiO2+6HF → H2SiF6+2H2O (A)
SiO2+4HF → SiF4+2H2O (B)
【0067】
また、アルカリ(塩基)によって処理する場合、アルカリとして、例えば、水酸化ナトリウムを挙げることができる。アルカリの水溶液を用いる場合、水溶液のpHは11以上であればよい。水酸化ナトリウム水溶液によって、多孔質炭素材料前駆体[1],[2]に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、水酸化ナトリウム水溶液を熱することにより、二酸化ケイ素は、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。また、水酸化ナトリウムを気相で反応させて処理する場合、水酸化ナトリウムの固体を熱することにより、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0068】
SiO2+2NaOH → Na2SiO3+H2O (C)
【0069】
本発明における多孔質炭素材料複合体は、前述した用途以外にも、広くは、例えば、色素を吸着する吸着剤、毒素を吸着する吸着剤、薬物の担持体、水の浄化剤、土壌浄化剤、特定の反応を促進させることができる触媒、或る種の物質が吸着すると色が変化することで係る物質の存在を検出する一種のセンサーとして利用することができる。あるいは又、炭酸カルシウムや酢酸カルシウム、又は、アミノ基を多く含む高分子膜、単分子膜等を機能性材料として用い、これとリンの結合を利用したリン吸着剤、リン吸着薬として用いることもできる。以上のような材料は、例えば磁性を有した機能性(無機)材料と複合化することにより、磁石での回収や移動が可能である。
【実施例1】
【0070】
実施例1は、本発明の多孔質炭素材料複合体及び本発明の多孔質炭素材料複合体の製造方法に関する。実施例1の多孔質炭素材料複合体は、
(A)ケイ素(Si)の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素(Si)の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した機能性材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である。
【0071】
実施例1にあっては、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を米(稲)の籾殻とした。そして、実施例1における多孔質炭素材料は、原料としての籾殻を炭素化して炭素質物質[1](多孔質炭素材料前駆体[1])に変換し、次いで、酸処理を施すことで得られる。そして、多孔質炭素材料を得た後、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させることで多孔質炭素材料複合体を得ることができる。具体的には、実施例1にあっては、機能性材料は微量の酸化鉄(Fe34)を含む鉄といった無機材料から成り、微粒子の形態、形状で、多孔質炭素材料の表面(細孔内を含む)に付着している。
【0072】
[工程−100]
実施例1の多孔質炭素材料複合体の製造においては、先ず、植物由来の材料を800゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって、多孔質炭素材料を得た。即ち、先ず、粉砕した籾殻(鹿児島県産、イセヒカリの籾殻)に対して、不活性ガス中で加熱処理(予備炭素化処理)を施す。具体的には、籾殻を、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得た。尚、このような処理を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(10リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で800゜Cまで昇温させた。そして、800゜Cで1時間、炭素化して、炭素質物質[1](多孔質炭素材料前駆体[1])に変換した後、室温まで冷却した。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続けた。次に、この多孔質炭素材料前駆体[1]を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄した。そして、最後に、120°Cにて乾燥させることにより、多孔質炭素材料を得ることができた。
【0073】
[工程−110]
次いで、得られた多孔質炭素材料に機能性材料を付着させた。尚、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる処理を、以下、『複合化処理』と呼ぶ場合がある。具体的には、濃度0.5モル/リットル、温度25゜Cの塩化鉄水溶液中に、多孔質炭素材料を24時間浸漬した後、水洗し、窒素雰囲気下、750°Cで3時間の加熱処理を行った。
【0074】
実施例1と同じ多孔質炭素材料(複合化処理は行っていない)を、比較例1として各種の試験に供した。
【0075】
実施例1の多孔質炭素材料複合体及び比較例1の多孔質炭素材料について、比表面積の値及び細孔容積を測定したところ、表1に示す結果が得られた。また、実施例1の多孔質炭素材料複合体及び比較例1の多孔質炭素材料について、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径の分布を測定したところ、図1の(A)及び図1の(B)に示す結果が得られた。
【0076】
比表面積の値及び細孔容積を求めるための測定機器として、BELSORP−mini(日本ベル株式会社製)を用い、窒素吸脱着試験を行った。測定条件として、測定平衡相対圧(p/p0)を0.15〜0.975とした。そして、BELSORP解析ソフトウェアに基づき、比表面積の値及び細孔容積を算出した。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径分布は、上述した測定機器を用いた窒素吸脱着試験を行い、BELSORP解析ソフトウェアによりBJH法及びMP法に基づき算出した。尚、後述する実施例、比較例においても、比表面積の値及び細孔容積、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径分布の測定を同様の方法で行った。
【0077】
複合化処理を行った実施例1の多孔質炭素材料複合体にあっては、比表面積の値及び細孔容積は、複合化処理を行っていない比較例1の多孔質炭素材料よりも小さい。この結果は、複合化処理を行うことによって、多孔質炭素材料の細孔が機能性材料(磁性微粒子)の付着(析出)によって塞がれ、あるいは又、機能性材料の付着(析出)によって重量が増加したことに起因するものと考えられる。
【0078】
図1の(A)及び図1の(B)の細孔分布曲線から、全体的に細孔容積の減少が認められ、特に、図1の(B)に示したミクロ孔の領域において、比較例1と比べて、実施例1にあっては、細孔容積の減少が顕著に確認された。これは、機能性材料の析出に起因するものと考えられる。
【0079】
実施例1の多孔質炭素材料複合体及び比較例1の多孔質炭素材料について元素分析を行ったところ、表2に示す結果が得られた。尚、元素分析の測定機器としてエネルギー分散型X線分析装置(日本電子株式会社製のJED−2200F)を用い、エネルギー分散法(EDS)により各元素を定量した後、含有率を重量比(重量%)として算出した。測定条件を、走査電圧15kV、照射電流10μAとした。以下の実施例、比較例の測定においても同様とした。
【0080】
比較例1ではFeの含有量が0.01重量%以下であった。一方、実施例1では15.7重量%に増加していた。これは、複合化処理によって鉄を含んだ相が析出したことに起因するものと考えられる。
【0081】
更には、実施例1の多孔質炭素材料複合体及び比較例1の多孔質炭素材料について、粉末X線回折法にて評価した結果を図7に示す。ここで、株式会社リガク製のX線回折装置(RINT−TTRII)を用い、X線源をCu−Kα線とした。尚、波長は0.15405nmである。また、印加電圧を50キロボルト、走査ステップを0.04°とした。以下の実施例、比較例の測定においても同様とした。
【0082】
X線回折パターンから、実施例1において形成した主な相は金属鉄であることが判った。また、金属鉄に加えて酸化鉄に由来する回折ピークも僅かながら観測された。一方、複合化処理前(比較例1参照)には2θ=24°付近に観測されていたブロードな炭素の(002)面の回折ピークが、複合化処理後(実施例1参照)には、2θ=26°付近に比較的鋭いピークとして観測された。このことから、複合化のための熱処理によって、多孔質炭素材料の層状構造の形成が促進されたことが示唆された。
【0083】
実施例1の多孔質炭素材料複合体及び比較例1の多孔質炭素材料について磁化曲線を評価した。得られた磁化曲線を図10の(A)に示す。ここで、磁化曲線はLakeShore社製の試料振動型磁力計(MODEL4500)を用いて測定した。以下の実施例、比較例の測定においても同様とした。
【0084】
比較例1の多孔質炭素材料は、ほぼ非磁性であった。一方、複合化処理を行った実施例1の多孔質炭素材料複合体にあっては、飽和質量磁化の大幅な増加が確認され、約38A・m2/kgの飽和磁化を示し、多孔質炭素材料複合体に磁気特性が付与されたことが示された。
【0085】
また、実施例1の多孔質炭素材料複合体では、ケイ素(Si)の含有率が著しく減少していたことから、多孔質炭素材料前駆体[1]を酸で処理することにより、含まれる二酸化ケイ素といったケイ素成分が除去され、比表面積の値の増加に寄与することが示唆された。更には、酸での処理によって、メソ細孔及びマイクロ細孔が増加することが確認された。後述する実施例においても同様である。また、フッ化水素酸水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム水溶液といったアルカリ(塩基)にて処理して得られた多孔質炭素材料においても、同様の結果が得られた。
【0086】
尚、[工程−100]において得られた多孔質炭素材料(以下、『多孔質炭素材料−A』と呼ぶ)の比表面積、細孔容積の測定結果は、以下のとおりであった。また、[工程−100]に引き続き、900゜Cで水蒸気気流中にて2時間、及び、3時間加熱させることで賦活処理を行うことで得られた多孔質炭素材料(以下、『多孔質炭素材料−B』及び『多孔質炭素材料−C』と呼ぶ)の比表面積、細孔容積の測定結果は、以下のとおりであった。
[多孔質炭素材料−A]
比表面積:589m2/グラム
細孔容積:0.60cm3/グラム
[多孔質炭素材料−B]
比表面積:930m2/グラム
細孔容積:0.80cm3/グラム
[多孔質炭素材料−C]
比表面積:1309m2/グラム
細孔容積:1.16cm3/グラム
【0087】
多孔質炭素材料−A、多孔質炭素材料−B、多孔質炭素材料−Cが、どの程度インドール(数平均分子量:117)を吸着するかを測定した。具体的には、インドールとpH7.3のリン酸緩衝液とを用いて、4.234×10-4モル/リットルの水溶液を調製した。そして、調製した水溶液40.0ミリリットルに0.010グラムの多孔質炭素材料−A、多孔質炭素材料−B、多孔質炭素材料−Cを添加し、37±2゜Cにて1時間振とうした。振とう後、500μmの細孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルターを用いて、水溶液から多孔質炭素材料−A、多孔質炭素材料−B、多孔質炭素材料−Cを除去した。そして、濾液の吸光度をUV可視吸光度測定により測定し、水溶液モル濃度を求めた。尚、吸着前の初期水溶液モル濃度と比較することにより、吸着量を算出した。多孔質炭素材料1グラム当たりの吸着量を、以下の式に基づき算出した。
【0088】
(多孔質炭素材料1グラム当たりの吸着量)=
(溶質の分子量)×{(吸着前の水溶液モル濃度)−(吸着後の水溶液モル濃度)}/
(1000ミリリットル当たりの多孔質炭素材料の量)
【0089】
また、参考のために、参考例として、石油ピッチを原料としたクレメジン原体(クレハ株式会社製、比表面積1079m2/グラム、細孔容積0.60cm3/グラム)である活性炭を用いて、1グラム当たりの吸着量を測定した。
【0090】
吸着量の測定結果は以下のとおりであった。即ち、多孔質炭素材料−A、多孔質炭素材料−B、多孔質炭素材料−Cは、クレメジン原体よりも高い吸着能を示した。
多孔質炭素材料−A: 58.98(ミリグラム)
多孔質炭素材料−B:167.25(ミリグラム)
多孔質炭素材料−C:205.81(ミリグラム)
クレメジン原体 : 32.88(ミリグラム)
【実施例2】
【0091】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2にあっては、実施例1の[工程−100]に引き続き、900゜Cで水蒸気気流中にて3時間加熱させることで賦活処理を行った。そして、その後、実施例1の[工程−110]と同様の複合化処理を行った。
【0092】
実施例2と同じ多孔質炭素材料(複合化処理は行っていない)を、比較例2として各種の試験に供した。
【0093】
実施例2の多孔質炭素材料複合体及び比較例2の多孔質炭素材料について比表面積の値及び細孔容積を測定したところ、表1に示す結果が得られた。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径の分布を測定したところ、図2の(A)及び図2の(B)に示す結果が得られた。
【0094】
複合化処理を行った実施例2の多孔質炭素材料複合体にあっては、比表面積の値及び細孔容積は、実施例1及び比較例1よりも大きく、比較例2の多孔質炭素材料よりも小さい。この結果は、複合化処理を行うことによって、多孔質炭素材料の細孔が機能性材料(磁性微粒子)の付着(析出)によって塞がれ、あるいは又、機能性材料の付着(析出)によって重量が増加したことに起因していると考えられる。また、賦活処理によって、比表面積の値及び細孔容積は増加している。図2の(A)及び図2の(B)の細孔分布曲線から、特に、図2の(B)に示したミクロ孔の領域において、比較例2と比べて実施例2の細孔容積の減少が確認された。これは、機能性材料の析出に起因すると考えられる。
【0095】
実施例2の多孔質炭素材料複合体及び比較例2の多孔質炭素材料について元素分析を行ったところ、表2に示す結果が得られた。ここで、比較例2ではFeの含有量が0.13重量%であった。一方、実施例2では11.4重量%に増加していた。これは、複合化処理によって鉄を含んだ相が析出したことに起因するものと考えられる。
【0096】
更には、実施例2の多孔質炭素材料複合体及び比較例2の多孔質炭素材料について、粉末X線回折法にて評価した結果を図7に示す。X線回折パターンから、実施例2において形成した主な相は金属鉄であることが判った。また、金属鉄に加えて酸化鉄に由来する回折ピークも僅かながら観測された。一方、複合化処理前(比較例2参照)には2θ=24°付近に観測されていたブロードな炭素の(002)面の回折ピークが、複合化処理後(実施例2参照)には、2θ=26°付近に鋭いピークとして観測された。このことから、複合化のための熱処理によって、多孔質炭素材料の層状構造の形成が促進されたことが示唆された。
【0097】
実施例2の多孔質炭素材料複合体及び比較例2の多孔質炭素材料について磁化曲線を評価した。得られた磁化曲線を図10の(B)に示す。比較例2の多孔質炭素材料は、ほぼ非磁性であった。一方、複合化処理を行った実施例2の多孔質炭素材料複合体にあっては、飽和質量磁化の大幅な増加が確認され、約50A・m2/kgの飽和磁化を示し、多孔質炭素材料複合体に磁気特性が付与されたことが示された。
【実施例3】
【0098】
実施例3も、実施例1の変形である。実施例3にあっては、機能性材料は、金属、具体的には金(Au)、より具体的には金ナノ粒子から成る。実施例3にあっては、実施例1の[工程−100]を実行した後、得られた多孔質炭素材料に機能性材料を付着させたが、具体的には、複合化処理として、濃度0.875モル/リットルのクエン酸ナトリウムを含んだ濃度0.25モル/リットルの塩化金酸水溶液中に多孔質炭素材料を投入した後、20分間沸騰させた。その後、濾過し、十分に水洗した。
【0099】
実施例3と同じ多孔質炭素材料(複合化処理は行っていない)を、比較例3として各種の試験に供した。
【0100】
実施例3の多孔質炭素材料複合体及び比較例3の多孔質炭素材料について比表面積の値及び細孔容積を測定したところ、表1に示す結果が得られた。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径の分布を測定したところ、図3の(A)及び図3の(B)に示す結果が得られた。
【0101】
複合化処理を行った実施例3の多孔質炭素材料複合体にあっては、比表面積の値及び細孔容積は、比較例3の多孔質炭素材料よりも小さい。この結果は、複合化処理を行うことによって、多孔質炭素材料の細孔が機能性材料(金ナノ粒子)の付着(析出)によって塞がれ、あるいは又、機能性材料の付着(析出)によって重量が増加したことに起因していると考えられる。また、図3の(A)及び図3の(B)の細孔分布曲線から、全細孔径領域において、比較例3と比べて実施例3の細孔容積の減少が確認された。これは、金ナノ粒子の析出に起因すると考えられる。
【0102】
実施例3の多孔質炭素材料複合体及び比較例3の多孔質炭素材料について元素分析を行ったところ、表2に示す結果が得られた。比較例3ではAuの含有量が0.01重量%以下であった。一方、実施例3では11.5重量%に増加していた。このことから、複合化処理によって、金ナノ粒子が多孔質炭素材料の表面に析出したと考えられる。
【0103】
更には、実施例3の多孔質炭素材料複合体及び比較例3の多孔質炭素材料について、粉末X線回折法にて評価した結果を図8に示す。X線回折パターンから、実施例3において形成した主な相は金であることが判った。
【0104】
また、紫外可視吸収スペクトルを評価した結果を図11の(A)に示す。530nm付近に、金ナノ粒子に特有の表面プラズモン吸収に由来すると考えられる吸収帯が確認された。このことからも、多孔質炭素材料の表面に金ナノ粒子が析出し、多孔質炭素材料複合体を形成していることが示された。
【実施例4】
【0105】
実施例4は、実施例3の変形である。実施例4にあっては、複合化処理の前に、900゜Cで水蒸気気流中にて3時間加熱させることで賦活処理を行った。そして、その後、実施例3と同様の複合化処理を行った。
【0106】
実施例4と同じ多孔質炭素材料(複合化処理は行っていない)を、比較例4として各種の試験に供した。
【0107】
実施例4の多孔質炭素材料複合体及び比較例4の多孔質炭素材料について比表面積の値及び細孔容積を測定したところ、表1に示す結果が得られた。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径の分布を測定したところ、図4の(A)及び図4の(B)に示す結果が得られた。
【0108】
複合化処理を行った実施例4の多孔質炭素材料複合体にあっては、比表面積の値及び細孔容積は、比較例4の多孔質炭素材料と同程度であった。また、図4の(A)及び図4の(B)の細孔分布曲線から、特にミクロ孔の領域において、比較例4と比べて実施例4にあっては、細孔容積の減少が確認された。これは、金ナノ粒子の付着(析出)に起因すると考えられる。
【0109】
実施例4の多孔質炭素材料複合体及び比較例4の多孔質炭素材料について元素分析を行ったところ、表2に示す結果が得られた。比較例4ではAuの含有量が0.76重量%であった。一方、実施例4では14.0重量%に増加していた。
【0110】
更には、実施例4の多孔質炭素材料複合体及び比較例4の多孔質炭素材料について、粉末X線回折法にて評価した結果を図8に示す。X線回折パターンから、実施例4において形成した主な相は金であることが判った。
【0111】
また、紫外可視吸収スペクトルを評価した結果を図11の(B)に示す。530nm付近に、金ナノ粒子に特有の表面プラズモン吸収に由来すると考えられる吸収帯が確認された。このことからも、多孔質炭素材料の表面に金ナノ粒子が析出し、多孔質炭素材料複合体を形成していることが示された。
【実施例5】
【0112】
実施例5も、実施例1の変形である。実施例5にあっては、機能性材料は、磁性材料から成り、且つ、合金、具体的には、Fe−Co−Ni合金薄膜から成る。実施例5にあっては、実施例1の[工程−100]を実行した後、得られた多孔質炭素材料に機能性材料を付着させたが、具体的には、複合化処理として、濃度0.6モル/リットル、温度25゜Cの塩化パラジウムを含んだ希塩酸に60秒間浸漬した後、水洗し、その後、硫酸コバルト(0.036モル/リットル)、硫酸ニッケル(0.004モル/リットル)及び硫酸鉄(0.06モル/リットル)とジメチルアミンボラン(0.15モル/リットルモル/リットル)とを含んだ温度80゜Cの水溶液中に30分間浸漬して、無電解めっき反応に基づきCo−Ni−Fe合金薄膜を多孔質炭素材料の表面に析出させた。その後、十分に水洗した。尚、このような方法の詳細は、Electrochemica Acta Vol. 53, 2007, pp285-289 を参照のこと。
【0113】
実施例5と同じ多孔質炭素材料(複合化処理は行っていない)を、比較例5として各種の試験に供した。
【0114】
実施例5の多孔質炭素材料複合体及び比較例5の多孔質炭素材料について比表面積の値及び細孔容積を測定したところ、表1に示す結果が得られた。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径の分布を測定したところ、図5の(A)及び図5の(B)に示す結果が得られた。複合化処理を行った実施例5の多孔質炭素材料複合体にあっては、比表面積の値及び細孔容積は、比較例5の多孔質炭素材料よりも小さい。この結果は、複合化処理を行うことによって、多孔質炭素材料の細孔が機能性材料(Co−Ni−Fe合金薄膜)の付着(析出)によって塞がれ、あるいは又、機能性材料の付着(析出)によって重量が増加したことに起因していると考えられる。また、図5の(A)及び図5の(B)の細孔分布曲線から、全細孔径領域において、比較例5と比べて実施例5の細孔容積の減少が確認された。これは、機能性材料(Co−Ni−Fe合金薄膜)の析出に起因すると考えられる。
【0115】
実施例5の多孔質炭素材料複合体及び比較例5の多孔質炭素材料について元素分析を行ったところ、表2に示す結果が得られた。比較例5ではCo、Ni、Feの含有量が1重量%以下であった。一方、実施例5ではCo、Ni、Feの重量%が増加していた。このことから、複合化処理によって、Co−Ni−Fe薄膜が多孔質炭素材料の表面に析出したと考えられる。
【0116】
更には、実施例5の多孔質炭素材料複合体及び比較例5の多孔質炭素材料について、粉末X線回折法にて評価した結果を図9に示す。X線回折パターンから、実施例5において形成した主な相はCo−Ni−Fe合金であることが判った。
【0117】
実施例5の多孔質炭素材料複合体及び比較例5の多孔質炭素材料について磁化曲線を評価した。得られた磁化曲線を図12の(A)に示す。比較例5の多孔質炭素材料は、ほぼ非磁性であった。一方、複合化処理を行った実施例5の多孔質炭素材料複合体にあっては、飽和質量磁化の大幅な増加が確認され、約60A・m2/kgの飽和磁化を示し、多孔質炭素材料複合体に磁気特性が付与されたことが示された。
【実施例6】
【0118】
実施例6は、実施例5の変形である。実施例6にあっては、複合化処理の前に、900゜Cで水蒸気気流中にて3時間加熱させることで賦活処理を行った。その後、実施例5と同様の複合化処理を行った。
【0119】
実施例6と同じ多孔質炭素材料(複合化処理は行っていない)を、比較例6として各種の試験に供した。
【0120】
実施例6の多孔質炭素材料複合体及び比較例6の多孔質炭素材料について比表面積の値及び細孔容積を測定したところ、表1に示す結果が得られた。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径の分布を測定したところ、図6の(A)及び図6の(B)に示す結果が得られた。複合化処理を行った実施例6の多孔質炭素材料複合体にあっては、比表面積の値及び細孔容積は、比較例6の多孔質炭素材料よりも小さい。この結果は、複合化処理を行うことによって、多孔質炭素材料の細孔が機能性材料(Co−Ni−Fe合金薄膜)の付着(析出)によって塞がれ、あるいは又、機能性材料の付着(析出)によって重量が増加したことに起因していると考えられる。また、図6の(A)及び図6の(B)の細孔分布曲線から、全細孔径領域において、比較例6と比べて実施例6の細孔容積の減少が確認された。これは、機能性材料(Co−Ni−Fe合金薄膜)の析出に起因すると考えられる。
【0121】
実施例6の多孔質炭素材料複合体及び比較例6の多孔質炭素材料について元素分析を行ったところ、表2に示す結果が得られた。比較例6ではCo、Ni、Feの含有量が1重量%以下であった。一方、実施例6ではCo、Ni、Feの重量%が増加していた。このことから、複合化処理によって、Co−Ni−Fe薄膜が多孔質炭素材料の表面に析出したと考えられる。
【0122】
更には、実施例6の多孔質炭素材料複合体及び比較例6の多孔質炭素材料について、粉末X線回折法にて評価した結果を図9に示す。X線回折パターンから、実施例6において形成した主な相はCo−Ni−Fe合金であることが判った。
【0123】
実施例6の多孔質炭素材料複合体及び比較例6の多孔質炭素材料について磁化曲線を評価した。得られた磁化曲線を図12の(B)に示す。比較例6の多孔質炭素材料は、ほぼ非磁性であった。一方、複合化処理を行った実施例6の多孔質炭素材料複合体にあっては、飽和質量磁化の大幅な増加が確認され、約85A・m2/kgの飽和磁化を示し、多孔質炭素材料複合体に磁気特性が付与されたことが示された。
【0124】
[表1]

【0125】
[表2]

【実施例7】
【0126】
実施例7も、実施例1の変形であり、且つ、本発明の光触媒複合材料、本発明の浄化剤に関する。実施例7の光触媒複合材料あるいは浄化剤は、
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料複合体を含む。
【0127】
ここで、実施例7において、光触媒材料あるいは機能性材料は、光触媒として機能する酸化チタン(TiO2)から構成されている。酸化チタンは、微粒子の状態で多孔質炭素材料へ付着している。これによって、多孔質炭素材料複合体には電荷分離、紫外線吸収、触媒特性が付与され、光触媒効果により、半永久的に使用可能な有害物質分解剤、有害物質除去剤としての使用が可能である。
【0128】
実施例7にあっては、実施例1にて説明した多孔質炭素材料−Cに機能性材料を付着させたが、具体的には、複合化処理を以下に示すように行った。即ち、エタノール100ミリリットル中に、多孔質炭素材料0.5グラム、酢酸4.57ミリリットル、適量のオルトチタン酸テトライソプロピル(TIPO)を加えて、1時間、撹拌した。その後、遠心分離を行い、上澄み液を捨て、固相に少量のエタノールを加え、純水100ミリリットル中に超音波を加えながら少量ずつ添加した。その後、再び、遠心分離を行い、得られた固相を100゜Cで乾燥させた。最後に、400゜Cで結晶成長させることで、実施例7の多孔質炭素材料複合体、光触媒複合材料、浄化剤を得ることができた。尚、実施例7においては、2種類の試料、実施例7−A及び実施例7−Bを得たが、実施例7−Aは、TIPOを23.44ミリリットル加え、窒素ガス雰囲気中で結晶成長させたものである。また、実施例7−Bは、TIPOを46.88ミリリットル加え、空気中で結晶成長させたものである。
【0129】
X線回析(XRD)を行い、実施例7−A及び実施例7−Bの試料にTiO2が含まれていることが確認できた。尚、実施例7−A、実施例7−B、実施例7における多孔質炭素材料(実施例1にて説明した多孔質炭素材料−Cであり、以下、『参考例7』と呼ぶ)、及び、実施例7にて用いたTiO2の粉末X線回折法にて得られたX線回折結果を、図13の(C)、(D)、(A)及び(B)に示す。
【0130】
示差熱分析(TG)法に基づく、実施例7−A及び実施例7−Bの試料のTiO2含有率測定結果を、以下の表3に示す。実施例7−A及び実施例7−Bの試料、参考例7の示差熱分析の結果を、図14の(B)、(C)、(A)に示す。更には、窒素BET法、BJH法及びMP法に基づき比表面積及び全細孔容積を測定した結果を、以下の表3に示す。
【0131】
[表3]
実施例7−A 実施例7−B
TiO2含有量(重量%) 33.3 85.5
比表面積 (m2/g) 962 196
全細孔容積 (m3/g) 0.813 0.405
【0132】
評価のために、実施例7−A、実施例7−Bの試料、及び、参考例7のそれぞれ10ミリグラムを、3×10-2モル/リットルのメチルオレンジ水溶液50ミリリットルに加え、9ワットの紫外線ランプ(波長:354nm)によって紫外線を照射し、メチルオレンジの分解状態の時間変化を評価した(図15の(A)参照)。その結果、時間当たりの減少率は最初の3時間が最も大きく、照射開始から3時間におけるメチルオレンジの分解は、参考例7が最も大きく、実施例7−A、実施例7−Bの順であった。然るに、照射開始から3時間を経過した後においては、参考例7ではメチルオレンジの分解は生じなかった。一方、実施例7−A、実施例7−Bにおいては、メチルオレンジの分解が進み、しかも、TiO2の含有率の高い実施例7−Bの方が、よりメチルオレンジの分解が進むことが判った。
【0133】
また、1.5×10-5モル/リットルのミクロシスチン水溶液10ミリリットルに実施例7−Aの試料を0.3ミリグラム添加し、比較のために、1.5×10-5モル/リットルのミクロシスチン水溶液10ミリリットルにTiO2を0.3ミリグラム添加した。そして、9ワットの紫外線ランプ(波長:354nm)によって紫外線を照射し、ミクロシスチンの分解状態の時間変化を評価した(図15の(B)参照)。その結果、TiO2単独よりも、実施例7−Aの試料の方が、ミクロシスチンを一層分解することが判った。1.0×10-4モル/リットルのミクロシスチン水溶液においても、同様の結果が得られた。これは、紫外線の照射によって光触媒材料に正孔/電子対が生じ、係る正孔がミクロシスチンを酸化、分解するためであると考えられる。
【0134】
実施例7における多孔質炭素材料は、天然物由来の環境融和材料であり、その微細構造は、植物由来の材料である原料中に予め含まれるケイ素成分(ケイ素酸化物)を酸又はアルカリで処理し、除去することによって得られる。従って、細孔は、従来の活性炭では実現できない大きさやメソ領域(2〜50nm)を有しており、また、細孔の配列は植物の有する生体規則性を維持している。実施例7の光触媒複合材料にあっては、このような細孔サイズや配列によって、光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による分解を効果的に生じさせることができる。また、環境浄化用材料である実施例7の浄化剤にあっても、このような細孔サイズや配列は、有害物質の吸着に対して有効に作用と考えられると同時に、光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による有害物質の分解、無毒化を効果的に生じさせることができる。また、浄化剤内部における有害物質の拡散が促進され、光触媒作用による分解を一層効果的に生じさせることができ、水の浄化や空気の浄化を極めて効果的に行うことが可能となる。
【実施例8】
【0135】
実施例8は、本発明の吸着剤に関する。実施例8における吸着剤は、
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した磁性材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である。そして、ミクロシスチンLR(分子量:994)を吸着する。
【0136】
ミクロシスチンLR

【0137】
ここで、実施例8における吸着剤を、実施例6と同様の方法で製造した。但し、製造時期が異なっており、以下の表4に示すように、比表面積、細孔容積及び飽和磁化の値が実施例6と、若干、異なっている。
【0138】
また、参考例8として、以下の表4に示す和光純薬工業株式会社製の活性炭を用いた。
【0139】
実施例8にあっては、ミクロシスチンLRと純水を用い、濃度1.0×10-4モルの水溶液を調製した。そして、調製した水溶液1.0ミリリットル当たり0.25グラムの表4に示す実施例8の吸着剤を添加し、25±2゜Cにて1時間振とうした。振とう後、500μmの細孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルターを用いて、溶液から吸着剤を除去した。そして、濾液の吸光度をUV可視吸光度測定により測定し、水溶液モル濃度を求めた。尚、吸着前の初期水溶液モル濃度と比較することにより、吸着量を算出した。吸着剤1グラム当たりの吸着量を、以下の式に基づき算出した。参考例8においても、同様にして吸着量を求めた。
【0140】
(吸着剤1グラム当たりの吸着量)=
(溶質の分子量)×{(吸着前の水溶液モル濃度)−(吸着後の水溶液モル濃度)}/
(1000ミリリットル当たりの吸着剤の量)
【0141】
[表4]

【0142】
表4からも明らかなように、参考例8と比較して、実施例8は、ミクロシスチンLRの吸着量が格段に高い。そして、実施例8の吸着剤にあっては、磁性を有しているが故に、周知の磁気分離方式の水質浄化装置を用いて、水質浄化後の水から実施例8の吸着剤を容易に分離(除去)することができた。このように、多孔質炭素材料に磁性材料を付着させると、多孔質炭素材料単位重量当たりの磁性材料付着量の増加を図ることができ、優れた特性、高い機能性を有し、例えば磁気分離装置によって容易に水から分離することができる吸着剤を得ることができた。そして、その結果、アオコや、湖沼水、河川水等に含まれる毒性成分のミクロシスチン類を、容易に、確実に、且つ、経済的に、しかも、環境の二次汚染を生じさせること無く、環境の生態系を攪乱すること無く、吸着することが可能となる。
【実施例9】
【0143】
実施例9は、本発明の化粧料に関する。実施例9の化粧料は、
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した活性酸素除去効果を有する金属系材料(活性酸素を除去する金属系材料であり、より具体的には、実施例9にあっては、白金微粒子,白金ナノ粒子)、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料複合体を含む。
【0144】
実施例9にあっては、実施例1にて説明した多孔質炭素材料−Cに機能性材料を付着させたが、具体的には、複合化処理を以下に示すように行った。即ち、蒸留水182ミリリットルに対して5ミリモルのH2PtCl6水溶液を8ミリリットル、L−アスコルビン酸(表面保護剤)を3.5ミリグラム添加して、暫く撹拌した。その後、多孔質炭素材料を0.43グラム添加して、20分間、超音波照射した後、40ミリモルのNaBH4水溶液を10ミリリットル加え、3時間撹拌した。その後、吸引濾過し、120゜Cで乾燥させることによって、黒色の粉末試料である実施例9−Aの化粧料を得た。また、実施例9−Bとして、L−アスコルビン酸を添加すること無く、実施例9−Aと同様にして化粧料を作製した。
【0145】
得られた実施例9−A、実施例9−Bの化粧料の抗酸化特性を、安定化ラジカルである1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH,数平均分子量:394)を用いて評価した。具体的には、濃度1.0×10-4モルのDPPHエタノール溶液を調製した。そして、調製したDPPH溶液1.0ミリリットル当たり2.5マイクログラムの実施例9−A、実施例9−Bの化粧料を添加し、25±2゜Cにて振とうした。そして、200nmの細孔を有するメンブレンフィルターを用いて、溶液から化粧料を除去し、濾液の吸光度をUV可視吸光度測定により測定した。尚、吸着前の初期吸光度と比較することにより、DPPHラジカル残存率を算出した。また、比較例9−Aとして、市販の活性炭を炭素材料として用いて、実施例9−A、実施例9−Bと同様にして試料(比較例9−A、比較例9−B)を作製し、DPPHラジカル残存率を評価した。
【0146】
表5に、実施例9−A、実施例9−B、比較例9−A、比較例9−Bの比表面積と細孔容積を纏めて示し、更には、ICP発光分析によって求めた各試料の白金含有率を示し、粉末X線回折法にて得られたX線回折結果を図16に示す。
【0147】
[表5]

【0148】
各試料のX線回折パターンを図16に示すように、各試料において、2θ=40°付近にPt(111)面の回折ピークが観測されていることから、白金が析出していることが判る。また、白金の回折ピークは、実施例9−A、実施例9−B、比較例9−A、比較例9−Bとなるにつれ鮮明になっており、各試料において白金微粒子の粒径が異なっていることが示唆された。また、このことから、多孔質炭素材料を用いることによって、比較的粒径の小さい白金微粒子が形成され易く、アスコルビン酸を表面保護剤として用いることによって、更に白金微粒子の粒成長を抑制することができると考えられる。図17の(A)及び(B)に、実施例9−A及び比較例9−Aの電子線顕微鏡像を示す。X線回折パターンから予想されたように、多孔質炭素材料上に析出した白金微粒子(白金ナノ粒子)は、活性炭(比較例9−A)上に析出したものと比較して著しく小さいということが判った。これは、籾殻由来の多孔質炭素材料特有の微細構造及び表面状態が影響しているものと考えられる。
【0149】
図18にラジカル残存率の時間変化を示す。実施例9−A及び実施例9−Bは、アスコルビン酸の有無によらず、白金微粒子がDPPHを捕捉し、ラジカルを40分〜50分程度でほぼ完全に除去している。一方、比較例9−A及び比較例9−Bにあっては、アスコルビン酸の有無によってラジカル除去時間に差が認められた。
【0150】
実施例9における多孔質炭素材料は、天然物由来の環境融和材料であり、その微細構造は、植物由来の材料である原料中に予め含まれるケイ素成分(ケイ素酸化物)を酸又はアルカリで処理し、除去することによって得られる。従って、細孔は、従来の活性炭では実現できない大きさやメソ領域(2〜50nm)を有しており、また、細孔の配列は植物の有する生体規則性を維持している。従って、実施例9の化粧料にあっては、このような細孔サイズや配列によって、白金系材料等を極めて効果的に多孔質炭素材料に担持させることができる。それ故、例えば、ナノサイズの白金微粒子をコロイド化するために保護コロイド剤を用いる必要が無く、保護コロイド剤によって白金微粒子表面が覆われることが無く、急性炎症、組織障害、老化の要因と考えられるスーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素といった活性酸素種に対する高い抗酸化作用を発揮することができ、所謂アンチエイジング効果を得ることができる。
【実施例10】
【0151】
実施例10も、実施例1の変形である。実施例10の多孔質炭素材料複合体において、機能性材料は、外部刺激応答性物質及び放出物質から構成されている。尚、実施例10にあっては、実施例1にて説明した多孔質炭素材料−Cを使用した。
【0152】
実施例10にあっては、物理的な外部刺激を光とし、外部刺激応答性物質である光応答性物質として、アゾベンゼンあるいはクマリンを用いる。アゾベンゼンは、光に応答してシス状態とトランス状態との間を遷移する結果、放出物質を放出することができる。また、クマリンは、光に応答して二量体へと変化する結果、放出物質を放出することができる。試験のため、放出物質としてアリザリングリーンGを用い、365nmの紫外線を照射したときの、605nmの吸光度の時間変化を調べた結果を図19に示す。尚、図19は、365nmの紫外線を照射しない場合の試料における605nmの吸光度との吸光度差を示している。365nmの紫外線を照射したとき、アリザリングリーンGが放出され、時間と共に放出量が増加していることが判る。
【0153】
あるいは又、物理的な外部刺激を温度とし、外部刺激応答性物質である温度応答性物質として、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(IPAAm)あるいはポリエチレンオキサイド(例えば、分子量1000乃至2000のポリエチレンオキサイド,PEO1000〜2000)を用いる。試験のため、放出物質としてアリザリングリーンGを用い、温度応答性物質としてIPAAmを用いたときの、温度変化による放出物質の放出状態を605nmの吸光度によって調べた結果を図20に示す。試験開始から35分までは、雰囲気温度を20゜Cとした。そして、試験開始から35分経過後、雰囲気温度を温度50゜Cとした。その結果、雰囲気温度を変えることで、アリザリングリーンGの放出状態(単位時間当たりの放出量)が明確に異なった。これは、50゜Cにあっては、IPAAmの分子が縮み、一種の隙間が生じ、これによってアリザリングリーンGが放出されたと考えられる。
【0154】
あるいは又、物理的な外部刺激を湿度とし、外部刺激応答性物質である湿度応答性物質として分子量1540のポリエチレングリコールを用い、試験のため、放出物質として芳香剤であるリモネンを用いたときの、湿度に依存した放出物質の放出状態を調べた結果を図21に示す。図21において、黒丸印のデータは、温度40゜C(恒温槽を使用)のデータであり、白丸印のデータは、温度40゜C、湿度98%のデータである。湿度に依存して放出されるリモネンの量に差異が生じていることが判る。
【0155】
このように、実施例10にあっては、外部刺激によって、外部刺激応答性物質の構造変化の制御、更には、多孔質炭素材料に付着、結合、吸着等し、あるいは又、担持された放出物質の多孔質炭素材料からの脱着の制御が可能である。そして、実施例10における多孔質炭素材料は、従来の活性炭では実現できない大きさやメソ領域(2〜50nm)の細孔を有しており、外部刺激応答性物質が外部の刺激に応答した際に生じる変化を十分に反映させることができ、この変化に基づき、放出すべき物質(放出物質)を放出することができる。
【実施例11】
【0156】
実施例11も、実施例1の変形である。実施例11の多孔質炭素材料複合体において、機能性材料は、保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分、具体的には、以下に示すトロロックス、アスタキサンチン、コエンザイムQ10といった化粧水中に含まれる有効成分から構成されている。併せて、化粧料成分であり、疎水性の美容成分を有する物質であるダイゼインに対する測定も行った。
【0157】

【0158】
実施例1において説明した多孔質炭素材料−Cを多孔質炭素材料として用い、多孔質炭素材料−Cが、トロロックス(数平均分子量:250)、ダイゼイン(数平均分子量:254)、アスタキサンチン(数平均分子量:596)、コエンザイムQ10(数平均分子量:1002)をどの程度吸着するかを測定した。尚、以下の表6に示す濃度の溶液を調製したが、吸着前の各溶液濃度は任意に決めた。そして、調製した溶液40ミリリットルのそれぞれに、表7に示す0.010グラムの試料を添加し、37±2゜Cにて1時間振とうした。振とう後、500nmの細孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルターを用いて、溶液から多孔質炭素材料複合体を除去した。そして、濾液の吸光度をUV可視吸光度測定により測定し、溶液モル濃度を求めた。尚、吸着前の初期溶液モル濃度と比較することにより、吸着量を算出した。多孔質炭素材料1グラム当たりの吸着量を、実施例1にて説明した多孔質炭素材料1グラム当たりの吸着量を求める式に基づき算出した。その結果を、表8に示す。
【0159】
[表6]

【0160】
[表7]

【0161】
[表8]

【0162】
表8から、実施例11の多孔質炭素材料複合体においては、保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分や、化粧料成分を十分な量、保持、担持していることが判った。
【0163】
以上、好ましい実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。実施例にあっては、多孔質炭素材料の原料として、籾殻を用いる場合について説明したが、他の植物を原料として用いてもよい。ここで、他の植物として、例えば、藁、葦あるいは茎ワカメ、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類及び海草等を挙げることができ、これらを、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0164】
具体的には、例えば、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲の藁(例えば、鹿児島産;イセヒカリ)とし、多孔質炭素材料を、原料としての藁を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲科の葦とし、多孔質炭素材料を、原料としての稲科の葦を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。尚、多孔質炭素材料複合体の製造方法は、実施例1〜実施例8と同様とすることができる。
【0165】
あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を茎ワカメ(岩手県三陸産)とし、多孔質炭素材料を、原料としての茎ワカメを炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。具体的には、先ず、例えば、茎ワカメを500゜C程度の温度で加熱し、炭化する。尚、加熱前に、例えば、原料となる茎ワカメをアルコールで処理してもよい。具体的な処理方法として、エチルアルコール等に浸漬する方法が挙げられ、これによって、原料に含まれる水分を減少させると共に、最終的に得られる多孔質炭素材料に含まれる炭素以外の他の元素や、ミネラル成分を溶出させることができる。また、このアルコールでの処理により、炭素化時のガスの発生を抑制することができる。より具体的には、茎ワカメをエチルアルコールに48時間浸漬する。尚、エチルアルコール中では超音波処理を施すことが好ましい。次いで、この茎ワカメを、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得る。尚、このような処理(予備炭素化処理)を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(10リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で1000゜Cまで昇温する。そして、1000゜Cで5時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却する。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続ける。次に、この多孔質炭素材料前駆体を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄する。そして、最後に乾燥させることにより、多孔質炭素材料を得ることができる。その後、実施例1〜実施例6にて説明した複合化処理や賦活処理を施せばよい。
【0166】
尚、本発明の多孔質炭素材料複合体にあっては、多孔質炭素材料それ自体が、物質を吸着する能力を有している。そして、本発明の多孔質炭素材料複合体を、薬剤を担持するための担持体や薬剤徐放剤として用いることもできる。更には、本発明の多孔質炭素材料複合体からシート状部材を作製することもできるし、シート状部材を支持する支持部材から成る吸着シートを構成することもできる。また、本発明の多孔質炭素材料複合体を経口投与用の吸着剤として用いることもできるし、機能性食品の原料として用いることもできる。そして、これらの場合、多孔質炭素材料複合体に要求される特性等に応じて、適宜、機能性材料を選択すればよい。
【0167】
具体的には、本発明の多孔質炭素材料複合体を、体内の様々な不要な分子を選択的に吸着するために用いることができる。即ち、本発明の多孔質炭素材料複合体を、疾患の治療及び予防に有用な医薬内服薬等の経口投与吸着剤あるいは医療用吸着剤として用いることができる。より具体的には、本発明の多孔質炭素材料複合体を経口投与吸着剤あるいは医療用吸着剤の分野に適用する場合、インドールを吸着する吸着剤、クレアチニンを吸着する吸着剤、尿酸を吸着する吸着剤、アデノシンを吸着する吸着剤、アリザリンシアニングリーンを吸着する吸着剤、リゾチームを吸着する吸着剤、α−アミラーゼを吸着する吸着剤、アルブミンを吸着する吸着剤、3−メチルインドール(スカトール)を吸着する吸着剤、トリプトファンを吸着する吸着剤、インジカンを吸着する吸着剤、テオフィリンを吸着する吸着剤、イノシン−5−1燐酸2ナトリウム塩を吸着する吸着剤、アデノシン−5−3燐酸2ナトリウム塩を吸着する吸着剤、数平均分子量が1×102乃至1×105の有機物(例えば、有機分子、若しくは、蛋白質)、好ましくは1×102乃至5×104、より好ましくは1×102乃至2×104、一層好ましくは1×102乃至1×104の有機物(例えば、有機分子、若しくは、蛋白質)を吸着する吸着剤として用いることができる。更には、吸着すべき物質として、アンモニア、尿素、ジメチルアミン、メチルグアニジンといったグアニジン化合物、含硫アミノ酸、フェノール、p−クレゾール、蓚酸、ホモシステイン、グアジニノコハク酸、ミオイノシトール、インドキシル硫酸、プソイドウリジン、環状アデノシン一リン酸、β−アミノイソ酪酸、オクトパミン、α−アミノ酪酸、副甲状腺ホルモン、β2−ミクログロブリン、リボヌクレアーゼ、ナトリウム利尿ホルモンや、アスパラギン酸、アルギニン等の水溶性の塩基性及び両性物質を挙げることができるし、プリン又はプリン誘導体、プリン塩基であるアデニンやグアニン、プリンヌクレオシドであるグアノシンやイノシン、プリンヌクレオチドであるアデニル酸、グアニル酸、イノシン酸を挙げることができるし、低分子又は高分子核酸であるオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドを挙げることができるし、ポリアミン類、3−デオキシグルコソン、種々のペプチドホルモン、顆粒球抑制タンパク(GIP)、脱顆粒球抑制タンパク(DIP)、化学遊走抑制タンパクを挙げることもできるし、カルバミル化ヘモグロビン、糖化終末産物、顆粒球・単球機能阻害物質、酸化作用促進物質等を挙げることもできる。あるいは又、本発明の多孔質炭素材料複合体を、血液浄化カラム用の充填剤(吸収剤)として用いることができる。あるいは又、吸着シートに本発明の多孔質炭素材料複合体を適用することができる。即ち、吸着シートは、本発明の多孔質炭素材料複合体から成るシート状部材、並びに、シート状部材を支持する支持部材から成る形態とすることができる。あるいは又、本発明の多孔質炭素材料複合体を、水を浄化する水浄化用吸着剤に用いることもできる。尚、本発明の多孔質炭素材料複合体の表面に対して、化学処理又は分子修飾を行ってもよい。化学処理として、例えば、硝酸処理により表面にカルボキシ基を生成させる処理を挙げることができる。更には、多孔質炭素材料と反応可能な水酸基、カルボキシ基、アミノ基等を有する化学種又は蛋白質とを化学反応させることでも、分子修飾が可能である。そして、これらの場合にも、多孔質炭素材料複合体に要求される特性等に応じて、適宜、機能性材料を選択すればよい。
【0168】
また、本発明の多孔質炭素材料複合体に吸着、担持させる薬剤として、有機分子、ポリマー分子、蛋白質を挙げることができる。具体的には、例えば、ペントキシフィリン、プラゾシン、アシクロビル、ニフェジピン、ジルチアゼム、ナプロキセン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナク、フェンチアザック、吉草酸エストラジオール、メトプロロール、スルピリド、カプトプリル、シメチジン、ジドブジン、ニカルジピン、テルフェナジン、アテノロール、サルブタモール、カルバマゼピン、ラニチジン、エナラプリル、シムバスタチン、フルオキセチン、アルプラゾラム、ファモチジン、ガンシクロビル、ファムシクロビル、スピロノラクトン、5−asa、キニジン、ペリンドプリル、モルフィン、ペンタゾシン、パラセタモール、オメプラゾール、メトクロプラミド、アスピリン、メトフォルミンを挙げることができるし、全身性及び局所性の治療の観点から、各種のホルモン(例えば、インスリン、エストラジオール等)、喘息の治療薬(例えば、アルブテロール等)、結核の治療薬(例えば、リファンピシン、エタンブトール、ストレプトマイシン、イソニアジド、ピラジンアミド等)、癌の治療薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、アドリアマイシン、5−FU、パクリタキセル等)、高血圧の治療薬(例えば、クロニジン、プラゾシン、プロプラノロール、ラベタロール、ブニトロロール、レセルピン、ニフェジピン、フロセミド等)を挙げることができるが、これらに限定するものではない。そして、これらの薬剤を溶解可能な有機溶剤に溶解し、その溶液中に本発明の多孔質炭素材料複合体を浸漬し、次いで、溶媒及び余分な溶質を除去することで、多孔質炭素材料複合体/薬剤の複合体を得ることができる。具体的な溶媒として、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム、2−クロロメタン、1−クロロメタン、へキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン等を挙げることができる。また、薬剤徐放剤における薬剤としてイブプロフェンを挙げることができる。そして、これらの場合にも、多孔質炭素材料複合体に要求される特性等に応じて、適宜、機能性材料を選択すればよい。また、外部刺激応答性物質及び放出物質から成る機能性材料を付着させるための材料を、多孔質炭素材料から、場合によっては、例えば、特開2005−262324号公報に開示された空孔が3次元的規則性を有する多孔質炭素材料、あるいは又、シリカ微粒子に替えることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した機能性材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料複合体。
【請求項2】
機能性材料は磁性材料である請求項1に記載の多孔質炭素材料複合体。
【請求項3】
機能性材料は光学的特性を示す請求項1に記載の多孔質炭素材料複合体。
【請求項4】
機能性材料は光触媒特性を示す請求項1に記載の多孔質炭素材料複合体。
【請求項5】
機能性材料は、貴金属、貴金属の合金、酸化物半導体、又は、化合物半導体から成る請求項1に記載の多孔質炭素材料複合体。
【請求項6】
機能性材料は、外部刺激応答性物質及び放出物質から成る請求項1に記載の多孔質炭素材料複合体。
【請求項7】
機能性材料は、保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分から成る請求項1に記載の多孔質炭素材料複合体。
【請求項8】
植物由来の材料を800゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって、多孔質炭素材料を得た後、該多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる工程から成る多孔質炭素材料複合体の製造方法。
【請求項9】
酸又はアルカリでの処理の後、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる前に、賦活処理を施す請求項8に記載の多孔質炭素材料複合体の製造方法。
【請求項10】
植物由来の材料におけるケイ素の含有率は5重量%以上であり、
多孔質炭素材料のケイ素の含有率は1重量%以下であり、
多孔質炭素材料複合体の窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である請求項8に記載の多孔質炭素材料複合体の製造方法。
【請求項11】
機能性材料は磁性材料である請求項8に記載の多孔質炭素材料複合体の製造方法。
【請求項12】
機能性材料は光学的特性を示す請求項8に記載の多孔質炭素材料複合体の製造方法。
【請求項13】
機能性材料は光触媒特性を示す請求項8に記載の多孔質炭素材料複合体の製造方法。
【請求項14】
機能性材料は、貴金属、貴金属の合金、酸化物半導体、又は、化合物半導体から成る請求項8に記載の多孔質炭素材料複合体の製造方法。
【請求項15】
機能性材料は、外部刺激応答性物質及び放出物質から成る請求項8に記載の多孔質炭素材料複合体の製造方法。
【請求項16】
機能性材料は、保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分から成る請求項8に記載の多孔質炭素材料複合体の製造方法。
【請求項17】
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した磁性材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
ミクロシスチンを吸着する吸着剤。
【請求項18】
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料複合体を含む光触媒複合材料。
【請求項19】
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した活性酸素除去効果を有する金属系材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料複合体を含む化粧料。
【請求項20】
(A)ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料複合体を含む浄化剤。

【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−100516(P2010−100516A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184350(P2009−184350)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】